(⌒,_ゝ⌒)「ニコ生聖杯戦争?」 (126)

諸注意

・生主中心に書き殴った短編ですので、Zeroのような駆け引きや心理戦は存在しません
・staynight及びZeroのキャラは一切出てきません
・恋愛要素は一切ありませんが、人によっては不愉快になる表現があるかもしれません
・扱う人物が人物ですが、全ての配信を網羅しているわけではありませんので、人物像が異なる場合があります
 その場合は元も子もない言い方ですが、「この作品でのコイツはこう」と認識頂けると助かります


※この物語はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係がありません

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     ニコ生聖杯戦争
【副題】―Fate/Streaming actor―

 聖杯戦争。
 それはあらゆる“奇跡”を叶える「聖杯」の力を巡って、七人の魔術師が七人の英霊を召喚して覇を競いあう究極の決闘劇。
 今宵語られるのは、その中の一つ。混濁した時代の中で紡がれた、砂中の粒が如き可能性の一つ。
 ――では語るとしよう。今回の主役は、この男だ。

*「それじゃ今日はね、一時くらいから……えぇ~まぁ、やろうと思いますわドラクエ5。それでは、乞うご期待下さい」
 (配信終了)
*「ふぃぃ~……何が妖怪小銭稼ぎじゃゴミ共が! こちとら会社やめてから稼ぐのに必死なんじゃボケェ!」
 ピロンッ! 
*「おーん? なんやこのメール……運営からやんゴミが。なになに……? 賞金一億円……? 胡散臭いけどこれが本当なら、願ってもないチャンスや……」
 詳細
 ・放送用の新企画 ・有名配信者が多数参加予定 ・状況は常にニコ生で生中継 ・危険が伴います ・優勝者は賞金一億円
豊「やってやろうじゃねぇの…… (⌒,_ゝ⌒)」
 彼の名は馬場豊。またの名を実況界の王、もこう。
 ニコニコ運営からの招待状に、『参加する』の返事をするまでに、二秒と迷わなかった。

 (数日後)
豊「…………ふぁ~。ん? えぁ? なに!? どこココ!? えっ、ちょ、ま……ホンマ勘弁してぇこーゆーの! なぁオイ!」
*「やっと起きましたか! あぁ~、良かったです!」
豊「え? ちょっ誰!? ほんっ、ゃもう何なん? 昨日いきなり黒服の男に車に乗せられたと思ったらこんなプレハブ小屋みたいな部屋に拉致されて……」
*「い、一旦落ち着いて下さい! 頭に血が上るのはわかりますがコフッ!」
豊「いやそういうキミ血ィ吐いてるやん! ちょっ救急車救急車……ってアレ?」
 もこうは咄嗟に119に電話を入れたが、即座にコールが解除された。
*「無理ですよ! マスターの携帯の機能は制限されてますし!」
豊「あぁ~もうわかったわ! 病み上がりなトコ悪いけどなんやもう説明してや!」
*「えっとですね……」

?「■■■■■■■――――――――――!!!!」
 その時、突如部屋の壁を突き破って巨漢の男が現れた!

豊「えぇっ!? ちょま、なんなん次から次へと!? えっ、もう、勘弁してぇ……」
*「敵サーヴァントですっ!(抜刀) 私が引き止めるので、マスターは逃げてグフッ!?」
豊「頼れるかボケェ! 血ィ吐いとるやん! えっと……」
セ「セイバーでいいです! 私は大丈夫ですから、早く!」
?「■■■■■――――!」
豊「いや相手バケモノやんどう見ても無理やんこれェ!」
 ガキンッ!
セ「余所見をしないで下さい! あなたの相手は私ですっ!」
?「■■■……!」
豊「互角につばりっ、鍔迫り合っとる……何者やあいつ……とりあえず離れとこ」
 (屋外)
豊「ここまで来りゃ安心やろ……あの吐血女はどうしとるんや一体……外は夜やし、もうワケわからんわホンッマ……」
 離れた場所から先程までいたプレハブ小屋を見ると、女は巨漢の男と斬り合いをしていた。
 女は細身で軽装で、武器は刀一本。対する男は筋骨隆々とした肉体に丸太のような腕で槍を振るっている。力の差は火を見るより明らかだ。
 だというのに女は涼しい顔で、たまに吐血しながら青白い顔で、まともに相対している。
豊「いやっ、ホンッ……ホンマ何なんアレ?」
*「あの、ちょっと」

豊「緑さん!? 何でこんな場所に……というかどこなんすかここ!?」
緑「いやね、いつの間にかいたんだけどさここに。裁判の帰りにメールチェックしてたらこう、いつの間にかね」
豊「実は俺もそうなんすよォ……良かったぁ~知ってる人いてぇ! それでですね緑さん…………緑さん?」
 ゴロ……ベシャッ!
豊「………………え?」
?「は~い一人脱落~お疲れ様~」
豊「ちょあっ!? な、えっ……!」
 足元には倒れた小太りな身体と、黒いマスクを被った顔。それらは豊の見知ったものだ。しかし、今それらは二つに分かたれている。
 遠くで繰り広げられている戦いを見ている時は、現実感のないファンタジーを見ている気分だった。しかし今は違う。
 見知った顔が目の前で肉塊に変えられて、ようやく湧いてきた。
豊「あぁ……ああぁ……ああああああああああああああああああああ!!」
 とんでもないことに巻き込まれている、という実感が。
*「それじゃちょお~っと息抜きでもしましょうか~って感じでぇ~♪」
 歌いながら、刃渡り二十センチ以上のナイフを手にじりじりと歩み寄ってくる謎の男。
豊「ちょ、嫌! 嫌ぁぁぁマジで! やめてもう!!」

セ「しまった! マスター! 今行きますッ!」
?「■■■■■■■―――――!!」
セ「邪魔、ですっ!」
 キンッ!
――――シュタッ!
セ「ご無事ですかマスター!?」
豊「たた、助けて! ホンマ無理こういうのォ!」
セ「ひとまず逃げましょう! こっちですマスター!」
*「ダメダメ! ホラ追ってバーサーカー!」
?「■■■■~~?」
*「いやだから追えってホラはやくゥ!」
?「■■……」
*「だッ……え、ナマヌッ、何で何で何で何で? 何で言うこと聞かんの?」
?「■■■■■――――――!!!」

(ファミレス)
セ「……ここまで来れば、ひとまず安心でしょう。敵マスターもサーヴァントを御しきれてなかったようですし」
豊「な、なにっ……何が……」
セ「とりあえず、深呼吸でもして落ち着いて下さい……」
豊「スーハースーハーヒッヒッフー」

(五分後)
セ「今度こそ、きちんと説明できますね。では改めて……私のことは、ひとまずセイバーとお呼び下さい」
豊「えーあー、はい。ババユッ……ワワ、ワイはゲーム実況者のもこうや! 動画再生数は平均十万超えや!」
セ「なぜそこで虚勢をっ!?」
豊「あとマスターって堅苦しいのは止そうや」
セ「では、ユタカさんで」
豊「もこうや! お前馬場豊は本名やないからな! 飽くまでワイの数ある名前の一つで、そう名義や名義!」
セ「何でムキになるんですか……ではもこうさんで」
豊「なんや君にハンドルネーム連呼されんのもちゃうねんな……大事な場面でも感情移入できなそうっちゅうか……」
セ「はぁ……ではこれまで通りマスターで」
豊「それでええわ。とにかく、俺は一体何に巻き込まれてるん?」
セ「はい、それは聖杯せコフッ! ゲホッ! ゴホッゴホッゴホッ!」
豊「またか! も~お前こそ落ち着いてから話せやコラァ!」
セ「すみませッ……ハァ……ハァ……」

(五分後)
豊「ほーん……七人の魔術師が歴史上の偉人を使役して聖杯を奪い合う戦いねぇ……何でそんなん巻き込まれてるん? 俺ェ」
セ「ユタカさん達が参加希望の声を審判役に届けたと聞き及んでます。私達サーヴァントもそれに応じて擬似召喚されたはずなんです」
豊「んな覚えないわ! ……いや待てよ。まさかあのメールか!?」
 豊がセイバーに先日もらったメールのことを伝えると、多分それですと言われて頭を抱える豊。
豊「えええええぇ~……んな、ちょ待ってもぉ~~~~!! クソやんそんなの! 緑さん無駄死にやんけ! てか犯罪やんこれ訴えよ!」
セ「落ち着いて下さいマスター!」
豊「落ち着いてられんわ!(退店) 辞退するわこんなんブベラ!?」
セ「この街一帯は空間ごと切り離されてますから!」
豊「先に言わんかぃ! 鼻折れそうなったわコラ! てかなんや切り離すってェ!?」
セ「細かい原理はともかく、聖杯戦争を勝ち抜かないと出れないことになってます」
豊「なァァァァつのォォォォォオオオ!!!」

豊「とりあえず、最後の一人になるまで引き篭もってりゃええんちゃうの?」
十分の議論を終えた末に出た答えは、籠城であった。
豊「ほらあのクソデカいホテルとか、あれに罠仕掛けて最上階で待ってりゃ安全やん」
セ「それは現代兵器とかで外から爆破されそうなので却下で!」
豊「じゃあどっかの民宿とか?」
セ「あまり派手でなければいいと思いますが……」
*「あなた達、宿を探しているの?」
豊「えぇまぁ……ってえっ誰ェ?」
*「だったらいらっしゃい♪ 寝心地は保証するわよ」
豊「それじゃあ……」
セ「ちょっと待って下さいよ! 明らかにハニートラップじゃないですか! 少しは警戒して下さいよマスター!」
豊「えぇ!? いやでも、こんな優しそうな女性の方がそんな……」
セ「あちゃー……完全に引っかかってますねこれは……失礼」
 ペチン
豊「痛ッ!?」
セ「目が覚めましたか!? じゃ宿探しますよマスター!」
豊「えぇ~ちょっと待ってってェ~! もう歩きたくないんやけども!」
セ「はぁ……」

*「ねぇ、やっぱり私に付いてこない?」
豊「行きます行きます! もホンットに足がァ、も棒でェ……」
セ「仕方ありません……何が目的なんですか、あなた」
*「目的? 何のことかしら?」
セ「とぼけないでくださいよ! こんな町中にあなたみたいな乳丸出しの女が普通に夜道歩いてる時点で不自然なんですよ!」
*「うーん……おかしいわね。服装はこの時代の好みに合わせたつもりなのに……まあいいわ!(バッ!)」
 謎の美女は薄手のワンピースを脱ぎ捨て、一瞬で扇情的なドレスに装いを変えた。
*「本当のところを言うと私、野良なのよ。マスターがあの大男にやられてしまったから」
セ「やはりあなたは……」
ア「私、アサシンのサーヴァントよ! このままじゃいつか魔力切れで消えてしまうし、どうせならあなた達のこと、手伝わせてほしいわ!」
豊「魔力切れ……それなら仕方ないわなァ。じゃセイバー! 俺ァこのアサシンちゃんについてくで! アレやぞお前ェ……決して、誘惑されたとかそーゆーんちゃうからなお前ェ!」
セ「胸ガン見ながら言われても説得力に欠けますよ。あーあ、男ってみーんなこうなんですかね……」
豊「だからちゃうゆーてるやん! もう探すの疲れるし嫌やもう! 付いていこうや!」
ア「じゃあついてきて! ほら早く!」

豊「おー……ええやんこれ。ベッドついてるやん。ふっかふかやわ」
ア「どうやら私達は初期配置が“当たり”だったみたい。部屋も立派だし、立地も良かったわ♪」
セ「でも、肝心のマスターさんはもう……」
豊「緑さん…………うぷっ、オエッ!」
セ「マスター! あ、あまり思い出さない方がよろしいかと! でないと私もゴフゥ!?」
ア「大丈夫? ほーら、怖くない怖くない……」
 アサシンに背中を擦られた豊が、予想外の美女との触れ合いで変な呼吸をする。
豊「スッ……フゥー……アー……」
ア「あらあら……相当怖い思いをしたのね。でも、もう大丈夫よ。お姉さんが側にいるから」
豊「」
ア「それじゃ仮契約を済ませちゃいましょう♪ えいっ!」
豊「あぁ~……なんか気持ちええわこれ」
セ「鼻の下伸びてますよ」
豊「ちゃ、ちゃうがな! いやお前……こんなん誰だってこうなるやん!」
セ「はいはい……では私は別の部屋で寝ますんで。襲撃とかあったら起こして下さいね」
豊「ほーいお疲れさん」
ア「ばいばーい♪」
セ「あなたも別室ですよ!?」

豊「今日は色々ありすぎて……よーわからんわぁ」
 寝室で一人になり、落ち着いて思考できる時間ができた途端、豊は恐ろしくなった。
 偉人の力を使って行う殺し合いに、一介の配信者でしかない自分が参加させられたことが。そんな状況で、一人の空間にいる今が。
 しかも話を聞く限り、参加はニコニコ運営からのメール経由なので、全員賞金目当ての配信者だ。その中には当然積極的に敵を排除する人間もいる。
 あの時、横山緑を殺した男のように。
豊「誰やったんやろアイツ……」
 小太りで茶髪で甲高い声で歌っていて、悪い意味で日本人離れしていた。恐らくあの男がバーサーカーとかいうサーヴァントのマスターなのだろう。
 見覚えはあるのだが、今ひとつピンと来ない。
豊「まええわ。ただのモブやろあんなん」
 まだセイバーに問い質したいことは多いが全て飲み込み、豊は殺害現場のことを思い出さないように努力しながら眠った。

ア「おはよう、もこうちゃん♪」
豊「おはようさん(⌒,_ゝ⌒)」
セ「おはようございますマスター! 早速探索に出かけますよ!」
豊「えっ!? いや、ここにとどまるんちゃう?」
セ「いや流石にそれはやめましょうよ! 腐っても知りませんよ!?」
豊「いやぁ~腐ってもいいからもう逃げたいねんもう……嫌やわぁ殺すとか殺されるとかぁ」
ア「同感ね。私も血生臭いのは苦手よ? でももこうちゃん、何も知らないまま終わったら、きっともどかしさだけが残るんじゃないかしら?」
豊「えぇ~……いやでもホンマ無理やねんなもう~」
ア「大丈夫♪ お姉さんがついてるわっ(ギュッ)」
豊「いくぞお前らァ! 準備ええか!?」
セ「わかりやすっ!?」

豊「随分遠くまで来たはいいが……何もないやんけ。なんやこの街ィ! なんもないやん……ゴミやんけ」
セ「風情があっていいではありませんか。アサシンさんもそう思いますよね?」
ア「えぇ、なんだか新鮮な気分♪」
セ「新鮮……ですか」
豊「ちゅーか探索って言っても、何すりゃええん? 他のマスターとか見に行けばええんか?」
セ「本来の聖杯戦争なら色々とやることがあるんですが……参加者が全員配信者とか素人まみれですし、正直微妙ですよね……」
豊「やっぱ籠城した方がええんちゃう?」
セ「周りに気配もないですし……ひとまず戻りましょうか」
ア「私はもうちょっと観光したいわ♪」
セ「遊びにきてるんじゃありませんよ!」
豊「そんじゃ帰り……」
 その時! 豊達が昨夜泊まった家の方向から凄まじい爆音が轟いた!
豊「えぇ……」
セ「嫌な予感がします! 急ぎましょう!」

 豊の拠点だった場所は既に焼け崩れ、そこには槍を持った一人の男性が佇んでいた。
?「敵の拠点は壊したし、オジサンはそろそろ退散するとしますかねぇ……おっと」
 ピッと彼の頬を掠めたのは、一筋の弾丸。
*「チッ……拙者の不意打ちを躱すとは、中々の名手と見た! 純一殿、次の指示を!」
純「不意打ちが外れたらそりゃお前、やることは一つだろうが! もうまともにやり合うしかねぇよなぁ!?」
*「相手は槍使いですぞ! 正面からまともにやり合うのは得策じゃないってそれ一番言われてるから!」
純「じゃあどうやって勝つんだよお前よ!? こっちはワケわかんない状態でお前使って勝てって言われてんだぞふざぁけんなよマジでぇ!?」
*「とにかくここは撤退! 戦略的撤退でござるよ純一殿!」
純「仕方ねぇ……勝負は明日に預けてやる。首洗って待ってろな!」
*「相変わらず口だけは一人前でござるな……ま、我輩そういうの嫌いじゃないでござるよ」

