【艦これSS】ガングート「貴様の名前は」 (15)

注意・ガングートの時報ネタバレがあります。
また、史実ネタ満載です

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ガングート「貴様が提督という奴か。ふんっ、私がガングート級一番艦、ガングートだ」

提督「ああ、こちらこそよろしく。ガングートは弩級戦艦と聞く。頼りにしているぞ」スッ

ガングート「いい面構えだ。いいだろう」グッ

提督「つっ……戦艦らしい力だ。頼もしいな」

ガングート「ふんっ」

提督「それでは、こちらに慣れるまでしばらくの間、秘書艦をしてもらおうか」

ガングート「貴様の秘書艦だと?それでは腕が鈍ってしまうではないか」

提督「ああ、それは大丈夫だ。君にはしばらく演習の旗艦で連携等の確認もしてもらうつもりだ」

ガングート「ならばよし。霧島、長門、アイオワ、ウォースパイト、それに超弩級戦艦大和と猛者が揃っていると聞いた。今から演習が楽しみだ」

提督「ははは、君は随分と武人気質のようだね」

ガングート「当たり前だ!艦娘と生まれたからには戦う事こそ本懐だ」

提督「うむ、しかし事務仕事も重要だぞ?」

ガングート「それは分かっている。このガングート、事務仕事においても手を抜くつもりなど毛頭ない。全力で当たらせてもらう」

提督「ありがとう。では、いきなり異国の言葉で仕事をしろと言われても無理なのは分かっているから、君に補佐を付けようと思うんだが、どうかね?」

ガングート「問題ない。むしろこちらから頼みたいくらいだ」

提督「よかった……。入ってくれ」

響「やあ、私は第六駆逐隊、暁型2番艦の響だよ。貴方には、ヴェールヌイと言った方がなじみ深いかな」

ガングート「ほ、誰が来るかと思えば貴様か、デカブリスト……いや、ヴェールヌイ」

提督「君たちはやはり面識があったようだね」

ガングート「ああ、多少はな。これは頼もしい援軍だ。感謝するぞ、提督」

響「それじゃあ、まずは施設の案内から始めようか」

ガングート「ああ、頼んだぞ、ヴェールヌイ」

注・ガングートは1954年から練習艦として使用され、56年に除籍、58年に解体されています。ヴェールヌイ(デカブリスト)は1953年に退役しましたが、その後も練習艦として使用されていた様です。後に1970年代に標的艦としてその一生を終えています。その点を鑑みて、デカブリストとの面識があるという事にしています。なお、史実的にはガングートはバルト海海域を、ヴェールヌイは極東を受け持っていたため、面識はまずないと思われます。ご了承ください。

響「それでこっちが駆逐艦寮で、その奥が戦艦寮になってるんだ」

ガングート「ふむ、私は今日からそちらで暮らすことになるのか。しかし……我がロシアの艦娘は誰一人として居らんのはちと寂しいな」

響「それなら私や第六駆逐隊の皆で泊まりにいってあげようか?」

ガングート「いやなに、そういう意味ではなくてだな……。というか貴様、私をからかうとはいい度胸だな」

響「ふふっ、駆逐艦は度胸がないとやってられないからね」

ガングート「……タシュケントも似たような事を言っていたな」

響「誰だい?随分、懐かしそうな顔をしているけど」

ガングート「そうか、貴様は会ったことがなかったか。何、私を含め、あやつに守られた船は数多く居てな。それでいて熾烈というか、苛烈というか……」

響「…………」ニヤニヤ

ガングート「ええい、いずれにせよいつかは会えるやもしれん。期待しておけっ!」

響「ああ、貴方にそんな顔をさせるのだから、よほどなんだろうね」

ガングート「…………///」

ガングート「そ、そんなことよりも、だ。貴様先ほど第六駆逐隊のみんなと、などと口にしていたな」

響「ああ、私の自慢すべき姉妹たちだよ。それがどうかしたかい?」

ガングート「……貴様、なんのてらいもなく……。いやなに、貴様とこうして組むわけだから、任務などで世話になることもあるかもしれん。挨拶でもと思ってな」

響「それもそうだね。うん、今の時間は待機中のはずだから……寮に居ると思う」

ガングート「では行こうか」

響「ああ」

ガングート「それでヴェールヌイ、こやつらが?」

響「ああ、私の姉妹だよ。こちらロシアのガングート級一番艦のガングート」

響「そしてこっちが……」

雷「雷よ!何か困ったことがあったら何でも言ってね!」

電「い、電なのです。はわわ、強そうな方なのです」

暁「…………」

響「暁?どうかしたのかい?」

暁「……わ、私が『響』の姉の暁よっ」

ガングート「そうか、ヴェールヌイはよくしてくれている。感謝しているぞ」

暁「そ、そうね、響は私の自慢の妹なんだから!」

ガングート「うむ、さすがは信頼の名を持つだけのことはある」

暁「…………」むー

響「暁、どうかしたのかい?」

暁「……なんでもないわっ」

ガングート「…………」

雷「ね、ねえ!何か手伝うようなこととかないかしら?来たばっかりなら、荷物整理だとかお掃除だとか、色々あるんじゃないかしら?」

電「電はお掃除なら大得意なのです!」むんっ

ガングート「いやいや、荷物などたいしてないのだから、手伝ってもらうほどの事でも……」

雷「ダメよっ!そう言ってきちんと片付けなかったりするんだから!司令官なんていつもそうなのよ」

ガングート「ほう、あの男はそんな一面もあるのか?」

電「おかたづけはちょっと苦手みたいですが、お仕事の時にはきちんと整理なさっているのです」

雷「だからたまに私たちが行って片付けてあげてるのよ!」

ガングート「なに?そんな気が抜けているようではいかんぞ。よし、私が気合を入れてやろう」

電「はわわ!司令官さんにあまりひどい事しちゃだめなのです」

ガングート「なに、私の個人的なトレーニングに付き合わせるだけだ」

響「生身の人間にはキツそうだね」

ガングート「何、やってやれないことはあるまい」

雷「ダメよ!司令官のお世話は私がするんだから」

響「……雷、ガングートとの練習で疲れ切った司令官をお世話するっていうのはどうだい?」

雷「それは良いわね!」

電「はわわ、雷ちゃん悪女なのです」

暁「…………」

ガングート「…………」

雷「特訓中の司令官に色々差し入れするのも……」

ガングート「……暁と言ったか?」

暁「…………」こくん

ガングート「先ほどから私に何か言いたいことがあるようだな。言ってみるがいい!」

響「ガングート……暁にも虫の居所が悪い時だって……」

ガングート「ヴェールヌイ、しかし私は言うべき事は言う者の方が好きだ。そうするでもなくうじうじする者は好かん!」

響「それは……」

暁「……びき……」

ガングート「ん?なんだ?聞こえなかったぞ」

暁「響!……って言って!」

ガングート「は?」

暁「だか……ら……響!」ポロポロ

響「わた……し?」

ガングート「悪いが私はヴェールヌイの方で呼び慣れていてな。変えるつもりはな……」

暁「響って言ってぇ!!」

ガングート「断わる。その者は私にとってはヴェールヌイ、同胞だ。呼び方を変えるつもりはない!」

雷「ちょっと、暁、落ち着いて……」

暁「私にとっては響だもん!響じゃなきゃダメなんだもん!」

ガングート「ガキか貴様は!私は何があろうと変えんぞ!」

暁「響!」ボロボロ

ガングート「ヴェールヌイだ!」

響「ガングート、落ち着いて」

電「はわわわ、暁ちゃん……」

暁「響は響だもん!ヴェールヌイなんかじゃないもんっ!!」

ガングート「なんか、だと?侮辱するか貴様っ!」

暁「アンタの方が悪いっ!」ぐしゅっ

