ヴィーネ「私の今までの人生の中で一番の悪魔的行為」サターニャ「恐怖するがいいわ」 (111)

………

………

ここは、魔界のとある小学校


先生『なぜ、職員室に呼び出されたかわかりますか、月乃瀬さん』


ヴィーネ(小5)『いえ…その…正直よくわからないですが…あの、わたしなにか…』


先生『…先週、提出してもらった課題”私の今までの人生の中で一番の悪魔的行為”のレポート内容のことですよ」


ヴィーネ『はあ…それが何か…確か提出はしたと思うんですけど…』

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先生『月乃瀬さんが提出したレポートを要約すると…
「母親の家事手伝いをしていたせいで、友達との待ち合わせ時間に10分おくれたことがある…」
とかなんとか書いてるみたいなんですけど…』


ヴィーネ『はい…そうですけど、それが何か…』


先生『』ぎろり


ヴィーネ『ひっ』


先生『何かじゃないでしょうが…いや、これ全然、悪魔的行為でもなんでもないですよね』


ヴィーネ『すいません…わたし、こういうの…よくわかんなくて』


先生『はあ、月乃瀬さん…あなたは基本的に一般教養の成績は上位ですし、普段の学校生活の態度も良好のようですが…、
”悪魔”に関する授業や課題については、てんでダメなようですね』


ヴィーネ『す、すみませんっ』


先生『すみません、すみませんって…さっきからそればっかり…、…ちゃんとわかってるんですか?』


ヴィーネ『す、…みません』

先生『…とにかく、もっとがんばってください。悪魔である以上、悪魔的なふるまいを磨くことも将来的には重要なことですから。
そこんところもうちょっと意識してもらわないと。いいですか?わかりますかね』


ヴィーネ『………、はい……』


?『ぷぷっ』


ヴィーネ『むっ!』

ヴィーネ『なによ、サターニャ!何がそんなにおかしいのよっ』


サターニャ(小5)『だ、だって、ヴィネット…そんなのが今までの人生で一番の悪魔的行為ってひどすぎるわよ…!!
…だって、待ち合わせ時間に遅れるくらい、普通みんなすることだし、…母親の手伝いしてたとか、なんかもうむしろ善行じゃないのよ、ぷっぷー…』


ヴィーネ『な、なによ!笑わないでよっ!わ、私だって一生懸命考えて書いたレポートなのに』


先生『それで胡桃沢さん。あなたのほうはというと、レポートの内容に「下界を漆黒の闇にそめて人類ほろぼした」みたいなこと書いてますが…』


サターニャ『ええそうよ!それがどうかしたの!?ヴィネットのとは比較にならないくらい、さいっこーに悪魔的な行為でしょうが、ええ!?』


先生『あいにくレポートは、実際に自分が今まで行ったことを書くルールです。できもしない願望を垂れ流すものではありませんので、これもダメですね』


サターニャ『ふぁ!?』


先生『ちなみに胡桃沢さんのほうは、月乃瀬さんと違って、一般教養の成績も芳しくないうえに、普段の学校生活の態度もヤバめですよね』


サターニャ『ふぁふぁ!??』

先生『それでも悪魔としての才覚が垣間見えればいいのですが…、このレポートを見る限り威勢がいいだけで、虚偽のようですし、てんでダメですね』


サターニャ『な、なんですってええええ…あんた、先生だからってだれに向かって口聞いてんのよっ!!』


ヴィーネ『ちょ、さ、サターニャ、やめて!やめなさいよっ!!』


先生『とまあ、いろいろいいましたが、2人を職員室に呼び出した理由は。要するに二人ともレポートの点数は0点。ボツです。
なので、再提出をお願いします。それを伝えたかったんです』


ヴィネサタ『『さ、再提出!?』』


先生『期限はそうですね、まあ、明日にしますか。明日までにお願いしますね』


ヴィーネ・サターニャ『え、ええ~~~!?』

………


………

ヴィーネの家

ちゅんちゅん…


ヴィーネ「ん……、あれ……夢……?…」


ヴィーネ「いけない…もうこんな時間……、起きて学校に行く準備しないとっ…」

学校に行く支度をするヴィーネ


ヴィーネ「…それにしても、昔の…魔界にいたころの夢を見るなんて久しぶりね」


ヴィーネ「あの先生…怖かったなあ……、それに、悪魔的行為とか…、”あの手”の課題、ほんと苦手だったのよね…、」


ヴィーネ「いや、まあ、今もですけどね…はあ…」


ヴィーネ「あれ、けど、あの後どうなったんだっけ?無事レポート再提出できたのだったんだっけ?」

ヴィーネ「って、いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないわ、学校に行く準備しないと…」


ヴィーネ「…今日は登校中に、今月の生活費おろさなきゃいけないから早めに出ないとね、
ええと、今の預金残高は…、確か昨日、仕送りが振り込まれたはずだから…」


預金通帳を開くヴィーネ


ヴィーネ「…は?」

サターニャの家


サターニャ「ううん…むにゃむにゃ…ガヴリールぅ…今日こそ決着をつけるわよ…むにゃむにゃ…」


ぴりりりりり…!!


サターニャ「ふあ…!?何よ、こんな朝早くから一体誰から電話が…、もしもし!?」


ヴィーネ『さ、さささサターニャぁ!?ど、どどどうしよう…!!わたし…!わたし…!』


サターニャ「はあ、ヴィネット!?何よこんな朝っぱらから!?何の用よっ」


ヴィーネ『し、仕送り…わ、わたしの仕送りがああ…!!』


サターニャ「はあ!?」

サターニャ「今月の仕送りがない!?ない、って何よ!?ひょっとして、仕送り0円だったってこと!?」


ヴィーネ『そ、そうなの…!、今まで毎月の仕送り額が減ってたことはあったけど…、一切なくなるなんてことなかったのに…!』


サターニャ「おかしいわねえ…、確かに仕送りは下界での悪魔的行為の査定結果に左右されるはずだけど…、
いくらヴィネットがその手の悪魔的ふるまいがダメダメでも、最低限ベースとなるお金を下回るはずはないって話だったと思うけど」


ヴィーネ『け、けど…現に…今月の仕送りがなくて…今、わたしの通帳の残高がすごいことに…うう…サターニャ…わたし…どうしたら…』

サターニャ「ああもう仕方ないわねえ…、いいわ、とりあえず今月の生活費は私が貸してあげるわよ!感謝しなさいよヴィネット!」


ヴィーネ『さ、サターニャ!あ、ありがとう!けど、サターニャだって普段の生活厳しいんじゃあ…!!』


サターニャ「はん!アンタのしょぼい仕送り金と一緒にするんじゃないわよ!
普段、下界でやってる悪魔的行為の実績が評価されて、そろそろ、仕送り金の額に反映される頃と踏んでたところよ!


おそれおののくがいいわ!今月の仕送り金がプラスされた、このサタニキア様の預金残高は……!」


預金通帳を開くサターニャ


サターニャ「!!!??」

ヴィーネの家


ヴィーネ「サターニャも今月の仕送りが0だったの!?」


サターニャ「そ、そそそそうなのよ…ど、どうしてぇ!どうしてなん!?
どうしようヴィネットぉ…私どーしたらいいの、あ、あばばばばばばばば…!!」


ヴィーネ「い、いや、アンタも落ち着きなさいよ…私より取り乱してるじゃない…」


サターニャ「おかしい…こんなのおかしいわよ…へっぽこ悪魔のヴィネットはともかく…
私はちゃんと、教科書を忘れ物したり、宿題忘れて赤点とったりして…着実に悪魔的行為を積み重ねているというのに…」


ヴィーネ「いやそれ、ただ、だらしがないだけじゃないの!!っていうか、さりげなく私のことへっぽことか馬鹿にしてんじゃないわよっ!」


サターニャ「いや、けどこれマジにやばいわよヴィネット…、今月、どうやってのりきれば…」


ヴィーネ「…それは私も一緒だわ…、ところでサターニャ、今の預金残高っていくらあるのよ」


サターニャ「え?…ええっと確か」

預金残高(サターニャ):1213円


ヴィーネ「は、はああああ!?何よこれ、小学生かっ!」


サターニャ「し、仕方ないじゃないっ!先月は、悪魔通販で、対ガヴリール用の悪魔グッズを大量に買い込んでしまったんだからっ!」


ヴィーネ「あーもう!!ホント、何やってんのよアンタはっ!お金はもうちょっと計画的に使いなさいよねっ!」


サターニャ「う、うるさいわねっ!?そんなのわかってるわよ、けど、ヴィネット!そーゆーアンタはどうなのよ、預金残高!みせてみなさいよ」


ヴィーネ「え、いや、わたし…わたしは…その、あ、ちょっと、勝手に人の通帳とらないでよっ!」


サターニャ「ええと何々、ヴィネットの残高は…」

預金残高(ヴィーネ):515円


サターニャ「わたしより少ないじゃないのよっ!えーうそ何アンタ!倹約家で貯金してるイメージあったのにっ!?
なにこれコンビニATMでおろせる額じゃないんですけどっ!!銀行の窓口に行かないとだめよこれ!?いやもう、アンタこそ一体何に使ってんのよっ!!」


