ミカサ「駆逐してやる」(30)

ミカサ「最近エレンの様子がおかしい」

アルミン「そうかな? ぼくにはいつもの悪人面に映るけど」

ミカサ「エレンが、他の女と話している」

アルミン「そりゃエレンだって話すよ」

ミカサ「すごく楽しそうに話している」

アルミン「エレンも思春期の男の子だからね。仕方ないよミカサ」

ミカサ「わたしと話しているときよりも楽しそうにしている」シュン

アルミン「ミカサとは常日頃から話してるから、新鮮味に欠けるんだろうね」

ミカサ「そう。わかった。なら仕方ない」

アルミン「うんうん、仕方ない仕方ない」

ミカサ「エレンに纏わりつく害虫を、駆逐するまで」スチャ

アルミン「」

【翌日 朝の食堂】
ミカサ「おはよう、エレン、アルミン」

エレン「おうミカサ」

アルミン「おはようミカサ」

クリスタ「おはようみんな」

ミカサ「」ギロッ

クリスタ「」ヒエッ

エレン「なに怖い顔してるんだミカサ?」

ミカサ「わたしは別に怖い顔はしていない。エレンの気のせい」

エレン「そっか」

アルミン(いやメチャクチャ怖いよミカサ。向かいのジャンがおびえているよ)

ジャン「」ガクガクブルブル

クリスタ「えっと……ここ座ってもいいかな?」

アルミン(クリスタが仕掛けた! エレンの真横をキープしようとしている)

ミカサ「だめ」

アルミン(間髪入れずにミカサが割り込んだ! エレン絡みじゃさすがの瞬発力だ!)

エレン「いいじゃねえかよミカサ。ご飯はみんなで食べたほうが美味しいぞ?」

ミカサ「エレン……ならば、私も真横に行こう」

アルミン(ミカサが席を立って椅子ごとエレンの真横に移動したっ!)

アルミン(これは修羅場になった! いや、違う。修羅場になったんじゃない! 今まで勘違いをしていただけだ!)

アルミン(元からこの訓練所は、修羅場だ)

エレン「なあミカサ……暑苦しいんだが」

ミカサ「エレンを一人になんてさせない」

エレン「いや、だからってゼロ距離はないだろ」

ミカサ「膝を突き合わせて味わう朝食は、美しい」

エレン「そういうのって向かい合わせで突き合わせるもんだろ。横でくっ付けるもんじゃないだろ」

ミカサ「細かいことは気にしなくていい」ギュッ

エレン「」ヒエッ

アルミン(ミカサの猛烈アピールが炸裂している。エレンは動揺を隠せていない模様)

アルミン(対するクリスタサイドはどう出る!? どう動く!?)

クリスタ「エレン、昨日の格闘訓練のとき、大丈夫だった?」

エレン「あぁ、アニに投げ飛ばされて気絶したんだっけ俺……大丈夫だクリスタ」

クリスタ「みんな心配していたよ。わたしもすごく心配したんだから」

クリスタ「でも……よかった。最悪なことにならなくて、本当によかった」ニコッ

エレン「」ドキッ

アルミン(キターーーっ! 己のことを可愛いと自覚している者だけが放つことのできるキラキラスマイルだああ!!)

アルミン(これは青少年男子のハートを余すことなく鷲掴み! エレンの理性が駆逐されること必至だ!)

ミカサ「エレン騙されてはダメ。クリスタは気絶したエレンに対して侮蔑の視線を送っていた」

クリスタ「送ってないよそんなの! ミカサ酷いっ! どうしてそういう意地悪なことを言うのっ――」ポロポロ

アルミン(キターーーーッ! 美少女である自分が美しく涙を流すことで同情を誘って世論を味方につけようとする手法キターーーッ!!)

