藤原肇「今夜が、はじまりだから」 (54)



肇ちゃんの初デートの話

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【繁華街】


肇「ー謝らなくてもいいって。妹さんが熱なら仕方ないよ。うん。じゃあまた今度」ピッ


肇(…とは言うものの、これから暇になっちゃった)


肇(なんだか、会うはずの友だちと会えなくなっただけで、私ひとりがこの街から取り残されてしまった気がする)


肇(…これからどうしようかな。本屋にでも行こうかな。あ…噂のヒトカラに…美紗希さんに選んでいただいた今の格好なら、イマドキの女の子に見えるはず…!)


肇(…)


肇(…冷静に考えたら、イマドキの女の子と呼ばれる方たちは自分をイマドキの女の子だと自覚していないよね…)


肇(…おじいちゃん、肇はまだまだ未熟です…)


肇(…とりあえず、少し歩こう。もしかしたら、知り合いに会えるかも)



「ーえ!弟さんが熱!マジで!?」



肇(…あら?)



「そっかー…それなら仕方ないよ、うん。じゃあまた今度な」ピッ



肇(…私と同じような状況の方が…失礼ながら勝手にシンパシー…あれ? そういえば、あの声、もしかして…)トテトテ



「うーむ、とは言うものの、これから暇になってしまった…本屋にでも行こうかな。あ、久しぶりにヒトカラにー」


肇「あの…!」


「ん?」


肇「あ、やっぱり。お疲れ様です」


「…あの」


肇「はい?」


「アイドルに、興味はありませんか?」


肇「え? それは勿論、興味はありますが…」


「本当ですか!」ズイッ


肇「え!? ちょ、ちょっと、近いです…!」


「あ、すみません! 僕は、アイドル事務所のプロデューサーをしていましてって…その声、もしかして……肇?」


肇「…はい。あなたの担当アイドルの藤原肇です。Pさん」


P「あ…」


肇「…」


P「…」


肇「…」プクー


P「ごめんなさい」



ーーーーーーーーーーーーー


【カフェ】



P「…あの、肇さん?」


肇「…」


P「…藤原さん?」


肇「肇です」


P「あ、口聞いてくれた。えっと、その…ごめん。気づけなくて」


肇「…別に、ちっとも気にしてなんかいません。私はPさんにとって、その程度の存在だったというだけです」


P「ち、違うんだ…! そうじゃなくて…聞いてくれよ、肇」


肇「…」


P「肇だと一目で気付けなかったのはごめん。でも、それは、決して肇が俺にとってその程度の存在だとかそういうのじゃなくて…その」


肇「その?」


P「…可愛かったから」


肇「…続けて下さい」


P「勿論肇はいつも可愛いけど…今日の服って、ちょっといつもと雰囲気違うだろ?」


肇「…美紗希さんに選んでいただきました」


P「ああ、通りで…でさ、いつもの肇の素朴な雰囲気と違って、なんと言うか、凄くイマドキだろ?」


肇「!」


P「メガネも、モコモコしてる帽子も、その服のコーディネートも、はじめて見る肇の色で。オシャレで可愛らしくて。だから、すぐに気付けなくて……でも、本当にごめん」


肇「…イマドキ、ですか?」


P「え?」


肇「…似合っていますか? イマドキの女の子に、見えますか? 」


P「うん。凄く似合ってるよ。改めて見ると本当にびっくりだ。それに、今日の肇が可愛かったから間違いとはいえスカウトしたわけだし」


肇「…」


P「…肇?」


肇「…今回は、許してあげます。でも、次また間違えたら……拗ねます」


P「き、肝に命じます」


肇「よろしいです…ふふっ♪」


P「ああ、良かった。やっと笑ってくれた」


肇「もう、本当にショックだったんですからね?」


P「…ごめんなさい」


肇「…あの、まとめると、Pさんは、私の今日の服装が似合っていて、か、可愛かったので私だと気づかずにスカウトしてしまった…と?」


P「まあ、うん。そうだな」


肇「…可愛い…」チュー


P「うん。可愛いよ、今日の肇。イメチェン大成功だ」


肇「可愛い…」チュー


P「可愛いよ、肇」


肇「えへへ…」チューズゾゾッ


P「うん、可愛い。けど、飲み物飲み終わって可愛くない音が出てるのに気づいて欲しいな」


肇「…ハッ!?」


P「はは、意外とおっちょこちょいだな肇は」


肇「…か、考え事してたんです!」


P「ん。そういう事にしとく」


P(…やっぱり、可愛いなあ…)


