【ミリマス】琴葉「私とあなたと二人で」 (359)

おにいちゃん!見て見て!

どうした、琴葉?

ランドセル!これでわたしもしょうがくせいだよ!

おおーよく似合ってるな

おにいちゃんとおなじがっこうにいくのたのしみ!やすみじかんとか、おにいちゃんのところにいっていい?

別に構わないけど、その前にクラスで友達を作ってからな

うん!わかった!

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おはようございます…兄さん

兄さん?

はい、私も中学生になったのでいつまでもお兄ちゃんと呼ぶのは子供っぽいかなと思って…変、ですか?

いや、変じゃないよ、いきなり変わったから驚いただけ

それなら良かったです

そうか中学生か…よし、それなら中学に上がった記念にアイスでも食べに行くか!

良いの!?ありがとうお兄ちゃん!…あっ

はは、兄さん呼びが定着するのはまだまだ先っぽいな

うう…恥ずかしい…

琴葉、合格おめでとう!

ありがとうございます、兄さん!

琴葉なら大丈夫だって分かってたけど、やっぱり少し心配だったからな

私は自信ありました、だって兄さんが家庭教師をしてくれましたから

ん、それなら良かったよ…ところでなんで琴葉は俺の通ってた高校にしたんだ?琴葉ならもっと上の高校だって目指せたと思うんだけど

そ、それはその!…ひ、秘密です!

そ、そうか

~♪

お、どうした琴葉?随分上機嫌だな

ふふ、実は今日友達に言われたんです、この前の休みの日に一緒にいた人は彼氏?って

私達、カップルみたいに見えたそうです♪

カップルねえ…傍から見たらそう見える可能性もあるんだな

まあでも琴葉は俺にとっては妹みたいなものだからな、ちゃんとただの近所の知り合いだって訂正しておいたほうが良いぞ

…そうですね

あれ?琴葉、何で怒ってるんだ?琴葉?おーい

就職が決まった

おめでとうございます兄さん!どんなお仕事なんですか?

芸能事務所でさ、アイドルのプロデューサーをやるんだ

プロデューサー…アイドルは男性ですか?

いや、女性アイドルだそうだ

…女性アイドルのプロデューサー、ですか…その、事務所の名前は何というんですか?

765プロって言うらしい

765プロ…聞いたこと無いですね

まだまだ新しい事務所みたいでさ

なるほど…765プロ …後で調べないと

ま、就職も決まったし、いつまでも親の世話になるわけにも行かないからそろそろ独立かな

…え?

一応住む場所の目星もつけてあるし、大学卒業したら家を出るつもりなんだ

その…兄さん、ここから通勤するのは不可能なんでしょうか

出来なくはないよ、たださっきも言った通りいつまでも親の世話になるわけにはいかないからさ

一人で生活出来るようにしておかないと

…でも兄さん、料理できないじゃないですか

帰りにスーパーで総菜でも買うさ

駄目です、兄さんはそういうところは手を抜きますから栄養が偏って倒れちゃいます!

とは言ってもな…

私が…

うん?

私がご飯を作りに行きます!

え?

それなら私も心配しなくて済みますし、兄さんが倒れることもありませんよね?

いやいや…いやいやいや、今みたいに家が近いわけでも無いのに駄目だそんなことは

でも…

琴葉の気持ちは嬉しい、だけど無理して俺のために何かしようなんて思わなくて良い



たまには帰ってくるからさ、その時に何か作って貰うよ

…わかり、ました

P「…懐かしい夢だったな」

ずっと一緒にいた、幼なじみの女の子の夢

もっとも少し前までは毎日のように顔を合わせていたのだが

P「準備するか」

伸びをして身支度を整える

一人暮らしにも慣れてきた

仕事も大変だが楽しいし、色んな経験を積むことが出来る

この仕事にして良かった

P「…よし、行くか」

扉を開け、俺は仕事へ向かった

P「おはようございます」

事務所に入り、挨拶をする

「おはようございます、プロデューサーさん」

P「おはようございます、音無さん」

俺に挨拶を返してくれたのは事務員の音無小鳥さん

仕事が出来る人で、俺やアイドル達のサポートをしてくれている

たまにその日のデータを丸々消してしまい泣いたりしているが、バックアップは取らないそうだ

已然バックアップを取らない理由を聞いてみたのだが

小鳥「…女も人生もバックアップは取れないから…」

と返された

小鳥「どうですかプロデューサーさん、お仕事には慣れましたか?」

P「おかげさまで、毎日が充実してますよ」

小鳥「ふふ、それは良いことですね」

「あらプロデューサー、こっちだったのね」

声が聞こえたからか、小さな人が事務所の奥から出て来た

P「おはようございます、このみさん」

このみ「おはようプロデューサー」

この人は馬場このみさん、765プロのアイドルの一人だ

見た目はかなり小柄で、まるで小学生のようだがなんと成人しており、俺よりも年上だそうだ

世界は広いなぁ…

このみ「ちょっと、今失礼なこと考えたでしょ」

P「ははは、まさかぁ」

このみ「はあ…まあ良いけど」

P「ところでこのみさん、俺を探していたみたいですけど」

このみ「おっと忘れるところだったわ」

このみさんが思い出したように手を叩く

このみ「シアターの方につい最近アイドルになるのが決まった子が来てるから、顔合わせをして欲しいのよ」

P「新人の子ですね、わかりました」

このみ「もしかしたらプロデュースすることになるかもしれないから、よろしくね」

P「はい」

シアターに移動し、応接室に向かう

その途中

「あ、プロデューサーじゃん、おはよー」

P「ん?ああ、おはよう恵美」

俺に声をかけてきたのは所恵美

俺が765プロに入社した翌日に入ってきた子だ

アイドルとプロデューサーという立場の違いはあれど俺と恵美は同期のようなもので、割と良く話したりしている

そして俺がプロデュースしているアイドルでもある

恵美「どこ行くの?」

P「ああ、シアターの応接室だよ」

恵美「応接室?ってことは新人の子でも来たの?」

P「ああ」

恵美「へー…興味あるし、アタシも着いていって良い?」

P「悪いがそれは駄目だ」

恵美「ちぇー」

P「後で皆の前で紹介するから楽しみにしててくれよ」

恵美「オッケー、期待してるかんねー」

手をひらひらさせながら恵美は角を曲がって見えなくなった

P「さて…と」

気を取り直して

P「…恵美、隠れてもバレてるからな」

後ろを向かず声をかけた

恵美「あっちゃーバレてたかー…なんでわかったの?」

P「俺がプロデューサーだからかな」

恵美「いや意味分かんないから」

P「ほらほら、いったいった」

恵美「はーい」

今度こそ人の気配が消えたのを確認し、俺は応接室へと向かった



応接室の扉をノックする

「はい」

P「…ん?」

何やら聞き覚えのある声がしたような…

扉を開き、中に入る

P「初めまして、君が…なっ!?」

応接室の中にいたのは

琴葉「兄さん…」

予想もしていなかった人物だった

一旦ここまで

おつです
3作連動大変そうだけど、応援してるよ

おつ、期待

P「琴葉…どうしてここに」

琴葉「それは…もちろん、アイドルになるためです」

P「…」

琴葉が僅かに目を逸らす

琴葉は昔から嘘をついている時や何かを隠している時は目を逸らす癖がある

だから俺には内容はともかく、琴葉が何かを隠しているのがわかる

P「…琴葉、何を隠してるんだ?」

琴葉「私は別に…な、何も隠してなんかいません」

再び琴葉が目を逸らす

…こっちは嘘をついてるときの反応だな

P「嘘を吐かなくて良い、何年お前を見てきたと思ってるんだ?」

P「嘘を吐いてまでアイドルになりたい理由はなんだ」

琴葉「…兄さんは、私がアイドルになるのは嫌ですか?」

P「嫌とかそういう問題じゃない、琴葉は確かに頭が良くて優秀な子だ」

琴葉「に、兄さん、そんなに誉めなくても」

俺の言葉に何故か赤くなる琴葉

P「だけど不器用で抱え込むタイプだ、中学の時何でもかんでもやろうとしてパンクしただろ」

琴葉「あれは…その…」

中学の時、琴葉は皆のためにと張り切って生徒会長、クラス委員を兼任し、自分一人で抱え込んだ結果体調を崩して倒れたことがあった

P「あの時の出来事がある以上俺はアイドルと学業を兼任出来るとは思えないし、させたくない」

P「もしアイドル活動中や学校で倒れてしまったら琴葉のおじさんとおばさんに顔向け出来ない」

少しきつい言い方になってしまったが、琴葉なら分かってくれるはずだ

…しかし琴葉を見ると顔を伏せていて反応がない

…まずい、もしかして泣かせたか?

琴葉「…それなら」

P「ん?」

琴葉「それなら兄さんが、私が倒れないようにしっかり見ていてくれませんか!?」

琴葉「兄さんが見ていてくれるなら兄さんも安心ですし、私も兄さんのそばにいられ…ごほん、アイドル活動と学業の兼任も出来るはずです!」

P「むっ…」

確かに俺がしっかり見ていれば琴葉に無理をさせることは無いかも知れない

しかし…

P「だけど家からここまで通うのか?結構距離があるけど」

琴葉「それについては大丈夫です、私、引っ越しましたから」

P「引っ越し?どこに?というか一人暮らしなのか?」

琴葉「はい、一人暮らしです、住所は…秘密です」

P「ふむ…」

琴葉が一人暮らしか…何だかんだで無防備なところがあるから割と心配ではあるのだが…

P「おじさんとおばさんは何て?」

琴葉「私のこと、応援してくれています、ちゃんと手に入れてきなさいって」

P「ふむ…」

意外だな、おじさんとおばさんはそういうことに興味が無いと思っていたんだが

家族と話し合って決めたことなら、俺が口を出すべきではないな

P「…わかった」

琴葉「それじゃあ…」

P「琴葉が決めて、両親の承諾が取れてるなら俺が反対するわけにはいかない」

P「これからよろしく頼むよ、琴葉」

琴葉「はい!兄さん!」

P「職場で兄さんは駄目だぞ」

琴葉「あ、ごめんなさい…えっと…プ、プロデューサー」

P「ん、それで良い」

公私はきっちり分けないとな

琴葉「でも…プライベートの時は今まで通り兄さんって呼んでも良いですか…?」

P「アイドルとプライベートで会うって好ましく無いんだが…まあ、良いよ」

琴葉「やった!ありがとうございます、プロデューサー!」

琴葉が笑顔を見せる

その笑顔は高校生になっても変わらず、昔俺をお兄ちゃんお兄ちゃんと追い回していた頃と同じ可愛らしい笑顔だった

P「…変わらないな、琴葉は」

琴葉「?何か言いましたか?」

P「ん、琴葉がどのくらいでプロデューサー呼びに慣れるかなーって」

P「確かお兄ちゃんから兄さんに変えたときも結構かかったよなー」

琴葉「も、もう!今はあの時とは違いますから、意地悪しないでください!」

P「ははは、悪い悪い」

P「それじゃあみんなに紹介するから、着いてきてくれ」

琴葉「はい」

一旦ここまで
不定期更新の予定

乙です
ちゃんと手に入れてきなさいってもちろんアイドルとしての栄光だよね?(すっとぼけ

何処に住むかが気になりますね……

おつおつ

P「と言うわけで、今日から765プロの新しい仲間になるアイドルだ」

琴葉「田中琴葉です、よろしくお願いします」

琴葉が皆の前で挨拶をする

他のアイドル達は様々な反応を示していた

興味深げに見る者

写真を撮る者

何故か目を輝かせている者

興味を示さない者

沢山の異なる反応があったが、拒絶や拒否といった負の反応は無いようだ

一通りの自己紹介が終わった後、恵美が声をかけてくる

恵美「ねえプロデューサー」

P「ん、どうした恵美?」

恵美「あの子がさっき言ってた子?」

P「ああそうだ、仲良くしてやって欲しい」

恵美「OK、アタシに任せといてよ」

恵美になら安心して任せられる

P「頼むぞ、恵美」

恵美「アタシ所恵美、琴葉って呼んで良い?」

琴葉「う、うん」

恵美「にゃはは!そんな緊張しなくて良いって琴葉」

琴葉「ありがとう所さん」

恵美「アタシのことは恵美で良いよ」

琴葉「え?でも」

恵美「苗字にさん付けで呼ばれるの慣れてなくてさ~、アタシも気軽に恵美って呼ばれる方が良いんだよね~」

琴葉「じゃ、じゃあ…恵美?」

恵美「うん、やっぱそっちの方が良いね」

恵美「これからよろしく、琴葉」

琴葉「ありがとう、よろしく、恵美」

どうやら早速2人は打ち解けたようだ

恵美に任せて良かった

P「琴葉はしばらくは俺がプロデュースする事になるな」

恵美「えっ、アタシは?」

P「もちろん恵美のプロデュースもエレナのプロデュースも継続するぞ」

恵美「そっか、なら良いや」

琴葉「エレナ?」

恵美「あ、うん、アタシともう1人プロデューサーにプロデュースして貰ってる子がいてさ」

P「そういえばエレナはどうしたんだ?今日は来てる筈なんだが」

琴葉の紹介の時にはいなかった気がする

恵美「あれ、そう言われてみれば…ちょっと美咲に聞いてくるから待っててよ」

そういって恵美は部屋を出て行った

琴葉「…良い子ですね、恵美」

P「ああ、俺も良く助けてもらってるよ」

琴葉「可愛くて、気が利いて…胸も大きくて」

P「そうだな」

琴葉「むー…」

P「な、なんで膨れてるんだ?」

琴葉「なんでもありません」

P「???」

どこに機嫌を損ねるトリガーがあったのか全くわからん

恵美「ただいまー…ってなんで琴葉は膨れてんの?」

P「わからん」

恵美「んー、多分プロデューサーがデリカシー無いこと言ったんでしょ?プロデューサー鈍いからねえ」

P「ええ…」

俺、鈍いのか?

恵美「まあ良いや、それよりもエレナの居場所わかったよ」

P「どこにいるって?」

恵美「レッスン場、自主練してるんだって」

P「そうか、じゃあレッスン場に行くぞ」

恵美「おっけー」

琴葉「はい」

物珍しそうにキョロキョロしている琴葉を微笑ましく思いながら琴葉をどうプロデュースしていこうか考える

P「後で琴葉に劇場と事務所を案内しないとな」

恵美「そだね、更衣室とかはアタシが案内するよ」

P「頼んだ」

恵美「頼まれた」

琴葉「…」

さっきまであちこち見ていた琴葉が、今度は俺をジッと見ていた

P「?琴葉、どうした?」

琴葉「あ、いえ…プロデューサーと恵美、仲が良いなって思って…」

恵美「アタシとプロデューサーは同期みたいなもんだからねー」

P「まあ話も合うし、色々と頼りにさせて貰ってるよ」

恵美「にゃはは!もっと頼って良いんだよ?」

P「ああ、頼らせて貰うよ」

琴葉「…私も、恵美みたいになれるかな」

恵美「?琴葉は琴葉のままで良いじゃん」

琴葉「え?」

恵美「さっき会ったばっかだけどさ、琴葉はアタシと違って綺麗だし可愛いんだから自分に自信持てば良いんだって」

琴葉「…」

恵美「大丈夫、琴葉はすぐ良いアイドルになれるって、会ったばっかのアタシに言われても信用出来ないかもしんないけど、アタシが保証する」

琴葉「…うん、ありがとう恵美」

P「…」

この2人、相性が良さそうだ

ユニットを組ませるのも良いかもしれない

問題はエレナだが…まあ、大丈夫だろう

P「レッスン場に着いたぞ」

扉を開けて中を覗き込んだ

一旦ここまで

待ってた

おつ

はよ

P「…あれ?」

しかしレッスン場の中はもぬけの空だ

恵美「どしたの?」

恵美が俺の下首を出してからレッスン場を覗き込む

P「エレナがいない」

恵美「んー?美咲は確かにレッスン場にいるって言ってたんだけどなー…っていた」

P「どこに?」

恵美「ほらあっち、隅っこのほう」

恵美が指差した方を見ると

エレナ「…」

エレナが隅の方で目を瞑り、精神集中をしていた

P「精神統一中か…」

恵美「…いやーあれは…」

P「とりあえず琴葉との顔合わせを済ませよう」

レッスン場に入り、エレナに声をかける

P「エレナ」

エレナ「…」

しかし反応が無い

P「エレナ?」

エレナ「…」

試しにもう一度呼び掛けてみたがやはり反応は無かった

…まさか!?

