【モバマス】未央「ではこれより、かれん対策会議を始めます」 (43)


※百合注意


【モバマス】加蓮「……もう無理、限界」
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これの続きです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493978969


―――アイドル寮 共同スペース

未央「ではこれより、かれん対策会議を始めます」

みく「前回の逆イチャ作戦も大失敗。またしてもみくたちの心に深い傷を残したにゃ……」

奈緒「だから、一番深い傷を負ってるのはあたしなんだよ! あれ、トラウマものだぞ!?」

幸子「というか奈緒さん、あんなことがあったのに、よく今も加蓮さんと一緒に寝られますよね」

奈緒「だって……か、加蓮が一緒に寝ないと寂しいって言うんだから、仕方ないだろ」

みく「幸子チャン、バカップルにそんなこと聞いても無駄にゃ」

奈緒「だ、誰がバカップルだ!」

みく「どこからどう見てもバカップルでしょ!? 鏡見てみれば!?」

未央「静粛に静粛に! 今は会議中だよ!」


奈緒「くっ……それで、今日はどうするんだ?」

未央「実はね? 今回は外部からアドバイザーを呼んでるんだよ」

奈緒「アドバイザー?」

未央「それでは出てきてもらいましょう!……恋愛マスター、美嘉ねーです!」



美嘉「やっほー★」



周子「あ、チェンジで」

美嘉「ちょっと!? 出てきて早々それは酷くない!?」

周子「だってさー……人選ミスだよね」

フレデリカ「奏ちゃんの方が良かったかな~」

志希「にゃははー、お帰りはあちらだよー」ユビサシー

美嘉「アンタたち、それでも同じユニットのメンバー!?」

周子「うーん、それは今関係ないから」

美嘉「どれだけアタシに冷たいの!?」


未央「もう、何言ってるのみんな! 美嘉ねーはこの中の誰よりも恋愛経験豊富なんだよ? ね、美嘉ねー?」

美嘉「え!?……も、もちろん」

周子・フレデリカ・志希『……』ジトメー

美嘉「何その目!」

周子・フレデリカ・志希『別にぃ~』

美嘉「む、むかつくぅ~!」

未央「それで美嘉ねー、この寮の現状はさっき話した通りだよ」

美嘉「あ、うん、まさか加蓮がそんなことになってるなんてね」

奈緒「そっか。美嘉は知らなかったんだな」

美嘉「付き合ってるのは知ってたけどさ。そこまで奈緒ちゃんにデレデレだったとはね」

奈緒「で、デレデレ言うな!」

未央「美嘉ねー、そのデレデレをなんとかしたいんだよ。どうにかならないかな?」

美嘉「そうだなぁ…………さっき聞こえたんだけど、奈緒ちゃん、加蓮と一緒に寝てるんだって?」

奈緒「ま、まあな。それが駄目なのか?」

美嘉「問題はそれ自体じゃなくてさ。奈緒ちゃん、加蓮に甘すぎるんじゃない?」

奈緒「甘すぎる?」


美嘉「だって、加蓮に寂しいって言われただけで、一緒に寝るのOKしたわけでしょ?……どれだけ加蓮に甘いの」

奈緒「ぐっ!?」

未央「なるほど、確かにそうだね」

みく「奈緒チャン、加蓮チャンにお願いされると、大抵OKしてる気がするにゃ」

奈緒「そ、そんなことないよ!」

まゆ「まあ全部ではないでしょうが……」

ありす「大分甘やかしてますよね」

美嘉「やっぱりそうなんだ」

奈緒「うぐぅ……」

美嘉「甘やかすから、加蓮も際限なく奈緒ちゃんに甘えるんじゃないかな」

奈緒「そ、それは……」

未央「じゃあ、かみやんがかれんを甘やかさなければいいんだ」

美嘉「うん、そういうこと。だから厳しく……いや、むしろ冷たくするぐらいがちょうどいいんじゃない?」

奈緒「冷たくって……そ、そんなことしたら加蓮が可哀想だろ!?」

美嘉「だからそれが甘すぎるんでしょ!? ここは心を鬼にして、加蓮に厳しく接してみるべきだって。今後のためにも」

奈緒「で、でも……」

みく「……なんか子育ての話みたくなってきたにゃ」

未央「かみやん、試しにやってみようよ。別にずっとそうしろとは言わないからさ」