P「…ところで、肇。 今日はどうしてそんな格好を? ……あ、デートか?」


肇「違います。学校の友だちと遊ぶ約束をしていたんです。上京してからはじめてできた友だちで。私に東京案内をしてくれた子で…ちなみに、女の子です」


P「ほう」


肇「それで、その子の私服がいつも凄くオシャレで…ちょっと、羨ましいな、なんて思っていて」


P「うんうん」


肇「それで今日、久しぶりにふたりで遊ぶ事になったので、思いっきりオシャレして驚かせたいなって」


P「なるほど、それで美紗希に」


肇「はい…残念ながら、妹さんが急に熱を出してしまい今日の予定は流れてしまいましたが」


P「あ、俺もそんな感じだ。偶然だな」


肇「そうですね…そういえば、Pさんの私服、はじめて見るかもしれませんね」


P「あー…言われてみればそうだな」


肇(…ジャケットに、シャツにジーンズ…シンプルなのに、垢抜けてる…)


肇「…」ジー


P「肇?」


肇「…あ、すみません。よくお似合いだなと思って。流石です」


P「いやいや、肇もよく似合ってるって。ところでスタバ、よく来るの?」


肇「たまに、ですね。いつも注文が複雑で戸惑ってしまいます」


P「ああ、サイズ表記も独特だしな。俺も昔Sはスモールだと思ってたし。でも、その割に手慣れた感じだったけど」


肇「「キャラメルフラペチーノのトールで」…友だちに教えて貰った、魔法の言葉です」


P「ああ、確かに定番かもな…ちなみに、GサイズのGはなんだか知ってるか?」


肇「……ごっそり?」


P「うん。これから勉強していこう…ところで、今日のこれからの予定だけど」


肇「はい」


P「もしさ、この後肇が暇なら一緒にぶらぶらしないか?」


肇「え! …いいんですか?」


P「うん、ふたりの方が楽しいだろうしな」


肇「…そ、それでは、よろしくお願いします…!」


P「よし、決まりだな。じゃあ、お詫びも兼ねて俺がここは払っとくから肇は先に店出て待っててくれ」


肇「でも…」


P「いいからいいから」


肇「…それでは、お言葉に甘えさせていただきますね。Pさん、ありがとうございます」スタスタ


P「…」


P「…はあ」


P(イカンなー…ああ、イカンイカン…)




肇「…」


肇(…こ、これはもしかして…! でも私、こんなのはじめてでどうしたら…!)


肇(ーーちゃんに! …か、看病の邪魔しちゃダメだよね…それなら、誰に…あ、藍子ちゃん!)