P「め、恵美!大変だ!エレナが、エレナが!」

恵美「ねえプロデューサー、エレナさ」

P「もしかしたらまたアクロバティックなことをしようとして頭を打って意識が…!?」

恵美「エレナ、多分寝てるだけだよ」

P「えっ」

もう一度エレナを良く見ると

エレナ「すやー…」

口の端からよだれが垂れていた

エレナ「いやーゴメンネ?朝早めに来て練習してたら良い感じに疲れちゃってつい寝ちゃったヨ~」

そう言いながら楽しそうに笑うエレナに思わず溜息が出る

P「全く…心配したんだぞ?」

エレナ「ゴメンゴメン、でも心配してくれて嬉しいヨ~」

P「プロデューサーだからな」

エレナ「それで、どうしたノ?」

P「ああ、実は新しいアイドルが入ったから紹介しておこうと思ってな」

エレナ「ワオ!新しい仲間が増えるんだネ!」

P「ああ、琴葉」

琴葉「はい」

俺に呼ばれ、琴葉がエレナと向かい合う

琴葉「この度アイドルになりました、田中琴葉です、よろしくお願いします」

エレナ「タナカコトハ…じゃあコトハって呼ぶヨ~」

琴葉「はい」

エレナ「ワタシは島原エレナ、エレナって呼んで欲しいヨ~よろしくネ、コトハ!」

琴葉「よろしく、エレナ」

良かった、二人とも問題は無さそうだ

P「よし、顔合わせも終わったところで恵美とエレナには琴葉の案内を頼みたい」

恵美「おっけー」

エレナ「任されたヨ~」

琴葉「プロデューサーは…?」

P「俺はこの後やることがあるからな、出来ることなら今日は付いていてやりたかったんだが…」

琴葉「そうですか…」

P「ま、そういうことでまた後でな」

恵美「いってらっしゃい」

エレナ「頑張ってネ~」

琴葉「…」

恵美「…?琴葉、どしたの?」

琴葉「え?な、何が?」

恵美「いや、何かテンション落ちた気がしてさ」

琴葉「気のせいよ」

恵美「ふーん?まあ気のせいならいっか」

琴葉「ありがとう恵美、心配してくれて」

恵美「にゃはは!良いって良いって」

エレナ「二人とも、行くヨ~」

恵美「あ、ほら行こ?」

琴葉「うん」

一旦ここまで

おつ

恵美「ここがドレスアップルーム、衣装とかはここで着替えたりするんだよ」

エレナ「たまにプロデューサーが入ってくるヨ」

琴葉「えっ」




恵美「ここがエントランス、まあ受付だね」

エレナ「みんなで掃除したりグッズを売ったりしてるヨー」

琴葉「あの…あの人段ボール箱を4つくらい運んでるんだけど」

恵美「まあまつりだし」

エレナ「マツリだからネー」

琴葉「ええ…」




恵美「ここが事務室、普段プロデューサーとか美咲が仕事してるよ」

琴葉「ここが…」

エレナ「ミサキとかプロデューサーは大体4時くらいまでいるよネ」

琴葉「えっ…?」

恵美「んで、ここが控え室、みんなでよくたむろってることが多いね」

琴葉「なるほど」

扉を開けた瞬間

琴葉の顔の真横を何かが通り過ぎた

というより掠った

琴葉「…」

じわっと琴葉に冷や汗が浮かぶ

後ろを振り向くと、野球ボールが転がっていた

「おーい大丈夫かー?」

「当たらなかった-?」

恵美「昴、海美-、まーた野球やってたの?」

海美「だって控え室は広いからね!」

昴「ついなー」

恵美「まったく、怪我させたらどうすんのさ」

エレナ「コトハ、大丈夫だっタ?」

琴葉「う、うん…大丈夫…掠っただけだから」

昴「あれ?その人は?」

恵美「あれ?昴さっきいなかったっけ?」

昴「オレが来たのはついさっきだけど」

恵美「あー、いなかったんだ?じゃあ紹介しよっか」

恵美「琴葉」

琴葉「あ、田中琴葉です、今日から765プロのアイドルとして精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」

昴「新人さんか、オレは永吉昴15歳、よろしくな!」

海美「高坂海美16歳!よろしく琴葉!」

琴葉「永吉さんと高坂さん、よろしくお願いします」

海美「こ、高坂さんってなんかムズムズする!名前で良いよ!」

昴「オレも、なんか苗字で呼ばれるのなんか変な感じがする」

琴葉「じゃあ…海美ちゃんと昴ちゃん?」

海美「うん!そっちの方が良い!」

琴葉「それじゃあよろしく、海美ちゃん、昴ちゃん」

海美「うん!よろしく琴葉!」

昴「よろしく!」

エレナ「あと回ってないとこあったっケ?」

恵美「屋上とかはまあ良いっしょ、うん、無いと思う」

エレナ「よし、それじゃあ一旦事務室に戻ろうヨ!」

恵美「OK、琴葉、行くよ」

琴葉「わかったわ、それじゃあ海美ちゃん、昴ちゃん、また後で」

恵美「結構時間経ったね」

エレナ「なんだかんだでシアターは広いからネ」

事務室に入るとデスクでパソコンを使っていた女の子が声をかけてきた

「あ、恵美ちゃんにエレナちゃん、丁度良かった」

恵美「あ、美咲、どしたの?」

美咲「なんと!プロデューサーさんからお手紙を預かってます!」

恵美「プロデューサーから?」

美咲「読むときっと良いことがありますよ~♪えへへ~」

そういって上機嫌に仕事に戻る美咲さん

恵美「手紙かー」

エレナ「とりあえず読んでみようヨ」

恵美「えーって…あー、プロデューサー今日は戻ってこられないんだ」

琴葉「えっ」

エレナ「そっかー、でも仕方ないネ」

恵美「あっ、裏にも何か書いてある…えーっと?ドリンクバー無料券を渡すから三人で親睦を深めてくれ…?」

手紙の間からチケットのような物が三枚、するりと落ちてきた

恵美「うわラッキー!ドリンクバー無料券とかほんと嬉しい!プロデューサー愛してる!」

琴葉「!」

エレナ「メグミはドリンクバーダイスキだもんネ」

恵美「んじゃあ早速ファミレスに出発!」

琴葉「ちょ、ちょっと恵美!」

エレナ「元気良いネー」

美咲「いってらっしゃーい!さあ、私もお仕事頑張ろう!」






恵美の先導でファミレスについた琴葉は、なんだかんだであっさりと順尾した

恵美「そういやさ、琴葉はなんでアイドルになったの?」

琴葉「私?」

恵美「うん」

琴葉「私は…ある人に見つけて欲しくて」

エレナ「ある人?」

恵美「何々?もしかして好きな人!?」

琴葉「好きな人…とは少し違うかも」

琴葉「でも、私にとってすごく大切な人」

恵美「そっか…見つけて貰えたら良いね」

琴葉「うん、絶対見つけて貰って、隣にいるのは琴葉が良いって言って貰いたい」

恵美「にゃはは!その意気その意気!」

エレナ「コトハの話を聞いてるとすっごく大切な人だって伝わってくるヨー」

恵美「目標があるって大事だよねーアタシはまだこれって目標が無いからさ」

琴葉「なら、私も一緒に恵美の目標を探すわ」

琴葉「そして、一緒にたどり着こう?」

恵美「琴葉…うん、ありがと」

エレナ「もちろんワタシも手伝うヨー」

恵美「エレナもありがと!よーし今日は精一杯楽しも!」

デザートなどを注文し、琴葉は新しい友達と楽しい時間を過ごした

その日の夜

P「ふう…今日も一日大変だったな」

今日の業務を思い出し、思わず遠い目になる

紬にはよくわからない罵倒をされ、歌織さんは何かと水着になりたがるので止めるのは大変だった

P「ただいま…」

返事の無い我が家に帰る

一人で住むには十分な広さだが、最近は片付けが疎かになっていて少し散らかり気味だ

P「次の休みにでも片づけるか」

…先週も同じ事を言った気がするが

買い置きのカップ麺でも食べようかと棚を開けたとき、玄関のチャイムが鳴った

P「誰だ、こんな時間に」

時刻は22時、誰かが尋ねてくるにしても明らかに遅い時間だ

P「はい」

「失礼します、私隣に引っ越してきた者なのですが」

P「隣に…?」

そういえば何やら荷物が運ばれてきてたな

そう思い扉を開けると

P「なっ!?」

予想もしていなかった相手が立っていた

「こんばんは、隣に引っ越してきた」

琴葉「田中琴葉です、よろしくお願いします」

一旦ここまで

おつ

おつ

おつおつ

P「それで」

琴葉「もう、部屋が散らかりっぱなしじゃないですか…さっと片付けますね」

P「あ、悪い…ってそうじゃなくて」

琴葉「片付け終わったら晩ご飯作りますね、引っ越し蕎麦でも大丈夫ですか?」

P「ありがたい…ってそうでも無くて」

琴葉「…兄さん、この巨乳の人が表紙のえっちな本はシュレッダーにかけて燃やして灰にしますね」

P「待って!それは苦労して手に入れたレア物だから!ってそんなことはどうでも良い、話しを聞け!」

P「いくつか聞きたいことがあるから答えてくれ」

琴葉「はい」

P「まずは一つ目、俺の家の隣に引っ越してきた理由は?」

琴葉「偶然です」

P「…………二つ目、俺の家の場所は誰に聞いた?」

琴葉「おば様に」

P「…はあ…後で電話するか…三つ目、これが一番大事な質問だ」

琴葉「はい」

P「今日、楽しかったか?」

琴葉「…はい!」

P「ん、なら良かった」

P「それじゃあ晩飯にするか」

琴葉「わかりました、台所お借りしますね」

P「ありがとう琴葉…今のうちに片付けるか」






P「ご馳走さま」

琴葉「お粗末さまでした」

P「最近はうどんばっかりだったから蕎麦は新鮮だった」

琴葉「同じ物ばかりだと栄養が偏りますよ」

P「んー…まあ善処する」

琴葉「…私が作りましょうか?」

P「何を?」

琴葉「朝ご飯と、お弁当と、夕飯を」

P「いやー流石にそれは」

琴葉「でも兄さん、誰かが作らないと絶対に手を抜いたものしか食べませんよね?おば様も心配してましたし」

P「…そんなことは無いぞ?」

琴葉「それなら今日、私が来なかったら何を食べてましたか?」

P「それは…何か作ってたよ、うん」

琴葉「冷蔵庫に調味料しか入っていないのにですか?」

P「…カップ麺のつもりだったよ」

琴葉「やっぱり…」

P「でもカップ麺美味いし」

琴葉「美味しいのは分かりますけど、疲れているときはちゃんと栄養があるものを食べてください」

P「ああ、気を付ける」

琴葉「というわけで、兄さんの食事は私に任せてください」

琴葉の目を見る

どうやら頑固モードになっているようだ

…昔からこうなったらテコでも動かないんだよな

P「…わかった、じゃあお願いするよ」

琴葉「やった!」

一旦ここまで

おつおつ

妙にテンションのが上がってはしゃぐ琴葉

こういうところはほんと昔のままだな

P「仕事が忙しかったり、テスト前とかは無理しなくて良いからな?」

琴葉「大丈夫です、ちゃんと自己管理します」

P「ん、信頼してるぞ」

琴葉「はい!」

P「さあ今日はもう遅い、早く部屋に戻って寝なさい」

琴葉「はい、お休みなさい、兄さん」

琴葉に家の鍵を渡すとまるで大切な宝物を持つかのように両手で胸に抱いた

人の物だから無くさないように大切に保管するらしい

琴葉を見送った後、風呂に入ってから布団に入る

しかしまさか琴葉がアイドルになるとは…

昔はアイドルに興味があるようには見えなかったけど、何らかの心境の変化でもあったのだろうか?

何にせよ琴葉がアイドルをやりたいというのなら俺はその背中を押すだけだ

…琴葉は、どんなアイドルになるんだろうな

そんなことを考えながら、俺の意識は闇に沈んだ

翌朝

窓から差す光を浴び、目を覚ます

…あれ、もしかして昨日カーテン閉め忘れたのか?

