北沢志保「どうしよう、家に帰れなくなった…」P「…またか」【ミリマスSS】 (72)


ミリマスSSです。プロデューサーはP表記。

矢吹可奈「どうしよう、お家に帰れないです~!」P「・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404203513
これの一応続きっぽいもの。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497366192


19時前 プロデューサー宅


ガチャ

P「よーし、着いた着いた」

P「遠慮なく入っていいよ」

志保「……お、お邪魔します」

P「しかし本当に雨強かったなあ…。志保、タオル取って来るからちょっと待ってて」

P「えっと…はいっ」スッ

志保「ありがとうございます。少し濡れてたので助かりました」

P「それはよかった。志保、自分の家だと思ってくつろいでていいからな?」

志保「じゃあ、お言葉に甘えますね」ニコ

志保(…そうは言ったけど、やっぱり少し落ち着かない。というかちょっと緊張する)


志保(……今日はプロデューサーさんのお家にお泊りすることになりました)

志保(どうしてこんなことになったのかというと、それは一時間ほど前のお話……)


・・・・・・・・・・


18時過ぎ 駅にて


志保「……どうしよう、電車止まっちゃった」

『只今、大雨の影響で電車を見合わせております。復旧のめどは…』

志保「途中で運転打ち切りになるなんて……」

ザアアアァァァ

志保「でも、すごい雨…」

志保「プロデューサーさん、まだ電話してるのかな?」チラッ


P「はい…はい…ええっ!?」

P「ま、まあ、そうですけど。でも…」

P「そう、ですね…。一応聞いてみます、はい」ピッ

志保「?」

志保(そういえば以前、こんな雨の日に可奈が…)



志保「プロデューサーさん、小鳥さんからは何と?」

P「他のアイドルたちはみな無事で連絡は取れてる。音無さんも社長も事務所を出たから事務所には誰もいない、ってさ」

P「あと、雨もこのまま降り続けるから、電車も復旧しないんじゃないかって」

志保「そう、ですか。私の家ここからまだ距離あるし、どうしたら……」

P「それで志保が良かったらだけど、その……俺ん家、泊まる?」

志保「……はい?」

P「い、いや! この〇〇駅って、俺の家の最寄りなんだよ」

P「それで、この雨でタクシーもバスも乗れそうにないならいっそ泊めてやれ、って音無さんが…」

志保「…思い出しました。そう言って、あの時も可奈をプロデューサーさんの家に連れ込んだのですね」ジトー

P「まってちがう」


P「そうじゃなくてですね志保さん、その…」オロオロ

志保「クスッ…冗談ですよ。流石にこの雨だと、私もどうしようか困ってましたから。正直、背に腹変えられません」

志保「でもプロデュサーさん、本当にいいんですか?」

P「そりゃもう、最終手段だし。大丈夫だよ」

志保「ありがとうございます」

志保「そうだ、家に連絡入れていいですか? もしかしたら家に弟一人だけ、っていうこともあり得るので……」

P「うん、もちろん」

志保「それじゃあ…」スッ

志保「……もしもし。あっ、お母さん。良かった……あのね?」カクカクシガジカ

P(そうか、志保の家ってお父さんが……)

P「…あっ、俺も社長に連絡入れておかないと」


・・・・・・


P「……はい、勿論です!今回もしっかり面倒見ます! はい、それでは」ピッ

P「よし、社長に報告は終わり、と」

P(志保は…)チラ

志保「うん…うん、分かった。ありがとう、お母さん」

志保「え?……そ、そんなんじゃないから! 本当だって!」

志保「もう電話切るよ? …うん、ちゃんと伝えておくから。じゃあ、また明日ね」ピッ

志保「ふぅ……」

P「志保、お母さんは何って?」

志保「はい。お母さんも仕事早く切り上げさせてもらえたみたいで、家に帰って今は夕飯の支度をしてるそうです。だから安心していいよ、と言われました」

P「それなら弟君も安心だな」

志保「はい。あと…今日はウチの娘をよろしくお願いします、と」

P「ああ、任せてくれ」

P「よし、それじゃあ行くか! あ、でもその前にショッピングセンターだな。色々買ってかないと」

志保「…はいっ」クスッ


・・・・・・・・・・

志保(……ということで、今日はプロデューサーさんのお家にお泊りすることになりました)

志保(そうして今に至ります)

志保(大雨で家に帰れなくなるなんて……そんな経験、初めてで不安だったから少し安心です)

