長門「……Tバック、好き?」キョン「えっ?」 (31)

最近、長門とよく目が合う。

今日もそうだ。
現在、俺は部室にてSOS団の奇妙な活動に勤しんでいる。どのくらい奇妙かと言うと……

ハルヒ「絶対深爪しないでよっ!?」

みくる「は、はいっ!気をつけますぅ……」

古泉「んふっ。涼宮さんの足の爪の垢の香り……癖になりますね。たまりません」

このように、今日の活動はハルヒの爪切りである。
詳しく現状を説明すると、ハルヒ本人は手の爪をいそいそと切り、そして机の上に行儀悪く投げ出された両足の爪を、朝比奈さんと古泉が片方ずつ受け持ち、せっせと切っていた。

端的に言って、実に阿呆らしい光景である。
しかしながら、一生懸命ハルヒの足の爪を切るの朝比奈さんはとても可愛らしく、見ているだけで微笑ましい。次は俺の爪も切って欲しい。

ハルヒの足の爪の垢を嗅いで恍惚な表情を浮かべている古泉については、どうでもいい。
この国が法治国家であるならば、早急に処分して頂きたい。もちろん、極刑も視野に入れて。

キョン「まったく、何をやってるんだか……」

呆れた呟きを漏らし、俺はそんな奇妙な部員達とは距離を置き、ハルヒの靴下を嗅いでいた。
何を隠そう、これが今日の俺の仕事なのだ。
いや、厳密に言えばハルヒの靴下の脱着だけが俺に下された命令なのだが、脱がした後にそれをどうしようがこちらの勝手だと、判断した。

そして、右足の靴下を担当した俺と同じく、左足の靴下を担当した長門は、丁度俺と対角になるいつもの定位置に腰掛けて、こちらの真似をするかのように熱心に靴下を嗅いでいた。

その長門の視線はこちらに向けられている。

なんとなく、気恥ずかしくなった俺は、ハルヒの靴下でその視線を遮った。

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視線を遮られた長門は、またもやこちらの真似をするように、自分の目線までハルヒの靴下を持ち上げる。一体何の勝負なんだこれは?

キョン「……どうかしたのか、長門」

根負けした俺は、靴下を下ろして問う。
すると長門も靴下を下ろして、再びこちらを見つめ、少しばかりの逡巡の後、おずおずと、机の上に放置されていた分厚いハードカバーの本を広げて、間に挟んでいた栞を取り出した。
そして、その栞に何やら短い文書を書き記す。
書き終えた後、パタンと本に栞を挟むと、とととっとこちらに歩み寄り、手渡してきた。

長門「……読んで」

前にも似たようなことがあったな。
今回は借りた本を放置して長門の要件をすっぽかすことがないように、その場で本を開こうとしたのだが……そっと押し留められた。

長門「……家に、帰ってから」

キョン「わかったよ。家に帰ったらすぐ読む」

長門に念を押された俺は、この場で読むと不都合があるのだろうと察して、本を鞄に仕舞う。
それを見届けて、長門はとととっと自席に戻った。用があるなら口で言って欲しいものだ。

その後。
案の定、朝比奈さんが深爪をしてハルヒの悲鳴が部室内にこだまするといった事件がありつつも、爪を切り終えたハルヒの足に靴下を履かせて、その日の部活はお開きとなった。

キョン「さて……」

自宅へ帰った俺は、鞄から例の分厚いハードカバーの本を取り出して、中を開いた。
間に挟まっていた栞には、こう記されていた。

『夜7時、マンションにて待つ』

一応裏返しにしてその他に何か書かれていないか調べる。あとは何も書かれていないようだ。

確認後、思わず嘆息が漏れる。この程度のことならば、是非とも口頭で囁いて欲しいものだ。
しかし、機密を確保するならばこのやり方以上に相応しい方法はないのだろうと、そう思い、素直に長門のマンションに向かうことにした。

緊急の呼び出しに、少々不安を感じる。

そんな嫌な予感を払拭するように、俺は自転車を力いっぱい漕いで、長門の元へ急いだのだった。

キョン「よう。邪魔するぞ」

長門「……入って」

長門のマンションに辿り着く頃には、だいぶ陽が沈んで辺りが暗くなっていた。時刻は19時。
遅行することなく、まるで計算されたかの如く正確に、俺は長門の自宅へと足を踏み入れた。

