【ミリマス】俺のクラスの小さなアーティスト【ロコ】 (17)

 ※モブ男視点、過去捏造、地の文があります
 ※遅筆の為度々更新が遅れる可能性があります

 それでもいいよという方は、どうか最後までお付き合いください。


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「…はあ」

 中学の入学式の帰り道、溜め息を零しながら帰路についていた。

 春は始まりの季節とは言うが、入学初日にクラスの誰とも会話できなかった俺に始まりなんて訪れるのだろうか。

大体みんな小学校からの知り合いの輪の中に俺が入り込むなんて到底無理な話だったんだ。

 そうやって自分を納得させながら、桜並木も終わりに差し掛かった所に、彼女は立っていた。

 「…はあ、やっぱり綺麗です」

 そこには同じように溜め息を零しながら、うっとりした表情で桜を眺める少女がいた。

(あの子、確か同じクラスの…)

 何もクラスの(俺以外)全員が打ち解けられていた訳ではなかった。あの子も1人机に座って、ただ窓の外を眺めていた。

俺に女子に話しかけるなんて不可能だったので、すぐに俺は眠くもないのに机に突っ伏した。

 「…あの、何かご用ですか?」

 なんてことを考えていたら、彼女が俺にそう尋ねてきた。もしかしてジロジロ見過ぎたか…?

 「あっ、えっと、い、いや何でもないよ…はは…」

 唐突に女子に話しかけられたからか、こんなしどろもどろな返事しかできなかった。

 「あれ、そうでしたか。勘違いしてしまってごめんなさい」

 「いや、むしろこっちがごめん…」

 「ふふっ、いえいえ、あまり気にしないでください」

 (…あれ?)ドキ

 そう言いながら微笑む彼女に、俺は一瞬で目を奪われてしまった。

「…俺は君と同じクラスなんだ」

 「え、そうだったんですか?」

 急な自己紹介でキョトンとしてる様子だったけど、会話を終わらせまいとそのまま続けて尋ねた。

 「教室ではずっと窓の外を眺めてたけど、何か面白いものでもあったの?」

 こう言い終えた瞬間に、俺は心の中で頭を抱えた。

 (うわー!!別に何か見るために外見てたわけじゃないだろ!!)

 けれど、そんな俺の考えとは裏腹に、彼女は少し嬉しそうに返事をした。


 「…ハトです。ハトがいっぱいいました」

 「ハト?」

 「好きなんです、ハト」

 「へえ、そうなんだ」

 「それと、少し考え事もしてました」

 「考え事って?」

 そう言うと、彼女は少し照れくさそうに、さっきよりも控えめな声で答えた。
 
 「…ロコはアートが好きなんです。それで、何かいいアイデアないかなって」

 「アート?それにロコって…」

 「あ、そういえば自己紹介がまだでした」



 「伴田路子です、できればロコって呼んでください」


 短くて申し訳ないですが今回はここまでです。

5月。ゴールデンウィークに突入した初日に、俺も世間の熱に浮かされたようにある所に出掛けていた。

 「…さっぱりわからない」

 ここでは、あるアマチュア画家の個展が行われていた。作品は絵画から彫刻まで多岐に渡っていたが、俺には

どの作品の意図も掴めずにただ凄いなあという感想しか出てこなかった。

 「滅茶苦茶絵が上手いってのはわかるんだけど…」

 最初はなんとかそれっぽい理屈を並べて解釈しようとしたが、2、3個作品を見終えた辺りで力尽きてしまい、

ただぼんやりと眺めるだけになってしまった。

個展もいよいよ出口が近づいてきたかな、という所で俺はまた彼女に出会った。

 「あ、伴田さん…」

 「……」

 俺の声が小さかったのか、それとも伴田さんが作品に見入っているからなのか、聞こえていないようだった。

 流石に邪魔するのも悪いと思いこっそり立ち去ろうとすると、彼女がこちらに気づいたようだった。

 「あれ?あなたも来てたの?」

 「伴田さんこそ、奇遇だね」

 なんて、思ってもいない事を口走ってしまった。

 あの桜並木で話して以来、俺は伴田さんとあまり話せずにいた。彼女は毎日のように身に付けるアクセサリーを

変えていて、それをきっかけにクラスの女子たちと交流を深めていった。俺も少なくとも10種類以上のリボンを

付けた伴田さんを見た覚えがある。

 このまま彼女と話す機会がなくなっていくのは、何故か無性に嫌だったので、なんとかきっかけを掴もうと4月の

間ずっと考え続けていた。そこで思いついたのが今日の個展に行くことだった。

 (もしかしたらワンチャン会えるんじゃないかと思ってたけど…)

 なんて下心丸出しで訪れてしまって、主催の方には申し訳ないとは思ったけど、今の自分は終始浮かれっぱなしだった。

 「はい!あなたもこの方のアートにインターレストしたんですか?」

 「インター…何?」

 「あ、ソーリーです。興味があってきたんですか?」

 「ああ、うん、そんな感じ」

 そういえば伴田さんは普段の会話に英語を織り交ぜた話し方をしているんだった。最初はクラスのみんなも戸惑って

いたが、もう慣れて来たのか誰も突っ込まなくなっていた。

 「ロコは今日の個展でイノベイティブなアイデアをインプットできました!」

 「へえ…?伴田さんも何か描いたり作ったりするんだ」

 「オフコースです!ロコは世界的なアーティストを目指してますから!」

 世界的…なんてどでかい目標を掲げてるんだ…。そう思いながらも、楽しそうに話す伴田さんの姿を見るのはなかなか

に悪い気はしなかった。

 「あ、それと…」

 「ん?」

 そう言って彼女は俺を指さすと、

 「前も言いましたが、ロコのことは『伴田さん』じゃなくて『ロコ』と呼んでください!」

 と、この間よりも強く主張してきた。女子の名前を呼ぶなんて照れくさくてできないと思ったが、とても

断れるような感じではなかったので、仕方がなく変えることにした。

 「わかったよ伴田さ…ロコさん」

 「グッドです!それではロコはもう1周回ってきます!」

 「えっ、もう1周!?」

 「また学校で会いましょう!!」

 そう言うとロコさんは出口を抜けて、また入場して行った。

 『前も言いましたが…』

 その様子に圧倒されながらも、俺は彼女に覚えてもらえてた事を知れただけでも、今年のゴールデンウィークは

充実したものだと感じることができた。

こんな感じのペース&文章量で続きます、ごめんなさいm(_ _)m
一応今月中には完結(予定)です。

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