志保(でも、お母さんからは「むしろラッキーじゃない?」って余計なことを言われたから、ちょっと意識してしまう…かも)

志保(でも可奈が言ってた通り、お部屋綺麗にしてるなあ)

志保「…」キョロキョロ

P「そんなに部屋をいろいろ見られても、変なものとか置いてないよ?」

志保「そ、そんな理由じゃありません!」///

P「あはは、ごめんごめん。初めて来た他所の家って妙に緊張するもんな」

志保「はい……」コクッ

志保(それに男の人の家って初めてだから、余計に……)

志保(ハッ!......変な意識したらダメ!)ブンブン

P「?」


P「よし、ご飯にしようか。それとも風呂にする?」

志保「少しお腹が空いたので、ご飯の方が……」

P「OK。実は俺もかなり腹が減っててさ」

志保「私も手伝いますよ」

P「別にくつろいでいていいぞ?」

志保「泊めてもらってる身ですから、少しは手伝わせてください。それに一緒に作った方が早く料理も出来上がりますし」

P「確かにそうだな。じゃあ志保、お言葉に甘えてお願いするよ」

志保「はいっ」


志保「それで、一体何を作るんですか? いつの間にか食材買ってましたよね?」

P「結構悩んだけど、ハンバーグとナポリタンにしようかなーと思ってさ」

P「冷蔵庫ににハムとタマネギが残ってたの思い出してな」

志保「プロデューサーさんって、料理するんですね」

P「それは失敬だな。学生の頃から自炊はよくやってたんだぞ?」

P「可奈が泊まりに来た時も一緒に作ったし」

志保「あ、そういえば…中華を食べたって言ってましたね」

P「そうそう」


P「それじゃあ志保、ハンバーグ作ってもらっていい?」

志保「分かりました。プロデューサーさんはナポリタン作りますか?」

P「うん。ナポリタンでちょっとやってみたいことがあってさ」

志保「やってみたいこと?」

P「そうそう。昔行きつけてた洋食屋さんのナポリタンを再現しようかなーって」

P「店主のおじさんが年でやめちゃったけどさ、美味かったんだよなあ。学生の頃はそればっか食ってて、思い出の味だよ」

志保「へえ、楽しみにしてますね」

P「ああ、任せて」

志保(……私も頑張らないと)


P「……」トントントン

志保「……」トントントン

P「そのタマネギ切り終わったらピーマンも頼む」

志保「はい。中の種取りたいので、スプーンもらえますか?」

P「うん。えっと…はいっ」

志保「ありがとうございます」

志保「……本当に手際いいですね」

P「だろ? 伊達に包丁握ってなかったからな」

志保「でも、もう少し野菜を見分ける力を鍛えた方がいいと思います。ヘタが少ししなびたピーマンが多いです」

P「うが…わ、悪かったな……」


P「しかし話には聞いてたけど、志保も料理し慣れてるよなあ。何だかお母さんの域だし」

志保「お母さんって…。私、まだ14ですよ?」

P「それだけ嫁力が高いってことだよ」

志保「嫁力?」

P「嫁力は、嫁力だよ」

志保「何ですか、それ。高い方がいいんですか?」クスッ

P「そりゃあもちろん。俺も、嫁力高い人と結婚したいし」

志保「!…そ、そうですか……」


志保(……危なかった、ピーマンが変な形に切れそうになった)

志保(でも…何だかこういうの、いいかも)

志保(お母さんや弟と一緒に料理をする時とは、ちょっと違う感じ)

・・・・・・


P「……よしっ。ナポリタンの出来上がり!」

志保「ハンバーグも出来あがりましたよ。ソースも出来てます」

P「おっ、ベストタイミングだな」

志保「ハンバーグのお皿はこれでいいですか?」

P「いや。このナポリタンをよそった上に、ハンバーグも乗せるんだ」

志保「えっ」

P「よし、じゃあ乗っけるぞー」ノソッ

P「あとはソースをハンバーグにかけて……よしっ、ハンバーグナポリタンの完成!!」

志保「は、はあ…」

志保(ちょっとガサツな感じだけど、男の人の料理ってこんな感じなのかな……?)


