エレン「夜の立体起動?」(57)

やや下ネタ注意
【夜 男子寮】

エレン「なんだそりゃ? 昼の立体起動と何が違うんだ?」

アルミン「ぼくも聞いたことがないね。そもそも夜間は訓練禁止のはずだし、装置を動かしたら音で分かると思うんだけど」

ジャン「俺も詳しくは知らんが、さっきトイレに行ったときに上官が話しているのを聞いたんだ」

エレン「で、それがなんだっていうんだよ」

ジャン「上官いわくだな、夜の立体起動は、すげえ気持ちいいらしい」

エレン「はあ?」

アルミン「き、気持ちいい?」

ジャン「ああ。身体中を快感が駆け巡るそうだ」

エレン「巨人に出くわしたときみたいな感じか!?」

ジャン「果てには絶頂を迎えるらしい」

エレン「巨人を討伐した瞬間みたいな感じだな!?」

ジャン「なんでも巨人で喩えるんじゃねーよこの死に急ぎ野郎が!」ガシッ

エレン「うるせー服やぶけちゃうだろうがあ!」グワシッ

アルミン(立体起動…快感…絶頂…あ、これS●Xのことだな)

アルミン「や、やめなよ二人とも!」

ジャン「ふぅ……ふぅ……」

エレン「はぁ……はぁ……」

アルミン(ふたりとも息も絶え絶えだ……まるで事後みたいだな)

【翌朝 食堂】
ミカサ「おはよう」

エレン「おう」

アルミン「おはよう、ミカサ」

ミカサ「エレン、聞いて。エレンの瞳の大きさが、通常時の0.85倍しかない」

エレン「?」

ミカサ「気になることがあって、なかなか眠れなかった証拠」

エレン「……あぁ、別になんでもねえよ」

ミカサ「話してほしい、私に」

エレン「お前には関係ないことだろ、母親ヅラしていちいち詮索してくんなよ」

ミカサ「悪かった」シュン

アルミン(ミカサが凹んじゃった。まぁいつものことだけど。エレンが気になっているのは、おそらく昨晩の――)

アルミン「エレンは、夜の立体起動のことが気になってるんだよ」

ミカサ「夜の、立体起動?」

エレン「おいアルミン余計なこと――」

アルミン「まあまあ、いいじゃないか」

アルミン「あのねミカサ。噂によるとこの訓練所には、夜の立体起動なるものがあるらしいんだ」

アルミン「それはすごく気持ちの良いことで、ぼくたちに快感を与えてくれるんだって」

ミカサ「気持ちの良いこと……」

ミカサ「私もエレンと、気持ちの良いことしたい」

エレン「おいおい、なんですぐそうなるんだよ」

アルミン(うっはw)

ミカサ「エレン。あなたがいれば、私はなんでもできる」

ミカサ「私は、強い。すごく強い。ので私は、何度だって夜の立体起動をすることができる」

アルミン「ほらエレン、ミカサも気になるって言ってくれてるんだから、素直になろうよ」

エレン「わかったよ。夜の立体起動が何なのか分かったら、一緒にしてやるよ、俺が何度でも」

ミカサ「///」ポッ

アルミン(君たちピュアだねえ)