豊「嘘やん……全部燃えてるわ」
ア「この感じ……サーヴァントね」
セ「ここまで派手にやられるとは……恐らく宝具でしょう」
豊「宝具って、なんやあの必殺技的なヤツか?」
セ「はい。家がこうなったのもそのせいかと」
豊「まーた探さなきゃいかんのか拠点を」
 傍から見ればグラサンをかけた男になぜか袴姿の女剣士と痴女が付き添っている妙な状態なのだ。
 しかし切り離された街故か、一般市民の姿も少ないのであまり問題はない。尤も、豊がそれを意識しているかは疑問だが。
 浮浪者同然の身の上となった馬場豊は、再び寝床を探すことにした。

 同刻、郊外。
*「あった! パソコンだ……これで外側と連絡が取れる!」
?「よくってよ。いい着眼点だわ。ネットカフェならパソコンもあるし、籠城にも最適ね」
*「この聖杯戦争ってさ、ニコ生で配信されてるんですよね? だったらまあ、全くネットが繋がらないなんてことないはずやろ?」
?「あたしが見張っているから、あなたは早く用を済ませなさい」
*「あっはい……どれどれ。ニコ生には繋がるんだねこれ」
コメント『羨ましい!』『キャスターちゃんかわいい!』『最高です』『純一最強!』『さかたんあまり他の女の子と絡まないでほしいなぁ…』『がんばれー』
『さかたんなんか遠くに行っちゃった感じする…』『↑わかる…昔のほうが好きだった』『うっわきも』『さかたん絶対無事で帰ってきてね!』
*「おっふ……わーあったかーい……」

?「どうだったサカタ? 何か新しい情報は得られたかしら?」
*「どうやら、ニコ生以外のサイトには繋がらないみたいです。あとなんかやっぱ……あぁぁ~恥ずかしいわぁ~こういうの見られるのぉ! 意識しちゃうやーん!」
?「衆目を気にするのは悪いことじゃないけれど、今は自分を守ることに集中しなさいサカタ。他には?」
*「今他の番組を見ようとしたんですが接続できなくて……多分、意図的にこうなってるんですかね。あとこの番組、僕らを映してるのは確かなんですが映像が真っ暗で……」
 ふと思いついた彼は、その場で大声で叫んだ。
坂「みんなー! オレオレ、浦島坂田船の坂田だよ! みってるー!?」
 『みてるううううううううううううううううううううううううううう!!!』(弾幕)
坂「繋がってるみたいです……これを利用すれば、もしかしたら敵の動きもわかるんじゃないですか!?」
キ「よくってよ。それじゃあじっとしててねサカタ」

 彼の小柄なサーヴァント、キャスターが魔導書を浮遊させて、そこからレーザーを発射した。
坂「ああああああああああああああああ!!? ルーターは切らないでェェェ――――――!!」
 レーザーはネットカフェのカウンターにある機器類に直撃し、施設内の全てのパソコンをネットワークから孤立させた。
 店員や他の客からクレームでも来そうなものなのだが、なぜかこの
キ「これでよし、と」
坂「ちょっとー!? え? え、ええ? なに、何やってるん!? これじゃネットが全部……」
キ「サカタ、あなた今、コメントに敵の動きを聞いてから行動しようと考えてたでしょう?」
坂「えぇまあ……」
キ「敵がここに近づいてきたら、どうするつもりだったの?」
坂「そりゃあ、先に迎え撃って有利に」
キ「敵が予想以上に強かったら?」
坂「まあ……逃げますねぇ」
キ「その時、ここはどうなる?」
坂「強い敵がニコ生を見て…………あっ」
キ「そう。結局は一番地力のあるサーヴァントが有利になってしまうの。襲われる直前に壊そう、なんて考えてもダメよ。きっとそんな余裕も無くなるんだから」
坂「そっかー……まあ、仕方ないわなー」
キ「情報は得られたんだからいいじゃない。さ、早く次の場所に向かうわよ。マハトマを求めて!」
坂「えぇ、はい……ところで」
キ「なにかしら?」
坂「その、マハトマって何なんです?」

キ「それは…………
  ッ! その前にサカタ、早くここを離れるわよ!」
坂「えっ、いきなりどうしたんすかキャスターさん!?」
キ「いいから!」
 二人がネットカフェを出た途端、そこが何者かの攻撃によって倒壊した。
バ「■■■■■■■■――――!!」
*「お前どこ行くんだよオイ! 泊まる予定だったネカフェも壊しやがっていい加減にしろモー!」
バ「■■■■――!」
*「……あぁ、敵の気配でも感じてたんかな」

坂「なんだいきな……んむぅ!?」
キ「静かに! 幸い敵はバーサーカー……理性がない獣のようなものだから、見つかりさえしなければ大丈夫……」
坂「ぶはっ……で、でも逃げたほうが……」
キ「無理よ。あなたが類まれなる走者の才能を持っていたとしても、ただの人間がアレからまともに逃げるのは不可能だわ。サーヴァントであるあたしも含めてね」

*「ハイハイハイハイハーイ! みんなー! 演奏してみた好きですかぁ!?」
バ「■■■■■―――――!!」
*「ほら出てこいよ雑魚! 隠れてないでさぁ! 俺の金の生贄になれってマジで!」
 敵は令呪を誇らしげに見せつけるように手を掲げている。あと小太りで甲高い声をしていた。坂田にはその男が誰か、一目でわかってしまった。

坂「鋼兵さん!? 何やってんだあの人……」
キ「知ってる人なの? あなた、友達は選んだ方がいいわよ?」
坂「いや友達とかじゃなくて全然……一度見たことあるくらいで……」
キ「まあいいわ。とにかく、隠れながら少しずつ移動して。やり過ごすわよ。あたしから離れないでね」
坂「あ、はい」
鋼「敵は多分そこの物陰だろ! ホラいけ!」
バ「■■■■――――!」
鋼「いやそっちだって! 言うこと聞けコラ!」
バ「■■■■……?」
キ「あのマスターは無能だけど、バーサーカーの方は的確に私達がいた場所を狙ってきてるわね……もうすぐこっちに来る」
坂「ひっ!? た、助けて……!」
キ「落ち着いてサカタ。確かに状況は切迫しているけれど、相手のマスターはただ闇雲に叫んでるだけだし、バーサーカーは理性がないからそれを正すこともできないわ」
坂「……つまり、どういうことなん?」
キ「まだ諦めるには早いってことよ」

鋼「なぁ、やっぱ敵とかいないんじゃねーん?」
バ「■■■■――!」
鋼「じゃもうここはいいから! はよ次行こう次!」
バ「■■■■■■■■――――――!!!」
キ「にしても可哀想になってきたわねあのバーサーカー……サカタ、次はあそこの路地よ! 走って!」
 坂田達は、敵の攻撃で土煙が上がっている間に物陰から物陰へ、全力失踪しつつ移動していく。
 普通の聖杯戦争なら、歴戦の魔術師のマスターとサーヴァントが徒党を組んで襲ってくるのでとっくに見つかっている。
 しかし今は素人のマスターに理性のないサーヴァント。見つかりやすい気配でも、二人の意識が互いに足を引っ張り合いまともな索敵を困難にしているのだ。
坂「は、はい! ところでこれ、いつまで続くんですか!?」
キ「相手が諦めるまでよ!」
バ「■■■■――――!!」
鋼「ったく腹減ってきたし……勝手にやってろよ」
バ「…………」

坂「行ったか……」
キ「運が良かったわね。でも、次はきっとこうはいかないわ」
坂「そうなん? なんか大丈夫そうな気がしたけど」
キ「少々浮かれすぎてよ、サカタ。あなたは勝ちたいの?」
坂「いや……今となってはもう、生きることで精一杯ですよ」
キ「よくってよ! 生きてさえいればきっといつか、あなたもマハトマを感じることができるわ!」
坂「だからその、マハトマってのは」
キ「ちょっと待って! まだサーヴァントの気配が残ってる……これはきっと、もう一人いたのね。あたしとしたことが……」

?「はっはっは! いい食いっぷりだ順平! ほれ、お代わりだ!」
浜「クッチャクッチャクッチャ……ウマッ、ウマッ……」
 そこでは、二人の男が鍋を中心にして箸をつついていた。

キ「お食事中のようね。見るからにあの二人も参加者でしょうけど、どうする?」
坂「syamuさん!? あの人ニコ生主じゃないじゃん……」
?「おぉそこの御仁に夫人! 今は昼餉の時間なのだが、腹は空いていないか!?」
坂「えっ……いやそれは(グゥゥゥゥ)」
?「ほれ、そんなところに隠れてないで! 飯は賑やかな方が美味いぞ!」
浜「イヤッ、その、ちょっと……」
キ「はぁ……仕方ないわね。その人からは邪気を感じないし……いいわサカタ。ここであなたに倒れられるのも困るしね」

坂「うんまぁぁぁぁぁぁ!! いやぁ~やっぱり日本人はお米だわぁ!」
キ「よくってよ! 日本食というのも新鮮だけど、ここまで美味しいなんて!」
?「そうであろうそうであろう! ではもう一度始めよう! いただきます!」
浜「イタダキャス……」
?「俺はアーチャーのサーヴァント! 俵藤太だ! ウチのマスターは奥手なのでな、真名がバレる心配がなくていいわ! はっはっはっはっは!」
浜「ソソソソ……」
俵「さて、次はお前の番だ順平!」
浜「何で俺が敵に名前言わなきゃあかんねん……」
俵「ほーらどうしたどうした! はよう!(バンバン!!)」
浜「アデッ……ど、どうも~syamuで~す……」
坂「…………」

キ「その様子……サカタ、何か知っているの?」
坂「い、いやぁ!? かなり有名人らしいですが、僕は何も……」
キ「有名人? 全然そんなオーラは感じないのだけれど……人生は何があるかわからないものね」
俵「俺も真名を明かしたのだ! お前も真名を言わぬか順平!」
浜「は、ハミャ……浜崎順平……デス」
坂「浦島坂田船の坂田でーす」
キ「キャスターよ。ご馳走になったところ悪いけれど、完全にあなた達を信用できたわけじゃないの。ごめんなさい」
俵「構わん構わん! 俺達がおかしいだけだ! なっ!?(バンッ)」
浜「イデッ……そ、それは君がそう思ってるだけやで」
坂「と、とにかく美味しかったです! ご馳走様でした!」
俵「おう! 次に会ったらまた共に食おうではないか! さらばだ坂田殿!」

改行しろ
読みにくい

坂「いやー、美味しかったですねぇご飯」
キ「えぇ、そうね……いえ、ちょっと待って」
坂「何ですか?」
キ「いやいやいや……いいえそうじゃないでしょう!」
坂「ちょっ」
キ「何で仲良くランチしてたのよあたし達!? 敵同士なんじゃない!」
坂「え? あぁ……確かに、すみません。まだ聖杯戦争とか、実感ないんで……」
キ「よくってよ。私もあのバーサーカーみたいに荒っぽいのは好きではないもの」
坂「そっか……ほっ。なんか、良かったです」
キ「良かった、というのは、どういうことかしら?」
坂「いえ、僕はてっきり、キャスターさんも聖杯が欲しいのかと思いまして」
キ「欲しいわよ? 聖杯。叶えたい願いも、数え切れないくらいあるわ」
坂「えぇ!? じゃあ何であそこで戦わなかったんですか!?」
キ「えっ? フフッ、なんだそういうこと? 別にあたしは、そこまで意地汚くないってだけよ。どこかのバーサーカー達と違ってね」
坂「じゃあ、やっぱり良かったですよ。僕てっきり、聖杯の為なら何でもする人かと思ってましたから」
キ「そんなことないわよ! ただ私は、正面からまともにやり合うタイプではないというだけよ」
坂「ははっ…………」

>>31 申し訳ありません ここでの投稿は初めてのもので、見え方を意識していませんでした
ここから先は改行して投稿しますので、ご容赦下さい

坂「にしても、変だな」

キ「何がよ?」

坂「いやぁ、ちょっとした疑問なんだけどね。あの浜崎順平って人、僕が知ってる限りでは、ここに呼ばれるような配信者じゃないんですよ」

キ「そういえばあなた達の時代には、誰もが全世界に情報を発信できるのよね」

坂「うん。それでその、浜崎……シャムさんはねぇ、実はここの主催者からすると、すれば、ライバルみたいな会社で配信者をしてたんです」

キ「わかりやすい説明ありがとう。もし競合相手の人間をわざわざ自社の企画に呼ぶ理由があるとすれば……そうね。

  一つ目は、やっぱり話題性ね。その人が有名人なら、なりふり構わず宣材に使いたいはずよ。

  二つ目は、偶然。なんらかの手違いとすれ違いが重なって、たまたまあの男が招待された可能性もある。

  三つ目があるとすれば、対比でしょうね。その人を呼んで醜態を晒させて、自分側の人間の優秀さをアピールしたりする、とかね」

坂(あの人醜態しか晒してないけどなぁ……)

 ザッザッザッ……

*「お、坂田じゃーん。やってるー?」

坂「その声は……加藤さん!?」

?「おぉ! そこの合法ロリ少女はもしや、新しいサーヴァントですかな!? デュフフフwwww久々のおにゃのこに我輩のテンションうなぎ登リングですぞぉぉぉ!!」

純「きっしょ! おめぇそんなキャラだったのかよもういいわドラム缶に頭以外コンクリで詰めてから頭に強酸ぶっかけた上で東京湾沈めるわお前覚悟しろよこの野郎」

?「いちいち発言が過激ですぞ純一殿! お主とは、ま↑ど↓マギについて小一時間ほど語り合った仲ではありませんか! お慈悲を! お慈悲をー!」

純「ま↑ど↓マ↑ギ↓な」

坂「やっぱり、加藤さんも来てたんすか!? ってあ……」

キ「………………(苦虫を噛み潰したような顔をしている)」

純「てかなに坂田お前、こういうのが好みなん!? お前も捕まんぞその内ィ! ぱにょとかつわはすみてぇによぉ!」

坂「いや誤解しないでくださいよキャスターさんはこう見えて、中身結構大人なんすよ!?」

純「見た目は子供中身は大人か。それ、アレじゃん幽遊白書の……アレ、何だっけほらアレ」

坂(幽遊白書にそんなキャラいたっけ……てかそこまで言ったらコナンでいいじゃん)

キ「ごめんなさいサカタ……あの二人組、なんだかあたしとは反りが合わなそうだわ……」

坂「あっ、まあそれは……(それはそうだろうなぁ)」

純「ところでよ坂田さぁ、もう何人か、殺った?」

坂「いや、まだそれどころじゃ……」

純「あめぇんだよお前よ! そんなんじゃいつまで経ってもトップ掴めねぇぞクソみてぇなアニソン歌手で満足しやがってテメェMSSP武道館行ってんだぞ!! バカがよ!!」

坂「とは言ってもいきなり殺す殺されるなんて……現に加藤さんもこうやって普通に話しかけてきてるし……」

純「そりゃお前アレだよお前……知り合い目の前にいきなり来てじゃあお前殺しまーすとか言われたらわけわかんねぇまま死んじまうだろ。そりゃよくねぇ……よくないね」

坂「は、はあ」

純「ってわけでよ坂田ァ! これから戦わねぇか!?」

坂「え、いやそれは」

キ「ちょっと、いいかしら!!?」

純「アッハイ」

キ「黙って聞いてればあなた! 好き勝手言ってくれるじゃない! サカタは低い所で満足してるなんて、一言も口にしてないじゃない!

  あなたは弁が立つようだけど、それだけならサカタの方がよっぽどマシだわ! あなたみたいな口と頬骨だけの男の言われるがままに戦うなんて、あたしは御免よ!」

純「あぁ!? ッ~~……っぱgmだわ女は」

?「ぷぷぷー! 言われてしまいましたな純一殿! ですが我輩、少々羨ましいですぞ! 美少女にこれだけ長文で罵られる機会など、そうありませんからな!」

キ「あなたも自重なさい! そうやって道化のように振る舞っていれば内面を隠せると思ったら大間違いなんだから!」

坂「と、ところで……そっちの人は一体? サーヴァントなんですか?」

?「吾輩はライダーのサーヴァント! ライダーと呼んでくだされ! キャスター殿ならライダーちゃん♪ でもライダーきゅん♪ でもいいですぞ!」

キ「第一の光!」キュインッ!