アルミン(問答無用でミカサが意地悪して泣かせた感じに映るだろう! でもまあ実際ミカサが泣かせたんだから仕方ないか)

エレン「おい大丈夫かクリスタ。ハンカチ、ハンカチ……誰も持ってなさそうだな」

エレン「仕方ない。おいミカサ」

ミカサ「なにエレン?」

エレン「そのマフラーよこせよ」

ミカサ「」

シュルシュル

アルミン(ミカサの首からマフラーが奪われる超展開キターーーッ! しかも奪い取ったのがエレンで、理由はクリスタの涙を拭くためで、クリスタを泣かせた張本人がミカサで、クリスタはミカサの恋敵で――ああもうミカサ視点で切なすぎるよ)

クリスタ「うっぐ……ひく……」フキフキ

エレン「収まったか。ミカサ、マフラー返すわ」ポイッ

ミカサ「」バサッ

エレン「お前クリスタに対して当たりが強すぎるぞ。なんでそんな意地悪するんだ?」

ミカサ「……ごめんなさいエレン。わたしは冷静じゃなかった」

エレン「謝るならクリスタに謝れよ」

エレン「……ごめんなさい」

クリスタ「ううん……わたしこそ、何か迷惑かけていたなら謝るよ。ごめんね」

エレン「なんかごめんなクリスタ。朝から嫌な思いさせちゃって」

クリスタ「ううん、いいの。エレン、ミカサ、アルミン、また訓練でね」ニコッ

エレン「おう」

アルミン「またね」

ミカサ「……」

クリスタ「」ニヤッ

ミカサ(この世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界は――)

アルミン「ミカサ、ねえミカサったら」

ミカサ「……アルミン?」

アルミン「もうすぐ訓練が始まるよ。みんなすでに移動をはじめてる。食堂には見ての通りぼくたちしか残っていない」

ミカサ「……わかった」シュン

アルミン「……首に巻かないの? マフラー」

ミカサ「今日は、外が暑い……。ので、マフラーを巻く気候ではない」

アルミン「そっか……そうだね。ぼくもそう思うよ」

ミカサ「ねえアルミン。何でエレンは、他の女と会話してしまうんだろう」

ミカサ「わたしはただ、そばにいるだけでいいのに。それだけなのに」ポロポロ

アルミン(そばにいるだけでいい人間の発言とは思えないよミカサ)

【格闘訓練場】
エレン「昨日は油断して気絶させられたけど、今日はそうはいかないからなアニ!」

アニ「ふっ。学習しない男だねえ」

エレン「いざ勝負っ!」

バシボコドシッ

アニ「口ほどにもないね」

エレン「いってぇ……アニ、もう少し手心ってものがあるだろ……」

アニ「私もアンタに同じことを言いたい」

エレン「は?」

アニ「アンタが力いっぱいぶつかってくるもんだから、こっちもそれ相応の返し方をしなくちゃいけないんだよ」

アニ「単純に力じゃ敵わないんだ。アンタも男ならさ、私の、このか弱いカラダを、もっといたわるべきなんじゃないの?」

エレン「は? お前の冗談は面白くねえな。力で敵わなきゃ、どうして俺は倒れててお前は立ってんだ」

アニ「力で投げたわけじゃないんだ」

エレン「へ?」

アニ「アンタにも教えてあげるよ。わたしの技術と、女の子との話し方を」

エレン「ま、待て、すこし休憩し――」

ライナー「ぐはああああ!」ドサッ

エレン「どうして空からライナーが降ってきたんだ?」

アニ「何事だい?」

ミカサ「アニ。またエレンを気絶させるつもりなら、わたしは遠慮しない」

エレン「ミカサ。また俺のことを子ども扱いしやがって」

ミカサ「エレンは指をくわえたりしてればいい。くわえて見てろ」

エレン「ええっ……」

アニ「この技術は人間用なんだけどねえ。まあ、猛獣に通用するか興味がある」

コニー「オイオイ、あの二人がやんのか?」

サシャ「夢のカードが!」

マルコ「やっぱりアニかな?」

ジャン「は!? バカか! 俺はミカサに晩飯全部だ!」

アルミン「普通にやれたらミカサが勝つよ。でも、いまのミカサは普通じゃない」

ジャン「は? どういうことだよそれ? もう晩飯全部賭けちゃったんだが!?」

アルミン「いまのミカサは、こころの支えを失っているんだ。だから、エレンの態度次第では、ミカサは負ける」

アニ「」フンッ

ミカサ「」ヒョイッ

ミカサ「」バシッ

アニ「うっ――」ズキッ

ミカサ「」バシッバシッ

アニ「」ボコッボコッ

ミカサ(やはり、私は強い。すごく強い。ので、アニすら軽く倒すことができる)