エレン「でもまずは、昼の立体起動を頑張らないとな」パンムシャムシャ

ミカサ「エレンが楽しそうで、私も嬉しい」パンムシャムシャ

アルミン「ぼくもなんだか楽しいよ、すごく」パンムシャムシャ

【格闘訓練場】
エレン「いってー、やっぱアニはつえーな」

アニ「あんたが至らないだけさ。か弱い乙女に負ける理由を一生懸命考えな」

エレン「ところでさ、話変わるけど」

アニ「あ?」

エレン「夜の立体起動、って心当たりあるか?」

アニ「……」

エレン「噂によるとすげー気持ちいいらしくて、快感がほとばしって絶頂をむか――」」

アニ「おい、あんた」

エレン「ん?」

アニ「乙女に向かってなんてことを言い出すんだい」

エレン「心当たりあるのか!?」

アニ「……あることはあるが、ここでは絶対に言わない」

エレン「なんだよ、ケチ臭いなあ」

アニ「さあ、さっさと訓練の続きやるよ」

エレン「よっしゃ! 次は負けねえぞ!」

ズコー

エレン「また負けた」

アニ「ふっ」

エレン「なあアニ、もしかして特殊な技を使ってるのか?」

アニ「さあ、どうだろうね」

エレン「だとしたらすげーよアニ。尊敬するよ」

アニ「……そんなに気になるなら、教えてやってもいいけど?」

エレン「そんなことより夜の立体起動を教えてくれよ」

【休憩中】

アルミン「アニ!」

アニ「なに? アルミン」

アルミン「さっきエレンと一緒に訓練してたよね?」

アニ「ええ」

アルミン「エレンに変なこと聞かれなかった?」

アニ「い、いや、特になにも」

アルミン「ほんとう?」

アニ「……しいていうなら、夜の――」

アルミン「よるの?」

アニ「夜の立体起動がどうとか、言ってたっけ――」

アルミン「エレンに、教えたの?」

アニ「まさか……もし教えていたら、どうする?」

アルミン「もし教えていたら、アニはぼくにとって悪い人になるね」

アニ「ふっ。安心しな、なにも教えちゃいない。それに私は、巨人化させるより、なるほうが得意だから」ホロリ

【休憩中】

ミカサ「エレン、さっきはアニと何を話していたの?」

エレン「別に何も話してねーよ」

ミカサ「すごく楽しそうだった」シュン

エレン「夜の立体起動について情報収集してただけだ。アニは何か知ってる感じだったぞ」

ミカサ「アニが……」

ミカサ「間違いない。アニはエレンと夜の立体起動を満喫しようともくろんでいる」

ミカサ「私がさせない。エレン、逃げて」

エレン「でもあいつ全然乗り気じゃなかったぞ。教えてくれって言ったら思い切り蹴られたし」

ミカサ「あの女許すまじ。体中かっさばく」スチャ

エレン「おいおい早まるな、あくまで訓練だから」

ミカサ「悪かった。私は冷静じゃなかった」スッ

ライナー「よう。なに盛り上がってるんだ」

エレン「ライナー。ちょうどいい、ライナーにも聞いてみるか」

ベルトルト「ぼくもいるよ」

エレン「なあライナー。夜の立体起動って知ってるか?」

ライベル「!?」ビリッ

エレン「ん? どうしたんだお前ら」

ミカサ「エレン、ふたりが言葉を失っている。これは何かを知っている顔」

ライナー「し、知ってることは知ってるが、いきなりどうした?」

エレン「教えてくれよライナー、夜の立体起動って一体なんなんだよ。アニに聞いても全然教えてくれないし」

ライベル「!?」

ライナー「……聞いたのか、よりによってアニに」

ベルトルト(悪魔の末裔が! 根絶やしにしてやるっ!)

エレン「ああ。でも全然教えてくれないんだ。俺たち仲間なんだから、隠し事は良くないだろ? な?」

ライナー「あ、ああ、そうだな。隠し事はダメだ。しかしだな――」

エレン「だから教えてくれよ。せめてヒントでもくれよ。俺やミカサに分かるようなヒントをさ」

ライナー「ヒント……」

エレン「ベルトルトとライナーで、夜の立体起動のヒントを出してくれ」

ライナー「」

ベルトルト「ライナー! やるんだな!? いま! ここで!」

ライナー(マジかよベルトルト)

ライナー「いや、悪いが断る」

エレン「なんでだよ!」

ベルトルト「どーしてだよライナー!」

ライナー(なんでコイツまで残念そうなんだよ、身の危険感じちゃうだろうが)

ライナー「あのなエレン、夜の立体起動ってのは、愛する人とおこなう神聖な行為なんだ」

エレン「へ? そうなのか?」

ミカサ「エレンの、愛する人」モジモジ

ライナー「だから俺とベルトルトでは、夜の立体起動に及べないんだ。わかるだろ?」

ベルトルト「どーしてだよライナー!」

ライナー「」

エレン「なるほど。分かったぜライナー。おいミカサ」

ミカサ「エレン」テレテレ

エレン「俺の愛する人を、一緒に探してくれ!」

ミカサ「」

エレン「俺って昔から友達いなかったから、誰かを愛したことがないんだよ」

ミカサ「」ショボーン

ライナー(なんだこの空気は。鎧よりも重いわ)

ベルトルト「でもエレンには、ミカサがいるじゃないか」

エレン「え? こいつは家族だから」

ミカサ「」ウルウル

エレン「あ、でも待てよ」

ミカサ「エレン…?」

エレン「俺にはアルミンがいるじゃないか」

ミカサ「」

ベルトルト「そうだよエレン! エレンにはアルミンがいる! ぼくにはライナーがいる!」

ライナー(なにこいつ超怖えーじゃん。とりあえず早く結婚しよ)