奈緒「……。……分かったよ。やればいいんだろ」


―――会議終了後 奈緒の部屋

加蓮「あ、奈緒、おかえり! 布団敷いておいたよ」

奈緒「お、ありがと―――じゃなくて!」

加蓮「?」

奈緒「……か、加蓮、自分の部屋で寝てくれ」

加蓮「……え?」

奈緒「自分の部屋があるんだから、自分の部屋で寝るべきだろ」

加蓮「な、なんで今さら、そんなこと言うの?」

奈緒「い、今さらでもなんでも! ほら、布団を自分の部屋にはこ……は、運んでやるから! あっちで寝ろ!」

加蓮「えぇ!? や、やだよ! 奈緒と一緒じゃないと寂しい!」

奈緒「元々は自分の部屋で寝てただろ!」

加蓮「それは付き合う前の話でしょ!? 今はもう奈緒と一緒じゃないなんて考えられないの! いつもみたいに一緒に寝よ? ねっ?」

奈緒「うぐっ……だ、駄目っ! さあ、運ぶからどいたどいた!」

加蓮「な、奈緒~っ!」


―――加蓮を自分の部屋へ追いやったのち、未央の部屋

奈緒「良心の呵責がやばいんだけど! これ本当に明日もやるのか!?」

未央「さっきのだけで終わりじゃ、ほとんど効果なんてないでしょ!」

美嘉「ていうか、まだ大分甘かったよね。布団、自分で運んでたし」

奈緒「聞いてたのか!?」

未央「そりゃ隣の部屋なんだから、壁に耳を当てれば聞こえるよ」

奈緒「ふ、普段から耳当ててないよな!?」

未央「当ててないよ! なんでわざわざ聞きたくもないもの聞かなきゃいけないのさ!」

奈緒「そ、それならいいけど」

美嘉「とにかく、もう少し続けてみて。それでも効果なかったらやめればいいしさ」

奈緒「……これ、ある意味前回の甘えるやつよりきついな」


―――翌朝 奈緒の部屋

加蓮「奈緒、朝だよ。ほら、起きて」

奈緒「うにゅ?……ふぁぁ……おはよ、加蓮」

加蓮「おはよ、奈緒」

奈緒「……。……なんでいるんだ? 自分の部屋で寝たんだよな?」

加蓮「うん。仕方ないから自分の部屋で寝たけど、起こしに来るのはいいでしょ?」

奈緒「……じ、自分で起きれるから、起こさなくていいよ」

加蓮「え……」

奈緒「ほら、着替えるから先に食堂行っててくれ」

加蓮「あ、うん……着替え、そこに出しておいたからね」

奈緒「……あ、ありがと、加蓮」


―――食堂

加蓮「あ、奈緒ー! はい、ご飯用意しておいたよ」

奈緒「ありがとな、加蓮。じゃあ、いただきます」

加蓮「いただきます。……はい奈緒、あーんっ♪」

奈緒「流れるようにあーんするな!」

加蓮「あーんっ」

奈緒「自分で食べられるから!」

加蓮「もう、またそんなこと言って……じゃあ、口移しにしちゃうよ? いいの?」

奈緒「いいわけないだろ!」

加蓮「じゃあ、あーんっ」

奈緒「……だから、自分で食べられるって」

加蓮「えぇ!? い、いつもだったら、こう言えば食べてくれるのに……ほ、本当に口移ししちゃうよ?」

奈緒「やれるもんならやってみ――」

加蓮「ぱくっ……んーっ♪」


奈緒「躊躇なくやるのかよ! く、口こっちに向けても受け取らないから! ほ、ほら、そのまま噛んで飲みこめ!」

加蓮「んんっ……ごくん。な、なんで? 奈緒、変だよ?」

奈緒「今のはどう考えても普通の行動だろ!? 厳しくとか関係ないだろ!?」

加蓮「厳しく?」

奈緒「……なんでもない。と、とにかくご飯は自分で食べるから、あーんとかやめろ」

加蓮「……じゃ、じゃあ、私にあーんして?」

奈緒「自分で食べれるだろ」

加蓮「…………」ボーゼン



未央「かれん、目を見開いてるよ」

美嘉「あーん拒否されただけで、そんなにショック受ける?」

みく「あの2人、毎日やってたから」

美嘉「そ、そうなんだ……」


―――事務所

加蓮「……」

凛(また加蓮の様子が変だけど……話しかけるべきか、触れないでおくべきか……)

加蓮「……あ、凛」

凛(気付かれた! じゃあ仕方ないか……)

凛「加蓮、様子が変だけど、どうかしたの?」

加蓮「……奈緒がね……」

凛(うん、やっぱりそうだよね。学ぼう、私)

