サシャ「この味だけは、譲れません」(78)

・1『サシャ「キスの味、私に教えてください」』
 2『サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」』
 3『サシャ「二人だけの、秘密の味です」』
 4『サシャ「とくと味あわせてあげましょう!」』
 5『サシャ「同じ味を、知りたいですから」』
 6『サシャ「味気なくなんかないですよ?」』
 7『サシャ「……興味ないです」』
 8『サシャ「味も匂いもたまりません!」』
 9『サシャ「ありがとうの味、届きましたか?」』(ここまで過去ログ倉庫行き)
 10『サシャ「味も見ておきましょう」』
 11『サシャ「後味悪すぎです……」』の続きです

・いつも通りのご都合主義&展開です


―― とある昼下がり 大掃除前日 女子寮 ユミルたちの部屋

クリスタ「ユーミル! 何見てるの?」

ユミル「ああ、クリスタか。今度の大掃除の班割りだよ」

クリスタ「ずっと打ち合わせで忙しそうだったもんね。……やっと終わったんだ?」

ユミル「ああ、これが私の数週間の成果さ。見てくれよ」ペラッ

クリスタ「どれどれ……? えっと、私たちは第二会議室なんだね。他はミカサの班と、ライナーの班とマルコの班?」ペラッ

ユミル「ああ、大変だった……聞くか? どれだけ大変だったか」

クリスタ「ううんいらない」

ユミル「そうかそうか聞きたいか。……最初はな、そこはミカサとマルコの班、それと他二つの班が担当だったんだ」

クリスタ「聞いてるユミル?」

ユミル「ああ、聞いてるよ。それでな、他の教室は男女二班で一組なんだけど、会議室とかでかい教室は男女四班で一組なんだよな」


ユミル「ていうか正直私らの班かライナーの班のどっちかにねじ込めればよかったんだけどよ、これがまた、どっちの班長もとんでもなく強情な奴でさあ」

ユミル「最初のうちは私もおとなしく条件呑んでたんだけど、終いにゃ『キース教官のパンツと引き替え』とか言い出すもんだからよ、大人げなくキレちまったよ」ハハハ

ユミル「困ったあげく第二会議室の班編成に気づいてな、時間もねえからそっちの班長さんに物理的な説得試みたらあっさり通ってさ、私の数日間なんだったんだろーなーって今考えてたところさ」

クリスタ「……うん。医務室行ってくるね? 医務官呼んでくるからおとなしくしてるんだよ?」ガチャッ バタンッ

ユミル「ああ。――そういやこの前寝てたらさ、サシャと荷物を担いだアッカーマンお届け便が来てな、私に言ったんだよ。『ハンコかサインくれ』ってさ」ブツブツ

ユミル「あはははははは、笑えるだろ? あのミカサがだぞ? なあ聞いてるかクリスタ? そういや宅急便と宅配便って違うんだってな、知ってるか? それでさぁ……」ブツブツ


―― 翌日 大掃除当日朝 第二会議室

クリスタ「……というわけで、ユミルは過労で医務室だよ。今日はここには来られないと思う」シュン

ミカサ「……やっぱり」

アニ「やっぱりってどういうこと?」

ライナー「いやな、掃除の役割分担はユミルに任せてたんだけどな……」

コニー「んー? どれどれ?」ペラッ


    「  高いとこ:でっかいやつ

       低いとこ:ちっさいやつ

        残り :あまったやつ  」


ジャン「……ざっくりしすぎだろ!!」バシーン!!

アルミン「ああっ、計画表がっ!」アワアワ

マルコ(こっちはみんなに見せないほうがいいだろうな……)チラッ



    「   手順 : がんばる   」


マルコ「まずは点呼を取ろうか。男子はライナー、ベルトルト、エレン、アルミン」

ライナー「それにマルコ、ジャン、コニーだな。全員いる。問題なしだ」カキカキ

クリスタ「ええっと、女子はミカサでしょ、アニでしょ、ミーナでしょ」

ミカサ「ユミルが休みで、クリスタはいる、サシャは……」キョロキョロ



サシャ「……」ドヨーン...