長門「……飲んで」

キョン「ああ、すまんな」

フローリングの床に敷かれた座布団に座る俺に、長門は茶を入れた湯呑みを差し出した。
それを啜る前に、とりあえず本題に入ろうと思ったのだが、何故か長門は俺の隣に座ってこちらを見つめていた。結構、いや、かなり近い。
思わず仰け反ると、ぐいっと身を乗り出して、顔を近づけてくる。何のつもりだろうか?

長門「……座って、いい?」

キョン「は?」

長門「……あなたの、膝の上」

状況が理解出来ない俺に、長門は膝の上に座る許可を求めてきた。混迷ここに極まれり、だ。
じっとこちらを見つめて膝を指差す長門の迫力に、狼狽した俺は思わず頷いてしまう。
というか、拒否する理由が見当たらなかった。

許可を得た長門がストンと膝の上に乗り、こちらにピタッと身を寄せる。擦り寄るように。
ちなみに、向かい合わせだ。柔らかな感触。
長門の頭頂部の香りで、理性が飛びかける。
そんな俺に、彼女はおかしな質問をした。

長門「……Tバック、好き?」

キョン「えっ?」

思わず間抜けな声が口から出てしまう。
ちょっと待ってくれ。いまなんと言った?
俺の耳には『Tバック』がどうとか聞こえた。
しかし、それはあり得ない。長門が、そんな。
あの長門だぞ?そんなことを聞く訳がない。

恐らくは……そう、『ティーパック』だ。
きっとそうだ。そうに違いない。間違いない。
彼女の発音が悪かったのか、それとも俺の耳が悪かったのかは、今となっては定かではない。
しかし、長門が膝に乗っているシチュエーションから鑑みるに、浮かれた俺が幻聴を聞いたのだろう。なんとも恥ずかしい聞き間違いだ。
全く、自分の頭を引っ叩いてやりたい気分だ。

そこまで思案を巡らせ、自分を納得させた俺は長門に対して返答する。落ち着いて、冷静に。
一口お茶を啜ってから、口を開いた。

キョン「そうだな……最近の『ティーパック』は確かに美味い。それは認めるが、やはりお茶は茶葉で淹れるのが一番だと、俺はそう思うぞ」

よし。一切動揺なくスラスラと言えた。
これならば、おかしな幻聴に苛まれていたとは思うまい。極めて満点に近い返答だろう。

しかし、悲しい哉……

現実とは、残酷だった。

長門「……私が聞いたのは、『Tバック』のこと」

キョン「ちょ、ちょっと待ってくれ!お前はなにを言ってるんだ?意味がわかってるのか?」

長門「……あなたの下着の好みが知りたい」

堪らず取り乱す俺に、長門は淡々と説明した。
いやいや、下着の好みだって?勘弁してくれ。
とにかく話題を逸らそう。そうしよう。
俺は声を裏返させながら、声を張り上げる。

キョン「そ、そうだ長門!今日は一体全体、どんな要件で俺を呼び出したんだ?」

長門「……あなたの下着の好みを聞きたくて」

その返答に、唖然とする。
そして同時に、なるほどなと、納得した。
確かにこんな事を学校で聞く訳にはいくまい。
わざわざ自宅にまで呼びつけた真の意味を理解した俺は、今すぐ帰りたい衝動に襲われたが、膝の上に乗られている現状、それは叶わない。
がっちりとこちらの首筋にしがみつく長門の術中に、まんまと嵌ってしまったのだ。

キョン「……嫌いではない。それが答えだ」

仕方なく、自分の好みを伝える。
『Tバック』が好きか嫌いかを聞かれて、嫌いと答える男子高校生が存在するだろうか?
俺の返答は、至って健全なものであると、どうかご理解願いたい。そして、長門は理解した。
俺の好みを聞いた彼女は、こんな提案をする。