ヴィーネ「だ、だってだってっ!仕方ないじゃない!!下界に来てから仕送りも減る一方だったし!それでも毎月コツコツ貯金してたんだけどさ…!
けど先月は、お母さんがカゼひいたから様子を見に魔界に何回も帰省したり、イベントも重なって皆と遊ぶために準備費だってかかったし、
あと、ガヴリールの世話代とかにお金がいっぱいかかって…」


サターニャ「最後おおおおおおお!!
いったい何よガヴリールの世話代ってのはああ!?アンタ何、おバカ天使のためにお金浪費してんのよっ!」


ヴィーネ「だ、だってガヴったら、私がいないと御飯も掃除もロクにしないからっ!いろいろ世話焼くのに、ちょっとお金かけたりして」


サターニャ「ほっときゃいいのよあんなダメ天使のことなんて!!いや、アンタどこまでお人よしなのよ!!」


ヴィーネ「だ、だって、だってええ…」

サターニャ「まあ、過ぎたことはもういいけど…!!
二人の預金残高を合わせても、2000円未満って…、何よこの絶望的な数値…、一体どうやって今月を乗り切ればいいのよ…」


ヴィーネ「…確かに、一体どうしたら…って、あれ?
いや、ちょ、ちょっとまって、話し込んでるうちにもうこんな時間じゃない!!その話も大事だけど、今は早く学校に行かないと遅刻しちゃう!」


サターニャ「いやいやいや、バカね、学校なんか行ってる場合じゃないわよヴィネット!!そんなことよりも!!
こうなったら、さっそく2人で街に繰り出すわよ!」


ヴィーネ「はあ!?何よサターニャ、一体どういうこと??」


サターニャ「決まってるじゃない!!早く街に出て、2人でさいっこーな悪魔的な行為を実行して、魔界に認めてもらわないとっ!
そして、今すぐにでも仕送りを再開してもらうのよっ!!!」


ヴィーネ「ええ~~!!!?」

………

………


その後…学校では


ラフィ「ヴィーネさんにサターニャさん…今日は欠席ですか…二人そろって、一体どうしたんでしょう」


ガヴ「さあ?さっき携帯で連絡してみたんだけど…、あ、返事かえってきてるな」


ラフィ「あら、ほんとですね、ええっとどれどれ…」


………

………
(4人のグループトーク)


ガヴ:今日お前ら、どうかしたの?


サターニャ:天使であるアンタたちが真っ青になるくらいのアクマ的な行為を街でするために、今日は休ませてもらうわ。せいぜい天使として、私達の悪行の数々を指をくわえながら見てるがいいわ。だいじょうぶ、人類とかをほろぼすとかまでは、多分いかないと思うけど、すごくサタンとかがビックリするような
アクマ的な行為は、多分するとおもう。
まあ、この胡桃沢・サタニキア・マクドウェル様(それとヴィネットも)のアクマ的所業をみれば、今日一日あれば魔界にいるバカども(←私たちの仕送りをとめた悪いアクマたちのこと)も思いなおしてくれるとおもうし、そうなれば、来月には私たち、おくまん長者(さっき言った仕送りをとめた悪いアクマたちがすごく思い直して、仕送りをすごく増やしてくれるから)だとおもう。具体てきには、今回のこのそうだいなプロジェクトが成功すれば、こっか予算くらいのまとまったお金が、入るってことになるわ。
だから、今までの私に対する行いとか、すごく土下座してすごく謝るなら、ほんの少しぐらい恵んであげてもいいわよガヴリール。


ヴィーネ:ごめんなさいガヴ、ラフィ…不本意だけど、今日は生活のために学校休みます。
理由は一切聞かないでもらえると助かりますm(__)m


ヴィーネ:…私がいなくてもちゃんと、勉強してねガヴ。
なんか、ホントごめん。


………

………

ガヴ「ふふっ」


ラフィ「あらあら、いけませんよガヴちゃん…いくら文面から香ばしいにおいがプンプンするからといって、そんな露骨にわらったら…」


ガヴ「いやだって、確実にトラブったの丸出しじゃん、これ。それで何かしでかすつもりなんだけど、失敗するところまで見えるわ、
はっきりと鮮明に。こんなん笑うわ」


ラフィ「しかしサターニャさんはともかく、あの真面目なヴィーネさんまで…。
一体どうしたんでしょうか。それに、アクマ的な行為って、一体、何をするつもりなのでしょうか…」


ガヴ「さあね、まあどーせしょうもないことするだけでしょ?ま、私には関係ないね」


ラフィ「なんか心配ですし、放課後、様子を見に行ってみましょうか。どうですかね、ガヴちゃん」


ガヴ「えー、私学校終わったら、すぐ帰ってネトゲしたいんだけどなあ…ま、気が向いたらねー」


………



街に来たヴィーネとサターニャ


ヴィーネ「サターニャ、…や、やっぱりやめましょうよ…、学校を休んで悪魔的行為だなんて…よくないわよ」


サターニャ「はあ!?何言ってんのよアンタは!このままじゃあ、この先ずっと仕送り0になって、下手したら二人して飢え死にするわよ!」


ヴィーネ「いや、それはわかるんだけど…」


サターニャ「わかってるんなら、さっそく実行するわよ!二人でとびきりすごい悪魔的行為を
この下界で繰り広げて、仕送り0にした魔界のやつらの鼻を明かしてやるわっ!」


ヴィーネ「け、けど、とびきりすごい悪魔的行為って…一体何をするのよ……」


ヴィーネ「…………、あれ?」


サターニャ「どうしたのよヴィネット?」

ヴィーネ「……いや…、そういえばサターニャ…なんかこの流れ…なんか前にもなかったっけ…?」


サターニャ「え?」


ヴィーネ「確か昔もこんな感じのやりとり、アナタとしたような気がするんだけど…」


サターニャ「え?……ああ……、そういえばあったわね……、あれでしょ?
確か、魔界で小学生だったころに…、アンタと私だけ、レポートを再提出する羽目になったとき…」


ヴィーネ「あ、ああ、それそれ!それよ!私も今朝、その時のことを夢でみたのよね。最初、私達が職員室に呼び出されてさ」


サターニャ「ふーん、つまんないこと覚えてんのねヴィネット…、確かにあったわね。ええとなんだったかしら、確か…」


………

………


………

職員室前の廊下

サターニャ(小5)『ったく、あのバカ教師!好き放題いってくれて!ヴィネットはともかく、
このサタニキア様の書いたレポートまでボツだなんて!しんじられないわっ!』


ヴィーネ(小5)『” 私が今まで行った一番の悪魔的行為”………明日までにレポートの再提出だなんて急に言われても…、
どうしようサターニャ…私、明日までに書く内容なんて思いつかないわ…』


サターニャ『ったくあの教師、無茶言ってくれちゃって…!!ほんとアイツ、前々からいけすかないのよねっ!!
なんか、心なしか私達2人にばっかり、厳しい感じするわ!』


ヴィーネ『そ、そうなのかしら…?まあ確かに私、先生にはよく怒られてるかも…、それになんだか普段の口調とか冷たくて怖いのよね…』

サターニャ『まあ原因はわかってるけど!?
どーせあの教師、このサターニャ様のあふれ出るアクマ的な才覚に嫉妬してるから、あんな露骨な態度とってんだわ!!ふん!』


サターニャ『けど甘いわ、レポートの再提出くらいでこの私がダメージを受けるとでも思ってんのかしら…
ふん、このサターニャ様にとって、悪魔的行為のネタなんて、たくさんあるってことを思い知らせてやるわ!
まあ、今回はこの間学校でやった、となりの奴のボールペンの先をだしっぱにしてやったことでも…ん?』


ヴィーネ『………』 


サターニャ『って、どうしたのよヴィネット。急に黙りこくっちゃて』


ヴィーネ『あ、うん…、なんでもないの』


ヴィーネ『(…どうしよう…わたし、この手のレポート、本当に苦手なのに……
明日までに再提出なんて…とてもできない…きっと明日もあの先生に怒られちゃう…)』


ヴィーネ『はあ……』

サターニャ『……』


サターニャ『……けど、まあ、この間のボールペンネタくらいじゃあ手ぬるいかしらね…
あの教師を腰抜かすくらい驚かすくらいの悪魔的行為じゃなきゃおもしろくないわ…けど、そのためにはまだ、ネタが足りないかしら…』ぶつぶつ…


サターニャ『あ、そうだっ!!こうなったら街に行くわよヴィネット!』


ヴィーネ『え、ちょ、ちょっとサターニャ!?何よ、急にどういうこと!』


サターニャ『決まってるわ!今からレポートのネタつくりにいくから、アンタも協力しなさい、って言ってんのよ!!』


ヴィーネ『ね、ネタつくり!?ど、どういうことサターニャ!??』


サターニャ『ああもう、分かんない奴ねっ!今から街に出て2人でとびきりの悪魔的行為を実行するのよ!
そして、あのアホ教師を見返すくらいとびきりのレポートを明日まで書いてやるんだわ!!
ほら、そうと決めたら”悪は急げ”よ、ヴィネット!!はやく街に行くわよっ!』