ラ「ぐえっ!?」

キ「第二の光!」ビシッ!パシューン!!

ラ「くはっ!?」

キ「星よ!」シュピンッ! バシュッバシュッバシュッ! シュバーン!!

ラ「い、痛ってぇぇぇ~!!」

キ「セラピスの知恵よ!!」ババババババ! シュパァーン!!

ラ「わ、我が生涯に一片の悔いなし……」

純「ライダァァ――――ッッ!! ちっくしょうすまねぇおめぇのこと守れなくて……俺はしっかりチャンピオンになるから、天国で見守っててくれや」

ラ「いや死んでないから! まだ我輩生きてるから! ゲームで言えば間一髪でガッツ発動したところですぞ!」

純「ゲームじゃねぇ人生だ! 遊びじゃねぇんだぞ!」

ラ「そうで、ござった……大事なことに気付かされたでござるよ」

キ「はぁ……つい頭に血が上って攻撃してしまったわ」

坂「まあ、良い薬になったんじゃないですかね」

純「じゃあ、こうしよう。手ェ組まねぇか? 俺達でよ」

ラ「我輩は賛成ですぞ! いい加減男所帯にはうんざりしてたところでござるからな! デュフフフwww」

キ「断固反対します。あなた達にはマハトマを感じないもの」

坂「まあ、そう言わずに……加藤さんはそう簡単に裏切ったりしませんよ多分」

キ「不満点はそこじゃないわ! どう見ても人格に根本的な問題があるじゃない!」

坂「それは否定しない!」

ラ「おっほぅ……純一殿と旧知の仲のはずの坂田殿にも否定されるとは。吾輩ちょっとショック」

キ「…………しかし残念ながら、あたし達だけで聖杯戦争を勝ち抜くことが困難なのも、明白よね。いいわ。最後の二人になるまでなら、組んであげる」

純「組んであげるとは随分上から目線じゃないかぁ!? まいいや。ジュース買い行こ」

ラ「純一殿! 拙者ライフガードで!」

純「俺と被るから却下! てめぇはあの割って飲むヤツに混ぜる味しねぇ炭酸水で我慢しろや!」

ラ「そんな殺生なぁ!? あの不健康の塊みたいなデロッとしたフレーヴァーと過剰な炭酸が恋しいでござるよ……」

純「っしゃーねーな二本買ってきてやるよ! 坂田とキャスターさんは!?」

坂「え? あっじゃあお茶お願いしまーす!」

キ「あたしは紅茶でいいわ」

純「ハイッッッ!!! そんじゃ行ってくるぜ!」ピューン!

キ「ライダー、マスターの単独行動は危険よ。わかってるわね?」

ラ「む、無論でござるよ! 拙者、キャスター殿から離れるのは名残惜しいですが、こっそり純一殿の尾行を開始するでござるよ!」ヒョコヒョコヒョコ……

キ「ふぅ……やっと静かになったわね」

坂「はははっ、うるさいは褒め言葉っすからね加藤さんにとっちゃ」

キ「変な知り合いばっかりなのねあなた」

坂「よく言われますよー。ごめんねーなんかアレ、こーゆーの多いんす配信者って」

キ「あら、褒め言葉のつもりだったのよ?」

坂「ちょまっ、どこがやねーん!」

キ「くすっ……ふふふっ!」

坂「アァーッヒャヒャッハー!!」

キ「あなた、笑い方はあまり綺麗じゃないわね……」

坂「それもよく言われます」

 市街地の中心地にある空き家。

豊「ふぃ~……ようやく一息つけるわぁ」

ア「よかったわねもこうちゃん♪ ここが私達の新しいホームよ」

豊「いやぁこれもワイのお陰やなホンマに。王の一声で宿貸してくれよったわ」

セ「いや殆どアサシンさんの女の武器のお陰だったじゃないですか!」

豊「細かいこと言いっこなしやろなぁー終わりよければすべてよしやんグチグチ言いよってからに!」

セ「別にダメとは言ってませんけど、なーんか態度が大きいんですよねぇ」

ア「いいじゃないセイバーちゃん。さ、寝床が見つかったところでそろそろ夕飯の支度をするわよ」

豊「おーん、んじゃ男の料理見せたるわ」

セ「あなたもやるんですかぁ!?」

豊「料理配信枠も経験あるからな? 言っとくけどお前ェ……俺ふっつ~に料理くらいできるからな? え? ん?」

セ「わ、わかりましたよ……そ、それじゃあ……頼みましたよ、アサシンさん」

 郊外の空き家。
浜「腹いっぱいだで……もう動けないでスゥゥゥ……」

俵「食ってすぐ寝るのは感心せんなぁ! ほーら順平! 起きた起きた!」

浜「えっいやその」

俵「言っておくが、俺に男をおぶる趣味はないぞ? さぁ立て」

浜「アノ……アーチャーさん……」

俵「なんだ?」

浜「何でその、自分……ワタクシ……オレェ……僕に、ここまでして、くれるん?」

俵「ほほう。理由、ときたか。なぁに、共に戦うのであれば、なにより信頼が大事だ。信頼は同じ釜の飯を食うことで生まれる……なんてな!」

浜「ソウ……」

俵「そんなか細い声に枯れ木のような体! 白米を食っているのか!? 飯を食え飯を! 腹が空いては戦はできぬ、とも言うしな! ははははは!」

浜「アビャッ!? タベテル……タベテル……」

俵「ところで順平よ。お主、聖杯にかける望みはなんだ?」

浜「願い……えーそうですね……まずはお金を沢山もらってですねー、ほんでー……あ、まあ運動できるようになりたいしぃ? 顔もかっこ良くしてもらいたいしぃ?
  ワタクシはイケメンではございませんのでね……まあこの曲がった顔とかアトピーとか、全部直してもらいたいですねぇ~……
  ほんでー……まあ、一人で暮らせる、広い……広くて、配信とかゲームとか何でもできる家が欲しいですし……パソコンもね、色んなゲームできるのがいいですね自分用の。

  それからですね、家族をね……もうちょっと、優しくしてほしいと言いますか……まあその辺はァ……あんま言わないでおきますわ。ちょっと言えない。それは。言えないから。
  えーほんでー…………あとはですねー……彼女が欲しいですねー……。聖杯手に入れたら、お金とかそういうのは全部あるんで、優しくて美人ならそれで? いいですね。
  二十代くらいの若いOLさんとか……コイニハッテンシテ……ステキナコトヤナイデスカァ……♪」


俵「…………」

浜「えーまぁ……ほんでー……」

俵「だっはっはっはっはっはっはっはっは!! ははははは! ぶわぁーっはっはっはっは!!(バンバン!)」

浜「ビクッ」

俵「すまんすまん! いやー参った参った! 俺は少々、お主のことを勘違いしていたのかもしれん!」

浜「……え?」

俵「願いを聞く直前までは、俺はお前のことを奥手で消極的で、人形のような男かと思っておったが、大違いだったようだな!」

浜「いやそりゃ、それはちょっと失礼ちゃうんか?」

俵「まったくだな! よもやこうも欲深い人間だったとは! それではまるで口を開いて撒き餌を待つ庭の鯉ではないか!」

浜「ほんま失礼ですねアナタァ……」

俵「良い! 良いぞ! 男子たるもの、それくらいの欲は持っておかなくてはな! だがこれだけは覚えておけ順平!」

浜「ナニ……」

俵「どれだけ手元に財があろうと、どれだけ与える立場であろようと! 人には必ず、自ら動かねばならん時が来るのだ! それを肝に銘じておけ!」

浜「アッハイ……」

俵「わかればよろしい! さて、そろそろ夕飯の時間だな! 待ってろ、すぐ用意してやる!」

 白米ドバーッ!

浜「えぇなぁ……」

俵「ん? どうした? 白米の出る宝具がそんなに珍しいか?」

浜「いや珍しいじゃん普通……俺にもこういう力が欲しいのぅ」

俵「はっはっは! それはやめといた方がいいな順平! この力があれば、お前はきっと一生働かず死んでいくだろうからな!」

浜「ナンデヨ! ナンデッ……チカラノツカイカタナンテ、ヒトノカッテヤロア-オアオアオアオォァァ―――!!!」

俵「デカい声も出せるではないか! はっはっは! その意気だ! 俺はアーチャー故、遠くから会話することも多いだろうしな!」

浜「ダデェ……」

?「いた?」

鋼「いましたよ~。呑気に飯食って寝てましたわ」

?「いいね~……そのまま襲っちゃいたいけどねぇ、俺ァ戦略家だから。戦力は活かそうぜ?」

鋼「えっなに味方にするんすか?」

?「そうだよやっちゃうんだよ。だいじょーぶ脅せば一発だから! 一発!」

槍「話は終わったかいお二人さん」

?「終わった終わった! じゃー今からサーヴァント二人がかりでそいつん家襲って、鋼兵がマスター捕まえる。これで一人増えて、俺ら最強じゃん」

槍「マスターは何をするんだ?」

?「俺はランサーのマスターで、司令塔だから。司令塔はどっしり構えてるから安全なところで」

鋼「いやちょっとそれは」

?「あぁなに文句あんの?(ジャキン)」

 詰め寄る鋼兵に対し、男は右手に持ったピッケルを見せつけて脅した。

鋼「ぃゃ別になんでもないですぅ……」

?「じゃ早くしろやてめぇら! 俺ちんたらくせーの嫌いなんだよぶっ殺すぞテメーみてぇなガキは! おせーんだよォ!!」

鋼「ヒッ……よ、よしいけバーサーカー! ランサーさんも、よろしくお願いしまぁぁーす!」

槍「はーいはい。参ったねー……オジサン、また変な主引き当てちゃったよ。これで何度目だろうねぇ……」

鋼「なんすか?」

槍「何でもないよ。そんじゃ行きますぜバーサーカーの旦那。っても、アンタは暴れ回るだけか」

バ「■■■■■■――――――!!」

鋼「まったく……帰ったら寿司の一つでも奢ってもらわなきゃ割に合わねッスよ」

槍「あの百円のスシがそんなにいいのかい?」

鋼「ちげぇよ高級寿司なんだよ! 俺は上級国民だから! すしざんまいは高級寿司なの!」

槍「そうかい……(ちっとはまともかと思ったが、こっちもひでぇや)」

バ「■■■■――――!」

 ドゴォォン!

俵「なんだ今の音は! 順平、無事か!? ……しまった遅かったか!」

バ「■■■■――!」

俵「貴様か! 順平を返してもらうぞ!」

鋼「おっといいのかい?」

俵「何を……順平!?」

浜「アッアッアッ……オ、オモシレ……オモシレ……」プルプルプル……

俵「(恐怖のあまり主が錯乱している!?)貴様! その汚い手を離せ!」

鋼「うるしぇぇー! 汚い手で汚い男を掴んで何が悪い!」

槍「おたくに恨みはねぇが、マスターはこっちの手に渡っちゃったのよね。ついてくれば手荒な真似はしないから、言う通りにしてもらえると有り難いねぇ」

俵「ぐっ……わかった。要求を飲もう。ただし、順平の無事は保証してもらうぞ」

鋼「うーん俺完全に悪役だなこれ……まいっか。ミッション終了!」キラーン

槍「次はそうだねぇ……じゃ鋼兵クンは先にそいつ連れて帰ってよ。オジサンはもう一度“見回り”に行ってくるからさ。マスターにもそう言っといてくれ」

鋼「ハイハイハイハイハーイ!!」

バ「■■■■……」

俵(それなら敵はバーサーカーとそのマスターのみ……いずれ順平を取り返すチャンスがあるかもしれん……だが)

バ「………………」

俵(この者、本当に狂化されておるのか? 会話できそうな理性は感じるのだが……まるで何かの機会を伺っているかのような……)

バ「……?」

俵「協力するにあたって伺いたいのだが……お主、名は?」

鋼「歌うおじさん鋼兵でーすよろしくー」

俵「あのランサーのマスターは、どんな者だ?」

鋼「えーあの人? あの人はねぇ……口止めされてるから」

俵(つまりランサーのマスターは用心深い人物ということか。その上こうして人質を取った以上は、相当に狡猾で手段を選ばない相手だろうな)

浜「パクパクパクパク…………」

鋼(汚い……今すぐ離したい……)

俵「ところで鋼兵殿。腹は空いておらぬか?」

鋼「アッ?」

 その後の夜、どこかの屋根の上。

槍「さて……そろそろみんな寝静まった頃かねぇ。今回はみーんな素人だから夜は普通にに寝てる可能性が高いが……さて、どうかな」

 ふと、誰かの気配を感じたランサーの視線が一軒の家に向かう。

槍「ちょっくら見て行きますかね」

 彼は地面に降り立ち、最大限の注意を払いながら周囲の気配を探知する。

槍「やっぱり供給される魔力の質が良くないせいねぇ……気配を掴みにくくなってるよ……参った参った」

 ピュイーンッ!

槍「おっと! はっはぁこりゃまた随分なご歓迎!」

 タンタンタンッ!

槍「フッ! 今度は銃撃かい!? いやぁオジサンモテモテだねぇ」

ラ「また会いましたなランサー殿! 今回は容赦しませんぞ!」

キ「そろそろ誰か来るとは考えていたけれど、思ったより早かったわね」

槍「ふむ……となると、周囲に張り巡らされていた罠はアンタのかい」

キ「まさか全部避けてくれるなんてね……嬉しさで胸が張り裂けそうだわ」

槍「そこの旦那はライダーだな? 消去法だがね」

ラ「その通り! 我こそはサーヴァントライダー! いざ尋常に、勝負でござるよランサー殿! ……二対一でござるが」

キ「キャスターよ。あたし達はこれでやっと対等なのよ。許して頂戴」

槍「はっはっは! 買い被られたもんだねぇ。オジサンそこまで自己評価低いわけじゃないけど、流石に二対一で勝てる自信はないさ……
  サーヴァントランサー、いざ尋常に!」

純「……目ェ覚めちまった。」

坂「加藤さんもすか。いやぁわかりますよね普通」

 外では轟音や発砲音、ビームの不思議な音などが響いている。たとえ魔術師でなくとも、その異常にはすぐに気付くだろう。

純「サーヴァントが戦ってんだよ俺ら守る為によォ! こうしちゃいらんねぇよなぁ!?」

坂「確かに、キャスターさんに任せきりはちょっと、嫌ですね」

純「んじゃ外行くぞォ!」

純「ルルルァイダー!? やってるかぁ!? ってオイなんだアレはぁ!?」

 外へ出てみれば、ライダーは右手の鉤爪でランサーと斬り結んでいる。技量としては互角だが、力で押されそうな場所はキャスターの支援で補っていた。

坂「もう始まってる!?」

 キャスターは浮遊させた魔導書から幾筋ものビームを発射し、ランサーはそれを槍で全て弾いている。ライダーの相手をしながら。

純「ってかやっぱアレファンネルじゃねぇか! ちょキャスター強くね!? キュベレイだろアイツ!」

坂「思ってても言わなかったことを!?」

キ「このままじゃ埒が明かないわね……サカタ! あなたの魔力、使わせてもらうわよ!」

坂「まさか宝具ですか!? まあ、いいですけど、足りるんすか俺なんかので!?」

キ「この街はなぜか大気中に魔力が満ちているから、あなたへの負担は軽いはずよ」

坂「わ、わかりました! それじゃお願いします!」

キ「よくってよ! とっておきを出してあげる!」

 キンッキンッ!

