サターニャ「ねぇガブリール」 ガヴ「違う」 (29)


-廊下-



サターニャ「え?」

ガヴ「私はガブリールじゃない。ガヴリールだ」

サターニャ「……」



サターニャ「え、いや、何が違うの?」

ガヴ「全然違うだろ。ガ『ブ』リールとガ『ヴ』リールだぞ」

サターニャ「???」

ガヴ「……まさかお前、今までずっと勘違いしてたのか?」

サターニャ「勘違いも何も、違いが分からないんだけど」


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ガヴ「マジかよ。お前未だに私の名前すら覚えてなかったのか……」

サターニャ「だーかーら! どこが間違ってるのか分からないっつってんのよ!!」

ガヴ「仕方ないなー……もう一回正しい名前を教えてやるから、ちゃんと覚えろよ」



ガヴ「いいか? 私の名前は『ガヴリール』だ」

サターニャ「……やっぱりガブリールじゃない」

ガヴ「違う。私の口元をよく見ろ。『ブ』じゃなくて『ヴ』だ」

サターニャ「……」ジーッ

ガヴ「……いや、そんなに唇をジッと見つめんなよ。キモい」

サターニャ「あんたが見ろっつったんでしょうが!!」


ガヴ「まあいい。要するに、下唇を噛むんだ。下唇を噛んで、『ヴ』。これで『ガヴリール』って言ってみろ」

サターニャ「唇を噛むの?」

ガヴ「そうだ。下唇な」

サターニャ「分かったわ。えーっと……」




サターニャ「ガヴッ……!」ガチッ




サターニャ「~~~~~ッッ!!?!?」ゴロゴロ

ガヴ「何してんだお前」



サターニャ「はがっ……あがぁぁ……!!」プルプル

ガヴ「強く噛み過ぎだ。軽くでいいんだよ、軽くで」

サターニャ「さ、さいしょからほういいなひゃいよ……!」ヒリヒリ

ガヴ「いや、流石にそれくらい言わなくても分かるだろ……」

サターニャ「うぅぅ……!」

ガヴ「ほら、もう一回だ。もう一回、『ガヴリール』って言ってみろ」

サターニャ「……」



サターニャ「……ガ、ガヴリール?」

ガヴ「おう」



サターニャ「『ガヴリール』……これでいいのね?」

ガヴ「そうだな。まあ、まだちょっとぎこちないけど」

サターニャ「あーもー! あんたの名前難し過ぎよ!」

ガヴ「そうか? まだ簡単な方だと思うんだけどな」

サターニャ「私にとっては十分難しいわよ……」

ガヴ「そのうち慣れるだろ。それじゃ、今度は名前間違えるなよー」スタスタ

サターニャ「はいはい……分かったわよ、ガヴリール」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-教室-



サターニャ「あー、疲れた……」グデー

ヴィーネ「どうしたの? サターニャ」



サターニャ「なんかガヴリールに、私の「ガヴリール」の発音が違うって怒られて……」

ヴィーネ「あー確かに、あんたいっつも『ガブリール』って言ってたわね」

サターニャ「そーそー。下唇がどうのこうのって、そんなのどうでもいいと思わない?」

ヴィーネ「……そうかしら。自分の名前を間違えられるのって、結構悲しいものよ」

サターニャ「うーん、私はそういうのあんまり気にしないんだけど……」

ヴィーネ「……」



ヴィーネ「ね、ねぇ、サターニャ」

サターニャ「なーに?」

ヴィーネ「ちょっと私の名前、言ってみてくれない?」

サターニャ「どうしたのよ急に」

ヴィーネ「いいからいいから」ワクワク

サターニャ「えー? まあいいけど……」



サターニャ「ビネットでしょ?」

ヴィーネ「……」



ヴィーネ「……」ジャキンッ

サターニャ「え!?」



ヴィーネ「サターニャ……?」ゴゴゴゴゴ…

サターニャ「ちょ、ちょっと待って! なんでいきなり槍出してるのよ!?」


ヴィーネ「……どうして」

サターニャ「え?」

ヴィーネ「どうしてガヴの名前はちゃんと言えるのに、私の名前は間違えるのよ……!」

サターニャ「え、え? だってあんたの名前、ビネットじゃ……」

ヴィーネ「違う!!」

サターニャ「」ビクッ




ヴィーネ「私の名前は『ビ』ネットじゃなくて、『ヴィ』ネットよ!!!」クワッ!