ーーーーーーーーーーーーー


【ゲームセンター】



P「本当に良かったのか肇? ゲーセンなんて」


肇「はい。たまに私も友だちと遊びに来ますし」


P「多分肇たちが遊ぶゲームと俺の趣味は違うと思うけどな…」


肇「Pさんのオススメのゲーム、教えて欲しいです」


P「んー…俺のオススメは…これかな」


肇「これは……シューティングゲームですか」


P「そう。やっぱり男の子はこういうのに弱いんだ。男の子じゃなくても好きな亜季とか小梅みたいな子もいるけど」


肇「小梅ちゃんもですか?」


P「ほら、このゲームの敵ってゾンビだし」


肇「ああ…」


P「…で、どうする? ふたり同時にプレイできるけど、やってみるか?」


肇「…は、はい! 是非!」


P「よっしゃ、それじゃあいっちょやってみるか。じゃあまずプレイの説明からな」


肇「はい! プロデューサー殿!」


P「はは、亜季の真似か?」


肇「そうであり…ます」


P「恥ずかしがってちゃ戦場で生き残れないぞ、肇二等兵」


肇「わ、わかり……いえ、押忍!」


P「違う子が混じってるなあ」



〜数分後〜



P「いやー…燃えたなあ」


肇「疲れましたね…」


P「肇、初プレイにしてはスジがいいな」


肇「本当ですか?」


P「うん。流石の集中力だ。「Pさん、カバーお願いします!」なんて言っちゃってさ」


肇「あ、あれはその、ゲームが楽しくて…」


P「うん。カッコ良かった。服は可愛らしいのにな?」


肇「もう、すぐからかうんですから…」


P「本当だって。ま、次はちょっと軽めのゲームにしようか」


肇「あ、それなら…あれを」


P「あれって…クレーンゲーム?」


肇「はい、私、いつも取れなくて…」


P「ほう、そうなのか」


肇「なかなか感覚が掴めないのが悔しくて、つい熱中してしまって…」


P「…え、熱中って、まさか」


肇「…五千円ほど」


P「…肇。それ、ゲーム会社の思うツボだぞ」


肇「気をつけます…」


P「よし、じゃあ、俺が指示してやろう」


肇「Pさんは、クレーンゲームも得意なのですか?」


P「ああ。なんたって、学生時代に肇と同じ道を辿ったからな」


肇「あっ…」


P「…技術と引き換えにものすごーく母さんに怒られた」


肇「…」


P「ま、まあ、俺の事は気にするな! よし、肇、手軽に取れそうなあいつ狙ってみろ」


肇「えっと、あれは…ぴにゃこら太ですね。黒ぴにゃ、でしたか」


P「ああ。難易度的には結構優しめのポジションだからな。まあ、景品としてはちょっとアレかもだけど」


肇「可愛いですよね、ぴにゃこら太」


P「え」


肇「…え? 可愛く、ないですか?」


P「…」


肇「?」


P「…ま、いいか! 」



…ピニャー!…



肇「わあっ!一発で取れました! 」


P「おう、おめでとう肇」


P(何故このぴにゃこら太はネクタイを…?)


肇「ふふ、Pさんの指示のおかげです。ありがとうございます!」


P「そこまで言われるとこっちも嬉しいな」


肇「この子、大切にしますね!」ギュッ


P「ああ、そうしてやってくれ。さて、次はどうしようか」


肇「あ、そ、それなら…!」


P「お、何かやりたいゲームがあるのか?」


肇「こ、これを…!」


P「これって…プリクラ? うーん、流石にそれは…」


肇「…ダメ、ですか?」


P「…うん、まあ、たまにはいいか…な?」


肇「ありがとうございます! それでは早速…」


P「…わ、やっぱり狭いなあ…」


肇「あまり離れると写りませんから。さあ、もっと近くへ…」


P「じゃ、じゃあ…」


肇「はい…」


P「って、何でフレームがハートマークなんだ!?」


肇「こ、これで固定なんです!」


P「そ、そうなのか…なら仕方ないな…」


肇「そうです、仕方ありません」


P「…じゃ、どうせなら、笑おうか」


肇「そ、そうですね」


P・肇(恥ずかしくて上手く笑える自信ないけど)



