アクティヴレイド File 404 「プリンセスクライシス」 (47)

来るべき未来。警察の通常装備では対応できない出来事が起きた時、アクティヴプロジェクトに認められた力が炸裂する。

これは日本のアクティヴ、第三機動強襲室の活躍を描く物語である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496848782

【吉祥寺駅 南口改札】

はるか「…んん~、ふぁ…昨日はちょっと夜更かししすぎたかなぁ」

はるか「廃止区間の動画って、一度見始めると止まらないのよねぇ…あふ…」

女子高生A「ねぇちょっと、なんか最近羽振り良さそうじゃん」

女子高生A「もしかして、年上で金持ちの彼氏でもできた?」

女子高生B「いないよぉ、そんなの」

女子高生A「じゃあ何でヴィトンの財布なんて持ってんのよ。絶対なんかあるでしょ!」

女子高生B「えぇ~、別に…」

女子高生A「うりうり、白状しなさいよォ~」

女子高生B「も~…誰にも言わない?」

女子高生A「言わない言わない」

女子高生B「…ここだけの話なんだけどね」

はるか「…いいなぁ、青春って感じで…」

はるか(…女子高生、かぁ)

はるか(私にもあんな時期、あったんだよなぁ…)

【機動強襲室第八課】

はるか「おはようございま~…」


「だから、何度言えば分かるんだ貴様は!」


船坂「まあまあ二人とも、落ち着いて…」

瀬名「空き缶とペットボトルは別の袋に分けて捨てろ!子どもでもやってることだぞ!」

黒騎「あぁ?別にどっちも燃えないゴミなんだから一緒でいいだろ」

瀬名「武蔵野市ではペットボトルはプラゴミ!缶は缶ゴミで出す決まりだ!一緒にするな!」

黒騎「か~っ、どうしてそういちいち細かいかね、近所のおばちゃんかお前は…」

瀬名「お前がガサツすぎるだけだ!」

はるか「…お、おはようございま~す…」

船坂「ああ、星宮くんおはようございます」

はるか「朝から賑やかですねぇ」

船坂「ええ、黒騎くんが瀬名くんのゴミ逆鱗に触れてしまったようで」

はるか「は、はぁ…」

船坂「そういえば、ボスが星宮くんが出勤次第、室長室に来るようにって言ってましたよ」

はるか「え?な、何だろう…?」

船坂「何か、思い当たることでも?」

はるか「ええっと…仕事中にYouTubeで動画見てた件かな…」

はるか「いや…報告書と間違えて時刻表提出しちゃった件かも…」

船坂「…とりあえず、今から申し訳なさそうな表情の練習した方がいいかもしれないですね」

【室長室】

はるか「室長、星宮入ります」

凛「ああ、おはようはるかちゃん」

はるか「私に用件あるって船坂さんが言ってたんですけど…その~…」

凛「ああ、そのことなんだけど、ちょっとこれを見て欲しいの」

はるか「は、はあ…」

はるか「ん?これ…アルバイトの募集ですか?」

凛「ええ、そうよ」

はるか「れ…レンタル姫?」

はるか「何ですか、これ?」

凛「レンタル姫、最近女子高生~女子大生を中心に密かに人気を集めてるアルバイトよ」

凛「一見普通のアルバイトなんだけど、働くためにはある条件があって…」

はるか「ある条件?」

凛「運営側が仕事を紹介できるのは、女性に限る…だそうよ」

はるか「あぁ、だから"姫"…」

はるか「っていうかこれ、どんなバイトなんですか?」

凛「サイトの上の方に概要が載ってるから、読んでみて」

はるか「は、はあ…」

はるか「なになに…レンタル姫は、姫であるあなたの1日を貸して頂く革新的レンタルサービスです」



登録して頂いた情報を元に、運営側がサイト上に広告を掲載し

それを見たクライアントがお気に入りの姫を決め、その1日を借りるというのが本サービスの提供方法となります

一回の仕事で高額報酬が魅力!一度だけのお試しでもOK!詳しくは…

凛「どう?何となくわかった?」

はるか「はぁ…分かりましたけど…」

はるか「何ていうか、いかにもな感じですねぇ…」

凛「ええ、そうなんだけど…」

凛「実は最近、このレンタル姫利用者関連のトラブルが報告されてて」

凛「生活安全課の方にも、被害者からの相談が何件か届いてるのよ」

はるか「トラブルって…どんなトラブルですか?」

凛「報告によると、どうやら紹介先で性的な被害を受けた…ってことらしいわね」

はるか「え、それって…」

凛「ええ、被害届を出しているのは、サイトに登録した女の子たちよ」

