奈緒「よし、今日も晶葉から借りたゲームでもやるか」 (96)


■前スレ
奈緒「さーて、晶葉から借りたゲームでもやるか……」
奈緒「さーて、晶葉から借りたゲームでもやるか……」 - SSまとめ速報
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【安価】奈緒「そろそろ今日も晶葉から借りたゲームやるかぁ」
【安価】奈緒「そろそろ今日も晶葉から借りたゲームやるかぁ」 - SSまとめ速報
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――夜、奈緒の部屋

奈緒「22時……よし、今日もやるか」

奈緒「前回のセーブデータをロード、と」カチッ

奈緒「えーっと、昨日は歌鈴似のヒロインがPさんとよろしくやったんだったか……」

奈緒「それにしても破壊者だかって敵は何の目的で地球に来てるんだろうなー。晶葉からストーリーのネタバレでも……」

奈緒「……いや、とりあえずは自分である程度進めるか」

奈緒「よし、ロードが終わった。今日もやるか……」


――――
――

――東京、羽田空港(国際線旅客ターミナル4F)

P「イベント会場はこちらになります。物販につきましてはホール横の列からお並び願います」

「すみません……合同ライブのイベント会場はここで合ってますか?」

P「こちらになります。もうしばらくの間ホール内でお待ちください」

ピピピッ!

P「ん……はい、Pです」ピッ!

翠『翠です。ホール前の様子はどうですか?』

P「一般客はぼちぼち入ってきてるよ。VIPの方々は言われた場所に誘導しているが、リストに載ってた分は大体集まったはずだ」

翠『分かりました。そろそろ私たちも準備しなければなりませんね。イベントの開始に合わせませんと……」

P「にしても面倒な会合だなぁ……桜霞のメンバー、必要か? ここでイベントやるにしても、いまのあの子たちを出させるような場所じゃないぞ」

翠『そのための他事務所との合同イベントです。その分時間も長く取っていますし』

P「……ま、破壊者が出た後の、出資者たちを相手にする報告会なら時間も長くなるか」

翠『あと、開演時間になりましたら、Pさんは到着ロビーのほうに移動してください』

P「え、何だそれ、聞いてないぞ」

翠『今回の空港でのイベントに桜霞を捻じ込んだのも、丁度こちらからお迎えに行く方がいましたので……』

P「聞いてねー……え、誰がこっちに来るんだ?」

翠『とりあえずPさんは移動して頂ければ良いとのことらしいです。私のほうも、余計なことは言わなくていいと言われていまして……申し訳ありません』

P「また黒川千秋が変なこと言ってんのか……まあいいや、了解」ピッ!


P「っとに……担当アイドルの仕事を見ないまま別件か」ハァ……

P「仕方がない、とりあえず到着ロビーに行くか……」


……
…………

――1時間後、夕方、羽田空港、国際線ターミナル2F(到着ロビー)

P「……」

P「……」

P「……来ない」

P「……にしても、空港か……仕事してたときでも、ほとんど来ることなんて無かったな」キョロキョロ

P「国際線か……国際線……」


『これはいつか、貴方の力となるわ……P、貴方の運命として……』


P(……母さん、母さんは今頃、何処に行ってるんだろうか)


???「ちょっと」


P(もし母さんのいる場所が分かれば……ここからなら他の国にも行ける……)


???「ちょっとアンタ!!」ブンッ!

ドスッ!

P「いぃっつ!?」ビクッ!

???「痛いじゃないわよ! アンタ、さっきから無視してんじゃないわよ!」

P「誰だいきなり顔面に荷物を……子供?」

???「誰がガキよ!」

P「いや、お前……」

麗奈「はぁ……? アンタ、よくもまあこのレイナサマをガキ扱いしてくれるわね」

P「レイナサマ? え、外国人?」

麗奈「麗奈よ! 小関麗奈! アンタに一々説明し直すのも面倒臭いわね! んっとに……で、千秋たちのほうはもう始まってるの?」

P「千秋……てことはお前が、翠が言ってた相手か」

麗奈「はぁ……ああもう、これはこれで腹立つわね……仕方ないケド」

P「そりゃ知らん顔だし……」

麗奈「ま、アンタとここで漫才してても仕方が無いわ。一応連合から持ってきた資料もあるし、翠たちのところまで連れていきなさいよ」

P「連合……ヨーロッパから来たのか」ピクッ

麗奈「向こうで仕事してたもの。破壊者が来たって話だから戻ってきたけど……ま、レイナサマは助っ人ってトコね」

P「助っ人ぉ……?」

麗奈「アンタ完全にレイナサマをナメてるわね……燃やすわよ」

P「いやそれは勘弁してください」

麗奈「ホラ、それじゃさっさと行くわよ、P」

P「はいはい……」


……
…………

――数分後、羽田空港(国際線旅客ターミナル4F)

麗奈「はいコレ、記録媒体。落とすんじゃないわよ」

楓「ありがとうございます。麗奈ちゃん、私は先に戻ったほうがいいですか?」

麗奈「そうねえ、連合から持ってきたものもあるし……」チラッ

美優「……」

楓「……」

P「はい……はい、桜霞のほうは予定通りということで、申し訳ありませんがよろしくお願いします」ピッ!


麗奈「……ま、ここら辺で大人しくしてればいいんじゃないの。それよりアタシお腹空いたんだけど」

美優「あ、それでしたら……イベントはまだ終わりませんし、いまのうちに何か食べておいたほうが……」

麗奈「それじゃどっか適当なとこでも行こうかしら……P、行くわよ」

P「ふう……え、何?」

麗奈「ご飯食べにいくから、アンタ付いてきなさい」

P「え? いや俺、イベントのほうの仕事あるんだけど」

麗奈「レイナサマのほうが優先よ。ついでに出てきた破壊者のデータも見たいし端末持ってきなさい」

楓「それじゃあ私も……」

麗奈「アンタ、酒飲むつもりでしょ。ここで留守番してなさい」

楓「……」

美優(見透かされてる……)

P「仕事……」


……
…………

――羽田空港、国際線ターミナル2F(カフェ店内)

P「コイツが2週間前に戦闘したオケアノス。開発室で出した解析データをティターンの物と横並びで画面に出すが……」カタカタカタッ

麗奈「……」

P「法術と同等の力がティターンは両腕、オケアノスは頭部に集中している」

P「まだ2回しか戦闘していないが、恐らく破壊者は個体ごとに一部分のみ、非常に強力な力を内包している機会生命体である可能性が高いというのが、開発室からの報告だ」

麗奈「局所運用のゴーレムか……」

P「ん、ゴーレム?」

麗奈「いや、何となくそう言っただけよ。そうね……その考えは、まあいいんじゃない。ただ、コイツ等はあくまで自分の得物だけが発達している個体」

麗奈「であれば……そうね、進化の過程……って言えばいいのかしらね、全ての体の部位が発達した強力なヤツもいるはずよ」

P「……まあ、そうだろうな」

麗奈「そう、例えば――」

P「……」

麗奈「……」

麗奈「……なんでも、上手い例えが思いつかなかったわ」

P「あっそう……」

周子「で、コイツらの得物はそれぞれダイオウカーの各武装と同等のパワーがあるってことね」ヌッ

P「そうそう、開発室は2つの戦闘データからブロッサムディーヴァの改修点を……」

周子「ん?」

P「……いつからいたんだ?」

周子「ついさっき」

P「え、えええ……一緒に現場に来てたっけか、お前……」

麗奈「自分で飛んできたんでしょ。狐、アンタ暇なの?」

周子「そうそう、暇なの、ヒマ。みんな帰ってこないしー、アタシも転移でこっち来ようかなーって」

麗奈「アンタどうでもいいけど、外出るなら耳と尻尾くらい隠しなさいよ」

周子「えー、だってこれ出してるとみんな珍しがってシューコちゃんのこと目で追いかけちゃうから面白くてさー」

P「目立ちたくないなら外せよ」

周子「えええっ、外したら血がブシャーって飛び散ってそっちのほうが目立つじゃん? 千切るくらいなら隠したほうがアタシも痛くないし」

麗奈「アンタ、耳千切って血の海作るよりは隠したほうがいいに決まってるでしょ」

P「え、何、その耳本物?」

周子「前もそう言ったやーん。あ、もしかして信じてなかった?」

P「そりゃあ……信じないだろ、普通。狐が人間と同じ姿してるとか……妖怪みたいなもんか」

周子「妖怪て……」

麗奈「ま、この狐は大したこと出来ないし人畜無害だから気にしなくていいわよ。ほら、さっさと次の資料出しなさい」

P「へいへい……」


……
…………

――数時間後、羽田空港(国際線旅客ターミナル4F)

歌鈴「そ、それで私たちのお仕事、見に来てくれなかったんですか……?」

P「すまん……」

紗枝「はぁ……あんさん、うちらのぷろでゅーさーとか言うて……」

P「そんな目で見るなよ。こっちはこっちで別の仕事だったんだから」

あやめ「仕方がありません。P殿に非があるわけではないですし」

珠美「それで、その麗奈殿というお方は?」キョロキョロ

P「ん、なんだお前たちも会ったことないのか? いまそこで黒川千秋と話してる……」



千秋「そう……戻る前のヨーロッパの戦闘でそんなことが……」

麗奈「戻されて面倒くさいったら無かったわよ。ま、向こうのプロジェクトも似たようなことやってるし仕方ないっちゃ仕方ないケド」

千秋「あの人は?」

麗奈「落ち着いたらこっちに戻るって言ってたわよ。向こうのメンバーも連れてくるかは聞いてないけどね」

珠美「はて、見たところ珠美たちとあまり変わらないような……」

周子「人は見かけで判断しちゃダメってね」

歌鈴「い、いつの間に周子さんも来てたんですか?」ビクッ!



千秋「……あら、翠さんも戻ってきたわね」

翠「遅くなりました。他の事務所の方々と少しお話があったので……」

P「悪い、こっちの仕事は本来は俺が担当する話だったが」

翠「いえ、今回は仕方がありません。Pさんも麗奈さんとお話もありましたし」

麗奈「終わった? それじゃ帰るわよ」

ピピピッ!

千秋「もしもし、楓さん?」

楓『車出しておきましたよ。外で待ってますから』

P「よし、それじゃ帰るか。どうせ運転するのは俺だし……皆、帰るぞー」

歌鈴「はーい」

……
…………

――数時間後、深夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(格納庫)

P「……」カタカタカタカタッ!

ピピッ!

P「ふぃー……タケミカヅチのフィードバック作業もこれくらいか……整備士に手伝ってもらえばよかったかな」

P「そういや博士、後でオートメーション機能用の制御プログラム持ってくるって言ってたけど、まだ来ないのか……」

ガタッ!

P「どれどれ、ちょっと開発室のほうに行くか……」

P「ふわぁ……それにしても、今日は皆の仕事振りを見れなかったのがなぁ……次の機会までお預けか」

……
…………

――ブラックパール城(開発室前)

P「えーっと、開発室は……」


「……の、みたいね」


P「ん?」ピクッ

P(開発室から話声が……この声、博士と麗奈か……?)


「……みねが、ひとまず……ええ……大丈夫よ」

「それなら……か、急いでこちらも……」


P(何の話してんだろうか……まあ、いっか)

P「お邪魔しまーす」


……
…………

――ブラックパール城(開発室)

麗奈「ん、なんだアンタか」

晶葉「こんな時間にどうした?」

P「どうしたって……博士がオートメーション機能用の制御プログラムを持ってきてくれるって話だったから待ってたんだけど」

晶葉「ああすまん、そういえばそんな話をしてたな……ちょっと待ってくれ、いまデータを渡す」ピピッ!

麗奈「GUWDの? ああ、アンタそれ乗って戦ってるって話だったわね」

P「役に立つかは分からないけどな……ところで、何の話してたんだ?」

晶葉「ヨーロッパ連合の部隊の話だ。麗奈の仕事先だったからな」

麗奈「あっちはあっちで、ヒドイもんだったけどね」

P「国外で地球外生命体との戦闘が発生しているってのは報道で見たことはあるけど、実際そんなに多いもんなのか?」

麗奈「ま、それなりね。連合のほうも、ダイオウカーの刻印同調機能と似たようなモノ使ってるわよ」

晶葉「刻印同調機能の本家はこちらだが、連合のほうは模倣した機能を戦闘機に積んでいる」

晶葉「効果としてはほとんど同じと聞いているが、最大の違いはパイロットに対する負荷の具合だろうな」

P「後発の連合のほうがいいもの積んでるのか?」

晶葉「そういうわけではない。ダイオウカーのシステムは搭乗している間は刻印を常に消耗するが、連合側の機体は搭乗時の消耗はそれほど激しくない」

晶葉「ただし、戦闘後に反動としてダイオウカーと同等以上の負荷が搭乗者を襲うようになっているらしいな」

P「後付で体に負荷が掛かるのか……どっちもどっちってところか」

麗奈「ま、精度はこっちのほうがいいけどね。負荷の具合も特殊だし……後は連合のほうがパイロットの質は良いわね」

晶葉「こっちは素人を寄せ集めて訓練させているからな。黒川重工の意向で政府軍はアテにできんし、仕方が無い」

麗奈「ま、その分はPが働けばいいでしょ」

P「簡単に言うなよな……」


……
…………

――翌日、早朝、ブラックパールガーデン、屋敷(中庭)

P「ふわぁ……ねむ……少しは寝たけど……」

P「にしても、少し早く来すぎたか。まだ皆も寝てる頃だろうし……」


珠美「やっ! はぁっ!」ブンッ!


P「……寝てなかったか。剣道娘が朝っぱらか元気にまあ」


珠美「せいっ! おや? P殿、おはようございます。今朝もお早いですね」

P「おはよう。そういう珠美は今日はいつもより早起きなんだな。というか寝坊したり早起きだったり極端というか……」

珠美「ね、寝坊はそれほど多くは無いはず……まあ、今日はいつも以上に早く起きましたけど」

P「そうだなー。俺も、珠美がこの時間に起きてるとは思ってなかったが……」

珠美「日が昇ってからあまり時間も過ぎていませんからね。P殿はこれからどうなされますか?」

P「腹減ったから飯食おうかなって。いま食堂行っても清掃中で入れないし」

珠美「そうですか。であれば珠美はもう少し素振りをしておりますので」

P「んじゃ飯作ったら声掛けるよ」

珠美「分かりました!」

……
…………

――数十分後、ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

P「味噌汁、漬物、玉子焼き、大根おろし、豆腐、納豆」

珠美「こう……ご飯もありますし、魚が食べたくなりますね」

P「冷蔵庫に入ってなかったから仕方が無い。ほら、食べるぞ」

珠美「はい! いただきます!」

P「本当はなー、豆腐あったから麻婆豆腐作りたかったんだが」

珠美「朝から麻婆豆腐は重いのでは……」

P「いやまあ、そうなんだけどさ。作るの楽だし」

珠美「この前頂きましたが、P殿の麻婆豆腐はとても美味しかったですからね」モグモグ

P「母さんと暮らしてた頃に作ってたからな。母さんも一番気に入ってくれてたし」

珠美「なるほど、P殿のお母上も……」

P「……ま、俺の話は別にいいだろ」

P「そういえばさ」

珠美「はい?」

P「昨日は見れてやれなかったけど、仕事のほうはどうだった?」

珠美「お、お仕事ですか……」

P「ん、どうした? 何か失敗でもあったか?」

珠美「い、いえっ! 特別問題も無く……練習した通りに歌うことも出来ましたし」

P「そうか……何か言いたそうな顔してるけど、遠慮なく言ってくれていいんだぞ」

珠美「……その、珠美は元々、剣士としてここに来ている身で……それなのに、ああいった場に立つというのが」

P「まあ、仕事だから仕方がないと思うしかないんだけどな。アイドルやるの、嫌か?」

珠美「い、嫌ではありませんよ! 嫌であれば、珠美はとっくにここから去っていましたから……」

P(嫌いじゃないけど、思っていたことと違うことをやらされて戸惑っている感じか……仕事は出来ているみたいだから、気にしなくてもよさそうだけど)

珠美「とはいえ、剣となり人々を守る決意を固めていた身としては、少し思うところも……」

P「そう、か……まあ――」

ガラッ!

珠美「む?」ピクッ

歌鈴「……おはよー……ござぁいまぁ……ふわぁぁ……」

P「随分眠そうだな……」

珠美「おはようございます、歌鈴殿。寝ぼけたままですと、また転んでしまいますよ」

歌鈴「うんー……お母さん、ごはん……」

P「誰がお前の母親だよ。ほれ、いま味噌汁持ってきてやるからテーブルに座れ」

歌鈴「はぁぁい……」モゾモゾ

珠美「これは半分意識がなさそうですね……水場でタオルを用意してきます」

P「ああ」

歌鈴「ふわぁぁぁぁ……」

……
…………

今日はこれで終わります。

――午後、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(司令室)

P「ブロッサムディーヴァの出撃マニュアル……管理コンソールを開いて、各機が格納庫から移動されたことを確認……」ピッ、ピッ……

P「カタパルトへの機体固定確認後、地上の開閉ハッチ周辺に人がいないことを確認して開放……」カタカタカタッ

楓「はい、よくできました」パチパチパチ

P「ありがとうございます。初動マニュアルはこれで全部か……まあ俺は出撃する機会のほうが多いんだろうなぁ」

楓「そんなことはありませんよ。GUWDでは対処のしようがない敵が出た場合は、Pさんも司令室での指示を行うことになると思いますし」

P「それもなんだかな……無理に出張っても仕方が無いけど」

ピピピッ!

P「ん……もうそろそろで皆の迎えに行く時間か」

楓「いまのアラームですか?」

P「ええ、今日は全員学校に行ってますしね」

楓「お迎え、いつもは翠ちゃんか私たちでやってましたからね。助かっちゃいます」

P「全員同じ学校に通ってるなら送迎も楽なのに……」

楓「仕方が無いですよ。みんな、突然ここに呼ばれちゃったんですから」

P「そうなんですか?」

楓「あ、紗枝ちゃんは……違ったかしら。でも、他のみんなはそうだったはず……ちょっと、かわいそうだと思いますけど」

P「……まあ、こんなとこに来て戦うなんて、普通しませんからね。政府軍でもないのに」

楓「政府軍はアテにならないってお話ですし、私もそれで千秋ちゃんたちのところに来ましたから」

P「え、てことは楓さんたちは元々政府軍に?」

楓「あっ……え、ええ、まあ……美優さんと2人で、こっちに移っちゃいました。お給料もこっちのほうがよかったので」

P「最後の一言は余計だったんじゃないかな……まあ、なんでもいいか」カタカタカタッ!

ピピッ!

P「今日はみんなを迎えに行った後に訓練か。昨日の仕事の後処理もまだなんだがなぁ……」

楓「……」キョロキョロ

P「ん? どうしたんですか?」

楓「あ、いえ、いま誰もいませんよねーって確認を……」キョロキョロ

P「まあ、黒川千秋と翠はどこか行ってるし、美優さんは格納庫のほうに行ってるし、周子はいるんだかいないんだか分かりませんからね」

楓「……ふふっ、それならよかったです。Pさん、ちゃんと桜霞のみんなのケアは出来てますか?」

P「……まあ、多分、それなりに」

楓「そうですか。それなりに……出来ているならいいと思いますよ。ふふっ」


[3-1]


……
…………

――ブラックパール城(廊下)

P「さて……少し遅くなったけど、皆を迎えにいかないと……」

P「っとその前に、麗奈を探さないと……追加の記録媒体、昨日渡しそびれたしな」

P「とはいえ、麗奈の部屋は……」


「……でしてー」


P「ん?」ピクッ

P(いまの声……前にも聞いた……)


???「でしてー」


P「……」

P(あれは……女の子?)


???「でしてー」タッタッタッタッ……


P「あ、おい、キミ!」タタタタッ!


……
…………

――ブラックパール城(客間前)

???「でしてー」


P「ここ……客間か」

P(ドアが開いて……)ピクッ



麗奈「……」

『ウサミンパワーでー! メルヘンチェーンジー!』

麗奈「うさみんぱわーでー……」

『うーどっかーん!』

麗奈「……そう、ふふっ」



P(麗奈、ここでテレビ見てたのか……)

P「なあ、キミ……」クルッ


P「……あれ、さっきの子、どこに――」


麗奈「誰よ」ガチャッ!

P「うぉっ!?」ビクッ!

麗奈「なんだ、Pじゃないの。何か用?」

P「お、おお……いや、探してたとこだったんだけど、これ、昨日渡しそびれたデータ」

麗奈「ああ、破壊者のやつ。アリガト」


『ウサウサウーサ! ウーサミーン!』


P「……麗奈、テレビ見てたのか」

麗奈「そりゃアタシもテレビくらい見るわよ」

P「ふぅん……安部菜々か。好きなのか?」




麗奈「ええ、好きよ」



P「意外だな……こう、アイドルとか興味なさそうに見えたけど」

麗奈「いいでしょ別に。レイナサマだってエンタメくらい興味あるわよ」

P「まあうちも桜霞抱えてるしな」

麗奈「そういうこと。ほら、アンタはさっさと仕事に戻る!」バシッ!

P「いって叩くなって! わかったわかった……んじゃ、俺は桜霞のみんな迎えに行くから」

麗奈「そう、いってらっしゃい」

P「へいへーい……」


……
…………

――数時間後、東京、赤坂通り(車内)

P「まあ、皆揃って待ってくれるのはこっちも助かるんだけどさ……」


歌鈴「は、はいっ! プ、プロデューサーさんもっ、おぃそがしいと思ったので……」

紗枝「……」フンッ


P「キミの隣に座ってる子はフンッとか言ってるんだけど」

歌鈴「さ、紗枝ちゃーん……」

紗枝「うちは翠はんにお迎えに来てもろたほうがよかったどす」

P「いやホント送迎も僕の仕事なんで勘弁してくれませんかね」

あやめ「……」ニンッ……

P「ニンッは普通にしてくれていいんだけど……」

あやめ「む、そうでしたか?」

P「というか学生服にニンッて何かミスマッチな気がする」

あやめ「……この姿は、世を忍ぶ仮の姿ということではどうでしょうか?」

P「ああうん、いいと思う。忍者っぽいし」

あやめ「ではそういうことにしておきます!」

P「そんな忍者が好きなら、今度アトラクションの仕事でも取ってきてみるか……? まあいいや、後は珠美か」

あやめ「珠美殿は、今日は剣道の部活があるとのことで遅くなるようです」

P「そっか。だから珠美だけ集まってなかったのか……それじゃ一度皆を城に帰してから迎えにいくか」

紗枝「……このまま、うちらを何処か怪しいところに連れて行きはるとか」

P「しないっつの……」

歌鈴「わ、私は別に……」

あやめ「少し暑くなってきたので窓を開けてもいいでしょうか?」ウィーン

P「もう開けてるね。うん、別に好きにしていいから」


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(広間)

千秋「あら、みんな帰ってきたのね」

歌鈴「ただいま帰りまああああああっ!?」ズシャアアアアアアッ!!

あやめ「城に着いてから3回目の転倒、と」カチッカチッ

P(カウントしてんのか……)

翠「お疲れ様です。Pさんも、送迎ありがとうございました」

P「ああいや、俺の仕事だし……2人も帰ってきてたのか」

千秋「朝から別件があったのよ。黒川重工のほうで……今日は特に何もなかったのかしら?」

紗枝「なあんにもありまへんよ。この人に襲われることもあらへんし」

翠「そ、そうですか」

紗枝「千秋はんも、あの人に襲われないように気ぃ付けなあきまへんよ? いつうちらに手ぇ出してくるか……」

千秋「そ、そうね……気をつけておくわ、ええ……」

P(むしろ襲われたのは俺のほうなんですけど)

翠「と、ところで、珠美さんは、今日は部活動でしたね。この後はみなさんも訓練がありますし、私が迎えに行きましょうか?」

P「どうすっかな。俺の訓練よりは翠の仕事のほうが忙しいだろうし……」


晶葉「おおP、帰ってきてたか。千秋たちもいたのか」

千秋「あら晶葉さん。1日、城を空けたままにしてごめんなさい。今日はもう外に出る予定もないわ」

晶葉「そうかそうか。ところでPよ、お前今日は訓練の予定だったが、無しになったぞ」

P「あ、そうなの」

翠「どうしたんですか?」

晶葉「いやな、最近やったコイツの訓練データとタケミカヅチのフィードバックがまだ全部終わってなくて、オートメーション機能の調整が済んでないんだ」

P「昨日データ入れておいたのに、まだ終わってなかったのか?」

晶葉「お前のシミュレーション結果の伸びが良くて調整のやり直しが多いんだよ。こっちはそればかりやるわけにもいかないし、他の作業もある」

晶葉「というわけで、環境整備していないからPは今日の訓練は無しでいいぞ。桜霞は予定通りやらせるが」

P「んじゃ俺は珠美を迎えに行くか……翠、悪いけど空いた時間に皆の訓練の様子を見ておいてくれないか?」

翠「そうですね……この後、連合に渡すための資料の作成が残っていますけど……」


千秋「……」クイッ、クイッ


P「……」

翠「……」

P「……まあ空いた時間に頼む」

翠「分かりました」

千秋「ちょ、ちょっと! 何よそれ、貴方はともかく、翠さんまでそんなこと言うの!?」

P「いや……千秋は俺たちよりももっと忙しいだろ?」

翠「前回の会合であがった残課題も残っておりますし……」

千秋「わ、私だってたまにはみんなの様子とか、見ておきたいと思うわよ!」

P「あ、そう……それじゃあ、まあ邪魔にならない程度で」

千秋「そんなことしないわよ!」

晶葉「下らんこと話してないで、ほら、そろそろ訓練時間だろう。歌鈴たちは屋敷に戻って行ったぞ」

P「おっと……それじゃ俺もまた外に出るか」

千秋「まったく……私のことを何だと思って……」ブツブツ

翠「それより千秋さんは残っているお仕事を片付けてください……」


……
…………

――夕方、東京、珠美の通う高校(剣道場)

P「わざわざすみません、道場まで案内して頂いて」

顧問「いえいえ、いつもお迎えに来ている方と違ったので最初は驚きましたがね。IDを見させて頂くことになってしまいましたが」

P「セキュリティもありますし仕方がないかと。それにしても、随分と活気のある道場ですね。打ち込みをしている生徒たちの気迫も凄い」

顧問「大会が近いので、生徒達も気合が入っている状態でして……ええと、脇山ならあそこに」

P「んっと……」キョロキョロ



珠美「……」



P(あそこか。奥で正座して、他の生徒と一緒に練習試合を見ているのか……)

P(練習試合をしている集団にいるってことは、珠美も大会に出るメンバーか)

顧問「脇山!」

珠美「……はいっ」ビクッ!

顧問「お迎えの方が来ているぞ。部活もそろそろ終わりだが、今日は用事があるとお話を貰っている」

珠美「はい、この後は……」

顧問「まあまあ、道場の片付けはいいから先に帰ってもいいぞ」

珠美「……そうですか。では、申し訳ありませんがお先に失礼します」スッ……

P「……」

珠美「P殿、ただいま着替えてきますで外でお待ちください」

P「ああ」

……
…………

――数十分後、東京(車内)

P「……」

珠美「……」

P「……そういえばさ」

珠美「はい?」

P「久しぶりに高校に行ったけど、皆若いな」

珠美「ま、まあ、P殿にとってはそうでしょうけど……」

P「部活っていいもんだよな。俺も、野球部に入ってレギュラーで試合に出たりとかしたなぁ……」

珠美「レギュラー……」

P「顧問の先生が話していたけど、大会があるんだろ? 珠美も皆と一緒に出るのか?」

P「試合の日は予定入れないようにしないとな。訓練もだけど、アイドル仕事が入っちまったら――」

珠美「珠美は……出ません」

P「出ないのか?」

珠美「はい。その……補欠です」

P「補欠かぁ……誰か欠員が出たら試合に出れるけど。早々そんなこともないからな。次はレギュラーになれるといいな」

P(……ん、待てよ?)

P「……俺の記憶違いか、経験がないからそう思ったのかもしれないんだけどさ」

珠美「なんでしょうか?」

P「珠美、結構強いよな。訓練でも俺や翠や、あやめと組み手するときとか、ありゃ相当……」

珠美「い、いえっ! あの……実戦と、試合はまた違いますので……」

P「……ふぅん、そうなのか」

珠美「そ、そういうものです! ささっ、P殿、急いで戻らないと珠美も訓練が出来ませんので!」


……
…………

――夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(食堂)

あやめ「珠美殿ですか? ここで幾度と無く手合わせをしておりますが、良い剣士ですよ」

翠「元々珠美さんはあやめさんと同じく、ダイオウカーの適性だけではなく、生身での白兵戦を考慮した上でお声を掛けましたので……」

P「え、てことは2人揃ってここに来る前から忍者だったり剣士だったりしたの?」

あやめ「わたくしはそうですね。忍びの家系に生まれた身なので……珠美殿も、流派までは聞いてはおりませんが、同じかと」

P「ふぅん……それでも剣道でレギュラーになれないのか。凄まじく厳しい世界だな、剣道」

翠「いえ、あの、Pさん……そのお話はまた別かと……」

あやめ「真剣で実戦が出来る者が、あくまで競技としての剣道に参加するとなると……難しいと思いますよ」

P「そういえばキミら、普段は竹刀や棒切れ振り回して遊んでるけど訓練するときは真剣とクナイ持ち出してたね……」

翠「ある程度実戦を想定しておく必要もありますから」

あやめ「言い方は悪くなりますが、珠美殿の実力で学生レベルの剣道の試合に出たら一方的でしょうね。相手は嬲り殺しになるだけかと」

翠「珠美さんの場合は実戦のために居合い以外の術も身につけていますし、公式の試合に出れないのも仕方が無いですね」

P「おっかね……まあ、分かった」

ガタッ

あやめ「む? P殿、どちらに?」

P「いや、大体話は聞かせてもらったし、とりあえず大丈夫だよ。ちょっとこれから部屋に戻って残った仕事も片付けなきゃならないし、また明日な」

……
…………

――ブラックパール城(廊下)

P「……ま、そりゃ大会とかには出ないわけだ」

周子「そーそー。色々あるんだよねー」

P「仕方が無いだろうけどな。ちょっと違うだろうけど、プロとアマチュアで殴り合いするようなもんだろうし」

周子「えーっと……そうそう。大変だもんね。うん」

P「ごく自然に会話に繋げようとしてくるのは何なんだよ」

周子「えー? だっておもろいことないかなーって思ってたからさ。あたし暇だし」

P「……何でここにいるんだよ?」

周子「んー、難しいこと聞くねー。複雑なようで単純な理由があるっちゃあるんだけどさー」

P「まあ、いいけど」

周子「え、聞いておいてそれ?」


P「俺のほうが新入りだし、深く聞いても仕方ないだろ」

周子「いやー、相変わらず変なところでさっぱりしてるね。まーあたしもそっちのほうが楽でいいんだけどさ」

P「……1つ聞くけど、麗奈とは付き合い長いのか?」

周子「あたし? うーん……長いって言われたら長くて。短いって言われたらむしろ一瞬かな?」

周子「レイナおばーちゃんとか言っちゃう仲? うーん、でもそれもねー。あたしだと微妙に違うっていうか……」

P「ばーちゃんて」

周子「おばーちゃんでしょ?」

P「……聞かなくてもよかった気がする。ありがとう」

周子「どういたしましてー」

……
…………

某ウイルスばら撒いた奴は滅んでいい

――数時間後、ブラックパール城(Pの部屋)

P「んんん? これ表の数字おかしいだろ……黒川千秋何やってんだか」カタカタカタッ!

P「まあいいや……こっちのデータ渡して、数字直しておくか」

P「あとは、博士の――」

ピピピッ!

P「ん、通信……はい」ピッ!

歌鈴『あっ、Pしゃん! お、起きてましたか?』

P「ああ、まだ仕事残ってるし……どうした?」

歌鈴『そ、その、そろそろお屋敷の明かりを消そうかと思ったんですけど、珠美ちゃんがまだ帰ってきてなくて……』

歌鈴『だから、Pさんのところに、行ってないかなぁって……』

P「珠美? こっちには――」

P(……待てよ)

P「……ふうん」カタカタカタッ!

P「……こっちにいるから大丈夫だよ。後で送るから」

歌鈴『そ、そうですか? よかったぁ、Pさんところにいたんですね……う、うらやまし……じゃなかった』

P「……まあ、とりあえず歌鈴は早めに寝とけよ」

歌鈴『は、はいっ! おやすみなしゃい!』

P「ああ、お休み」ピッ!

P「……さてと、どこら辺にいるかな」ガタッ!


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(正門)

珠美「……」ビュッ! ビュンッ!

珠美「……」


珠美『珠美は……出ません』

P『出ないのか?』


珠美「珠美は……出るわけにはいきません」

P「勿体無いな。せっかくだし出ちゃえばいいのに」

珠美「いえ、ですがあのようなことを……わぁっ!?」ビクゥッ!

P「珠美なら高校生の大会くらいなら全然余裕だろ」

珠美「P殿! い、いきなり話しかけないでもらいたいのですが……というか、どうしてここに……」

P「さっき調べたけど、明日大会なんだろ? 歌鈴が珠美のこと、帰ってこないって心配してたぞ」

珠美「そ、それは……歌鈴殿には悪いことをしてしまいましたね……」

P「……大会、出たいんじゃないのか?」

珠美「……いえ、出たいとは、思っていません。珠美は……まだ未熟ですから」

P「そうか?」

珠美「そう、ですね。珠美は……今の学校に通うまで、家の者に剣の手ほどきを受けてました」

珠美「いつかの未来、弱きを守るための剣として、珠美は己を磨いてきました」

珠美「剣道部は……高校生活の中で、集団行動を学ぶ一環として入部を許可してもらいました。ですが……」


『ん、ずいぶん小さいヤツが入部してきたもんだなぁ。ちゃんと竹刀触れるのか、コイツ?』

『なっ……し、失礼な! 珠美の腕をなめてもらっては困ります!』


珠美「部活動の先輩に、快くないことを言われ、ついカッとなってしまい……」

P「ああ、大体分かった。ボコボコにしたってことね」

珠美「ま、まあ、ボコボコ……までは……」

P「でも気にしても仕方ないだろ? そりゃあ、少しは我慢する必要もあるかもしれないけど」

珠美「はい……ですが、珠美は自分が許せないのです」

珠美「珠美の剣は、誰かの為に……弱きを守る剣。未熟ゆえに珠美自身が、守るべきものに手を上げた。その事実が許せないのです」

P「別にそんなのいいじゃん」

珠美「はい、ですから珠美は……ええええっ!?」

P「部活の先輩はボコボコにしたかもしれないけど、珠美は今はダイオウカーに乗って戦ってるじゃん。ちゃんとみんなを守ってるんだし」

珠美「い、いえ……それとこれとは話が……」

P「じゃあ聞くけど、ボコボコにした先輩には謝ったか?」

珠美「そ、それは当然です!」

P「ならいいじゃん。悪口言われてボコボコにやり返して、謝ったんだからそれでおしまい」

珠美「ですが……」

P「……あんまり、難しいことはいえないんだけどさ」

珠美「はい?」

P「珠美にも色々あるかもしれないけど、俺はそういう理由で、今の珠美たちの時期にやりたいこととか、やらないままにしてほしくないんだよな」

珠美「P殿……?」

P「……まあ、俺がそう思ってるだけなんだけどさ」

P「やりたいと思うことを、やらないまま終わらせるのは……勿体無い。今しか出来ないことかもしれないんだし」


『そう……P、貴方にはその力がある。私は貴方を導く……その役目があるわ』


珠美「今しか出来ないこと……」

P「……」

珠美「P殿?」

P「ん、ああ。だからさ、今回は補欠だとしても……部のみんなを精一杯応援して、士気を上げてやるとかさ」

P「誰かの為に頑張ることなら、応援だって立派なことだぞ」

珠美「……そう、ですか」

P「まあ、俺がそんなに気に掛けても仕方が無いよな。後は珠美に任せるよ。ただ……」

珠美「ただ?」

P「とりあえず今日はもう寝ような。0時過ぎるぞ」

珠美「は、はい……申し訳ありません」

……
…………

――翌日、朝、ブラックパールガーデン、屋敷(中庭)

P「……」


珠美『いつかの未来、弱きを守るための剣として、珠美は己を磨いてきました』

珠美『珠美の剣は、誰かの為に……弱きを守る剣。未熟ゆえに珠美自身が、守るべきものに手を上げた。その事実が許せないのです』



P(弱気を守るため……俺も、同じだ)


『貴方の意思で……誰かを、守りなさい……』


P(母さん、俺は……俺に、珠美たちみたいな子を守る力はあるんだろうか)

紗枝「……」

P(今の俺は、守られる立場で……俺は、皆を守ることはできるんだろうか)

紗枝「……」

P(俺の戦う相手は、母さんが教えてくれた事だけじゃどうにもならない)

紗枝「変態さんがお屋敷の縁側に座って、なんや考え込んどりますなぁ」

P(破壊者が暴れればそれだけ被害が出る……俺みたいなヤツが、たくさん出てくる……俺は、それが許せないのに……!)グッ!

紗枝「……」ムスッ

P「……俺は、どうすれば」

紗枝「……?」

P「いや……今悩んでもどうしようもない、か。俺は、俺の出来る範囲で……あの子たちを守ってやらないと。俺自身はどうなったとしても」

ピピピッ!

P「連絡……はい」ピッ!

翠『Pさん、今どちらに?』

P「屋敷にいるけど、何かあったか?」

翠『まだ営業に出ておりませんでしたか……申し訳ありませんが、司令室まで来て頂けますか?』

P「分かった。手は空いてるからすぐ向かう」ピッ!

P「……そうだな、やっぱり今は、出来ることをやるしかない」

タタタタタッ!


紗枝「あん人、何を……」


……
…………

――数分後、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(司令室)

パシュンッ!

P「すまん、遅くなった」

麗奈「遅い」

P「だから遅くなったって言ったじゃん……屋敷からここまでって距離あるし……」

周子「ここ広いしー?」

美優「月からのデータ受信、完了しました。対象……地球に向けての接近する様子はありません」

P「月からのデータ……ヤタノカガミが起動したのか?」

翠「はい、Pさんはまだ観測機の起動を見たことは無かったと思いますので、一度お呼びしておいたほうが良いかと思いまして」

P「まあ助かる……てことは、破壊者が出たのか。皆を呼び戻さなくていいのか?」

楓「学校に行ってる子は呼び戻します。城にいる子たちは破壊者が地球に降下次第動いてもらいます」

P「降下次第? 動いてないのか?」

ピピッ!

晶葉『初期解析の結果が出たぞ。暫定コードはフェンリル、パッと見はデカイ犬だが四足に法術と同等の力が集中している』

楓「犬だけにですか?」

P「今度は足が強いヤツなのか……」

千秋「晶葉さん、破壊者が降下してこないのは何故かしら?」

P「ん……黒川千秋、いたのか」

千秋「最初からいたわよ!」

翠「まあまあ……」

晶葉『それは分からん。前回の2匹はまっすぐこちらに来たが……月周辺の状況にも特に変化は見られない』

楓「それじゃあいまのうちに、学校に行ってる子たちは呼び戻しておきましょうか」

P「ああ、そうだ……」ピクッ!

P「……うん、それじゃ俺が迎えに行きます」

美優「お願いします……後は、ブロッサムディーヴァを格納庫から出しておきませんと……」

P「……」

パシュンッ!

……
…………

――東京、渋谷区(都立体育館)

顧問「よし、それじゃあ全員着替えを済ませて10分後に会場に集合!」

珠美「……」


珠美(試合に出るみなさんの士気は十分……珠美は、ただ座って見ているだけ)

珠美(……)


P『やりたいと思うことを、やらないまま終わらせるのは……勿体無い。今しか出来ないことかもしれないんだし』


珠美(剣の道を歩んでいる珠美は、競技としての剣道に固執しているわけではなくて……だけど……)

珠美(みなさんの、士気の高さ……その気は、この場にいる全員の意志を1つにしようとしている。試合に勝ちたい、と)

珠美(この光景を守りたい……珠美は、守ろうと思っている、はず……)

珠美(弱きを守るための剣として……)

珠美(珠美は……本当は、どうしたいんでしょうか……)


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

ピピッ!

美優「これは……千秋さんっ」

千秋「どうしたの?」

美優「破壊者……フェンリルが地球に向けて降下を始めました……降下予測ポイント、割り出し開始します」カタカタカタッ!

翠「降下までにタイムラグがある……何故……?」

千秋「そこは開発室で考えるのが仕事よ。私たちは戦闘の準備を」

楓「分かりました。お屋敷にいる子たちに通信と……あら、Pさんが」

翠「Pさんがどうかしましたか?」

楓「いえ、格納庫にいるみたいです。学校に行ってる子たちを迎えに行ったはずですけど……」

……
…………

――ブラックパール城(格納庫)

整備士「Pさーん、懸架用アーム外付けできましたよー」

P「悪いな整備士。これ、動きそうか?」

整備士「ブロッサムドリラー1機ならタケミカヅチでもギリギリ懸架できますけど……飛行安定しませんよ?」

P「そこら辺はオートメーション機能を信じてなんとか……珠美に届けてやらないと」

ピピピッ!

P「また通信? はい」ピッ!

翠『宙域で停止していた破壊者が活動を再開しました。地球に向けて降下中です』

P「マジか……そのままお引取りしてくれればよかったんだけど」

翠『今日は学校に行っているのは珠美ちゃんだけですので、格納庫にいるのであればそのままお迎えに行ってあげてください』

P「そんな気がしてたから整備士に懸架アームつけてもらってたし大丈夫、うん」

整備士「タケミカヅチ、カタパルトまで移動させますよー!」

P「おっと、それじゃそろそろ出るから通信切るよ。また後でな」

ピッ!


P「さてと……試合中だろうし、珠美には悪いことをしたな。これも、仕方が無いか……」ピッ、ピッ、ピッ!


歌鈴「お、お待たせえええええええ!!」ズシャアアアアアッ!!

あやめ「今日の転倒4回目ですな」カチッカチッ!

紗枝「なんやあの人……珠美はんのどりらー担いで」


P「おーお前たちも来たか。珠美を連れてくるまでの間、悪いけど何とか破壊者を押さえ込んでくれ。どの道ダイオウカーになれないんだし」

歌鈴「いひゃい……わ、分かりましたぁ……」グスッ……

あやめ「牽制で敵の足を止めることが出来ればよいのですが……」

P「ちょっと遅くなるかもしれないけど、そこは踏ん張ってくれ」

紗枝「あんさん、そないなこと言ってちゃあんと珠美はんを……」

P「それじゃタケミカヅチ、出るぞ」パシュンッ!

ドシュウウウウウウンッ!!

紗枝「……」ムスッ

整備士「みなさん、他のブロッサムディーヴァも発進準備できています。搭乗お願いします」


……
…………

――ブラックパールガーデン(上空)

P「ドリラーめっちゃ重い……支援機なんだから戦闘機1機くらい運べるようにしておいてくれよ……」

ピピッ!

P「バランサーの設定変えるか……いや、とりあえずオートメーション機能に任せとくか。さてと、珠美のいる場所は……」カタカタカタッ!

P「都立体育館か……昼前で、試合の最中だろうな」

P「……ゴメンな」ピッ!

ドシュウウウウンッ!!


……
…………

――東京、渋谷区(都立体育館)

『政府からの緊急避難警報が発令されました。東京都上空に未確認飛行物体を確認しています。避難対象は、渋谷区、港区、千代田区となります』

珠美「破壊者……こんなときに!」

顧問「大会は中断だ! 全員、荷物を持たないでシェルターに避難するぞ、係りの者は点呼を取れ!」


「なんだよ、試合中に……」

「くっそー……続きどうなるんだろ」


珠美(隙を見てここを抜け出し、P殿や翠殿を待つべきか……)


「でもよう、またアレ出てくるんだろ? スーパーロボット」

「アイツがデカブツ倒してくれるんだし、俺たち逃げる必要ないじゃん。さっさと来てくれりゃいいのによ。遅いんだよなぁ」


珠美「なっ――」

ピピピッ!

珠美「……はい、脇山です」ピッ!

P『あと5分くらいで着くから、どっか移動しておいてくれ』

ピッ!

珠美「……」


……
…………

――東京(戦闘区域)

ズドォォォォンッ!!

フェンリル「……!」

あやめ『破壊者の降下、確認しました』

歌鈴「犬っぽい……」

紗枝「ろぼっとの犬なら、もっとかぁいい子もおるんやけどなぁ」

フェンリル「……!!」ビュッ!

ヒュカカカカッ!!

歌鈴「えっ!? き、消え……きゃああああっ!?」ドガアアアアンッ!!

あやめ『歌鈴殿!』

ピピピッ!

楓『みんな、気をつけて……今回のわんこは足の力が強いみたいだから……』

あやめ『四足による高速移動……なるほど、足を潰すか動きを見切るか……紗枝殿!』ギュンッ!

紗枝『れーだーには捕捉しとります!」

あやめ『ストライカーのミサイルで敵の動きを制限します、その隙に足を!』ボシュシュシュッ!!

ドガガガガガァンッ!!

紗枝『ぶろっさむびーむ!』ズドォンッ!!

フェンリル「!!」ビュンッ!

あやめ『くっ! 奴め、速い!』ギュンッ!!

紗枝『あきまへん、動きが速うてみさいるも避けられてまう……』

歌鈴「つ、ツクヨミヒメじゃ追いつけませーん!」ガションッガションッ!

フェンリル「!」シュッ!

歌鈴「あああああっ!?」ドガガガガッ!

あやめ『奴……己の速度を利用してツクヨミヒメに突撃するとは……!』

紗枝『うちらじゃ攻撃も見切れまへんなぁ……どないしよ』

……
…………

――東京、渋谷区(都立体育館裏)

珠美「……来た、P殿!」

ドシュウウウウン……

P「おーい、ドリラー持って来たぞー」

ガコンッ!

珠美「ドリラー……珠美の……」

P「ん、どうした? 急いで乗り込んで刻印同調済ませないと、みんなは先に戦ってるぞ」

珠美「……」

P「何かあったか?」

珠美「……いえ、珠美は、このまま戦に赴いてもよいのでしょうか」

P「いいぞ」

珠美「か、簡単に言ってくれますね……」

P「何かあったのか、聞くだけなら聞いてあげるぞ」

珠美「……珠美が、守ろうと決めていたもの、珠美や、みなさんが傷つき、それでも守る必要があるのと……そう思いまして」

珠美「珠美たちのことを知らない、心無い者たちを……珠美は、本当に守るべきなのか……」

P「うーん……別に守らなくていいんじゃないかな」

珠美「え、えええええ……」

P「じゃあ聞くけど、部活の嫌な先輩と顧問の先生、2人が同じ場所にいて近くに破壊者がいたらどっちを守る?」

珠美「ど、どっちって……いやぁ、破壊者は大きいですから、結果的にどちらも守ることになるのかと……いや、ですが部活の先輩は……」

P「そんなもんだよ。珠美が思ってるほど、誰を守るか、守らないかなんて難しいことじゃないって」

P「珠美が顧問の先生助けたついでに、嫌な先輩も助かってるってことだよ。俺たちは慈善事業でやってるんじゃないんだから」

P「守りたいって思った人たちだけ守って、後はついででいいじゃん」

珠美「……珠美には、P殿のような考えは、まだ持てません。難しいと言いますか、割り切れないと言いますか」

P「まあ、それも仕方が無いか。それじゃあ、1つだけ言っておくぞ」

珠美「はい?」

P「もし俺が、珠美と他の誰かを守らなきゃならない立場になったら……間違いなく珠美を守るぞ」

珠美「……は?」

P「そりゃそうだろ。珠美は顔も知ってるし、同じとこで飯も食ってる。一緒にこうやって戦う仲間で……知ってるからこそ、俺が大人な分もあって、守ってやらなきゃって思うこともある」

P「この前の戦闘のときも、そうだな……守らなきゃって気持ちがあると無いとじゃ、力の入り方が違うしな」

珠美「守るための気持ち……ですか」

ピピピッ!