P「冷めないうちに早速食べよう。飲み物はお茶でいい? ジュースもあるぞ?」

志保「いえ、お茶で構いません」

P「それじゃあ…」

P志保「「いただきます」」

P「アムッ……うん、美味いっ。我ながらうまく仕上がったなぁ」

志保「じゃあ、私もナポリタンから……」アムッ


志保「んっ!……美味しいっ!」キラン

P(何か目が光った)

P「気に入ってくれたら嬉しいよ」アハハ

志保「本当に美味しいです。麺がちょっと太めで柔らかいですけど、逆にそれが良くて…」

P「少し太めの麺使って、それを長く茹でたんだ。麺が柔らかくなることでソースとの絡みも良くなるって、洋食屋のおじさんが言ってたからな」

志保「なるほど…。家で作るときにも少し参考にしようかな……」アムッ

志保「…んっ!」キラン

P(何この子かわいい)


P「よし、次は志保が作ったハンバーグを…」

志保「!」

P「アムッ……んっ、美味い!」

志保「お口に合ったのなら良かったです」

P「お口に合うも何も、本当に美味しいよ」

志保「弟がハンバーグ好きで、家でよく作ってますからね」フフン

P「こんな美味しいハンバーグなら、弟君も幸せだな」

志保「…そう、ですね」

志保(気に入ってくれて、よかった)ホッ


P「ちょっと上品じゃないけど、ハンバーグの一部を崩してナポリタンと絡めて食べると美味しいぞ」

志保「へえ。じゃあ、ちょっとやってみます」

志保「パクッ……んんっ!」キラッ

志保「また少し味が変わった…。なるほど、一つのお皿だからこうして味が複雑に……プロデューサーさん?」

P「ングッ……」プルプル

志保「? プロデューサーさん、どうしたんですか?」

P「いや、食べるたびに目がキラッて光って……かわいいなあって」

志保「か、かわっ」

志保(そういえば、お母さんから時々『志保は美味しそうに食べるわね』って言われてたけど、もしかして……)

志保「……あぅ」カアァ


P志保「「……ごちそうさまでした」」

P「いやあ、食べた食べた」

志保「本当に美味しかったです」ニコ

P「あれだけ目を輝かせて食べてくれたら、俺も嬉しいよ」

志保「なっ...そ、それは忘れてください!」///

P「あはは、悪い悪い」


P「……よしっ、風呂入れてくるか。ちょっと準備してくる」

志保「それじゃあ、その間にお皿洗っておきますね」

P「気にせずゆっくりしてて良いぞ?」

志保「洗われてないお皿がある方が落ち着かないので…」

P「ありがとう。じゃあ、お願いしようかな」

志保「はいっ」


ジャアァァァ...キュッ

志保「……よし。洗い物は終わり、と」

~♪

志保「あっ、電話だ。……可奈から?」ピッ

可奈『あっ、志保ちゃん!』

志保「もしもし? 可奈、どうしたの?」

可奈『今日、雨がすごかったでしょ? 夕方まで志保ちゃんお仕事だったから、心配で…』

志保「クスッ…大丈夫よ。ありがとう」

可奈『ホントっ? えへへ、よかったあ』

志保「可奈もレッスンだったけど、ちゃんと家に帰れたの?」

可奈『うんっ。雨が強かったから、お家着いたときはかなりビショビショになったけど……』

志保「すぐに体拭いたり、お風呂入ったりしたの? 風邪引かないようにしないと…」

可奈『すぐにタオルで拭いたから大丈夫! 志保ちゃんやっぱり優しいね』エヘヘ

志保「……ありがと」カァ


可奈『志保ちゃんもお家にちゃんと帰れた?』

志保「! ……えっと、実は、プロデューサーさんの家に泊めてもらってるの」

可奈『ええっ! 志保ちゃん、プロデューサーさんのお家に泊まってるの? いいなぁ…』

志保「『いいなぁ』って……電車が止まって私が家に帰れないから、緊急事態で泊まっただけだからね?」

『ザワッ…』

志保(ん? ザワッ?)