ヴィーネ『え、あ、ちょ、ちょっと待ってよサターニャ!!』


………

………

………


街の郊外


ヴィーネ「そう…あの時もサターニャに連れられて…
こうして二人で街に繰り出したわね…、とびきりの悪魔的行為をするとかなんとか言って…」


サターニャ「そういやあの時の流れと似てるっちゃ、似てるわね…」


サターニャ「それにしてもあの時のバカ教師…!
いまでもあの時の思い出すと腹立つわ…私達ばっかりに厳しくて!!あの嫌味ったらしい感じがたまらなくむかつくのよね…」


ヴィーネ「まあ、冷たい印象をもつ先生だったわね…確かに怖かったわ…
けど、わたしは、何だかそこまで嫌いじゃなかった記憶もあるのよね…」


サターニャ「はん!どこがよあんなやつっ!…まったく、愚かな教師だったわ!
アイツはねえ…このサタニキア様の悪魔としての才能を適切に評価できなかったつまらないやつよ!ほんと大っ嫌い!!」


サターニャ「って、そんな思い出話どーでもいいわ!いいから、さっそく悪魔的行為を実行に移すわよヴィネット!」


ヴィーネ「あ、ちょっと待ってよサターニャっ!」




街を徘徊するヴィーネとサターニャ


ヴィーネ「けどサターニャ…悪魔的行為って、具体的にどうすれば…」


サターニャ「そうねえ…まあ、とりあえずはこうして、街を徘徊して…
施設や周囲の人間どもの様子をみて、その都度思い付いた悪魔的行為を実行しまくるのよ!
とにかく、回数を重ねることが大事なのよきっと!」


ヴィーネ「そうね…、わかったわ…!」

サターニャ「あ、一応言っとくけどヴィネット!悪魔的行為をするんだからねっ!?分かってるわよね!?
アンタが普段やってる、なんかもう…天使みたいな善行は絶対NGよ?ただでさえ仕送り0の状態なんだからっ!わかってるわよね?」


ヴィーネ「いやいや、そんなのわかってるわよっ!
そりゃ私、昔から人に世話好きとか…困ってる人がいるとほっとけない性格とか…言われて悪魔らしくない、とか言われてきたけど…!けど…!」


女の子「恵まれない子供たちに募金お願いしまーす」


ヴィーネ「あ、はーい」チャリンチャリンチャリン…


ヴィーネ「わたしだってちゃんとした悪魔なんだからっ!!観ててね、今回は頑張るからサターニャ、ちゃんと悪魔的行為をっ!!!」


サターニャ「言ってるそばからぁっ!!?」

サターニャ「いや何やってんのよアンタっ!?何、一切無駄のない華麗な動きで募金してんのよっ!?」


ヴィーネ「え!?あ、あれ!?わ、私、いつの間に募金を…」


サターニャ「ええ、気づいてなかったの!?なにそれ条件反射なの!?すごいわねアンタ!?
しかもなんか遠慮なしにドバドバ小銭入れてたみたいだけどっ!?
アンタ今、自分の持ち金500円ちょっとなの忘れてんじゃないの!?ただでさえ貴重なお金をっ!アンタ何やってんのよっ!」


ヴィーネ「そ、そういえば…どうしようサターニャ…わたし、持ち金あと125円…」ぷるぷる…


サターニャ「おおばかやろうっ!!」

サターニャ「ああもう、何やってんのよヴィネット!何、人間どもに貴重なお金を無条件で渡してるのよ、
ほんと、アンタってダメダメ悪魔ね!だいたいアンタは昔から…!!」


女のコ「貧しい子供たちのために、募金お願いしまーす!」


サターニャ「昔からっ…」


女の子「恵まれない子供たちのために!募金!お願いしまーす!」


サターニャ「恵まれないこども………………」


女のコ「あなたの募金が子供たちを救うんです!募金!よろしくお願いいたします!!」


サターニャ「……」


そのころ


学校の休み時間

ガヴ「……うわ…サターニャまで……、わけわかんね…。ほんと何やってんだこいつら…」ぶつぶつ…


委員長「あの…、天真さん」


ガヴ「…えっ、あ、なにインチョ?」


委員長「いや次の授業、移動教室だから、早く準備していかないと遅れちゃうわよ。よかったら一緒に行かない?」


ガヴ「あ、ああ…ごめんちょっと待って今準備するから」


委員長「……」


委員長「(天真さん…今日は机で座ったまんまでおとなしいわね…いや、まあ普段から騒いだりはしないけど……今日はなんか、上の空って感じ……


委員長「(…仲のいい月乃瀬さんや胡桃沢さんが欠席だからかしらね、…ひょっとして気になってるのかしら?)」


………




(後半につづく)

後半は気が向いたら夜に投下します

後編


………

サターニャ(残高:813円)「仕方ない…、仕方ないわよ…ま、まあ人間とはいえ…、恵
まれない子供たちに募金するくらいは…まあ、ね。悪魔でもね。それくらいはさあ…」ぶつぶつ…


ヴィーネ(残高:125円)「…これで2人あわせても、1000円未満…、どうしたら…」


サターニャ「す、過ぎたことは仕方ないわヴィネット!こっから悪魔的行為をバシバシやってのけて、巻き返しを図るのよっ!」


ヴィーネ「ええ…わかったわ…けど、一体、何をしたら」

サターニャ「ふふ…いいことを思い付いたわ…あれをみなさい、ヴィネット!!」


ヴィーネ「あ、あれって、何…普通に横断歩道があるだけだけど…」


サターニャ「あの横断歩道をわたるわよっ!」


ヴィーネ「はあ?それはいいけどサターニャ…なんで横断歩道をわたることが悪魔的行為になるのよ」


サターニャ「話は最後まで聞きなさいよヴィネット…横断歩道を渡るって言っても普通にわたるわけじゃないのよっ!
ほら、横断歩道に信号機ついてるのがわかるかしら?」


ヴィーネ「いや、分かるわよ…それがなんなのよ…。あ、青になったわ、渡るなら今…」


サターニャ「待ちなさいヴィネット」


ヴィーネ「な、何よサターニャ…わたるんでしょ…横断歩道…?なんで止めるのよ」


サターニャ「信号機が青の時渡るぅ…?ふふ…ヴィネット…いつから、信号が青の時に横断歩道を渡る、だなんて、錯覚していたのかしら?」


ヴィーネ「は、はああ?」

サターニャ「いい、ヴィネット…横断歩道を渡るのは、あの信号機の青が輝く今じゃない…
そう…青が”点滅”してから、わたるわよ」


ヴィーネ「!!???」


ヴィーネ「な、ちょ、ば、ばか!な、何言ってんのよサターニャ!
点滅するのは信号機が赤になりそうなのを事前に歩行者に伝えるためなのよっ?
そ、そんなタイミングでわたったら…あ、危ないし…、運転してる人たちにも迷惑かかっちゃ」


サターニャ「ええそうね…危険だし…迷惑だわ…だが、それがいいのよ!
だって、私達は今…悪魔的な行為を繰り広げようとしているわけなんだから!」


ヴィーネ「け、けど…けど…、そんなの…、サターニャ!
む、無理無理よ!絶対むり!!わ、私、もうわたるからねっ!信号機が青の今のうちにっ…!」


サターニャ「待てっていってるでしょヴィネット!アンタこのままでいいの!?
このまま悪魔のくせに悪魔らしいことができないまま過ごして…仕送りが0のままでいいの!?」


ヴィーネ「そ、それは…!け、けど…さ、サターニャ!サターニャこそ、怖くないの!?
結構、横断歩道の距離長いわよっ!もし…点滅が終わるまでにわたりきれなかったら…」


サターニャ「は、はん!私を誰だと思ってんのよヴィネット!わ、私は大悪魔サタニキアよ!
"青と赤の間の次元のはざま"を渡るくらい…造作もないこと…だわ!」


ヴィーネ「なにそのカッコいい感じの言い回しっ!?」

ヴィーネ「け、けど…わ、わかったわ…サターニャに私もついていく」


サターニャ「ふふ…アンタも話が分かるようになったじゃない…
いい…まだよ…ヴィネット…まだ渡っちゃだめ…ほら、たぶんもうすぐ…もうすぐ…点滅するから…!」


ヴィーネ「う、うん…」





信号機「」チッカチッカ…


サターニャ「あ、信号機が点滅したわ!今よ、ヴィネット!横断歩道をわたるわよっ、悪魔的に!」


ヴィーネ「え、ええ!」


…………

…………

…………

…………

信号機「赤」


サターニャ「………」


ヴィーネ「………」


子供「おかーさーん、なんであのお姉ちゃんたち、さっきから横断歩道で固まったまま渡らないの?」


母「し、見ちゃいけません」


サタヴィネ「「……」」

ヴィーネ「な、なんで渡んないのよサターニャ!!」


サターニャ「は、はああああ!?ヴぃ、ヴィネットこそ何よ!アンタだって、点滅時にわたる覚悟を決めたんじゃなかったの!?」


ヴィーネ「い、いやだって、私はサターニャについていく、っていっただけよ!それなのにサターニャったら、結局渡らないから…」


サターニャ「だ、だーー!何よアンタ、人の所為にしちゃって!!
しょ、しょうがないでしょうが!だ、だって、アンタ!
あんな、タイミングでわたったら…あ、危ないし…、運転してる人たちにも迷惑かかっちゃうでしょうが!」


ヴィーネ「いや、それ最初に私が言ったんですけどっ!!」

…………

サターニャ「横断歩道作戦も失敗…か…、くそ…私達の悪魔的行為をこうも阻むなんて…下界もなかなかやるわね…」


ヴィーネ「いや、特に阻まれてるわけじゃない気がするんだけど…」


サターニャ「仕方ないわねえ…次の作戦に行くわよヴィネット!
次の作戦は、カ・ツ・ア・ゲ、よ!