凛「奈緒がどうかしたの?」

加蓮「……今日の奈緒、変じゃなかった?」

凛「? いつも通りだと思うけど……」

加蓮「そう……」

凛「加蓮、なんだか元気ない?」

加蓮「……そうかも。ねえ、凛。頼みがあるんだけど、いい?」

凛「頼み?」


―――事務所 加蓮から離れた位置

奈緒「……なあ、もうやめないか? 見てみろよ、あの加蓮」

未央「しょんぼりしてるね……しぶりんと何か話してるみたいだけど」

美嘉「な、なんか罪悪感が半端じゃないかも……」

みく「悪いことしてる気分にゃ……」

奈緒「だろ? だからさ――」

加蓮「奈緒」

奈緒「うおぇあっ!?」

加蓮「ど、どうしたの、そんなに驚いて」

奈緒「あ、いや、いきなり話しかけられたからさ。な、何か用か?」

加蓮「私、今日ちょっと用事があるから、先に寮に帰ってて」

奈緒「え? わ、分かった」

加蓮「じゃあ、そういうことだから」

奈緒「ああ」


未央「……珍しいね、かれんがかみやんと一緒に帰らないなんて」

奈緒「そういえばそうかもな」

みく「奈緒チャンに冷たくされたから、愛想尽かしちゃったのかな?」

奈緒「え……!? べ、ベベベベ別に、そ、それなら……それ、で……」

未央「みくにゃん、なんてこと言うの! かみやん、涙目になってるじゃん!」

みく「あ、ごめん! じょ、冗談だよ!?」

奈緒「な、涙目になんてなってないっ!」ウルウル

未央「うるうるしてるよ!?」

奈緒「してないって言ってるだろ……っ!」ウルウル

美嘉「ていうか、もしホントにそうだったら、アタシのせい……?」


―――アイドル寮 奈緒の部屋

奈緒「加蓮が帰ってこない……」

未央「確かに遅いね……」

美嘉「……」カキカキ

みく「み、美嘉チャン、ノートに『ごめんなさい』って延々と書き連ねるの、怖いからやめるにゃ」

美嘉「だ、だって、アタシのせいで2人の仲に亀裂が……!」

奈緒「亀裂……」ズーン…

未央「亀裂なんて入ってないって! 美嘉ねーもかみやんもそんなに思いつめないで!」

みく「と、とにかく、加蓮チャンが戻ってきたら、みんなで謝るにゃ」

未央「かれんなら、きっと許してくれるはずだよ」

奈緒「そうだといいけど……」



加蓮「ただいまー」ガチャ


奈緒「か、帰ってきた!」

加蓮「あれ? 未央たちもいるんだ」

未央「さ、さあみんな、いっせーの……ん? かれん、その持ってるの、何?」

加蓮「見て分からない? 花束」

みく「なんでそんなもの持ってるの?」

加蓮「それはね……」






加蓮「はい、奈緒にプレゼント♪」





奈緒「あたしに……?」

美嘉「プレゼントって……今日、奈緒ちゃん誕生日だったりするの?」

奈緒「いや、違うけど……」

加蓮「別に誕生日じゃなくたって、プレゼントしてもいいでしょ? ついでに言うと、その花束の花、凛に選んでもらったんだ」

奈緒「凛に?」

加蓮「つまり正確には、私と凛からのプレゼントかな」