『えっ! 志保、プロデューサーさんの家に泊まってるん?』

志保「……」

志保「ね、ねえ、可奈。あなた家にいるのよね? 今聞き覚えのある声がしたけど…」

可奈『あっ、そうだよ! 家に帰れない人がいたから、私のお家でお泊りしてるんだ!』

志保「…ちなみに誰がいるの?」

可奈『えっと…奈緒さんと美奈子さんと、あと静香ちゃん!』

志保「」


『ちょっと志保、聞こえてるんでしょ! 可奈、ちょっと電話代わって!』

『あ! 次私ね!』

『じゃあ、その次私な!』

可奈『みんな電話代わりたがってるけど、どうする?』

志保「いい。代わらない。可奈、電話ありがとう。それじゃまた明日。バイバイ」

可奈『ええっ、志保ちゃん!? もっと電話したかったのに~! 志保ちゃ~ん!』

ピッ

P「志保、風呂入った…って、やたらと汗かいてる気がするけど、どうした?」

志保「い、いえ…」


~♪

P「ん、奈緒から電話だ。どうしたんだろう?」スッ

志保「だ、ダメです! 出ちゃダメ!」アタフタ

P「へっ? どうした、何かあった?」

志保「実はさっき、可奈から電話があって……」カクカクシカジカ

P「ああ…そういうことに食いつきそうな子にばれちゃったのか」

志保「はい……」

P「メールにラインもさっきから通知がすごい……」

志保「電源切ってた方がいいんじゃないですか?」

P「流石にそれは…。後で4人に電話しておくよ」


P「それで、お風呂入ったよ。先にお入り」

志保「ありがとうございます」

P「ジャージも置いてるから、それを寝巻に使っていいよ」

志保「あ……、パジャマのことすっかり忘れてました。色々とありがとうございます」

志保「それじゃあ入ってきます。……覗かないでくださいよ?」

P「バッ…覗くか!」

志保「ふふっ、冗談です」

パタン

P「ったく……そうだ、電話しておくか」


チャプン

志保(……どうして私あんなこと言ったんだろう)ブクブクブクブク

志保(でもプロデューサーさん、ちょっと慌ててたな)

志保(少しずつ、私も気が緩んできてるのかも)

志保(男の人の、しかもプロデューサーさんの家だからと思うと、最初は緊張したけど……何だかすごく居心地良くなってきた)

志保(お風呂も温かくて、落ち着く……)

志保(あ、ボディソープうちのと同じだ。プロデューサーさんも同じの使ってるんだ)

志保(…)

志保(……)ブクブクブクブクブク


P「うん、分かってるよ。うん…うん、それじゃあ、夜更かししないようにな。はい、おやすみなさい」ピッ

ガチャ

志保「プロデューサーさん、上がりました。お風呂ありがとうございます」

P「どういたしまして」

志保「可奈たちと電話してたんですか?」

P「うん。みんなグイグイ聞いてくるからなあ…ちょっと疲れた」アハハ

P「俺も風呂に入ってくるよ。勝手にテレビ点けて観たり、冷蔵庫のお茶飲んでていいから」

志保「はい」

P「そうだ、ジャージのサイズは大丈夫?」

志保「少し大きいですけど、あまり気にならないです」

P「ならよかった」


『この扉の向こうが最深部みたいだけど、暗号を解く必要があるみたいね…』

『その暗号なら、記号の通りに石を動かしたらいいと書いてましたよ。昨日この遺跡の歴史を予習してたら、それらしいのが書いてあって…』

『わぁ~。琴葉さん、すごいですね~!』

志保「あの時のトレジャーハントのOAって、今日だったんだ」

志保「……」

ザアアァァァ

志保「雨の音、すごい…」

ポスッ コテン

志保(…プロデューサーさんも、こうしてソファに座って横になって、くつろいでたりするのかな)



志保(でもこんなに居心地がいいって、ちょっと不思議)

志保(それにプロデューサーさんも気兼ねなく接してくれるから……)

志保「お父さんがいたら、こんな感じだったのかな」ポツリ

志保(でも、お父さんだとか、そういうのとは違うこの感情は何なんだろう)

志保「それに、このジャージ…」スンスン

志保(プロデューサーさんの匂いがして、落ち着くかも……)