夜 食堂】
アルミン「お疲れ、エレン」

エレン「おう」

アルミン「夜の立体起動の謎は解明できた?」

エレン「ライナーが重要な事を教えてくれたぜ」

アルミン「ふうん。どんなこと?」

エレン「夜の立体起動は、愛する人とともにおこなうべき神聖な行為らしいんだ」

アルミン「へぇ~」

エレン「だからアルミン! 俺と夜の立体起動に励もう!」

アルミン「」

エレン「やり方はベルトルトが教えてくれるらしいから心配すんな! 俺たちはただ夜の立体起動の快感に身をゆだね――」

アルミン「ちょっと待ってエレン!」

エレン「ん?」

アルミン「単刀直入に言うね。エレンの夜の立体起動のパートナーに相応しいのは、ぼくじゃない。ミカサだ」

エレン「ミカサ?」

アルミン「エレン、君にとっていちばん尊い存在が誰なのか」

アルミン「君の事をいちばん大事に想ってくれている存在が誰なのか」

アルミン「瞳を閉じて、その胸に手を当てて、じっくり考えてみてくれないか」

エレン「俺にとって、一番尊い存在……」

アルミン「そう」

エレン「俺のことを、一番大事に想ってくれている存在……」

アルミン「そう!」

エレン「…………ミカサだ」

アルミン(ふっ、ちょろいぜ)

アルミン「あ、ミカサ」

ミカサ「アルミン」ショボン

アルミン(露骨に元気ないなぁ。エレンったらまったくもう)

ミカサ「この世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界は残酷だこの世界――」

アルミン「ミカサ!」

ミカサ「?」

アルミン「エレンが、話したいことがあるんだって」

ミカサ「エレンが?」

エレン「あの、だなぁミカサ」

ミカサ「なに、エレン」

エレン「いろいろ考えたんだけどさ、やっぱり夜の立体起動の相手はお前しかいねーや」

ミカサ「!?!?!?」

アルミン(いいぞ、もっとやれ)

ミカサ「エレン」ポロポロ

エレン「な、なんだよ泣くなよメソメソと」

ミカサ「この世界は美しいこの世界は美しいこの世界は美しいこの世界は美しいこの世界――」

アルミン「良かったね、ふたりとも」

アルミン(無知って怖いよね)

ユミル「よう、なに盛り上がってんだ御三方」

クリスタ「あれっ? ミカサが泣いてるよ? 大丈夫?」

アルミン「今ね、夜の立体起動について話していたところなんだ」

ユミル「なっ!?」

クリスタ「よるの、りったいきどう?」

ユミル「おいアルミン、あたしのクリスタを穢すつもりかテメエは」

エレン「なにいってんだよ。夜の立体起動ってのは神聖な行為だってライナーが言ってたぞ」

ユミル「馬鹿かお前、夜の立体起動ってのはだなぁ、つまりセ――」

アルミン「ああああそうだユミル!! キース教官がユミルのことを呼んでたよ!!」

ユミル「は? どうして教官があたしを」

アルミン「ぼくにもよく分からないけど可及的速やかに向かった方がいいと思う。さもなくば教官の頭突きがクリスタに」

クリスタ「ど、どうして頭突きが私に!?」

ユミル「ちっ、ったくめんどくせーな」スタスタ

アルミン(ふっ、邪魔者は消えた)

アルミン「せっかくだから座っていきなよクリスタ」

クリスタ「うん!」

アルミン(しかしクリスタは本当に女神だなぁ。ぼくが夜の立体起動をするなら断然クリスタだよ)

エレン「そうだ、クリスタも夜の立体起動に混ざれよ」

ミカサ「」

アルミン(エレンは本当にたくましい)

エレン「たくさんでやったほうが楽しいだろ、きっと」

クリスタ「ごめんね、夜の立体起動が何なのか分からなくて」

ミカサ「愛する人との神聖な行為」ボソッ

エレン「友達とやる気軽なゲームだよ)

ミカサ「」

クリスタ「楽しいことなら、是非」

エレン「詳しくはあとでライナーとベルトルトが説明してくれるってさ」

ミカサ「違う…これは何かの間違い」

アルミン(ミカサが現実逃避しちゃってるよ、エレン)

ライナー「よう、相変わらず楽しそ――クリスタ!」

クリスタ「ライナーどうしたの? わたしの顔になにかついてるかな?」

ライナー「ああ、いや、なんでもないんだクリスタ」

アルミン(ライナーの顔が紅潮している。明らかにおかしい。もしやライナーは…)

アルミン(クリスタの夜の立体起動姿を思い浮かべているのか!?)