ラ「くっ……ここは我輩、秘められし邪眼の力を開放するしかありませんなぁ! 別にここで倒してしまっても構わんのだろう?」

槍「そういうの、アンタにゃ向いてないと思う……ぜっ!」

ラ「ぐふっ! お、押されてます! 押されてますぞ! キャスター殿ォ! 早くしてくだされぇ!」

槍「ほう……何か始まるみたいだねぇ」

キ「海にレムリア!」

 キャスターが魔導書を傍らに詠唱を開始する。その瞬間周囲の魔力が凝縮し、彼女に集束していく。

キ「空にハイアラキ!」

 坂田が脱力感を覚え、額に汗を滲ませていた。これが宝具を開帳する、ということなのかと彼は理解した。

 同時に彼女の体は宙へ浮き、突如現れた謎の飛行物体の中へ吸い込まれる。かと思えばスッと甲板の上に現れた。

キ「そして地にはこのあたし!」
 ランサーの視線が一瞬、空へ向いた。その隙を逃さずライダーが銃で彼を牽制しつつ後退する。

キ「――『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』!」

 瞬間、エレナを甲板に乗せた謎の飛行物体がジクザクとランサーの頭上へ移動し、極太のレーザーを照射した。

>>51 エレナ× キャスター○
FGOプレイヤーにはバレバレですが誤字なので一応

槍「ガッ……! ぐああああああああ!!」

 レーザー自体の範囲も去ることながら、ライダーが足止めしたのもあり、ランサーは宝具の直撃を受けていた。

 撃ち終わった場所にはもうもうと煙が上がり、その中にいるランサーはあちこちが焼け焦げた状態になりながらもまだ立っている。

槍「いつつ……やべぇなこりゃ……」

 飛行物体から降りたキャスターが坂田の傍らに立ち、その様子を見て戦慄した。

キ「まだ、立っていられるなんて……」

純「間髪入れんな! ライダー! その宝具ってヤツ、使えや! 獅子はなぁ! 兎を狩るのにも鷹を狩るのにも全力尽くすんだよ!」

ラ「かしこまり! やぁぁぁぁるぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

純「いいシャウトだ」

ラ「いくでござるいくでござる!」

 海賊船の砲台部分のみがライダーの背後に次々展開していき、そこから飛び出た砲弾の全てがランサーの元へ殺到していく。

ラ「『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』!!」

槍「なっ……おいおいマジかよ!?」

 ズドドドドドド!! 

ラ「んんwwwwww一方的ですぞぉwwwwwwwwww」

 バシュッ!

ラ「ん? な、なんぞアレは!?」

 しかしてその砲弾は、ランサーの背後から現れた蒼い竜の形をした炎によって全て飲み込まれてしまった。

純「ふざぁ~けんなよォ~! あと一撃だったじゃねぇかおめぇバカかぁ!? ま仕方ねぇ……それもまた人生だ」

キ「何よあの宝具!? あんな力をもったサーヴァントなんて……」

俵「すまぬな坂田殿……今はランサー殿をやらせるわけにはいかんのだ」

坂「藤太さん!?」

ラ「くっ……これは少々まずいですぞ……我輩もそろそろ撤退して……ぐっ!?」

ザクッ!

バ「■■■■■■――――!!」

キ「ライダー!? もしかして、敵はバーサーカーまで引き入れていたの!?」

ラ「抜かったか……純一殿!」

純「ちょオイ待てよ! 何だよあのゴリラふざけんなよ! ライダー、振り払って戻ってきてくれ!」

ラ「無理でござる無理でござる! 槍が胸に突き刺さってヤバイヤバイwwwくぅ~疲れましたwww拙者の人生これにて終了ですwwwwwww」

純「ライダー! 今ふざけてんじゃねーぞコラぶっ殺すぞてめぇ!」

坂「いや今にも死にそうやん!?」

ラ「ちげぇ!」

純「えっ?」

ラ「俺の名はティーチ……泣く子も黙る大海賊、黒髭だ! ただ死ぬなんてつまらねぇ! 最期くらいはよ、海賊らしく奪って犯して、派手に散ってやるさ!」

バ「■■ッ……!」

ラ「喰らいなぁ!」

純「ウッ……」

 バーサーカーの槍に突き刺さったライダー……ティーチの背後に幾重もの大筒が現れる。

純「ウオオォォォォ――――!! やっちまえティーチィィィィ!!」

 純一の右手に刻まれた令呪が熱を伴って光る。

純「そんなゴリラァ!! 俺達のォ!!」

 二画目、

純「敵じゃあねぇんだからよォォォオ!!!」

 三画目も続けて光り、全て掻き消えた。

ラ「『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』ィィ――――!!」

 先程よりも凄まじい爆発音が辺りに轟き、バーサーカーに至近距離で砲弾が殺到する。

バ「■■■■■■――――――!!」

槍「ちょっ、おたく……大丈夫かい!?」

バ「…………」

ラ「ケッ! まだピンピンしてんじゃねぇか! まぁいい……純一ィ、後は頼んだぞ……」

 口端を釣り上げニッと笑ってそう言った後、槍に刺さっていたティーチの体が、光の粒となって宙に消えた。

 ――――---
「おやおや、これはこれは奇遇ですな。デュフフフ。黒髭、参上ですぞー! 緑は敵ですぞー!」

「マジかぁ!? わりぃけどよ! その緑ぶっ殺すの俺だから! マジあの黒豚野郎やっちまおうぜ二人でよぉ!」

「これはこれは、気の合いそうなマスターですなぁ! 拙者のことが大好きな献身的なおにゃのこマスターなら尚の事良かったのですが……この際贅沢は言いますまい!」

「俺は加藤純一……ニコ生のチャンピオンになる男だぁ! よろしくなライダー!」
 ――――---

 純一の脳裏に蘇ったのは、つい一日前に彼が目の前に現れた時の会話だった。

「わかったぜライダー……いやティーチ。俺がおめぇの分まで生き延びて、必ず聖杯手に入れてやらぁ……さんきゅな」

豊「なんやなんや騒がしいな……ってえぇ!?」

セ「マスターの料理がクソまずいかと思えば次は、何ですかこれ」

ア「なんだか騒がしいわね。あら……面白いことになってるじゃない♪」

純「もこう!? てーめぇオイ参加してたんなら早く言えやバカタレが! 腐ったミカンがこの野郎!」

豊「加藤さん!? いやホンマすんません……すんませんすんませんすんませんすんません」

セ「あそこに立っているのはまさか……」

キ「ええ。三体全て敵サーヴァントよ」

 こちら側にいるのは豊、坂田、純一にセイバー、アサシン、キャスター。

 対してあちらにいるのはランサー、バーサーカー、アーチャー。三人共マスターの姿は見えない。

 キャスターがその状況を説明したところで、豊は頭を抱えてクソデカ溜め息を吐く。

純「どうやら…………役者が揃ったようだなぁ? 」

豊「ワイが気付かん間に……なんか嫌やわぁ。置いてけぼりにされた気分ですわぁ……」

セ「そりゃあなたずっと引き篭もってましたからね!? 自業自得ですよね!?」

キ「キャスターよ。あなた達、今までよく無事だったわね」

ア「えぇ、もこうちゃんのお陰でね♪」

豊「ウフッ……いやぁ、そんなことないっすよぉ……」

純「きっしょ……死ねェgmがコノヤロウ人が別れを惜しんでる所水差しやがって!!」

セ「まったくですよもう! 今日だけで何度吐き気を催したことか……こフッ!?」

豊「待てや! ヴォイ! 何でいきなりそこまで言われなきゃいけないんやゴラァ!」

坂「まあまあ落ち着いて……」

キ「仲が良いのは結構だけど、それどころじゃないわよ!」

槍「なぁアンタ……鋼兵はどうしたんだ?」

俵「寿司で眠らせた」

槍「どんな寿司だよ。まあ詳細は言わなくていいけどさ」

俵「とりあえず二人とも、宝具を受けておきながら五体満足で無事とは結構! だが今の状況で加勢されるのは不利すぎる……撤退するぞ!」

槍「あぁ……頼むわ。オジサンもう動けないんで……」

バ「■■■■■■――!」

槍「ありがとねぇバーサーカー君。ただ、オジサンもういい歳だからもう少し優しく扱ってもらえるといでででで!!」

 バーサーカーがランサーを抱え、藤太と共にその場から立ち去る。

セ「逃がしません! 敵が深手を負っているこの好機!」

 ピュンピュンッ!!

セ「あっ! 矢が! 矢が降ってきて前に進めません! マスター、肉壁になって突破口を開いてください!」

豊「ふざけんな! しばき倒すぞこのクソガキが!」

セ「くっ……この矢さえ無ければ大勝利は目前なのに!」

キ「矢を弾けばいいのね! まかせなさい!」

 ピシュンピシュン!!

セ「何ですかそのビームは!? しかし助かりました! 速攻で片を付けます!」

 シュタタタタッ!!

豊「はえぇ! なんやアイツあんな凄かったんか!? いけセイバー不意打ちや! 真の強者は不意打ちを外さない」

純「てめぇ中々いいサーヴァント持ってんじゃねぇかオイ! 刀とかかっけぇ……」

豊「そういえば加藤さんのサーヴァントは何なんすかー?」

純「死んだわボケ!」

坂「ライダーでしたけど、今さっきやられちゃったんす」

豊「ほーん……って坂田さんやん」

俵「くっ! 敵もなかなかのやり手ではないか! 俺の矢ではあの剣士を捉えきれん!」

槍「仕方ないねぇ……俺はアンタからもらった兵糧でちっとは動けるようになった。あのセイバーらしき剣士ちゃんにはオジサンが当たろう」

バ「■■■■――――!!」

槍「お前さんが代わってくれるのかい。涙が出るほど嬉しいねぇ……じゃ作戦変更だよバーサーカー! セイバーを引き止めてくれ。俺はこっちでアレの準備を整えるから、合図したら避けてくれ」

バ「■■―!」

 ドドドドドドド…………

 セイバーのもとに高速で接近するのは、赤い闘気を纏った巨漢のサーヴァント。その手には大槍が握られ、頭には特徴的な兜飾りが垂れている。

セ「おや、あなたが私の相手ですか……」

バ「■■■■■■――――!!」

セ「え? マスターがハズレだった? その気持ちわかりますよ~……私のマスターもハズレ中のハズレで……帝都の戦いとは大分勝手が違いますよ……」

バ「■■■■……」

セ「ふふっ、これ以上はやめておきましょう。情が移っては剣が曇ってしまう。戦場に事の善悪なし……ただひたすらに斬るのみ!」

バ「■■■■■■■■――――――!!」

純「あの頭のと方天画戟! どう見ても! 呂布だよなぁ!?」

坂「呂布って、あの呂布ですか!?」

豊「はぁ~……気付かんかったわ。あの時は余裕が無くてなぁ」

純「ハッ! バカがよ!」

坂「あのセイバーは……沖田かなぁ。青い袴が妙にそれっぽいんだけど」

豊「まさかお前! 沖田があんな美少女なワケちゃうやろ!」

坂「いや確かに僕も男って先入観はあったっちゃあったよ。でもなぁ~……何があるかわからんしなぁ~……」

純「ま別にいいだろ男でも女でもよ! おめぇらは性別一つでコロッと手のひら返すのかぁ!?」

豊「いや返しますよそんなん! 重要な要素じゃないっすか!!」

キ「三人ともうるさいわよ! 今は目の前の戦いに集中なさい!」

「「「すんません」」」

セ「ぐっ……以前より力が増している! コンディションは前より悪いはずなのに!?」

バ「■■■■――――!」

セ「ですが私も剣士の端くれ……ここで負けるわけにはいきません!」

 ザシュッ!

セ「ぐあっ!」

 まともに攻撃を受けて、セイバーの体がふらつく。しかしそれも一瞬のこと。口端に流れる血を吹き、呼吸を整えて反撃する。

セ「はぁっ!」

バ「■■――!」

セ「長期戦は分が悪いですね……フッ!」

 距離を取り、剣を構えるセイバー、沖田総司。剣先に集中させた意識を、更に研ぎ澄ませる。

セ「我が秘剣の煌き……受けるが良い!」

 その気配を察知し、対するバーサーカー、呂布も腰だめに槍を構えて迎撃の準備をする。

セ「一歩音超え……二歩無間……」

 呂布が構えるのが後が先か。沖田は瞬きするほどの間に再び距離を詰め、その勢いを殺さぬまま。“まったく同時に”三つの平突きが放たれた。

セ「三歩絶刀! 『 無明――三段突き(むみょうさんだんづき)』!」

バ「■■――――――!!」

 プンッ!

 瞬間、巨漢の胴に三つの風穴が開く。そして彼はついに地面に仰向けに倒れた。 

豊「なんやあの厨鯖ァ!!?」

セ「やりましたー! 沖田さん大勝利ー! っと、敵はまだいたんでした!」

 セイバーは遙か後方に立つランサーとアーチャーの姿を見やる。今アーチャーの攻撃は全てキャスターが弾いてくれているので、実質敵は一人である。

槍「もう遅いっ! 標的確認、方位角固定――」 

セ「しまっ……」

槍「『不毀の極槍(ドゥリンダナ)』! 吹き飛びなぁ!!」

 ランサーが放った長槍が、炎を纏い凄まじい速度でこちらに飛来する。これが敵の宝具であることは明白だが、セイバーに避ける術はない。

 三段突きの直後というのもあるが、バーサーカーから受けた傷も生半可なものではないからだ。

セ「くっ……」

キ「『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』!!」

 しかしセイバーに当たる手前で、投擲された槍は円盤状の飛行物体によって阻まれた。

セ「キャスターさん!?」

キ「ぐっ……流石にこれは厳しいわね」

 飛行物体の裏側では、キャスターが額に汗を滲ませながら手を前に突き出していた。

 今は円盤状のそれを回転させ盾のようにしているが、元から対宝具を想定していない物体だ。いつまでも保つわけがない。

キ「サカタ達へのアーチャーの攻撃も同時に防がなきゃいけないし……まったくとんだ重労働ね……ってあれ?」


俵「撤退だ! バーサーカー殿には悪いが、最早勝負にならん!」

槍「同感だねぇ。彼には頑張ってもらっちゃったけど、結果的に囮にして逃げた形になっちゃったね……今度こそ本当に動けないよ」

俵「気にするな! たまには男を抱えるのも悪くないな! はっはっは!」

キ「はぁ……はぁ……敵の攻撃は、収まったみたい」

セ「えぇ。ですが肝心の敵が、もういません。逃げられました」

キ「バーサーカーを仕留めたのよ。充分じゃない」

セ「ですが……敵は一度見逃せば今以上の力と対策を練って襲ってきます! ここで仕留めなければ……」

豊「おいおいおいおい~セイバーちゃん~ちぃと急ぎすぎなんとちゃうか? それじゃ元も子もあらへんで?」

純「これが呂布かぁ!? おめでけぇなぁ!?」

キ「ちょっと二人とも! 迂闊にそいつに近づかないで……」

バ「■■!」

純「え、なになに!? 何だよオイ!」

 バーサーカーの顔を覗きこんだ純一が、丸太のような腕で掴まれる。

キ「言わんこっちゃない! 星よ!」

純「待て!」

キ「!?」

純「目を見りゃわかる……こいつは、もう敵じゃねぇ」

バ「■■■■……」

純「おう! 何言ってっかわかんねぇけどやってやるよ!」

 次の瞬間、純一の手の甲に三画の令呪が刻まれた!

