道明寺歌鈴「弱気な心に我が儘を」 (17)

道明寺歌鈴ちゃんのSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496318934


きっかけは小さな我が儘でした。

一人で寝るのが無性に怖かったから。

一度だけでいいからと、小さな我が儘をプロデューサーさんにしました。



添い寝をしてほしい、と我が儘を言いました。

最初は私の我が儘に戸惑っていたプロデューサーさんも何度も頼む私に根負けしたのか了承してくれました。


プロデューサーさんの温もりは心地よくて、彼の鼓動はまるで子守唄のようでとてもほっとしたのです。

そして、そんな暖かさを味わった私が一度だけで我慢できるはずがなく、それからプロデューサーさんの添い寝はずるずると日課になっていました。






今日も何故か怖くて。貴方がいるのにとても広く感じて。貴方がすぐそこにいるのにとても寒くて。

私の目の前にはプロデューサーさんの背中。どうか、どうか私を見て。いつもみたいに、「歌鈴」と名前を呼んでほしい。わしゃわしゃと頭を撫でてほしい。


プロデューサーさん、と小さく名前を呼んで背中にしがみつきます。


ただ、それだけなのに、さっきまで感じていた不安は和らいで、広いと感じていたはずなのに、それは気にならなくなって、ほんのりと感じる温かさが嬉しかった。


呼びかけても反応はないけれど、それでも私には悲しみは強くありませんでした。


貴方に名前を呼ばれるだけでドキドキして、褒められるたびにとっても嬉しくて。頭を撫でられればどうしようもないくらい嬉しい。
抱きしめられたら泣けちゃうくらい幸せを感じます。



「プロデューサーさん……」

「歌鈴……?」

やっと私を見てくれたプロデューサーさんの胸元に顔を埋めます。

プロデューサーさんの鼓動がはっきり聞こえます。プロデューサーさんの息遣いに貴方を感じられる。プロデューサーさんの温もりに包まれます。


戸惑ったように私を撫でる貴方。なにも言わずに受け入れてくれるその優しさに私は甘えている。

弱気で、ドジばかりしてしまう道明寺歌鈴が頑張れるのは貴方のおかげ。


強く抱きしめられる。私のどきどきが貴方に聞こえてしまう。

私を安心させるかのように微笑みながら、優しく、暖かく、こんな弱い私を受け入れてくれる貴方。

私の心の弱さなんて見透かされていました。孤独に怯え、失敗に怯えていた私の心を恋心で染められてしまいました。


「歌鈴は甘えん坊だな」と呆れているようであり、楽しんでいるように言われます。

甘えん坊にしたのは誰ですか、と抗議の意味を込めてぎゅーっと抱きしめます。

見えていないけれどプロデューサーさんが苦笑いしているのがわかります。


「歌鈴……? そろそろ……」

「……やです」

「や、ってな、お前……」

「……嫌なものは嫌なんです」


絶対に離れません、とぼそっと小声で付け加えて。

離れたらどこか遠くへ行ってしまいそうだったから。プロデューサーさんが目指すのはトップへ、私だってもちろんそれを目指していないわけではありません。でも、ただ私は……


プロデューサーさん、と呼びかけます。

私を心配する声。

それに応えるように抱きしめる腕に力を込めました。

ぎゅっと抱きしめられます。

プロデューサーさんを抱きしめ、プロデューサーさんに抱きしめられて。


朝なんか来なければいいのに、なんて。

朝が来て、離れなくちゃいけないならずっと夜でもいいのに、なんて思ってしまいます。

離れたくない。

我が儘でも、弱くてもいい。

ずっとずっと、こうしていたい。


「歌鈴」と呼びかけられます。

なんですか? と顔をあげてプロデューサーさんの顔を見ました。



ちゅっ、と唇に柔らかい感触。余りに突然な行動にぽかんとしていると、わしゃわしゃと頭を撫でられます。

幸せな温かみに包まれ、私の意識はゆっくりと、微睡みの底へと沈んでいきました。

以上です。
読んでくださりありがとうございました。


道明寺歌鈴「特別じゃない昼下がり、励ましにイタズラなキスを」
道明寺歌鈴「特別じゃない昼下がり、励ましにイタズラなキスを」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496222909/)


昨日歌鈴ちゃんのSSを書いたら私の元へ嫁入りに来てくれました、大好き
http://i.imgur.com/ovcLCfU.jpg

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