ミカサ「これで、最後」ヒュッ

エレン「もう止めてやれよミカサ!」

バコッ

エレン「うぐっ……」

ミカサ「エレン!」

アルミン「大変だ! ミカサがエレンをKOしてしまった!」

ジャン「エレンのやつ、ふたりの戦いを止めようとしてミカサに蹴られやがった羨ましい!」

マルコ「エレンが動かなくなっちゃってるよ!」

コニー「オイオイ、オイオイオイオイオイまーたエレンは気絶したのか!?」

ミカサ(とんでもないことをしてしまった。エレンの顔面にクリティカルヒットさせてしまった)

アニ「アンタ、私を庇って……どうしてそんなことを」

エレン「…………アニ?」

アニ「!」

ミカサ「エレン!」

アルミン「エレンの意識は無事みたいだね。二日連続気絶は免れたみたいだ」

アニ「どうして身を挺したんだい?」

エレン「もう決着はついてただろ? これ以上の戦いは不毛だ」

アニ「変な所でお人よしなんだねアンタは」

エレン「俺もお前に同じことを言いたいよ」

アニ「ふふっ」

エレン「そもそも蹴られるの嫌だろ? 痛いし」

アニ「……そろそろ休憩だね。今日の事は仮にしとくよ」スタスタ

クリスタ「エレン大丈夫!?」

エレン「心配すんなクリスタ。あ、いてててて――」

クリスタ「膝を擦りむいちゃってる! 大変!」

エレン「こんなのツバでも付けておけば治るさ」

クリスタ「そうなのかな……」

クリスタ「もしよかったら、私の唾液を使ってよ」ポトッ

エレン「あぁなんか効く気がするわ」

クリスタ「こんな汚い唾液しかなくて、ごめん」テレテレ

エレン「いや……助かる」

ミカサ「」

ライナー「」

クリスタ「」ニヤッ

【休憩中】
ミカサ「わたしが頑張れば頑張るほど、エレンに嫌われてゆく」

ミカサ「かなしい」

アルミン「たぶんミカサは、積極的過ぎるんじゃないかな?」

ミカサ「好きな子には積極的にアピールしたほうがいいって、カルラおばさんが言ってた」

アルミン「それはそうなんだけど、押し引きっていう言葉があってね」

アルミン「今までグイグイ来てた相手が急に素っ気なくなると、逆にそれが気になっちゃうっていうパターンもあるんだ」

ミカサ「そう。知らなかった」

アルミン「だからミカサ、敢えてエレンに素っ気なくしてみよう」

アルミン「ミカサは首から上は凄く素敵だから、エレンも案外コロッといくかも」

ミカサ「わかった。アルミンの言う通りにしてみよう」

【夜 食堂】
ミカサ「アルミンお疲れ」

エレン「おう――って、あれ?」

アルミン「どうしたのエレン?」

エレン「いや、別に何でもない――」

ミカサ「アルミン、明日の立体機動訓練に向けてしっかり食べないとダメ」

アルミン「わかってるよミカサ」

ミカサ「アルミンが栄養失調になったら、私は悲しい」

アルミン「気にし過ぎだよミカサ」

ミカサ「アルミンには風邪などをひかずに元気で過ごしてほしい」

アルミン「ぼくは見た目より健康なんだよ、よく虚弱だと思われるけど」

ミカサ「わたしもそんなイメージがある。アルミンだけが、私の帰るべき場所だから」

アルミン「ミカサったら大袈裟だなあ」

エレン(…………何なんだこれは)

SSになるとどうしてミカサってエレンが好きな事しか原型が残ってない
アホの子みたいにされるんだ??

