【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】 (613)

・クレヨンしんちゃんとポケモンSMのクロスオーバーSS
・ストーリーの流れはムーン版準拠。カットしている場面(スクールやジガルデ等)や設定改変、シナリオ改変、キャラ崩壊、敵の手持ちの変更あり
・戦闘描写も適当に書いているので技構成など相当ガバガバです
・ネタバレが多いのでご注意ください
・取り扱っている作品が作品なので、下ネタ多し
・前スレ→しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496394783/)

次レスから再開します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497270152

『……!』ダッ!

しんのすけ「うぉ、なんだ?」フッ

その時、しんのすけの身体が何者かに掴まれ、一瞬のうちに姿を消してしまった!

ウツロイド「じぇる……!」ドカッ!

デンジュモク「デンッ……!?」バキッ!

すると、次の瞬間ウツロイドたちに強烈な打撃が入り、その身体をふらつかせた。

ルザミーネ「!?」

ルザミーネ「今のは野生のビースト? でも、なぜしんのすけ君を助ける真似を……?」

ルザミーネ「……ともかく、しんのすけ君を早急に始末しなくてはいけませんね! ホールを開けつつ、消えたしんのすけ君を探さないと」

しかし、ルザミーネはふと足を止めて、考え込んだ。

ルザミーネ「……でも、しんのすけ君のあの身体能力……それに5歳ながら島巡りで大試練をこなしたものね。Zリングも持っている……」

すると、ルザミーネの頭の中に、悪魔のような発想が生まれた。このままあの幼くて強い子供を始末するのは非常に惜しい。だったら……。
そう考えると、かえってしんのすけの存在が愛おしく思えてきた。彼をどうにか掌中に収めることができれば、ビーストも……。

ルザミーネ「フフフッ……あはははっ!! しんのすけくん……あなたは殺さないであげる。たくさんたくさん、溢れるほどの深い愛をあなたに注いであげるわ」

ルザミーネ「愛に満たされて、わたくしのことしか考えられないくらいに、ね……」

前スレの>>915 修正

細かい箇所ですが、一応修正です

ジュナイパー「……ホー」

リーリエの言葉を聞いたカザマたちは示し合わせたようにそれぞれの顔を見合わせ、互いに頷く。

ジュナイパー「……」スッ

最初にカザマが片翼を前に出した、続いて単独の姿に戻ったマサオがヒレを翼の上に重ね、その上にネネが黒い大きな手を、ボーちゃんが影の手をそれぞれ重ねてリーリエを見据える。

リーリエ「……!」スッ

リーリエが最後に手を重ねると、カザマたちは自らボールに戻り、リーリエの胸へ飛び込んだ!

ハウ「これって……」

グラジオ「リーリエを認めたのか……」

リーリエ「……カザマさん……みなさん……ありがとうございます!」ギュッ

リーリエ「必ず、みんなでしんちゃんを助けましょう!」

ハウ「じゃーリーリエ! さっそくおれと戦ってみよーよ! でさ、カザマたちがどんな技使うのか分析してみよーね!」

リーリエ「はい!」

更新……の前にちょっと修正

前スレ
>>914
さらわれこと→さらわれたこと
前スレ
>>920
月の素材は→月の笛の素材は

うーむちゃんと推敲しなきゃダメですね

メレメレ島(ひろし&ハウ)

ひろしとハウがメレメレ島に近付いてまず気がついたのは、島のあちらこちらから黒煙が上がっていることだった。接近するにつれて、ハウオリシティの建物から火の手が出ている事実を2人に突きつけた。
船着場に着いたところで、2人は街の惨状と事態の重さを改めて実感した。

ハウ「これ……みんなビーストがやったのー……?」

ひろし「ひでぇ……最初に来た時とはえらい違いだ……」

ハウ「うんー……みんな、無事だといいけどー」

すると、遠くからハウの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

???「ハウくん!」

ひろし&ハウ「!」

ハウ「イリマさんー!」

現れたイリマは、相変わらずの爽やかな表情ではあるものの、鮮やかなピンク色の髪やトレーナーズスクールの制服が、ところどころ煤で汚れていたり、破れている。

イリマ「はい! キャプテンのイリマです! あなたがたが船でやってくるのが見えたので、駆けつけてきました! どうなさったんですか?」

ハウ「おれたちーじーちゃんを探しに来たんだー。今、じーちゃんはどこにいるのー?」

イリマ「ハラさんですか? ハラさんはリリィタウンで、巨大ポケモンから逃げてきた人たちの保護に当たっています。なにかあったのですか?」

ハウ「実は月の笛を直すのに、カプのかがやく石が必要でー……」

…… …… ……
ハウとひろしはイリマにこれまでのことを説明した。
…… …… ……

イリマ「なるほど……あれはビーストと言うのですね。では僕がハラさんのところまでご案内いたします!」

ひろし「その前に、俺たちは博士の研究所に行って、ポケモンを保護しに行かなくっちゃいけないんだ。一番道路のところで待ち合わせ……ということには出来ないかな?」

イリマ「そうですね……今はビーストの攻撃も収まっていますし。分かりました。では1番道路に向かうよう、ハラさんに伝えておきますね!」

ひろし「よし、なら俺たちも急いで研究所に向かおう。研究所のポケモンを、急いで保護しなくっちゃな!」

ハウ「うんー、イリマさん、お願いー!」

イリマ「任せてください!」

1番道路 博士の研究所前

ひろし「くそっ、ビーストの奴ら、俺たちの新しい家まで……!」

ひろしは、ハウオリシティはずれにある自宅の焼かれていた姿を思い出して、ビーストとルザミーネに対して怒りに震えていた。

ハウ「おじさん……」

ひろし「……ああ、ごめんなハウくん。今は怒ってる場合じゃないな。早いとこ博士のポケモンを見つけなきゃ」

ハウ「そうだねー……とりあえず、研究所は無事みたいだけどー」

ガチャ

ひろし「博士のポケモンはみんなボールの中に入ってるって言ってたよな」

ハウ「うんー博士が留守にするときは水槽の中のポケモン以外はボールに入れてあるんだー。じゃないと脱走しちゃったりするしー」

ひろしは水槽を覗くと、サニーゴやラブカスと目を合わせた。どちらとも、今何が起きているのか、本能で分かっているのか不安そうな視線を送っている。

ラブカス「ラブゥ……」

サニーゴ「サニーゴ……」

ハウ「よしよしーみんなボールに戻って博士のところにいこー!」

ひろし「俺は地下の方を探してみるよ」

ひろしは水槽のすぐそばにある階段を降りて、地下室へと降りていった。電気は止められているのか、あたりは真っ暗で、持っていたスマートフォンのライト機能を明かりにして探し回る。

ひろし「……あった!」

博士の机の上にいくつものモンスターボールが置かれているのをひろしは見つけた。それらを回収しようと手を伸ばした時だった。

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ひろし「!」

ハウ「おじさんっ! ビーストが近くに来てるよー!」

ひろし「ああ、わかってる!」

ひろしは急いでモンスターボールを回収すると階段を駆け上って、ハウと研究所を飛び出した。

ドカァァァン!!

ひろし&ハウ「!」

ハウ「研究所がー!」

何者かの攻撃を受けて炎上する研究所。
炎の向こうに、巨大な影が現れたことにハウとひろしは気付いて身構える。

テッカグヤ「フゥー……」ゴゴゴ

ひろし「でけぇ……! ポニ島で見たやつより倍はあるぞ!」

ハウ「おじさん離れててー!」スッ!

ハウ「行くよー! ガオガエン!」ヒョイッ

ガオガエン「ガオォォォッ!」ポンッ

ハウ「ガオガエン、DDラリアットー!」

ガオガエン「オオオッ!」ギュルルンッ!

ガオガエンは両手に闇の力が宿った炎を纏うと、両腕を広げてテッカグヤに突進した! テッカグヤは2つの噴射口から銀色に輝く弾丸を発射するが、ひるまずテッカグヤにタックルを食らわせた。

ガオガエン「ガォオォォッ!」

ズズンッ!

テッカグヤ「フゥー……?!」グラリ

ひろし「効いたか?」

ハウ「……」

テッカグヤは傾いた身体を持ち直すと、なんと身体の下部と両腕の噴射口が点火して空へ飛び始めた。その衝撃と熱で、ガオガエンはおろか、ひろしとハウが吹っ飛ばされる。

ハウ「うわっ……!」

ひろし「ハウくん、大丈夫か?!」

ハウ「平気ー!」

ハウは吹っ飛ばされてもなお、テッカグヤへと視線を向けていた。テッカグヤは空高く上昇していた。そのままどこかへ飛び去っていくのかと思いきや、大きく旋回して身体の先端をこっちに向けて落下し始めた。

キィィィィン!

ひろし「おいおいおい! こっちに落ちてくるぞ!」

ハウ「ガオガエン! 逃げてー!」

ガオガエン「ガォォォッ!」ダッ

2人と1匹が草むらの中を走り出してきた頃、上空からテッカグヤの落下音が轟いた。そして大音量の破壊音と衝撃が背中を襲い、再びひろしとハウ、そしてガオガエンは吹き飛ばされた。

ゴゴゴゴ……

ハウ「ガオガエン、おじさん、だいじょーぶ?」

ひろし「く、ううっ……今のはヘビーボンバーか……?! あんな巨体が落ちてくるなんて……」

ガオガエン「ガオオ……」

テッカグヤ「フー……」

落下地点とおぼしきクレーターから、テッカグヤが起き上がって、こちらへ顔を覗かせてていた。

ひろし「ハウくん……悔しいが今は逃げよう! こいつとまともにやりあって勝つのは無理だ……!」

ハウ「ううー……。ガオガエン戻ってー」

ハウがガオガエンをボールに戻そうとした時だった。テッカグヤが噴射口をこちらへと向けてきた。

ひろし&ハウ「!」

テッカグヤ「フー……」キィィン

ひろし「やばっ……!」

ハウ「おじさん……!」

噴射口が熱を帯びて光りだす! それが何を意味するのか、2人はすぐに理解したと同時に死を覚悟した。その時だった。

「カ プ ゥ ー コ ッ コ ォ ー ッ ! !」

バチチチッ!!

テッカグヤ「フー……!??」

ひろし&ハウ「!?」

テッカグヤに雷が落ちてきたかと思うと、電気を帯びながらそのままぐらりと再び傾き、今度こそ倒れてしまった。噴射口から、爆炎が出る気配もない。

ズシンッ

テッカグヤ「……」

ひろし「今のは……?」

ハウ「この声……!」

「カプゥー!」ギュンッ!

バチバチと電気を帯びながらふたりの前に現れたのはメレメレの守り神、カプ・コケコだった。外殻を外して、ひろしとハウを静かに見つめている。

ハウ「わー! カプ・コケコだー!」

ひろし「このポケモンが、カプ・コケコなのか!」

ドタドタドタッ

ケンタロス「モォォォッ!」

???「お二人方! ご無事ですかな?」

ハウ「じーちゃん!」

ひろし「ハラさん!」

ハラ「カプ・コケコを追って来てみれば、ハウとひろしさん……危ないところでしたな」

ひろし「ハラさん、ありがとうございます」

ハラ「礼なら私よりカプ・コケコに……」

ハウ「じーちゃん、実は……」

ハラ「うむ、話はイリマより聞いております。……ですが、かがやく石はそれぞれのカプがしまキングに渡す特別なもの。まずはカプ・コケコに判断を委ねましょうぞ」

ハウ「お願い、じーちゃんー……」

ハラ「ハウ、いつもの元気はどうしましたかな?」

ハウ「じーちゃん……。ごめん、おれ、ビーストに壊された街を見て、すごいショックを受けちゃってー……。こんなことになるなんて、思わなかったからー……」

ハラ「……しまキングの孫のハウよ。気を強く持ちなさい。お前は島巡りを経て心も身体も強くなったはずですぞ」

ハラ「街のことは心配めさるな。事態が収まったあとで、みなで復興すればいいのですから。ですが、ハウが折れてしまってはそれすら出来なくなってしまいますぞ!」

ハウ「うん、じーちゃん……」

ハラはハウの頭をなでると、カプ・コケコへと近づいた。

ハラ「今の話……お聞きになりましたかな?」

カプ・コケコ「……」

ハラ「カプ・コケコよ。お頼み申します。これは、アローラにとっても未曾有の危機なのです。どうぞ、孫たちに未来を与えてくだされ……!」

ハウ「お願いー! カプ・コケコー!」

ひろし「俺からも、頼む!」

カプ・コケコ「……」

カプ・コケコは燃える博士の研究所をバックに、ひろしとハウ、そしてハラを試すように見つめている……。

カプ・コケコ「カプゥー! コッコォー!」バチチチッ!!

カプ・コケコは電気を再びまとい始めると、ハウオリシティの方角へと飛んでいってしまった。

ひろし「……ダメだったか」ガックリ

終わった。自分たちの願いは、カプに届かなかったのか。落胆するひろしだが、ハラは首を横に振った。

ハラ「いえ……カプ・コケコは、『後は任せたぞ』とおっしゃられてました。その証拠に――」

そう言って、ハラは草むらに落ちている、かがやく石をひろしたちに見せた。

ハウ「それってー……!」

ひろし「かがやく石だ!」

ハラ「……持って行きなされ。そして頼みましたぞ! アローラの存亡は、あなた方にかかっています!」つ かがやく石

ハウ「うんー! ありがとーじーちゃん! カプ・コケコー!」

ひろし「よし、それじゃあ次はハプウちゃんのところだ!」

カンタイシティに着いたククイ博士は、ビーストとの戦いで疲弊したマオとスイレンの代わりに、ウルトラビーストたちの相手をしていた。

ククイ博士の相手をしているのは、マッシブーンとは逆に華奢で細身の身体付きをし、髪のように伸びた羽を持つ白いウルトラビースト、フェローチェ。それが3匹、ククイ博士の前に立ちふさがっている。

対するククイ博士は、まひるのすがたのルガルガン1匹のみ。数の差で不利と思われたが……。

ククイ博士「よーしルガルガン! いわなだれだ!」

ルガルガン「ウォーーンッ!」

ルガルガンはジャンプし、フェローチェたちに向けて粉々にした岩を雨あられのごとく投げつけた!

フェローチェたち「フェロッ……!?」

ククイ博士「そして、ビーストたちにアクセルロックだ!」

ルガルガンは高速で飛び出すと、いわなだれで怯んだフェローチェたちに突っ込み、次々と跳ね飛ばしていく! そのままフェローチェたちはバタバタと道路に倒れ伏していった。

ククイ博士「ジャスト4ターン。予言通りだったろ?」

スイレン「いわなだれで敵を怯ませつつ、アクセルロックで素早く仕留める……さすがです!」

カキ「さすがバトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスク! 不謹慎だが、燃える戦いだ!」

バーネット「えっ? ククイ君がロイヤルマスクなの?」

ククイ博士「日夜技の研究をしているからね。もちろん複数の相手を倒せる技も把握しているから、このくらいお手の物さ!」

ククイ博士「そしてカキ、僕はククイ博士であって、ロイヤルマスクではない!」

バーネット「あぁ、びっくりした。そうよね、体格も戦い方もロイヤルマスクに似ているけれども、ククイ君の方が魅力的だもの」

ククイ博士「う、うーん……なんか微妙な気分」

ククイ博士「ところでバーネット、ウルトラホールの状況はどうだい?」

バーネット「今のところ、カンタイ周辺にウルトラホールが開く気配はないみたい。空間も安定しているし、ここの住民を安全な場所へ避難させるなら、今が一番かもね」

ククイ博士「わかった! それじゃあカキ! スイレン! 君たちは引き続きアーカラ各地にいる、避難している人たちの保護を頼むよ!」

カキ「わかった、おれはロイヤルアベニュー周辺に向かう。スイレンはオハナタウンを頼む」

スイレン「はい!」

カキはライドポケモンのリザードンに乗って空を飛んでロイヤルアベニューへ、スイレンはケンタロスにまたがってオハナタウンへと向かっていった。

バーネット「後はライチさんとマオがうまくやってくれるといいのだけれども……」

ククイ博士「うまく行くさ。さっきハウとしんのすけのお父さんから、メレメレでかがやく石を手に入れたっていう連絡が来たよ。今2人はポニ島に向かってるそうだ」

バーネット「カプ・コケコは協力的ってことね。残りのかがやく石はここを含めて3つ……。でも、きっと他のカプも手を貸してくれるわよね」

ククイ博士「ああ!」

ライチ&マオ「博士!」

ククイ博士「!」

ディグダトンネルから、ライチとマオが出てきてククイ博士たちに手を振った。ククイ博士が二人のもとへ走り寄る。

ククイ博士「どうだったかな? カプ・テテフは……」

ライチとマオは顔を合わせると、示し合わせたように頷いた。

ライチ「カプ・テテフもできる限り協力すると言っていたよ。もともと、カプ・テテフもビーストが襲来してきたとき、怪我した人とポケモンたちを積極的に治していったからね。……やり過ぎないよう注意しているけどさ」

マオ「これがカプ・テテフからいただいたかがやく石でっす!」

マオの手には、かがやく石が握られていた。それをククイ博士へと手渡す。

ククイ博士「よし、これでかがやく石は残り2つだ!」

ライチ「ん、メレメレかウラウラのどちらかが石を貰えたのかい?」

ククイ博士「ああ、メレメレでカプ・コケコから石を貰えたって連絡が入ってきてね。今、ハウとしんのすけのお父さんがポニ島に向かっているよ」

ライチ「となると、ウラウラとポニか。クチナシとしまキングの孫のハプウ……だったね。2人がうまくカプに取り計らってくれるといいけれども」

ククイ博士「大丈夫。きっとうまくいくさ!」

ライチ「それにしても、財団の代表……ルザミーネだっけねぇ。このアローラにビーストを解き放つだけじゃなくて、大試練を終えて疲弊したしんのすけに手を出して、ビーストの世界にさらうなんて、許せないね」

マオ(初対面でしんのすけ君をお持ち帰りしようとしたのにそれ言うんですか……)

ライチ「リーリエは、しんのすけと母親を取り戻しにビーストの行く世界に行くつもりなんだろ? なにか母に対して深い事情でもあるんだろうね。できることなら、手伝ってやりたいけどさ」

ククイ博士「それはリーリエ自身が解決しなきゃいけない問題だよ。僕らが深入りしていいことじゃない。僕らがするのは、この世界を守ることだよ」

ライチ「そうだね……」

ククイ博士「……ライチさん。いや、マオにも訊いてみようかな」

マオ「はい?」

ククイ博士「君たちはビーストと戦ってみて、他のポケモンと比べてなにか感じるものはあったかい?」

ライチ「ビーストと戦って感じるもの、ねぇ」

マオ「あたしは正直、早く街の人たちを避難させなきゃって思っていたので……そういうことを考えている余裕がありませんでした。強いて言うなら……なんとなくですけど、ぬしポケモンのラランテスと同じオーラをまとっていたのを見たくらいです」

ライチ「そうだね……あたしは特に何も感じなかった、かな」

マオ「えっ……?」

ライチ「確かにビーストたちと一戦交えてみると、そこらのポケモンとは比べ物にならない戦闘力を持っているよ。ひょっとしたら、1匹1匹が伝説のポケモンに肉薄するくらい強いかもね」

ライチ「だけど、それ以上だね。ビーストたちは強いポケモンだけど、後は草むらから飛び出してくる野生のポケモンとそう変わらない気がする」

ククイ博士「僕も同じ感情を抱いたんだ。さっき、白いビースト3匹と戦ってみたけれどもね……繰り出してくる技は、僕が知っているかくとうやむしタイプの技ばかりだったんだ」

ククイ博士「戦闘力は桁違いだし、その凶暴性もさることながら……だけど、ビーストもまた、ポケモンということかもね」

ライチ「そうだね……ビースト自身もひょっとすれば、他のポケモンと同じように心が通じ合えるかもしれないね」

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

全員「……!!」

ククイ博士「ビーストの反応……!」

バーネット「周りの空間に歪みは見られないから、どこか近くにビーストがいるっていうことかしら?」

マオ「ライチさん! あそこです!」

マオが空を指すと、遠くにマッシブーンとフェローチェの群れがこちらに向かって飛んできたではないか!
数え切れないほどのマッシブーンとフェローチェが羽音を立ててククイ博士たちの上空を通り過ぎていくが、そのうちの数匹がククイ博士たちの存在に気付いて、降り立ってきた!

マッシブーンたち「ブゥーーンッ!」フロントダブルセップス!

フェローチェたち「ローッ……!」ビシッ

ライチ「行くよ、マオ!」スッ

マオ「はい、ライチさん!」スッ

ククイ博士「僕も加勢する――」

ライチ「博士、あんたは船に乗ってエーテルパラダイスに戻るんだ! この島を守るより、やるべきことがあるんだろ!」

ククイ博士「!」

ライチ「さ、ここはあたしらに任せて、早く行きな。それで、絶対にしんのすけのこと、取り戻すんだよ。あの子はライチさんを初めてナンパしてくれたからねえ。その想いに応えてあげないと」ニヤッ

マオ「ライチさん……」ジローッ

ライチ「ふふふ……ジョークはともかくとして、アローラのこと、アンタたちに託したからね」

ククイ博士「ああ、任せてくれ! バーネット、行くよ!」

バーネット「ええ!」

2人が船着場へと走り出したところで、ライチとマオは一斉に各々のボールを投げつける。

ライチ「頼んだよ、ダイノーズ!」ヒョイッ

マオ「行くよ! アママイコ!」ヒョイッ

ダイノーズ「ダノノー!!」ポンッ

アママイコ「アッマーイ!!」ポンッ

ライチ「ダイノーズ、いわなだれ!」

マオ「アママイコ、ふみつけ!」

ダイノーズ「ノズズッ!」ズズズッ

アママイコ「アマッ!」ダッ

ダイノーズが無数の岩をマッシブーンとフェローチェに向かって落としていき、アママイコは1匹のフェローチェに向けて頭上へジャンプし、踏み潰すように足を勢いよく振り下ろした!

マッシブーンA「ブーンッ!」グッ!

フェローチェA「フェロッ!」フッ!

しかしフェローチェは一瞬にして姿を消して回避し、マッシブーンはいわおとしを両手で受け止める。
更に、着地したアママイコを狙いすましたように、別のフェローチェがとびひざげりを放ち、ダイノーズにフェローチェと同様別個体のマッシブーンがアームハンマーを繰り出した!

ドゴッ!

ドガッ!

ダイノーズ「ダノッ!?」

アママイコ「アマィッ!」

マオ「アママイコ!」

ライチ「ダメだ、数が多いね!」

更にダメ押し、と次々とマッシブーンとフェローチェたちがダイノーズとアママイコ、更にはトレーナーのライチとマオに襲いかかってくる!

マッシブーンたち「ブゥゥゥンッ!」ドドドド!!

フェローチェたち「フェロォォッ!」ドドドド!!

ライチ「くっ……!」

マオ「ライチさん!」

???「ゴルバット! エアスラッシュ!」

???「ラランテス! ソーラーブレード!」

ゴルバット「ゴルルッ!」バサバサッ!

ラランテス「ラランッ!」ブンッ!

マッシブーンB&フェローチェB「!」

ゴルバットの空気の刃がマッシブーンたちの筋肉の身体を次々と切り裂いてその身を怯ませ、太陽の力を得た光の刃が、フェローチェたちを吹き飛ばしていく!

マッシブーンB「ブ、ブンッ!」ザクザクッ

フェローチェB「フェローッ!?」ザンッ

マオ「い、今のは……?」

ザッ

???「ビーストにダメージを与えたよスッチー!」

???「やったねスカりん!」

スッチー&スカりん「ふたりの愛の力は、ビーストにだって負けない!」

ライチ「……あんたたちは!」

マオ「スカル団?!」

マッシブーンB「ブンブーンッ!」グワッ!

フェローチェB「フェロォォ!」フシューッ!

スッチーとスカりんに倒されたマッシブーンとフェローチェが起き上がり、4人に襲いかかる!

スッチー「ひええ! こっちに来たーっ!」

スカりん「やっぱ戦わなきゃよかった怖いよスッチー!」

ライチ「くっ……!」

助けに行こうとも、ダイノーズは傷ついて動けない。このままじゃ大変なことになる――。その時だった。

「カ プ ゥ ー フ フ ! !」

カッ!!
ドンドンドンッ!!

マッシブーンたち「ブッ……!?」ドッ!

フェローチェたち「ロォッ?!」ドッ!

ライチ「……!」

咆哮と供に不思議な光弾がマッシブーンとフェローチェたちへ落下したかと思うと、次々とビーストたちが倒れていく!
その直後、今度はキラキラと光る鱗粉がライチたちの前に降り注ぎ、傷ついたダイノーズとアママイコの傷が塞がっていく。

ダイノーズ「ノズズッ!」ギラッ

アママイコ「アッマーイ!」シャキーン!

マオ「ムーンフォースに鱗粉……ライチさん、これって!」

ライチ「ああ……」

空を見上げると、桃色の光がコニコシティの方角に向かって消えていくのが見えた。

ライチ(……ありがとう、カプ・テテフ)

スカりん「なんだか知らないけど助かったよスッチー!」ギュッ

スッチー「私たちの愛の力ね、スカりん!」ギュッ

ライチ「……」イラッ

その頃、ウルトラスペースでは――。

気が付くと、ルザミーネや彼女の手持ちのウルトラビーストの姿が消えており、しんのすけは優しく地面に下ろされた。
しんのすけはきょとんとしていると、他の個体より小さなフェローチェが、しんのすけの顔を覗いていた。

フェローチェ『お怪我はありませんでしたか? しんのすけ様……いえ、しん様』

しんのすけ「あんた誰? なんでオラの名前知ってんの?」

フェローチェ『覚えていませんの……。でも、わたくしはあなたに助けられたこと、忘れていませんわん』

しんのすけ「そうだっけ? てゆうか、どっかで聞いたことあると思ったら、あいちゃんみたいな声してるね」

フェローチェ『あいちゃん……とは存じませんが、どなたでしょうか?』

しんのすけ「カスカベ地方にいる、オラのお知り合いの1人。とってもお金持ちで、いつもオラに付きまとってマサオくんをこき使ってるの」

フェローチェ『それに似ていると?』

しんのすけ「そーそー、声もカザマくんたちのように似てるし、しん様って呼ぶの、まんまあいちゃんだし」

フェローチェ『まぁ、しん様のお知り合いに似ているなんて、光栄ですわ。なんなら、そのままあいと呼んでくださいませ。なにせ、人間に呼ばれる名前が無いので』

しんのすけ「じゃああいちゃん、なんでオラのこと知ってるの?」

フェローチェ(酢乙女あい)『以前、あなた方に助けていただいたからです。あなた方がアローラ地方と呼ぶ世界のアーカラ島で……』

しんのすけ「あーっ!」

フェローチェ『思い出していただけましたか?』

しんのすけ「……なんだっけ?」

フェローチェ「」ガクッ

しんのすけ「オラ、アーカラ島っていうと、ライチおねいさんとカキくんの乳首しか印象に残ってないからー」

フェローチェ『は、はぁ……』

フェローチェ(なんてマイペースで変わった子なのかしら……初めて見るタイプの人間ですわ)

突然、しんのすけのリュックがもぞもぞと揺れ始めた。

ゴソゴソ

しんのすけ「お?」

ロトム図鑑「ふぅーっ、やっと起動できた」

ロトム図鑑「まったく……変なエネルギーが身体中に流れ込んで強制的にシャットダウンしたかと思ったら、ここはどこだ?」

しんのすけ「あれ? ぶりぶりざえもん、いつのまに?」

フェローチェ『あなたは確か……?』

ロトム図鑑『ふん、忘れたのか。ならもう一度名乗ってやる。その耳かっぽじってよく聞くがよい』

ロトム図鑑「私はアローラ地方のアイドルにしてもりのようかんのゆるキャラ! その名もレオナルド・ロトブリオ。もしくはアレッサンドロトム・フランチェスカ・デ・ニコラと呼ぶが良い」

しんのすけ「ぶりぶりざえもんっていうの」

フェローチェ『まぁ、変わったお名前。ぶりぶりざえもんさん。わたくしはあいですわん』

ロトム図鑑「おいっ! 間違って覚えられたじゃねぇか! どーしてくれる!」

しんのすけ「だって事実だし」

しんのすけ「ねぇ、ひょっとしてあいちゃんってウルトラビーストなの?」

フェローチェ『ウルトラビースト……? そういえば、あの生き物と合体していた人間の女は、あい達をそんなふうに呼んでいましたわん』

ロトム図鑑「なに? お前がウルトラビーストなのか?」

フェローチェ『それより、しん様には確か、カザマくんとマサオくんという方が一緒にいたような気がしたのですが……』

しんのすけ「あーカザマくんもマサオくんも、みんな向こうの世界にはぐれちゃったみたいで。いやぁ全く参りましたな、もう」

フェローチェ『むしろ、あなたがこっちに来てしまったと思うのですが……』

しんのすけ「そうともゆー」

しんのすけ「てゆうか、ここってどこなの?」

ロトム図鑑「GPS機能を使っても、表示されないどころかここは電波も通っていないとは。ここはどこか辺境の地かどこかなのか?」

フェローチェ『あいにも、はっきりとは分かりませんわ。ただ、ここはしんのすけくんにもあいにとっても異なる別の世界で、簡単に言うなら世界の狭間のようなものでは……』

しんのすけ「んー……オラにはさっぱりだけど、ここから元の世界に帰ることって出来る?」

フェローチェ「はい! 『穴』が開いていれば、ですけれども」

しんのすけ「穴?」

フェローチェ『この世界には、いろんな世界へ通じる穴が、時折開かれることがありますわ。ですから、あなたがたがウルトラビーストと呼ぶ、様々な世界からやってきた生き物も、多くここに生息していますの』

フェローチェ『ですから、しん様とぶりぶりざえもんさんのいた世界への穴が開いて、それを見つけることができれば、帰れますわ』

ロトム図鑑「ホントか?」

しんのすけ「じゃあ穴探しに行きますか。ほっとくとかーちゃんとリーリエちゃんがうるさいし、お腹もすいたし」テクテク

フェローチェ『ああ、お待ちになって。あいもお伴いたしますわ! 助けてくれたお礼に、しん様達を元の世界へ送り届けますわ!』

しんのすけ「じゃ、ひとつよろしく頼むねー」

ロトム図鑑「ほんとに頼むぞ。こっちは命かかってるんだからな」

ビーストの世界をさまよい歩くしんのすけたち。あたりには野生のウツロイドがたゆたっており、空には時折フェローチェやテッカグヤが飛んでいる。
かと言って地上は安全かと思ったらそうでもなく、マッシブーンたちがポーズを見せて肉体美を自慢していたり、デンジュモクが闊歩しており、中にはアクジキングが岩壁や植物を口の中に放り込んでいた。
ビーストたちの目をかいくぐりながら、しんのすけたちは元の世界へ通じるウルトラホールを探し歩いていた。

しんのすけ「なかなか穴が見つからないね」

フェローチェ『いつ、どこで向こうの世界に通じる穴が開かれるか分かりませんから……』

ロトム図鑑「くそっ、インターネットが接続できる場所なら救難信号なりGPSが使えたものを。まったくルザミーネめ、面倒なところに連れてきおって。今度会ったらたたでは済まないからな!」

しんのすけ「ぶりぶりざえもんが役に立たないのはいつものことだけどね」

ロトム図鑑「やかましい! だいたいお前もポケモンを図鑑登録しないからだろボケ!」

しんのすけ「だってめんどくさいんだもーん」

ロトム図鑑「ケッ! しょせんちっさいインドぞうさん坊主にトレーナーなど務まらんのだ」

しんのすけ「なんだとー! ぶりぶりざえもんにちっさいインドぞうさんなんて言われたくないもん! インドぞうさんないクセに!」

ロトム図鑑「言ったな貴様! 図鑑に入ってるから見えないだけで、私のインドぞうさんこそ最強だ!」

しんのすけ「オラのインドぞうさんの方が最強だもん!」

ロトム図鑑「いいや私のインドぞうさんこそアローラ1だ!」

しんのすけ「なにおー! オラのインドぞうさんの方が宇宙一だもん!」

フェローチェ(インドぞうさんとはどういう意味なのか知りませんが、なんだかすごく恥ずかしくなってきましたわ……)

しんのすけ「フンだ!」プイッ

ロトム図鑑「フンッ!」プイッ

しんのすけとロトム図鑑は互いに目を合わせないように体ごと逸らしながら進んでいくと、前方に、紙人形のような形をした小さなウルトラビースト――カミツルギが舞い降りてきた。

カミツルギ「……」フワフワ

しんのすけ「なにこれ?」

フェローチェ『この方もきっと、しん様のおっしゃっていた、ウルトラビーストでしょう』

ロトム図鑑「こんな紙っペラがウルトラビースト? はっ、紙飛行機にして吹き飛ばしてやるぜ! 喰らえラスターパージ!!」

意気揚々とロトム図鑑が飛び出す!
するとロトム図鑑の敵意に反応したかのように、カミツルギが動き出した。両手であたかも手刀を打つように、ぶりぶりざえもんへと襲いかかった!

カミツルギ「カミッ!!」ブンッ!

ロトム図鑑「ブヒッ!?」サッ

ザンッ!!

ぶりぶりざえもんが文字通り紙一重で回避した瞬間、彼の背後にある岩と植物が唐竹に割れて、粉々に砕け散った!

しんのすけ「すげー」

カミツルギ「カミーッ!」

カミツルギは敵とみなしたぶりぶりざえもんに対して、何度も斬りかかってくる! その度に周りの岩や植物が切断されていく。

ロトム図鑑「わ゛ーっ! 早くなんとかしろー!」

しんのすけ「やれやれ……あいちゃん、お願い」

フェローチェ『お任せ下さいませ!』バッ

しんのすけのそばに立っていたあいが、一瞬で200キロ近くの速度でカミツルギに突っ込むと、とびひざげりを放った!
あいの不意打ちを受けたカミツルギは回避することもできず、そのまま岩壁に叩きつけられる。

ドゴッ!!

カミツルギ「ヅルッ!」ズズンッ!

しんのすけ「おー早い早い!」パチパチ

あいは2歩分後退すると、カミツルギが斬りかかってくるが次の瞬間にはあいが背後に回り込み、トリプルキックを放った!

ドカドカドカッ!!

カミツルギ「か、カミッ!?」

背中から音速のスピードによる蹴りを3発も受け、カミツルギは一度地面に転がると、相手が悪いと察したのか、奥へと引っ込んでいった。

カミツルギ「カ……カミィ~」フラフラ

ロトム図鑑「ふぅ、口ほどにもなかったぜ」

しんのすけ「あんた何もやってないでしょ」

フェローチェ『これがあいの実力ですわ。お手伝いする分には差し支えないと思いますが……お気に召したでしょうか』

しんのすけ「すごいスピードだったねえ。鼻にも止まらぬ速さですな」

ロトム図鑑「それを言うなら、目にも止まらぬ速さだ」

フェローチェ『まぁ、そう言ってくだされば、あいも戦った甲斐がありましたわ』

???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」

しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」

ウラウラ島 マリエシティ(グラジオ)

エーテルパラダイスから離れて、マリエシティに降り立ったグラジオは、クチナシを――それでなくても彼の居場所を知っているキャプテンたちの姿を探していた。
マリエシティもまた、他の島同様、ビーストが暴れて目を覆いたくなるような光景へ変わり果ててしまっていた。
ジョウト地方の趣が残っていた建物のほとんどが崩れ、ひどいものでは、潰れてガレキの山と化したものまで様々だ。
名所であるマリエ庭園に至っては整備された草が焼け焦げ、橋は残骸がギャラドス型の池に沈み、茶屋の建物も火事になって煙を上げていた。

グラジオ「…………」

遠くを見ると、金箔の貼られた五重塔が、あたかも巨大な刃物で袈裟斬りにされたように切断されていた。これもまた、ビーストの仕業なのか。

グラジオ(母上……こうすることが、あなたの本当の望みだったのですか)

グラジオはここが危険というを理解しながらも目を閉じた。まぶたの裏には、いなくなってしまった一人の『家族』のために奮闘するルザミーネの姿が、そして次に部屋の一室でウツロイドと対面するルザミーネの光景が蘇る。

グラジオ(あの時から……母上は母上で無くなってたのかもしれない。だが、オレもリーリエも、アンタを――)

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

グラジオ「……!」ピクッ

グラジオの持っているウルトラホールみっけマーク3がシグナルを鳴らし、震えだした。すぐにタイプ:ヌルを出して身構える。

ヌル「オオォォッ!」

グラジオ「どこから……来る!?」

すると、グラジオの眼前、マリエ庭園の中央部にウルトラホールが開き始めた。
ウルトラホールから現れたのは、テッカグヤに次いで巨大な体格と、身体の大半が大きな口を持つウルトラビースト、アクジキングだ。

アクジキング「グモォォォォッ!」

アクジキングが姿を現したとたん、すぐに2枚の舌を動かして、マリエ庭園の地面や建物の残骸、水を口の中に放り込んでいく。

グラジオ「……オレ達は眼中に入ってないと言いたげだな。行くぞ、ヌル! アイアンヘッドだ!」

ヌル「オオォォォッ!」ダッ!

ヌルは走り出すとジャンプし、アクジキングの頭部に向けて鋼鉄の兜を突き出して、頭突きを放つ!

しかしアクジキングは、初めからヌルの攻撃など気にしていないというふうに、ガレキを口に入れて咀嚼する。

グラジオ「こんなことでは動じない……か。ヌル、あのでかい口にトライアタックを撃ちこめ!」

ヌル「オオオォッ……!」ブゥゥゥンッ!

ヌルが念じると、頭上に火・雷・氷の力を秘めた三つのエネルギーの球体が真っ直ぐにアクジキングの規格外な大口の中に放り込まれていく。と、アクジキングの口内に炎が巻き起こり、凍りつき、電撃が走った!

アクジキング「グモォォッ!?」

グラジオ「フッ、さすがにこれには堪え……!?」

アクジキング「グモォォォッ!」ブンッ!

いきなり、アクジキングがその巨体を回転させて、尻尾をグラジオとヌルに向けて振り回した。グラジオはすぐに屈んで伏せることができたが、ヌルがにドラゴンテールが直撃して庭園の木に激突してしまう!

ドゴッ!

グラジオ「ヌル!」

ヌル「オオ……オオオ!」グググッ

アクジキング「グモォォ!」バグバグッ!

アクジキングは知ってか知らずか、ヌルの周りの地面に手を伸ばし、口の中へ入れていく。更にヌルのそばの木を引っこ抜いて口に入れると、その舌をヌルに向けて伸ばし始めた。

ヌル「オォォッ……!」

グラジオ「ヌル! 逃げろ!」

アクジキング「グモォォォッ!」

???「ガバイト! ドラゴンクローだ!」

突然、青い影がヌルの前に飛び出してきた!

ガバイト「グァァァッ!」ブンッ

アクジキング「グモォォォォッ?!」ザクッ!

痛みでじたばた暴れるアクジキングから退避させるように、ビブラーバがやってくると、ヌルを持ち上げてグラジオの前に下ろした。そしてグラジオとヌルの前を、コモルーが守るように仁王立ちする。

ビブラーバ「ガガガッ!」

コモルー「オオオ……」

グラジオ「こいつらは……?」

???「いじっぱりのドラコ!」カーン!

???「れいせいのおキン!」カーン!

???「ひかえめのマミ!」カーン!

3人「三人合わせて、『スカル団黒ガバイト隊』!」バァーーーン!!!

グラジオ「」ポカン

アクジキング「」ムシャムシャ

おキン「……リーダー、あたいらもうスカル団じゃないんですよ。改名したほうがいいんじゃないスか?」

ドラコ「あ、あぁ、言われてみればそうだな……」

マミ「普通に『アローラ黒ガバイト隊』でいいんじゃないスか?」

ドラコ「それじゃベタすぎるだろ! もっとこう、ドカーンとインパクトのある名前をだな……」

プルメリ「……あんたら、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」ザッ

ドラコ「姉御!」

グラジオ「オマエら……なぜここにいる?」

プルメリ「そりゃこっちのセリフだよ。グラジオこそどうしてここにいるんだい?」

ドラコ「あたいらは姉御からの命令でウルトラビーストを追い払ってるんだよ」

おキン「そうだよ、それでたまたま危ない目に遭ってるアンタがいたってわけさ」

グラジオ「よせ……あれはお前たちが勝てる相手じゃない」

マミ「グラジオだって1人で挑んでヌルが食われそうになってたじゃねぇか」

ドラコ「そう、あたいら3人の力を合わせれば奴を倒せる! おキン、マミ、行くぞ!」

おキン&マミ「ウス!」

プルメリ「待ちな! グラジオの言うとおり、うかつに手を出しちゃ――!」

ドラコ「ガバイト! げきりん!」

おキン「ビブラーバ! むしのさざめき!」

マミ「コモルー! りゅうのいぶき!」

ガバイト「ガァァァッ!」ブンッ!

ビブラーバ「ガガガッ!」ザザザザッ!!

コモルー「オォォォッ」ゴウッ!

3体のドラゴンポケモンによる一斉砲火がアクジキングへ向かっていく! ビブラーバのむしのざざめきで動きを止めつつ、コモルーのりゅうのいぶきで援護射撃を受けながら。ガバイトの怒涛の攻撃でアクジキングに多大なダメージを与える。

アクジキング「グモ……グモオォォォ!」ブンッ!

アクジキングがダメージを受けて身を悶えさせながら暴れまわる。しかしガバイトたちはそれを回避しつつ、再び攻撃を繰り返す。
するとアクジキングはガバイトたちに向き直ると、その口を大きく開いて息を吸い込むと……。

アクジキング「ヴ ェ ェ ェ ェ ェ ェ ッ ! !」

ドドドドド!!!

ガバイト&ビブラーバ&コモルー「!?」

グラジオ「なっ!?」

プルメリ「!!」

アクジキングの放った逸脱したゲップが一種の衝撃波となって、ガバイトたちを吹き飛ばしていく!

ドゴォォォッ!!

おキン「な、なにぃ!?」

マミ「コモルー!」

プルメリ「今のはゲップか……。あんな隠し玉、持ってたとはね」

ドラコ「くぅっ! こんなやられ方、屈辱的すぎじゃねぇか! おい!」

ザッ

???「今日は厄日だね……」

5人「!」

クチナシ「……こいつと、こんなところで鉢合わせしちまうとはよ」

グラジオ「クチナシさん!」

プルメリ「おっさん!」

クチナシ「グラジオのあんちゃん、元スカル団のねえちゃんたち、あいつはビーストの中でも相当タフな奴なんだわ。下手に数撃っても、食われちまうのがオチだよ」

グラジオ「クチナシさん……アイツを知っているのか?!」

クチナシ「……ま、昔ね」

クチナシ「誰か、フェアリータイプのポケモンを持ってる奴いるかい」

ドラコ「いや……あたいら全員、ドラゴンタイプのポケモン持つってのが黒ガバイト隊のルールだからよ」

プルメリ「あたいも、今のところどくタイプしかいないね」

クチナシ「そうかい。なら、こうするしかねぇか」

クチナシ「アブソル、あいつにれいとうビームだ」

アブソル「ガウッ!」

そばで控えていたアブソルが飛び出すと、アクジキングの大口にひるまず近づくと、青白い光線を放った!

アブソル「オォォッ!」ズピーーッ!!

アクジキング「グモ……!?」ピキキキッ

アブソルのれいとうビームを受けたアクジキングは見る見るうちに氷に覆われていき、次第に動きが鈍くなっていく。

クチナシ「――プルメリの嬢ちゃん、奴を凍らせるよ」

プルメリ「わかったよおっさん、ドヒドイデ! れいとうビーム!」

ドヒドイデ「ドヒドヒッ!」キィーン!

アブソルに続いて、プルメリのそばで控えていたドヒドイデもれいとうビームを発射する!
すると、さらにアクジキングの動きが緩やかになってゆく。

アクジキング「グ……モ……ッ!」ビキビキッ!

ピキッ!

そして、アクジキングの全身が完全に凍結し、動かなくなった。

おキン「おおっ! 凍らせた!」

マミ「こっから巻き返すんですね!」

クチナシ「いや、あのウルトラホールの中に押し戻すよ」

グラジオ「倒すんじゃないのか?」

クチナシ「さっきも言ったがよ、あいつはとんでもなくタフな奴なんだよ。ここにいる戦力だけだと、あいつを倒せても誰かが犠牲になるのは間違いないぜ」

ドラコ「そんなに恐ろしい相手……なのか?」

プルメリ「見てわかるだろ? もうちょっと慎重さっていうの覚えな」

クチナシ「……それより、早くやらないと目覚めちまうよ。ポケモンたちの力を借りて、あいつを元の場所に戻してやんなきゃな」

グラジオ「わかった。それに、アンタに話もあるしな……」

カプの村 モーテル

クチナシ「なるほど……月の笛、ね。それで、この事件の親玉をどうにかするってわけかい」

プルメリ「そんなことが……まさかあの子が代表に狙われるなんてね……」

グラジオ「ああ、そのためにカプ・ブルルからかがやく石を貰えないだろうか」

クチナシ「……正直なところ、あいつが素直に首を縦に振るとは思えねぇけどな」

グラジオ「なぜだ?」

クチナシ「昔一度、この村の奴らがカプ・ブルルの怒りを買う真似をしたからだよ。それ以降、人間不信とまではいかねぇがよ、人に対して警戒しているっていうのはあるね」

マミ「リーダー、こいつら何話してるんすかね?」ヒソヒソ

おキン「カプのことが話題に出てますけど……」ヒソヒソ

ドラコ「さぁな……」ヒソヒソ

クチナシ「俺もしまキングだけど、あいつの姿……しまキングになったときの一度しか見たことねぇんだわ。なにせ、今回の大量発生前、この島の上空にウルトラホールが開かれた時も、カプ・ブルルは静観してたからな」

グラジオ「今は非常事態だ……。月の笛を完成させなければ、このアローラがビーストによって壊滅してしまう」

クチナシ「それもまた、ひとつの定めって奴じゃないのかい? 永遠に続くもんなんてありゃしないんだよ。アローラもまた、こうやって滅ぶ運命なのかもしれないぜ」

グラジオ「そんなものを受け入れられるほど、オレ達は自分の運命を悟ってなんかない。オレ達は最後までビーストたちに抗って、戦い抜く! ヌルと供に!」

グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」

クチナシ「……まいったねえ」フッ

コンコンッ
ガララッ

グラジオ「!」

マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」

クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」

マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」

ガララッ ピシャッ!

グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したといつていたが、スカル団はどうなったたんだ?」

プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」

※修正

グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」

クチナシ「……まいったねえ」フッ

コンコンッ
ガララッ

グラジオ「!」

マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」

クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」

マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」

ガララッ ピシャッ!

グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したと言ってたが、スカル団はどうなったんだ?」

プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」

グラジオ「なに?」

プルメリ「この島とポニ島でね、まぁ色々あったのさ。グズマのことを、しんのすけとリーリエに頼んで、そのままあたいらはこの島に戻ったんだ」

プルメリ「だけど、その矢先にこれだよ。かわいい部下たちをビーストたちの手にかからせたくなかったし、グズマを探そうなんていうムチャもさせたくなかったからね。そのまま、解散したんだよ」

プルメリ「それでも、まだグズマに未練があるのか……それともこのアローラがやっぱり好きなのか、団員のほとんどが戻ってきてね、「自分たちにできることはないか」ってあたいに相談してきたんだよ」

プルメリ「だからあたいは、『グズマが帰ってきたら、みんなでアローラにしでかしたことを償わなきゃいけない。そのためにこのアローラを守りな』って言ってやったのさ」

プルメリ「それをどこで聞きつけたのか……クチナシとマーレインのおっさんコンビに言いくるめられて、こいつらと一緒にアローラの島を巡って、街の人たちの避難の活動と、ビーストの討伐をしていたのさ」

マーレイン「彼女らに償う意識があるなら、それをもっと多くの人に知ってもらうべきと思っただけだよ。それに、プルメリ自身戦力として申し分ないからね」

プルメリ「ありがとよ。それより……しんのすけが代表に連れ去られて、月の笛を直すために、ここへねぇ」

グラジオ「さっき連絡が入ったが……メレメレとアーカラのカプから、かがやく石は貰えたそうだ。残りはこことポニだけだ」

マーレイン「カプ・ブルルは温厚な分、ものぐさなところがあると聞くからね。Zリングを作る目的以外で、かがやく石を人間に渡すことに抵抗があるかもしれない」

グラジオ「どれかひとつでも石が欠けてしまえば、その時点で月の笛は直すことができない。……ビーストが現れたと同時にウルトラホールに飛び込むという案も考えたが、その先がどこに繋がっているかわからないからな……最悪、戻ってこれなくなるかもしれない」

マーレイン「そうだね……たぶん、月の笛を修復するうえでここが一番の山場だと思うよ」

グラジオ「ともかく今は……クチナシさんを説得して、なんとかカプ・ブルルに会わせてもらわなければ何も始まらないがな」

プルメリ「グラジオ、ちょっといいかい?」

グラジオ「……なんだ?」

プルメリ「もしも、その月の笛とやらを直して、代表のもとへ向かうんなら、あたいも連れて行って欲しいんだ」

グラジオ「……本気か? そもそも、グズマを助けるのはしんのすけとリーリエに任せたんじゃなかったのか?」

プルメリ「最初はそうするつもりだった。弱いあたいらが出しゃばるより、2人に任せちまおうって考えてたよ」

プルメリ「でもね、しんのすけに「一緒に助けに行こう」「弱いなら強くなればいい。大事な人なんでしょ」って言われたよ」

プルメリ「悔しいけどね、あんな小さな子供の言葉でもズシンと来るものがあったよ。素直な気持ちに嘘をつき続ける自分がヤになっちゃうね」

プルメリ「グズマはホントバカ! だからね……あたいが引っ張ってでも、あいつは取り戻さなくちゃいけないんだ」

ドラコ「姉御! だったらあたいらも……」

プルメリ「アンタはここでマーレインとクチナシのおっさんの手伝いをしてな。心配すんな、アンタらの気持ちを背負ってグズマを迎えに行ってくるからさ!」

ドラコ「姉御……わかりました!」

グラジオ「もう一度言うが……本当にいいのか? ビーストの世界に行って、命の保証はないんだぜ。たとえあんたでもな」

プルメリ「くどいよ。女に二言はないってね。あいつはあたいが助けに行かなくちゃ」

ガラララッ

クチナシ「グラジオのあんちゃん、いるかい?」

グラジオ「クチナシさん……」

クチナシ「……来なよ、カプ・ブルルに会いたいんだろ? あいつは今、実りの遺跡にいるみたいだからよ」

グラジオ「会わせてくれるのか?」

クチナシ「ああ……だが、プルメリの嬢ちゃん。そっちもついてきな」

プルメリ「あたいもかい? どうして?」

クチナシ「……案外、説得するのに役に立つかもしれないからな」ニヤッ

グラジオ&プルメリ「????」

実りの遺跡

グラジオ「ここが実りの遺跡……」

プルメリ「カプの遺跡の中に入ったのは生まれて初めてだよ……なんだか重苦しい雰囲気だね」

グラジオ「だが……肝心のカプ・ブルルはどこにいるんだ?」

クチナシ「……」テクテク

クチナシは祭壇に上がると、石像にそっと右手を伸ばして触れた。

クチナシ「……聞こえるかい」

グラジオ&プルメリ「!」

クチナシ「ずいぶん久しぶりだね。……こうして語りかけるのはしまキングになって以来だよな」

グラジオ(カプ・ブルルに語りかけているのか?)

クチナシ「わかってるだろ? 外が今、どうなっているのか」

クチナシ「ビーストがわんさかだよ。これまで見てきたもんとは比べ物になんねぇ程にな」

クチナシ「キャプテンも出ずっぱりさ。アセロラに至っては、月の笛を直しているからねぇ」

クチナシ「……そうさ、月の笛、壊されちまったのよ。ビーストを従えてる奴の仕業さ。おかげで向こうにいる親玉をどうにかしようとしても、肝心の伝説のポケモンが呼べないんだわ」

クチナシ「言いたいこと、わかるだろ? お前さんの力、借りたいんだよ」

プルメリ「……」

クチナシ「月の笛を直すために、かがやく石が必要なんだとよ。お前さんなら知ってるんじゃないのかい」

クチナシ「……お前さんが人間に抱く気持ち、わからんでもねぇんだ」

クチナシ「あそこにいる嬢ちゃん。元スカル団の幹部なんだとよ。今はアローラを救うために、スカル団を解散させて、命懸けでビーストと戦ってるぜ」

プルメリ「!」

クチナシ「別に例の件で許しを請うなんて気持ち、これっぽちもないんだわ。だけどよ、今はアローラの危機なんだ。善も悪も関係なしに、みんなが一丸となってビーストの驚異と戦っているんだ」

クチナシ「それでもお前さんは、ここでじっとしているつもりかい? このまま、滅びの運命を受け入れるつもりかい?」

クチナシ「……言いたいことは、それだけだよ。あとは、お前さんの判断に任せるぜ」

そしてクチナシは石像から手を離すと、祭壇から降りてグラジオたちと向き合った。

グラジオ「……クチナシさん。カプ・ブルルは――」

クチナシは肩をすくめた。

クチナシ「……どうだかね。ただ、向こうには向こうなりの考えってものがあるからさ」

プルメリ「おっさん、あたいは……」

チリンチリン!

グラジオ「なんだ……?」

プルメリ「鈴の音?」

――カ プ ゥ ブ ル ル !

祭壇内にカプ・ブルルの咆哮が轟く! 一瞬、グラジオたちが反射的に身構えるが、クチナシが手を上げてグラジオたちを制する。

クチナシ「……やっと、動いてくれたか」ニッ

グラジオ「?」

再びクチナシは祭壇に上がると、一度身をかがめて立ち上がった。その手には、光り輝く石が握られていた。

グラジオ「それは――!」

プルメリ「カプ・ブルルは……認めてくれたのかね」

クチナシ「どうだかね。だけど、嬢ちゃんたちの活躍、カプ・ブルルはちゃんと見てるみたいだぜ? だからこそ、考えを変えたのかもな」

プルメリ「……!」

クチナシ「ほら、かがやく石だ。持って行きな」つ かがやく石

グラジオ「クチナシさん――すまないな」

クチナシ「……頼んだぜ」

グラジオ&プルメリ「ああ!」

ポニ島 海の民の村(ひろし&ハウ)

メレメレ島でカプ・コケコからかがやく石を貰えたひろしとハウは、カプ・レヒレからかがやく石を貰うために、ポニ島へと船を走らせていた。

遠くから見たポニ島は、メレメレ島と比べてみると被害が少ないように見えた。しかし、島に近づいてみると、ビーストによる被害があらわになった。

桟橋が入り組んでいた海の民の村には、停泊しているほとんどの船が姿を消していた。桟橋もところどころが壊れてしまっていて、そのまま岸に船を止めてしまったほうが安全に降りれるという有様だ。

ひろし「よし、まずはハプウちゃんのところへ行ってみようぜ」

???「待ちや!」

ひろし&ハウ「!」

海の民の団長「君ら、何しに来たん? どこの島も今、ビーストっちゅうのがぎょうさん溢れて危険やぞ」

ハウ「おれたちーハプウさんに会いに来たんだー。カプ・レヒレから、かがやく石を貰うためにー」

団長「ハプウちゃんにか? それに島の守り神にも用があるとは……」

ひろし「ハプウちゃんは今、どこに居るんですか?」

団長「今はたぶん、ポニの古道にある家で休んでるはずや。なんでも、戦闘中に怪我してしもうたとか言ってたが……」

ハウ「怪我ー?! だいじょぶなのかなー?」

ひろし「ともかく、まずはハプウちゃんの家に行こう。俺たちは今かがやく石が必要なことだけは話しておかないと」

団長「気を付けなはれや。この村も安全じゃあないし。島を歩けば、とんでもなく強いビーストに襲われてしまうで」

団長「わしも、この島にいるトレーナーさんたちを全員避難させたら、すぐによそへ逃げるつもりや。お前さんらも長居はせん方がええで!」

ひろし「俺たちも、今は一刻を争っている事態です。教えてくれてありがとうございます」

団長「いやいや、礼には及ばん」

ハウ「じゃー急ごー! ハプウさんの怪我も気になるしー」

ひろし「ああ!」

ポニの古道

ひろし「確か……ここらへんだったよな? 島に家がひとつしかなくって、そこにハプウちゃんが住んでるって聞いたが……」

ハウ「あー! バンバドロだー!」

ハウが呼びかけると、畑の近くにいたバンバドロが2人の存在に気付いて、声を上げるとのっしのっしと重い足取りで近づいてきた。よく見るとあちらこちらに小さな傷跡が残っており、幾重にも渡るビーストとの戦いを乗り越えたことを物語っている。

バンバドロ「ムヒイウン!」

ひろし「このポケモン、確かハプウちゃんが連れていたポケモンだよな。ってことは、あの家がハプウちゃんの家か」

ハウ「そうだねー……」

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ひろし「うおっ!?」

ハウ「わーわー! ビースト?!」アタフタ

ひろし「どこだ? どこに現れるんだ?」

ハプウ「なんじゃ、外が騒がしいのう」ガチャ

家のドアが開くと、頭に包帯を巻いたハプウが出てきた。

ハプウ「おお! ハウとひろしか! 無事でなによりじゃ!」

ハウ「その前にこの近くにビーストがいるよー! 早く見つけて倒さないとー!」

ハプウ「ん? ビースト? ……ああ、あいつのことかもしれんな」

ひろし「あいつ?」

ハプウ「そう慌てるな。まずは家に上がれ。エーテルパラダイスに避難した後の話をゆっくり聞かせてもらおうかの」

ハプウの家

ひろしとハウは、ポニ島から避難してエーテルパラダイスで月の笛の修復にかがやく石が必要なことが判明し、カプ・レヒレから石を貰いに来たことを話した。

ハプウ「なるほどなぁ……決してアセロラを侮っていたわけではないが、王朝の知識は脈々と受け継がれておるということか」

ハウ「ところでその頭はー?」

ハプウ「ん? これのことか? いや、実は情けない話じゃが、ビーストと戦っている時に……」

ひろし「戦いの巻き添えを食っちまったのか……?」

ハプウ「いや、ビーストの猛攻にびっくりしてバンバドロから落馬してのう! そのまま頭をぶつけてしまったんじゃ! いやぁ、わしとしたことが、間抜けなことで怪我してしもうたわ! 頭の皮擦りむいただけで幸いじゃ」

ハウ「……」

ひろし「ま、まぁ、無事でなによりだ……」

ハプウ「それにしても、2人はカプ・コケコから石が貰えてなによりじゃな」

ひろし「家に来る前、博士からカプ・テテフから石が手に入ったって連絡が入った。後はウラウラ島とここだけだ」

ハウ「ウラウラ島は今グラジオが行ってるからーおれたちがここに来たのー」

ハプウ「ふむう……」

ハウ「だからハプウさんからカプ・レヒレに石を頂けるかどうか、お願いできないかなー?」

ハプウ「もちろん、お主たちのすることに協力を惜しまないつもりじゃ。ただ……」

ひろし「ただ……?」

ハプウ「カプ・レヒレはおそらく、お前たち2人――あるいはどちらかに試練を課すじゃろうな」

ハウ「試練ー? キャプテンがするようなヤツのことー?」

ハプウ「ま、そうじゃな。試練達成で手に入るのがZクリスタルではなく、かがやく石と言ったところかの」

ひろし「どうしてカプ・レヒレは俺たちに試練を?」

ハプウ「カプ・レヒレは、心身を癒せる特別な水を作り出せる能力をもっておる。かつてポニ島に住んでいた者は、その恩恵を受けていたのじゃ」

ハプウ「だがな、そのためには、カプ・レヒレが作り上げる霧の試練を受けねばならないのだ。その試練を乗り越えた者だけが、水の恩恵に預かることができるのじゃ」

ひろし「つまり、水を手に入れる人たちと同じように、俺たちがかがやく石を持つに値する人間かどうか、カプ・レヒレは試したいわけだな」

ハプウ「その通りじゃ」

ひろし「しんのすけを取り戻せるなら、どんな試練だってこなしてみせるさ。具体的に、何をすりゃいいんだ?」

ハプウ「それはカプ・レヒレが決めることじゃ。まずば彼岸の遺跡に行かねばな」

コンコンッ

全員「!」

???「マツリカ、ただいま戻りましたー。エンドケイプ周辺は異常なしですよー」

ハプウ「おお、そうか。ご苦労じゃったな」

マツリカ「おー? お客さんですか?」

ひろし「誰だ?」

ハウ「キャプテンの証つけてるー」

ハプウ「このふたりがさっき話した人たちじゃ。こちらが島巡りしているハウ、そしてこちらがしんのすけの父のひろしじゃ」

マツリカ「あー、あたしマツリカ。ポニのキャプテンやってます! といっても、普段は絵を描くためフラフラしてて、あたしの試練はないんだけど……」

ハウ「試練が無いキャプテンってなんか新鮮ー」

ハプウ「こんな性格だが絵とポケモントレーナーとしての腕前は確かじゃ。あのデカいビーストも、マツリカが追い払ったでな」

ひろし「あいつをか!?」

ハウ「すごいキャプテンなんだねー!」

マツリカ「いやーたまたまですよ! 相手がフェアリーに弱かっただけで」

ハウ「フェアリータイプのキャプテンなのかー」

ハプウ「弱点を突くだけで倒せるのなら、苦労はいらん。後はもそっとキャプテンである自覚を持てば言うことはないのだがな」

マツリカ「うーん。ハプウさんの言葉は耳が痛いですねー」

マツリカ「アローラも大変なことになっちゃいましたからねー。みんなの力を1つにして、この危機を乗り越えていきましょう!」

ハウ「うんー!」

マツリカ「あ、そうでした! お近づきの印に、フェアリーZをどうぞ!」つフェアリーZ

ハウ「エー! いいのー?」

ひろし「……普通試練を達成してもらうもんなのに、いいのかな」

ハプウ「貰っておけ。しんのすけが帰ってきた時渡してやれ」

マツリカ「おーゼンリョク! ゼンリョク! 遠慮なくどーぞ。そもそもやる試練ないですしね」

ハプウ「マツリカ、わしはこの者たちを連れて彼岸の遺跡に行ってくる。その間、この家の留守を頼んだぞ」

マツリカ「分かりましたー! みなさんお気をつけてー!」

ポニの古道

ハプウの家を出て歩き出すと、再びウルトラホールみっけマーク3のシグナルが鳴り響いた!