そう思いながらゆっくり目を開けると…

琴葉「~♪」

琴葉が鼻歌を歌いながら台所に立っていた

P「あれ…琴葉…?」

俺の呟きが聞こえたのか、料理を止めて琴葉が振り返った

琴葉「おはようございます兄さん、もうすぐ朝ご飯が出来ますよ」

P「なんで琴葉がここに…?」

琴葉「昨日兄さんが言ったじゃないですか、一生面倒見てやるからいつでも来て良いって」

P「ちょっと待て、そんなことは一言も言ってないぞ」

琴葉の謎発言で一気に意識が覚醒する

琴葉「ふふ、冗談です、目は覚めましたか?」

P「おかげさまでばっちりな」

琴葉「もうすぐ朝食の準備が出来るので、今のうちに顔を洗ってきてはどうでしょうか?」

P「そうだな、そうするよ」

顔を洗い、スーツに着替える

リビングに戻ると

P「おお…」

何ヶ月ぶりかに見るちゃんとした朝食があった

P「ちゃんとした朝食なんて久しぶりだ」

琴葉「…兄さん、まさか今まで朝ご飯を…?」

P「一人暮らしし始めたときはちゃんと作ってたんだけどな、春香達が売れ始めてから俺も忙しくなって面倒になって作らなくなったんだよな」

琴葉「やっぱり私が作らないと兄さんはそのうち栄養失調になりそう」

P「一応ビタミン剤は飲んでるから栄養は摂れてるんだけどなぁ」

他愛ない話をしながら朝食を食べ終える

P「ご馳走さま」

琴葉「お粗末さまでした」

P「久しぶりに食べたけど、やっぱり琴葉の作る飯は美味いな」

琴葉「そ、そうかな?」

P「ああ、俺は琴葉の作る飯、好きだよ」

琴葉「あ、ありがとうございます、兄さん」

俺に褒められ、すごくニコニコしている琴葉を微笑ましく思いながら食べた分を片付ける

P「俺はそろそろ出勤するけど、琴葉は?」

琴葉「私もそろそろ行きます」

P「わかった」

琴葉「これ、お弁当です」

P「ありがとう琴葉」

琴葉から弁当を受け取り、鞄に入れる

P「持ち物は問題なしっと」

琴葉「あ、兄さん、ネクタイが曲がってますよ」

P「おっと」

ネクタイを直そうとするが

琴葉「動かないでくださいね」

琴葉にさっとネクタイをただされた

琴葉「…」

しかしネクタイを直した琴葉は急に顔を赤らめると押し黙ってしまった

P「琴葉?」

琴葉「え?あ、い、いってらっしゃいあなた」

P「お前は何を言っているんだ」

昔から変なテンパり方をするな、琴葉は

琴葉と一緒に家を出て鍵を掛ける

P「それじゃあ琴葉、気を付けてな」

琴葉「はい、放課後はすぐに行きますね」

P「わかった」

琴葉と分かれた俺は、まっすぐに劇場へ向かった

P「さーて、昼にするか」

劇場での仕事が一段落し、ようやく一息つく

バキバキと嫌な音のする背中を伸ばしていると

莉緒「あらプロデューサーくん、休憩?」

歌織「お疲れ様です、プロデューサーさん」

P「莉緒、歌織さん」

莉緒と歌織さんが声をかけてきた

莉緒「あー、また呼び捨てにして」

P「あんたが呼び捨てにして良いって言ったんでしょうが」

莉緒「そうだけどー、たまには昔みたいに莉緒ねえって呼んで欲しいのよー」

P「子供かあんたは」

歌織「ふふ、相変わらず莉緒ちゃんとプロデューサーさんは仲が良いですね」

P「か、歌織さん、違いますよ、俺と莉緒はただの腐れ縁です」

莉緒「昔はあんなにお世話してあげたのに…」

P「ごめんもう一回言ってくれる?20歳になった日にいきなり強い酒飲んで一瞬で酔い潰れた百瀬莉緒さん、もう一回言ってくれる?」

莉緒「笑顔なのになんか怖いわ」

歌織「ふふ♪」

P「と、ところで莉緒は何か用事でもあるのか?」

莉緒「あっとそうだった」

莉緒「プロデューサーくん、一緒にお昼でもどう?」

一旦ここまで

きてれぅ
おつおつ

歌織「私達、良いお店を見つけたのでもし良かったらプロデューサーさんもいかがですか?」

P「歌織さんからのお誘いとあらば行きたい所なんですが…」

莉緒「ちょっと~誘ったのは私なんだけど」

P「生憎今日は弁当を持ってきていまして」

そう言って弁当箱を取り出す

莉緒「あら?プロデューサーくんって料理できたっけ?」

P「作ったのは俺じゃないからな」

歌織「それは…どなたかに作って頂いたんですか?」

P「はい」

莉緒「誰に作って貰ったの?」

P「莉緒もよく知ってる人だよ」

莉緒「私が?…おば様?」

P「それはない」

莉緒「じゃあえーっと……………思い付かないわね」

P「もう一人くらい思い付くだろ」

莉緒「だって私の覚えてる範囲じゃプロデューサーくんが女の子と仲良くしてた記憶なんて無いもの」

P「うぐっ」

歌織「プロデューサーさんは、今お付き合いされている方はいないんですか?」

P「え、ええ、恥ずかしながら」

歌織「そうなんですか…良かった」

P「え?」

歌織「な、何でもありません」

莉緒「で、結局誰なのよ」

P「琴葉だよ」

歌織「…琴葉?」

莉緒「琴葉って…え?近所に住んでたあの田中琴葉ちゃん?」

P「そう、その田中琴葉だ」

莉緒「えっ、でもあの子の家、ここから遠いわよね?」

P「それが隣に引っ越してきてさ」

莉緒「一家揃って?」

P「いや琴葉だけ、一人暮らしだ」

莉緒「昔からプロデューサーくんの後を着いてくる子だったけど、そこまで追いかけてくるのね」

P「まあ、琴葉らしいけどな」

歌織「あの、プロデューサーさん」

P「はい、どうしました?」

歌織「その田中琴葉さん?とは一体どういう…?」

P「年下の幼なじみですよ、昔から俺に懐いていて、良く面倒を見てたんです」

歌織「その子がお弁当を?」

P「はい、まあ昔から俺のために料理を覚えたんだから振る舞わないと意味がないとか言って弁当や夕飯を作っていたので」

莉緒「琴葉ちゃんの料理、結構美味しかったわよね」

P「ああ」

歌織「…プロデューサーさん」

P「はい」

歌織「もし私が…プロデューサーさんにお弁当を作ってきたら、食べてくれますか?」

P「それって…」

茜「イノベーション、かもね!」

歌織「駄目…でしょうか?」

P「そんなことありません!歌織さんの作るお弁当が食べられるなんて幸せです!むしろ是非お願いします!」

茜「あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″!!」メキメキメキメキ

莉緒「プロデューサーくん、茜ちゃんの頭蓋骨が陥没するわよ」

歌織「それじゃあ明日早速作ってきますね!」

P「お願いします!」

歌織「ふふ♪」

莉緒「あ、ちょっと歌織ちゃん!お昼ご飯は!?」

鼻歌を歌いながら歩いていった歌織さんとそれを追い掛けていく莉緒

…歌織さんのお弁当か、まさかこんな幸運が舞い込んでくるとは

茜「プロちゃん…ギブ、ギブ」

P「おっと」

茜「全く酷いよプロちゃん!危うく可愛い茜ちゃんの頭蓋骨が変形しちゃうところだったよ!」

P「悪い悪い、で、何しに来たんだ?」

茜「ラブコメの波動を感じたから邪魔しに来た」

P「ほう」

茜「うわぉ!プロちゃんの右手が真っ赤に燃えて茜ちゃんを壊せと轟き叫んでるぅ!冗談!冗談だよプロちゃん!」

P「本題は?」

茜「昨日の琴葉ちゃんを迎えるためにサプライズパーティーをやろうかなーって」

P「サプライズパーティーか…」

茜「うん!だからプロちゃんはみんなのスケジュール調整をよろしくぅ!」

P「そういう事なら了解だ、琴葉を楽しませてやってくれ」

茜「任された!」

一旦ここまで

琴葉莉緒歌織さんとかなかなか好きなチョイスだ
おつ

パーティーの琴葉みんなに任せておけば良いだろう

後はどうスケジュールを調整するかだな

シアター組はまだほとんどがレッスンの段階だから容易いとして…

頭の中でスケジュールを練りながら弁当箱を開け、箸をつける

P「うん、美味い」

琴葉の弁当は、やはり美味かった

恵美「おっはよプロデューサー」

P「恵美か、おはよう」

劇場の備品を管理していると恵美が声をかけてきた

もうそんな時間だったか

恵美「備品整理?手伝おっか?」

P「後はこの棚だけだから大丈夫だ」

恵美「そっか」

P「恵美はこの後レッスンだったな」

恵美「うん」

P「ならちょっと頼みたいことがあるんだが」

恵美「なになに?アタシに出来る事ならなんでもやるよ」

P「…言い方が…いや、まあ良い」

恵美「?」

P「今日から琴葉がレッスンを開始するんだけど当然初めてだからペースとかも分からないはずだ」

P「だから琴葉の事を見ていて欲しい」

恵美「オッケー任せてよ、琴葉はちゃーんとアタシがフォローするから」

P「頼りにしてるぞ」

恵美「にゃはは、頼られちゃった♪」

しばらくして

琴葉「おはようございます」

琴葉が劇場に到着した

P「おはよう琴葉」

琴葉「おはようございます兄さ…プロデューサー」

P「今、ちょっと危なかったな」

琴葉「中々慣れませんね…」

P「まあ徐々に慣れていくさ、さて、来たばっかりで悪いけど今日は早速レッスンを受けてもらう」

琴葉「はい」

P「初めてだからって緊張はしなくて良いぞ、今日は徐々に慣らしていくための準備運動みたいなもんだからな」

P「更衣室にトレーニングウェアがあるはずだ、それに着替えたらレッスン場に集合だ」

琴葉「わかりました」

P「それじゃあ琴葉、レッスン頑張れよ!」

琴葉「はい!」




琴葉をレッスンに送り出した後、机に戻る

もう間もなく劇場の初公演がある

出来れば琴葉も出してあげたいところだ

そのためにも

P「俺も頑張らないとな」

今出来ることをやるんだ

一旦ここまで

おつ

琴葉「はあっ…はあっ…」

恵美「大丈夫琴葉?」

琴葉「だ、大丈夫、大丈夫…」

エレナ「そうは言ってもカラダは正直だヨ~」

琴葉「…普段からもうちょっと運動しようかな」

アイドルのレッスン…テレビとかで見たことはあるけども、実際にやるとこんなにもキツいものだったなんて…

…でも諦めるわけにはいかない

兄さんの期待に応えるためにもどんどんレッスンをして、早く一人前にならないと

水分補給を終えた琴葉はそんな決意を胸に、立ち上がる

そして次のレッスンに挑むのだった

待ってた

P「で」

琴葉「はい」

P「どういう状況かもう一度説明してくれるかな」

琴葉「レッスンを頑張りました」

P「それで?」

琴葉「レッスンをすごく頑張りました」

P「頑張ったのは良い事だな、それで?」

琴葉「でも何だか足りない気がして、自主練もしました」

P「みたいだな、それで?」

琴葉「…体力が尽きて、歩くことすら辛いです」

P「そうか」

P「…はあ」

琴葉「」ビクッ

恵美「プ、プロデューサー、あんま怒んないであげてよ!琴葉はちょっとでも追いつこうと必死で」

P「わかってる」

琴葉「…」

P「琴葉、頑張るのは良いけどな、それで身体を壊したりしたら意味がないんだ」

P「琴葉だって嫌だろ?頑張ったのに、頑張りすぎて台無しにしちまうのは」

琴葉「はい…」

P「何事にも適切に対応すること、それが上達への近道なんだから」

P「ま、今回は授業料ってことで、明日明後日の筋肉痛を楽しみにしていると良い」

エレナ「レッスン頑張った後の筋肉痛は凄いヨ-、痛みで悶えちゃうネ!」

恵美「エレナなんで追い打ちかけてんの」

来てた

P「とりあえず歩けないなら車で送って帰るけど、恵美とエレナも乗っていくか?」

恵美「アタシのチャリ積める?」

エレナ「ビンジョーするヨー」

P「チャリは積めるぞ、じゃあ微妙に残った仕事を片付けてくるからちょっと待っててくれ」

恵美「いってらっしゃ~い」




恵美「それじゃ、ウチらも帰る準備しよっか」

エレナ「ワタシはいつでも帰れるヨー」

琴葉「私も、いつでも動けるように荷物はまとめてあるから」

恵美「りょーかい!んじゃアタシは荷物まとめてくるね」

恵美が出て行ってから、エレナが声をかけてくる

エレナ「コトハ」

琴葉「?」

エレナ「焦ったって仕方ないヨ、だからネ」

エレナ「焦らず楽しく行こうヨー、そうしたら自然に結果も着いてくるしネ♪」

焦らず…楽しく…

琴葉「エレナ…うん、ありがとう」

エレナ「えっへへ~」

恵美「お待たせ~」

P「待たせたな」

兄さんと恵美が戻ってくる

P「車は正面に停めてある、エレナ、恵美、琴葉を支えてやってくれ」

恵美「おっけー」

エレナ「うんしょっと」

P「…ん」

車を走らせること大体30分

さっきまで車内は女子三人の姦しいトークが聞こえていたのだが…

琴葉「…」

恵美「んん…」

エレナ「すやー」

どうやら三人とも眠ってしまったらしい

P「やれやれ」

琴葉は言わずもがな、他の二人も琴葉に付き合ってレッスンしていただろうから疲れたんだろう

…今はゆっくり寝かせてやるか

P「…お疲れさま」

俺は三人の寝息をBGMに、恵美とエレナを家に送っていった

一旦ここまで

おつおっつ

P「琴葉、着いたぞ」

恵美とエレナを家に送り届けた後、アパート近くの駐車場に着いた俺は琴葉を起こすために声をかける

琴葉「んぅ…」

しかし琴葉は起きる様子が無い

P「…」

今日はかなり張り切ってレッスンをしていたようだし、慣れないことをしたからかかなり疲れたのかも知れない

そうなると起こすのは可哀想だな…となると

P「よっと」

眠る琴葉を起こさないようにゆっくり身体を持ち上げ、おんぶする

P「よし」

ずり落ちないようにしっかりと支え、車をロックして歩き出した

琴葉「ん…あれ…?」

アパートに向かって歩いていると、琴葉が起きたのか背中でもぞもぞと動き出した

P「琴葉、起きたのか?」

琴葉「お兄ちゃん…?……あ、あれ?な、なんで私」

P「車の中で寝ちゃったんだよ、きっと疲れたんだろうな」

琴葉「恵美とエレナは…」

P「ちゃんと送っていったよ、二人ともぐっすりだったけどな」

琴葉「そうですか…」

P「目が覚めたなら降ろそうか?」

琴葉「ん…もう少し、このままでいたいです」

P「そっか」

琴葉「兄さんの背中、昔と変わらないですね」

P「そうか?」

琴葉「はい、広くて、大きくて、温かくて…私の、大好きな背中のままです」

P「大袈裟だな」

琴葉「大袈裟でも良いんです、だって私にとってはそれでも足りないくらいなんですから」

P「…」

琴葉「ふふっ♪」

P「ま、なら今のうちに堪能しておくべきだな」

P「明日からは多分死ぬほど痛いぞ」

琴葉「ううっ…エレナに脅された筋肉痛ですか…」

P「頑張れ頑張れ」

くだらない話をしながら歩いていると俺達の住むアパートに到着した

P「そろそろ降ろすぞ」

琴葉「あ、はい」

琴葉を降ろして鍵を開ける

P「一応湿布は渡しておく、まあ筋肉痛で起きられないって事はないだろうけど…もし辛かったら連絡してくれ」

琴葉「そ、それなら兄さん」

P「ん?」

琴葉「今日は泊めてくれませんか!?」

P「えっ」

琴葉「それなら私が筋肉痛で起きられなかったとしてもすぐに気付けますし!」

P「それはそうだが…」

琴葉「お願いします兄さん、流石に一人で地獄のような苦しみに耐えるのは辛いですから」

P「…」

頭を掻き、考える

泊めるのは吝かではないが…

P「…今回だけだぞ?」

琴葉「!はい!」

琴葉の事だ、これで断ったら間違いなく辛いのを隠すだろう

それなら目が届く範囲に置いておく方が良い

琴葉「~♪」

嬉しそうな琴葉と一緒に部屋に入る

…とりあえず湿布を貼ってやるとするか

琴葉の作った夕飯を食べ、資料を見る

夕飯を食べ終えた琴葉は一足先に風呂に入っていた

P「莉緒と歌織さんで一度ユニットを組んでみるか…他には紬と瑞希と…」

劇場のみんなのデータを見ながら、売り出し方を考えていく

構想のあるユニット、一から考えなくてはならないユニット、既に活動しているユニット…考えることは沢山ある

そしてふと、琴葉をユニットに組み込むならどうなるのだろうかと考えた

琴葉はまだみんなと顔合わせをした訳ではない

だから誰と組ませるとどんな魅力が発揮できるのか未知数だ

ひとまず現在進行で交流のある恵美、エレナとユニットを組ませてみるのも良いかもしれない

となるとユニットのセンターは誰にするか

琴葉「兄さん、お風呂いただきました」

P「ああ」

ユニットのことを考えているとちょうど琴葉が風呂から上がってきた

琴葉「兄さんは、まだお仕事ですか?」

P「まあな」

琴葉が隣に座って資料を見てくる

…何だか良い匂いがする

その匂いに思わずドキッとしてしまう

…相手は琴葉だ、妹みたいなものなのに

琴葉「これは…みんなのデータですか?」

P「そうだ、だからあんまり見ないように」

琴葉「わかりました」

琴葉がすっと離れる

…琴葉の残り香が俺の鼻腔をくすぐってきた

…くそう、これじゃ集中出来ないぞ

P「ふう…」

資料を整理し、片付ける

琴葉「お仕事、終わったんですか?」

P「あんまり遅くまでやっても集中出来ないしな」

…嘘は言っていない

琴葉「それなら兄さん、一つお願いが」

P「なんだ?」

琴葉「髪を梳いてくれませんか?」



P「お前の髪を梳いてやるのも久しぶりだな」

ドライヤーで髪を乾かしながら櫛で梳いていく

さらさらとしていて気持ちの良い手触りだ

琴葉「中学生以来でしょうか」

P「お前が最後に家に泊まったのがそのくらいだったかな」

あの時は莉緒も泊まりに来て琴葉ばっかりずるいとか言ってたっけな…

琴葉「…兄さん、今誰のことを考えてましたか?」

P「莉緒だよ」

琴葉「莉緒って…莉緒姉さん?」

P「ああ」

琴葉「そういえば私が最後に泊まった時、莉緒姉さんもいましたね」

P「ゴールデンウィークだったからこっちに帰ってきてな」

琴葉「懐かしい…莉緒姉さん、今何してるのかなぁ…」

P「…」

同じ事務所でアイドルやってるって言ったらどんな反応するのやら

ま、それは本人と会ったときのために取っておくかな

P「よし、こんなもんか」

乾いた琴葉の髪を整えてやる

琴葉「ありがとうございました、兄さん」

時計を見るともうすぐ天辺だ

そろそろ寝ないとな

P「琴葉はベッドを使ってくれ、俺は…まあ適当に寝るよ」

琴葉「お布団も無いのに…ですか?」

P「ん…まあ、平気だろ」

琴葉「駄目です、ちゃんと寝ないと身体を壊します」

P「そうは言うがな…」

琴葉「なら…一緒のベッドで、寝ませんか?」

P「えっ」

一旦ここまで
おかえりは言わない
ただ、待ってたぞ琴葉って言いたい

莉緒ちゃん幼馴染時の樣子も気になるね

P「…」

琴葉「な、なんだか凄く緊張しますね」

P「そうか、なら俺は床で」

琴葉「駄目です」

P「…」

琴葉「兄さんを床で寝させるくらいなら私が床で寝ます」

P「なら二人とも床で寝るか」

琴葉「別にそれでも構いませんけど、結局お布団は一つしか無いので一緒に寝ることになりますよ?」

P「…ふう」

P「琴葉」

琴葉「はい」

P「何か不安を抱えてるみたいだな」

琴葉「…」

P「お前が甘えたりする時は何か不安な事があった時だ、今こうやってわがままを言ってるのもそうだ」

P「話してみないか?気が楽になるかもしれないぞ」

琴葉「…やっぱり兄さんにはバレてしまいましたか…はい、実はとても不安なんです」

琴葉「私は…本当にアイドルとしてやっていけるんでしょうか」

P「どういう意味だ?」

琴葉「私には、アイドルとしてのビジョンがありません」

琴葉「どんなアイドルになりたいかっていう目標が無いんです」

琴葉「だから…」

P「琴葉」

俺は琴葉の言葉を遮る

P「みんながみんな、なりたい目標があるわけじゃない」

P「エレナみたいにダンスが楽しいからってアイドルになった子もいる」

P「目標を持つのは良いことだ、だけどな」

P「目標を持つのが目標みたいなことになったら意味がない」

P「琴葉は真面目な子だ、だから時に考えすぎることもある」

P「でもたまには、楽しむことだけを考えても良いんじゃないかな」

琴葉「楽しむことだけを…」

P「楽しんでいく中で、きっと琴葉だけのアイドル像が見付かるはずだ」

P「俺はそのために背中を押して、手を引いてやる」

P「だからさ琴葉、全力で今を楽しめ」

琴葉「兄さん…」

その言葉を聞いて、琴葉が何故か抱き着いてくる

琴葉「わかりました、全力で『今』を楽しむ事にします」

俺に抱き着いたまま深呼吸をする琴葉

…何だろう、何かが食い違ってる気がする

しかし何が食い違っているのかがわからない…

ま、良いか

俺は考えるのをやめ、目を閉じた

一旦ここまで

おつ 今を楽しむとは

兄さんがあっという間に寝てしまった

琴葉「…むう」

せっかく勇気を出して誘ったのに…

もう少し頑張って誘惑した方が良かったんだろうか?

ちょっと恥ずかしいけど、手を握るとか…



しかしこのままだと少し不安になる

この先ずっと妹みたいな存在としてしか見られないのかな

…いや、弱気になっちゃ駄目だ

お母さんは押しに押していけって言ってた

お父さんは私が段々お母さんに似てきた…色んな意味でって言ってた

つまり私だって頑張れば私の両親みたいな素敵な関係になれるはず

だからもっと頑張らないと

琴葉「あっ」

せっかく生の兄さんの寝顔があるなら今のうちに写真を撮ってコレクションしないと

今までは毎年おば様に送っていただいていたけど、やっぱり自分で撮るに越したことはない

スマートフォンを構え、カメラを起動する

少し暗いけど、後で明度を補正すれば問題ない

フラッシュをオフにし、ピントを合わせて私はシャッターを切った

琴葉「…よしっ」

綺麗に撮れた

後はこれをパソコンに取り入れて補正をかければ良い

スマートフォンを置き、もう一度抱き着く

兄さんから許可は貰った

だから全力で今この瞬間を楽しもう

そして願わくば、この先も

兄さんの胸に顔を埋めながら、私は意識を手放した

P「ん…?」

窓から差す光の眩しさに、目が覚める

目が覚めると同時に、胸元に赤い何かがぷるぷると震えているのが見えた

そういえば昨日は琴葉と一緒に寝たんだっけ…

そこで改めて異変に気付く

…なんで琴葉は震えてるんだ?

