絵里「ハッピーバースデー希」 (77)

アニメ時空とかはあんまりかんがえてません

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ピピピピ

絵里「……ん、もう朝……」

絵里(朝目覚めていつもの習慣で時間と一緒に日付も見る)

6月8日

絵里(この時の私は今日の日付を見ても何も思わなかった)

絵里(この日付の意味をあとで知ることになる)

希「えりち、おはよう」

絵里「おはよう、希!」

希「あれ、なんか今日やけに元気やん」

希「なにかあったん?」

絵里「なにかあったのじゃないでしょ、希」

絵里「今日は待ちに待った特別な日だわ」

希「え? なんやっけ?」

絵里「全国一斉模試の日よ!」

希「あぁ、なるほど」

希「そんなん楽しみにしてるんはえりちだけやと思うで」

絵里「そうかしら。楽しいじゃない」

絵里「成績には反映されないから気軽にできるし」

絵里「しかも全国レベルで何位か知ることができる」

絵里「こんな行事はこれくらいのものだわ!」

希「はいはいそうやね」

絵里「ちょっと、ずいぶんやる気なさげなのね、希」

希「一般的な態度よ、うちは」

希「なんなん? 一位でも取るつもりなん?」

絵里「そんなのとれるわけないでしょ。おそれ多いわ」

絵里「何位か自分の位置が知れることが楽しいじゃない」

希「えりちの理解できひんところのひとつになったわ」

絵里「え? そんな距離置くところかしら。おかしい、私?」

希「好みは人それぞれやから」

絵里「それ理解できないときに言う定型句じゃない!! やっぱりダメ?」

希「うんダメ」

絵里「言っちゃった! ついに言っちゃった!」

希「えりちのバーカ! えりちなんてずっと机に向かう机女になっちゃっえばええねん!」

絵里「えぇ、なにそれ」

希「机女は今うちがつくった」

絵里「でしょうね。既存の妖怪みたいな言い方してたけどそうでしょう」

希「でもえりちにぴったり」

絵里「私ってそんなに机のイメージなでしょう?」

希「あるからつけたん」

絵里「ちょっと、嘘でしょ!?」

希「…………」

絵里「なんか言ってよ!」

希「ま、机言っても勉強だけとは限らんしな」

絵里「生徒会のこと言ってる?」

絵里「それならまぁ、わからなくもないけど」

絵里「でも机女なんて称号は認められないわっ」

希「じゃあ机っ娘(つくえっこ!)」

絵里「あ、それならかわいくて……」

絵里「って結局おんなじじゃない!」

希「あ~、バレたか」

絵里「人のことばっかりバカにして」

絵里「希にだって悪いところのひとつやふたつあるのよ」

希「そんな必死にならんでも」

希「じゃあ机っ娘みたいになんか付けて?」

絵里「えぇ? 希から言うんだ……」

希「悪いところいっぱいあるんやろ?」

絵里「い、いっぱいなんて言ってないわ!」

絵里「…ひとつかふたつよ…」

希「じゃあその悪いところからあだ名が生み出せるはず」

絵里「ええ…う~ん…」

希「でもえりちはこういうの思い付かなそうやね」

絵里「ええ、そうかも」

希「…遊び心ないから…」ボソッ

絵里「ちょっと、聞こえたわよ!」

絵里「聞き捨てならないわね」

絵里「意地でもあだ名を考えてみせるわ!」

希「テキトーでええやん」

絵里「だめよ」

絵里「希にぴったりで面白くてしかもかわいいやつじゃないとだめ」



希「えりち、もう模試始まるよ?」

絵里「待って……もう少しで……」

絵里「喉元まで出てるのよ」

絵里「……こいつをなんとか引っ張り出して……っ!」




希「えりち、模試はどうやった?」

希「ってその暗い顔見るとよくなかったみたいやね」

絵里「…うまく集中できなかったのよ…」

希「もしかしてうちのあだ名を考えてたから?」

絵里「ええ」

希「ふっ」

希「ふふふ…」

絵里「なにがおかしいのよ」

希「そんなに真剣に考えてるえりちが面白かった、ふふ」

希「そんなに真剣に考える?」

絵里「むぅ」

希「ぱっと切り替えてテストに集中できそうなもんやけど」

絵里「…仕方ないでしょ、集中できなかったんだから…」

希「で、結局思い付いたの?」

絵里「…まだ…」

希「えりちはかわいいね」

絵里「急になによ…///」

希「そんなことに真剣に悩めるえりちがかわいい」

絵里「なんかバカにされてるみたい」

希「そんなことないよ?」

希「うちそんなえりち大好きやもん」

絵里「ちょ、ちょっと、そんなこと正面から言う?///」

希「照れてるえりちもかわいい」

絵里「///」

希「ごめんね」

絵里「え?」

希「うちがあだ名をつけてとか余計なこと頼まなければえりちは楽しみにしてた模試に集中できたのに」

絵里「いいわよ別に。希の謝ることじゃないわ」

希「謝りたかったから」

絵里「ふふ、なによそれ」

希「ごめん」

絵里「謝らなくていいって言ってるでしょ? 私がそんなことで希のことを嫌いになるとでも思ってるの?」

希「……」

絵里(え? 本当にそう思ってるの?)

