日菜「あたしのお姉ちゃん」 (95)

BanG Dream!(バンドリ!)ガールズバンドパーティ!
氷川姉妹のSSです。
2ちゃんねる書き込むのは初めてですがよろしくお願いしますm(_ _)m
pixivにあらかじめ投稿してるものを添削しながら投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496818217

あたしには大好きなお姉ちゃんがいるんだーっ!

お姉ちゃんのどこが好きってー?

んー、全部っ♪

あー、いやいや、別にテキトー言ってる訳じゃないよ?

でもそうだなぁ……物心つく前から大好きだったから、改めて訊かれるとわかんないやっ♪

あっ、じゃあひとつ昔話をしてもいいかなー?

あたしがお姉ちゃんのことをもっともーっと好きになった、あたし達がまだ小学校の頃のハナシ♪

それはあたしたちが小学校3年生に上がったばかりのこと‥。

あたしたちの学校では、双子の生徒は1~3年までは同じクラスで、4~6年では別々のクラスになるという決まりがある。

4年生に上がるときには、お姉ちゃんと別々になると聞かされて、そういえばめちゃくちゃ駄々をこねたなぁー‥笑

話を戻すと、小学校低学年までのあたしたちは、幼稚園からずーっと同じクラス。
何をするにもお姉ちゃんと一緒だった。

常に一緒にいるから遊ぶ友達は同じだし、家にいるときも部屋が同じだったので、別々になることはほとんどなかった。
(夜トイレに行くときは怖いから、よくお姉ちゃんについてきてもらってたのは内緒‥)

そんな冗談?はさて置き、本当にいつも一緒が当たり前だったんだけど、ちょうどその頃‥小学3年生くらいになってからは、あたしは女の子の友達よりも男の子に混ざって遊ぶことが多くなっていた。
(だって女の子の遊びってちょっと退屈なんだもーん‥)
男子と混じってサッカーや鬼ごっこをして遊ぶ方が、あたしには性に合っていたのだ。

そんなこんなであたしとお姉ちゃんは、家と学校にいるとき以外は別々で遊ぶことが多くなっていった。

それでも、家では一緒にお風呂に入ったり、遊んだときの出来事をお姉ちゃんに聞いてもらったりと、それまでとあまり変わらない生活が続いていたのだった♪

たったったったったったったっ‥

ガチャッ『ただいまーっ♪』

お母さん「あらお帰りなさい♪早いわね~」

日菜ちゃん8ちゃい「えへへ~っ♪ お姉ちゃんとかけっこしてきたんだ~っ あたしの勝ち~♪」

紗夜ちゃん8ちゃい「こら日菜っ! あなた信号無視したでしょっ! 危ないからダメよってあれ程…っ」

お母さん「あらあら二人とも元気ね~♪」

「じゃあそんな二人には と・く・べ・つ に……じゃーんっ ご褒美をあげましょう♪」

日菜「……!! プリンだーっ!」パァ-ッ

お母さん「ちゃ~んと手を洗ってから食べるのよ~♪」

「紗夜、日菜をお願いね♪」

紗夜「うんっ♪ありがとうお母さんっ♪」

日菜・紗夜『いっただっきま~す♪』

日菜・紗夜『ごちそうさまでしたーっ』

日菜「じゃああたし、遊びに行ってくるねーっ♪」

「日菜ーっ 宿題はちゃんとやったの?」

「あとでやるーっ いってきまーすっ♪」ガチャ


バタンッ


お母さん「もう日菜ったら…ふふっ」

紗夜「お母さん、はいこれっ♪」

「ああ、紗夜ありがとう♪ 流しにつけておいてもらえるかしらっ♪」

紗夜「うんっ」

紗夜「じゃあ…私は宿題やってきます‥」

「……? 紗夜は遊びに行かなくていいの?」

紗夜「私は…宿題やってから行くからっ♪」

「…あらそう? 紗夜はしっかり者で偉いわね~っ♪」

紗夜「……♪ ありがとうっ♪ それじゃっ♪」

次の日の学校


先生「はーい!それじゃあ宿題を集めまーす!」

日菜「あっ!!」

友達「日菜ちゃんどうしたの?」

日菜「宿題やるの忘れた……どうしよう‥」シュン

紗夜「(日菜、日菜っ!)」

日菜「(お姉ちゃん?)」

紗夜「(これっ‥あなたの分もやっといてあげたから‥あなた字も私とそっくりに書けるんだから、バレないでしょ!)」

日菜「(!!‥うんっ‥お姉ちゃんありがとうー‥)」グスン


その夜


お母さん「日菜~あなた昨日宿題やってなかったでしょう~?」

日菜「うぅ…ごめんなさい…」

紗夜「まったく日菜は……私がいなかったら先生に怒られてたわよっ」

お母さん「もう紗夜も……本当はイケナイことなのよ?」

紗夜・日菜『エヘヘっ♪』

お母さん「そうだわ!じゃあこうしましょう♪」

「次のテストで100点をとったら、二人の好きなものを買ってあげる♪」

『ホントにっ!?』

「ええっ♪ た・だ・し 100点のときだけよ?」

『やったーっ!!』

日菜「お姉ちゃん頑張ろうねっ♪」

紗夜「ええっ♪ でも日菜は宿題忘れないようにねっ」

日菜「?っ、気をつけマス‥」


(西゚∀゚)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\

最後の日菜ちゃんの台詞文字化けしてますね

う゛って言ってますすみませんm(_ _)m






そうしてそれから、あたしとお姉ちゃんは真面目に勉強に励んだ。
(あたしは実は、ちょっぴりサボって遊びに行ったりもしたんだけど‥笑)