街行く善良な人間どもから金品を無理やり巻き上げてやるわ!!」


ヴィーネ「は、はあああ!?」

ヴィーネ「ば、ば、ばっかじゃないの!サターニャ!そ、そんなひどいことことしていいわけないでしょ!バカなの!?ひょっとしてアンタ、悪魔なの!?」


サターニャ「いやもう、さすがにツッコむのも嫌だけど、悪魔よっ!!!私もアンタも!
確かに、カツアゲは地獄からの追放もあり得るレベルだけれど…!
けど、レベルの高い悪魔的行為をしていかないと、今までの失敗を取り戻すこともできないわよっ!!」


ヴィーネ「いやけど…駄目よそんなひどいこと!さ、サターニャだって口だけでそんなことできっこないわっ!」


サターニャ「はんっ!アンタと一緒にしないでくれる?いずれ魔界を総べる大悪魔たる私がカツアゲ程度できないわけないじゃない…。
それに、この間、古本屋で立ち読みしたヤンキー漫画で、カツアゲの方法もだいたい学んだから方法もばっちりよ!!

まずは最初にカツアゲするターゲットにジャンプさせるのが伝統的なカツアゲの方法よ、分かるかしら?」


ヴィーネ「いやなんで!?わかるわけないでしょうがっ!!」

サターニャ「そして、カツアゲのターゲットは既に補足したわ!!ほら行くわよヴィネット!」


ヴィーネ「え、ちょ、さ、サターニャま、待ってってば!!そもそもターゲットって一体だれのことよ!怖い人だったら、逆に怒られちゃうわよ!」



……

サターニャ「そこのアンタ!!ちょっと待ちなさい!」


道行くおばあちゃん「ふぁ?」


ヴィーネ「ええええ!!?いや、なんの罪のないご年配の方をターゲットにしてんじゃないわよっ!!」

おばあちゃん「ふぁふぁ…なにかねぇ…お嬢ちゃん」


サターニャ「ふふふ…この大悪魔サタニキアに目を付けられたのが運のツキね!
ほら、ちょっとジャンプしてみなさいよ!」


おばあちゃん「ふあ…?」


ヴィーネ「ば、バカ!サターニャ!何失礼なこと言ってんのよ!す、すみませんすみません!
この子、根はいい子なんですけど、もう一つの根っこはバカで…」


サターニャ「ば、ばかあ!?」

サターニャ「ば、バカってだれのことよ!この偉大なるサタニキア様に何言ってくれてんのよっ!」


ヴィーネ「だってバカじゃない!こんなおばあちゃん相手にカツアゲって何よ!サターニャのばか!」


サターニャ「な、なんですってえ!!」


おばあちゃん「なんだかよくわかんないけど…ジャンプはできないねえ…ほら…
わたし足を悪くしてて…、今は荷物も持ってるから…ジャンプなんてとても」


ヴィーネ「え…」


サターニャ「え、何よ足が悪いの?だったら、無理にとは言わないけど…」


おばあちゃん「それにしても困ったわね、ここの横断歩道…、距離が長いわりに信号が青から赤になる時間がとても短いから、
ほら、私、この足のせいで歩くのも遅いし…ぜんぜん渡れなくて…」


ヴィネサタ「「…」」


………




………

信号機「 青 」


ぴっぽー ぴっぽー…


おばあちゃん「すまないねえ」


ヴィーネ「いえ、いいんです。ほら、私の手につかまって」


サターニャ「ったく仕方ないおばあちゃんね。ほら、そっちの荷物も持ってあげるから、早く渡りましょ」


………

………

そのころ、学校では



ガヴ「…悪魔くせに何やってんだよ……ホントバカだなあいつら」


ラフィ「ガヴちゃん」


ガヴ「…、え、な、ラフィエル?あ、あれ何でお前、私の教室に?」


ラフィ「何でって…、もう昼休みですよ。昼ご飯、一緒に食べましょうガヴちゃん」


ガヴ「え、あ、ああそっか…もうそんな時間か…」

………

………その後も街内で数々の悪魔的行為を実行しようとするサターニャとヴィーネだったが、結局、何一つうまくはいかず…





公園のベンチに座り込むサターニャ


サターニャ「はあ…」


サターニャ「この大悪魔、サタニキア様とあろうものが…、まだ一つも悪魔的行為を成し遂げられていないとは…屈辱的だわ…」


サターニャ「って、あれ…そういえばヴィネットのやつどこ行ったのかしら…アイツもさっきまでこの辺いたのに…」

ヴィーネ「サターニャ」


サターニャ「ヴィネット、あんたどこいってたのよ」


ヴィーネ「自販機でお茶買ってきたわ。って言っても一本だけだけど」


サターニャ「いやいや、アンタ…何やってんのよ…それ買ったってことは、もうお金が…」


ヴィーネ「いいわよ。どうせ、お金なんかほとんど残ってなかったんだから。ほら、一緒に飲みましょ」


ヴィーネ…… 持ち金:5円

ふたりで1本のお茶を回し飲みするサターニャとヴィーネ


ヴィーネ「ごめんね、サターニャ。足手まといになって…わたし、こういうの昔から苦手で」


サターニャ「そんなの今更言われなくたって、わかってるわよ。アンタと何年付き合ってると思ってんの」


ヴィーネ「まあ…そうね。サターニャとは小学校からの付き合いだし、確かに今更ね」


サターニャ「けど、私のほうこそ悪かったわ。今日は私もなんかこう…調子が悪いわ。
おかしいわね、いつもは、バシバシ悪魔的な行為がドはまりして人間どもを恐怖のどん底に陥れるんだけど…」


サタヴィネ「「はあ……」」

ヴィーネ「…………、」


サターニャ「……?どーしたのよ、ヴィネット」


ヴィーネ「あ、いや………、また急に思い出したんだけどさ……

…確かあの時も、公園のベンチで休憩したわよね、わたしたち」


サターニャ「え?ああ…、もしかして、さっきの昔話の続き?」

ヴィーネ「ええ…確かあの時も、今日と同じように、二人で街で悪魔的行為を実践しようとしたんだけど、
結局、全然うまくいかないで……、こうして、公園のベンチでへこたれてさ…」


サターニャ「ああ、そういやそうだったかしらね…あれ…それで、どうなったんだっけ…その後確か…」


ヴィーネ「………」


ヴィーネ「うん、あの後はさ、確か…"ケンカ"しちゃったのよね、私達。その公園で」


サターニャ「あ、あーー…あったわね。思い出したわ、確か…」


………

………


………
………

魔界のとある公園



サターニャ(小5)『ヴィネット、さっきから何よアンタ!悪魔的行為をするって言ってるのに、さっきから足をひっぱってばっかりじゃない!

さっきから、迷子のコ助けたり、道に落ちてるゴミを拾ったり、道を尋ねられたら一緒に目的地までついて言ってあげたり!!

レポートのネタになるような悪魔的行為を一緒にしようっ、つってんのになんでそーなんのよっ!!この大悪魔、サタニキア様の邪魔しないでよっ!』


ヴィーネ(小5)『な、なによ、サターニャだって、結局その都度、いっしょに手伝ってくれたくせに!!

それにアンタが思い付く悪魔的行為だって、幼稚園児のイタズラレベルで大したことなくて恥ずかしいのばっかりっ!

大悪魔が聞いてあきれるわよっ!』

サターニャ『は、はあああ!アンタだけに言われたくないわよっ!世話好きで困ってる人みたらほっとけない性分してるくせにっ!!
ほんと、悪魔の風上にもおけない存在だわっ!
悪魔失格よアンタっ!そんな人助けしたいんだったら、明日から、天界にでも住めば!?そのほうが、アンタのためだわっ!』


ヴィーネ『んな…!!ひ、ひど……、い、今のはひどいんじゃないの、サターニャ!!』ぷるぷる…


サターニャ『ふ、ふんっ』


ヴィーネ『そ、そこまで言うんだったら私だって言うけどさ!
そっちだって、大悪魔だの闇の王様になるだの痛い発言してるだけで実力なんて全然ないじゃないっ!
知ってる!?それって、下界じゃあ中二病っていうんだってっ!!アンタこそ悪魔失格だわっ!!
サターニャなんて、悪魔じゃなくて中二病よ中二病っ!!下界に行って、その中二病のお友達と仲良くしたらっ!?』