長門「……今から一緒に、買いに行く?」

突然の長門の提案に目を白黒させた俺だったが、これまた断る理由が見当たらなかった。

キョン「……買いに、行くか」

長門「……ん」

素直に頷くと、長門はきゅっと抱きついた。
その余りの小っ恥ずかしさに耐えきれなくなった俺は、しがみつく彼女を何とか引き離し、立たせると、Tバックを買いに外へ出た。
長門は俺の後ろをとことこ付いてくる。
近くのショッピングモールまで徒歩だとそれなりに距離があるので、どうしたものかと考えあぐねていると、長門は心配は無用だと言う。

長門「……警察無線を、傍受出来る。だから、自転車に二人乗りしても、平気」

キョン「それなら、しっかり掴まっておけよ」

長門「……わかった」

今更、この対有機生命体コンタクト用、ヒューマノイド・インターフェースの性能を疑うようなことはせず、すんなりと彼女の言うことを信じた俺は、乗ってきた自転車の荷台に長門を乗せて走り出した。しかし、重さは感じない。

きっと重力を無視しているのだろう。
そんな、体重を限りなくゼロにした長門だが、その細腕はしっかりとこちらの腹に回されていて、確かにそこに居るのだと感じさせていた。
そして、時折「右」とか「左」とか指示を出して、警察車両や交番などを避ける道順を教えてくれる。
実に高性能なナビゲートである。

すっかり夜の帳が下りた夜道を、ひた走る。

気分は高翌揚して、下り坂を下っている感覚だ。

ちらほら見え始めた星空が、綺麗だった。

長門「……どれが、いい?」

キョン「そう言われてもな……」

無事、警察に見咎められることなくショッピングモールへと辿り着いた俺達は、下着売り場で物色していた。時刻は20時。閉店間際である。

その為、客が少なかったのが幸いだった。
いくら女連れだからと言って、このような場所に立ち入るのは気後れする。しかし、客足が途絶えた今ならば堂々と振る舞うことが出来た。
店員の視線だけが気がかりだったが、若い男女が下着を買いに来るのはさほど珍しいことではないようで、生温かい眼差しを向けられた。

きっと、俺達はそういう関係だと思われているのだろう。しかし、それはこの際、好都合だ。
こちらの邪魔をしないのならば、それに越したことはない。存分に誤解してくれて構わない。

ちょっとした優越感じみたものを抱きながら、物色を続ける。すると長門は一枚の下着を手に取って、それを俺に向けて、見せてきた。

長門「……どう?」

それは黒のTバック。しかも、紐パン。
極めて布面積が小さく、その上スケスケだ。
俺は見た印象のまま、感想を述べる。

キョン「かなり際どいな」

長門「……気に、入らない?」

キョン「いや、そういうわけではなくて……」

長門「……これに、する」

煮え切らない俺の返答の裏にある卑しい劣情をあっさりと見抜いた長門は、即断即決した。
そんなにわかりやすい表情を浮かべていたとは思いたくないが……やはり、女には敵わんな。

俺は肩を竦めて、言い訳することを諦めた。

その後、長門はサイズを調べると言って店員と共に奥の試着室の中へと入って行った。
手持ち無沙汰になった俺は、種類豊富な下着達をしげしげと眺めていた。目がチカチカする。

キョン「おっ?」

その星の数程の下着の中で、目に留まった商品を手に取ろうとして……やっぱりやめておいた。
長門が傍に居ない今、あまり下手なことをして不審者扱いされたら大変だ。気をつけよう。
そう思いながらも、徘徊を続ける完全に不審者な俺。警備員に見つからなくて良かった。

長門「……お待たせ」

しばらくして、長門が商品の入った袋を手に下げて戻ってきた。そんな長門に聞いてみる。

キョン「そう言えば、下だけでいいのか?」

長門「……上は、必要ない」

何気無く聞いた俺に、長門はきっぱり答える。
どことなく、怒ったような雰囲気だ。
どうやら地雷を踏んでしまったようだと察した俺は、慌ててご機嫌を取ろうと余計なことを口走った。慣れないことはするものではない。