希「うちってけっこう余計なこと言いがちやから」

希「えりちのことを傷つけたこともあると思うし」

絵里「…バカね」

希「ちょ、バカって──」

ナデナデ

絵里「そりゃ傷つけたらだめだけど」

希「………」

絵里「私はそんなことじゃ希のことは嫌いにならないし」

絵里「離れたりもしないわ」

絵里「だって私たち友達でしょ?」

希「と、友達…///」

絵里「そこで照れるの? 変な希ね」

希「えりちだってさっき照れてたやん」

絵里「そ、それは急に好きとか言われたら照れるわよ」

希「えりちも変わってる」

絵里「はいはい。じゃあふたりとも変わった人間ってことでいいでしょ?」

希「テキトーやん」

絵里「うふふ」

希「…………」

絵里「…………」

希「いつまでうちの頭撫でてるつもりなん?」

希「さっきからずっと撫でつづけてるけど」

絵里「希の頭撫でてたらだんだんクセになってきちゃった」

希「だから?」

絵里「ずっと撫でてる」

希「なんでやねん!」




希「まあ確かにうちとえりちは友達やね」

絵里「ん?」モグモグ

絵里「急になに?」ゴクンッ

希「ほら、模試のあと話してたやろ?」

絵里「ええ、そうね」

希「えりちから友達やって言われたときは照れちゃったけど」

希「冷静に考えてみるとたしかにうちらは友達やなって」

絵里「ふふふ」

希「なにかおかしい?」

絵里「お昼ご飯食べながらそんなこと考えてたの?」

希「いやあれからずっと」

絵里「冷静に考えないと気づけないってどうなの?」

絵里「だって私たち一年生の頃からずっとふたりでいたのに」

絵里「どう考えても友達でしょ」

希「うん。今はそう思う。でも友達ってイメージとちがった」

絵里「なによ。私といて楽しくなかったの?」

絵里「ってまあ楽しくはないか。私ってそんなに付き合いがいい方でもないし生徒会もやってるし」

希「そういうことやない」

絵里「え?」

希「たしかにえりちはぜんぜん遊んでくれないし生徒会のことばっかやけど」

絵里「むぅ」

希「なんですねてるの。えりちが自分で言ったんやん」

絵里「まあね」

希「友達って楽しく遊んでキラキラしてるイメージなん、うち」

絵里「うん」モグモグ

希「いつも一緒にいて」

絵里「うん」モグモグ

希「思ってることもすなおに話せる」

絵里「ええ」モグモグ

希「でもうちらはそうやないやん」

絵里「むぐっ!?」

絵里「」ゴホゴホ

希「え、えりち大丈夫?」

絵里「え、ええ」ハァハァ

絵里「いきなりとんでもないこといわないでよ」

希「え?」

絵里「わたしたちだっていつも一緒にいて思ってることすなおに話してるでしょ?」

絵里「そりゃ楽しく遊んでるとかキラキラしてるとかは知らないけれど」

希「もちろん友達やと思ってるよ?」

希「ただイメージとは違ってて」

希「うちの持ってたイメージは子どもじみてたなと」

絵里「へえ」モグモグ

希「うちはえりちと一緒におって楽しいしえりちが好き」

希「それでいいんやなって思ったん」

希「だからうちは今が最高」

絵里「なら良かったわ」

絵里「私となんて友達じゃないって言われたらどうしようとそわそわしてたわ」

希「そんなこと言わへんよ」

絵里「でも希の持ってる友達のイメージは子ども染みてるなんておろそかにしなくてもいいと思うわよ」

希「え?」

絵里「けっこうそういうの素敵だって思うわ」

絵里「たしかに現実と理想はちがうけれど」

絵里「理想を持っていると言うことは大事よ?」

絵里「だから大切にしてほしいな」

希「……」

希「…えりちに…」

絵里「え?」

希「えりちに期待してもいい?」

絵里「なにが?」

希「理想の友達」

絵里「ああ、そういうこと」

絵里「任せなさい!」

絵里「いままでずっとふたりで友達をやってきたんですもの」

絵里「希の理想の友達を叶えて見せるわ!!」

希「ふふふ、ずいぶん威勢がええね」

絵里「そうかしら?」

希「これからよろしくね?」

絵里「ええ!」




穂乃果「みんなそろってる?」ガラッ

絵里「穂乃果。まだ私だけよ」

穂乃果「ふぅん」

穂乃果「ちょうどいいや」

絵里「?」

穂乃果「ちょっとこっちに来てほしいの」

絵里「ええ…なにかしら?」

穂乃果「ここらへんでいいかな」

絵里(人気のない廊下の隅)

絵里「こんなところまで連れてきてどうしたの?」

穂乃果「希ちゃんは?」

絵里「希なら未提出の課題があるからって職員室に行ってるわよ。希もいたほうがよかった?」

穂乃果「それはだめなの。絵里ちゃんだけで…」

絵里「なによいったい」

穂乃果「実はもう他のメンバーには伝えてあるんだけど…」ボソッ

絵里「え、えぇ…」ドキドキ

穂乃果「明日って希ちゃんの誕生日でしょ?」

絵里「え?」

穂乃果「それでみんなでサプライズパーティーを計画してて……」

絵里(希の……誕生日……)

絵里(……そうだったかしら……)

絵里(そういえばそうだった気もする……)

穂乃果「それで絵里ちゃんにも手伝ってほしいの」

絵里(ヤバい)

絵里(すっかり忘れてたわ)

絵里(明日……まさか明日だったなんて……)

穂乃果「聞いてる?」

絵里「………」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「え? ああ、ごめんさない。ちょっと考え事をしてて」

穂乃果「……もしかして絵里ちゃん……」

穂乃果「希ちゃんの誕生日忘れてた?」

絵里「そ、そんなわけないでしょう!」

絵里「だって私は希の一番の友達だもの!」

絵里「しっかり覚えていたわ!」

穂乃果「そうだよねぇ。ごめんね、変なこと言っちゃって」

絵里「別に構わないわ」

絵里(とても言えない)

絵里(この私が希の誕生日をすっかり忘れていたなんて……)

穂乃果「実はもうほぼ準備は整ってて」

絵里「あらそうなの?」

穂乃果「そうなんだよ。絵里ちゃんってずっと希ちゃんといるからできるだけばれないように関わらせないようにしてたの」

穂乃果「怒らないでね?」

絵里「怒らないわ。準備してくれてありがとう」

穂乃果「それで絵里ちゃんには希ちゃんにお手紙を書いてほしいの。これなんだけど」

絵里「ありがとう。しっかり書いておくわ」

穂乃果「よろしくね。できたら明日の朝までには穂乃果に渡してほしいの」

穂乃果「急になっちゃってごめんなさい」

絵里「いいわ」

穂乃果「ありがとう! いいパーティーができそうだよ!!」

絵里「よかったわ」

絵里(…穂乃果たちはちゃんと希の誕生日を覚えていたのね…)

絵里(しかもしっかり事前の準備まで…)

絵里(それなのに一番希に近い私が誕生日すら忘れていたなんて)

絵里(気まずいというか……)

絵里(ものすごく申し訳ないわ……)

絵里(ごめん……ごめんなさい、希……)

穂乃果「ところで絵里ちゃん」

絵里「え? なにかしら?」

穂乃果「絵里ちゃんは希ちゃんにどんなプレゼントを用意してるの?」

絵里「え……と……」

絵里(そんなもの準備していないのだけど!!)