ミカサ「……いるから問題なし、っと」カキカキ

ジャン(いや問題あるだろあれ……)


エレン「……コニー」ヒソヒソ

コニー「……ああ、わかってるよ」ヒソヒソ



ベルトルト「掃除道具は……ほうき三本ちりとり一つ、伸縮式の棒二本と水桶が四つに、雑巾が十三枚……つまり全員分か」

アルミン「今回は普段やらないところを重点的にやるんだよね?」

マルコ「うん。えーっと……窓ふきに蜘蛛の巣取り、机の落書き消しがメインだね」ペラッ

ミーナ「時間長い割にやること少ないね。……これは終わったら遊んでいいってこと?」キラーン

アニ「そんなわけないでしょ。いつもより丁寧にやれってことじゃないの?」

ライナー「そういうことだ。……さて、そろそろ役割振っていくか、ユミルのはアテにならんしな」

ミカサ「うん。まずは蜘蛛の巣取りだけど――」


コニー「よっしゃあ! 行くぞサシャ、俺たちは水汲みだ!」ダッ

サシャ「!? ――えっ、なんですか!?」ビクッ

エレン「ほら、モタモタしてると置いてくぞ!」ダッ

サシャ「ま、待ってくださいよ!」ダッ

ジャン「おい待てって、まだ何も決めてねえだろ! ……ったく、あの三馬鹿め」

クリスタ「私、心配だから三人についていくね!」タッタッタッ...

ミーナ「はーい、いってらっしゃーい」フリフリ

マルコ「……エレン・コニー・サシャ・クリスタは机の落書き消し組っと」カキカキ

アルミン「じゃあ、他は残ったみんなで分けよっか」

ミカサ「後は蜘蛛の巣取りと窓ふきだから、じゃんけんで決めていいと思う」グーパー

ライナー「そのほうが後腐れがなくていいかもな。――よし、一回で決めるぞー?」グーパー


―― 水汲み場

クリスタ「もう、エレンもコニーもせっかちなんだから。まだ何も決めないまま先に行っちゃダメだよ?」プンスカ

コニー「悪い悪い、いちいち係決めとかまどろっこしくてよ」

エレン「そうそう、どうでもいいことでモメるのは嫌なんだよ。サシャもそう思うだろ?」

サシャ「……」

コニー「……」

エレン「……」

クリスタ「……サシャ?」

サシャ「……? 今、何か言いましたか?」キョトン

クリスタ「……エレン、コニー。二人とも先に行ってて? 私たちは後から追いかけるから」

コニー「お、おお! 悪いな、じゃあ先行ってるわ」ダッ

エレン「ゆっくりでいいからな! みんなにも言っておくから!」ダッ


クリスタ(エレンとコニーも気づいてるんだ……サシャが元気ないの)

クリスタ(ねえサシャ、何かあったの? この前のお休みの日から何か変だよ?)