凛「高額報酬に釣られて仕事をしたら、その後事件に巻き込まれてしまった…ということらしいわ」

はるか「やっぱり、いかがわしいバイトだったんですね…」

凛「ええ…でも、運営側に問い合わせても「そんな仕事を紹介した事実はない」の一点張り」

凛「捜査に踏み切って摘発しようにも、現時点では被害報告が少ないし」

凛「それに、証拠が被害者の証言だけじゃ、いまいち押しが弱いってことで…」

凛「安全課の方でも、この件は宙に浮いた状態になってるのよね」

はるか「宙に浮いてるって…」

凛「…要するに、よくある"見て見ぬ振り"ってやつね」

はるか「な、何ですかそれ!?」

はるか「それじゃあ、傷ついた女の子たちの気持ちはどうなるんですか!?」

凛「落ち着いて、はるかちゃん」

凛「見て見ぬ振りで終わらせたくないから、今こうして話をしてるのよ」

はるか「そ、そうですか…」

凛「このバイト、仕事をするにもまずは会員登録を済ませないといけないんだけど」

凛「会員になれるかどうかは、運営側の審査次第らしいのよ」

凛「だから探りを入れようにも、こちらからは簡単に接触できなくて…」

はるか「それじゃあ、どうやって捜査するんですか?」

凛「黒騎君がしまじろう君に依頼して、運営元のメールアドレス…窓口は既に割れたわ」

凛「窓口ではアルバイト希望者が送ったメールの内容を元に審査が行われてるらしくて」

凛「採用者にのみ、返信が来るみたいなの」

凛「ダイハチとしては、本件に関して潜入捜査による調査…及び摘発を視野に入れていきたいと思ってるんだけど」

はるか「へ~…」

はるか「潜入捜査って、何だか映画みたいですねぇ」

凛「そ、そうね…」

はるか「でもこのレンタル姫って、要するにオタサーの姫ってやつですよねぇ」

はるか「私だったら、そういうのはちょっと恥ずかしいから無理だなぁ」

凛「…………」

はるか「……ん?」

はるか「あの、室長…もしかしてなんですけど…」

凛「ごめんっ!はるかちゃんのプロフィール、勝手に送っちゃったんだけど…」

凛「採用、だって…」

はるか「……え…ええぇえぇええっ!?」

【そんなこんなで後日・井の頭公園】

はるか「……はぁ、なんでこんなことに」

はるか(そりゃまあ…ダイハチの女性陣で一番オタク知識に通じてるのは私かもしれないけどさ…)

はるか(だからって、オタサーの姫って…えぇ~…)

はるか「…無理無理無理、絶対無理~!」


「あの…もしかしてネコにゃんだ~さんですか?」


はるか「え…あ、はい?」

男「どうもこんにちは~、えっと…僕藤原…じゃなくて、ええっと、あっ、KZです」

はるか「あ、ハイ…」

藤原「うわぁ…えっ、プロフィール写真より可愛…あっ、ええっと…その~…」もじもじ

はるか(う、うわ~…)

はるか(…あぁ、もう帰りたくなってきた…)

はるか(…って、いけないいけない!仕事しないと)

はるか「わ、わ~…初めましてぇ、ネコにゃんだ~ですぅ」

藤原「きょ、今日はよろしくお願いします…!」

藤原「そ、それじゃあ早速行きましょう。みんなも待ちかねてると思います」

はるか「み、みんな…?」

【カラオケにて】

?NEXT 【ミナクル?ラッキー by神明天夢】


オタクA「おお、次は姫の曲ですよ!」

オタクB「者共控えい!姫の歌を聴けぇい!」

はるか「ア、ハイ…」

はるか(ああ…なんという羞恥プレイ…)

はるか(いやまあ、天夢ちゃんの曲は好きなんだけどさぁ…)

藤原「姫!曲始まってますよ!」

はるか「え…あっ…ひ、ヒミツにしててねナイショだよぜったい~」

~ 3分後 ~

はるか「ピッ!ピピッピピピンチはチャンスはチャンスッ」

はるか「初めての恋大冒険~?」

オタク一同「オ"イ"!!オ"イ"!!オ"~~~~!!!!」

はるか(いやいや…オタ芸披露するにしても、カラオケにまでキンブレ持ち込むのはどうなんだろう…)

はるか(ああ…向かいに座ってる彼なんて、汗でTシャツの色変わっちゃってるし…)

はるか(でも…なんだろうこの気持ち…)

はるか(…これ、意外と…)

オタク一同「フゥフゥフゥフゥッ!!!!」

はるか「あなたとずっと 居たいな~」

オタク一同「うおおおぉぉおおおお!!!!!」

藤原「まだだ!来るぞ…お前ら備えろ!」

オタク一同「応!!!!!」

はるか(え、何が…?)