絵里(……まずいわ、これはまずい……)

穂乃果「絵里ちゃんならきっとすごいプレゼントを用意してるんだろうなってμ`sのみんなと話してたんだ~」

絵里「え、ええ…」

穂乃果「なんたって希ちゃんの誕生日だからねっ!」

絵里「え、ええ、そうね……」

絵里(そうよ。誕生日といえば誕生日プレゼントだわ……私なんにも準備してない……)

絵里(しかも誕生日はもう明日……)

絵里(……どうしよう……)

穂乃果「で、なにをあげるの?」

絵里「えっとぉ……」

絵里(穂乃果の無邪気な笑顔がつらい…)

絵里「と、当日までのお楽しみよ!」

穂乃果「そっか。わかった! 楽しみにしてるねっ! じゃあお手紙よろしくねっ!」タッ

絵里「…………」

絵里(……誕生日プレゼントどうしよう……)

絵里(なにをあげればいいのかまったく思い付かないわ)

絵里(しかも期限は明日……)

絵里「どうすればいいの……?」



絵里「……」ガラッ

絵里(誰もいない)

絵里(μ`sのみんなはどうしたのかしら)

絵里(希の誕生日)

絵里(希の誕生日を忘れていたなんて)

絵里(考えてみればいままで希の誕生日を祝ったことなんてなかったわ)

絵里(なぜかしら)

絵里(あんなに希と一緒にいて)

絵里(友達なのに……)

絵里「…私ってバカ…」

絵里(希に友達なんて威勢良く言った自分が恥ずかしい……)

絵里(誕生日を一回も祝ったことがないなんて)

絵里(友達だって言える資格なんてなんわね……)

絵里(…誕生日プレゼントどうしよう…)

ガラッ

絵里「?」

にこ「絵里だけ?」

絵里「…えぇ」

にこ「なんて暗い顔してんのよ」

絵里「え?」

にこ「明日はあんたの大好きな希の誕生日だっていうのに」

絵里「…そうね…」

にこ「?」

絵里「にこは希への誕生日プレゼントはなににするの?」

にこ「はぁ? にこ?」

にこ「にこは髪飾りよ」

にこ「希に似たアイドルがいて」

にこ「そのアイドルのトレードマークの大きい花の髪飾りの模擬品があるからそれをあげるの」

絵里「しっかり考えているのね…」

にこ「あんたに言われたくないわ」

にこ「どうせあんたのことだからアホみたいに真剣に考えてて」

にこ「さぞ素晴らしいプレゼントを用意してるんでしょうね」

絵里「…そう思う?」

にこ「はぁ? さっきから意味がわからないわ」

絵里「…………」

にこ(なんなのよ、いったい。今の絵里すごく話しづらいんだけど……)

絵里「……ところで」

にこ「え?」

絵里「パーティーっていうのはどんな風になるの?」

にこ「ああ、たしか希にばれないようにあんたにも内緒にしてたんだったわね」

にこ「明日の放課後にここを飾って」

にこ「家庭科室であらかじめ用意しておいた焼き肉でパーティーをするのよ」

にこ「で、そのあとここで誕生日ケーキを食べる」

にこ「最後にプレゼントを渡して」

にこ「あんたが希に書いてきた手紙を朗読する」

にこ「ざっとこんなもんね」

絵里「え? ……ちょっと待って」

にこ「なんか他にやりたいことでもあるの?」

絵里「そうじゃなくて」

絵里「朗読? 私……手紙を朗読するの?」

にこ「そうよ」

絵里「私だけ?」

にこ「まあそうね」

にこ「希といえば絵里だからね」

絵里「………」

にこ「なに? みんなの前で朗読するのが恥ずかしいの?」

絵里「いえ……朗読するなんて穂乃果から聞いてなかったから驚いただけ」

にこ「大差ないでしょ」

絵里「…………」

にこ(また黙ってる)

にこ(どうしちゃったのかしら、絵里は)

にこ(なんか気まずいわねぇ)

絵里(…朗読…)

絵里(いまのいままで誕生日の存在を忘れていた私に)

絵里(いったいなにを語れっていうのよ…っ!)

絵里(……どの口が語れるのかしら)

絵里(誕生日を忘れてしまっていた私にはもう友達の資格なんてないのに……)

にこ「ま、まあ誕生日パーティーの最後を締めるんだから絵里くらいでないとダメってことよ」

絵里(そんな大役私には務まらない)

絵里「……にこ」

にこ「な、なによ」

絵里「……実は、私……っ」

にこ「…うん…」ドキドキ

絵里「希の誕生日を忘れていたの」

にこ「…………」

にこ「……は…?」

絵里「だから」

絵里「希の誕生日を」

絵里「この私が」

絵里「忘れていたのっ!」

にこ「…………」

絵里「しかもね」

絵里「これまでに一度も希の誕生日をお祝いしたことがなかったの」

絵里「一度もよ?」

絵里「……笑っちゃうでしょ?」

絵里「あれだけ長いこと希の近くにいて」

絵里「希の誕生日を祝ったことがないなんて……」

絵里「私にっ」

絵里「……私に希の友達は名乗れないわ……」

にこ「…………」

絵里「…………」

にこ「……まあそんな気もしてたけどね」

絵里「…………」

にこ「なんていうのか……あんたたちふたりって不器用そうというか」

にこ「はっきり言って変わってるから」

絵里「…………」

にこ「それにもしそうなら希だってだめってことになるわ」

にこ「絵里が一度も希の誕生日を祝ったことがないってことは」

にこ「希も絵里の誕生日を祝ったことがないってことじゃないの?」

にこ「だって人に祝われていながら自分は祝わないってほどあんたも鈍い人間じゃないでしょ?」

絵里「……わからないわ……」

絵里「……でも希の誕生日は明日で」

絵里「私はそのことをすっかり忘れていた」

絵里「それは変わらないわ……」

にこ「…まあ、そうね…」

絵里「…………」

にこ「…………」

にこ(それで絵里はこんなに落ち込んでるのね)

にこ(これまでずっと一緒にいた友達の希の誕生日を忘れていたことに罪悪感を覚えて)

にこ(自己嫌悪に陥っていると……)

にこ(めんどくさいことになったわね)

にこ(ここでにこが絵里をぱっと励ましちゃえば済む話なんだけど)

にこ(さっきちょっと試みたところだと)

にこ(無理っぽかったのよね)

にこ(希と絵里の関係は私にもちょっと入り込めないところもあるし)

にこ(これは本人がどうするかに任せるしかないわね)

にこ「まあその、なんとかやるしかないわね」

絵里「…………」

にこ「……私に協力できることがあれば言ってくれればいいし……」

絵里「…………」

にこ(だめね、まったくの無視を決め込まれてる)

