【ミリマス】P「美奈子が料理を作れなくなった」 (71)

初投稿です
※地の文多め

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―プロデューサー、享年〇〇―

 
 

「うそ…ですよね…?」

理解したくない現実が私を襲う。
私が今いるのはプロデューサーさんの家で、いつもなら嬉しいはずなのにちっともそんな気分じゃない。
喪服姿で立ち尽くす私の目の前にあるプロデューサーさんの遺影はなにも語りかけてくれない。私は見下ろすようにプロデューサーさんの入った棺を覗いた。
 
棺の中で眠るプロデューサーさんの顔はとても綺麗で、死んでいるとは思えないほど整ってた。

「まだ若かったのにねえ」

「お仕事が大変だったんじゃない?1人で沢山のアイドルの世話してたって話だし」

私の後ろからは葬式に参加している他の人たちの話し声が聞こえてきた。
業界人で、それなりの人脈も持っていたのでかなりの数の人が葬式に参加していた。
そうだ、あんなに元気だったのに。
 
「いや、それが過労死とかじゃないんだってさ」

 
 

「え?」
 
じゃあなんで……。
 
「なんでもさ―」



「食べ過ぎだってさ」



「食べ過ぎ?」

「うん。なんだったかな、非アルコー性―まあそこはいいや、とりあえずギャル〇根かってくらいの量をほぼ毎日食べてたとか」

「毎日!?そりゃあ死んでもおかしくないぞ」

後ろの会話を聞いている私の心臓はバクバクと周りに聞こえそうなくらい脈打っている。

食べ過ぎ―。

私のせいだ。
そう思ってしまうと体の震えが止まらなくなる。
胸の鼓動はどんどん速くなって顔から血の気が引いていくのがわかる。
きっと私は今誰が見てもアイドル失格な顔をしていると思う。

「私が…プロデューサーさんを…?」

もう1度プロデューサーさんが眠る棺を覗く。
さっきと変わらない姿でプロデューサーさんは寝ていて、死という現実を改めて突きつけられる。
私が、私が作った料理を、私が食べさせていたせいでプロデューサーさんは―。

「ごめ…んなさい…」

今更誰に謝ってるんだろう。
物言わぬ棺の前で私は謝罪の言葉を重ねていた。

『お前のせいだ』

「え…?」

気がつくとあたりは黒一色に染まっていて私とプロデューサーさんの入った棺以外はなにもなかもが無くなっていた。

『お前のせいだ…』

たくさんの声が私の頭の中に直接響くように聞こえる。
少しづつ聞こえる声が大きくなってくる。
まるで後ろから―。

「……!」

振り返るとそこには私と同じ喪服姿のみんなが―765プロのみんなが立っていた。

『お前のせいだ』

「いや…」

『お前のせいだ』

「許して…」

『お前のせいだ』

堪らず私はみんなの前にへたり込んでしまう。

『お前のせいだ』

『お前のせいだ』

『お前のせいだ』

耳を塞いでもみんなの声が聞こえる。
私に罪を刻みつけるようにその声は止まらない。

『お前のせいだ』

「やめて…」

『お前のせいだ』

「おねがい…」

みんなの責め立てる声に耐えきれず私は意識を手放しそうになる。薄れる意識の中でも声は頭に響く。

『お前のせいだ』

『お前のせいだ』

『お前のせいだ』

『お前の―』






―ピピピピピピピピ!!!




「…………」

目覚まし時計のアラームがけたたましく鳴り響く。
けれど私にはスイッチを切るだけの気力もありません。
その日の私―佐竹美奈子の朝は控えめに言っても最悪なものでした。

とりあえずここまで
続きは明日か明後日にでも

関係ないですけどPヘッドの遺影ってシュールですね

私がゲストで出演する料理番組の収録が数日後に迫っている。
当然私も料理することになっているけど、今の状態では絶対に無理だ。

料理に対する拒絶と料理をしないといけないプレッシャーがぐちゃぐちゃに混ざりあって、私の心を蝕む。
そろそろなにかを勘付いている娘もいるかもしれない。
やっぱりプロデューサーさんにお願いして今からでもお仕事を降りた方がいいのかな。

ちがう。

これは私の問題。
みんなに迷惑をかけるわけにはいかない。
今日帰ったらもう1度チャレンジしよう。
なんとしてでも収録までに作れるようにならないと――。

「美奈子さん?大丈夫?」

「……ん?あっ。ど、どうかした?」

気がつくと一緒にレッスンしていた育ちゃんが下から覗き込むように私を見ていた。
そういえば今はミックスナッツのレッスンの最中だった。

「なんか今の美奈子さん、すっごく怖い顔してたよ?」

「え…本当?…あはは。少し考え事してただけだから大丈夫だよ」

私そんなに怖い顔してたのかな。
焦りの気持ちが表情に出ていたのかもしれない。

「よし、ちょっと休憩しましょう」

丁度リーダーのこのみさんが休憩を宣言した。
私は壁に向かい、もたれ掛かって座った。

今はレッスンの中でもとりわけキツいダンスレッスン。
レッスンの疲労はそれなりに溜まっていて、座り込んだら一気に力が抜けてしまった。

「ふう」

「美奈子ちゃん、お疲れ様。これ、飲み物よ」

「あ、このみさん。お疲れ様です」

このみさんがスポーツドリンクを持ってきてくれた。
お礼を言って受けとったペットボトルは周りに水滴がついてキンキンに冷えていた。

「大変ね、レッスンは」

「はい。でも、楽しいことの方がずっと多いですよ!」

「ふふ、そうね。」

「でも美奈子ちゃん、あまりひとりで思いつめちゃダメよ」

「え……」

「当たり。みたいね」

「……そんなにわかりやすかったですか?私」

「昔プロデューサーにも似たようなこと言ったことあるのよね。他人を気遣ってばかりで自分の表情が見えてないでしょ?お姉さんは見抜いてるぞ」

そう言ってこのみさんは微笑んだ。

家に着いた。
何を作るかはもう決めてある。
今回は中華料理だけど、メインはその中でも私の一番得意な回鍋肉でいこう。

家の厨房に立つ。
材料と道具は揃えた。後は調理するだけ。

「……」

最初に材料を切るために、私は包丁をにゆっくりと手を伸ばす。
もうあの幻聴は聞こえなかった。

恐る恐る包丁を掴む
けれどそれでも、包丁を持っても、あの幻覚を、プロデューサーさんの棺桶は見なかった。

そこからはスムーズに進めることができた。

「最新トキメキで真っすぐにアプローチ♪」

思わず私の歌の「スマイルいちばん」を口ずさむ中、厨房には私が包丁で切る音が小気味よく響く。

「エプロンもいいけど可愛いスカートで♪」

料理が楽しい。
誰かを思って、心を込めて作る料理が。

「スマイルいちばん君に届けたい♪」

これほど料理が楽しいと思ったのはいつぶりだろう。
今までの料理も楽しみながら作っていたけどここまで気分が昂ったことはなかった。
無意識のうちにこの当たり前のことを忘れていたみたいだ。

立ち直れたみたいで良かった
乙です

>>43
中谷育(10)Vi/Pr
http://i.imgur.com/tcXof7S.jpg
http://i.imgur.com/CkhktZa.jpg

>>44
馬場このみ(24)Da/An
http://i.imgur.com/vczu8xc.jpg
http://i.imgur.com/TtkjCfI.jpg

>>64
「スマイルいちばん」
http://m.youtube.com/watch?v=tAe37bfyvqw

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