〜数分後〜



P「あはははは!」


肇「ちょ、ちょっとPさん、笑いすぎですっ…くっ…ふふっ」


P「いや、だってさ、ふたりの真ん中にいた、黒ぴにゃまで加工されてっ…!」


肇「ふ、ふふっ…顔が、一段と凛々しく…」


P「ダメだ、ちょっとこの写真ヤバいな…!」


肇「あ、あんまり言わないで下さいっ…ますます、面白くっ…!」


P・肇「あはははは!」



ーーーーーーーーーーーーー


【デパート】



P「肇、ありがとうな。買い物に付き合ってくれて」


肇「いえいえ。私も母の日のプレゼントを探そうと思っていたので」


P「肇が選んでくれたブローチ、とっても素敵だよ。きっと母さんも喜んでくれる」


肇「Pさんの選んで下さったネックレスこそ…素朴な作りですが、どこか惹かれます」


P「まるで肇みたいだな」


肇「私みたい、ですか?」


P「前に話したろ? 素朴でも「なんかいいな」って思わせるのが肇の魅力だって。そのネックレスも、そんな感じがしたんだ」


肇「…もうひとつ、買おうかな…」


P「え?」


肇「…な、なんて、冗談です」


P「そ、そっか…」


肇「はい…」


P「…」


肇「…」


P「…あ、肇」


肇「は、はい。どうしました?」


P「あれ」


肇「えっと…「海外の陶器フェア」…ですか」


P「見てみたくない?」


肇「…はい、凄く。ですが…いいのですか? きっと、時間がかかってしまうと思いますが…」


P「肇が喜んでくれるなら俺は嬉しいよ」


肇「Pさん…では、お言葉に甘えて」


P「ん。じゃあ、俺はここで少し休んでから行くから。先に行っててくれ」


肇「はい!」


P「あ、それと、ぴにゃこら太預かっておくよ」


肇「ありがとうございます…では、この子をお願いします」


P「はいよ」


肇「…ふふ、ぴにゃこら太を抱くPさん、なんだか可愛いです」


P「大人をからかうんじゃありません。ほら、行ってきなさい」


肇「ふふ、ありがとうございます…では」スタスタ


P「…」


P「ヤバいなあ…やっぱり、俺…」


P「…なあ、お前はどう思う?」


黒ぴにゃ「…」


P「…だよなあ」


P「…お前はいいな。ノーテンキそうな顔して…よく見れば、ネクタイ似合ってるじゃないか」


黒ぴにゃ「…」


P「…確かに、こうして見ると、ちょっと可愛い…のか?」


黒ぴにゃ「…」


P「…ま、立ち話もなんだし、ちょっと座って休憩するか」


黒ぴにゃ「ピニャ」


P「え?」



〜数十分後〜



肇(わあ…これも凄いな…とっても綺麗…)


肇(…でも、備前の陶芸も負けていません。日本一の陶芸ですから)


肇(…なんて。誰と張り合ってるんだろう。ふふっ)


肇(…あ、もうこんな時間! Pさん、待たせちゃった! 戻らないと)




P「…」


P「…はっ、寝ちゃったのか…」


P「まずい、肇を迎えに!……ん?」


志希「あ、目が覚めた? おはよ〜♪」ハスハス


P「…」


P「…君、誰?」


志希「んー? あたし? 一ノ瀬志希」ハスハス


P「…えっと、一ノ瀬さん。とりあえず、なんで俺の匂い嗅いでるのかな?」


志希「キミ、なんかイイ匂いがするから!」ハスハス


P「うん。それは決して寝ている他人の匂いを嗅ぐ正当な理由にはならないね」


P(…あれ、この子、よく見たら…)


P「…ねえ、君。ちょっと顔見せて貰ってもいいかな」


志希「いーよー? その代わりに、もっと匂い嗅がせてね〜♪」ヒョイ


P(やっぱり! この子、変な子だけど、凄く可愛いぞ…!)