オタク一同「………………」

はるか(…ああ、なるほど、"アレ"ね…)

はるか「…エブリワ~ン、ミラクルッ!!!」

オタク一同「うおおおおおおおおおお!!!!!!」

藤原「き、決まった…」

オタクC「天夢タソが降臨なされた!今宵は降臨祭ぞ!」

はるか(ああ、分かってしまう自分が辛い…)

~ その後 ~

藤原「いやぁ、今日は本当に最高でした。なんとお礼を言ったらいいか…」

はるか「い、いえ…仕事なんで…」

藤原「にゃんだ~さん、確か公務はこれが初めてなんですよね?」

はるか「こ、公務…?」

藤原「ああ失礼、我々ユーザーの間では、姫のお仕事は俗に"公務"と呼ばせて頂いているんです」

はるか「は、はあ…そうなんですか」

はるか(…いやまあ、確かに公務といえば公務なんですけどね、仕事上…)

はるか「えっと、それが何か?」

藤原「いえ、とても初仕事とは思えない仕事ぶりでしたので、いたく感動した次第でして」

はるか「あ、はい…どうも」

藤原「これなら、あっという間に星も稼げるに違いありませんね」

はるか「ほ、星…?」

~ ところ変わって室長室にて ~


凛「星っていうのは、レンタル姫のグレードを表す、一種の評価ね」

凛「仕事をしていると、その内容・満足度に応じて顧客から評価が得られるの」

凛「まあ、通販サイトとかでよく見る星◯◯~ってやつと一緒よ」

はるか「は、はあ…」

凛「それで、星…つまりユーザーからの満足度を集めると、その評価数に応じて運営から褒賞金が支払われるのよ」

はるか「へ~、そうなんですか…」

はるか「ちなみに、どれくらい?」

凛「星のグレードは三段階あって、まず無星…つまりスタート段階からーつ星に昇格で3万円の褒賞金」

凛「次に、一つ星から二つ星で6万円」

はるか「おお…」

凛「そして、二つ星から三つ星になると…30万円が支払われるみたいね」

はるか「な、なんだか随分な金額ですね…」

凛「ええ、学生にしてみたら大金ね」

はるか「でも、こういう話には大抵…」

凛「そう、裏がある…」

凛「はるかちゃん、これを見て」

はるか「これは…レンタル姫のサイト?」

凛「サイトのここをこうすると…ほら、三つ星から順に星付きの姫を検索することができるわ」

凛「見てほしいのは、三つ星のこの娘」

はるか「あ、やっぱり星が三つもつく子は可愛いですねぇ」

凛「ええそうね、そしてもう一つ見てもらいたいのが、こっちの資料」

はるか「これは…えっ」

はるか「この写真…」

凛「それは、安全課から借りてきた被害相談者の顔写真よ」

凛「そして次は三つ星のこの娘と…この資料」

はるか「…これって」

凛「ええ、安全課の方に相談に来たのは、いずれも三つ星の評価を得た子たちばかり」

凛「証言によると、二つ星から三つ星になるためには、評価以外にもユーザーからの"推薦金"なるものが必要らしいの」

はるか「推薦金…?」

凛「一定数の"評価"と、そしてユーザーが運営に支払う"推薦金"」

凛「この二つが揃ったときに、初めて二つ星から三つ星に昇格できるらしいわ」

はるか「…随分きな臭いシステムですね」

凛「ええ、全くもってその通り。そして実情も相当真っ黒なようね」

凛「ある女の子は、推薦金をもらうことを条件に身体を触らせることを強要されたとか」

凛「またある子は、性的な写真の撮影を求められた…とか」

はるか「…許せない」

凛「この星のシステムの裏には、恐らく一部のユーザーと運営側とで黒い流れがあるに違いないわ」

凛「実際、しまじろう君が運営にハッキングして抜いた資料の中にも、VIP待遇の顧客リストの存在が確認できた」

凛「まあ、そのVIPが姫に何かしたって証拠までは分からなかったんだけどね」

はるか「つまり、そこを裏付ける証拠さえ掴めれば…」

凛「ええ、利用者共々お縄を頂戴できるってわけ」

はるか「…なんだか私、俄然やる気に火がついてきましたよ!」

はるか「そんな巨悪…いえ、女の敵がのさばるなんて許せません!絶対に挙げてやりましょう!」

凛「ええ、そうね!」

凛「いや~、やっぱりこの仕事、はるかちゃんに頼んで正解だったわね」

はるか「い、いえそんな…」

凛「というわけで…よろしくね」

凛「頑張って、三つ星を目指していきましょう!」

はるか「………へ?」

それからというものの、私は星を得るために姫として活動を重ねていくことになった。

正直気乗りする仕事ではないものの、これも全ては被害にあった女の子たちのため…

そして、これから被害に晒されるかもしれない子たちの名誉を守るため!