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ハウ「わー! まただー!」

ハプウ「さっきもそれが鳴ってたのう。それはウルトラビーストを見つける装置かなにかなのか?」

ひろし「ああ、ウラウラのキャプテンが作ったらしいけど……ビーストはどこにいるんだ?」

ハプウ「それなら、あそこじゃ」

ハプウはのんびりと自分の畑を指さした。
彼女が耕している畑の上には、ウルトラビースト――カミツルギがふわふわと浮いていた。

ハウ「あれがウルトラビーストー?」

ひろし「今まで見てきた奴らと比べると、ずいぶんちっせぇなぁ」

ハプウ「甘く見るでないぞ。あのビーストの全身は、まさしく魔剣そのものじゃ。なにせ、一太刀でバンバドロの身体に深い切り傷を負わせたからの」

ハウ「ほんとー? しんのすけの群れたマサオのアクアテールも受け止められたのにー?」

ひろし「だったら、早いとこ倒しちまった方が――」

ハプウ「いや、手を出す必要はなかろう。なにせ、あやつはこっち側が仕掛けなければ、攻撃してこないからの。放っておけば大人しくて可愛げのあるやつじゃ」

ハウ「そうなのー? おれ、ビーストってみんな凶暴なものって思ってたからー」

ハプウ「わしもこやつを見るまで同じことを思った。だが、あのビーストのように決して人間と敵対したり破壊活動をするような輩ばかりではないと認識を改めたのじゃ」

ひろし「住む世界が違っても、いろんなビーストがいる――ビーストはそこらのポケモンと変わらないってところか。結局こいつらも、ルザミーネに利用されてるってことだな」

ハウ「おれ……ずっとポケモンって人に使われて変わるものって思ってたー。いい人ならいいポケモンになって、悪い人なら悪いポケモンになるってー……。だけど、ビーストが街を壊しているのを見て、ポケモンってなんなのかわからなくってー……」

ハプウ「その考えも間違っておらん。だが、ポケモンにもビーストにも、人間と同じようにそれぞれ意志があり、性格もあるのじゃ。だからこそ、この世界は成り立ってると言えよう」

ひろし「もしかしたら、ビーストだって、街を壊したいヤツがいるかもしれないし、ただ単にこっちに来て、どうすればいいのか分からないまま慌てているヤツがいるかもしれない」

ハウ「そうかなー? うー……」

ハプウ「ま、どちらにせよ、ビーストは別世界のポケモンだからか、ボールがポケモンと認識してくれないみたいだがの。今は普通のポケモンのように捕まえて意思疎通を図る、というやり方は出来ん」

ひろし「だけどアイツは……」

ハプウ「……うむ、ルザミーネはウツロイドを捕獲しておった。だから近い未来、ビーストとポケモンの境界線が無くなる時が来るかもしれんな」

ハウ「ビーストとも仲良くなれるかなー?」

ひろし「ハウくん自身もビーストと仲良くなれるって思いながら動けば、ひょっとすれば、その心がビーストに届くかもな。あいつらもポケモンなんだからな」

ハウ「……そうだねー! よーし、それじゃあかがやく石を貰って、しんのすけを助けたらビーストたちと友達になってみよー!」

ハプウ「その勢いじゃぞ、ハウ!」

彼岸の遺跡前

ひろしとハウはハプウに連れられて彼岸の遺跡前にやってくると、「まずはそなたらが話したことを、カプ・レヒレに伝えてくる」とハプウ一人だけが遺跡の中へと入っていった。
そして、ハプウが遺跡に入って30分が過ぎた頃、ハプウが遺跡から出てきた。

ハプウ「戻ったぞ」

ハウ「どうだったー?」

ハプウ「案の定というべきか……試練を受けてそれを乗り越えられたら、かがやく石を渡そうとカプ・レヒレは仰っていた」

ハウ「じゃあおれが行くよー! ガオガエンたちと島巡りでたくさん試練をこなしてたから、きっと達成できるってー!」

ハプウ「いや――行くのはお主ではない」

ひろしじゃ、とハプウは指さした。それでもひろしは動じず、むしろ表情に真摯さが出てくる。

ハウ「おじさんがー?」

ひろし「俺が行けばいいんだな?」

ハプウ「カプ・レヒレは、おぬしが試練を達成できたとき、かがやく石を手渡すそうじゃ」

ひろし「試練の内容は?」

ハプウ「遺跡の中を散歩してくればそれでよい。時間で言うなら、10分前後というところかの。そのあいだに、カプ・レヒレはおぬしに石を渡すべきか否か見るそうじゃ」

ハウ「ポケモンとか飛び出してきたりはしないよねー? おじさん、トレーナーじゃないんだよー」

ハプウ「カプの遺跡に野生のポケモンが入るということはないな。その心配は無用じゃ」

ハプウ「ひろしよ、カプ・レヒレがおぬしに課す試練は、霧と幻惑の試練じゃ」

ひろし「霧と幻惑?」

ハプウ「カプ・レヒレは霧を作って幻を作り、相手を自滅させるという戦い方をするのじゃ。その能力を、人を試すためにも使っておるそうじゃ。つまり、どれだけひろしがカプ・レヒレの幻に囚われないか、これが試練の要となるじゃろう」

ひろし「上等だ! 試練を達成して、必ずしんのすけを取り戻してやる!」

ハプウ「では、遺跡の中に入るがよい。一歩足を踏み入れた時点から試練開始じゃ」

ハウ「おじさんー頑張ってー! かがやく石を手に入れて、しんのすけを助けに行こうよー!」

ひろし「ああ、すぐに終わらせてくるぜ!」

彼岸の遺跡

ハプウの言った通り、遺跡の中に一歩足を踏み入れると、奥から青白い霧が立ち込めていた。かろうじて背後にある出入り口に光が差し込んであるのが見えるくらいだ。
遺跡の中は不気味な静寂に包まれており、ハウが不安視していた野生のポケモンが出てくる気配なんて微塵もない。

ひろし「はは……これが試練か。これならお化け屋敷を歩くほうが、よっぽど試練になるぜ」

ひろしは強気な言葉を口に出して不安を紛らわせ、靴が石の床を踏む音を耳にしながらひとまず奥へと進んでいった。
すると、霧の中に、ぼんやりとたくさんの人たちがひろしの前に現れた。

ひろし「こ、これは……?!」

霧が晴れると、ひろしはハウオリシティの砂浜に立っていた。そしてひろしの目の前に立っていた人たちの正体は――。

ビキニのおねえさんA「ひろしさんようこそ、アローラ地方へ!」

ビキニのおねえさんB「お仕事、お疲れでしょう?」

ビキニのおねえさんC「アローラの海、ゆっくり楽しんでいってね!」

「「「アローラー!!!」」」

ひろし「ふおおおおーっ!??」

ひろし「な、な、どうなってんだ? 夢でも見ているのか?!」

ビキニのおねえさんD「さぁさぁ、ひろしさん、そんな暑苦しそうな服なんて脱ぎ捨てて!」

ビキニのおねえさんE「海に入って私たちと遊びましょ」

ひろし「き、君たち、やめなさい」デレーッ

ビキニのおねえさんF「なあにデレデレしちゃって、かわいー!」

ひろし「うひひひ! じゃあ脱いじゃおっかなー!」

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし(いかんいかん、これはカプ・レヒレの見せている幻なんだ! こんなものに囚われちゃいかん! できるならずっと囚われたいけど)

ひろし「いや、遠慮しておくよ。私は先を急いでいるんで、それじゃ!」

ビキニのおねえさんA「え? ひろしさん、待ってよぉ」

ビキニのおねえさんB「私たちと一緒に遊んでいこうよ!」

ひろし「くぅ~カプ・レヒレめ……結構エグいことするんだな……」

ひろしは目をつぶってビキニのおねえさん達を振り切って歩き出すと、今度は大勢の人たちが練り歩く足音が聞こえた。目を開けると、今度は普段着から背広姿で繁華街に立っていた。

川口「先輩」

後ろから声をかけてきたのは、ひろしが転勤前、フタバカンパニーに勤めていた後輩の川口だった。

ひろし「川口? お前、なんでこんなところに?」

川口「えぇ? なに言ってるんスか。先輩が誘ってきたんでしょう?」

ひろし「え? そうだっけか?」

川口「さ、早く行きましょう。取引先の人、もう先に入ってますよ」

ひろし「先に入ってる……?」

ひろしが顔を上げると、目の前にはかつて取引先と行き慣れたキャバクラの看板が。先に川口が歩き出して、ひろしに手招きする。

川口「先輩、急ぎましょうよ。遅刻すると取引先にも女の子にも怒られちゃいますよ」

ひろし「あ、あぁ」

ひろし(そうだなぁ……ここでうまくいけば、今後もフタバカンパニーとの関係が良くなるし、業績もアップする。それに、この店のマチコちゃんも可愛いんだよなぁ……)デレーッ

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし「……いや、俺はいい」

川口「え?」

ひろし「今は取引先とか、女とかに構っている暇がないんだ。お前にもな」ダッ

川口「えっ? ちょっと先輩! せんぱーい!」

川口の呼び声にも一切無視して、道行く人たちをかき分けるように、繁華街のど真ん中を走っていく。

ひろし(こんな下らない幻を見せて俺を試しているっていうのか! こんなものを見せたって俺の気持ちは変わんねぇ! ルザミーネからしんのすけを取り返して、家族を元通りにしなくちゃいけねぇんだ!)

ひろし「いい加減にし――ッ!?」

気が付くと、ひろしは繁華街から見慣れた住宅街へと移動していた。鞄を握った背広姿も変わっていない。繁華街のけたたましさも消えており、時折夜行性のポケモンの鳴き声が聞こえるのみだ。

ひろし「ここは……カスカベ地方か?」

ひろしは鞄を手に、懐かしいアクションタウンの住宅街を歩き出すと、すぐ近くに懐かしささえ感じる、赤い色の屋根と白い壁の一軒家がひろしの前に現れた。
表札には、ひろし以下、家族の名前が書かれている。

ひろし「……!」

1階の家の窓には明かりがついている。中で聴き慣れた楽しげな声が聞こえてくる。ひろしは無視して通り過ぎようとした。
だけど足は、自然と玄関へと向けていた。チャイムを押すと、すぐに玄関に明かりがついて、足音が聞こえる。
そして、鍵が開く音がすると、ドアが開かれた。

みさえ「おかえりなさい、あなた」

ひろし「みさえ……」

みさえ「どうしたの? そんなところでぼーっとつっ立っちゃって。早く入りなさいよ」

ひろし「あ、あぁ」

みさえに促されるまま、家の中へ入るひろし。

ひろし(嘘だ。これは幻だ。俺たちの家は今、アローラのメレメレ島に……それももう燃えちまってるはずだ)

ひまわり「た!」

ひろし「ひまわり……」

ひろしのスーツを引っ張って、抱っこするようせがんでいる。ひろしはひまわりを優しく抱きかかえると、確かにひまわりに触れているような感触がした。

ひまわり「きゃきゃ~い♪」

みさえ「あなた、晩ご飯の準備できてるわよ。早く洗濯機に入れて、みんなでご飯にしましょ」

ひろし「みんなで……?」

みさえ「ところでしんのすけー! パパにおかえり言ったー?」

ひろし「……しんのすけ?!」

すると家の奥から、まだあれから半日と少し過ぎただけなのに、もう長いあいだ聞いていない気さえする声が聞こえてきた。

「あとでねー」

ひろし「――!」

みさえ「今おかえり言いなさい! ひょっとしたら、おみやげがあるかも……」

「えっ? ホントホント!?」

ドタドタドタと聞こえてくる足音、そして廊下にあらわれたのは、

しんのすけ「とーちゃん! おみやげあるってホント?」

ひろし「しんのすけ!」

ひまわりとカバンを下ろすと、なりふり構わずしんのすけに駆け寄って、両肩を掴んだ。

ひろし「大丈夫か? 怪我は? ルザミーネとビーストになにかされなかったか?」

しんのすけ「ルミザーネ? ビースト? なにそれ?」キョトン

ひろし「え……?」

みさえ「やだ、あなたったら。いきなりごっこ遊びしようとしても、しんのすけだってびっくりしちゃうわよ」

しんのすけ「おおっ! アクション仮面LMS! メガルカリオとセットだ! とーちゃんありがとー!」

みさえ「こらっ! パパのカバン勝手に開けちゃダメでしょ!」

しんのすけ「ワッハハハハ! アクション仮面&ルカリオ参上! とおっ!」ドタドタドタ

みさえ「……ったくもう、高かったでしょ?」

ひろし「あ、あぁ……」

みさえ「さ、あなた。服、洗濯機に入れてきて。その間にご飯並べちゃうから」

ひろし「……」

ひろしは言われるがまま、着ていた背広とワイシャツを洗濯機に入れて普段着に着替えると、居間へと向かった。
居間の真ん中にあるテーブルには、みさえの作った肉じゃがや野菜炒めといったオカズ、ひろしの座る位置にはビールと枝豆が置いてあった。

ひろし(そういえば、最近こうやって家族とテーブルを囲んで、飯食ってなかった気がするなぁ)

ひろしがいつも晩御飯を食べるときに座っている位置に腰を下ろすと、しんのすけが顔を紅潮させながら近寄ってきた。

しんのすけ「とーちゃん、お礼に肩揉んだげる」

ひろし「おっ、いいのか?」

しんのすけ「うん、アクション仮面買ってくれたお礼」

ひろし「じゃあ頼むよ」

しんのすけ「うん……」

モミモミ

ひろし「おおっ、こりゃいい……ってどこ揉んでるんだ!」

しんのすけ「男の人はここ揉むと気持ちいいってとーちゃんの本読んで……」

ひろし「ば、バカっ! そんな本お前が読むな!」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ&ひろし「」

みさえ「パパの本勝手に見ちゃダメでしょ! あなたもしんのすけの手が届くようなところにふしだらな本を置かないで!」

ひろし「は、はい……」ピクピクッ

ひろし(……この痛みも、幻なのか?)

みさえのげんこつを受けながらも、晩御飯を囲むひろしたち。みさえは今日も家事が忙しかったことと、しんのすけが化粧品で落書きしたことを話していく。

みさえ「まったく、どうしていつもママの化粧品にいたずらするの?」

しんのすけ「だって面白いんだもーん」

ひろし「ダメじゃないか、勝手にかーちゃんのものをいたずらに使っちゃ」

ひまわり「たーい」

何気なく続いていく、家族たちの会話。

ひろし(そうだ……俺は……ここで)

ひろし(これで良いんだ……家族がみんな揃って……これで……)

今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

じゃ、そゆことで~

【おまけ】

~もしもしんのすけがマツリカと出会ったら~

しんのすけ「みーてみたいーなーチラ見するチラーミィー♪」

マツリカ「おー、ナイスモチーフ!」

しんのすけ「ほほー?」

マツリカ「絵に描くとしたら、ポニの小さな旅人、ですねー!」

しんのすけ「おねいさん、誰?」

マツリカ「あーあたし、マツリカ。キャプテンやってます!」

しんのすけ「それはそれは、ご苦労さんですなぁ。その顔の刺青を見る限りカタギの人ではありませんな」

マツリカ「刺青じゃないですよ。ただのペイントですよー」

しんのすけ「てゆうか、キャプテンなら試練とかやるの?」

マツリカ「あー……今は絵を描くため、フラフラしててあたしの試練はないんだよね……」

しんのすけ「ほうほう、ニートですな」

マツリカ「うわぁーっ! マツリカ小さな子供にグサリと刺さるようなこと言われたー!」

しんのすけ「あはあはあは、面白いおねいさんだね」

マツリカ「君はしんのすけくん、ですよねー? イリマくんから聞いてますよー。カスカベ地方から来たんですよね?」

マツリカ「アローラってとっても開放的でワンダーですよね! 特にポニの大峡谷って一層そう思うのですよね」

しんのすけ「おねいさんはとってもヘンダーな人だけどね」

マツリカ「うまいこと言うねーキミ」

マツリカ「あ、そうでしたそうでした! お近づきの印に、フェアリーZ、あげちゃいますね!」

しんのすけは フェアリーZを 手に入れた!

しんのすけ「え? 貰っちゃっていいの? なんかあっさりー」

マツリカ「フェアリーのZワザは、こうしてこうすればいいですからねー」

バッ! バッ! キューン ピカー!

しんのすけ「ほうほう、こうすればいいのですな」

バッ! バッ! プリプリ ピカー!

マツリカ「……!」ピクッ

しんのすけ「……おねいさん?」

マツリカ「おおっ、これは最高にナイスなモチーフ! 絵に描くとしたらポニのダブルマウンテンってところですね! 観察させてもらいますねー」カキカキサラサラ

しんのすけ「い、いやああああん! オラのおしり描かないでえっちい!! けだもの~!!」ダッ!

マツリカ「わっ、ちょっとストップ! そのお尻のラインだけでもスケッチさせてよー!」ダダダ

???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」

しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」

しんのすけたちが一斉に声のした方向へ振り返ると、奇妙な形の木の枝に、グズマが座っていた。

グズマ「なんにも恐れない、むしろ恐れさせてなんぼのスカル団ボス、いわゆるグズマさまだがよ……言わせてもらうぜ、おまえらバカだな」

しんのすけ「くさやのおじさん、そこにお引越ししたの? 家賃いくら?」

グズマ「グズマだと言ってるだろうが。それに、引っ越したわけじゃねぇ」

グズマは木の枝から降りると、しんのすけたちに心底呆れるような表情で近づいてきた。

フェローチェ『しん様と同じ人間……。お知り合いですの?』

しんのすけ「スケスケおパンツ団のボスのくさやっていうおじさん」

ロトム図鑑「下着ドロ集団のボスだ」

グズマ「また何ぶつくさしゃべってやがる。そこにいるビーストとでも仲良くなったつもりかよ」

しんのすけ「まーね、あいちゃんに似てたもんですから」

グズマ「一体全体どんな手段を使ったのかさっぱり想像つかねえが、こんなところに来やがって……。つーか、なんで下半身丸出しなんだ」

しんのすけ「オラたち、妖怪メノクラゲオババに連れてこられちゃったの。で、あいちゃんに助けてもらいながら、元の世界に帰る道を探してるところー」

グズマ「妖怪メノクラゲオババ? お前……代表に連れてこられたのか?」

しんのすけ「だからそうだって言ってるじゃん」

グズマ「よく生きていられたな。ああ……あの人はもうヤバい、ヤバすぎる!」

グズマ「ウルトラビーストにすっかり夢中……もう誰の言葉も想いも届かねえ!!」

グズマ「俺もあいつを捕まえようとしたんだよ。けど、あいつにとりつかれてよ……」

グズマは宙に浮かんでいるウツロイドの1匹を指さした。

グズマ「するとよお! 体も! 心も! 勝手に目覚めてしまってよ!」

グズマ「自分が自分じゃなくなるようで、怖くなっちまうんだよお……!!」ガタガタ

グズマは目を見開きながら、息を乱し、髪を掻き、身体を震わせた。
自分がウツロイドに襲われて攻撃を受けたときの瞬間、訪れた力強くてどす黒い感覚と、ウツロイドと合体してマザービーストと化し、狂ったように笑いながらビーストに囲まれるルザミーネの姿に、おびえているのだ。

しんのすけ「……で?」

グズマ「は?」

しんのすけ「くさやのおじさんはこれからどうすんの?」

グズマ「どうするって……なにもしようがねえだろうが。こんなどんよりとした……よくわからん、ビーストだけの世界で……なにが出来るって言うんだ」

しんのすけ「じゃあ、オラたちと一緒に元の世界に帰ろうよ。どうせ暇なら」

グズマ「……本当にバカだな、お前」

しんのすけ「いやぁ、照れますなぁ。おバカなんて、しょっちゅう言われてますから」

グズマ「褒めちゃいねえよ」

グズマ「本気でこの世界から帰れると思ってんのか? あんなバケモンみてぇなビーストに、狂っちまった代表! この世界にはそれしかねぇんだ!」

しんのすけ「でもオラ、まだ島巡り終わってないし、かーちゃんもとーちゃんも、リーリエちゃんもみんなオラのこと待ってるだろうし」

グズマ「いいか、代表は既に、多くのビーストを手に入れて、アローラに穴を開ける力を得た! 今頃アローラはビーストで溢れかえって、地獄になっているだろうぜ……」

グズマ「そんな世界に帰ったところでなんになるってんだ。だったらこのまま、何もしねぇでじっとしてるほうがいい。行くも地獄、行かぬも地獄なら、わざわざ帰る意味なんてねぇよ。島巡りなんてする意味もねぇ」

しんのすけ「んー困りましたなあ」

――……スカル団にいる奴らみんなそうなんだ。グズマのように、誰にも認められず、島巡りを脱落していった子たちばっかなんだよ
――スカル団のみんなは、人々に認められない辛さっていうものを分かっているのさ。特にグズマは痛いほどにね。だからみんな慕っているのさ。グズマが代表を慕っているように

しんのすけ「……!」

しんのすけ「でもおじさんも、おじさんのこと待ってる人がいるんじゃない?」

グズマ「俺を待ってる人だと? くだらねぇ……」

グズマ「俺にとっちゃ、代表が全てだったんだよ。だけど、代表がああなっちまった以上、もうどこにも行ったって意味ねぇだろ……」

しんのすけ「嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに」

グズマ「……!」

グズマ「……そいつらが、今更なんだって言うんだ。どうせ、まとめてビーストの餌食になっちまってるさ」

グズマ「いいか、この世界から絶対に出られねぇ。このグズマ様が言うんだから間違いねぇ! たとえ出られても、お前が島巡りしてきたアローラも、見知った人間ももういねえんだよ!」

しんのすけ「ぜぇったい出る! オラが無理でも、とーちゃんとかーちゃん、ひまにシロ、ハウくんにリーリエちゃん、ハカセにクジラくん、カザマくんにマサオくん、ネネちゃんボーちゃんがお迎えに来てくれるもん!」

しんのすけ「おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!」

グズマ「ビーストにも勝てない連中が、こっちに来れるわけねえだろうが! それこそ、代表が招き入れない限りはな!」

しんのすけ「もー頭きた! おじさんのニートっぷり、もうママ知らないんだから! ずっと下着ドロでもしてなさいよ!」プンプン!

グズマ「ちょっと待て、誰がニートだ! それに下着ドロじゃねぇっつってんだろ!」

しんのすけ「さ、行こ! あいちゃん、ぶりぶりざえもん!」

テクテク

グズマ「……なんなんだ、あのじゃがいも小僧」

その頃――。
ひろしは彼岸の遺跡の中で、偽りの家族たちと供に晩ご飯を食べながら、テレビを眺めていた。

『……タワーにて、ミツル選手がなんと前人未到の100連勝を達成! 期待のホープである彼を止められるものはいないのか!』

みさえ「すごいものねぇ、ミツルくん。ホウエン出身の私からしてみたら誇りよ~」

しんのすけ「そーいや、今日、マサオくんがね、風間くんとのポケモン勝負で負けて泣いちゃったの」

みさえ「あらまぁ、本当? でも風間くん、本当にポケモン強いからねー。将来はカスカベ地方のチャンピオンかしら?」

しんのすけ「ねぇねぇ、とーちゃんも昔トレーナーだつたんだよね?」

ひろし「ああ、とーちゃんが11歳の頃、シンオウ地方を旅してたんだ。じーちゃんちに行ったことあるだろ? あそこのすぐ近くがシンオウ地方なんだ。雪なんかいつも積もってるぞぉ」

しんのすけ「シンオウ地方って言ったら、やっぱシロナおねいさんだよねー。あの金色に輝く髪、アバンティー感じる黒い衣装! 一度耳掃除されたいなぁ~」

ひろし「それを言うならアダルティーな」

しんのすけ「じーちゃんちにいるあのおさるさん、元気にしてるかな? また行きたいなー」

ひまわり「たい!」

ひろし「しんのすけもひまも、ゴウカザルのことすごい気に入ってたもんなぁ。また会いに行こうな」

みさえ「またトレーナーになってチャンピオン目指してみたら?」

ひろし「よしてくれよぉ、こんな歳でジムなんて挑戦できる余裕なんてないって」

しんのすけ「かーちゃん、オラもポケモン欲しいー! とーちゃんや風間くんみたいにトレーナーなりたい」

ひろし(ポケモン……トレーナー)ピクリ

――オラだって、オラのお友達とゼンリョクでハプウちゃんに勝つ!
――マサオくんっ! ファイヤーーーッ!!

ひろし「……」

みさえ「だーめ。アンタ、シロの世話だってロクにできてないんだから」

しんのすけ「え~んお願いいたしますお母様~」

みさえ「アンタが10歳になったらね」

しんのすけ「……妖怪ケチケチオババ」ボソッ

みさえ「なんですってぇ!」

ひろし「……」スッ

みさえ「あなた?」

しんのすけ「どうしたの? とーちゃん? いぼ痔でも悪化した?」

ひろし「ごめん……しんのすけ、みさえ、ひま、シロ。俺がいるべき場所は、ここじゃないみたいだ」

ひろしはみさえの幻たちに笑いかけると、困惑したようにみさえとしんのすけがひろしの顔を覗く。

みさえ「どういうこと?」

ひろし「俺は、やらなくちゃいけないことがあるんだ。だから、ここに留まってるわけにはいかないんだ」

みさえ「やらなくちゃいけないことって、なに?」

ひろし「いなくなっちまった家族を、取り戻すことだ」

みさえ「 私たちはここにいるじゃない。あなたは何が不満なの?」

しんのすけ「とーちゃん。ひょっとして、オラたちのこと、捨てちゃうの?」

ひまわり「えっ……えっ……!」

みさえとしんのすけの言葉が、ひろしの胸に深々と突き刺さる。ひまわりと外にいるシロも、どこか泣きそうな顔でこっちを見てくる。

みさえ「おかしなこと言わないで。私たちはここにいるじゃない。それとも、別の家族がいるって言うの?」

しんのすけ「おおっ、とーちゃん不倫!」

みさえ「私たち家族とずっと一緒にいる――それが、あなたにとっての望みでしょ? それを捨てちゃうつもり?」

ひろしは少し苦笑いを浮かべた。やっぱり、幻だ。
こんなごく当然のことを、みさえはいちいち口になんて出したりしない。こんなふうに責め立てたりせず、真剣にひろしの言葉を聞いてくれるはずだ。
これは、カプ・レヒレからの問いかけなのだ。

ひろし「ああ、確かに俺が望んでるものさ。だけど、こんな形で手に入れるものじゃない」

ひろし「みさえとひまわり、シロはエーテルパラダイスで俺たちの帰りを待っている! そしてしんのすけは、ウルトラホールの先で俺たちの助けを待っているんだ!」

ひろし「俺は紛い物の幻想が欲しくてここに来たわけじゃない! 俺は、俺たち家族がもう一度揃うためにかがやく石を求めてここに来たんだ!」

ひろし「そして、しんのすけをとりもどして、この幻を現実のものにしてみせる! これが俺の望みだ!」

みさえ「あなた……」

ひまわり「たい……」

しんのすけ「とーちゃん……」

しばらくの沈黙。しんのすけもみさえもひまわりもシロも、じっとひろしを見ている。不安な表情は消え去り、ひたむきな面持ちでひろしを見据えている。

みさえが笑みを浮かべながら、沈黙を破った。

みさえ「……あなたの覚悟と願い、『私』に伝わってきたわ」

しんのすけ「とーちゃんは家族思いなんだね」

しんのすけたちの言葉を聞いて、ひろしも釣られて表情が緩む。

ひろし「ああ、こうやって息子の姿で面向かって言われると、ちょっと照れるけどな」

しんのすけ「ほい、とーちゃん!」

しんのすけが一歩前へ出て、ほんのりと光を放つ、かがやく石を差し出した。

ひろし「これは……!」

みさえ「それで月の笛を直して、ルナアーラを呼びなさい。あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ」

ひろし「星の繭?」

しんのすけ「だいじょーぶ、すぐに分かりますからー」

みさえ「あなた、頑張って! 絶対にしんのすけを取り戻すのよ!」

しんのすけ「『オラ』、手伝ってあげられないけど、応援するからー!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンっ!」

ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」

ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。

ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」満足そうじゃった」

ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」

ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」

ハプウ「うむ!」ニッ

ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」

ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」

※修正

ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」

ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。

ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」と満足そうじゃった」

ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」

ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」

ハプウ「うむ!」ニッ

ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」

ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」

エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前 広場

リーリエ「マサオさん! アクアテールです!」

ヨワシ「ギョオオォォッ!」ゴウッ!

群れた姿のマサオの巨大な尾ひれがシロデスナに叩きつけられ、水しぶきと砂が飛び散っていく。
しかし、シロデスナがマサオのアクアテールで砂の身体が固まったことを確認すると、アセロラも負けじとシロデスナに指示を送る。

アセロラ「シロデスナ! シャドーボール!」

シロデスナ「デッスナー!」ドンドンドンッ!

リーリエ「マサオさん! シロデスナさんにハイドロポンプです!」

ヨワシ「……!?」ピクッ

シロデスナの口から次々と影の弾丸が発射される。一方のマサオはリーリエの指示に一瞬動きを止めて、戸惑う様子を見せた。

その隙に、次々とシャドーボールがマサオに当たっていく。

ヨワシ(単)「ヨワーッ!?」ドンッ!

リーリエ「マサオさん!」

シャドーボールが直撃したマサオは単独の姿に戻り、そのまま吹き飛ばされて、壁に激突。戦闘不能になった。

アセロラ「またまたアセロラちゃんの勝ち!」ムフー

リーリエ「大丈夫ですか? マサオさん。今元気にしますからね」

ヨワシ「ヨワー……」

リーリエがバッグからかいふくのくすりを取り出して、アセロラのポケモンと戦って傷ついたカザマを元気にしていく。

アセロラ「またマサオくん、リーリエちゃんの指示無視しちゃったねー」

リーリエ「はい……どうしてなのか、まだわかりません」

アセロラ「でも不思議だよね。見た感じ、マサオくんも他のポケモンも別にリーリエちゃんのことを警戒しているっていう態度じゃないもん」

ヨワシ「ヨワ……」

リーリエ「……」

みさえ「みんなー晩ご飯作ったわよー! そろそろ休憩にしたら?」

リーリエ「あ、はい!」

リーリエたちは居住区の一室に戻ると、みさえがリーリエたちに晩ご飯のシチューとお手製のマラサダを振舞った。

みさえ「さ、どんどん食べて。たくさん作ったから」

リーリエ「わぁ……いただきます!」

アセロラ「うん、とってもおいしい!」モグモグ

みさえ「ごめんなさいね、あり合わせのものでしか作れなかったけれども」

リーリエ「そんなことないです」

みさえ「リーリエちゃん、カザマくんたちはどう? 言うこと、聞いてくれる?」

リーリエ「いいえ……その、やっぱりお願いを無視してしまうことがしばしば……」

みさえ「そうなの……やっぱり、人から預かったポケモンに言うことを聞かせるのって大変なのね」

アセロラ「うーん、どうかなぁ? 本当にリーリエちゃんの言うこと、聞いてないなら指示を無視するだけじゃすまないよ」

リーリエ「たとえば、どういうものでしょうか?」

アセロラ「そうだね、戦ってる最中に寝ちゃったり、なまけちゃったり、最悪自分を攻撃しちゃうこととかがしょっちゅう起きるんだよ」

みさえ「聞いたことあるわ。ポケモンはトレーナーの実力を見ていて、ジムから貰えるバッジの数で言うことを聞く度合いも変わってくるって」

リーリエ「そういうふうなこと、全然ないんですよね。カザマさんたちはあくまでお願いを聞かないだけで、怠けるようなことはしません」

リーリエは、テーブルのそばでポケマメを食べさせているカザマたちをみやった。カザマとボーちゃんは黙々と食べているが、マサオとネネはなにか妙なやりとりをしながらポケマメを食べている。

ジュナイパー&ミミッキュ「…………」

キテルグマ「クーーッ。クゥー!」

ヨワシ「ヨワァ……ヨワヨワシー」

アセロラ「……やっぱり、しんちゃんの戦い方って、普通のトレーナーから見てみると、とっても変わってるってアセロラ思うんだ」

みさえ「そうねぇ、ハプウちゃんと戦っている時も、ほとんど指示してなかったもの」

リーリエ「その戦い方に慣れすぎて……カザマさんたちは指示を受けて行動するということができないのでしょうか」

アセロラ「たぶんそれだね。もらったポケモンは扱いが大変なのは当たり前だけど、ここまで難しいというのはわりと珍しいよ!」

そこでリーリエはふと思った。ライチやハプウとの大大試練と、しんのすけの戦い様を何度も見守ってきた。
しんのすけは命令せずとも、息のあったコンビネーションを繰り出し、会話しているようにポケモンに話しかけていた。

リーリエ(まさか本当にしんちゃんはポケモンさんと……)

リーリエ「……でも必ず、しんちゃんのポケモンさんとは、心を通わせてみせます! しんちゃんを助けたいという気持ちは、わたしもポケモンさんとも一緒ですから!」

アセロラ「うん、その意気込みを忘れなきゃ、きっとポケモンも応えてくれるよ!」

アセロラ「それに、リーリエちゃんのあの戦い方、びっくりしちゃったよ。シロデスナはね、みずタイプの攻撃を受けると砂が固まって防御力が高まっちゃう『みずがため』という特性を持っているんだ! だから、みずタイプとは相性が悪いようで実は優位に立てるんだ!」

リーリエ「なるほど……でしたらカザマさんを出すべきでしたね」

みさえ「それにしても……かがやく石を取りに行ったきりなにも連絡はないけれど、みんな無事かしら?」

リーリエ「ここはまだビーストさんがいないだけ安全ですが……島にはビーストさんがたくさんいますから、みなさんのことがとっても心配です」

ククイ博士「心配してくれたのかい? うれしいぜ!」

リーリエ「きゃっ!」ビクッ

みさえ「博士! いつのまに帰ってきたんですか?」

ククイ博士「ええ、どうやら僕らが一番乗りだったようですね」

バーネット「リーリエ、元気にしてた?」

リーリエ「バーネットさん! お久しぶりです!」

バーネット「リーリエ、本当にイメチェンしたのね! 顔つきがとっても引き締まってるし、まるで別人みたい!」

リーリエ「はい! 進化したゼンリョクの姿、です。しんちゃんから預かったのですが……ポケモントレーナーにもなりました!」

みさえ「えーっと、どちら様で……?」

ククイ博士「紹介します。僕の奥さんで、アーカラ島の空間研究所の所長をしているバーネット博士です!

ククイ博士「バーネット、こちらはしんのすけのお母さんの野原みさえさん、そしてメレメレ島のキャプテンのアセロラ。彼女から月の笛の情報を提供してもらったんだ!」

バーネット「バーネットです、よろしくね。ククイから話は聞いています。私たち空間研究所も、事態の解決に協力していくつもりです」

みさえ「あ、どうも……」ペコリ

アセロラ「博士! かがやく石は貰えた?」

ククイ博士「ああ! カプ・テテフはてだすけしてくれたよ。それに、メレメレ島に行ったひろしさんとハウからも、カプ・コケコからかがやく石が貰えたって連絡が来たからね!」つ かがやく石

アセロラ「おー、後はウラウラ島とポニ島だね!」

ククイ博士「ひろしさんたちも、今はポニ島にいるんじゃないかな?」

リーリエ「ハプウさんなら、きっと協力してくれますよね!」

アセロラ「クチナシのおじさんも、きっとわかってくれるよ!」

ククイ博士「そうだね! 3人を信じて待とうよ」

みさえ「さ、博士もバーネットさんもどうぞ。晩ご飯の用意できますので」

ククイ博士「おっ! いいんですか?」

バーネット「では、お言葉に甘えさせていただきますね!」

ククイ博士「リーリエ、ポケモントレーナーになってみて気分はどうだい?」

リーリエ「はい! まだ、しんちゃんのポケモンさんとは上手く連携は取れていませんが……ポケモンさんと一緒に戦っていると、こんなに胸がドキドキするなんて思いませんでした!」

ククイ博士「そうだろ? 君が自分のポケモンを持つようになれば、もっとドキドキするような事が起きるぜ!」

バーネット「リーリエがトレーナーデビュー……なにか感慨深いね」

みさえ「あたしもポケモントレーナーになってみようかしら」

アセロラ「しんちゃんのお母さんはポケモントレーナーじゃないの?」

みさえ「うん、あなたたちくらいの年の頃は家のことを手伝っていたから」

バーネット「どこ出身なんですか?」

みさえ「ホウエン地方のフエンタウンってところです。その後はカントー地方に上京して、その後はカスカベ地方に住んでいました」

ククイ博士「ホウエン地方は暖かいですから、アローラの気候にもすぐ慣れたのでは?」

みさえ「ええ、わりと」

トントン
ウィーン

ビッケ「お食事中、失礼します」

リーリエ「ビッケさん。どうかなさったのですか?」

ビッケ「グラジオさまと、野原ひろしさん、ハウさんの船が戻りました」

ククイ博士「おっ、みんな戻ってきたのか!」

ハウ「戻ってきたよー!」ヒョコッ

ククイ博士「うおっ!」

リーリエ「ハウさん!」

ハウ「美味しそうなニオイに誘われてたらついたー」

グラジオ「博士は先に着いたようだな」

みさえ「みんな、石は貰えたの?」

ひろし「ああ、みんなカプから認めてもらえたぜ!」

ひろし達3人はそれぞれカプから貰ったかがやく石を、リーリエたちに見せた。

アセロラ「みんなカプから認められるなんてすごすぎ! グラジオくんもすっごい苦労したでしょ?」

ハウ「しまキングたちが手伝ってくれたおかげだよー」

グラジオ「そうだな……それに、彼女がいなければ、正直石が手に入ったかどうか分からなかったな」

アセロラ「彼女?」

グラジオが頷くと、「来い」と手で部屋の外へ誰かに向かって合図を送った。すると足音が近付いて、『彼女』が部屋に入ってきた。

プルメリ「……」

リーリエ「プルメリさん?!」

アセロラ「エー! なんでー!?」

みさえ「誰?」

ククイ博士「そうか、君がマーレインの言っていた『思わぬ協力者』か」

ハウ「おれもびっくりしたよー! スカル団の幹部が協力してくれるなんてー」

プルメリ「元、だよ。もうスカル団は解散したんだ」

グラジオ「今、アローラ全域に渡って元スカル団のしたっぱたちが救助活動を行っている……。オレもこの目で見たからな。だからこそ、カプ・ブルルは石をくれたんだ。スカル団が解散して、アローラのために行動していることが、あいつの心を動かしたらしい」

ひろし「にわかには信じられないけどな……」

プルメリ「グズマをビーストの世界から取り戻して、罪を償わせなきゃいけないからね。そのため、あたいもアンタたちと一緒に行動したいのさ。……わがままなのは承知の上だけどね」

リーリエ「プルメリさんも力を貸してくれるなんて頼もしいです! 一緒にグズマさんを助けに行きましょう!」

プルメリ「あぁ、そうだね」

プルメリ「その前に、ひろしとみさえ……だったね。まず、謝らせてくれないか?」

ひろし「え……?」

プルメリ「……あたいがスカル団にいた頃、したっぱたちがしんのすけにちょっかいだしては、返り討ちに遭ってね。その報復に何度もあいつにポケモン勝負をしかけて、倒そうとしていたんだ」

みさえ「……!」

プルメリ「それにウラウラ島では、そこにいるキャプテンの子供たちのヤングースを人質に取って、しんのすけに1人であたいらのところまで来るよう脅したんだよ」

ひろし「お前っ……」

リーリエ「でも、それはかあさまがほしぐもちゃんを狙っていたからで……」

プルメリ「それでもね、しんのすけを危ない目に合わせたことには違いないんだ。だから、アンタたちに今ここで追い出されても、文句を言える立場じゃないんだよ」

アセロラ「……」

プルメリ「だから、そのワビになれるかどうかわからないけど……あんたたちの息子さんを助ける手伝いをさせてくれないか?」

ひろし「……」

みさえ「……」

ひろし「はっきり言って、今の話を聞いて本当のことなら俺たちはお前を許さない。うちのしんのすけをアンタたちのせいで危ない目に遭わせたんだからな」

プルメリ「……」

ひろし「だから、お前もしんのすけを助けるのに協力するんだ。しんのすけを助けられたら、そんときはアンタがしんのすけにしたことを許してやる」

みさえ「そうよね、あなたは元スカル団でも幹部だったんでしょ。私たちの力になってくれるのなら、それで充分」

ひまわり「たい!」

プルメリ「……!」

アセロラ「そうだね、ヤンちゃんのぶんもちゃんと償ってもらわないと!」

ひろし「みんなも、それで文句はないよな?」

リーリエ「はい!」

ハウ「異議なしー!」

アセロラ「異議なーし!」

ククイ博士「ハウとアセロラと同じ意見だぜ! 僕は君を喜んで迎え入れるよ!」

バーネット「スカル団も手を貸してくれるなんて、びっくりだよ。でも私たちにとって心強いよ」

グラジオ「……そうだな。用心棒をしていたオレが言えた身分ではないが」

プルメリ「みんな……すまないね。礼を言うよ。……あたいらは、カプやアローラの人たちに赦される時が来るもんかね」

ククイ博士「赦されるさ。君たちはアローラを守り、自分たちの罪を償おうとがむしゃらに努力しているんだろ? いつかカプもわかってくれるよ」

プルメリ「そう言ってもらえると、あたいらも救われるんだけどねえ」

みさえ「さ、みんな上がって! 疲れたでしょ? 晩ご飯用意できてるわ」

ひろし「おっ、サンキュー!」

プルメリ「あたいもいいのかい?」

みさえ「いいのいいの。プルメリ……ちゃんだっけ? ずっとビーストと戦ってお腹すいてるでしょ?」

ハウ「わーい! おばさんおれ大盛りねー!」

グラジオ「フッ……気が付くと賑やかになったもんだな」

ククイ博士「というか、部屋に入りきらないんじゃないのか?」

グラジオ「ビッケ、石はここに4つ揃った。月の笛の解析状況は?」

ビッケ「はい! アセロラさんの協力もあって、内部構造及び材質の分析が終わりました」

グラジオ「どのくらいの時間を要せば修復できる?」

ビッケ「おそらくですが……財団が総力を上げて取り掛かれば2日――いえ、1日のお時間をいただければ、修復が終わるかと」

グラジオ「なら……頼む」

リーリエ「ビッケさん……よろしくお願いします!」

ビッケ「お任せ下さい!」

エーテルパラダイス 財団職員専用食堂

人数が多くなってしまったことで、居住区から食堂へ移動すると、全員で改めて食事を再開した。さすがに大人数の食事は出来ていないのでバーネットとアセロラも加わって追加の分を作り、それぞれ晩御飯を愉しんだ。

アセロラ「はーいひまちゃーん、あーん」

ひまわり「あーん」ムシャムシャ

バーネット「ふふっ、子供がいるっていうのも、いいかもね」ナデナデ

みさえ「博士はまだお子さんは……?」

ククイ博士「まだいないですね。僕らもこうして会う時間が少ないんですよ」

バーネット「でもそろそろ、夫婦らしく同居するっていうのも悪くないんじゃない?」

ククイ博士「そうだね、ハニー。研究所も潰れてしまったから、これを機に新居を建てるというのも、悪くないかもね」

プルメリ「グラジオ、そういえばあれを渡すの、忘れてないかい?」

グラジオ「ああ、オマエらに渡しておくものがあったな。今アローラにいるウルトラビーストのデータだ。マーレインが作ったそうだ」

アセロラ「マーレインくん、やるじゃん! こんなに早くビーストのタイプも分析しちゃうなんて!」

ハウ「あれー? でもこの『BLASTER』っていうの、たぶんくさ・はがねじゃないと思うよー」

グラジオ「ほう……?」

ハウ「おれとおじさんがメレメレに戻った時にこのビーストと出会って戦ったんだけどー、その時カプ・コケコが助けてくれたんだー。その時放ったかみなりが、抜群に効いていたんだよー。くさタイプだったら、たぶんあの時倒れてないと思うんだー」

ククイ博士「となると、このビーストのタイプはひこう、みずタイプのどれかが入っているってことだね。見た目からして、ひこうタイプなのは間違いないだろう」

ひろし「はがね・ひこうか……。じめんが効かないのはやっかいだな」

ククイ博士「よーし、このミスをさっそくマーレインに送って修正してもらうとするかな。ハウ、お手柄だよ」

ハウ「じゃーご褒美にグラジオの残したマラサダ貰っていいー?」

グラジオ「どうしてオレなんだ……!」

リーリエ「……ふふっ」

リーリエ(みなさんとこうして食事して……本当に明るくて、楽しいです)

そんな楽しげなやり取りをリーリエは目を細くして眺めていると、ふとしんのすけの事を思い出した。
……ここにいるべきあの少年は、いないのだ。

リーリエ(しんちゃん……お腹、すいてないかな。かあさまに、ひどい目に合わされていなければ、いいのですが)チクン

リーリエ「……みなさんは、しんちゃんと出会っているんですよね」

ハウ「んー? それはリーリエも一緒じゃないのー? ここにいる人たちみんなリーリエと会ってるよー?」

リーリエ「でも、もしわたし一人だけだと、こんなに出会えたというのはきっと無かったです。こうして、みなさんと一緒に食事ができることも有り得なかったと思います」

グラジオ「ああ……。元スカル団の幹部にポケモン博士、キャプテン、しまキングの孫、財団の職員、そしてオレら……ごった煮もいいところだ」

ハウ「みんな、しんのすけが引き合わせてくれたんだねー」

リーリエ「だから……しんちゃんも欠けちゃ、いけないですよね」

プルメリ「……リーリエ」

ククイ博士「だったら、取り戻せばいいだけさ! しんのすけを取り返して、またみんなでこうやって晩ご飯を食べようぜ!」

ひろし「そうだな。俺たちも、こっちに来てまだ家族と一緒に晩ご飯を食べることすら出来てないからな」

みさえ「そうね……」

バーネット「次はわたしも本格的に手伝おうかしら?」

アセロラ「アセロラも今度はゼンリョクで腕を振るうからね! みんなで晩御飯作るって約束、まだ果たしてないし」

ハウ「おれー、いっぱいマラサダ買ってきてーみんなに分けてあげたいー」

ククイ博士「と言いつつ、マラサダを独り占めしちゃうんじゃないか?」

ハウ「えー? やだなーそんなことしないよー」

\アッハッハッハッ!/

リーリエ(そうですね……奪われたのなら、取り戻せばいい。それだけです)

リーリエ(しんちゃん、必ず無事でいると信じています)

リーリエ(絶対にかあさまもあなたも、取り戻します。そのために、わたしもゼンリョクで頑張ります)

リーリエ(ビーストの世界から戻ってきたら、みんなでパーティーをしましょう。きっと、今よりもっと明るくて、楽しくて、盛り上がると思います)

リーリエ(待っててくださいね。しんちゃん)

エーテルパラダイス 2階 保護区テラス

賑やかな食事が終わり、リーリエたちは各々の割り当てられた部屋に戻って明日に備えて身体を休めていた。
グラジオはそんな中、テラスで月明かりに照らされた海面を眺めていた。
グラジオはマリエ庭園でのアクジキングとの死闘を思い出し、タイプ:ヌルの入ったモンスターボールを取り出して覗いた。

グラジオ「ヌル……すまないことをした。あの時、オレが驕ってさえいなければ、オマエを危険な目に合わせることもなかった」

ひろし「よう、グラジオくん」

グラジオ「……ひろしか?」

ひろし「こんなところで何してるんだ?」

グラジオ「ああ……ああいう雰囲気の中にいるのは初めてだからな。だから、こうして夜風に当たりながら、一人で頭を落ち着かせていた」

ひろし「そうか。俺達はまぁ、食後の散歩のようなものさ。ここに来れば、たくさんポケモンも見られてひまも喜ぶしな。それでたまたま君を見かけたんだ」

グラジオ「フッ……そうか」

グラジオ「……ひろし、みさえ」

ひろし「ん?」

グラジオ「……オレは、こっちの事情にアンタたちの息子を巻き込んでしまって、申し訳ないと思っている」

みさえ「ううん、あなたが謝ることじゃないわ」

ひろし「なーに、あいつがそう簡単にくたばったりしないさ」

グラジオ「……そうだな。あいつは強い。そこはオレも認める」

ひろし「なにせ、自慢の息子だからな」

みさえ「そうそう、将来は他の地方のチャンピオンを倒せるようなトレーナーなってもらわないと」

ひろし「そのためにも、あいつを助けに行かなくちゃな」

グラジオ「……お前たちもウルトラホールの中へ行くつもりなのか?」

みさえ「当たり前でしょ!」

グラジオ「よせ……。ポケモントレーナーではないお前たちが行って、生きて帰れるような場所じゃないぞ」

ひろし「忠告ありがとよ。でも、俺たちは家族だ。誰か一人が危ない目にあったら、みんなで助けに行くんだ。家族と一緒にいれば、世界の危機だろうが、なんだろうが乗り越えられる」

みさえ「あなたはまだ子供だから分からないけれど、子供のためなら、親はなんだって出来るものなのよ」

グラジオ「……」

グラジオ「まっ、そうだろうな。ひろしはここでリーリエを救出するとき、ためらわずオレたちについてきたからな」

グラジオ「……しんのすけが羨ましく思う。子供の為に命をかけてくれている親が居るとはな」

ひろし「父親はどうしたんだ?」

グラジオ「父は――ウルトラホールとウルトラビーストの存在を初めて発見した人なんだ。だが……父は、ウルトラホールの実験中に消えた。残されたのは、ウルトラビーストの資料と、弱ったコスモッグだけだ」

ひろし「まさか、ルザミーネがウルトラビーストに惹かれたのって――」

グラジオ「もしも、母がウルトラビーストへ向けた理由が、父への想いだとしたらオレとしては救われるがな。オレは、母がウルトラビーストを欲したあの行動がわからんでもない」

みさえ「だからって、子供をないがしろにする理由にはならないわ」

グラジオ「……だが、それでもオレたちにとって、母なんだ」

みさえ「……」

ひろし「なあ、グラジオくん」

グラジオ「なんだ?」

リーリエ(にいさまとしんちゃんのご両親方……なにを話しているのでしょうか?)

たまたまほしぐもちゃんを連れて散歩に来たリーリエがエレベーターを上がると、話し声が聞こえて、彼らの会話に耳を立てる。

ひろし「子供は親を見て成長するもんだけど、親も子供を見て成長していくんだよ。俺もみさえも、しんのすけと一緒にいてたくさん教わったものがあるんだ」

グラジオ「教わった……?」

みさえ「そうね。こっちに来て、あの子が島巡りして――しんのすけがハプウちゃんの大試練をやり遂げた姿を見て、私も教えられたわ。あの子が自分の足であそこまで来たのね、って」

ひろし「だからさ、グラジオ君もリーリエちゃんも、自分たちがあいつから離れて学んだこと、考えたことをルザミーネにガツンと教えてやるんだ」

リーリエ「!」

グラジオ「……」

グラジオ「フッ……そうだな。このまま何も言わず、終わるわけにはいかない。必ず取り戻すぞ。全てを」

ひろし「ああ!」

みさえ「ええ!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンッ!」

リーリエ(……!)コクン

ひろし「お前のためにみんながゼンリョクを出しているんだ――だから無事でいろよ、しんのすけ!」

――その頃、しんのすけは……。

しんのすけ「うー、おまたが冷えるとおしっこもすぐ出ちゃいますなぁ」ジョボボボ

しんのすけ「でも、なんかZリングはあったかいのよねぇ」

さっきから熱を帯びているZリングを眺めると、うっすらと赤く煌めかせていた。こんなこと、今までなかったのに。

しんのすけ「まったく、くさやのおじさんには頭にきますな!」

ロトム図鑑「あいつが言い訳並べてでも帰りたくないってことは、ここにはたくさんのスケスケおパンツが……?」

フェローチェ『あの方も、しん様と同じ世界の方なのですね』

しんのすけ「まーね」

しんのすけ「あープンプン怒ってたら腹減っちゃったぁ。とーちゃんからもらったポケマメでも食べるか」

しんのすけ「あいちゃんもたべる?」ポリポリ

フェローチェ『まぁ、しん様が下さる食べものは、なんでも口に入れられますわん!』スッ

フェローチェ『しん様は、向こうの世界でどんなことをしていらしているのですか?』モグモグ

しんのすけ「オラたち、島巡りしてるの」

フェローチェ『島巡り?』

ロトム図鑑「オレ達、自分探しの旅をしているのさ」

しんのすけ「ついでにきれいなおねいさんとかも見つかるといいかなーって」

フェローチェ『旅、ですか。それは素晴らしいですわ。先ほどのグズマ……という方はしん様のお仲間ですか?』

しんのすけ「ううん、くさやのおじさんはスケスケおパンツ団っていう、ポケモンとスケスケおパンツを盗るあくどい集団のボスなんだゾ」

フェローチェ『ということは、しん様たちの敵……ということですわね』

ロトム図鑑「だが様子がおかしかったな。心なしか、大人しくなったような気もするぞ」

しんのすけ「どーせ盗んだスケスケおパンツがおばさんのものだったんでしょ」

フェローチェ『しん様は、島巡りをして、どうなさるのですか?』

しんのすけ「オラー? オラはね、島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちにモテモテになるのが夢なの。チャンピオンになったら、ゆーめーになるらしいですから」

フェローチェ『島巡りチャンピオンですか……あの、もしよろしければですけど』

しんのすけ「お?」

フェローチェ『あいも、旅の仲間に加えさせてもらえないでしょうか?』テレテレ

しんのすけ「なんで?」

フェローチェ『もちろん、しん様があいの命を救ってくださったからですわ! それにあいが住んでいた世界はもう飽きてしまいましたし、こっちの世界の人間やポケモンという生き物の暮らしをキチンと見てみたいからですわん』

しんのすけ「そーいえば、あいちゃんってなんで倒れてたの?」

フェローチェ『何度かこの世界に「穴」が開かれたことはお話しましたね。その穴を、あいは好奇心でくぐり抜けて、何度かアローラ地方を訪れたことがありますの』

フェローチェ『ですが……あいのことが珍しいのでしょうか。何度か、真っ白な人間たちが、あいを追いかけてきて――それで、応戦して疲れ果てていたら、しん様が助けてくださつたのですわ』

しんのすけ「ふーん」

ロトム図鑑「しんのすけ! 仲間に加えようぜ! こいつを加えれば戦力もアップするだろ?」

ロトム図鑑(ウルトラビーストを持ち帰れば、世界初のウルトラビーストを登録した図鑑として名を馳せるからな!)

しんのすけ「うーん……ま、いいけど。マサオくんとの約束もあるし」

フェローチェ『ありがとうございます、しん様!』

ロトム図鑑「よっしゃあ! ウルトラビーストゲットだぜ! そうと決まれば、さっさとこんな世界を出るぞ!」

――ウフフ、そうは行きません

全員「!?」

声が聞こえたと同時に、しんのすけたちに向かって電気が走ってきた!

ロトム図鑑「危ない! 避けろ!」

しんのすけとあいちゃんはすかさず回避するが、逃げ遅れたぶりぶりざえもんが電撃をモロに喰らいながら、岩に叩きつけられる!

ビリビリビリビリッ!!!

ロトム図鑑「ブヒィィィィ!!」ビリビリッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」

ロトム図鑑「し……しんのす……」バチッ! バチチチッ!

ロトム図鑑「」バチッ! バチッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもんっ!」

しんのすけはロトム図鑑を拾い上げて揺さぶるも、ぶりぶりざえもんの目は閉じられており、画面になにも表示されていない。

ルザミーネ「ウフフ! やっと見つけた……。探しましたよ。しんのすけ君!」

しんのすけ&フェローチェ「!」

顔を上げると、しんのすけたちの前にウツロイドやデンジュモク、マッシブーンといったウルトラビーストと、それを率いるようにルザミーネが笑みを浮かべながら浮かんでいた。

ルザミーネ「ふうん、そこのフェローチェ……あなたがしんのすけ君を助けたのね。なぜその子を助けたのかわかりませんが、わたくしの愛を受けないのなら、ビーストであろうと敵です」

しんのすけ「妖怪メノクラゲオババ!」

ルザミーネ「しんのすけ君……その減らず口もいい加減閉ざすよう、教育してあげるわ」

ルザミーネ「さぁ愛しい子供達、この子を、新しい我が子として迎え入れます。しんのすけ君を捕まえなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」

デンジュモク「デンデンジュッ!」

マッシブーン「ブーン!」ハルクホーガン!

フェローチェ『しん様、下がってくださいませ!』フッ!

あいが飛び出すと、マッシブーンが拳を振り上げるよりも先に、顔面を蹴り飛ばす!

マッシブーン「ブンッ?!」ドカッ!

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バシャッ!

ウツロイドが毒を飛ばして、あいに直撃するが、姿が消えた。あいは空中にとびあがり、ウツロイドを踏みつけるように頭部へ一撃を入れた!

ウツロイド「じぇ、じぇるる……!」

ルザミーネ「あのフェローチェ……目障りね。デンジュモク、フェローチェにさいみんじゅつよ!」

デンジュモク「デンデンッ!」ギィーッ

フェローチェ『うっ……!』クラッ

デンジュモクは両手足と尻尾を地面にくっつけて木のような形状になると、頭部の光をチカチカと点滅させて奇妙な音を立て始めた。光と音を聞いた瞬間、あいの意識が遠くなり始める。しかし――。

しんのすけ「ぶりぶりざえもんの仇! ケツだけアターック!」ドカッ!

デンジュモク「デン!?」

フェローチェ『しん様!』

かろうじて意識を留めたあいは、デンジュモクへ向けて一直線に飛び出し、とびひざげりを放ち、デンジュモクに命中。そのまま倒れた!

フェローチェ『しん様、また助けていただき、ありがとうございます!』

しんのすけ「それほどでも」

ルザミーネ「しんのすけ君……!」

ルザミーネは怒りに任せて一斉に触手を振り下ろすと、衝撃波が走って地面を抉っていく!

ブンッ
ガガガガッ!

しんのすけ&あい「!」ピョンッ!

ルザミーネ「行きなさい! ウツロイドたち!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」キィィン

ドンドンドンッ!!

ルザミーネの命令を受けたウツロイドたちが、次々と眩く光る石を出現させて、そこから光線を放っていく!
しんのすけとあいはウツロイドたちのパワージェムをかわし続けていく。その真っ只中を、ルザミーネがあい目掛けて突っこんできた!

ルザミーネ「消え失せなさいっ!」グワッ!

フェローチェ「!」

触手をあいに向けて振り下ろす瞬間、しんのすけが飛び出して、あいを押しのけた。

しんのすけ「あいちゃん危ない!」ドンッ!

フェローチェ『しん様!』

シュルルルルッ!

しんのすけ「おわっ!?」

ルザミーネ「うふふっ、また捕まえた!」

しんのすけ「また捕まっちゃったあ!!」グググッ

フェローチェ『そんな……しん様! あいを庇って……!』

ルザミーネ「……わたくしの愛を拒絶するモノは、例えビーストであっても許しませんよ。徹底的に痛めつけなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バッ!

フェローチェが動き出そうとする直前、ウツロイドたちがパワージェムをフェローチェに向けて一斉放火した!

ドンドンドンッ!

フェローチェ『あああっ!』

しんのすけ「あいちゃん!」

ルザミーネ「さあ、しんのすけくん。わたくしと同じようにウツロイドと混じり合いなさい。……そして供に生きましょう? この美しい愛の世界で……」

しんのすけ「うわー! 40過ぎの妖怪メノクラゲオババとずっと暮らすとかやだやだやだ! 離せぇぇぇっ!!」ジタバタジタバタ

ルザミーネに拘束されているしんのすけの頭上に、もう1匹のウツロイドがしんのすけに覆い被さろうと、垂直に降りてくる。しんのすけは身の危険を感じ、暴れ逃げ出そうとするががっちりと固定されたかのように体を動かすことが出来なかった。

ウツロイド「じぇるるっぷ……」フヨォ

フェローチェ『ううっ……しん様……!!』

ルザミーネ「さあいらっしゃい……」ニヤァッ

しんのすけ「おわっ、おわぁぁぁぁっ!!」

クチュッ
グニャグニャ……






じ ぇ る る っ ぷ

今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

じゃ、そゆことで~

【おまけ】

アセロラ「わ~かわいいー! しんちゃんの妹?」

ひまわり「た?」

みさえ「うん、ひまわりっていうの」

アセロラ「抱っこしてみてもいい?」

みさえ「いいわよー。気をつけてね」ハイ

アセロラ「アローラ、ひまちゃん! 古代のプリンセス、アセロラちゃんでーす!」

ひまわり「たぁ?」

みさえ「あ、そうだ。ちょっと下の階に行って荷物取りに行ってくるから、ちょっとひまの面倒見てくれる?」

アセロラ「はーい! じゃあひまちゃん、アセロラちゃんと遊んでお母さん待ってようねー!」

みさえ「じゃあお願いね」ガチャ

バタン

みさえ「そういえば、なにか言い忘れていた気がするけど……」

アセロラ「ほーらひまわりちゃーん、ゴーストのZポーズだよー♪」

ひまわり「ほーほー」

みさえ「……ま、いいか。楽しそうだし」

~数分後~

ひまわり「きゃきゃきゃー♪」ダダダダ!

アセロラ「あー! その腕輪大事なものだから持ってっちゃダメ! アセロラちゃん、とってもアングリーになっちゃうよ!」ドタドタドタ!

みさえ「そうそう、光り物はひまの前に出しちゃダメって言おうとしたけど……手遅れだったわね」

>>130

修正です

フェローチェ『ですが……あいのことが珍しいのでしょうか。何度か、真っ白な人間たちが、あいを追いかけてきて――それで、応戦して疲れ果てていたら、しん様が助けてくださったのですわ』

更新前にちょっと修正

>>97
しんのすけ「ねぇねぇ、とーちゃんも昔トレーナーだったんだよね?」

エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前

リーリエは太陽の光を浴びながら、右手にはカザマの入ったボールが、左手にはウルトラビーストのデータが入った端末が握られている。

リーリエ(月の笛も……もうそろそろ……)

きっと、ビーストの世界に行けば、ウルトラビーストを従えた母と戦うかもしれないだろう。そうでなくとも、ビーストからリーリエの身を守るために、しんのすけのポケモンたちの力は必須だ。

リーリエ(やれるだけのことはやりました。あとは――)

~前日の夜~

ルザミーネの屋敷の庭で、みんなに見守られながら、リーリエとハウ、ネネとガオガエンが対峙していた。
ネネはピンク色の毛並みのあちこちに火傷があり、ガオガエンの身体にも激しい拳撃の跡が残っている。だが、ネネは片膝をついてガオガエンを睨みつけている一方で、当のガオガエンは不敵そうに笑っていた。

ハウ「ガオガエン! フレアドライブ!」

ガオガエン「ガオオオッ!」ダッ!