P「…ね、一ノ瀬さん」


志希「んー?」ハスハス


P「…アイドルに、興味があったりしない?」


肇「すみません、Pさん! つい夢中になってしまって……え」


P「あ」


志希「…あ、この子キミのカノジョ? 誤解されちゃうカンジ? それと…アイドル…? それって面白いー? 」


P「ええとまず、一ノ瀬さん、この子は俺の彼女じゃなくて、俺がプロデュースしているアイドルで…肇、決して一ノ瀬さんとはやましい事はしていなくてだな」


志希「ふんふん」


肇「は、はあ…」


P「一ノ瀬さんは、俺が居眠りしちゃって目が覚めたら隣に居たんだ。俺の匂いに惹かれて現れたらしい」


肇「ますます意味がわかりません…」


P「ああ、俺もだ。で、一ノ瀬さん…アイドルは、面白いぞ。名刺渡すから、もし良ければ一度事務所に来て欲しい」


志希「ふーん…アイドルね…ん?んん〜? 」


肇「え、ど、どうしました私を見つめて…?」


志希「肇ちゃんだっけ? イイ匂いしてるね〜♪」ガバッ


肇「ひゃあっ!?」


志希「ね、ね、キミ! この子の匂い嗅いでもイイ? そしたら今度事務所に行ってあげる!」


肇「え、ええ!? た、助けて下さいPさん…!」


P「…すまん、肇!」


肇「Pさん!!」


志希「にゃーっはっはっ! 決まりだね! それじゃあ遠慮なく〜♪ ハスハス〜♪」


肇「ひゃああん!? ど、どこに顔埋めてるんですかあっ!?」


志希「イイからイイから〜♪」ハスハス


肇「何も良くないですっ!?」


P(…女の子って、得だよなあ…)



〜数分後〜



志希「じゃーねー♪ 事務所にはそのうち行くよー♪」フリフリ


P「約束だぞー」フリフリ


肇「…Pさん」


P「…えっと、ごめん、肇」


肇「私、もう、お嫁に行けません…」


P「そ、そこまで…? いや、でも、可愛かったぞ?」


肇「…むぅ」


P「それに肇のおかげで一ノ瀬さんをスカウトできたわけだし、本当にありがとう、肇」


肇「もう……どういたしまして」


P(やっぱり、肇は優しいな…)


肇「…でも」


P「ん?」


肇「…責任は、取って下さいね…なんて」


P「…それって、どういう」



ティロン♪



P「あ、ごめん、メールだ……え」


肇「どうしました?」


P「この近くでCMの撮影をやってるらしいんだけど、手違いで若い女優がひとり足らないらしくて…それで、「誰かいないか?」と」


肇「!」


P「…肇、やるか?」


肇「はい、是非! やらせて下さい!」


P「セリフも少ないとはいえ、短時間で動きとセリフを覚えて貰う事になるけど…」


肇「ふふ、任せて下さい。私だって、プロのアイドルなんですから」


P「…ああ、そうだな。それじゃあ、少し走るぞ!」


肇「はいっ!」



ーーーーーーーーーーーーー


P「…肇、本当にお疲れ様。監督も喜んでたぞ」


肇「まさかこの服のまま出演する事になるとは思いませんでした」


P「「はじめてのデートで背伸びしたオシャレをする女の子」か…確かに、今日の肇の服はそんな感じかもな」


肇「ふふ、友だちの為のオシャレなんですけどね本当は」


P「せっかくの休日なのにこんな夜遅くまでバタバタさせてしまって申し訳ない…」


肇「いえ。とっても楽しかったですよ? …ふふ」


P「どうした?」


肇「ぴにゃこら太を抱っこしながら私の撮影を見ているPさんを思い出したら、つい…」


P「そんなに変だったかな?」


肇「ふふ、なんだか兄弟みたいで可愛かったです」


P「また可愛いって…カッコいい、だろ? なあ、ぴにゃ」ツンツン


黒ぴにゃ「…」


肇「くすっ、はいはい、そうですね、ふたりともカッコいいです」


P「なんかテキトーだなあ…」


肇「…本心ですよ?」


P「…きゅ、急にマジなトーンになるなよ…」


肇「ふふ、可愛いというのも、本心です♪」


P(…なんか、楓さんに似てきたような…)