クリスタ「おはようみんな」

エレン「おう」

アルミン「おはよう」

ミカサ「おはよう」ニコッ

クリスタ「」ヒエッ

ミカサ「クリスタは、今日も可愛い。すごく可愛い」

クリスタ「あ、ありがとうミカサ」

ミカサ「わたしもクリスタみたいな可愛さがほしい」

クリスタ「ミカサこそ十分可愛いと思うよ?」

ミカサ「そんなことはない。クリスタの可愛さが羨ましい」

ミカサ「わたしなんて全然大したことはない。クリスタは女神」

クリスタ「女神だなんて賛辞が過ぎるよ。わたしこそミカサみたいなクールビューティーに憧れる」

ミカサ「クールなことが良い事とは限らない。クリスタのような愛嬌は大事。それで男は手玉に取れる」

クリスタ「もうミカサったら、忌憚のない発言だなあ」

アルミン「」ガクガクブルブル

エレン「ふたりとも仲直りしたんだな。どうやったんだミカサ?」

ミカサ「普通のことをしただけ」

エレン「普通のことってなんだよ?」

ミカサ「エレンには関係ない。鬱陶しいから訊いてこないで」

エレン「」

アルミン(エレンの表情が曇った! 効いてる効いてる!)

ミカサ(アルミンが『その調子だ』という顔をしている。今が畳みかけるときなのだろう)

ミカサ(心を鬼にして接しよう。わたしならできるはず)

ミカサ「そもそもエレンはむかしから態度だけ偉そうで役に立たないばかりか腰抜けだ」

ミカサ「立体機動も対人格闘も座学も体力もわたしより下」

ミカサ「たまには格好良いところを見てみたいのに残念だ。わたしは正直失望している」

ミカサ「そればかりか色恋沙汰にうつつを抜かして兵士としての訓練を蔑ろにしている」

ミカサ「このままでは開拓地へ向かわされる日も近いだろう。訓練学校の劣等生。それがエレン・イェーガー」

ミカサ「たまには流石という一面を垣間見せてほしい。しかしもう、それは叶わぬ泡沫の夢」

エレン「」スタッ

アルミン「エレン? 急に立ち上がってどうしたの?」

エレン「」スタスタ

ミカサ「どこへ行くのエレン?」

クリスタ「待ってエレン!」スタスタ

ミカサ「エレン!」

アルミン「まってミカサ!」

ミカサ「でも!」

アルミン「これでいいんだよ。構うことだけが愛情じゃない。勇敢に行動しよう」

ミカサ「エレンは、怒っていたはず」

アルミン「かもね。正直、あそこまでフルスロットルでかますとは思わなかったよ。突き放すっていうより罵声を浴びせてたし」

ミカサ「さじ加減が分からなかった」シュン

アルミン「でもこれでいいと思う。たしかに最近のエレンには、ミカサのいうとおり甘えが生じていた気がするよ」

ミカサ「だからといって……エレンには優しくしたい」

アルミン「さっきもいったでしょう。咎めることだって立派な優しさだよ。特にエレンみたいなタイプは、叱って伸ばす方がいいはず」

【立体機動 訓練場】

エレン「」ジャキ ジャキ

キース(今日のエレン・イェーガーの動きには、目を見張るものがある)

キース(最近少し緩んでいる様子が散見されたが、今日は訓練に身が入っていて素晴らしい)

キース(なにか心境の変化でもあったか)