まあ結果オーライ♪

晴れて二人でお揃いの靴を買ってもらうことができたっ

それでねっ、どっちの靴か見分けがつくように‥二人でマジックで「ひな」「さよ」って名前を書いたんだーっ♪

でもそのあと、実はちょーっとした事件があったんだよね~‥苦笑


校門前


「先生おはようございますっ」

内山田教頭「はい、おはよう♪」

「お姉ちゃん早く早くっ!!」

「ちょっと待ちなさい日菜っ!買ったばかりの靴で走ると靴擦れするわよっ!!」

友達「あっ、日菜ちゃんおはよう~♪」

日菜「あっ、マミコちゃんおはようっ♪」

マミコ「今日はなんだかご機嫌だねっ」

マミコ「あっ、それもしかして新しい靴?」

日菜「えっへへ~っ♪ テストで頑張ったご褒美にって、お母さんに買ってもらったんだーっ♪ お姉ちゃんとお揃いなんだよっ♪」

マミコ「へえ~♪ 日菜ちゃんこの間のテスト凄かったもんね~♪」

そんな、新しいクツ以外は、何の変哲も無い一日の始まりだった。


その日は午後から体育の授業があり、体育館で跳び箱の練習をした。

ピッ

ダッダッダッダッダッダッダッダッ‥

ガコンッ

シュタッ


『おお~~!!』


「氷川スゲ~!!8段はっべーよ、マジっべーわ」

「お前も跳んでみろよ」「ぜってー無理っ」

「日菜ちゃんすご~い♪」

「どうやったらあんなに跳べるのー??」

日菜「えーっ これくらい楽勝だよーっ♪」

ホームルームが終わり、いつも遊んでいる男子たちと教室に残って少し戯れてから、上履きを履き替えに下駄箱へ向かった。


「……あれ‥」




下駄箱に置いてある筈のあたしの靴が無かった。

昼休みに校庭で遊んだとき……いや今日は体操服に着替えて体育館で遊んでいた‥。

「どこ?!なんで??あたしの靴‥っ」

結局校舎中を探し回っても靴は見つからなかった。

上履きのまま泣きながら帰った。

「せっかく…お母さんに買ってもらったのに…」グスン

あたしは普段から忘れ物が多く、持ち物を無くしてしまうことがあった。

買ってもらったばかりの靴を、新品同然で無くしてしまったという現実が、子ども心に重たくのしかかったのだった。

(お母さん…きっと怒るよね? …帰りたくないな‥)

いつも遊んでいる公園の前を通りかかったとき、今日はたまたま誰もいなかったので、“あの場所”に行こうと思った。

かくれんぼをしているときに見つけた、あたしとお姉ちゃんしか知らない秘密の隠れ処があったのだ。



どれくらいの間、泣いていたであろうか。


気付いたときには、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

辺りは不気味なほど静かで、普段は気にも留めない虫たちの声が五月蝿く響いていた。

(そろそろ帰らないと…)

そのとき、

ガサガサッ

(近くで物音がした)

ザクッ

(誰かが近づいてくる!)

ザッザッザッ‥

(足音はまっすぐこちらに向かってくる!!)

怖くて堪らなかった。

たかだか当時8歳のあたしに、冷静な判断などできるはずもなく、真っ暗闇の中あたしひとりという状況で、何者かが自分に近づいて来るということがたまらなく恐ろしかった。

「(怖いよ‥助けて‥お姉ちゃん‥っ!!)」



「日菜‥」



優しい声がした



世界で一番、優しい声だった




お姉ちゃんは、怖くて腰が抜けてしまったあたしを、家までおぶって帰ってくれたそうだ。

あたしは余程安心したのか、帰る途中お姉ちゃんの背中で眠ってしまったらしい。

次の日の学校は、お姉ちゃんと一緒に欠席した。

両親に事情を話すと、お母さんは「あなたが無事に帰ってきてくれたことに比べたら、靴なんて些細な事よ…」と優しく抱きしめてくれた。

次の日の朝、学校へ向かうため玄関を出ようとしたとき‥

(あっ……そっかあたしの靴‥)

紗夜「日菜、私の靴を履いていきなさい‥」

日菜「えっ、でもどうして‥」

紗夜「私はどうせしばらく、その靴を履けないから……」

紗夜「それにあなたの靴なら、多分すぐに戻ってくると思うわ‥」


驚いたことに、お姉ちゃんの言った通りになった。

その日の夕方、家にマミコちゃんとそのお母さんが訪ねてきたのだった。

マミコちゃんはその日、学校を休んでいた。

あたしの靴を隠した犯人は、クラスメイトで仲の良かったマミコちゃんだった。

下駄箱からあたしの靴を持ち出し、校庭の隅にある雑木に隠したらしい。

流石にそこまでは見つけられなかったなぁー

動機はこうだった。

マミコちゃん「わたし……跳び箱の授業で4段を跳べなくて……そしたら日菜ちゃんが、どうしてマミコちゃんは跳べないの?って、それで……本当に゛ごめ゛んな゛さい…」グスン

どうやらあたしはマミコちゃんを傷つけてしまったらしい。

しかし、あたしたちが次の日学校を休んだことで、マミコちゃんは気が動転して、次の日学校に行きたくないと両親に漏らしたそうだ。そこから事態の発覚に至ったというわけだった。