エレン「座っていけよライナー」

ライナー「お、おう」

ベルトルト「ぼくもいるよ」

ライナー「……」チラッ

クリスタ「?」

ライナー「」ケッコンシヨ

アルミン(駄目だ、このままではクリスタがライナーの毒牙にかかってしまう)

アルミン(クリスタ&ライナーのワンナイト立体起動の幕開けだ)

アルミン(ぼくはとうに夜の立体起動の為なら心臓を捧げると誓った兵士)

アルミン(その信念に従った末に果てるのなら本望)

アルミン(ライナークリスタの夜の立体起動なんて糞みたいな祭典は、ぼくが命をかけて阻止する)

アルミン(そして、ゆくゆくはぼくとクリスタの――)

エレン「せっかくだからライナーとベルトルトも一緒に楽しもうぜ、夜の立体起動を」

アルミン「ちょ、ちょっとエレン! 駄目だよそんな応募者全員サービスみたいなのは」

エレン「どうしてだよ、みんなで遊んだほうが楽しいだろ? アルミンも一緒にやろうぜ」

アルミン「あくまでこれはぼくの推測だけど、夜の立体起動は2人用の行為だと思う」

エレン「へ? そうなのか?」

アルミン「そうだよね、ライナー?」

ライナー「あ、あぁそうだ。夜の立体起動は2人用だ」

アルミン「だからエレン。エレンはミカサと、ライナーはベルトルトと行為をおこなうべきだよ」

ライナー「」

ベルトルト「ライナー! やるんだな! いま! こk――」

ライナー「だがなアルミン、夜の立体起動は2人用だが、例外もあるんだ」

アルミン「例外?」

ライナー「不特定多数が乱れて交わる物もまた、夜の立体起動と呼べるだろう」

エレン「そうなのか、なんだか奥深いんだな」

アルミン(それってつまりそういうことだよねライナー)

クリスタ「みんなで仲良く夜の立体起動ができるんだね。本当によかった……」

ライナー「……」ガッタイシタイ

ミカサ「やっぱりエレンは私と夜の立体起動に興じるべきだと思う」

エレン「は? なんでだよミカサ」

ミカサ「私は、昼の立体起動が上手い。このなかで一番上手い。だから、夜の立体起動だって一番上手いはず」

ミカサ「でもエレンは、これだけの大人数を相手にできるほど、立体起動に長けてはいない」

ミカサ「だからエレンは、私とマンツーマンで夜の立体起動に励むべき」

アルミン(ただエレンを独占したいだけの論理展開だねミカサ)

ライナー「その通りだなエレン。まずは基本を抑えるべきだ」

ライナー「俺はクリスタとペアを組もう。金髪同士のほうが、なんかこう相性いいらしいし」

アルミン(各々がエゴをさらけ出し始めている……そんなことをしたらこの訓練所はもう、無数の性欲に支配されてしまう!)

アルミン「待って! ライナーは経験豊富なんだよね? だったらぼくとクリスタに夜の立体起動を指導してよ」

ライナー「俺が直に教えた方が早いだろう。アルミンは……ベルトルトに教えてもらえ」

アルミン「直に教えることも大事だけど夜の立体起動を俯瞰で見て適宜指導することだって調査兵団としてのあるべき姿だ」

アルミン「金髪同士の相性がいいならぼくとクリスタだって一緒のはず。むしろ髪質はぼくのほうが近い。ぼくのほうが相性がいいんじゃないの? 違う? ねえ違う?」

アルミン「だいたいライナーはさきからクリスタのことをチラチラとみてたけど、もしかして夜の立体起動なるものを駆使してクリスタとお近づきになろうって魂胆じゃないの?」

アルミン「夜の立体起動が何なのか分からないけどたぶん推測するにソコソコの密着を伴う行為なんでしょ?」

アルミン「夜の立体起動なんて想像もつかないけどたぶん推測するにナカナカの興奮が生じる行為なんでしょ?」

アルミン「夜の立体起動なんて全く存じ上げないけどね!!」

クリスタ「やめて2人とも!」

クリスタ「楽しいことはみんなで分かち合えばいいんだよ!」

クリスタ「私は私で頑張るから! ね!?」

ライナー(是が非でも結婚しよ)