サターニャ「な、な、な……、な、なんですってえええええ!!」

サターニャ『ヴぃ、ヴィネット!い、今のはいくらなんでもひどいんじゃない!わ、私を下界の人間と同列に扱うだなんてっ!!』


ヴィーネ『ふ、ふんっ、サターニャが先に言ったんじゃないっ!!』


サターニャ『もう、いいわ…、ヴィネット…アンタとの付き合いも今日限りだわ…!』


ヴィーネ『わ、わたしだって、もうサターニャなんか知らないんだからっ!』


サターニャ『ヴィネットなんか!』


ヴィーネ『サターニャなんて!』


サターニャ『絶交よっ!!!』 ヴィーネ『絶交だわっ!!!』

その晩

ヴィーネの家


ヴィーネ『……、ごちそうさま』


お母さん『あら、ヴィネット…全然ご飯食べてないじゃない。お口にあわなかった?』


ヴィーネ『う、ううん…違うのお母さん…そ、その…ちょっと具合が悪くて…』


お父さん『おい大丈夫か?そういえば顔が青いみたいだけど…』


ヴィーネ『う、うん……大丈夫、心配しないで。
それじゃ、私、部屋にもどるね…その、明日までにやらなきゃいけない宿題があるから………』ばたんっ


お父さん・お母さん『………』

ヴィーネの部屋…


ヴィーネ『…………レポート、書かないと…』


ヴィーネ『(私の人生の中で行った一番の悪魔的行為……)』


ヴィーネ『(それは…)』


………

………

翌日。

職員室

先生「…月乃瀬さん…、再提出いただいたこの課題レポート…一応読ませていただきましたが…」


ヴィーネ「………」


先生「正直、文章が支離滅裂でよくわかりませんでした」


ヴィーネ「……はい…」


先生「ただ、まあ文面からなんとなく、昨日、胡桃沢さんと口論になってしまって、その様子を書いてるんだな、というのは読み取れました。

それで?これがなんでレポートのお題である” 私の人生の中で行った一番の悪魔的行為”に該当するのか、まったくもって、よくわかりませんが…」


ヴィーネ「……」

ヴィーネ『………そ、そもそもわたしが悪かったのに……、私がそれまで悪魔らしくなくて…
サターニャの足を引っ張ってたのがいけなかったのに…』


ヴィーネ『……、勢いにまかせて…サターニャとケンカして……、その結果…わたし、サターニャに…、
胡桃沢さんに、ひどいことを言ってしまいました…』


先生『はあ…』


ヴィーネ『………』


先生『…ええと、もしかして……、口論の中で、月乃瀬さんが胡桃沢さんに、思わずひどい言葉を投げかけてしまったこと…、
それがあなたが思う、これまで生きてきた中で行った、一番の悪魔的行為なんだ、って……そう言いたいわけですか…』

ヴィーネ『……わ、』


ヴィーネ『……、…わたし、…わたしは、昔から悪魔らしく振舞ったりとかよくわからなくて…、
悪魔なのにクラスの間でも、そういう話題出させると、全然ダメで…正直、自分でも悪魔らしくないな、とか思ってたりもしてて……、
仲のいいクラスの人にだって、…ホントは影でそういわれてるのも知ってます。それをすごく気にしてたりもしてたんですけど…』


先生『……』


ヴィーネ『けど…わたし…わたし…、

昨日、サターニャとけんかした時に…自分の中にあるものすごく"悪魔な部分"に気づいてしまいました…』

ヴィーネ『わ、わたし………、すごいんです………

ちゅ、中二病とか言って…、サターニャが…、サターニャが、い、言われて嫌だろうなって……き、気分悪いだろうなって…
そう、思う言葉を、わざと選んで言ったんです…、と、とりかえしのつかないくらい…ひどいことを…』


先生『………』


ヴィーネ『家に帰って…冷静に振り返ってみて…思いました…

なんだ……、わ、わたしも…ちゃ、ちゃんと悪魔だったんだなって…、わたしも皆と同じように悪魔的な行為…できるんだって…
そ、そう…思いました……
それも、とびきり大悪魔的な行為をやってのけるなんて…自分でも信じられない思いでした…!』

先生『……、はあ。そうですか。みんなと同じように、悪魔らしく振舞えたと思えて、よかったですね。
けどそれじゃ、なんでそんな顔を真っ青にして、今にも泣きそうな顔してるんですか?』


ヴィーネ『さっ、さた、サターニャを…大事な友達を傷つけてしまったからです…っ!』


ヴィーネ『わ、わたし…わたし…小さいころからの、大事な友達であるサターニャを……、
わたしのとびきりの”悪魔的行為”で…!!傷つけて……友達を…なくしてしまいましたぁ…!!』ぽろ…


先生『え?』


ヴィーネ『先生…せ、せんせぇぇぇ…わたし、わたしぃ…!!』ぽろぽろぽろぽろ…


先生『え、あ、あの』

ヴィーネ『ううう~~!!、わ、わたし…わたし…ほ、ホントは、わ、わかってたのにぃ…!!、
さ、サターニャは…、わ、わたしがこういうの苦手なの…昔から、よくわかってるからぁあ…!!
だ、だから、今回だって…!一緒にやろう、って、気を使って…!誘ってきてくれ…っのに……ぐすぐす…!
それなのに…、それなのにぃ…ううう…わ、私ってば……、さ、サターニャにひどいことを…!!』


先生『あ、あの…月乃瀬さん』


ヴィーネ『せ、先生…ううう、…け、けど…、やっぱり私は…だ、ダメな悪魔で…、
さ、サターニャのいう通り……、あ、あぐま向いてないでずぅぅ…!
あ、悪魔らしくなんて、なくていい……、そんなのどーだっていいから……!!』


ヴィーネ『わ、わたし…わたしは…サターニャに謝りたい……!さ、サターニャと仲直りしたいですうう…、
サターニャが友達じゃないなんてやだあ!!ど、…どーしたら…、どーじたら……うわああああん…!!!』


先生『あー、あーもういいです…とりあえず落ち着きない月乃瀬さん…、小5にもなって、そんな幼稚園児みたいに泣いて…みっともない』


ヴィーネ『だ、だって、だってええええ!!うわああん!!』

先生『はあ…そろいもそろって…』ぼそ


ヴィーネ『……え?』


先生『いいですか月乃瀬さん。落ち着いて聞きなさい。
まず、あなたのやったことは全然、これっぽっちもまったく悪魔的行為でもなんでもありません』


ヴィーネ『………ぐす……、…ふぇ?』


先生『ふだん遠慮しがちのあなたはこれまで経験なかったかもしれませんが…、友達同士で口喧嘩するくらい、ふつーです。
下界の人間だって、天界の天使だってそんぐらいします』


先生『そして、口喧嘩での罵声なんか所詮、お互い様。てんで大したことじゃありませんので』


ヴィーネ『え、……え?あの…それじゃあ…』


先生『悪魔的行為に該当しません、これっぽっちもね』


ヴィーネ『…え』

先生『…そして、もう少し言えば。あなたがそんなことくらいで、顔を真っ青にして泣いちゃうくらい気に病んでるってのは、
あなたが度を越して”お人よし”で優しい性格、だからです』


ヴィーネ『え、あ、あのう……せんせぇ』


先生『まあ自分でも自覚があるようですし、率直に言わせてもらいますが、月乃瀬さん…、
生まれる世界を間違いましたね』


先生『悪魔に向いてないですよあなた』


ヴィーネ『』

先生『まあ、きっと悪魔として生きていくには、この先も苦労することになるでしょう』


ヴィーネ『あ、あの先生…ちょ』


先生『例えば、近い将来のことをいえば、高校の3年間は下界なんかで修行する可能性もあるかもしれません。
ただ、その時の魔界からの仕送りは、下界での悪魔的行為に左右されますから。月乃瀬さんの仕送り金額は、さぞ慎ましいモノになるでしょう
かなりせまいボロアパート探さないと生活はままならないですよ』


ヴィーネ『あ、あのっ!』


先生『そして、その先の将来。
魔界に帰ってきたとしても、”悪魔”として大成することは間違いなく無理でしょうね。あなた悪魔としての才能なさすぎですからね』


ヴィーネ『』

ヴィーネ『ちょ…』ぷるぷる…


ヴィーネ『ちょ、ちょっと!…ひ、ひ、ひどっ!!…先生…ひどすぎる!!!…いくらなんでもそこまで言わなくても!!
わ、わたしだって、その、一応は悪魔で…!』


先生『………、けどまあ、アナタらしくていいんじゃないですか、月乃瀬さん』


ヴィーネ『…え?』

先生「月乃瀬さんのその悪魔にはとても見合わない心優しい所。

そして、そこから来る、アナタのとても世話好きで、困ってる人がいると放っておけなくて……、そして、とても友達思いなところ…

そういうのって、悪魔として振舞うためには邪魔かもしれませんが…。

他のだれかと、手をとりあい、共に生きていく上では、とても大切なことです』



先生『そしてそれらは、月乃瀬さんの一番の良いところでもあります。
だから、これからもそういう部分を大事にすることは、
悪魔としてはダメなのかもしれませんが、個人的には、別にいいのではないかと思いますよ』


ヴィーネ『……あ、あの…先生』

先生『そうすれば…、まあ、悪魔としては不細工で、時に肩身の狭い想いもすることがあるかもしれませんけど…、
…その代わり、周りの者にはきっと恵まれますよ。要は、とても良い友人関係に恵まれることでしょう。