純「わぁ!?」

キ「どういうこと!?」

セ「もう何でもありじゃないですかー!」

 一見何でもありのように思えるが、これは呂布のスキル『反骨の相(B)』が特殊な条件で作用したものだ。

 元から一人の君主を抱かぬ気性とはいえ、ここまで早くこのスキルを発動して裏切ったのは最速記録と言っていい。

 しかし今それをきちんと口で説明できる者は、この場のどこにもいない。

豊「バーサーカーの元マスターは……なんやよーわからん男やったな」

坂「鋼兵さんですよ」

純「鋼兵!? 演奏してみたァ! 好きですかァ!?」

キ「そういうのいいから、ともかくこれで、敵勢力の力が大きく削がれたと同時に、こちらが有利になったのは確かね」

純「マジかよぉオイ! よろしくなァ汗明! あっいや呂布」

呂「■■■■――――!!」

セ「あっはは! なんだか、少し嬉しそうですね」

純「セイバーはおめー笑い声アレだな。しかめまどかに似てるな!」

セ「ふふっ、よく言われます。斬っていいですか?」

坂「ははは……まあ、少しはマシになったんでしょうね」

豊「ところでアサシンはどこいったん?」

純「あぁ、あの色っぺぇねーちゃんか? いつの間にかいなくなったなそういや」

?「で……なに? 起きたらいつの間にかランサーはボロボロでェ、鋼兵は令呪もサーヴァントも失ったって?」

鋼「ヒッ……ヒ、ハイ……」

?「ふざけんじゃねーよバカがよゴミがよ!」ザクー

鋼「ギャアアアアアアアアア!!? い、イダイイダイイダイイダイイダァァァァイ!!」

?「バーサーカーのいねぇおめぇ単品に価値なんであっと思ってんのかクソガキがコノヤロウ! 9対1どころか10対0なんだよオメェはよ!」

鋼「ゴメンナサイゴメンナサイ!!」

?「過ぎたことはどうしようもねぇからよ。テメェはとりあえずあの土竜みてぇなガキ見張ってろ……それ以外のことはすんな」

鋼「サ-センサ-セン……」

?「オレは神に選ばれてるからよ、ここで待ってるだけでも俺に幸福を与えてくれるわけよ。オメェみてぇな選ばれなかったヤツは、黙って死んどけや」

鋼「グギギ……ワカリマシタ……」

?「じゃあとっとと行けや。くれぐれも俺の場所は言うんじゃねーぞ」

俵「なぁ、そろそろよいか?」

ラ「すまんねぇマスター。今日の収穫は敵サーヴァントを一騎倒しただけだ」

?「あぁ!? マジで言ってんの!? あのよぉ、オレはよぉ、すぐにでも聖杯で願い叶えたいワケ。わかる?」

俵「それだけ敵が強かったというだけだ。無茶を言うな」

?「使えねぇなぁどいつもこいつも! オメェも実は本気出してなかったんじゃねーんか!?」

ラ(ふぅ……こいつぁまた難儀だねぇ)

?「とにかくよ、次はねぇからな? オレの辞書に敗北の文字はねぇの。お前ら刻んだりしたら承知しねぇぞ!?」

俵「ランサー殿は今消耗しきっている。しばし休憩が必要だ」

?「……まいいや。要は勝てばいいんだよ勝てば。今度こそ頼むよォ? んじゃ俺は二度寝するわおやすみー」

ラ「はいはい……まったく人使い荒いねぇ」

ア「気配を追ってここまできたわいいものの……困ったわねぇ。肝心の敵の行方がわからないわぁ」

 ガタガタガタ……!

ア「あら? あそこの小屋から物音がするわねぇ。こんな夜に、一体何かしら」

 ガチャッ

浜(モゾモゾ……)

ア「まあ大変! こんなところに手足を縛られた男の人がいるなんて!」

 ブチッ! シュルシュル……

浜「ブハッ! シュヒー……シュヒー……」

ア「わたし、偶然ここを通りかかったのだけれど、一体何があったか教えてくれるかしら?」

 アサシンの目が、縛られていた男の手の甲に行く。そこには紛れも無く三画の令呪が刻まれていた。

浜「そ、それはですねぇ……」

ア「誰かに口止めされているのね……可哀想に。でも大丈夫! お姉さんがなんとかしてあげるから!」むにゅっ

浜「ヒョッ…おほ^~」

ア「私はマタ・ハリよ。お兄さん、あなたのお名前は?」

浜「は、はまっ……浜崎……ジュッ、ジュンペ……順平で……です……フッ、フフッ」

 豊満な胸を押し付けて順平を抱擁し、勃起させるアサシン。彼女が自分の真名を敢えて明かしたのは、日本におけるマタ・ハリの名の知名度が低いのを考えてのことだ。

 だが相手が相手な上、聖杯戦争の参加者も殆どがマタ・ハリの逸話など知らないので、その考えはあまり意味を成さないのだが。

ア「ねぇ順平、誰にこんなことされたの?」

浜「しょ、しょれは……サノ……佐野智則……」

ア「サノ? それがあなたをこんな目に合わせた人の名前なのね?」

浜「ハンドルネームはウナちゃんマンって言って~……まぁその~……有名な人みたいでスゥゥゥ……」

ア「そう。その人は他に誰か、連れていたの?」

浜「えーとですねぇー……こーへーって歌い手の方とですね、はい。まぁ俺は歌い手ってそんな知らんのやけど有名な方らしくて。ほんでー……」

ア「他には!? 他にこう、強い人とかはいなかったの?」

浜「ビクッ! 他にはぁ、えっと……らんさーさんと、ばーさーかーさんですねぇ……」

ア「あなたには、誰か仲間とかいなかったの?」

浜「エッ……それは……」

 マタ・ハリは(直球な質問だったかしら)と思い言葉を濁そうとするも、当の順平はマタ・ハリがサーヴァントだなどとは全く気付いていない。

 それどころかおかしな妄想まで繰り広げていたのだが、仲間という言葉を聞いた途端、硬直してしまった。

浜「ナカマ……ナカマなんやろか……うーん確信が持てんわ……」

ア「仲間というか、連れでもいいわよ」

浜「俵藤太さんっていう連れがいまスゥゥ……」

ア「そう! それでその、あなたを閉じ込めた張本人はどこにいるか、わかる?」

浜「あの電信柱の角を曲がったアパートにィ……いますかねぇ……」

ア「そう、ありがとう♪ チュッ!(デコキス」

浜「おほ^~……マタ・ハリさん! 君の事が好きだ! 十分ニチィ……パワーもらえましたよォ ングゥー!」

ア「ありがとう♪ お気持ちだけ受け取っておくわ! それじゃあ順平くん、またどこかで!」

浜「待って! ちょ……」

 素早い身のこなしで、アサシンのサーヴァントマタ・ハリは小屋を出て行った。慌てて小屋を出て辺りを見回すも、人影一つない。

浜「まあええわ……とりあえず逃げよう! 逃げてマタ・ハリさんと再会して……コイニハッテンシテ……」

鋼「あれ……小屋がもぬけの殻だ……ヤバイ! あのモグラァァどこ行ったんだよクソォォォォ!! ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!」

俵「ほう……順平は無事逃げてくれたのだな」

鋼「ハッ!? アーチャー、いつの間に!?」

俵「そうとわかればお主にもう協力する義理はない! フンッ!」

鋼「アッ!?」

俵「さて、俺は順平を探しに行くとしよう」

槍「おたくのマスター、開放されたんだな」

俵「ランサー殿!? すまぬ、後生だ! ここは見逃してもらえぬか!?」

槍「いやぁ~普通なら止めるところなんだけどねぇ。オジサン今すごーく消耗してて、休まなきゃいけないんだよね……はぁ~仕方ないなぁ」

俵「恩に着る! ではすまないが、俺は順平を探しに行く! 達者でな!」

槍「あいよ……やれやれ、オジサンも焼きが回ったかねぇ……まいいや。さてと……」

ア「……ということらしいわよ♪」

純「佐野智則ィ!? あいつ参加してたのかよざけんなよブタ箱ブチ込んどけやあんなgm!」

坂「まずいやんその人ォ俺噂しか知らんけど多分躊躇いなく人殺しとかしますやん!」

セ「お二人の反応を見る限り、相当酷い相手みたいですね。まともな人は坂田さんだけですか……はぁ」

豊「やっぱ俺って頭おかしいんかな……」

純「今気付いたのかよ自己愛性人格障害がよォ」

豊「ちゃいますよ俺割りとまともな方っすよ」

キ「しかし、アーチャーのマスターが開放されたとなると敵サーヴァントは最早ランサーただ一人ね。いいわ。万全な状態で挑むため、今日は休みましょう」

バ「■■■■――――!!」

純「おう! そうだな呂布ゥ! おめぇ傷だらけだからよ……今から万全の状態になって、完璧な勝利を目指すんだよなぁ!?」

セ「って、また宿探しですっか……はぁ」

 バーサーカー陣営。

 驚異的な回復力でセイバーから受けた傷を全て塞いだバーサーカーが、純一の傍らで河川敷に座り込んでいた。

純「お、この河川敷いいじゃねぇか! 水もあるし風通し最高でよぉ! ここで暮らそう。一生暮らせるわ」

バ「■■……?」

純「なんてな。ハハッ。しかし呂布よぉ、お前は何で、俺なんかを選んだんだ? いや、答えなくていいわ。鋼兵よりマシとか言われても嬉しくねぇからよ」

バ「…………」

純「俺はよ、昔は仕事しながら配信やってて、タレント紛いのことやってる実況者の悪口言ってたんだ。けどよ……
  配信者としての仕事がめっちゃ舞い込んできて、その比重が多くなってきてよ。いつの間にか俺は……自分が悪口言ってた、女にキャーキャー言われるヤツらと同類になってたんだ」

バ「■■……」

純「こんなあちこち行って昔のファン裏切ってるようなヤツのよ、どこか良かったんだ? ニコ生のチャンピオンになるとか言いながらニコすら半分生裏切ってんだぜ?」

バ「■■――!(バンバン!)」

純「そういやおめぇも裏切り者だったな! じゃ俺達似た者同士だ! 短い間かもしれねぇけど、よろしくなっ!? うんこちゃんこと、加藤純一をな!」

バ「――応ッ!」

純「お前……ちゃあんと返事できんじゃねぇかぁ! 毎日練習して英語も話せるようになろうぜぇ!?」

バ「■■――!!」右腕を前に突き出す。それを見て純一右も腕を突き出して、呂布と互いの拳をガシリと突き合わせた。

 三国最強の武将と白ごぼうのような純一の手ではあまりに大きな差があるが、それでも二人の波長が合ったせいか、不思議と違和感はなかった。

純「ははっ! …………ありがとよ話聞いてくれて。そんじゃ明日、頑張ろうぜ。そんでセイバーとかキャスターにも勝って決着つけてよ、俺達で聖杯もぎ取ろうなぁ!?」

バ「■■■■――――!!!」

 キャスター陣営。

キ「正直、こんなことになるとは思っていなかったわ。今日は驚きの連続」

坂「俺も驚きました……知ってる実況者とか炎上配信者とか一杯いて……」

キ「そうね。あたしも正直、とても驚いたわ。二十一世紀にはあんな人間が多いのかしら?」

坂「ぶはっ! イヤイヤイヤ! あんなの極一部ですって! 配信界にはもっと、俺なんて比較にならない大物がいっぱいいて……」

キ「冗談よ。サカタは、今どんな立場なのかしら?」

坂「俺はまあ……夢に一歩近づいたってところでしょうか」

キ「含みのある言い方ね……でも、頑張りなさい! 善行を重ねれば、きっとあなたもマハトマを感じられるようになるわ!」

坂「あぁ、おーきにな! ……いえ、ありがとうございました」

キ「そんなにかしこまらなくてもいいのに」

坂「いや、そんな……」

キ「ところでサカタ。余裕ができたら訊くけど……あなた、聖杯にかける望みは何?」

坂「それは、その……」

キ「じゃあ質問を変えるわ。あなたは一体、なぜこの聖杯戦争に参加したの?」

 その質問は、一つ前の質問とほぼ同義のものだ。この企画への参加理由があるとすれば、それば間違いなく賞金の一億円か、歪んだ承認欲求でしかないのだから。

坂「実は……この募集、メンバー全員のところにきたんですよ。ほぼ強制参加させるような文面で……」

キ「つまり、あなたの所属する組織の中から一人、絶対に参加者を選ばなきゃいけなかったってこと?」

坂「まあそれでー……命の危険があるから、俺が参加したっていうか……そんな感じっす」

キ「へぇ? あなた中々肝が座ってるのね」

坂「まさかぁ。単に危機感が無かっただけですよ。賞金も四人で山分けにする予定でしたし」

キ「山分け? そしたら命を賭ける見返りが二千五百万にまで落ちるけれど、あなたはそれでいいの?」

坂「ははっ……それもそうだなぁ! あー失敗した! 山分けとか言うんじゃなかった! はっははははは! じゃ聖杯の願いは、億万長者になりたいとかでいいかな!」

キ「よくってよ。そういう素直な男の子、嫌いじゃないわ」

坂「ははっ……それはどうも。それじゃ今度は、キャスターさんの願いも教えてくださいよ」

キ「それもそうね。あたし達は対等だもの。そこは公平にいくわ」

坂「鋼兵さん?」

キ「そういうのはいいから! とりあえずあたしの真名を明かすわ……コホン」

坂「ゴクリ……」

キ「あたしの真名はエレナ。エレナ・ブラヴァツキーよ」

坂「知らない……呂布とか沖田はわかったけど知らないなぁ……」

キ「ま、まぁあなたは日本人だものね! 外国の歴史なんて、興味が無ければ触れようがないものね! いいのよ、別に気にしていないから!」

坂(めっちゃ気にしてそうやん……)

キ「あたしはね、聖杯にかける願いなんて考えていないわ。ただのその原理を解明して、徹底的に研究したいとは思っているけれど」

坂「さっき数え切れないくらいあるとか……」

キ「それは本心よ。ただ、何を言うかがまとまっていないから、考えていないと言っただけ。願いそのものが無いとは言っていないわ」

  ところで、ランサーを倒した後の作戦だけど……やはりまずはバーサーカーとセイバーの相打ちを狙おうと思うのよ」

坂「ならそこは俺に任せて下さいよ。上手いこと誘導するんで」

キ「任せていいの?」

坂「最後くらい、役に立たせて下さい」

キ「ふふっ……よくってよ。サカタ、此度の聖杯の行方は、あなたに任せます!」

 セイバー陣営
豊「なんか、ほとんど何もせずここまで来てもうた気がするけど、これで良かったんかなぁ……」

ア「確かにちょっと刺激が足りなかったわねぇ。でも私、争い事はあまり好きじゃないわ」

セ「私自身が戦った相手も、結局呂布さんだけでしたからね」

豊「ちゅーかセイバー……というか沖田総司ィ」

セ「なんですかー? 不愉快なんで勝手に真名呼ばないで下さい馬場豊さん」

豊「真名返しはやめろやお前ェ! 馬場豊は別にィ……本名ちゃうからなホンマにお前ェ……ええかげんにせぇよマジで!」

セ「煽りがワンパターンになってきましたよ、豊さん?」

豊「くっ……名前呼びをちょっと悪くないなと思っとる自分が悔しい……」

ア「ところでもこうちゃん♪ あなたは、聖杯にどんな望みを叶えてもらうつもりなの?」

豊「そうやなぁ……金はぁー……手に入るしィ……イケメンにでもしてもらおうかな……いや待てよ? 美容整形なんて一億ありゃ余裕だし……
  せや! 日本のアニメーターとかイラストレーターとかの待遇を改善してもらおうや! 国からの補助金もがっぽり貰って、相場を海外と同様にすればええねんて!
  そういうのがなりたい職業ベストワンになっちまえば、ワイみたいな人間がこれ以上増えることもないはずやで…………」

セ「自覚はあるんですね……マスター。でも、いいと思いますよそれ。そうすればきっと沖田さんの活躍も今以上に増えるはず! 沖田さん大勝利ー!」

ア「なるほどね。そういうのも趣味への投資なのねー」

豊「そういう二人の願いは、何なん?」

ア「うーん。そうねぇ。永遠の若さ……なんてのは在り来たりかしら?」

豊「ま、ええんちゃう? ……じゃ次はセイバーの番やぞ」

セ「私ですか。私は……最後まで、戦い抜きたいです」

豊「はぁ? 何お前マゾなん?」

セ「そういう意味じゃないですよ! ただその……私は生前、どうしても果たせなかった願いがあるんです。だからその時に戻って、もう一度戦いたい。戦い抜きたいんです」

豊「ほーん……お前、生前親しかったヤツはおるんか?」

セ「え? それはいますけど。それがどうしたんですか?」

豊「お前がどんな人生歩んできたかなぞ俺は知らん。でもなぁ……お前と親しいヤツはそれ聞いて喜ぶんか?」

セ「あっはは……それもそうですよね……申し訳ありません。変なことを言ってしまって。それとありがとうございます……そんな事言われたの、初めてですよ」

豊「気になったんやけど、土方とか近藤は、どんなヤツだったん?」

セ「隊長のことを呼び捨てで呼ぶのは感心しませんが……そうですね。土方さんは素直じゃなくて、あとどんな場所も自分がいたら新選組だって言うような人です」

豊「なんやそいつ……じゃあ俺それ真似するわ。俺いる場所も全部俺の王国にするわ」

セ「あなたのいる時代に生まれなくて心底良かったと、今思いましたよ」

豊「あーはいはい。言っとけ言っとけ。でも俺らの時代もそんな悪いモンやないで。娯楽は多いし、人も多種多様になっとるからな」

セ「ええ、まあ一回行くくらいなら! その時は、是非案内よろしくお願いしますっ!」ニコッ

豊「(ドキッ)おぅおおおぅおぅ……ま、任しとけや」キュンッ

セ「いいい今鳥肌が! 鳥肌が立ちましたアサシンさん!!」

ア「あらあら♪ 若いわねぇ二人とも」

豊「アサシンさんも若いじゃないっすか充分。歌舞伎町でも一番取れますってマジでェ」

ア「ありがとう。それじゃあもう遅いし、そろそろ休みましょう」

豊「おーうお休みー」

 翌日。ランサーが待ち構えていたのは柳洞寺と呼ばれる寺の奥地だった。そこに参加者全員が集まり、さぁ戦いだと武器を構えた時。

槍「降参。オジサン流石にサーヴァント四人相手に大立ち回りできる大英雄じゃないんで」

 ――ええええええええ~~~~っ!!?