P「琴葉、どうしたんだ?」

俺の声が聞こえたのか、琴葉が顔を上げる

琴葉「に、兄さん」

顔を上げた琴葉は涙目だった

P「ど、どうした!何があった!?」

琴葉「あ、足が…」

琴葉「足が凄く痛いです…」

P「あー、筋肉痛か」

琴葉「こ、これは想像以上に辛いです…それと」

P「ん?」

今度は顔を赤くして俯く琴葉

琴葉「そ、その、兄さんのが太股に当たっていて…」

P「俺の?太股?」

そこまで言ってから気付いた

自分が今、寝起きであることを

P「あ、いや違うんだ琴葉!これは生理現象でいやらしい気持ちがあるわけじゃ」

琴葉「そ、そうですよね、私の胸が小さいから…」

P「一体何を言ってるんだ琴葉」

P「足のどの辺りが痛い?」

琴葉「太股から下のほぼ全部です…」

P「ふむ…この辺りか?」

琴葉「はうっ!」

P「なるほど」

琴葉「に、兄さん」

P「よし琴葉、一旦風呂に入ってこい」

琴葉「お、お風呂ですか?」

P「ああ、湯を張ってじっくり浸かるんだ」

琴葉「わかりました」

生まれたての子鹿みたいに震えながら歩く琴葉を見ていると流石に心配になったので脱衣所に連れて行く

P「これを渡しておこう」

琴葉「これは?」

P「プロデューサーたるものいつ呼び出されても良いようにと使っている完全防水の携帯だ」

P「風呂に入ってると電話が掛かってきたりしても気付かないだろ?だから持ち込むようにしてるんだ」

琴葉「なるほど…」

P「浸かったのは良いものの立てなくなったりしたら困るだろうし、そうなったら呼んでくれ」

琴葉「はい」

琴葉「お風呂、いただきました」

P「お、大丈夫だったか?」

琴葉「はい、お湯に浸かっているうちに少し和らいだみたいで」

P「よし、なら次はベッドに座ってくれ」

琴葉「はい」

ベッドに座った琴葉の前に膝をつく

そして琴葉の足を持ち上げた

P「ちょっと我慢しろよ~」

琴葉「に、兄さん、何を?…!?」

足のツボを揉みほぐすと

琴葉「んやっ…!」

P「こら、暴れるな」

琴葉「だ、だって兄さんが…んんっ」

琴葉が抗議の声を上げる

P「ならこのまま痛いまま週末を過ごすのと少しはマシにするの、どっちが良い?」

琴葉「うっ…」

P「…続けるぞ」

返事が無かったのでマッサージを続行する

琴葉「んくっ」

琴葉「やっ…ん」

P「…」

琴葉が艶っぽい声をあげる

そのせいであまり集中出来ない

仕方ない、手早く済ませよう

琴葉「!?に、兄さん、激しい…!」

P「我慢しろ、すぐに終わる」

琴葉「やっ…!こ、こんな…変な声が出ちゃう…!」

P「効いてる証拠だ」

琴葉「んあっ…に、兄さん…私、もう…」

P「これで最後だ」

琴葉「~~~~~!」

マッサージを終えたものの

琴葉「はあ…はあ…」

琴葉はぐったりと疲れ果てていた

P「だ、大丈夫か?」

琴葉「も、もうお嫁に行けません…」

P「大袈裟だな」

琴葉「!」

急に琴葉が布団を被り、寝転がる

P「どうした?」

琴葉「な、何でもありません!もう少し寝ます!」

P「そ、そうか?じゃあお休み」

兄さんがリビングに向かった

…なんとかバレなかったみたい

兄さんのマッサージで身体全体が何だかむず痒い

それに触られたところが熱を持っているみたいに熱い

だからだろうか

汗を掻いたのか下着が…湿ったような感じがする

何だかお腹も熱を持ったかのように熱い

…これが落ち着いたら、もう一度お風呂に入ろう

一旦ここまで

何気なく寝顔撮ってる時点でアウトだよ琴葉

おつ 琴葉ママの薫陶著しい

琴葉「ふわ…ぁ…」

P「お?起きたか琴葉」

琴葉「兄さん…おはようございます」

P「もう昼だけどな」

P「痛みはどうだ?」

琴葉「そうですね…兄さんのえっちなマッサージのおかげか幾分かマシな感じがします」

P「待て今マッサージの前に変な単語を付けなかったか」

琴葉「気のせいです」

P「まあ何でも良いけど…出掛けられそうか?」

琴葉「少しくらいなら」

P「よし、じゃあ昼飯を食べに行こうか」

P「奢るぞ」

P「ここだ」

琴葉「佐竹飯店…中華料理屋さんですか?」

P「その通り、結構美味いんだここ」

扉を開けて店内に入る

「いらっしゃいませー!あ、プロデューサーさん!」

P「こんにちは美奈子、席は空いてるか?」

美奈子「はい大丈夫ですよ!…あれ、後ろの人は…」

P「ああ、紹介するよ」

美奈子「もしかして彼女さんですか?」

琴葉「そうです」

P「違います」

美奈子「あ、違うんですね…良かった」

琴葉「…」ピクッ

P「彼女は田中琴葉、765プロの新しいアイドルだ」

美奈子「新しいアイドル?」

P「そう言えば美奈子は顔合わせの時いなかったな」

P「琴葉、自己紹介を」

琴葉「田中琴葉です、よろしくお願いします」

美奈子「佐竹美奈子です!よろしくね、琴葉ちゃん」

琴葉「よろしくお願いします、佐竹さん」

P「…ん?」

美奈子「それじゃあ早速注文をお伺いしますね!」

P「俺はエビチリ定食を普通盛りで」

美奈子「今なら無料で大盛りに出来ますよ!なんなら特盛にも出来ますよ!」

P「普通盛りで」

美奈子「はーい…琴葉ちゃんはどうしますか?」

琴葉「私は天津飯を普通盛りで」

美奈子「了解しました!エビチリ定食と天津飯入りまーす!」

P「琴葉」

琴葉「はい」

P「なんか機嫌悪くないか?」

琴葉「気のせいです」

P「そうか…?なんか不機嫌に見えたけど」

琴葉「気のせいです」

P「それなら良いけど…」

火花散ってますな

琴葉「兄さんはさっきの佐竹さんと仲が良いんですね」

P「ん?まあ俺の担当アイドルだからな、後プロデューサー、だぞ」

琴葉「今はプライベートですから」

P「やれやれ」

何かピリピリしてるな…琴葉、中華料理嫌いだったっけ?

P「ん?」

携帯に歌織さんからメールが

琴葉「…」

件名:お弁当
プロデューサーさんお疲れ様です、歌織です
昨日はプロデューサーさんにお弁当をお作りする約束をしていましたが、今日はお休みだったんですね
今日お渡し出来ないのは残念ですけど、また週明けにお弁当を作って持っていきますね
ところで急で申し訳ないのですか、今日はお暇でしょうか?もし空いているのでしたらせっかくなのでこの後お食事など如何でしょうか?

ぐっ………!

なんという…なんというタイミングの悪さ…!

今昼飯を食べに来ていなければ喜んで行くのに…

…いや、待てよ

歌織さんは別に昼食とは言っていない

つまり夕食でも構わないんじゃ無いだろうか?

…聞いてみるか

Re:お弁当
お疲れ様です歌織さん
食事のお誘いありがとうございます
食事なのですが、夕食でも良いですか?

…良し

メールはすぐに返ってきた

内容は…夕食でも構わないらしい

…良し、なら夕方のスケジュールは必ず空けておこう

琴葉「兄さん、何だか嬉しそうですね」

P「まあな、ちょっと…いや、かなり良い事があったからな」

琴葉「良い事ですか?それは一体…」

P「後で話してやる、まずは…」

美奈子がお盆を持ってこちらに向かっているのが見える

P「昼飯を食べよう」

一旦ここまで

おつ

美奈子「お待たせしました!エビチリ定食と天津飯です!胡麻団子をサービスで付けておいたので良かったら食べてくださいね!」

P「ありがとう美奈子、いただきます」

琴葉「いただきます」

P「うん、やっぱり美味い」

琴葉「…!本当に、美味しい」

P「だろ?」

琴葉「はい、確かに兄さんが好きであろ味ですね…ちなみに、エビチリの方は?」

P「もちろん美味いぞ、食べてみるか?」

琴葉「是非」

琴葉の方にエビチリを差し出す

琴葉「…」

しかし何故か琴葉は動かない

P「琴葉?」

琴葉「あー大変な事が起こりました、兄さん」

P「何があったんだ」

琴葉「急にその…私の手が筋肉痛で動かなくなったと思うのでエビチリが食べられません、なので食べさせてください」

思いっきり目を逸らしながら言う琴葉

…まったく

こやつ的確に地雷踏んでるな

P「仕方ないな、ほら、あーん」

琴葉「あ、あーん…」

琴葉の口にエビチリを運んでやる

琴葉「んっ、ピリッと辛くてエビはぷりっとしてて美味しい…」

P「だろ?美味いんだよ美奈子の作る料理は」

琴葉「…私の料理と、どっちが美味しいですか?」

P「どっちがと言われても美味いの種類が違うからなぁ」

琴葉「どちらかを選ばないといけないなら、どっちですか?」

P「う、うーん…?」

美奈子の料理は店の味として完成された美味さがあるし琴葉の料理は毎日食べても飽きない素朴な美味しさがあるし…

どっちと言われても選べないぞ…?

琴葉「…」

しかし琴葉は俺の答えを待つかのようにジッと見つめてくる

…うーん、正直に言った方が良いかな

P「美奈子の料理は店の味として完成された美味さがあるし琴葉の料理は毎日食べても飽きない美味しさがある」

P「つまりどっちも選べない!…ってのは駄目か?」

琴葉「ま、毎日?兄さんは私の料理、毎日食べたいですか?」

P「いや別に毎日食べたいかどうかは別の話で…あ、いや、毎日食べたいです、はい」

琴葉「そうですか…毎日食べたくなる料理…ふふ、ふふふ♪」

何やら上機嫌になった琴葉

とりあえずはこれで良かった…のか?

琴葉「ご馳走様でした」

食べ終えた琴葉が手を合わせる

P「美味かっただろ?」

琴葉「はい、兄さんが気に入るのもわかります…しばらく通って味を盗まないと」ボソッ

ボソッと何かを呟く琴葉

しかし何を言っているのかは聞こえなかった

P「それじゃあ行くか」

琴葉「はい」

P「ご馳走様美奈子、今日も美味かった」

美奈子「ありがとうございます!○○円になります」

P「悪い、細かいの無いから万札で大丈夫か?」

美奈子「はい大丈夫ですよ」

P「ありがとな」

美奈子「はい、こちらお釣りになります!領収書はどうしますか?」

P「いや、今回は良いよ、仕事じゃないし」

美奈子「わかりました!それじゃあプロデューサーさん、琴葉ちゃん、またのご来店お待ちしてますね!」

琴葉「兄さん、ご馳走様でした」

P「気にするな、この後どうする?」

琴葉「そうですね…兄さんさえよければ家で一緒に映画でも見ませんか?」

P「映画か…夕方までなら問題ないぞ」

琴葉「何か予定が?」

P「ああ、実は夕飯を食べに行くんだよ」

琴葉「夕飯、ですか」

P「ああ」

琴葉「その…誰かと行くんですか?」

P「琴葉はまだ顔を合わせてないと思うけど、桜守歌織さんっていう綺麗な人がいるんだよ」

琴葉「…」ピクッ

P「その人と夕食をな」

琴葉「二人で、ですか?」

P「多分二人だと思うけど…どうかしたか?」

琴葉「いえ…」

何でも無い風に装いながらも明らかにテンションが下がっているのがわかる

もしかしたら痛みが戻ってきたのかも知れない

P「まあ夕食まで時間はあるし、とりあえず映画を借りてさっさと帰ろう」

琴葉「…はい」

琴葉と映画を借りて家に帰る

埃を被っていたPS4を起動し、借りてきた映画を再生した

内容は女の子が昔から好きだった幼なじみの男の子にアタックを続け、最後には結ばれるというオーソドックスな恋愛モノだ

しかし改めて見るとこういう恋愛モノの男はどうしてこうも鈍感なのだろうか

普通はこんな風に好意を寄せられていたら気付きそうなものだが

こんな風な鈍感にはなりたくないもんだ

映画の中では林の中で女の子が男の子に告白し、男の子はそれを受けていた

その後、告白を受け止めてもらえた女の子は泣き出し、慌てて慰める男の子

もし俺がこの先誰かとこういう関係になるとしたら、泣かせないようにしたいものだ

一旦ここまで

おつ どの口が言うねんP…

ははっ、どの口がいうか

琴葉「とても面白かったです」

P「そうだな」

映画を見終わった俺達は互いに感想を言い合う

琴葉「思わずヒロインの女の子に感情移入しちゃって…少し泣きそうになりました」

P「琴葉は感受性豊かだもんな」

琴葉「ヒロインの女の子と私に共通点があったことも一因かもしれません」

P「共通点か…幼なじみがいるところとかか?」

琴葉「はい」

P「ただやっぱり恋愛モノは男が鈍感なパターンが多いな」

琴葉「確かに、そういう傾向はあるかもしれません」

P「けどまあ現実にはあんな鈍感な男はそうそういないと思うけどな」

P「俺が友達だったらいい加減好意に気付けって言って殴ってるところだ」

琴葉「そうですか、では思いっきり鏡を殴ってきてください」

P「鏡?なんでだ?」

琴葉「はあ…」

P「???」

何やら琴葉がジト目で見てくるが理由が分からない

一体何だというんだ

P「っと、俺はそろそろ出掛けるよ」

琴葉「あ、はい」

P「遅くなるかは分からないけど、適当に帰るんだぞ」

琴葉「わかりました、では兄さん、お気を付けて」

P「ああ、行ってきます」

兄さんが行ったことを確認し、私も家を出る

…いた

歩いて行く兄さんの背中を捉え、気付かれないように適度な距離を保ちながら後を追い掛けていく

…兄さんが会う人…一体どんな人なのだろう

兄さんが綺麗な人だと言っていたからかなり綺麗であることは想像がつく

もしかしたら私では太刀打ち出来ないかもしれない

琴葉「…」

とにかく、相手を見極めないと…

私はそんなことを考えながら、兄さんを尾行した

P「約束の場所はここだな…ちょっと早く来すぎたかな」

歌織さんと約束した場所に着くも約束の時間より一時間も早く来てしまった

歌織さんからのお誘いだから浮かれてるのかも知れない

ベンチに腰掛けて待とう

そう思って移動しようとしたときだった

歌織「プロデューサーさん…?」

歌織さんが声をかけてきた

P「こんばんは歌織さん、お早いですね?まだ一時間前ですよ」

歌織「プロデューサーさんこそ、私より早く着いていますよ?」

P「…はは」

歌織「ふふ」

お互いが一時間も早く来てしまったのがおかしくて、思わず笑ってしまう

俺も楽しみにしていたけど、歌織さんも楽しみにしていてくれたんだろうな

P「それじゃあ行きましょうか」

歌織「はい」

琴葉「…」

綺麗な人だ、確かに綺麗な人

女の私でも思わず見とれてしまいそうな、そんな綺麗な女性だった

清楚で母性的で胸が大きい

…とてつもない強敵だ

琴葉「…どうしよう」

あんな強敵を相手に、私はどうすれば兄さんを振り向かせられるのだろうか?