靴は無事に帰って来たし、今さらマミコちゃんを責める気にはなれなかったので、(マミコちゃんがご両親からたっぷりとお説教をうけたことは見て取れた。)今回はお互い様ということで、事件は丸く収まったのだった。


紗夜「日菜、良かったわね‥」

日菜「うんっ♪ あっそうだ…お姉ちゃん。はいこれっ!」

紗夜「……? こっちはあなたの靴じゃない?」

日菜「うんっ、でもあたしこっちの方がいい♪」

紗夜「同じ靴じゃない‥それに名前だって‥。ふふっ、まあいいわっ」

それから、あたしとお姉ちゃんは足が小さくなるまで、名前があべこべな靴を履いた。

履けなくなった今でも、その靴は押入れの中に大事にしまってある。

あたしの大切な思い出と一緒に、その靴はあたしの宝物になったのだっ♪


んーっ!やっぱりっ











お姉ちゃんだーい好きっ♪


以上で第1部完結です。
全部で第4部まであるんですが、ここで初めて見てくれている人っているんでしょうか?

いればこのまま書き続けたいと思いますm(_ _)m



期待してる、支援

http://i.imgur.com/ELhIRKM.jpg

お姉ちゃん大好き努力知らずの天才、
アイドルバンド・Pastel*Palettesのギタリスト、
氷川日菜(奥)

その努力のことごとくを才能で凌駕され続ける複雑な心境の姉、
本格派バンド・Roseliaのギタリスト、
氷川紗夜(手前)

>>20
支援ありがとうございますm(_ _)m

では、このまま続けさせていただきます。




それでは続きいきます。
第2部では第1部の出来事を紗夜目線で綴ったものになります。


【私の妹】



私には双子の妹がいます。

私たちは容姿こそ似ていましたが、内面や性質といった部分では全くの別物、あるいは真逆であったと言っても過言ではないかも知れません。

妹の日菜は昔から天真爛漫

明るい性格で人を惹きつける。
まるで太陽のような子でした。


加えて彼女には天賦の才というものがありました。

何をやっても人並み以上

大抵のことは努力するまでもなく、一番になってしまうのでした。


それにひきかえ、私はまさに月でした。

太陽の下でしか輝けない…

己自ら光を放つことができない月でした。


私たち姉妹は、小学校4年のクラス替えのときまで、ほぼ全ての時間を共有していました。

もっと正確にいうと、小学校3年に上がった頃まででしょうか。

というのも、その頃になると日菜は男の子たちに混じって遊ぶようになり、以前のように女の子グループで遊ばなくなったからです。

私は以前と変わらず、女の子のグループで遊んでいたのでした。


そんなあるとき、ずっと一緒に遊んでいた友達にこう言われました。

「あれっ? 今日は日菜ちゃん来ないの?」

紗夜「うん……最近は男の子たちと遊んでいるみたい……」


「なーんだっ、つまんないの」



子どもというのは残酷なものですね。

どうやら、私というのはその子たちにとって、人気者な日菜のおまけ程度だったということなのでした。

その日から、私はそのグループの子たちとは距離を置くようになりました。

そしてその後、その子たちが私をわざわざ遊びに誘ってくれることもなかったのでした。


私たちは、傍目から見てもとても仲の良い姉妹だったと思います。

それはハリボテではなく、私と日菜の間には確かな絆がありました。

日菜は幼い頃から要領がよく、なんでも出来てしまう子でした。しかし、それを鼻にかけるようなことはなく、誰にでも気さくに接することができる清々しい子でした。

ですが、落ち着きがなく少々忘れっぽいところがあるため、慎重派の私がよく世話を焼いていました。


日菜はそんな私をとても慕ってくれていました。

「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ」と後ろをくっついてきて、私を頼ってくれる妹が可愛くないはずもありませんでした。