志保(ハッ!……匂いに落ち着くって何!?)ブンブン


ガチャッ

P「ふぅー…さっぱりした」

志保「プロデューサーさん、麦茶要ります?」

P「風呂入ってノド乾いたから飲もうかな。ありがとう」

志保「そう思ったので……はい、どうぞ」

P「ありがとう」

P「あ"あ”~、生き返る……」

志保「なんてジジくさい声出してるんですか…」

P「それくらいに沁みるってことだよ。それに、いつも俺に渋さを求めるくせに」

志保「うっ…そ、それとこれとは別ですから」

P「もう少し渋めな声でやった方が良かった? 福山雅治みたいな」

志保「あ、それいいですね。モノマネしながらもう一度飲んでみましょうか」

P「待って、さすがに恥ずかしい」


P「おっといけね、仕事のカバン出しっぱなしだった。戻しとかないと…」ガサゴソ

志保「あっ。あれって……」

P「ん? どうした?」

志保「プロデューサーさん、向こうの棚に入ってるのって私たちのCDですか?」

P「ん? そうそう。そこの棚はCDとか雑誌とか、アイドル関連の資料を置いてるぞ」

志保「少し見てもいいですか?」

P「OK」

志保「わあ、すごい。こんなに沢山……」

P「出来る限り集めたからな」フフン


志保「CDも全部買ってるんですね」

P「ああ。発売したCDもなるべく自分で買ってるし」

P「そうそう、こんなのもあるんだぞ?」スッ

志保「!! そ、それって!」

P「何を隠そう、志保が初めて受けたインタビュー記事を載せた雑誌だ」フフフ

志保「だ、ダメです! 捨ててください!」

P「良いじゃないか。発言にまだ初々しさが残ってて、俺は好きだけどなあ」

志保「私は嫌です! 私が処分しますから、早く渡してください!」


P「そんな乱暴に取ろうとするな! 危ないって!」

志保「いいから渡してください!」ムググ

P「お、おい! ちょっと!!」グラッ

志保「きゃあっ!」ズルッ

ドンガラガッシャーン

P「い、いてて……」

志保「す、すみません! 大丈夫、ですか…?」

P「あ、ああ……大丈夫」

P(雑誌を取られないようにしてたら、志保から馬乗りにされてしまった)

志保(顔、かなり近い……)

P志保「「……」」


P「ごめん、少し調子に乗ってしまった」

志保「いえ、私の方こそ…本当にごめんなさい」

P「それでも、俺が……あっ」

P「志保、その……」メソラシ

P(ジャージがぶかぶかだから、志保が少し前かがみになると胸元が…!)

志保「えっ?」

P「その体勢だと、胸元が……」

志保「!!」サッ


志保「……へ、変態です!」///

P「た、たまたま目に入っただけだから! 不可抗力!」

志保「でもそこに目が向くってことは日々意識しているってことじゃないですか!」

P「やめて! そんな的確な指摘されると何も言えない!!」

志保「……それで、見えたんですか?」

P「いや、暗かったから輪郭がぼんやり見えたか見えなかったか、くらいで……」

志保「そう、ですか……」

志保P「「……」」


~♪~~♪ゼーロー♪

P「……も、もうこんな時間か。あんまり遅くなっても良くないし、そろそろ寝る?」

志保「は、はい。そうですね、もうかなり夜遅くなりましたから…」

P「隣の部屋にベッドあるから、志保はそこで寝なよ」

志保「プロデューサーさんは?」

P「俺はソファでも床でも、どこでも寝るから」

志保「ええっ……、よくないです。ちゃんとしたところで寝ないと、体壊してしまいますよ?」

P「そうじゃないと、ベッドに一緒に寝るっていうことになるぞ? それは流石に志保も……」

志保「……背に腹は代えられませんから」

P「」


P「じゃあ、電気切るぞ」パチッ

P「……えっと、俺も失礼します」

志保「どうぞ」

ギシッ

志保「……流石に、一人用のベッドを二人で使うと少し狭いですね」

P「やっぱり違う場所で寝ようか?」

志保「それはダメです」

P「ダメって…俺だって男なんだから、もう少し警戒心持って……」

志保「万が一プロデューサーさんから何かされたら、みんなに泣きつけばプロデューサーさんを社会的に抹消することくらい造作もないですから」

P「」

志保「なんて、冗談です。あなたがそんなことする人じゃないって知ってます」クスッ


志保「それに、プロデューサーさんがそんなことする人だったら、そもそも私はこの家に来ませんから」

P「それは、褒められてるの?」

志保「もちろんです。まあ、小学生メイドとかさせるようなヘンタイさんには変わりないですけど……」

P「落として上げて、そこからまた落とすのやめてほしいなあ……」

志保「でも、今日は泊めてくださって本当にありがとうございます」

志保「正直、不安だったので……とても助かりました」

P「……うん、どういたしまして」



志保「……あの、プロデューサーさん」

P「どうした?」

志保「いつもわがまま言ったり、生意気なこと言ってごめんなさい」

P「えっ?」

志保「私、いつも好き勝手なことしてますから。それで、みんなの輪を壊してしまって……」

P「……何言ってるんだ。志保はむしろ手のかからない方だぞ?」

P「みんなと衝突するのも、志保が『もっとこうした方がいい』って思ってるから起きたものだろ? そのおかげで、ユニットライブももっといい方向に成功しているじゃないか」