クリスタ(……って、直接的に聞くのはまずいよね。うーん……何か元気が出るようなことないかな……)キョロキョロ

クリスタ「! ――ねえねえサシャ、見てあそこ!」

サシャ「……? なんですかクリスタ」

クリスタ「お花咲いてるよ! ちょっと寄って行こうよ!」タタタッ

サシャ「えっ!? 水汲みの途中ですよ……って聞いてない! 待ってくださいよクリスタ!」ダッ


クリスタ「ほらほら見て、たくさん咲いてる!」

サシャ「シロツメクサ……ですか。この前の草刈りで全部刈り取っちゃったかと思ってましたけど」

クリスタ「日陰だから花が咲くのが遅れたのかな? それで気づかれなかったのかもしれないね。――でも、これだけ咲いてると冠が作れそうだよね!」

サシャ「クリスタは作れるんですか? 花の冠」

クリスタ「下手っぴだけどね、編み方くらいはわかるよ? タンポポと組み合わせるとちょっとだけ豪華に見えるんだー」ホンワカ

サシャ「……そうですか」

クリスタ「うん、そうなの!」

サシャ「……」

クリスタ「……」

クリスタ(ううっ……うまくいかないなぁ、他に何か……)キョロキョロ


クリスタ「……えっとね、シロツメクサの花言葉って知ってる?」

サシャ「? 花言葉があるんですか? 雑草なのに?」

クリスタ「雑草じゃないよ、シロツメクサだって立派なお花だよ? えっとね、意味は複数あるんだけど……代表的なのは『幸運』とか『約束』とか、他には『私を想ってください』っていうストレートな言葉があるよ」

クリスタ「それと四つ葉のクローバーにはね、『私のものになって』っていう意味もあるんだって!」

サシャ「へえ……クリスタ、物知りですね」

クリスタ「サシャはあんまり興味ない? こういうの」

サシャ「私は……お花見てるより、ご飯食べてるほうが幸せです」

クリスタ「花より団子かぁ……サシャらしくていい答えだよね、うん」

クリスタ(うーん……これでフォローできた、かなぁ……?)チラッ


サシャ(花言葉、か……私には縁遠い言葉ですね)

サシャ(いちいち意味とか、考えたことなかったです)

サシャ(そういうこと考えるのが、普通の女の子ですよね……)

サシャ(……)

サシャ(クリスタは、私より、綺麗で、優しくて、おしとやかで、かわいくて……)

サシャ(私より素敵な人は、こんな近くにもいる……)

サシャ(私なんかじゃ、他の子には敵わない……)

サシャ(……)ズキズキ

サシャ(やだなぁ……まだ、おなかが痛いです……)ズキズキ


―― 第二会議室

エレン「ぴっかぴかにしーてやんよー」フキフキ

コニー「にじいーろのつくえーぴっかぴかにしようー」フキフキ

クリスタ「もうっ! 二人とも、真面目にやってよ!!」プンスカ

エレン「何言ってんだよクリスタ、俺たちちゃんと真面目にやってるぜ?」フキフキ

コニー「おう! 見てわかんねーのか?」フキフキ

クリスタ「それは……その、掃除してるってのは見てわかるけど!」

コニー「……あのなあクリスタ、掃除には愛が必要なんだ」ジッ...

クリスタ「……何の話??」キョトン

エレン「ところでクリスタ、今のお前の目の前には何が見える?」ポン

クリスタ「え? えっと、机、だけど……」


コニー「そうだな。じゃあお前にとってこの机はなんだと思う?」

クリスタ「えっと、意味がわからないんだけど……?」

エレン「なあクリスタ。――お前はこの机に恋してるのか?」

クリスタ「恋……? 恋!? なんで!?」

コニー「例えだよ、例え。それくらい真剣に机磨きに勤しんでるのかって意味だ」

クリスタ「わ、私は真剣にやってるつもり……だけど……」オロオロ

エレン「ははっ、恋っていう表現は大袈裟だったな、悪い。――じゃあこの机が馬だと考えたらどうだ? もっと丁寧にやろうって気にならないか?」

クリスタ「この机が……馬……?」

クリスタ「……」

クリスタ「……」スッ

クリスタ「あーなたーがーなーんとーいおうともーわたしがーいーえばーそれがーすべてーよー♪」フキフキ

エレン「……」ニッ

コニー「……」ニッ



エレン・コニー「……」パァンッ!! (※ハイタッチした音)


ジャン「……馬鹿が増えやがった」

ミーナ「あはは、楽しくやってるんだからいいんじゃない?」

ジャン「あいつら気を遣うにもわざとらしすぎんだろ、サシャがますます浮いてんじゃねえか」キュッキュッ

ミーナ「ふーん……ジャンったら、他の女の子を気にかける余裕があるんだ?」

ジャン「……あぁ? 何の話だ?」

ミーナ「彼女が欲しいんだって? ジャン」キュッキュッ

ジャン「……誰から聞きやがった」

ミーナ「たぶん、ジャンが思ってるよりは広まってるんじゃないかな? 女子の情報網舐めないでよねー」キュッキュッ

ジャン「どっから情報仕入れてくんだよお前ら……」


ミーナ「ねえねえ、だったら私とかどうかな? 夏の間だけでもさ、お試しでもいいから」

ジャン「はぁ? お前とか? 嫌だっての」キッパリ

ミーナ「…………そんな強く言わなくてもいいのに」ボソッ

ジャン「お試しとかそういうこと、軽々しく言うんじゃねえよ。ちゃんと好きな奴に正面からぶつかって正面から付き合ってこい」

ミーナ「……」

ジャン「おい、上のほう拭き残しあるぞ? 拭くからな」キュッキュ

ミーナ「……ほんっと、もったいないなぁ」ボソッ

ジャン「? なんだよ、何か言ったか?」

ミーナ「ううん、別に? ――いいから続きやろ?」キュッキュッ


ベルトルト「よいしょっと……結構張ってるね、蜘蛛の巣」

アニ「そうだね」

ベルトルト「……ところでアニ、蜘蛛嫌いだっけ?」

アニ「そんなわけないでしょ。全然怖くないし」

ベルトルト「えっと……じゃあ、僕のシャツの裾を摘むのはやめてくれないかな、動きにくいし」

アニ「は? 掴んでないよ何言ってるの? それに全然怖くないから」ギューッ...

ベルトルト「アニ? 聞いてる?」

アニ「…………………………怖くないってば」ギュウッ...

ベルトルト「嫌なら誰かに交替してもらえばよかったのに……」

アニ「うるさいな、とっとと終わらせようよ」

ベルトルト「はいはい、わかったわかった」クスクス

アニ「……」ゲシッ

ベルトルト「痛い!」


アルミン「ねえライナー、サシャと喧嘩したの?」キュッキュッ

ライナー「……そう見えるか?」

アルミン「うん。お互い気まずそう」キュッキュッ

ライナー「……この前の帰り道に、突然泣き出してな」キュッキュッ

アルミン「サシャが? どうして?」キュッキュッ

ライナー「靴擦れが痛いからだと思ったんだが、どうやら違うらしい。……女心は難しいな、どうしたらいいのかわからん」

アルミン「難しいって……そんなことないよ。意外と考えてることは単純だよ?」

ライナー「ミカサと比べるなよ」

アルミン「違う違う。女の子はさ、何か考える時にいちいち理由を求めたがるから、僕たちにはややこしく見えちゃうだけだよ」

アルミン「そうだなぁ……例えば、花言葉とかはいい例かもね。『きれいだな』って感想だけで終わらないで、どういう意味がこめられてるのかあれこれ考えちゃうんだ、女の子って」

