美穂「私のかわいい妹」 (16)

 初投稿なのでミスなどありましたらご指摘ください。


 響子ちゃん受賞おめでとうパーティー改め、響子のこと受賞させてくれてありがとうパーティのあとのお話。

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今日は、響子ちゃん受賞おめでとうパーティー、じゃなかった、響子のこと、受賞させてくれてありがとうパーティーをしました。受賞させてくれてありがとうだなんて、響子ちゃんらしいなあ……。

 上京してから書き始めた日記も、今では書いてからじゃないと落ち着いて寝られない! ってくらい習慣になっちゃいました。

 ただ書きたいことがたくさんありすぎて、書き終わるころにはいつも12時をすぎちゃいます。でも、それだけ毎日が楽しいってことだよね! 

 卯月ちゃんからもらったピンクのかわいいボールペンを置いたときには、12時を5分だけすぎていました。

――コンコン。

 明日は1日なにもないけど、夜更かしはお肌に悪いしもう寝ようかなって思ってた、そんなときでした。

「……美穂ちゃん、まだ起きてますか?」

「響子ちゃん? うん、起きてるよっ。どうしたの?」ガチャ

「こんな時間にごめんなさい……少し、お話したくて」

「そっか……。入って?」

「……お邪魔します」

 廊下が暗いからか、響子ちゃんの顔はいつもより暗く見えました。

「お茶入れるね。ちょっと待ってて」

響子ちゃん、いつも私の隣に座ります。肩が触れるか触れないかの距離。そこに座る響子ちゃんも、今日はいつもより弱々しく見えました。

「はい、響子ちゃん」

「ありがとうございます」

「それで、こんな時間にどうしたの?」

「……その、実は」

 両手で持ったコップに目を落としながら、響子ちゃんは言いました。いつもは堂々としてる響子ちゃんが今日は小さく見えて、どうにかして力になってあげたいな、って気持ちになります。

 だって私、響子ちゃんのお姉ちゃんだから。

「パーティーが終わってから私、ずっと変なんです」

「変?」

「はい……。なんだか、寂しいような、心にぽっかり穴が空いたような感じがして」

「そうなんだ……。もしかして、ホームシック?」

「うーん……。ホームシック、じゃないと思います。いつもは家族が恋しくなると、電話しちゃうので」

「そうなんだ。じゃあ今日は電話しなかったの?」

「はい、元気のない今の私は、弟たちに見せられないなって思って」

 そう言って響子ちゃんは、力なく笑いました。

「じゃあどうしちゃったんだろう……。パーティーで疲れちゃったとか?」

「そうなのかな……」

「響子ちゃん、プロデューサーさんが来てからもずっとお料理してたでしょ? だからじゃないかな?」

 お仕事が終わったプロデューサーさんが寮に来てから、さらに卯月ちゃんと未央ちゃん、凛ちゃんも来てくれました。誰かが来るたびに新しくお料理をつくってたから、たぶん響子ちゃんがあの場で一番疲れたんじゃないかな……。

「うーん……」

 響子ちゃんは納得いかない様子。疲れてるわけじゃないのかな?
 いつも元気な響子ちゃんが悲しそうな顔をしてると、私まで気分が沈んできちゃうかも……。ううん、このままじゃダメだよね! 響子ちゃんを元気にしてあげないと!
 でも、どうしたらいいかな……。あっ!