わからない

…だけど私は、諦めない

ずっと胸に秘めていたこの想いは、誰にだって負けない

…桜守歌織さん、あなたには、負けませんから

心の中で一方的な宣戦布告をする

琴葉「…あっ」

気が付けば兄さんと歌織さんを見失ってしまい、肩を落としながら私は帰路に着いた

一旦ここまで

すっぱり諦めるなんて琴葉はいい娘だなぁ(真顔)

おつ 主に胸部に危機感を抱いてそう

P「ふう…」

ディナーを食べ、少しだけバーに寄って酒を飲んだ後、歌織さんを家まで送っていったら思ったより遅くなってしまった

まあ主要因は歌織さんの自宅前で話し込んでしまったからなのだが、凄く有意義な時間が過ごせたと思う

ただ帰り際に見せた歌織さんの寂しそうな顔だけが少し気になったが…まあ、週明けにでも聞いてみるとしよう

家の鍵を開け、部屋に入る

そのままベッドに倒れ込もうとしたのだが、ベッドには先客がいた

琴葉「んん…」

P「琴葉…」

出かけた時の服のまま、掛け布団の上で眠る琴葉

いくら暖かくなってきたとはいえこんな寝方をしていたら風邪を引くだろう

P「仕方ないな…」

眠る琴葉を起こさないよう、ゆっくりと抱き上げる

…思っていた以上に軽い

P「全く、成長しない奴だな」

中学の頃から何時もそうだった

しょっちゅう俺のベッドで寝落ちして、こうやって運んでたな

昔と変わらない琴葉の寝顔を見る

…いや、昔とは少し違うか

身体は成長したからか、少し色っぽいような…

P「…」

…いやいや、気のせいだ、気のせい

凄くさらさらした髪に触れたから勝手に色気を感じただけ

頭を振って邪念を払う

とりあえずいつまでも抱いたままではいられないので一度琴葉をソファに運び、ベッドを整えてから琴葉に布団をかける

P「…」

何度も見ている寝顔に再びドキドキしてしまい、俺は慌ててソファに寝転がった

これはきっとアルコールのせいだ

そうに違いない

念仏のようにアルコールのせいだと言い聞かせながら、俺は眠りについた

一旦ここまで

待ってた

蘭子「混沌電波第170幕!(ちゃおラジ第170回)」
蘭子「混沌電波第170幕!(ちゃおラジ第170回)」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527503737/)

おつ とてもよいです

結局日曜日は特にどこも行かずに琴葉とだらだらと過ごした

そして週が明けた月曜日

琴葉「おはようございます兄さん、すぐにお弁当を用意しますね」

P「その事なんだが琴葉」

琴葉「?」

P「今日は急遽昼を外で済ますことが決まってな、だから悪いけど今日は作らなくて大丈夫だ」

琴葉「そうですか…わかりました」

少し…いや、目に見えるくらいしょぼくれる琴葉

本当は外で食べる用事なんか無い

だが琴葉の弁当を断るには一番角が立たない断り方だ

琴葉の弁当は美味いので悪いとは思う

でも仕方ない、何せ今日は歌織さんが弁当を作ってきてくれるのだから

朝の支度を済ませ、一足先に家を出ることにした

P「それじゃあ琴葉、行って来る」

琴葉「はい、いってらっしゃい、兄さん」

琴葉に見送られ、俺は家を出た

…なんだろう、いってらっしゃいって言われるのは何か良いな





出勤後、いつものように仕事をしていると昼休みのベルが鳴る

P「もう昼休みか…時間が経つのは早いな」

仕事を中断し、伸びをしていると

歌織「プロデューサーさん」

P「ああ歌織さん、おはようございます」

歌織さんがやってきた

歌織「ちょうどお昼ですよね?約束通りお弁当を作ってきました」

P「ありがとうございます歌織さん!」

歌織さんが弁当箱を差し出してくる

小さな弁当箱だが、それもまた良い物だ

歌織「お口に合うと良いんですが…」

P「大丈夫ですよ、ちゃんと味わって食べますね」

歌織「はい!…ふふ」

歌織さんは鼻歌を歌いながら去って行った

…よし、今日は天気も良いし外のベンチで食べるか

ベンチに腰掛け、弁当箱を開ける

鮮やかな色のから揚げや野菜が入っていて、見た目はとても華やかだ

…なぜから揚げが赤い色をしていのかは…まあ、良いか

とりあえず食べてみよう

P「いただきます」

から揚げをつまみ、口に入れた

酸っぱい辛い甘い苦い痛い

俺の意識は、ここで途絶えた

一旦ここまで

おつ
やっぱり兄さ…プロデューサーのお弁当を毎日作るのは琴葉さんじゃないとダメですね

P「はっ!」

目を覚ますと、視界に入るのは青い空

どうやら何故か俺は地面に寝そべっていたようだ

体を起こすとベンチの上に置かれた空の弁当が目に入る

弁当を食べ終わって寝落ちしたのだろうか?

そんなに疲れてはいなかったはずなんだが…

とりあえず服の汚れを払って立ち上がる

P「っと…」

立ち上がった瞬間妙な立ちくらみがした

…やっぱり疲れてるのか?

寝落ちしたからか歌織さんの作ってくれた弁当の味をあまり覚えていないのが残念で仕方ない

妙に刺激的な味がしたような記憶があるが…まあ、気のせいだろう

時計を確認すると昼休みが後数分で終わりそうだった

早く戻らないとな

気持ち早足になりながら、俺は劇場に戻るのだった

莉緒「ねえねえプロデューサーくん、今日暇?」

夕方に差し掛かるころ、莉緒ねえ…莉緒が声をかけてきた

P「忙しい」

莉緒「ノータイムの返事は流石にちょっと悲しいわ…今日暇なら飲みに行かない?」

P「莉緒、正気か?今日は月曜日、週初めだぞ」

莉緒「だってプロデューサーくん土曜日にメール送ったのに返事くれなかったじゃない」

P「メール…?」

そんなもん来てたっけと思いながらスマホを確認すると

P「あっ」

1件だけあった未読メール…確かに莉緒からのメールだった

P「ごめん気付いてなかった」

莉緒「やっぱり!プロデューサーくんいっつも私のメール無視するもの」

P「別に無視してるわけじゃ無いんだよ」

何故かメールの存在に気付かないだけだ

莉緒「まあ良いけど…で、今日は暇?」

P「暇といえば暇だが飲みに行くのはちょっとな」

莉緒「別にお酒じゃなくても良いじゃない?ご飯とか、一緒に食べましょ」

P「食事か、まあそれくらいなら」

たまには莉緒と2人で食事をするのも悪くないかもしれない

莉緒と約束を取り付け、仕事に戻ろうとしたタイミングで

琴葉「おはようございます」

琴葉が劇場にやってきた

P「おはよう琴葉、早いな」

琴葉「はい、急いできましたから…あれ、プロデューサー、その人は…」

琴葉が俺の隣にいた莉緒に気付く

P「ああ琴葉、実は」

琴葉「もしかして…莉緒姉さん、ですか?」

莉緒「え?もしかして、琴葉ちゃん?」

琴葉「莉緒姉さん!」

琴葉が莉緒に飛び付く

莉緒「も、もう琴葉ちゃん、いきなり」

莉緒は困惑しながらも琴葉を抱き止めた

琴葉「莉緒姉さんお久しぶりです!会いたかったです!」

莉緒「久しぶり、ふふっ琴葉ちゃんは相変わらず甘えん坊ね」

琴葉の頭を撫でる莉緒

髪の色は違えど本当の姉妹のように育ってきた2人の仲は変わらないようだ

琴葉「兄さんは知ってたんですか?莉緒姉さんがアイドルだって」

P「もちろんだ、あとプロデューサーな」

莉緒「プロデューサーくん、なんで琴葉ちゃんがアイドルになったって隠してたのよ~」

P「いきなり鉢合わせた方が面白いかなって」

莉緒「確かにびっくりしたけど…あっ、そうだ、琴葉ちゃん今日は暇?」

琴葉「今日ですか?えっと…」

P「一応今日の予定はレッスンだけだ、その後は琴葉次第だな」

琴葉「はい、空いてます」

莉緒「それなら今日プロデューサーくんとご飯に行くんだけど、琴葉ちゃんもどう?」

琴葉「良いんですか?」

莉緒「もちろんよ、ねえプロデューサーくん?」

P「ああ、構わないぞ」

琴葉「やった!ありがとうございます兄さん、莉緒姉さん!」

一旦ここまで

歌織のバストに 舌打ちが出る
控え室で野球は やってはいかん
兄さん結婚しましょう
兄さん 兄さん 兄さん
765 765 765プロダクション

P「はは、その辺りはやっぱりまだ子どもだな、あとプロデューサーな」

莉緒「それじゃあどこか予約とる?プロデューサーくん」

P「そうだな…莉緒、その辺りは任せて良いか?」

莉緒「良いわよ、お姉さんに任せなさい!…こ、琴葉ちゃん暑いからそろそろ離れて?」

そう言って店を検索する莉緒

こっちは任せておくとしよう

P「それじゃあ琴葉はレッスンだ、終わったら事務室に来てくれ」

琴葉「はい、わかりました、今日のレッスンは何ですか?」

P「今日のレッスンは…桜守歌織さんと歌のレッスンだな」

琴葉「…!」

一瞬、琴葉の顔が強張る

P「ど、どうした琴葉?」

琴葉「い、いえ、大丈夫です」

大丈夫、とは言うもののやはり気になる

P「琴葉って歌とか苦手だったか?」

琴葉「あまり経験が無いだけで、苦手では無いです」

P「だよな?まあたとえ苦手でも大丈夫だ、歌織さんは教え方が上手いしすぐに上達するぞ」

琴葉「…」

琴葉「…それでは、行ってきます」

P「おう、レッスン頑張ってな」

琴葉「はい」

どこか覚悟を決めたような雰囲気を纏う琴葉が出て行くのを見送った後、俺は仕事に戻った



レッスン着に着替え、私はレッスンルームの前で深呼吸する

…この中に、私にとって最大のライバルがいる

全身全霊でやらないと、足元にも及ばないかもしれない

気合いを入れ直し、私はレッスンルームに入った

そして

聞こえてきたとても素敵な歌声に

私は心が挫けそうになった

歌織「~~♪」

すごく、すごく素敵な歌を歌う人だ

声に透明感があって、良く通って…

私はこの人に勝てるのだろうか?胸も大きいし

歌織「…あら?」

歌織さんが、入室してきた私に気付く

歌織「えっと…田中琴葉ちゃん?」

琴葉「…はい、田中琴葉です」

歌織「初めまして、桜守歌織です、今日のレッスンはよろしくね」

琴葉「は、はい」

歌織「琴葉ちゃんの事はプロデューサーさんから聞いてるわ」

琴葉「兄さ…プロデューサーから?」

なんだろう、凄く気になる

歌織「凄く良い子だって」

琴葉「兄さん…そんな、良い子だなんて…ふふ」

凄く照れる

琴葉「わ、私も、プロデューサーから、歌織さんの事を凄く綺麗で素敵な人だと聞いていました」

歌織「まあ、プロデューサーさんったら♪うふふ♪」

顔を赤くしてすごく嬉しそうな歌織さん

歌織「ほ、他には?他には何か…」

琴葉「えっと…歌が上手で教え方も上手だと」

歌織「ふふ♪」

目の前の歌織さんはすごくご機嫌だ

歌織「実は私も、琴葉ちゃんがすごく優秀で、頼りになる子だって聞いてるわ」

歌織「あと料理が上手で美味しかったって」

琴葉「も、もう、兄さん褒めすぎ…♪」

それからしばらくお互いに褒めあい、レッスンが始まったのは1時間後のことだった

歌織「一旦休憩しましょうか」

琴葉「はい」

歌織さんの教え方が上手なおかげで夢中になってレッスンしていたからか、結構な時間が経っていた

歌織「琴葉ちゃん、腹式呼吸が上手だったわね、何か経験が?」

琴葉「経験、というわけでは無いですが中学高校と演劇部に所属していました」

歌織「演劇、確かに舞台に立つなら声量を出すために腹式呼吸は練習するわね」

琴葉「はい、特に私にとっては観に来てくれる人のために常に全力でしたから」

歌織「観に来てくれる人…それってきっとプロデューサーさんのことよね」

琴葉「はい」

歌織「…琴葉ちゃんは、昔のプロデューサーさんを知っているのよね?」

琴葉「はい、幼なじみですから」

歌織「良いな…私は、今のプロデューサーさんしか知らないから…もっとあの人の事を知りたいのに」

琴葉「…」

歌織さんの真剣な想いが、私にも伝わってくる

だからだろうか

琴葉「あの…歌織さんさえ良ければ、昔のプロデューサー…いえ、兄さんのこと、お話しましょうか?」

こんな塩を送るような真似をしたのは

一旦ここまで

おつ

更新頻度上がってていいぞ~

昔の兄さんの話を、歌織さんは興味深そうに聞いていた

時には笑い、時には目を輝かせ…それは、昔の私が兄さんの話を聞いている時と同じだった



琴葉「…それで、その時に兄さんが褒めてくれて、とても嬉しかったんです」

歌織「そうだったの…プロデューサーさん、今も昔も変わらずに優しい人だったのね」

琴葉「はい、優しくて、頼りになって…ちょっと、いや、かなり鈍感ですけど」

歌織「あ、そうね…琴葉ちゃんは昔からプロデューサーさんの傍に居たからずっとそういう苦労をしてきたのよね」

琴葉「はい…」

好きになってから10数年…ずっとあの鈍感さには苦労させられた

…今でもその苦労は変わらないけど!

琴葉「あ、せっかくですし私の兄さん寝顔コレクションを見ますか?」

歌織「寝顔コレクション?ぷ、プロデューサーさんの?」

琴葉「はい」

歌織「…ちょっと待っててね」

そう言って歌織さんは立ち上がると

カチャリ

レッスンルームの鍵をかけた

歌織「はい、お願いします」

P「へっくしょん!」

美咲「プロデューサーさん、風邪引いちゃいましたか?」

P「いや、そんなはずは…噂でもされてるかな」

美咲「今日は暖かくして寝てくださいね~えへへ~」

P「ありがとう青羽さん」

美咲「いえいえ!それじゃあ今日もあと少し、頑張りましょう!」

歌織「こ、これが小学生の頃のプロデューサーさん…可愛い」

琴葉「ですよね?私はこの頃幼稚園だったんですが、こんな可愛い弟が欲しかった…」

歌織「あ、中学生になると顔付きが凛々しくなって…でも、やっぱり今の寝顔とそんなに変わらないなぁ…」

琴葉「え”っ」

歌織「?琴葉ちゃん、どうしたの?」

琴葉「歌織さん、今、兄さんの寝顔って…」

歌織「うん…プロデューサーさん、たまに事務室で疲れて寝ちゃうことがあるから見る機会もあって…」

琴葉「あ、そ、そうなんですね…」

その後も兄さんの話で盛り上がる

…よし

琴葉「歌織さん」

歌織「?」

琴葉「その…これからも、兄さんの話をしませんか?」

歌織「プロデューサーさんの?」

琴葉「はい、今日は私の知る兄さんを話しました、でもこっちに来てからの兄さんのこと、私は何も知らないんです、だから…」

歌織「琴葉ちゃん」

琴葉「は、はい」

歌織「もっと私に、プロデューサーさんのこと、教えてね」

琴葉「!は、はい!」

歌織さんが差し出した手を固く握る

確信した

歌織さんはライバルではあっても敵じゃない

同好の士だと

一旦ここまで

おつ 同好の士沢山いそう

楽しそう

その後レッスンを再開し、キリが良いところまでやった後、レッスンは終了となった

歌織「琴葉ちゃん、お疲れ様」

琴葉「お疲れ様です、歌織さん」

歌織「今日は凄く有意義なレッスンが出来たと思うの、きっと琴葉ちゃんのおかげね」

琴葉「そんな、私の方こそ」

歌織「それでね、琴葉ちゃん、その…一つお願いがあって…」

琴葉「お願い?」

歌織「その、プロデューサーさんの寝顔コレクションのコピーを貰えないかなって…」

琴葉「兄さん寝顔コレクションのコピーを…ですか」

私は顎に手を当てて少し考える

あまりライバルに塩を送りすぎるのもどうかと思うのだけど…

琴葉「わかりました、差し上げます」

歌織「ほんと!?ありがとう琴葉ちゃん!」

せっかくの同志で語りたいことも沢山ある、だから私は、歌織さんに寝顔コレクションのデータを渡すことにした

歌織「ありがとう琴葉ちゃん、大切にするわね」

琴葉「はい」

歌織さんと連絡先を交換し、私はレッスンルームを後にする

そして私服に着替え、事務室へと向かった

琴葉「ただいま戻りました」

P「お、お疲れ様琴葉、歌織さんとのレッスンはどうだった?」

琴葉「はい、とても有意義な時間でした」

本当に有意義だった

P「それなら良かった」

あっ

莉緒「ただいま、あら、琴葉ちゃんもうレッスン終わってたのね」

さっきまでいなかった莉緒姉さんが事務室に戻ってくる

P「おかえり莉緒、よし、それじゃあ行くとするか」

琴葉「はい」

兄さんがPCを落として立ち上がる

私と莉緒姉さんは、兄さんの後ろに着いていった

P「莉緒、どの店を予約したんだ?たるき亭か?」

莉緒「前に今度二人で飲みに行こうって言ってた焼き鳥屋があったでしょ?あの店よ」

P「ああ、あそこか」

琴葉「…」

兄さんと莉緒姉さんが私の知らない話で盛り上がってる

…ずるい

私もお酒が飲める年齢なら…

兄さんを酔い潰して好き放題するのに

P「…?」ゾクッ

莉緒「プロデューサーくん、どうしたの?」

P「い、いや、何でも無い」

目的の焼き鳥屋さんに到着し、席に案内される

ひとまず飲み物を注文し、来るのを待つことにした

P「琴葉、今日は好きなものを食べて良いからな?莉緒の奢りだし」

莉緒「えっ」

琴葉「じゃあ…私はまずはこのしじみ汁を」

莉緒「ほんと琴葉ちゃんって昔から良くしじみ汁飲むわね」

琴葉「好きなんだもん…」

美味しいし健康に良いし

タブレットで食べたいものの注文を済ませた頃、ちょうど飲み物がやってきた

P「よし、飲み物はちゃんとあるな?それじゃあ琴葉」

琴葉「え?」

莉緒「琴葉ちゃん、765プロにようこそ!乾杯!」

二人で私が765プロに入ったことを歓迎してくれる

琴葉「あっ…ありがとう兄さん、莉緒姉さん!」

それがとても嬉しかった

近くて遠い存在だった二人が、今はとても近くに感じられる気がした

そして私は今、チキンかつ丼を食べていた

P「このぼんじり美味いな」

莉緒「あら、ねぎまもいけるわよ、食べてみる?」

P「じゃあ貰おうかな」

莉緒「はい、あーん」

P「あーん」

琴葉「!!!!!!」

莉緒姉さんの差し出したねぎま串に兄さんが齧りつく

P「ん、ほんとに美味いなこれ」

莉緒「でしょ?ねえねえ、代わりにプロデューサーくんのぼんじりもちょうだい?」

P「良いぞ、ほら」

莉緒「あーん」

琴葉「!!!!!!」

琴葉「に、兄さん!!」

P「お、おう、どうした琴葉」

琴葉「私のチキンかつ丼も美味しいですよ!」

P「そ、そうか、良かったじゃないか」

琴葉「あ、味、味は気になりませんか!?」

P「まあ多少は気になるけど」

琴葉「でしたらその…一口どうぞ」

私はチキンかつを箸で掴み、兄さんに差し出す

琴葉「あ、あーん…」

P「あー…ん」

P「…うん、チキンかつも美味いな」

琴葉「それなら良かったです」

私も兄さんにあーんが出来て役得だ

その後も兄さんに食べさせて貰ったり、色々とあった

琴葉「ご馳走さまでした」

P「美味かったな、ここ」

莉緒「当たりだったわね」

P「今度は歌織さんやこのみさん辺りも誘って来るとするか」

莉緒「そうね、その時は飲みましょ?」

P「ああ」

兄さんはさっと伝票を持つとさっさとレジに向かって代金を支払っていた

莉緒「あら、別に奢ってあげても良かったのに」

P「女性に払わせる気は無い、それが俺のみみっちい男のプライドってやつだ」

莉緒「あらあら格好つけちゃって、でもありがと、ご馳走さま」

P「よし、それじゃあ帰るか」

琴葉「はい」

莉緒「そう言えば琴葉ちゃんはプロデューサーくんのマンションの隣の部屋だったわね」

琴葉「莉緒姉さん、知ってたんですか?」

莉緒「プロデューサーくんがお弁当を持ってきた日にちょっとね」

琴葉「中々良い部屋で、住み心地が良いですよ」

莉緒「良いわね、私もそろそろ引っ越そうかしら…ねえねえプロデューサーくん」

P「ん?」

莉緒「プロデューサーくんは私が引っ越すなら、どんな部屋が良いと思う?」

一旦ここまで

盗作者◆Jzh9fG75HA(ちゃおラジの作者)を語るスレ
245:名無しNIPPER[sage]
2018/07/05(木) 00:14:39.95 ID:3xRqK4+HO
>>240
とりあえず君が頭悪いのは理解出来た
カス(orクズ)をkasとかやってる時点で一生懸命覚えたんだなーと思えた
でもね?カスもクズもkasとは書かないんだよ可哀想だね
250:名無しNIPPER[sage]
2018/07/05(木) 00:27:36.24 ID:l9FJPpqzO
>>248
そんな人いたの?俺ここ2、3年くらいからの住民だから