ああ、それは”今”もそうだと思いますが。

けど、ま、きっとこの先も、とても素晴らしい友人との”出会い”が待ってると思いますけど』


ヴィーネ『せ、先生…、あの、それはどういう…』


先生『………』

先生『まあいろいろ言いましたが、結論を言えば月乃瀬さんが再提出したこのレポートは、またしてもボツ、ということです。それが言いたかったんです』


ヴィーネ『ふぁ!?』


ヴィーネ『…って、てことは…もしかして…再々提出…ですか…』


先生『いや、もういいです。どうせまたトンチンカンなレポートを提出されることが目に見えてますから』


ヴィーネ『は、はあ…す、すみません』


先生『再々提出はもういいので、ペナルティとして今日の放課後、校舎にあるトイレ掃除をよろしくお願いします』


ヴィーネ『え!?こ、校舎にあるトイレ掃除…って、ぜ、全部ですか!?しかもそれを今日中に!?』

先生『レポートの提出をチャラにするわけですから。それぐらいやってもらわないと。
まあ、手分けしてやればそれほど、時間はかからないと思いますが』


ヴィーネ『そんな無茶なっ………って、え??……て、手分けって…?』


先生『……今日は、先生はとても疲れました。
今日一日で、悪魔らしくもない説法のようなものを”2回”も説いてしまいましたし』


先生『一応、引率者としてトイレ掃除が終わるまで職員室で待っている予定ですけど、
なるべく早めに終わらせてくださいね。ちゃんと、2人で協力して』


ヴィーネ『……え?……2人って…?それって………』

その後、校舎のトイレ

ヴィーネ『…それじゃ、わたしこっちの床から掃除するから』


サターニャ『…わかったわ。わたしは手前から掃いていくわ』


サタヴィネ『………』


サターニャ『ったく、あの教師…ほんと、ほんっとーに!ほんとーに!!むかつくわ…!
2人で校舎にあるすべてのトイレを掃除させるだなんて…むちゃくちゃよ!!:


ヴィーネ『まあ、よかったじゃない…これでレポートをチャラにしてもらえるんだから』


サターニャ『それにしたって、今日一日で全部掃除させるなんて無茶よ、まったく…』ぶつぶつ…


ヴィーネ『ま、確かにね…大変そう』

ヴィーネ『……』


サターニャ『……』


サターニャ『ねえ…ところでさヴィネット…、アンタ目のあたり赤いけど…なんかあったの?』


ヴィーネ『んな、あ、赤くなんてなってないわよ…!!っていうか…サターニャのほうが、
目のあたり赤くなって腫れぼったくなってるんだけど、どーしたのよ、何かあったの?』


サターニャ『は、はああ!?な、なってないわよ、何言ってんのよ!全然そんなふうになってないわよ、
む、無駄話はいいから、掃除するわよっまったく』


ヴィーネ『なによ、サターニャが話かけてきたんじゃない…』


サターニャ『……』


ヴィーネ『……』

サターニャ『……』


ヴィーネ『……』


ヴィーネ『あ、あの…サターニャ』もじもじ


サターニャ『…そのヴィネット…』もじもじ



…………


ヴィネサタ『『昨日はごめんなさいっ!!』』

ヴィーネ『え…』


サターニャ『あ、あれ…』


ヴィーネ『え、な、なんでサターニャが謝るのよ、昨日のあれは、もとはと言えば私が悪かったのに…!?
サターニャにひどいこと言って傷つけちゃって…』


サターニャ『は、はあ!?な、なに言ってんのよヴィネット!別に私、傷ついてなんかいないわよ、それに別にアンタ何も悪くないし!?
それより、わ、わたしよ!アンタが気にしてること言ってしまって…!わ、悪かったわっ!ほんとごめんっ』


ヴィーネ『いや、それは違うわよサターニャ!昨日のは私が悪かったの!!
私、あれからサターニャにどうしたら許してもらえるか悩んでて、おかげで私昨日は、夕ご飯ものどを通らなかったんだからっ…!
ずっとずっとサターニャのことばっかり考えてたんだからっ!!』


サターニャ『んな…ば、バカね!それはこっちのセリフよっ!わ、私もぶっちゃけると、あれからずっと、ヴィネットのことばっか考えてたわよっ!!
アンタにどうしたら絶交を解除してもらえるか考えてて、親の手伝いでやってたケーキ作りもまったく手がつかなかったわよっ!!』

ヴィーネ『そんな!絶交なんて、私が言ったのは、嘘に決まってるじゃないサターニャ!!
いつも悪魔らしくない私をなんだかんだで気にかけてくれるサターニャが友達じゃなくなるだなんて!考えられないもの!

て、ていうか…、わ、わたしサターニャのこと好きだもん!!だ、大好きだもん!友達じゃなくなるなんて絶対いやよ!!』


サターニャ『ば、ばっかじゃないの!それなら、私だってアンタに言った絶交、なんてことばは、嘘もウソで大嘘なんだからっ!
普段、クラスで私の話をバカにしないで聞いてくれるアンタだけなのに!絶交だなんて無理よ無理!!
て、ていうか、私のほうが、ヴィネット、アンタのこと大好きよ!大事な一番の友達だっていっつも思ってるわ!」


ヴィーネ『いや、そんなの私だってサターニャが一番の友達だって思ってるもんっ!!っていうか絶対私のほうが好きだもんサターニャのことっ!!』


サターニャ『いやいや私のほうがアンタのこと大好きよ、どう考えても!』


ヴィーネ『いや、わたしが…』


サターニャ『わたしが…』


『………』


『………』


………


………


………

現在


ヴィーネ「(そうそう…いろいろ思い出してきたわ)」


ヴィーネ「(こんな感じでサターニャとはケンカして、そのうえ再提出したレポートはこれまたボツになって……。
けどま、結局はトイレ掃除しながら、サターニャとは仲直りして……、そしてそのあとは……)」


ヴィーネ「……」


ヴィーネ「(って、何よこの思い出!!恥っずうううう!!!!!)」

ヴィーネ「(…サターニャとケンカなんか、当時、経験なかったとはいえ…、あんな恥ずかしい内容のレポートを先生に提出して……
職員室で先生の前で泣いちゃったりして…あげく、その後のサターニャとの仲直りのくだりとか、…ああああああああああああああああああ…!!!
なによあれ、付き合いたての恋人かっっ!!

なんかもう…照れくさすぎる…!!恥ずかしすぎるわっ…!!!)」


ヴィーネ「(いやまあ、小学生でまだまだ幼かったわけだし、仕方ないけどもっ!!
思い出すだけで顔が熱くなってきたわ…ああもう…絶対、顔、赤くなってるわ、わたし…こんな顔、サターニャにみられたら……////////)」


サターニャ「………………………///////////////////」プシュー


ヴィーネ「(あれ、サターニャも顔真っ赤になってる…)」

サターニャ「ま、ま、ままあ…確かにあの時、アンタとケンカしたのはなんとなく、覚えてるけど…、すごく昔のことだし…
それ以上のことは、あ、あんまりはっきりとは覚えてないかしらねっ…、け、けどまあ別に思い出さなくてもいいんじゃない?
なんせ、小さなころの話だしっ!?」


ヴィーネ「そ、そそそうねっ!わたしも、言い出しといてなんだけど、はっきりとは覚えてないかしらねっ!
ま、まあ…まだまだ幼かったころの話だし、ね!いいんじゃない??ご、ごめんね、そんな昔の話ふっちゃって!」


ヴィーネ「しかしまあ…、初等部の頃と同じようなことを、高校生になって下界に来た今もサターニャとやってて…
それも結果もあの時と同じだなんて…はあ…我ながら進歩がないわねえ…」


サターニャ「はあ?何いってんのよヴィネット!悪魔なんだから、悪魔らしい行為を試みようとすることは当然のことじゃない!
それは高校生になって下界に来た今も変わらないことよっ!」


ヴィーネ「ま、それはそうかもだけどさ」

サターニャ「そ、それに…進歩がない、とかいうんじゃないわよっ!!ちゃんと成長してるじゃない!」


ヴィーネ「…え?」


サターニャ「ケンカっ!少なくとも、あの時とは違って、してないじゃないの!わたしたちっ!」


ヴィーネ「……、何よそれ、成長ってそこ?…ふふ」


サターニャ「な、何よ…何、笑ってんのよ気持ち悪いわね!り、立派な成長でしょ!?」


ヴィーネ「ま、確かに、サターニャのいう通り。少しは成長してるのかしらね私達。
けど、それって、悪魔としての成長には入らない気がするんだけど」


サターニャ「はん、悪魔としてだって、アンタはともかく、私は莫大な成長を遂げているわよ、
現在進行形でねっ!いやまあ、既にあの時から相当な悪魔的レベルだったわけだけど、今ではそれ以上に…絶大な魔力を兼ねそろえて…」


ヴィーネ「はいはい」


サターニャ「人の話はちゃんと聞きなさいよっ!アンタ昔はもうちょっと私の話、ちゃんと聞いてくれたわよっ!」


ヴィーネ「いや、だって…さすがに聞き飽きたんだもの」

ヴィーネ「…あ、そういえば。昔話ついでに聞くんだけど、あの時サターニャもトイレ掃除してたってことは、
サターニャも先生にレポートを再提出して、もう一回ボツくらったのよね。再提出した時のレポートの内容ってどういう…」


サターニャ「だ、だだあああああ!う、うっさい!うっさいわよ!!
だから昔の話はもういいっていってんの!それより、活動を再開するわよっ!」


ヴィーネ「ええ、まだするの?」


サターニャ「あったりまえでしょうがっ!生活かかってるの忘れたわけじゃないでしょうねっ!悪魔として成果がでるまで今日はやり続けるわよっ!」


ヴィーネ「もうわかったわよ……、ってあれ?」


ガヴ「ああ、いたいた。へっぽこ悪魔2人組」


ラフィ「ヴィーネさん、サターニャさん、お疲れ様です」

ヴィーネ「ガヴリール!それにラフィも!」


サターニャ「アンタたち、なんでこんなとこに…っていうかアンタたち学校は」


ガヴ「何言ってんだよ、もう放課後だよ」


ヴィーネ「あ、そういえばもうこんな時間…、けど2人とも。なんで私達のところに…」


ラフィ「朝のグループトークの内容を見る限り、何やら何やらとっても面白そ…げふんげふん…、
いえ、何やらお困りのようだったので、心配で来てしまいました」


サターニャ「いや今明らかに面白そう、っていいかけたわよねっ!
天使のアンタたちには、分かりっこない事情がこっちにはあるんだからっ!単なる興味本位で観に来たんならほっといてよっ!」


