【デレマス時代劇】島村卯月「忍耐剣 櫛風」 (45)


戦う卯月、別世界。
今回はもう、ガチでグロい。いろんな意味で。

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読み切り 
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【デレマス時代劇】島村卯月「忍耐剣 櫛風」

×××藩には、かつて鬼がいた。

藩主の×××氏。

美しい女を攫って斬り殺し、

子どもを捕らえて熊に食わせる。

人々は彼女を恐れた。

島村卯月は、忍耐の人であった。

戦国では足軽として戦い、

そこで小さいながらも功を立てた。

武士の位を与えられたあとも驕らず、

よく学び、よく藩民に尽くした。

他人に世話を焼き面倒を見るのが、

生来の気性なのか、

人の髪剃りなどもよくした。

それが結構に上手で、

島村は城付きの髪剃り師として

殿に仕えるようになった。


しかし島村は、

未だに殿の顔を見たことがなかった。

家臣達によると、塞ぎがちな性格で、

信用した人間以外寄せ付けないという。

殿は、×××一族の中では末席で、

本来であれば藩主になるはずではなかった。

幼い頃の殿はそれを悔しがるでもなく、

むしろ悠々自適、のびのびと育ったという。

しかし一族に相次いで不幸があって、彼女が担ぎ出された。

昨日までは自由に野山を駆けていたのに、

書院に閉じ込められ、

“藩主のなんたるか”を叩き込まれた。

それも、かつて自分を侮蔑していた人間達から。

だが、島村はとしては殿に同情する気にはなれぬ。

彼女は抑圧の反動から、

女色に走り、藩の女を攫う。

そして飽くまで味わうと、

あっけなく殺してしまう。

子どもなどが町を駆けていると、

それが気にくわないらしく、

捕まえて、飼っている熊の餌にしてしまう。

領民にとっては、まさに恐怖の対象である。

誰かが殿を止めなければならない。

しかし、誰も諫言することはできぬ。

かつでできた者は皆死んだ。

無論、島村にとっても無理なことである。

殿が女を殺した次の日、

また新しいものがやってきた。

名前は美穂という。

閨に入る彼女の身なりを整えるのは、島村の仕事であった。

島村はまず、

美穂の着物をしゅるしゅると脱がした。

殿は、髪以外の体毛を著しく嫌う。

なので、それらを残さず剃るのが

島村の責務である。

美穂はかすかに震えていた。

無理もない。

これから彼女は、人食い鬼と一夜を共にするのだから。

島村は、美穂のうなじを見た。

かすかにうぶ毛が生えている。

さわるとふわりと、心地よい。

しかし全て剃らねばならぬ。

島村は美穂の首をつかんで、動きを止めた。

そしてうなじに剃刀を当てる。

しょりしょりと微かな音を立てて、うぶ毛が落ちる。

剃った跡は、美穂の白くしっとりとした肌に、

ほのかに赤みが挿していた。

島村がそこにふれると、

じんわりと熱を帯びていた。

ここにくちづけをしてみたい。

島村はそんな衝動を覚えた。

しかしできぬ。

殿の相手をする女である。

我慢、我慢とこらえていると、今度は剃刀を

持つ手が震えた。

美穂はそれほどに、美しい少女だった。

美穂は1日目の夜を生き延びた。

だが町に戻されるはずはなく、

城で囚われの身になった。

そして島村が、彼女の世話をすることになった。

美穂は、自分は城下の富商の娘だと言った。

その富商が殿に、彼女を差し出したそうだ。

見返りは、城で賄われる物品取引の独占。

娘1人と引き換えなら、安いとでも思ったのだろうか。

島村は美穂を哀れんだ。

2人はよく話すようになった。

すると島村は、美穂が

純真で朗らかな性格をしていることがわかった。

城にきたばかりは流石に沈んでいたが、会話を重ねるうち、

美穂は島村に心を許したようだ。

島村の方も、いけないと思いつつ、

美穂に心を寄せた。

美穂は完璧な少女だった。

てらてらと輝く、緑の黒髪。

好奇心がかすかに残る、大きくて綺麗な瞳。

小生意気さと愛らしさで、ぴんと立った鼻。

にっこり笑顔が似合う口。

言葉を交わすたび、準備のために服を脱がすたび、

島村は美穂のすべてに溺れたくなる。

唇を吸いたい。

白く、きめの細かなうなじにも

狂ったように口付けをしたい。

自分だけのものにしたい。

しかし殿への忠義と恐怖が、島村を抑えていた。

耐えねばなるまい。

いままでもずっと、そうしてきたのだから。