ハウの指示を受けたガオガエンは、一気にネネに向かって走り出すと、へそから炎を放出させて全身に纏い始めた!
そして、炎と一体になりながら、ネネに全身をぶつける!

ガオガエン「オオオオッ!!」ゴォォォッ!!

ドンッ!!

キテルグマ「クーーーッ!??」

ガオガエンのフレアドライブを受けたネネの巨体が燃え盛りながら宙を飛び、地面に倒れ伏した。

リーリエ「ネネちゃんさん!」

キテルグマ「ク……クー」ガクッ

ククイ博士「ハウとガオガエンの勝ち、だね」

ハウ「……っぷはぁー! 手に汗握る、すごい戦いだったー!」

リーリエ「お見事です。ハウさん!」

リーリエ「……ですが、あくタイプに有利であるはずのネネちゃんさんが押し負けられるとは思いませんでした。タフさでは、しんちゃんのポケモンさんの中でも一番と思っているのですが……」

ひろし「ネネちゃん――キテルグマの特性はもふもふって言ってな、その名のとおりもふもふとした身体で攻撃を軽減させる代わりに、ほのおタイプの攻撃にはめっぽう弱いんだ」

ククイ博士「そういうことだね。ガオガエンのフレアドライブでは受け止めきれないだろう」

ハウ「うんー。それにねー、おれが逆にリーリエの作戦を真似したのー」

リーリエ「そうだったのですか……。ハウさん、さすがです!」

ハウ「でも、リーリエの戦い方ってーすごいえげつないよねー。作戦に気がつかなきゃ、おれ、負けてたかもー」

リーリエ「え、えげつないって……」

アセロラ「ハウくん、もっと他にも言い方あるでしょー! 間違ってないけど……」

ハウ「うー、ごめんねー」

プルメリ「ま、あたいはあの戦い方、結構好きだよ。なにがなんでも相手を倒そうっていう気迫がビンビンに感じられるね」

グラジオ「だが、同時に弱点も明らかになったな。まずは作戦を悟られないようにすること……そして相手の出すポケモンの性質と傾向を理解しておくべきだ」

リーリエ「はい……今回もアセロラさんとの戦い方も、お互いの手持ちを知っていたからああいうことが出来たんですよね」

グラジオ「リーリエ、ひとつずつミスを潰せばいい。お前には、志を共にする仲間がいるんだからな」

ククイ博士「そうだね。まずはマーレインから貰ったビーストのデータを頭に入れるんだ」

アセロラ「それに、しんちゃんのポケモンたちも、だんだんリーリエちゃんの言うこと、分かってきてるよ」

みさえ「そうね、私ポケモン勝負はさっぱりだけど、リーリエちゃんが強くなっていってるのは分かるわ!」

ひまわり「たい!」

リーリエ「みなさん……本当にありがとうございます。わたし、カザマさんたちと一緒に、もっと頑張ります!」

プルメリ「今度はあたいと戦ってみようか。状態異常についても、知っておいて損はないだろ?」

リーリエ「はい! よろしくお願いします!」

みんなの粘り強い指導と、リーリエとカザマたちが夜通し行った血のにじむ努力は、これから発揮されていくだろう。

リーリエ(あなたたちを、信じます)

コツコツ

グラジオ「リーリエ、ここにいたか」

リーリエ「みなさん……」

みさえ「あなたに渡すものがあるのよ」

アセロラ「リーリエちゃん、はい!」

アセロラが一歩前に出ると、飾り気のない直方体の箱を渡された。リーリエはそれを受け取り、箱を開けると、完全に直った月の笛が陽の光を浴びて青々と輝いていた。

リーリエ「これは……!」

ひろし「さっき、修復が終わったんだ」

ククイ博士「アローラの人たちと、ビッケさんたちエーテル財団の方々が、がむしゃらに修復に勤しんでくれたおかげだね」

プルメリ「これで伝説のポケモンを呼び出すんだろ?」

ハウ「おれもみんな、バッチリ行く準備はできているよー。リーリエはー?」

リーリエ「わたしも……準備万端です!」

アローラの人々と神々の祈りを込めながら修復された月の笛を手に、リーリエたちはグラジオの小型船へと乗り込んだ。

ククイ博士とバーネットはエーテルパラダイスの人やポケモンたちの助けになれるよう、マーレインと協力してビーストへの対抗策を練り、アセロラはエーテルハウスから連れてきた子供を守るために残ることになった。

リーリエ「みなさん。月の笛からポケモンのことまで……何から何まで、ありがとうございます!」

バーネット「あなたがゼンリョクで頑張るのなら私達も応援するって、それだけよ」

ククイ博士「リーリエ、ハウ、君たちならきっとしんのすけとルザミーネを取り戻せるよ。ポケモンと供に、ゼンリョクで突き進んだ!」

バーネット「みんなの想い、あなたたちに託したからね!」

アセロラ「必ずしんちゃん連れて戻ってきてよ! アセロラ、アローラ防衛隊なのにしんちゃんから防衛隊バッジもらってないんだから」

リーリエ「はい!」

みさえ「さ、出かけるわよ――家族を取り戻しに」

ひろし「そしてすべて終わらせるために――行くぜ!」

全員「おーーーっ!!」

海上

グラジオの小型船が海を爆走するなか、ひろしたちは渡された昼食のマラサダを次々と口の中へ放り込んでいく!

ひろし「バクバクバクバクバク!!」

みさえ「ガツガツガツガツガツ!!」

ひまわり「チューチューチューチューチュー! !」

ハウ「モグモグモグモグモグモグ!!」

リーリエ「ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ!!」

グラジオ「ボリボリボリボリボリボリボリ!!」

プルメリ「ガリガリガリガリガリガリガリ!!」

シロ「」ポカン

ポニ島

小型船が海の民の村に停泊すると、一斉にポニの原野へと駆け出した!

全員「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドドドドドド!!

ケンタロスすら超える速度で、ポニの原野を突っ切り、ポニの古道を横切っていく!

マッシブーン「ブンブーン!」モストマスキュラー!

アクロマ「いま あなたの めのまえで そんざいかんを はなつ ウルトラビースt」

ひろし「うるせぇ!」バキッ!

アクロマ「おほァ!」ドサッ

ドタドタドタッ!

アクロマ「よ、よろしいっ……なかなかの、パンチです……」ピクピク

マッシブーン「ブーン?」ダイジョウブ?

ポニの大峡谷

ひろしたちはポニの大峡谷に突入し、勘で洞窟内を駆け巡り、橋を渡り、飛び出した野生のポケモンを無視して突き進んでいく!

全員「うおおおおおおおああああああああ!!!」ドドドドドド!!

試 練 開 始 !

ジャラランガ「ジャラジャランジャン!」バァーン!!

ポニの大峡谷 ぬしポケモン
ジャラランガ 出現!

みさえ「邪魔!」バキッ!

ジャラランガ「ジャランガーーッ!?」ドサッ

試 練 達 成 !

ドタドタドタッ!

ジャラランガ「ジ……ジャラ」ヤッパリ

ジャランゴ「ジャラ?」ダイジョウブ?

月輪の祭壇

ハウ「あらよっと! ついたー!」

グラジオ「ここが月輪の祭壇……」

みさえ「なんか神秘的な場所ね……」

リーリエ「太陽と月……ここで2本の笛を吹けば……!」

ひろし「ここまで勢いで来ちまったけど、どこで笛を吹けばいいんだ?」

プルメリ「あの階段の上じゃないかい? 登ってみようよ」

満月が見下ろす中、リーリエたちは長い階段を登って祭壇の上部へとやってくる。

リーリエ「月の力、いっぱい感じます……。ほしぐもちゃん……あなたを元の世界に戻すまえに、しんちゃんを取り戻して、かあさまの目を覚まさせます……!」

グラジオ「あの水たまりに囲まれたところに、床に太陽と月の笛と同じ文様があるな……。ここに立って、それぞれ笛を吹くのだろう」

リーリエ「では、にいさまは太陽の笛を。わたしは月の笛を吹きます」

グラジオ「わかった」

プルメリ「あたいらは儀式の邪魔にならないよう、下がっていようか」

ひろし「ああ」

ひろしたちは階段のそばへ下がり、リーリエは月の文様が描かれた床へ、グラジオは太陽の文様が描かれた床へ立つと、それぞれ笛を取り出した。

リーリエ「月の笛……手になじみます。ひとりでに吹けそう……」

グラジオ「準備はいいか? 始めるぞ」

リーリエ「はい……!」

リーリエとグラジオは太陽と月の笛を口元に持っていくと、そっと息を吹きかけた。
しんのすけはリーリエが笛を吹けないことを不安がっていたが、その心配はなかった。笛そのものが、音色を出しているからだ。
笛から飛び出した鮮やかな音は、祭壇を覆っていき空間そのものに優しく囁いていく。

みさえ「……きれいな音」

そして、笛が歌い終えた瞬間――。

ゴゴゴゴ!!

リーリエ&グラジオ「!」

ハウ「なになにー?!」

地面が揺れたかと思うと、リーリエとグラジオの周囲の水たまりが光を帯びた。光は床の模様を伝って、正面にある巨大なモニュメントへと駆け抜けていく!
そして、てっぺんにある円形のレリーフにたどり着くと、レリーフがひとりでに開いていった。
開いた箇所からマグマのような朱色の光が溢れ出し、虹色に変色すると、祭壇に向かって光線を照射した! 照射した部分が、小さな光のドームとなる!

ゴソゴソッ!

リーリエ「ほしぐもちゃん……?」

プルメリ「リーリエのリュックが!」

リーリエのリュックに入っているコスモッグが、飛び出した。コスモッグはリーリエから離れて、光のドームの中へと入っていく。

ほしぐもちゃん「……!」

グラジオ「コスモッグが……!」

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

光のドームの中で、コスモッグも呼応するように輝きだし、光のドームがコスモッグに力を与えるように縮んでいく!
そして、超新星爆発の如く、青く眩い光を放ち、その場にいた全員が目を逸らした。


「マ ヒ ナ ぺ ー ア ! ! !」バサッ!

進化したコスモッグは、三日月のような巨大な翼を広げながら光のドームのあった場所へと舞い降り、産声を上げるように咆吼を上げた。

リーリエ「……!」

ハウ「コスモッグが進化したー!」

ルナアーラ「……」

みさえ「すごーい……!」

ひまわり「たやーい!」

プルメリ「アローラの伝説のポケモンは……コスモッグの進化系だったのか!」

コスモッグから進化したルナアーラは、真紅の瞳でリーリエたちを見下ろしている。

ひろし「あれが……ルナアーラ!」

――あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ

ひろし(星の繭……こういうことだったのか!)

リーリエ「ほしぐもちゃん……よかったです……無事で……いきなり飛びだすから……わたし、驚いちゃって……!」

グラジオ「それにしても……笛の音で力を与えるとはな……」

リーリエ「伝説ポケモンに進化させる……すごい儀式だったなんて!」

ルナアーラ「マヒナぺ!」

ハウ「すごいすごいー! コスモッグが進化すると伝説のポケモンになるなんてー! おれ、来てよかったー!」

リーリエ「伝説のポケモンに進化する話なんて、そんなの、本でも読んだことないのに……」

リーリエ「ルナアーラさん……ううん、ほしぐもちゃん! わたし、しんちゃんとかあさまに会いたい!」

ルナアーラ「マヒナぺーアッ!!!」バサッ!

ルナアーラは翼をはためかせると、急上昇した。翼を満月のように広げると、夜空のような青い身体が白くなっていき、額にもうひとつの目が浮き出てきた。

すると、祭壇のモニュメントに光が出現し、空間が歪んでいく。ルナアーラは第三の目から光を放ち、空間の歪みに当てると、ウルトラホールへと変化した。

グラジオ「ウルトラホール……!」

みさえ「これでしんのすけを助けに行ける!」

その時だった。
銀色の光が祭壇を襲い地面を穿った! 全員が攻撃を受けた方向を見ると、空にはテッカグヤが、祭壇と洞窟の出入り口にアクジキングが立ってた。

テッカグヤ「フー……!」ゴゴゴゴ!!

アクジキング「ズモォォォォッ!!」

ひろし「あいつら! こんなところにまで!」

グラジオ「行け……! ここはオレが食い止める!」スッ

ハウ「おれも手伝うー!」スッ

リーリエ「にいさま! ハウさん!」

プルメリ「リーリエ! グズグズしてる暇はないよ! 早くルナアーラと一緒にウルトラホールの中に飛び込むんだ!」

リーリエ「……はい! お願いします! ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!」グワッ

ハウ「アローラ防衛隊、ファイヤーだよー!」グッ!

リーリエ「ファイヤー! です!」グッ!

ルナアーラは急降下し、リーリエたち4人をかかえると、ウルトラホールの中へと飛び込んでいった!

バサッ!
グワァァァァッ キィーーーン!

グラジオ「頼んだぞ! ヌル!」ヒョイッ

ハウ「行くよー! ライチュウ!」ヒョイッ

ヌル「オオオッ!」ポンッ

ライチュウ「ライラーイッ!」ポンッ

グラジオ「ハウ……オマエがいてくれてよかった。礼を言う」

ハウ「褒められちゃったー照れるなー」

グラジオ「『BLASTER』は任せた。オレは『GLUTTONY』をやる!」

ハウ「へへー任せられたー! ライチュウ、10まんボル――」

その時、空から1匹のポケモンが回転しながらテッカグヤへと激突し、地面へと落下させる。同時に、ポケモンも地面に着地する。

バンバドロ「ムヒイウンッ!」ズザザザッ!

グラジオ「バンバドロ――!」

???「まったく……わらわを差し置いてこのポニ島の中で暴れるとはいい度胸じゃ」テクテク

ハウ「ハプウさん!」

ハプウ「お主らが全力疾走する姿が見えてな。ライドギアを渡そうと思ったが、今の状況を見る限り、必要なさそうじゃな」

ハウ「手伝ってくれるのー?」

ハプウ「もちろんじゃ。伝説のポケモンを見れて、気分も良いしな! このハプウとバンバドロ、最初からゼンリョクでビーストを迎え撃とうぞ」

グラジオ「よし……ホールを守りきるぞ!」

ハウ「うんー!」

ハプウ「うむ!」ギンッ!

ウルトラスペース

ブゥゥゥンッ!

リーリエ「きゃっ!」ドサッ!

ひろし「うわっ……と!」ドサッ!

みさえ「イタタ……」

プルメリ「……ここがビーストの世界」

リーリエたちは周囲を見渡すと、自分たちは別の世界に来たことをまざまざと思い知らされた。
まるで深海にいるような暗さ、奇妙な植物や岩、そして浮遊しているウツロイドたち。見ているだけで不安になる。

リーリエ「思っていたよりきれいな場所で……驚いています。でも……空気がどんよりと、なんだか苦しい……」

みさえ「ここに、しんのすけがいるのよね……」

プルメリ「グズマもね……」

リーリエはふと、空に浮かんでいるウツロイドをみやった。

リーリエ「博士は……ウルトラビーストもポケモンかもしれないと言ってました。だとすると、ウルトラビーストさんと呼ぶべきでしょうか」

ひろし「ああ、そうかもしれないな」

リーリエ「……行きましょう!」

ルナアーラ「……マヒナぺーア!」

待って、と言いたげに、ルナアーラがリーリエを呼び止めた。

リーリエ「どうした……の?」

ルナアーラが、息を切らしたように身体を震わせてリーリエを見据える。

みさえ「なんだか、弱っている気がするわ」

リーリエ「初めてウルトラホールを開いたから……疲れているのでしょうか?」

ルナアーラ「マヒナぺーア」コクン

プルメリ「さすがに伝説のポケモンといえど、別の世界に行くには相応の体力が必要ってことだね。よく頑張ったよ」

リーリエ「ありがとうね、ほしぐもちゃん。ビーストさんの世界に連れてきてくれて……!次はわたしの番ですね! 必ず、しんちゃんとかあさまをここへ連れてきますから! ここでゆっくり休んでください」

ルナアーラ「マヒナぺィーア」

みさえ「でも、どうやって探せばいいのかしら?」

すると、ひろしのそばで控えていたシロがリーリエたちの前に立った。

シロ「……」クンクン

ひろし「シロ、どうしたんだ?」

シロ「キャンキャン!」

みさえ「しんのすけの場所が分かるの?」

シロ「アンッ!」

みさえ「シロ……きっと、しんのすけのニオイを嗅いだのよ!」

ひろし「追いかけようぜ! まずは1人でもいいから誰かを見つけるんだ!」

プルメリ「そうだね……代表と一緒にいたグズマなら、なにか知ってるかもしれないね」

リーリエ「しんちゃん、待っててくださいね! 今、助けに行きますから!」

リーリエたちは、ニオイを辿って歩くシロを先頭にしつつ、ウルトラスペース内を歩き回った。
途中、アローラでうんざりするほど見かけたウルトラビーストたちがウルトラスペース内を闊歩しているのを目撃し、なるべく戦闘を避けるために身を潜めながら進んでいった。迷わないように、あらかじめひろしが持ち込んできた頑丈なロープを地面に垂らして帰り道を作る。

リーリエ「本当に、ビーストさんばかりの世界なんですね……」

プルメリ「多分だけど、この世界は他の世界に繋がる中間地点だと思うよ。だから、ここから様々な世界からビーストが行き交っているんだ」

ひろし「宅配で言うなら、流通した荷物の集まるベースか。ルザミーネはここから、ウルトラビーストをアローラへ『出荷』させてるってところだな」

みさえ「ここに人間が迷い込むこともあるのかしら?」

プルメリ「別の世界からやってきた人間が、アローラに流れ着く。逆もまた然り。可能性はあるかもね」

リーリエ「元の世界へ帰れなくなるなんて……そんなの、悲しいです。かあさまも、グズマさんも、しんちゃんも、そんなことさせません!」

ひろし「ああ――」

シロ「……キャンキャンッ!」

ひろし「シロ? なにか見つけたのか?!」

???「ポケモンの声……?」

プルメリ「……その声、まさかっ!」

プルメリは人の声がした方へ走り出した。ひろしたちも後に続いていく。
緩やかな岩のカーブを曲がっていくと、果たしてそこには、岩場に座り込んでいるグズマの姿があった。
グズマはプルメリたちの姿を見たとたん、まるで怪物でも見たかのように心底驚いた表情で迎え入れた。

プルメリ「グズマ! グズマなんだね!」

グズマ「……本当に、来やがっただと?」

リーリエ「ご無事だったんですね!」

ひろし「お前、確かエーテルパラダイスでルザミーネと一緒にいた……!」

みさえ「ねえ、しんのすけはどこにいるの?」

グズマ「うるせぇっ! てめーら一斉に喋るな!」

全員「……!」

グズマ「プルメリ、それに代表の娘、後のやつらは知らねえが……」

みさえ「私たちはしんのすけの親よ!」

ひろし「しんのすけはどこに行ったんだ? お前は確かルザミーネと一緒にいたよな?」

グズマ「しんのすけ……あのじゃがいも小僧のことか。そうか、お前らが親かよ」

リーリエ「お願いします。しんちゃんとかあさまを探しているんです」

グズマ「知らねえよ。ただ、あのじゃがいも小僧とは一度そこら辺で会ったが、帰れる帰るとピーピー喚いて、どこか行っちまったぜ」

ひろし「ということは、少なくともあの後、ルザミーネから逃げられたってことだな!」

みさえ「よかった……!」

グズマ「お前らは代表に連れてこられたってクチじゃねぇな。一体全体どんな手段でこっちに来たのか……。ホントにバカだな」

プルメリ「アンタを連れ戻せるのなら、いくらでもバカになってやるよ」

プルメリ「……なあ、ちょっとグズマとふたりっきりで話、させてくれないかい? アンタらも急いでるんだろ? あたいもグズマを説得したら、すぐに助けに行くからさ。頼む」

ひろし「ああ、ロープはそのまま垂らしておくから、それを伝って来てくれ」

プルメリ「すまないね」

プルメリ「……リーリエ」

リーリエ「はい!」

プルメリ「しんのすけと代表、絶対取り戻すんだよ。お姫様が王子様を救うって物語も、悪くないだろ?」

リーリエ「必ず助け出します! しんちゃんも、かあさまも!」

リーリエたちは再びシロが嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに、ウルトラスペースの奥へと進んでいった。

残ったプルメリとグズマの間に、沈黙が漂う。最初に口火を切ったのは、グズマだった。

グズマ「お前……本当にオレを連れ戻しに来たってのかよ」

プルメリ「そうだよ。わざわざそのために、伝説のポケモンの力を借りて、ここまで来たんだ」

プルメリ「さ、帰ろう。グズマ」

グズマ「今更なんだってんだ。わかってるんだろ? 今のアローラは、ビーストに破壊され尽くされちまっている。ここにいようがアローラに帰ろうが、変わんねえよ」

プルメリ「ああ、確かに代表のせいで、アローラはひどい有様さ。だけどね、アローラの人たちだって、ただ黙って自分たちの住んでる街を壊されるのを眺めているわけじゃないんだよ」

プルメリ「知ってるかい? しまキングやキャプテン、カプたちだけじゃない。スカル団のみんなも、必死でアローラを守ってるんだよ。アンタが帰ってくるのを待ちながらさ」

グズマ「あいつらが……?」

プルメリ「ああ、あたいもクチナシとマーレインに言いくるめながらも、ビーストと戦ってきたんだ。あいつらも、ビーストとの戦いでたくましく成長してるはずだよ」

グズマ「……だとしてもよ、オレはお前らより代表を選んじまった。あいつらに見せる顔がねぇ」

プルメリ「なんだか、ずいぶん落ち着いたね。こっちでよっぽどエライ目にあったんだね」

プルメリ「しっかりしな! あんたはもうボスじゃないけど、たくさんの人に慕われてるんだからさ! 本当に見限られてるなら、あたいがこんなとこまで迎えに来ないって!」ポンッ

プルメリ「いいかいグズマ、アンタもあたいも元々は誰にも理解されなかった、いわゆるはずれ者だよ。だけどね、その時にはなかったけど、今はあるものがあるんだよ。わかるかい?」

グズマ「は……?」

プルメリ「『仲間』だよ。みんながアンタの事を理解してる。そしてアンタも、あいつらの事を理解してるんだよ。あたいらには互いに自分たちの痛みを知ってる人達がいる。もう一人ぼっちじゃないんだ」

グズマ「……」

プルメリ「失敗したんならさ、また立ち直りゃいいんじゃないの。そうやって人もポケモンも、強くなっていくんだからさ。今のアローラはボロボロだけど、みんながひとつになって、きっと立ち直っていくよ。今よりとっても良くなってね。そこにグズマもあたいも、居たいだろ?」

プルメリ「そのためにもさ、アローラへ償いをしようよ。グズマの罪も、あたいらみんなが一緒に背負ってあげるからさ」

グズマ「……」

――嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに
――おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!

グズマ「――ッ!」

グズマ「グズマァ!! なにやってるんだああ!!」ガクガクッ

グズマ「……ハァハァ」

プルメリ「吹っ切れたかい? さ、あのヒモを伝って戻りなよ。伝説のポケモンがいるから、一緒にいればきっと帰れるよ」

グズマ「……その前に、代表のところへ行く」

プルメリ「え?」

グズマ「代表には、いろいろ世話になっちまったからな。だから、筋通しに行くんだよ」

プルメリ「……そうかい。ま、あたいもしんのすけの両親と約束しちまったからね。さっさと追いかけようか」

グズマ「……ああ!」

プルメリがグズマを説得している頃、リーリエたちは先ほどと同様、シロの嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに歩き回っていた。

ひろし「しんのすけ……どこにいるんだ」

リーリエ「でも、よかったです。しんちゃんが無事そうで」

みさえ「当たり前よ、そう簡単に死んでたまるもんですか!」

リーリエ「きっと、いつものような元気な姿で姿を見せてくれます。だから、辛抱強く探しましょう!」

ひろし「ああ、ここに来て諦めるようなオレ達じゃないぜ」

みさえ「ひょっとしたら、向こうから姿を見せちゃったりしてね」

リーリエ「そうですね。そうしたら、みんな心配してましたって、うんと叱らなきゃいけませんね」

ひろし「なんだかしんのすけのお姉ちゃんみたいな口ぶりだな」

リーリエ「ふふっ、島巡りで時間があるとき、しんちゃんの面倒を見てましたから」

みさえ「そのまましんのすけの面倒見てくれると、私たちも楽なんだけどね」

ひろし「そうだな……島巡りが終わったあとも、うちのしんのすけのこと、よろしく頼んだぜ。『お姉ちゃん』」

リーリエ「はい!」ニコッ

シロ「アンアンッ!」

全員「!」

みさえ「どうしたの? シロ?」

リーリエ「なにか見つけたのでしょうか?」

シロが走り出すと、奥に小さな赤い物体と、白くて細いポケモンが倒れているのを発見し、再び吠えだした。
リーリエは赤い物体に近付くと、それがなにか理解して顔を青ざめさせながら拾った。

リーリエ「これ……しんちゃんのロトム図鑑さんです……!」

みさえ「あっ、そうよ! 誰か忘れていたと思ったら、みんなコイツのこと忘れてたのよ!」

ひろし「なんでこんなところに落ちてるんだ……? とにかく、話を聞いてみようぜ」

リーリエ「ロトム図鑑さん! ロトム図鑑さん! 返事してください!」

ひろし「おいっ、なに寝てやがるんだ。さっさと起きろ!」

ロトム図鑑「」

みさえ「……ちょっと貸してもらってもいい?」

リーリエ「あ、はい。……でも、どうなさるおつもりですか?」

みさえ「フー……フー……ふんっ!!」

げ    ん

こ    つ

ロトム図鑑「ブヒッ!?」パッ!

ひろし「あ、起きた!」

みさえ「壊れた機械なんて大抵叩けば直るものよ」

ロトム図鑑「私は誰だ……確か、ナギサシティのジムリーダー、デンジだったような……」

ひろし「お前はぶりぶりざえもんだろうが、なに都合のいい思い出し方してるんだよ」

リーリエ「ロトム図鑑さん、しんちゃんがどこに行ったか分かりますか?」

ロトム図鑑「んあ……? お前らなんでこんなところに?」

みさえ「しんのすけがこっちの世界に連れてこられたから助けに来たに決まってるでしょ? で、しんのすけはどこにいるの?」

ロトム図鑑「しんのすけだと……? ここにいないのなら私が知るわけないだろう」

みさえ「あっ、そう。じゃあもう一度ぶっ叩けば思い出すかしら」スッ

ロトム図鑑「待て待て! 本当に知らないのだ! 私は確かにあいつと居たのだが、突然ボディがショートして、そのまま気絶してしまったんだよ!」

リーリエ「そんな……」

ロトム図鑑「ん? あいつも倒れているではないか」

みさえ「あいつ?」

ロトム図鑑はみさえの手から離れると、すぐそばで倒れている、フェローチェのそばに近づいた。

ロトム図鑑「こいつは以前、アーカラで倒れていたところをしんのすけが助けたウルトラビーストだ。名前は『あい』らしい。こいつならなにか知ってるんじゃないのか?」

ひろし「あい? あいってカスカベに住んでるあの――」

みさえ「いい加減なこと言ってたら、タダじゃおかないからね」

リーリエ「ロトム図鑑さんを信じましょう。まず、このビーストさんを元気にさせなきゃ、なにも始まりません」

リーリエはリュックからげんきのかたまりを取り出して、それを砕きながらひとかけらも残さずフェローチェの口の中に入れて飲み込ませた。

フェローチェ「フェ……フェロ……」ピクッ

ひろし「おっ、気がついたぞ!」

リーリエ「よかった……ビーストさんにもげんきのかたまりは効くみたいですね!」

しかし、喜んでいるリーリエたちとは真逆に、フェローチェはいきなり起き上がると一瞬でリーリエたちと距離を取って、警戒心に満ちた眼差しで睨みつけた。

フェローチェ「フシューッ……!」

ひろし「なんだ? まるで俺たちに怯えてるみたいだ」

ロトム図鑑「ふむ……リーリエ、お前のニオイがあのフェローチェの敵と同じニオイを感じているようだ」

リーリエ「わたしのニオイ……?」

みさえ「敵と同じニオイってなによ? ちゃんと説明してよ」

すると、リーリエの腰にくっつけているモンスターボールがカタカタと揺れて、カザマとマサオが飛び出した!

ジュナイパー「ホーッ!」ポンッ!

ヨワシ「ヨワッ!」ポンッ!

フェローチェ「フェロ? フェロローッ?!」スッ

ひろし「なんだなんだ?」

リーリエ「カザマさんとマサオさんが飛び出したと思ったら……急に警戒心を解いたみたいです」

ロトム図鑑「奴らも顔見知りだからだろうな。ネネは気に食わない様子だけどな」

フェローチェ「フェロー?」

ジュナイパー「ホッホーッ! ホー?」

ヨワシ「ヨワワッ、ヨワワ?」

フェローチェ「フェローロ。フェロロ、フェーロー」

ジュナイパー「ホーホー!」

ひろし「なんて言ってるんだ?」

ロトム図鑑「軽い自己紹介と事情説明だな」

ヨワシ「ヨワヨワッ! ヨワシーッ!」

フェローチェ「フェロ……フェローロ!」

ロトム図鑑「どうやら、こっちが味方であることがわかったようだ……。だが、しんのすけは、このビーストを庇ってルザミーネに捕まったあと、どこかへ連れ去られてしまったらしい」

リーリエ「そんなっ……!」

ひろし「あいつ……!」

みさえ「ねぇ、なんとかならないの? どこにいるかわからない?」

ロトム図鑑「おい、しんのすけの居場所はわからんのか?」

フェローチェ「フェロ、フェローロ……」

ロトム図鑑「一応、アテはあるようだ。だが、そこにいるか正直自信はないらしい」

ひろし「ないよりはましだ! 案内頼むぜ!」

リーリエ「お願いします、ビーストさん! しんちゃんとかあさまのところへ、連れて行って欲しいのです!」

ロトム図鑑「だそうだ」

フェローチェ「フェロ!」

すると、フェローチェ……もとい、あいはシロの代わりに先頭に立って、「ついてきてください」と言いたげに顎でしゃくって歩き出した。

ひろし「とりあえず、ついて行けばいいんだな?」

みさえ「みたいね……」

ロトム図鑑「おい」

みさえ「え?」

ロトム図鑑「翻訳料五百億万円、ローンまたはクレジット、ウェブマネーでも可」

げ    ん

こ    つ

みさえ「次適当なこと言ったら画面叩き割るからね!」

ロトム図鑑「わ、わかった……もう何も言わん……」

リーリエ「カザマさんもマサオさんも、ありがとうございます」シュンッ

リーリエ「急ぎましょう。なんだか胸騒ぎがして……ならないのです」

ひろし「同感だ。早くしんのすけを見つけよう!」

先程までの明るさは消え去り、みんな焦りに満ちた表情であいの後をついていく。時折、しんのすけの名を呼びかけながら、ウルトラスペースをさまよい歩く。

どのくらい歩いただろうか。リーリエたちはウルトラスペースの中でもスタジアムの内部のように大きく開けた場所にたどり着いた。
岩や植物があちらこちらに転がっているものの、これといった起伏もない。他にあるものといえば、空に浮かんでいるウツロイドたちのみだ。

フェローチェ「フェロー……」

ロトム図鑑「ここで、しんのすけを最初に見つけたようだ。ルザミーネのお気に入りの場所だそうだ」

ひろし「じゃああのウルトラホールはここに通じてたんだな」

みさえ「しんのすけー! どこにいるのー?」

リーリエ「しんちゃんとかあさまはどこに……?」

リーリエたちがしんのすけとルザミーネの名を呼びかけたその時だった。

ウツロイドたち「じぇるるっぷ……!」

リーリエ「!」

宙を漂っていたウツロイドたちが動き出すと、リーリエたちの目の前に集まり、次々と並び始めた。まるで、ウツロイドで出来た壁が形成しているようだ。
そして、ウツロイドたちの群れが散り散りになると――。

――ああ……! ウルトラビーストの世界……わたくしとビーストちゃんの愛だけが存在する、なんて甘く美しい真実のパラダイス……!!

全員「!」

グニュウッ

ルザミーネ「だというのに! ……なんてしつこいのかしら! 心底ウンザリしますわね。誰の許しを得て、わたくしとビーストだけの美しい世界に来たのです!!」ギロッ

ルザミーネが、侮蔑するようにリーリエたちを見下ろしながら現れた。ポニの大峡谷で見た、ウツロイドとの融合を果たしたあの姿で。

ひろし「うるせぇ! しんのすけを助けに来たのに、いちいちお前の許しがいるかよ!」

みさえ「そうよ! うちのしんのすけを返してっ!」

フェローチェ「フシューッ!」

ルザミーネ「『うちの』しんのすけ、ですって? なにを言っているのかしら? あなた達……」

リーリエ「どういうことですかっ! しんちゃんは? しんちゃんは無事なんですか?」

ルザミーネ「どういうこともなにも、この世界にあるものは、全てわたくしのモノよ?」

ルザミーネ「この美しい景色も! この世界に住むビーストちゃんも!」

ルザミーネ「……そして、しんのすけ君もね! いらっしゃい、わたくしの愛しい息子……」

ルザミーネの呼びかけに答えるように、彼女の背後から誰かが歩いてきた。小さな人影が、ルザミーネの前に現れる。

ルザミーネ「……しんのすけ君」

スッ

しんのすけ「……」

その姿を一目見た瞬間、リーリエたちは全身が逆立つような恐怖と深い絶望が一斉に押し寄せてきた。

みさえ「いやぁぁぁぁっ!」

リーリエ「しんちゃん……!」

ひろし「しんのすけっ!」

フェローチェ「フェロ……ッ!」

リーリエたちの前に現れたしんのすけの姿は、変わり果てたものだった。頭部にウツロイドがそのままくっつき、ルザミーネのように異形の姿にこそなっていないが、全身がウツロイドの触手によって絡みついている。目も焦点が合っておらず、腕も力なく垂れ下がっている。

しんのすけ「……」グネグネ

ひろし「てめぇ……しんのすけになにしやがったっ!!」

ルザミーネ「ウフフ! 別に? ただ、この子がとっても暴れちゃうものだから、ウツロイドの力を使って、親に愛情を注いでくれる、かわいいわたくしの子供になっただけよ?」

みさえ「あんたの子供ですって? ふざけんじゃないわよ! しんのすけを元に戻して!」

ひまわり「たいっ!」

ルザミーネ「どうして? どうして、こんな可愛い子をどうして手放さなきゃいけないのかしら? もちろん、最初は反抗的だったから、ビーストちゃんの餌にしようと思ったわ」

ルザミーネ「でもね……この子の才能には驚かされてばかりだもの。突然のことがあってもすぐに切り抜けられる頭の良さ、大試練を乗り越えられるポケモントレーナーとしての実力、そしてなにより、こんな幼い子供をビーストちゃんの餌にするなんて、かわいそうですもの」

しんのすけ「それほど……でも……」

ルザミーネ「ウフフ、こうして見ると本当に愛おしく感じます……おいで」

しんのすけ「……ほい」

ルザミーネはしんのすけを触手でかかえると慈しむような頭を撫でて、優しく笑いかけながらきつく抱きしめた。あたかも彼女がしんのすけの母親であるかのように振舞って。

ルザミーネ「フフフ……愛しいしんのすけ君。わたくしが、ずっと守ってあげます。あなたの心はわたくしのモノ……」ギュッ

リーリエ「――ッ!!」

みさえ「……アンタ! アンタはぁぁっ!」ビキビキビキッ!

ひろし「か、軽々しくしんのすけに触れてんじゃねぇ!」

ロトム図鑑(羨ましいのか羨ましくないのか分からないな)

ルザミーネ「なにを怒っているのかしらねぇ? あの人たちは」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「お母さんの温もりはどうかしら? しんのすけ君」

しんのすけ「……40過ぎのおばさんに……こんなことされても……嬉しくない」

ルザミーネ「」イラッ

ロトム図鑑「敵に操られても本質的なところは変わってないようだな」





リーリエ「……もう、ウンザリです」ボソッ

ルザミーネ「なにか言ったかしら?」

リーリエ「かあさま」

ルザミーネ「あら? あなたにかあさま、なんて言われる筋合いは無いのですけれども」

リーリエ「わたしと……ポケモン勝負をしていただけませんか? それでわたしが勝ったら、しんちゃんをここにいるご両親に返してください。そして、ウルトラホールを閉じてかあさまも元の世界に帰るのです」

ひろし「リーリエちゃん……」

ルザミーネ「ふうん? なにを言うかと思えば……そう、リーリエ、ポケモントレーナーになったの」

リーリエ「はい、しんちゃんの借り物ですが。あなたとしんちゃんを取り戻すために、カザマさんたちと一緒に、ここまでやってきました」

ルザミーネ「そうやって他人の息子のモンスターボールを持って、トレーナー気取りですか? ずいぶん舐められたものね」

リーリエ「何とでも言ってください。トレーナーさんは、目と目が合った瞬間、勝負を申し込まれたら、受けなければいけないルールがあります。かあさまはご存知ですよね? それとも、背中を向けて逃げるんですか?」

ルザミーネ「言ってくれるわね。……いいわ、相手になってあげる」

ルザミーネ「だけど、もしわたくしが勝ったら、あなたはなにを差し出すの? それ相応の対価を用意しているのでしょう?」

リーリエは向かい合っていた母親と、一瞬目をそらした。薄いピンク色の唇が震える。これから出る言葉を口にすることを、ためらうように。

リーリエ「……ほしぐもちゃんをっ」

ひろし&みさえ「!」

リーリエ「ほしぐもちゃんを、あなたにお返ししますっ! それでいいですか?」

みさえ「リーリエちゃん!」

ルザミーネ「あのコスモッグのこと? もうわたしには、あんなモノ必要ないのだけれども。アローラにウルトラホールを開けることぐらいなら、今のわたくしには造作もないことですもの」

リーリエ「いいえ、ほしぐもちゃん……コスモッグは伝説のポケモン、ルナアーラの進化前なのです。ポ二島にある月輪の祭壇で太陽と月の笛を吹くことで、コスモッグをルナアーラへと進化させることができます」

ルザミーネ「それは初耳ね。ルナアーラには、ウルトラホールを自由自在に開けられる能力を持っていたわね。……そう、その力を使ってこの世界に来たのね。確かにルナアーラを掌中に収めれば、アローラ以外にもウルトラホールを開けられるかも……悪くないわ」

ルザミーネ「でも、そのルナアーラはどこにいるのかしら? あの子はウルトラビーストだから、ウルトラボール以外では捕獲できないはずだけれども」

リーリエ「あの子は今、わたしたちがここにやってきたところで休んでいます。力を使い始めたばかりですから、その反動で動けないのです。ですから、もしわたしが負けたらほしぐもちゃんのところへ案内いたします。後は……あなたの好きにしてください」

ルザミーネ「分かったわ、取引成立ね。あなたが勝てば、しんのすけ君をウツロイドから解放した上であなたたちにお返しし、ウルトラホールも閉じて向こうの世界へ戻ることも約束します。だけど負けたら、あなたのルナアーラはわたくしのもの、そしてしんのすけ君も返さない。これでいいわね?」

リーリエ「はい」

みさえ「リーリエちゃん! そんなことしたら……」

ひろし「みさえ、よすんだ」

みさえ「だって……!」

ひろし「あれが、リーリエちゃんなりの覚悟なんだ。ここで負けたら、どのみち全てを失う……だからあえて捨て身になって、絶対に負けられないゼンリョクの覚悟で母親に挑もうとしている。俺たちがそんなリーリエちゃんの決意を鈍らせるわけにはいかないだろ」

みさえ「リーリエちゃん……」

リーリエ「ひろしさん、みさえさん、必ずしんちゃんを取り戻します。わたしを信じてください!」

みさえ「……わかったわ!」

ひろし「ああ、頼んだぜ!」

ルザミーネ「さぁ来なさい。わたくしのビーストちゃんたち……!」バッ!

すると、ルザミーネの周囲に、ビーストが4匹現れた。ウツロイド、デンジュモク、テッカグヤ、あいとは別個体のフェローチェだ。

ルザミーネ「そっちの使用ポケモンは4匹。ならこっちも4匹で相手してあげる」

リーリエ(ウツロイドさん……そして、後の3匹のビーストさん……)

ルザミーネ「光栄に思いなさい。わたくしが選んだ、愛しい子供たちの相手をしてあげるのですから」

ビーストたちは、次々とルザミーネの持っているウルトラボールの中へ入っていく。
リーリエの頭の中に、必死に暗記したウルトラビーストの情報が駆け巡る。同時に、最初に何を出すべきか、決まった。

フェローチェ(あい)「フシューッ!」

リーリエ「ロトム図鑑さん。ボールに入っていないあいさんを参加させることはできないので、なんとか説得していただけませんか? これはわたしたちの戦いなんです」

ロトム図鑑「やれやれ、仕方ないな」

リーリエ「かあさま……覚悟してください。絶対に負けませんから!」スッ

ルザミーネ「かつての親に向かって、なんて口聞くのかしら! その下らない自信もプライドも、全て粉々にしてあげます!」スッ

今日はここまで。
次回の更新はいつもの通り、明日の夜予定です。

じゃ、そゆことで~!

【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「しんのすけとリーリエ」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira140103.jpg

エーテル代表の ルザミーネが
勝負を しかけてきた!

リーリエ「お願いします! マサオさん!」ヒョイッ

ルザミーネ「行きなさい! テッカグヤ!」ヒョイッ

ヨワシ(群)「ギョオオオオッ!」ポンッ

テッカグヤ「フー……!」ポンッ

ルザミーネ「テッカグヤ、ギガドレインよ!」

テッカグヤは浮かんでいる腕を緑に輝かせると、マサオの身体から次々とエネルギーを奪い取っていく。

ルザミーネ「吸い尽くしてあげる……」

リーリエ「マサオさん! アクアテールです!」

ヨワシ「ギョオオォォッ!」

マサオは攻撃をこらえつつ、テッカグヤへ距離を詰めると、身体を一回転させてテッカグヤにアクアテールを放つ!

ドズムッ

テッカグヤ「フゥッ……!」グラッ

ヨワシ「ギョッ!」

ひろし「まるで大怪獣バトルだ……!」

ルザミーネ「さっさとその群れを散らせないとね……テッカグヤ、ヘビーボンバーで群れを一気に叩きつぶしなさい!!」

テッカグヤ「フー……ッ!」ゴウッ!!

テッカグヤの腕の先端が点火すると、ガスを噴射させて勢いよくウルトラスペースの暗い空へと飛び上がっていく。

ひろし「ヤバイ! あの技だ!」

ルザミーネ「ヨワシじゃあこれを避けることなんて出来ないでしょう?」

リーリエ「……!」

テッカグヤは上空へ飛び上がると、方向転換して今度は真っ逆さまにこちらへ落ちてくる。

リーリエ(かあさまの言うとおり、このまま群れを纏ったマサオさんでは、テッカグヤさんの攻撃は間違いなく当たってしまいます。ですが……!)

キィィィン!!

みさえ「こっちに来る!」

ひろし「逃げるぞ!」

リーリエ「マサオさん! 群れを――!」

ドッゴォォォッ!!

ひろしとみさえが退避してリーリエの指示が飛んだ数秒後、テッカグヤが頭から地面へと衝突した。着地の衝撃で、大きな揺れが起き、土埃が舞う。

ひろし「ど、どうなったんだ?」

リーリエは思わず体勢を崩し、膝をついた姿勢になる。しかし、場の状況から目を離さず、様子を確認する。

リーリエ(マサオさん――)

土埃が消えると、果たしてそこには、マサオの姿がなかった。いるのは、地面から起き上がろうとするテッカグヤのみだ。

ルザミーネ「潰れた……かしらね」

「ヨ ワ ー ー ッ !」

ルザミーネ「!?」

ひろし「ヨワシの群れが……!」

リーリエ「マサオさん! 元に戻ってハイドロポンプです!」

次々とヨワシの群れがあちらこちらから集まって、1匹のヨワシ――マサオへと集まっていく。そして再び、群れたヨワシへと形を成していった。
元の群れた姿になったマサオは、ヘビーボンバーから体勢を整えようとするテッカグヤの背中に向けてハイドロポンプを放った!

ヨワシ「ギョギョオォォッ」ブシャーーッ!!

テッカグヤ「フゥッ……!」

リーリエ「アクアテール、です!」

そして更に、テッカグヤの背中に向けて尾びれを叩きつけた! テッカグヤの身体が更に地面に埋まり、うめき声をあげる。

ルザミーネ「信じられない……どうしてそんな」

リーリエ「これがマサオさんの力です。こうやってしんちゃんたちは、予想もつかないことをして、大試練を勝ち抜いてきたんです」

ルザミーネ「テッカグヤ……! 早く起き上がりなさい!」

テッカグヤ「フー……!」ゴウッ!

テッカグヤは噴射口を再点火して、マサオを押しのけて起き上がると、再び腕の先をマサオへと向けた。

ルザミーネ「タネばくだんよ!」

テッカグヤ「フー……!」ドンッ

テッカグヤは腕の先から種子の弾丸を発射すると群れたマサオに直撃、そしてマサオとヨワシたちのエネルギーを吸い取ったかと思うと、光り出して大爆発を起こした。

ドカァァァン!

ヨワシ「ギョオォォーッ!」バラバラッ!

リーリエ(マサオさんっ……耐えてっ!)

タネばくだんの爆風に巻き込まれながら、マサオは、ウツロイドにとりつかれて試合を見つめているしんのすけと目があった。

しんのすけ「……」

ヨワシ「オオ……ギョオオッ!」

マサオが雄叫びを上げた。しんのすけに「僕たちを忘れちゃったの?」と語りかけるように。

リーリエ「マサオさん……」

ルザミーネ「もう一度、ギガドレインよ!」

再びテッカグヤの両腕が光り出して、マサオの群れからどんどん体力を奪っていく。群れを維持していく力を失っていき、ヨワシたちが離れていく。

ヨワシ「ギョ……オオオッ」

ひろし「まずい……! あの分だとあと一発貰えばバラバラになっちまう!」

ルザミーネ「これでとどめよ! タネばくだん!」

テッカグヤ「フー……!」ドンッ

テッカグヤの腕から、種子の弾丸が飛び出した。これでマサオに当たってしまえば、群れがほとんど吹き飛んで、単独の姿に戻ってしまうのはリーリエでも目に見えている。

リーリエ「マサオさんっ!」

ヨワシ「ギョオオオッ!」

突然、マサオが最後の力を振り絞ると、まとっていた群れが再び分離した。
さっきのように、タネバクダンを回避するのみならず、巨大な魚から巨人の姿へ変化し始めた!

ドドドドド!

リーリエ「群れたマサオさんが別の姿に?」

ひろし「あれは……カンタムじゃねぇか!」

ヨワシ「オオオォォォッ!!」

その姿は上半身だけで体色こそ青いものの、しんのすけが見ていたロボットアニメの主役――カンタムの姿そのものだった!

しんのすけ「……」

カンタムの姿になったマサオは、2つの腕を象ったヨワシたちをハイドロポンプによる推進力を得て、ロケットパンチの如くテッカグヤへ飛ばした!

ヨワシ「ギョオォォォォッ!!」ドォォォォッ!!

ドッカァァァァァン!!!

テッカグヤ「……!」グラッ

拳状に群れたヨワシたちがテッカグヤに直撃すると、爆風のような衝撃波と供に水と一緒に飛び散っていく!

テッカグヤ「フー……」

ドスンッ!

マサオのカンタムパンチを受けたことで、テッカグヤは体力の限界に達したのか、ぐらりと巨体が傾き、そのまま大きな音を立てながら、地面に倒れてしまった。

リーリエ「すごい……マサオさん、こんなことが出来るなんて!」

ひろし「よっしゃっ! まず1匹目だ!」

ひまわり「たい!」

ルザミーネ「……なんてこと!」

リーリエ「かあさま、マサオさんも友達のしんちゃんを取り戻すためにゼンリョクで戦っているんです! 大切な人のためなら、人もポケモンも、強くなれるんです」

ルザミーネ(大切な人に友達、ですか。なら……)

ルザミーネ「しんのすけ君、今度はあなたが戦ってみる?」

しんのすけ「……」ユラリ

リーリエ「!」

ひろし「しんのすけを矢面に立たせるつもりか!」

ルザミーネ「フフ……しんのすけ君もトレーナーですよ? ポケモン勝負で戦わせることになんら問題はありませんわ」

みさえ「あんたが戦いなさいよ!」

ルザミーネ「さ、ボールを持って。あなたが戦って、あのポケモンを倒すの」

しんのすけ「……」

リーリエ「しんちゃん……!」

ヨワシ「オオォォ……!」

ルザミーネに促されて、ウルトラボールを握りながら前に出てくるしんのすけ。
ウツロイドに取り付かれた痛々しい姿と向き合って、リーリエは動揺を隠しきれなかった。

ルザミーネ「頑張って、応援してるから」

しんのすけ「…………」ポイッ

デンジュモク「デンデンジュッ!!」ポンッ!

ルザミーネ「さぁ、どんな技を出せばあの子を倒せるのかしら?」

しんのすけ「……」

しんのすけ「……じゃ、ケツだけ星人して」

全員「」ズルッ

ルザミーネ「そんなワザ覚えてるわけ無いでしょう!」

しんのすけ「なんだ……つまんねーの」

みさえ「リーリエちゃん、今のうちに!」

リーリエ「ハッ! マサオさん! ねっとうです!」

ヨワシ「……ギョオォッ!」ブシューーッ!

マサオは一瞬ためらいがちに、デンジュモクに向けて熱した水鉄砲を吐き出した。ルザミーネが先制を取られたことに気付いた時には、デンジュモクに水が間近に迫っていた。

ルザミーネ「デンジュモク! ほうでん!」

デンジュモク「デンデンッ!」バチチチッ!

デンジュモクが周囲に電気を解き放ったと同時に、熱湯を浴びて悲鳴を上げる。だが、デンジュモクのほうでんはマサオをまとっているヨワシを全て散らせてしまった!

ヨワシ(単)「ヨ、ヨワッ……!」

リーリエ「マサオさん群れが……!」

ひろし「無理もねぇ、さっきからくさタイプの攻撃を食らってばっかだった。……よく耐えた方だぜ」

ルザミーネ「出るものが出ましたわね。とどめよ。デンジュモク、パワーウィップ!」

デンジュモク「デンデーンッ!」ブンッ

デンジュモクは走り出すと黒い腕を鞭のようにしならせて、勢いに任せてマサオへと振り下ろした!

ドズンッ!

しんのすけ「……」

ほうでんをまともに受けて痺れたマサオは避けることもままならず、デンジュモクの腕に打たれてリーリエの足元まで飛ばされた。

ヨワシ「ヨワ……」

リーリエ「マサオさん……ありがとうございます。きっと、あなたの想いはしんちゃんに届いています……!」シュン

ロトム図鑑「これで互いにポケモンの数は同じか」

デンジュモク「ジュジュジューーッ!!」ゴウッ!!

みさえ「なに? あのビースト、急にオーラをまとい始めたわ!」

ひろし「恐らく、あれがビーストブーストだ。ウルトラビーストは、敵を倒せば倒すほど、自らの能力を高める特性を持っているって、博士からもらったデータに書いてあった」

リーリエ「……」

ルザミーネ「さぁ、次のポケモンを出したらどう?」

リーリエ「分かってます……!」

リーリエ「ネネちゃんさん! お願いします!」ヒョイッ

キテルグマ「クーーーッ!」ポンッ!

ルザミーネ「キテルグマ……懐かしいわね」

リーリエ「ええ、かあさまのポケモンさんも今はエーテルパラダイスにいます」

ルザミーネ「生憎だけど、どうでもいいもの。だって、ビーストがいるのだから」

そう言って、ルザミーネはデンジュモクを触手で触れ、更にしんのすけの頭もこれみよがしに撫でる。

ルザミーネ「そして……わたくしには愛しい『息子』がいますもの。アローラに未練なんてないわ」

リーリエ「……ッ! ネネちゃんさん! デンジュモクさんにじしんですっ!」

キテルグマ「クゥーッ!!」グワッ!

ネネも「目ェ覚ましなさいよバカしん!」と言わんばかりに、ピッピ人形を両手に持って地面に叩きつけ、衝撃波を放った!
地面が揺れて地割れが生じ、まっすぐにデンジュモクへと向かっていく!

ルザミーネ「デンジュモク、かわしてシグナルビームよ」

デンジュモク「デンジュッ!」パッ!

デンジュモクの頭部が点灯したと同時に、ジャンプしてじしんを避けると、頭部が赤や青、緑黄色と変色しながら、不思議な色の光線をネネに向けて発射した。じしんを使った直後のネネには避ける余裕はなく、極彩色の光を浴びて体勢を崩してしまった。

キテルグマ「ク……クゥ……!」ユラリッ

みさえ「なんだか様子が変よ?」

リーリエ「ネネちゃんさん、どうなさったのですか……?」

キテルグマ「クゥ……クーーッ!」ブンブンッ!

ロトム図鑑「なにもないところを攻撃してどうすんだよ」

ひろし「まさか……今の攻撃で、混乱してちまったっていうのか?」

ルザミーネ「フフッ、デンジュモク、更に10まんボルトよ!」

デンジュモク「デンジューッ!」バチチチッ!

デンジュモクは自らの手足と尻尾を地面にくっつけて木のような形状になると、全身から電気を放ち、キテルグマに命中させた!

キテルグマ「クーーッ!?」ビリビリッ!!

電撃がネネの全身を駆け巡り、痺れながら膝をつく。
それを根性で立ち上がり、気合を入れるように咆哮すると、リーリエの指示を受ける訳もなく、ピッピ人形を握り、デンジュモクに渾身のアームハンマーを振り下ろした!

キテルグマ「クーーーッ!!」

ドズムッ!!

デンジュモク「デンンッ!」

アームハンマーで吹っ飛ばされたデンジュモクが、しんのすけの眼前に転がってくる!

しんのすけ「……」

リーリエ「しんちゃん!」

みさえ「しんのすけ!」

キテルグマ「クウッ……!?」

すかさずルザミーネが飛び出すとしんのすけを触手で掴み、抱き寄せた。

ルザミーネ「大丈夫? しんのすけ君?」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「かわいそうに、ひどいことするポケモンね……。どこにも怪我はない?」

しんのすけ「……へーき」

リーリエ「……!」ギリッ

ひろし「ふざけんな! あんたが前に出さなきゃしんのすけは危ない目に遭わなかったんだろうが!」

ルザミーネ「フフッ……それより、よそ見してていいのかしら?」

リーリエ「え――」

デンジュモクは既に立ち上がっており、両腕をネネに向けて伸ばしていた。両腕の金属コードらしき箇所に、見る見るうちに電気が溜まっていく。

ひろし「やばい! あれは……」

ルザミーネ「デンジュモク! でんじほうを放ちなさい!」

デンジュモク「デンデンジュッ!」カッ

ドウッ!!

一瞬の閃光の後、デンジュモクの両腕から、極太の電撃が発射された。しんのすけに誤って攻撃して呆然としていたネネが我に返った時には、既に電撃は目の前まで迫っていた。

キテルグマ「クーーーッ!?」

電撃を浴びてネネの巨体が後方に吹っ飛び、そのまま岩盤へと激突した。でんじほうの攻撃が収まったところで、身体を痙攣させながら倒れる。

キテルグマ「ク……クウっ」バチバチッ

ひろし「でんじほう……電気タイプの中でも最強の技だ。あんなもの喰らったらひとたまりもねぇ」

ルザミーネ「これで2匹目、ね」

リーリエはネネのもとへ近寄ると、その場でルザミーネに背中を向けて無言で立ち尽くした。

ルザミーネ「どうしたの? 早く次のポケモンを出しなさい」

リーリエ「……ネネちゃんさんっ!」

キテルグマ「……」

リーリエ「今まで攻撃を受けてがまんした分、思いっきり暴れてくださいっ!」

キテルグマ「クーーーッ!!」ガバッ!

元気を取り戻したようにネネが起き上がり、ピッピ人形をぐるんぐるんと振り回しながらデンジュモクへと急接近した。
そして、デンジュモクの目の前で垂直にジャンプすると、勢いに任せてピッピ人形をデンジュモクの脳天に向けて振り下ろした!

ド ス ン ッ ! !

デンジュモク「デン゛ッ!??」

ルザミーネ「!?」

キテルグマ「フンッ! フンッ! フンッ!」ドゴドゴドゴッ!!

今までの攻撃全てを倍返しをするように、ネネは何度もデンジュモクを殴りつけると、コードを束ねたようなの胴体を掴み、そのままネネがでんじほうを受けて直撃した岩盤へと投げつけた!

キテルグマ「クァァァッ!!」

ドゴッ!
パラパラ……

デンジュモク「デ、デン……!」

ルザミーネ「いったいどこからそんな力が……!」

リーリエ「ネネちゃんさんは、常に自分が威力の高い技を喰らえば喰らうほど、その分倍返しにして相手を攻撃する、がまんがあるんです」

ルザミーネ「威力の高い技を喰らうほど……っ」

ルザミーネ「まさか、デンジュモクがビーストブーストで技の威力を高めることを読んでいたというの? ビーストではない普通のポケモンが、デンジュモクの攻撃を耐え切ると本気で思っていたの?!」

リーリエ「わたしは最初から、ネネちゃんさんの力を信じてました。それだけです!」

キテルグマ「クーッ!」

ネネはリーリエの言葉を肯定するように声を上げると、しんのすけへ振り向いた。

キテルグマ「クー……クゥーッ!」

しんのすけ「……」

ネネがしんのすけに対して呼びかけらしき唸り声を出すと、背後で岩盤に叩きつけられたデンジュモクがふらりと立ち上がった。ネネもデンジュモクの存在に気づいて向き直る。

デンジュモク「デンジュゥ……」ユラッ

キテルグマ「クーッ……!」

ルザミーネ「デンジュモク……ほうでんよ!」

リーリエ「ネネちゃんさん! アームハンマーです!」

デンジュモク「デンジュッ!!」バチチチッ!

キテルグマ「クーーッ!!」ダッ!

デンジュモクが自身を中心に電撃を発し、ネネがピッピ人形を掴んで腕の筋肉に力を込める。
電撃が空中を走り、それがネネに当たるものの、一切怯まずデンジュモクに接近する。そして再びデンジュモクに向けて、ピッピ人形を叩きつける!

キテルグマ「クゥゥゥーーッ!!」

ド ゴ ッ !

デンジュモク「デンッデ……!」

そこでネネの体力が尽きてしまったのか、デンジュモクにのしかかる形で、両者が倒れ込んだ。

ドサッ

キテルグマ「ク……クッ」ガクッ

デンジュモク「デ……デンジュッ……」パタッ

デンジュモクも一度、空に向かって腕を伸ばしたものの、そのままパタリと音を立てて崩れ落ちてしまった。

ひろし「引き分け……」

ルザミーネ「そんな……たかがキテルグマに、ビーストブーストで力を高めたビーストちゃんと引き分けるなんて!」

2体のビーストが倒れて屈辱と焦りを見せるルザミーネとは対照的に、リーリエはねぎらうようにネネへ話しかける。

リーリエ「ネネちゃんさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください……」シュン

ここまではうまくいった。残りはお互いに2匹。ここが正念場だ。相手が何を出してくるか、そしてその後に行われる戦いの勝敗で全てが決まる。

リーリエ「カザマさん! お願いします!」ヒョイッ

ジュナイパー「ホーッ!」ポンッ

ルザミーネ「ジュナイパー……。知っているわ。確か、しんのすけ君が連れていたフクスローの進化系ね。なら……!」スッ

ルザミーネ「行きなさい! ウツロイド!」ヒョイッ

ウツロイド「じぇるるっぷ……」ポンッ!

ジュナイパー「……ホーッ!」バサッ

ルザミーネ「ウフフ! デジャヴを感じますわ……。こういう趣向もありだと思ったのだけど、ねぇひろしさん」

ひろし「……!」

リーリエ(ウツロイドさん……。以前、パラダイスでしんちゃんとカザマさんが一度、相手にしたとひろしさんとハウさんがおっしゃってた……だからかあさまは出したのですね)

ルザミーネ「あの時の決着、付けてもよくってよ。ウツロイド、ヘドロばくだん!」

リーリエ「カザマさん! かげぬいです!」

ウツロイド「じぇるるっ!」バシャッ!

ジュナイパー「ホーッ!」グググッ

カザマが2本の矢羽根をつがえ、ウツロイドが毒の塊を精製し先に発射した!
放物線を描きながら飛んでくるヘドロばくだんを、カザマが矢羽根をつがえたまま横に跳躍しつつ回避、しかしウツロイドもカザマを追うようにヘドロばくだんを次々と発射する。

ジュナイパー「じぇるるっぷ……!」バシャッバシャッバシャッ!

ジュナイパー「ホーッ!」バシュッ!

ウツロイドが新しいヘドロばくだんを精製するタイミングを見計らい、引き絞った弦から手を放した。同時にヘドロばくだんも飛び出す。
1本目の矢羽根がヘドロばくだんを貫いて破裂させ、もう1本の矢羽根がウツロイドの影に突き刺さり、黒い爆発を起こした!

ドゴォォォン!

ウツロイド「じぇるっ……!」

リーリエ「更にリーフブレードですっ!」

ジュナイパー「ホーッ!」ジャキンッ!

カザマはウツロイドに接近すると、自らの翼を鋭く逆立て、ウツロイドへと斬りかかる!

ルザミーネ「ウツロイド、ヘドロウェーブ!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」グワッ!