アルミン(ああっ女神さまっ)

エレン「あっ、おいもうこんな時間だぞ」

アルミン「ホントだ。もう寮に戻らないといけないね。残念ながら夜の立体起動は明日に持ち越しだ」

ライナー「ま、まあ誰が誰とペアを組むのかは、俺とベルトルトで決めておこう」

ミカサ「私はエレン以外と夜の立体起動をおこなうことはできない。場合によっては」スチャ

ライナー「わ、分かった。ミカサとエレンは決定でいい。皆、異論はないよな?」

一同「」コクリ

【男子寮】

ジャン「おいエレン、アルミン、夜の立体起動について何か分かったことはあるか?」

エレン「ライナーが知ってるらしくて、明日教えてもらう予定だ」

アルミン「ライナーは夜の立体起動を熟知してるらしいからね」

ジャン「……そうか。それは羨ましいな。羨ましくて禿げそうだぜ」

コニー「んあ?」

アルミン「もしかしてジャンは、夜の立体起動の真相に行きついたのかい?」

エレン「おいおい抜け駆けかよジャン」

ジャン「マルコに教えてもらったんだ……あいつは夜の立体起動経験者らしいからな。自慢気だったぜあの野郎……」

アルミン(まさかマルコが……分からないもんだなあ、あんなに童貞臭いのに)

エレン「じゃあ、俺たちにも教えてくれよ、夜の立体起動を具体的に」

ジャン「……申し訳ないが、俺からは言えない」

エレン「どうしてどいつもこいつも夜の立体起動について口ごもるんだよ」

ジャン「なあエレン、お前はやっぱ、ミカサと夜の立体起動をするつもりなのか?」

エレン「さあ? あいつは俺とやりたいらしいけど」

ジャン「ふっざけんな羨ましい!」ガシッ

エレン「なにすんだよ服破けちゃうだろうが!」グワシッ

ジャン「ミカサに求められてんのに飄々としてられるてめぇの精神構造が気に食わねえんだよ!」

エレン「俺は世話を焼いてくれなんて一言も言ってねえよ! あいつが勝手に――」

ジャン「それが羨ましいって言ってんだよ!」

エレン「なんでそんなミカサミカサって……あっ」

ジャン「あ?」

エレン「もしかしてジャン、お前……ミカサのこと……」

ジャン「」ギクッ

エレン「ミカサのことを……師匠だと思ってるのか?」

ジャン「……えっ」

エレン「悔しいけどアイツは強いからなあ。さすが首席、って感じの強さだ」

エレン「ミカサに弟子入りしたいんなら俺が言っといてやるよ。ジャンがお前に弟子入りしたい、って」

アルミン「エレン違うよ。ジャンはミカサと夜の立体起動がしたいんだ」

エレン「へ?」

アルミン「ミカサと夜の立体起動できるエレンが羨ましいんだよ。そうだよね、ジャン」

ジャン「……」

アルミン「黙ってることが肯定の証だよ」

エレン「なんだそんなことか。好きにやればいいじゃんかよ」

ジャン「そんなことだと!? 好きにやればいいだと!?」

エレン「そんな青筋立てて怒るなよジャン」

ジャン「お前は夜の立体起動が何を指すのか知らないからそんな呑気なことが言えるんだ」

ジャン「もういい教えてやる。耳の穴かっぽじってよく聴けエレン」

ジャン「夜の立体起動っていうのはな」

ジャン「S●Xの隠語なんだよ!!!」

アルミン(あぁ、言っちゃったかw)

エレン「……」

ジャン「どうしたエレン! 動揺して言葉も出ないか!?」

アルミン(さて、これを知ったエレンはどういう反応を示すか)

エレン「なあ、ジャン、アルミン……」

エレン「S●Xって、なんだ?」

アルミンジャン「」

エレン「夜の立体起動が、S●Xっていうのを指すのは判った」

エレン「で、S●Xっていうのはどういう物なんだ? 美味しいのか?」

ジャン「マジかよエレン……」

アルミン「エレン、さすがにそこまでとは思わなかったよ。流石は駆逐系男子。巨人一直線だ」

エレン「いや、お前らがおかしいんだろ。普通知らないってS●Xなんて」

ジャン「いや、絶対知ってる」

アルミン「残念ながら周知の事実だよエレン」

エレン「アルミンが博識だから知ってるだけだろ? ちょっとミカサたちにも訊いてくるわ」ガラガラ

ジャン「お、おいエレン!」

アルミン「とりあえずエレンの跡を追おう!」

【女子寮】

ユミル「教官が私を呼んでるってのはデマだったんだ」

ユミル「アルミンぜってぇ許さねえ」

クリスタ「まあまあユミル落ち着いて。アルミンが聞き間違えたんだよきっと」

ミカサ「どうだろう、アルミンは昔から陰湿で姑息なことを考えるのが得意」

ミカサ「もしかしたら意図的にユミルを排除したのかもしれない」

クリスタ「辛辣だねミカサ……」

ユミル「そういえばあのときは夜の立体起動が云々って話してたんだっけ?」

クリスタ「たしかそうだったね」

ユミル「レディーたちの前で夜の立体起動を論じるなんてデリカシーってものがないなぁ」

アニ「まったく同感」

アニ「もう少し勉強した方がいいんだよ、女の子との話し方を」

クリスタ「アニも夜の立体起動を知ってるの?」

アニ「ええ。やったことはないけどね」

クリスタ「そうなんだ。もし一緒にやるとしたら誰がいい?」

アニ「そうだねぇ……」

ミカサ「」ジー

アニ「……やっぱり公表は控えさせてもらうよ。猛獣に襲われそうだから」

ミカサ「そんなこと言わずに、教えて」

アニ「聞こえなかったのかい? 猛獣に襲われそうだから止めとくって言ったんだ」

ミカサ「そう」ジー

クリスタ(あ、あれ? なんか気まずい雰囲気……)

クリスタ(ユミルは我関せずだし、どうしよう、なんか喋って場を和ませないと――)

クリスタ(でも、何て声をかけたら……誰か、助けて……)

ガラガラ

エレン「S●Xって知ってる!?」

シーン

クリスタ(い、い、いまS●Xって言ったよね)ドキドキ

ミカサ「エレン、いきなりどうしたの?」

ミカサ「いきなりセッ――そんなことを聞いてくるなんて、何かあったの?」

エレン「もしかしてミカサはS●Xを知ってるのか!?」

ミカサ「……知識としては知っている。体としては知らない」

ミカサ「しかしエレンに求められるのであれば悪い気はしない。いや、むしろ本望」

エレン「ジャンいわく、夜の立体起動ってのはS●Xの隠語らしいんだ」

ミカサ「!?」

クリスタ「!?」

エレン「だけど俺はS●Xが何なのか分からないから、ミカサに聞きに来たんだよ」

ミカサ「アルミンは? 一緒じゃなかったの?」

エレン「もったいぶって教えてくれないんだよ。だからミカサ、代わりに教えてほしいんだ」

アニ「私が教えてあげるよ」

エレン「アニがS●Xを教えてくれるのか? 助かるぜアニ」

ミカサ「エレン待って、私が教える」

アニ「いや私が教える。こう見えて私は経験豊富なんでね」

ミカサ「さっき、やったことはないと話していた。見栄を張ってエレンを欺こうとするなら、肉を削ぐまで」スチャ

エレン「落ち着けよ2人とも。俺とミカサとアニの3人でS●Xすればいいだろ? な?」

アニ「そ、それはちょっと――」

ミカサ「エレン落ち着いて、あなたは自分が何を言っているのか分かっていない」

エレン「なら順番にS●Xするか。最初がミカサで次がアニな」

アニ「なんで私が後回しなんだよ。どうせ初戦で精根尽き果てる癖に」

ミカサ「エレン、アニとセッ――そんなことをしてはダメ。エレンには私がいる」

アニ「でもエレンは私との行為も望んでいる」

ミカサ「アニはジャンとでもやっていればいい。私はエレン、エレンは私」

アルミン(時すでに遅かったかぁ)コソコソ

ジャン()シクシク

ユミル「おいそこのド天然」

エレン「なんだよユミル」

ユミル「男なら、S●Xの相手を1人に選んでみろ。それが男ってもんだ」

ユミル「不特定多数の相手とS●Xを繰り広げている様じゃ、結局みんなが不幸になる」

ユミル「女はな、1人の男を愛したいんだよ。だからエレン、今ここで決めるんだ」

ユミル「いったい自分は誰に愛されたいのか。誰に愛されるよう努めるのか、考えろ。そして導き出せ。今、ここで」

エレン「……」

ミカサ「」ウルウル

アニ「」ドキドキ

クリスタ(唐突なシリアスな室内を襲う)