にこ(このままではにこのほうも落ち込みそうだわ)

にこ「……」ハァ

バシッ

絵里「ッ…! あたま……」

にこ「しっかりしなさい!」

にこ「そりゃ大事な友達の誕生日を忘れてたら落ち込みもするだろうけど」

にこ「せっかくの希の誕生日なんだから明るくしなさい!」

にこ「そのままじゃ希も悲しむわよ?」

絵里「……そうね」

絵里「とにかく明日が誕生日なんだもの」

絵里「それだけはなんとか盛り上げないと……」

にこ「そうよ。誕生日なんて楽しくてなんぼよ」

絵里「ええ。ありがとう、にこ」

にこ(やっと絵里の笑顔が見れたわ)

にこ(可愛い顔してるんだから笑っとく義務があるのよ)

絵里「ごめんなさい、今日は練習休ませてくれる?」

絵里「なんとか希にぴったりの誕生日プレゼントを探してみるから!」

にこ「今日の分はしっかり自主練しておくのよ?」

絵里「ええ。じゃあ!」

ガラッ

にこ(なんとか慰められたみたいね)

にこ(おかげでにこの手のひらは痛いんだけど)

にこ(でもなんでそんなに悩む必要があるのかしら)

にこ(にこには絵里と希なんてなにがあってもずっと一緒にいるように思えるんだけど)



絵里「…………」スタスタ


絵里(……たしかにいままで誕生日を祝えなかったこととか)

絵里(明日のことを忘れていた事実は変わらない……)

絵里(でもせっかくの誕生日なんですもの)

絵里(これはチャンスなんだわ)

絵里(いままでの二年間は誕生日を祝うことができなかった)

絵里(でも今年はちがうっ!)

絵里(今年の誕生日はお祝いができる)

絵里(今年の誕生日はμ`sの与えてくれたチャンス……)

絵里(私はこのチャンスを大切にしないといけないっ)

絵里(せめて今年の誕生日はおもいっきりお祝いしたい……)

絵里(それこそ私が希にできるせめてもの気持ち──)




絵里(とりあえずショッピングモールに来てみたんだけど……)

絵里(プレゼントはなにがいいのかしら……)

絵里「……えーと……」キョロキョロ

絵里「……お店いっぱいあるわね」

絵里(そもそもこんなところあんまり来ないし)

絵里(どこになにがあるのかもよくわからないわ)

絵里(だめね、日頃から面倒くさがらずにお買い物しておけばよかった……)

絵里(たしか希の好きなものって……)

絵里(焼肉?)

絵里(でも焼肉はもうパーティーでやるみたいだし)

絵里(せっかくなら残るものがいいわよね?)

絵里(焼肉で、しかも残るもの……)

絵里(トング?)

絵里(誕生日プレゼントにトングなんてもらってうれしいのかしら?)

絵里(だめだ。そういえば私誕生日プレゼントもあんまり渡したことないんだったわね)

絵里「…………」

絵里(行き詰まった…っ!)

ことり「あれ、絵里ちゃん?」

絵里「え? ことり?」

絵里「…と花陽も」

絵里「こんなところでどうしたの?」

花陽「私達はお誕生日パーティー用のお買い物にきてるの」

ことり「足りなかったものがあったから…」

絵里「そうなのね。それはご苦労様」

ことり「絵里ちゃんはどうしてお買い物なんてしてるの?」

絵里「私は……」

絵里(…………)

絵里(これはもしかしたらラッキーなのかもしれないわ)

絵里(二人ならお買い物にも慣れていそうだし)

絵里(誕生日プレゼントのアイディアももらえるかも……)