キョン「シ、シンデレラバストって、夢があると思わないか?将来に期待しようぜ!」

長門「……ありのままを、受け入れて欲しい」

キョン「だ、だよな。まったく、その通りだ」

長門の激レアのふくれっ面にたじたじとなった俺は、怒らせてしまったことを猛省しつつ、恐る恐る手を差し伸べてみる。

キョン「それじゃあ、帰るか」

長門「……ん」

その手を長門はしっかりと握ってきた。

もう、怒ってはいないようだった。

再び自転車に二人乗りして、長門のマンションを目指す。夜の街道は、とても静かだった。

自転車を漕ぎながら、俺は感慨深い思いを抱いていた。まさか長門と買い物する日が来ようとは。
出会った当初からは想像もつかない。
それほど、長門は成長していた。

今日1日にしてもそうだ。表情が豊かになった。
赤の他人からすると無表情のように見えるかも知れないが、そろそろ付き合いの長い俺や他の団員には、よくわかる。長門は変わった。
だんだんと、普通の少女へと近づいている。
それを裏付けるように、長門は俺の背にしきりに頬を擦り付ける。実に可愛らしいと思った。

長門「……なに、買ったの?」

キョン「ん?あ、ああ……妹にお土産をな」

こっそり前カゴに忍ばせた俺の買い物袋に目ざとく気づいた長門を、適当に誤魔化す。すると彼女は、なにやら感心したように独りごちた。

長門「……あなたは、優しい」

キョン「そ、そんな大したもんじゃないって」

突然褒められて、顔が熱くなる。恥ずかしい。
反射的に否定すると、長門はまた背中に頬を擦り付ける。まるで俺の否定を否定するように。

長門「……あなたは、とても優しい」

二度目のお褒めの言葉。気の利いた返しが思いつかない。だから、黙ってペダルを漕いだ。

長門「……私は、そんな、あなたのことが……」

ガタンッと段差を乗り越える。危ない危ない。
話の続きに耳を澄ます俺だったが、待てども待てども長門は続きを話してくれない。

キョン「……長門?」

辛抱堪らず、問いかける。
すると長門は……

長門「……舌、噛んだ」

どうやら先ほどの段差を乗り越えた衝撃で、舌を噛んでしまったようだ。なんとも間の悪い。
ガックリ肩を落とす俺の背に、長門はごめんなさいとでも言うようにスリスリ頬擦りをした。

その後、長門のマンションに戻った俺は、そのまま帰っても良かったのだが、長門が上がっていけと言うので、お邪魔することにした。
格好良く颯爽と帰りたい気持ちよりも、このまま帰ってしまうのが惜しいと思ったのだ。
そのくらい、魅力的な提案を、長門はした。

長門「……Tバック姿を、見て欲しい」

こんなことを言われたら、誰だって頷いてしまうだろう。決して、俺の心が弱い訳ではない。

キョン「……まだか?……まだなのか?」

リビングに座って、そわそわと落ち着きなく待つ。緊張と期待が入り混じった不思議な感覚。
すっかり冷えたお茶を飲み干した頃、脱衣所から1人の天使が現れた。下着姿の長門である。

長門「……お待たせ」

長門という名のその天使は下着だけを身につけて俺の眼前へと降臨した。後光が差している。

キョン「……素晴らしい」

思わず、感嘆のため息が漏れる。
きめ細かく、滑らかな白い肌。それと対照的に局部を覆う、漆黒の紐パン。完璧な対比。
上半身に纏う野暮ったいデザインのキャミソールだけが残念極まりないが、そんな子供じみた上半身と妖艶な下半身のギャップが堪らない。

幼さと淫猥さが絶妙に混在する聖天使長門。
俺の視線を釘付けにした彼女はその場でくるりと後ろを振り向いて、Tバックとはなんたるかを無知な俺に知らしめた。食い込むTライン。

下着を穿いているのにも関わらず、生尻。

この日俺は、究極の美尻に出会った。

長門「……足の爪を、切って欲しい」

キョン「……かしこまりました」

完全に俺の心を鷲掴みにしたエロエロな長門の過激なお願いを、おかしな口調で受諾する。
断る理由を探すことすら、愚かしいことだ。
理性?道徳観?そんなもの犬にでも食わせろ。
そんな煩わしいものなど、必要なかった。