しかし、学年が上がるにつれ、日菜はより一層の輝きを増していくのでした。

私などでは目が眩んでしまうほどに…

そんなことを象徴するような出来事が起きたのは、ちょうど私たちが小学3年に上がって2ヶ月ほどが経った頃です。


日菜は何もしなくてもテストの成績は良かったのですが、やりたくないことはとことんやりたがらなかったので、遊ぶのに夢中になって宿題を忘れることもしばしばでした。

それを見かねた母が、あるとき私たちにこう言いました。

「次のテストで100点をとったら、二人に好きなものを買ってあげる」…

私たちは大喜びで勉強に励みました。

が、日菜は途中で飽きて、またいつものように遊びに出掛けてしまいました。

私はというと、女の子グループで遊ばなくなってからは、家で一人過ごすことが多かったので、別段勉強が苦にはなりませんでした。

それに、いつも何かと勝負しては負けている日菜に、今回ばかりは一泡吹かせられるチャンスだと思ったのです。


テストの前日、日菜が寝てしまった後も私はテストの復習をしていました。

紗夜「ふぅ‥よーし出来たっ‥ これでテスト範囲は完璧…」

日菜「んー……お姉ちゃん~…」ムニャムニャ

紗夜「ふふっ。日菜ったら…テストで私に負けて、泣きべそかいてもしらないんだからっ‥♪」

時計を見ると、もう夜中の2時を回っていた。

紗夜「ふわぁ~‥もうこんな時間‥私もそろそろ寝ましょうか‥」

机の灯りを消して、ベッドに潜り込んだのだった。





週明け、テストの返却日がやってきた。

先生「じゃあみんなお待ちかね~ この間のテストを返しまーす」

「えー」「ヤダー」

「私自信ないよ~」

先生「はいはいではし~ず~か~に~!」

先生「えー今回のテストはちょーっと難しかったみたいですが、なんと! 一人百点満点をとった子がいまーす!」


『えーー誰!?』


紗夜(……っ!)ドキッ

先生「それでは、呼ばれた人は前に取りに来てくださーい!」

先生「それじゃあ、……相生さんっ!……安中さんっ!……」




先生「……氷川紗夜さんっ!」


テストを受取っても、自分の席に着くまでは見ないと決めていた。

もし100点だったら、思わずガッツポーズをしてしまいそうだったからだ。





「やったっ!!」




先生「よく頑張りました~! 100点は氷川日菜ちゃんでしたー!」

(‥えっ……)

「氷川スゲーじゃん!?」

「なんだよーお前ちゃんと勉強してたのかよ~」

日菜「え~~そんなしてないよ~っ でもこれくらいは楽勝かなっ♪」

「お前テストの前の日俺らと遊んでたじゃんかよ~笑」






自分のテストを広げてみた

私は95点だった


家に帰るなり、嬉しそうにお母さんにテストを見せにいく日菜。

私はそのまま自分の部屋にこもって、テストをクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げつけた。

しばらく机に突っ伏していると、ノックの音が聞こえた。

私は返事をしなかった。

お母さん「紗夜、入るわね‥」


「テスト‥残念だったわね。でもお母さんは紗夜がとっても頑張ってたこと‥ちゃ~んと知ってるわ」


「何か好きなもの‥言ってごらんなさい?」





スン‥ヒック‥グスン‥ズズッ


声を押し殺して泣いた

お母さんはそんな私を傍で、優しく撫でてくれた

久しぶりに母の胸で泣いた




日菜と私は、お揃いの新しい靴を買ってもらいました。

「やったーっ! お姉ちゃんとお揃ーい♪」

日菜は無邪気に笑っていましたが、私は心の底から笑うことができませんでした。

日菜は何も悪くない…なのに、私はその笑顔を見ることが辛いと‥そのとき初めて感じたのでした。


そして一つの事件が起きました。




その日の学校は5限目が体育で、私たちのクラスは跳び箱の授業を受けていました。

日菜は8段の跳び箱も悠々と跳んでいました。
(8段というのは、私たちの小学校の跳び箱では一番高いものでした。)

私たちのクラスに8段を跳べる生徒は他にいなかったため、日菜はクラスメイトからの称賛を独り占めしていました。

みんな口々に、「どうやったら跳べるのー?」と日菜に質問していましたが、日菜は「んー‥ダダダーっていって、シュバっ!ってとぶだけだよーっ♪」といった具合だったので、結局訊いた誰もが首を傾げていたのでした。


私は運動はそれなりでしたが、運動が苦手な子にとって、跳び箱は出来不出来が目に見えてしまうので、嫌がる子も多くいました。

私たちの友達のマミコちゃんもそんな一人でした。


マミコちゃんは引っ込み思案で、以前は一人でいることが多いような子でした。

しかし、日菜はどんな子にも見境なく声をかけるので、初めはおどおどしていたマミコちゃんとも次第に仲良くなっていきました。

マミコちゃんは「引っ込み思案な自分を変えたかったから…だからこんな自分に話しかけてきてもらえて…とても嬉しかった」と、そう話していました。



マミコちゃんは最初に並ぶ、一番端の4段の列に並んでいました。

跳べた人は徐々に高い列に移っていく仕組みで、最初の列は次第に短くなり、最後にはマミコちゃんだけが残っていました。

先生が付きっきりで指導にあたっていましたが、なかなか上手くは跳べないようでした。

そんなとき、跳び箱に飽きてその辺をぶらぶらしていた日菜が、マミコちゃんのもとへと駆け寄っていきました。

(あの子‥また余計なことを言わなければいいけれど……)

日菜は、自分が努力しなくても大抵のことは出来てしまうからか、“それが出来ない人”に対して少し無神経なところがありました。


その日はそれが最後の授業だったので、後はホームルームを残すのみでした。



ホームルームが終わって、先生の手伝いで職員室に届け物をしたあと、2階の渡り廊下からなんとなく校庭の方を眺めていると、マミコちゃんが何やら急いで駆けて行く様子が見えました。

マミコちゃんは校門の方ではなく、校庭の隅にある雑木林に向かっていくようでした。(何かただならぬ雰囲気だったので、少し気になっていました。)