「そうだ、ねぇ響子ちゃん、響子ちゃんの家族のお話、聞きたいな」

「え?」

「だって、家族の話をする響子ちゃんはいつも楽しそうだから! 今日もお買い物の話をしてるときの響子ちゃん、嬉しそうだったし」

「えへへ、そうでしたか?」

 照れながら笑ってくれた響子ちゃん。まだいつもみたいなまぶしい笑顔じゃないけど、やっぱり響子ちゃんは笑ってるのが一番かわいいよねっ

「うん! それに響子ちゃんが幸せそうにお話してるのを聞いてると、私まで幸せな気持ちになるんだっ」

「そう言われると、照れちゃいますねっ! 家族の話かぁ……。あっ! これは弟の運動会のときの話なんですけど――」



~~~

「――それで妹が、オムライスをつくってくれたんです! 『お姉ちゃんがいつも描いてるクマさん!』って言って絵を描いてくれたんですけど、私クマさんの絵って書いたことなくて」

 ぎゅっ

「えっ……? 美穂ちゃん?」

 楽しそうに家族の話を響子ちゃんを、私はぎゅっと抱きしめました。だって響子ちゃん、笑いながら泣いてたから。

「やっぱり響子ちゃんは、家族が大好きなんだね」

「……っ」

「会えなくて寂しい? というより、そばにいてあげられなくて寂しいのかな」

「……!」

「響子ちゃんたまに言ってるよね、みんな元気にしてるかなって」

「……はい」

「響子ちゃんはお姉ちゃんだから、弟くんたちのことが心配なのはすごい分かるよ。でもね……」

 ぎゅっ。響子ちゃんのことを、強く、抱きしめてあげます。私の思いが、響子ちゃんに伝わるように。

「響子ちゃんも、甘えてもいいんだよ。私にだって、卯月ちゃんにだって。お母さんにだって、お父さんにだって。弟にだって、妹にだって」

 ぎゅっ。響子ちゃんも私のことを抱きしめ返してくれます。

「響子ちゃんが思うとの同じだけ、みんなも響子ちゃんのことを思ってくれてるんだから――」



~~~

「ごめんなさい美穂ちゃん、パジャマ濡らしちゃって!」

「ううん、気にしないでっ、替えのがあるから」

 私がパジャマを探している間、かちっ、かちっ、と時計の音だけが響きます。ふと時計を見ると、もう2時になりそうでした。

「もうこんな時間……! ごめんなさい美穂ちゃんこんなに遅くまで」

 いつもなら大丈夫だよっ! って言ったかもしれないけど、夜遅いからか、ちょっとだけいじわるしたくなっちゃいました。響子ちゃんも元気になったし、ちょっとだけなら大丈夫だよね?
「もうっ、響子ちゃんさっきっからあやまってばっかりだよっ」

「えっ? ……あっ、ごめんなさい!」

「また!」

「あ、ああ~!」

 おかしくって、2人であははって笑っちゃいます。お隣にまで聞こえてないといいけど。

「それで、響子ちゃん、部屋に戻っちゃうの?」

「えっ?」

 きょとんとする響子ちゃん。どうして今の私はこんなにいじわるなんだろ。

「寂しくない? 1人で、……寝れる?」

 本当は私が寂しかったのかも。それとも、もっと響子ちゃんに甘えてほしいって思ってたのかな。

 ベッドに座ってたプロデューサーくんを抱きしめて、腕を持って響子ちゃんにおいでおいでをします。

 ……今からもう、なんとなく分かります。明日になったら、なんであんなことをしたんだろうって恥ずかしくなっちゃうのが。

「……」

「……」

「今日は美穂お姉ちゃんと、一緒が……いいです」

 私から目をそらして、顔を赤くして響子ちゃんはそう言いました。……さすがに、いじわるしすぎちゃったよね? あとで謝らなくちゃっ



~~~

「美穂ちゃんがあんなにいじわるな人だったなんて、知りませんでしたっ」

 鼻と鼻がくっついちゃうくらいの距離。2人で寝るにはちょっとだけきゅうくつな距離。でも、心地よい距離。

「ごめんね、あんなにいじわるするつもりはなかったの」

 目の前には、まだ少しだけ頬の赤い笑顔の響子ちゃん。でも、もうすっかり元気になったみたい。

「……じゃあ、明日一緒にお出かけしてくれたら許してあげますっ」

「明日? ……そしたら、早く起きないとだねっ。……あっ、卯月ちゃんも誘う?」

「そうしましょう! 確か明日は、卯月ちゃんもオフだったはずですし」

「なら、すぐに連絡しないとだねっ」

 そう言って、枕元に置いたスマホに手を伸ばします。

「今からラインするんですか?」

「うん、卯月ちゃんならもしかしたら起きてるかな、って」

「確かに卯月ちゃんなら起きてるかも……」

 午前2時。普段の私ならもう寝ちゃってるけど、卯月ちゃんとお話してるときはまだ起きてる時間。今日も誰かとお話してるのかな。

『卯月ちゃん、明日響子ちゃんと一緒にお出かけしない?』

 卯月ちゃんにラインを送ると、響子ちゃんがふわあとあくびをしました。私も響子ちゃんも、いつもならもう寝てる時間だもんね。

「美穂ちゃんおやすみなさい……」

「うん、おやすみっ」

 いつも一緒に寝てるプロデューサーくんは、今日は机に座って私たちを見守ってくれています。明日響子ちゃんと卯月ちゃんと、おそろいのぬいぐるみとか探したら楽しそうだなあ♪


 以上です。

 いつもはみんなのお姉ちゃんだけど卯月や美穂といるときだけは妹になってしまう、そんなかわいい五十嵐響子をよろしくお願いします。

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