ガングート「ほう、いい度胸だ。戦艦に喧嘩を売るとはな。いいだろう、言わせて見せろ…………来い」

響「何言ってるんだよ!ダメだよ!」

電「そうなのです!かなうわけないのです、暁ちゃん!」

雷「電、暁の左手抑えて!」

ガングート「ええい、そこをどけぃ!ヴェールヌイ!」

暁「また言ったぁ!」

ガングート「何度でも言うさ!」

暁「響は……ヴェールヌイじゃないっ!」

提督「いやはや……まさか着任早々騒動を起こすとはな」

ガングート「私は悪くない……」ムスッ

提督「そうかな……少し沁みるぞ」

ガングート「っつ……。あのガキめ……手加減してやったというのに思いっきり頭突きをしてくるとは……」

提督「ははは、暁はあれでなかなか練度が高いからな。その上天龍たちに近接戦闘をしこまれてもいるしな」

ガングート「それは……頼もしいことだな」

響「こちらの様子はどうだい?」ガチャ

提督「響か。見ての通り、擦り傷だけだ。暁はどうだ?」

響「暁は……泣きつかれて明石さんの所で横になってるよ。今は雷と電が傍についてる」

提督「怪我は無いのか?」

響「……軽い打撲くらいはあると思うけど……大丈夫じゃないかな」

提督「そうか。……うまく手加減してくれたんだな、ガングート」

ガングート「駆逐艦相手に本気を出すわけにもいかんだろう」ぶすっ

提督「では事情を聞こうか」

ガングート「知らん。向こうが喧嘩を売ってきた。だから私が買った。それだけにすぎん」

響「…………」

提督「ふむ……暁の性格からいって、いきなり見ず知らずの人を嫌うなんてことはなかなかないはずだが……」

響「あのっ……さ……」

提督「うん?なんだ?」

響「たぶん、私のため、なんだ。……暁が怒ったの」

ガングート「何故だ?むしろこうして迷惑をかけているではないか」

提督「まあ待て、そう憤るな。響、そう思う理由はなんだ?」

響「……ヴェールヌイって呼ぶなって、響って呼べって……そう言って暁は怒ったんだ」

提督「…………」

ガングート「それは……確かにそんなことを言っていたが……そこまでの事か?」

響「暁は……ちょっと頼りないところもあるけど、でも、とても……とても頼りになる姉なんだ」

ガングート「すまないが……日本語はまだ完全ではなくてな。今のはどういう意味だ?」

響「……言葉には、うまくできないよ。……でも、ね。私と暁が、ここで再会できた時、言ってくれたんだ」

響「よかったって。……生きててくれて、良かったって……」

提督「……そうか、駆逐艦暁は、キスカ島で……」

響「うん、駆逐艦響を守って沈んだ……。でも、暁の言った事はそれだけじゃなかったんだ……」

ガングート「…………」

響「ごめんねって…………一人にしてごめんねって……もう絶対、一人にしないからねって……」

響「なんていうか、暁らしいよね。命を救ってもらったのはこっちなのに、それなのに……言うんだ」

響「ごめんねって。生きて帰れなくて……」

ガングート「…………良い、姉だな……」

響「……うん」すんっ

提督「……暁は、だから……」

響「うん……きっと……そういうことなんだと思う。ヴェールヌイ(一人)にしないって……響って呼ぶのも」

ガングート「…………」すっ

提督「おい、ガングート。どうするつもりだ?」

ガングート「……まだ喧嘩の続きが残っている」

提督「おいおい……」

ガングート「心配するな。決着をつけてくるだけだ。暴力は振るわん」

提督「絶対だな?」

ガングート「そんなに疑うのなら、扉の外で聞き耳でも立てて居ろ」

提督「あー……乙女の話を盗み聞きするというのは、なかなかこれで罰が悪いんだが……」

ガングート「ならばむしろ聞いておけ、と頼もうか。特に……」

響「私?」

ガングート「明石……の所だったな?」ガチャリ

ガングート「失礼する!」ガチャリ

電「あっ、はわわっガングートさん」

雷「ダメよ!ケンカなんてしちゃ!」

ガングート「暴れるつもりはない。安心してほしい」

雷「じゃあ、なんで来たのかしら」

ガングート「そこの……不貞腐れてるヤツに話があってきた」

暁「…………」

電「で、でも……」

ガングート「私の事を信じてはくれないか?コヤツを絶対に傷つけないと誓う」

雷「……電、出ましょう」

電「え……あ……」

雷「ね?」

電「……わ、分かったのです。ガングートさん、暁ちゃんをお任せするのです」ガチャリ

ガングート「ああ、任された」

暁「…………」

ガングート「おい」

暁「…………」

ガングート「……まあ、聞いているのならばそれでいい。少し、私の事を話そう」

ガングート「私の名の由来は、この国の言葉で『ハンコ半島』を意味する。陸奥や日向などと同じ、地名由来の名という訳だな」

ガングート「この半島はな、ロシアが未だ帝国であった時の首都、サンクトペテルブルグを守護するために、最も重要な要塞のあった場所だったのだ」

ガングート「私がその名を、ガングートという名を冠したという事はだな、私が、その最も重要な要塞と同じ役目を負ったという事に他ならない」

