左門「少しでも抵抗したらぶち殺すとです」 (15)

飛雄馬「……」ガタガタ

伴「……」ガタガタ

左門「わしは冗談でこんなことを言う男じゃなか。このバットに誓って二人を血の海に沈めますたい……」メラメラ

飛雄馬「さ、左門くん……君は何か勘違いしている……」ガタガタ

伴「そ、そうだぞ左門……。俺たちがお前に対して一体何をしたというのだ……?」ガタガタ

左門「……」ガキッ

伴「ぎあっ!」ドシャッ

飛雄馬「ば、伴っ! な、なんてことを……」

左門「記憶力が悪いようじゃけん、殴って思い出させてやるとです……」

飛雄馬「ひっ……」ガタガタ

左門「星くんの方の記憶はいかがですたい?」ギロリ

飛雄馬「も、もしかしてこの前の手術のことだろうか……?」ブルブル

左門「……」メラメラ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497712794


***

【半年前】

左門「星くんの手術費用のカンパをするたい」

部員A「な……!」

全部員「「「なんですと!?」」」

部員B「ほ、星と言うと星雲高校の……?」

左門「そう、星飛雄馬くんたい」

部員C「その星がどげんしたとですか?」

部員D「病気でもしたとですか?」

左門「詳しいことは手紙に書いてなか。ただ、野球選手の夢を追うためにはどうしても手術を受けなければならんそうじゃ」

部員E「し、しかし何でわしらにカンパを……?」

部員F「そうじゃ、わしらはただの農林高校に通う貧乏学生じゃ」

部員G「それこそ星雲のような金持ち学校なら、周りに出してくれるもんはいくらでも……」

部員H「それに星とバッテリーを組んどる伴は、あの伴自動車工業のせがれたい。主将、いくらなんでもわしらが出すのは筋違いとです!」

左門「……」ギロッ

全部員「「「ひっ!」」」ビクッ

左門「……確かにみんなに頼むのは間違っとった。じゃがわしは、アルバイトをしてでも星くんのために金を送ってやるたい」

部員A「な、なぜ主将がそこまで……?」

部員B「主将だって生活が苦しいはずですたい! 東京のもんに構う必要はなか!」

左門「……星くんはわしのために……わしの弟や妹のために泣いてくれたんじゃ」

全部員「「「……」」」

左門「それも甲子園で、わしが誤って星くんの手に怪我を負わせてしまった直後たい」

左門「決勝が控えていたというのに星くんは、恨むどころか涙を流したんじゃ……」

部員C「主将……」

左門「じゃけんわしは、たとえすこぶる貧乏でも、金なんか惜しくなか!」

部員D「け、けんど主将……星には伴がおるとです。主将のスズメの涙みたいな小遣いよりもきっと……」

左門「今の星くんは甲子園の一件で、伴PTA会長……つまり伴くんのお父さんから目の敵にされとるたい」

左門「伴くんの支援は勿論、PTA会長が強い発言力をもつ星雲からの援助は到底望めん……」

部員E「そ、そうじゃったとですか……」

部員F「星も可哀想に……」

左門「……じゃけんどこの話はわしの胸に秘めとくべきだったたい。皆の時間を使うてすまんかった」ペコ

部員G「……」バンッ

左門「!」

部員G「今持っとる全財産ですたい。と言ってもたった千円じゃっど」

部員H「まったく金のかかるピッチャーたい」バンッ

部員A「本当じゃ」バンッ

部員B「お前らもたった千円じゃろうが」バンッ

左門「ちょ、ちょっと待ちんしゃい。言いだしたのはわしじゃが、確かに皆が出す筋合いはなか!」

部員C「主将、これは募金じゃなかとです。言わば未来の大投手に対する投資ですたい」バンッ

部員D「そうじゃ。プロになった暁にはここにいる全員、豪華なクリスマスパーティーにでも招待してもらうんじゃ」バンッ

部員E「それに主将の友達は……」バンッ

部員F「わしらの友達じゃ!」バンッ

左門「み、皆……」ポロポロ


***

左門「星くん……。君に送った封筒に入っとったもんはただの金ではなく、熊本農林高校野球部全員の優しさだったとです……」

星「うう……」ポロポロ

伴「おおん! な、泣かせやがって……!」ポロポロ

星「左門くん、その節は本当にありがとう……!」ポロポロ

伴「だ、だが左門よ……。今の話で何故星が恨まれるのだ……?」グスッ

星「そ、そうだ! 俺は君たちの施しを確かに受けたが、恨まれる筋合いは……」

左門「本当に心当たりがなかとですか……?」メラメラ


***

【5か月前】

左門「星くん」

飛雄馬「あ、左門くん! なぜここに?」

左門「球団関係者の方と東京でお話をすることになったけん、ついでに顔を見に寄っただけですたい。すぐこの後には熊本に帰るとです」

飛雄馬「それは残念……。時間があれば1打席ほど対決したかったのに……」

左門「ふふ……それはプロ入りしてからのお楽しみにしときますたい。……それよりすっかり良くなったようですな」

飛雄馬「ああ……本当に君のおかげだ。ありがとう」

左門「手紙が来た時は慌てもうした。でも今はまた、前を見つめる良い目をしていますたい」

飛雄馬「ふふ……やはり気づいたか」

左門「……?」

飛雄馬「君からもらったお金でやったプチ整形手術で、二重にしたのだ」

左門「?!」

飛雄馬「プロ野球選手になったあとの人気のためにも、ルックスは大切だからな」ポン

左門「な、なんですと……?」ガーン

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom