城ヶ崎美嘉「お姉ちゃんを目指して」 (101) 【現行スレ】



彼女たちと触れ合う度に、胸の奥から湧き上がるこの感情……それがなんなのか、ずっと考えていた。

考えに考え、考え続けた結果……アタシはようやく、一つの答えに辿り着く。



美嘉「事務所の年下の子たち、みんな妹にしたい」

奏「寝言は寝て言うものよ、美嘉」



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 *


346プロ1階のカフェテラスにて。
アタシは奏と唯に自らの心情を吐露していた。


美嘉「だって、みんな可愛すぎない? みりあちゃんたち小学生組は言わずもがな。中学生組と高校生組も、それぞれまた違う可愛さがあるから……アタシの姉性本能がくすぐられにくすぐられて、もう我慢の限界!」

唯「え、姉性本能なんてあるんだ!」

奏「ないわよ。というか美嘉、あなたには莉嘉という本物の妹がいるでしょう?」

美嘉「もちろん莉嘉は大事な妹。それは絶対に揺るがないけど……妹って、何人いてもよくない?」

唯「なるほど、確かにそーかも☆」

奏「いや、よくないでしょ」



奏が何か言っていたが、無視して続ける。


美嘉「だからアタシは決めた……」


一呼吸おいて、アタシは自らの決意を口にする。



美嘉「事務所の子たちで、妹ハーレムを作る!」



奏「……」

唯「……」



アタシの宣言に、どうやら奏と唯は呆気に取られているようだ。
まあ無理もない。この夢は、あまりに大きすぎるから。

アタシは2人の魂が戻ってくるまでゆっくりと待つことに―――


奏「病院行ったら?」

美嘉「アタシどこも悪くないけど!?」

奏「正常な精神状態で今の発言をしたのだとしたら、そっちの方が問題なんだけど」

美嘉「別にアタシ、おかしなことなんて何も言ってないでしょ!」


まったく、どうして奏はいつもアタシをからかってくるんだろ。


奏「……その目は本気みたいね。まずいわ、唯。美嘉がこれ以上遠くへ行かないうちに私たちで止めないと―――」



唯「美嘉ちゃん! その夢、ゆい応援するよ!」



奏「唯!?」

美嘉「唯ならそう言ってくれると思ってた!」


アタシは唯と、がしっと握手する。


唯「でっかい夢だけど、美嘉ちゃんならきっと叶えられるって☆」

美嘉「うん! きっとアタシ、叶えてみせる!」


そうした友情のやりとりをしたのち……2人で奏に視線を移す。


美嘉「……」

唯「……」


無言でじーっと見つめ続けるアタシと唯。

その視線を受けると、奏は小さくため息をつき、ようやく口を開いた。


奏「……もう好きにすれば?」

美嘉・唯『やりぃっ!』


その言葉に、思わずハイタッチしたアタシたちだった。


 *


コーヒー飲んだりしてちょっと休憩したのち、話再開。


奏「それで、妹ハーレムって何をするつもり?」

美嘉「だから言ったじゃん。みんな妹にするの」

奏「おかしいわね、日本語ってここまで難しかったかしら」

唯「とりあえずはお姉ちゃんって呼んでもらうことからだよね~」

美嘉「だね。形から始めるの大事だと思う」

奏「どうして唯は話についていけるの……?」


なんか奏がブツブツ呟いている。今日の奏は少し変だなぁ。


唯「それで美嘉ちゃん、どの子から妹にする?」

美嘉「うーん、悩みどころだよね……」


どの子も可愛いから早く妹にしたいけど……ここはやっぱり。


美嘉「やっぱり、まずはあの3人かな」


 *


翌日、アタシはカフェテラスに3人を呼び出し、開口一番に告げた。


美嘉「アンタたち、お姉ちゃん欲しくない?」

卯月「はい?」

凛「急に呼び出されたと思ったら、なんの話?」

未央「お姉ちゃんかー」


そう、呼び出したのはニュージェネの3人。卯月、凛、未央。


未央「私、男兄弟しかいないから、お姉ちゃん欲しかったなー」

卯月「私もお姉ちゃんって憧れかも。一人っ子だから」


未央と卯月は脈あり、と。


美嘉「それで凛は?」

凛「まあ、姉がいたらどんな感じなのかな……とかは考えたことあるけど」

美嘉「そっかそっか」


よし、凛も脈あり。
3人の意思を確認したところで、アタシは思い切って告げる。



美嘉「じゃあそんなお姉ちゃんが欲しい3人に朗報! 今日からアタシがアンタたちのお姉ちゃんになってあげる★」



『…………』


アタシのナイスな提案を聞くと、3人とも黙り込んでしまった。
よっぽど嬉しかったみたい。


卯月「え、えーっと……?」

未央「……」

凛「美嘉、何言い出してるの?」

美嘉「だからお姉ちゃんだって★ 欲しかったんでしょ?」

凛「欲しいとは言ってないし、美嘉になってとも言ってないよ」

美嘉「またまた照れちゃって。さ、お姉ちゃんって呼んでみて」

凛「呼ぶわけないでしょ……」



未央「お姉ちゃんっ!」



凛「未央!?」


未央はお姉ちゃんと呼ぶのと同時に、勢いよくアタシに抱きついてきた。


美嘉「よーしよし、未央はいい子だねー」

未央「えへへー♪」


素直な未央を褒めつつ、頭を撫でてあげる。
とっても気持ちよさそう。


凛「……ノリが良すぎるよ、未央は。ね、卯月?」

卯月「いいなぁ……」

凛「……なんて?」


アタシはそこで、こっちを見る卯月の羨ましそうな視線に気付いた。
妹の気持ちを察してあげるのが、お姉ちゃんの役目だからね。


アタシは優しく微笑みながら、卯月に告げる。


美嘉「いいよ。卯月も遠慮しなくて」

卯月「!」


アタシの言葉を聞くと、卯月は一瞬ためらうような素振りをするも―――



卯月「お、お姉ちゃあーんっ!」



勇気を振り絞って、アタシに抱きついてきた。


凛「卯月まで!?」


アタシは抱きついてきた卯月を体の右側に寄せる。左側は未央のもの。


美嘉「よしよし、卯月もなでなでしたげるね~」


未央と同じように、優しく卯月の頭を撫でる。


卯月「あ……えへへ♪」


撫でられた卯月の顔は、満開スマイル。
うんうん、やっぱり卯月の笑顔は最高だよね。


……さて、これで残るは一人。


凛「……」


こっちを見る視線がさっきの卯月と同じになってるの、自分で気付いてるのかな。


美嘉「凛も来ていいよ?」

凛「わ、私はいいよ」

未央「しぶりん。お姉ちゃんのなでなで、すっごく気持ちいいよ~」

卯月「私、今とっても夢心地です……」

凛「う……」


凛、未央と卯月の幸せそうな表情と言葉に心が揺さぶられているみたい。
だけどまだ余計なプライドが邪魔をしているのか、葛藤を続けている。

……やれやれ、お姉ちゃんが素直にさせてあげますか。


美嘉「凛」

凛「な、何?」

美嘉「たまには、誰かに甘えたっていいんじゃない?」

凛「!」


美嘉「お姉ちゃんなら、甘えるのにはうってつけだよ? ほら、真ん中空いてるから」


アタシは卯月と未央に少しずつ左右にどいてもらい、真ん中のスペースを開ける。

すると、凛は俯いて下を向く。これは……凛、アタシの準備はOKだよ。



凛「お……お姉ちゃんっ!」



そして、恥ずかしそうに俯きながらも、ようやく凛がアタシに抱きついて来てくれた。
表情は見えないけど、多分顔真っ赤にしてるんだろうな。


美嘉「よしよし、よく言えたね~」


未央と卯月と同じように、凛の頭を撫でる。
わ、凛の髪さらさらだ。


凛「うぅ……」

美嘉「気持ちいい?」

凛「……う、うん」

美嘉「そっかそっか」

未央「お姉ちゃん、私もまたなでなでして~」

卯月「私にもお願い、お姉ちゃん」

凛「そ、その後でいいから……もう一回、私にもして。お、お姉ちゃん」


そうやって凛たちが3方向から、上目遣いでお願いしてくる。……これ、無自覚?
恐ろしい妹たち……こんなのされたら、断れるお姉ちゃんはいないよ。


美嘉「ふふっ、もちろんいいよ。でも順番にね」

『はーいっ』


元気よく返事をする3人。

普段この子たちはアイドルとして頑張ってるけど、こうしてるとまだまだ子供なんだなって思う。
さっき凛に言ったことじゃないけど、たまには誰かに甘えたって罰は当たらないよね。



まあ、それはさておき……未央、卯月、凛、妹攻略完了★

まったりほのぼのと書いていきます


 *


未央たちを妹にした後、また奏と唯にカフェテラスに集まってもらった。


美嘉「―――そんなわけで、もう3人とも可愛くて可愛くて」


アタシの可愛い妹たち自慢を聞き終わると、奏と唯がそれぞれ反応を返してくる。


奏「よく上手くいったわね……」

唯「美嘉ちゃん、さっすがー☆ この調子で、どんどん妹増やしてこー!」

美嘉「もち★ そのつもり!」

奏「もうこの会話に慣れるしかないのかしら……?」


何か呟きながら、奏が手でこめかみを押さえている。


美嘉「奏、頭痛いの? 大丈夫?」

奏「……大丈夫よ。それで、次は誰にする気?」

唯「みりあちゃんがいいんじゃない? 美嘉ちゃん、仲良かったよね?」

美嘉「みりあちゃんかー……」


確かに仲は良いけど……難敵かもしれない。
みりあちゃん、時々すごく大人っぽいんだよね。


でも、結局は避けて通れない相手。

それにお姉ちゃんは……妹を前にして逃げたりはしない!


美嘉「よし、次はみりあちゃんに決定★」


 *


ちょうどいいことに、アタシはみりあちゃんと一緒に遊びに行く約束をしていた。

みりあちゃんとアタシは、同じく妹を持つ姉同士。
たまにこうして2人だけで遊ぶことがあるのだ(ちなみに莉嘉には秘密)。

今日も2人で色々なお店を回って、今は喫茶店で休憩中。


そして、2人でまったりとパフェを食べている最中に……アタシは意を決して切り出した!


美嘉「あ、あのさ、みりあちゃん」

みりあ「なぁに、美嘉ちゃん?」


パフェをすくおうとする手を止め、みりあちゃんがアタシの話に耳を傾けてくれる。
アタシは意を決して、切り出した。


美嘉「え、えっと……」

みりあ「うん」


意を、決して……。


美嘉「あ、あのね?」

みりあ「なにー?」


切り……出し…………。


美嘉「……やっぱり、なんでもない」

みりあ「? なんでもないの?」


……切り出しは、したんだけど。その先が言えない。
今日何度も言おうと思ったけど、どうしても『妹になって』の一言が言えない。


こんなもの? アタシの妹ハーレムにかける思いは、こんなものだったの?

ううん、アタシの思いはこんなものじゃないはず……なんだけど。


アタシ、既にみりあちゃんのことを2人目の妹みたいに思ってたところあるから、改めて言うの滅茶苦茶照れる!


みりあ「美嘉ちゃん、顔赤いよ? もしかして熱あるの?」

美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ★ 熱なんてないよ」

みりあ「本当? でもやっぱり心配だから……」


そう言うとみりあちゃんは向かいの席から立ちあがり、アタシに近づいて来て―――自分のおでこをアタシのおでこにくっつけた。


美嘉「み、みりあちゃん?」


その行動に、アタシは若干戸惑う。


少しの間そうしていると、すぐにみりあちゃんはおでこを離した。


みりあ「うん、ホントに熱ないみたい」

美嘉「もう……だから、そう言ったでしょ?」

みりあ「あははっ、そうだよね」


笑ってそう言い、みりあちゃんはアタシから離れた。

そして元の席に戻ると、みりあちゃんはアタシを真っ直ぐに見つめ―――慈愛を感じさせる笑みで、告げた。



みりあ「でも、美嘉ちゃんがなんともなくて良かったよ♪」



美嘉「!」


その言葉と笑みに、アタシの心が強く揺さぶられた。


みりあちゃんがアタシのことを心配してくれたのが嬉しい。……そういう気持ちも、もちろんあるんだけど。





なんだろう、この全身を駆け巡る敗北感は。





今の、普通お姉ちゃんがやることじゃない?……え、アタシ、妹?
みりあちゃんにとって、妹みたいな認識だったりするの?

ていうかアタシ、もしかしてお姉ちゃんらしさでみりあちゃんに負けているんじゃ……?


じゃ、じゃあ妹になんて……なってくれるはずなくない?


みりあ「み、美嘉ちゃん? 今度は顔青くなったよ? やっぱり具合悪いんじゃない?」

美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ。ほら、冷たいパフェ食べて体温下がっただけ」


無理矢理な理屈で誤魔化しながらも、アタシの心は打ちひしがれていた。

突きつけられたのは、完全なる敗北。



今のアタシじゃ、みりあちゃんを妹には……出来ない。



……みりあちゃん、妹攻略失敗。


みりあちゃんの攻略に失敗した後、また奏と唯にカフェテラスに集まってもらった。

アタシは若干涙目になりながらも、事の顛末を2人に伝える。


美嘉「……無理。みりあちゃん、強敵すぎる。今のアタシじゃ、逆に妹にされる……」

奏「随分弱気になったわね」


未央たちを妹に出来たことで天狗になっていたアタシの鼻が、完膚なきまでにへし折られた。
アタシはすっかり自信喪失。


美嘉「所詮アタシには無理だったのかな……妹ハーレムなんて」


遠い目で、そんなことを呟く。もう、誰も妹に出来る気がしない。



唯「しっかりしなよ、美嘉ちゃん!」



唯はそう告げると同時に、『ぱぁんっ』とアタシの頬をはたいた。


突然の痛みに、アタシは目を見開いて唯を見つめる。


美嘉「ゆ、唯……?」

唯「たった一人、たった一回、妹に出来なかったからって諦めるの? 美嘉ちゃんの妹愛は、その程度のものだったの?」

美嘉「!」


唯の言葉がアタシの胸に、深く深く突き刺さる。


奏「私は、諦めるならその方がいいと思うんだけど」


奏が何か言っていたが、耳には入らなかった。


唯「みりあちゃんに姉として負けたんなら、もっと姉として成長しよーよ! みりあちゃんを妹に出来るくらいに☆」

美嘉「姉として、成長……」


唯の言葉を受けて、アタシの目に光が戻る。


美嘉「……そうだよね。まだ終わりじゃないんだ」


アタシは椅子から立ち上がって、2人に宣言する。



美嘉「アタシ、もっとお姉ちゃんを磨く! 成長して、成長して、みりあちゃんを越えるお姉ちゃんになって! 絶対にみりあちゃんを妹にしてみせる!」



それがアタシの決意!

美嘉お姉ちゃん、ここに完全復活★


唯「やっといつもの美嘉ちゃんに戻ったね☆」

美嘉「ありがと、唯!」

奏「唯、余計なことを……」

美嘉「奏も、話聞いてくれてありがと★」

奏「……どういたしまして」


よーしっ、目指すはNo.1お姉ちゃん!
待っててね、未来の可愛い妹たち!

実質、ここまでがプロローグになります


美嘉「お疲れー★ 3人とも、頑張ってる?」


休憩時間を見計らって、アタシはレッスン室へとやって来た。
ここでさっきまでレッスンをしていたのは―――トラプリの三人。


加蓮「美嘉?」

奈緒「レッスン室来るなんて、どうしたんだ?」

美嘉「凛たちに差し入れ持ってきたんだ」

凛「差し入れ?」


本当は加蓮と奈緒ちゃんを妹にするために来たんだけどね。
だけどレッスンで疲れている妹たち(未来の妹も含めて)の所に、手ぶらでなんて来れないから。


加蓮「? 珍しいことするね」

奈緒「なんか怪しいな……何か企んでないか?」


……奈緒ちゃん鋭い。
まあ確かに企んではいるけれど、この差し入れとは関係ないし。


美嘉「奈緒ちゃん、人の厚意は素直に受け取りなって。はい、どうぞ」


アタシはそれぞれに差し入れのドリンクを渡していく。


奈緒「……それもそっか。わざわざありがとな、美嘉」

加蓮「ありがとね、美嘉」

凛「ありがとう、お姉ちゃん」

奈緒・加蓮『……お姉ちゃん?』


凛が発したお姉ちゃんというワードに、耳ざとく加蓮と奈緒ちゃんが食いついた。


凛「しまっ!?」


慌てて凛が口を塞ぐも、時すでに遅し。

アタシは、自然にお姉ちゃんって呼んでくれて嬉しかったけど……加蓮と奈緒ちゃんは、面白いおもちゃでも見つけたかのような目になっていた。


奈緒「なぁ、凛。今、美嘉のことお姉ちゃんって言わなかったか?」

凛「い、言ってないよ。聞き間違いじゃないかな」

加蓮「ふーん? でも私もお姉ちゃんって聞こえたんだけど」

凛「……呼び間違えたみたい。ほら、たまに先生のこと、間違えてお母さんって呼んじゃうことあるでしょ? あれあれ」

加蓮「凛、姉なんていないのに?」

奈緒「いない姉のことをどう呼び間違えるんだ?」

凛「くっ……そ、それは……」


加蓮と奈緒ちゃんがニヤニヤしながら、苦しい言い訳を重ねる凛を追い詰めていく。


ここはお姉ちゃんとして、助け船を出さないとね。

アタシは凛を傍らに抱き寄せつつ、2人に告げた。


美嘉「加蓮、奈緒ちゃん。凛はアタシの妹になったの★」

凛「美嘉!?」

加蓮「妹!?」

奈緒「義妹!?」


凛たちが三者三様に驚いている。でもなんか、奈緒ちゃんの妹の発音が微妙に違ったような……気のせいかな。
ま、今はそれよりも。


美嘉「凛、さっきみたいにお姉ちゃんって呼んでくれないの?」

凛「そ、それは、だって加蓮と奈緒がいるし……」

美嘉「関係ないよ。もう凛はアタシの妹なんだから」


妹になった時のように、アタシは優しく凛の頭を撫でる。


凛「あ、あぅ……う、うん、お姉ちゃん」


撫でられる凛は、また俯いている。これ、自分の表情を隠そうとしてるのかな?


奈緒「り、凛が美嘉にされるがままだ……」

加蓮「え、どういうこと? 妹って何?」

美嘉「そのままの意味。凛だけじゃなくて、もう卯月と未央もアタシの妹だよ」

加蓮「さらに分からなくなったんだけど!?」

奈緒「どう家族構成が変わればそんなに義妹が……? アニメでもそこまでは増えないだろ……」


加蓮が混乱、奈緒ちゃんが謎の発言をしている。

そんな2人に、いよいよアタシは本題を切り出す。


美嘉「それでさ……2人もアタシの妹にならない?」

加蓮「妹になるって何!?」

奈緒「なるわけないだろ!」


むむ、そうすんなりとは行かないか。


美嘉「妹になってくれたら、いくらでもなでなでしたげるよ?」

加蓮「いや、そんなのに釣られるわけないでしょ」

美嘉「なでなでには結構自信あるのに……」


中々手強いね、この2人。
2人の攻略に集中するため、アタシは一旦、凛のなでなでをストップした。


美嘉「ごめんね、凛。一旦おしまい」

凛「あ……」

奈緒「すごい名残惜しそうな顔してる!?」

凛「し、してないよ!」

加蓮「凛がここまで骨抜きにされるなんて……」

凛「されてないからっ!」


凛が真っ赤な顔で反論してる。
凛、随分なでなでが気に入ったみたい。後でまた撫でてあげよう。


美嘉「加蓮、奈緒ちゃん、じゃあとりあえずアタシのことお姉ちゃんって呼んでみない?」

加蓮「呼ぶわけないでしょ」

奈緒「とりあえずの意味が分からないって」


加蓮「だいたい私、今さら美嘉のこと姉だなんて思えないし」

美嘉「そう? アタシは加蓮のこと、今からでも妹って思えるんだけどな」


ゆっくりと、アタシは加蓮に近づいていく。


加蓮「な、なんでこっち来るの?」

美嘉「そ・れ・は……こうするためっ★」


そう言うと同時に、アタシは加蓮を後ろから思い切り抱きしめた。


加蓮「!? ち、ちょっと美嘉!?」

美嘉「おとなしくお姉ちゃんに抱きしめられちゃいな、加蓮♪」

加蓮「だ、だからお姉ちゃんとか思わないから!」


加蓮がアタシから逃れようと抵抗するも、そう簡単には離してあげない。


加蓮「て、ていうか、レッスンの後だから汗臭いでしょ! お願いだから離れてってば!」

美嘉「えー? 全然汗臭くなんかないって」


試しに、加蓮の身体の匂いをくんくんと嗅いでみる。


加蓮「嗅がないでよ!?」

美嘉「……うん。良い匂いしかしないよ、加蓮」

加蓮「そ、そんなわけないでしょ!」

美嘉「確かに汗の匂いはするけど……これは加蓮が一生懸命レッスン頑張った証だもん。だから、とっても良い匂いだと思うよ」

加蓮「え……。な、なにそんなこと……」


? 急に加蓮が抵抗するのをやめたみたい。

どうして突然おとなしくなったんだろ……まあいいや。
じゃあ、せっかくだから―――


美嘉「よしよし、加蓮」

加蓮「ふぇ!?」


アタシは凛にしたように、加蓮の頭を優しく撫でた。


妹が頑張ったんだから、ちゃんと労ってあげないとね。


美嘉「いつも加蓮がすごく頑張ってるの、アタシ知ってるよ。偉いね、加蓮」

加蓮「! や、やめ…………」

美嘉「アタシに撫でられるの、嫌?」

加蓮「い、嫌ってわけじゃ……ない、けど……」


加蓮は、アタシに撫でられている時の凛みたいに、俯きながら答えた。
まったく、似た者同士なんだから。


美嘉「良かった。じゃあもう少しこのまま撫でてるね」

加蓮「…………」


加蓮はそのまま、無言でアタシに撫でられ続ける。


少し離れた所からは、奈緒ちゃんと凛がこっちを見ていた。


奈緒「か、加蓮が美嘉に身をゆだねてるぞ……」

凛「いいなぁ……」

奈緒「……なんて?」


凛が羨ましそうな目でこっちを見ていることに気付く。
うーん、そんな目で見られたらほっとけないよね。

仕方ない、加蓮のなでなではここまでにして、もう一度凛を―――


加蓮「……かも」

美嘉「ん?」


凛を撫でてあげようと思ったところで、加蓮が何かを呟いた。


美嘉「加蓮、今なんて?」


アタシが訊ねると、加蓮は恥ずかしそうに顔を逸らしつつ……。



加蓮「……妹になるの、悪くないかも」



小さいけど、はっきりとした声で、そう呟いた。

その言葉に、アタシは思わず微笑む。
ふふっ……加蓮の耳、真っ赤になってる。


美嘉「そっか、悪くないか」

加蓮「うん……」

奈緒「加蓮がオチた!?」

凛「さすがお姉ちゃん……!」


奈緒ちゃんから驚愕の、凛からは羨望の眼差しを感じる。


しばらくそのまま加蓮を撫で続けていると……加蓮が急にアタシの方を振り向く。


加蓮「ねぇ、お姉ちゃん」

美嘉「何?」

加蓮「早いとこ、うちのトラプリ三姉妹の最後の一人も、お姉ちゃんの妹にしようよ」


そう言うと、加蓮はいやらしく笑いながら、奈緒ちゃんに視線を向ける。


奈緒「え」

加蓮「ね、奈緒お姉ちゃん?」

奈緒「そ、そんな呼ばれ方したことないだろ!?」

凛「美嘉お姉ちゃんなら、すぐに奈緒お姉ちゃんも妹に出来るよ」

奈緒「凛まで!?」

美嘉「ふふっ、妹たちの期待には応えないとね」


アタシは抱きしめていた加蓮を離し、奈緒ちゃんに照準を合わせる。


美嘉「奈緒ちゃん、覚悟はいい?」

奈緒「よくないっ! よ、よせ、美嘉! こ、こっち来るなぁっ!」

美嘉「え。……そ、そっか。奈緒ちゃんがそんなに嫌がるなら……何も……しないよ……」


アタシはその場で動きを止め、下を向いて俯く。
妹が嫌がることをするのは、お姉ちゃん失格だもんね……。


そんなアタシの態度を見ると、奈緒ちゃんは困惑した様子。


奈緒「あ……。……べ、別に嫌とかじゃない―――」



美嘉「凛、加蓮、言質取ったよ! 奈緒ちゃん抑えて!」

凛・加蓮『了解、お姉ちゃん!』



アタシが指示すると、凛と加蓮が即座に奈緒ちゃんを取り押さえる。


奈緒「ちょ!? み、美嘉、あたしを騙したなっ!?」

美嘉「ごめんね、奈緒ちゃん。でも素直じゃない妹には、こうするのが一番かなって」

奈緒「あ、あたしは別に素直じゃなくないし、妹でもないっ!」

凛「すぐにそんなこと言えなくなるよ」

加蓮「お姉ちゃんにかかればね」

奈緒「こいつら完全に妹になってる!」

美嘉「さて、じゃあどうしてあげようかな~?」


凛みたいになでなでか。それとも加蓮みたいに抱きしめちゃうか。
……あ、いいこと思いついた。あれにしよ★


アタシはそのいいことを実行するために、一歩、また一歩と奈緒ちゃんに近づいて行く。


奈緒「く、来るな……! あ、あたしは……あたしは絶対に、妹になんかならないんだからな―――っ!」


 *


数分後。


美嘉「奈緒ちゃん、もうすぐ終わるからねー」

奈緒「な、なんで、こんな……うぅ」


そこには、アタシにゆったりと髪を梳かされる、しおらしい奈緒ちゃんの姿があった。


髪を梳かしながら、アタシは奈緒ちゃんに話しかける。


美嘉「奈緒ちゃんの髪、レッスンで少し乱れちゃってたもんね。ちゃんと綺麗に直さないと」

奈緒「べ、別に少しぐらい……どうせこの後またレッスンあるし……」

美嘉「また乱れたら、また直せばいいの。お姉ちゃんが何度でも梳かしてあげるから」

奈緒「だ、だから……あたしは妹になんか……」

美嘉「はい、これでおしまい」


アタシは、奈緒ちゃんの髪を梳かし終わる。


奈緒「や、やっと終わった……」

美嘉「奈緒ちゃんの髪ってもふもふしてるから、梳かすのすごい気持ちよかったよ★」

奈緒「! き、ききき気持ちいいとか、そそそそういうの言うなばかぁっ!」

美嘉「えー? でもホントに気持ち良かったんだけどなー」

奈緒「だ、だからからかうのやめろぉ!」


アタシと奈緒ちゃんがそんなやりとりをしていると―――



加蓮「ねぇ、お姉ちゃん。奈緒はお姉ちゃんの妹にはなりたくないみたいだし、もう構わなくていいんじゃない?」

凛「加蓮の言うとおりだよ。妹じゃない奈緒よりも、妹の私たちを構うべきだと思うな」



突然、加蓮と凛が奈緒ちゃんに対して冷たい言葉を言い放った。


奈緒「……え」


そして、2人の言葉に……その言葉の意味に気付き、アタシは頷く素振りをする。


美嘉「言われてみれば……確かにそうかもね。じゃあこれからは加蓮と凛だけを構うことにしよっか」

奈緒「え」

加蓮「やったぁ!」

凛「お姉ちゃん、私の髪も後で梳かしてもらっていい?」

美嘉「もちろんいいよ★ 可愛い妹の頼みだもん」

加蓮「え、ずるい。私にもしてよ、お姉ちゃん」

美嘉「はいはい、加蓮は凛の後ね」

凛「早い者勝ちだよ、加蓮」

加蓮「ちぇっ、先に言っとけばよかった」


アタシと加蓮と凛は、3人で仲睦まじく談笑を続ける。
奈緒ちゃんの存在を気にも留めずに。


奈緒「な、なあ……」


気にも留めないので、奈緒ちゃんがアタシたちにかける声も聞こえない。
アタシたちは談笑を続ける。


奈緒「あ、あの……えっと……」


気にも留めないので、奈緒ちゃんがおろおろしているのにも気付かない。
談笑を続ける。


奈緒「……………」


気にも留めないので、奈緒ちゃんが何も言葉を発せなくなるのにも…………もうそろそろいいかな?


アタシは加蓮と凛に目配せをする。
そして、それに2人はこくりと小さく頷いた。


奈緒ちゃんを気に留めないとか、そんなことアタシたちがするわけがない。
ホントは3人とも、気付かれないようにずっとチラチラと奈緒ちゃんの様子を窺っていたのだ。


正直、妹をほったらかしにするのはお姉ちゃんとして心が痛んだけど…………これも作戦。
そして、いよいよそれも仕上げの時。


美嘉「さて、じゃあアタシはもうそろそろ行くね。レッスン終わった頃にまた来るから」

凛「うん、待ってる」

加蓮「帰りに3人でポテト食べに行こうよ」

美嘉「いいね、そうしよっか」


アタシは凛と加蓮と約束をし、レッスン室のドアへと歩いて行った。
そしてドアノブに手をかけてから、もう一度凛たちの方を振り向く。


美嘉「じゃ、後でね」

凛「ばいばい、お姉ちゃん」

加蓮「約束だからねー」

美嘉「分かってるって」


アタシはそのまま凛と加蓮に手を振り、レッスン室を出ていこ―――



奈緒「ま、待って!」



―――出ていこうとしたところで、奈緒ちゃんが突然叫んだ。


アタシは立ち止まり、奈緒ちゃんに体を向ける。


美嘉「奈緒ちゃん? どうしたの?」

奈緒「あ、あたしも…………うとに……」


奈緒ちゃんは、小さな声で何かをボソボソと呟く。

でも、何を言っているのかが(予想はついていたけど)よく聞こえなかった。


美嘉「うーん? ごめん奈緒ちゃん、小さくてよく聞こえないや。もっと大きな声で言ってくれる?」

奈緒「だ、だから……」



奈緒「あ、あたしも……妹に、してくれ……!」



……作戦成功。
アタシと凛と加蓮は、ニヤリと笑みを浮かべた。

しかしアタシはすぐに表情を戻すと、意外そうな顔つきで奈緒ちゃんに訊ねる。


美嘉「え、奈緒ちゃんもアタシの妹になりたいの?」

奈緒「……う、うん、なりたい」


奈緒ちゃんは恥ずかしそうに目を伏せて、真っ赤な顔で頷いた。


美嘉「そっか。いいよ、もちろん」

奈緒「ほ、ホントか!?」

美嘉「で・も……それはアタシのことを、お姉ちゃんって呼んでくれたらの話ね?」

奈緒「え゛」

加蓮「妹なんだから、そう呼ぶのは当然でしょ?」

凛「お姉ちゃんをお姉ちゃんと呼べない者に、妹の資格はないよ」


加蓮と凛が援護射撃をしてくれる。


奈緒「う、うぅぅ……」

美嘉「さあ奈緒ちゃん、どう? お姉ちゃんって呼んで―――」



奈緒「い、妹にしてっ……! お、おね……お姉、ちゃあんっ」



アタシの言葉を遮る形で、奈緒ちゃんが必死に声を絞り出した。


……ようやくお姉ちゃんって呼んでくれた。

アタシは笑顔で、奈緒ちゃんの元に近づいて行き―――


美嘉「ふふっ、よく言えました♪」


奈緒ちゃんの頭を、ふんわりと撫でた。


奈緒「ひゃう!?」


美嘉「奈緒ちゃん、これがお姉ちゃんのなでなでだよ。気持ちいい?」

奈緒「き、気持ちよくなんか……」

凛「気持ちよくないなら、もうやめていいんじゃない?」


いつの間にかアタシたちの近くまで来ていた凛が、そう言い放った。

凛だけでなく、加蓮も傍まで来ている。


加蓮「奈緒、なでなでされたくないんだもんね?」

奈緒「そ、そんなこと言ってないだろっ!」

加蓮「じゃあ、そのままなでなでされてたいの?」

奈緒「え。い、いや、それは、あの、えっと……」

凛「はっきり言いなよ、奈緒」

奈緒「…………こ、このままが……いい」


本心を告げた奈緒ちゃんに、アタシはもう一度同じ質問をする。


美嘉「なでなで、気持ちいい?」

奈緒「き、気持ち……いい……」

凛「最初からそう言えばいいのに」

加蓮「ほんっと、素直じゃないんだから」

奈緒「う、うるさいっ!」

美嘉「……ふふっ」


凛たち3人のやりとりに、思わずアタシの顔が綻ぶ。


奈緒「な、なんで笑うんだよ、美嘉!」

美嘉「美嘉? 奈緒ちゃん、そうじゃないでしょ?」

奈緒「あ、あぅ……その…………お、お姉ちゃん」


美嘉「よろしい。別に笑ったわけじゃないよ、奈緒ちゃん。可愛い妹がまた一人出来て、嬉しかっただけ」

奈緒「か、かわっ!?」

加蓮「だってさ。可愛い妹の奈ー緒っ♪」

凛「良かったね、可愛い妹の奈緒」

奈緒「お、お前らいい加減にしろぉ!」

美嘉「まあまあ。落ち着いて、奈緒ちゃん」


なでなでなでなで。


奈緒「ふぇ……う、うん……」

加蓮「……からかわれて怒った奈緒を一瞬でおとなしくさせるなんて」

凛「……さすがお姉ちゃんだね」


それにしても奈緒ちゃんの髪、ホントふわふわしてるなぁ……すっごく良い撫で心地。
もちろん加蓮と凛も……妹はみんな、すっごく良い撫で心地なんだけどね。



まあ、それは置いといて……加蓮、奈緒ちゃん、そして―――トライアドプリムス、妹攻略完了★

次は中学生組にしようと思ってましたが、めでたく未央が全体2位Pa1位ということで、次はポジパにしようと思います
ホントなら楓さん出したいんですが、話の都合上当分出せないので

なお、ポジパを書くにあたって茜の学年が調べてみても不明瞭なため、このssでは高2ということにしておきます


お昼時のカフェテラスにて。
アタシは一人で、あの子たちを待っていた。


未央「あ、美嘉ね―――じゃなかった。お姉ちゃーん!」


やっと来たね。

椅子から立ち上がり、声の聞こえた方を向く。
すると、未央が駆け足で近づいてきて、その勢いのままアタシに抱きついてきた。


美嘉「おっと……もう未央ったら。びっくりするでしょ?」

未央「えへへー、ごめんお姉ちゃん」


あまり悪びれる様子もなく、謝ってくる未央。
まったくもう……可愛いから許すけど。


美嘉「それと未央。別に呼び方は美嘉ねーのままでもいいよ?」


未央が言い直したのに気付いて、アタシはそう伝えた。

未央が呼ぶ美嘉ねーの『ねー』は姉の『ねー』だから。
つまり未央は妹になる前から、アタシを姉みたいに慕ってくれてたんだよね。

そう考えると、美嘉ねーっていう呼び方の方が嬉しいかも。


未央「いいの? じゃあそうするね、美嘉ねー。この呼び方するの私だけだから、特別な感じして嬉しいし」


どうやら、未央も同じようなことを考えてくれてたみたい。
やっぱり姉妹だけあるね。


茜「未央ちゃん、本当に美嘉ちゃんの妹になったんですね!!」

美嘉「わ!?」


突然の大声に尋常でなく驚くアタシ。


そして横を見ると、そこには茜ちゃんと藍子ちゃんが。


美嘉「茜ちゃん、藍子ちゃん」

藍子「遅くなっちゃってごめんなさい、美嘉ちゃん」

美嘉「大丈夫、アタシも今来たとこだよ★ それに、アタシが誘ったんだしさ」


そう。今日アタシは、藍子ちゃんたちにお昼のお誘いをした。
目的はもちろん……藍子ちゃんと茜ちゃんを妹にするため!


 *


あの後、アタシたちはそれぞれお昼ご飯を注文した。

今は料理が来るまで、4人で楽しくお喋り中。


美嘉「未央はアタシの妹になったこと、2人に話してたんだね」

未央「未央『は』って?」

美嘉「凛は加蓮たちに、妹になったことを必死に隠そうとしてたからさ」

未央「あははっ、しぶりんは照れ屋さんだなぁ」


凛と違って、未央はそんなことしないか。
別に口止めもしてないし、隠すことでもないよね。


それに……この方が話を運びやすいかもだし。

さっそくアタシは、2人に妹になってほしいと伝えようと―――


藍子「あ、そういえば私たち、美嘉ちゃんにお願いがあるんでした」

美嘉「え?」


―――したところで、藍子ちゃんがそんなことを。


茜「そうでした! 美嘉ちゃん、折り入ってお願いがあります!!」



藍子「私たちも美嘉ちゃんの」

茜「妹にしてください!!」



美嘉「えぇえええええええええっ!?」


藍子ちゃんたちの方から!?


未央「私の話を聞いたら、2人も美嘉ねーの妹になりたくなったんだって」


話を運びやすいどころか勝手に運ばれてた!
あまりに急展開過ぎて、アタシは動揺を隠せない。


茜「駄目、でしょうか?」

藍子「やっぱり、迷惑ですよね……」


はっ!? 2人が悲しそうな顔してる!

……何してるの、アタシ。
こんなんじゃ、お姉ちゃん失格でしょ!


アタシは落ち着くため、一度深く息を吐く。

そして、2人の不安を払拭するために柔らかく微笑み、自分の気持ちを正直に伝えた。


美嘉「迷惑なんかじゃないよ、藍子ちゃん。それに茜ちゃんも。2人みたいな可愛い妹なら、いくらでも大歓迎★」


その言葉に、藍子ちゃんと茜ちゃんの表情がぱぁっと明るくなる。


茜「では私たち、美嘉ちゃんの妹になっていいんですね!!」

藍子「ありがとうございます、美嘉ちゃん」

美嘉「あ、2人とも―――」

未央「茜ちん、あーちゃん。もうその呼び方は違うんじゃない?」


さすが我が妹、未央。
アタシの言おうと思ったことを先に言ってくれた。


藍子「呼び方?」

茜「え、何かおかしかったですか!?」

未央「だからさ、ごにょごにょ……」


未央が2人に耳打ちする。


茜「……なるほど! そういうことですか!!」

藍子「うふふっ、分かりました」


内緒話が終わると、茜ちゃんと藍子ちゃんはアタシの方へ向き直った。
そして―――


藍子・茜『せーのっ』



藍子・茜『お姉ちゃん♪(お姉ちゃん!!)』



2人揃っての、お姉ちゃんコール。

……どうしよう。
料理が来る前に、2人の可愛さでお腹いっぱいになっちゃった。


 *


藍子「お姉ちゃん。私、してほしいことがあるんです」

美嘉「してほしいこと?」


みんなでご飯を食べ終えた後、藍子ちゃんがアタシにそんなお願いをしてきた(ちなみにアタシ、普通に料理食べられた。妹は別腹だったみたい)。


藍子「私のことを、なでなでしてもらえませんか?」

美嘉「なでなでね。もちろんいいよ★ 妹をなでなでするのは、お姉ちゃんの義務だから」

茜「藍子ちゃん、お姉ちゃんのなでなでの話を未央ちゃんから聞いて、ずっとなでなでしてもらいたがってたんですよ!!」


美嘉「え、未央、アンタどんな話したの?」

未央「美嘉ねーのなでなでの感想を、ありのままに伝えただけだよ?」

藍子「未央ちゃん、『お姉ちゃんのなでなでは世界を狙えるほどだよ』って絶賛していたんです」


盛りに盛ってる!


藍子「きっと、とっても気持ちいいんだろうなぁ……うふふっ、楽しみ♪」


期待のされ方ハンパない!


ど、どうしよ。
さすがにここまでの期待には応えられそうに…………いや、そうじゃないでしょ、アタシ。

妹の期待に応えるのが、お姉ちゃんの務めなんだから。


美嘉「……やるしかない」


妹たちに聞こえないように、呟く。

アタシは座っていた椅子の位置をずらし、藍子ちゃんの横に座った。


美嘉「それじゃ藍子ちゃん、なでるね」

藍子「よろしくお願いします、お姉ちゃん♪」


藍子ちゃんがアタシに微笑む。この笑顔は裏切れない。


……ならもう、これしかない。



なでなでを新たな高みへと昇華させる!



覚悟を決めたアタシは、左手をゆっくりと藍子ちゃんの頭に伸ばす。


藍子「あ……」


まずは、いつも通りに撫でる。愛情を込めて、優しく、緩やかに。


藍子「これが……ふふっ」


藍子ちゃんが嬉しそうな表情になった。
とりあえず、お気に召してくれたみたい。


問題はここから。

撫でる速度を変える? それとも強さ?

いや、それは駄目。
練習もなしにいきなりそんなことしたら、上手く加減できなくて、むしろ不快にさせちゃうかも。

なら、どうすれば…………ん?


そこでアタシは、はたと気付く。

アタシの左手は藍子ちゃんの頭を撫でているけど―――



アタシの右手、空いてるじゃん。



瞬間、アタシの脳裏にある考えが閃いた。

この右手を使って―――いやでも、上手くいくかな……。
猫や犬ならともかく、人間にはあんまり意味が―――え、ええい、もうやるっきゃないでしょ!

藍子ちゃんの期待に応えなきゃ!


アタシは胸の内の不安を悟られぬよう注意しつつ、藍子ちゃんに声をかける。


美嘉「藍子ちゃん」

藍子「なんですか、お姉ちゃん」

美嘉「ちょっとだけ、上向いてくれる?」

藍子「こう、でしょうか?」


藍子ちゃんがアタシに言われた通り、少しだけ顔を上げてくれる。


美嘉「うん、オッケー★」


そうして、アタシは左手で藍子ちゃんの頭を撫でたまま―――右手を、藍子ちゃんの喉元へ伸ばした。


藍子「ふぇっ!?」

美嘉「大丈夫だから。そのまま、ね?」

藍子「は、はい……」


アタシは優しく微笑みかけて、藍子ちゃんの緊張を和らげる。

そして、右手の指でやんわりと、藍子ちゃんの喉元を撫でていく。
苦しくならないよう、慎重に、ふんわりと。


そうしていると……藍子ちゃんが、気持ちよさそうに目を細めた。


藍子「ふぁ……」


お、おお? 若干不安だったけど……いけそう!


未央「ずるい、あーちゃん! 私もそんなのされたことないのに!」

藍子「はぅ~……♪」

茜「未央ちゃん! 藍子ちゃん、聞こえてない感じですよ!!」

未央「まさか!? 両手で撫でられることで、気持ちよさも2倍に!?」


未央がおかしな考察をしているけど、放っておく。

今、藍子ちゃんから気を抜くわけにはいかない。
アタシは精神を集中して、藍子ちゃんを撫で続ける。


美嘉「藍子ちゃん、喉苦しくない?」


なでなで。


藍子「だいじょぉぶですぅ……」


なでなで。


美嘉「それなら良かった★」


なでなでなでなで。


藍子「ふぁい……すごく、良いですぅ……」


なでなでなでなで。


未央「会話が微妙に噛みあってないような……ん?」


なでなでなでなでなでなで。


未央「あっ!? ねえ、ちょっと美嘉ねー!」

美嘉「ふふふっ」

藍子「うふふっ」


なでなでなでなでなでなで。


未央「き、聞こえてないし……お願い、茜ちん!」

茜「お姉ちゃん、聞こえてますかーっ!?」

美嘉「わっ!?」


突然の大声に集中が途切れ、アタシは藍子ちゃんのなでなでを中断。


美嘉「な、何?」

未央「美嘉ねー、いつまであーちゃんなでなでしてるの! もう10分はやってるよ!?」

美嘉「え、そんなになでなでしてた?」


未央に言われて、時計を見てみる。
……ホントだ。いつのまにか時間が経ってる。

もうすぐ昼休みも終わる時間じゃん。


藍子「全然気付きませんでした」

未央「まったく、2人ともゆるふわしすぎだよ」

茜「とはいえ、私たちも10分経つまでゆるふわしてましたが!」

未央「……。……うん、それはいいんじゃないかな。と、とにかく美嘉ねー、私もなでなでしてよー!」


美嘉「うーん……悪いけど、未央はまた今度ね」

未央「どうして!?」

美嘉「まだなでなでしてない茜ちゃんが先でしょ? それで多分、昼休み終わっちゃうだろうし」

未央「う~、そういうことなら仕方ないかー」

茜「お姉ちゃん! 私、なでなでもしてほしいですけど、他にやりたいことがあります!」

美嘉「やりたいこと?」

茜「さっき未央ちゃんがしていたみたいに、お姉ちゃんに抱きついてみたいです!!」


美嘉「なるほど、茜ちゃんはそっちね。いいよ、お姉ちゃんが優しく受け止めてあげる★」


アタシは椅子から立ち上がり、腕を広げる。
これで受け止め体勢はバッチリ。

茜ちゃんも既に立ち上がって、準備万端の様子。


美嘉「茜ちゃん、いつでもどうぞ」

茜「では……お姉ちゃーんっ!!」


アタシの胸に、茜ちゃんが助走をつけて勢いよく飛び込んでくる。
それを笑顔で受け止めようと―――


美嘉「ふふっ、茜ちゃんは元気いっぱ―――かはっ!?」


―――茜ちゃんに抱きつかれた瞬間、身体に尋常じゃない衝撃が襲いかかった。


意識が持っていかれそうになるも、お姉ちゃんの意地でどうにか留める。

後ろに吹っ飛びそうになるも、お姉ちゃんのプライドでどうにか踏みとどまる。

『めきめきぃっ』と肋骨がきしむも、お姉ちゃんの底力でどうにか耐える。


……あははっ、しまったなー。



茜ちゃんのパワーのこと、全然考えてなかった★



茜「? お姉ちゃん、どうしました?」


茜ちゃんがきょとんとした顔でアタシを見上げてくる。
それにアタシは、脂汗をかきつつも必死に笑顔を作って答えた。


美嘉「ど、どうも、してないよ。……ふ、ふふっ、茜ちゃんは、元気いっぱいだね★」


左手を茜ちゃんの頭に伸ばし、そのまま撫でる。
お姉ちゃんとして、これだけはやらないと……。

でもさすがに、右手で喉元を撫でる気力は出ない。
ごめんね、茜ちゃん。今日はこれだけで勘弁して。


茜「な、なんでしょう!? 胸の辺りがポカポカしてきました!!」

未央「それが美嘉ね―のなでなでだよ、茜ちん」

藍子「なんだか幸せな気持ちになりますよね」

茜「はい、熱いです! ファイヤー!!」


茜ちゃんたちが微笑ましい会話をしている。


この子たちに、アタシが満身創痍であることを気付かれちゃ駄目。
お姉ちゃんとして、妹を傷つけるわけにはいかない。

昼休みが終わるまであと少し。
それまでなんとしても耐え抜くんだ、アタシ!



まあ、それはともかくとして……藍子ちゃん、茜ちゃん、そして―――ポジティブパッション、妹攻略完了★





……決めた。

身体、鍛えよう。

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