ウツロイドの全身から毒液がにじみ出ると、自らの触手にまとって身体を回転させると、大量の毒が周囲に拡散していく。

ジュナイパー「ホッ……!」

ウツロイドの放った毒の波状攻撃がカザマに直撃し、リーフブレードが空振りに終わってしまう。

ルザミーネ「まだまだよ……! アシッドボム!」

今度はウツロイドの身体から酸性の毒が発射された。ヘドロウェーブのダメージにひるんでいるカザマに直撃し、煙を上げながら、身体を溶かしていく。

ジュナイパー「ホ、ホーッ!」ジュウウ

リーリエ「カザマさんっ!」

ルザミーネ「そして、パワージェム!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」ブゥゥン!

ウツロイドの周囲に輝く岩石が作り出されたかと思うと、そこから次々と弱ったジュナイパーに向けて光線が照射される!

ドンドンドンッ!

ジュナイパー「ホーーッ!?」

リーリエ「!」

パワージェムの光に当たったカザマが、リーリエの立っている方向へと飛ばされ、彼女に激突して空中に吹っ飛ばされる!

リーリエ「きゃああっ……!!」

しんのすけ「……!」

目の前の景色が何度も回転したかと思うと、リーリエは頭を打って、カザマと一緒に地面に転がってしまった。今まで感じたことのない、意識を失いそうな鈍い痛みがリーリエを襲い、うつ伏せに倒れる。

リーリエ「あっ……う、うぅ……」

みさえ「リーリエちゃん!」

ひろし「大丈夫か!?」

ロトム図鑑「そもそも、どくタイプの技を使うやつにカザマを出してもな……Zリングも持ってないし」

みさえ「弱気になってどうするのよ! リーリエちゃんは勝つわ!」

ルザミーネ「これでわかったでしょう? Zリングも持ってないアナタが、ビーストちゃんに……このわたくしに勝てると本気で思ってるの?」

ルザミーネ「そもそも! 子供が親に逆らい、あまつさえ歯向かおうとするなんて……傲慢にもほどがあります! これは罰です!!」

リーリエ「……」ユラッ

ジュナイパー「ホー……!」ユラッ

ルザミーネ「まだ戦うというの?」

ルザミーネが追い打ちをかけるように言葉を投げかけるが、リーリエとカザマはふらふらと、それでいてしっかりとした足取りで立ち上がった。頭を打った時に擦りむいたのか血が流れ、腕でこすって拭き取る。

リーリエ(しんちゃん……! あなたはいつもお下品で、ナンパして、周りを困らせて……。今だって、かあさまに操られているのにインドぞうさん丸出しで……)

――ケツだけ星人~ぶりぶり~ぶりぶり~
――まったく参っちゃうよね。方向音痴を探すのにも一苦労ですよ
――ほほーう? オラたちが待ってる間にお洋服を買ってたのですか。それも、気合を入れないと着れそうもない服なんて買って

リーリエ(でも! あなたは、わたしを守ってくれました! わたしを変えてくれました!)

――ハァーやれやれ、しょーがないなぁ
――リーリエちゃんには指一本触れさせないゾ!
――今日はオラが布団になったげるから。いっぱい泣いていいよ

リーリエ(しんちゃん――わたしの夢で、憧れで、ほしぐもちゃんと同じくらいかけがえのない大切な人……あなたを、失いたくないです!)

――ずっと、わたしを守ってくれてありがとうね。今度はわたしが、ゼンリョクであなたを守ってみせますから。しんちゃんが、わたしを守ってくれたように

リーリエ「わたしは約束したんです! しんちゃんを守るって! だから……」

――リーリエちゃん

リーリエ「絶対に――負けられないんですっ!!」ギンッ!

ジュナイパー「ホーーーーッ!」ゴウッ

みさえ「その勢いよ! リーリエちゃん!」

ひろし(カザマくんに一瞬、赤いオーラが?)

しんのすけ「……」

ルザミーネ「打ちのめしても何度も何度も立ち上がって……本当に目障りなコね!」

ルザミーネ「ウツロイド、もう一度ヘドロばくd……」

ヒュンヒュンヒュンッ!

ウツロイド「じぇるるっ……!?」ドスドスドスッ!

ルザミーネ「矢が……?!」

ジュナイパー「……ホー!」

リーリエ「ふいうち、です」

リーリエ「そしてカザマさん! 続けてかげぬいです!」

ジュナイパー「ホッホーッ!」

ヘドロばくだんやヘドロウェーブに当たらないためにウツロイドと距離をとったカザマは3本の矢をつがえると、上空に向けて矢を一斉に曲射した。
影の矢が放物線軌道を描いて、次々とウツロイドに向けて勢いよく落ちていく!

ドカンッ! ドカンッ! ドカンッ!

ウツロイド「じぇ……じぇるっ!」

ルザミーネ「こうなったら……しんのすけくん!」

しんのすけ「……!」ピクッ

再びしんのすけが、ルザミーネの前に出てくる。

リーリエ「……また、しんちゃんを盾にするつもりですか!」

しかし、ルザミーネは笑顔を浮かべたまま、首を横に振って否定した。

ルザミーネ「リーリエ。わたくしがなぜ、しんのすけ君を息子として迎え入れたのか、その理由を見せてあげますわ。さぁ、しんのすけ君! ウツロイドにZパワーを与えなさい」

しんのすけ「ほい……」

しんのすけはZリングを掲げると、構えを取り始めた。

ジュナイパー「ホホーッ!?」

みさえ「あの構えって……」

リーリエ「しんちゃんを利用して……Zワザを使うつもりですか!」

ひろし「きたねーぞてめぇ!!」

バッ バッ ゴポポポッ ブリッ!

ルザミーネ「おしりは見せなくていいの!」

ピカッ! ゴウッ!!

ウツロイドは Zパワーを 身体に まとった!

ウツロイドが 解き放つ
全力の Zワザ!

ウツロイド「じぇるるっぷ……!!」

ア シ ッ ド ポ イ ズ ン デ リ ー ト !

ウツロイドは触手を大きく広げると、毒の奔流が周りに広がっていく。
やがて、猛毒の雨あられが降り注ぐ中、毒の沼と化した地面が柔らかくなっていく。

ジュナイパー「ホ、ホーッ!」ズブッ

リーリエ「カザマさんっ!」

すると、カザマがどんどん、毒の沼へと沈んでいく。翼をジタバタさせて暴れるも、余計に深く落ちていくだけだ。

ズブズブズブ……

ジュナイパー「……!」

そして、完全にカザマの姿が毒の沼へと姿を消してしまった。

ひろし「どくタイプのZワザ……これじゃあ……」

ルザミーネ「ふふ、これで終わり……」

ヒュンヒュンヒュンッ!!

その時、次々とかげぬいによる矢が飛来し、ウツロイドに襲いかかった!

ドカンッ! ドカンッ! ドカンッ!

ウツロイド「じぇるっ!?」

ジュナイパー「ホー!」ググッ

リーリエ「カザマさんっ! 無事だったんですね!」

ルザミーネ「そんな……なぜ?!」

離れた所からかげぬいで射撃をしているカザマの姿に仰天したルザミーネは、カザマが沈んだ場所をみやった。

ルザミーネ「あれはっ……!」

そこには、草で編まれた人形が転がっていた。

ひろし「そうか、みがわりか!」

リーリエ「これならっ! カザマさん! ブレイブバードです!」

ジュナイパー「ホーーッ!!」ゴウッ!!

かげぬいのダメージで動けないところで、カザマが地上からジャンプし、勢いよく滑空して一直線にウツロイドへ向かっていく!

ドンッ!!

ウツロイド「じぇるっ……!!」

カザマ自身が1本の巨大な矢になったかのように、ウツロイドへと突進し、吹っ飛ばしていく。ウツロイドは悲鳴を上げるまもなく、ウルトラスペースの空を舞い、地面へと落下して動かなくなった。

ウツロイド「」ピクピクッ

ルザミーネ「……ウツロイドまで!」キッ!

ひろし「よしっ、これであいつは最後の1匹だ!」

みさえ「リーリエちゃん! もう少し! もう少しで勝てるわよっ!」

ひまわり「たいやーっ!」

ロトム図鑑「ビーストもたいしたことないな」

ジュナイパー「ホホーッ! ホーッ!」ダカラオマエガエラソウニスルナッ!!

ジュナイパー「ホッ……!」ガクッ

みさえ「どうしたの?」

ひろし「おそらく、弱点の攻撃を食らったことに加えて、みがわりとブレイブバードによる反動だろう。どくタイプの相手によくやったぜ、カザマくん……」

リーリエ「カザマさん、もう大丈夫です。後はわたしとボーちゃんに任せてください!」

ジュナイパー「ホッホー……」シュンッ!

ひろし「しんのすけ! もう少し待ってろ! もうすぐお前を助けてやるからな!」

ルザミーネが全身を震わせながら、最後に残ったウルトラボールを掲げる。

ルザミーネ「まだよ……! まだわたくしにはフェローチェがいます!」

ルザミーネ「行きなさい! フェローチェ!」ヒョイッ!

フェローチェ「フェローッ!!」ポンッ!

ルザミーネ「ウツロイドを失ってしまったのは惜しいですけれども、しんのすけ君のエースポケモンが倒れた今、あなたの残りのポケモンを倒すにはこの子で充分です!」

リーリエ「……」

ルザミーネ「どうしたのかしら? 勝てないと悟って、降参する覚悟を決めたのかしら」

リーリエ「……この時を、待ってました」

ルザミーネ「……?」

リーリエ「わたしは待っていたんです。かあさまの最後のポケモンが、フェローチェさんになったこの時を!」スッ

ルザミーネ「なんですって……!」

リーリエ「わたしの最後のポケモンさん。この子で、フェローチェさんを倒します! ボーちゃんさんっ!」ヒョイッ

ミミッキュ「ボ!」ポンッ!

ルザミーネ「そのポケモン……確かにゴーストタイプだから、フェローチェのかくとう技は防げますわ。けれど、それで勝ったと思わないことね」

ルザミーネ「そのまま今度こそ、Zワザで倒してあげる!しんのすけ君!」

しんのすけ「……」

しんのすけは再びZリングを掲げると、構えを取り始めた。

リーリエ「かあさま……またZワザを使う気ですか! そんなことしたらしんちゃんが!」

ひろし「やめろ! Zワザはしんのすけの体力を使っちまうんだぞっ!」

しんのすけ「……!」ブルブル

しかし、ひろしの言葉を無視するように、しんのすけは震える手でZワザのポーズを取り始める。

バッ バッ ブリブリ ジャキンッ!

ピカッ! ゴウッ!!

フェローチェは Zパワーを 身体に まとった!

フェローチェが 解き放つ
全力の Zワザ!

フェローチェ「フェローッ!!」

ぜ っ た い ほ し ょ く か い て ん ざ ん !

しんのすけ「ああんっ……」フラッ

ドサッ!

ひろし「し、しんのすけっ!」

みさえ「そんなっ!」

リーリエ「しんちゃん!」

思わず駆け寄ろうとするが、なんとか踏みとどまった。今はまだ勝負の最中だ。
それに、相手は目論見通りフェローチェのみになったけれども、ここで隙を見せたら逆転を許してしまいかねない。
焦る気持ちを落ち着かせて、冷静さを取り戻す。

リーリエ「かあさまっ……!」

しんのすけ「」

ルザミーネ「ふふ……二度使っただけで倒れちゃうなんて、使えない子」

みさえ「許せない……! アンタは絶対に許さない!」

ルザミーネ「さぁ行きなさい! フェローチェ!」

フェローチェ「フェロローッ!!」

フェローチェは口から糸を吐き出すと、ボーちゃんの全身に巻きつけて、繭のように覆い尽くしてしまった。

ミミッキュ「ボ……!」

それを握って振り上げ、糸に巻きつけられたボーちゃんを地面に叩きつける。

ドシャアッ!

フェローチェ「ロォォォッ!」

フェローチェは出している糸を切り、ボーちゃんを空中に投げつけると、フェローチェが飛び出し、手刀で糸ごとボーちゃんを切り裂いた!

フェローチェ「フェロォォッ!!」

ザンッ!!

ひろし&みさえ「!!」

リーリエ「……」

ひろしとみさえがZワザの威力に衝撃を受け、ルザミーネが勝ちを確信している一方で、リーリエは冷静さを保ったまま、切り裂かれた糸を凝視していた。

ルザミーネ「これでわたくしの勝ち、ですね」

リーリエ「いいえ」

すると、影の手が伸びてきて、フェローチェの吐き出した糸を引きちぎっていく。そして、ボーちゃんが糸を突き破る形で飛び出してきた!

ミミッキュ「ボーッ!」

ルザミーネ「しまった! ばけのかわ……っ!」

リーリエ「Zワザを使ってもムダです!! ボーちゃんさん! じゃれつくです!!」

ミミッキュ「ボーーーッ!」グワッ!

Zワザを受けてばけのかわが剥がれたボーちゃんは、影の手でフェローチェを振り払い、逆に倒れ込ませると、フェローチェに向けて激しくもみあった!

ポカポカドカドカ!

フェローチェ「フェロ! フェローッ!」

傍から見れば激しいスキンシップを受けているように感じるが、フェローチェは苦痛に満ちた悲鳴を上げている。

みさえ「どうして、ただじゃれつかれているだけなのに苦しそうなの?」

ひろし「じゃれつくはフェアリータイプの技だ! あのビーストはむし・かくとうだから、弱点の1つなんだ!」

ひろし「そしてフェローチェと呼ばれたあのビーストは、素早い代わりにとても打たれ弱いんだ!」

みさえ「それじゃあ……!」

ひろしの解説を聞いた瞬間、ルザミーネはリーリエに目を瞠った。そこでようやく、リーリエの狙いに気が付いた。

ルザミーネ「まさか……あなたはわたくしがフェローチェを最後に出すように誘導したというの?!」

リーリエ「……」

そしてフェローチェはだんだん体力を失っていき、ボーちゃんがフェローチェから離れたときには、ぐったりと動かなくなってしまっていた。

フェローチェ「」ピクピクッ

ミミッキュ「ボーッ……」

ひろし「よっしゃあっ! ざまーみろルザミーネ!!」グッ

みさえ「言ったでしょ? 必ずリーリエちゃんが勝つって!!」

ひまわり「たいやーっ!」

リーリエ「しんちゃんっ!」シュンッ

リーリエはボーちゃんをボールに戻すと、すぐさまルザミーネのそばで横たわっているしんのすけを抱きかかえた。

リーリエ「しんちゃん! しっかりして! しんちゃんっ!」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「……アアアウッ!」

目の前の敗北に唖然としていたルザミーネは、目を大きく見開くと、2本の触手で頭部を掴み、その場で暴れだした。

ルザミーネ「どうして! どうして! どうしてわたくしのビーストちゃんたちがあああっ!!」グニャグニャッ!!

リーリエ「……」

リーリエはしんのすけを抱きかかえたまま、口を一文字にして真摯な表情で、ルザミーネと向き合う。

リーリエ「……かあさま、わたしはまだまだトレーナーとして未熟です。やっぱり、しんちゃんのポケモンさんは、しんちゃんしかゼンリョクを引き出すことはできないというのをこの戦いで実感しました」

リーリエ「それでもあなたがなぜ負けたのか、分かりますか?」

ルザミーネ「!?」ギロッ

リーリエ「あなたの敗因は、最初にビーストさんを見せびらかしたことで、わたしにどんなビーストさんを使ってくるのか教えたからです!」

リーリエ「そして――あなたがポケモンさんを、ビーストさんを、自分を美しく見せるための道具としか見てなかったからです!」

ルザミーネ「それがなんだというのですか! 全てがわたくしの愛で満たされて、美しくなればそれでいいの!」

リーリエ「子供は親のモノではありません! ポケモンもトレーナーが好きにしていい モノではありません!」

リーリエ「わたしも生きています! コスモッグも生きています! しんちゃんも、ビーストさんもみんな生きています! モノではないのです!」

リーリエ「かあさま……もうたくさんの人に迷惑をかけること、やめましょう。一緒に帰って、みなさんに謝って……」




――きゃあああああっ!!!

ひろし「みさえっ!」

リーリエ「!」

みさえの悲鳴が響き、リーリエは驚いて振り返ると、恐らくルザミーネがゲットしたであろうウツロイドがみさえへと襲いかかっていた! みさえはひまわりをかばうように抱えながら、その場に座り込んでいた。
ロトム図鑑とフェローチェ、シロの周りにも、助けを妨害するように、ウツロイドが3匹を取り囲んでいく。

ウツロイドたち「じぇるるっぷ……!」

ロトム図鑑「うわっ! こっちくんな!」

フェローチェ(あい)「フェローッ!」

シロ「キャンキャンッ!」

リーリエ「みさえさんっ!」

リーリエ「かあさまっ! なにをするつもりですか!」

ルザミーネ「……確かに、勝負に勝ったらしんのすけ君を返すと言いましたわ」

ルザミーネの顔に、ニヤニヤとした不気味な笑みが戻ってくる。

ルザミーネ「だけど、あなた方を無事に帰すと一言も約束してません! 言ったでしょう? 誰の許しを得てここにやってきたのですか? 招かれざる客を歓迎するほど、わたくしは寛容ではありませんの!」

リーリエ「かあさまっ! もうやめて!」

ひろし「ぐぅっ、きったねぇぞ……てめぇっ!」バッ

ひろしは靴を脱いでルザミーネに嗅がせて怯ませるために突っ込もうとすると、触手が伸びて、ひろしとリーリエを捕らえた!

シュルルッ!

ひろし「ぐっ!」ググッ

リーリエ「きゃあっ!」ググッ

ルザミーネ「ウフフ!」

リーリエ「ううっ……かあさまっ!」グググッ

ひろし「くっそおおっ! こんなもんっ」グググッ

ルザミーネ「リーリエ、親に逆らった挙句、わたくしのプライドを傷付けた報い……受けてもらいます! まずはその目で、あなたの味方がわたくしのウツロイドによって命を落とすさまを見届けなさい!」

更に事態は悪化するように、ウツロイドたちがみさえに近づいていく。

みさえ「いやっ……来ないで!」

ウツロイドたち「じぇるるっぷ!」グワッ

せめてひまわりだけでも、とひまわりを守るようにみさえはうずくまると、一斉にウツロイドたちがみさえへと覆いかぶさってきた!

みさえ「ひいいいーーーっ!!」

リーリエ「みさえさんっ!」

ひろし「みさえーーっ!! ひまわりーーーっ!! やめろーーーっ!!!」

しんのすけ「……」

みさえ「いやあああああああっ!!」

クチュッ!
グニャグニャッ!

もぞもぞとウツロイドたちが動きだした。あの内側で何が起きているのかわからない。
ひろしとリーリエの頭の中に、最悪のシナリオが掻き立てられる。

リーリエ「そん……な……」

ひろし「み……さえ……ひまわり……」ボウゼン

ルザミーネ「ウフッ、アハハハハっ!!」

その光景を勝ち誇るように嘲笑っていたのは、ルザミーネただひとりだった。ひろしもリーリエも、このおぞましい光景から無意識に目をそらしていた。

ルザミーネ「アハハハハハハハハ!!」

ゴ ス ッ ! !

ルザミーネ「アグゥッ!?」

ひろし&リーリエ「!?」

いきなり黒くて巨大な影が現れたかと思うと、大きな衝撃とともにルザミーネが後ろへ吹っ飛び、岩壁へと激突した。
その際に触手の力が緩まり、すぐにひろしとリーリエは拘束を破ってルザミーネから離れた。彼女は、驚愕に目が見開かれ、苦しそうにもんどりうっている。

ルザミーネ「う……がっ……ああ」ガクガク

ひろし「なにが起きたんだ?」

リーリエ「……!」

リーリエ「ひ、ひろしさん……後ろです」

ひろし「え?」

リーリエに言われ、ひろしが背後を振り返ると、そこには予想だにしない光景が広がっていた。
さっきまでみさえに襲いかかっていたウツロイドたちが地面に転がっており、ロトム図鑑とあい、シロが唖然として立ち尽くしていた。
瀕死になったウツロイドたちの上に浮かんでいたのは――。

「うちの娘に!」

8本の巨大な触手――。

「うちの夫に!」

触手に抱えられるひまわり――。

「うちの息子に!」

黒く染まりきった身体――。

「うちの家族に!!」

ウツロイドの頭部に覆われ、憤怒の光を宿しながらルザミーネを睨みつける金色の目――。

みさえ(マザービースト)「手ェ出してんじゃないわよッ! 妖怪メノクラゲババアッッ!!」

ウツロイドと融合し、異形の姿となったルザミーネ同様、マザービーストとして覚醒したみさえが、ウルトラスペースに君臨していた。

ひろし「」

リーリエ「」

ルザミーネ「そんな……わたくしと同じように、ウツロイドの愛を受け入れたというの……?」

ここに来て初めて、ルザミーネは心の奥底から予想外といった表情を見せた。しかしみさえはそんなルザミーネを無視して、ひろしへと近づいた。

みさえ「あなた、ひまをお願い」フワッ

ひまわり「たい……」

ひろし「み、みさえ……その姿、大丈夫なのか?」

みさえ「心配しないで。……リーリエちゃん」

リーリエ「は、はいっ」

みさえ「よく頑張ったわね。しんのすけのために、ありがとう」ナデナデ

みさえ「ちょっとあなたのママと『お話』してくるわ。その間、もう少ししんのすけのこと、お願いね」

リーリエ「え?」

ルザミーネ「……許せない! ウツロイドは、わたくしだけのモノなのにっ!」ギリリッ!

ゴウッ!!

怒号を上げながら、ルザミーネは輝く岩を作り出し、極太の光線をみさえに向けて発射する!

みさえ「……」スッ

しかし、みさえは1本の触手を光線に向けてかざすと、壁に阻まれたように光線が押さえつけられ、そのまま分解するように消滅した。

ゴウッ!

シュウウウ

ルザミーネ「なっ……」

ひろし「す、すげぇ……」

みさえ「――ルザミーネさん」

ルザミーネ「!」

みさえ「アンタがビーストの母だとか、自分を美しく見せるだとか、そんなの正直どうでもいいの」

みさえ「ただね、他人の息子に……家族に手を出したらどうなるか、ホンモノの母親の怒りってものを、ゼンリョクで思い知らせてあげるわ!! 覚悟しなさい!!!」

みさえ「……スゥーッ」

みさえ「はぁぁぁぁぁっ!!!」

ゴウッ
バチチチッ!!!

覚醒したみさえが雄叫びを上げた瞬間、スパークの走った真紅のオーラを全身に纏い、周囲の大地に衝撃波が走り、石の破片が宙に浮かびヒビが入る!

今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。
ルザミーネファンのみなさん、ごめんなさい。いよいよハイパーフルボッコのお時間です。

じゃ、そゆことで~

あっ、とーちゃん退院おでめとう! 今のとーちゃんも代役お疲れ様!

【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「母VS母」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira140187.jpg

毒は平気としてもしんちゃん操られたことで落ち込みそう

みさえの放つ殺意と巨大な力の前に、ルザミーネは一瞬たじろいだものの、すぐにみさえを睨みつける。

ルザミーネ「――そんなものッ!!」ゴウッ!

みさえ「!」

ゴスッ!!

ルザミーネが飛び出し、触手を丸めて拳を作りながら急接近すると、みさえの頭部に向けて強烈な右ストレートを放った。

ギャンッ! ドドドドド!

地面を擦って砂煙を上げながら一直線に吹き飛ばされるみさえ。しかしすぐさま空中で大きくターンすると、今度はみさえが触手を丸めながらルザミーネへ近づいた!

みさえ「オラオラオラオラオラッ、オラァッ!」ドゴドゴドゴドゴドゴッ!!!

ルザミーネ「がっ! ぐっ! ヴうっ!」ガガガガッ!!

みさえは10本の触手で一斉にルザミーネの全身にかけてラッシュをかける! ルザミーネもラッシュで応戦を試みるものの、みさえの攻撃速度に合わせられず、全身にかけて拳撃を浴びた!

みさえ「――っオラッ!」ブンッ!

更にみさえは廻し蹴りを繰り出して頭部に大打撃を与える!

ルザミーネ「あぐっ! うヴッ!」グラッ

ルザミーネ「ッああああっ!」グルルルン!

ルザミーネも負けじと身体を旋回させて触手を回しながらみさえを払おうとした。しかし、みさえは2本の触手でガードしつつ1本の触手でルザミーネの足を掴むと、頭上へと振り上げ、一緒に落下する。

みさえ「ふんっ!」グワッ!

ルザミーネ「なっ!?」

そして触手を力いっぱい動かして、落下する際に生まれる勢いに任せて、ルザミーネを地面に叩きつけた!

みさえ「おりゃあああっ!」

ドッゴォッ!!

ルザミーネ「ご、ごのっ!」ブンッ!

ガシッ!

ルザミーネ「!?」グググッ

みさえ「次から次へと、自分のワガママに人を巻き込んで……いい加減にしなさいよ! オバサン! しんのすけに手を出そうなんて15年早いのよ!」バチッ! バチチッ!

ルザミーネ「オ、オバ……ッ! なんですって……!」ガクガク

みさえ「オバサンにオバサンって言って何が悪いのよオバサン!! 私より11歳年上だからっていつまでも調子こいてんじゃないわよ!!」

ルザミーネ「キ……ヴアアアゥッー!!」カッ!!

ドウッ!!

みさえ「!?」

ルザミーネの触手からパワージェムの光線が放たれ、すぐさまみさえは距離を取った。そのままルザミーネは立ち上がると、1本の触手を丸め、みさえの顔面に拳を叩き込もうと襲いかかる!

ルザミーネ「アアアウッ!」グワッ

みさえ「ぬぁぁっ!」ゴウッ

まけじとみさえも触手を丸めて振りかぶり、ルザミーネに突進した! 触手と触手がぶつかりあい、2人のマザービーストを中心に凄まじいエネルギーが周囲にほとばしり、大地を抉っていく!

ドッゴォォォッ!!

ルザミーネ「ヴ ア ア ア ア ア ウ ッ !!」ゴゴゴゴゴゴ!!

みさえ「お ん ど り ゃ あ あ あ あ あ っ ! !」ドドドドドド!!

2つの拮抗した力がぶつかり合う!
しかし――。

みさえ「――ふんッ!」グッ

ルザミーネ「!??」ガクン!

みさえはルザミーネの触手と激突している触手を一気に下ろすと、つられてルザミーネも体勢を崩した!

ウルトラスペースの上空に吹っ飛ぶルザミーネは、鈍い痛みをこらえながら空中で一回転して体勢を立て直すと、すべての触手を大きく広げた!

ルザミーネ「アアアウッ!」

ドンドンドンドンッ!

みさえ「……!」ギュンッ

すべての触手からパワージェムの光弾が放たれ、全てがみさえに降り注いでくる!
しかし、みさえは地面を蹴って空中に飛翔すると、光弾を避けつつルザミーネに接近する!

ルザミーネ「はあああっ!!」ゴウッ!

ルザミーネは赤いオーラを纏うと、2本の触手を空に向かって掲げると、宝石のように煌く巨大な岩が出現した。

ルザミーネ「消え失せなさい!」ブンッ!

それを投げつけるような動作で触手を振り下ろすと、巨大な岩は光の玉と化して、みさえに向かって落ちていく!

ゴゴゴゴゴゴ!

みさえ「……!」

光の玉がみさえにぶつかった瞬間、周りの空間を巻き込みながら、大爆発を起こす!

ドゴォォォォン!
シュウウウッ

ルザミーネ「ウフフ……これを喰らって生きてられるはずが……」

ゴゴゴゴ

みさえ「……」バチッ バチチッ

ルザミーネ「あ……あ……!?」

みさえ「なにこれ? 日焼けさせるつもりだったのかしら? アンタのビーストに対する愛がこの程度なら、正直ガッカリなんだけど」

ルザミーネ「なんなの…? なんなの……あなたは」ワナワナ

みさえ「子供たちを愛している、普通の『かーちゃん』よ」ブゥンッ!

みさえの姿が一瞬にして消えたかと思うと、ルザミーネの目の前に現れる!

ルザミーネ「!?」

みさえ「るぉらぁぁっ!」ガスッ!

ルザミーネ「あ゛ぐぁっ!」ゴッ!

みさえ「メリーゴーランド・グリグリ・シネマトゥエンティーファイブッ!!」グリグリグリグリ!!

ルザミーネ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ ! ? ?」グルングルングルンッ!!

ルザミーネの頭部に2つの触手を押し付けると、そのまま回転しつつグリグリ攻撃を始めた! えも知れぬ鈍い激痛に、ルザミーネは悲鳴を上げる。

みさえ(――なんなのかしら? この人の攻撃のおかしな手応えのなさ……)

ひろし「なんてハイレベルな戦いなんだ……」

ひろし(あのみさえと夫婦喧嘩は絶対出来ねぇ……)

ロトム図鑑(あの戦いを録画してポケチューブにアップすればたくさん再生数稼げそうだな)

リーリエ「ひろしさん! ちょっと不安ですけど……かあさまはみさえさんに任せて、わたしたちはしんちゃんを!」

ひろし「あ、ああ!」

>>258
抜けてる部分があったので修正

ドウッ!!

みさえ「!?」

ルザミーネの触手からパワージェムの光線が放たれ、すぐさまみさえは距離を取った。そのままルザミーネは立ち上がると、1本の触手を丸め、みさえの顔面に拳を叩き込もうと襲いかかる!

ルザミーネ「アアアウッ!」グワッ

みさえ「ぬぁぁっ!」ゴウッ

まけじとみさえも触手を丸めて振りかぶり、ルザミーネに突進した! 触手と触手がぶつかりあい、2人のマザービーストを中心に凄まじいエネルギーが周囲にほとばしり、大地を抉っていく!

ドッゴォォォッ!!

ルザミーネ「ヴ ア ア ア ア ア ウ ッ !!」ゴゴゴゴゴゴ!!

みさえ「お ん ど り ゃ あ あ あ あ あ っ ! !」ドドドドドド!!

2つの拮抗した力がぶつかり合う!
しかし――。

みさえ「――ふんッ!」グッ

ルザミーネ「!??」ガクン!

みさえはルザミーネの触手と激突している触手を一気に下ろすと、つられてルザミーネも体勢を崩した!
その隙にルザミーネの腹部に向けて手の空いている触手をえぐりこむように打ち込んだ。

みさえ「るあああっ!」

ドゴッ!

ルザミーネ「がはっ!」

みさえとルザミーネが壮絶な戦いを繰り広げている中、リーリエはしんのすけにを降ろして揺さぶった。

ひろし「しんのすけ! しっかりしろ!」ユサユサ

リーリエ「しんちゃん! しんちゃんっ!!」ユサユサ

しんのすけ「」

ひろしとリーリエはしんのすけの肩を揺さぶるが、当の本人は返事がないまま、目を閉じている。

ひろし「返事しろよ! お前、島巡りチャンピオンになるんだろ! こんなとこで寝てんじゃねぇ!」

リーリエ「いや……いやです! 一緒に旅するって、トレーナーについて教えてくれるって、約束したじゃないですか!!」

ひまわり「うあ……あ……!」

シロ「クーン……」

フェローチェ「フェロ……」

リーリエ「しんちゃん……死なないで……っ!」

しんのすけ「」






ブッ

リーリエ「」ズルッ

ひろし「くせっ!」

しんのすけ「……」ブルブルッ

ロトム図鑑「……どうやら、気を失っているだけのようだ。さすがに二度もZワザを使えば、大の大人でも堪えるだろうぜ」

リーリエ「はぁ……びっくりしました。とにかく、無事で良かったです」

ひろし「だけどよお……ルザミーネの奴、しんのすけをここまでボロボロにしやがって……!」ギリッ

ひろし「しんのすけ……どうしたら目を覚ましてくれるんだ?」

リーリエ「このウツロイドさんを剥せれば、元通りになるのでは?」

リーリエはしんのすけにまとわりついているウツロイドを指さした。

ひろし「なるほど……よし、俺が触手を外してみる。リーリエちゃんは頭の方を引っ張ってみるんだ!」

リーリエ「はいっ」

ひろしは、身体にまとわりついているウツロイドの触手を剥がしに掛かり、リーリエもウツロイドの頭部を掴んで無理やり外そうと引っ張る。しかし、ウツロイドも抵抗してがっちりと固定したように動かない。

リーリエ「ううッ……! ダメです…びくとも動きません」

ひろし「くっそお、ここまで来て……!」

ロトム図鑑「私に任せろ。電気ショック療法だ」

ぶりぶりざえもんはコードを伸ばすと、それをしんのすけのインドぞうさんにあてがった!

ビリビリビリビリッ!!

しんのすけ「お゛お゛お゛う゛お゛お゛お゛う゛!!??」ビクビクビクッ!!

げ    ん

こ    つ

ロトム図鑑「」

リーリエ「どこに電気ショック与えてるんですかっ!///」

ロトム図鑑「だ、大事なところに刺激を与えれば起き上がると思って……」

ひろし「しんのすけのインドぞうさんを使い物にさせなくする気か!」

リーリエ「でも、本当にこのままずっと元に戻らなくなったらと思うと、わたし……」

ロトム図鑑「……私に良い作戦がある」

ひろし「お前また下らないことやるんじゃないだろうな?!」

ロトム図鑑「馬鹿な事を言うな。いつまでも私が空気を読まずにボケると思うか」

ロトム図鑑「今、眠っているしんのすけの精神そのものに訴えかけて、意識を無理やり覚醒させる」

リーリエ「どうやってですか?」

ロトム図鑑「私をしんのすけの意識とリンクさせるのだ。コンピューターにハッキングできることを応用して、私が直接奴の精神の中に潜り込み、記憶や感覚を引き出して刺激を与え、目覚めさせる」

ひろし「そんなことできるのか?」

ロトム図鑑「私を舐めるな。私はゴーストタイプだぞ。人間に取り付くぐらいわけがない。それに、元国際警察のハッカー兼サイバーテロ対策部隊所属だからな」

ひろし「なんだそりゃ……お前電気タイプも入ってるだろ! ハッキング関係ねぇし!」

ひろし「ああくそっ、この際文句は言ってられねぇか! もう好きにやってくれ!」

リーリエ「なんだかSFっぽくてよくわからないですが……。ぶりぶりざえもんさん、お願いします! しんちゃんを助けてください!」

ロトム図鑑「よしきた。コードをしんのすけの頭にくっつけるぞ」

ひろし「まさにワラにもすがる思いってやつだな……」

ぶりぶりざえもんはコードをしんのすけの両こめかみにくっつけると、目を閉じ始めた。

ロトム図鑑「しんのすけの脳内神経とリンク完了……ダイブ開始」ウィーン

ぶりぶりざえもんの画面が、まるで意識を失うようにぼかされていく。

ひろし「本当に頼んだぞ。ぶりぶりざえもん」

リーリエ(しんちゃん……)

ロトム図鑑「…………」ピーピコピコピコ

しんのすけ「……」ピクッ

ひろし「動いた!」

ロトム図鑑「……だいぶ厄介なことになってるな。今のしんのすけは、記憶もなければ意思もない、廃人も同然だ。無理やりウツロイドの力で自我を無理やり抑えられていると言っていいだろう」

リーリエ「そんな……しんちゃんは、元に戻らないんですか?」

ロトム図鑑「脳に直接刺激を与えれば、物の弾みで戻るかもしれん」

リーリエ「刺激、ですか?」

ひろし「具体的に何をすればいいんだ?」

ロトム図鑑「さあな、なにせ人間の精神をハッキングするなんて初めてだからな……」

ひろし「くそっ、どうしたら? どうしたら目覚めてくれるんだ? しんのすけ!」

しんのすけの精神世界

しんのすけの心は、ルザミーネが取り付かせたウツロイドの『毒』によって、ばらばらにされていた。
精神は既に形を成しておらず、暗黒の空間の中でぼんやりと浮かんでいた。
ただ――意識の外からやってきだ、何者かが語りかけてくる。

「……か? ……け」

――オラ、オラ、誰だっけ?
――カンタムだっけ?
――アクション仮面だっけ?
――カザマくんだっけ?
――あれ? カザマくんって誰だっけ?

「お……しん……視す……な!」

走馬灯のように、たくさんの人やポケモンの姿が浮かんでは忘却の彼方へと消えていく。

――どうしよう。このまま消えちゃおっかなー
――消えちゃえばかーちゃんからグリグリ攻撃受けないで済むしー、リーリエちゃんが道に迷っても関係ないしー
――あ、でもおねいさんに会えなくなるのは嫌だなー

じぇるるっぷ……

――お?

しんのすけだけしかいないはずの精神世界に、ぼんやりと青白い何かが浮かんできた。メノクラゲのようにも、帽子をかぶった少女のようにも見える、不思議なポケモン。

じぇるるっぷ

――なんかいる

「……げろ!」

ウツロイドは、触手を動かして、「こっちへ来い」としんのすけを手招きしていた。

じぇるるっぷ

――オラ、ナンパされてるのかな?
――でもオラ、子供にもポケモンにも興味ないし、行ってもしょうがないか

じぇるるっぷ……!

「なに………サッと……る! ……げろ!」

すると、しんのすけに来る気がないと判断したのか、今度はウツロイドがしんのすけへ接近してくる。

――なんか来た。モテモテで困っちゃうけど、あんまり嬉しくないなー

ウツロイドがしんのすけの精神を冒し尽くそうと迫る。触手を伸ばして、バラバラになりかけたしんのすけの心を覆い尽そうとしてくる。

一方、みさえとルザミーネは周囲に砂埃を起こさせながら、互いを牽制するようににらみ合っていた。

みさえ「……」

ルザミーネ「……」

スウーッ

ルザミーネ「はぁっ!」ドッ!

みさえ「!」

先手を取ったのはルザミーネだった。パワージェムの光線を発射し、みさえが垂直にジャンプして回避、するとルザミーネがみさえへ接近し、ウツロイドで覆われている頭部を殴りつけた。
みさえは地面に落下しつつ受け身を取るが、ルザミーネは追撃に次々と光弾をみさえに向けて放っていく!

ドンドンドンドンッ!!

ルザミーネ「ウフフフフッ!!」

みさえ「……!」

みさえは後方に避けながら回避し続けていると、光弾で土埃が周囲に巻き上がって視界が潰されていく。
いきなり砂埃が払われ、ルザミーネが笑みを浮かべ触手を振りかざして突進してくる!

ルザミーネ「アアアアッ!!」ブンッ!

みさえ「!」ブゥンッ!

ルザミーネが触手を振り下ろしたその時、みさえの姿が刹那のうちに消え失せてしまった。触手が空振りに終わったその時、瞬間移動で背後に回ったみさえが、ルザミーネにタックルを仕掛けた

みさえ「うぉらぁぁぁっ!」ブンッ!

ルザミーネ「があああっ!!」ゴスッ!

キィーーーーンッ!
ドゴォッ!

ルザミーネ「ぐ、ううっ」

ルザミーネ「う あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」ギュンッ!

岩盤に叩きつけられたルザミーネは、怒り狂いながらみさえに、2つの触手を振りかげる!

ブンッ!

みさえ「……!」ガシッ!

ググググッ!

みさえはルザミーネの触手を受け止めると、互いに押しのけようと力と力がぶつかり合う!

みさえ「アンタよりリーリエちゃんとグラジオくんの方がよっぽどしっかりしてるわ。やってることは赤ん坊のひま以下よ、アンタは」グググ

みさえ「知ってる? ワガママな人って、なんて呼ばれるか? 」

ルザミーネ「……?」

みさえ「『怪獣』よ! アンタは見た目も心も、ウルトラビーストよりよっぽど怪獣らしいわよっ!」

ルザミーネ「なんですって……!」

ドズムッ!

みさえ「がっ!」

みさえの腹にルザミーネの触手がめり込まれる。
そして、4つの触手で追い打ちをかけ、みさえを地面へと叩き落とす!

ドゴォッ!

みさえ「――ッ!」

ルザミーネ「はぁぁぁっ!」ドドドドド!!!

そのままルザミーネは追撃に光弾を放ち、みさえに直撃すると爆発を起こし煙幕が巻き上がる!

シュウウウ

ルザミーネ「はぁ……はぁ……ふふっ! なにが怪獣よ! わたくしにそんな口、聞いたことを後悔するがいい――」

ゴウッッ!!

みさえ「――ッらぁ!!」ブンッ!

ルザミーネ「!!」

ゴスッ!!

煙幕を払いながら現れたみさえは、勝ち誇った笑みを浮かべたルザミーネの頭部に会心の右ストレートをぶち込んだ!

みさえ「オラオラオラオラオラ!!」ドカドカドカドカ!!

ルザミーネ「うあっ! があっ! ああっ!」

みさえ「私だって、もっと美しくなりたい! もっとおいしいもの食べて、高い服着て、イケメンに囲まれたいわよ! 」ドカボカドカボカドカボカッ!!

みさえ「でも、それ以上に家族を愛してるの! そのくらい我慢できなくて何が母親よ!」ガガガガガッ!!

みさえ「ワガママばかりで母親ヅラしてるアンタなんかに、私は負けない!!」ドドドドドド!!

ルザミーネ「ぐ……ッ!」

そのまま他の触手による拳撃がルザミーネの全身を穿ち、フィニッシュに脳天に向けて拳を振り下ろす!

みさえ「ぅオラッ!」グンッ!

ルザミーネ「――ッ!」

げ    ん

こ    つ

ルザミーネ「あ゛あ゛っ!」

ドッゴォォォ

みさえ(やっぱり――ああ、そういうことだったのね)

ルザミーネ「あ……あぐ……ウツロイドとひとつになって、ビーストちゃんの愛を得て強くなったはずなのに! どうして!!」

みさえ「……なんでアンタが私に勝てないか、分からないの?」フワッ

ルザミーネ「勝てないですって……!」

みさえ「教えてあげる。アンタが本当に愛してる人のために、戦ってるわけじゃないからよ」

ルザミーネ「何が言いたいの……!」

みさえ「表ではビーストを愛してるかもしれないけど、心の奥底では、別の人達を愛してあげたくてたまらないの。あなたの心と体が反発し合ってるから勝てないのよ」

みさえ「だって、さっきからあなたの攻撃、まるで手応えが感じないもの」

ルザミーネ「思い上がりも甚だしいですわ……!」カッ!

ルザミーネが光線を発射してみさえがそれを避けると、再び立ち上がった!

ルザミーネ「アアアゥッ!」ドウッ!

もう一度ルザミーネは無数に枝分かれしたパワージェムを放つと、ひろしたちの近くにあった岩を吹き飛ばし、その欠片がひろしたちにぶつかる!

ドカァァン!

ひろし「あぶねぇ!」

リーリエ「ひゃっ!」

岩の欠片から頭を守る際、無意識に自分の足元を見たその時だった。ひろしの頭の中に、かつてしんのすけが、敵の手に落ちていた自分に言ってくれた言葉を思い出した。

――とーちゃんはとーちゃんなんだよ、このニオイわかるでしょ

ひろし「……!」

ひろし「――これだ! こいつを使えばいいんだ!」

リーリエ「ひろしさん、どうなさったのですか?」

ひろし「思いついたんだ。しんのすけの記憶を取り戻させる手段が!」

リーリエ「本当ですか?!」

ひろし「あぁ! しかも効果も実証済みだ。リーリエちゃんも、しんのすけに呼びかけて手伝ってくれ!」

リーリエ「実証済みの意味がよくわかりませんが……わたしにできることがあるなら、なんでもやります!」

ひろし(しんのすけ――思い出すんだ! お前はこれで、俺が家族と一緒に未来を生きることを思い出させてくれた。だから今度は俺が、お前を正気に戻す番だ!)

その頃、精神世界では――

「逃げ……のすけ! お……!」

じぇるるっぷ――

ウツロイドの触手が、しんのすけの欠片に触れそうになったその時だった。

ムワァァァァ

ウツロイド「じぇるる!!??」

――うわっ! 臭っ!

あたり一面に、この世のものとは思えない異臭が漂い始めた。
精神世界が阿鼻叫喚の巷と化す中、バラバラになりかけていたしんのすけの心が集まり、頭痛が走る。

「くっせえ! なんだこのニオイは!?」

ウツロイド「じぇる! じぇるるる!!」ウェッ

――う、ううっ……クサすぎて……あったまいったい~!

しんのすけ「ううっ……うっ……!」ガクガク

ひろし「しんのすけ! 思い出すんだ!」ツーーン!

リーリエ「ひ、ひろしさん! 靴の臭いなんて嗅がせてどうするんですか!」

ひろし「他人にゃ分かんねぇかもしれないけど、これは俺たち家族だけが知っている特別な臭いなんだ! しんのすけは、それを心の奥底に刻んでいるはずなんだ!」

リーリエ「えぇ……でも、なんだかすごく苦しそうなんですけど……」

ロトム図鑑「いや、しんのすけの脳波に反応が出ているぞ。これならいけるかもしれないが……その前に私がこのニオイで機能障害を起こすかもしれん……」クラッ

リーリエ「それって、単純に臭いを嫌がってるだけなのでは……」

ひろし「リーリエちゃんもしんのすけに呼びかけるんだ! ほら、ひまわりもシロも、しんのすけに呼びかけろ!」

ひまわり「たいっ! たーやたーや!」

シロ「キャンッ!」

リーリエ「わ、わかりました!」

その時、リーリエの腰にくっつけていたボールから、カザマたちが飛び出した!

ポンポンポンポンッ!

ジュナイパー「ホーッ!」

ヨワシ「ヨワッ!」

キテルグマ「クーッ!」

ミミッキュ「ボッ!」

フェローチェ「フェロッ!」

リーリエ「カザマさん……! みなさんも、わかっているのですね。みんなでしんちゃんを呼びましょう!」

ジュナイパー「ホー!」

ロトム図鑑「私もしんのすけが喜びそうな美女トレーナーのデータを脳内に直接送り込んでみよう」

ひろし「あ、あのなぁ……」

――ぬぅっ……ううっ……オラ、オラって誰? なんでオラってここにいるの?

――しんのすけ!

――しんちゃん!

――たーやっ!

――キャンッ!

悪臭にむせていると知らないはずなのに、知っている気がする誰かの声がしんのすけに語りかけてきた。

――……しんのすけ? しんのすけって誰だっけ? そんなウルトラスーパーゴージャスな名前の人……オラ、知ってる気がする……!

――しんのすけ!

――しんちゃん!

――しんちゃん!

――しんちゃん!

――しん様!

たくさんの人たちの声が聞こえてくる。しかし、なにかが障害となって記憶を引き出せない。

――ダメだっ、思い出せない~なんだっけなんだっけぇっ

「やれやれ、これだけやってまだ思い出せないとは。じゃあこれならどうだ!」

エリカ「しんのすけさん!」

フウロ「しんちゃん!」

アスナ「しんのすけ君!」

マーシュ「しんのすけはん!」

ライチ「しんのすけ!」

ビッケ「しんのすけさん!」

――うっひょおおーーっ! なんか色々思い出してきたような気がする~!

――そうだ、オラはたしかおねいさんにモテモテになるために生きてるんだっけ!

――それに……このニオイ、知ってる。なんだっけ……

すると、霧が晴れていくようにある光景がしんのすけの目の前に現れた。
最初に見えたのは、靴下だった。
顔を上げると、靴下の持ち主の顔が――ひろしのからかうような笑顔を浮かべた顔が見えた。

ひろし「お前ってやつは、さすが俺の息子だ!」

――とーちゃん

移り変わると、次はしんのすけを必死に揺り起こしたり、必死にママチャリを漕いで幼稚園に連れて行こうとする必死な表情、そしてみさえの顔が蘇る。

みさえ「アンタは、ダメな子なんかじゃない」

――かーちゃん

いたずらをしてしんのすけを振り回すひまわりと、散歩の時のんびりとしんのすけについて行くシロ。

ひまわり「たいっ!」
シロ「アンッ!」

――ひまわりに、シロ

カスカベにいた頃、いつも通っていた公園やよしなが先生の家に集まっていた4人の友達とひとりの変わった友達、風間、マサオ、ネネ、ボーちゃん、あいがしんのすけに合わせるように掛け声を出す。

「カスカベ防衛隊っ! ファイヤーーッ!!」

――カスカベ防衛隊のみんな

その風間たちの姿が、ジュナイパー、ヨワシ、キテルグマ、ミミッキュ、フェローチェの姿になった。再び掛け声を出す。

「アローラ防衛隊っ! ファイヤーーッ!!」

――アローラのカザマくん、マサオくん、ネネちゃん、ボーちゃん、あいちゃん

頼りになるのかどうかもわからないけれども、しんのすけとの間に確かな繋がりを感じるロトム図鑑……もといぶりぶりざえもん。

ロトム図鑑「図鑑の使用料百億万円、ローンまたはクレジットでも可」

――ぶりぶりざえもん

アローラに来て初めてできた最初の友達で、しんのすけと供に島巡りに出たマラサダ好きの少年、ハウ。

ハウ「おれー? おれねーハウ! しまキングの孫! でねーニャビーがパートナーなのー」

――ハウくん

メレメレの吊り橋で出会ってから、方向音痴ですぐトラブルを起こすから、なんだか心配で世話を焼いていたら、いつの間にか自分の妹とも友達とも言える存在になった少女、リーリエ。

リーリエ「わたし……しんちゃんのように、どんな試練にも立ち向かえるようになりたいのです!」

――リーリエちゃん

そして、しんのすけが過去と今、未来、果てには宇宙や平行世界、夢の中で出会ってきたたくさんの人たちの顔が浮かんできた。

ほとんど別れてからずっと会っていないけれども、育んできた思い出や彼らの意志は、時を越え、世界を越え、しんのすけの中にたくさんのものを残していった。

最後にしんのすけとリーリエ、ハウの3人がアローラ地方を冒険している映像が浮かび、そこから枝分かれするように無数にヴィジョンが現れる。

島巡りチャンピオンになって、たくさんのおねいさんに囲まれる未来。

しんのすけとカザマたちポケモン、ハウ、リーリエ、アセロラ、グラジオたちアローラ防衛隊が、アローラ地方を守る未来。

カスカベに帰って、風間たちと再会する未来。

野原一家が集まって、いつものように力を合わせて巨悪を倒す未来。

リーリエ、そしてカザマたちとまだ見ぬ遠い地方を冒険する未来。

映し出される数多の未来。その全てで家族と友達が笑っている。
彼らの存在こそ、しんのすけをしんのすけたらしめている、かけがえのないものなのだから。


――お前の未来は、お前のもんだゾ。好きなように生きろ! じゃあな!


――思い出した!

しんのすけ「オラ、野原しんのすけ5歳! 趣味は陸に揚げられたヒンバスごっこで、今おねいさんたちにモテモテになるために島巡りチャンピオンになる途中!」

ロトム図鑑「……やっと思い出したか」

しんのすけ「あれ? ぶりぶりざえもん? ……っていうか、ここどこ? なんか臭っ!」

ロトム図鑑「今のお前は、夢の中にいるようなものだ」

しんのすけ「夢?」

じぇるるっぷ……!

しんのすけが記憶を取り戻したことに感づいたのか、ウツロイドが悪臭に耐えながらこっちに近づいてくる!

しんのすけ「のわっ、なんか来た!」ダッ

ロトム図鑑「しんのすけ、こっちだ!」

ぶりぶりざえもんに導びかれながら、しんのすけはウツロイドから逃げ出す。向こう側には、目がくらむほどの光が溢れている。
振り返ると、再びしんのすけを暗闇へ引きずり込もうとウツロイドが触手を伸ばしてくる!

しんのすけ「うわわっ、どうしよーこのままじゃ追いつかれちゃうよーっ!」

ロトム図鑑「私のコレクションの中でも秘蔵中の秘蔵! シロナの水着データブラック&ホワイト!」

シロナ(白)「しんのすけ君!」

シロナ(黒)「こっちに来て!」

しんのすけ「うおおーっ! ポ ッ ポ ー ッ ! !」ドドドドッ!!

2人のシロナのイメージを見せられ、サニーゴの頭の珊瑚を鼻先に吊るされたヒドイデの如く猛ダッシュでウツロイドを振り切り、しんのすけとロトム図鑑は光の中へと飛び込んでいった!

パチッ

しんのすけ「……お?」

目を開けると、自分の顔をひろしとリーリエ、そしてカザマたちが覗いていた。

リーリエ「!」

ひまわり「たいやーーっ!!」

フェローチェ『しん様がお目覚めになられましたわ!』

ジュナイパー『しんのすけっ! 大丈夫か?』

ひろし「しんのすけ……!」ウルッ

しんのすけ「オラ、確か……」

ひろし「しんのすけ……とーちゃんがわかるか?」

しんのすけ「……なんかありきたりの顔」

ひろし「るせーよ! ったく、心配かけやがって、この大バカ野郎!」ギュッ

ウツロイド「じぇ、じぇるるるっ!」ウェェェ

しんのすけが起き上がると同時に、取り付いていたウツロイドが自然と離れていった。ひろしの悪臭にこりたのか、若干ふらつきながら、ウルトラスペースの空へと消えていってしまった。

しんのすけ「なに、今の?」

フェローチェ『あれがしん様を操っていたビーストですわん』

ロトム図鑑「意識の中でも追っかけられていたのに覚えてないとは……」

しんのすけ「そうだっけ?」

リーリエ「……しんちゃん」

名前を呼ばれて振り返ると、リーリエが潤んだ瞳でこっちを見ていた。目元から透明な雫が何粒も彼女の頬を伝っている。

しんのすけ「おわっ、リーリエちゃん。どしたの? 顔傷だらけで汚れちゃってるよ? 今流行りのコスメティックバイオレンスってヤツ? 大丈夫?」

リーリエ「なにが大丈夫なんですかっ!!」キッ

しんのすけ「うおおっ?」ビクッ

リーリエは突然感情をむきだしに大声を張り上げて泣き出し、しんのすけは驚いて一瞬のけぞってしまった。
しんのすけがポニの大峡谷でルザミーネにさらわれてから今まで、抑えていたものがリーリエの中で爆発していく。

リーリエ「……っ!」フルフル

リーリエ「わたしなんか庇って……かあさまに操られて……。ホント、みんな大変だったんですよ……?」ポタポタ

しんのすけ「り、リーリエちゃん?」

吹き出てくる激しい気持ちに体を震わせて嗚咽を漏らしながら、言葉を紡ぐ。
とめどなく言葉と涙が滂沱のごとく流れて、しんのすけを濡らす。

ギュゥッ!!

リーリエ「わたし、わたしっ、かあさまと戦ってるとき、ウツロイドさんに操られてるあなたを見て、辛くて、気がおかしくなりそうになったんですから!!」

しんのすけ「えっと……オラがかわいいからつい抱きしめたくなるの分かるけど、ちょっと苦しいし、なんか怖いんだけど……」

リーリエ「もう離さない……ゼッタイにゼッタイに離さない! これからずっと、わたしが守ってあげる! だからっ……!」

リーリエ「勝手に……ひとりで遠くへ行かないで……」

しんのすけ「ほ……ほい」

復活したしんのすけと、感極まって泣いているリーリエのやり取りを、2人のマザービーストは戦いの手を止めて刮目していた。

みさえ「しんのすけ……よかった……! これで私たち、もとの家族に戻れたのね……!」ウルッ

ルザミーネ「……どうして? しんのすけ君は確かに、わたくしとビーストちゃんの愛情を受けて、新しい息子になったハズなのに!」

ひろし「俺たち家族の絆を舐めるんじゃねえ! 別の世界に連れてかれたって、操られたって、俺たちは心で繋がっているんだ! だから取り戻せた!」

みさえ「あなただってそうよ! どんなにあなたがリーリエちゃんを娘と認めなくても、あの子とあなたは繋がっているのよ!」

みさえの言葉に反応したのか、リーリエはしんのすけから手を離すと、涙を拭いてルザミーネを強い眼差しで見据える。

リーリエ「次は、あなたの目を覚まさせます!」

ルザミーネ「家族の絆ですって? わたくしとビーストちゃんの愛に比べたらそんなもの……!」

ふと、ルザミーネの触手を見ると、いくつものウルトラボールが握られていた。

ルザミーネ「行きなさい! ビーストちゃんたち! この不埒な人たちを、このウルトラスペースから消し去って!」ヒョイッ

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」ポンッ!

マッシブーン「ブンブーン!」ポンッ!

デンジュモク「デンデンッ!」ポンッ!

ひろし「あいつ何匹ビーストを持ってやがるんだ!!」

ウルトラボールから次々とビーストが現れると、しんのすけたちになだれ込むように襲いかかってきた。
その時!

???「マヒナぺーア!」

???「グソクムシャ! であいがしらだ!」

???「エンニュート! かえんほうしゃ!」

しんのすけたちの前に飛び出してきたルナアーラがムーンフォースでマッシブーンを吹き飛ばし、グソクムシャがであいがしらでデンジュモクを弾き、エンニュートがかえんほうしゃでウツロイドを追い払った!

プルメリ「無事かい!?」

リーリエ「ほしぐもちゃん! プルメリさん!」

しんのすけ「くさやのおじさん!」

グズマ「グズマだっつってんだろ!」

ルナアーラ「マヒナぺィーア!」

リーリエ「ほしぐもちゃん、もう大丈夫なのですか?」

ルナアーラ「マヒナペ!」

しんのすけ「えっ? ほしぐもちゃん? なんかおっきくなったねぇ」

リーリエ「ほしぐもちゃん……コスモッグは、太陽と月の笛を使うことでルナアーラに進化するんです」

しんのすけ「ほーほー……。ケツだけ星人~! ブリブリ~ブリブリ~!」

ルナアーラ「マヒナ♪ マヒナ♪」キャッキャッ

しんのすけ「おおっ、ホントにほしぐもちゃんだ!」

リーリエ「だからそれやめてください! ほしぐもちゃんも喜ばないでって!」

ルザミーネ「グズマに伝説のポケモン……次から次へと! わたくしはビーストちゃんといたいだけなの! あなたたちはどうでもいいのです!」

プルメリ「あれが……代表なのかい? みさえも……一体何がなんだか」

ひろし「俺だってわかんねぇよ……ただ、やっと俺たちの家族が帰ってきたんだ。後は奴を止めるだけだ!」

プルメリ「そうかい。やったんだね、リーリエ」

リーリエ「はい!」

グズマ「代表……」

ルザミーネ「こうなったら……もっともっと、強いビーストちゃんを捕まえて迎え撃つしかありませんね!」

ルザミーネは触手を広げると、どこからともなく、ビーストの群れが現れた。触手でしんのすけたちを指差すと一斉にビーストたちが向かってきた!

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」

カミツルギ「カミィィ!」

マッシブーン「ブンブーン!」!

アクジキング「ズモォォォッ!」

デンジュモク「デンデンジュ!」

ルザミーネ「……!」グニュッ

同時に、ルザミーネもウルトラスペースの奥へと姿を消した。

しんのすけ「あーっ! 逃げるなー!」

ウツロイドたち「じぇるるっぷ!」

ウツロイドの1匹が、しんのすけとリーリエに襲いかかる!

リーリエ「きゃっ!」

みさえ「オラァッ!」ドンッ!

ウツロイド「じぇるるっ!?」グシャ

しんのすけ「うわっ、かーちゃんも妖怪メノクラゲオババになってる!」

みさえ「当たり前でしょ! 子供がピンチになったら、どんなことをしてでも助けるのが親なの! あんたを助けられるのなら、メノクラゲオババにもケチケチオババにもなんでもなってやるわよっ!」ブンッ!

ウツロイド「じぇるっ!」ドシャッ

近づいてくるビーストを触手でなぎ倒しながら、みさえはリーリエへと顔を向けた。

みさえ「あなたのお母さんと、戦ってみてわかったの」バキッ!

みさえ「あの人がもし本気でビーストのことを愛していたら、私、どうなっていたかわからないわ。でもね、心の奥底で、ビーストにとりつかれている自分に抗っている、母親としてのルザミーネさんが見えたわ」ドゴッ!

リーリエ「みさえさん……」

みさえ「子供を大事に思わない母親なんて、いない。……ルザミーネさんだって、あなたを嫌っているわけじゃない。それは絶対に言い切れる。あなたも、それを心のどこかでわかってると思う。だって、家族はみんな心で繋がっているもの」ガスッ!

リーリエ「……!」

みさえ「でも、それを伝えるのは私じゃない。あなた自身がしなきゃいけないこと」

みさえ「さ、ここは私達に任せて、あなたはママにきちんと自分の言葉を伝えに行きなさい。しんのすけも、リーリエちゃんのサポートお願いね!」ドギャッ!

リーリエ「はいっ! しんちゃん、ほしぐもちゃん、かあさまを追いましょう!」

しんのすけ「みんなー行くぜい!」

ジュナイパーたち『おうっ!!』

ルナアーラ「マヒナペーア!」

プルメリ「グズマ、あんたも代表に筋通しに行くんだろ? ここはあたいらに任せて、行ってきな!」

グズマ「ああ……!」

リーリエ「その前にしんちゃん……ズボン履いてください」つズボン

しんのすけ「なんで? オラ別にこのまんまでもいいんだけど」

リーリエ「履 い て く だ さ い ! 常 識 で す っ !」シャーッ!

今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

いよいよウルトラスペース編もクライマックス。お楽しみに!

今までの映画キャラが励ます・・・こんな感じ?(見た範囲で)

アクション仮面「しんのすけ君!」

スンノケシ「しんちゃん!」

吹雪丸「しんのすけ!」

トッペマ「しんちゃん!」

サタケ「ひまわりちゃんを悲しませるなよ!」

温泉の精「しんのすけ!」

サル達「ウッキー!!!」

ケン「坊主!返した未来はちゃんと守れ!」

ミライマン「しんのすけ君!」

つばき「しんちゃん!」

あ、大事な人1人忘れてた

又兵衛「しんのすけ!」

一方その頃、月輪の祭壇では……。

テッカグヤ「フー……」

アクジキング「グモォォォッ!!」ガツガツムシャムシャ

ハプウ「ぬぅ……なんとしぶといビーストじゃ! バンバドロといい勝負じゃな!」

バンバドロ「ヒヒウンッ……!」

ハウ「ガオガエン、まだ戦えるー?」

ガオガエン「ガォォッ……」

ハウ「グラジオー、ヌルはへいきー?」

グラジオ「……」

ヌル「オォォ……」ブルブルッ

ヌルは全身に大やけどを負って、弱々しくその場で横たわっていた。

マリエ庭園での戦いからアクジキングに警戒はしていたものの、アクジキングのタフさと威力にものを言わせた攻撃で、次第に弱っていき、さらにそこへテッカグヤの大文字を食らってしまい、体力は限界に近づいたのだ。

グラジオ「ヌル……すまない。オレが不甲斐ないばかりに、何度もオマエを傷つけてしまった」

ヌル「……」

リーリエがエーテルパラダイスに連れ去られた時の怒りを抱いたまましんのすけと戦った時、ヌルに余計な傷を追わせてしまった。マリエ庭園でも己の慢心のせいで、危うくヌルが食われてしまうところだった。

グラジオ「許しを請うわけじゃない……。だが、オレは――」

ヌル「オ……オオッ!」ユラッ

だが、ヌルは4つの足でしっかりと立ち上がり、緑色の瞳をグラジオに向けた。まるでグラジオに「しっかりしろ、オマエと俺は一心同体だ」と語りかけているように。

グラジオ「ヌル……またオレと供に戦ってくれるか?」

ヌル「オォォッ……!」

ピシピシッ!!

グラジオの言葉に応えるがごとく、ヌルの力を拘束していたカブトにヒビが入る。ヒビの内側から、光が漏れ出してくる。

ハウ「ヌルのカブトがー!」

グラジオ「オレを、信じてくれるか?」

ピシビキッ!

グラジオ「なら――今こそオレにチカラ、貸してくれ!」

ピシッ!

グラジオ「『 シ ル ヴ ァ デ ィ 』 ! ! 」

バキンッッ!!

シルヴァディ「ド ド ギ ュ ウ ウ ー ン ッ !」

タイプ:ヌルを制御していたカブトが外れ、その中から白い毛並みに覆われた、猛禽類のごとく勇ましい顔が現れて咆哮を上げた!

ハウ「ヌルが、進化したー!」

ハプウ「おおっ! なんと荘厳なポケモンじゃあ!」

グラジオは懐に手を伸ばすと、一枚のメモリを取り出した。

グラジオ(奴のタイプはあく・ドラゴン! ならばこのタイプだ!)

グラジオ「シルヴァディ、ARシステム起動!」

グラジオ「無垢なる力から、遍くを浄化する神聖なる力へ、その身の性質を変化しチカラ、振え!」スッ

グラジオはシルヴァディの頭部に向かってメモリを投げると、それをわかっているようにシルヴァディも飛び出し、メモリを頭部に受け止めた。すると、頭部や尻尾が白から鮮やかな桃色へと変色した!

シルヴァディ「……!」キラキラッ

グラジオ「シルヴァディ! ヤツにマルチアタックだ!」

シルヴァティ「オオオッ!!」ダッ!

ARシステムでフェアリータイプとなったシルヴァディは、一度力を溜めると飛び出し、アクジキングに両前足の爪で切り裂いた!

ザンッ!!

アクジキング「ズモッ! オォォォ……」

ズズンッ

一撃を喰らい、沈んでいくアクジキング。
シルヴァディはフェアリーメモリを頭部から飛び出すと、グラジオはそれをキャッチ。代わりにグラジオはエレクトロメモリを取り出すと、それをシルヴァディの頭部に投擲した!

グラジオ「遍くを浄化する神聖なる力から 万物を貫く雷霆の力へ、その身の性質を変化しチカラ、振え!」

するとシルヴァディの体色が黄色に変色し、電気を帯び始めた!

シルヴァディ「……!」バチバチッ!

ハプウ「ほにゃあ……その奇妙な機械を使って、タイプを変化させているのか!」

グラジオ「そう、これがビースト・キラーであるタイプ:ヌル……シルヴァディの真髄だ!」

グラジオ「シルヴァディ、その森羅万象の力を異界の敵にふり下ろせ! もう1匹のビーストにマルチアタックだ!」

シルヴァディ「オオォッ!!」

今度はでんきタイプになったシルヴァディは、雷鳴の如き疾さでテッカグヤに接近すると、顔から足に掛けて、電気を帯びた爪で唐竹に切り裂く!

ザンッ!

テッカグヤ「フー……!?」

アクジキングと同じように、テッカグヤも、でんきのマルチアタックで大きなダメージを負い、巨体が大きな音と振動を立てて倒れ伏した。

ハウ「ヌル、すごい……!」

シルヴァディは身を翻してグラジオのもとに戻ると、甘えるように顔をグラジオへ摺り寄せた。

シルヴァディ「オオオ……」スリスリ

グラジオ「フッ……これからも、頼む。シルヴァディ」

ウルトラスペース 奥

ルザミーネ「どこまでもどこまでも……しつこい人たちですわね!」ギロッ!

リーリエ「かあさまを元の世界に連れて帰るなら……追います! どこまでも!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

しんのすけ「やい、妖怪メノクラゲオババ! オラが来たからにはもう負けないゾ! 大人しく降参しろ!」

ルザミーネ「しんのすけ君――残念ですわ……大人しくわたくしの息子になっていればいいものを。そうすれば、ビーストちゃんと一緒に、新しい未来を切り拓けたかもしれないのに」

しんのすけ「オラのかーちゃんはみさえだもん! ルザミーネおねいさんの子供はリーリエちゃんとクジラくんでしょ!」

ルザミーネ「そんなこと、もうどうでもいいでしょう。……本当はこのまま、アローラもこの世界も、ビーストで満たすはずだったのに!」

ルザミーネ「こうなれば、わたくし自身があなたたちを直々に葬ってあげます。ビーストちゃんの力を得たわたくしに、伝説のポケモンなど取るに足りません!」グニャッ!

しんのすけ&リーリエ「……!」スッ

グズマ「……ちょっといいか」

しんのすけ「んもーなに? せっかく気合入れるところだったのに」

グズマ「一度、代表と話す時間をくれ。代表には世話になったからな……その筋を通してえんだ」

しんのすけ「魚の卵の……」

リーリエ「それは筋子です」

ルザミーネ「グズマ……ふらりと消えていったと思ったら、その子達についていたのね。だらしのないコ」

グズマ「……今まで俺たちを助けてくれて、カンシャしてるぜ。代表」

グズマ「最初に、代表と会ったときのこと、今でも覚えてる」

ルザミーネ「……」

グズマ「あんときゃスカル団もまだ名が知れてなかった頃だけどよぉ。ポータウンに代表が直々にやってきて援助をするって聞いたときはびっくりしたぜ」

グズマ「そしてなにより、生まれて初めてオレの力が必要だと言われたことが、胸ん中に刻まれてるんだ」

グズマ「嬉しかったぜ……。今まで、オレ様の気持ちを理解せず、期待ばかり押し付けて勝手に失望しやがった師匠や親どもと違っていたからな。俺にとって代表は、自分の力を認めてくれるだけじゃなく、本当の親のように思える時さえあった」

ルザミーネ「そう」

グズマ「……ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めなくて嫌われているグズマさまだがよ、これだけは一つ言わせてもらうぜ」

グズマ「アローラをブッ壊してまで、代表がしたかったことが正しいとはオレは思わねぇ」

グズマ「ウルトラビーストに愛を注ぐのは代表の勝手だ。だが、アローラにはオレとあいつらの居場所があるんだ。代表の好き勝手にしていいもんじゃねぇだろうが」

ルザミーネ「破壊という言葉が人の形を成しているあなたが、それを言うのかしら?」

グズマ「ああ、歯向かうもんをブッ壊すのは好きだがよ、大事なもんまでブッ壊されるのは我慢なんねぇのがグズマ様だ」

ルザミーネ「じゃあ今度は、あなた自身が壊れる番よ」ブンッ!

グズマ「!」

ルザミーネが不意をつくようにグズマへ触手をふり下ろそうとした刹那、矢羽根が空を切り、触手を弾いた。
驚いたグズマが背後へ振り返ると、カザマが弓を構えていた。

グズマ「じゃがいも小僧……」

しんのすけ「おじさん無茶しちゃダメ。オラたちに任せなさい」

リーリエ「グズマさん……あなたがかあさまに向けた想い、わたしたちが代わりに伝えます!」

グズマ「……仕方ねぇ、好きにしな」

グズマ(やっぱりよぉ……結局オレは、代表にとっちゃ都合のいい道具だったのか。じゃがいも小僧たちに任せんのも癪だが、頼んだぜ。お前たちが代表に言葉と想いを届けてくれや)

グズマが身を引くと、しんのすけとリーリエ、ルザミーネが視線をぶつけ合う。

ルザミーネ「親に縋らないと生きることもできない子供の分際で、わたくしに逆らおうなどと、絶対に許しません! この力で、脆弱なあなたたちを消し去ってあげる!」

ルザミーネはたけりたちながら、触手を振り下ろすとネネが前に立って触手を受け止めた!

キテルグマ『消し去るですって? 上等じゃない!』ググッ

ネネは渾身の力で触手を押し返すと、ルザミーネがよろめく。その隙にあいが飛び出し、ルザミーネにとびひざげりを放つ!

フェローチェ『あいはしん様以外、誰のものにもなるつもりはありませんわ。あなたの愛なんて、受けたくありませんの』ドゴッ!

あいのとびひざげりを受けて、ルザミーネは岩壁にぶつかるとぎょろりと彼女を凝視した。反撃しようと触手をしならせて動き出した瞬間、マサオが口を膨らませ、ボーちゃんは垂れている鼻水の影を爪に変えて飛び出してきた。

ヨワシ『僕たち、ひとりひとりじゃ弱いかもしれないけれど』ブシューッ!

ミミッキュ『みんなで力を合わせれば、怖いものはない!』ジャキンッ!

ボーちゃんのシャドークローが触手を弾き、マサオのハイドロポンプでルザミーネを上空まで押し上げた!

ルザミーネ「このっ……!」バッ!

ルザミーネは煌く石を出現させると、パワージェムを放つ!

ジュナイパー『だから僕たちはしんのすけと歩んでいくって決めたんだ! みんなで強くなって、島巡りチャンピオンのポケモンになるって!』ドシュッ!!

ドゴォォンッ!!

カザマが放ったかげぬいの矢とパワージェムの光線がぶつかりあうと爆発して、そのまま打ち消された!

ルザミーネ「ヴアアアウッ!」ゴウッ!

怒りをそのまま放出するように、ルザミーネは次にすべての触手からパワージェムの光線を発射した!

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺィーアッッ!!」カッ!

ルナアーラが雄叫びを上げると、透明の大きなバリアがしんのすけたちを覆い、ルザミーネのパワージェムを防いだ!

ルザミーネ「……なんなんですか」ワナワナ

ルザミーネが苛立ちを隠せないように全身を震わせて金色の眼差しをしんのすけ達に向ける。

ルザミーネ「なんなんですか、あなたたちは! 何の意味があってわたくしの邪魔をするのです!」

リーリエ「邪魔ではありません! 道を踏み外したかあさまを救いたいのです!」

しんのすけ「オラ、みんなと一緒にだいたい試練をクリアして、島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちモテモテになりたい!」

しんのすけ「――だからっ、妖怪メノクラゲオババなんかに……オラたちの未来を、めちゃくちゃにされてたまるもんかーーーっ!」

カッッ!!

突然、しんのすけの強い想いに答えるかのように腕にはめているZリングが赤い光を発した。Zリングから解き放たれる赤い光を浴びたカザマたちも、赤いオーラをまとった!

ゴウッ!!

ジュナイパー『!』

リーリエ「しんちゃんのZリングが……!」

しんのすけ「んんっ、なんか熱い!」

グズマ「このオーラは――ぬしポケモンが纏うオーラと同じじゃねぇか!」

キテルグマ『なに……これ?』

ヨワシ『力が湧いてくる……!』

ミミッキュ『やっぱり……』

フェローチェ『どうなさったのですか?』

ミミッキュ『僕らはウルトラホールを通って、この世界にやってきた。今の僕らはぬしポケモンたちと同じ、Zパワーを宿してる』

ジュナイパー『以前……ボーちゃんは、ぬしポケモンはウルトラホールのエネルギーを浴びて力を増したって言ってたね』

ミミッキュ『うん、そして、しんちゃんのZリングもウルトラホールのエネルギーをまとって、僕らと心を通じ合わせた』

しんのすけ「ほーほー、つまりオラとカザマくんたちは今、心と心が絡み合ってる関係ということですな! いや~ん」

ジュナイパー『間違ってないけど、気色悪い言い回しをするな!』

フェローチェ『それで、なにをすればよろしいのですか?』

ミミッキュ『みんなのZパワーと、しんちゃんの想いを重ねる!』

ミミッキュ『しんちゃんのZリングに、みんなに宿ったZパワーを! しんちゃんは、みんなのZパワーとひとつになる! そうすれば、何かが起きる!』

しんのすけ「よーし! アローラ防衛隊、ファイヤーーーーッ!!」ダッ!

カザマたち『フ ァ イ ヤ ー ー ー ー ッ ! !』ゴウッ!

しんのすけがジャンプしてZリングを掲げると、カザマたちは一斉にZパワーを放出した! 赤いオーラがしんのすけのZリングに集まっていき、しんのすけを覆っていく!

キィィィィン!

ルザミーネ「今度は何をしようって言うの……?」

ゴウゥッ!!

オーラが振り払われると、しんのすけは地面へと着地した。その場にいた全員が、しんのすけの左手には、Zパワーに包まれる前には持っていなかった、あるものを握っている事に気付いた。

しんのすけ「……!」

ルザミーネ「それは……っ!」

しんのすけの手に握られているのは、不思議な桃色に輝く球体のクリスタル。その内側には、アクション仮面のマークが刻まれていた。

ルザミーネ「――Zクリスタル?!」

しんのすけ「これがオラたちアローラ防衛隊のゼンリョク! 愛と正義と女子力とゆるゆるさの結晶! 『アクかめZ』だゾ!!」キランッ

ジュナイパー『女子力とゆるゆるさは余計だよ!』

グズマ「嘘だろ……。じゃがいも小僧のヤツ、Zクリスタルを創ったっていうのかよ!」

リーリエ「新しいZクリスタルを創っちゃうなんて、そんなの本にも……ううん、こんなこと……しんちゃんもポケモンさんも、すごいですっ! すごすぎです!!」

ミミッキュ『ボ! 人とポケモンの絆と想いに、ウルトラホールのエネルギーが加わることで、Zクリスタルは創られる! 僕の予想が、当たってた!』

ルザミーネ「Zクリスタル――そんなもので! このわたくしを倒せると思わないで!」

ジュナイパー『しんのすけ! Zワザ行くぞ!』バサッ!

しんのすけ「ブ・ラジャー!」

バッ! バッ!
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!

グズマ「なんだァ? あの変わったポーズ?!」

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !

カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは矢を翼につがえて引き絞った。

ルザミーネ「そんなものっ!」ゴウッ!

ルザミーネが触手を広げると、赤いオーラをまとい数え切れない程の煌く岩を出現させて、それを結集させた。巨大なパワージェムとなり、極大の光線を放つ!

ルザミーネ「ルァァァッ!!」カッ!

ドゥゥゥゥッ!

しんのすけ「カザマくん! ファイヤーーッ!」

ジュナイパー『ファイヤーーーッ!』バシュッ!

ゴウッ!!
キィィィィィン!!

カザマが手を離すと、光の矢が、先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、ルザミーネに向けて発射された!

ジュナイパー『うわあっ!』

反動でカザマが後方へ下がっていくが、しんのすけとマサオ、ネネ、ボーちゃん、そしてあいちゃんが抑える。

しんのすけ&ジュナイパー「ぬくくくっ……!」

ドドドドドドド!!!

ルザミーネ「ヴヴヴヴッ!!」

パワージェムとアクションビームがぶつかりあい、Zパワーによるワザ同士のつばぜり合いが始まる!

リーリエ「――ほしぐもちゃん! しんちゃんたちを助けてッ!」

ルナアーラ「マヒナペッ!」バサッ!

ルナアーラが飛び出すと、再び第三の目を開眼し、全身が真っ白に染まる。
フルムーンフェーズになったルナアーラは、アクションビームガンを補助するように、青い波動をビームガンに向けて放った!

ルナアーラ「マヒナぺーーーアッ!!」カッ!!

ブゥゥゥンッ!!

ルザミーネ「なにをっ!」

ルナアーラが力を貸すと、一気に威力が増大したアクションビームガンがパワージェムを押切り、ルザミーネの全身を貫く!

ゴ ウ ッ ! !

ルザミーネ「うああああーーーっ!!」

ルザミーネ「嫌っ! 嫌あああっ! この世界は……自分の愛する……美しいものでなければならないのに……!」ピシッ ピシッ

リーリエ「いいえ、世界はあなたの愛を満たすためのモノではありません!」

ルザミーネ「!」

ルザミーネを覆っているウツロイドが光を放ち、苦痛に悶える中、リーリエの声がルザミーネに響く。

リーリエ「興味を失ったらそれまでなんて、ひどすぎです!」

リーリエ「――ですけど、あなたはそれを分かっていたはずです! 本当のかあさまは、どんなポケモンも心の底から愛していました。わたしのことも、にいさまのことも愛していました!」

リーリエ「だから戻ってきてください、あの頃の――みんなを、人もポケモンも本当の意味で愛していた昔の優しいかあさまに!」

ルザミーネ「……ッ!」

パキンッ!
ドォォォォン!!

そして、ルザミーネを中心に大爆発が起きた。衝撃波がたちどころにしんのすけたちを襲い、吹っ飛ばされてしまう。

しんのすけ「おわわっ!」

ジュナイパー『うわぁぁっ!』

ゴゴゴゴゴ……

グズマ「ど、どうなっちまったんだよお……?」

しんのすけ「……あ!」

爆発が収まり、煙も空へ溶けるように消える。
空中には人間の姿に戻ったルザミーネと1匹のウツロイドが浮かんでいた。ウツロイドはボールへと戻るとその場に転がり、ルザミーネも同時に地面へ倒れた。

リーリエ「かあさまっ!」ダッ!

倒れて目を閉じるルザミーネに、リーリエが駆け寄る。
リーリエが顔を覗くと、うっすらと、ルザミーネも目を開けた。

リーリエ「かあさま……」

ルザミーネ「リーリエ……」

すると、ルザミーネは自分の右手を持ち上げて、傷と砂で汚れたリーリエの顔に、優しく触れた。リーリエも、ルザミーネの手をそっと握る。

ルザミーネ「……」

リーリエ「……」コクンッ

ルザミーネ「……ふふ」

先ほどの狂気に満ちたモノではなく、どこか満ち足りて安心したような微笑みを浮かべると、人差し指を、リーリエの唇に当てた。

ルザミーネ「あなた……少しは、きれいになったのね……」

それを最後に、右手が崩れ落ち、ルザミーネは意識を失った。

「しんのすけーっ!」

しんのすけ&リーリエ&グズマ「!」

振り返ると、マザービーストの姿から元に戻ったみさえとひろし、ひまわりとシロ、そしてぶりぶりざえもんとプルメリが駆け寄ってきた。

みさえ「2人とも大丈夫? みんな無事?」

しんのすけ「おわっ! 妖怪メノクラゲオババから醜い妖怪ケチケチオババに戻ってる!」

みさえ「もっかいメノクラゲオババに戻ってやろうか? あ?」

しんのすけ「い、今の美人のママでいいです」

ひろし「ルザミーネは?」

リーリエ「かあさまは……戻ってきました」

リーリエの笑みを見て、みさえも笑いかける。

みさえ「……そう、やったのね」

ズズンッ!!

全員「!」

突如、ウルトラスペース全体が揺れ始めた!

グズマ「なんだ? どうしたってんだよ!? いいところだってのによお!!」

――じぇるるっぷ……!

しんのすけたちの周囲に、再びウツロイドが出現した!

リーリエ「ウツロイドさんが、たくさん……!?」

プルメリ「こりゃ、穏やかじゃなさそうだね……!」

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

ルナアーラは雄叫びを上げると、しんのすけたちが光に包まれていく。ウツロイドたちが襲いかかろうとした瞬間、ウルトラスペースから姿を消した。

月輪の祭壇

――マヒナぺーアッ!

ルナアーラの鳴き声で我に返ると、しんのすけたちは月輪の祭壇に戻っていた。

「!」

ハウ「あー! みんな戻ってきたー!」ピョンピョンッ

グラジオ「フッ……みんな取り戻せたようだな」

ハプウ「伝説のポケモンはおるわ、ウルトラホールは空いておるわで何事かと思ったが……まあなにはともあれ、みな無事で良かった」

ハウ「わーーしんのすけー! 無事だったんだねー! よかったよー!」ギュウウウッ

しんのすけ「ううっ、ハウくん気色悪っ!」

ハウ「気色悪くたっていいよー! しんのすけがいなくなっちゃうくらいならいくらでも気色悪くなるもんー!」スリスリ

ハプウ「しんのすけ、無事でなによりじゃ。よく戻ってきた」

リーリエ「にいさま! かあさまは?」

グラジオとハプウはルザミーネのそばに立って、脈を測り容態を確認する。

グラジオ「……衰弱しているが、意識を失っているだけだ」

ハプウ「そこのでかいの、ルザミーネをお連れしろ……弱っておられるが無事じゃ。はやく手当てせねばのう」

グズマ「え?」

グラジオ「……グズマ」

グズマ「……!」

グラジオ「母上を、頼む」

グズマ「……ああ、言われるまでもねえ」

プルメリ「あたいも手伝うよ」

グズマとプルメリは、バンバドロにルザミーネを乗せると、月輪の祭壇の階段を降りていった。このままエーテルパラダイスに連れて応急処置を受けるのだろう。

ハプウ「リーリエ……ハウとグラジオから話は聞いたぞ。しんのすけを助けるために、ポケモントレーナーになって、しんのすけのポケモンたちと力を合わせたそうじゃな」

リーリエ「は、はい!」

ハプウ「顔を見ればわかる。よく頑張った。おかげでお主の大切なもの、すべて取り戻せたようじゃな」

しんのすけ「えっ、カザマくんそうだったの?」

ジュナイパー『あぁ、一度リーリエさんの手持ちになったんだ。僕らも彼女も、お前を助けたいって気持ちがあったから、僕らも力を貸してあげたんだ』

キテルグマ『技の指示になれるの、大変だったんだから』

ヨワシ『でも、ぶっちゃけリーリエさんの方がこまめに世話をしてくれたし、頼りになったよ』

しんのすけ「」ガーーン!

しんのすけ「どーせオラなんてトレーナーに向いてないもん……」ズーン

ヨワシ『う、嘘だよしんちゃん!』

フェローチェ『ご心配なく、あいはいつでもしん様の味方ですわ!』

キテルグマ『ホントはみんな、しんちゃんと戦いたかったんだから!』

ジュナイパー『Zクリスタルを創っただけでも、充分ありがたいよ!』

ミミッキュ『よっ、色男』

しんのすけ「いやぁそこまで言われちゃあねぇ」ルンルン

ジュナイパーたち『はぁ……』

リーリエ「ルナアーラさん……あなたを元の世界に戻すはずだったのに……わたしが助けてもらってばかり」

リーリエ「……本当に……本当にありがとうね!」ニコッ

リーリエ「どう……したの?」

ルナアーラの顔を見ていると、どこか嬉しそうで、それでいて物足りないというふうに、リーリエは感じ取った。

リーリエ「……!」

リーリエ「あなたの考え……当ててみましょうか?」

リーリエ「あなた……わたしやしんちゃんと、まだまだ旅をしたいんでしょう?」

ルナアーラ「マヒナペ!」

リーリエ「当たり、でしょ!」

リーリエ「だって……だって、わたし、あなたとずっとそばにいた……言ってみれば家族だもの。あなたの想い、わかります」

リーリエ「わたしも同じ。アローラのいろんな島を巡り、多くの出会いがありました。ククイ博士とバーネット博士、しまキングのハラさんと孫のハウさん。それから、オニスズメから助けてくれたしんちゃんと、野原さんの方々……ほかにもほかにもたくさん……」

リーリエ「あなたの暮らしていた世界がどんな世界かわかりませんが、アローラの世界も知りたいよね!! ハラさんがおっしゃっていたでしょ? ポケモンや人に出会うことで人生がおもしろくなるって!」

ルナアーラ「マヒナペ!」

リーリエ「でもね、わたしではダメだから……。わたしには、あなたが望む冒険、ポケモン勝負はできないもの……」

リーリエ「それに……あなたに謝らなきゃいけません」

リーリエ「かあさまと戦う時……わたしは勝手にあなたを賭けてしまったんです。それしか、しんちゃんとかあさまを助ける道は無かったからです」

リーリエ「それでも……あなたの気持ちを無視したことに変わりはないです。あなたの家族として……いいえ、人として許されることではありません」

ルナアーラ「……」

みさえ「リーリエちゃん……」

リーリエはしんのすけと向きあった。

リーリエ「しんちゃん。このコと向き合って、連れて行ってくれますか? このコの想い……あなたと一緒に旅をしたい想いを叶えてほしいのです!」

しんのすけ「うーん……」

しんのすけはリーリエを、次にルナアーラを見ると、

しんのすけ「……めんどくさいからヤダ」

リーリエ「え?」キョトン

しんのすけ「オラ、カザマくんにマサオくんにネネちゃん、それからボーちゃんに新メンバーのあいちゃんがいるからいっぱいいっぱいだもん。そんなこと言わずに、リーリエちゃんが連れてけばいいじゃん」

しんのすけ「ねーほしぐもちゃん」

ルナアーラ「マヒナぺーア!」

リーリエ「で、でも……わたし、ルナアーラさんの気持ちを無視して……」

ハプウ「本当にそうかのお?」

ハプウは前に出ると、ルナアーラの様子を見た。

ハプウ「もしリーリエに裏切られたと思っておるのなら、とうの昔にお前のもとから去ってるじゃろうに。むしろこやつはしんのすけの答えに同意しておるように見える」

みさえ「リーリエちゃん。あなたはさっき言ってたわよね。ほしぐもちゃんと家族って。ほしぐもちゃんの想いが分かるって」

リーリエ「ええ……」

みさえ「なら、今のほしぐもちゃんの気持ちも、きっとわかるはずよ」

リーリエ「……」

グラジオ「オレも……最初からヌルと心を通じ合わせられたわけじゃない。何度もぶつかりあい、傷つけ合い、その果てにようやく互いを知り……絆を深められた」

グラジオ「リーリエ、ルナアーラと供に生きるんだ。前途多難だろうが、それがオマエとルナアーラにとっての幸せだ。オレでも、そのくらいは分かる」

ひろし「それにすごかったぞぉ、ビーストの世界でのリーリエちゃんの奮闘! 俺は間違いなくリーリエちゃんなら立派なトレーナーになれると見たぜ。ルナアーラも幸せもんだよ」

ハウ「リーリエもさー、ルナアーラと強くなりなよー。きっと、もっと楽しいことが待ってるからさー!おれ、ルナアーラと一緒にいるリーリエと戦ってみたいー!」

しんのすけ「うんうん、ほしぐもちゃんも『いっしょにいたい』って言ってるし」

リーリエ「本当なんですか……しんちゃん? ルナアーラさんの声、聞こえたんですか?」

しんのすけ「ちょっとだけねー」

リーリエはしんのすけを、そしてグラジオ、ハウ、ひろし、みさえ、ハプウを、最後にルナアーラへ目線を移した。
ルナアーラは静かにリーリエを見据えている……。

リーリエはルナアーラに歩み寄ると、

リーリエ「……いてくれるんですか?」

リーリエ「……本当に、わたしと一緒にいてくれるんですか?」

ルナアーラ「マヒナペ!!」

リーリエは両手をルナアーラに伸ばすと、ルナアーラはリーリエに近づいて、優しくカギ爪を使って彼女の華奢な体を持ち上げて、自身の顔のそばまで持っていった。
そしてリーリエはルナアーラに触れると、そっと額をくっつけた。

リーリエ「……ありがとう」

リーリエ「じゃあ……これからずっと、よろしくお願いしますね! ほしぐもちゃん!!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!!」

ルナアーラが嬉しそうに声を上げる。リーリエにも笑顔が戻り、正真正銘自分のパートナーが出来たことを喜んだ。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira140402.jpg

ハウ「やったねーリーリエー!」

ハプウ「伝説のポケモンを友に、か。めでたいのう」

グラジオ「フッ……」

ひろし「君なら、しんのすけやハウくんに負けないくらい、立派なトレーナーになれるさ」

みさえ「これから先、楽しいことも苦しいことも待ってると思う。だけど、その子が力になってくれるわ。頑張ってね!」

リーリエ「はい!」

しんのすけ「またケツだけ星人見たければいつでも見せてあげるから、リーリエちゃんの言うこと、ちゃんと聞くんだゾ」

ルナアーラ「マヒナぺィーーアッッ!」ラジャッ!

リーリエ「ほしぐもちゃん……さっきよりずっと気合入った声になってませんか?」

ヨワシ『すごいなぁ、伝説のポケモンを仲間にするなんて』

ジュナイパー『……おい、しんのすけ、本当にルナアーラの声、聞こえてたのか?』

しんのすけ「聞くまでもないでしょ」

ジュナイパー『……ああ、そうだね』

フェローチェ『しん様……やっぱりお優しい方』ウットリ

キテルグマ『なによこいつ、しんちゃんにすっごく馴れ馴れしくない?』

ひろし「じゃあみんな、帰ろうぜ! 全部終わったこと、パラダイスにいるみんなに伝えなくちゃな!」

「おーーーっ!!」

しんのすけ「……」クラッ

ドサッ

フェローチェ『し、しん様!?』

しんのすけ「へぇぇ……」

みさえ「ど、どうしたの?」

しんのすけ「お腹すいたし、なんか全身から力が抜けてオラのカラダはドボドボだゾ……」

ジュナイパー『ボロボロ、だろ。でも本当に大丈夫か?』

リーリエ「しんちゃん……3回も連続してZワザ、使って頑張ってましたから。ずっと飲まず食わずであっちの世界にいましたし……」

ハウ「さ、3回も連続でZワザ使ったのー!?」

リーリエ「使ったというか、そのうち2回は使わされたというか……」

ハウ「Zワザってー、とっても体力を使うのにー……。3回もやっちゃったら死んじゃうって!」

ハプウ「ああ、よく生きてたのう……向こうでの戦いは壮絶なものだったようじゃな」

リーリエ「……」スッ

リーリエは、しんのすけを優しく抱き上げると、しんのすけの背中に手を回したまま階段を降り始めた。

しんのすけ「おー? いいの?」

みさえ「そんなことしなくても私がおぶっていけば――」

リーリエ「いいんです。今は……こうしていたいんです」

みさえ「……そう。じゃ、お願いね」ニコッ

しんのすけ「こりゃ楽でいいやー」

リーリエ「ふふっ……」

しんのすけは眠たげながらも満足した顔で、リーリエは取り戻せた大切な人の温もりを感じながら幸せそうな表情で、階段へと向かった。その後ろを、ルナアーラがついてくる。

ルナアーラ「マヒナぺーア!」

夜が明けて、空の彼方に現れる陽光を前に、しんのすけたちは長い階段を降りて月輪の祭壇を去った。

まだ、完全にアローラに蔓延っていた驚異がぬぐい去れたわけではない。ルザミーネによって解き放たれたウルトラビーストたちは、アローラの各地に多く残っている。
だけど、しんのすけたち活躍でアローラは大きな一歩を踏み出すことができた。そう遠くない未来で、彼らは、それを肌で感じることだろう。


★挿入歌 PURENESS★

【ウルトラスペース編 おしまい】

今日はここまで。いつもより短くてすみません!
次回の更新は明日の夜です。

じゃ、そゆことで~

【おまけ】

しんのすけ「なんで? オラ別にこのまんまでもいいんだけど」

リーリエ「履 い て く だ さ い ! 常 識 で す っ !」シャーッ!

しんのすけ「ほいほい」ハキハキ

しんのすけ「じゃ、いってきまーす」

タッタッタッ

プルメリ「――よし、それじゃあたいもハウとグラジオのように、ここを守るとしようか」

エンニュート「どくどく~!」

プルメリ「エンニュート、かえんほう――」

ひろし「今度は俺も戦ってやる! おいビーストども! この足の臭いに、勝てると思うなよっ! おりゃぁあああ!」

靴を両手にそれぞれ握ってウツロイドの群れへと突進するひろし!

プルメリ「あ、ちょっと! おっさん危ないって!」

ツーーーン

ウツロイド「じぇるるる!!」ウエエ

カミツルギ「か、カミィィィ!」グエエッ

プルメリ「く、靴のニオイで、ビーストを倒してるってのかい?」

ダッ!

フェローチェ「フェロォォッ!」グワッ!

アクジキング「モォォォォッ!」モグモグモグ

ひまわりとシロに向かって、フェローチェとアクジキングが襲いかかる!

プルメリ「危ないっ!」

ひまわり「たいっ! たたいやったい!」ビシッ

シロ「キャンッ!」ゴウッ

シロにまたがったひまわりが指示を送ると、シロの身体を中心にキラキラと輝く桃色の風が渦巻き始めた!
風を浴びたビーストたちが、その場で体勢を崩す!

フェローチェ「ロッ……?!」ググッ

アクジキング「ズモッ……!」ガクガクッ

プルメリ「これは――ようせいのかぜ?」

突然、プルメリのすぐそばで爆風と衝撃波が襲い来る!

プルメリ&エンニュート「!」サッ

ドッゴォォォォッ!

みさえ「ビーストが何よ! もっとかかって来なさいよオラァアア!!」ドカッバキッグシャッ

ウツロイド「じぇるるっ!?」

デンジュモク「デンデンッ!」

襲い来るウツロイドとデンジュモクを触手で薙ぎはらうと、今度はマッシブーンが「俺が相手だ!」と言わんばかりに飛び出してきた!

マッシブーン「ブンブーンッ!」グワッ!

しかし、みさえは臆せずマッシブーンに突進すると、触手のラッシュをかけた!
マッシブーンは両腕で触手をガードするが、みさえの怒涛の連撃の前に手も足も出せず、後退していくばかりだ。

みさえ「そんなでかい図体してるんなら私を止めて見せなさいよ!!」ドドドドド!!

マッシブーン「ブゥゥゥン!」ドッ!

マッシブーンが拳を振り上げ、みさえに右ストレートを繰り出す!
しかし、みさえはそれを躱すと、マッシブーンの下顎にアッパーを繰り出し、腹に抉るようなボディブローを放った! マッシブーンの身体が一直線に岩壁に叩きつけられる!

ドッゴォォォッ!!

みさえ「これでおしまいよっ!」

ゴウッ!
バチチチチッ!!

みさえは Zパワーを 身体に まとった!

みさえが 解き放つ
全力の Zワザ!

オ ー ジ リ ・ ヒ ッ プ ・ バ ー ン !

赤いオーラをまとったみさえは天高く飛翔すると、上空で一回転し、座るような姿勢になると、尻を地面に向けて急降下した!

みさえ「おりゃあああああああっ!!」

ドッゴォォォォッ!!
ビキビキビキッ!!

真紅の隕石と見紛うそれは破壊的な威力を持つヒップドロップとなり、地面に激突した瞬間、みさえを中心に地割れが起き、周囲にいた哀れなビーストを巻き込んだ大爆発が発生した!

プルメリ「うわっ!」

エンニュート「どくっ!?」

プルメリたちはなんとかその場にあった岩に掴んで飛ばされないようにするしかなかった。

みさえ「はぁ……はぁ……」

マッシブーン「」

テッカグヤ「」

アクジキング「」

ウツロイド「じ、じぇるるっぷ……」フラフラ

爆発が収まると、瀕死になったビーストたちが横たわる死屍累々の光景と、身の危険を感じたウツロイドがみさえから離れて逃げ出していた。

プルメリ「」ポカン

プルメリ「……なんというか、しんのすけもそうだったけど、普通の家族じゃないよね」

エンニュート「どくどく……」

ロトム図鑑「ハッハッハッ、どうだビーストども、次は私の番だ! 食らえあくうせつだん!」ダッ

ブンブゥゥゥン!

ドカバキグシャ!

ギャアアアア!

プルメリ「……アンタはそーなると思ってたよ」

更新前に修正。

>>327
冒頭に以下の文追加
ルナアーラ「マヒナペーア!」

・あと、マザービーストの触手の数が8本だったり10本だったりになってますが頭の中で勝手に8本に置き換えてください。

【大大試練編】

ウルトラビースト大量出現事件から1ヶ月後……。

ウルトラビーストの襲撃によって、荒涼とした街並みと化してしまったハウオリシティでは人々はポケモンと供に壊された建物や道路の修復といった地道な復興作業を行ったおかげで、以前の街並みを取り戻しつつあった。

ビーストも一部を除いてこの世界に順応してきたのか、ホールが開かれた当初と比べて獰猛さはなりを潜めていた。それでも、キャプテンやしまキングたちはビーストの動向に目を光らせている。

ハウ「じーちゃーん! 頼まれた角材持ってきたよー」

ハラ「うむ、ではそちらに積んでおいてくれますかな」

ハウ「うんーガオガエン、おねがいー」

ガオガエン「ガオッ」ドスンッ

グズマ「グソクムシャ! そこのガレキにアクアブレイクだ」

グソクムシャ「オオオッ!」ブンッ!

ドゴッ!!
パラパラパラ

ハラ「むおっ!?」

ハラ「これ、グズマ! 壊すにしても加減がありましょうぞ! 破片が周りに当たると危険ですぞ」

グズマ「るせーよ! 手ぬるくブッ壊すのはオレさまの性に合わないんでな」

グズマ「そら、今度はそっちの柱、ブッ壊しな!」

グソクムシャ「ズモォォッ!」ブンッ!

ドゴッ!!

ハラ「こ、これっ……調子に乗っていると自分が痛い目に……」

ヒュウウウ……
ゴンッ!

グズマ「おおっ……! おおおおお!!」ジタバタジタバタ!

したっぱB「グズマさん! 大丈夫ッスカ!?」

ハラ「言わんこっちゃありませんな」

ドラコ「ああ、でかいコブが……」

スッチー「まぁ、大きいコブ。写真に撮ってPoketterに投稿しましょ、スカりん」

スカりん「そうだねスッチー。僕たちも写ろうよ!」

グズマ「オメーらイチャイチャしてねぇで手伝えや!」

ロトム図鑑「ふん、ありきたりの展開だな」

しんのすけ「ほっほーい!」

グズマ「あ? じゃがいも小僧……」

ハウ「おーしんのすけー!」フリフリ

しんのすけ「よ、師匠!」

ドラコ「師匠じゃねぇって言ってるだろ!」

ハラ「しんのすけにみさえさん、体調はいかがですかな?」

みさえ「ええ、エーテル財団の方々のおかげでなんとか」

ハラ「それはなによりですな」

みさえ「差し入れ持ってきたので、よかったらどうぞ」つマラサダ

ハラ「おお! それはありがたいですな。ではハウ、グズマ、休憩にしますかな」

ハウ「わーい! いっしょに食べよーよー」

しんのすけ「やれやれ、付き合ってあげますか」

グズマ「フン……」

ハウ「いやーひと仕事終えたあとのマラサダはサイコーだねー!」モグモグ

ガオガエン「ガオ~」ムシャムシャ

グソクムシャ「ズモォ……」ムシャムシャグソクムシャ

ハラ「人とポケモンが力を合わせ、街を復興させる……。うむ、よき流れですな」

しんのすけ「てゆーか、なんでくさやのおじさんはハラのおじさんと一緒にいるの?」

グズマ「グズマだ! わざと言ってるだろ……」

ハラ「グズマはなにを隠そう、昔このハラの弟子でしてな」

ハウ「ふーん、元スカル団のボスがじーちゃんの弟子……」

ハウ「って、ええーっ! 初耳だよー!」

しんのすけ「なんで弟子やめちゃったの?」

ロトム図鑑「スケスケの下着ドロボーしたからだよ」

グズマ「んなわけねぇだろ! ブタ! 島巡りだとかキャプテンだとかくだらねぇ風習にいちいち拘るのが面倒だったからだよ」

ハウ「なんでー? 島巡りしてたくさんの人とポケモンと出会うのって、楽しいと思うけどなー」

しんのすけ「人生損してますなぁ。人と出会うのは自分を高める経験になりますぞ」

みさえ「偉そうに……。あんたの場合、お姉さん目当てでしょ」

ハラ「グズマ! 相手の良さを認め、さらに上をいくようにせい! 人に!ポケモンにもまれ! 己の赤心みつめるのだ」

ハラ「さっきのガレキの破片がわかりやすいだろう。壊すことばかりに集中し、ガレキの破片がどこへ飛び散るかもわからないままだから、痛い目を見るのだ」

グズマ「なんと言われようと、ブッ壊すのがオレさまのやりかたよぉ!いまだに師匠のつもりかよ? オレ様があんたを見限ったんだ」

しんのすけ「うーん、そんなに壊すのが好きなら解体業でも始めたらいいのに」

みさえ「いいわねぇ。たくさん人に頼られるかもしれないわよ?」

グズマ「るせーよオバサン! 気安くオレさまに指図するんじゃねぇ!」

みさえ「誰がオバサンよ! あ゛あ゛? もういっぺん言うてみい!」グリグリグリ!!

グズマ「いだだだだ! やめろやめろ!!」

ハラ「しんのすけよ、このばか……いやさこのおおばか、預からせてくれぬか」

ハラ「しまキングの名において、この街の復興を手伝わせ、一人前のトレーナーにする! それをもってスカル団の罪を償わせる証とさせてくれ」

しんのすけ「ふつつかものですが、どうぞ」ペコリ

グズマ「お前が勝手に決めてんじゃねーよ……」イテテ

ハラ「わはは。2人ともいろんなところに行くのですな! ポケモンや人に出会うことで、人生は面白くなりますぞ!」

グズマ「クッ……」

グズマ(――師匠)

ハラ「……それにしても、あれから1ヶ月も経つのですな」

みさえ「そうですね。なんだかあっという間な気がしますね。みんな大変な思いをしたというのに」

ハウ「ルザミーネさんの具合はどうなのー?」

みさえ「まだ、なんとも言えないわ……眠っているみたい」

ロトム図鑑「むしろあの毒を喰らって1ヶ月で復帰したしんのすけとお前が異質な気もするぞ」

みさえ「どーゆー意味よ! えっ?」

ハウ「リーリエも大変だろうなーおれも時間ができたら、ルザミーネさんのお見舞いに行こっかなー」

1ヶ月前

エーテルパラダイス 医務室

リーリエ「ウツロイドさんの……毒ですか?」

ザオボー「はい、UB01……ウツロイドには、寄生能力があります。ですが、ウツロイドは寄生した対象を操るわけではありません」

ザオボー「対象の能力を極度に引き上げて、自分の身を守らせるのですよ。そのために、寄生する対象に神経毒を注入するのです」

ひろし「神経毒?」

ひまわり「たい?」

ザオボー「ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう……ということですよ」

グラジオ「母上がビーストに執着したのも、恐らくウルトラホールの実験中に偶然ウツロイドと出くわし、その時受けた毒が原因……とも考えられるな」

ひろし「……しんのすけを操ったのも、その毒と能力を代表が応用したってとこか。ウツロイドではなく、代表の身を守らせるためにしんのすけの自我を逆に抑えてたんだな」

リーリエ「……しんちゃんもみさえさんもウツロイドさんにとりつかれて……神経毒を注入されていましたが、なぜかあさまだけ意識を失ったのでしょう?」

ザオボー「代表が注入された毒の量は2人の比ではありませんからね。心身に影響が出てしまうのも明々白々でしょう」

グラジオ「……母上はウルトラスペースで何度もウツロイドに寄生されてる可能性が高いな」

リーリエ「治療薬はないんですか?」

ザオボー「今のところはありません。ですが、代表がウツロイドをゲットしているおかげで、現在その個体から血清を精製中ですよ」

ひろし「血清はどのくらいで出来るんだ?」

ザオボー「わかりませんねえ。今はしぜんかいふくの特性を持つサニーゴやヒトデマンに、少量の毒を注入して抗体を作らせているのですが、個体によって抗体を作るスピードはまちまちですからね」

ザオボー「……ともかく、あなたのお子さんと奥さんについては、最低でも1ヶ月間ここに入院させて様子を見てみましょう」

グラジオ「オレもできる限り様々な方面へアプローチをかけるつもりだが、ザオボーも早めに頼む」

ザオボー「ええ、ええ、お任せを。必ずや、代表の意識を取り戻してみせましょう」

ザオボー(結局あの後ヒラに戻ってしまいましたが、イチからやり直してもう一度支部長に返り咲くチャンスです。アイシャルリターン、です)

ウィーン

ひろし「ビーストたちの残した爪あとはとてつもなく大きい、か」

リーリエ「かあさま……早く目を覚まして欲しいです」

グラジオ「今は血清が出来るのを待つしかないな……。一応、他にアテが無いとも言えないが……」

ひろし「本当か? どんな?」

グラジオ「それについてはいずれ話す。情報が不確かだからな……もう少し調べておきたいんだ」

グラジオ「リーリエ、後でシークレットラボに来てくれないか。ククイ博士から大事な話があるそうだ」

リーリエ「博士から? わかりました」

ひろし「俺もしんのすけとみさえの見舞いに行くか。リーリエちゃんは代表のところへ行ったらどうだ?」

リーリエ「いえ、わたしもしんちゃんのお見舞いに……。ずっとかあさまに付きっきりでしたから、寂しがっているでしょうし」

ひろし「そっか、ありがとな」

リーリエ「いいえ、わたしも今までしんちゃんに助けてもらいましたから」

グラジオ「じゃ、オレが呼ぶまでの間、待っててくれ」

スタスタ

ひろし「よし、俺たちも行こうぜ」

リーリエ「はい。……でも、やっぱりしんちゃんもみさえさんも不安です。かあさまのように意識が失わないだけ、良い方なのは分かりますが……」

ひろし「心配するなって。しんのすけもみさえも、普段から欲望丸出しだからな。もしもまた変になっちまったら、また靴のニオイを嗅がせてやるまでだ」

リーリエ「本当にあの時はびっくりしちゃいました。靴の臭いで記憶を取り戻して目を覚ますなんて、聞いたことありませんから……」

ひろし「世の中理屈だけじゃないってことさ。時に家族の絆は、不可能を可能にするんだ。リーリエちゃんにも、分かる時が来るって」

リーリエ「そう……ですね!」

ひまわり「たい!」

リーリエ(ただ、やっぱり臭いで解決ってなんだか不潔で釈然としませんが……)

病室

ひろし「入るぜー!」コンコン

リーリエ「お邪魔します」

リーリエ(しんちゃん……容態はどうなのでしょうか……)

期待と不安が入り混じりながら、病室のドアを開ける2人。そこでひろしとリーリエが目撃したものとは……。







ビッケ「はい、しんのすけさん。あ~ん」

しんのすけ「あ~ん♪」パクッ

しんのすけ「ん~おいちーい」デレー

ビッケ「うふふ、それはよかったです」ニコニコ

みさえ「……」ハア

ひろし「し、しんのすけ……」

ひまわり「ケッ!」

リーリエ「……」ビキッ

ビッケ「あら、ひろしさんにリーリエ様……」

しんのすけ「なーに? オラ今忙しいんだけど」ジロッ

ひろし「どこが忙しいんだよ! ビッケさんにあーんしてもらって迷惑かけてんじゃねぇよ! 羨ましいけどさ」

みさえ「あ?」ギロッ

ビッケ「いえいえ、いいんですよ。しんのすけさんには、ビーストのことがありますし……私もこれくらいでよければお役に立てますから」

しんのすけ「そうそう」

ひろし「そうそうじゃないだろ!」

リーリエ「ビッケさん……」ゴゴゴゴ

ビッケ「は、はい?」ビクッ

リーリエ「しんちゃんの面倒を見ていただいてありがとうございます。後はわたしがやるので、どうぞ休んでください」

ビッケ「え? ですが……」

リーリエ「休んでください。後は、わたしが、やりますので」

ビッケ「は、はい!」テクテク

しんのすけ「あーん! ビッケおねいさーん!」

しんのすけ「んもう! なんでビッケおねいさん出て行かせたの!」

リーリエ「出て行かせたの、じゃないです! ビッケさんにもお仕事があるんです! しんちゃんのものじゃありません!」ムスッ

リーリエ「まったくもうっ、しんちゃんはわたしがいなきゃダメなんですから!」

しんのすけ「それ……オラに対する当て馬?」

リーリエ「……当てつけって言いたいんですか? 」

しんのすけ「ふーんだ! だいたい、オラ1人でも妖怪メノクラゲオババとビーストなんてへっちゃらだし。今回はたまたま、お尻の調子が出なかっただけだもん!」

リーリエ「へぇ? そうなんですか。わたしとカザマさんたちがいないと、ずっとしんちゃんはかあさまとビーストさんの息子になっていたんですよ?」

しんのすけ「あーもう! あっち行ってよ!」プイッ

しんのすけ(…………)

しんのすけ「……オラをお助けしてくれてありがと」ボソッ

リーリエ「ふふっ、どういたしまして。わたし、しんちゃんを守るって約束したでしょ? これからも、わたしが守っていきますから――」ナデナデ

ひろし「みさえ、調子はどうだ?」

みさえ「えぇ、あなたとしんのすけのおかげですこぶる良くなったわ」

ひろし「わ、悪かったって……」

みさえ「ところで、リーリエちゃん。ルザミーネさんの体調はどうなの?」

リーリエ「……ええ、まだかあさまは――屋敷でずっと、眠っています」

みさえ「そうなの……」

リーリエ「はい、ですがザオボーさんもビッケさんも、かあさまが捕まえたウツロイドさんの毒から血清を作るみたいで……それで治ると良いのですが」

みさえ「早く目覚めるといいわね」

リーリエ「みさえさんとしんちゃんは、ここに入院してからお身体の体調はいかがですか? なにかおかしなところとかありませんか?」

しんのすけ「オラ、ビッケさんを見ると胸がキュンってなってぇ。こりゃ入院が必要ですなぁ」

ひろし「健康そうでなによりだよ……!」

みさえ「そうね……私もなんともないわ。でも、そのウツロイドっていうポケモンの毒で、私もしんのすけもどうなるかわからないものね」

リーリエ「ひろしさんも、もし2人になにかあったら、すぐにビッケさんとザオボーさんを呼んでくださいね。すぐに対応しますから」

ひろし「おう、ありがとな」

しんのすけ「ま、かーちゃんはなんとなく妖怪メノクラゲオババになってからただでさえ強い凶暴性がもっと増した気がするけどね」

みさえ「なんですってえぇぇっ! どこが凶暴性が増したっていうのよ!」ガバッ!

しんのすけ「ひいいっ! 今まさにそうじゃーん!」ダッ

マチナサァァィ!!
ウワァァァ!!

ひろし「……こうして見ると、本当になにも変わってねぇんだけどなあ」

リーリエ「そうですね。それがかえって怖いのですけれども」

トントン
ウィーン

グラジオ「リーリエ、いるか?」

リーリエ「にいさま?」

しんのすけ「おおっクジラくん!」

グラジオ「すぐにシークレットラボへ来てくれ。ククイ博士が呼んでいる」

リーリエ「わかりました」コクン

リーリエ「じゃあしんちゃん、野原さん、またお見舞いに来ますね」

みさえ「うん、ありがとね」

しんのすけ「次はなんかお土産持ってきてねー」

ウィーン

みさえ「……」

ひろし「どうしたんだ? みさえ」

みさえ「あなた……あのね」

ひろし「ああ」

みさえ「さっきはリーリエちゃんの前で強がっていたんだけれども、本当は……」

ひろし「変なところでもあるのか?」

みさえ「不思議な気分なの。……今はあなたやしんのすけ達がいるから落ち着いていられるけれど……」

みさえ「1人でいると、すぐしんのすけを探したり、あなたに連絡しようとしたり……これがウツロイドの毒なのかしら? 私、なんだか怖いの」

ひろし「……そうか」

――ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう

ひろし(……自我の開放って、こういうことを言うんだな)

ひろし「みさえ、心配するな。今は俺もひまも、シロも、そしてしんのすけだっているんだ。俺も、できる限りお前のそばにいてやるからな」

みさえ「ありがとう、あなた……」ウルッ

ひろし「愛する妻のためなら、なんだってするさ。みさえ……」

しんのすけ「やれやれ、子供はお邪魔ですからどこか行ってますかな」

ひろし「意味知ってて言ってんのかよっ!」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん、暇だからお散歩しに行こーよ」

ロトム図鑑「いいだろう。そろそろパズルゲーに飽きてきたしな」

みさえ「ちょっと、どこへ行くのよ?」

しんのすけ「ビッケおねいさんのとこー」

ひろし「おいおい、さっきリーリエちゃんに迷惑かけるなって言われたばかりだろうが」

しんのすけ「じゃ、そゆことでー」ウィーン

ひろし「お、おいっ、しんのすけ……」

エーテルパラダイス シークレットラボ

グラジオ「連れてきたぞ」

ククイ博士「おぉ、来たね! リーリエ!」

リーリエ「博士。どうなさったのですか?」

ククイ博士「あぁ、実は2人の力を借りたいという人たちがいてね。もうそろそろ、ここにやってくるはずなんだ」

リーリエ「わたしとにいさまの力を……ですか?」

グラジオ「それはどんな人物なんだ……?」

ククイ博士「僕も詳しくは知らない。ただ、国際警察に所属する人物、とだけ聞かされているけれどもね」

リーリエ「こっ、国際警察ですか?!」

グラジオ「……まず間違いなく、ビーストの事に関わることだな」

リーリエ「どうして国際警察の方が、わたしたちの力を?」

ククイ博士「それは本人たちから直接聞くといいだろう。大丈夫、僕がついているから、ワイドガードを使った気分でいればいいよ!」

リーリエ「はぁ……」

コンコンッ!

グラジオ「……さっそく、来たようだな」

???「ククイ博士、入室してもよろしいですか?」

ククイ博士「はい、どうぞ!」

ウィーン!

???「失礼します」

部屋の中に入ってきたのは、紫色の髪を結ったスーツ姿の女性と、くたびれたトレンチコートをスーツの上に羽織った男性だった。

???「……君がリーリエくんとグラジオくんだね? わたしの名は『ハンサム』。所謂、国際警察です。そしてこちらは私のボス……」

???「私は『リラ』と申します。国際警察特務機関「UB」対策本部部長です」

リーリエ「は、初めまして。リーリエです」

リーリエ(リラさん……綺麗な方です)

グラジオ「グラジオだ。今はエーテル財団の代表代理をしている。よろしく頼む」

ハンサム「自己紹介が互いに済んだところで早速だが質問だ、君たちがUB―Parasiteと接触したのは事実だろうか?」

グラジオ「Parasite……ウツロイドのことだな」

リーリエ「かあさまと融合したビーストさんのことをおっしゃっているのなら……」

ハンサム「……!」

リラ「……やはりそうですか」

リラ「ルザミーネが今回引き起こしたUB大量出現事件……。その影響で、今もなお、アローラには多くのビーストが蔓延っています」

ハンサム「もともと望まずしてこの世界に落とされたビーストは、攻撃的になり……その結果、アローラに与えた被害は甚大だ。それは、君たちもよく知っているだろう?」

グラジオ「ああ」

ハンサム「それに加え、ウルトラビーストはこの世界の理を越えた存在。ゆえに通常のボールでは捕らえることはできない。最高の捕獲性能を持つマスターボールでも不可能だ」

リラ「……我々に課せられた任務は3つ」

リラ「1つ目は未知なるUBの生態の調査をすること」

リラ「2つ目はUBを警戒し、その危険から人々を守ること」

リラ「3つ目はUBを保護……もしくは殲滅すること」

リーリエ「殲滅……?」

ハンサム「もしUBがこの世界に仇なす害獣であれば、存在を消すよう上層部から命令を受けているのだ」

リーリエ「そんな……ビーストさんを殺してしまうなんて、ひどいです!」

ククイ博士「僕も同感だね。ビーストも生きる世界が違うとは言え、れっきとしたポケモンだよ。人間の勝手で存在を消す真似をするのはやぶさかではないね」

リラ「もちろん、私もハンサムさんもそのようなことは望んでいない……」

リラ「UBであれ、ひとつの命。保護し、救いたいと考えています」

ハンサム「だがUBの保護……。言い換えると、捕獲は殲滅よりも手が掛かる。我らには戦力もない状態だ」

リラ「長くなってしまいましたし、単刀直入に申し上げます……」

リラ「この事件に深く関わり、UBの知識と対策法を研究しているあなた方に手を貸して欲しいのです」

グラジオ「待て……ならば代表代理のオレに言えばいい話だ。なぜリーリエを巻き込む必要がある」

リーリエ「ほしぐもちゃん……いえ、ルナアーラさんのことですね」

グラジオ&ククイ博士「!」

リラ「……はい」

リラ「ウルトラホールを作り出す力を持つアローラの伝説のポケモン、ルナアーラをゲットしたトレーナーであるリーリエさん。あなたの力が必要不可欠なのです」

ククイ博士「そうか、ルナアーラの力を使ってウルトラホールを作り出し、ビーストをウルトラスペースに帰してやる……ということだね」

リラ「UBを捕獲するためのウルトラボールを量産するにも、コストと時間がかかってしまいます。そのあいだにも、ビーストによる被害が広がってしまいます。ですから、ルナアーラの力を用いて、UBを元の世界へ帰して頂きたいのです」

リーリエ「ほしぐもちゃんの……」

リーリエはウルトラボールを取り出して、中にいるルナアーラを案じるようにボールを見つめた。
ふと、ルザミーネに利用されたコスモッグの光景が蘇ってくる

――ケージの中のコスモッグをまるごと使えば、ウルトラホールもたくさん……。ふふっ、どれだけのビーストちゃんが来るのかしら?

――さぁ、おいでなさい! ビーストちゃん!

リーリエ「……」

リラ「どうかお願いします……。私たちはビーストを救いたい。そのためには、あなたの力が不可欠なのです」

しんのすけ「うんうん、話が弾んでおるようですな」

全員「!?」

ハンサム「ど、どこから声が?!」

リラ「ハンサムさん、あなたの背中です」

ハンサム「ええっ?!」クルッ

ハンサムが後ろを向くと、しんのすけがハンサムの背中を掴んで貼り付いていた!

しんのすけ「よ!」

ククイ博士「しんのすけ……!」

リーリエ「しんちゃん!」

ハンサム「君は一体いつから私の背中に?」

しんのすけ「んっとねー、おじさんとおねいさんが外でアローラの美味しい飯どころの話ししながら部屋の中に入ってくるところからだゾ」

リラ「最初から聞いていた、ということですね……」ハァ

ハンサム(背中に子供がいたことに気がつかないまま話を進めていたとは。国際警察失格だ……)orz

リーリエ「勝手に入ってきたらダメですって!」

しんのすけ「いやぁビッケおねいさんのところへ遊びに行こうと思ったら、新しいおねいさんを見つけちゃいまして。5歳児としてほっとけないでしょ」

グラジオ「オマエのような5歳児がこの世に2人といるか……!」

しんのすけ「ねぇねぇおねいさん。警察なんでしょ? オラ恋泥棒だから逮捕してー」

リラ「困りましたね……ビーストのことも機密情報なのですが」

ククイ博士「大丈夫、しんのすけも今回のビースト事件の中心人物なんだ。リーリエと供にルザミーネをウツロイドから開放し、ビーストの世界から連れ帰ってきたんだ。それに、この子はウルトラビーストの捕獲に成功している」

リラ「なるほど、この子がルザミーネに連れ去られた例の子……ですね」

しんのすけ「どう? オラとデートしたくなった?」

ハンサム「ボス、さすがにこんな小さな子をチームに入れるのはいかがなものかと思うぞ」

リラ「そうですね……腕の立つトレーナーという点では評価はできますけれども」

しんのすけ「うーん、おじさんの声ってなんかとーちゃんと似てるから頭が混乱するゾ」

ハンサム「そういう君も、以前カロスで出会った男と同じ語尾で話すものだからややこしいな」

ロトム図鑑「フッ……久しぶりだな。ハンサム、リラ」

ハンサム「キミは!」

リラ「BRX2……ですか?」

ロトム図鑑「そのコードネームで呼ぶな! 今の私はレオナルド・ロトブリオだ!」

ククイ博士「し、知り合いなのかい?」

ロトム図鑑「当たり前だ。何度も言っただろ。私は国際警察元ハッカー兼サイバーテロ部隊所属だと」

グラジオ「そんなこと、誰が信じるか……」

ハンサム「そうか……アローラにいるという話は聞いていたが、この子のロトム図鑑になっていたとはな」

しんのすけ「図鑑らしいことはひとつもしてないけどもね」

ロトム図鑑「お前がポケモンを登録しないからだろうが!」

リラ「話が脱線しかかっているので元に戻しますね。……リーリエさん、どうか我々のチームに加わって欲しいのです」

リーリエ「……ごめんなさい。考える時間を頂けませんか?」

ハンサム「考える時間と言うと?」

リーリエ「……リラさん、ハンサムさん、あなた方がビーストさんを元の世界に戻したいという気持ちは伝わってきました。わたしも、出来ることなら力になりたいです」

リーリエ「ですがルナアーラさんは、わたしにとって最初に心を通わせたポケモンさんで……家族でもあるんです。トレーナーさん同士のポケモン勝負はともかく、ビーストさんと命がけで戦って、危ない目に遭わせたくないという気持ちもあります」

リーリエ「それに、かあさまのこともあります。今はまだ眠ったままですが……心配ですので、そばにいてあげたいのです」

リラ「家族――ですか」

ハンサム「なるほどな……」

リラ「……わかりました。ではリーリエさん、1ヶ月の時間を与えます。そのあいだに、我々のチームに加わるか否か、じっくりと考えてください」

グラジオ「1ヶ月……。ずいぶん長い時間を与えるんだな」

ハンサム「1ヶ月ではどのみちアローラにいるすべてのビーストを保護するのは不可能だ。それに、リーリエくんがポケモンを家族と思う気持ちは、私もボスも分からんではないのだ。だからこそ、ルナアーラや母親と向き合って真剣に考えてもらいたいのだ」

リラ「そのあいだ、グラジオさん。あなたがその間我々のチームに加わってサポートしていただけませんか?」

グラジオ「ああ、オレもシルヴァディも、ビーストとは戦い慣れている。出来ることなら、ウルトラボールの量産化も検討してみるつもりだ」

リラ「ありがとうございます」ペコリ

リーリエ「ごめんなさい、ワガママを言ってしまって……」

ハンサム「いや、気にしなくていいさ。こういう事態も想定済みだ」

しんのすけ「ねぇオラは? オラ、リラおねいさんといた~い」

ククイ博士「しんのすけ、君にはまだ大大試練が残っているじゃないか。そのためにも、今は安静にしてなきゃダメだろ?」

リラ「そうですね。しんのすけさんが島巡りを終えて、我々の件もひと段落ついたら、改めて会いに行こうと思います」

ハンサム「UBの世界で、キミが体験したことやBRX2の活躍も聞いておきたいしな」

しんのすけ「ハッサムのおじさんは別に来なくていいけど」

ハンサム「むむっ、これは手痛いな……。それとハッサムではなくて、ハンサムだよ」

リラ「私たちは各地のモーテルを中心に行動するつもりです。連絡先を渡しておきますね。何かあれば、こちらから連絡します」

グラジオ「ああ」

しんのすけ「いいなぁ……」

リーリエ「さ、しんちゃん。戻りましょう」

ハンサム「しかしアローラでキミと出会うとは夢にも思わなかったよ。これもひとつの運命というべきか……」

ロトム図鑑「国際警察に戻るつもりはないぞ。あっちではいちいちネットするたびに口うるさく言われるからな」

ロトム図鑑「それに、国際警察のやり方は私のセンスに合わん。正直言ってダサいぜ」

ハンサム「ああ、私たちも戻って来いとは言わない。お前は国際警察とは無関係のポケモンになったんだ。好きに生きるといい」

ロトム図鑑「当たり前田のクラッカー」

ルザミーネの屋敷

リラとハンサムの話を聞いたリーリエは、屋敷の一室で機械に繋がれてベッドに眠るルザミーネのそばにいた。
お見舞いに飾られていた花を取り替えながら、目を閉じて穏やかに眠っているルザミーネを見つめた。

リーリエ「かあさま……わたし、国際警察にチームに入らないかって誘われたんです」

リーリエ「でも、ほしぐもちゃんにビーストを戦わせるのが、わたし、どうしても不安で……迷ってしまって」

リーリエ「かあさまだったら、なんて言いますか?」

「ルザミン的にはー、まずはリラちゃんの携帯番号とメルアドの調査が大事かなーって」

リーリエ「え?」

「せっかく今世紀最強のトレーナーの野原しんのすけくんがいるのに、無視するなんて、ルザミン悲しいもん」

リーリエ「……そこでなにしているんですか? しんちゃん」

しんのすけ「あ、バレた」

リーリエ「はぁ、またついてきたんですね」

しんのすけ「ずっとこっちにいるから暇なもんで」

リーリエ「しんちゃん、ちょっと外で話しませんか?」

しんのすけ「オラ、これからカザマくんたちのトイレニングしなきゃいけないのに」

リーリエ「さっき暇って言ってましたよね?」

しんのすけとリーリエは、屋敷前の広場へ出るとエーテルパラダイスの周りに広がる海の光景を眺めた。
最初に口を開いたのはリーリエだった。

リーリエ「……しんちゃんは、どう思いますか?」

しんのすけ「なにが? ハンサムっていう名前なのに大してハンサムじゃないおじさんのこと?」

リーリエ「そっちじゃないです! 失礼ですよ、もうっ」

リーリエ「国際警察の方と一緒に、アローラにいるビーストさんを元の世界に返すっていう作戦のことですよ」

しんのすけ「ほーほー」

リーリエ「リラさんのお話を聞いて、わたしもほしぐもちゃんも、力を合わせてアローラの人たちを助けることができるかもって思うと、なんだか嬉しかったんです」

リーリエ「……でも、一方でほしぐもちゃんがコスモッグだった頃のことを思い出して、そう思うと危ないことをさせたくないと言うか……複雑な気持ちなんです」

リーリエ「トレーナーとして、ほしぐもちゃんと戦えばいいのか、それとも守るべきか分からないです」

リーリエ「先輩のしんちゃんだったら、もしカザマさんたちとビーストさんを元の世界に帰すために手伝って欲しいとリラさんから頼まれたら、どうなさいますか?」

しんのすけ「オラだったら、まずはリラちゃんとおデートかなぁ、えへへー」

リーリエ「あ、あのですね……そういうことを聞いてるわけじゃないんです」

しんのすけ「ま、ほしぐもちゃんに聞いてみたら?」

リーリエ「ほしぐもちゃんに……ですか?」

しんのすけ「そ、オラもカザマくんたちと遊ぶとき、なにして遊ぶかいつも相談してるし。ま、大体ネネちゃんが強制的にリアルおままごとにするけどね」

リーリエ「クスッ、しんちゃんのようにポケモンさんと話せるわけじゃないんです」

リーリエ「でも、話せなくても、ポケモンさんと心を通わせられるのなら……ほしぐもちゃんの気持ちも、きっとわかりますよね!」

しんのすけ(オラもリラおねいさんと心を通わせたい)

リーリエ「しんちゃん、わたしほしぐもちゃんの気持ちも聞いてみたいと思います。相談に乗ってくれて、ありがとう!」

しんのすけ「困ったらいつでもオラに聞きに来なさい。恋の悩みもナンパ術も不良に絡まれた時の対処法も受け付けますぞ」

リーリエ「はい、頑張ります!」グッ

それから数週間後……。
エーテルパラダイスの職員用病室で野原一家とリーリエが他愛のない世間話をして過ごしていると、ビッケとザオボーが病室に入ってきた。

ビッケ「野原さん、朗報ですよ。ウツロイドの毒に対する血清が出来上がりました」

ひろし「本当か?!」ガタッ

ザオボー「ええ、ヒトデマンやサニーゴを中心に試したのですが、目論見通り抗体が採取できましたので思ったより早く出来上がりました。これを注射すれば、しんのすけさんとみさえさんの毒は綺麗さっぱり中和されるはずです」

しんのすけ「ちゅ、注射?」ビクッ

リーリエ「かあさまも、それで毒が治るのでしょうか?」

ビッケ「……一回での完治は難しいでしょうね。なにせ、ウツロイドの神経毒は、代表のカラダの隅々まで行き渡っていますから。……ですが、これは大きな一歩だと思いますよ」

リーリエ「そうですね……! この調子でいけば、いつかかあさまも元通りになります!」

ザオボー「では、最初に誰が注射を受けますか?」

しんのすけ「オ、オラ遠慮しときます」

みさえ「なに言ってるの。ちゃんと注射受けなさい!」

しんのすけ「かーちゃん先受けなよ。早くいつもの優しいママに戻って欲しいし」

みさえ「あら、嬉しいわ。でもね、ママは先にしんちゃんから治って欲しいなって思うの」

しんのすけ「ホントはかーちゃんが注射受けたくないだけのクセに」

みさえ「いいからさっさと受けんかい!」

リーリエ「しんちゃん、注射が怖い気持ちはわたしもよーく分かります。でも、毒を治さなきゃこの先、大変なことになるかもしれないんですよ? ほら、そばにいてあげますから」ギュッ

しんのすけ「やだやだーっ! どうせ注射されるなら20代前半のナースにされたいのー!」ジタバタ

ザオボー「やれやれ、後がつかえているというのに。これだからお子様は面倒なのですよ」

リーリエ「はあ……どうしたらよいのでしょう?」

ひろし「ま、しゃあねえな。こうするっきゃないか――」

ひろし「あの、ビッケさん」ゴショゴショ

ビッケ「はい? ……ふふ、分かりました」

ビッケ「しんのすけさん」

しんのすけ「な、なに?」

ビッケ「もし注射受けてくださったら、高い高いしてあげますよ♪」ニコニコ

しんのすけ「まじ~? いいの~?」デレデレ

ビッケ「ザオボーさん、今です」ボソッ

ぷっす

――い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ ん ! ! !

そして時間は現在に戻って……。

しんのすけ「あー、あんときはホントに痛い目みたなー」

ハウ「注射ならしょうがないでしょー。ビッケさんに見とれて注射打たれるなんてしんのすけらしいけどー」

みさえ「でも、エーテル財団って本当にすごいわね。ウツロイドの毒の血清をすぐ作れちゃうなんて」

ハラ「アローラのポケモンと人間の力が成せる技……というところですかな」

テクテク

???「よう! しんのすけ! ハウ!」

しんのすけ&ハウ「その声、はかせー?」

ククイ博士「まずは、退院おめでとうだね! 調子はどうだい?」

しんのすけ「たまにおねいさんを見ると胸がキュンとなって、恋の病になっちゃったり」

ククイ博士「調子はばっちりって捉えておくよ。ハウもお疲れ様!」

ハウ「あれからどこに行ってたのー? 研究所の立て直しとかどうするのー?」

ククイ博士「エーテルパラダイスでマーレインやバーネット博士と一緒にウルトラビーストについて話し合っていたのさ。研究所については、リリィタウンに簡易研究所を建てているよ」

ハラ「おお、ククイが帰ってきたということは、いよいよ始めるということですな!」

みさえ「なにをですか?」

しんのすけ「ナマコブシ投げ?」

ククイ博士「大大試練さ!」

しんのすけ&ハウ&グズマ&みさえ「大大試練!?」

ククイ博士「そう、しんのすけもハウも、4つの島の大試練を達成したからね。後はいよいよ、ラナキラマウンテンで総仕上げだ!」

しんのすけ「てゆうか、ハウくんポニ島の大試練たっせーしたの?」

ハウ「うんー! しんのすけが入院してる間に、ポニ島に行ってハプウさんと戦ったのー」

グズマ「オイオイ、こんな状況だっていうのに、大大試練なんてやるつもりかよ」

ククイ博士「こんな状況だからさ、グズマ君!」

ハラ「確かにアローラはウルトラビーストの襲撃で、甚大な被害を出してしまいました。アローラだけではない。そこにいる人々やポケモンの心に、大きな傷をいまだ負っています」

ククイ博士「だからこそ、君たち2人が大大試練を受けて、島巡りチャンピオンになる姿を見せることで、みんなに元気を与えてあげたいんだ!」

ククイ博士「それに、他の地方にもアローラ地方は元気であることをアピールしたい! だから、今回の大大試練は全国ネットでライブ中継も行うつもりだよ!」

みさえ「ら、ライブ中継ですか!?」

ククイ博士「ええ、奥さん。しんのすけくんもハウくんも、全国に映るんですよ!」

しんのすけ「らいぶちゅーけーって? 新手のキス?」

ロトム図鑑「ライブ中継とは、簡単に言えば生放送だな。お前たち2人が、全国に映し出されるのだ」

しんのすけ「おおっ、オラたちテレビに出られるの?! 美人のアナウンサーとか来る?」

ハウ「わー、タレントになったみたいー!」

ククイ博士「テレビというより、ポケチューブによるライブ配信がメインになるかな。でも、インターネットだから世界中のトレーナーが君たちの活躍を見るってことなんだぜ!」

みさえ「すごいじゃない、2人とも!」

ハラ「このハラ、孫がネットに映ってハラハラしますぞ!」

グズマ「はっ、馬鹿らしい……」

みさえ「それで、いつ大大試練は行われるんですか?」

ククイ博士「明日の夕方! 後は君たち次第だよ!」

みさえ「えっ?!」

ハウ「明日ー! はやいー!」

しんのすけ「やれやれ、気の早い人たちですな」

ハウ「うわー今からワクワクしてきたー! ねーガオガエンー!」ウキウキ

ガオガエン「ガオーッ!」ムキムキッ!

ジュナイパー(ボール)『大大試練……思えば長い道のりだったなぁ』

しんのすけ「どんな試練なの?」

ククイ博士「それは秘密さ。君自身の目で確かめて欲しい」

しんのすけ「おケチ!」

グズマ「秘密にするようなもんじゃねぇだろ。各島のしまキングとクィーンに勝ち抜く儀式じゃねぇか」

みさえ「他の地方のポケモンリーグみたいなシステムね」

ククイ博士「それはこれまでの話しさ。なにせ、ハラさんも他のしまキングたちも各々の島を復興するための指揮を取らなきゃいけないからね」

ククイ博士「そのためにこの1ヶ月間、しまキングたちと話し合いをして、今回だけ特別に、新たな試練を用意したんだ」

ハラ「その試練こそ、受けてみてのお楽しみ、ということですな」

ハウ「そっかー。でも、たくさんの試練こなしてーたくさんのポケモンたちと戦ってきたもんねー! どんな試練でもしんのすけとおれの2人ならこなせるよー!」

しんのすけ「おうー頑張れよー」

ハウ「しんのすけもやるのー!」

ククイ博士「ハハハ、それじゃあ2人とも明日に備えて入念に準備を怠らず、ゆっくり休めよ」

しんのすけ「ほーい!」

ハウ「うんー!」

その夜……
リリィタウン仮設住宅にて

ひろし(電話)『いよいよしんのすけとハウくんは大大試練を受けるんだな!』

みさえ「ええ、しかも明日なの」

ひろし『明日か……しんのすけとハウくんの活躍を見に行きてえなあ』

みさえ「それがね、ラナキラマウンテンは4つの島の大試練を受けた子としまキングたちに認められた人以外は入っちゃいけないんですって。普通の人が入るには危険って言うらしいから……」

ひろし『あー、そりゃ仕方ないか。だけど、みさえもスマホを使えば見れるだろ?』

みさえ「ええ、でもメレメレ島の人たちと一緒に、ハラさんの家に集まって2人を応援するらしいから、私そこに行こうと思うの」

ひろし『いいねぇ、俺もそうするかな。それで、しんのすけは今何してるんだ?』

しんのすけ「ワッハッハッハッ! アクションキーック!」ドカッ

ロトム図鑑「ブキッ!」

みさえ「……ぶりぶりざえもん使って、アクション仮面の動画見てるみたい」

ひろし『……そ、そうか。まぁいつも通りで安心したというか、不安というか……』

みさえ「ここまで来たのならきっと大丈夫よ。しんのすけもあの子も、強くなったんだから」

ひろし『そうだな、しんのすけを信じよう』

みさえ「大大試練を達成したら、しんのすけアローラの有名人よ! 私も鼻が高くなるわぁ」

ひろし「……そうだな」

みさえ「どうしたの? なんだか急に声に張りが無くなったみたいだけど」

ひろし『いや、なんでもないんだ……それじゃ、もうすぐうちに着くから』

みさえ「うん、それじゃあね」ガチャッ

ジュナイパー『みんな、明日はいよいよ大大試練だね。今まで島巡りで培ってきたことを、ゼンリョクで出し切ろう!』

ヨワシ『でも、大大試練ってなにをするのかな?』

キテルグマ『名前からして、普通の試練や大試練とは一味違うってことよね』

フェローチェ『みなさんからお聞きになった話をまとめると、誰かと戦うのではないでしょうか?』

ミミッキュ『でも、しまキングたちは来ないって博士は言ってたよね』

ヨワシ『戦うとは限らないんじゃないかな。カキさんやマオさんの試練のように、ものを探したり、間違いを見つけたりするのかも』

キテルグマ『マサオくん、もう少し頭を働かせなさいよ。そんな子供だましな試練を二回もすると思う? それに、全国に放送されるのよ?』

ヨワシ『ご、ごめん……』

しんのすけ「わかった! お笑いの審査!」

ロトム図鑑「あるいはババ抜き」

キテルグマ『あたしの話聞いてなかったのかよ、あんたらは!』

しんのすけ「お笑いならテレビ映えすると思って」

フェローチェ『さすがしん様! ちゃんと自分たちが映されることも考えて予想するなんて!』

キテルグマ『どこがじゃ!』

ジュナイパー『絶対違うと思う』

ミミッキュ『大丈夫、みんな自信を持って』

しんのすけたち「!」

ミミッキュ『どんな試練が来ても、今までのように僕たちが力を合わせていこう。それで、みんなで島巡りチャンピオンになろう!』

ヨワシ『ボーちゃん……』

ミミッキュ『自分と仲間の力を信じれば、なれる!』スッ

ジュナイパー『そうだね! 今まで僕たちはそうやってたくさんの試練を達成してきたんだ。怖いものなんてないよ!』スッ

ボーちゃんの影の手の上に、カザマの翼が乗せられる。

ヨワシ『わかった、ボーちゃん! 僕やってみるよ!』スッ

キテルグマ『ここまで来たら、とことんやりましょ!』スッ

フェローチェ『あいも、しん様を勝利へ導けるのなら、みなさんに力をお貸ししますわ!』スッ

翼の上に次々と手やヒレが乗せられて、最後にしんのすけの手が乗っかる。

しんのすけ「よーし、いつもの奴行くゾ!」

ジュナイパー『アローラ防衛隊ッ!』

全員「『ファイヤーーッ!!』」

その頃、ハウの家では

ハウ「みんな、明日がんばろーねー! ゼンリョク出そーね!」

ハウは寝室の自分のベッドの上で、自分のポケモンが入っているボールたちに向かって呼びかけた。
もちろん、反応はないものの、心なしかどのボールからも気合の入った反応が帰ってきた気がする。
その中でハウは、ひとつのボールを手に取って話しかけた。

ハウ「君も、明日が晴れ舞台だねー。ガオガエンたちと一緒にゼンリョク出し切ろー!」

今日はここまで。
次回の更新は明日の夜です。

じゃ、そゆことで~

【おまけ】

~もししんのすけがカヒリと出会ったら~

しんのすけ「あーミクリに弟子入りしたいなー」

???「ちょっとよろしいですか?」

しんのすけ「お?」

カヒリ「初めまして。あたし、カヒリと言います」

しんのすけ「おおっ! きれいなおねいさん! オラ野原しんのすけ5歳、暇なときはいつも浜辺に打ち上げられたナマコブシごっこしてますぅ」

カヒリ「……失礼ながら、ライチさんの大試練、空から見ていました。ヨワシに群れをまとわせられるトレーナーは中々いないので、驚きましたね」

カヒリ「最初は5歳でカプに選ばれたという話を聞いてうさんくさいと思っていましたが……なるほど、あなたはまだ幼いですが、もっと経験を積めば、間違いなく世界に羽ばたける実力者になれると思います」

しんのすけ「えっ? オラ天狗みたいに羽が生えて宇宙に飛んでっちゃうの?」

カヒリ「そういう意味での羽ばたける、という意味ではありません! 才能があるということです!」

しんのすけ「おねいさんオラを見る目ありますなあ、オラに惚れた?」

カヒリ「はあ……なんか調子、狂いますね」

しんのすけ「ところでカヒリのおねいさんってゴルフやってんの? 背中に5番アイアンしょってるけど」

カヒリ「5番アイアンとは違いますが……そうです。あたしはポケモンとゴルフを極めるため、世界中を巡っています。今はたまたま故郷のアローラに戻ってきたのです」

カヒリ「あなたの親がゴルフをなさっているのですか?」

しんのすけ「まあね、とーちゃんがいつも接待でゴルフやってんの。あとたまにかーちゃんがキャバクラから帰ってきたとーちゃんを5番アイアンでシバいてるの何度か見たから名前覚えちゃった」

カヒリ「そ、そうですか……」

カヒリ「……実はあたし、数年前にこのアローラの島巡りチャンピオンになりました。ですから、あなたの先輩ですね」

しんのすけ「いやぁオラ、おねいさんの後輩になれるなんてこーえーですなあ」

カヒリ「しんのすけくん、島巡り頑張ってください。あたし、次にあなたと会うときはゼンリョクで相手します!」

しんのすけ「オラはおねいさんとゼンリョクでおデートできればそれでぇ」

カヒリ(博士に呼ばれて来たのですが……ライチさんの大試練の時と同じ子とは思えませんね。この態度と気迫の変わり様はなんなのかしら)

カヒリ「では……失礼します」

しんのすけ「ほっほーい! またねー」

【おまけ】

フェローチェ『しん様、お願いがあるのですが……』

しんのすけ「なに?」

フェローチェ『一度、あいの技を見て欲しいの。どれだけしん様のお役に立てられるか、キチンとアピールしたいのですわ』モジモジ

しんのすけ「えぇーめんどくさ」

フェローチェ『そうおっしゃらないで。きっとあいの魅力に気付けますから』ガシッ

キテルグマ『ケッ、よく言うわよ』

フェローチェ『なによ、あなた』キッ

キテルグマ『離してあげなさいよ、しんちゃんが嫌がってるじゃない!』ガシッ!

フェローチェ『あなたには関係なくってよ!』ググッ

ギチギチギチ

しんのすけ「あのオラ真っ二つになっちゃいそうなんですけど!」グググッ

キテルグマ『えっらそうに! だいたい、あたしが先にしんちゃんにゲットされて旅してきたのよ』

フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』

キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』

フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』

キテルグマ『なんですってええ!!』

ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』

ヨワシ『落ち着いてよ~。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』

キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ

しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」

ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』

フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』

フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』

キテルグマ『あんた変よ』

キテルグマ『えっらそうに! だいたい、あたしが先にしんちゃんにゲットされて旅してきたのよ』

フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』

キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』

フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』

キテルグマ『なんですってええ!!』

ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』

ヨワシ『落ち着いてよ~。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』

キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ

しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」

ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』

フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』

フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』

キテルグマ『あんた変よ』

フェローチェ『こうなったら、どっちが好きか、どっちが頼りになるか、しん様に決めてもらいませんこと?』

キテルグマ『望むところよ! しんちゃん!』

しんのすけ「も~なーにー?」

キテルグマ『あたしのほうが好きよね? 頼りになるわよね?!』

しんのすけ「えー?」

フェローチェ『あいですよね?!』

キテルグマ『はっきりさせなさいよ!』

フェローチェ『あなたには答える義務があります!』

しんのすけ「……あのねえ」ジロッ

しんのすけ「オラ、ポケモンには興味ないの。邪魔だからあっち行くかボールに戻って」

フェローチェ『……ッ!』

キテルグマ『白けるなぁ。ああいうのがダメなのよ、しんちゃんは。でも、人間とポケモンじゃあ仕方ないか』

フェローチェ『……かっこいい///』ポッ

キテルグマ『えっ』

フェローチェ『やっぱりしん様は他の方とは違う何かを持っていますわ!ゼッタイにあいの方へ振り向かせてみせますわん!』デレデレ

キテルグマ『……アンタ絶対変よ』

フェローチェ『しん様~!』

ジュナイパー『くそーなんであんな奴があいちゃんに……』

ヨワシ『あいちゃん……僕も助けたのに』ウルウル

ミミッキュ『女心は、難しい』

翌日

ハウオリシティ 船着場

しんのすけとハウはそれぞれ大大試練の為の準備を終えて、港に集まっていると、ククイ博士とウラウラのしまキングクチナシ、そしてアセロラが待っていた。

アセロラ「しんちゃんお久しぶり! 元気そうでなによりだよ!」

しんのすけ「アセロラちゃんもお久しぶりぶりー」

ククイ博士「2人とも……いよいよだね」

ハウ「うんー。緊張して、いっぱいマラサダ食べてきちゃったー」

しんのすけ「なんでおじさんもいるの?」

クチナシ「博士から聞いているだろ? ウラウラ島はラナキラマウンテン、そこで大大試練をすることになってるんだ。カプの村への案内役だよ」

ハラ「ハウ、多くは言わん。ひたすらゼンリョクを出して大大試練に挑むのですぞ!」

みさえ「しんのすけも、頑張って! ママもパパも、みんな応援してるから!」

ハウ「うんー! おれー絶対に島巡りチャンピオンになるからねー!」

しんのすけ「いってきまーす」

クチナシ「じゃ、行こうか。旅は道連れってね」ニヤッ

ウラウラ島 カプの村 ラナキラマウンテン麓

クチナシ「ここがラナキラマウンテンの麓だよ」

しんのすけ「でけー」

アセロラ「あのリフトに乗って登っていくんだよー。でも、アローラでは珍しく寒いから気をつけてね!」

しんのすけ「アセロラちゃんも行ったことあんの?」

アセロラ「キャプテンになるとき、ちょっとね」

アセロラ「アセロラ、しんちゃんもハウくんもどっちも応援してるからねー。エーテルハウスで子供達と見てるから!」

クチナシ「ま……2人ともゼンリョク出していきなってことだ。大大試練でなにがあろうとね」

ハウ「ここまで案内してくれてありがとー!」

しんのすけ「寒いのかーやだなー」

ククイ博士「よーし、それじゃあリフトに乗るよ!」

ラナキラマウンテン 山頂

ハウ「う、うう寒いよー!」ブルブルッ

しんのすけ「やっぱりSSだからあっという間に着いたね」

ハウ「てゆうか、博士は寒くないのー?」

ククイ博士「平気さ! ぼくの心はブラストバーンよりも燃えている!」

しんのすけ「精神論って奴ですな」

ククイ博士「……それにしても、僕たちも随分遠くまで歩いて――ようやくここへ辿り着いたんだね」

そう言うと、ククイ博士はぐるりとラナキラマウンテンの山頂から大地を見下ろす。雪景色の中で、遠くにアローラの海が広がる。よく見れば、他の島やエーテルパラダイスが豆粒のように小さくだが見える。

ククイ博士「思い出さないかい? 君たちが最初にハラさんからポケモンをもらって、旅に出て……」

ククイ博士「4つの島をめぐり、試練と大試練を乗り越え……」

ククイ博士「スカル団と戦い、エーテル財団の闇に立ち向かい、ウルトラビーストにも負けなかった」

ククイ博士「たくさんの試練を経て、僕たちは今、ここにいるんだ!」

しんのすけ「あのっ、はかせのお話よーくわかりました! だから早く行こうよーオラ大大試練前に凍え死んじゃいそう!」ガタガタ

ハウ「お゛、お゛れ゛も゛や゛ばい゛がも゛―!」ガタガタ

しんのすけ「オ、オラもとんしょくになりそう……」

ククイ博士「それを言うなら、凍傷だろ」

ククイ博士「よーし、あそこに中に入れる場所があるんだ。そこで大大試練を行うんだよ」

しんのすけとハウ、続いてククイ博士が目の前にある洞窟の中へと入ると、あちらこちらに輝く鉱石が壁から生えている長い通路を歩いた。

そして、階段を登っていくと、頭上が透明のクリスタルで覆われた広間へとたどり着いた。周りには壁に沿うように放送用の機材が設置されており、クリスタルの向こう側には夕日が広がっている。

ハウ「ここが大大試練を行う場所なのー?」

ククイ博士「ああ、そうだよ!」

しんのすけ「ひろーい。野球とか出来そう。ひょっとして大大試練って野球なの?」

ククイ博士「まさか! それよりしんのすけ、君のぶりぶりざえもんを借りるよ!」

ロトム図鑑「なにをするつもりなのだ?」

ククイ博士「ライブ中継の手伝いだよ。機材と接続して、カメラを回したり、通信を安定させるようサポートして欲しいんだ」

ロトム図鑑「いいだろう。だが、後で収益の半分はよこせよ」

ハウ「博士―、大大試練ってなにをすればいいのー? そろそろ教えてもいいんじゃないー?」

しんのすけ「あまり焦らさないでよ、はかせ」

ククイ博士「ああ、だけどその前に君たちに言っておくことがある」

ククイ博士「まずは、よくここまで来たぜ! 島巡りでの試練、大試練をすべて達成! 本当におめでとう!!」

ハウ「えへへー」

ククイ博士「最後に残るのは! 大大試練挑戦! お楽しみはこれからだ!」

ククイ博士「ラナキラは、島巡りの仕上げをおこなう場所! さらに伝説のポケモンに敬意をこめて、空に一番近いここで執り行われる!」

しんのすけ「伝説のポケモンといえば、ほしぐもちゃんとリーリエちゃんも見てるのかな?」

ククイ博士「もちろん!リーリエには真っ先に放送があるって伝えたからね。彼女も絶対に見ます、と自分のことのように意気込んでたよ!」

ハウ「リーリエもみんな見てるからー、絶対に達成しなきゃねー」

しんのすけ「オラのかわいい姿が全世界に生中継されるなんて……は・ず・か・し・い///」

ハウ「いつもおしりとか出してるのにー恥ずかしいもへったくれもないと思う」

ククイ博士「さぁ、放送が始まる時間だ! ぶりぶりざえもん、準備いいかい?」

ロトム図鑑「準備OKだ。放送スタートだ」

ククイ博士「よーし、たった今から放送が始まったよ。これから、大大試練の内容を伝えるね」

ククイ博士「大大試練の内容――それは」

しんのすけ&ハウ「……」ゴクッ

ククイ博士「君たちがポケモン勝負で戦うこと!」

しんのすけ&ハウ「えっ?!」

ククイ博士「1人だ!」ビシッ

ククイ博士「島巡りチャンピオンになれるのはたった1人だけだ!」

ククイ博士「キャプテンから課せられた試練を越えて、しまキングとクィーンとの戦いを越えて――」

ククイ博士「そして最後には、一緒に困難を切り抜けてきた友も越えて――そこでやっと、君たちのうちどちらかが島巡りチャンピオンになれる!

ククイ博士「ポケモンと試練を乗り越えた強さと、お互いを知り尽くした友との戦いに勝つ心の強さ、その2つの強さを持つものが島巡りチャンピオンになれると、しまキングたちは判断した!」

しんのすけ「ほーほー……」

ククイ博士「君たちは親しい友の敗北を乗り越えるための覚悟は出来ているかい?」

ハウ「……」

ハウ「しんのすけ!」キッ!

しんのすけ「ほい!」

ハウ「おれーしんのすけが相手でも負けないからねー!」

しんのすけ「おおっ、ハウくんすごい気迫」

ハウ「本気の真剣勝負だよー! おれとーポケモンたちのーゼンリョクをぶつけて勝つからね!」ビシッ!

しんのすけ「おーし、オラだって負けないゾ! オラのゼンリョク、受けるがいい!」

ドドドドド!

ククイ博士「うん、2人ともすさまじいきあいためだ! 激しい技のやりとりからうまれるすごいポケモン勝負、期待してるぜ!」

ククイ博士「しんのすけ! ハウ! 島巡りのトリを飾り、新しいチャンピオンを生み出すにふさわしいポケモン勝負をしよう!!」

ククイ博士「それでは、島巡り最後の締めくくり――大大試練、始め!!」

大 大 試 練 開 始 !!

♪~戦闘! チャンピオン~


ポケモントレーナーの ハウが
勝負を しかけてきた!

ハウ「行くよーライチュウ!」ヒョイッ

しんのすけ「ボーちゃん、レッツラゴ!ー」ヒョイッ

ライチュウ「ライラーイッ!」ポンッ!

ミミッキュ『ボーッ!』ポンッ!


同時刻
~メレメレ島 リリィタウン~

イクヨーライチュウ!
ボーチャン、レッツラゴー!

ハラ「むおっ、始まりましたな」

ひろし「まさかしんのすけとハウくんの一騎打ちなんてな……」

みさえ「ハラさんもこの大大試練の内容を考えたんですよね。どういう理由で決めたんですか?」

ハラ「うむ……ハラを断つ思いで決断しましたな」

ハラ「本音を言えば、しんのすけもハウも、心身ともに島巡りを経て強くなりました。このようなことをせずとも、彼らは島巡りチャンピオンになれる資質があります。このハラも、そうさせてあげたかったですな」

ハラ「ですが……2人とも島巡りチャンピオンになれば、いずれ自分の力に溺れ、驕ってしまう。自分たちが勝つこと、負けることの意味を知らずに育っていくでしょうな」

ハラ「この大大試練で敗者はもとより、勝者は親しい者を乗り越えなければいけない覚悟を背負わなければなりません」

ハラ「そしてなにより、勝つことと負けること……それを越えたものを彼らに知ってもらうために、2人に戦ってもうことになりましたな」

ひろし「言うことは正しいが、これはどっちを応援すりゃいいのか分かんねぇな……」

みさえ「私も、複雑な気持ちね……」

ひまわり「たい……」

グズマ「……」

~エーテルパラダイス~

グラジオ「互いの手を知っている仲間同士のポケモン勝負、か。しまキングたちも考えたもんだな」

リーリエ「わたし……しんちゃんとハウさん、どっちを応援すればいいのかわからないです」

グラジオ「……だろうな。その気持ち、わからんでもないが、オレはどちらに肩入れするつもりはない」

グラジオ「オレにはこの大大試練の本質が、ポケモン勝負の勝ち負けとは別のところにあると思う」

リーリエ「勝ち負けとは別、ですか?」

グラジオ「そうだ。2人が勝ち負けを越えたものに早く気付けるか、そこが勝負の分かれ目になるだろう」

グラジオ「……リーリエ。オマエも1人のトレーナーとしてこの戦い、微塵も見逃すなよ。そして、しんのすけとハウが得たものを理解するんだ」

リーリエ「はい! わたしも、しんちゃんとハウさんの戦い、最後まで見届けるつもりですから! 2人とも、勝ち負けを越えたものを見つけられるよう応援します!」

グラジオ(この大大試練は甘さを見せたほうが脱落する。だが、この2人なら……あるいは)

グラジオ(勝ち続けることの意味……それをしんのすけとハウは知ることができるか? オマエたちの行く末、オレが見届ける!)

ハウ(やっぱり来たねーボーちゃん)

しんのすけ「ピカチュウとライチュウ対決、ですな」

ハウ「そりゃー見た目だけだよー」

ハウ「ライチュウ、10まんボルト!」

ライチュウ「ラーイッ! チュウウウッ!!」バチチチッ!!

ミミッキュ『ボーッ!』シューン!!

ライチュウは全身から電撃をボーちゃんに向けて放ち、すぐさまボーちゃんも光の壁を出現させる。
しかし、光の壁を貼り終えるよりも早く、ボーちゃんに10まんボルトが直撃する!

ミミッキュ『ボッ……!』カクンッ

ジュナイパー(ボール)『あのライチュウ、早い!』

しんのすけ「でんじはは使えないの?」

ジュナイパー(ボール)『無理だよ。相手はでんきタイプだから、まひさせる事はできないんだ』

ミミッキュ『でんじはでまひして身動きを封じる作戦は取れない。なら……』

ハウ(たぶんボーちゃんはおにびか、のろいをかけてくるかなー? だけど、させる前に倒させてもらうからねー!)

ハウ「ライチュウ、スパークー!」

ライチュウ『ライラーイッ!』ゴウッ!

ミミッキュ『えいっ!』ボウッ!

ライチュウが電気をまといながら、サーフテールに乗ってボーちゃんに急接近してくると同時に、ボーちゃんも頭上に火の玉を3つ出現させてライチュウに向けて放つ!

ライチュウ『ライライチュウ!』サッサッサッ!!

ミミッキュ『は、はやい!』

襲い来る火の玉に身体を傾けながら避けていくと、ライチュウはボーちゃんに電気をまといながら突進した!

ドンッ!

ミミッキュ『ボ……!』ザザザッ!

ハウ「まだまだー! ほっぺすりすりだよー!」

しんのすけ「ほっぺすりすり……?」

ライチュウ『ラーイッ!』ギュンッ!

サーフテールから飛び降りたライチュウは頬に電気を溜めながらボーちゃんに接近すると、そのまま顔を近づけて擦り寄った。

ライチュウ「ライライチュウ///」スリスリバチバチッ!

ミミッキュ『ボボボボボボ!』ビリビリビリ!!

しんのすけ「頬ずりされてるのにボーちゃんビリビリしてる!」

ミミッキュ『ボ……身体が痺れる……!』バチッ、バチッ

ジュナイパー(ボール)『ボーちゃんがまひになっちゃうなんて……!』

ハウ『そのままもう一度スパークだよー!』

ライチュウ『ラーイッ!』バチチチッ!

再びライチュウはサーフボードに飛び乗ると、電撃をまとって再びボーちゃんへ突撃する!

ミミッキュ『ボ!』ジャキンッ!

すれ違いざま、痺れる身体をこらえて、ボーちゃんは影の鼻水を爪に変形させてライチュウに向けて振り下ろした!

ライチュウ「ライッ……!?」ザクッ!!

ミミッキュ『ボッ……』バチチッ

しんのすけ「ボーちゃん、だいじょぶ?」

ミミッキュ『ボ……あのライチュウ、とても早くて隙が無い。たぶん、僕におにびとかのろいを打たせないために速攻をかけてきてる。光の壁が張れて攻撃出来ただけでも幸い』

しんのすけ「んーどうしよっか」

ミミッキュ『……とっておきの奥の手が、ある』

ジュナイパー(ボール)『奥の手?』

ミミッキュ『うん。でも……その奥の手使ったら、僕も力尽きちゃう。しんちゃん、どうする?』

しんのすけ「……やれやれ、このままボーちゃんが猫死にするのやだし、仕方ないか」

ミミッキュ『わかった。あと、猫死にじゃなくて、犬死にだよ』

しんのすけ「じゃあ奥の手ってバレないようにおにびとかやっちゃおうよ」

ミミッキュ『ボー!』

再び彼の周囲に青白い火の玉が出現する。

ハウ(せめてライチュウをやけどにさせてから退場ってところかなー? ここからが勝負どころだねー。どこまでボーちゃんのサポートを抑えられるか……)

ハウ「一気に決めるよー! ライチュウ! ボルテッカー!」

ライチュウ「ラーイッ……」バチチチチッ!!

唸り声を上げると、激しい電撃が発生してライチュウを覆っていく。やがて、青い球体をまとい周囲の石が浮遊する。

ククイ博士「ボルテッカー……! ライチュウ系統だけが扱える、でんきタイプ最強のワザ! そこまで覚えていたとは!」

ハウ「行けー! ライチュウー!」ビシッ

ライチュウ「ヂュウウウゥッ!!」ゴウッ!!

ライチュウ自身が電気玉と化しながら、地面をえぐりおにびもかき消しながら、ボーちゃんへと突っ込んでいく!

しんのすけ「ボーちゃん!」

ミミッキュ『ボ!』ギンッ

ククイ博士「!」

バチッ!バチッ!バチッ!

時折バチバチと電気を大きく弾けさせ、ライチュウはボーちゃんへと突進し、壁に叩きつけるほどのスピードで跳ね飛ばした!

ドンッ!

ミミッキュ『うっ……』ドサッ

しんのすけ「ボーちゃん! 奥の手使うんじゃなかったの?」

ミミッキュ『……あとは……しんちゃんたちに……任せた』ガクッ

しんのすけ「そんなぁ」

ハウ「やったー! ボーちゃんを倒せたー!」

ライチュウ「ライラーイ!」

しんのすけのパーティーの中で一番の厄介者であるボーちゃんを倒せて喜ぶハウ。しかし、ククイ博士は厳しい目でハウ、そしてミミッキュを見据えていた。

ククイ博士「……果たしてそうかな?」

その言葉が異変の皮切りになった。
突然、ボーちゃんの姿が被っているピカチュウの形をしたボロ布だけになった。
そして、ボーちゃんの本体らしき黒い塊が超光速でライチュウに接近すると、巨大化して覆い尽してしまった!

しんのすけ&ハウ「!?」

ライチュウ「ラ、ライッ!?」

ゴポッゴポポッ!

ライチュウ「ライッ! ライイイッ!」

ハウ「どうしたのー!? ライチュウ!!」

驚愕するしんのすけとハウ。
そして、あぶくが立つような音がひとしきり収まると、黒い塊が動き出して、ボロ袋へ戻っていく。
そして、力尽きてひんしになったライチュウが、地面に転がった。

ライチュウ「」

ハウ「えー! そんなー!」

しんのすけ「ほーほー……」

ククイ博士(みちづれ……ボーちゃんが初めて見せる技だね)

ハウ「うー、ライチュウありがとー! 引き分けでも、ボーちゃんを倒せたもんねー」シュンッ

しんのすけ「ボーちゃん、ハウくんに好かれてますな。あとはみんなにお任せあれ」シュンッ

キテルグマ(ボール)『好かれているんじゃなくて、警戒されてるんでしょ』

ミミッキュ(ボール)『だね』

ジュナイパー(ボール)『ハウさん……敵にすると本当に強い相手だ!』

同時刻 ポニ島

ハプウ「ふむう、相討ちか」

ハプウ「ハウはいい線行っておったな。しんのすけのミミッキュ……ボーちゃんとやらは、攻撃の起点にされるからのう。下手をすればヤツ1匹で勝敗が左右される。スピードと威力にモノを言わせて短期決戦を挑むのは正解とも言える」

ハプウ「だが、みちづれまで読みきれなかったのが失策じゃったな。もっとも、今のしんのすけの反応から見るにあやつも知らなかっただろうが……」

ハプウ「しんのすけたちのポケモンは、次にどんな出方をしてくるかわからない――それがあやつらの恐ろしいところであり、面白いところじゃ」

ハプウ「さぁて、次は何を見せてくれるのかのう。2人とも楽しみじゃ!」

ハウ「しんのすけー! 最初は引き分けだったけれどー、次は負けないからねー!」スッ

しんのすけ「かかってきなさい!」スッ

ハウ「行くよー! ネッコアラ!」ヒョイッ

しんのすけ「ネネちゃん、レッツラゴー!」ヒョイッ

ネッコアラ「グーグー……」ポンッ!

キテルグマ『あたしの出番ね! 行くわよっ!』ポンッ!

ハウ「よーしネッコアラ、かわらわり!」

ネッコアラ「グー……!」ダッ!

ネッコアラは立ち上がると、手に持っているまくら木を抱えて走り出した! ネネも手に持ったピッピ人形を両手で握り締めて身構えた。

ネッコアラ「スピー!」ブンッ!!

バリンッ!
ズンッ!

キテルグマ『――重ッ!』ググッ

光の壁を砕いた一撃が、そのままネネに振り下ろされる。かろうじてネネはピッピ人形で防ぐものの、互いに力の比べ合いが始まった。

ジュナイパー(ボール)『ボーちゃんが張った光の壁が壊されちゃった!』

しんのすけ「寝たまま攻撃するなんて、器用ですな」フムフム

キテルグマ『舐めるんじゃないわよっ! 起きて戦ってみなさいよ!』グググッ!!

ミミッキュ(ボール)『いや、ネッコアラは生まれてから死ぬまで寝てるから無理』

ハウ(このまま押し切るとーまた攻撃を我慢されちゃうかもしれないねー)

ハウ「ネッコアラー! そのままあくびだよー!」

ネッコアラ「ふぁ……」

キテルグマ『うっ!』モアッ!

キテルグマ『気持ちわるいわね! 離れなさいよ!』ブンッ!

ネネはあくびして力を抜いたネッコアラを振りほどいたかと思うと、目の前がぼやけてくらくらしはじめた。

キテルグマ『う……なにこれっ』フラッ

しんのすけ「どした? なんか酔っぱらっちゃったみたいだけど」

ジュナイパー(ボール)『さっきのあくびだ! あくびでネネちゃんが眠りそうになってるんだよ!』

しんのすけ「あくびが移っちゃったのかーよくあるある」

ヨワシ(ボール)『感心してる場合じゃないよー。このままじゃネネちゃん眠っちゃうよ!』

キテルグマ『こんなあくびくらいで、眠ってたまるもんですか!』ギュッ

キテルグマ『おりゃあああっ!!』グワッ!

ハウ「ウッドハンマーで迎え撃とー!」

ネッコアラ「グー……!」ブンッ

ネネは眠気をこらえつつ、ピッピ人形を握ってネッコアラにアームハンマーを繰り出す! ネッコアラもまくら木を抱えて、逆袈裟に振り上げるようにピッピ人形とぶつかり合う!

バチッ!

キテルグマ『うっ!』

しんのすけ「ピッピ人形が飛ばされちゃった!」

ハウ「隙アリー! 押し切っちゃえー!」

ネッコアラ「グゥー!」ブンッ!

ネッコアラのウッドハンマーがネネの頭にヒットする!

キテルグマ『うあっ!』フラッ

ドサッ

キテルグマ『ううっ……』クラッ

キテルグマ『……』zzz

しんのすけ「……倒れちゃったの?」

ククイ博士「いや、あくびの効果で眠ってるから、まだ倒れた扱いになってないよ」

ハウ「ここで一気に決めるー! 我慢を爆発させたらーこっちがやられちゃうしー」

ハウ「ネッコアラ! たたきつける!」

ネッコアラ「スピー……!」ブンッ!

キテルグマ『うあっ!』ドゴォ!

ハウ「続いてこうそくスピンー!」

ネッコアラ「ムニャムニャ」ギュルルン!

まくら木を軸にコマのように回転しながら、ネッコアラはネネに体当たりを繰り返す!

ドコドコドコッ!!

キテルグマ『ううっ! うっ!』

しんのすけ「おわっ、ネネちゃん早く起きてー! ママー朝だぞー! 起きてー!」

ハウ「まだまだー!」

キテルグマ『うぅ……』

ネッコアラに眠らされたネネちゃんは、赤い原野に立っていた。空を見上げると、赤い月が昇っている。

キテルグマ『んっ……ここは?』

ゾワッ!!

キテルグマ『!!』

「へへー……こんなところでなにしてるの?」

突然強い気配がして振り返ると、キテルグマの目の前に、自分と同じくらいの大きさのピッピ人形が立っていた。

キテルグマ『え?』

ピッピ人形「ネネちゃん約束したよね? 必ず1匹は倒して、勝つって」

キテルグマ『え?』

ピッピ人形「へへー♪ あたしに嘘ついたの? ねぇねぇ、嘘ついたの?」

キテルグマ『そ、そんな……ネネ、嘘なんて』

ピッピ人形「さんざんわたしを武器にしてうさ晴らしに使って、挙句の果てには約束を破る。ずいぶんいい身分ね」

じりじり、とピッピ人形が赤い月をバッグに詰め寄ってくる。ネネも後ろへ下がろうとするが、恐怖のあまり足がすくんで動けない。

ピッピ人形「ネネちゃんの武器になって、うさ晴らしの道具になるのが私の存在意義なの。いっぱい私を叩いてくれないと困るの」

ピッピ人形「じゃないと、ネネちゃんのカラダ、乗っ取るから。へへー♪」

キテルグマ『ひ……ひいいっ!』

キテルグマ『いやぁぁぁっ!!』ブゥンッ!

ネッコアラ「スビッ!?」ドゴォッ!!

ネネが悪夢を振り払うように思いっきり薙いだ拳が、ネッコアラにクリーンヒットした! 何度も何度も拳を振り回す。

キテルグマ『来ないで来ないで来ないで!!』ドゴッドゴッドゴッ!!

ネッコアラ「グッ……ズビッ!」

ハウ「あちゃー、眠っててもダメだったかー」

しんのすけ「おおっ、寝てても我慢するなんてネネちゃんやるー!」

ジュナイパー(ボール)『ホントにそうかな? なんか怖がってるように見えるけど』

キテルグマ『ハァハァ……夢、だったの? 今のはなに?』

ジュナイパー(ボール)『ネネちゃん、ぼーっとしてないで! しっかり!』

ハウ「だけど、向こうも相当ダメージを負ってる……。よーし、ここが勝負どころだ!」

ハウ「ネッコアラー! ウッドハンマー!」

ネッコアラ「グゥー……!」グワッ

キテルグマ『ハッ! そうだった! よくわからないけど、ネネ、こいつを倒さなきゃいけないんだっけ!』

まくら木を抱えて迫るネッコアラに対して、ネネもピッピ人形をすぐに拾って構え、攻撃の態勢を取る。

ネッコアラ「スピー……!」ブンッ!

キテルグマ『おりゃああっ!!』ブゥンッ!

居合抜きをするように、互いの得物がそれぞれ相手に向かって振り抜かれていく。
ネネのピッピ人形はネッコアラの脇腹めがけて、ネッコアラのまくら木はネネの脳天めがけて振り下ろされる!

ドゴッ!
ドズムッ!

キテルグマ『うっ……!』クラッ

ネッコアラ「……!」フラッ

しんのすけ&ハウ「!!」

ほぼ同時に、キテルグマの頭にまくら木が、ピッピ人形がネッコアラの脇腹に当たって、両者が地面に倒れこむ……。

キテルグマ「」

ネッコアラ「」

ククイ博士「また、引き分けか……!」

しんのすけ「こういうの、九と三分の一って言うんだっけ」

ハウ「五分五分、だよー」

ジュナイパー(ボール)『ネネちゃん、大丈夫?』

キテルグマ(ボール)『う、うん。なんとか引き分けに持ち込めたけど……さっきの感覚、なんだったのかしら』

ミミッキュ(ボール)『鬼気迫るものが、あった』

フェローチェ(ボール)『しん様、次は誰を出しますの?』

しんのすけ「それじゃーマサオくん、行きますか!」

ヨワシ(ボール)『任せてよ!』

ハウ「シャワーズ! 行っておいでー!」ヒョイッ!

しんのすけ「マサオくん、レッツラゴー!」ヒョイッ!

ヨワシ(群れ)『いつもより派手にぶっぱなしてやるぜ!!』ポンッ!

シャワーズ「シャワワ!」ポンッ!

ハウ「みずポケモン対決だねー。今度は負けないよー!」キッ

しんのすけ「水着のおねいさんがいればもっと画面映えするかもね」

ハウ「こんな時でもそーゆーことしか考えないのー? シャワーズ、アクアリングだよー!」

シャワーズ「シャワッ!」ブクブクッ

ヨワシ(群れ)『なんだァ? あの輪っか』

ハウ(ハプウさんとの大試練とリーリエとの練習で、マサオに大きい攻撃当ててもー群れをバラバラにして避けちゃうことがあるからねー。だったら、確実に群れを減らすやり方で行くよー)

ジュナイパー『マサオくん! シャワーズはみずタイプだ! ハイドロポンプやねっとうを使うより、物理攻撃で攻めるんだ!』

ヨワシ『おうっ、このまま押しつぶしていくぜっ!』

ゴウッ!

マサオが巨体を動かして、シャワーズに突進して攻め込んだ。マサオのとっしんを避けきれず、シャワーズの小さな身体が弾き飛ばされる!

ズズンッ!

シャワーズ「シャワ……ッ!」

ハウ「シャワーズ! どくどくだよー!」

シャワーズ「シャワーッ!!」バシャッ!

ヨワシ『なっ……!』ビシャッ!

シャワーズの口から放たれた紫色の液体がマサオの群れに飛び散った。ヨワシたちの群れに毒が行き渡り、何匹かのヨワシが群れから離れていく。

シャワーズ「シャワワ……」シュウシュウ

しんのすけ「なんか傷が塞がってない?」

フェローチェ(ボール)『あの輪っかがシャワーズの傷を治しているようですわん』

ジュナイパー(ボール)『そうか……! ハウさんは、マサオくんの攻撃を耐えて回復しつつ、どくで確実に体力を奪いに来たんだ!』

ヨワシ『群れをバラバラにして回避されるのを警戒してきやがったな』

ミミッキュ『それだけじゃない。シャワーズは、特性でみずタイプの技を受けると回復するから実質、マサオくんはハイドロポンプもねっとうも使えない』

ヨワシ『マジで俺たちを倒そうとしてるのが伝わって来るぜ』

ヨワシ『その想いに答えてやんなきゃオスがすたるってもんだぜ! なぁしんのすけ!』

しんのすけ「おおっ、男らしい。いつもはへたれてるのに」

ヨワシ『るせーやい! 行くぜい野郎ども! 毒になんか負けんなよ!』

「ヨワーーーッ!」

マサオの号令で群れが一度バラけると、一斉にシャワーズへとなだれ込んだ。ほとんどそれぞれが体当たりするにとどまっているものの、次々とシャワーズにダメージを与えていく。

ドカドカドカッ!!

シャワーズ「シャワッ! シャワワッ!」

ヨワシ『そっちがチマチマ攻めるってんなら、こっちは一気に削りきってやるぜ!』

ククイ博士「うーむ、まさに『ふくろだたき』だね! ちょっと違うけど」

ハウ「シャワーズ、れいとうビーム!」

シャワーズ「シャワーッ!」ズピーッ!

押し寄せてくるヨワシたちに対して、シャワーズがなぎ払うようにれいとうビームを発射した。シャワーズに接近していたヨワシたちが次々と凍らされて地面に落下していく!

ヨワシ『やっべぇ! みんな戻れ!』

れいとうビームを回避しつつ、マサオの呼びかけでヨワシたちが集まって再び群れた姿へと戻った。
しかし、れいとうビームで何匹かヨワシが撃墜されて、サイズが小さくなっている。更に毒によって、ヨワシが数匹ほど離れていく。

ビキビキビキッ!

ハウ(どんどん群れが離れていくねー。でも、まだ油断はできないやー)

ハウ「シャワーズ! シャドーボール!」

シャワーズ「シャワワーッ!!」ドンッ!!

ヨワシ『このっ!』ブシュッ!

シャワーズの口から影の球体が空を切り、マサオに向かって飛んでいく。すぐさまマサオはみずでっぽうで相殺しようとするが、毒でマサオ自身弱ってることもあり、まとっているヨワシの数が少ないため、そのまま押し切られて群れが大きく散らされてしまった。

ドンッ!

ヨワシ『ぐああっ!』

シャワーズ「……」シュウウウッ
さらにその間にも、アクアリングでシャワーズの体力が回復していく。

ジュナイパー(ボール)『厄介な奴だな。ここまで来たら、次の一発で仕留めないと群れが散っちゃうよ!』

ヨワシ『おう……こうなりゃイチかバチかだ! しんのすけ! お前が見たいって言ってたワザ、今見せてやるよ!』

しんのすけ「おおっ、なになに?」

ヨワシ『野郎ども! ビーストと戦った時にやったアレ、やるぜ! あのちっこいのをブッ倒すぞ!』

ヨワシたち「ヨワーーッ!!」ドドドドドッ!!!

すると、再びマサオをまとっていた群れが分離する。今度はふくろたたきをするわけでも、技を回避するために取るわけでもない。

ハウ「マサオの群れが――」

ククイ博士「別のものに変わっていく!」

群れが巨大な魚の姿から、巨大ロボットの上半身へと形を変えていく。やがて、しんのすけの目の前には、慣れ親しんだロボットの姿が出来上がっていた!

しんのすけ「おおっ! カンタム!!」

ヨワシ『前に一度、お前の目を覚まさせるために見せてやったんだぜ。ま、覚えてねぇだろうが』

しんのすけ「いっけーマサオくん! カンタムパーンチッ!!」グッ!

ヨワシ(群れ)『行くぜぃ! うおりゃあっ!!』ドウッ!!

2つの豪腕を象ったヨワシたちがハイドロポンプによる推進力を得て、ロケットパンチの如くシャワーズへと飛んでいく!

ハウ「――!」

すぐさまハウは回避を指示するも、それ以上のスピードでヨワシたちがシャワーズに突っ込んだ。

ドッゴォォォォォォッ!!!

大地を穿つ衝撃波と、爆発するようにヨワシたちがあたりに飛び散る。

しんのすけ「おーっ! マサオくんかっこいー!」ウキウキッ

ハウ「す、すごいー。今の技、なにー?」アゼン

しんのすけ「カンタムロボの必殺技、カンタムパンチだゾ」

ククイ博士(むしろヨワシの覚える技で言うなら、すてみタックルに近いね。それにしても、まさかあんな姿になってロケットパンチを放つとは……!)

霧が晴れると、倒れたシャワーズの姿があらわになり、同時にマサオのぎょぐんが解除された。

シャワーズ「シャ……シャワ」ピクピクッ

ヨワシ(単)『ううっ……もう毒が回って……動けないよぉ』クラッ

同時刻 アーカラ島
コニコシティ

カキ「まさか3回連続で引き分けになるとは……! なんて熱い勝負だ!」

マオ「珍しいこともあるんだね!」

ライチ「それだけ、今のしんのすけとハウの実力は拮抗してるってことだよ。2人は一緒に島巡りしてきたからね。仲も良いし、お互いを知り尽くしているからよ」

スイレン「……」

マオ「どうしたの? スイレン」

スイレン「あっ、その……今のヨワシ……いえ、マサオさんの姿を見て、感動しちゃって」

ライチ「そういえば、あの子はせせらぎの丘でしんのすけにゲットされたんだっけね」

スイレン「はい。ライチさんとの大試練で群れを率いた瞬間が見られなかったのがとても残念ですが……こうして勝負を通して、立派な姿が見られただけでも満足です!」

スイレン(マサオさん……他のヨワシにいじめられていたあなたが、本当に、本当にここまで強くなりましたね。嬉しいです。しんのすけさんも、マサオさんのおやになって導いていただき、ありがとうございます!)

ハウ「3回目も引き分けかー」

しんのすけ「運命の赤い糸的な何かを感じますなー」

ハウ「お互いのポケモンももう2匹しか残ってないんだねー! 勝負に夢中になってたら、あっという間だったよー!」

しんのすけ「アクション仮面とか見てたら、すぐ時間が過ぎちゃうよねー」

ハウ「でも、次のバトルからはもっともっと、楽しくなると思うよー。おれもーこの子を戦わせるのは初めてだからねー」スッ

ハウが手に持ったボールを掲げると、差し込んでいる光がきらりとボールの青いカラーと網目模様を照らした。

ククイ博士「ついに来たか! ハウ!」

しんのすけ「あれって、あいちゃんに入れてるボールと同じだ!」

ジュナイパー(ボール)『まさか!』

ハウ「行くよー! マッシブーン!!」ヒョイッ

マッシブーン「ブンブーンッ!」ポンッ!

筋肉そのものといえる赤い巨躯と、ダイヤモンドより硬くて長い口吻を持つ、異形のポケモンがウルトラボールから繰り出される。

ジュナイパー(ボール)『ハウさんが、ビーストを!?』

しんのすけ「ほーほー……」

マッシブーン「ブーン!」サイドチェスト!

現れたウルトラビースト、マッシブーンは自らの存在をアピールするようにマッスルポーズを決めた。

しんのすけ「どこで捕まえたの?」

ハウ「ナイショー。さーしんのすけもあいちゃんを出しなよー。水対水の次はビースト対ビーストだー!」

しんのすけ「おーうっ!」スッ

しんのすけ「あいちゃん! レッツラゴー!」ヒョイッ!

フェローチェ『お任せくださいませ!』ポンッ!

ジュナイパー(ボール)『あいちゃーん!』

ヨワシ(ボール)『がんばって、あいちゃん!』

キテルグマ(ボール)『ケッ!』

あいとマッシブーンがそれぞれにらみ合う。マッシブーンが筋肉を膨張させて、あいも片足を前に出して構えを取った。

同時刻 エーテルパラダイス

リーリエ「ハウさんがビーストさんをゲットなさっていたなんて……。にいさまは知っていたのですか?」

グラジオ「ああ……。母上が多くのウルトラボールを用いて多くのビーストを捕獲していたのは知っているな?」

リーリエ「はい、実際にカザマさんたちと一緒に、ビーストと戦いました」

グラジオ「そこで捕獲されたビーストたちは、ここで保護して生態の観察や研究することになったんだ。今アローラにいるやせいのビーストたちの保護に役立てるために。そして、いずれは人間とポケモン、ビーストたちが共存できるようにな」

グラジオ「なにより、ポケモンはトレーナーと供にいることで真価を発揮する……だから、おやがいるビーストの観察と研究も兼ねて、ハウに母上が捕獲していたビーストの1体を託したんだ。……さすがにウツロイドやアクジキングのような危険なビーストは渡せないがな」

グラジオ「あいつなら、ビーストもポケモンも隔てなく大事にしてくれるだろうからな。ハウも、ビーストと友達になれるのは嬉しい、と快く了承してくれた」

リーリエ「マッシブーンさんとハウさんが仲良くしている姿、目に浮かびますね」

グラジオ「この対戦は、世界中にも衝撃を与えるだろう。なにせ、アローラに災いをもたらしたビーストたちが、こうして2人のトレーナーが連れて、肩を並べて戦っているんだからな」

リーリエ「ビーストも世界こそ違うけれどポケモン……博士もそう言ってましたね!」

最初に飛び出したのはあいだった。稲妻の如き速さでマッシブーンに近づき、けたぐりを放つ。

フェローチェ『やああっ!』ブンッ!

マッシブーン「……!」バッ!

ドッ!

だが、マッシブーンも攻撃が来るのを予測していたのか、すぐさま胸の前で両腕を交差して、けたぐりを防ぐ!

フェローチェ『はっ!』ダッ!

あいも負けず、素早く背後に回り込むと、背中に向けてもう一度けたぐりを放つ。

ドゴッ!

……だが、一撃で並みのビーストを屠れるほどのあいの蹴りに、マッシブーンはびくともしなかった。

マッシブーン「ブーン……」

フェローチェ『……さすがですわん』

ハウ「マッシブーン! かみなりパンチ!」

マッシブーン「ブーンッ!」バチチチッ!

振り向きざまに、マッシブーンがあいに向けて電気をまとった裏拳を繰り出す! すぐさまあいはマッシブーンから離れるが、白くほっそりとした身体に、電撃が飛び散る!

フェローチェ『うっ! これは厄介ですわね……』

フェローチェ『驚きましたわ! ウルトラスペースにいた方々と違って、とても鍛え上げられていますわん! これがトレーナーに育てられたビーストの力ですか!』

フェローチェ『ですが、わたくしだって同じです! わたくしも、しん様のお役に立つために、この世界でカザマさんたちと一緒に特訓しましたもの!』

フェローチェ『その力、とくとお見せしますわん!』キィィィン

あいは空中で態勢を立て直すと、マッシブーンに向かって両手を伸ばした。すると、青い光が両手の中心に集まり、光線が発射された!

ズピーーーッ

ハウ「マッシブーン、きあいだまーっ!」

マッシブーン「ブゥゥン!」ギュオオッ

あいに対抗するように、マッシブーンは両手を掲げて気合を込めるとと、両手のひらの上に気が集まり、光の玉を形成していく。

マッシブーン「ブンッ!」ゴウッ!

そして、あいの放ったれいとうビームに向けて、きあいだまを投げ放った!
れいとうビームにきあいだまが直撃すると、瞬く間に凍結した。

ビキビキビキッ!
ドォォォンッ!

フェローチェ『行きますわ!』ギュン!

氷の欠片と黒煙を突き破りながら、あいがマッシブーンにとびひざげりを放つ!

マッシブーン「ブゥゥンッ!」ドッ!

マッシブーンは再び両腕でとびひざげりを受け止めると、あいが地面に着地に、今度は前蹴りを繰り出した!

フェローチェ『ふっ! やっ!』ブンブンッ!

マッシブーン「ブゥゥゥン!」ガシッ! ドカッ!

マッシブーンも、あいの猛攻を受け止めるだけでなく、隙を見つけては右ストレートを振り放つ。あいも回避しつつ、押し蹴りで反撃する。

ドカ!バキッ!ドゴッ!グガッ!!

フェローチェ『ふっ! やぁ! たぁ! せい! はぁ!』

マッシブーン「ブンブンブンッ!!」

ドカ!バキッ!ドゴッ!グガッ!!

2匹のビーストによる足と拳による激しい応酬が繰り広げられ、このまま永遠に続くかと思われた。
しかし、あいは一瞬の隙を突き、マッシブーンの腹に前蹴りを打ち込んだ!

フェローチェ『やっ!』

ドゴッ!