P「…そういう肇だって、可愛いぞ。これも、本心だ」


肇「あ……ありがとう、ございます」


P「ああ…」


肇「…」


P「…」


肇「…じょ、女子寮が見えてきましたね」


P「…あ、本当だ」


肇「…改めて、今日は一日ありがとうございました。Pさん」


P「こちらこそ。楽しかったぞ」


肇「私もです。考えてみれば、こんなに長い時間をPさんと一緒に過ごしたのは、はじめてでしたね」


P「そうだな…」


肇「一緒にカフェに入って、ゲームセンターに行って、ショッピングして……まるで」


P「デート、みたいだったな」


肇「 …そうですね」


P「…」


肇「…」


P「…そ、それじゃあ、また明日!」


肇「は、はい! また明日! では…」スタスタ


P「…」


P「…肇!」


肇「…は、はい!」クルッ


P「…今度、一緒にレストランにでも行かないか。今日の夕飯は、ロケ弁になっちゃったから…」


肇「! …はい! 是非!」


P「じゃあ、そういう事で。またな!」


肇「はい!」



ーーーーーーーーーーーーー


【肇の部屋】



肇「ふぅ…ただいま」


肇「ぴにゃこら太は……うん。ここに座ってもらおう」


黒ぴにゃ「…」


肇「ふふ、こうして見ると、ちょっとPさんに似てるかも」ナデナデ


黒ぴにゃ「ピニャ」


肇「え?」



【Pの部屋】


P「よいしょ…ただいま」


P「…」


P「…酒でも飲むか。たまには」





肇(…そういえば、ずっとPさん、この子抱っこしてたな…)


肇(もしかして…Pさんの、匂いが…?)


肇(…って、ダメです! これじゃヘンタイです! いえ、一ノ瀬さんがそうだと言うのではなく!)


肇(…)


肇(……はあ、それにしても)




P(わ、これ美味いな…流石早苗さんオススメだ)


P(…)


P(……はあ、それにしても)



肇・P((…私(俺)、やっぱり好きなんだなあ…))



肇(…もう、自分に嘘がつけなくなっちゃった…好き…大好きです、Pさん)


肇(あなたに「肇」と呼んで貰えると、とっても幸せな気分になれます。あなたが見ていてくれると思うだけで、力が湧いてきます。あなたが側にいてくれるだけで…何気ない時間が特別になります)


肇(あなたに気付いてもらえなかった時、一ノ瀬さんといた時……たまらなく、不安になりました。でもあなたと話していると、そんな気持ちもどこかに吹き飛んでしまって…「可愛い」と言われる度に飛び上がる程嬉しくて。今日の撮影も、あなたの事を思い浮かべて演じたんですよ?)


肇(…でも、私はアイドル。それに、Pさんはきっと、私の事は…)


P(…勘違いでなければ、きっと肇は、俺の事を…)


P(…本当は、喜んじゃいけないんだろうな…でも、そんなの、無理だ)


P(妹みたいで可愛いな、なんて思ってたはずなのに…いつの間にか、俺は肇に…)


P(今日だって、肇がデートの待ち合わせじゃないと知って心底ほっとして、本当はカフェで別れるつもりだったのに、気付いたらデートに誘ってて…笑った顔も、怒った顔も、全部が愛しくて…)


P(…でも、俺はプロデューサーなんだ。肇を、トップアイドルに……でも)


肇(…んー! …このまま考えてても、きっと答えはすぐには出ない気がする…)


肇(まず明日起きたら、藍子ちゃんにお礼の電話をしよう…「どこに行くか、よりも誰と一緒にいるかが大事だよ。そして何よりも、楽しむ事!」…そうだよね、藍子ちゃん)


肇(…私のはつ恋、たくさん悩もう。そして…たくさん楽しもう)


肇(だけど……今日はもう寝よう。明日から、少しずつ前に進もう)


P(…ダメだ! そう簡単に気持ちの整理なんてつけられるか!)


P(…俺は、肇を幸せにできるのか。肇の俺への気持ちは、プロデューサーへの俺に対する気持ちの勘違いじゃないのか…)


P(…そんな大切な事、すぐに答えが出せるわけがないんだよ)


P(……今日は、もう寝るか。明日から少しずつ、答えを探そう…俺の為に、肇のために…焦らず、一歩ずつ前に)



肇・P「「……だって今夜が、私の(俺の)恋のはじまりなんだから」」




ふたりの歩む道がひとつになるまで、あとー



なんとか総選挙中に間に合って良かった。もし投票権に余りがあれば肇ちゃんも候補に入れてあげて下さいね。
次は元カノ楓さんの続きを書こうかなと。

それでは今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。


良かったらこちらもよろしくお願い致します

この前書いた話

元カノは高垣楓さん
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494074330

今作のちょっと前の話

モバP「藤原さんにも華がある」
モバP「藤原さんにも華がある」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492953270/)

ふたりがお付き合いする話

藤原肇「はじめる新しい関係、変わらない想いと共に」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489405860

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