サターニャ「えええええええ!!?」




サターニャ「う、嘘でしょ!? だって私、悪魔学校時代からずっとあんたのことビネットって呼んで……」

ヴィーネ「そうね。昔からずっと、サターニャにはビネットって呼ばれてたわ」

サターニャ「じゃあなんで間違ってるって教えてくれなかったのよ!」

ヴィーネ「だって! サターニャは何かこう、『ヴィ』が上手く発音出来ない系の悪魔なのかなって、そう思ってたんだもの!!」

サターニャ「んな訳あるかーー!!」



ヴィーネ「だからサターニャは『ガヴリール』の名前もちゃんと言えないんだって、そう信じてた……けど」

ヴィーネ「違ったのね。サターニャは私の名前なんて、これっぽっちも覚えてくれてなかった……」ポロポロ

サターニャ「えっ、ちょ、やめてよ! なんで泣いて……」

ヴィーネ「どうせ私みたいな出来損ないの悪魔なんて、サターニャにしてみればその辺の名前の分からない雑草と同レベルだったって事なのよね……」ポロポロ

サターニャ「いや、そんな事ないってば! 卑屈になり過ぎでしょ!」


ヴィーネ「うぅ……ぐすっ……」メソメソ

サターニャ「ああ、もう! 悪かったわよヴィネット! あんたの名前を間違えたりして!」

ヴィーネ「……」シクシク

サターニャ「別にあんたの事どうでもよかったとか、そういう訳じゃないの。ただ本当に勘違いしてて……」

サターニャ「ごめんなさい。ヴィネットの事は大切な友達だと思ってるわ。次からはちゃんとヴィネットって呼ぶから……だから、泣かないで?」

ヴィーネ「……本当?」

サターニャ「本当よ! 魔王に誓ってもいいわ!」

ヴィーネ「ふふっ。分かった、信じてあげる」ニコッ

サターニャ「まったくもう……」



サターニャ「……それにしても、まさか名前を間違えただけで泣かれるとは思わなかったわね」

ヴィーネ「しょうがないじゃない。それだけ、名前っていうのは大事な物なんだから」

ヴィーネ「もう誰かの名前を間違えたりしないように、気を付けなきゃだめよ?」

サターニャ「……肝に銘じておくわ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-屋上-



サターニャ「……」モグモグ



ラフィ「サターニャさんっ♪」

サターニャ「うひゃあっ!?」ビクッ



サターニャ「な、何よ急に!? びっくりするじゃない!」

ラフィ「うふふ♪ 私もお昼、ご一緒してもよろしいでしょうか?」

サターニャ「イヤよ! どうせまた何か企んでるんでしょ!」

ラフィ「いえいえ、そんなことないですよー」

サターニャ「怪しいわね……」


ラフィ「まあまあ。それよりほら、今日は私もメロンパン持ってきたんですよ」ガサッ

ラフィ「2人で半分こしませんか?」

サターニャ「え、でも私のはもうほとんど残ってないわよ?」

ラフィ「それなら私があげるだけでもいいですから。ね?」

サターニャ「……まあ、そこまで言うなら貰ってあげてもいいけど」

ラフィ「ふふっ、ありがとうございます♪」

サターニャ「何か変なもの入れてないでしょうね……?」ジーッ

ラフィ「入れてませんよー。半分こですし、それだと私も食べることになっちゃいます」

サターニャ「確かに、それもそうね」

ラフィ「では……」ガサガサ



ラフィ「はい、どうぞ♪」スッ

サターニャ「ありがと」




ラフィ「……」

サターニャ「あーん……」パクッ



ラフィ「……」ジーッ

サターニャ「……」モグモグ



ラフィ「……」ジーッ

サターニャ「……」ゴクン



ラフィ「……」ジーッ

サターニャ「……」



サターニャ「……あの、そんなに見つめられると食べづらいんだけど」

ラフィ「大丈夫ですよー。お気になさらず♪」

サターニャ「気にするわ!」

ラフィ「ふふふ♪」



サターニャ「ていうか、私ばかり見てないでラヒエルも早く食べなさ……」ハッ



サターニャ「……」

ラフィ「……? どうしたんですか?」



サターニャ(危ない危ない……また間違える所だったわ)

サターニャ(これまでの流れから考えると、この天使の名前はきっと『ラヒエル』じゃない……)

サターニャ(大丈夫。もうガヴリールやヴィネットと同じ失敗はしないわよ!)