教室に戻ると、日菜はいつも遊んでいる男の子たちと戯れていました。
少し声を掛けずらかったので、まあいいかと私だけで先に帰ることにしました。


家に帰って宿題を済ませたあとは、楽しみにしていたお気に入りの動物番組を観ていた。

時刻は夕方の6時になろうという頃だった。


「紗夜~」

お母さんに呼ばれた。

「何~~?」

「日菜がまだ帰ってこないんだけど、あなた何か聞いてない~?」

「知らな~い。帰るときいつもの子たちと話してたから、そのまま遊んでるんじゃな~い?」

帰り際に見た日菜はいつもと変わった様子もなかったので、どこかで道草でも食っているんだろうと思っていた。


しかしその夜、日菜は真っ暗になっても家に帰ってこなかった。



お母さんが学校に電話したが、学校にはもう残っていないという。

お父さんが仕事から帰ってきたので、一緒に探しにいこうという話しになっていた。


紗夜「お母さんっ! 私も‥っ」


お母さん「ダメよ紗夜。外はもう暗いから、お家でお留守番しててね?」

「そうだ…それともし、わたしたちが居ない間に誰かから家に電話があったら、すぐにわたしの携帯に連絡して。お願いね?」

そう言ってお父さんと一緒に家を出た。



お母さんたちが家を出てから20分ほど経った頃、家に一本の電話がかかってきた。

いつも日菜と一緒に遊んでいる男の子のお母さんからだった。

学校から連絡が回ってきて、子どもに話を聞いてみると、放課後学校で何かを捜している日菜を見かけたのだそうだ。

(日菜は学校で何かをなくした? でもあの子にはよくあることだし…よほど大事なものかしら?)

(今日私が見ていた限りでは、日菜に変わったところはなかった…。じゃあ気付いたのは放課後…? もしかして日菜が無くしたものって…!!)

跳び箱の授業でのこと

放課後のマミコちゃんの気になる行動

そして放課後に無くしたと気付くもの

私の中で全てがつながった


「もう学校にはいないのだとしたら‥きっと“あの場所”だわっ‥!!」
“それ”を無くしたのだとしたら、きっと日菜は酷く落ち込むだろう。
そして日菜には、落ち込んだときよく行く場所があった。

私はお母さんとの約束も忘れて家を飛び出していた。



ことの顛末はもうご存知のことと思います。
日菜は無事見つかり、その後靴も帰ってきたのでした。

まったく今思い返しても人騒がせな話ですっ‥

まあ、無事で何よりでした‥。





……ただ、この二つの出来事はある意味きっかけになったのかもしれません。

この頃から、私の中で日菜を見る目というのが、変わっていったのだと思います。






ここまでで第2部完結となります。

前の文章を改めて見返すと、追記箇所が結構出てきて思ったより時間がかかりますね笑

また第3部も添削が済み次第投下していきます。

よろしくお願いしますm(_ _)m


【日菜の想い】


日菜は…私の妹は…

あの子が意図しなくても、その眩しすぎる輝きゆえに

周りの誰かを傷つけてしまう。

そんな風に見えてしまうようになったのでした。


小学4年生になって、クラスが別々になってからの私の日常はとても平穏なものでした。

日菜は新しいクラスでもクラスの中心で、とても楽しそうにやっていました。

私は一抹の寂しさを感じながらも、出来の良い妹と比べられることが少なくなったことに、少し安堵していたのでした。


中学に上がり、私たちの日常は目まぐるしく変化していきました。

部活動が始まり、勉強も本格的になっていく中、日菜は遺憾無くその才能を発揮しました。

中間テストや学期末テストでは、3年間トップの座を譲りませんでした。

運動系のクラブからは助っ人として引っ張りだこで、大きな大会を前にすると必ず、上級生が日菜に入部を懇願していたという話を聞いたこともあります。

日菜はもう校内のちょっとした有名人でした。

中学での3年間では、日菜とは一度も同じクラスになることはありませんでした。

たまたま廊下ですれ違ったときなどは、日菜が私に「お姉ちゃ~~んっ♪」と抱き着いてくることもしばしばでしたが、私は委員会と部活、日菜は運動部の助っ人などでお互い忙しかったので、一緒にいる時間はほとんどなかったと言えました。


恐らく、私と日菜が双子であることを知る人は、もはや少なかったのではないかと思います。

もし私が日菜と一緒に居たとしても、見た人は私の存在など気にも留めなかったでしょう‥

それほどまでに、日菜は人の目を惹きつける存在でした。

どうして日菜ばかりが‥と考えたことがないといえば嘘になります。

ですが、もうある程度自分の中では割り切っているつもりでした。


そんな私が一つ信条としていたことがあります。

それは“コツコツと真面目に努力を積み重ねること”