ガングート「身が震える想いであったよ。この身こそ、祖国の最期の砦であると期待されたのだからな」

暁「…………」

ガングート「しかし……その守るべき国は、守るべき民草自身の手で焼かれ、友の砲は守るべき民へと向けられた」

ガングート「そして革命が完全に成り、ロシア帝国はソビエト連邦と名を変えることになる」

ガングート「そこで私はガングートという名をオクチャーブリスカヤ・レヴォリューツィヤ、すなわち十月革命へと改名されたのだ」

暁「……あなたは……悔しくなかったの?」

ガングート「ふむ……実を言うとな、悔しかった。私が守るべき民が、自ら殺し合っているのだからな。しかも私は捨て置かれて何も出来ん。歯がゆかったよ」

ガングート「そんな行為の象徴である革命などという名前を付けられて、正直な話、怖気がしたよ」

暁「…………」

ガングート「しかし……時が経つにつれて、そんな気持ちは少しずつ薄れていったよ」

暁「どうして?」

ガングート「誇らしげに言うのだよ、私の名を。憧れと畏敬のこもった眼差しで見上げるのだ、私を」

ガングート「民はな、自ら混乱を招いたのかもしれん。しかし、自分たちで選択したのだ。自分たちの歩むべき道を」

ガングート「だから、革命という名も悪くはないのではないかと思う様になった」

ガングート「なぜなら、私の認識を決定的に変える出来事があったのだ」

暁「それって?」

ガングート「ソ連とドイツは不可侵条約を結んでいたのだが、ドイツがそれを一方的に破棄して攻めてきたのだ」

ガングート「そんなドイツ相手に撃って撃って撃って撃たれて撃って撃って……満身創痍になりながらも撃ち続けた」

ガングート「何せ、帰る港がクロンシュタットただ一つだったからな。背水の陣というヤツだ」

ガングート「それが功を奏したのか、我が祖国は敗れることなく攻勢に移り……私は役目を終えた」

ガングート「その事で私は赤旗勲章を授与してな……そして気づいたのだ」

ガングート「ガングートも、オクチャーブリスカヤ・レヴォリューツィヤも、どちらも人々の期待と願いを背負った名であったと」

ガングート「そして私は、力の限りその想いに応えたのだ。だから、今ではどちらの名も、私の誇りだ」

暁「…………」

ガングート「だからな、私はあやつの言い方を変えるつもりはない」

暁「…………!」

ガングート「提督たちからお前の気持ちは聞いたよ。どうしてその呼び方にこだわるのかもな」

ガングート「しかし、ヴェールヌイの名は、私と共に生き、私の同胞として同じ時代を駆けた、大切な名なのだ。変えることなどできん」

ガングート「…………分かってくれるか?」

暁「…………」

ガングート「……さて、それでは扉の外に居る者たちに入ってきてもらうか」ガチャ

響「……終わったのかい?」

ガングート「ああ、終わったよ、ちっこいの」

暁「……!?」

響「……なんだい?それは」

ガングート「フフッ、仲が良ければ愛称で呼び合う事もあるだろう?」

響「それで『ちっこいの』か。少しくすぐったいね」

ガングート「なあ、ちっこいの。お前の姉は何時まで拗ねてるんだ?」

響「さあ?意外と子供っぽい所があるからね。ああ、でも間宮で羊羹でも食べていればいずれ出てくるんじゃないかな?」

ガングート「おお、間宮か。美味いと話は聞いているぞ」

響「じゃあ、行こうか。……暁は置いて」

ガングート「うむ、行こうか。コヤツは置いて」

暁「~~~!!も~、起きればいいんでしょ!起きれば!」

ガングート「では行くとするか」

暁「…………」

暁「……ねえ」

ガングート「なんだ?」

暁「ごめんなさい。暴力をふるった事は謝るわ」

ガングート「こちらも暴力をふるった事は謝ろう」

暁「頑固な人」

ガングート「お前は意地っ張りだな」

暁「む~~~~」

響「ほら、早く行くよ」

ガングート「うむ」

暁「…………ねえ」

ガングート「……なんだ?」

暁「私はあなたの事なんて呼べばいいのかしら?」

ガングート「ふむ……そうだな。私の名は……」

04時の時報「おかしいな…ちっこいのが、親切に読みを振ってくれたんだ。ほら、これだ。…え、ほぅ。ふむ。」
22時の時報「フタフタ…お、この艦隊のちっこいのも元気だが、我が祖国にも凄い奴がいるぞ。紹介したいものだ。」
を元に思いついた話です
前者を響、後者を暁と想定しております
ところでガングートのあだ名はハン子がいいのではないでしょうか(提案)

さて、イベントも折り返し時期に入ってまいりました。後悔の無いよう、頑張っていきましょう。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
イベント何してますか?掘ってますか?(海防艦は)出てきてもらってもいいですか?(涙目)
それでは皆様よい駆逐ライフを~

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