おつ これはまたフラグ立ったのか

むしろ莉緒も元からフラグ立ってた説

P「莉緒の部屋ねぇ…まあ、このみさんや風花、歌織さん辺りは間違いなく飲みに来るだろうし、高確率で泊まるだろうから今のワンルームよりは広めの方が良いだろうな」

莉緒「あら、プロデューサー君も自由に泊まりに来て良いのよ?」

P「馬鹿言うな」

莉緒「つれないわね」

P「ひとり暮らしの女のところに泊まりに行けるかっての」

莉緒「あら、私は別にいつでも歓迎よ?」

P「あのなぁ…」

琴葉「に、兄さん!私もいつでも歓迎ですから!」

P「落ち着け琴葉」

相変わらず無防備な莉緒の無邪気な誘いを断る

…どうもまだ自分の魅力に気付いていないようだ

学生時代、俺に何度も相談しにきた友人達の苦労が忍ばれる

P「とにかく、部屋選びは人に聞くよりは自分が住みやすい環境を自分で見つける方が良いぞ」

P「他人にとって住みやすい環境でも自分が住みやすいとは限らないからな」

莉緒「まーそうよね~せっかく引っ越しても住みにくかったら意味ないし」

莉緒「あ、何ならプロデューサーくんや琴葉ちゃんと同じマンションにでも行こうかしら?」

P「は?」

琴葉「良いと思います!それなら朝や夜、三人で兄さんの部屋でご飯が食べられますし」

P「おい待てい」

何やら勝手に話が進んでいる…というか

P「琴葉…あのな、俺の部屋は溜まり場じゃ」

琴葉「でも、せっかく莉緒姉さんと再会出来ましたし、また昔みたいに三人で一緒に過ごしたくて…」

P「…」

琴葉の言葉に頭を掻く

琴葉の気持ちも分からなくは無いんだが…

P「…とりあえず、住むにせよ住まないにせよ1度確認してみてからだな」

P「それから莉緒が決めてくれ」

頭ごなしに否定するのも良くない、ひとまずは様子を見るとしよう

その後駅まで莉緒を贈った後、帰路に着く

結局莉緒は今週末、マンションの下見に来るらしい

案内を頼まれたので週末を空けておかないと…

琴葉「莉緒姉さん、引っ越して来るかな…」

P「さあな」

琴葉は莉緒に懐いているので同じマンションに住めるかもというのはやはり嬉しいのだろう

P「…ま、本当に引っ越してくるなら歓迎会でもやるか」

琴葉「その時は任せてください、腕によりをかけて美味しい料理を作ります」

P「楽しみにしてるぞ」

琴葉「はい!」

一旦ここまで

P「っと、そうだ琴葉、明後日は空いてるか?」

琴葉「明後日ですか?はい、大丈夫です」

P「なら良かった、ちょっと付き合って欲しくてさ」

琴葉「付き合うって…ええ!?そ、そんな、兄さん、いきなり凄く大胆です…」

P「うお、こ、琴葉?」

急に顔を真っ赤にした琴葉に思わず怯む

琴葉「そ、その、兄さん、私ウエディングドレスが良いなって思うんです、でも白無垢も着てみたくてえっとその」

P「ウエディング?白無垢?」

もしかしてそういう仕事がしてみたいのだろうか

P「…そうだな、なら近いうちにウエディングドレス、着てみるか?」

琴葉「!!!!!はい!是非!」

凄く嬉しそうな顔で喜ぶ琴葉

まあウエディングドレスは女の子の憧れって言うしな

琴葉もやっぱり興味があるんだろう

琴葉「兄さん、子供は何人欲しいですか?」

P「一体何を言ってるんだ琴葉」

変な方へ暴走を始めた琴葉を何とか現実に戻しながら、俺達は家へ帰ったのだった

さすがプロデューサー
何を言われてもまったく動じないぜ(

翌日の朝

P「ん…ふあぁ…」

目覚まし時計を止め、のっそりと起き上がる

…今日は琴葉が起こしに来なかったな

そんなことを思いながらリビングに行くと

琴葉「…」

琴葉が台所に立っていた

P「あれ、琴葉来てたのか」

起こしに来ないから来ていないのかと思ったのだが

琴葉「…」

しかし琴葉からの返事は無い

P「…?琴葉、どうしたんだ?」

琴葉が無反応な事が気になり、傍に寄る

そして琴葉の状況を把握した

琴葉は、昨日歌織さんが持ってきてくれた弁当箱を手に、完全に固まっていた

琴葉「………兄さん」

ようやく反応らしい反応を示した琴葉が口を開く

P「どうした?」

琴葉「このお弁当箱…一体誰の物ですか?」

おっ修羅場か?

正直に言うのは何だか恥ずかしかったので誤魔化すことにしたのだが…

P「え?あ、えっとそれは俺の…」

琴葉「嘘ですね、だって兄さんは昨日の時点ではこんな可愛らしいお弁当箱を持っていませんでしたから」

P「よ、よく知ってるな…」

琴葉「兄さんの事ですから…それで?誰の物ですか?」

P「実は歌織さんの弁当箱なんだよ」

琴葉「歌織さんの…?」

P「以前弁当を作ってきてくれるって約束をしてて、それで作ってくれたんだ」

琴葉「そうですか、歌織さんの…ふーん」

ふーん

P「こ、琴葉?」

目の前の琴葉からピリピリとした威圧感を感じる

…なんだか良くわからんが、どうにも怒っているらしい

怒らせるようなことをした覚えはないんだが…

仕方ない

P「こ、琴葉、今週の日曜日にでも出掛けないか?」

琴葉「日曜日…2人だけでですか?」

P「ああ、買い物でもしたりなんならアイスくらいなら奢るぞ」

琴葉「…わかりました、行きます」

ふーん アンタが私の兄さん?

琴葉から怒りのオーラ力が消えていくのを感じる

…やっぱりこの手に限る

昔から琴葉は俺が買い物などに連れて行ってやるとどんなに怒っていても機嫌が良くなる子供っぽい一面がある

琴葉は割としっかりしているが、その辺りはやっぱりまだまだ子供だ

琴葉「では、朝食とお弁当を用意しますから少し待っていてくださいね」

P「ああ」

すっかりいつも通りに戻った琴葉に食事の準備を任せ、俺は出勤の準備を始めるのだった

出勤すると、歌織さんが劇場に来ていた

歌織「おはようございます、プロデューサーさん」

P「おはようございます歌織さん、今日の仕事は夕方からなのに随分早いですね?」

歌織「そ、そうですか?」

P「ええ、仕事までまだ6時間以上ありますよ?」

歌織「それならえっと…プロデューサーさんのお手伝いをします!」

P「手伝い、ですか?」

歌織「は、はい、もしかしたら私の意見がプロデューサーさんの役に立つかも…なんて」

P「なるほど、それは確かに…では、お願いしても良いですか?」

歌織「はい!任せてください!」

P「まあ、手伝ってもらうとは言ったものの」

実際にはあまり手伝って貰うことはほとんど無い

P「すいません歌織さん、暇だったら他のことをしていても大丈夫ですよ」

歌織「いえいえ、プロデューサーさんのお仕事に私、少し興味がありますから」

歌織「むしろ私の方がプロデューサーさんのお邪魔になっていないかが心配で…」

P「そんなことは無いですよ!むしろ歌織さんが居てくれるだけでやる気が出るというものです」

歌織「まあ♪プロデューサーさんったら…うふふ♪」

P「あ、そうだ歌織さん、昨日は弁当ありがとうございました、美味しかったですよ」

歌織「お口に合ったなら、良かったです」

P「歌織さんと結婚する人はきっと幸せですね、こんなに素晴らしい人なんだから」

歌織「プロデューサーさん…私、きっと幸せにしますね」

P「?そうですね」

このみ「はいはい歌織ちゃん、プロデューサー、甘い空気出してるところ悪いんだけど手が止まってるわよ」

P「おっと」

向かいの机で事務作業をしていたこのみさんが微妙にやさぐれながら突っ込みを入れてくる

このみ「別にいちゃつくのは構わないけど、独り身相手に見せ付けるの止めて欲しいわね」

そう言いながら素早くキーボードを叩くこのみさん

流石元は事務員志望だ

ちなみに本当の事務員の青羽さんはというと…

美咲「ふんふん…よし!」

別のデスクで衣装をデザインし、型紙を作り、サンプルを縫っていた

歌織「ぷ、プロデューサーさん!そ、その、私自主練習してきますね!」

恥ずかしい事でもあったのか、顔を赤くした歌織さんはそそくさと部屋から出て行った

P「歌織さん、顔が赤かったけど風邪ですかね?」

このみ「っはぁ~~~~」

このみさんがこれ見よがしに盛大に溜め息を吐いた

一体何だと言うんだ

このみ「ま、何でも良いけど…」

このみさんの態度に疑問を感じながらも、俺は作業に戻るのだった

一旦ここまで

莉緒「おはよ、プロデューサーくん」

P「莉緒か、おはよう」

歌織さんと入れ替わるように、莉緒が事務室に入って来た

莉緒「ねえねえプロデューサーくん、昨日の話なんだけど」

P「ああわかってるよ、ちゃんと部屋選びに付き合ってやるから」

莉緒「さっすがプロデューサーくんね、プロデューサーくんも来るんだからちゃんと良い部屋を選ばないとね」

P「やれやれ」

莉緒と昨日した部屋選びのはなしをしていると

カシャンと、何かを落としたような音が聞こえた

音のした方を振り返ると

歌織「」

歌織さんがまるでこの世の終わりのような顔をして立っていた

P「歌織さん、スマホ落としましたよ?」

床の上にあるスマホを見ながらそう伝えるも

歌織「」

歌織さんは微動だにしない

P「歌織さん?」

歌織「…プ、プロデューサーさん…」

ようやく再起動した歌織さんが口を開く

歌織「さっきのお話…本当…なんですか?」

P「さっきの話?」

歌織「莉緒ちゃんとその…お部屋を見に行くって」

P「ああその件ですか」

歌織「…もしかして、莉緒ちゃんとプロデューサーさんは…同棲を?」

P「えっ」

莉緒「えっ」

P「ちちち違いますよ歌織さん!?俺が莉緒と同棲なんかするわけ無いじゃないですか!」

莉緒「ちょっと、流石にそんな言い方されると傷付くんだけど?」

P「ああごめん…ってそれどころじゃないんだ、歌織さん、一体何故そんな考えに…?」

歌織「だって、二人でお部屋を選んで、その上プロデューサーさんも来るって…」

P「あ、あー、そういう事ですか…それなら…うーん、そうだな」

P「それなら歌織さんも、一緒に部屋を見に行きませんか?」

歌織「えっ!?」

歌織「それはその…プロデューサーさんと一緒に過ごすお部屋を…ですか?」

P「そうですね、俺もお邪魔することになるかも知れません」

歌織「そ、それならご一緒します、はい」

顔を赤くしてもじもじしている歌織さん

とても可愛らしい

P「ところで歌織さん、急に戻ってきたみたいですけど何かあったんですか」

歌織「あ、その…バッグを置き忘れていたので取りに来たんです」

P「そうだったんですね」

歌織「それでは、私は自主練習にもどりますね」

P「はい、頑張ってください歌織さん」

歌織「…プロデューサーさん」

P「はい」

歌織「お部屋を見に行くの、楽しみにしていますね♪」

P「よし、仕事頑張るかぁ!」

歌織さんと楽しく話せてテンションが上がったので気持ち良く仕事が出来そうだ




莉緒「ねえこのみ姉さん」

このみ「なぁに莉緒ちゃん」

莉緒「歌織ちゃんとプロデューサーくん、一瞬で二人だけの世界に入り込んだみたいなんだけど」

このみ「何時もの事よ」

莉緒「良いな~私ももっとプロデューサーくんに構って欲しいのに」

このみ「これ以上甘い空気は勘弁して…」

それから数時間後

上機嫌な歌織さんを現場に送り届けた後、劇場に戻る

事務室に向かう途中

海美「あっ、プロデューサー!」

とても元気な声が響く

P「ん?海美か…」

そしてこっちに走ってくる海美の後ろから、琴葉とエレナも走ってきた

P「琴葉とエレナも一緒か?そう言えばダンスレッスンだったな」

海美「うん!今から琴葉にダンスを教えるよ!」

P「海美とエレナが一緒なら安心だな、頼むぞ」

そう言って海美の頭を撫でる

海美「えっへへ~…うん、頑張る!」

琴葉「…………………………………」

エレナ「こ、コトハ…?」

P「琴葉も、レッスン頑張れよ、応援してるからな」

琴葉「!は、はい、必ず期待に応えますから」

P「ああ、期待してる」

琴葉「はい!」

P「…エレナ」

俺はエレナに近寄ると耳打ちをする

エレナ「?」

P「…あの二人はたまーに暴走したりブレーキが利かなくなるから…しっかり手綱を握っておいてくれるか?」

エレナ「…うーん、流石にヤクソクは出来ないヨ?」

P「分かってる、でもなるべく頼む」

エレナ「うん、わかったヨ~」

P「それじゃあ頼んだ」

一旦ここまで

読んでるヨー

たまーに…たまに?