奈緒「だ、だからなんでプレゼントなんか……」

加蓮「んー……昨日から奈緒、元気ないみたいだったから」

奈緒「え……?」

加蓮「なんだか様子がおかしかったし……奈緒、多分何か嫌なことでもあったんでしょ? だから、このプレゼントで少しでも元の奈緒に戻ったらなって思って」

奈緒「!」

未央「じゃ、じゃあかれんは……」

みく「奈緒チャンを心配して……」

美嘉「この、花束を……?」


加蓮「奈緒、どう? 少しは元気出た?」

奈緒「か、加蓮……」

加蓮「うん、何?」

奈緒「あ、あたしが……」



奈緒「あたしが悪かったよぉーっ!」



加蓮「えぇ!?」

奈緒「ごめん、加蓮ーっ!」

加蓮「な、なんの話!?」


未央「かれん!」

加蓮「み、未央?」

未央「今すぐ私を引っぱたいて!」

加蓮「どうしたの急に!?」

みく「みくも引っぱたいて欲しいにゃ!」

加蓮「みくまで!?」

美嘉「アタシは今ほど自分を恥ずかしく思ったことはないよ……! 加蓮、アタシにもお願い!」

加蓮「美嘉も!? 3人とも、いつMに目覚めたの!?」



奈緒・未央・みく・美嘉『ごめんなさいぃ―――――っ!』



加蓮「だ、だからどういうことなの!? なんでみんな謝ってるの!?」


 おしまい


―――事務所 朝

モバP(以下P)「うぃーっす」ガチャ



加蓮「はい奈緒、お茶淹れたよ」

奈緒「お、サンキュ」

加蓮「ふぅー、ふぅー……」

奈緒「別に冷まさなくていいよ!」

加蓮「あ、そうだ。……」ゴクゴク

奈緒「なんで加蓮が飲んでんだ!?……まあ、加蓮が淹れたんだからいいけどさ」

加蓮「んんっ(よしっ)」

奈緒「……いや違う!? 飲まないで口に含んだだけ……まさか!?」

加蓮「んん、んーんっ(はい、どーぞっ)♪」

奈緒「やっぱり口移しかぁーっ! よ、よせ! 口突きだすな!」

加蓮「んんーっ(奈緒ーっ)」

奈緒「飲まないから! いらないから!」



P「……。…………さて、そろそろ起きるか」

未央「別に夢じゃないよ!?」


―――昨夜 アイドル寮共同スペース

未央「ではこれより、かれん対策会議を始めます」

みく「前回の作戦も大失敗。みくたちの心に深い自省の念が残ったにゃ……」

奈緒「ああいう方向性はもうやめよう……」

ありす「後から何があったのか聞きましたが……その方がよさそうですね」

美嘉「ホント、アタシが悪かったよ」

奈緒「ていうか、なんでまた美嘉がいるんだ?」

美嘉「この前の失態を取り返すためにね」

奈緒「……無理だろ」ボソッ

美嘉「ボソッと言っても聞こえてるけど!?」


未央「さて、今回もアドバイザーを呼んであるよ」

奈緒「また呼んだのか? 今度は誰だ?」

未央「それでは登場してもらいましょう!……はやみんです!」



奏「みんな、こんばんは」



周子「やー、待ってました!」パチパチー

フレデリカ「奏ちゃんが来れば安心安心~」パチパチー

美嘉「アタシの時と態度違いすぎでしょ!」