…なんて、そんなこんなで仕事をこなしていくこと約2週間。

ついに、私の評価は二つ星にまで達した。

~ とある地下イベントホールにて ~

はるか「いっえぇぇええい!!!みんな、盛り上がってるにゃあ!?」


「うおおぉぉぉおおおおっっ!!!!!」


はるか「今日はぁ、にゃんだ~を呼ぶためにこぉんなホールまで借りてくれて、ありがとにゃん☆」


「うおおぉぉぉおおおおっっ!!!!!」

「姫ーーー!!!愛してるーーーー!!!」


はるか「それじゃあ次もいっくよ~、曲はねこにゃんだ~の代表曲、恋するにゃんだ~☆改!」


「うおおぉぉぉおおおおっっ!!!!!」

~ その後 ~

【ライブハウスの控え室】


はるか「ふぅ…」

はるか「こんなに思い切り歌って踊ったのいつ以来だっけ?」

はるか(この仕事、最初は恥ずかしくて本気で嫌だったけど…)

はるか(なんか慣れてくると、意外に悪くないかも…?)

はるか(鉄道やらアイドルやら、オタク文化に精通した人たちと話すのは結構楽しいし)

はるか(ちょっと恥ずかしいのを除けば、趣味がそのまま仕事になったみたいで案外…)

はるか「って、ダメダメ!仕事なんだから割り切らないと」



コンコンッ


はるか「あ、はいどうぞ」


ガチャッ


藤原「にゃんだ~さん、お疲れ様です」

藤原「いやぁ、ライブ大成功でしたね」

はるか「あはは…おかげさまで」

藤原「今回もライブをしてほしいだなんて、無茶を言ってしまって本当にすみませんでした」

藤原「でもその分、料金には上乗せしておきましたから」

藤原「はい、これ今回の分です」

はるか「うわ、こんなに…?」

はるか「あの…流石にこれは貰いすぎなのでちょっと…」

藤原「いえいえそんな!これは正当な報酬ですよ」

藤原「これは、夢を見せてくれたことに対する、感謝の気持ちでもあるんです」

はるか「夢…?」

藤原「我々日陰者は…こうでもしないと綺麗な女性とお近づきになんて…」

藤原「ましてや、自分のための姫になんて、なってもらえる訳がありません」

藤原「だからこれは、夢なんです」

はるか「藤原さん…」

藤原「でも、夢と分かっていても、それでも一時は幸せな気持ちにさせてくれる」

藤原「僕は、そんな姫たちに心から感謝してるんです」

藤原「だから、これは正当な報酬です」

はるか「……そんなことないですよ」

藤原「え…?」

はるか「こうでもしないと、女性とお近づきになれないって話です」

はるか「どんなに見た目がいい男だって、中身が最低なら意味ないですから」

はるか「大切なのは、心…ですよ」

藤原「にゃんだ~さん…」

はるか「多めに頂いた分はお返ししますね」

藤原「えっ…」

はるか「それじゃ私、次の仕事あるので失礼します」

藤原「は、はい」


ガチャッ


バタンッ


藤原「…………」

藤原「………心、か」

~ ところ変わって ~

【機動強襲室第八課】


協会「最近、匿名掲示板でネコにゃんだ~っていう謎の地下アイドルが話題らしいですよ」

はるか「え"っ」

協会「なんでも、とある会員制サイトに登録した人だけが行ける、アングラなライブがあるらしいんですけどね」

協会「どうもそれが、一部の人たちから絶大な人気を得ているようでして」

はるか「…へ、へ~…そうなんですか…」

協会「おや、古今東西あらゆるアイドル事情に詳しい星宮さんがご存知ない?」

はるか「さ、最近は忙しくて追いかけられてないから…」

協会「おやおや、そうでしたか…」

協会「そういうことでしたら、これをお聞きになってはいかがですか」

はるか「な、なんですか…?」

協会「百聞は一聴にしかず…再生っと」

はるか(…あれ、このイントロ…)



「愛は call me call me ここから~」


はるか「うっわああああっぁあああああ!!!!????!!」

協会「ほ、星宮さんっ!?」

はるか「ど、どどどどこでこれをっ!?」

協会「ええっと…動画投稿サイトですけど…」

協会「それよりもその慌てよう…どうしたっていうんですか?」

はるか「あ~…これはそのー…えっと…そう、あれです」

はるか「あまりにも素晴らしい曲だったんで、つい動揺しちゃって…」

協会「…冒頭数秒を聴いただけで?」

はるか「きょ、曲の良し悪しは冒頭数秒で決まるって、通の間じゃジョーシキですよ!?」

協会「そ、そうなんですか…?」

はるか「…………」

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