花陽「絵里ちゃん?」

絵里「……実は希の誕生日プレゼントを探しているところなのよ」

ことり・花陽「え?」

ことり「誕生日プレゼントを探してるって……お誕生日は明日だよ…?」

花陽「い、いま探してるって間に合うの、絵里ちゃん?」

絵里「そうなの。だから困っているのよね。なにをあげればいいのかアイディアがないの」

ことり「…まあ、絵里ちゃんにとっては希ちゃんは特別に仲がいいからね」

ことり「しっかり考えるほうがいいとは思うよ」

絵里「私お買い物にも慣れてないから…」

絵里「もし良ければプレゼント探しを手伝ってほしいの……」

絵里「……いい?」

花陽「そんなに長い買い物でもないから私たちは時間はあるよ?」

ことり「うん。私たちでよければお手伝いさせていただきますっ!」

絵里「よかったわ。ありがとう、ことり、花陽」

ことり「まったくなんにも思い付かない感じなの?」

花陽「なにかこんなものがいいとか」

絵里「それがないの」

ことり「あちゃ~、たしかにそれは困るね」

花陽「うん……さっきも絵里ちゃん、ものすごく困ってる感じだったもん」

ことり「そうそう。なんか金髪のきれいな人がしきりに辺りをキョロキョロしてるなぁって」

ことり「よく見てみると絵里ちゃんだったの」

絵里「…目立つかしら?」

ことり「それはもう! ただでさえ金髪色白のスタイル抜群美人だもん」

花陽「こんな人混みだと余計目立っちゃうよ?」

絵里「…そうだったのね。うかつだったわ…これからは気を付けるわね」

ことり「うんうん。それで……どうするの?」

花陽「とりあえずアクセサリーショップにでも行ってみる?」

絵里「いいわね! アクセサリーショップなんていかにもなにか見つかりそうじゃない!」

絵里「さっそく行きましょう!」




絵里「ああ! 素晴らしいわ!」

絵里「ハラショー! これなんていいわね!」

絵里「あ! これも! あっちにもカワイイものが!」

花陽「…絵里ちゃんってアクセサリー好きだったっけ?」

ことり「…ああ、うん。たしかそんな話も聞いたことある気がする」

絵里「やっぱり二人に相談してよかったわ! さっそくよさそうなお店に来れたのだもの!」

花陽「喜んでくれたのならなにより……」

ことり「でもなんか普通にお買い物してるみたい」

ことり「なにか希ちゃんに似合いそうなものは見つかった、絵里ちゃん?」

絵里「あ! そうだった、希へのプレゼントを探しているのだったわね」

花陽「…えぇ…っ。それを忘れちゃうのぉ…っ」

絵里「こんないいお店があるなんて知らなかったのですもの」

絵里「好きなアクセサリーは全部自分で作っちゃうし」

絵里「今度亜里沙とふたりで行こうっと!」

ことり「待って。絵里ちゃん」

絵里「なにかしら」

ことり「さっきアクセサリーは自分で作るって言ったよね?」

絵里「ええ」

ことり「じゃあ希ちゃんのプレゼントは絵里ちゃん手作りのアクセサリーにしたらいいんじゃない?」

絵里「私の手作り?」

絵里「…それはいいかな」

ことり「え? なんで?」

絵里「だってしょせんは手作りだもの。自分で使うならまだしも人にあげるようなレベルには届かないし……」

絵里「ましてや希への誕生日プレゼントになんて恥ずかしくて無理だわ」

ことり「でも手作りのほうが愛がこもっててことりは好きだよ?」

花陽「わ、私も手作りのものをプレゼントしてもらったら…とってもうれしいな…」

絵里「…そうかしら…そうは思えないわ…」

ことり「絵里ちゃん」

絵里「?」

ことり「μ`sのみんなはことりの作った衣装を着てライブをしてくれてるでしょ?」

絵里「ええ」

ことり「それは何でだと思う?」

絵里「何でってそれはそれがμ`sだからでしょう?」

ことり「既存の衣装を買ってきてもいいと思うの」

絵里「費用の問題とかあるのかしら」

ことり「たしかにそれもあるけどそれだけでもないの」

ことり「ことりはいつもμ`sや曲にぴったりあってその魅力を最大限いかせるように考えて作ってる」

ことり「そういうのは手作りじゃないとできないと思う、ことりはね」

絵里「たしかにそれは言えてるわね」

絵里「ことりのつくる衣装はうまくμ`sに似合っていると思うわ」

ことり「希ちゃんへのプレゼントもおんなじだと思うの」


絵里「え?」

ことり「売られてるアクセサリーにはきれいで素敵なものがいっぱいあるかもしれない」

ことり「でも絵里ちゃんから希ちゃんへの気持ちを表現できるものはやっぱり」

ことり「絵里ちゃんの手作りが一番いいのかなって思う」

ことり「たしかに思いを込めたものをつくるのは大変だけどね」

絵里「……」

花陽「絵里ちゃん?」

絵里「たしかにそうだわ」

絵里「お店にはかわいいものがいっぱいあるけど」

絵里「希にぴったりなものっていったらどれもおんなじに見える」

絵里「つくってみたい」

絵里「希にぴったりでお似合いなたったひとつのアクセサリー」

ことり「うん! その意気だよ!」

花陽「たしかこのアクセサリーショップには手作り用のものも揃ってたはずだよ」

絵里「ええ、まずは素材探しからね!」




絵里「…ふぅ、こんなものかしら…」

ことり「うん! いい感じ!」

花陽「けっこう時間がかかっちゃったね」

絵里「ええ。でもおかげでいいものを選べたわ」

絵里「…これで理想のアクセサリーが作れるはず」

ことり「うん。ことりたち応援してるから!」

花陽「がんばってね、絵里ちゃん…!」

絵里「本当にありがとう!」

ことり「ことりたちはまだお買い物するから」

絵里「ええ。また明日!」



絵里「ただいま」

亜里沙「おかえり、お姉ちゃん」

亜里沙「今日は練習お休みなの?」

絵里「ええ」

亜里沙「明日の希さんの誕生日パーティー楽しみだね!」

絵里「え?」

絵里「なんで亜里沙が知ってるの?」

亜里沙「雪穂から穂乃果さんに聞いたって」

絵里「ああ、そうだったのね」

絵里(……穂乃果、あなたの秘密はどうやらだだ漏れよ……)

亜里沙「お姉ちゃんは特に楽しみにしてるんでしょ?」

亜里沙「なんたって希さんとは一年生の頃から仲良しだったんだもんね」

絵里「え、ええ。そうね…」

亜里沙「お誕生日プレゼントはなににしたの?」

絵里「手作りのアクセサリーにしようと思ってるの」

亜里沙「ハラショー!! それとっても素晴らしいわ!!」

亜里沙「亜里沙に見せてほしいなぁ」

絵里「実はこれからつくるのよ」

亜里沙「えぇっ? これからつくるの?」

亜里沙「だってお誕生日って明日でしょ?」

亜里沙「なんでそんなにゆっくりしてるの?」

絵里「ちょっとプレゼントを決めるのに時間がかかってね」

亜里沙「あ~、そっか。大事な希さんへのプレゼントだもんね」

亜里沙「うん! がんばって! 亜里沙も手伝えることがあるなら呼んでほしいな」

絵里「ええ。ありがとう」

亜里沙「うん!」




絵里「なんとか今日中には完成さないと、ね…」



絵里「……ふぅ……」

絵里「こんなものかしら」

絵里「数時間で作ったにしてはなかなかのできだわ」

絵里「今何時かしら」チラッ

絵里「え? 嘘……もう12時回ってるじゃない…」

絵里「…とっても疲れたわ…」

絵里「でも満足のいくものができた。それだけで上出来だわ」

絵里「まあ理想とまではいかないけど、いままで作ったなかできっと最高の出来……」

絵里「我ながらよくがんばった♪」

絵里「もうお風呂に入って寝ちゃいましょう」

絵里「明日は希の誕生日なんだから」




絵里「ふぅ、いいお湯だったわ」

絵里「明日の授業の準備もして、と……」ガサゴソ

絵里「あら、これってなにかしら──」

絵里「あっ!!」

絵里「希への手紙!!」

絵里「書くのすっかり忘れてたわ!!」

絵里「……どうしよう。今から書くの…?」

絵里「もう一時前よ……いつもならとっくに寝ている時間なのに……」

絵里「…書くしかないわね…」

絵里「……お誕生日おめでとう。希とはいままで仲良くしてきて、とても感謝しています。これからもよろしく……と」

絵里「……だめ、気持ちがぜんぜんこもってないわ」

絵里「……だって私は今日まで希の誕生日なんてすっかり忘れてしまっていたんだもの……」

絵里「手紙なんてどう書けばいいのよ……」

絵里「気持ちは込めたい。大切な希だもの」

絵里「でも、果たしてこんな私に気持ちなんてあるのかしら……」

絵里「…………」

絵里「…書けない…」

絵里「もうやめちゃおうかしら……」

絵里「どうせなんにも書けないんだったら」

絵里(…………)

絵里(希)

絵里(私はいったいどうすればいいの…)

絵里(アクセサリーはがんばって作ったのに…)