【休憩中】

クリスタ「エレンすごいね! 全然追いつけなかったよ!」

エレン「殺シテヤル――」

クリスタ「えっ?」

エレン「俺は巨人を駆逐してやる。一匹残らず。そのためにここに来たんだ」

クリスタ「知ってるよ。前に食堂で話してたもんね。すごく素敵な志だと思う!」

エレン「でもこのままじゃ餌になって終わりなんだ。もっと、もっと強くならないと」

クリスタ「エレンは強いよ。すごく強い。だからエレンなら、きっと憎い巨人を駆逐できる」

エレン「俺はそうは思わない」

クリスタ「あ……えへへ。そうなのかもしれないね」

アルミン「エレンの顔つきに精悍さが戻ってる。効果はてきめんだ」

ミカサ「エレンに申し訳ないことをした。今すぐに謝りたい」

アルミン「まあまあミカサ。もう少し傍観しておこうよ」

ミカサ「わかった。それにしても――」

ミカサ「あの女、絶対に許さない」

アルミン「クリスタのこと?」

ミカサ「」コクリ

アルミン「今日の朝は不気味なほどクリスタと仲良かったけど、あれはもちろん演技だよね?」

ミカサ「敵を駆逐するためには、まず油断させることが重要」

ミカサ「わたしのことを味方だと信じ込ませたところを、削ぐ」スチャ

アルミン「クリスタはそんな単純な女じゃないと思うよ」

ミカサ「アルミンどうして?」

アルミン「朝だってバッチバチだった。完全に女の闘いが封切られていた印象だよ」

アルミン「敵は思っている以上に手ごわいよ。自分のことを絶世の美少女だと把握している」

アルミン「男なんて微笑むだけで落とせると分かってる。男なんてボディータッチするだけで鼻血を出すと理解している」

アルミン「王族みたいに高貴なスマイルを浮かべられたら、腹筋バカのミカサじゃ分が悪いよ」

ミカサ「たしかに笑顔の可憐さならばあの女には敵わない」

アルミン「天と地ほどの差があるね」

ミカサ「しかし問題ない。死体はどうやったって笑わない」スチャ

アルミン「刃傷沙汰はダメだよミカサ! 仲間に肉体的なダメージを与えたらそれこそエレンと一緒にいられなくなる」

ミカサ「……私は冷静じゃなかった」スッ

ミカサ「しかしあの女は許せない。精神的に完膚なきまでに駆逐してみせる」

アルミン「う~ん……提案なんだけどさ、いっそのことミカサとクリスタのふたりで話し合ってみればいいんじゃないかな?」

アルミン「このままウダウダやっていても空気が悪くなるだけだ」

アルミン「クリスタだってエレンとミカサの仲は分かってるはずだから、まずは話し合ってみるべきだよ」

ミカサ「話し合いは苦手。そして不毛」

アルミン「そうは言わずにさ」

ミカサ「せめてアルミンが居てくれないと不安」

アルミン「まあたしかにミカサの残念な言語力では不安かもしれないけど」

ミカサ「でもアルミンがセコンドについてくれるなら、やってみようと思う」

アルミン(殴り合いする気じゃないよね?)

【休憩中】
アルミン「クリスタ、ちょっといいかな」

クリスタ「どうしたの?」

アルミン「ちょっとこっちに来てほしい」

クリスタ「?」

ミカサ「クリスタ」

クリスタ「」ギクッ

アルミン「大丈夫だよクリスタ。ミカサは普段から根暗で無愛想で圧が強いから」

クリスタ「あはは……」

ミカサ「クリスタ、話がある」

クリスタ「どんな話?」

ミカサ「エレンに関すること」

クリスタ「……へえ」

ミカサ「わたしたちは分かっている。あなたはエレンのことが好き」

クリスタ「それは……たしかにエレンのことは好きだよ」

クリスタ「でもそれは、兵士としての目的意識が高くて憧れるってだけなの。その……男として好きとか、そういう類いの事じゃないの」

アルミン「それはどうだろう。最近のクリスタの行動を、単なる憧れでまとめるのは厳しいよ」

アルミン「核心をついてしまうと、キミはエレンに恋をしているんじゃないかい?」

クリスタ「……違う。わたしはエレンに恋なんてしてない」

アルミン「ミカサがエレンに恋心を抱いているのは知ってるよね?」

クリスタ「もちろん知ってるよ。そんなのココの人ならだれでも知ってることでしょ」

ミカサ(え? マジで?)