このシリーズすき

琴葉「さあ海美ちゃん、エレナ、レッスン頑張ろう!」

海美「うん!頑張ろ!」

エレナ「コトハすごいやる気だネ」

仲良くレッスンに向かう三人を見送り、俺は事務室へ向かった





P「茜、準備はどうだ?」

茜「お?プロちゃんもしかして進捗知りたい系?」

P「そりゃあ歓迎会は明日だからな」

茜「教えてあげても良いけど~けど高いで、金二百両!」

P「よし、原作通り足をへし折ってやろう」

茜「冗談!冗談だよプロちゃん!」

恵美「ん~大体90%くらいかな~」

P「恵美、来てたのか」

恵美「ま~ね~せっかく琴葉の歓迎会なんだし準備くらいはね」

P「悪いな」

恵美「良いって良いって!新しい仲間の為にアタシが好きでやってるんだからさ」

P「…そっか、ありがとな」

恵美「にゃはは、さあ茜、もうちょい頑張ろ?」

茜「あいあいさー!」

気合いを入れて琴葉の歓迎会の準備をしてくれる恵美と茜

俺はそれに嬉しくなって短い時間ではあるが、歓迎会の準備を手伝った

そして夜

P「先に帰ってても良かったのに」

琴葉「私は遅くなっても気にしませんから、それに課題も終わらせましたし」

P「俺は気にするんだけどな…しかし課題を終わらせるなんて偉いな、もう家庭教師とかしなくても大丈夫そうだ」

琴葉「…!しまった…!」

P「琴葉?」

琴葉「な、何でも無いです……成績を落としたらまた兄さんに家庭教師を…ぶつぶつ」

P「?」

マンションに到着し、家の鍵を開けたところで

P「じゃあ琴葉、また明日」

琴葉「はい兄さん、おやすみなさい」

P「ん、おやすみ」

琴葉と別れて部屋に戻る

P「さて、と」

エレナと海美に伝えられた琴葉のレッスン状況に改めて目を通す

どうやらかなり頑張っているようで、エレナも海美も喜んでいた

ダンスがある程度形になれば次は表現力のレッスンもさせてみよう

琴葉のアイドルとしての高い潜在能力に喜びを感じながら

俺は目を閉じた

一旦ここまで

おつおつ
少し悪い子琴葉はいいものだ

P「よし、こんなもんかな」

劇場内の飾り付けの確認していき、OKを出す

P「よく頑張ってくれたな茜、ありがとう」

茜「ふっふーん!何ならナデナデしても良いよプロちゃん!」

P「おういくらでもナデナデしてやるさ」

茜「ナデナデキター!あ、プロちゃんプロちゃん、ナデナデついでなんだけど」

P「ん、なんだ?」

茜「実はこの前プロちゃんのスーツにコーヒーこぼしたの茜ちゃんだったのだ!でも今回の飾り付けの功績でチャあああああああああ!!!」

P「それとこれは別だ」

茜にシャイニングフィンガーした

P「さて、後は琴葉を待つだけだな」

時刻は15時過ぎ、土日は姦しいうちのシアターだが、9割が学生なので平日のこの時間帯は仕事が無い限りは比較的静かだ

…もっとも、茜や杏奈のように仕事が無いはずなのに何故か平日の真っ昼間から劇場にいる場合もあるが

まあせっかくだし今日のために仕事も片付けてあるのでゆっくりするとしよう

P「ふわ…ぁ…」

気が抜けたからか、思わず欠伸が出る

P「ちょっと横になるか…」

控室のソファに横になり、目を閉じる

睡魔はすぐにやって来た

莉緒「プロデューサーくん、飲み物は…って、あら?」

P「…」

控室に入って来た莉緒は、ソファで眠るPを見て言葉を切る

莉緒「寝ちゃったのね…疲れてるのかしら」

歌織「莉緒ちゃん?プロデューサーさんは…」

莉緒「寝ちゃってるみたい、起こさないようにしましょ?」

歌織「飲み物のお話、どうしよう?」

莉緒「うーん…ま、今回は琴葉ちゃんの誕生日だしノンアルコールで行きましょ」

歌織「そうね、環ちゃんや育ちゃんが間違えて飲むかも知れないし」

莉緒「そういうこと、じゃあ私はちょっと風花ちゃんとこのみ姉さんに買い物を頼んでくるわね」

歌織「いってらっしゃい、莉緒ちゃん」

莉緒が部屋から出て行ったのを確認した歌織は、改めてソファで眠るPに向き直る

歌織「…」

内心凄くドキドキしながらゆっくりゆっくり気配と音を消してソファに忍び寄る歌織

そしてPの顔が見える場所…ソファの目の前まで来た歌織は徐にスマホを取り出すとカメラアプリを起動した

そして琴葉に教えて貰ったシャッター音を消すテクニックを使って一枚、二枚とPの寝顔を写真にしていく

歌織「…よしっ」

撮影した画像を確認した歌織はこれを琴葉に共有するかどうか悩みつつももう一度Pの寝顔を見る

歌織「…」

目の前には無防備に眠る意中の相手

そして部屋には他に誰もいない

歌織「…」

少しくらいならイタズラしてもバレないのでは無いか?と歌織は自分の気にしている子供っぽさが出て来たことを自覚しつつも、その衝動に抗えない

しかし歌織は育ちが良いのでこういう時のイタズラというものが中々思い付かない

そしてようやく思い付いたのが

歌織「わぁ…プロデューサーさんのここ…硬い…」

歌織「男の人のってこんなに違うのね…」

歌織「あっ、ピクッとして…」

頬をつんつんすることであった

P「む…う…」

外部からの刺激にむずがるP

歌織「…」

一旦指を離し様子を覗う歌織

眉間に皺を寄せていたPだったが、また穏やかな表情で寝息を立て始める

それを確認した歌織は、もう一度イタズラをしようとして

歌織「…」

もう一歩先のイタズラに進みたいと、そう考えた

そして視線は、先程から自分の名前を呼んでくれる唇へと注がれている

歌織は心臓が激しく音を立てているのを自覚しながら、少しずつPの顔に自分の顔を近付けていき

あと少しで触れる距離、という所で

このみ「歌織ちゃん、一旦その辺にしときなさい」

突如声をかけられ大きく肩を跳ねさせた

後ろを振り向くとこのみが呆れたような表情で立っていた

歌織「こ、このみさん、いつからそこに…!?」

Pを起こさないように小さな声でこのみに問いかける歌織

このみ「歌織ちゃんがプロデューサーの頬から手を離した辺りかしらね」

このみ「普通に入って来たのに歌織ちゃん全然気付かないんだもの、流石に驚いちゃったわ」

歌織「う、うう…」

このみが入って来たことに気付かないくらい夢中になっていたことに少し恥ずかしくなる歌織

しかし目の前で意中の相手がこんなにも隙だらけに寝ているのだから仕方ない

このみ「ま、歌織ちゃんとプロデューサーの付き合い方にどうこう言う気は無いけれど」

このみ「どうせならプロデューサーが起きてるときにしてあげた方が喜ぶと思うわよ?」

歌織「そ、そんな…でも私達はまだ…」

このみ「あーはいはいそうだったわね、でも寝込みを襲うのは流石に見過ごせないから気を付けた方が良いわよ」

歌織「はい…」

このみ「まったく、早くくっつけば良いのに」

小声でそう言った後、棚の方へ向かうこのみ

歌織は二人きりの時間を名残惜しみながらも立ち上がろうとして

歌織「…これだけは」

自分の唇に人差し指を当て、そのまま指をPの唇へと宛がう

歌織「…今は、これで満足しておきますね…プロデューサーさん」

自分の行為に頬を染めながらそう呟いた歌織はこのみの手伝いへと向かうのだった

一旦ここまで
最近微妙に影の薄い琴葉さん

頑張れ琴葉

寝苦しい

腹に謎の圧迫感とじんわりとした温かさを覚えた俺は微かに目を開けた

すると腹の上には茶色い小さな何かが乗っていて、それは細長い何かを定期的に腹の上に叩きつけていた

P「…」

俺は腹の上に乗っていた小さい何かの頭を撫でてやるとごろごろと喉を鳴らし始めたのでゆっくり抱き寄せてから体を起こす

P「おはようこぶん」

こぶん「にゃあ」

環が劇場で飼っている子猫、こぶんを抱きながら胡座をかき、膝の上にこぶんを移動させる

するとこぶんは膝の上で丸まって目を閉じた

P「時間は…うん、大体30分くらいか」

時計を確認すると大体一時間程度寝ていたことになる

それでも眠気や疲れは取れるのだからありがたい

時刻は16時過ぎ、そろそろ中学生組や高校生組が来る頃だろう

琴葉の歓迎会を成功させるために恵美に琴葉が最後に劇場に来るように頼んでるし、今誰がいるかを確認しておかないとな

こぶんをソファに移し、立ちあがる

コロコロローラーで付着した猫の毛を取り、俺はメインシアターへと向かうのだった

P「よし、50人全員いるな」

莉緒「そうね、琴葉ちゃんびっくりするかしら?」

茜「ふっふっふー、茜ちゃん主導の歓迎会だよ?びっくりしないわけがないよ!」

P「あ、お前が仕掛けてた爆竹だのその他諸々はぜーんぶ解除して捨ててあるからな」

茜「!?」

このみ「はい、三人分のサングラス」

P「ありがとうございますこのみさん…茜、これ本当にやるのか?」

茜「もっちろんだよプロちゃん!我が765プロは優秀な人材は逃さない!」

P「そうか…いや、まあなんでも良いけど」

茜「それよりもプロちゃん、そろそろ琴葉ちゃんが待ちくたびれてるんじゃないかな!?呼んであげよう!」

P「そうだな、よし、みんな席について準備してくれ」

客席の方で人の動く気配がする

P「恵美、準備OKだ」

恵美『あいよー』

恵美「それじゃ琴葉、ついてきてよ」

琴葉「う、うん」

劇場に来るなり文字通り控室で待機させられていた私は、恵美の後を着いていく

少し歩いて、辿り着いた場所は私もいずれは立つかも知れないステージ、メインシアターだった

恵美「着いたよ」

扉を開けて中に入るも、真っ暗でよく見えない

恵美「足下気を付けてね」

琴葉「うん」

安全のため恵美と手を繋ぎ、また少し歩くと

ステージの真ん中に一つ、スポットライト

そしてそれに照らされている台座の上に乗せられているサングラスが目に入った

琴葉「何あれ」

琴葉「恵美、あれは…って、恵美?」

いつの間にか恵美がいなくなっていて、真っ暗な中一人で放り出されて、一気に心細さを感じる

琴葉「兄さん…」

助けて欲しいあの人の名前を呟くも、誰かに聞こえるわけもなく

琴葉「…」

覚悟を決めて、光の当たる場所へと歩いていく

台座のところまで来た私は台座に置かれていたメモ用紙を手に取り、目を通す

『サングラスを着けるべし』

私はそのメモに従い、サングラスを装着した

その瞬間

シアターの中に光が満ち、一気に明るくなった

琴葉「!?」

「Congratulation」

「こんぐらちゅれーしょん!」

「こんぐら…ももこ、これなんて読むんだっけ?」

客席には、兄さんを筆頭に大人数がサングラスをして立っており、頻りにCongratulationと言いながら拍手をしている

…心なしか、鼻と顎が微妙に尖って見える

琴葉「えっ…何これ」

茜「琴葉ちゃん」

琴葉「あっ、えっと…茜ちゃん?」

茜「ようこそ、帝愛へ」

琴葉「て、帝愛?」

P「待てコラ茜」

琴葉「あっ、兄さ…プロデューサー、これは…?」

P「多段に悪ふざけを含んじゃあいるが…ようはアレだ」

兄さんがスクリーンの上部を指差す

そこには

琴葉「あっ…」

田中琴葉ちゃん、ようこそ765プロへ

と書かれた横断幕が飾ってあった

一旦ここまで

おかえり

琴葉「あ、あの、皆さん、私のためにありがとうございます!」

私は皆に向かって頭を下げた

私のために歓迎会をしてくれて、嬉しさで胸がいっぱいになる

琴葉「改めまして、田中琴葉と言います。精一杯頑張りますのでこれからよろしくお願いします!」

皆に挨拶をして

私は今日初めて、正式に765プロの一員になった気がした

乾杯をして、皆が思い思いに琴葉の歓迎会を楽しんでいる

当の琴葉はと言うと

百合子「琴葉さん!私七尾百合子って言います!15歳です!」

琴葉「よろしくね、百合子ちゃん」

百合子「はい!早速なんですけど琴葉さんは好きな本とかありますか!?なんなら私のおすすめの本がちょうど30冊くらいあって」

百合子に絡まれ…もとい、懐かれていた

百合子曰く自分は人見知りらしいが人見知りしてるところを見たことが無い

莉緒「プロデューサーくん」

P「ん?莉緒か」

莉緒「琴葉ちゃん、馴染めそうで良かったわね」

P「ああ、まあその辺りは最初から心配はしてなかったよ」

莉緒「あら、どうして?」

P「ここが765プロだから、かな」

俺の答えを聞いた莉緒は少しきょとんとした後

莉緒「…うふふ、そうね」

そう言って微笑んだ

莉緒「それじゃあ私達の可愛い妹分の成功を願って」

莉緒がグラスを差し出してきたので俺もそれに合わせる

P「乾杯」

莉緒「乾杯」

キンッと、綺麗な音をぶつけたグラスが鳴らすのだった

一旦ここまで

マダカナ

P「琴葉、楽しんでるか?」

琴葉「あ、にいさ…プロデューサー」

歩、美也と話し終えたのを見計らい、琴葉に声をかける

琴葉「はい、楽しいです、歩や美也とも仲良くなれましたし」

P「それなら良かったよ」

琴葉「ここは…暖かくて良い場所ですね」

琴葉「まだ765プロに来てからそんなに経ってませんけど、私ここが好きになりました」

そう言って辺りを見渡す琴葉

琴葉「だから私、これからも頑張りますね」

アラキタ

50人って一人足りないよね

期待

そう言って微笑んだ琴葉の顔は、小さな頃から俺の後を必死に着いてきた女の子の顔では無く

自分の足で、意志で、新たな一歩踏み出した、それを感じられるとても良い表情をしていた

P「…そうだな、頑張ろうな琴葉、俺も目一杯頑張るからさ」

琴葉「はい、兄さ…プロデューサーが手伝ってくれるなら100人力です!」

胸の前で拳を握り、頑張るポーズをとる琴葉

やる気十分

その後も少し話していると

恵美「こーとはっ!」

恵美が琴葉に声をかけてきた

琴葉「恵美」

恵美「にゃはは、楽しんでる?」

琴葉「おかげさまで」

恵美「それなら良かったよ、もうすぐ出し物があるから一緒に見ようよ!ほら、プロデューサーも」

待ってた

兄さんで今まで何回致したのか気になる

P「お、おい引っ張るなよ」

腕を組んで引っ張る恵美の感触に思わずドキッとする

恵美「えー?良いじゃん減るもんじゃないしさー、ねえ琴葉?」

琴葉「なるほど…確かに減るものでもないし良い考えかも…」

P「琴葉?」

顎に手を当てて何かを呟いてる琴葉に何故か冷や汗が流れる

やがて顔を上げた琴葉はさっと俺の隣、恵美が引っ張っている腕とは別方向に立つと

琴葉「…えいっ!」

P「よっと」

俺の腕に抱き着こうとした琴葉は、腕を回避させた俺に対応できずに空振った

琴葉「…えっ!?」

そしてそのまま勢いを殺しきれず

P「ふぐっ!?」

俺の脇腹に頭突きが入った

琴葉「あ、だ、大丈夫ですか、にいさ…プロデューサー?」

P「あ、ああ…大丈夫だ、慣れてる」

俺の身体に抱き着く形になっていた琴葉が顔を上げる

そして俺の顔を見た瞬間

ぼんっと音がしそうなくらい琴葉の顔が一瞬で真っ赤になった

琴葉「あ、あの兄さんこれはその何というか役得ですね!?」

P「落ち着け」

いつものように変なこと口走り始めた琴葉

どうやらかなりテンパっているらしい

恵美「…兄さん?」

その後も何故か離れようとしない琴葉をどうしようか悩んでいると

歌織「琴葉ちゃん、向こうに面白い物があるの、一緒に見ましょう?」

と歌織さんが満面の笑みを浮かべてやってきた

…しかし何故だろう、素敵な笑顔なのに肌がピリピリするぞ

琴葉「か、歌織さん、もう少しだけ」

歌織「さ、行きましょう」

琴葉「あ、ああ、兄さん」

俺の方に手を伸ばしながら歌織さんに引き摺られていく琴葉

俺はそんな珍しい光景にただただ呆気にとられていた

恵美「ねープロデューサー、さっき琴葉が兄さんって言ってたけどさ、あれ何だったの?」

P「あー、いや、そのだな」

聞かれてたのか

P「…恵美」

他に聞こえないように、恵美に顔を寄せる

恵美「なに…ってプ、プロデューサー、顔近いって!」

P「あんまり他の人には聞かれたくないからな…誰にも言わないって約束してくれるか?」

恵美「す、する、するから!」

恵美の顔が赤くなっている

風邪か?

…とりあえず話を進めよう

P「ありがとう…実は俺と琴葉は幼なじみなんだ」

恵美「幼なじみ?」

P「ああ」

俺は恵美に琴葉との関係を説明する

恵美「へー、そうだったんだ」

P「とりあえずこのことは秘密で頼む」

恵美「おっけー任せといてよ」

恵美なら信頼できるし、これなら大丈夫そうだ

P「…ところで恵美」

恵美「なに?」

P「いつまで腕を組んでるんだ?」

恵美「…あー、まあ良いじゃんたまには」

そう言ってより強く抱き締めてくる恵美

…腕に胸が当たってドキドキする

…まあ、減るもんじゃないし良いかな

一旦ここまで

期待

あなたも私もポッキー!

