P「ひめはじめ」 (25)

健全なお話です

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肇「え?」

P「ほら、毎月1日は肇の日だろ?」

肇「初耳ですが…」

P「ところで肇、鷺沢さんのブライダルのお仕事の写真は見たか?」

肇「? …はい。文香さんの美しさがとても引き出されていたな、と思いました」

P「個人的に鷺沢さんは落ち着いた色が似合うイメージだったんだが、白いドレスもよかったな」

肇「えぇ。あのドレスの白が文香さんの澄んだ瞳の色をより引き立たせていて、いつも以上に吸い込まれてしまうような印象を受けました」

P「目のきれいさで言ったら肇も負けてないけどな」

肇「え…?」

P「鷺沢さんの宝石みたいな瞳とは違うけど、肇の瞳はなんというか、目が合うだけで和やかな気持ちになるような、そんな力がある」

肇「な、何を言って…」

P「それに、うちの事務所の黒髪でストレートなアイドルといえば渋谷さんだけど、肇には渋谷さんにはない魅力がある。それが目だ」

肇「…目、ですか」

P「そうだ。渋谷さんは釣り目で、雰囲気も相まってすごく凛々しく見える。でもそのせいで、第一印象が怖い人だと思われがちだ」

肇「そういえば、そんなことを凛ちゃんも言っていたような」

P「でも肇はたれ目だろ? 黒髪ストレートっていうお人形のような美しさもあり、でもその目つきで親しみやすさも感じられる」

肇「…」

P「ところで肇」

肇「は、はい!?」

P「肇と仲がいいアイドルといえば、鷺沢さんがいるだろ?」

肇「…はい、月下氷姫としてユニットを組んでいますね」

P「そうだ、肇といえば月下氷姫。そして姫で肇といえばひめはじめ」

肇「…え?」

P「だから、肇といえば月下氷姫、姫で肇といえばひめはj…肇?」

肇「…」

P「ってことがあったんです」

ちひろ「…」

P「あれ、聞こえませんでした? 『毎月1日は肇の日だろ?』」

ちひろ「聞こえてましたよ。…それを私に伝えて、どうしろっていうんですか?」

P「肇に口を利いてもらう方法を教えてください」

ちひろ「知りません」

P「そんな殺生な!?」

ちひろ「どう考えてもPさんが悪いじゃないですか!? せっかく肇ちゃんのことを褒めてあげていい雰囲気になってたのに、どうしてそんな最悪な形でその雰囲気を壊してしまったんですか!?」

P「え? いやあれくらいはいつも言ってることなので…」

ちひろ「…ああ、そういえばPさんはそういう方でしたね…肇ちゃんみたいないい子に限ってこんな悪い男にたぶらかされてしまうなんて」

P「たぶらかしてなんかないですよ!」

ちひろ「そうですか。ところで、今日中にとお願いした書類は完成しましたか?」

P「冷たい…はい、それは既に向こうの部署に送ってあります」

ちひろ「相変わらず、仕事だけはできるんですから…」

P「? 何か言いましたか?」

ちひろ「いいえ何も。…お仕事に関しては切れ者なのに、乙女心は扱いきれないプロデューサーさんには、こんな言葉を差し上げましょう」

P「!? なんだやっぱりアドバイスをくれるんじゃないですか~やっぱりちひろさんに相談してよかったなあ」

ちひろ「自業自得、です♪」

P「」

ちひろ「せいぜい肇ちゃんにキレられないように、気をつけてくださいね♪」

肇「…」

P「…なに読んでるんだ?」

肇「…」

P「ああその雑誌か! 表紙の衛藤さんかわいかったよなぁさすがは女子力! って感じだったよな」

肇「…」

P「…た、確か昔肇も衛藤さんに服を選んでもらったんだっけ? 最初あの肇を見たときはびっくりしたけど、肇はああいう流行の最先端みたいなファッションも似合うよな」

肇「…」

P「でも普段の肇も肇らしいっていうか好きだし、さすがというかやっぱり肇は和服も似合うよなぁまたそういうお仕事を見つけられるといいんだけど」

肇「…」

P「…肇?」

肇「…」

P「…藤原さん?」

肇「…!」キッ

P(!? こっわあんな鋭い目をした肇はじめて見た…)

肇「…」

P(めっちゃ睨まれた…というか、肇ににらまれたのが初めてかもしれない…ドSな肇も意外とアリ! とかそんなこという余裕すらなかったぞ選挙に立候補すらできる歳になったのにちびるところだった…)