エレン「さっき、アルミンにも同じようなことを聞かれたんだ」

エレン「俺にとっていちばん尊くて、俺のことをいちばん大事に想ってくれているのは誰なのか、考えたんだ」

エレン「そうして導き出した結論だ」

エレン「ミカサ、俺とS●Xしよう」

ミカサ「エレン!!」ポロポロ

【空き部屋】
ミカサ「エレン、ちょうどいい頃合いの部屋があってよかった」

ミカサ「薄暗い。ベッドもある。壁も厚い。環境としては申し分ない」

ミカサ「ここなら心置きなく、夜の立体起動に没頭できる」

エレン「おう、そうだな」ソワソワ

エレン(ユミルたちにここへ案内されて2人きりにされたけど、一体なにが始まるんだ?)

エレン(そもそも立体起動って、外でやるものじゃないのか? どうしたってこんなところに……)

ミカサ「エレン、私は今から服を脱ぐ。ので、あっちを向いていてほしい」

エレン「おう……って、え!? は!?」

ミカサ「夜の立体起動は、互いが一糸纏わぬ姿でおこなうもの」

ミカサ「大丈夫。恥ずかしいのは、私も同じ」

エレン「いや、意味わかんねえぞ。どうしてお前が俺の目の前で裸体を晒そうとしてるんだ。人前で素っ裸になるなんてお前は奇行種か!?」

ミカサ「仕方ないでしょう。それが……夜の立体起動なんだから」

アルミン「エレンが狼狽しているよ。予想通りのマヌケ面だ」ヒソヒソ

クリスタ「なんだか2人のこと覗いちゃって悪い気がするよ」ヒソヒソ

ユミル「構やしないさ。あたしが2人を結び付けてやったんだ。これくらいの楽しみがあってもいい」ヒソヒソ

アニ「ユミルは最初から、ここでプレイを覗き見ることが目的だったんだね」ヒソヒソ

ユミル「アニは見たくなかったら帰っていいんだぜ? 内心複雑だろう?」ヒソヒソ

アニ「不思議なもんで、見たくないけど見ちゃうんだ。踵を返そうとしても足が動かない」ヒソヒソ

ユミル「そうかい。まあ、複雑な心境なのはアンタだけじゃなさそうだが」ヒソヒソ

ジャン「ミカサァ……とても綺麗な黒髪だった……」ウルウル

アルミン「ちょっと泣かないでよジャン。本気でミカサを狙っていたの? 噴飯モノだよ?」ヒソヒソ

ジャン「俺の好みだったんだ仕方ねえだろ……ミカサ・アッカーマン……そなたは美しい……」ポロポロ

ミカサ「そうだエレン。ただ私が服を脱ぐだけでは淡泊」

ミカサ「エレンに脱がせてもらった方が私は嬉しい」

エレン「は!?」

ミカサ「そうして欲しい。いや、そうするべき。それこそが夜の立体起動のお楽しみ」

エレン「本当なのか、それ……」

ミカサ「気分が高揚すること間違いなし。まずは雰囲気づくりが重要」

エレン「分かったよ、服をぬがせりゃいいんだな」バサッ

ミカサ「強引なエレン」テレテレ

エレン「……」

ミカサ「……」

アルミン(室内が唐突な静寂に包まれた)

