【ミリマス】未来「遥かな奇跡」 (15)

 ファンのみんなが退場して、撤収作業も終わってあとは帰るだけとなって。
 でも、私はまだ帰りたくなくて。この場所にいたくて。
 「外の空気を浴びてきます」ってプロデューサーさんに言って、武道館の裏口までやって来ていた。
 今日は天気が良くて、星も良く見えて。
 夜空を彩るたくさんの星々が、まるで私達みたいで。
 その姿が、私に「武道館ライブが終わった」ということを実感させた。

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 「未来〜っ!」

 呼ばれた声に振り向く。
 そのまま、正体不明の人影に抱きしめられた。

 「!? ん、んん〜っ!」

 思いっきり抱きしめられて息ができない。あ、おっぱいやわらかい。違う違うそうじゃない。
 どうにかこうにか彼女の胸の中から頭を出すことに成功した私は、そのまま上を見上げ──その人と目が合った。

 綺麗に染めた目を引く金髪。
 くりっとした目が綺麗なお人形さんみたいな顔。
 ファッションとかあんまりわからない私が見てもおしゃれで、モデルじゃないって知った時には本当に驚いた。
 彼女は私にとって初めてシアター以外で出来た知り合いで、今ではとても大切な人だ。

 「未来……見てたよ。お疲れ様。頑張ったね」

 頭を撫でられながら、優しい声で彼女が私に声をかける。
 その感覚が気持ちよくてくすぐったくて。

 「えへへ……ありがとうございます……」

 私は気の利いたこともいえず、そう返すしかなかった。

 「本当にね、本当にすごかったよ……あっ、ごめんごめん。くるしかったでしょ? ごめんね?」

 そこで彼女が気づいたのか、抱きしめる力を緩めてくれた。身体の自由を取り戻した私は、そのまま彼女の胸元に倒れ込む。
 今は、誰か……ううん、彼女にこうしていたかった。

 「大丈夫ですよ〜。わざわざ見てくれてありがとうございます!仕事だったんじゃないですか?」
 「そうなの!昨日は行けなかったんだけどね〜。未来が出た初日と今日はなんとか見れてよかったよ〜」

 優しい、どこまでも温かい言葉をくれる彼女の体温が気持ちよくて。

 「えへへ……あの、あのあの、私、キラキラしてました?」

 私は、思わずこんなことを口にした。

 失敗だな、って思った。というかめちゃくちゃ恥ずかしい。
 「あの、いや、なんでもないです」って訂正しようとした瞬間。

 「うん! もちろん! 翼ちゃんよりも、静香ちゃんよりも……誰よりも未来が輝いてた! 未来は私にとって一番のアイドルだよ!」

 そんなことを言われてしまい、私がさっきから必死で抑えていた感情は、思いっきり爆発した。

 「あの、私、私本当にうまく行くなんて思ってなくて、1stも2ndも色々あって、後悔して、でも今日は本当に楽しくて、琴葉ちゃんも最後にビデオで出てくれて、全員がそろえて……」

 そこまで言って彼女は、こんどは優しく抱きしめてくれて。

 「……うん。未来ね。本当にすごかったよ。私は未来よりデビューが先だったけど。ずっと憧れてる場所があってね。そこに最初に立った時に一緒に共演したのが未来だったんだよ? 覚えてる?」
 「……うん」

 覚えてる。あれは私にとって初めてシアターの外でやるライブで……今でもいろんな思い出がある。

 「そこからさ。勝手に。勝手にだよ? 一緒に共演した未来のことずっと私応援してた。未来だけじゃない、静香ちゃんも、星梨花ちゃんも、百合子ちゃんもみんな、ね。未来がいたからあの場所に立てたと思うし、武道館を目指してる未来達を尊敬してたし。本当だよ。憧れてた……だから、みんなが武道館に行けるって聞いた時、本当に嬉しくて……えへへ……ぐすっ。もう、未来の泣き虫がうつっちゃったじゃん!」
 「ええ〜。私のせいじゃありませんよぉ!」
 「なに〜!」

 頭をわしゃわしゃされる。くすぐったい。気持ちいい。
 ……私、この人に出会えてよかった。
 私も、彼女に憧れてる。
 綺麗で、可愛くて、やさしくて、人を思いやれる……こんな大人になりたいなって思ってる。

 「未来ー、バス出るぞー!」

 扉から私を呼ぶプロデューサーさんの声がする。楽しかったけど、もう行かないと。

 「……あ、ごめんなさい。私もう行かないと」

 彼女の腕の中を離れて、裏口に戻ろうとする私を。彼女はもう一度優しく抱きしめてくれて。

 「うん。いってらっしゃい! 未来!」
 「はい! 行ってきます! はるかさん!」

終わりです
4年前の今日、LTP02……つまりミリオンライブ初のライブイベントがありました
4年なんてあっという間ですね。ミリオンライブがこれからも羽ばたいていきますように

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