アルミン「だからね、そういう時にこっちも色々考えて動くと、またややこしくなっちゃうから……シンプルな方法を試したほうが、上手くハマる場合もあるよ」

ライナー「……参考にしておく」キュッキュッ


アルミン「そういえばさ、ライナーって最近笑うようになったよね」

ライナー「そうか? そんなことないだろ」

アルミン「ううん、僕たちとふざけて笑うことはあっても、女の子と話す時はいつもしかめっ面してたよ?」

ライナー「そうか? ……気づかなかったな」キュッキュッ

アルミン「なら、自然とそういう顔になってるってことだよね。いい傾向だと思うなぁ」

ライナー「……」キュッキュッ

アルミン「それって、誰のおかげなのかな?」

ライナー「……」

アルミン「……」

ライナー「……座学一位様は、からかい方もひと味違うんだな」

アルミン「あははっ、何のことかわからないなぁ」キュッキュッ


ミカサ「……うん、進みは順調」カキカキ

マルコ「この調子なら早い時間に切り上げられそうだな、よかったよ」

ミカサ「そろそろゴミ捨てに行かなければ」ヒョイッ

マルコ「ちょっと待った。……ミカサはここにいてよ。サシャのことが心配なんだろ?」

ミカサ「……どうしてわかったの?」キョトン

マルコ「親友を心配する気持ちは、僕もわかるからさ」

ミカサ「……なら、お願いする」

マルコ「うん、任せておいて。……もう何事もないだろうけど、後はよろしく」


エレン「すすむーいしをーわらうーぶたよー♪」フキフキ

コニー「かーちくのあんねい♪」フキフキ

クリスタ「きょぎのはんえい♪」フキフキ

エレン・コニー・クリスタ「「「しーせるがろーのじゆうーをー!!」」」クワッ!!

ジャン「うるっせえな掃除ぐらい静かにできねえのかお前らはぁっ!!」

エレン「おいおいジャン、あまり神経質になるとハゲるぞ」

ジャン「ふざけんなコニーと一緒にすんじゃねえよ!!」

コニー「!? ちょっと待て、俺のはハゲじゃなくて坊主だっての!!」

クリスタ「あははっ、みんな仲いいね?」フキフキ

エレン・コニー・ジャン「「「よくねえよ!!」」」


クリスタ「……」チラッ

サシャ「……」フキフキ

クリスタ(さっきから同じところ拭いてる……)

クリスタ(周りで騒いでたら、気晴らしにはなるかなって思ってたけど、これでもダメかぁ……他に何か……)キョロキョロ

クリスタ「ねえサシャ――きゃっ!?」コケッ

クリスタ(足元に水桶!? 転ぶっ――!!)

サシャ「!? ――クリスタ!!」グイッ





         ばっしゃーん!!


コニー「おい大丈夫か!? すげー音したけど……」

エレン「クリスタ、何があった!?」

クリスタ「わ、私が転んだんだけど、サシャが庇ってくれて、でもそのせいで頭から水浸しに……」オロオロ

サシャ「……」ポタポタ...

クリスタ「ごめんねサシャ、私がちゃんと足元見なかったせいで……」オロオロ

サシャ「大丈夫ですよ、クリスタ。それより、怪我はしませんでした?」ポタポタ...

クリスタ「私は平気だけど、サシャが水浸しになっちゃってるよ!」オロオロ

サシャ「これくらい着替えれば大丈夫ですから、問題ないですよ」

コニー「着替えれば大丈夫って……一応医務室行っといたほうがいいんじゃねえか? どっか打ってるかもしれねえぞ? かなりでけえ音だったし」

サシャ「いえ、……平気です、すぐ着替えてきます」ヨロッ

エレン「おい、そこの床まだ濡れて――」


サシャ「!? ――あいたぁっ!?」ズルッ ベシャッ!!

クリスタ「サシャ、大丈夫!?」

サシャ「あはは、だから平気ですって――」



ライナー「おいサシャ! ――立てるか?」



サシャ「」ビクッ

クリスタ「あっ、ライナー……」

サシャ「……平気です」

ライナー「今、顔から転けただろ。見せてみろ」

サシャ「平気ですってば、一人で立てます」ヨロッ...

ライナー「それのどこが大丈夫だ、やはりどこか打ったんじゃ――」



サシャ「いいから、私のことなんかほっといてくださいよ!!」




      シーン ・ ・ ・



サシャ「あ……」

サシャ(私、今……)