閨から出てくると、島村が整えた“少女の美穂”は、

やつれた女になって帰ってくる。

時には、ひどい暴力を受けて

顔が腫れ上がっていることもあった。

なんとむごいことを。

島村は彼女の手当をしながら、共に涙を流した。

それでも美穂は、

いままでの女の中では最も長生きであった。

ひょっとすれば、殿は美穂を

人生で最も気に入っているのかもしれぬ。

島村もそうだ。

彼女より美しい少女はいないと思っている。

だからつらい。

一息では殺されず、毎夜毎夜じわじわ嬲られ、

ぼろぼろになっていく美穂を見るのが。

「私の人生って、なんなんだろうね」

そうぽつりと言って、寂しそうに笑う彼女を

抱き止められないのが。

耐えねばなるまい。何度もそう思った。

そう思っていた。

閨に運ばれる、童子切安綱を見るまでは。

美穂は今夜斬られる。

島村は悟った。

大業物安綱は、殿の刀である。

それが閨に運ばれるとは、そういうことだ。

島村は丹念に美穂の身なりを整えた。

彼女から以前の美しさは失われつつあったが、

今夜の出来栄えは最高だった。

本当に、殿に渡すのが惜しくなってしまうほどに。

「じゃあね」

閨に入る前、美穂は島村にそう言った。

胸がしめつけられるような笑顔だった。

島村は部屋の外で、ありえないと思いつつ

美穂が出てくるのを待った。

待ち続けた。

すると部屋からかすかに、血の匂いがした。

それをかいだ時、島村の箍がひとつ外れた。

美穂ちゃん……美穂ちゃん!

島村は、無礼を覚悟で閨に入った。

果たして美穂はいた。

美穂1人だけが、そこにいた。

「卯月ちゃん…助けにきてくれたんですね ♪」

彼女は“童子切安綱”で、自分の手首を切っていた。

「これは、一体…」

島村は尋ねた。

しかしすでに察していた。

美穂は、いや“藩主の小日向美穂”は、

毎晩1人で閨に入っていたのだ。


「それとも、私に抱かれにきたんですか?」

魂さえも奪われそうな微笑みで、美穂が言った。

島村の心はざわめいた。

へその下あたりが、ぞくぞくした。

美穂ちゃんはもう、どこへも行かない。

いや、私が行かせない。

島村はにっこりと美穂に微笑み返して、剃刀を抜いた。

「そんなもので、私をどうしようっていうの?」

太刀を持って、美穂はじりじりと島村に近づいた。

その表情は、先ほどとまったく変わらない笑顔。

「もとの美穂ちゃんに戻ってほしくて」

島村は、美穂を優しく見つめながら、答える。

「あぁ…それは、素敵だね!」

美穂が斬りかかる。しかし、遅い。

真剣勝負の経験もなく、

殺めてきたのは腰の立たない女ばかり。

いまの彼女の剣術は、まさに児戯である。

それをゆったりかわしながら、島村は指で宙を掻いた。

どこを切ろうかしら、そう考えているような動きだった。

美穂の攻撃は全く当たらない。

当然だ。

島村卯月は、狂った戦国を生き抜いた女なのだから。

とうとう美穂は、ぺたりと座り込んだ。

「疲れちゃった」

彼女はそう言った。

「そうだね」

島村は剃刀を振るった。

すると、美穂の首から顔、

頭、うなじにかけての皮膚が、

するりときれいに剥けた。

まるで、覆面のように。

美穂の身体が、どさりと倒れた。

島村は、それには目もくれず、

出来上がったばかりの

肉の面を、自分の頭に被せた。

美穂の香り。

美穂の脂が、肌にあたって心地いい。

美穂の皮が、美穂の目蓋が、

美穂の鼻が、美穂の唇が、

美穂の雪のように白いうなじが、

島村のそれを重なる。

指でふれるよりも、ずっと近い距離。

「美穂ちゃん…」

島村はうっとりと呟きながら、

自分を激しく慰めた。

小日向藩には鬼がいる。

かつては島村卯月という人間で、

今は“櫛風”と呼ばれる。

それは可憐な少女を斬り殺して、その血を飲み干す。

血が失くなった後は、顔の皮を剥いで服を作るという。

人々は、“それ”を恐れる。

おしまい。

エレ速に反映されない…内容のせいか。

結局殿様は美穂で、卯月は殿様のお手入れを毎回してたってことか?
もう一方の部屋で美穂の相手をする女が準備されていて、毎回美穂に
殺されて熊のエサになっていた。たまに美穂がケガするのは女が暴れるから?
でも美穂は毎回一人で部屋に入ってたとか書いてるし、よくわからん

>>43

前の女が殺されてから、ですね。
描写が不足しておりまして、申し訳ありません。

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