志希「? 前回の自称恋愛マスターさんは、その態度を覆せる的確なアドバイスできてたっけ?」

美嘉「…………」メソラシ

奏「美嘉……」

美嘉「憐れみの視線やめてよ!」


ありす「LiPPSのみなさんは仲がいいですね」

美嘉「今のやり取りのどこを見てそう思ったの!? アタシが酷い扱い受けてただけじゃない!?」

未央「み、美嘉ねー落ち着いて。今は会議中だよ」

美嘉「くっ……」

未央「では、はやみん先生、状況は説明したとおりです。なにとぞ、私たちにご助言をば」

美嘉「アンタも態度違うんかい!」

奏「そうね……一つ聞きたいんだけど、いいかしら?」

未央「はい、なんでありましょうか?」

奏「……まずはその言葉遣い、やめてくれる? 馬鹿にされてる気がするわ」

未央「別に馬鹿になんてしてないけど……じゃ、やめるね。それで、何?」

奏「どうして奈緒と加蓮は、寮でそんなにイチャイチャしているの?」

未央「バカップルがイチャイチャするのに、理由なんかないよ……」

奈緒「バ、バカップル言うな!」


奏「ああ、聞き方が悪かったわ。どうして、寮以外ではしないのかしら?」

未央「それは、かみやんが恥ずかしがって、寮以外ではいちゃつき禁止にしてるからだよ」

奈緒「あ、あんなの外で出来るか! そ、それにほら、アイドルとしてまずいだろ!」

奏「女同士なんだし、過剰にいちゃつかなければ……あ、過剰なのよね」

奈緒「なっ!? か、過剰ってほどじゃ……。…………。………………。……………………」

未央「否定材料、見つかった?」

奈緒「……うるさい」

みく「そもそも、過剰じゃなかったら、こんな会議してないにゃ」

奈緒「くぅ……参加してるだけに何も言い返せない……!」

奏「まあそうなると、確かに外では無理ね。でも、事務所なら問題ないんじゃないかしら?」

奈緒「じ、事務所?」



奏「事務所の中限定で、恋人として振る舞うのを解禁してみたらどう?」



奈緒「えぇ!?」


美嘉「ちょっと奏!? アンタ、自分が何言ってるか分かってるの!?」

奏「美嘉、何か文句でも?」

美嘉「あんなの事務所でやられたら、たまったもんじゃないでしょ!」

奈緒「その言い方は酷くないか!?」

奏「そのたまったものじゃないものの被害を、寮に住んでいるみんなは毎日受けてるのよ?」

美嘉「わざわざ被害を拡大させることないでしょ!?」

奈緒「だから2人とも、あたしと加蓮を災害みたいに言うのやめろ!」

奏「美嘉、あなたまさか、自分だけは助かりたいとでも言うの?」

美嘉「えっ!?」

奏「自分さえ助かれば、寮のみんなが犠牲になっても、それでいいと」

美嘉「い、いや、そんなこと」

奏「薄情……いや、合理的ではあるわよね。ええ、合理的。少しの犠牲で他を救う、素晴らしいわ。犠牲になる者のことなど考えず、自分たちにさえ被害が及ばなければ、何ら問題はない。自分たちが幸せなら、他人の不幸など関係ない。……でも私、そういう考え嫌いよ」

美嘉「アタシ、そんなこと言ってないでしょ!?」

『…………』

美嘉「みんな、そんな目で見るのやめてよ!? 言ってないから! 思ってないから!」

奏「なら、美嘉はどうして反対するのかしら? その理由を教えてくれる?」

美嘉「うぅっ!?……は、反対なんてしません。それでいいと思います」

奏「良かった。私、美嘉がそんな自己中心的な人間じゃないって信じてたわ」

美嘉「そりゃどーもありがとうございますねぇ!」


奈緒「……」

未央「どしたの、かみやん?」

奈緒「……あたしたち、そんなまでか? そんなまでみんなに迷惑かけてたか? そんな……生贄を差し出すみたいな話をするほどにか? あたしたちはヤマタノオロチか?」

未央「そこまでは思ってないよ!?」

奈緒「じゃあどれくらいは思ってるんだ?」

未央「妖怪イチャイチャカップ―――なんでもない」

奈緒「なんでもない言うの遅いだろ! あたしたち、妖怪扱いか!?」

未央「そ、それはともかく!」

奈緒「ともかくするな!」


未央「はやみん、どうして事務所で解禁だなんて言うの? 美嘉ねーじゃないけど、事務所でまでいちゃつかれるのは……デメリットしかないと思うんだけど」

奏「そうでもないわ。推論だけれど、加蓮が過剰なまでに奈緒に甘えるのは、甘えられる場所が限られているからだと思うの」

未央「場所が限られているから?」

奏「だって恋って、そういう縛りが多いほど燃えるものじゃない?」

未央「……よく分かんない」

奏「じゃあゲームで例えると、縛りプレイって燃えるでしょ?」

未央「分かり易くなったけど、恋ってゲームと同じなの!?」

奏「逆に言うと、縛りを緩めれば、加蓮の恋の炎も少しは勢いがなくなるはずよ」

未央「な、なるほど」

奏「多分、反動なのよ。外で出来ないから、寮でその分、奈緒に甘えるんだと思う。なら、外でも恋人として振る舞えれば……」

未央「寮でのいちゃいちゃは、今よりも減るかもしれない……?」


奏「そう。それに私思ったんだけれど……せっかく付き合っているのに、恋人として振る舞えるのが寮の中限定っていうのは、加蓮が可哀想じゃないかしら?」

奈緒「うっ……」

奏「そういう意味でもこの提案、悪くないと思うの」

奈緒「た、確かに加蓮には悪かったかも……あたしのわがままだもんな……」

未央「かれんのためにもなるし、私たちのためにもなる……すごいよ、はやみん! これならみんな幸せだよ!」

奏「……え、ええ、そうね」

美嘉「ん? 今、若干間がなか――」

奏「美嘉、黙ってて」

美嘉「え、でも」

奏「黙ってて」

美嘉「はい」

奏「じゃあ、そういうことでいいかしら?」

奈緒「ああ、分かった」

未央「じゃあ明日から、事務所解禁で! かみやん、かれんに言っておいてね」

奈緒「それも分かってるって」


―――会議終了後 アイドル寮 空き部屋

美嘉「ねぇ、奏。さっきの何?」

奏「なんの話?」

美嘉「未央がみんな幸せって言った時、何か様子がおかしくなかった?」

奏「……無駄に鋭いのよね」

美嘉「無駄とは何!? やっぱり何かあるんだ!」

奏「ええ、みんな幸せ……ではないわ。まず、奈緒ね」

美嘉「奈緒ちゃん?」

奏「奈緒は、事務所でも加蓮といちゃいちゃすることになるのよ? 今まで見られてなかった寮に住んでいないみんなにまで見られることになって……恥ずかしさ、普通に増すじゃない」

美嘉「あ、そうじゃん」

奏「そして何より問題なのは……私たちね」

美嘉「私たち?」

奏「寮に住んでいない私たち。寮での加蓮が落ち着いたとしても、いいことなんてないでしょ?」

美嘉「……そうじゃん!」

奏「まあ、最初に美嘉がそう反対したんだけれど」

美嘉「ならなんで私を悪者みたいに言ったの!? 合ってたんじゃん!」

奏「言ったでしょ? そういう考え嫌いだって。私たちの心労が増えても、寮のみんなの心労が減らせれば、それでいいじゃない。一蓮托生でしょう、友達って」


美嘉「……奏って、けっこう優しいよね」

奏「あら、私は誰よりも優しいつもりだけど」

美嘉「それは言いすぎ」

奏「……というか、みんな大げさだと思うのよ」

美嘉「大げさ?」

奏「恋人同士がイチャイチャするのは、当然のことじゃない。それは少しくらい煩わしいかもしれないけれど、対策会議なんてするほどじゃないわ」

美嘉「……え、それ本気で言ってる? か、奏、アンタ、あの2人がいちゃついてるとこ見たことあるの?」

奏「あるわけないじゃない。だって寮に住んでないもの。未央に説明されただけよ」

美嘉「ちょっ!?」

奏「でも普段の加蓮を見れば、みんなの言っていることが大げさだってことくらい分かるわ」

美嘉「いやいやいやいやいや! 大げさじゃないよ!?」

奏「美嘉、リアクションが大げさ。さ、もう寝ましょう」

美嘉「いや待って! 寝るの早い! 今アタシ、急激に不安に――」

奏「……」スヤスヤ

美嘉「もう寝たの!? 奏! 奏ったら!」


―――奈緒の部屋

加蓮「奈緒、おかえりー♪ 布団敷いておいたから、いつでも寝れるよ」

奈緒「ありがと、加蓮」

加蓮「枕もくっつけておいたからね」

奈緒「それは離せよ! そんな近くで寝られるか!」

加蓮「くっつけば寝られるでしょ?」

奈緒「くっついて寝る気ないから!」

加蓮「ちぇっ、仕方ないなぁ……」

奈緒「仕方ないのはどっちだ……あ、そうだ加蓮」

加蓮「何?」

奈緒「明日からは、事務所でもいちゃついていいことにするから」

加蓮「……………………………………」

奈緒「……か、加蓮?」


加蓮「な、奈緒、それって……」

奈緒「そ、それって?」



加蓮「奈緒、そんなに私といちゃいちゃしたかったの……!」



奈緒「ちがっ!?」

加蓮「もう、奈緒は素直じゃないんだからー! 言ってくれれば、好きなだけするのに! ほら、枕くっつけるね♪ もういっそ重ねちゃう?」

奈緒「それどうやって寝るんだ!? くっつけなくていいよ!」

加蓮「またまたそんなこと言って~♪ 本当はくっつきたいんでしょ? さ、ぎゅってしよ?」

奈緒「しないって言ってるだろ!?」

加蓮「さ、いつでもどうぞ♪」

奈緒「腕開いても抱きつかないから! これホントに明日から大丈夫か!?」


―――現在 事務所

加蓮「ごくん……はぁ、仕方ないなぁ」

奈緒「仕方ないのはそっちだよ!」

加蓮「ならいいよ……はい、どうぞ自分で飲んでください」

奈緒「なんであたしがわがままみたいな……ごくごく」

加蓮「仕方ないから、間接キスで我慢するね」

奈緒「ぶふぉっ!?」

加蓮「きゃあ!? な、奈緒! お茶が顔にかかったんだけど! これは流石に酷くない!?」

奈緒「だ、誰のせいだ!」

加蓮「お詫びに奈緒が拭いてよね」

奈緒「自分で拭け――と言いたいけど、一応はあたしのせいだしなぁ……」

加蓮「はーやーくー」

奈緒「や、やればいいんだろ!」


P「え、これ現実なのか?」

凛「悲しいことにね」

P「な、ならなんであの2人、あんなことしてるんだ? あんな恋人みたいな……あ、そういや付き合ってるんだっけ? でも昨日まであんなじゃなかったろ!?」

未央「あんなだったんだよ、別の場所ではずっと」

P「別の場所? どういうことだ?」


―――説明中


P「そんなことになっていたとは……」

凛「まさか事務所でやられる日が来るなんて……」


美嘉「ねぇ、奏」

奏「……」

美嘉「奏ったら!」

奏「あ、美嘉……ごめんなさい」

美嘉「え、なんで謝るの?」

奏「大げさじゃ、なかったのね……」

美嘉「……だから言ったでしょうに」

凛「奏が提案したんだって?」

奏「……え、ええ、そうよ」

凛「何考えてるの……」

奏「……2人のため、そして寮のみんなのために、この方がいいと判断しただけよ」

奏(昨日の段階では)