サシャ「あ、あの……私……」

サシャ「……」

サシャ「……ごめんなさい!」ダッ



ミカサ「!! ――ジャン、ここはお願い!」グイッ

ジャン「はぁっ!? お願いって何すりゃ……」

ミカサ「あなただけが頼り! 後はよろしく!!」ダッ

ジャン「」


マルコ「ただいま……ってうわっ!? なんで床が水浸しになってるんだ!?」

ジャン「俺だけが……頼り……俺だけが……俺だけ……!!」ブツブツ

マルコ「ジャン? 一体何があったんだ?」

ジャン「マルコ、決めたぞ……」

マルコ「? 何を……?」

ジャン「俺は……俺は今から、掃除の鬼になる……! そう、俺は今からお掃除委員長だ……っ!!」

マルコ「……はぁ?」


クリスタ「……私もやっぱりサシャのところ行ってくる!」ダッ

ジャン「ダメだ、行くんじゃねえクリスタ」グイッ

クリスタ「ジャン、どいてよ!」

ジャン「いいや、どかないね。お前が今やるべきことなのは床の掃除だ。あいつを追いかけることじゃない」

クリスタ「でもっ、私のせいでサシャが――」

ジャン「そう思うんなら尚更だ。自分のせいで掃除が中断になったって知ったら、あいつ更に落ち込むぞ」

クリスタ「……」ジロッ...

ジャン「俺を睨んだって何も出ねえよ、クリスタ」

クリスタ「……わかった、ちゃんとやる」

ジャン「ああ。――あとはミカサに任せとけ」


アニ「ほら、あんたも」ゲシッ

ライナー「ぐっ!? ……おい、蹴る奴があるか」ヒリヒリ

アニ「でかい奴なんて立ってるだけで邪魔なんだから、ちゃんと仕事しなよ」

ベルトルト「……アニ、それって僕にも当てはまるんだけど」

アニ「そう思われたくないなら掃除すれば?」ギロッ

ベルトルト「……はい、ごめんなさい」ショボン...

アニ「あっちはミカサに任せて、さっさとここを片付けようよ」

アニ「それで……全部終わった後に、どこでも好きなところに行けばいいでしょ」

ライナー「……」

アニ「何? 私何か間違ったこと言ってる?」

ライナー「いや、お前の言うとおりだな。――わかった、やるよ」


―― 兵舎裏手

サシャ「……」グスッ

サシャ(ああ、やっちゃいました……みんな、怒ってるだろうな……)ズズッ

ミカサ「! ……サシャ! やっと見つけた」タタタッ

サシャ「み、ミカサ……!? ……ごめんなさい、さっきはびっくりしちゃって」ゴシゴシ

サシャ「みんな待ってますよね、着替えたらすぐ行きますから!」スタスタ...

ミカサ「待って」ギュッ

サシャ「……放してください」

ミカサ「サシャ。あなたは今、何か悩んでることがあるはず」

サシャ「……ありませんよ」

ミカサ「サシャ」

サシャ「何もありませんってばっ!!」ガリッ!!


ミカサ「……っ」ポタッ...

サシャ「あ……」ビクッ

サシャ(爪が引っかかったところから、血が……)