楓『あのPさん、まだ珠美ちゃん見つかりませんか? 桜霞、結構ピンチなんですけど』

P「あ、すみません今見つけました。これから一緒に戦闘区域に向かいますから」ピッ!

P「というわけだ。色々思うところはあるかもしれないけど、今回は踏ん張って戦おうか」

珠美「……は、はいっ」


……
…………

――東京(戦闘区域)

フェンリル「……グルルルル!」パアアアッ!

歌鈴「な、何!?」ビクッ!

あやめ『奴の前足の力が上昇しております……このエネルギーの高さは……』ピピピピッ!

紗枝『今の攻撃でもしんどいのに……!』

フェンリル「ガアアアアアッ!!」ヒュカッ!

あやめ『歌鈴殿、紗枝殿!』

歌鈴「ひっ!?」

紗枝『うううっ……』


珠美『ドリルアターック!!』ギュルルルルルッ!!

P『飛び掛る場所さえ分かればミサイルも当てれる!!』ボシュシュシュッ!!

ドガアアアアアンッ!!

フェンリル「!?」ザザザッ!

歌鈴「Pさん!」

紗枝『珠美はん、間に合ったんどすなぁ』

珠美『すみません、遅くなりました!』

P『あ、ゴメン、俺の武装懸架アームでドリラー運ぶのにほとんど外してきたから今のミサイルで終わりだ』ピピッ!

あやめ『仕方がありませぬ、P殿の役目の1つですから』

P『一応斬鉄してみるかぁ……? いや、アイツ速そうだし斬れる自信ないや』

紗枝『ならあんさんははよう、何処かに逃げといてや』

P『はい、そうします』

ピピピッ!

千秋『桜霞、全員揃ったわね』

歌鈴「ち、千秋しゃん! で、でも後、ブロッサムウイングが……」

ズドォンッ!!

フェンリル「!」ドガアアアアンッ!

???『でしてー』ギュンッ!!

歌鈴「あ、来ました」

珠美『ウイングには一体誰が……』

ピピピッ!

晶葉『みんな気をつけろ、フェンリルの前足の破壊力はダイオウカーの装甲にも大きなダメージを与える。ブロッサムディーヴァでは防ぎきれないぞ』

麗奈『タケミカヅチなら一発でアウトね』

千秋『ええ、それじゃあ桜霞……月下転身よ!』

歌鈴「はいっ! フィールドジェネレーター、起動!」バッ!

あやめ『合体の陣……いざ!』

珠美『珠美たちの力を一つに!』

紗枝『歌鈴はん!』

パアアアアアアアッ!!!!

???『……でしてー』

P『ウイングはいつの間に来てたんだ……』

フェンリル「!?」

歌鈴「いきますっ! 月下……転身!!」

ブッピガンッ!

パシュウウウウウンッ!!

「「「「降臨! ダイオウカー!!」」」」


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(司令室)

美優「ダイオウカー……合体完了しました」カタカタカタッ!

晶葉『とはいえ、フェンリルの攻撃は強力だ。ツクヨミヒメも合体までにダメージを受けてしまっている』

晶葉『フィルードジェネレーターの起動で法陣を展開している。ある程度はダメージも抑えられるが……』

楓「歌鈴ちゃん、紗枝ちゃん、あやめちゃんの刻印、消耗していますね」

翠「晶葉さん、何か対策はありませんか?」

晶葉『足を止めるか、奴の動きを見切るしかあるまい。とはいえ、これまでの戦闘を見る限りでは苦しいか……』

周子「……」スー、スー……

麗奈「しょうもな……ヨーロッパの奴らなら動きだけならもう少しマシだったケド」

千秋「いえ、彼女たちを信じましょう。桜霞……ダイオウカーならばやってくれるはずよ!」

楓「珍しく精神論でいきますね。イケイケですね」

千秋「い、いいでしょ別に……」

……
…………

――東京(戦闘区域)

フェンリル「ガアアアアッ!」ビュッ!

歌鈴「あうううううっ……!」ガガガガガッ!

あやめ『ダイオウカーでも動きが……』

紗枝『みさいるもびーむも、全部避けられてまうし……』

P『皆気をつけろ、また奴が飛び掛ってくるぞ!』

フェンリル「ガアアアアッ!!」ビュッ!

珠美『……はっ!』ギュルルルルッ!!

ガガガガガッ!!

フェンリル「ガガッ!?」

歌鈴「た、珠美ちゃんのドリルが当たった……」

あやめ『珠美殿、奴の攻撃を見切れたのですか?』

珠美『見切るだけなら……掠めただけです。ダイオウカーの得物がドリルなので、正確な狙いが付けられません……』

紗枝『草薙剣、使ったほうがええやろか?』

珠美『いえ、刻印の消費が激しい草薙剣……一撃で決めれる状態でなければ……』

P『剣か……確かに、ドリルと剣じゃ使い勝手が違うか……おい博士、何かないか?』

ピピピッ!

晶葉『あるぞ、マニュアル表示させる』ピピピッ!

フォンッ……

歌鈴「マニュアル……ブロッサムソード?」

珠美『草薙剣以外にも剣があったのですか!?』

晶葉『まあ、あったというか、うん』

あやめ『む、お待ちください。これは……』

紗枝『建御雷の変形まにゅある……?』

P『ちょっと待ってくれませんかね。俺の機体が剣に変形するのこれ?』

晶葉『タケミカヅチの全身に実体剣を装備させているのは、ブロッサムソードへの変形時に使用するためだ』

晶葉『変形時はタケミカヅチの全身にビーム粒子が機体全体に定着される。ソード機能以外は最小限の機能のみ稼動、機体は待機状態となる』

P『まじかー……まじかぁ……』

珠美『し、しかし晶葉殿、タケミカヅチを剣にするとなれば、P殿に危険が……』

P『よーし、変形いくぞ!』

歌鈴「ええええ……」

紗枝『なんやあんさん……えらい上機嫌で』

P『だって剣に変形してズバァー!! って敵を斬るとかカッコいいだろ! よし珠美、任せたぞ!』

美優『の、ノリノリですね……』

楓『男の子ですからね』

麗奈『んっとにもう……』

紗枝『あんさん! もっと真面目に――』

P『俺は大真面目だぞ! 珠美、後のことは任せた!』カタカタカタッ!

ブッピガン!

あやめ『有無を言わさず変形しましたね』

珠美『なんと、タケミカヅチが剣の姿に……』

P『草薙剣と比べると貧弱感がある……とはいえ、皆の負担を減らすことができるなら何でもいいか。歌鈴!』

歌鈴「は、はいっ! ブロッサムソード……!」ガションッ!

P『タケミカヅチにダイオウカーのフィールドジェネレーターをリンク、ビーム粒子再形成……』カタカタカタッ

歌鈴『た、珠美ちゃん、ダイオウカーの腕の制御、お願いしますっ!』

珠美『で、ですが……』

P『珠美!』

珠美『っ!』ビクッ!

P『……守ってくれよ』

珠美(守る……共に戦う、P殿やみなさんを……)

珠美『……ブロッサムドリラーとの刻印同調率……上昇します! うっ……』ググググッ!

紗枝『珠美はん!』

珠美『ぐっ……』ハァ、ハァ、ハァ……

P『モーショントレースが出来る歌鈴以外が、ダイオウカーを直接制御するとなると、刻印の消耗も激しいか……!』

フェンリル「グググ……ガァッ!!」ヒュバッ!!

珠美『……見えた、一閃!!』ヒュカカカッ!!

シュパアアアアアンッ!!!!

フェンリル「!?」ドガアアアアアンッ!!