未央「しぶりん、まあ2人を見守ろうよ。きっと加蓮もすぐに落ち着いて、そこまでいちゃいちゃしなくなるからさ」

凛「本当かな……」


―――一週間後

加蓮「ふふーん、奈緒ー♪」スリスリ

奈緒「ほ、頬ずりするなよ!」

加蓮「あ、じゃあ奈緒のほっぺ触っていい?」

奈緒「へ?」

加蓮「ぷにぷにー♪」ツンツン

奈緒「あ、ああう!?」

加蓮「何度触っても、奈緒のぷにぷにほっぺは気持ちいいなー♪」

奈緒「ぷ、ぷにぷにとか、そういうの言うなぁっ!」



杏「……杏、レッスン行ってくるね」

きらり「杏ちゃん!? 体の具合でも悪いの!?」

杏「いや、その言い方は酷くない? ここにいると、飴舐めたわけでもないのに、胸焼けしそうなんだよ……」


P「あの杏が自らレッスンに行くまでとは……恐ろしいな、あのバカップル」

凛「ねぇ、奏。本当にこれで良かったの?」

奏「杏が自分からレッスンに行くなんて、良いこと以外の何物でもないでしょ?」

凛「うん、杏のことに関しては良かったかもね。……でもさ」



莉嘉「はい、あーん」

みりあ「あーんっ」

美嘉「ちょっと!? 何してるの、アンタたち!?」

莉嘉「? 何って、おやつの食べさせあいっこだよ」

みりあ「いつも加蓮ちゃんたちもやってるでしょ?」

美嘉「やってるけど真似しなくていいの!」



凛「年少組に、悪影響が出てる気がするんだけど」

奏「……あれくらいなら、可愛いものじゃない。おままごとの延長よ」


凛「まあ、それはそうかもね。……だけどさ」



楓「瑞樹さん、何を読まれているんですか?」

瑞樹「ゼ○シィよ」

ちひろ「後で私にも見せてもらえます?」

瑞樹「いいわよ。菜々ちゃんも見る?」

菜々「あ、ぜひ―――い、いやいやいや! ナナはまだ17歳ですから! そんなの読みませんよ!?」



凛「年長組に、焦りが生まれてる気がするんだけど」

奏「……。……焦るくらいが、ちょうどいいんじゃない? 遅れたら大変だもの」


凛「まあ、そうとも言えるかもね。……それより何よりさ」



未央「……」

みく「……」

ありす「……」



凛「……寮組の目が、死んでるんだけど」

奏「…………」


凛「未央、ちょっといい?」

未央「なにー……?」

凛「どうしてそんなに、目が死んでるの?」

未央「かれんのイチャイチャが……全然減らない……。むしろ事務所でやってる分、前より多くなってる……」

凛「……そう。だってさ、奏」

奏「……。……一つ、言わせてくれる?」

凛・未央『何?』



奏「判断を間違えたわ」



未央「やっぱりね! うすうす気づいてたよ! だって状況悪化してるんだもん!」

凛「ついに認めたね、奏……!」


奏「完全に私のミスよ。まさか……まさか加蓮があそこまで奈緒にベタ惚れだったなんて」

未央「いや私そう説明したじゃん!」

奏「口頭で説明されただけじゃ、あそこまでとは思わないわ。普段の加蓮からは、想像もつかなかったもの。予想の遥か上を行くベタ惚れよ、あれ。てっきり、寮のみんなが大げさに言っているだけだと思っていたのに……」

未央「大げさなんかじゃないよ! ありのままを説明してたよ!」

奏「そうね……疑った私が悪かったわ。ごめんなさい」

未央「謝るのとかいいから、この状況どうにかして!」

奏「……残念ながら、それは無理よ」

未央「どうして!?」

凛「また事務所でイチャイチャするのを禁止にすればいいんじゃない?」

奏「籠の中の小鳥は、一度外の世界を知ってしまったら、もう籠の中には戻れないの」

未央「?……どういう意味?」

奏「つまり……今更禁止にしても、加蓮に歯止めはかからないということ」

未央「そんな!? なんてことしてくれたの、はやみん!」


奏「人は誰でも失敗するものよ。次に生かせばいいの」

凛「次って、何か考えがあるの?」

奏「……それはみんなで考えましょう」

未央「何も思いついてないんじゃん!」



加蓮「ぷにぷにー♪」ツンツン

奈緒「だ、だからやめろって言ってるだろ!?」



莉嘉「ぷにぷにー♪」ツンツン

みりあ「あはっ、くすぐったいよぉー」

美嘉「だからやめなさいって言ってるでしょ!?」


おしまい

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