サターニャ「……」ジーッ

ラフィ「サ、サターニャさん?」


サターニャ(恐らく、ポイントは下唇。『ラヒエル』の4文字のどこがで下唇を噛むのが正しい発音のはず)

サターニャ(『ラヒエル』にはさっきの2人みたいなバ行の文字は含まれていない)

サターニャ(だけど代わりにハ行である「ヒ」が含まれている。 これを下唇で噛んで発音するとすれば……)



サターニャ「……ラフィエル」

ラフィ「え?」



サターニャ(そう、『ラフィエル』よ『ラフィエル』! これに違いないわ!)

サターニャ(なんか語感もそれっぽいし、確かガヴリールやヴィネットもそんな感じで呼んで気がする!)

サターニャ(自力で正解に辿り着いてしまうなんて、やっぱり私って天才ね!)



サターニャ「ふふふ……悪かったわねラフィエル。あんたの名前、ずっと間違えてて」

ラフィ「えっと……」

サターニャ「でも安心しなさい。これからはちゃんとラフィエルって呼んであげるわ!」

ラフィ「……」

サターニャ「さあラフィエル。一緒に残りのメロンパンを食べま……」

ラフィ「あの、サターニャさん」

サターニャ「何よ?」





ラフィ「私の名前、『ラフィエル』じゃないですよ?」

サターニャ「…………へ?」




ラフィ「……」

サターニャ「え、ラフィエルじゃないって……本当に?」

ラフィ「はい」

サターニャ「い、いやいやいや!! だってあんたいっつもラフィエルって呼ばれてるじゃない!」

サターニャ「下唇を噛んで、ラ『フィ』エル! 違うの!?」

ラフィ「あーえっと、確かに『フィ』の発音はそれで合ってるんですが、『ラ』と『ル』の発音がちょっと違うというか……」

サターニャ「はあ!? 『ラ』と『ル』って、そんなのひと通りしか発音しようがないじゃない!」

ラフィ「それが違うんですよ。実は、ふた通りの発音方法があるんです」

サターニャ「え? どういうこと?」



ラフィ「そうですね……まず、『ラ』は英語の『R』と同じように、舌を上あごに付けないようにして『Ra』と発音するんです」

サターニャ「は?」

ラフィ「そして『ル』は英語の『L』と同じように、舌を前歯の裏側に付けるようにして、『l』と発音するんです」



ラフィ「そう、つまり私の名前は『ラフィエル』ではなく……」








ラフィ「『Raphiel』です」

サターニャ「分かるかぁぁぁああああああ!!!!!」ドギャァァアン





ラフィ「ちなみに、ガヴちゃんとヴィーネさんはいつも『Raphi』って呼んでますね」

サターニャ「いやおかしいでしょ! もはや日本語ですらないじゃない!!」

ラフィ「そう言われましても、これが正しい名前なので……」

サターニャ「もうやだ……なんで私の周りには呼びにくい名前のやつが多いのよ」

ラフィ「大丈夫です、サターニャさんなら上手に言えますよ! ファイトです!」

サターニャ「えぇ……」


ラフィ「ほらサターニャさん、『Raphiel』って言ってみて下さい」

サターニャ「……えーっと、Raphiel?」

ラフィ「はい♪」ニコニコ

サターニャ「随分と嬉しそうね……」

ラフィ「だってサターニャさんがやっと私の名前を呼んでくれたんですよ? 嬉しいに決まってます♪」

サターニャ「そういうものなのかしら」

ラフィ「そういうものなんです♪」

サターニャ「……」



サターニャ「ま、とにかくこれでRaphielの名前も分かった事だし、心置きなくメロンパンを食べられるわね」

サターニャ「時間もないし、さっさと食べちゃいましょう」パクッ

ラフィ「そうですね」パクッ



サターニャ「……」モグモグ

ラフィ「……」モグモグ



サターニャ「……」モグモグ

ラフィ「……あ、そういえば」モグモグ

サターニャ「何?」モグモグ

ラフィ「一つ、言い忘れていた事があるんですが……」モグモグ

サターニャ「何よ。さっさと言いなさい」モグモグ






ラフィ「『エインズワース』の『ス』の発音は『TH』です」

サターニャ「どうでもいいわ!!!」


-おしまい-

天使と悪魔の名前ってハーフっぽいよね。

HTML化依頼出してきます。

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