P『うおおおおおっ!?』

楓『タケミカヅチのコックピット、衝撃を緩和しきれていないみたいです』

麗奈『あれだとミンチになるかもね』

P『おぼぼぼぼぼ……』

晶葉『奴の足を断った! 今だ!』

歌鈴「はい! 珠美ちゃん、あとは任せてください! 草薙剣!!」

パアアアアアアッ!!!!


ヒュカッ!!

フェンリル「……!」

ズドォォォォンッ!!!!

歌鈴「私たちの、刻印……最後まで燃やして……!」

歌鈴「ブロッサムストーム!!」

???『でしてー』

ビュオオオオオオオオッ!!!!

フェンリル「!?」ググググッ!!

歌鈴「やあああああっ!!」ギュンッ!

歌鈴「桜! 花! 斬!」ヒュカッ!!

ズバアアアアアアアッ!!


フェンリル「……」

ドガアアアアアアアンッ!!!!


歌鈴「悪鬼、滅殺……!」


珠美『お、終わりました……』ハァ、ハァ、ハァ……

あやめ『珠美殿も歌鈴殿も、お見事でした』

美優『……あ、あら? Pさんの反応が』

翠『もしかしたら、コックピットの中で気を失っているのかもしれませんね。回収しておきませんと』

紗枝『そんまま目覚まさんでええのに』

麗奈『鍛え方足りないわねー』

翠『みなさんお疲れ様です。Pさんはこちらで回収しますので、そのまま帰還してください』

歌鈴「わ、わかりましたぁ……疲れた……」

……
…………

――夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(医務室)

P「……はっ!?」ビクッ!

P「こ、ここは……なんだ、医務室か」

珠美「……P、殿」

P「珠美か……? 戦闘は……その様子だと、終わったのか」

珠美「は、はい……P殿のおかげで、敵の足を止めることができたので……」

P「そ、そうか、よく分からんうちに気絶してたけど終わったのか。すまんな、起きるまで看ててくれたのか」

珠美「え、ええ……これも、P殿の……おかげ、ですから……ら……」

ドサッ……

P「お、おい珠美!」

珠美「い、いえ……少し、刻印の消耗が激しかったもので……」ハァ、ハァ……

ピッ、ピッ、ピッ……

P「計器の数値が……刻印の消耗、相当なものだったのか……」

珠美「か、歌鈴殿は……ダイオウカーを操るために、これほどの消耗をしていたとは……や、やはり、侮っておりましたね、珠美は」

P「大丈夫か珠美、あまり喋らなくてもいいぞ」スッ

珠美「……P、殿……珠美は、どうにか……なってしまいそう、です……身体が、熱い……」

珠美「珠美を……どうにか、して……ください……」

P「……いいのか?」

珠美「は、はい……P殿であれば……」ハァ……ハァ……ハァ……

ギュッ……

珠美「んっ……ちゅっ、P殿……はぁっ……」

ピピッ、ピピッ……

珠美「キ……キスというものは、これほど……よ、余計に、身体が熱くなって……んっ……」ビクンッ!

P「刻印が消耗しているから、な……普段キスするだけなら、そうはならないよ」

珠美「んっ……」

P(……歌鈴だけじゃなくて、珠美でもこうなるのか)

P(皆が、こうなってしまうのが避けられないなら……皆の負担は、出来る限り俺で抱えなければならない、か)

珠美「P……どの、珠美は……ぁ……」

P「ああ、落ち着いて、ゆっくりやっていけばいい。今日は、俺も珠美に守ってもらったからな」

珠美「珠美が……そう、ですか……それなら……よかった……」


[3-2]

……
…………

――翌日、ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

ガラッ!

珠美「おはようございます!」バンッ!

歌鈴「あ、おはようございます、珠美ちゃん。朝ごはん、出来てますよ」

紗枝「おはようさんどす。珠美はん、今日は調子良いいんどすか?」

珠美「はい! え、えへへ……P殿に、色々とお手間を掛けてもらいましたので……」

紗枝「……」ピクッ

歌鈴「あ、もしかして珠美ちゃんも……? い、いいなぁ……」

珠美「い、いえいえそんな……いやぁ、珠美もこんなところで大人に近付くとは、思っておりませんでしたが……」


ガラッ!

P「おーい、皆起きてるかー」

バシッ!!

P「いぃって!?」ビクンッ!

紗枝「……変態が何しにきはりよったんどすか?」

P「いやね、僕も仕事なんでね……だから薙刀で叩かないでくれませんかね……」

紗枝「叩かれるのが嫌なら、斬り捨てたほうがええやろか?」

P「叩かれるほうがマシですね……」

珠美「P、P殿! おはようございます!」

P「ん、ああ珠美か。元気そうだな、もう大丈夫か?」

珠美「お、おかげさまで、と言いますか……そ、その……いやはや、なんと言えばいいのか……あのような快感は、珠美には刺激が……」

P「まあ、うん……今後もちらほらそういうことになるというか……みんながそうならないように、俺も頑張るから」

歌鈴「うひぇっ!? わ、わたしゅぃは……べ、別にいいかなぁって……」

紗枝「歌鈴はん……珠美はんも……」ハァ……

P「……ん? あやめはいないのか」

歌鈴「はい……お部屋にはいませんでしたけど……」

P「次の仕事の話があったんだがなぁ……ちょっと探してくるか」

歌鈴「Pさん、朝ごはん一緒にどうですか?」

P「おおう……悪い、ちょっと翠から次の仕事の為に急いで確認してくれって言われててな、昼は一緒に飯食おうか」

歌鈴「そ、そうですかぁ……」

紗枝「あんさんと一緒にいると、うちまで襲われてまうし、早ういなくなってほしいわぁ」

P「ちょっと酷くないですかね……まあいいや、それじゃ後でな」

……
…………

――翌日、ブラックパールガーデン、屋敷(玄関)

珠美「P殿!」

P「ん、どうした?」

珠美「いえ、その……昨晩、P殿と共に過ごしていた夜に、考えていたのですが……」

P「何を?」

珠美「珠美は、何を守るべきなのか……」

P「……」

珠美「考えても、分かりませんでした。全てを守るために剣を振るえるのか、P殿のように割り切ることが出来るのか……」

珠美「ですが、せめて……珠美の見えるところだけは、守り抜いてみせようかと思います。珠美の剣で……昨日のように」

P「……そうか、それならいいんじゃないか」

珠美「いつかは、珠美自身が見極めようと思っています」

P「まあ俺、昨日はコックピットの中でゲロ吐いて気絶してたけど」

珠美「そ、それは……P殿が珠美の剣となっていたので、仕方が無いかと……」

P「いや冗談冗談……っと、それじゃこれからも一緒に、頑張ろうな」

珠美「はい!」

……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(麗奈の部屋)

麗奈「……そう、もうそろそろでこっち来れるのね」

麗奈「ま、いいけど……ええ、みんな元気でやってるわよ。みんな、ね」

麗奈「アイツがどう成長しているか……それはアンタ自身で確かめてみればいいじゃないの」

麗奈「狐も適当にしててあんまり仕事もしてないし、結局レイナサマが骨折らないとダメなのよねぇ」

麗奈「こんな年寄りばかりこき使って……ま、仕事は仕事だし、別にいいケド」

麗奈「ええ、それじゃ待ってるから。そっちの奴らも連れてくるなら、しっかり首輪付けておきなさいよ。それじゃあね」

ピッ!

麗奈「思ってた以上に、大したこと無いわね。今の状態……アイツら、どうしてやろうかしら」

麗奈「……P、アンタなら……どうしていたのかしらね」


……
…………
………………
……………………

――早朝、奈緒の部屋

奈緒「……やべっ、もうそろそろで5時か。キリがいいし、そろそろ終わるか」カチカチッ

奈緒「……」

奈緒「今回は珠美とだったか……いや、割と平和だったし、今回は選択肢もなかったけど」

奈緒「しかしあれだなぁ……敵が強くなってるみたいだけど、自分達は消耗し続けて、これどうするんだろうな」

奈緒「……珠美とも済ませて、あ、あとはあやめと、紗枝か……ていうか、もう1人いるっぽいけど、誰なんだろ」

奈緒「……もう5時だし、8時には仕事だから少し寝ておくかな」

……
…………

おわり

某ウイルスばら撒いた奴は滅べばいい

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