絵里(紫色のブレスレット)チャラッ

絵里(おおらかで優しいけどどきどき繊細な希に似合うようイメージして作ったもの)

絵里(ブレスレットはなんとか作れた)

絵里(ことりと花陽の助けも借りて形にすることができたのに)

絵里(手紙は書けない)

絵里(どうしても言葉では表現できない)

絵里「手紙は書けなかったなんて言えばμ`sのみんなはどんな顔をするかしらね」

絵里「穂乃果はがっかりするかしら。あんなに楽しそうに話してたんだものね」

絵里「にこもがっかりしつつ、でもしょうがいわねみたいなことを言いながら慰めてくれるのかしら」

絵里「ことりと花陽も驚くでしょうね。あんなに一生懸命ブレスレットの素材を探していたのにどうして手紙は書けなかったのかって」

絵里「そして」

絵里(希は悲しむ)

絵里(どうしてえりちは手紙を書いてくれなかったん? ってたまに見せる子どもみたいに幼い悲しい顔)

絵里「希を悲しませたくはないんだけどなぁ……」

絵里「せっかくの誕生日なのに」

絵里「希と出会って初めてお祝いできるのに」

絵里「……書けないもの……」

絵里「…しょうがないじゃないっ…」

トントン

絵里「?」

亜里沙「お姉ちゃん、まだ起きてるの?」キィッ

絵里「亜里沙……」

亜里沙「……お姉ちゃん? どうしたの…?」

絵里「?」

亜里沙「…どうしてそんな悲しそうな顔をしてるの?」

亜里沙「すぐに泣いてしまいそうな顔してるよ…」

絵里「え? そうかしら……」

亜里沙「明日はお祝いの日なのに」

亜里沙「机の上にあるの、希さんへのプレゼント? 完成したんだね」

絵里「え、ええ……」

亜里沙「とっても素敵」

亜里沙「不思議」

亜里沙「お姉ちゃんの希さんへの愛を感じるわ」

亜里沙「さすがにお姉ちゃんは希さんへの想いがちがうって思う」

亜里沙「私もμ`sが大好きだけど」

亜里沙「さすがにお姉ちゃんの愛情にはかなわないよ」

絵里「ありがとう……」

亜里沙「誕生日プレゼントってなんかなつかしい」

絵里「………」

亜里沙「私もよく小さい頃家族の誕生日は絶対に忘れずにお祝いした。お姉ちゃんもそうだったよね」

絵里「ええ。その月に入るとあ、誰々の誕生日が近いって」

亜里沙「いろんなプレゼントをあげたよね」

亜里沙「手紙も丁寧に書いて」

亜里沙「喜ぶ顔を見たくてうずうずしてた」

絵里「ええ」

亜里沙「私達も大きくなっていつのまにかそんな気持ちも薄れていっちゃってたけど」

亜里沙「お姉ちゃんのそのブレスレットを見ているとそんな昔を思い出しちゃった」

亜里沙「やっぱりμ`sは素敵」

絵里「…………」

絵里「亜里沙?」

亜里沙「なに、お姉ちゃん?」

絵里「少し聞いてくれるかしら…?」

亜里沙「うん」

絵里「実は私、希の誕生日のことをすっかり忘れてしまっていたの…」

亜里沙「え?」

亜里沙「どうして…だって希さんはお姉ちゃんにとって大切な友達でしょ?」

亜里沙「それも二年間もずっと一緒にいたのに…」

絵里「その二年間私は一度も希にお誕生日をお祝いしてあげられなかったの…」

亜里沙「どうして…」

絵里「私もずっと希の友達だったつもりでいたのだけど」

絵里「こんな私に友達だなんて名乗る資格はないのかもね」

亜里沙「なに言ってるの、お姉ちゃん…」

亜里沙「そんなわけない、そんなわけないよ」

亜里沙「お姉ちゃんと希さんはずっと友達」

亜里沙「きっとμ`sの誰に聞いてもそう答えるはずだよ」

絵里「…………」

亜里沙「それはこのブレスレットを見てもわかるわ」

亜里沙「だってこんなに素敵なものをつくれるんだもの」

亜里沙「お姉ちゃんのつくるアクセサリーは亜里沙も好きだけど」

亜里沙「これはお姉ちゃんがいままで作ってきた中で一番いいと思うよ」

絵里「亜里沙…」

亜里沙「たしかに希さんのお誕生日を忘れてしまったこととか」

亜里沙「いままで祝えなかったことは悲しいと思う」

亜里沙「私だって雪穂のお誕生日を忘れたらつらいし、そんな自分が嫌になるかもしれない」

亜里沙「でもだからって友達の資格がないなんて」

亜里沙「そんなのもっと悲しいよ」

絵里「………」

亜里沙「亜里沙はお姉ちゃんが希さんとずっと友達でいてほしいって思う」

亜里沙「亜里沙が言えることはそれだけ」

亜里沙「ブレスレット素敵だった」

亜里沙「亜里沙の誕生日のときにもそんなブレスレットがほしいな」

亜里沙「お姉ちゃん」

絵里「…………」

亜里沙「明日はとってもハラショーなお誕生日パーティーにしてねっ」ニコッ

絵里「亜里沙…」

亜里沙「もちろん希さんのためにも」

亜里沙「でも亜里沙にとっては」

亜里沙「お姉ちゃん自身のためにもそうしてほしい」

絵里「…ええ。ありがとう」

亜里沙「おやすみなさい」

絵里「おやすみなさい。ありがとう」




絵里「亜里沙にかなり気を遣わせてしまったようね」

絵里「そんなに悲壮な顔をしてたかしら」

絵里「だめなお姉ちゃんね」

絵里「でもたしかにそうだわ」

絵里「私たちが一緒に過ごしてきた二年間は本物だし」

絵里「友達の資格がないなんてどんな顔で希に言えばいいのよ」

絵里「今考えると私かなりおかしなことを考えていたのね…」

絵里「………」

絵里(素直に書きましょう)

絵里(手紙)

絵里(かっこつけずに意地なんて張らず)

絵里(想いのままを)

絵里(書きたい)

絵里(だってそれが友達に宛てる手紙ってもんでしょ?)