ガヴ「いや、分かりっこない事情って……、どーせ、悪魔のくせに悪魔的要素0だから、仕送りなくなって、
いまさら大慌てで悪魔ぶろうとしてるとかそんなんなんでしょ?全然分かるわ」


ヴィーネ「いやまあ…図星だけど」

サターニャ「ふ、ふん…だ、だったらどうだっていうのよ!天使として、止めに来たっていうの、
私達の悪魔的行為を!?け、けど…こっちだってそう簡単には…」


ガヴ「ん」


サターニャ「…え?」


自分の預金通帳を差し出すガヴリール


サターニャ「え、な、何よガヴリール…、何よこれ…一体どういう風の吹き回しよ」


ガヴ「…悪魔的な行動なんて、へっぽこ悪魔のお前らがどーせ、できるわけないだろうし。
しかたねーから、貸してやるよ少しくらいは」


ヴィーネ「が、ガヴ…」

サターニャ「はああああ!?何よそれ!?ガヴリール、アンタ変なもんでも食ったんじゃないの!?」

おだったんですy
ガヴ「う、うっさいなバカ悪魔っ!!勘違いすんなよなっ!!このまま野垂れ死にされても後味悪いだけだっての」


ラフィ「ぷぷ…ガヴちゃんツンデレさんですねえ…今日も私に隠れて千里眼で2人の様子をちょくちょく覗いてたみたいですし…。
それに昼休みあたりから、なんかソワソワしだして、少しでも早く2人のところに駆けつけたかったみたいだったんですよ…」


ガヴ「ぎゃあああああああ!な、なな何言ってんだよラフィエル!そ、そんなことないしっ!テキトーなこと言うなバカ!!バーカ!」


ヴィーネ「…………」

………

『悪魔としては不細工で、時に肩身の狭い想いもすることがあるかもしれませんけど…、
……とても良い友人関係に恵まれることでしょう』

…………



ヴィーネ「(ああ、そうね…)」


ヴィーネ「(……あの時、先生から言われたとおり。わたし、下界に来ても、悪魔としては今日見たくダメなまんま…、
けど…。その代わり…、魔界からの友達、サターニャだけでなく…、とても素敵な天使の友人にも巡り合うことができたんだ…)」


ヴィーネ「(悪魔らしくない自分に時に落ち込むことはあるけれど…、けど…けど……、

こうして素敵な友人に囲まれて暮らしていけることのほうが…、わたしにとっては何よりも……)」


………

ガヴ「ほら!わたしの通帳!受け取るのか、う、受け取らないのか、ほらっ!どーすんだよバカ悪魔っ!」


サターニャ「………、わかった…受け取るわ」


ガヴ「ふん」


サターニャ「あ、ありがとうガヴリール…。今まで誤解してたわ…アンタいいやつだったのねっ…
今までいろいろ言ってごめんなさい…必ず返すから…今回はありがたくうけとらせてもらうわっ」


ぺらっ


(ガヴリールの預金通帳を開くサターニャ)

ガヴリール(通帳残高):132円


すぱあああああん!!


ガヴ「あ、あああああ!な、何すんだお前!なに人の通帳、地面に叩きつけてんだ、てめ、なめてんの!?」


サターニャ「そりゃたたきつけたくもなるわよっ!アンタ自分の通帳の額見てないでしょ!!何よ残高132円って!
私の残高より少ないんだけどっ!??
よくこの額でドヤ顔で『貸してやるよ』キリっ…、とか言ってのけたわねっ!まじバカなんじゃないのっ!」


ガヴ「えええ!?ひゃ…132円!??
あ、あれえ!?そ、そんな馬鹿なっ!だ、だって今日、天界からの仕送りがあったはずなのにっ、
あ、あれ!なんで!?あれえ!!?」

ラフィ「ガヴちゃん、そういえば先月くらいに、課金しまくりでお金がないから、天界から仕送りを前借りしてもらったとか
なんとか言ってませんでしたかね?もしかしてそのせいで今月の仕送りがないのでは…」


ガヴ「あ、あっちゃー、そうだったわ…。ごめんサターニャにヴィーネ…、今月、ちょっとピンチなんだよね。
こんな時に言いにくいんだけど、お金貸してくれない?」


サターニャ「逆にせびってきたぁあ!?なんなのアンタホント!?何しにきたの!?
もう帰りなさいよマジで!ほんと邪魔よっ!かえって!ホント帰ってよっ!」


ガヴ「な、なんだとお!?仕方ねーじゃん!今やもう私のほうが生活ピンチなんだからっ!困った時はお互いさまだろうがあ!」


サターニャ「いやだからこっちも今月困ってんのよっ!!」






ぎゃーぎゃー…


ヴィーネ「…………………………………」


ラフィ「あらあら、どうしたんですかヴィーネさん。さっきまで『悪魔的な行為なんかできなくっても、
私にとっては素敵な仲間に囲まれて暮らしていけることのほうが、何より大切で幸せっ!』…って感じの感動的な表情してたのに、
今は、恥ずかしいようなガッカリしたような…とにかく残念そうな顔になってますが…ほんと、一体どうしたんですか?」


ヴィーネ「やめてやめてラフィ…ほんとやめて…なんかもう…、完全に
人の心覗き込んでるとしか思えないような発言、ほんとやめて…、その発言は私に効くわ…」

サターニャ「ああもういいわよ…はん、まあいくらピンチだとしても、この大悪魔サタニキア様が、天使ごときの
情けを受けようとしたのが、そもそもの間違いだったわ…!」


ラフィ「サターニャさんサターニャさん、」にこにこ


サターニャ「な、何よラフィエル」


ラフィ「ほら、これ」ぺらっ


サターニャ「!!??…はああ!?な、何よアンタの預金通帳の額!?なんかバグったようなものすごい金額になってるんですけどっ!!?」


ラフィ「自分で言うのもなんですけど、私は下界での日々の行いも天界で高く評価されてますから…、
毎月の仕送りもかなり多いんですよ。あとたまに実家に帰ったときも白羽家の務めでもらえる報酬もありますし…それとまあ…、……」


ラフィ「いやまあ、ぶっちゃけわたしの実家、超お金持ちですからね。
正直いって、私、生まれてこの方お金に困ったことないんですよ」にっこり


ヴィーネ「ホントにぶっちゃけたわねっ!」

ラフィ「とまあ、そういうわけで、お二人の生活費をしばらく建て替えるくらいの余裕は全然ありますから。心配しないでください」


サターニャ「ありがとうラフィエル!ありがとう!!ほんと恩に着るわっ!今まで誤解してたわ、アンタって天使だったのね!!」


ラフィ「今まで何と誤解してたのか気になりますが…」


ヴィーネ「手のひら返し早ぁっ!サ、サターニャあんた少しは遠慮ってもんを…!」


ガヴ「…」にちゃあ…


ヴィーネ「こっちの駄天使は、急にものすごいゲスな笑み浮かべてるんだけどっ!」

ガヴ「ラフィエルさあ、私たちって親友だよねっ?サターニャやヴィーネなんかより、ずっと付き合いじゃん?、昔からの大親友だよね?
ところで、預金通帳の額すごいねっ、いやあやっぱりラフィはすごいね。かなわないや。
大親友としてすごく尊敬するわ…まあ、あとは、もう…わかるやろ?な?な?」


ラフィ「あらあらぁ、通帳の額を見てからの露骨な親友アピール…ドクズすぎて私でもちょっとひいちゃいますよガヴちゃん、ふふ」


ラフィ「あ、けどヴィーネさんも全然遠慮しないでいいんですよ。友達が困っているときに助けるのは当たり前のことですから」


ヴィーネ「いえラフィ…いろいろ考えたけど…やっぱりキモチだけ受け取っておくわ。有難いけど、友達同士で大金を貸し借りするのはよくないもの」

ラフィ「しかし、ヴィーネさん…気持ちはわかりますが…、このままですと…」


サターニャ「ったく、相変わらず真面目にアンタは…こうと決めたらもう、ヴィネットのやつは言うこと聞かないんだから」


ヴィーネ「まあ、お金がないのは自分の責任でもあるから。バイトでもなんでもして自分の力でなんとか…ん?」ぷるるる…


ヴィーネ「あれ、魔界からだわ…何かしら…」


サターニャ「あれ、わたしもだわ…もしもし?」


サタヴィネ「「……、って…ええ!?」」


ガヴ・ラフィ「「…?」」

その夜…ヴィーネの家


ヴィーネ「…魔界からの連絡……サターニャもわたしも単なる不具合で、仕送りが滞っていただけだなんて…
ほんと人騒がせだわ…いくらなんでも仕送りが0になるだなんておかしいとおもってたのよね」