長門「……深爪、しないで」

キョン「当たり前だろう。この道何年だと思ってるんだ。安心して、全て、俺に任せろ」

長門「……よろしく」

俺の根拠不明な自信満々な返答に長門は頷き、膝の上に細っそりとした白い足を乗せた。
そして、爪切りを手渡す。これで準備完了だ。

キョン「……切るぞ」

長門「……ん」

パチン。パチン。親指から攻める。
その足は大変小さく、足裏は非常に柔らかい。
足の甲はスベスベで、頬擦りをしたくなる。
とても、幸せなひと時。生きてて良かった。

思わず、爪の垢の匂いを嗅ぎたくなる。
だが、古泉と同じ変態になるのは嫌だ。
俺は必死に、そして無心で爪切りをした。

しかし、視線は長門のスケスケ下着に向かう。

俺は……長門に夢中だった。

長門「……次は、あなた」

キョン「わかった。よろしく頼む」

切り終えた俺から爪切りを受け取った長門は、膝の上に足を乗せ、パチンパチンと爪を切る。
下着姿の女子高生に、足の爪を切られる。
まるで夢のような状況に、思わず頬を千切ってみたら、とても痛かった。紛れもなく現実だ。

長門「……終わった」

キョン「ありがとな、長門」

長門「……ん」

そんな馬鹿なことをしていたら、長門はあっと言う間に爪を切り終え、そして切った爪をケースから手のひらへと取り出して……

それを思いっきり嗅いだ。

キョン「お、おいっ!」

長門「……なに?」

キョン「汚いからやめろって!!」

長門「……切った爪をどうしようと、私の勝手」

堪らず注意すると、長門はそんな暴論を口にした。
なんて奴だ。俺は必死に我慢したのに。
だが一方で、人の目を気にせずに自分の欲望に忠実になれる長門を羨ましいと思った。
同時に、悔しさと劣等感が湧き上がり、俺はそんな長門に仕返しをするべく、彼女の細い足首を掴んで、こちらに引き寄せた。

長門「……離して」

キョン「へっ。やなこった」

さあ、反撃に打って出よう。

引き寄せた細い足から、ついつい付け根の方へと視線が向かいそうになるが、ぐっと堪えた。
今は長門にひと泡ふかせることに専念する。

長門「……くすぐら、ないで」

キョン「おいおい、もう降参か?」

俺の仕掛けた反撃は、くすぐり攻撃。
柔らかな足裏をこちょがす。実にくだらない。
それでも、そんなくだらないお遊びに、長門は付き合ってくれた。過去に朝倉から腹に風穴を開けられたことがある長門にとって、足の裏をくすぐられることなど、大したことではない。
しかし、感覚を遮断することなく、長門はいつもの鉄面皮をひくつかせ、悶えている。

長門「……えいっ」

キョン「うおっ!?やりやがったな!」

お返しとばかりに長門が俺の脇腹をくすぐる。
俺も負けじと、長門の白い脇腹をくすぐった。
現状を簡潔に説明すると、いちゃついていた。
お互い、ハイになっていたのだろう。
しばらく格闘して、マウントポジションを取った俺は、彼女の脇の下に両手を差し入れて、キャミソール越しにこれでもかと、くすぐる。

長門「……もう、やめて」

キョン「まだまだ。もっとくすぐってやる」

この時の俺は、歯止めが効かなくなっていた。
完全にやり過ぎていた。やり過ぎてしまった。

長門「……もう、やめっ……あっ」

その瞬間。

ブチュッと、湿った音が、室内に響き渡った。

キョン「……」

長門「……」

その異音に、二人揃って固まった。
なんだ今の音は。いったい何の音だろう?
その疑問に答えるかのように、刺激臭が漂う。

間違いない。これは便の香りだ。
慌てて自分の尻へと注意を向けるが、俺の尻に変わった様子はない。つまり、犯人は……

長門「……ごめん、なさい」

目を見開いたまま、驚愕の表情を浮かべながら、長門は謝罪した。顔が青ざめている。
その様子に、愉悦を感じることは出来ない。
俺もなんと言ったらいいかわからなかった。
高笑いが出来たら、どれだけ良かっただろう。
ただただ、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