絵里「────」カキカキ…




ピピピピ

絵里「……ん、朝……」

絵里(朝目覚めていつもの習慣で時間と一緒に日付も見る)

6月9日

絵里(ついにこの日がやってきた)

絵里(この日付の意味を私は初めて感じることができる)

絵里(希の誕生日)




希「えりち、おはよう」

絵里「おはよう、希!」

希「あれ、なんか今日もやけに元気やん」

希「なにかあったん?」

絵里「なんにもないわよ?」

絵里(今日は待ちに待った特別な日だわ)

希「ふうん。変なえりち」

絵里「でもちょっと眠いわ」

希「あのまじめなえりちがめずらしく夜更かし?」

絵里「そうよ。つらかったんだから」

希「なにしてたん?」

絵里「ま、まあいろいろとね」

希「なんや隠し事? いかがわしいにおいがするなぁ」

絵里「い、いかがわしくなんてないわよ!」

希「ところで昨日は大丈夫やったん?」

絵里「え? 昨日?」

希「いや、急に体調を崩して部室で吐いたらしいやん。それで練習休んだんやろ?」

絵里「ええ? 誰がそんなこと……」

希「にこっち」

絵里「……あ~、そうそう。ごめんね、もう完全に治ったから」

絵里(…にこ、もう少しまともな理由を考えられなかったのかしら…)

希「そう。よかった」ニコッ

絵里「うん」

絵里(希の素敵な笑顔)

絵里(私はこの笑顔を崩さずに今日を乗りきれるのかしら)



絵里「……ふう。今日もなんとか学校が終わりね」

希「えーりちっ♪」

希「部室いこ?」

絵里「あ、ちょっと生徒会の用事があって」

希「?」

絵里「希にも手伝ってほしいなーなんて」

希「なんか仕事残ってたっけ?」

絵里「うん。ちょっとしたことなんだけど」

希「えりちが手伝ってほしいんならぜんぜん手伝うよ」

絵里「そう。ありがとう」

絵里(穂乃果から連絡があって知らせがあるまでは希を引き留めておいてほしいと言われた)

絵里(手紙の件は穂乃果が朗読のことを忘れていて私が持っててもいいということだった)

希「でももうすぐ梅雨やねぇ」

絵里「そうね」

絵里(でもこういうのってハラハラするけど)

絵里(楽しいっ!)

希「なんやえりちやけに笑顔やん」

絵里「そ、そんなことないわよ?」

絵里(私がばらしちゃ台無しじゃない)

絵里(あともう少しなんだから……)

ブブッ

絵里(きたっ!)

絵里(……希を家庭科室につれてきてほしい……)

希「……なに携帯見てニヤニヤしてるん?」

絵里「いや! 別になんにもないのよ?」

絵里「ところでちょっと生徒会の用事で家庭科室に行かないと行けなくなったんだけど一緒に来てくれるわよね?」

希「え? あ、うん。別にええけど……」

希「変なえりちやなぁ」

絵里「さあ、入って」

希「そら入るけど」ガラッ

希「うわ、真っ暗──」

パチッ

希「!?」

一同「お誕生日おめでとう!!」

パーンパーンパーン!!

希「?! えっ!? えっ?!」

希「これって……」

絵里「ええ」

絵里「お誕生日おめでとう。希!」

希「え……えりち……?」

希「だ、だって、いままで、こんなこと…なかった……のに……」

希「」ウルウル

絵里「希!? な、泣いてる!?」

希「…だって…こんなん…やったことないのに…急に……っ」グスグス

絵里「……ごめんなさい」

絵里「でも今年はお祝いできたわ」

希「…えりちぃ……」グスグス

絵里「えぇ。おめでとう」ナデナデ

にこ「ちょっと序盤から泣かれるとこれから盛り上がれないじゃない」

にこ「泣くなら最後にしなさいよ」

凛「にこちゃんひどいにゃー」

ブーブー

にこ「な、なによ! ちゃんとこのあとの流れを考えてるんだから全部やってあげたいじゃない!」

希「ふふふ、ありがとうね、にこっち」

にこ「ま、まあね?///」




穂乃果「いやぁー! もうお腹いっぱい! なんにも食べられないっ」

海未「穂乃果が満足に食べてどうするのですか!」

希「いや、ええよ? うちもお腹いっぱいやし」

希「むしろみんなに食べてもらってよかったわ」

希「気合いいれてくれるのは嬉しいけどお肉多すぎやったしね」

にこ「希がどれだけ食べるのかよくわからなかったからね」

希「なんかちょっとうちバカにされた?」

にこ「他意なんかないわよ! あんたがなに気にしてるのよ!」




一同「ハッピーバースデー希「ちゃん」!」

希(ケーキが異常にでっかいせいかロウソク多いなぁ……)

希(いっぺんに消せるかな?)ドキドキ

希「ふうぅぅぅぅっ…!」

にこ「さっすが希ね! あの量のロウソクを一気に消せるなんて」

希「…ま、まあね…」ハァハァ

ことり「じゃあみんなでケーキを取り分けようっ! 今回のために特別に作ったからきっと気に入ってくれると思うケド」

希「このケーキことりちゃんがつくったんや?」

ことり「うん♪ みんなにも手伝ってもらったけどね」

希(嬉しい…嬉しいけど)

希(もう少し小さくてもよかったような……)




穂乃果「も、もうホントになんにも食べられない…」

海未「純粋に食べ過ぎです!」

希(うちもけっこうヤバイわぁ……)

にこ「さ! 時間も遅くなってきたしそろそろ終盤よ!」

希「?」

にこ「誕生日といえばプレゼントにこ!」

にこ「というわけでこれから大プレゼントお渡し会の始まりよ~!」

希「うちまた泣きそうやわ」

にこ「その涙最後までとっておいてっ!」

希「無理言うわぁ…」




にこ「さあ! 最後は希といえばこの人! 絵里の番よ!」

希「えりち」

絵里「希」

絵里「私悩んだ結果手作りのものをプレゼントすることにしたの」

希「手作り?」

絵里「がっかりしないでほしい」

ことり「そんなことないよ!」

花陽「うん! 絵里ちゃんのアクセサリーはきっとどんなものより希ちゃんへのプレゼントにふさわしいはずだよっ!」

絵里「…ありがとう」

絵里「希」

絵里「あなたのことを想って、あなたに似合うように最高のブレスレットを作ったつもりよ」

絵里「受け取ってほしい」

希「…えりち…」

希「素敵なブレスレット」

希「キラキラしてる」

希「うちの好きな紫の色」

希「鮮やかで豪華に見えるけど」

希「同時に大人びていてどこか落ち着く……」

希「ありがとう、えりち」

希「大切にするっ!」

絵里「嬉しい」

希「ありがとう。えりちだけやなくてみんなも」

希「こんな素敵なお誕生日は初めてだし一生忘れない」

にこ「なに水くさいこと言ってるのよ」

にこ「それにまだ終わりじゃないわよ?」

希「へ?」

希「まだなにかあるん?」

絵里「希」

希「えりち?」

絵里「私希に手紙を書いてきたの」

希「え? 手紙? なんで?」

絵里「書けって言われたからよ」

希「ふふ、なにそれ」

絵里「しかもこの場で朗読しなきゃいけないらしいの」

希「朗読?」

絵里「もう恥ずかしいわ」

希「それって……」

希(うちも恥ずかしいやつやないの…)