志保「それは…そう、ですけど……」

志保「本当は少しずつ、みんなと過ごすことに楽しくなってる私がいるんです。でも、それじゃあダメなんじゃないかって、心にささやく自分がいて……」

志保「それでつい悪態ついてしまうから、場を乱したりしてるんじゃないかって」

P「……大丈夫。そんなことはないよ」


P「むしろ志保はもう少し頼ったり、甘えてきてもいいんじゃないかって思うけどな」

志保「私が、ですか?」

P「ああ。もっと俺にわがまま言って、振り回してもOKだからさ」

志保「本当に?」

P「もちろん」

志保「……ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいますね」

P「ああ。いつでも、どんと来いだ」


志保「あの、プロデューサーさん。今からでも良いですか?」

P「今からって、その…甘えること?」

志保「……はい」

P「うん、いいぞ」

志保「それじゃあ……抱きしめてください」

P「」


P「」

志保「……さっき甘えて来いって言ったのは、プロデューサーさんじゃないですか」

P「い、いや、でも抱きしめるって……それこそ、変なことするなって言ったのは志保じゃないか」

志保「それとこれとは別です」

P「ええ……」

志保「ダメ、ですか…?」ジッ

P「ダメ、ではないけど……」



P「……えいっ、ままよ!」

ギュッ

志保「…ふぁ」

P「おうふ」

P(どことはいわないけど、おっきいからすごくやわらかい)


志保「心臓、早いですね。早く鳴ってるのが聞こえます」

P「それは……こんなかわいい子を抱きしめてるんだから、仕方ない」

志保「私が、ですか?」

P「ああ。当たり前だ」

志保「ふふっ、ありがとうございます」

志保(私も、すごくドキドキしてる)

志保(抱きしめられて、息も少ししづらくて、少し暑い……でも、凄く落ち着く)


P「……」ナデ

志保「ひゃっ」ビクッ

P「あ、ごめん。流石に撫でるのは嫌だった?」

志保「いえ、急だったので……。でも嫌じゃないので…続けてください」

P「うん」

P「……髪、サラサラだな」ナデナデ

志保「撫でられると、すごく心地いいです」

志保「最近は撫でられるなんてことなかったから……。それに男の人から、なんてほとんどなかったので……」

P「……そっか」


P「いつでも言ってくれたら、いくらでも撫でるぞ?」

志保「……そうやって、すぐ人をたぶらかすんですね」

P「なんて人聞きの悪い」

志保「ごめんなさい、少し言いすぎました」

志保「本当に優しいですね。だから……」

P「え?」

志保「いえ、何でもないです」


志保(……不思議だな、一番苦手なタイプだと思ってたのに。全然大人っぽくないし、時々子供みたいなこともするし)

志保(私の求める理想の大人とは全然違ってて)

志保(でも最近、この人といるときが一番落ち着く)

志保(どうしてなんだろうってずっと気になってたけど、やっと気が付いた)


志保(私、この人のこと好きなんだ、って)


志保(……でも、この気持ちはきっと叶わないんだろうな)

志保(だから……今だけでも、少しだけいい思いしてもいいよね)

志保「……プロデューサーさん」

P「ん?」

志保「おやすみなさい」

P「…ああ。おやすみなさい」



_________
______
___




___
______
_________

Pipipipipipi…pi


P「……んぁ、朝か」パチッ

志保「スゥ…スゥ……」

P「……そうだった、志保が泊まってたんだ」

P(体が密着してるから、色々当たってる……ちょっとやばい)

P(でも…)

志保「スゥ…」

P(いつもは大人っぽく振る舞ってるけど、こうして見ると14歳の女の子だよなあ……)



P(あ、早く起こさないと)

P「志保…志保、起きなさい」

志保「う、ん……」

P「志保、早く起きないと遅刻するぞ」

志保「……んっ」パチ

志保「あ……おはよう、プロデューサーさん」ニコ

P「」

志保「……!!」ガバッ!