マッシブーン「ブンッ……!?」グラッ

フェローチェ『たーっ!』ゴウッ!

さらに、瞬間200km/hで繰り出されるドロップキックがマッシブーンの胸筋を押し出した。巨体を誇るマッシブーンもさすがに堪えたのか、うめき声を上げながら後退した。しかし、再び構えを取ろうとする。

マッシブーン「……」ググッ

しんのすけ「!」

フェローチェ『これで終わり、ですわ!』グッ

地面に着地して、とどめの一撃としてとびひざげりを放つ構えを取る。

しんのすけ「あいちゃん! ストップ!」

フェローチェ「!」ダッ!

しかし、しんのすけの言葉にあいの身体は追いつかず、マッシブーンに向かってまっすぐ飛び出してしまった!
途端に、ハウが勝ち誇った笑みを浮かべた。

ハウ「マッシブーン、カウンター!」

マッシブーン「ブンッ!」ゴウッ!

ゴスッ!

フェローチェ『うぐっ!?』メキィ

ククイ博士「入った! 凄まじいカウンターだ!」

あいのとびひざげりがマッシブーンを屠る直前に、右ストレートがあいの細い胴体に命中した。くの字に曲がって、あいの身体があっさりと吹っ飛んでいく!

キィーーン
ドゴォン!

フェローチェ『うぐっ……』

ヨワシ(ボール)『あ、あいちゃんっ!』

ハウ「ばっちり決まったねー!」

マッシブーン「ブンブーン!」バックダブルバイセップス!!

ハウ「フェローチェってとても素早いからー見切ってカウンターを入れればなんとかなるかなって思ったけど正解だっだねー」

フェローチェ『ううっ……』

ヨワシ(ボール)『あいちゃん、大丈夫?』オロオロ

キテルグマ(ボール)『あんなデカブツの攻撃をまともに食らったら、あいなんて一撃KOに決まってるでしょ』

しんのすけ「ほうほう、デカブツの攻撃でオダブツ、ですな」

ヨワシ(ボール)『ダジャレ言ってる場合じゃないでしょ!』

ミミッキュ(ボール)『相手もかなりタフネス。あいちゃんの攻撃をあれだけ食らっても、まだ平気そう』

フェローチェ『こっちも……まだ行けますわん!』ユラリ

ジュナイパー(ボール)『無茶しちゃダメだ! 僕が代わりに――』

フェローチェ『あの方はカザマさんにとって不利なタイプですわん。それにハウさんの手持ちにはまだポケモンが1匹控えていますもの』

ジュナイパー(ボール)『それは……』

フェローチェ『わたくしが最悪、引き分けまで持ち込んでみせます。あと1回は耐え切れますわん』

ヨワシ(ボール)『でも、あっちにはカウンターがあるんだよ? また当たったら今度こそあいちゃん倒れちゃうよ』

しんのすけ「カウンターが当たらないところから攻撃すりゃいいじゃん。れいとうビームとか」

フェローチェ『さすがしん様! その手がありましたわね。遠距離を中心に攻めていけば、カウンターは仕掛けられませんもの』

しんのすけ「じゃ、あいちゃんおねがーい!」

フェローチェ『がってんですわん!』

あいは後方に下がると、後頭部に生えている髪のように見える翅を小刻みに震えさせた。耳障りな羽音から繰り出される超音波がマッシブーンに襲いかかる!

ジジジジジ!!

マッシブーン「ブブブッ?!」

ハウ「うー、カウンターを警戒してきたかー。でも、おれだってー! ストーンエッジ!」

マッシブーン「ブーンッ!」グワッ!

ドンッ!

マッシブーンはむしのさざめきを耐えながら拳で地面を叩くと、槍のように鋭く尖った岩が飛び出し、あいに向かって次々と伸びていく!

フェローチェ「!」

むしのさざめきを止めると、あいは足に力を溜めて頭上へ跳躍、さらに両手かられいとうビームをマッシブーンに放った。

マッシブーン「ブー……!」ビキビキビキッ!!

今度はきあいだまで相殺できる余裕はなく、れいとうビームを受けて全身が凍りついてしまった。
しかし、氷漬けになったマッシブーンは自ら震えだし、氷にひびが入る。

バリンッ!

マッシブーン「ブーーーンッ!!」ダブルバイセップス!!

ハウ「マッシブーン、いわなだれ!」

氷漬けの状態から自ら脱出すると、マッシブーンはストーンエッジで出来た石の柱を砕き、あいに向けて怒涛の勢いで投げつける。

フェローチェ『……!』シュパパパパ!!

あいは反復横跳びをするように避けつつ、確実にマッシブーンに向けて距離を詰める。そして、顔めがけて上段蹴りを繰り出す!

ドゴッ!

マッシブーン「ブブッ!?」

いわなだれを中断されながらも、再びカウンターの構えを取る。マッシブーン。しかし、
軽やかな身のこなしであいはしんのすけの傍へ戻っていった。

ククイ博士(カウンターを警戒しながらのヒット&アウェイか)

フェローチェ『うっ……』フラッ

マッシブーン『ブーン……』ゼイゼイ

マッシブーンも先ほどのむしのさざめきとれいとうビーム、そしてけたぐりでだいぶ体力が削られた。あいも、カウンターのダメージが響いている。

ククイ博士(両者ともに満身創痍だね。次の攻撃で、決着が付く)

ククイ博士(でもやっぱり――)

ハウ(たぶん、これ以上カウンターだせる機会はなさそうだねー。だったらここで攻めて決めるー!)

ハウ「……マッシブーン! アームハンマー!」

しんのすけたち『「あいちゃん! ファイヤーッ!」』

マッシブーン「……ッ!」ダッ!

フェローチェ『はい! 行きますっ!』

両者が走り出し、急接近する。マッシブーンがアームハンマーをあいめがけて、あいはマッシブーンにとびひざげりを、それぞれ放つ!

マッシブーン「ブーーンッ!」ゴウッ

フェローチェ『はぁっ!』バッ!

ドゴッ!

マッシブーン「……!」

フェローチェ『……!』

あいのひざがマッシブーンの腹にめり込み、腹と背中がくっつきそうなほどに沈んでいく。だが、マッシブーンの大木のような右腕も、あいの腹に叩きつけていた。

マッシブーン「ブ……」フラッ

フェローチェ『しん様……あい、成し遂げましたわ』フラッ

ドサッ!

しんのすけ&ジュナイパーたち「あいちゃん!」

同時刻 ウラウラ島
エーテルハウス

アセロラ「やっぱり引き分けだねー!」

クチナシ「こうなるだろうとは思ってたけどよ」

クチナシ「っていうか、試合見んのにおじさんを巻き込むなよ……」

アセロラ「おじさん一人じゃ寂しいかなって思って! こーゆーのはみんなで見たほうが楽しいでしょ?」

クチナシ「……ま、これを見る価値はあったな。ビーストを連れたトレーナーが、こうして大大試練で戦わせるなんて……すげーもん見ちまった」ニヤッ

アセロラ「お口あんぐりしちゃったよ! だってしんちゃんもハウくんも、ビーストを捕まえてたんだもん」

クチナシ「だが……本番はこれからだね」

アセロラ「うん! まだ2人とも、Zワザを使ってないからね!」

アセロラ「しんちゃんとハウくんのゼンリョク……それでチャンピオンが決まるよ!」

ハウ「マッシブーン、よく頑張ったねー」シュンッ

フェローチェ(ボール)『ふぅ……ポケモン勝負ってこんなに大変なものですのね』

キテルグマ(ボール)『ふーん、よくやったじゃん』

ヨワシ(ボール)『あいちゃん、お疲れ様!』

ミミッキュ(ボール)『お互いに、あと残り1匹。カザマくんと……』

ジュナイパー(ボール)『ガオガエン、だね』

ミミッキュ(ボール)『タイプ相性は悪いけど……大丈夫?』

ジュナイパー(ボール)『わかってる。僕らにはあのZワザがある。それで決着をつける! ……向こうもそれをわかっててZワザを撃ってくるだろうけどね』

ククイ博士「さあ2人とも! ここまで引き分け続きだったけど、泣いても笑っても互いに残り1匹! どちらかがこの場所で立っていた方が島巡りチャンピオンだ!」

ハウ「しんのすけー」

しんのすけ「なにー?」

ハウ「おれーしんのすけと島巡り出来てよかったー! だって、こんなに楽しい勝負が出来るなんて思わなかったからー!」

しんのすけ「いやん、なんだか告白されたみたい。でも、オラもハウくんと島巡りして楽しかったゾ」

ハウ「だから最後はーおれとガオガエンのゼンリョクをしんのすけにぶつけていくねー!」

しんのすけ「じゃーオラもカザマくんと一緒にハウくんにゼンリョクぶつけちゃうねー!」

ハウ「行くよー! ガオガエン!」ヒョイッ!

ガオガエン「ガォォォッ!!」ポンッ!

しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ!

ジュナイパー『しんのすけ! 準備は出来てるか?』ポンッ!

しんのすけ「まっかせなさい!」

対峙するカザマとガオガエン。
唐突にハウが笑顔を浮かべた。

ハウ「ねーねー、しんのすけが初めて戦った時を思い出さない?」

しんのすけ「そーいや、そうですな」

ジュナイパー『うん、そうだね。あの時はオマエ、ろくな命令しか下さなかったんだから……』

――じゃ、カザマくん、オラにおしゃくしてくれたまえー
――指示って、そういう指示じゃなぁぁい!

しんのすけ「オラもまだまだ子供でしたなぁ」

ジュナイパー『今も子供だろっ! 大体、今だって指示出せてないじゃないか!』

ジュナイパー『まったく……ここに来ていい加減なこと言ったら、承知しないからな』

しんのすけ「ほーい!」

ハウ「あの時はおれが勝ったけどー。今度もまたおれが勝つよー!」

しんのすけ「いやいや今回はオラが勝つもんね。おねいさんが懸かってるから!」

しんのすけとハウは、それぞれゼンリョクのポーズをする構えを取った。
同時に、2人の脳裏には島巡りで出会った人達の顔と、たくさん思い出が蘇ってきた。

ククイ博士に連れられて、ハウと出会った。

橋ではコスモッグがオニスズメに襲われて困っているリーリエを見つけた。

最初に選んだポケモンではカザマと出会った。

スカル団からリーリエを守った。

試練でカザマとぶりぶりざえもんと力を合わせて(?)ラッタを倒した。

アーカラでマサオとネネ、あいに出会った。

グラジオと戦い、敗北したものの、勝つことの意味を教えられた。

アセロラの試練でボーちゃんと会った。

スカル団に連れ去られたヤングースを助け出した。

二度目に来たエーテルパラダイスでは、ハウとグラジオ、ひろしたちが力を合わせてリーリエを助けた。

ポニ島では、ナッシーアイランドでリーリエと互いに自分の気持ちを語り合った。

ルザミーネにウルトラスペースへ連れ去られて、アローラのみんなに助けられた。

知恵を絞り、試練を乗り越えた。

友と力を合わせ、しまキングたちに打ち勝った。

そして今、自分たちはここにいる。
この旅で得たもの全てを、ゼンリョクで相手にぶつける。それだけだ。

ハウ「行くよー! しんのすけ!」

しんのすけ「おうっ!」

バッ バッ ブゥゥン バァーン!

ガオガエンは Zパワーを 身体に まとった!

ガオガエンが 解き放つ
全力の Zワザ!

ハ イ パ ー ダ ー ク ク ラ ッ シ ャ ー !

ガオガエン「ガオオオッ!!」

ガオガエンは咆哮を上げると、カザマの周囲の地面が隆起し、炎で出来た特設リングが出現した!

ジュナイパー『あぢぢぢぢっ! しんのすけまだかよ!』メラメラメラ

しんのすけ「もうちょっと待ってー!」

ガオガエン「オオッ!」ドドドド!

リングへ駆けたガオガエンは、そのままコーナーポストに乗ると、へそを中心に炎と闇の力を溜め始めた!

バッ! バッ!
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!

ククイ博士「なんだ? あんなZポーズ、見たことがない!」

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !

カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは光の矢を翼につがえて引き絞った。

ハウ「ゴーゴー! ガオガエンッ!!」バッ!!

闇と炎の力をまとったガオガエンは、コーナーポストから大きく飛び上がりカザマの頭上めがけてダイブしてくる。その様子は黒く燃える火山岩に思える。

一方、カザマも手を離すと、光の矢が先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、ガオガエンに向けて発射される!

キィィィン
ドゥゥゥッ!!

ガオガエン「ガオオオッ!!」

ビームガンとZパワーを纏ったガオガエンがぶつかりあい、周囲に白と黒の閃光と衝撃波が走る!

ククイ博士「うおっ! なんてワザのぶつかり合いだ! ギガインパクトも真っ青だぜ!」

ジュウウッ!

ジュナイパー『うぐっ!』

足元に展開されている炎のリングの熱がカザマに伝わり、足から全身にかけて焼けるような苦痛が走る。それがビームガンの威力を弱めてしまった!

ガオガエン「ガオオオッ!!」ズズズッ

ジュナイパー「!」

ハウ「もうちょっとだよー! 頑張れーガオガエン!」

しんのすけ「おわっ! カザマくん!!」

光に包まれながらも、ガオガエンの巨体が見えた。様子がうかがえるほどに圧されていることに、カザマは更に焦りを覚えた。

ジュナイパー(だ、ダメだ! このままじゃ負けちゃう――!)

ビームガンを放つ手が震えて、どんどん気力が抜けていく。カザマの脳裏に、初めてしんのすけと会った時の記憶が蘇る。

――だーいじょぶだいじょぶ、オラにまっかせなさい

あの時は、本当に島巡りを達成できるのか不安でしょうがなかった。
だけど、新しい仲間と出会い、試練と大試練を達成して、しんのすけとカザマは大きく成長して、自分たちの足でここまでやってきた。
その結末がこれか。

ジュナイパー(くそっ……! ここまで来たのに!)

しんのすけ「カザマくん! 負けるなーーっ!!」

ジュナイパー『!』

しんのすけの応援を皮切りに、次々とボールからマサオたちが飛び出して、カザマに激を送る。

ヨワシ『諦めちゃダメだよ!』

キテルグマ『へたれてんじゃないわよ! ネネたちのエースなんだからもっと気張って!』

ミミッキュ『そのとーり!』

フェローチェ『しん様と一緒にここまで来たのなら、もっとゼンリョク出せるはずですわん!』

ジュナイパー(みんな……)

みんなの激励を聞いた瞬間、カザマは夢から覚めたような感覚になった。同時に、消えかけていた闘志と勝ちたいという意志に再び火が灯った。

ジュナイパー(そうだ、僕らのゼンリョクはこんなものじゃ終わらないはずだ!)

ジュナイパー『おおおおおっ!!』

しんのすけ「アローラ防衛隊、ファイヤーーッ! カザマくん! ファイヤーーーッ!!」

ヨワシ&キテルグマ&ミミッキュ&フェローチェ『ファイヤーーーッ!!』

ジュナイパー『ファイヤーーーーーーーッ!!』ゴウッ!!

再びカザマは赤いオーラを纏い、全身全霊、ゼンリョクをビームガンに込める。すると、ビームガンに勢いが戻り、ガオガエンを押し戻していく!

ゴォォォッ!!

ガオガエン「ガッ……ガオオッ!?」

ハウ「ガオガエンッ!」

威力が高まったビームガンに圧され、とうとうガオガエンはクリスタルの天蓋を突き破り、天空高く飛ばされてしまった。ラナキラマウンテンのてっぺんに、空を貫く勢いで赤い光の柱が立ち昇る。

ドォォォォォン……

ビームガンの光が収まると、ガオガエンが落下し、炎のリングのど真ん中に落下した。同時に、炎のリングも散るように消えてしまった。

ガオガエン「……」

ハウ「……!」

ガオガエン「ガ……ォォッ……」グググッ

ジュナイパー『……ガオガエン』

まだだ……まだ勝負はついちゃいない、ガオガエンはビームガンでボロボロになった身体に鞭を打ち、緑色の瞳でカザマを睨みつける。

ガオガエン「……!」

フラッ

ドサッ

ミミッキュ『……勝った』

キテルグマ『あたしたち、やったのね!』

ジュナイパー『うん! 僕たち勝ったんだ!』

ヨワシ『やったやったー! 勝った勝ったー!!』

フェローチェ『しん様! カザマくん、お見事ですわ!』

しんのすけ「よくやったー! カザマくんはポケモンの中のポケモンだゾ!!」

「せーのっ!」

しんのすけたち『「わーっしょい! わーっしょい!」』

しんのすけたちはカザマを囲むと、一斉にカザマに胴上げをした。カザマは照れながらも笑い返した。

ジュナイパー『ハハッ、みんなのおかげだよ。ありがとう!』

ひろし「やったーっ! しんのすけが勝ったんだーっ!!」

ひろし「みさえっ、島巡りチャンピオンだ! 俺たちのしんのすけが、島巡りチャンピオンになったんだ! それも、最年少だぞっ!」ウルウル

みさえ「うんっ、しんちゃん……! よく頑張ったね……!」ポロポロ

ひまわり「たいーっ!」

ハラ「……あっぱれ、と言う他ありませんな」

グズマ「……マジかよ。あのじゃがいも小僧」

しんのすけたち『「わーっしょい! わーっしょい!」』

ハウ「ううっ……悔しいーっ!!」

しんのすけ「!」ビクッ

ハウが今までにないほどの大声を上げて、びっくりしたしんのすけたちは胴上げをやめてハウを見た。

ジュナイパー『いでっ!!』ドスン!!

ジュナイパー『急にやめるなよ!』

ハウ「ごめんねー! 勝利を味わせられなくって……みんな、ここまで頑張ってきたのにー!」

ガオガエン「……ガオ」

ハウ「おれ、もっと強くなるー! この悔しさ、絶対に忘れないからー!」

ククイ博士「……ハウ」

顔がクシャクシャになるほど、悔しい表情になりながらガオガエンをボールに戻すと、ハウは一度顔を袖で拭って、身体の中の悪いものを取り除くように深呼吸をした。そこには、いつものように明るい笑顔が戻っていた。

ハウ「島巡りチャンピオンおめでとー! スゴイよしんのすけー!」アクシュ

しんのすけ「寝起きのかーちゃんの方がもっとスゴイ顔になるけどね」

ハウ「おれ負けちゃったけどーもっと鍛えて、大大試練また受けるからー。おれが島巡りチャンピオンになったら、また戦ってくれるー?」

しんのすけ「ヒマがあったらね」

ククイ博士「……しんのすけ!」

しんのすけ「お?」

ククイ博士「すばらしい! 以前、僕は言った……。その時、ベストの技を選べるポケモンとトレーナーのコンビが繰りだす技が最強だと。まさにその通りだった!」

ククイ博士「誰もが認める、島巡りチャンピオンの誕生だ! ホクラニ岳のてっぺんで言っただろ? アローラ地方のポケモンもトレーナーもみんな、最高だからね!」

しんのすけ「そうだっけ?」キョトン

ククイ博士「だけどまだまだ、僕は満足できていない! こんなに素晴らしい勝負だったのに、ただネットで生放送するだけなんてもったいない!」

ククイ博士「もっともっと、たくさんの人たちにアローラを知ってもらいたい! 世界に 知ってほしい! だから僕は今ここで世界中に宣言する!」

ククイ博士「最高のトレーナーと最高のポケモンが最強の技を繰り出せる場――アローラポケモンリーグをここに設立するよ!」

ハウ「ホントに作っちゃうんだねー!」

ククイ博士「ああ! キミとしんのすけの戦いを見て、なおさら夢を叶えたくなった! 今の僕の心は、ブラストバーンなんて目じゃないほど燃え盛っている!」メラメラ

しんのすけ「おお、暑苦しい……」

ククイ博士「さあしんのすけ、ハウ。とんぼがえりでメレメレ島に戻ろうぜ! リリィタウンでお祭りだよ! みんな、大大試練をこなしたしんのすけと、ゼンリョクで戦い抜いたハウを祝福してくれるさ!」

しんのすけ「おお、お祭り。今度はちゃんとした屋台置いてあるといいですな」

ハウ「わーい! みんなに大大試練のこと、いっぱい話したいー!」

ロトム図鑑「おい、私を置いてくな!」

ククイ博士「ああ、ごめんごめん! それじゃあ改めて、みんなで戻ろうか!」

メレメレ島 リリィタウン

大大試練を終えたしんのすけたちはラナキラマウンテンを下り、ウラウラ島からメレメレ島に戻り、リリィタウンに向かうと、ひろしたち野原一家、ハラ、グズマ、そして街の人々が島巡りを終えたしんのすけたちを歓待していた。

しんのすけ「ほっほーい! とーちゃんかーちゃーん!」フリフリ

ハウ「じーちゃーん!」フリフリ

ハラ「おお! 2人とも帰ってきましたぞ!」ニッ

みさえ「しんちゃん、島巡り達成おめでとう! よく頑張ったね!」

ひろし「さすが俺の子だ! 大大試練見てて年甲斐もなく泣いちまったよ」

ひまわり「たいたーい!」

しんのすけ「あー疲れた。でもこれで、オラもゆーめー人になっておねいさんにモテモテですな! ワッハッハッハッ」

ハラ「しんのすけ、見事に島巡り達成ですな。太陽と月のように照らし照らされる関係……きみの島巡りにおいてそのような出会いがあり、成長なされたようですな!」

しんのすけ「ここはまだそんなに大きくないけどね」

ひろし「だからそこの話じゃねぇって」

ハラ「ハウ、大大試練……いかがでしたかな?」

ハウ「悔しいけどーしんのすけが島巡りチャンピオンになれたのが嬉しいのー。それにーしんのすけとゼンリョクで戦って、とても楽しかったー! 引っ越してきたのがしんのすけで、おれ、ホントによかったよー!」

ひろし「ああ、ハウくん。君もよく頑張ったよ。しんのすけのポケモンとぶつかりあったお前の姿、かっこよかったよ。いろんな意味で、この戦いはお前の成長につながっていくと思うぜ」

ハラ「うむ、この敗北はハウが強くなるための大きな一歩となりましょうぞ。このハラ、ハウが島巡りを経て成長したことに、感動を覚えますな。オニのハラにも涙、ですぞ」

ハラ「ハウ、あなたは私の誇りですぞ」

ハウ「えへへー、じーちゃん、おじさんーありがとー」

ハラ「互いを尊敬し、力を高め合う。それを大大試練を経て、2人は知ったわけですな。グズマ、大大試練を通して君に感じるものがあったのではないですかな?」

グズマ「ハッ、どうでもいいぜ」

しんのすけ「くさやのおじさんも島巡りすれば?」

グズマ「今更しねえよ、バカバカしい」

しんのすけ「んもぅ、恥ずかしがっちゃダーメっ」

ハウ「ねー」

グズマ「あぁ、うっとおしい奴らだ! 帰るぜ!」スタスタ

しんのすけ「あーあー、行っちゃった」

ハラ「そっとしておいてやってくだされ。ああ見えて、彼なりにしんのすけのことを祝ってやっているのですな」

ハラ「では! アローラ最年少島巡りチャンピオン! その誕生を祝って、みなでとことんまで楽しみますぞ!」

「おおーーうっ!!」

リリィタウンで開かれた、ささやかながら盛大なお祭りが開かれた。
穏やかに照らされる月の下、リリィタウンの人々はしんのすけたちを囲いながら祭りは続いていく。

リーリエ「しんちゃん!」

しんのすけ「おーリーリエちゃん。クジラくん」

リーリエ「島巡りチャンピオン、おめでとうございます! エーテルパラダイスからですが、ちゃんとバッチリ見ていましたよ!」

グラジオ「フッ……ハウも、たいしたものだ」

ハウ「えへへー」

ハラ「本当なら、アローラ中のキャプテン、そしてしまキングたちも祝いのため、来てもらうはずでしたが……」

みさえ「いいえ、こうしてリリィタウンの人たちに祝ってもらえるだけでも充分です」

しんのすけ「なら、ハラのおじさんのハラ太鼓見せてよ」

ハラ「ハラ太鼓ですかな? はっはっはっ、そんなことをすれば、このハラ、攻撃力が上がるより先に体力が切れてしまいますな!」

イリマ「はい! キャプテンのイリマです!」

イリマ「しんのすけくんもハウくんも、大大試練お疲れ様です! 初めて会った時と比べると、めざましい成長を遂げましたね!」

ハウ「へへーイリマさん、ありがとー!」

ハラ「だが、びっくりしましたな。しんのすけがビーストをゲットしていたのは知っましたが、ハウも捕まえていたのはあの映像で初めて知りましたぞ」

イリマ「ビーストは確か普通のボールでは捕獲できませんよね? どうやって捕獲なさったのですか?」

ハウ「エーテル財団からビーストを捕まえられるボールごと借りたのー」

イリマ「なるほど……エーテル財団はポケモンを保護していますから、ビーストに関しても保護活動の一環で専用のボールを作ったのでしょうか? 仕事が早いですね」

イリマ「ビーストをしんのすけくんとハウくんが勝負で出したこと、他の島でも持ち切りになってるんですよ」

ハウ「うんー。どうやって捕まえたのー? とかー、襲ってきたりしないー? とか言われるー」

イリマ「ビーストを捕まえることについては賛否両論ありますからね。新しい共存の形と言う意見もあれば、アローラを襲った敵をポケモンとして扱うなんてとんでもないことだ、という意見もありますから」

しんのすけ「ビーストがオラたちと一緒に旅したいって言うんならいいんじゃない?」

ハラ「向こうがゲットされてそれを望んでいるのなら、こちらも喜んで受け入れますが……」

イリマ「確かにビーストには凶暴なところはありますが、こうしてゲットされてトレーナーと供に戦えるということは、人とポケモン、そしてビーストが共存出来る道もきっとありますよ。いつか僕も、ビーストをゲットしてみたいですね」

ハラ「人とポケモンとビースト……異なる3つが合わされば、アローラにどんな未来がやってくるのか、このハラ、ハラハラしてきますなあ」

しんのすけ「さてーいっちょ、オラがお祭りを盛り上げますかー!」

ハラ「お、なにをして盛り上げるのですかな?」

リーリエ「ケツだけ星人はやめてくださいね」

しんのすけ「ちょっとまってね」ゴソゴソ

しんのすけは持っていたリュックから黄色い衣装らしきものを取り出すと、それに着替えた。
モヒカンのようなとさかに黄色い外殻を手に持ったそれは、エーテルパラダイスで見せたカプ・コケコのコスプレだった。

しんのすけ「カキークケコー!」

ハラ「おお! カプ・コケコの仮装ですかな?」

ハウ「あー! おれもピカチュウのコスプレするねー!」

グラジオ「……嫌なものを思い出させるな」

ハウ「グラジオもールガルガンのコスプレしなよー!」

グラジオ「するか!」

リーリエ(にいさまのコスプレ……ちょっと気になりました……)

今度はコスプレしたしんのすけとハウが土俵に上がって、めちゃくちゃな踊りを踊り始めた。それでも周りの人は盛り上がり、合いの手や笛、太鼓といった楽器の演奏が始まった。

しんのすけ「カノエイコー! コイケユリコー! カキクケコー!」

ハウ「ピッピカピカピ、ピッピカチュー! ピッカァ!(裏声)」

ハラ「わはは、全然声が似てませんぞ、お二人共!」

ククイ博士(ポケモンのコスプレ……なんか近視感あるんだよなあ)

ギュンッ
バチチチッ!

ハウ「!」

ハラ「!」

ククイ博士たち「!」

合いの手も音楽も止まり、しんのすけ以外の全員が土俵に視線を集中させて驚愕の表情を浮かべていた。ただひとり、しんのすけだけきょとんとした表情でみんなを見る。

しんのすけ「どうしたのみんな? 食あたりでもした?」

リーリエ「……しんちゃん、後ろです」

しんのすけ「お?」クルッ

カプ・コケコ「……」

しんのすけの背後、全員が集中させているその場所に、本物のカプ・コケコがしんのすけを見下ろしていた。
そしてカプ・コケコは、不思議な模様で彩られている黄色い殻で、軽くしんのすけを小突いた。

カプ・コケコ「……」

しんのすけ「コケ?」

ハラ「……どうやら、カプ・コケコは、しんのすけ――そしてカザマと戦いたいようですな」

リーリエ「カプ・コケコさんが?」

ハラ「カプ・コケコは大大試練をご覧になっていたようですな。しんのすけとカザマ、ハウとガオガエンの繰り出したゼンリョクのZワザの応酬、それがカプ・コケコの闘争心に火をつけたのでしょうな」

ハラ「しんのすけ、カプ・コケコと戦ってくだされ」

しんのすけ「えー、めんどくさ」

みさえ「しんのすけ!」

ジュナイパー(ボール)『しんのすけ! 戦おうよ! 守り神と戦える機会なんて滅多にないよ!』

カプ・コケコ「カプゥーコッコォー!」

しんのすけ「やれやれ、仕方ありませんな」スッ

ハウは急いで土俵から降りると、代わりにハラが上がり、審判を務めるかのように両者の間に入った。

グラジオ「……こんなことになるとはな」

ククイ博士「ああ、カプ・コケコと戦うなんてね!」

ハウ「うんー」

リーリエ「ハプウさんがしまクイーンになられたときを思い出します。少し、ドキドキしてきました! 守り神カプ・コケコさん……」

しんのすけとカプ・コケコが向き合った瞬間、Zリングを通じ、頭の中に声が響く……。

カプ・コケコ『……イクゾ』

しんのすけ「!」

しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ!

ジュナイパー『カプ・コケコ……ゼンリョクで行きます!』ポンッ!

カプ・コケコ「コッコォォッ!」

バチチッ!

しんのすけ&ジュナイパー「!」

みさえ「な、なにこれっ! 土俵が電気で覆われたわ!」

しんのすけ「なんかピリピリするぅ」

ハラ「カプ・コケコは雷を司る守り神。一度、戦闘に出れば周囲が電気に覆われるのですな!」

カプ・コケコ「カプゥーコッコォォーーッ!!」バリバリバリッ!!

カプ・コケコの全身から稲妻が放たれ、場に広がっている電流の力も借りて威力を増しながらカザマに襲いかかる!

バチバチバチッ!

ジュナイパー『うわっ……くっ!』

ひろし「なんて威力だ……ケタが違う」

ククイ博士「しんのすけ、エレキフィールドになっているときは、でんきタイプの技が1.5倍になるんだ! 気を付けろよ!」

ジュナイパー『こっちも反撃だ!』ドシュドシュッ!!

負けじとカザマもかげぬいで2つの矢羽根を飛ばした! しかし、カプ・コケコは2本の影の矢を素早く躱すと、今度は全身に電気をまとい始めた!

カプ・コケコ「コッコォォーッ!!」ギュンッ!

ジュナイパー『スパークか! くっ……!』スッ

ガキィンッ!

すかさずカザマは翼を逆立ててカプ・コケコのスパークを受け止める。全身に電撃が走り抜くが、決してカザマはカプ・コケコから目を離さず堪える!

ジュナイパー『ぐぅぅっ……! はあっ!』ブンッ!

カプ・コケコ「カプゥッ?!」ザンッ!

ジュナイパー『やぁ! とぉっ! てぇっ! たぁっ!』ブンブンブンブンッ!


反撃とばかりに今度はカザマがリーフブレードでカプ・コケコを追い詰める。しかし……。

カプ・コケコ「カプゥーーッ! コッコォォォッ!」パァッ!

カプ・コケコから放たれた不思議な波動が、カザマに殺到する!

グワァァァン!!

ジュナイパー『ぐぁぁぁぁっ!!』ドサッ

しんのすけ「カザマくん、だいじょぶ?」

ジュナイパー『あ、ああ……だけど、なんて威力の技だ……!』

ハウ「今の技、なにー?」

ククイ博士「あれは恐らく……カプ神のみが使うとされる、しぜんのいかりという技だろう」

イリマ「僕の見立てでは、恐らくジュナイパーの体力は半分を切っているでしょう。メレメレ島の守り神……改めて能力の高さに驚かされます」

カザマが体勢を立て直すと、再びカプ・コケコの声がしんのすけとカザマの頭に響く。

カプ・コケコ『アノZワザデコイ……!』

ジュナイパー『しんのすけ! アクションビームガンだ!』

しんのすけ「ブ・ラジャーッ!」

バッ! バッ!
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!

ハウ「あのZワザだー!」

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !

カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは光の矢を翼につがえて引き絞った。
カザマは手を離すと、光の矢が先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、カプ・コケコに向けて発射される!

ドドドドド!!!!

カプ・コケコ「……!!」バシンッ!

カプ・コケコはビームガンを避けようとせず、外殻を閉じた。ビームガンが直撃し、あたりに閃光と暴風が巻き起こる!

ドッゴォォォォォッ!

ハラ「むおっ! なんという威力ですかな!」

グラジオ(これがリーリエの言っていた、新しいZクリスタルの力か……!)

リリィタウン全てが吹き飛びそうな衝撃波が収まり、しんのすけとカザマの前方には砂煙が舞い上がっていた。

シュウウウ

カプ・コケコ「……」

その砂煙の中から、外殻で身を守ったカプ・コケコの姿が現れた。煤汚れた外殻が2つに割れて、中の顔が露わになると、カプ・コケコは平然としてしんのすけとカザマを見据えていた。

ハウ「うそでしょー!  無傷!?」

ジュナイパー『僕らのゼンリョクが防がれるなんて……!』

しんのすけ「すげー」

カプ・コケコ「カプゥーコッコォー!!」

唖然とする一同を他所にカプ・コケコは雷のような囀りをあげると、赤いオーラをまとい始めた!

しんのすけ「あれってZワザ!?」

ハラ「……まさか!」

ピカッ! ゴウッ!!

カプ・コケコは Zパワーを 身体に まとった!

カプ・コケコが 解き放つ
全力の Zワザ!

ガ ー デ ィ ア ン ・ デ ・ ア ロ ー ラ !

カプ・コケコ「……!!」バシンッ!

ズズンッ!

ひろし「な、なんだ?」

リーリエ「地震ですか……?!」

ビキビキビキッ!!

ハウ「地面からなにかが出てくるー!」

土俵を突き破り、地面がひび割れて中から黄色い光の巨人が現れた。巨人はしんのすけとカザマが見上げるどころか、リリィタウンに建っている家より巨大で、頭部がない。

カプ・コケコ「……!」ガシンッ

殻を閉じたカプ・コケコは首に当たる場所にくっつくと、ちょうど巨人の頭部になった。
そして巨人と一体化したカプ・コケコは、大木を束しにしても足りない太さの腕を振り上げた。

ブゥンッ!

ジュナイパー『うわああああっ!!』

ドシンッッ!!!

カザマは潰されて大きな振動が周囲に広がり、完全に土俵は原型を失った。中には体勢を崩して、転んでしまった人もいる。
巨人が消えると、ノックアウトになったカザマが現れ、カプ・コケコは地面に降り立った。

ジュナイパー「」ピクピク

ひろし「な、なんだったんだ? 今の」

みさえ「しんのすけ! カザマくん! 大丈夫?」

しんのすけ「オラは平気。カザマくんは?」

ジュナイパー『見ればわかるだろっ!』

ククイ博士「ハラさん、今のは……!」

ハラ「うむ」

しんのすけ「ハラのおじさん、今のZワザ?」

ハラ「あれはガーディアン・デ・アローラ。島の守り神のみが扱える、究極のZワザですな。このハラも、若い時に一度、お目にかかったことがあります」

ククイ博士「僕も、名前と伝承で聞いたことがあるぐらいで、実際に見るのは初めてだよ!」

ハウ「すごいー! アローラにはまだまだ知らないZワザがたくさんあるんだねー!」

ハラ「カプ・コケコはしんのすけを一流のトレーナーとして認めたようですぞ。これからも驕らず、精進せよ、と言うことですな」

しんのすけ「ほうほう、闘魂注入みたいなものですな!」

リーリエ「カプ・コケコさんは、島巡りを終えたしんちゃんのことを祝っているのですね!」

カプ・コケコ『……シンノスケトカザマノZワザ、ヨカッタ』

ジュナイパー『あ、ありがとうございます。カプ・コケコ……』

しんのすけ「どういたまして。カプ・コケコくんもすごいZワザ持ってるねえ」

カプ・コケコ『マタ、タタカエルトキガ、タノシミ』

リーリエ「あの……カプ・コケコさん」

リーリエは一歩カプ・コケコに近づいて、ルナアーラの入っているウルトラボールを見せた。

リーリエ「あなたのおかげで、コスモッグはルナアーラなれました。代わってお礼を申します。本当に、ありがとうございます!」

カプ・コケコ「……」

カプ・コケコ『ホシノコノセワ、カンシャスル。アラタメテ、タノンダゾ』

ハラ「カプ・コケコもリーリエに感謝しているようですな。これからも、ルナアーラを大事にしてくだされ」

リーリエ「はい!」

ククイ博士「でも、しんのすけも水臭いぜ! 新しいZワザがあるなら、僕に教えてくれても良かったのに」

ハウ「そうだよー、あんなZワザ、初めて見たー」

しんのすけ「こってり忘れてた」

リーリエ「うっかり、です。そういうわたしも人のこと、言えませんけど……」

ククイ博士「そのZクリスタル、見せてくれよ。君たちの放ったアクションビームガンという技について、もっと知りたいんだ!」

しんのすけ「洗って返してね」

しんのすけのZワザに興味津々なククイ博士とハウ、そしてそのやり取りを笑顔で見つめるリーリエたちを、ひろしとグラジオは眺めていた。……しかし、満足そうなひろしに大して、グラジオの表情には、どこか翳りがあった。

グラジオ「……ひろし、すまないな。あんなことになってしまって」

ひろし「いや、グラジオ君が気にするようなことじゃないさ。それより、今はしんのすけを祝ってやらないとな。そんな辛気臭い顔するなって」

グラジオ(あの3人に……また辛い思いをさせることになるとはな)

ふと、しんのすけは隅っこを見やると、ぶりぶりざえもんがうつむいているのが見えた。しんのすけは祭りを楽しむ人々のもとから離れると、ぶりぶりざえもんのそばに近寄った。

ロトム図鑑「あーあ、結局図鑑は大して埋められなかったか。ビーストのデータも先にマーレインが作っちゃったみたいだし」

しんのすけ「……」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん」

ロトム図鑑「あ?」

しんのすけ「ほい、これあげるよ」つ でかいきんのたま

ロトム図鑑「え?」

しんのすけ「だってぶりぶりざえもん、オラと一緒に島巡りしてくれたし、妖怪メノクラゲオババに捕まってた時も、夢でオラをお助けしてくれたし」

しんのすけ「……それに、またそのうち助けてもらうから」

ロトム図鑑「フン、そこまで言うならもらってやる」

ロトム図鑑(……ありがとよ)

――ぶりぶりざえもんはねー、オラの友達で、救いのヒーローポケモンなんだよ

ロトム図鑑(救いのヒーロー、か。人助けも、悪くないもんだな)

ククイ博士「しんのすけ!」

しんのすけ「お?」

ククイ博士「ご覧よ、みんなが喜んでいるぜ! なんといっても、島巡りを終えたからね!」

ハウ「おれー、もっともっとーイリマさんたちと修行して、本気のじーちゃんに勝ってー!またしんのすけに挑むねー!!」

しんのすけ「がんばってねー」

リーリエ「しんちゃんも頑張るんです! しんちゃんもカザマさんたちも、もっともっと、強くなれるんですから!」

ククイ博士「しんのすけ! キミのパートナーも、みんなにみせてほしい! 島巡りの冒険で、ともに たくさんの発見と体験をしたパートナーを!」

リーリエ「はい、今のしんちゃん、とっても輝いています!」

しんのすけ「おっしゃー! みんな、レッツラゴー!」ヒョイッ

ポンッ!ポンッ! ポンッ! ポンッ!

ジュナイパー『カプ・コケコに認められたけど、まだまだ僕らは強くなれるんだ! しんのすけもみんなも島巡りチャンピオンになっただけじゃ物足りないだろ?』

ヨワシ『うん! もっと強くなって、色んなところを冒険したい!』

キテルグマ『ネネも、島巡りチャンピオンになるだけで満足してないわよ! もっともっと、グローバルに活躍しなきゃ!』

ミミッキュ『ボー!』

フェローチェ『あい、しん様と出会えてとても幸せですわ! こっちの世界に来てよかった!』

ハラ「では、もっともっと祭りを盛り上げましょうぞ!」

しんのすけ「ほっほーい!!」

こうして、島巡りを終えたしんのすけを祝う小さな祭りは、遅くまで続いた。いつまでもいつまでも、みんなと一緒にこの穏やかな幸せが続くと、ひろしとグラジオを除いて誰もがそう思っただろう。


だが、別れの時は、刻一刻としんのすけ達へ近づいていったのだった……。

それからしばらく経ったある日。
エーテルパラダイスのシークレットラボにて、リーリエとグラジオはビッケ、ザオボーとこれからのことを話し合っていた。主にルザミーネの容態と、アローラに残っているビーストの保護についてである。

リーリエ「かあさまの容態は?」

ビッケ「やはり野原さんのように血清のみでの治療法では……。効き目は出ておりますが、もう一息、といったところですね」

リーリエ「そうですか……」

グラジオ「……リーリエ、オマエの耳に入れておきたい話がある。母上の治療についてだ」

リーリエ「え――どんな話ですか?」

グラジオ「カントーにいる、マサキという男を知っているか?」

リーリエ「……マサキさん?」

ザオボー「ソネザキ・マサキ。カントーのポケモン預かりシステムの管理者ですね」

リーリエ「預かりシステムの管理者がどうなさったのですか?」

グラジオ「知らないのか? 10年ほど前、ポケモンを転送する実験の失敗でそのポケモンと合体してしまった話を……」

リーリエ「あっ、思い出しました! 本で読んだことがあります! その後、レッドさんに手伝ってもらって、ポケモンから無事に分離できたとか……」

グラジオ「その融合と分離の技術を、かあさまの神経毒を取り除くのに応用できないか、と思ったんだ」

ビッケ「その手があったとは……盲点でしたね」

リーリエ「なら、わたし……カントーに行ってきます! マサキさんから話しを聞いて、かあさまを助けられる方法を見つけてきます!」

グラジオ「慌てるな。どちらにせよ、捕獲されたウルトラビーストの預かりシステムの管理について話しもしなくちゃいけないからな。アローラに来てもらうようオレからアプローチをかけておく」

ビッケ「捕獲されたビーストは、預かりシステムに認識されませんからね。ウルトラボールは、ビーストを捕まえるために1からボールの構造を変えていますので……」

リーリエ「そうなんですか?」

ザオボー「ええ、ええ、セキュリティの都合上、ビーストはパソコンに預けた方が安全面でも効率的ですからね。放置していい問題じゃないですよ。ビースト独自の預かりシステムを作ってもらう必要がありますねえ」

グラジオ「それに、マサキは生粋のポケモンマニアと聞くからな。おそらくウルトラビーストに興味を示してくれるだろうよ」

リーリエ「みなさん……。なにからなにまで、ありがとうございます」

グラジオ「それに……今は時間が必要だ」

リーリエ「え?」

グラジオ「家族が元通りになるための時間が、な」

リーリエ「……そうですね。家族の絆の強さを、ウルトラスペースで見せつけられました。ひろしさんとみさえさんがいなければ、かあさまとしんちゃんは助けられなかったです。わたしたちも、ああいうふうになれるでしょうか?」

グラジオ「なれるさ。時間はかかるだろうが、その分じっくりと繋がりを深めていけばいい」

グラジオ「まだ……あと1人残っているしな」

ビッケ「モーン博士……ですね」

リーリエ「とうさま……」

グラジオ「ところでザオボー、ウルトラボールの量産化の件についてはどうだ?」

ザオボー「ええ、はっきり申し上げますと、ウルトラボールの量産化は技術面でも資金面でも困難と言わざるを得ませんね……なにせ、今回の事件で信用を失い、多くのスポンサーや企業とのパイプが切れましたか」

ビッケ「ですが、ポケモンの保護活動と被災者への支援を見て、新たに提携を結んだ企業もいます。その方々と協力していけば、ウルトラボールの量産も夢ではありません」

グラジオ「頼む。オレたちが蒔いた種はオレたちの手でどうにかしなきゃいけないからな」

ビッケ「はい」

グラジオ「リーリエ、お前に例の話がある。ザオボーとビッケは、仕事に戻ってくれ」

ザオボー「ええ、了解しました」

ビッケ「かしこまりました」

ザオボーとビッケがシークレットラボを出て行くと、グラジオは改めて周りに誰かいないか確認を取る。
そしてドアを締め切ると、

グラジオ「リーリエ、そろそろリラとハンサムに返事をする準備は出来ているか?」

リーリエ「はい。わたし、ほしぐもちゃんと協力してビーストさんを元の世界に返してあげたいです」

リーリエ「アローラには、数え切れないほどの思い出と、恩があります。ですので、わたしなりに恩返しがしたいです。それに、ほしぐもちゃんと一緒にビーストさんと戦うことで、トレーナーとしての経験を積みたいのです」

グラジオ「フッ……そうか」

グラジオ「だが、さっきマサキの話をした時、カントーに行くとかどうとか言ってなかったか?」

リーリエ「あ、あれはその、言葉の綾というか、たまらず言ってしまって……」アタフタ

グラジオ「……すぐ思い込んだり見切り発車で行動する……オマエの悪いクセだ」

リーリエ「ヌ、ヌルさんを連れていったにいさまに言われたくないですっ」

グラジオ「……そうだな」

リーリエ「それじゃあわたし、博士に、この事をお話ししてこようと思います。しんちゃんとハウさんにも、ビーストさんの事、色々教えてもらいたいですし」

グラジオ「……リーリエ、一つ聞きたい」

リーリエ「え? どうかしたのですか?」

グラジオ「……ひろしとみさえから、何か話を聞いていないか?」

リーリエ「野原さんから? いいえ、何も」

グラジオ「……そうか、なら良いんだ」

リーリエ「????」

ただでさえ、暗そうなグラジオの表情がさらに暗くなっていることに引っかかりながらも、リーリエはラボを出て行って船着場へと向かった。
これからしんのすけたちに、自分がみんなのように一歩踏み出せるのを報告しに行くことに、胸を躍らせていた。

メレメレ島 ハウオリシティ

連絡船の乗船場からポートエリアに出たリーリエは、ふと懐かしさを覚えて周りを見渡した。
建物はちらほら崩れているものが未だにあり、カイリキーやゴーリキー、ハリテヤマが瓦礫を撤去したり、材木を運んでいる。
警察署やポケモンセンターなど、既に建て直された建造物や施設も見受けられ、ハウオリシティに以前の街並みが戻りつつある。

リーリエ(そういえば……島巡りを始めてばかりの時、ここでスカル団の方々から、しんちゃんに助けてもらったんですよね)

――ハァーやれやれ、しょーがないなぁ

リーリエ(あの時は守られっぱなしでしたけど、今度はわたしとほしぐもちゃんが、しんちゃんを守ります。それでしんちゃんを連れて、旅に出るのです!)ムフー

ハウ「あれーリーリエ? そんなところでどうしたのー?」

リーリエ「あ、ハウさん。アローラ」

ハウ「アローラ。今日はどうしたのー?」

リーリエ「今日は博士に用事があって……。それに、ハウさんとしんちゃんにも、ビーストさんについてお聞きしたいことがあってこちらに来ました」

ハウ「いいよー。おれもーしんのすけと博士に、イリマさんから貰ったマラサダ分けようかなって思ってたんだー。リーリエもおひとつどうー?」

リーリエ「ありがとうございます。後で頂きますね! では、しんちゃんと博士を探しましょう」

ハウ「じゃあ最初におじさんたちのいる所に行こー!」

リーリエ「はい!」

リーリエとハウは、ハウオリシティと2番道路の境目にある仮設住宅へ足を運び、しんのすけたちのいる家へと向かった。

ハウ「しんのすけーいるー?」ピンポーン

リーリエ「……返事が無いですね。留守でしょうか?」

ハウ「珍しいねー。いつも誰かいるはずなんだけどなー」

リーリエ「仕方ありませんね。では、ククイ博士のところへ向かいましょうか」

ハウ「だねー」

リリィタウン

リーリエとハウは、テッカグヤによって破壊された研究所の代わりに建てられた簡易研究所へと向かった。
その道中、広場でハラと何か話しあっているククイ博士と、しんのすけたち野原一家がいた。

みさえ「色々、ありがとうございました」ペコリ

ハラ「こちらこそ。アローラを救っていただき、メレメレを代表してお礼を申し上げます」

ハウ「あー! 2人ともいたいたー!」

しんのすけ「よ、ハウくん、リーリエちゃん」

ククイ博士「おや? ハウにリーリエじゃないか。来てくれて、ちょうどよかったぜ」

ハウ「こっちもーリーリエが博士としんのすけに用事があるんだってー」

リーリエ「ちょうどよかった、とはどういうことですか?」

ククイ博士「ああ、そうだな……しんのすけ、君から話すかい?」

しんのすけ「どっちでもいいよー」

ククイ博士「あ、あのな……大事な話だろ?」

ハウ「大事な話ー? しんのすけ、どうしたのー?」

しんのすけ「んーっとね……」

しんのすけ「オラたち、カスカベに帰ることになりました!」

リーリエ「!?」

ハウ「へーそうなんだー……」

ハウ「って、え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーーーーーっ!?」


【大大試練編 おしまい】

今日はここまで。
次回の更新は明日の夜。いよいよ最後の更新となります!

じゃ、そゆことで~

【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「アローラ防衛隊」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。

あ、ちなみに私が描いたイラストは好きに加工、転載してくれて構わないです。もちろん自己責任ですが……。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira140499.jpg

【おまけ その2】

【おまけ その2】

しんのすけ「ほーら、月刊メレメレを飾っているイリマくんの生写真ですよ〜」

ひまわり「うひゃ〜! きゃきゃきゃ♪」

グラジオ「……ずいぶん変わった妹だな」

ひまわり「!!」

ひまわり「きゃ~っ! とっとていたいや~!」

しんのすけ「ほうほう、ひまはクジラくんにも興味おありのようですな。抱っこしてみる?」

グラジオ「いや、オレは……」

しんのすけ「いいからいいから、ほい」

グラジオ「お、おい……!」

ひまわり「きゃーっ! いひひひ!」デレデレ

グラジオ「確かに……しんのすけの妹だな」

グラジオ(……しんのすけの妹、か)

――にーさま! にーさま! えへへ!
――ただ……にいさまがヌルさんとエーテルパラダイスを出た後、かあさま、大変だったのですよ!ビッケさんがいてくれなかったら……

グラジオ「……」

グラジオ「……しんのすけ」

しんのすけ「お?」

グラジオ「あまり妹を心配させるようなこと、するなよ。兄なら、妹のそばにいて守ってやれ」

しんのすけ「いきなりどしたの?」

しんのすけ「ま、クジラくんに言われるまでもないゾ。オラはひまの素敵なお兄様ですから」

グラジオ「フッ……お前なら、心配いらないか」

ひまわり「うひゃひゃ~♪」

【おまけ その3】
ある国際警察の日記

「4月18日 ここはカスカベ地方の……。爆破されたサイ……ロ組織バネ……め基地に残さ……スーパー……ーから、電子生……の……滓を……ベージ」

「…月…日 デー……の存在……る……を……現実世界に……す計画を……案。人工の……ディを……作するが……同……できず……敗。電化製……と同化できる……トムに注目」

「…月6日 ついに計画が……れた。……トムの……と……の……を同化。大……博士の指揮のもと……れた実験は大成……。明確な意志……知能を……生まれ変わった。ただし、元々のデー……の損傷が……ためか、電子……の記憶は……い」

「…月23日 ……ムとして生まれ変わった……は……ロ……の能力に加え……元来持って……た……コンピュー……と人体への……グ能力を有している……。上層部は……をBR……2というコード……ムを与え、サイバー……ハッ……部隊に配置。今後の……躍に期待」

「9月1日 あのポケモンは駄目だ……セコくて強欲過ぎて私の手には負えない!」

更新前に修正

>>480
リーリエ「あなたのおかげで、コスモッグはルナアーラになれました。代わってお礼を申します。本当に、ありがとうございます!」

>>487
ザオボー「ええ、はっきり申し上げますと、ウルトラボールの量産化は技術面でも資金面でも困難と言わざるを得ませんね……なにせ、今回の事件で信用を失い、多くのスポンサーや企業とのパイプが切れましたから」

【エピローグ】

ハウ「か、帰るって引っ越すってことー? なんでー?!!」

しんのすけ「主にとーちゃんの甲斐性のせい」

ひろし「うるせーよ!  間違っちゃいないけどさ……」

リーリエ「ひょっとして、お仕事の都合……なんですか?」

ひろし「ああ……カスカベ地方にいた頃に勤めてた会社から、カスカベ地方に戻るように言われたんだ」

リーリエ「転勤……」

――……なにせ、今回の事件で信用を失い、多くのスポンサーや企業とのパイプが切れましたから

リーリエ(……その中に、ひろしさんの会社も、入っていたのですね)

しんのすけ「インドぞうさんがかゆくなることじゃないゾ」

ひろし「それはいんきんだろ!」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ「」

ひろし「」

みさえ「2人とも女の子の前でそんなこと言うなっつーの!」

リーリエ「……いつ、アローラを発つんですか?」

みさえ「今月いっぱい、ね」

ハウ「今月いっぱいって……もう1週間もないよー! まだしんのすけがアローラに来て3ヶ月くらいしか経っていないのに……こんなのってないよー!」ウルッ

ひろし「……ごめんな、2人とも。せっかくしんのすけと一緒に島巡りして友達になってくれたのに」

ハラ「ハウ……時には、どうしようもないこともあるのです。野原さんたちの気持ち、わかってくだされ」

ハウ「う……うう……」ポタポタ

ククイ博士「だからさ、短い間だけどしんのすけたちと一緒に楽しい思い出、作ってあげようぜ! な、ハウ、リーリエ」

リーリエ「……そう、ですね」

リーリエ「しんちゃん、よかったですね。また向こうのお友達に会えるんですよ? カスカベ地方に戻るの、楽しみじゃないですか?」

しんのすけ「まあね、そろそろカスカベ防衛隊もどうなってるか、隊長として抜き打ちテストしなくちゃ」

リーリエ「ふふ……さ、ハウさん。わたしたちがしんちゃんに出来ること、考えましょう。このまま泣いてたって、何も始まりませんよ?」

ハウ「……うん」グスン

しんのすけ「ま、オラのためにたくさんの思い出、作って欲しいですな!」

ひろし「偉そうに言うなっつーの!」

ククイ博士「そうだ! 送別会をやろうよ! この間のお祭りの時は他の島のしまキングやキャプテンたちは来れなかったれども、もう一度誘って、エーテルパラダイスでしたようにみんなで集まって、野原さんたちを見送ろうよ!」

リーリエ「まぁ! いい提案です! ね、ハウさん。またあの時のようにみなさんを集めて、楽しく盛り上がって、しんちゃんたちを見送りましょう!」

ハウ「うー……」

ハラ「ほうほう、では私とハウの家で開くのがちょうど良いでしょうな。野原さん、送別会に是非出てくれませんかな?」

みさえ「ええ、喜んで!」

しんのすけ「わーい! パーティーだー!」

ククイ博士「それじゃ早速、他のしまキングたちに呼びかけてみるよ!」

リーリエ「わたしも、アセロラさんやハプウさんに声を掛けてみますね!」

ハウ「おれもなんかできないか、考えてみるねー」

ひろし「ああ、楽しみにしてるぜ!」

リーリエ「……」

しんのすけ「……」

その夜、エーテルパラダイスにて。

ハプウ『ほへえ……そうかしんのすけの奴、カスカベ地方に帰るのか。残念じゃのう、アローラで鍛え続けていれば、いずれはしまキングに負けない実力者になれたじゃろうに』

リーリエ「それで……ハプウさんは送別会に来ていただけますか?」

ハプウ『もちろんじゃ! しんのすけが島巡りを終えた後の祭りには参加できんかったが、送別会にはバンバドロと供に必ず出るぞ!』

リーリエ「ありがとうございます! しんちゃんも、きっと喜ぶと思います!」

ハプウ『しんのすけも、わしの友達じゃからな。これからアローラを去る友に、きちんと別れを告げねばのう』

ハプウ『ではな、しんのすけによろしく伝えておいてくれ』

リーリエ「はい! では失礼しますね」

ハプウからの連絡を切ると、リーリエはひと息ついて、夜風に当たるために屋敷の外に出た。

リーリエ(アセロラさんも来てくれるみたいですし……きっと、送別会も楽しくなりますよね)

リーリエ(……しんちゃん)

しんのすけの口から、カスカベ地方に帰ることになったと聞いた瞬間、リーリエの心にぽっかりと穴が開いた。
必死に表に出したい感情を抑えて仮面を被り、本心を隠して、泣きじゃくるハウを励ました。
だけど、本当に泣きたいのは自分なのに。リーリエも子供のように泣きじゃくって、今の気持ちを吐き出してしまいたかった。
リーリエはルナアーラの入ったウルトラボールを取り出すと、それを投げた。

リーリエ「ほしぐもちゃん、出ておいで」ヒョイッ

ルナアーラ「マヒナペーア」ポンッ!