アルミン「それを知っていてもなお、キミはエレンに接近した。ミカサに対する宣戦布告と捉えられても仕方ないよ」

クリスタ「だからそれは違うの……たしかにエレンのことも好きだし、なんだか放っておけないというか、母性本能をくすぐられるというか――」

クリスタ「強がってるようで実は繊細な所もキュンとくるし、ちょっと親切にするだけで凄くうれしそうにしてくれるし――)

クリスタ「だけどわたしがエレンに接近したのは、あくまできっかけが欲しかっただけ……」

アルミン「どのようなきっかけかな?」

クリスタ「……ミカサ」

ミカサ「なに?」

クリスタ「だから、ミカサ! わたしはミカサと親しくなれるきっかけが欲しかったの!」

ミカサ「……えっ」

クリスタ「言ったでしょう!? ミカサのこと可愛い、って。クールビューティーに憧れる、って」

クリスタ「わたしがエレンに近づいたのは、ミカサと仲良くなりたかったから! ミカサに恋していたからなの!」

クリスタ「でもエレンと話しているうちに、エレンのことも気になってきてしまって――」

クリスタ「私は今、いったい誰に恋しているのか分からない……誰か私を見つけてほしい……」

アルミン(想定外の事態になった。とりあえずぼくの出る幕はないな、うん)

アルミン「ぼくはあっちに行ってるよ。あとはふたりで楽しんで!」スタスタ

ミカサ「」

クリスタ「どうしてこうなっちゃったんだろう……もう嫌だ……」ポロポロ

ミカサ「……クリスタ、こっちを見て」

クリスタ「ミカサ? もしかして、慰めてくれるの?」

ミカサ「落ち着いて。今は感傷的になってる場合じゃない」

クリスタ「」

ミカサ「クリスタ、あなたは、わたしにないものを持っている」

ミカサ「それが羨ましかった」

クリスタ「それは私も同じだよミカサ」

ミカサ「そう」

クリスタ「……側に行ってもいいかな?」

ミカサ「構わない」

クリスタ「じゃあ、お言葉に甘えて」ギュッ

クリスタ(いつ見ても美しいミカサの横顔。それを独占している。なんて贅沢なひととき)

ミカサ(側で見るクリスタは、美しい。ライナーたちが結婚を望むのも理解できる)

クリスタ(物怖じせずに凛としていて本当に格好いい。仕事のできる女性を体現しているよミカサは)

ミカサ(クリスタが頬を染めている。肩が少しだけ震えているのは緊張なのだろうか)

クリスタ(こうしてくっついているだけでも幸せだ。やっぱり私の恋はミカサに宛てられているんだろう)

ミカサ(クリスタは華奢な体躯をしている。ゆえに俊敏な立ち回りが可能なのだろう。でも、もう少し筋肉をつけたほうがいい)

クリスタ(……このまま時が止まればいいな)

ミカサ(……このまま時が過ぎるのも悪くない)

【翌朝 食堂】
エレン「おはよう」

アルミン「おはようエレン」

ミカサ「おはよう」

エレン「ミカサ、おはよう!」

エレン(よかった。ちゃんと返事してくれた。昨日は虫の居所が悪かったんだな、きっと)

クリスタ「おはよう!」

エレン「おはようクリ――」

クリスタ「ミカサっ!」ギュー

エレン「」

ミカサ「クリスタ。皆が見ている」

クリスタ「そんなの関係ないよ! ミカサが愛しい! 愛しいミカサ!」チュッ

エレン「」

アルミン(結局あの後どうなったんだろう。まあいっか、二人とも幸せそうだし)

クリスタ「わたしもミカサみたいに腹筋バキバキになりたい! 筋肉隆々になって幼さを捨て去りたい!」

ライナー「」ガタッ

ミカサ「わたしもクリスタのように女子力を高めよう。キュートでチャーミングな女の子になろう」

ジャン「」ブシュー

マルコ「誰か!? ジャンが鼻血を吹き出した!」

クリスタ「ああもうミカサ大好き! ミカサ好き好き大好きチュッチュ」

ミカサ「この世界は美しい――」

エレン「」ガクガクブルブル


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