 全員が拍子抜けしたが、考えてみれば当然だった。彼はキャスターの宝具でほぼ瀕死にまで追い込まれたのに、それに加えて三騎のサーヴァントとくれば勝ち目がないのは道理。

槍「というわけでさ……もう、よくない? ていうかこれ聖杯戦争だよねぇ。何でみんなそこまで団結しちゃってるの?」

セ「考えてみれば、それもそうでした! グランドをオーダーしすぎて色々麻痺しちゃってますよ私達!」

槍「それに昨日の傷がまるで癒えてないし、オジサンとてもじゃないけど戦える状態じゃないのよねぇ……今にも魔力が尽きそうなんで、それじゃ」

 ひらひらと手を振って、ランサーはどこかへ歩き去ってしまった。それを見て一番に声を上げたのは馬場豊。

豊「なんやそれふざけんなや! お前もうそれ……ジャンケンでええやん!」

ア「あら本当? それなら私にも勝ち目がありそうね♪」

純「ざぁーけんなよ慣れ合いとか俺の一番嫌いなことだし、もう暴れ回って皆殺しにしろやバーサーカー! この空気変えようぜ俺達二人でなぁ!?」

バ「■■■■――――!!」

キ「ちょ、ちょっと落ち着いて! 何か他に方法はあるはずだわ!」

坂「殺し合いとかそういうのは僕あんまり……」

?「――そこまでです」

 コッコッコッ……

純「ッ!」

夏「こんにちは。株式会社代表取締役の、夏野剛と申します」

 夏野と名乗った壮年の男性は、漆黒の神父服を身に纏っていて、いかにも大物らしい雰囲気を醸し出していた。

夏「今回の聖杯戦争が盛り上がらなかったのは、偏に私の監督役としての力不足でした……大変申し訳ありません。何分、初めてなもので……」

純「まあ場数少ないのは仕方ねぇけどよ、そもそもルールがおかしいだろサーヴァント殺さなきゃダメとかよぉ! 俺にとってもうこいつは道具じゃねぇ家族だ!」

バ「■■■■――!!」

夏「必要以上に感情移入してしまったのも、過ごした時間のせいなんだろうね。でもそれじゃあダメなんだ。程よく減って、程よく殺し合わなきゃ」

純「ざっけんな糞野郎! 勝手に巻き込んで勝手にルール決めてよ……おめぇのせいで実況半端になっちまったじゃねぇか!」

夏「マスターが素人でもサーヴァントが全力で戦えるよう魔力濃度の高い環境の箱庭も用意して、公共施設や宿に人員も配置したってのに、全部台無し!
  でも大丈夫! こうなった時の保険は、きっちり用意していたからね!」

セ「あの男……何かするつもりですよ明らかに!」

夏「さぁ出ておいで。最後のサプライズの立役者くん」

鋼「はいみんなぁぁぁ!! こんにちわぁぁぁぁ!! これから俺がさぁ、夏野に復活させてもらう予定だから、見とけよ見とけよー?」

 夏野の傍らに現れた鋼兵が、ノートパソコンを片手にポーズを決めていた。

夏「君には色々、世話になったからね。ここで恩返しをしなければと思ったんだよ」
 監督役である彼が懐から何かを取り出した。それは黄金に輝く杯。その中には真っ黒な液体が波々と注がれている。

ア「! まさか、あれ……」

キ「聖杯……!」

鋼「それで! それで俺に何をくれるっていうんだ! まさか新しいサーヴァント!? それとも監督役の権利か!? もらえるなら……何でも……何でももらうから!」

夏「言ったね? 今度こそは……自分の言葉に責任を、持ちなさいっ!」ズブッ!!

鋼「オゴォッ!?」

 夏野が手に持った聖杯らしき物体は、鋼兵の胴体の中心に突き刺すようにねじ込まれた。

鋼「なに、ヲぉぉ!? あガッ、スシッ、アッアッアッアッアッアッアッ!! アァァァァァァァァ!!!? 増えるっ! ふエりゅうウ―――――!!?」

 その瞬間、鋼兵の体はボコボコと泡立つように膨らみ、醜く肥え太った肉塊へと変わっていく。

鋼「ィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ~ッ!!!」

 つんざくような耳障りなシャウトが彼の声なのか別のものの声なのかすらもわからなくなり、最早“それ”にニコニコで兄貴と呼ばれた大物歌い手鋼兵の面影はない。

鋼「おぉォォレぇぇエはぁアア!! 人気者デぇえエエ!! さイきょうデェェ……頭モいイのォォおお……おマエらとはぁァァ……チガァあうぅぅぅウウウ……」

 そこら中から手足とギョロギョロした目が生え、太った体の表皮は緑色に染まっていき、徐々に名状し難いおぞましい巨大な怪物へと変貌していく。

 怪物は寺の上に乗っかり、格式高い建築物の全てを残さず飲み込んでしまった。

坂「ひ、うっ……ウエッ……オロロロロロロ!!」

セ「これは窮地ですが……一言言わせてもらうなら、とりあえずキモいですね……」

豊「ぎゃああああああああ!! 俺っ、俺ホントマジ無理こういうの! グロ系のゲームとか絶対実況せーへんわ! ちょ、なんとかしてぇぇ!!」

純「哀れな野郎だ……これが欲に溺れ切った無職の末路かよ……」

ア「なんだかここまで来ると、どうしようもないわね」


夏「大事な超会議の前日に深酒して醜態を晒し、勝手に引退宣言したまま会員費だけ泥棒したお礼、たっぷり受け取りなさい……」

鋼「アッ……じょオォキュううゥゥ……こクミんゥゥ……」

夏「さぁどうです皆さん! これからラスボス対サーヴァント達の、最高のショーが始まりますよ! 見ていて下さい!」

鋼「ふシュるるル……」

夏「鋼兵さん。ここで全てのサーヴァントを倒せば、永遠にあなたを保護し、最高の歌い手として復活させて差し上げましょう」

鋼「……ッ! おレは……オぉぉれはァァあ! もウいチドォォ!!」

純「興奮してぷるぷるしやがった! きんもー! エメラルドモンスター、略してエメモンだな」

鋼「エメェェェ!!」シュパァァァ!!

 最終的に全長二十メートルほどまで膨らんだ肉塊から生えた全ての腕が触手のようにしなり、サーヴァントやマスター達めがけて殺到する。

坂「うっ……うぐっ……怖い……怖いよぉ……」

キ「サカタ! しっかりなさい! 目の前に敵がいるのよ!」

坂「ご、ごめんなさい! でも、でも……!」

豊「クトゥルフ系っちゅうんかこういうの……はぁ……直視したくないわぁ」

鋼「チャいなァァァ!!」

セ「せいっ! マスターは退がって! ふっ! 坂田さんのことも頼みます!」

 触手を全て刀で斬り払う沖田が、豊に呼びかける。

豊「わかった! ほれ肩ァ」

坂「ハァ……ハァ……はい」

バ「■■■■―――――――――!!!」

 バーサーカーもランサーと一緒に槍で触手を斬り払い、背後の純一を守っている。

ア「えーいっ! やっ! ……ふぅ、キリがないわね」

 アサシンはサーヴァントとして得た遠距離攻撃スキルで対応するも、射撃は横に薙ぎ払える斬撃と違って点の攻撃になってしまうため、他のサーヴァントより苦戦している。

キ「出し惜しみはしないわ! 『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』!」

 円盤状の飛行物体に乗り、エメラルドモンスター……エメモンの頭上まで飛び、レーザーを照射する。それによってエメモンの肉体の半分以上は吹き飛んだ。

セ「やりました! これならいけそうです!」

 しかしレーザーで空いた穴は即座に泡立ち、繋ぎ合わさって再生してしまう。

キ「はぁ……はぁ……これが、聖杯の力なの!?」

純「そのようだなだが俺には考えがある。こういうタイプの敵はよ、大抵どっかに核があんだよドラゴンボールのセルみてぇにな。
  だからその核を破壊すりゃあこの気色悪ィエメモンも脳みそごと跡形も残さず爆発四散すんだろ。できっか?」

キ「その核の位置がわかれば苦労しないわよ!」

セ「ですよねー」

キ「でもこの怪物自体聖杯から生まれたものだし、聖杯が無くなれば形が保てなくなるでしょうから、考え方そのものは否定しないわ」

純「ありがと」

ア「なら当面の問題は、核の場所ね……あれに誘惑が効けば話は早いのだけれど……」

豊「ハッ……そういえば……」

セ「多分、試す前に触手に絡め取られちゃいますね」

純「核のありそうな場所……どこだろうなぁ……」

豊「ケツやっ!!!」

セ「は?」

豊「だからケツやって! 鋼兵のコンプレックスはケツに集束しとるんや!」

セ「この期に及んで何をワケのわからないことを……あんな肉塊にお尻も頭のあったものじゃないでしょうが!」

純「いや……だが聞いたことがあるぞ。あの鋼兵とかいうgmは、自分のウンコを有料会員しか見れないブログに載せたとかなんとか」

セ「ええっ!? それ、完全に頭おかしい人じゃないですか!?」

ア「いいえセイバーちゃん。世の中にはそういう性癖の人もいるのよ」

キ「もしあれにまだ人間としての記憶や個性が残っているのであれば、その要素がどこかに顕現している可能性も……いえ、でも馬鹿馬鹿しすぎるわ……いくらなんでもそんな……」

純「じゃあ、実際アレの後ろに回って確認しようぜ?」

 純一の言った事を実行しようとして、全員が右に移動する。するとそれに合わせるように、エメモンがズリズリと右回転する。左に行こうとしても同じだ。

ア「あらまあ……」

キ「でも、これで信憑性が高くなったわね。あれの裏側には、きっと何か忌避したいものが存在するのよ」

セ「なら協力して突破しましょう! キャスターさんが足止めしててくれればきっとなんとかなります!」

 セイバーの言葉に従い、アサシンが牽制し、バーサーカーが暴れ、キャスターが触手の根本を焼き切るようにレーザーを放つ。

ア「でも、段々厳しくなってきたわね……」

キ「アサシンッ! 後ろ!」

ア「えっ? きゃあ!? 嫌っ! 助けてっ!」

 アサシンの体が触手に絡め取られ、足が地面から離れていく。

キ「間に合って! 第一の光!」

 レーザーを撃たれても撃たれても、次々と新しい腕を生やしてアサシンを執念深く掴むエメモンを見て、キャスターの瞳に焦りが見え始めた。

ア「うぷっ……やめて……私は、こんなところで……」

?「アアアアアアァァァァアァァアァァァァァア!!!」

 その時、普段叫び慣れてない人が上げるような奇声を上げながら誰かが走ってきて、触手に包まれた彼女にタックルしてきた。

 ドンッ!! ベシャッ……

ア「きゃっ!?」

 その衝撃でアサシンの体は宙に投げ出され、触手からは開放された。

ア「あ、あなたは……順平!?」

浜「ま、マタ・ハリ、ちゃアん……無事で……良かった……」

 パサリ。カチャッ。

 地面には不細工なオーバーグラスと、そこら辺の花をちぎって作ったのであろう、粗末な花束が落ちていた。

ア「どうして、私なんかを……」

 アサシンに代わるようにして、順平が触手に包まれ、その体は徐々にエメモンに飲まれていく。

浜「そんなん……決まっとるやん……俺は、ひと目でキュンときたんや……あなたに。あなたなら命を賭けてもいい! ……この恋はもう、止められないんだで」

ア「でも私はサーヴァントよ? 聖杯戦争が終われば、いずれ消える身なのに……?」

浜「えっ」

ア「え?」

浜「…………アッ! そ、そんなんセーハイがなんとかしてくれるアゼルバイジャン。やから全部が終わったら……俺と……おれとぼぼぼぼぼ」

ア「順平!?」

浜「しアわせ、ニ……なっテ………………」ズプン

ア「ああっ……そんなぁ」

キ「ごめんなさいアサシン……私の力不足でこんなことに……」

 順平が飲まれそうになっている間も、こうして謝っている今も、キャスターはずっと触手をちぎり続けていた。それでも力及ばず、順平は飲まれてしまったのだ。

ア「いいえ……あなたは悪くないわ。私が油断してしまったのがそもそもの原因なのだから。それより、まだ敵は動いているわ!」

 地に落ちた花束とオーバーグラスを抱えて、マタハリは今まで通りセイバーが敵の背後に向かう支援に戻った。それに合わせてキャスターも再び触手の根本を撃ち続ける。

セ「ここがあの化物の背中ですか…………」

 彼女がエメモンの後ろ側に行くと、そこにはメザサイズのお尻がデンと座っていた。

セ「まさか本当にあるとは……ていっ! あっ、刀が!刀が飲み込まれそうです! ふん! ふーん! ぬ、抜けない!?」

キ「やれやれ、おっちょこちょいね……坂田! 令呪を使ってあたしに宝具を使うよう命じなさい! そしたら魔力も補えるはずだから!」

坂「あ、あぁ……キャ、キャスター! 全力で、えっと……敵を焼き尽くせ!」

キ「了解よ! 海にレムリア! 空にハイアラキ! そして地にはこの……」

 宝具を発動して触手を斬り続け、既に魔力が底を尽きかけているが、ここでこんな怪物に負けるのだけは嫌だ。

 何より、マスターである坂田に残念な思いをさせたくない。そんな思いが彼女を突き動かして、倒れそうな体に鞭を打つ原動力にもなっていた。

キ「『金星神・火炎天主(サナト・クマラ)』!!」

 ブチブチブチッ!!
 大量のレーザーの照射により、エメモンの体のあちこちがちぎれる。しかし、まだあちこちの肉片が蠢き、寄り集まろうとしている。

純「させるかってんだ! 呂布ッ! おめぇの力見せてやれ!」

バ「■■■■――――――!!」

 雄々しい咆哮とともに、呂布が手元に紅蓮の弓を顕現させる。そして右手の方天画戟を燃え盛る五本の矢に変形させて、全てを弦に当てて狙いを定める。
 『軍神五兵(ゴッド・フォース)』。それが彼の宝具の名だ。本来は六つの形態に変化するものだが、此度の戦いで使用したのはその内の一つ、『射撃』の形態だ。

?「おっと、お主だけにいいとこを見せさせるわけにはいかん! 俺も行くぞ!」

純「おめ誰だぁ!?」

俵「俺はアーチャーの俵藤太! 戦場の臭いを感じ取り助太刀に参った!」

純「あぁそっかあの時のなぁ! よし、それじゃやっちまおうぜ!」

俵「よかろう! では、やるか!」

 左手に弓を構える藤太とその周囲の魔力が、蒼い水泡となって一箇所に集まっていく。
 同時に、右手に弓を構える呂布の魔力が、燃え盛る五本の矢の先端にそれぞれ『斬』『刺』『撃』『薙』『払』五つの文字を象り、出陣の時を待つ。
 隣り合い、背中合わせになった二人のサーヴァントが今、同時に紅と蒼の矢を放った。

俵「南無八幡大菩薩……願わくば、この矢を届けたまえ!」

純「令呪を以って命ずる! 呂布奉先! 全力であの気持ち悪ィ野球の出来ない松井秀喜をブチ殺しちまえ!」

バ「■■■■――――――――ッッッ!!!」

 藤太が放った一本の矢は水竜となりエメラルドの肉片を片っ端から喰らい、呂布の放った五本の矢は、竜が残した肉塊のほぼ全てを焼き尽くした。

 これにはさしものエメモンも耐え切れず、およそ九割の肉が消し飛んだ。だが残り一割の肉は、まだ再生しようともがくように空中で蠢いている。

 中には、緑色のお尻のような塊も落下していた。その目立つ形の肉塊は、真っ先にセイバーの視界に捉えられた。

セ「一歩音超え……二歩無間……」

 セイバーは独自の構えを崩さぬまま、落下中のケツを見据えて駆ける。ケツから一つ生えていた眼球が、それを見て焦るようにギョロギョロと動く。

セ「三歩絶刀!」

 他のまばらな肉体を足がかりにして跳躍し、ケツの中心にある穴……その更に中心にある眩い光に狙いを定めた。

セ「『無明――――三段突き(むみょうさんだんづき)』ッ!!」

 ピシッ……パキパキパキ……

セ(手応え、あった!)