ヴィーネ「けど、よかった…明日にはちゃんと振り込んでくれるって言ってくれたし…
友達のラフィからお金を借りる必要もなくなってよかった…」


ヴィーネ「それに…、今日みたいにサターニャと2人きりで行動するのも、下界に来てからはあんまりなかったし。
魔界のころを思い出して、なんだかんだで楽しかったわ」


ヴィーネ「…今日は一日中、街を歩き回って疲れちゃったわ…

けどなんだか、今夜は…気持ちよく寝られそう…」


ヴィーネ「………」

………






………

………

ヴィーネ『あ、あのっ…先生、トイレ掃除、全部おわりました』


先生『あ、そうですか、お疲れ様です』


サターニャ『なによその、そっけない言いかたっ!2人で協力しながらでも、すっごく大変だったんだからっ!!
ほんとむかつくやつね、アンタって!!』


ヴィーネ『ちょ、ちょっとサターニャ、先生に向かってやめなさいってば!こ、こらっ!』


サターニャ『ばーかばーか!この悪魔!バーカ!』


ヴィーネ『いや、だから先生も悪魔でしょうが…ほら、もう早く帰りましょサターニャ』


先生『ついでに仲直りもできたみたいよかったですね』


サターニャ『う、うるさいわねっ、アンタには関係ないわっ』


ヴィーネ『………、』

先生『ま、それじゃ先生はこれで帰りますから。あなた達も、もうとっくに下校の時間ですから、とっとと帰ってくださいね』


サターニャ『はん、言われなくても帰るわよ!!てか、誰のせいで下校が遅れたと思ってんのよっ!!
今日のことは、一生恨んでやるんだからね、ばーか!』


ヴィーネ『………、あの、先生…っ』


先生『はい?、なんですか』


ヴィーネ『…その…、先生はその……なんで…その…』


ヴィーネ『………その…、ええと』


先生『……』

先生『あなたたち二人は、とてもよく似ています』


ヴィーネ『え?』


サターニャ『はあ?急に何言ってんのよ、私とヴィネットは性格も考え方もまるで違うわよっ!』


先生『もちろん、多くの点で似ても似つきませんが。ですが…

月乃瀬さん、あなたは普段、とても世話焼きで…困っている人がいると放っておけない…そんな優しい性格が災いして、
悪魔として振舞うことができません。

一方で胡桃沢さん、あなたは悪魔として振舞おうという心根だけは誰にも負けません。しかし、アナタは、とても無邪気で純粋な性格が災いして…、
悪魔的な行動のすべては、実際には悪意が宿っていない、無垢なものばかりとなっています』

どちらも悪魔としては、異端です。つまり、基本的に悪魔には向いていない、という点でよく似ています』

サターニャ『んな…、ま、”また”言ったわね!一度ならず二度までも、このサタニキア様に向かって、悪魔が向いてないだの、異端だの!』


先生『……異端である、というのは生きていて肩身が狭いものです。人間だって、天使だって、悪魔だって。

周りのみんなが当たり前にできる振舞いができない、っていうのは……、
時に仲間外れにされたり、一人で劣等感に陥ったり、正当に評価されなかったり……、
それなりにつらいものなんです』


ヴィーネ『………ひょっとして、そうならないように先生は、私達に、少しでも人並みに
悪魔的な振舞いができるように厳しく指導してたんじゃあ…』


先生『……そんなつもりはありませんでしたが、もしそう感じていたのでしたら、安心してください。
もう二度と、あなた達二人に積極的に指導するような真似はしません。
だって、いくら指導しても、改善されないのでもうあきらめました。ほんと、悪魔に向いてないですよ2人は』


サターニャ『だーーー!!ま、また言ったわね、悪魔に向いてないって!!これ以上言ったら、ほんと許さないわよっ』


ヴィーネ『………、先生』

先生『…まあ、ここだけの話。一方では、あなた達を悪魔として異端たらしめている部分は、とても、
大事な部分だとも思いますので。そこが、難しいところですね』


先生『将来、悪魔として肩身が狭い思いをしないよう、その大事なものを捨てる努力をしてて、悪魔的なふるまいを頑張ってできるよう生きていくのか。
それとも、悪魔としてどうだろうが、とにかく、自分の中の大事なものはそのままにして、この先も自分らしく生きていくのか』


先生『ま、あなた達をみてたら、そのどちらを選ぶかは、大体わかります。せいぜい頑張ってみてください』


サターニャ『なーにわけわかんないこと言ってんのよバーカバーカ!早く帰れアホ教師っ!』


ヴィーネ『……………』


………


………


ちゅんちゅん…

ヴィーネの家


ヴィーネ「……ん」


ヴィーネ「……………、また、あの時の夢…」


ヴィーネ「あ、いけない…もうこんな時間……、早く学校に行く準備しないと…」


………

学校にいく支度をするヴィーネ


ヴィーネ「……いま思えば、ちっとも普通の悪魔らしく振舞えない私達2人を気にかけてずっと見守っていてくれたのね…」


ヴィーネ「まったく。悪魔らしくない、だなんて私たちにさんざん言ってきてたけど…、結局、自分だってそうじゃない…先生」


ヴィーネ「まあ先生のいう通り、下界では仕送り減らされて…、
悪魔としてはちょっぴり肩身の狭い生き方をしてるのかもしれないけど…」


ヴィーネ「ま、別につらくはないわ」

ヴィーネ「下界で新たに出会った天使の友達…ガヴリールにラフィ…、それに魔界からの旧知の親友であるサターニャ。
悪魔として評価はされなくても。私の周りには、素敵な3人の友達がいるし…、みんなが一緒にいてくれるだけで、毎日楽しいしね。ふふ…」


ヴィーネ「そう、たとえ悪魔としてはダメダメで、お金はそんなになくたって、皆がいてくれたら、私は…」ぺらっ


通帳を開くヴィーネ


ヴィーネ「……ん?」

………

………

学校

ヴィーネ「サターニャ~!」


サターニャ「ヴィネット~!」


ヴィーネ「いえーい!!」サターニャ「いえーい!!」ぱあん!


ヴィーネ「ふー!」サターニャ「いやほお!」ぱあん!


ヴィーネ「へーい!」サターニャ「ひゃっはー」ぱあん!




ガヴ「……………」

ガヴ「え…何々、なんなのこいつら…何があったの…クソきもいんだけど…」


ラフィ「どうも2人とも魔界からの仕送りが少しだけ(1000円程度)増えてたみたいで、それで喜んでるみたいですよ」


ガヴ「はあ…、けどなんで仕送り増えたんだろ…、昨日だって、街でロクな悪魔的行為なんかできてなかったのに…
仕送りが減ることはあっても増える要素0な気がするんだけど」


ラフィ「さあ…よくわかりませんが…とにかくものすごく喜んでますから、水を差すのもどうかと思いますよ」


ガヴ「…いやいや…なんかの間違いじゃないの…?だってこいつら…何一つ悪魔的な行為なんて…」


ラフィ「あ、それがわかるってことはやっぱり昨日、千里眼でずっとヴィーネさん達のこと見守ってたわけですか…ぷぷ…優しいですね、ガヴちゃん」


ガヴ「は!?ち、ち、ちがうしっ!」

ヴィーネ「いえーい!!」サターニャ「ひゃほおおい!!」ぱあん!ぱあん!


ガヴ「ああもう、うっさいわ!!」


ヴィーネ「ガヴ、ガヴ!あのねあのね、わたし、カミングアウトすると、私、自分の悪魔的な行為が評価されたのって初めてなのよね!」


ガヴ「いやわかるよ?カミングアウトっていうか、普段の行いから普通にわかってたよ?」


ヴィーネ「けど、今回の仕送りUPで、その、あれよねっ!私も悪魔として認められたって、ことなのよね!
私も普通の悪魔になれたって、そうよね、これって!ね、ね!」


ガヴ「いや、ど、どうかな…」


サターニャ「1000円も仕送りがあがるだなんてっ!メロンパン5個分くらいよっ!5個分よっ!?やっぱ、魔界のやつらは見る目あるわねっ!ひゅー!!」


ラフィ「あらあら~ヴィーネさんにサターニャさん…、普段からは想像もつかないくらいテンションMAXですねえ…」


ガヴ「こいつら今だかつて、悪魔としてまとも評価されたことなんて一度もなかったから、うれしくてしょうがないんだろうな
…なんか逆にかわいそうになってきた…」

ヴィーネ「やっぱ、わたし悪魔だしっ!?悪魔たるもの少しくらい悪魔として評価されないとねっ!!」


サターニャ「ふん、アンタも結構わかってきたじゃないヴィネット!素晴らしい成長ぷりだわ…魔界からの親友としてうれしいわよ、このサタニキアは」


ヴィーネ「サターニャ!!」


サターニャ「ヴィネット!!」


ヴィーネ「いえーい!!」サターニャ「ひゃほおおい!!」ぱあん!ぱあん!ぱあん!!


ガヴ「ああもう、うっっっざ!!ポンコツ悪魔ども!!ほんとうっさいわああああ!!!!」



…………


月乃瀬=ヴィネット=エイプリル、胡桃沢=サタニキア=マクドウェル……

2人が人生の中で行った一番の悪魔的行為(暫定) ……… 学校をずる休み(1日)




おしまい

普段2人きりのからみが少ないサターニャとヴィーネの昔からの知り合い感が出せてると嬉しい
感想お待ちしてます

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