長門「……ごめん……なさい」

キョン「あ、謝るなよ。こっちこそ悪かった」

謝罪を繰り返す長門を制して、謝る。
俺の悪ふざけが原因なのは明らかだ。
しかし、長門の謝罪には、別な理由があった。

長門「……せっかく、選んで貰ったのに」

彼女は、下着を汚したことを謝っていた。
そんな健気な長門に掛ける言葉が見つからず、俺は少し考えて、彼女をそっと抱きしめた。

しばらく抱擁する。長門は震えていた。
その震えがどうか収まることを祈りつつ、俺は慎重に言葉を選びながら、口を開いた。

キョン「長門……聞いてくれ」

長門「……ん」

キョン「さっきのTバックは、確かにとても良く似合っていた。だけどな、他にも下着はある」

長門「……他にも……?」

キョン「ああ。だから、ちょっと穿いてみてくれないか?実は、お前の為に買って来たんだ」

そう言って、買い物袋を差し出す。
道中で、妹への土産と言った物だ。
長門はそれを震える手で受け取った。

長門「……妹へのお土産と言っていた」

キョン「それは嘘だ。気恥ずかしくてな」

長門「……そう」

キョン「俺からのプレゼントだ。気に入るかはわからんが……どうか、穿いてやって欲しい」

長門「……ありがとう」

長門の頬に、透明な雫が伝う。
ポロポロと零れ落ちるそれには、悲しさは微塵も含まれておらず、とても澄んだ綺麗な涙だった。

キョン「大丈夫か?」

長門「……平気。穿いて、くる」

キョン「期待して待ってるよ」

ふらつく長門を立たせて、風呂場まで肩を貸してやった。心なしか、顔色が良くなった。
風呂場にあったタオルを数枚受け取り、俺はリビングの掃除をしながら長門の帰りを待つ。

なにはともあれ、俺のプレゼントで活力が戻って良かった。そんな安堵のため息を吐きながら、せっせと床に広がる便を片付ける。
少しも嫌じゃなかった。それが少し不思議だ。
どうして嫌ではないのかと、思案を巡らせていると、脱衣所の扉がガラリと開いた。

長門「……お待たせ」

とことこ長門が歩いてくる。また下着姿。
しかし、今度の下着はあまり過激ではない。
白と黒のモノクロームな生地で統一された、ありふれたデザインの、フリルが多めで上下セットな普通の下着。無論、Tバックではない。

キョン「サイズは平気か?」

長門「……ぴったり」

キョン「そいつは良かった。……似合ってるよ」

長門「……嬉しい」

月並みな表現ではあるが、本当に可愛らしい。
個人的には、長門にはやはり、こうした普通の下着を着用して貰いたい。過激な物は、たまにでいい。
それこそ、勝負の時だけで充分だ。

とまあ、結局そんな結論に行き着くところが、実に俺達らしいと言えば、らしかった。

長門「……やっぱり、あなたは優しい」

キョン「んなことはない。俺はただ、自分好みの下着をお前に着せただけさ」

長門「……どうして、優しく、してくれるの?」

白と黒のフリルが重なるブラの前で手を組み、まるで拝むようにそんな問いかけをする長門。
先ほど長門の便を片付ける際に抱いた自問への回答を未だ導き出せない俺は、悩む。

長門が命の恩人だからか?
いや、違う。
普段から世話になっているから?
それも違う。
同じ部活の仲間だからか?
全然、違う。

考えれば考えるほど、馬鹿らしくなる。
答えなんざ、簡単なことだった。

キョン「きっとそれは……長門が長門だからだ」

そんな、答えとも呼べない回答。
我ながら口下手にも程がある。実に情けない。
だけど、恐らく、下着の種類や形状などは関係なく、長門の下着というだけで愛おしいのだ。
それが便に塗れていようとも、そして床に便をぶちまけられようとも、長門だから愛おしいのだ。