 バリィィィン!!

鋼「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 (ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )

 ケツの中にあった黄金の杯が砕け散り、注がれていた緑色の泥があちこちへ吹き出し周囲の竹林を汚す。

 だがそれも一瞬の事。辺り一帯に飛び散ったエメラルドの破片は、塵一つ残さず蒸発するように消えていく。それはつまり、聖杯と一体化した鋼兵の消滅をも意味していた。

 一方その頃。

佐野「ったくおせーなアイツら……使えねぇヤツらだな本当。ゴミだよゴミ」

 コンコン。

槍「やぁマスター戻ったぜ。聖杯もきっちり持ち帰ったぞ」

佐野「おーいいねぇ。俺ァ信じてたよマジで。お前なら最後までやってくれるってな」

槍「ただいまー」ガチャリ

佐野「おう、よく戻ったなランサー。じゃさっそく俺を聖杯で若返らせて不老不死にしてくれよ。な?」

槍「それは無理な相談だ。だって聖杯なんて持ってないもんね」

佐野「はぁ!? お前何嘘ついて……ゲボッ!?」

 佐野の胸には、自らのサーヴァントであるはずのランサー、ヘクトールの槍『ドゥリンダナ』が突き刺さっていた。

佐野「なに、ちょっとやめて! お願い! 何でもします! なんでもしますから!」

槍「なら、ケジメをつけてもらう!」

 ヘクトールは、槍に込めた力を更に強める。

佐野「痛ェよぉ! 血が……血ィ出てる血ィ出てる! お願いしますぅぅぅ! 命だけは命だけはぁ!!」

槍「お前さんに聖杯が渡るのだけは……どうしても納得できなくてねぇ。悪いが、ここで終わらせてもらうよ」

佐野「死にたくない! じにだくなあぁぁぁぁいぃぃ!!」

槍「聞いちゃいねぇか。まいいや。それじゃ、二度と会うこともないだろう。じゃあな」

佐野「ウゥ……エグッ……ウグッ…………」

 カクン。

佐野「…………………………」

 あれだけうるさかった佐野が、あっけなく事切れる。

槍「やれやれ。オジサンの体もそろそろ限界かねぇ……」

 佐野のいた部屋から出て、快晴の空を見るヘクトール。

槍「俺も色んな主と知り合ったが、令呪の使い方も知らないマスターなんて初めてだったぜ。ウナちゃん」

 結局まともに戦った相手はライダーだけだった。ここまで満足のいかない聖杯戦争は初めてだ。

槍「ま、今回の戦いは……何千何百とある戦いの内の一つなんだろう。そう考えりゃこの理不尽さも納得だね」

 無理やり納得させている感は否めないが、それでも何もしないよりマシだ。

槍「しかし、眠くなってきたなぁ……これで、やっと休める……」

 壁に寄りかかり、一息吐いたヘクトール。その体は、誰にも看取られないまま消えていった。

セ「やりました! 沖田さんまたまた大勝利ーっ!」

ア「順平は、やっぱり溶けて消えちゃったのね」

純「あいつは満足して逝った……それだけが、せめてもの救いだな」

夏「……所詮は、こんなものか。もうサプライズはありません。どうぞ聖杯を持って行って下さい。全員で相談して、ね」

純「待て夏野コラァ! ……わぁっ!? ぶべらっ!」

 夏野に殴りかかろうとした純が空振り、地面とキスしてしまった。夏野はいつの間にか消えてしまったようだ。

豊「消えよったでアイツ! も~腹立つわぁマジでぇ……ん?」

 寺の跡地の隅では、木にもたれかかって座るキャスターと、それに付き添う坂田がいた。

キ「はぁ……はぁ……」

坂「キャスターさん!? だ、大丈夫ですか……」

キ「大丈夫。と言いたい所だけれど、もう限界ね……ごめん、なさい……」

 一日二日と短期間で連続して宝具を放ったサーヴァントの身に、何も起こらないわけがない。ただでさえ不安定な状態での現界で、素人のマスターと契約した状態なのだ。

坂「何で謝るんですか……俺が未熟だからこんなことに、なったっていうのに! あの時宝具を撃つよう言わなければ、きっとまだ……」

 言い寄る坂田の言葉を、キャスターは手のひらで制した。

キ「そうねサカタ。あなたはとても未熟で、愚かな人間の一人。けどね、それは悪いことじゃないわ。きっとそんなあなたの未熟さに、魅力を感じてくれる人もいる」

坂「キャスターさん……体が透けて……!」

キ「そろそろ……時間みたいね。あなたと過ごした時間、短いけど……悪くなかったわ」

坂「はい! 俺、俺も……! とても、楽しかった……です……うっ、えぅ……ふぐぅ…………!」

キ「男の子が泣くんじゃないわよ。まったく、最後まで未熟なんだから……」

 坂田の頬に伝う涙を、キャスターが小さな手のひらで優しく拭う。

坂「はいっ! 俺、もっと……もっと頑張って……立派に……立派になります!」

キ「ふふっ…………よくって、よ…………」

 そしてキャスター、エレナ・ブラヴァツキーは光の粒となって掻き消えた。頬に添えられていた手の温もりだけが、まだ微かに残っている。

 ――――---

「―――よくってよ。このキャスターが、あなたを導いてあげる!」

「う、うわっ!? だだだ、誰ェ!? 外人さん!? ちっちゃい女の子がちょっま、えぇぇぇ!?」

「どうどうどう、落ち着きなさいミスター。とりあえず自己紹介よ。あたしのことはキャスターでいいわ。あなたのお名前は?」

「えー、僕の名前は……坂田です。よろしくお願いします」

「よくってよ。これからよろしくね、ミスターサカタ!」

 ――――---

 出会ったばかりの会話や、自分がドジを踏んでしまった時の励まし、挫けそうになった時の説教など、彼女の色んな姿が坂田の脳裏に蘇っては消えていく。

 彼女とは、たった数日間とは思えない程濃密な時間を過ごした気がする。それだけエレナ・ブラヴァツキーの存在は、彼の仲で大きいものとなっていた。

坂「…………エレナさん。ありがとう、ございました」

純「チッ……」

豊「チッ……」

セ「何で舌打ち!? 感動の別れの場面じゃなかったんですか今の!?」

純「こっちは夏野のことでそれどころじゃねぇってのにお涙頂戴とか、一番人生ナメてるヤツのやることじゃねぇだろバカがよ!」

豊「純粋に腹立つねんああいうの見ると! アニメで見る分にはええけど他人がやってんの見てもなんもおもろくないわ!」

バ「■■■■■■■■――――!!」

セ「バーサーカーさんまで!? もう何なんですかあなた達! いちいちおかしいですよまったく!」

豊「ってか聖杯壊れたんちゃうん? なんでまだ続いてんのこれ? 家帰りたいんやけども」

セ「えーとですね……詳しいことは割愛しますが、あれは多分主催者が用意した別の聖杯でしょう。
  本来の聖杯を願望機として機能させるには、にはサーヴァント六基の魔力が満ちた聖杯が必要なんです」

 セイバーの言葉に従うかのように、寺の石床が迫り上がって、中から黄金に輝く聖杯が現れる。鋼兵に入れられたものとまったく同じ形のものだが、中身は汚れていない。


バ「■■……!」

豊「つまり、あれが本物の聖杯っちゅうことか……」

純「ヘッ……最後に残った一人が願いを叶える! わかりやすくていいじゃねぇかぁ!」

セ「見たところ、溜まっている魔力はまだ三騎分。恐らくライダーさんにキャスターさんと、この場にいないランサーさんのものです」

純「そして、そこにいるアーチャーはマスター不在……やることは一つだよなぁ!? いいぜもこう! 二対一でもいいからかかってきやがれェ!!」

豊「アサシンはまあ、殆ど戦闘向きやないし、元は緑さんのサーヴァントやから戦わせる気はないで」

セ「ええ。私も呂布さんとは一騎打ちがしたいです! 今度こそ、何のしがらみもない状態で!」

バ「■■■■――――!!」

純「そうか呂布……おめぇ、あの時のリベンジマッチがしたいんだな?」

豊「やめとけやめとけておまぁ……一度負けた相手が一日二日で勝てるようになるわけないやん」

純「いーや違うね。あの時と今とでこいつには決定的な違いがある。それはな……

セ「それは……?」

純「マスターが俺だってことだよッッッ!!!」ドンッッッッ!!!!!

セ「どんだけ自信家なんですか! まあいいでしょう……行きますよ呂布さん!」

バ「■■■■――――!!」

豊「令呪を以って命ずる……バーサーカーを倒せ!」キュインッ

純「おい呂布! おめ絶対負けんじゃねぇぞッ!」キュインッ

セ「力が湧いてきます……でもまだ本領ではありません」

バ「■■ッ!」

豊「重ねて令呪を以って命ずる……滅びを与えよ!」キュインッ!

純「呂布! 俺達が……一番だ!!」キュインッ!

セ「マスター、私は正直……ここまで来れるとは思っていませんでした。ですが今は」

豊・純「ブチ殺せッ!!!!!」キュイィィィィ!!

セ「うがっ!? な、なんか全身に、邪悪な力が……こフッ!?」

豊「ここ一番でなに吐血してんねん! ホンマつっかえんわお前ェ……」

純「バーサーカー! おめぇは大丈夫だろ!?」

バ「■■■■――――――!!」

セ「私も大丈夫ですって……ふぅ」

豊「頼むでホンマにィ! さ、始めようや……」

セ「新選組一番隊隊長、沖田総司! いざ参るッ!!」

 豊と純一が争う聖杯の前から離れた場所で、アサシンとアーチャーはその状況を穏やかに傍観していた。

俵「そうかそうか! 順平は満足してそなたを助けるために体を張ったのだな!」

ア「ええ。彼、とっても勇敢だったわ。まあ、外見とか喋り方は正直、人を選ぶでしょうけど」

俵「最後にいい話を聞けた! やはりあいつがやる時はやる男だったと知れて、俺は嬉しいぞ!」

ア「アーチャー、やっぱりあなた……」

俵「あぁ。マスターのいない状態で宝具を撃ってしまって、既にすっからかんだ。空腹はあまり好きではないのだがな」

ア「実は私も、もこうちゃんからの魔力供給がどんどん細くなってきているの。元が希薄な仮契約だった上に、聖杯の化物に散々しゃぶり尽くされちゃったから」

俵「ならば握り飯でも食え! ほれ!」

ア「えっ? あ、ありがとう。はむっ…………あら、おいしい」

俵「今の白米で残り少ない魔力が更に減ったわ! はっはっは!」

ア「あらそうなの? 言っておくけど、罪悪感は湧かないわよ? ご馳走様っ♪」

俵「そうか、まあよい! まっこと良き出会いであったわ!」

 藤太の脳裏に、モゴモゴと自己紹介や不満を漏らす浜崎順平の顔が浮かぶ。あまりにも短い付き合いであったが、悪い気はしなかった。

 満足気な顔で目を瞑った彼の顔が、足元から徐々に消えていく。

ア「それじゃあ、縁があったらまた会いましょう。そしたら、今度はもっと美味しいご飯、食べさせてね♪」

俵「あぁ、いつになるかわからんが、約束しよう!」シュワァァァ……

ア「ふふっ……それじゃあ私は、消える前にセイバーちゃん達の戦いでも見ておこうかしら」

セ「せやっ!」 

バ「■■■■――――!」
豊「我こそは踊り狂う暴風!」

純「そこだそこだいけぇぇ呂布! ンドラゴンナックル!」

セ「んな技絶対ないでしょ!」

バ「■■■■■■!!」

 ブオン、と呂布が槍を持っていない方の手でセイバーに殴りかかる。その拳は、確かに藤太の宝具のような竜型の炎を纏っていた。

セ「えええぇぇぇ―――!? 新しい技編み出しちゃった!!」

 すんでのところでバックステップで回避するも、隊士服の脇腹の部分が風圧で持って行かれた。だがその動揺もすぐに無くなり、セイバーは凛とした表情で敵を見据える。

セ(あの人、本当にバーサーカーなんでしょうか? 斬撃にも刺突にも、こんなに確固たる意志を感じるのに……!)

バ「…………」

セ「間断なく攻めますっ!」ギンッ! ガギンッ!

 セイバーが手数に物を言わせる素早い連撃を浴びせるも、呂布の耐久力と槍裁きは尋常なものではない。これでは先にこちらが息切れしてしまう。

セ「はぁっ……はぁっ……」

純「そこだいけぇぇぇフジヤマ落としィィィィ!!!」

 純一の声に応えるかのように、呂布が槍を上段に構えて、ビタンと地面に叩きつける。

セ「危なっ……!?」

豊「なななななんや地震か!? あ、足がががが、震えれれれれれ」

純「やべええええええ! めっちゃ揺れてるぅぅぅぅぅぅ!!」

 直撃はしなかったものの、地面が大きく揺れて身動きがとれなくなってしまった。

 ブンブンブンブン……

 バーサーカーこと呂布が、方天画戟を回転させて背中に真一文字に振り被る構えを取る。

純「ぐっ……うおぉぉ!?」

 既に令呪がない筈の純一の右手の甲が、強い熱を発する。

豊「あの感じ、これ宝具ちゃうか!?」

セ「揺れが治まる前に当てようという算段ですか……しかしそれは叶いません! はぁぁぁぁぁ!!」

 シュタタタタタタタ!!

豊「お前走れるんかぁ!?」

純「もうおせぇ! いけ呂布ゥゥゥゥゥウウウウウウ!!!!!」

バ「■■■■■■――――!!!!」

セ「せやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 横薙ぎに振るわれる、呂布の愛槍。その斬撃を避けることも防ぐこともせず、ただ一点のみを狙う刺突に、沖田総司は全てを賭けた。

セ「突っ切れぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

バ「■■――――――――――ッ!!!」

 ガクッ――!