肇「…」

P「あ、あの…肇さん?」

肇「…はい。何かご用でしょうか」

P「い、いや、これといって特には…」

肇「そうですか」

P「…ちなみに、今俺が睨まれたのって、肇って呼ばなかったから、ですか?」

肇「…そのようなこともわざわざ説明しないといけませんか」

P「いや、無理にとは言わないが…」

肇「プロデューサーさんには、幻滅しました」

P「プロデューサーさん!? 最近は名前で呼んでいてくれたのにプロデューサーさん呼び!?」

肇「耳元で大きな声を出さないでください。うるさいです」

P「うぅ、ごめんなさい…」

響子「あれ、藍子さん? ドアの前でそんな浮かない顔して、どうしたんですか?」

藍子「あ、響子ちゃん…また肇ちゃんとプロデューサーさんがいつものをしていて…」

響子「ああ、いつものですか…」

藍子「今日は早く終わってくれるといいんですけど…」

響子「仲がいいのはよいことですけど、もう少しだけ、周りのことを気遣ってほしいなって思いますよね…」

響子・藍子「はぁ…」

P「はぁ…」

P(肇が機嫌を直してくれない…それどころか悪化させてしまった…)

P(それなのに仕事はいつも通りできてしまう自分がかえって恨めしい…)

P(肇が高垣さんの誕生日に手づくりの湯呑みを贈るって聞いて思いついた、高垣さんのラジオにゲスト出演させてもらうって企画は、高垣さんのプロデューサーが2つ返事で了承してくれたからこれでよし)

P(肇は天女ってイメージが強いからグラビアとか写真の仕事が多いけど、仲のいい高垣さんと一緒なら普段の肇がどれだけかわいいかってのをアピールできる絶好のチャンスだ)

P(ありがたいことに高垣さんも肇のことを妹のようにかわいがってくれているし、肇も高垣さんのことを姉のように慕っている。どちらも見た目は美しいのに、話すと意外とお茶目なところがあって共通点も多い。楓さんのファンなら肇にも興味を持ってくれるはず)

P(ついこの間発表された、ユニットの垣根を越えたコラボCDを出すっていう企画にも肇が参加できることになった。気心が知られているとはいえもはや天上人の高垣さんや、同年代アイドルでも絶大な人気を誇る本田さんたちもいて少しばかり荷が重いかもしれないが、肇ならきっとこのチャンスをものにしてくれるだろう)

P(しかし、俺が仕事を始めたタイミングを図ったかのように高森さんと五十嵐さんが入ってきたが、まるで触らぬ神に祟りなしって雰囲気だったな…彼女たちのプロデューサーから伝言を預かっていたけど、それを伝えたらそそくさと出て行ってしまった)

P(神、か…そういえば仕事モードの肇は女神といっても過言ではないよな)

P(いくら肇が女神だといっても、祟られたくはないよな…あ、でも、ただれるのならアリか? って何を考えているんだ俺は)

P(肇とならただれた関係よりも、清らかな関係でいたいよな…そういえば誰かが担当をそういう目で見るなんて信じられないって言ってたな。誰だったかな)

P(見れるに決まってるだろ。というより、そういう目でも見れなかったら担当の魅力を最大限に活かしたプロデュースができない。肇の場合は、あまり肌を露出させないほうがむしろ色気が出るんだが)

P(かつての花魁はむしろ肌を出さなかったってのも納得だよな…あ、思い出した。見れないって言ってたのは龍崎さんのプロデューサーだ)

P(あんなに無垢で幼い子をそういう目で見てたらかえって問題だよな…佐々木さんのプロデューサーは見れないのかって驚いてたが)

P(って、俺は何をしてるんだろうな…ラジオに出て、CDも出せるっていう大事な時期に、あほみたいなことを言って肇との関係を悪くして)

P「はぁ…ん?」

P(いつの間にか湯呑みが空になってた…いつもは空になるタイミングで肇がお茶を注いでくれてたんだよな…仕方ない、あとで注いでくるか)

P「はぁ…」

肇「…お茶、注ぎましょうか?」

P「はぁ…ん? は、肇!?」

肇「…いらないのでしたら、急須はかたしてきますが」

P「もらうよ、もらう!」

肇「分かりました。…ですが、その前に」

P「?」

肇「反省して、いただけましたか?」

P「うっ…。はい。すみませんでした」

肇「じゃあ私がなぜ怒っていたか、分かりますか?」

P「それは…それは、子どもみたいな下ネタを…」

肇「それもそうですが…あまり名前を、変な風に言ってほしくなかったからです」

P「…」

肇「私にとって肇という名前が特別なのは、前にお話した通りです」

P「ごめん」

肇「からかわれるのは、その…嫌いでは、ありませんが、別の方法がよかったです」

肇「それと、その…私と、姫…いえ、そういうことがお望みでしたら…。2年。…2年だけ、待っていてください」

後日

ちひろ(この間Pさんから送られてきた資料だけど、タイトルが『花魁肇~爛れた女神に触られたい~』って、あの人、疲れてるのかしら…)


 以上です。

 肇ちゃんのファンと担当の間をうろついている身ではありますが、少しでも肇ちゃんのかわいさを表現できていればな、と思いながら書きました。肇ちゃんの声が聞ける日が待ち遠しいです。

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