それだけは、日菜にはできなくて私にできる唯一のことだったからです。


私は陸上部に所属していました。

真面目に練習に取り組んだことがそのまま記録に反映されるこの競技は、私にとってやり甲斐を感じさせてくれるものでした。

毎日の朝練や、雨の日の自主練習にも欠かさず参加しました。

2年に上がり、三年生が引退した後、次は私たちが後輩たちを引っ張っていく番だと意気込んでいました。

そんなとき‥


日菜が急に陸上部に入りたいと言い出しました。

私はどうして今更‥?と日菜に訊ねましたが、「んーっ、別になんとなくだよーっ♪」とはぐらかすのでした。

一つ懸念がありました。

日菜は、誘われたクラブに一度は興味を示して、何度か入部したこともあったのですが、どれもすぐに辞めてしまうのでした。

陸上部でも同じことをされては困ると、何度も釘を刺しましたが「お姉ちゃんと一緒だったら、きっと大丈夫だよー!」と、こんな調子でした。


紗夜「練習は厳しいわよッ 手を抜いたりしないからね?」

日菜「うんっ♪」

紗夜「それと、遅刻は厳禁‥」

日菜「うぐっ‥」

紗夜「返事は?」

日菜「はぁ~い‥」



日菜「お姉ちゃんはさ‥辞めたりしないよね‥?」

紗夜「えっ‥?」

日菜「んーん、なーんでもないっ」


私はそのとき、曲がりなりにも陸上部のエースでした。

いくら日菜に才能があるとはいえ、今の私がそう簡単に抜かれることはないと‥そう思っていたのです。



一ヶ月でした。



一ヶ月で日菜は私が保持していた記録を、全て塗り替えてしまったのです。

私なりにたゆまぬ努力を続けた一年間。
それを日菜は、たったの一ヶ月でいとも簡単に踏み越えていってしまったのでした。

いったい何が違うのか‥

双子の私たちで‥こうも違うものなのか‥

私は自分の運命を呪わずにはいられませんでした。



しばらくして、私は部を辞めました。

日菜には勉強に専念したいから‥とだけ伝えました。

中学2年の冬のことでした。


部活を辞めてからは、学校が終わって家に帰ると、私は自室にこもるようになりました。
(中学に上がるときに、私と日菜は部屋を別々にしていました。お母さんにどうするかと訊かれたとき、日菜は最初猛反対していましたが、「もう子供じゃないんだから」と私が渋々了承させたのでした。)

父親が新しいのを買ったからと私にくれたMP3プレーヤーで、明かりもつけずイヤホンをしながら当てもなく曲を垂れ流していると、とあるロックバンドの曲が流れてきました。

激しい音楽はあまり好みではなかったので、早送りを押そうとしました。

でもなぜか思いとどまりました。

理由はよくわかりません‥。

ですが、荒々しい音の中にも何か繊細な情緒のようなものを感じた気がしました。

気がつくと私は涙を流していたのでした。


それから私は、夢中になってそのバンドの曲を聴きました。

レンタルショップで、そのバンドのアルバムは全て借りました。

ネットでそのバンドのことを調べたりもしました。

調べてみると、そのバンドはひと昔前一世を風靡した有名なロックバンドだということがわかりました。

ネット上で、そのバンドのギタリストのインタビュー記事を見つけました。

インタビュアーがそのギタリストにこう質問していました。
「国内外にファンを持つ超絶技巧ギタリストとして有名なsgzさんですが、ズバリ、ギターとは才能でしょうか?」


「いいや、違う。才能なんてものは結局積み重ねなんです。目に見えないだけで、どっかで積み重なったものが現れてるだけなんですよ。音楽にしろ何にしろ、どれだけそれと真剣に向き合えるかが勝負なんです。」


ブルっと全身が震えました。

私の中で燻っていたものが、また燃え上がるのを感じました。

私の信じたものは、決して間違ってはいない‥!!

もう一度…そして今度こそは…!!


私はギターを買うために、それまでほとんど全額貯金していたお年玉を、両親に頼んで崩させてもらうことにしました。

その話を私が突然の言いだしたときには、二人とも驚いていましたが、お母さんはそういうことにあまり細かく口出しをする人ではありませんでしたし、お父さんもバンドの名前を出すと喜んで賛成してくれました。
(プレーヤーに元々そのバンドのアルバムが何枚か入っていたので、多分昔ファンだったのでしょう。)