エレン「……」

ミカサ「……エレン?」

エレン「……すげえ腹筋だなミカサ」

ミカサ「あ、うん……毎日腹筋しているから」テレテレ

エレン「毎日しているだけでこんな腹筋になるのか」

ミカサ「なる……はず。少なくとも私はこうなっている」

エレン「俺も一応腹筋してるんだけどな。ミカサは格闘術だけじゃなく腹筋も凄いのか」

ミカサ「エレンに褒められて、私は嬉しい」

エレン「……しかし本当に素晴らしい腹筋だ。芸術だなこりゃ」

ミカサ「ありがとう。でも、腹筋以外にも目を向けてほしい」

エレン「等間隔にバックリと割れた腹筋がミカサの豊富なインナーマッスルを体現していて非常に艶やかだ」

ミカサ「エレン?」

エレン「なあ、ミカサ」ハアハア

ミカサ「な、なに?」

エレン「その腹筋、触っていいよな?」ハアハア

アルミン「エレンの息遣いがおかしい」ヒソヒソ

ユミル「目つきもなんか変だぞおい」ヒソヒソ

クリスタ「エレン、どうしちゃったのかなぁ」ヒソヒソ

アニ「ふっ、ざまあないね」ヒソヒソ

ジャン「とても美しい腹筋だ」ヒソヒソ

ミカサ「エレン、大丈夫?」

エレン「だめだ我慢できない」ピトッ

ミカサ「ひっ」

エレン「彫刻のような腹筋だ。まるで板チョコみたいだな」ナデナデ

ミカサ「エレンやめて」

エレン「ここに水を垂らしたら用水路になるんじゃないのかこれ」ナデナデ

ミカサ「やめなさいエレン」

エレン「積み荷を乗せた馬車が腹筋交差点を右折しまーす。ぶーん」ナデナデ

ミカサ「エレン、ひとの腹筋で遊んではだめ」

エレン「ミカサの腹筋に茶をこぼしてすすりたい」ナデナデ

ミカサ「あなたは自分が何を言っているのか把握できていない。ので、私は混乱している」

エレン「ミカサの腹筋が好きだ。ミカサの腹筋LOVEだ。ミカサの腹筋がたまらなく愛おしい。ミカサの腹筋を食べたい」ナデナデ

ミカサ「」

アルミン「これは大変な事になったね」ヒソヒソ

ユミル「こんな有り様になるなら初めからエレンを焚きつけなかったんだが」ヒソヒソ

クリスタ「エレンは、ミカサの腹筋を見ておかしくなったんだよね?」ヒソヒソ

アニ「あいつはミカサの腹筋に欲情して理性を失ったんだよ。まったく、アンタは知性巨人かよ」ヒソヒソ

ジャン「」ハアハア

アルミン「ミカサがあんなに狼狽している姿は初めて見たよ」ヒソヒソ

ユミル「あの女はエレン以外には興味を示さない生命体だからねえ」ヒソヒソ

クリスタ「感情の起伏が薄いよねミカサは。でもそんなところがクールでいいよね」ヒソヒソ

アニ「ただ根暗なだけだろう? まあ、あたしが言えた口じゃないけど」ヒソヒソ

ジャン「クールな女子がおびえる姿……イイ」ヒソヒソ

ミカサ(まさかこんなことになるなんて。エレン以外だったら全力で肉を削ぐべき事案)

ミカサ(ただ、視点を変えればエレンが私を求めてくれていることは事実)

ミカサ(腹筋だって私の一部。私を愛してくれていることに変わりはない)

ミカサ(しかし……やはりエレンには、私という存在そのものを好いてほしい)

ミカサ(……なんて考えは、贅沢なのだろうか)

ミカサ「」ポロポロ

ミカサ(なぜだろう、涙が止まらない)

ミカサ(わたしはミカサ・アッカーマン。自分の身体を完璧に支配できるはず)

ミカサ(それなのに涙を止められない。涙腺をコントロールできない)

ミカサ(ノズルが壊れてしまったらしい。残念だ。エレンにこんな姿を見せたくはなかった)

ミカサ(エレンは腹筋に夢中だ。きっと私の涙なんて気にしない。目にゴミが入ったとでも思っているはず)

ミカサ(この腹筋がほかの女に、たとえばアニに、クリスタに、サシャに、ニーナに備わっていれば、エレンはそちらを愛でるのだろう)

ミカサ(私は所詮、代替可能な容れ物に過ぎないんだ。私がトレーニングを怠って腹筋を失った瞬間にエレンからの愛情も失うんだ)

ミカサ(この世界は腹筋なんだ。私にとってエレンはエレンでなくてはならないのに、エレンにとっての私は腹筋の収容施設)

ミカサ(いい人生だった……)

アルミン「ミカサが何かを悟ったような顔をしているね」ヒソヒソ

ユミル「恋する相手が己の腹筋目当てだったんだ。無理ないさ」ヒソヒソ

クリスタ「ミカサの腹筋、ホント最高なことになってるよね」ヒソヒソ

アニ「猛獣のごとき腹筋の割れ方だな」ヒソヒソ

キース「お前たち」

一同「」ギクッ

キース「なにを覗いているのか説明してもらおうか」

アルミン「……不純異性交遊を目撃したので、現場を抑えようと思っていました!」

キース「ほう。バカみたいな理由だな!」

アルミン「はい! すいません!」

キース「どれどれ。見せてみろ」

アルミン「はっ! どうぞ!」

キース(どれどれ…………これはっ!)

キース(グリシャ……お前の息子の息子が、巨人になってるぞ)

Happy End

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2019年06月21日 (金) 20:35:41   ID: N9YGA8JJ

クソワロタww

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