志保「す、すみません。少しボーっとしてました…」カアァ

P(担当アイドルが半ばとろけた表情で、そして微笑んできた)

P(何が言いたいかというと、ものすごくグッときたということだ)



・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・

765プロ事務所


ガチャ

P「おはようございます」

志保「おはようございま、きゃあ!」ガシッ

奈緒「よぉ~し、捕まえたで~?」

P「お、おい、奈緒!?」

美奈子「私たちも」

静香「います!」

可奈「し、志保ちゃん、ごめんね? みんなが志保ちゃんを待ち構えるって言って……」

志保「……大丈夫よ。何だかそんな気がしてたから」



奈緒「そ、れ、で、志保、昨日はどういう夜を過ごしたん?」ウリウリ

志保「別に、ごく普通に過ごしただけです」

静香「ダメよ、正直に言いなさい。ちゃんと吐かないと開放しないわよ?」

志保「はぁ……」

美奈子「もちろん、プロデューサーさんもですよ!」

P「俺も!?」

志保「あ、でも強いて言うなら……」

静香「強いて言うなら?」

志保「私、プロデューサーさんに抱かれたわ」

P静香美奈子奈緒「」

小鳥「!!」ガタンッ!

可奈「?」


静香美奈子奈緒「」

P「ちょっと待って志保さん、その表現は誤解生むから。抱いてない。抱きしめたけど、抱いてない」

志保「少し刺激の強い言葉の方がみんなも……ほら」チラッ

静香美奈子奈緒「」

P「完全に面食らってる…。俺としては誤解を解きたいんだけど…」

志保「さあ、みんなが放心してる今のうちに逃げましょう」タタタ

P「確実にあとで大火傷になりそうだな……」

志保「まあ何とかなりますよ、多分」


P「……それで、レッスン場に逃げ込んだわけだけど」

志保「まだ朝早いですから、ここに来る人も少ないでしょうし」

志保「それに……こうして甘えることもできますから」ギュッ

P「ちょっ、志保さん!?」

志保「『いつでも』って言ったのはプロデューサーさんじゃないですか」

P「ま、まあ、そうだけどさ……ここまで急に甘えるようになるとは」

志保「~♪」ギュウゥ

P(こんな光景見られたら……誰も来ないことを祈るぞ)



ガチャ

エミリー「ふふっ、皆さんも教練場へ来るとは♪」

美也「ライブも近いですからね~♪」

朋花「それに、子豚ちゃん達を喜ばせてあげることが、私たちの使命ですから~♪」

エミリー「あ」

P「」

志保「♪」ギュウ




P「お、おはよう…みんな朝早くからレッスンだなんて殊勝な心掛けだな……」ダラダラ

朋花「おはようございます~。それで、志保さんと何やってるんですか?」ニコニコ

美也「仲良しさんですね~♪」ゴゴゴゴ

P「な、何だか後ろから地鳴りみたいな音が聞こえるけど……」

エミリー「Illicit sexual relations! し、仕掛け人さまと志保さんが、そ、そんな……」ハワワワ

P「何て言ってる分からないけど、大体意味は察したぞ!」

P「な、なあ志保…ってあれっ? いない!いつの間に!!」

朋花「プロデューサーさん♪」ゴゴゴゴ

美也「少しお話聞きたいです~♪」ゴゴゴゴ

P「ちょっと待ってね2人とも、笑ってるけど怖い!!」




P「う、うわああぁぁぁ……!!」ズルズル

ギャーギャー ワーワー

志保「……ふぅ」

志保(ごめんなさいプロデューサーさん)

志保(でも……昨日は楽しかったな)クスッ


チョンチョン

志保「ん?」クルッ

美奈子「つっかまーえた♪」ニコニコ

志保「」

奈緒「さっきの話、じっくり聞かせてもらうからな♪」ニコニコ

志保「」



その後何かにつけて家に帰れない口実を作り、プロデューサーの家に泊まろうと図ったアイドルが再び続出したのはまた別の話

おわり




おまけ


可奈「……あの、音無さん」

小鳥「ん? 可奈ちゃん、どうしたの?」

可奈「あの、『抱きしめる』と『抱かれる』って何が違うんですか? みんなビックリしてたけど……」

小鳥「……」ナデナデ

可奈「わっぷ…お、音無さん、どうして急に撫でるんですか?」

小鳥「何でもないわ。でも、可奈ちゃんはそのままでいてね?」ナデナデ

可奈「??」

可奈「えへへ…」テレテレ


おわり


志保に甘えられたいし、志保に甘えたい人生だった。
あと、かなしほはいいぞ。

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