それからというもの、私は取り憑かれたようにギターに没頭しました。

ギターを弾く時間以外は、全て無駄だと自分に言い聞かせました。

譜面を隈なくさらい、完璧なリズムで、ピッチで、フレーズを完璧に弾くことだけに全霊を注ぎました。

「私にはもうコレしかないっ‥! ギターだけでいい‥!!」

毎日毎日、指がボロボロになるまでギターを弾き続けました。


高校は、日菜とは別々の学校に通うことになりました。

進学に際して、日菜は私に何も言ってきませんでした。

高校生になり、私は更に自分の腕に磨きをかけようと、ライブハウスに出入りするようになります。

幾つものバンドを渡り歩き、自分の理想の妨げになるものは、例えバンドメンバーであろうと容赦無く切り捨てました。

そしてようやく、私と志を同じくする同志たちにも出逢うことができました。

私は高校2年になっていました。


行きつけの楽器屋で、いつものように交換用の弦を買い足していたときのことです。

顔馴染みの店員さんが、私に話しかけてきました。

「そういえばこの間面白い子が来てね、オーディションに出たいからってギターを買っていったんだけど、初めてなのにチューナーもなしで音を合わせちゃってさー」

「へえ‥でもなんだか変わった子ですね」

お会計の最中、そんな他愛もない話をしていると…

私の目はとあるポスターに釘付けになりました。


私が呆然と立ち尽くしていると‥

「ああ!この子だこの子!!ホントにオーディション合格したんだ?!いやはや恐れ入ったねー」

私は自分の目を疑いました。


「どうして……日菜が…」

「いやー世の中いるもんなんだねーー“天才”ってヤツが。これは紗夜ちゃんにもライバル登場かな?!なんつって」

「………っ!!」

「ああっ!ちょっと紗夜ちゃん!」



「どうして…あなたはいつもいつも…ッ」


気がつくと、私は息を切らして自分の家の前に立っていた。
今家には誰もいないようだ。

私は躊躇うことなく日菜の部屋に向かった。

ドアを開けると、部屋には地球儀や望遠鏡、それに星をモチーフにした物が多くあった。

本棚には宇宙図鑑や分厚い天文辞典が並んでいた。

そういえば、日菜は今の学校で、一人天文部をやっていると言っていたような気がする‥

いや、今はそんなことはどうでもいい


一通り部屋を見渡したが、“それ”は見当たらなかった。

しかし、私の目は勉強机の上に“ある物”を捉えた。

ギターのピックだ。しかも先端が削れて丸みを帯びてきている‥

私の中で日菜がギターを弾いていることはほぼ確信に変わった。

そして私はクローゼットを開けた‥。


日菜「お姉ちゃん‥?」


日菜「どうしたの‥お姉ちゃん‥私の部屋で…」


紗夜「日菜…これは‥どういうことよ…」


日菜「……っ!! それは‥事務所で‥バンドを組むことになって…」


紗夜「このギターで事務所のオーディションを受けたんでしょう?!」


日菜「…えっ‥どうして‥それを…」


紗夜「どうして?!どうして…あなたはいつも私の居場所を奪おうとするの?!」


日菜「っ‥そんなつもりじゃ‥!」


紗夜「じゃあなんでギターなのよっ!!」


日菜「それは‥その‥でもっ、あたしにも“るんっ”てできる場所が欲しくて‥!!」


紗夜「“るんっ”てなんなのよっ!!そうやっていつもいつも…!!」

「私が必死に努力して積み上げたものを、あなたは平然と踏み躙っていくんじゃないっ!!」


日菜「ち、違うよっ!!」

紗夜「違わない!!」

日菜「違うもんっ!!!!」


紗夜「……っ!!」


日菜「だって……あたしに‥も‥居場所が‥欲しかったんだもん……っ」グスッ


紗夜「居場所ですって?!居場所ならあなたには…」


日菜「みんな勝手だよっ!!!」


日菜「あたし‥みんなの力になろうとして‥」


日菜「頼まれて‥困ってるから助けてくれって‥」


日菜「…でも用が済んだら‥あたしが邪魔者みたいに‥!!」


日菜「日菜ちゃんは“特別”だもんねって‥」


日菜「日菜ちゃんに私たちの気持ちなんてわかんないよって……でも…っ」

「他人のホントの気持ちなんて‥本当はみんなわかんないじゃんっ‥!!!」


日菜「………ッ!!」ダッ


紗夜「日菜っ!?」




ダッダッダッダッダッダッダッダッ……ガチャン




以上で第3部終了になります。
余談ですが3部はpixivに投稿する前の文を添削していていました…
どうりで直しが多い…

次でラストですm(_ _)m



【姉妹】


日菜の残していった言葉が、残響のように頭の中で響いていた。

日菜があんなふうに感じているなんて…思いもよらなかった。

小学校ではいつもクラスの中心だった日菜。

しかし中学に上がって、皆が自他の違いを強く意識するようになれば、日菜のような存在はどのように映るであろうか?


答えは簡単だった


他ならぬ私自身が、日菜の一番近くで妹をそのように見つめていたからだ。


私は、どこかで常に日菜のことを恐れていた。

私がギターを始めたことだってとどのつまりは、日菜に対する劣等感の呪縛から逃れようとしてのことだった。

あの子はもしかしたら、私たちがあの子のことを“特別”と認識したそのときから、ずっと一人ぼっちだったのかもしれない…。


「あーらっ、ここは紗夜のお部屋だったかしら?」


「お母さん…」


「何があったか‥聞かせてくれる?」


私はお母さんに今までのことを全て話した。

お母さんはいつかこんな日が来る事を予見していたかのように、とても落ち着いた様子で話を聞いていた。

話を聞いたお母さんが、こう切り出した。


「紗夜、あなたたちがまだ小学校のとき、テストで100点をとったら好きなものを買ってあげるって‥私が言ったこと憶えてる?」


「うん‥でも私はとれなくて、日菜は100点だった」


「あのときね。日菜が嬉しそうにテストを見せにきて、紗夜はこなかったから、実はわたし‥ああしまったって思ったのよ‥」

「ホントは逆になると思っていたから。そうなったら、日菜には良い薬になるかなって♪」


お母さんは茶目っ気たっぷりに言った

…日菜のあの性格は‥絶対お母さん譲りですね‥


「でもね…日菜は私のところに来てなんて言ったと思う?」

「あの子、お姉ちゃんとお揃いの靴がほしいって言ったのよ♪」


(…日菜がそんなことを…)


「最初はあなたを気遣って言ったのかと思ってたんだけど‥」

「でもあの子、そんな気遣いなんて言葉とは無縁な子じゃない?」


(随分はっきりと…まあその通りですね‥)


