格闘家「身長170cm未満、体重60kg未満の奴の挑戦を受け付けるぜ!」 (20)


とあるジムにて――

トレーナー「ふうむ、このところ入会者が増えんなぁ……」

トレーナー「うちのジムの知名度を上げる方法、何かないものか……」

格闘家「だったらこういうのはどうでしょう?」

格闘家「インターネット上で、俺が挑戦者を募集するんですよ」

格闘家「――で、バッタバッタと挑戦者を倒せば、入会希望者が増えるって寸法です」

トレーナー「効果はありそうだな。しかし……勝てるのか?」

格闘家「これでも俺はプロですよ?」

格闘家「募集条件をプロ格闘家じゃない素人、にすればいいんです」

格闘家「さすがに素人には負けませんからね」

トレーナー「なるほど……よし、やってみるか!」


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~ネット上PV~

格闘家「俺を倒せれば、賞金100万円くれてやらぁ!」

格闘家「プロ格闘家の実力ってやつを思い知らせてやるよ!」シュッシュシュッ

格闘家「みんなの挑戦、待ってるぜ!」ビシッ





ところが――


素人(195cm120kg)「やってやるぜ!」

素人(189cm95kg)「ぐへへへ……100万円はいただきだな……」

素人(205cm130kg)「あのチビスケに俺のパワーを思い知らせてやる!」





トレーナー「お、おい! 挑戦希望者が、やたら重量級ばかりだぞ!」

トレーナー「しかもプロじゃないとはいえ全員、何かしらの武道や格闘技経験がある……!」

格闘家「しまった……! 身長と体重に制限を設けるのを忘れてた……!」


トレーナー「どうするんだ!? この体重差はいくらなんでも厳しいし、100万なんて払えないぞ!」

格闘家「……こうなったら仕方ない」

格闘家「今からでも、条件をつけることにしよう」





格闘家「や、やっぱ条件付けます!」

格闘家「身長170cm未満、体重60kg未満の奴の挑戦を受け付けるぜ!」


素人(192cm105kg)「てめえ、ふざけんな!」

素人(200cm120kg)「いきなり条件付けてんじゃねーよ!」

素人(215cm145kg)「挑戦受けなきゃ、このジムブッ壊してやるからな!」





トレーナー「ひいいっ! 大勢の巨漢がジムに詰めかけてきてるよぉっ!」

格闘家「あわわわ……」


「ツラ出せやぁっ!」 「逃げんなぁっ!」 「素人になら負けねえんだろうがぁっ!」

ガンガンガンガンガン! ガンガンガンガンガン!





トレーナー「ど、ど、ど、ど、どうしよう……」

格闘家「もうダメだぁ……」


素人(188cm100kg)「いつまで引きこもってんだ!」

素人(202cm115kg)「挑戦受け付けるまで帰らないからなぁっ!」





「よさぬか……小さき者どもよ」

ゴゴゴゴゴ……!


巨人「……」ゴゴゴゴゴ…





「な、なんだ!?」 「きょ、巨人だ!」 「天から巨人が降りてきたぁっ!」





巨人「……」ズシン…


巨人「我は天界に住まう巨人なり……」

巨人「全ては天から眺めていた」

巨人「今すぐこの騒ぎを収めぬと、ただちに貴様ら全員を踏み潰すぞ……!」





素人(193cm110kg)「で、でかい……! でかすぎる……!」

素人(230cm150kg)「この人に比べれば、俺らなんてみんなアリンコだ!」

「す、すみませんでしたぁ~~~~~~~~~~!!!!!」


巨人「……全員去ったようだな」





トレーナー「巨人様、ありがとうございました!」

格闘家「おかげで助かりました……!」


格闘家「まさか、空に巨人が住んでるとは知りませんでした」

巨人「無理もない。我々は本来、君たちでは認識できない存在だからな」

格闘家「でもなぜ、俺みたいなちっぽけな人間を助けるために、わざわざ地上へ?」

巨人「無論、君の行為がいたって正当な行為だからだ」

巨人「闘いにおいて、体が大きい者の方が有利だというのは分かり切ったこと」

巨人「ならば、金を出し挑戦を受ける側がそこに条件をつけるのは、当然のことであろう」

格闘家「そういってもらえると……救われます……」

巨人「では、さらばだ。君のことは天界で見守っておるぞ……」ゴゴゴゴゴ…


格闘家「トレーナー」

トレーナー「ん?」

格闘家「巨人ってのは……体も大きければ、心も大きいんですねえ……」

トレーナー「うむ……これからは彼のようにもっと大きい心を持ち、ジム経営に励もうではないか」

トレーナー「無茶な売名行為をしなくたって、やっていけるさ!」

格闘家「はいっ!」


巨人「……」

巨人(我が彼らを助けた理由……本当は別にある)

巨人(それは――)


一ヶ月前、天界にて――

巨人『あ、あのっ、すみません! やっぱ条件付けます!』

巨人『身長170m未満、体重60t未満の奴の挑戦を受け付けるぜ!』

大巨人A『この野郎、ふざけんじゃねえぞ!』

大巨人B『いきなり条件付けてんじゃねえ! 踏み潰されたくなきゃ金よこせ!』


…………

……


巨人(彼が他人のような気がしなかったからだ……)







おわり

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