その後茜の身体を張った出し物やらが行われ、アシスタントとして壇上に立つ何も知らされていない琴葉を眺めたり、みんなが歌を披露したりして盛り上がったまま歓迎会は終わった

そして今、俺は琴葉と…ついでに何故か着いてきている莉緒と一緒に帰路についていた

P「莉緒は何で着いてきてるんだ?」

莉緒「琴葉ちゃんにお泊まりに誘われたのよ、明日はオフだし、マンションの下見にもなるしちょうど良いかなって思ったの」

P「なるほどね」

確かに行き来する手間も省けるし、なにより居住感を味わえるのは部屋を決めるには持って来いだな

琴葉「昔みたいに今日は三人で寝ましょうね、兄さん、莉緒姉さん」

莉緒「良いわよ琴葉ちゃん」

P「おい待て」

莉緒「まあまあたまには良いじゃない、久しぶりなんだし」

P「いや良くは無いだろ、年頃の男女が同じ部屋で寝るなんて」

莉緒「あら~?もしかしてプロデューサーくん、私達の事意識してるの~?」

莉緒にすっと顔を近付けられ、不意打ちに思わず顔が赤くなる

莉緒「うふふ、顔が赤いぞプロデューサーくん」

P「う、うるさいぞ莉緒」

莉緒「大丈夫よ、ちゃんとお姉さんがリードしてあげるから」

P「それ、本当に意味分かってて使ってるんだよな…?」

莉緒「もちろんよ、ちゃんと色んな話を用意してあるから話しにくい話題でも話しやすくしてあげるから」

P「ああ、うん」

そんなことだろうと思った

無駄に顔を赤くして恥ずかしい

P「まあ、一緒に寝るのはともかく話くらいは付き合うぞ」

莉緒「そう来なくっちゃ、今夜は寝かさないわよ?」

P「へいへい」

これはまた、長い夜になりそうだ

琴葉「琴葉です、兄さんが寝ました」

部屋に戻って私と莉緒姉さんが兄さんの部屋に布団を敷き、楽しく話をしていたのはたった15分だけだった

最初は相槌を打ったりしていた兄さんだったけど、すぐに寝息を立て始めて今ではすっかり眠っている

莉緒「あらら、相変わらずPくんは寝付きが良いわね」

琴葉「この辺りは兄さん昔から変わりませんね」

いつも夜更かしせずにさっさと寝てしまう

琴葉「あ、そうだ今のうちに」

私は兄さんの寝顔を写真に納める

莉緒姉さんはやれやれとジェスチャーしながら首を振っていた

莉緒「Pくん寝ちゃったけど、私達も寝ちゃう?」

琴葉「そうですね…どうせお話しするなら兄さんが起きているときにしましょう」

琴葉「明日の朝とか」

莉緒「良いわね、それじゃあ電気消すわよ?」

琴葉「はい」

電気が消えたのを確認し、私は布団では無く兄さんのいるベッドに潜り込んだ

莉緒「琴葉ちゃん、相変わらず甘えん坊ね」

琴葉「だって、兄さんの匂いに包まれると落ち着くんだもん…」

莉緒「じゃあ私も、一緒に寝ちゃおっかな」

琴葉「あ、じゃあ私兄さんの胸の方に行くから、莉緒姉さんは背中をどうぞ」

莉緒「ありがと」

莉緒姉さんと一緒に兄さんを挟んで眠りにつく

まだ私が中学くらいの頃に三人で一緒に寝たのを思い出して、懐かしい気持ちになった

あの時よりも私も兄さんも莉緒姉さんも大きくなったけど…

やっぱり、この気持ちは変わらないなぁ

莉緒姉さんの寝息も聞こえてくる

私は兄さんの背中に手を伸ばし、抱きしめるようにしながら、目を閉じた

P「うう…う~ん…」

ちなみに、兄さんはこの日押し潰される悪夢を見たらしい

P「…なんだこの状況」

朝、目が覚めると胸元には琴葉がいた

そして背中に感じるもう1人の気配はおそらく莉緒だろう

おそらく夜中にトイレにでも行ってそのまま寝ぼけて潜り込んだんだろう

しかし重要なのは潜り込まれたことより

P「くっ…」

二人に抱き枕にされていることだ

琴葉からは良い匂いがするし、莉緒は背中に中々の物が当たっている

寝起きで尚且つ健全な男にはかなり辛い状況だ

しかも強く抱き着かれているから地味に苦しい

とにかく、起こさないと…

P「り、莉緒、琴葉、そろそろ起きてくれ、苦しい」

身体を揺すってどっちかを起こそうと試みる

莉緒「…んー…Pくん…?」

P「莉緒、起きたか」

莉緒から反応があった

琴葉の方は幸せそうなだらしない顔をしており、口の端から涎が垂れている

後でからかってやろう

P「莉緒、一旦離れ」

莉緒「Pくん、んふふ♪」

P「ぐえっ!?」

起きたと思った莉緒は寝惚けているのか俺の首に腕を回して強く絞めてきた

死ぬ

P「り、りお…!?ころすきか…!」

莉緒「んー♪」

しかし莉緒は力を緩めるどころか頭を背中に擦りつけてきて…駄目だ、意識が

あの後永眠しそうだった俺はすぐに目が覚めた琴葉により救出された

P「全く、死ぬかと思ったわ」

莉緒「だーかーらー、さっきから謝ってるじゃない」

P「まあ良いけど」

時計を見ると午前10時、少し遅めの起床になったな

歌織さんとは確か13時に約束しているから、それまでに色々やっておくか

P「とりあえず朝飯にしよう」

一旦ここまで
>>178
そしてこのシーンを描いてみた
https://i.imgur.com/g8AFaic.jpg

莉緒「うーん久しぶりの琴葉ちゃんのご飯、美味しいわ」

琴葉「ありがとうございます莉緒姉さん」

P「ああ、本当に美味いよ」

琴葉「えへへ…花嫁修業頑張りましたから」

莉緒「まさしく愛ね」

琴葉「はい!愛情たっぷりです」

P「美味い」

三人で和やかに朝食をとる

なんか昔に戻ったみたいだ

待ってた

莉緒「あ、Pくんアレ取ってくれる?」

P「ん、ああ」

莉緒からの頼みで醤油を手渡す

莉緒「ありがと」

琴葉「…」

P「っと、莉緒、それ取ってくれ」

莉緒「はい塩コショウ」

P「サンキュー」

琴葉「…」

琴葉「に、兄さん!」

P「どうした?」

琴葉「あ、アレ取ってください!」

P「アレってどれだ?」

琴葉「………」

P「?」

P「ごちそうさま、あー、美味かった」

琴葉「ふふ、お粗末さまです」

莉緒「はい食後のコーヒー、Pくんは砂糖とミルクは少し、琴葉ちゃんは一つずつで良かったわよね?」

P「ありがとう莉緒」

琴葉「ありがとうございます莉緒姉さん」

莉緒からコーヒーを受け取り、口を付ける

P「お、程よい温さ」

莉緒「Pくん猫舌だし、そっちの分だけ温めにしといたのよ」

P「流石」

…うん、美味い

琴葉「…莉緒姉さんも兄さんも、どうして何も言わなくてもお互いの事が分かるんですか?」

P「お互いの事が分かるなんてそんな大袈裟なもんじゃない、ただ長く一緒にいたから何となく分かるだけだよ」

莉緒「そうそう、お互いの好みは経験として知ってるから出来るだけよ」

琴葉「…良いなぁ」

莉緒「あら、でも琴葉ちゃんだって何も言わなくても私達の味の好みを知ってて、それで料理を作るじゃない」

琴葉「え?」

莉緒「私がPくんの言いたいことが何となく分かるのと琴葉ちゃんが私達の味の好みが分かるのは同じ事」

莉緒「相手の事が分かってるから出来るんじゃない?」

琴葉「…」

P「莉緒もたまにはまともな事言うんだな」

莉緒「失礼ね~」

P「琴葉、大体莉緒の言った通りだと俺も思う」

P「意識してないかもしれないけど、琴葉の細かな気配りには本当に感謝してるんだ」

P「だからありがとうな、琴葉」

琴葉「そ、そんな、私はただ兄さんが喜んでくれるのが嬉しかったから…でも」

P「ん?」

琴葉「私も、兄さんや莉緒姉さんの事が分かってるって思えたから嬉しいです」

琴葉「ありがとうございます兄さん、莉緒姉さん」

P「さて、とりあえず俺は部屋を掃除したいんだが」

莉緒「掃除?特に散らかってるようには見えないけど」

P「散らかってなくても埃とかあるかもしれないだろ」

琴葉「兄さん、そんなに綺麗好きでは無かったですよね?何かあるんですか?」

P「ああ、実は歌織さんが家に来るんだ」

琴葉「は?」

莉緒「ああ…そういえば…」

P「だから部屋はなるべく綺麗にしておかないと」

P「歌織さんを出迎える以上しっかり掃除しないとな」

P「だらしないところなんて見せられないし」

琴葉「…ちょっとだらしないところも兄さんの魅力なのに」

P「ん?琴葉、何か言った?」

琴葉「いえ…」

莉緒「歌織ちゃんとの約束は13時からだったわよね?」

P「ああ、だから後30分全力で掃除して12時には迎えに行く準備を済ませるつもりだ」

琴葉「兄さん、随分熱心ですね」

P「そうか?」

莉緒「Pくんは歌織ちゃんのこと大好きだもの」

P「だ、大好きとかそんなんじゃないから!余裕を持って行動するのは大人として当然だから!」

琴葉「それで一時間前に…?歌織さんのためならそこまでするんだ…」

P「ごほん…まあ、大好きかと聞かれたら大好きではあるよ」

琴葉「!」

P「でも俺は765プロのみんなが大好きなんだ、だから歌織さんだからって理由ではないよ」

琴葉「!!に、兄さん、もう一度大好きって言ってください!琴葉が大好きだって!」

P「待て待て待て名指しはしてないぞ」

その後もきゃいきゃい騒がしくしながら掃除は進んだ

莉緒「元が綺麗だったからすぐ終わったわね」

P「琴葉が来るようになってから琴葉がまめに掃除してくれてたからな」

琴葉「でも兄さんはあまり物を散らかさないので掃除は楽です」

P「まあ…二日に一回は掃除されてるから散らかしようがないだけなんだけどな」

P「それでも掃除してくれるのはすごく助かってるよ、ありがとうな琴葉」

つい昔の感覚で琴葉の頭に手を置いて、撫でる

琴葉「」

ボンッと音がするくらいの勢いで、琴葉の顔が赤くなった

琴葉「あ、あの、その、こちらこそご馳走様です!」

P「一体何を言っているんだ琴葉」

P「さて、ちょっと行ってくるわ」

莉緒「いってらっしゃい」

琴葉「兄さんが頭を撫でてくれた昔みたいに優しく撫でてくれたあの大っきな手で撫でてくれたああ兄さん兄さん」

莉緒と最近頻繁にトリップするようになった琴葉に見送られ、俺は歌織さんを迎えるために出掛けるのだった



莉緒「さて、私達も飲み物でも買いに行きましょ琴葉ちゃん?」

琴葉「兄さん兄さ…わかりました、莉緒姉さん」

約束した場所に向かうと

P「!」

既に歌織さんが来ていた

早めに掃除が終わり、早めに出たのでまだ約束まで一時間以上あるのに

心なしかそわそわしているように見える、急がないと

P「歌織さん!」

歌織さんに声をかける

すると歌織さんは俺の方を向き

歌織「プロデューサーさん!」

嬉しそうな、とても素敵な笑顔を見せてくれた

P「歌織さん、随分早いですね」

歌織「楽しみでジッとしていられなくなってしまって…そういうプロデューサーさんも、早めに来てくださったんですね」

P「はい、実は俺も楽しみにしていましたから」

歌織「まあ…!うふふ♪」

楽しそうに笑う歌織さん

P「あ、先日の食事の時にも思ったんですけど今はプライベートなので、名前で呼んでくれませんか?」

P「一応パパラッチ対策をしておかないと…どこで誰が聞いているか分かりませんし」

歌織「お、お名前をですか?プロデューサーさんの?」

P「ええ、あ、でも嫌ならプロデューサーのままでも」

歌織「嫌だなんてそんな!そ、それじゃあえ、えっと、その…今日はよろしくお願いしますね?…Pさん」

顔を赤らめながら俺の名前を呼んでくれた歌織さん

すごく心臓がドキドキする

P「そ、それじゃあ行きましょうか」

歌織「は、はい」

今更ながらすごく緊張してきたぞ

少し歩いて、俺達はマンションに到着した

歌織「ここがプロデューサーさんがお住まいのマンションなんですね」

P「はい」

歌織「どんなお部屋なのか、楽しみです」

鍵を開け、扉を開く

P「ただいまー、あ、歌織さんどうぞ」

歌織「た、ただいまじゃなくて、お邪魔します」

歌織さんと一緒に家に入る

琴葉「お帰りなさい兄さん…と、いらっしゃいませ歌織さん」

莉緒「歌織ちゃん、いらっしゃい、適当に寛いでね」

P「おい」

歌織「Pさん、莉緒ちゃん、琴葉ちゃん、今日はお世話になりますね」

琴葉「名前呼び…!?い、いつの間に…!」

莉緒「何も無い部屋でごめんね歌織ちゃん」

P「人の部屋に失礼な奴だな」

歌織「そんなことないわよ莉緒ちゃん…ここが、Pさんの家、部屋なんですね…」

歌織さんが興味深そうに俺の部屋を見渡す

…なんかむずむずするな

歌織「結構広いんですね」

P「名目上は単身用のマンションですけど、夫婦で暮らせるようにもなっているみたいでして」

P「いわゆる1LDKにしては結構広めだと思いますよ」

莉緒「確かリビングは12畳あったわね」

P「ああ」

歌織「この広さなら、ピアノも問題なく置けそう」

P「ピアノですか、いいですね」

琴葉「…ではリビングはこの辺にして…歌織さん、こっちが兄さんの寝室です」

歌織「Pさんの寝室…!」

琴葉に連れられ、歌織さんは気持ち早足になって俺の寝室へと入っていった

…気のせいか、とても興奮していたように見えたけど

莉緒「あらあら、歌織ちゃん楽しそうね」

歌織「寝室もかなり広いですね」

P「ええ、10畳はありますから」

莉緒「昨日私も泊ったんだけど広くてびっくりしたのよ」

歌織「えっ」

琴葉「まあ広い相応の家賃ではありますけどね」

P「まあ家賃なんて実質無いようなもんだけどな」

莉緒「どういうこと?」

P「765プロって家賃補助は出てるんだよ、全額」

莉緒「ああ、そういえば…残業代は出ないのに不思議ね」

P「ああ」

琴葉「えっ」

一旦ここまで

おつつ 待ってたよ
水着回まだかな(違)


待ってた

歌織「ここがPさんの寝室…スンスン」

突然鼻を鳴らし始める歌織さん

P「ど、どうしました歌織さん?もしかして何か臭いますか?」

歌織「あっ、い、いえ、そういうわけでは…ただ」

P「ただ?」

歌織「この部屋にいると、なんだかPさんに包まれているような気がして、落ち着くなって思って…」

P「え?」

歌織「わ、忘れてください!」

琴葉「なるほど、つまり兄さんを私の部屋に招待すれば兄さんは私に包まれているのと同義ということになりそれはすなわちそういった行為のメタファーにもなりえるということででも私はメタファーよりもシミリのほうがいいです兄さんつまりギブミーメタファーよりもギブミーシミリということです兄さん」

P「いったい何を言ってるんだ」

莉緒「昔から唐突に早口スイッチ入るわよね琴葉ちゃん」

顔を赤くした歌織さんと突然早口で語りだす琴葉

いったいなんだというんだ

その後しばらく部屋を見て、一息つく

歌織「いいお部屋でした」

P「気に入っていただけたようで何よりです」

莉緒「Pくん、この後はこの周辺を案内してあげたほうがいいんじゃない?」

P「そうだな、いくら部屋の環境が良くても周辺環境が合わなかったら辛いしな」

4人で家を出て、周囲を探索する

P「駅からはそんなに遠くないので、通勤は不便しませんよ」

歌織「それは嬉しいです」

琴葉「駅前と…あと、あそこの角を曲がるとコンビニがあります」

莉緒「コンビニが近いのは良いわね、宅飲みするときとか不便しなさそう」

歌織「あ、パン屋さんや洋菓子店もあるんですね」

P「ええ、入ったことはないですけど」

莉緒「あ、ねえねえPくんあれあれ!」

P「どれだ?」

莉緒「あれよ、ほらほらこっちこっち」

P「こら引っ付くなって」

莉緒に腕を抱かれ、その感触にドキッとする

…莉緒のやつ、プロフィールのバストサイズ絶対逆サバ読んでるだろ

明らかに自己申告より大きいぞ

歌織「…ねえ琴葉ちゃん、莉緒ちゃんって実はPさんと付き合ってるとか…?」

琴葉「あー…やっぱり歌織さんにもそう見えますか?」

琴葉「実は、昔からそう言われてるんですけど、本人たちは気づいてなくて」

琴葉「私も時折二人の間に入れないような空気になるんです」

歌織「莉緒ちゃんも、Pさんのことが好きなのかな…」

琴葉「どうなんでしょう、ただ間違いなく言えるのは自覚のある無しに関係なく二人がいちゃいちゃしてるという事実だけですね」

一旦ここまで

ある程度近所を探索した後、近くのカフェに入る

P「歌織さん、どうでしたか?」

歌織「はい、とても住みやすそうで良い場所だと思います」

P「気に入っていただけたようで何よりです」

莉緒「私も気に入ったわよ」

P「それなら良かったよ」

待ってた

莉緒「それで、結局歌織ちゃんはどうするの?」

歌織「私は…うん、一人暮らし始めてみます」

莉緒「私も、気に入ったしもう決めちゃうわ」

P「了解、歌織さん正式な日取りとか決まったら連絡をください」

P「書類とか必要なものを用意しますので」

歌織「はい」

P「莉緒もな」

莉緒「わかってるわよ」

琴葉「歌織さんと莉緒姉さんが引っ越してくる日はパーティーにしましょう」

P「良いな」

莉緒「あっ、そのパーティーの料理琴葉ちゃんが作るんでしょ?」

琴葉「え?はい」

莉緒「だったら一つお願いがあるのよ、まあ琴葉ちゃんにじゃなくてPくんにだけど」

P「俺に?なんだ?」

莉緒「何か一品、Pくんが作ってくれない?」

P「ダニィ!?」

米を炊いたりインスタントやら簡単にベーコンやらを焼くくらいしか出来ない俺に

一品を作れと?

P「やめとけ莉緒、俺が作っても美味いものは」

莉緒「歌織ちゃんも食べてみたいわよね?」

歌織「はい、私もPさんの手料理に興味があります」

P「うぐっ…」

歌織さんから妙に期待のこもった視線を向けられる

つい何も考えずにやりますと言ってしまいそうになるが…

琴葉「大丈夫です兄さん」

P「琴葉?」

琴葉「私が兄さんにちゃんと料理に仕方を教えますから」

琴葉「私に任せてください」


待ってた

まだか

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