「あの子にとっては、テストの点数で勝っても負けても、関係なかったんじゃないかしら?」

「日菜はただ純粋に、紗夜とゲームをして遊んでいた。」

「だから、自分が勝っても一人だけご褒美がもらえるだなんて、端から考えていなかった‥」

「そのまま伝えてもあなたは悔しがるでしょうから、頑張ったご褒美にって‥言ったんだけどね?」

そういえば、思い出した


私はお母さんに好きなものを言ってごらんと言われても、答えられなかったのだ。

自分は100点をとれなかったのだから、そのご褒美には値しない‥と

テスト前に日菜に、100点をとったら何がほしい?と訊ねたところ、「お姉ちゃんとお揃いがイイっ♪」と話していたので、私は日菜と同じものでいいからと答えたのだった。


そうか‥日菜は最初から私とお揃いのプレゼントを買ってもらうつもりで‥

なんだか自分が情けなくなってきました‥。


それで…紗夜はどうしたいの?」


「えっ…?」


「日菜とのこと…これからどうしていきたいの?」


「…私は‥」


「…日菜に、謝りたいです‥」


「…じゃあ、あなたが迎えに行ってあげなさいっ♪」


「でも‥私にはその資格が…」


「資格?!そんなもの…誰の許可が要るというの?」

「あなたたち姉妹が仲直りをすることに、誰が異論を唱えるというの?」


「私は日菜のことをっ‥!!正直疎ましく思っていました…」


「紗夜?人はね‥相手のこと全部を好きになれなくても、許せなくても…傍にいていいの」

「それにね。紗夜? あなたはわたしから見れば、十分立派にお姉ちゃんをやっていると思うわよ‥?」


「私は…っ」



「……こうしていると、あのテストのすぐ後、日菜が行方不明になったときのことを思い出すわね‥」

「あなた普段はしっかりしてるのに、日菜のこととなるとわたしとの約束も忘れて飛び出していっちゃうんだからっ!」

「それも履き慣れてない靴で走っていったもんだから、ひどい靴擦れで‥」

「でも‥その足で日菜をおぶって‥家まで連れて帰ってきてくれたのよね?」


「…………」



「お互いのことが分かり合えなくてぶつかった。そんなの、よくある姉妹喧嘩じゃない♪」

「紗夜?あなたが日菜に抱くその感情は、日菜と対等でありたいと願うから‥」

「普通はね‥そんな自分の中の醜い嫉妬心なんて、みんな蓋をして見ないようにしてしまうの。その対象と壁を作ってね?」

「でもあなたはそれをしない。それどころか根っから真面目なあなたは、誰もが抱くであろうその嫉妬さえ、許そうとしないの」

「その気高さと誇り高さを、わたしは心から尊敬するわ?あなたはもっと自分自身を誇りなさい‥?」



「わたしは今までただの一度もっ!……あなたが日菜より劣っているだなんて‥思ったことはないわ‥」




「お゛母さん゛‥っ!!」


もう堪えようがなかった

今まで言葉にできなかった想いが、堰を切って溢れ出てきた。

まるで赤ん坊みたいに、声を挙げて泣いた



私が落ち着くまでお母さんはずっと抱きしめてくれていた。

母というものは偉大だと、心からそう思った。



その後、日菜を探しにいく前に、私は自分の部屋の押入れからある物を取り出した。


“ひな”と名前の書かれた小さな靴だ


「あの時は、こんなに小さかったんですね‥」


日菜は、待っていてくれているであろうか


私のよく知った日菜のままで


また戻れるだろうか?


あの頃のような姉妹に…









どれくらいの間、泣いていたであろうか。



気付いたときには、辺りはもうすっかり暗くなっていた。


あの頃からあたしも成長して、大抵のことは一人でどうにかできるようになった気でいたが、どうやらそうではなかったらしい。

奇しくも、あたしは8年前と同じ格好でこうしているのだ。



「お父さんとお母さん…心配してるかな…」



「お姉ちゃんに……嫌われちゃったかな…」


あれっ?


さっきまであれだけ泣いたのに、また涙が溢れてくる

もう体内の水分の5パーセントくらいは目から流した気がする

ちょっと頭痛がするし、あながち大袈裟ではないかもしれない



涙を流しすぎて死んだ人間というのはいるのだろうか?

でもソレって、ちょっとロマンチックだなー‥なーんて…



ガサガサッ


(大きな物音がした)


ガサッ

ガサガサッ

パキッ

「痛っ」


日菜「!?!?」




日菜「だ、誰‥?」






「日菜‥」






「お姉ちゃん‥?」


「どうして‥」


紗夜「どうしてって‥」


紗夜「この場所はあなたと私しか知らないでしょう?」

紗夜「帰るわよ、皆心配してるわ」


日菜「でも、あたし‥ナイショでギターを‥嫌われちゃったのかなって思って‥」グスッ



(大きな溜息が聞こえた)



暗くてお姉ちゃんの表情まではよく見えない‥


バッ


へっ?!


急に抱き寄せられた


「どうしたの、急にっ?!」

「あっ、あなたが中学のとき、いつもこうやってっ!!」






お姉ちゃんの鼓動の音が聞こえる




「日菜‥ごめんなさい‥」


「……どうして‥謝るの?」


「あなたを‥今まで身勝手な理由で遠ざけていたわ‥」


「……そうだったの?」

「はぁ?!気付いてなかったの?!」



「えへへ‥ウソウソ。でも、怒ってないよ‥」




「…………ッ!」グスッ



「……お姉ちゃん…泣いてるの?」



「……ごめんなさい‥あなたが抱えていた孤独にも‥気付いてあげられなくて…」



「うん‥寂しかった。……でもお姉ちゃんのせいじゃないよ‥」

「あたしも‥お姉ちゃんのこと‥いっぱい傷つけてたんだよね‥?」


「それこそ‥あなたのせいじゃないわ」グスッ



「あたしね‥お姉ちゃんが嫌なら‥ギターやめるよ」


「日菜‥?」



「パスパレは…… るんっ、な場所だったんだけどさっ」


「それでお姉ちゃんを傷つけるのは‥嫌だから‥」







「……辞めなくていいわ‥」


「やっと見つけた‥居場所なんでしょう?」





「……うん‥ッ」



また涙が溢れてきた




「日菜…私はもう‥自分の弱さから……あなたから目を背けたりしない…」




「…お姉ちゃん…っ」









「日菜‥」





















「大好きよ」



以上で完結となりますm(_ _)m

読んでくださった方いたかわかりませんが、氷川姉妹に興味を持ったり、好きになってくれた方がいれば幸いですm(_ _)m

html化依頼出しておきます。


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