バ「■■■■――――!!」

 先に膝を突いたのは、宝具を撃った呂布のほうであった。胸に大きな傷が刻まれ、そこからドクドクと血が流れている。

セ「はぁ……はぁ……沖田さん、大、勝利……ゴボォ!?」どさり。

 勝利宣言をしたセイバーも、口から血を吹いて倒れてしまった。

豊「セイバー! ちょ、大丈夫かお前!?」

純「呂布! おい嘘だろ呂布ッ!? なぁオイ!」

 すかさず双方のマスターが駆け寄り、自らのサーヴァントの安否を確認する。

バ(コヒューッ……コヒューッ……)

純「よくやった……おめぇはよくやってくれたよ! お陰でセイバーはあのザマだ。あとは俺が犯すも殺すも自由自在だぜ!」

セ「この人、最後までこんななんですか……」

 セイバーはあちこち破れて露出している肌を手足で隠しながら、溜め息を吐いた。

豊「大丈夫や。俺がそんなことさせへん。聖杯もちゃんと手に入れてやるから、その後じっくりと日本を案内したるわぁ。待ってな」

セ「たまに男らしくなるの、何なんですかねまったく……でももう大丈夫です! 沖田さんはカルデアで格好良くてまともなマスターと出会って大勝利してきますから!」

豊「え、ええ何ちょっと待って!? かるであ、ってなんやねん! おいコラ待て! 俺と立ったフラグは何やったんやねん!?」

セ「いや、正直豊さんみたいな太ったモヤシみたいな人、私生理的に無理です!」

豊「ふざっっっっけんなやぁぁぁ!!(バンッ!!) 最後くらい坂田みたいに綺麗に締められんのかこのクソサーヴァントッ!!」

セ「でも豊さん」

豊「なんじゃワレェ!?」

セ「この聖杯戦争、最後まで戦い抜けて、嬉しいです。正直この数日間は、悪くなかったですよ♪」ニコッ

豊「ぉぉおぅふぅ……」キュンッ

セ「では、ご縁があればまた会いましょう! ないことを祈りますけど!」シュワァァァ……

豊「ちょ待て! 勝手に消えよったこいつ!! あーもうなんだったんだよ!!!」

純「セイバーが消えたか。よっしゃ立て呂布! 最後によ一緒にアイツ倒そうぜ! …………呂布?」

バ「…………!」

 呂布の体は光に包まれ、既に消えかけていた。

純「そっか……悪ィな。無理させちまったみてぇで」

 純一の言葉を、呂布は首を振って否定する。そして彼は右拳を純一の前に突き出した。

純「呂布……ありがとよ」

 ガシッ。

 強く突き合わせたつもりだが、呂布の拳は以前より力なく感じた。既に限界が近いのだろう。

純「呂布……俺は! 俺はチャンピオンになる! そんでおめぇが見れなかった世界をいっぺぇ見てくからよ! だから、これからも空から見守ってくれな!?」

 純一の言葉を聞いて、呂布は拳を突き合わせたまま頷く。その拳を今度は天に突き上げ、彼は満足気な表情で消えていった。

バ「ウンコチャン……クイハナイ!」シュワァァァ……

純「ナイスファイトだったぜ。オクレイマン」

豊「だがしかし、これで聖杯は我が手中にありて! 待ってろよ日本全国のクリエイター諸君! ワイが救ったるわ!」

純「おい馬場豊! まだ勝負はついてねぇぞ!」

豊「おーん? 加藤さん……ご自分の立場がわかってないようですねぇ。セイバーはなんだかんだ言ってどちらの戦いでも呂布に勝ってる上に、
  加藤さんのサーヴァントは宝具を使わなかったセイバーに宝具を使っても勝てなかった。この意味わかりますか?」

純「ハッ! 過程なんて大した問題じゃねーんだよ! 要は最終的に聖杯持ってりゃ勝ちなんだよバカタレが!」

豊「それもそうっすね! 聖杯もらいっ!」ダッ!

純「させるかぁぁぁぁぁ!!」ドゴッ!!

豊「いった――――! 何すんすか加藤さん! やめてくださいってそういうのウゴエッ!?」

純「うるさい! おめぇ別にいいだろ人気実況者で金持ってて女もいて……富も名誉もあるじゃねぇか!!」ゲシッ

豊「ってぇ! ふざけんなゴミがコラ……人が後輩面してりゃ調子に乗りやがって……ん?」

 ふと豊は、林の中にカメラが仕込んであるのを見つけた。即座にそれを引っ張り出すと、露骨に不愉快そうな顔をする。

純「ふーん……俺達は常に監視されてたってワケか。不愉快極まりねぇなぁ!?」

 ふと純は、脇の床にノートパソコンがあるのを見つけた。鋼兵がドヤ顔で持っていたものだ。放送画面は純一と豊と無関係なコメントで埋め尽くされている。

 衛門ともこう信者と腐女子と運営と俺オナ民とニート共のコメントと罵詈雑言が綯い交ぜになっており、サーバーがパンクしないのが不思議なほどの状態だった。

純「おいもこう! お前の持ってるそのカメラに、俺達映ってるらしいぞ! 手ェ振ってやれや!」

豊「常に見られてるとか、気に入らんわ……勇気の切断だ」ブチブチブチィ!!

 しかし豊はカメラのケーブルを引き千切り、放送画面から自分達が映らないようにした。同時に純が持っていたパソコンの画面でも、コメントが荒れ狂ってしまう。

純「なるほどな!っしゃオラ!」バキャンッ!! ドガスッ!!

 そのパソコンを純一は地面に叩きつけ、踏みつけた後にもこうの顔に全力で蹴り飛ばす。

豊「ぐへぁ!?」カシャン

 衝撃で彼の付けていたサングラスがひしゃげ、地面に落ちて砕ける。それを火蓋として、二人の殴り合いが始まった。

豊「何すんねん! 人の顔に鉄の塊ぶつけんなや死ぬわ!」ガスッ!

純「っせぇ死ね! もう戦いは始まってんだよ油断したてめぇが悪いわ!」ドゴォ!

豊「いってぇなクソガンモ! 俺より会員視聴者再生数全部劣ってるクセにこいてんのちゃうぞぉぉ!!」グシャァ!!

純「うるせぇなおめーみてぇにやりたくもねぇゲームやって文句言われながら金稼いでるヤツなんて全然羨ましくねぇんだよっ!!」ズガシャァ!!

豊「違うわ俺ぁちゃんと楽しくやりたいことやってんじゃゴミ! お前想像で人が嫌々ゲームしてるみたいなの勝手に言うなや頬骨がァ!!」バッコリ!!

純「つかお前なにグラサン無い動画撮られたぐれぇで文句言ってんだよお前の素顔に資産価値あると思ってんのかバカがよ!!」バシン!

豊「ツイッターに汚い自撮り画像上げたヤツにだけは言われたないわァ!」ズビシッ!!

純「てかポケモンの技受けたとか食レポとか何だよタレント気取りかぁ!? しかも歌まで投稿しやがってよお前の歌とかゲボゲボのゲボだからなはっきり言って!」グシャア!!

豊「ワイの歌再生数トップクラスやぞ! あとタレント言うたらお前もタレント紛いのことやって裸になって滑って炎上したやんけこの白ゴボウが!!」ズゴァ!!

純「お前はどう頑張ってもタレント“紛い”なんだよ本物にはなれねぇんだよ一生ぷよぷよとポケモンやって出てくんなアデノイド顔貌!!」ガッ!!

豊「俺は最近杉田とか大物に混じって声優したんやぞナメんなクソがぁぁぁ!!」ズボッ!!

純「聞いたけどクッソヘタだったわ調子乗んな! そういう勘違い野郎はなぁ、右ストレートで! ぶっ放してやるからなマジでェ!!」ボズリ!!

豊「いいからはよ高田と仲直りせーや意地張ってんなやいい加減うざいねんコメントで健志健志言われんのがよ!!」ガシャッ!!

純「知ったことかよ! あんなクズと何で好きこのんでつるまなきゃなんねーんだよてめぇはよ……黙ってろよッ!!」メコッ!!

豊「グホッ!! 急所に思い切りもらいましたわぁ……しかし、急所は試合を左右しない!!」ガツッ!!

純「ギャア!! ぐっ……っせぇなバカが!」ゴン!

豊「アホォ!」ゴン!

純「ゴミが!」ガン!

豊「ボケェ!」ガン!

純「うんこ!」ドカッ!

豊「うんこはどう考えてもお前じゃいドアホウ!」バンッ!

純「存在がうんこ臭いだよお前は! バキュームカーかよ!」ベシン!

 子供のような殴り合いと、野性的すぎる罵り合いが始まってから十分が過ぎようとしてる。

豊「はぁ……はぁ……」

純「ゼェ……ゼェ……」

 息を切らし、既にあちこちボロボロになっている豊と純一が、尚もぎらついた目で互いを睨む。

豊「渡さん……お前、だけにはァ……なぜなら、このワイが……ニコ生の……」

純「てめぇが、願いを叶えるのを、指咥えて見てるなんてできっか……! 俺は……俺はなぁ……ニコ生の!」

 満身創痍になりながらも、二人の目はまだ目の前の敵を、そして自分に名誉と栄光が降り注ぐ未来を見ている。

 よろめき、ふらつき、殴られた腹や頬を押さえ、それでも豊と純一は再び距離を詰めた。永きに渡る因縁に、決着をつける為に。

豊「王だからやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

純「チャンピオンだからなァァァァァァア!!!」

 拳を振り振り被り、半ば本能的に、怒りや憎しみや嫉妬。あらゆる感情を込めて振り抜く。

豊「加ァァァ藤ォォォォォォォォォォォォォオオオ!!!!!」

純「もォォォォォォォこォォォォォォォォォオオオ!!!!!」

 ズガンッ!

 互いの拳が互いの頬に同時に当たり、眼前に火花が散ったのを感じながら二人はずるずると地面に這いつくばった。

豊「グホッ…………!」

純「パァッ…………!」

 最早意識も朦朧としてきたが、それでも執念深くズリズリと聖杯に近づこうとする二人。

坂「ごめんなさい」パシッ

豊「…………?」

純「ッ!?」

 聖杯は、それまで殴り合いを傍観していただけの坂田の手に渡った。

純「ざっけんな……偽善者がよ……」ドサッ

豊「こ、の……底辺歌い手崩れが……」バタッ

 倒れて意識を失う実況者二人を、複雑な面持ちで見つめる坂田。その傍らには、未だ健在なアサシンの姿があった。

ア「ごめんね、もこうちゃんに純一くん♪ 私達、サーヴァントとマスターの契約をしてしまったの♪」テヘペロ

坂「とは言っても、それもあと数分だけですけどね」

ア「もう、つれないんだから……でもいいわ。まさか私がこうして最後の瞬間に立ち会えるなんて、夢みたいだもの。それでマスター、あなたは聖杯に、何を望むの?」

坂「色々あるけど……もうこんなの御免ですよ。だから――」

 坂田が手に持った金色の杯が眩く輝き、世界を照らしてゆく。

坂「僕達を……“正しい世界”に、返して下さい!」

ア「随分と欲の薄いコね。ふふっ……キャスターちゃんがあなたに一目置いていた理由、少しだけわかった気がする。

  それじゃあ、さようなら……坂田くん、純一くん、もこうちゃん、純一くん……それから元マスターの緑さんに、順平」シュワァァァ……

  空や地面にヒビが入り、世界は硝子のように音を立てて崩れていく。

  いや、こんなものは世界ではない。夏野が言っていた通り、ただ戦うためだけに用意された、精巧な箱庭だ。

  それが砕け、彼らが元の世界に帰ろうとしている。ただ、それだけのことだ。

坂「……疲れてきたな。僕も一眠りするか……」

  崩れゆく世界の中、坂田も聖杯の台座に寄りかかる。そして横たわる豊と純一を見た後、彼も一緒に目を瞑った。

  目を瞑った三人が気付かぬ間に世界は移ろい、本来彼らがいたはずの元の世界ごと別の何かで上書きされ、収束していく――

浜「オウィィィィィィィィィィィィィィィィィ↑ッス!! どうもぉ~、syamuで~す! ま今日は、第二回オフ会当日ですけどもぉ~! 参加者は……誰一人、きませんでした。
  なんででしょうかねぇ~……やっぱり人気がないんですかねぇ自分は……」

  コンコン。

浜「えぁっ、はい……なんでしょ」ガチャッ

*「こんにちは! あなたがsyamuさん?」

浜「アッ……アッ……」パクパクパク

*「遅れてごめんなさい。急な用事が入って、連絡もできなくて…………」

浜「…………ハッ! おほ^~! 皆さん、見て下さい! オフ会参加者第一号は……スタイル抜群のおねーさんでぇぇぇぇすっ!! というわけでぇ……」

 その時、浜崎順平は頬に熱いものが伝うのを感じ慌てて、オーバーグラスを着けたまま器用にそれを拭く。

浜「あれ……丘People!? な……なぜでしょうねぇ~不思議ですねぇ~……」ゴシゴシ

*「それじゃあ今日一日、よろしく!」

 ドヤドヤドヤ……

シバター「何で普通に女来てんだよつまんねぇな」

黒騎士「syamuさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

syamu「…………それじゃあ、まったのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

夏野「……そうですか。もういいです。下がりなさい」
 椅子クルッ。
夏野「今回の聖杯戦争は失敗に終わりましたが、視聴率は過去最高でしたね……フフ、次も期待してて下さいね。
   聖杯戦争はプレミアム会員限定コンテンツとして、これからも続けていくことにしましょう」

豊「おーん、シャドバの新パック情報もう出とるやん。これのカードにグチグチ言う動画でまた再生数稼げるなぁ」

TV『――今日未明、東京都豊島区にある配信者用の施設にて、中年男性ニ名の遺体が発見されました。
  遺体は当時配信していた佐野智則、川本恒平のものと見られ、警察では現在死因の究明を急いでおり――」

豊「なんや、あいつら死んだんか……」

TV『続いてのニュースです。人気グループである浦島坂田船のメンバーの内三人が今朝、未成年淫行の疑いで逮捕されました』

豊「ってオイ坂田以外捕まっとるやんけ! なんやあのグループ! ……お、もう始まったか」

 豊の部屋のパソコンに、見知った顔が映る。

純『――というわけでくっちゃべ第十回始まりましたけども! 今回はね放送見た人は知ってると思いますがえー……特別ゲストさんが来ております!』

緑『どうも。暗黒放送の、横山緑と、申しまーす』

豊「……うっわ、もう十回目になるってのにまだコメントクッソ荒れとるやん。成長せんなーこいつも」

ティーチ「それよりもこう殿もこう殿! 拙者といざ尋常にマリオカートで勝負しませぬか!?」

ヘクトール「おっと、オジサンも最近ゲームやり始めたんだけど、中々楽しいねぇコレ。今度は負けないよ?」

俵藤太「お前達! ピコピコもいいがそろそろ飯にせんか! 何事もまずは腹ごしらえからだ!」

豊「てか何でみんな俺のところにおんねん大人しく消えとけや! もぉ~嫌やわホンマ! 狭いし臭いしもう……」

ヘクトール「臭いのは元からじゃねぇか?」

ティーチ「その通りですぞ! 拙者、いつ女の子に触られてもいいよう毎日清潔にしているでござる! 大事なところとか!!」

豊「ッッッッッアァァァ――――!! うるさいわもう、せめて家賃払え! でなきゃ全員出てけやはっ倒すぞマジでぇ!!!!」

沖田「いやぁまさか、マスターに日本を案内して頂けるなんて、夢にも思いませんでしたよ……こフッ!?」

信長「フハハハハハハ! これもひとえに、そなたが人理を修復したお陰じゃのう! 主にわしのお陰で!」

*「ははっ、相変わらず仲が良いんだね二人は」

沖田「どこかですか!」 信長「どこがじゃ!」

*「それで……このソフトで良かったかな? 沖田」

沖田「あっ、はい! 月の方ですっ!」

信長「月とか陰キャか~貴様? わしはこの日輪の称号に全てを賭けてやるわ!」

*「でも、なんでいきなりポケモンなんてやりたいと思ったの?」

沖田「それはですね……最近、ゲーム実況というものを見ていたら、面白そうだなって思ったので……」

*「そっか。俺もそれ持ってるからさ、後で対戦や交換でもしようか?」

沖田「はいっ! 是非お願いしますっ!」

信長「こらこらこらー、二人でいい雰囲気になるでないわ! ならわしは茶々とダブルで貴様らを討ち取ってやるわ!」

沖田「いいでしょう! 負けませからね!」

*「マシュにも、買っていこうかな」

 こうして彼らの日々は、少しだけ変わりつつも、概ねいつも通りに過ぎていった。

 あの聖杯戦争がニコ生で放送されたという事実だけは世間に残ったが、記録には残っていない。その内容は皆が朧げに覚えている程度で、詳細に語れる人間は極一部の者だけだ。

 豊や純一、順平の周りになぜか平然と存在する英霊達も、いずれは消滅し、座に還り、カルデアに行く日がくるだろう。

 だが今だけは、この時間を楽しんでもいいだろう。炎上するかもしれないけど、ワイワイ皆で騒ぐ配信も一回ぐらいはしてみたい。

豊「それじゃあね今回は……ゲストの皆様とレースしていきたいと思います……お前ら! 今日は絶対負けへんからなぁ! 準備はええか!?」

全員「おお――――っ!!」

 そんなことを考えながら馬場豊は、今日もニコ生界の王もこうとして、YouTubeとOPENREC.tvに降臨するのであった。

というわけで、書き溜めてからの投稿でしたがこれにて完結です。
初めての試みの多い作品でしたので色んな意見があるとは思いますが、とりあえず出すだけ出そうと思って載せた次第です。
いるかわかりませんが読んで下さった方、ありがとうございました。

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