絵里「読むわね?」

希「う、うん///」ドキドキ

絵里「希、お誕生日おめでとうございます。私は希に出会えたから高校生活が楽しくなったといってもまったく過言なんかではありません」

希「………」

希(うちもやで、えりち)

絵里「二年間二人で過ごしてくれてとても感謝しているわ」

絵里「そしてμ`sになってからも」

絵里「今回μ`sのみんなとお祝いできてとっても楽しいお誕生日パーティーができそうで私は嬉しいです」

絵里「なにより希が喜んでくれればそれで」

絵里「希、生まれてきてくれてありがとう」

絵里「希はずっと私の大切な友達です」

絵里「おわりよ」

パチパチ…

ことり「絵里ちゃんと希ちゃんの仲はとっても素敵だね」

花陽「なんか憧れる」

絵里「これが今読んだ手紙よ、はい」サッ

希「ありがとう、嬉しかった」

絵里「…希?」ボソッ

希「?」

絵里「…この手紙は家に帰ってから開いてね?」ボソッ

希「…えりち…?」

にこ「さあこれで希の誕生日パーティーは終わりよ!」

穂乃果「えぇ~、もう終わっちゃうのかぁ」

希「みんな今日は本当にありがとう。うちにとって今日は特別な日よ!」

にこ「あんたの誕生日なんだから当たり前でしょうが」

海未「希が喜んでくれてなによりです」

ことり「うん! 準備をがんばったかいがあったね!!」

にこ「じゃあ解散よ~。もう夜も遅いから変なやつに襲われるんじゃないわよ~」



希「えりち」トコトコ

絵里「ん?」

希「今日は本当にありがとう」

絵里「今回私はほとんど準備していないの」

希「あ~、やっぱり?」

絵里「なによそれ」

希「いやえりちってそういうの隠すん下手そうやからね」

絵里「そうかしら?」

希「うん。今日のパーティーの直前も激ヤバであやしかったで?」

絵里「激ヤバで? ふふ、それは申し訳ないわねぇ」

絵里「…ブレスレット似合ってよかったわ」

希「うん。ブレスレットになんか興味なかってんけどこれを機に好きになった」

希「ブレスレットってこんなに素敵なものやったんやね」

絵里「ええ」

希「でもアクセサリー作りが趣味なんは知ってたけどここまで上手いなんて知らんかった」

絵里「今回のは特別な出来よ?」

希「そうなんや」

絵里「よければ今度一緒に作らない?」

希「え?」

絵里「アクセサリー」

希「楽しそう!」

絵里「希がどんなものを作るのか見てみたいわ」

希「じゃあうちが上達したあかつきには今度はうちが手作りアクセサリーを誕生日プレゼントとして贈るね」

絵里「単純な発想ね、ふふ」

希「なによ、うちの出来を見て思わず泣くで?」

絵里「ほんとに? 楽しみにしてるわね?」

希「あ~信じてないやんそれ~」

絵里「え~そんなことないわよ、ふふふ」

希「笑ってるやん! ふふ」

絵里「希だって」




希「……じゃあうちはこっちやから」

絵里「ええ」

希「今日は本当に嬉しかった。ありがとう」

絵里「うん。これからもずっと仲良く友達でいてね?」

希「言われなくてもいるつもりやで、うちは」

絵里「ふふ、じゃあ気を付けてね」

希「うん。バイバイ」

絵里「さようなら」




希「いやぁ、今日はほんまいっぱいプレゼントもらったわぁ」ゴソゴソ

希「……あ、手紙……」

希(えりちからの手紙)

希(きれいな封筒に素敵な便箋)

希(えりちらしい素敵な趣味)

希(字も丁寧で)カサッ

希(──ん?)

希(これ──)

希(えりちがパーティーで朗読した内容と違う…)

希(手紙を渡すときのつぶやき)

「この手紙は家に帰ってから開いてね?」

希(えりち、どういうことなん…?)

希(とにかく読んでみよ…)

絵里『希へ』

絵里『お誕生日おめでとう』

絵里『なんてことは私なんかが言っていいのかわからない』

希(ん?)

絵里『実は私は希の誕生日の日付を忘れていたの』

希(…………)

絵里『だからμ`sのみんなに希の誕生日パーティーをすると言われたとき私は迷った』

絵里『大切な友達の誕生日を忘れてしまうような私が本当に祝っていいんだろうか…って』

希(……えりち……)

絵里『それに忘れていただけじゃない』

絵里『考えてみれば私は希と一緒にいたこの二年間一度も希のお誕生日を祝ったことがなかった』

絵里『なぜなのかはわからない』

絵里『でもこんなことでは私は希の友達を名乗る資格なんてない…そんなことまで考えたわ』

絵里『今回私はμ`sの力を借りて、μ`sの一員としてお誕生日のお祝いができた』

絵里『その事がすごく嬉しかった』

絵里『本当は私は希のお誕生日をお祝いしたかったんだって気づいたの』

絵里『希が生まれてきたことに感謝するし、そういう意味では希のご両親にもお礼を言いたい』

絵里『でもそれ以上に私と友達でいてくれて本当にありがとう』

絵里『今回そんな想いがあふれてどうしようもなかった』

絵里『こう書いてみると私ってとても単純なのね』

絵里『私は希が好き』

絵里『希とこれからも一緒にいたい』

絵里『きっと私はこれだけを伝えたかったの』

絵里『希のいう理想の友達には遠いかもしれない』

絵里『残念だけど希の夢は私では叶えられない』

絵里『でも私にとって希は唯一無二の親友で』

絵里『希にとってもそうだといいなと思う』

絵里『だからそんな単純で、だけどこの小さな胸にはおさめきれない想いを乗せて言わせてほしい』

絵里『ハッピーバースデー希』

おわりです。

お読みいただきありがとうございました。

なんとか今日中に書ききりたかったのでよかった……

お誕生日おめでとう! 希!

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