リーリエ「……ほしぐもちゃん、しんちゃんがカスカベにお引越しするみたいです。ボールの中で、聞いてましたか?」

ルナアーラ「……マヒナペ」シュン

リーリエ「寂しく……なっちゃいますね。ほしぐもちゃんも、しんちゃんのケツだけ星人、好きでしたものね」

ルナアーラ「マヒナペーア」

リーリエ「思えばずっと、わたしもほしぐもちゃんも、しんちゃんといましたもんね。旅してる時も、困った時もそばにいて助けてくれて……これからっていう時にいなくなって……ずるいですよね」

ルナアーラ「マヒナペ!」

リーリエ「ほしぐもちゃんもずるいって思いますよね! ほしぐもちゃんも、しんちゃんともっと旅したかったですよね」

リーリエ「わたしも、一人前のトレーナーになって、しんちゃんがどんな風に成長していくのか、見守っていきたかったな……」

リーリエ「いなくなるって……本当に寂しいものなんですね」

ため息を漏らしてしんみりしていると、背後で足音が聞こえた。振り返ると、グラジオがバツの悪そうな顔で立っていた。

リーリエ「……にいさま」

グラジオ「その様子だと……しんのすけがカスカベ地方に行くのを聞いたようだな」

リーリエ「はい。しんちゃんの口から直接……にいさまは、知っていたのですか?」

グラジオ「ああ……大大試練が始まるより前にな。ひろしも知っていた」

グラジオ「……もっと早く言うべきだったかもな。オレが大大試練の邪魔にならないために黙ってたばかりに、オマエらに余計辛い思い、させてしまったな」

リーリエ「にいさまの所為じゃありません! ……これは、仕方のないことです」

リーリエ「それに、寂しくないと言えば嘘になりますが……やっぱり、きちんと笑顔で見送りたいです」

グラジオ「……そうだよな。オマエにとってしんのすけは、自分を変えてくれた人だからな。最後は笑顔で見送ってやれ」

リーリエ「それに、まだしんちゃんには、わたしがこれからやるべきことを話してませんし、思い出も作りたいです」

グラジオ「……ああ」

一方、メレメレ島の仮設住宅でしんのすけたちは、引っ越すための荷造りと片付けをしていた。

ひろし「この食器、どこの箱に入れたらいいんだ?」

みさえ「ああ、そっちの箱にしまって」

ひろし「おう、じゃあこれも片付けておくか」

みさえ「ビーストに家具を燃やされちゃったから、なんだかあっと言う間に片付きそうね」

ひろし「そうだな……なんとか使えそうな家具を瓦礫から引っ張ってきたけど、これだけでもめっけもんだな」

しんのすけ「かーちゃんのダイエット食品とか無駄なものも燃えちゃったから、ちょうどよかったわねー」

ひろし「ああ、全くだ」

みさえ「なんですって?」

ヨワシ『ねえねえ、カスカベ地方ってどんなところなんだろう?』

キテルグマ『そういえば、あんまりしんちゃんからカスカベ地方の話って聞いてないわよね』

ジュナイパー『四天王がいるみたいだから、ポケモンリーグがあるくらいには規模の大きい地方ってのは分かるけどね』

ヨワシ『でも、やっぱり今まで住んでたアローラを離れちゃうのは寂しいね』

キテルグマ『そうねぇ、せっかくアローラで有名になれたっていうのに』

ジュナイパー『ぶりぶりざえもん、カスカベ地方についてなにか知ってるか?』

ロトム図鑑「カスカベ地方だと? カントーの近くにあるが、アローラと比べればパッとしない、ありきたりな地方だ。海もないからポケモンの種類もそこまで多くないし、特に面白みもないぞ」

ジュナイパー『本当かよ。おい、しんのすけ。カスカベ地方ってどんなところなんだ?』

しんのすけ「んっとねー……カスカベ地方にはチョコビとアクション仮面がいてーカスカベ防衛隊がいてー……なんか他にあったっけ?」

ジュナイパー『お、おいおい……。自分の住んでた地方だろ』

ミミッキュ『カザマくん、自分にとって慣れ親しんでるものほど、説明しにくいものだよ』

ジュナイパー『うーん……そういうものなのかなぁ』

フェローチェ『わたくし、しん様が住まう場所なら、例え水の中火の中森の中、どこでも構いませんわん』

キテルグマ『けっ!』

ミミッキュ『僕、カスカベのボーちゃんに会ってみたい! ボーちゃんの名前の由来も、カスカベにいるボーちゃんって子から取ったんでしょ?』

しんのすけ「うん。みんなカスカベ防衛隊のメンバーから名前を取ったんだゾ。ボーちゃんなら、石が好きだからきっと話も合うと思うよ?」

ミミッキュ『ボ! 楽しみ』

フェローチェ『あいも一度、名前の由来になった子をお目にかかりたいですわ。ひょっとしたら、恋敵になるかもしれませんし』

キテルグマ『ネネも、リアルおままごとが好きなカスカベのネネに会ってみたい!』

ヨワシ『僕も、いつもいじめられてるけど、キメるときはすごいっていうマサオくんに会いたいなぁ』

ジュナイパー『僕も、風間って子に興味あるよ。僕にそっくりっていうんだから、きっと頭もいいんだろうな』

ヨワシ『そう考えると、なんだかカスカベに行くの、楽しみになってきたね!』

ジュナイパー『うん、カスカベではどんなポケモンが住んでいるんだろう?』

しんのすけ「そんな大したの住んでないって。ヤミカラスとか、たまに道端でポチエナとか歩いてるくらいだもん」

ジュナイパー『夢を壊すようなこと言うなよ……』

こうして、各々は様々な思いを抱えながら短い時間を過ごしていった。

そして、しんのすけたちが引っ越す前日の夜……。

ひろし「いよいよ明日でアローラともお別れか……」

みさえ「なんだか、短いようで何年もここにいた気がするわ」

ひろし「ああ、しんのすけの島巡りに、エーテルパラダイス、ウルトラビーストと、たくさんの出来事が一気に起きたからな」

しんのすけ「全く、落ち着きのない一家だ」

ひろし&みさえ「お前が言うなっつーの!」

みさえ「でも、アローラの人たち、優しくて親切で……来て良かったわ。またいつか来れるかしら?」

ひろし「来れるさ。なぁ、しんのすけ」

しんのすけ「そうだねとーちゃん。でも、今度来たときはいい女と島巡りしたいね」

ひろし「アローラガールと島巡りか……俺も島巡りするかな」

みさえ「あなた!」

ピンポーン

しんのすけ「お?」

みさえ「しんちゃん、出てあげて」

しんのすけ「ほーい!」

ガチャ

ハウ「アローラー、しんのすけー!」

アセロラ「はーい! 古代のプリンセス、アセロラちゃんでーす」

しんのすけ「ほうほうご両人。こんな夜遅くに新聞の勧誘とはご苦労様」

ハウ「新聞の勧誘じゃないよー」

しんのすけ「じゃあポスティングのアルバイト?」

アセロラ「なんで紙媒体にこだわるんだよ。送別会の準備が出来たから、迎えに来たの!」

みさえ「あら、ハウくんにアセロラちゃん」

ハウ「おばさん、アローラー! 送別会のお迎えに来ましたー!」

ひろし「おっ、準備出来たのか!」

アセロラ「うん! 人もこの間よりたくさん来てるよ!」

ハウ「マラサダいっぱい買ってきたよー!」

みさえ「じゃあ、待たせるのも悪いし、私たちも行きましょうか。ハウくん、アセロラちゃん、案内頼めるかしら?」

アセロラ「任せてー!」

ハウ「じーちゃんのうちまで案内するねー」

仮説住宅を出て、しんのすけたちはハウとアセロラにリリィタウンへ案内されると、ハラの屋敷の入り口前にスイレンとライチの2人が迎え出てくれた。

ハウ「ライチさんー! 連れてきたよー!」

ライチ「お、今日の主役がついに来たね」

しんのすけ「ライチさ〜んお久しぶりぶり〜会いたかった〜ん」

ライチ「アーカラの大試練以来だね。まずは、島巡りチャンピオンおめでとう!」

しんのすけ「いやあライチさんのためなら島巡りなんて晩飯前ですよー」

ライチ「それを言うなら、朝飯前でしょ?」

スイレン「しんのすけさん、お久しぶりです。私の約束、覚えてますか?」

しんのすけ「スイレンちゃんと? さあ?」

スイレン「まあ! ひどいです! わたくしの婿になって家を継ぐというのは嘘だったんですか?!」

しんのすけ「ええっ?! オラそんな約束したっけ?!」

スイレン「ふふふ……釣られましたね。嘘ですよ」

しんのすけ「……んもー、人騒がせなんだからー」

スイレン(ハプウさんからしんのすけさんのお話を聞いて考えたウソでしたが、簡単に釣れました♪)

ライチ「しんのすけのご両親の方だね? 始めまして、あたしはアーカラのしまクィーン、ライチ」

スイレン「同じくアーカラのキャプテン、スイレンでございます」

ひろし「あ、どーも……」テレテレ

みさえ「しんのすけがお世話になりました」

ライチ「しんのすけ、この間は行けなくてごめんね。ライチさんも色々忙しかったからさ」

しんのすけ「オラ、こうしてライチさんが来てくれるだけでほっぺが赤くなっちゃって……」

ライチ「ふふ……いつもあたしを口説いちゃって、嬉しいねえ」ナデナデ

しんのすけ「あは〜」

みさえ「……けっ!」

ひろし「くそ〜羨ましすぎるぜ! なんでお前だけ……」

しんのすけ「足が臭いから」

ひろし「関係ないだろっ!」

アセロラ「それより、そろそろ中に入ろうよ! みんな待ってるよ!」

ひろし「おっと、そうだな」

スイレン「さあさ、こちらへどうぞ」

スイレンたちに連れられて、しんのすけたちはハラの屋敷に入ると、きらびやかな飾り付けと用意された豪勢な食事、そして今までしんのすけが島巡りで出会ったキャプテンやしまキング、友人たちが出迎えてくれた。

ひまわり「たいやーっ!」

みさえ「すごい飾り付け! これみんながやったの?」

ハウ「うんー、そうだよー!」

アセロラ「食事も、みんなで作ったんだよー!」

リーリエ「あ、しんちゃん……」

ククイ博士「ん、来たみたいだぜ!」

ハプウ「おお、しんのすけ! 久しぶりじゃなあ」

しんのすけ「ハプウちゃんも変わってませんな」

ハプウ「大大試練、見ておったぞ。あのZワザはもとより、中々晴れ晴れする戦いじゃった!」

ハプウ「しんのすけのご家族も、今夜は存分に楽しんで欲しい。わしらもゼンリョクで、お主らを送ろうぞ」

ひろし「おう、俺たちも楽しませてもらうよ」

ハラ「うむ、みな揃いましたな!」

ハラ「それではこれより、野原さんたちの送別会を行いたいと思います」

ハラ「しんのすけ、送別会を始める前に一言頼めますかな?」

しんのすけ「ひとこと?」

ククイ博士「ああ! ギガインパクトがある挨拶、みんなに言ってあげるんだ!」

しんのすけ「ほーほー」

マイクを渡されたしんのすけは、壇上に上がると一同を見渡した。みんなが、しんのすけがどんな挨拶を言うのか期待しながら視線を集める。
そして、しんのすけは口を開くと……。

しんのすけ「よ!」













全員「」ズルッ

リーリエ「しんちゃん……いくらなんでも短すぎです!」

ハラ「で、では皆の衆、今宵は明日旅立つ野原さんに向けた送別会を始めるとしますかな!」

ハラの乾杯の合図で、いよいよ送別会が始まった!
各々飲み物を片手にしんのすけと今回の島巡りの思い出話をし、新たにひろしとみさえに挨拶したりと、送別会を楽しんだ。

マオ「さ、みんな食べて食べて! 」

ハプウ「わしの畑で採れた新鮮な野菜もあるぞ」

ひろし「おっ、みずみずしくて潮の香りがするな。この野菜!」

しんのすけ「オラ、お野菜は別にいいかな」

リーリエ「食わず嫌いはよくないですよ、しんちゃん」

しんのすけ「じゃあリーリエちゃん代わりに食べれば」

ライチ「あら? 好き嫌いは良くないわよ? あたしはね、好き嫌いせずによく食べる子が好みなの」

しんのすけ「ハプウちゃんの野菜は何杯でもイケるゾ。コクとのどこしがまったりしてますな」モグモグ

リーリエ「」ズルッ

ひろし「ビールかよっ!」

ハプウ「この変わり身の速さは賞賛に値するな……」

マーレイン「やあ、しんのすけくん!」

マーマネ「しんのすけ……アローラ……」

しんのすけ「よ、ご両人」

マーレイン「まずは島巡り達成、おめでとう! 」

マーマネ「……ウラウラのみんな、注目してる。しんのすけ、すごい」

しんのすけ「それほどでも」

マーレイン「残念だね、君がアローラを去るなんて。しんのすけくんの才能なら、ハラさんからキャプテンに指名され――将来、しまキングにだってなれたかもしれないのに」

マーマネ「うん……。僕も勝負したかった」

マーマネ「それで、ロトム図鑑を預かってもいいかな……?」

しんのすけ「いきなりですな。なんで?」

マーレイン「餞別になれるかわからないけど、僕らなりにしんのすけにプレゼントをしたくてね。それで、ロトム図鑑をアップデートすることを思い付いたのさ」

マーマネ「勝負できない代わりに……お礼」

しんのすけ「いいよー。ぶりぶりざえもーん!」

ロトム図鑑「んあ?」

マーレイン「やあ、ぶりぶりざえもんくん」

ロトム図鑑「何の用だ?」

マーマネ「キミを……アップデートしようと思って」

ロトム図鑑「私をアップデートだと? 私のレベルを-85なんて結果を出したポンコツ装置を作ったお前たちにアップデートなんて出来ると思えないな」

マーレイン(まだ引きずってたんだね)

ククイ博士「まあそう言うなよ、ぶりぶりざえもん! マーレインもマーマネも、優れた発明コンビだからね」

しんのすけ「ぶりぶりざえもんも、しばらく修行して来なさい」つロトム図鑑

マーレイン「やあありがとう。バージョンアップを終えたら、必ず郵送するよ」

ロトム図鑑「おいっ! 私の意見は無視か!」

マーマネ「ロトム図鑑……早くアナライズしたい」

ロトム図鑑「貴様ら! もし私になにかあれば国際警察が黙ってないぞ!!」

しんのすけ「おたっしゃでー」ドナドナドーナードーナーニバシャガユーレールー

ライチ「みさえさん……だっけ? どうやったら結婚できると思う?」

みさえ「結婚ですか?」キョトン

ライチ「こう言うと恥ずかしいけど、まだ彼氏が出来てなくてねえ……」

バーネット「だ、大丈夫ですよ。きっと、ライチさんにも素敵な男性が現れますって!」

みさえ「そーよ! 男なんて星の数ほどいるんだから、いっそ選り好みしちゃいなさいよ」

ライチ「そ、そうかい? なんか自信ついてきたよ」

しんのすけ「……星に手は届かないけどね」ボソッ

ライチ「」orz

みさえ「余計なこと言うなっつーの!!」

しんのすけ「ま、安心なさい。オラが貰ってあげますからー」

ライチ「ほ ん と に ? ! 今すぐ貰ってくれるの? ライチさんがしんのすけくんをお持ち帰りしてもいいんだねっ?!!」

しんのすけ「ひいっ!?」ビクッ

マオ「だからライチさん、犯罪ですって!」

ライチ「罪を重ねるより彼氏作って愛と思い出を重ねるのが最優先なのおおお!! マオにはまだ分からないでしょうけどねえええ!!!」ゴゴゴゴゴ

マオ「ひええっ!」

カキ&スイレン「いつものライチさんじゃない……」

しんのすけ「ライチおねいさん、松坂先生みたい……」

プルメリ「結婚ね……今んところあたいには縁がなさそうだね」

バーネット「本当に怖いのは、女の執念ってところかしら……?」

クチナシ「……よう」

しんのすけ「お、幸薄そうなおじさん」

アセロラ「あー! クチナシおじさん来てたのー?」

プルメリ「おっさん……来てるなら来てると言えばいいのに」

クチナシ「おじさん、しまキングだからねえ。島巡りを終えたトレーナーに、一声かけなきゃな」

クチナシ「ま、坊主。島巡りチャンピオン、おめでとさん。向こうでも元気でやれよってね」ニヤリ

しんのすけ「おじさんも、なにかいい出会いとかあるといいねー」

クチナシ「……じゃあな」スタスタ

アセロラ「あーあ行っちゃった……。もっと楽しんでいけばいいのに」

しんのすけ「やっぱり地味ィ」

プルメリ「ま、なんだかんだで、しんのすけを見送ろうって気持ち、ちゃんとあるんだね。じゃなきゃ、ウラウラからこっちまで来ないさ」

しんのすけ「そーいや、くさやのおじさんも見かけないね」

プルメリ「まぁ……あいつはこういうの、出るの苦手だからね」

ハラ「グズマは一応呼んだのですが、祭りの後からずっと、ポニ島へ修行しに行ってしまいましてなあ」

しんのすけ「おお! びっくりした!」

プルメリ「修行……か、やっぱりしんのすけとハウの戦いを見てトレーナーとして何か感じるものがあったんだろうね」

しんのすけ「ちゃんと首を洗えるといいね」

プルメリ「それを言うなら足を洗う、だよ」

――その頃、屋敷の外では

クチナシ「……そんなところで何してるんだ? グズマのあんちゃん」

グズマ「ああ? なんだっていいだろ? 」

クチナシ「ま……飲みモンくらいなら取ってきてやるよ」

グズマ「うるせえよ! ブッ壊されたいか、クチナシさんよ」

クチナシ「……別にいいけどよ。グズマのあんちゃん、何事もほどほどにな」スタスタ

グズマ「……」

イリマ「そういえば聞きましたよ、ひろしさんは元トレーナーらしいですね!」

ひろし「え? ああ、まぁ」

カキ「なるほど……。おれの試練でも、しんのすけと同じく観察眼に優れていたところが見受けられた。さすがは親子というべきか」

ひろし「いや、あれは観察力もへったくれもねぇと思うけど……」

スイレン「しんのすけさんに、なにか特別な訓練でもしてあげていたのですか? 私の試練での行動には驚かされました!」

ハウ「カザマと一緒にヨワシの中に突っ込んで、群れを率いているぬしヨワシをクリティカットで倒したんだよねー」

イリマ「それはすごいですね! ひろしさんはなにか勝負のコツでもお教えになったんですか?」

ひろし「いや、俺は何も……。それに、元トレーナーと言っても、バッジを途中で集めるのやめちゃったしな」

ハウ「ホントかなー? だって、しんのすけってーゼッタイただの5歳の子供じゃないよー! スカル団とかエーテルパラダイスの時も、ほとんどしんのすけが解決したようなものだよー」

カキ「やはり……しんのすけにはなにか秘密があるのでは?」

ひろし「……わかった、ちょこっとだけあいつの強さを教えるよ」

イリマ「おおっ、本当ですか?」

ハウ「なになにー? 教えてー!」

ひろし「といってもだな、ただ単純に、しんのすけも俺たちも、色んなところを冒険してきたってだけなんだ」

カキ「どんな冒険を繰り広げてきたのですか?」

ひろし「……例えばだな、しんのすけとしんのすけにそっくりな王子様と一緒に地下宮殿に行ってなんでも願いが叶う伝説のポケモンと出会ったり――」

ひろし「温泉に入ってすごいパワーを得て巨大ロボットを倒したり――」

ひろし「後はシロにくっついた、地球がぶっ壊れる威力の爆弾を狙ってきた2つの組織から逃げたり――」

ひろし「俺とみさえが薬を飲んだらポケモンになってある組織に攫われちまって、しんのすけとカスカベ防衛隊が助けに行ったり――」

ひろし「最近だと、宇宙からやってきたポケモンの光線を浴びて子供になっちまって、元に戻るためにそのポケモンたちと一緒に全国を回って親玉を探し回ったんだ」

ハウ「へー」

スイレン「うふふ、面白い話ですね!」

イリマ「やっぱり、秘密ってところですか。気になります!」

カキ「だが、嘘ならスイレンの方が上手だな」

ひろし(嘘じゃねぇんだけどなー)

スイレン「ですが、驚かないでくださいよ? 実はしんのすけさん、ポケモンとお話が出来るのです!」

カキ「スイレン、それも嘘だろう?」

スイレン「さーて、どうでしょうね~♪」

しんのすけ「はぁ……」

ハウ「どしたのー? 暗い顔なんかしてー」

しんのすけ「オラ、島巡り終わって、がっかりしたことがあるの」

アセロラ「ガッカリ? どうして? 島巡りチャンピオンになったんだから、もっと胸を張っていいんだよ?」

しんのすけ「だって、オラ島巡りチャンピオンになっておねいさんにモテモテになりたかったのに、全然そんな気配がないもん! 来るのはオラと勝負したいっていうむさくるしい男のトレーナーばっか! オラの努力ってなに?」

ハプウ「……なぜお前の頭は女の子ことばかりなのか。呆れてものも言えんな」

ハウ「おじさんに似たからだよー」

ハプウ「ま……年頃の娘はライチくらいしかおらんが、わらわにアセロラ、それにリーリエもおるぞ? みな、お前のこれからの活躍に期待しておるのじゃ!」

アセロラ「うんうん! しんちゃんモテモテだね!」

しんのすけ「10代前半はちょっと……」

アセロラ「それどーゆー意味? アセロラじゃ不満なの?」

ハプウ「ま、そう言うと思ったわ」

ハウ「しんのすけらしいねー」

マオ「ねえねえ、しんのすけのためにあたしが腕によりをかけて作った料理があるんだよ! その名もマオスペシャル・Z!! これ食べて、元気だしなよ!!」ドンッ

マオスペシャル・Z「」ズオオオ

しんのすけ「これ……なに?」

ハプウ「……マオ、この料理はどうやって作った?」

マオ「えっと、とっておきのスターのみとサイコシードを砕いて、ミックスオレを混ぜてドロドロにしたあとしんかいのきばで混ぜて……」

ハプウ「分かった。もう何も言わんで良い」

しんのすけ「と、とーちゃん食べてみなよ。最近、昼ご飯とかにこだわりがあるんでしょ? とーちゃんの食レポ聞いてみたいな~」

ひろし「そ、そんなわけねぇだろ! 俺がそんなこだわり派に見えるか? しんのすけが食べてみなよ」

ライチ「へえ……マオ、ずいぶん手の込んだ料理を作ったのね。味見してもいいかしら?」パクッ

しんのすけ&ひろし「!??」

ライチ「……うん、おいし! しんのすけも食べてみなよ」

しんのすけ「え、えぇ……」

マオスペシャル・Z「」ズオオオ

しんのすけ「……」ゴクッ

――あたしはね、好き嫌いせずによく食べる子が好みなの

しんのすけ「……愛の力は何者にも負けないっ!!」パクッ

しんのすけ「……」モグモグ

ひろし「お、おい。しんのすけ?」

ハプウ「平気なのか……?」

しんのすけ「……」ゴクン

ハウ「しんのすけー?」











しんのすけ「……ライチおねいさん、ごめんなさい」

ドサッ

ひろし「おいっ! しんのすけ、しっかりしろ! しんのすけ!」

リーリエ「しんちゃんっ!! 大丈夫?!」

ハウ「わー! しんのすけが気ィ失っちゃったー!」

マオ「そっか、あたしの料理ってぶっ倒れるほどおいしかったのね!」

ハプウ「絶対違うと思うぞ」

カキ「マオ……力入れすぎだ」

パチッ

しんのすけ「う……うーん」

リーリエ「あ、目が覚めましたか?」

しんのすけ「ハッ! ここはどこ? オラはクロツグ?」ガバッ

リーリエ「ここはハラさんとハウさんのお家で、あなたはしんちゃんでしょ?」

しんのすけ「あれ? そうだっけ?」

リーリエ「しんちゃん、マオさんの料理を一口食べて気を失ったんですよ」

しんのすけ「のわわ〜っ! 思い出した! オラもうライチおねいさんの彼氏になれない……」

リーリエ「そっちですか?!」

リーリエ「はあ……心配して、なんだか損しました。いつものことですけど」

しんのすけ「てゆうか、リーリエちゃんこそ、なんでここにいるの?」

リーリエ「しんちゃんが倒れちゃったから、看病してたんです」

しんのすけ「やれやれ、リーリエちゃんに看病されてもらうなんて、オラもずいぶん体力が落ちましたなぁ」

リーリエ「あー! そういうこと、言うんですか?」

リーリエ「これからわたし、ほしぐもちゃんに乗って空を飛んでみようと思ったんですけど、しんちゃんが意地悪するなら、わたし一人で行こうかなー……」ムスッ

しんのすけ「えっ? 空飛ぶの? 乗りたい乗りたい!!」

リーリエ「さて、どうしましょうか」シラー

しんのすけ「いいじゃん乗せて乗せて! よっルージュラ! 色女! 憎いねーっ! ほい決まり! 」

リーリエ「クスッ……それ、褒めてるんですか? 仕方ないですね、じゃ、2人であの窓からこっそり出ましょうか」

しんのすけ「わーいわーい!」

1番道路

リーリエ「出ておいで、ほしぐもちゃん」ヒョイッ

ルナアーラ「マヒナペーア!」ポンッ!

しんのすけ「よ! ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナペ!」

リーリエ「ふふ、ほしぐもちゃんも、しんちゃんと会えて喜んでるみたいですよ」

しんのすけ「ケツだけ星人ブリブリ〜ブリブリ〜!」

ルナアーラ「マヒナ! マヒナペ!」キャッキャッ

リーリエ「もうっ! しんちゃんったら……まあ、今回はいいかな。ほしぐもちゃん、お願いね!」

ルナアーラ「マヒナペ!」バサッ!

ルナアーラはしんのすけとリーリエを、両翼で抱えると軽やかに満月の浮かぶ星空へと飛び出した。頭上の星空には薄い雲ひとつない。
しんのすけとリーリエはジェットコースターに乗ったような気分で、歓声を上げて見下ろすと、メレメレ島の街や野原、山、海とパノラマが広がっていた。

しんのすけ「わーお! すげー!!」

リーリエ「わたしもほしぐもちゃんと空飛ぶの初めてですが、とっても興奮してます! ほしぐもちゃんすごいです!」

ルナアーラ「マヒナペーア!!」

しんのすけ「このままずっと飛んでたい気分ー」

リーリエ「そうですね!」

リーリエ「……ね、しんちゃん」

しんのすけ「なに? どしたの?」

リーリエ「わたし、ハンサムさんとリラさんのチームに入って、ほしぐもちゃんと一緒にビーストさんを元の世界に帰そうと思います」

しんのすけ「ほう」

リーリエ「最初は、またほしぐもちゃんを失うのが怖くて、奥手になっていたのですが、みんなが、ポケモンさんと未来を切り開く姿を見て、自分もそれに憧れていたことを思い出したんです」

リーリエ「わたしも、ほしぐもちゃんと一緒に未来を切り開きたい。きっとかあさまも、そう望んでいるような気がして……失う怖さよりも、ドキドキがまさったんです」

ルナアーラ「マヒナペィーア!」

リーリエ「そのため、わたしもトレーナーとして強くなるために、ビーストさんを助けるのです」

しんのすけ「だいじょぶ、リーリエちゃんはきっといいトレーナーになれるよ」

リーリエ「本当ですか?」

しんのすけ「うん! オラの言うことはごくたまに当たるんだ!」

リーリエ「たまにですか……」ズルッ

しんのすけ「……ただリーリエちゃんの方向音痴が治らないかがちょっと心配。 それにブティックに寄ったり、無駄にトラブル起こしたり。リーリエちゃんはオラがいないとダメダメですからなあ」

リーリエ「……そうかも、しれませんね」シュン

しんのすけ「?」

しんのすけ(いつもならムキになって返すはずなのに、どうしたんだろ?)

リーリエ「わたし……しんちゃんがカザマさんと一緒に元気でいるところ、見ているのが好きなんです。……あんなふうに離れ離れになって、しんちゃんが危ない目に遭うのは、絶対嫌ですから」

リーリエ「……しんちゃん、ナッシー・アイランドでわたしが話した夢、覚えてますか?」

しんのすけ「なんだっけ?」

リーリエ「……やっぱり、覚えてないんですね。しんちゃんらしいですけど」ムスッ

しんのすけ(んー……なんだっけ! 確か借りたアクかめのDVD返すとかそんな約束じゃなかったハズだけど~!)オロオロ

リーリエ「……本当はわたし……しんちゃんにはカスカベへ帰って欲しくないです。このまま、ずっとそばにいて欲しいです。あなたはわたしの夢だから。あなたがいなくなったら、掴んだ夢を忘れてしまいそうで――」

しんのすけ「……」

しんのすけは悲しげに俯くリーリエに顔を近づけると、耳に向けて……。

しんのすけ「あむ」ハミッ

リーリエ「ひゃあ!」ビクッ

リーリエ「な、何するんですかっ!!」

しんのすけ「なんかしょんぼリーリエしてたからデラックスさせようと思って」

リーリエ「それを言うならリラックスです!」

しんのすけ「ま、そんなに寂しいなら、会いに来ればいいじゃん。いやー、モテる男は辛いぜ」

リーリエ「え? 会いに……ですか?」

しんのすけ「うん」

リーリエ「……今のわたしじゃ、きっとまた、しんちゃんに守られっぱなしになっちゃうと思います」

リーリエ「だから、かあさまが治って、ビーストさんも元の世界に返して、トレーナーとして強くなったら、その時はしんちゃんに会いに、カスカベ地方に行きます!」

リーリエ「そうしたら、わたしと一緒に旅に出ましょう。 それまで、待っててくれますか?」

しんのすけ「うーん……考えとく」

リーリエ「約束、ですよ? カスカベに帰っても、あなたはあなたのままでいてくださいね」

しんのすけ「何言ってんの? オラはオラだゾ」

リーリエ「ふふっ、そうですね」

リーリエ「そろそろ戻りましょうか。抜け出したこと、みなさんにバレちゃいます」

しんのすけ「てゆうか、寒くて風邪引きそう」ガタガタ

リーリエ「本当はこうやって空飛ぶのもダメなんですけどね」

しんのすけ「リーリエちゃん、結構アクティブになったね」

リーリエ「ふふ、誰かさんのせいです。ほしぐもちゃん、そろそろリリィタウンに帰りましょう」

ルナアーラ「マヒナペーア!」

ルナアーラは一番道路に降り立つと、ボールに戻った。
そのまましんのすけとリーリエはリリィタウンで様子を伺うと、みんな外に出てカキとガラガラによる踊りに魅入っていた。

カキ「ふん! はっ! ほっ!」ハイッ! ハイッ! ハヤハヤハヤ

カキ「ほっ!」ハーイ!

ダイチ「アローラ!」シュバッ

オーッ!! パチパチパチ

リーリエ「みなさん、踊りに夢中で……抜け出したことを気付かれていませんね」

しんのすけ「だね」

スイレン「おや? しんのすけさんが起きたみたいですよ」

ハウ「あれー? 寝てたんじゃないのー?」

リーリエ「ちょっと、外の空気を吸わせてあげてたんです」

ひろし「しんのすけ、具合はどうだ?」

しんのすけ「身体もムスコもビンビンですよ」

マオ「ごめんね? しんのすけくんには、マオスペシャル・Zは刺激が強すぎたかも」

ハプウ「強すぎるとかそういうレベルでは無いと思うが……」

スイレン「マオさん、気合入れすぎです! しんのすけさんは子供なんですからちゃんとしたもの、食べさせませんと」

マオ「分かってる分かってる、次から気をつけるから!」

ハラ「うむ! では、そろそろバトルロイヤル大会にしますかな」

ククイ博士「お! 待ってたぜ!」

バーネット「ロイヤルマスクも来るのかしら?」

ククイ博士「もちろん! バトルロイヤルのあるところに、彼は必ず現れるからね!」

しんのすけ「そういや、クジラくんいないね」

リーリエ「にいさまも呼んだのですが、やっぱりかあさまの代理としてお仕事、しなくちゃいけませんから……」

しんのすけ「ビンボー暇なし、か」

リーリエ「ちょっと違う気もしますけど……」

リーリエ「かあさまも、来ることが出来たらきっと、笑ってくれたのに……血清のおかげで、少しは良くなったんですよ? きっと、見送りにも来てくれたはずです」

しんのすけ「ルザミーネおねいさんか……お元気になるといいね」

ハウ「ふたりともー何してるのー? バトルロイヤルやろーよ!」

しんのすけ「今行くー!」

ハラ「ではこれより、バトルロイヤル大会を始めますかな! 参加者はこの土俵に上がられい!」

イリマ「審判はキャプテンのイリマがつとめますよ!」

しんのすけ「わーいオラ出る!」

ハウ「おれもー!」

ロイヤル「おっと! このバトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスクの事を忘れては困る!」ドンッ!

バーネット「きゃーっ! ロイヤルマスク!!」

しんのすけ「ククイマスクー!」

ロイヤル「ロイヤルマスク!!」

ハラ「さあ、残り1人。誰が出ますかな?」

リーリエ「あ、あのっ! わたしとほしぐもちゃんが出ます!」

ザワッ!

ハウ「えー!? リーリエがー?」

しんのすけ「ほーほー」

ロイヤル「ほう! 伝説のポケモンの使い手か! 相手にとって不足はないぜ!」

ハプウ「ほへえ……ルナアーラの戦う姿がここで拝めるとはのう」

ライチ「まさかあの子の進化した姿がルナアーラだったとはね……。星の子と呼ばれる理由が分かったよ」

マーレイン「これは、誰が勝つか全く予想ができなくなってきたね」

ハラ「おお、この戦い――ハラハラしますぞ!」

みさえ「リーリエちゃん! 頑張ってー!」

ひろし「しんのすけもガンバレーっ!」

ひまわり「たい!」

イリマ「では、それぞれポケモンを1匹お出しください!」

しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ

ハウ「出番だよ! ガオガエン!」ヒョイッ

ロイヤル「さあ行くよ! ルガルガン!」ヒョイッ

リーリエ「ほしぐもちゃん! お願い!」ヒョイッ

ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!

ジュナイパー『よーし! 負けないぞ!』

ガオガエン「ガオオッ!!」

ルガルガン「ウォーンッ!!」

ルナアーラ「マヒナペーアッ!!」

土俵に現れた4匹のポケモンたちがそれぞれの存在を主張するように咆哮を上げる。
そして、それぞれのトレーナーが命令を下すと、バトルロイヤルが開始された!

……こうして、野原一家たちの送別会は、祭りの時のように遅くまで続いていった。
みんなが送別会に熱中して、楽しんでいった。

しかし、楽しい時はあっと言う間に過ぎていき、最後にはみんなでZポーズを決めて(木の陰ではクチナシとグズマも加わりながら)記念撮影を取って、しめくくられた。

オラたちのアローラの冒険は、これでおしまい!
そーべつかい、とっても楽しかった!
オラ、アローラに来てよかった!

そして翌日……。

とうとう、野原一家がアローラを別れる時が来た。
ハウオリシティの乗船場では、しんのすけたちを見送るために、送別会で帰らずに残った人たちが集まっていた。

ハプウ「お主らがいなくなると、アローラも少し静かになる気がするのう。ひまわり、次に来た時はバンバドロに乗せてやろう」

バンバドロ「ムヒイウン!」

ひまわり「たい!」

アセロラ「またみんなで遊びにおいでよ!」

ひろし「ああ、また来るよ」

ライチ「しんのすけ……アローラに来て、島巡りしてくれてありがとう。アンタのこと、あたし忘れないよ」

しんのすけ「オラ次来た時はライチおねいさんと愛の島巡りできたらなぁ~って」クネクネ

ライチ「ふふっ、そうだね。あんたが成長して立派なトレーナーになったときのお楽しみとして、取っておくよ」ナデナデ

しんのすけ「ほーい! オラ頑張っちゃいま~す!」デレデレ

プルメリ「始めは変な子供と思ってたけど、島巡りも終えちまうなんてね。その強さとポケモンを思いやる優しさ、カスカベに帰っても忘れてるんじゃないよ」

しんのすけ「プルメリのおねいさんもくさやのおじさんも、もうスケスケおパンツの下着ドロしちゃダメだゾ」

グズマ「だから下着ドロなんかしてねえと言ってるだろが!」

プルメリ「グズマ……いたのかい?」

グズマ「……ケッ、おいしんのすけ。アローラの風が吹けば、何が起きるかわかんねぇ。お前が来た時なんかまさにそうだ」

グズマ「また会う時、オレ様がどうなってるか、お前が確かめてくれや」

しんのすけ「グズマのおじさんも達者でねー」

グズマ「くさやだっつってるだろ!」

ハウ「あははー今のはグズマさんが間違ってるよー」

プルメリ「プッ!」

グズマ「うるせえっ! 笑うな!」カアアッ

ハラ「果たして……しんのすけはアローラの風が吹いたことでやってきたと言えますかな?」

グズマ「あ?」

ハラ「しんのすけが島巡りを始めたことで、アローラはガラリと変わっていきました。エーテル財団、スカル団、ウルトラビースト、そして新たなZワザ」

ハラ「君は言うなれば、嵐を呼ぶ子供。アローラで生まれた過去の因縁を吹き飛ばし、アローラに新たな種を蒔き、そしてアローラを去って行く……」

ハラ「カプ・コケコが君を選んだ理由が、なんとなく分かりますぞ。そして、カスカベに帰ってからも、君は嵐を呼び続けるのでしょうな」

しんのすけ「オラんちはいつもかーちゃんのおかげで嵐が吹きっぱなしだけどね」

みさえ「やかましい!」

ククイ博士「しんのすけ……短い間だったけど、君との冒険は新たな発見でいっぱいだったよ! またいつでもアローラに戻っておいで。いつか、僕の夢が叶った時、ぜひアローラポケモンリーグに挑戦して欲しい」

ハラ「その時は是非とも、このハラもオニのハラで戦いを挑みますぞ!」

しんのすけ「ハラのおじさん、してんのーになるの?」

ハラ「うむ、わしはじじいですがポケモンリーグの四天王になって、挑戦者の壁となるのも、悪くありませんな」

ハウ「……」

ハラ「ほら、ハウ。後ろを向いていては、別れは告げられませんぞ」

ハウ「うっ……ぐすん」フルフル

ククイ博士「ハウ……涙、溢れちゃうよな。でも……大事な人を見送る時は笑顔だぜ」

ハウ「う、うん……」

しんのすけ「ハウくん、お願いがあるの」

ハウ「なにー? なんでも言ってー」

しんのすけ「オラ、カスカベに帰っちゃうからアローラ防衛隊の隊長、ハウくんに任せるね」

ハウ「たいちょう?」

しんのすけ「そ、だからアローラの平和は、ハウくんに任せたゾ!」

アセロラ「よかったじゃん、ハウくん!」

リーリエ「2代目隊長、ですね!」

ハウ「うんっ、任せてー! アローラはおれたちが守るからー!」ズズッ

ハウ「おれねー必ず強くなるー! それでーいつかマラサダいっぱい抱えてカスカベに行くからーまた遊んだりー勝負しようよー!」

しんのすけ「おーし、オラ、今度はカスカベ防衛隊隊長としてお相手するから!」

ククイ博士「アローラ防衛隊隊長と、カスカベ防衛隊隊長――まさに、隊長同士のドリームマッチ、だね!」

???「……ここにいたか」

乗船場に現れたのは、エーテルパラダイスにいるはずのグラジオだった。
グラジオは車椅子を押しながら、しんのすけたちのもとへ近付いた。その車椅子に乗っている人物を見て、みんなが驚きを隠せなかった。

ルザミーネ「……」

リーリエ「かあさま!」

グズマ「代表っ!」

ルザミーネの視線は仰天するリーリエとグズマ、そして野原一家を順に動いていった。

リーリエ「いつ、目が覚めたんですか?」

グラジオ「……昨日の夜にな。それで、しんのすけたちがカスカベ地方に帰ると聞いた途端、見送りに行くと言いだしたんだ……オレは止めたんだがな」

ルザミーネ「……みなさん……」

ウツロイドの神経毒の影響か、ルザミーネは途切れ途切れに言葉を紡いでいく。

ルザミーネ「……この度は……わたくしのワガママで……数え切れないほどの被害を出してしまったことを……お詫びします」

リーリエ「……かあさま」

ルザミーネ「野原……さん……。わたくしたち家族を……救っていただき……ありがとうございます」

ひろし「あ、ああ……」

ルザミーネ「みさえさん……あなたの言葉……わたくしの心に深く届きました……。これからも……母親として……この子達との関係を……治していきたいと……思います」

みさえ「ええ、必ずよ。子を想う心を取り戻したあなたなら出来る!」ギュッ

みさえはルザミーネに目線を合わせるようにしゃがむと、彼女のやせ細った右手を、包み込むように両手で強く握った。

ルザミーネ「野原さん……。もしまたアローラに来ることがあれば……エーテルパラダイスに……是非いらしてください……財団一同……歓迎しますね」

ひろし「その時はお互いの家族が揃ってるといいな」

みさえ「家族が元通りになるの、応援してますから」

ルザミーネ「しんのすけくん……リーリエのこと……ありがとう……」

しんのすけ「どうってことないゾ。また道に迷ったり人に頼ってばかりだったら、オラを呼んでください。すぐ駆けつけますんで」

リーリエ「大丈夫ですよ、かあさま。わたし、もう1人で色んなところに行けますから。それに、今は大切なパートナーもいますから」

リーリエの元気な笑顔を見て、ルザミーネも表情が和らいだ。もう彼女の瞳にはビーストに執着していた狂気の光は映っておらず、代わりに子供たちの姿があった。

ルザミーネ「……リーリエ。……素敵な子と……お友達になれたのね……嬉しいわ」

グラジオ「ひろし、みさえ、オレ達もアンタたちがしたことを実践してみようと思う」

ひろし「何を?」

グラジオ「家族の誰かが危険な目にあったら、みんなで乗り越えることだ。オレたち家族には……まだ父が戻ってきてないからな。母上と財団の収拾がついたら、今度は実験中に消えた父を探しに行くつもりだ」

ひろし「そうか。ようやくグラジオ君たち家族も、元通りになるための一歩を踏み出したんだな。頑張れよ」

グラジオ「フッ……。それに、なんというか、父は近くにいる気がするんだ。ウルトラスペースではなく、この世界のどこかにな」

ひろし「きっと見つかるさ。グラジオ君たちが親父さんのことを信じている限りな」

グラジオ「ああ……。しんのすけ、オマエに礼を言う。リーリエのこと、母のこと……心から感謝している……」

グラジオ「オレがオマエにできるのはポケモン勝負だけだからな。いつかカスカベに行き、お前にまた戦いを挑むつもりだ。その時は、オレたちのゼンリョク、みせてやる!」

しんのすけ「そういや、お互い一日一善だったねぇ。次はオラが勝つからね。ヌルヌルくんと一緒にかかって来なさい」

ククイ博士「それを言うなら1勝1敗、だろ」

グラジオ「オマエらが強くなるならオレも負けてられない……。オレたちは仲良しではない。でも悪くない関係だ。じゃあな、勝ちつづけろ!」

しんのすけ「悪くない関係ってどんな関係? もしかしてオラとクジラくんの身体中のホクロを数えられるような関係~?」

グラジオ「フッ……相変わらず下品なやつだ……」

リーリエ「しんちゃん……」

しんのすけ「締めはリーリエちゃんだから、気の利いたセリフ頼むね〜」

みさえ「こーらっ! 変なプレッシャー与えないの!」

リーリエ「ふふっ……しんちゃん。言いたいこと、たくさんあります」

リーリエ「向こうに着いても、ケツだけ星人とかインドぞうさんとか、しちゃダメですよ」

リーリエ「それから……ナンパもしないでね。声かけられた人、困っちゃいますから」

リーリエ「あと……約束も忘れないでね。わたし、もう二度は言いませんよ?」

リーリエ「それと……」

リーリエ「……」

しんのすけ「?」

リーリエ「あの……お願いがあるんです」

しんのすけ「どしたの?」

リーリエはしんのすけに手を伸ばすと、そっと両脇を持って互いの顔が向き合うように持ち上げた。そしてリーリエは顔を近づけると……。

リーリエ「えいっ……」












しんのすけ「」

ひろし&みさえ「」ポカン

ハプウ「」ホニャア

アセロラ「」オクチアングリ

グズマ「ケッ!!」

プルメリ「」フッ

ハラ「おおう、めでたい!」

ハウ「ほわー……」

ククイ博士「うおう……」

ライチ「」

グラジオ「」

ルザミーネ「まぁ……」

ルナアーラ(ボール)「マヒナペィーアー!!」ヒューヒュー!

スッ

リーリエ「――またね、しんちゃん!」ニコッ

しんのすけ「…………」

しんのすけ「い……っ」

リーリエ「え?」

しんのすけ「いやあああああっ! オラもうお嫁に行けなーーい!!」ダッ

ひろし「あ、おい、しんのすけ!」

みさえ「しんのすけったら……じゃ、ありがとうございました」

ハラ「アローラ一同、これからの野原さんたちの幸せを祈ります。お元気で」

みさえとひろしは一礼すると、しんのすけに続いて船へと乗り込んで行った。
しんのすけは船尾に出ると、ポートエリアでみんなが手を振ってくれた。

ハプウ「達者でなー!」

バンバドロ「ムヒイウン!」

アセロラ「元気でねーっ!」

ライチ「またアローラにおいでーっ!」

ククイ博士「しんのすけ! アローラ!」

ハウ「アローラ!! またあおーねー!!」

リーリエ「しんちゃん! アローラ!!」

しんのすけ「みなさーん!」

しんのすけ「オラ、アローラ地方のこと、絶対に忘れるまで忘れません! じゃ、そゆことでー!!」フリフリ

どんどん、リーリエたちの姿が、メレメレ島が、アローラ地方が地平線の向こうに消えていく。
それでも、しんのすけはアローラで出来た友達に向けて、手を振りつづけていた。

しんのすけ「……」フリフリ

ヨワシ(ボール)『見えなくなっちゃったね……』

キテルグマ(ボール)『……しんちゃん。みんなと別れると、寂しくなっちゃうね』

ミミッキュ(ボール)『代わりといっちゃなんだけど、僕たちがいる』

ヨワシ(ボール)『うん! もうアローラ防衛隊じゃないけど、心の中ではみんなまだアローラ防衛隊だよ!』

フェローチェ(ボール)『カスカベに着いても、あいたちはしん様と一緒、ですわん』

ジュナイパー(ボール)『だから、もっともっと強くなって、いつか戻ってきたとき、みんなに強くなった僕らの実力を見せてやろうよ!』

しんのすけ「……」

ジュナイパー(ボール)『……しんのすけ』

ひろし「……さ、船の中に戻ろう。なんか飲みたいもの、あるか?」

しんのすけ「……ううん、ない」

ひろし「……泣いてるのか?」

しんのすけ「オ、オラ泣いてないゾ! いやあ、うるさくて方向音痴なリーリエちゃんがいなくなって、オラ腰の荷が下りた下りたワッハッハッハッ……」

みさえ「しんちゃん……いいのよ。今はたくさん泣いても」ナデナデ

しんのすけ「……っ」ポタポタ

アセロラ「……行っちゃったね」

ライチ「あの子は、あの子自身が選んだ道を進んで行くんだね」

ハプウ「そして、わしらにはわしらの、進むべき道がある」

ハラ「太陽と月が巡り会うように、それぞれの道を進んだその先で、またしんのすけや野原さんと相見える時が必ずやってきますな」

グズマ「次に来た時は、あいつをブッ壊せるくらいに強くなってやるぜ。必ずな!」

プルメリ「体も、心もね」

ハウ「おれも本気のじーちゃんにもー、強くなったしんのすけに勝つためにーもっともっとポケモンたちと鍛えるよー!」

ククイ博士「ああ、僕たちも次にしんのすけと会った時に胸を張れるよう、ゼンリョクで道を切り開いていこう」

グラジオ「ああ……立ち止まってる暇はない」

リーリエ「どんなことがあっても、わたし大丈夫ですよ。しんちゃんや、みなさんの笑顔をもらいましたから……」

ククイ博士「さあ、帰ろう! みんな待ってる……家族が、待ってるぜ!!」

リーリエ「はい!」

みんなの かがやく えがおが

その えがおが たくさんの であいを つくり

であいが かがやく みらいを つくる

みんなに あえて よかった

あなたに あえて よかった


【EDテーマ はじまりのうた】

カスカベ地方 アクションタウン

ひろし「……結局、ここに戻ってきたんだな」

みさえ「本当ね……」

ひまわり「たい!」

しんのすけたちは赤い屋根と白い壁が特徴的な、自分たちが住んでいた家を見上げた。
長い間住んでいた家は、相変わらずローンがあと32年残っている風格を見せつけており、しんのすけたちを暖かく出迎えていた。

ひろし「じゃ、入ろうぜ。我が家に!」

しんのすけ「ほい!」

ひろしは鍵を取り出すと、ドアノブに入れて回した。ガチャリと鍵の開く音が内側から響く。

「ただいま!」

「おかえり、とーちゃんかーちゃん!」


クレヨンしんちゃん×ポケットモンスター サンムーン
嵐を呼ぶゼンリョク! アローラ地方大冒険!

おしまい

こうしてまた、しんのすけたちはもとの日常へ……ってところです。

サンムーンの物語の内容がクレしんに当てはめると面白そうと思って始めてみたのですが……やってみたいことをやってたら思ったより長くなってしまいました。

オチも当てている人がいてびっくりしました。さすがにみさえのマザービースト化は予想できた人は(スレを見た限りでは)いませんでしたが。
続編など色々考えたのですが、クレしんと一番雰囲気や展開があっているのはやはりサンムーン……ということで、今のところ次回作などは考えていないです。ウルトラサンムーンも、実際にプレイしてみなければ分からないことが多いのですが……。

こんなやりたい放題な作品を読んでくださり、ありがとうございました。

【以下、完全な余談】

・ポニ島編後半以降の展開について
これは構想の段階から考えていました。
せっかくのクロスオーバー作品ですから『ポケモンでもクレしんでも出来ない、出来なかったことをやってみよう』というテーマを掲げて執筆しました。しんのすけが敵の手に落ちたり、リーリエが主人公の手持ちでルザミーネに挑んだり、Zクリスタルを作ったり……。野原一家にも活躍の場を与えたかったし。

ポケモンリーグの設定や四天王戦をカットしたのには色々理由があります。4人連続で戦闘を書くのが単純に怠くて面倒になる……というのはあるのですが、しんのすけがリーグのチャンピオンになれば、余計アローラから離れられなくなるだろうと思ったからです。本編でも、防衛戦があるので、余計チャンピオンとしての責務が重いことも描写されてますしね。
このSSの締めくくりは「しんのすけたちがカスカベの家に帰る」というシーンにゼッタイしたかったので、ポケモンリーグという設定が邪魔になってくるんですよね。
なので、まだククイ博士がリーグの構想を練っており、島巡りの締めくくりも大大試練という扱い……という設定に変えちゃいました。なのでカヒリさんは泣く泣く出番カット……おまけで登場したのでそれで許してください。

・風間たちやヨシりん&ミッチー、埼玉紅さそり隊について
これに関しては、キャラのバランスを取る意味で登場させました。しんのすけが冒険したり戦うなら、風間たちの存在は必要不可欠と思いましたし。
もちろん、かすかべ防衛隊の面々はポケモン、後はスカル団という扱いなので、若干キャラは変わってしまいましたが、かねがね好評で嬉しかったです。みなさんがネネちゃんやボーちゃんはどんなポケモンなのか予想しているのを見てニヤニヤしてました。
ちなみに手持ちの選考基準ですが……。

風間……ガオガエンやアシレーヌでは風間のキャラと合わないと思い、消去法で。
マサオ……弱気なマサオがなにかのきっかけで強気になる設定が、ヨワシの特性とマッチしたので。
ネネ……うさぎつながりでミミロル辺りにしたかったが、ミミロルはアローラに出ないので、可愛らしい見た目ととてつもないパワーの持ち主であるヌイコグマ系統に。
ボーちゃん……見た目に反してとんでもない実力者である、というのがボーちゃんと合っていたので。
あい……単純に雰囲気と見た目で。ちなみにUB枠は最初はあいとフェローチェではなく、ひまわりとウツロイドだった。
ぶりぶりざえもん……戦闘に参加せずとも、物語の盛り上げ要因になれると思ったから。

・クレヨンしんちゃんの劇場版も今年で25作品目。というわけで、実は作中にチラホラと劇しんの要素があります。
あのシーンから、あのセリフ、あのキャラクターの設定など、一部ポケモンの世界観に合わせるよう差し替えているものがあります。是非探してみてください(さすがに全作品の要素は出せませんでしたが)。
ちなみにちょこっとだけですが、アニメサンムーンやポケモンシリーズの要素も入っています。

・設定のオリジナル解釈やシナリオ改変
色々矛盾してるかもしれませんが、目をつぶっていただくとありがたいです。

それでは、重ね重ね、このSSを読んでいただき、ありがとうございました! またどこかで、縁があれば新しいSSをお見せできたらと思います!

誰も、更新が終わったなんて一言も言ってないゾ

【最後のおまけ】

アローラを離れて、太陽と月が幾度となく空を巡ったある日のこと……。

カスカベ地方 アクションタウン
かわのそば公園

バッ バッ ブリブリブリブリ!

ピカッ! ゴウッ!!

カザマは Zパワーを 身体に まとった!

カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!

シ ャ ド ー ア ロ ー ズ ス ト ラ イ ク !

しんのすけ「カザマくん! ファイヤーッ!」

ジュナイパー『行くぞッ!』バサッ

カザマは真上に飛翔すると、周囲に無数の矢羽根を扇形に並べた。そして矢羽根と供にユンゲラーへ急降下する!
そしてユンゲラーに直接攻撃したと同時に無数の矢羽根がユンゲラーや周囲に突き刺さり、黒紫の爆発を引き起こした!

ドゴォォン!!

ユンゲラー「……!」ガクッ

風間「ああっ、ユンゲラー!」

ボーちゃん「勝負あり、しんちゃんの勝ち!」

しんのすけ「イエーイ!」

風間「くそーっ、今度こそって思ったのにー!」

ネネ「やっぱ強いねしんちゃん!」

しんのすけ「ま、島巡りチャンピオンですからー」

マサオ「でも、しんちゃんが帰ってきたときと比べると、風間くんも腕を上げたよ」

ジュナイパー『うん、この調子で強くなればいいライバルになると思うよ』

しんのすけ「うーん……風間くんとカザマくんが同時にしゃべってると変な気分」

風間「しゃべってる? むしろニックネームが一緒の方がややこしくてしょうがないだろ」

しんのすけ「アローラでもカスカベ防衛隊ならぬアローラ防衛隊を作ろうとしたら自然とこーゆー名前になって。性格もみんなにそっくりだしー」

マサオ「うん、最初に見た時はびっくりしたよ」

ネネ「キテルグマのネネが本当にリアルおままごとが好きで……」

ボーちゃん「ミミッキュのボーちゃんが、石好き!」

キテルグマ『あと、ピッピ人形を殴るところもね』

ミミッキュ『ボー!』

ヨワシ『ホントホント、僕とマサオくんも、立場がそっくりだもん』

フェローチェ『カスカベのあいも、幼稚園で一度お見かけしましたが、中々の強敵、ですわね』

マサオ「このポケモン? もどことなくあいちゃんに似てるよね」

風間「ウルトラ……ビーストだっけ? ポケモンとはまた違う生き物なのか?」

しんのすけ「オラもよくわかんなーい」

フェローチェ『しん様、わからないのでしたら、今後、お時間があればあいの住んでいる世界についてもゆっくりとお教えいたしますわ!』

ヨワシ『しんちゃんに惚れてるところも似てるなんて……はぁ』

ネネ「ねぇ、ところで今度やるリアルおままごとのテーマを思いついたんだけど……」

キテルグマ『なになに?』

ネネ「今回のテーマは『ウェイトレスからやまおとこを寝取ろうとするエリートトレーナーの愛憎劇』キーワードは、ヨーテリーとゴツゴツメットよ!」

キテルグマ『まぁ、面白そうじゃない! 三角関係っていうのはありきたりだけど、ヨーテリーとゴツゴツメットは予想外の組み合わせね!』

ネネ「でしょ? 今回の肝はゴツゴツメットで……」

ジュナイパー『なんか自然に会話してる……』

風間「うーむ、お互い共通の趣味を持ってるからコミュニケーションが取れるのかも……」

マサオ「お互い、ネネちゃんには苦労してるみたいだね……」

ヨワシ『あはは……』

しんのすけ「こーゆーのを自画自賛、というのか」

ジュナイパー『ギリギリ違う気がする』

ミミッキュ『ボ……川辺でいい石見つけたんだ。その石と交換しない?』

ボーちゃん「いいね。今度僕もとっておきのコレクション、見せてあげる。いいものがあったら、交換しよう」

ヤミーヤミーカーカー

マサオ「もうこんな時間なんだね」

風間「それじゃあ日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか」

マサオ「そうだね」

ネネ「じゃあまた明日!」

ボーちゃん「ボー!」

風間「しんのすけ、次は負けないからな!」

しんのすけ「やる気があったらね」

ジュナイパー『そこはいつでも来い、とか言うもんだろ』


アクションタウン
自宅

しんのすけ「ただいマラサダ久しぶりに食べたくなってきたー」

みさえ「ただいま、でしょ」

『……に起きた謎のポケモン襲撃事件で、プロゴルファーのカヒリさんがアローラ地方に賞金を引き続き寄付すると発表。また、キャプテンであり、独創的な絵で各地方で高い評価を得ていることで有名なマツリカさんは、アローラへの義援金を目的にチャリティーオークションを……』

ひろし「そういえば、カヒリはアローラ出身のトレーナーだったっけなあ。ゴルファーとして一度会ってみたかったなぁ」

みさえ「みんな、元気にしてるかしら?」

ひまわり「たい」

ひろし「復興が終わったら、またアローラ行こうな」

しんのすけ「ほい!」

ピンポーン

みさえ「はーい! 今出まーす」ドテドテ

ガチャ

みさえ「はい、どちら様で……」

カイリュー「きゅー」

玄関に突如現れたカイリューが、親しげに挨拶する。予想外の登場に、みさえも驚きが隠せなかった。

みさえ「えっ? か、カイリュー?!」

ひろし「どうしたんだ? みさえ」

しんのすけ「ひょっとして試食品食べ過ぎの罪で警察がやってきたとか?」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ「」

みさえ「やかましい!」

カイリュー「きゅー」

カイリューは下げている郵便カバンから小包を取り出すと、伝票と一緒にみさえへ差し出した。

ひろし「カイリュー便ってことは、結構遠くからの荷物ってことだな。ええと印鑑印鑑……」

ひろしが伝票に印鑑を押して小包を受け取ると、カイリューはしんのすけたちに一礼して、暴風を巻き起こしながら飛びさっていった。

みさえ「送り主は誰から?」

ひろし「……ククイ博士から、しんのすけ宛だ!」

みさえ「じゃあアローラ地方から来たのね!」

しんのすけ「じゃあオラの?! オラが貰っていい?」

ひろし「ああ、お前のだよ」ハイ

しんのすけ「わーい! 中身はなんだろー?」ベリベリ

みさえ「あっ、ちょっと! こんなとこでビリビリに破かないの!」

ひろし「ま、いいじゃないか。アローラの人たちからの手紙なんだから」

しんのすけ「おおっ、これって……!」

小包の中身は、電源が落ちて休眠状態に入っているぶりぶりざえもんだった。
小包からぶりぶりざえもんを出すと、すぐに目を覚ました。

ロトム図鑑「ふあ~あ、よく寝た……」

しんのすけ「よ、ぶりぶりざえもん」

ロトム図鑑「……しんのすけ? ということは、ここがカスカベ地方か」

ひろし「そういえば、お前今までどこにいたんだ?」

ロトム図鑑「ふん、アローラに残ってマーマネとマーレインに改造されていたのだ。アップデートしたおかげで、随分身体が軽くなった」

しんのすけ「そういやそうだったね」

ひろし「アップデートって、具体的には?」

ロトム図鑑「今まではアローラに生息するポケモンにのみ対応していたが、これからは全国のポケモンにも対応出来るようになった。アローラにいないポケモンを、ビーストも含めて登録できるようになったというわけだ」

ロトム図鑑「他にも、フェスサークル、自己修復機能の強化、ジャッジ機能、今日の誕生月占い、といったシステムが大幅にアップデートされたそうな」

しんのすけ「それってすごいの?」

ロトム図鑑「フッ、お前にとっては豚に真珠だろうがな」

ひろし「お前が言うな! タイプ相性も分からないくせに!」

みさえ「あら? 手紙も入ってるわよ? しんちゃん、リーリエちゃんからじゃないかしら?」つ手紙

しんのすけ「ホント? どれどれ?」

 しんちゃん、アローラ! お元気ですか?
 しんちゃんがカスカベ地方に帰ってずいぶん経ちますが、わたしもアローラのみなさんも、とっても元気です!

 わたしはリラさんとハンサムさん、そしてほしぐもちゃんと一緒にアローラにいるビーストさんを元の世界に帰しながら、トレーナーとしての腕を磨いています。
 実は、ほしぐもちゃんにお友達が2匹も出来ました! 1匹目はハラさんから頂いたアシマリさん。2匹目は、ラナキラマウンテンで見つかったタマゴから孵った、アローラ特有の姿をした白いロコンさんです!
 2匹とも元気いっぱいで、とっても可愛いです。しんちゃんに見せてあげたいな。ほしぐもちゃんも2匹の面倒を見て、すっかりお姉さんです。カザマさんたちとも、きっと良いお友達になれますよ。

 ちょこっとだけ、アローラのみなさんの近況を教えますね。
 ハウさんは、メレメレ島の復興作業の傍ら、本気のハラさんとしんちゃんに勝つためにイリマさんやグズマさんたちと猛特訓をしています。たまにわたしとポケモン勝負をするのですが、ハウさんは以前より格段に強くなってますよ! しんちゃんとカザマさんも、負けてられませんね!
 ちなみに、しんちゃんが作ったアローラ防衛隊バッジ、実は今アローラでとっても流行っていますよ。アローラ復興のシンボルとして、ハウさんとマーマネーさんが広めたんです。

 ククイ博士は、今、アローラにはいないんです。ではどこにいるかと言うと、なんとカントー地方です!
 リーグ設立という夢を叶えるために、カントー地方でポケモンリーグのシステムを勉強するため、ジムリーダーや四天王とポケモン勝負しつつ、情報交換を行っているそうです。
 アローラポケモンリーグが出来るまでまだまだ先ですが、もし、ポケモンリーグが出来たら、是非しんちゃんも挑戦しに来てください。さらに強くなったみなさんが待ってますよ。

 そして、かあさまの事についてですが、ビッケさんとザオボーさんが作った血清と、カントーからいらしたマサキさんという方の助力もあって、車椅子無しで歩けるようになるまで回復しました! この間は、エーテルパラダイスの保護区を一緒に散歩して、野原さんたちのことを話しましたよ。
 にいさまも、かあさまと協力しながらエーテル財団の代表代理として、ポケモンさんとビーストさんの保護に尽力しています。ただ時折、外に出ては、とうさまの行方を捜しに行ったり、何故かポケリゾートに行ったりするのですが、かあさまもわたしも、にいさまが無茶しないか心配です……。でも、少しずつ家族が元通りになってきています!
家族が力を合わせれば、どんなことも乗り越えられる……野原さんたちから教わったことです! いつか3人でとうさまも見つけ出してみせます!

 みんながそれぞれの皆さんがそれぞれの道を歩み出しています。しんちゃんも、自分のやるべきことが見つかって、あなたの望む素敵な未来へ歩いていけるといいですね。
 それとも、もう夢は見つかっていますか?

 ……最後になりますが、アローラでやるべきこと、みんなやり終えたら、必ずあなたに会いに行きます。待っててくださいね。
 いつ会いに行くか、ですか? それは内緒です。だって、しんちゃんをびっくりさせたいですから。
 アローラでいっぱいしんちゃんに振り回されたから、このくらいはいいよね?

 リーリエより

P.S
 ほしぐもちゃんについて、一度大変なことが起きたのですが……それについて、いつかしんちゃんとお話しできたらなと思います。あ、ほしぐもちゃんは今も元気ですよ?

しんのすけ「ほーほー……」

ロトム図鑑「ずいぶん長いな」

みさえ「まあ、リーリエちゃんったら。しんちゃんに言いたいことがいっぱいあるのが伝わってくるわ」

ひろし「しんのすけ、お前も早めに返事書きな。向こうもきっと、しんのすけからのお手紙待ってるはずだから」

しんのすけ「そうだね。じゃあ最近とーちゃんが夢中になっている、おとなのおねえさんのマチコちゃんについてでも書きますか!」

ひろし「なっ、なんでそれ知って……ハッ!」

みさえ「ふーん……マチコちゃんに夢中になってるっていうのは否定しないのね……」ゴゴゴゴゴ

ひろし「いやあのこれは接待の会社で……」

しんのすけ「かーちゃんの いかりのボルテージが あがってゆく!」

ロトム図鑑「ひろしは おびえている!」

げ    ん

こ    つ

ひろし「」

ロトム図鑑「」

しんのすけ「」

みさえ「余計なナレーション入れるなっちゅーの!!」

ピンポーン

みさえ「あ、はーい!」ドテドテ

しんのすけ「今日はよく人が来る日だな」

「…………!」

みさえ「あら、まあ! あなたは……!」

「…………?」

みさえ「はい! しんのすけ、いらっしゃい! アクション仮面が来てるわよ!!」

しんのすけ「えっ? ホント!?」ダッ

しんのすけは興奮しながら玄関に向かうと、果たしてそこには、しんのすけにとって世界で一番尊敬している人であり、カスカベ地方で放送されている特撮の主演俳優であり、このカスカベ地方のチャンピオンを務めている男――アクション仮面こと郷 剛太郎が立っていた。

アクション仮面「やぁ、しんのすけくん!」

しんのすけ「アクションかめーん! お久しぶりー!」

アクション仮面「南の島での試写会以来だね」

しんのすけ「 どーしてオラんちに来たの?!」

アクション仮面「もちろん、君に会うためさ」

しんのすけ「アクション仮面にそんなこと言われるなんて……オラ、チョーキンテキー!」

ひろし「感激、だろ」

みさえ「あの、良かったらうちに上がってください。お茶でも出しますから」

アクション仮面「いえ、お構いなく。すぐに済む話ですので」

アクション仮面「しんのすけくん、実は私も、君がアローラの大大試練に挑戦する中継を見ていたんだよ。君とポケモンたちのゼンリョクと絆の力、見事だったよ。最後のZワザもね」

しんのすけ「アクション仮面に見られてたら、オラも島巡りした甲斐がありましたなあ〜」

アクション仮面「そう、あの大大試練で君と君のポケモンたちに、無限の可能性を感じたんだ。そこで、しんのすけくんに、これを渡そうと思う」

アクション仮面が持っていた鞄から取り出したのは、アクション仮面が劇中で付けている変身ベルトだ。「A」マークが目印のバックル部分に、七色に光る不思議な石がはめ込まれていた。

しんのすけ「なにこれ? アクションストーン?」

ロトム図鑑「これはキーストーンと呼ばれる石だ!」

みさえ「キーストーン?! ってことは……!」

アクション仮面「そう、しんのすけくんには、メガシンカを会得してもらいたい! そのため、メガシンカの伝承者のいるカロス地方に行って欲しいんだ!」

ひろし「か、カロス地