それが、俺の本心だった。

長門「……そう」

そして長門はその回答に満足したように……

瞳を閉じて、頷いた。

キョン「それじゃあ、そろそろ帰るよ」

たっぷりと長門の下着姿を拝み、言いたいことをぶちまけた俺は、さっさと帰ることにした。
そんな薄情な俺の服の裾を、長門が掴む。

長門「……泊まって、いって?」

これまた魅力的な提案。
しかし、こればかりは頷く訳にはいかない。
先ほどの自分の気障な台詞が今更途轍もなく恥ずかしくなってきたのと、これ以上この場に居れば間違いが起きてしまうことを、危惧したのだ。

キョン「今日は帰るよ。また明日な、長門」

そう言って、長門の柔らかな髪を撫でる。
すると彼女は一瞬泣きそうな顔をして、そして何かを思い出したかのように脱衣所に向かい、タオルで包んだそれを、俺に手渡した。

キョン「これって、まさか……」

長門「……お土産」

なんとなく、中身は察しがつく。
思わず、口元が緩む。にやけてしまう。
すると、長門も薄っすらと、微笑んだ。

長門「……また、来て」

そう囁いて、遠慮がちに手を振る長門に見送られながら、俺は帰路についたのだった。

暗い夜道を自転車でひた走る。
ガシャガシャとペダルを漕ぎながら、おもむろに長門から貰ったお土産を鼻先に押し付けた。

キョン「フハッ!」

ガツンと脳に伝わる刺激臭。
封印されし愉悦がこみ上げてくる。
長門の奴め。本当に、目を見張る成長だ。
タオルに包まれた、便に塗れたTバックの香り。
これを身につけていた長門の姿が鮮明に蘇る。
それに伴い、哄笑が口から溢れ出た。

キョン「フハハハハハッ!!」

満点の星空の下、高笑いを響かせる。

最高に清々しい気持ちだった。

頭上に輝く白い月がまるで長門の尻のようで……

そんな尻のような月に届けとばかりに、嗤う。

キョン「フハハハハハハハハハハッ!!!!」

そんな、狂ったような笑い声を、天に響かせた。

翌日。

ハルヒ「今日はみくるちゃんの爪を切るわよっ!」

みくる「そ、そんなぁ~!?」

古泉「んっふ。どんな香りか、愉しみですね」

今日も今日とて騒がしいSOS団。
どうやら本日の生贄は朝比奈さんらしい。
部内の喧騒に辟易としつつ、当然俺も部活動に参加するべく、重い腰を上げる決断をした。
朝比奈さんの爪切りを逃す手はない。

キョン「……ん?」

決意を新たに胸をときめかせて参戦しようとした俺の服の裾が、くいっと引かれる。
すぐ傍に、いつの間にか長門が立っていた。

長門「……見て」

そう言って、スカートを持ち上げる。
驚きつつも、無意識に視線がそちらに向かう。
すると、そこには……

キョン「絆創膏とは、なかなかやるな」

長門「……気に入った?」

キョン「……まあ、嫌いではないな」

長門「……じゃあ、手の爪を、切って」

そう言われてしまっては、断れない。
最初にご褒美を与えるのは卑怯だと思う。
成長著しい長門は、すっかりおねだり上手だ。
俺は仕方なく朝比奈さんの爪切りを諦めると、長門の爪切りに勤しむことを決めたのだった。

パチンパチンと爪を切る。

その音を聞きながら、俺は思う。

近い将来、きっと長門の尻に敷かれる、と。


【長門有希の整腸】


FIN


ところで>>4はミス?

>>22
読んでくださってありがとうございます!
4レス目に何か不明な点がありましたでしょうか?

>>23
今読み返したら普通の文になってた…あれ?
>>21の名前欄もデフォになってるし勘違いだったみたいだすいませんなんでもなかったです
面白かったから次作も期待してます

>>24
それなら安心しました。
面白かったと言って貰えると、とても嬉しいです!
また是非読んでください。

ありがとうございました!

頬を千切ったら現実だと平然としてられない気が…

>>26
おっしゃる通りですね。
すみません、つねるの間違いでした。
ご指摘してくださり、ありがとうございます!

次はみくるなのだろうか

これは糞SSですね、間違いない
長門が可愛かった

できればコテつけてくれると探しやすくなる

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