ミカサ「……大丈夫。痛くない」ニコッ

サシャ「ミカサ……わっ、私……あの……」

ミカサ「私たちは、友だち。なんでも話してほしい」

サシャ「……話したって、私の気持ちなんかミカサにはわかりませんよ」

ミカサ「話してもないうちから、そうやって決めつけないでほしい」


サシャ「……笑いませんか?」

ミカサ「うん。笑わない」

サシャ「……軽蔑したり、しませんか?」

ミカサ「しない。大丈夫」

サシャ「……嫌いになっちゃったり、しませんか?」

ミカサ「嫌いなら、こんなところまで追ってこない」

サシャ「……」

ミカサ「サシャのこと、サシャの気持ち……私に聞かせて?」



サシャ「……最初は、誰でもよかったんです。本当に」


サシャ「でも、一緒にいるうちに……すごい人なんだなって、事ある事に思い知らされて」


サシャ「見てるとわかるんです。この人は私とは違って、みんなに必要とされてるんだなって」


サシャ「困った時にはみんなから頼られていて、私とは正反対で。本当、かっこいいですよね」


サシャ「……でも、あの人は、自分が困った時には誰に寄りかかるのかなって、ふと思ったんです」


サシャ「ミカサには、エレンがいるでしょう? でも、あの人には誰もいないような気がしたんです」


サシャ「背中を合わせる仲間はいっぱいいるけれど、背中を預ける誰かはいないように思えて」



サシャ「――だったら、そこに私が入ってもいいのかなって、高望みして」


サシャ「同じ景色を見てみたら、少しはわかるのかなって単純に考えて」


サシャ「自分らしくない努力とかしちゃって、追いつきたいなって考えちゃって」


サシャ「あはは、身の程知らずにも程がありますよね、本当」


サシャ「それでも最近は、ちょっとは近づけたのかなって思ったりしてました」


サシャ「……でも、あの人の隣にいるべきなのは、私じゃないんです」


ミカサ「……? どうしてそう思うの?」

サシャ「好きな人がいるって、言ってたんです、一番最初に。最近まで忘れてたんですけどね」

サシャ「他に……私の他に、そこにいるべき誰かが、いるはずなのに」

サシャ「私は、優しい気持ちを利用して、場違いな努力して、無理矢理隣に居座ろうとしててっ……」

サシャ「私だけ、一生懸命で、空回りして……本当、馬鹿みたいですよね。……実際私は馬鹿なんですけど」

サシャ「それに、それだけじゃないんです。さっき、クリスタが一生懸命励ましてくれたのに……私、自分と比べてたんです」

サシャ「一生懸命、クリスタに勝てるところを探してたんです。……そんなところ、一つもないのに」ポロッ

サシャ「誰かと比べて、満足しようとしてっ、……わたしはっ、ずるくて、ばかでっ、嫌な子なんですっ」グスッ

ミカサ「……サシャ」

サシャ「だからっ、そんな汗だくで、息を切らして来てもらえるほどっ……立派な、人間じゃないんですよっ、私は!」


ミカサ「……」

サシャ「……すみません、変なこと言って……せっかくっ、来てくれた、のにっ」グスッ

ミカサ「……これは、例えばの話だけれど」

サシャ「? ミカサ……?」

ミカサ「もし、この先サシャのことを好きになってくれる男の人がいたとして」

ミカサ「その人が、『サシャは女の子らしいから好き』って答えたら、私はそいつを削ぐ」

サシャ「そ、削ぐって、そんな物騒な……」

ミカサ「サシャはサシャらしいのが一番いい。その良さがわからない男は削がれて当然」

サシャ「私らしさ……? って、なんですか?」

ミカサ「脳天気で馬鹿で食い意地の張ってる芋女」

サシャ「ひどいです!?」ガーン!!

ミカサ「それでも、サシャらしいサシャが、私は好き」


ミカサ「それと、もう一つ」

ミカサ「もし、エレンが他の誰かを好きになったとして。……いやそんなことは絶対にありえないのだけれどこれは仮定の話なのであって」

サシャ「ミカサミカサ、落ち着いてください」

ミカサ「ごめん、取り乱した。……それで、もしそうなったら、私はその誰かと、全力で戦うと思う」

サシャ「……ミカサなら、そうするでしょうね」

ミカサ「うん。一歩だって退いてやるつもりはない」

サシャ「……エレンが嫌だって言ってもですか? その人を傷つけないでほしいと言ってもですか?」

ミカサ「もちろん、エレンの幸せが一番大事だけれど……それは、私の気持ちを殺す理由にはならない」

サシャ「ミカサの気持ち?」

ミカサ「そう。その人じゃなくて、私が、私自身がエレンを幸せにしてあげたい、っていう気持ち」

ミカサ「……なので、精一杯戦うと思う。戦わなければ、負け犬にすらなれないから」


ミカサ「……サシャはどう?」

サシャ「私、ですか……?」

ミカサ「好きな人がいるから何? それで諦めてしまうの? サシャは、その誰かに譲ってしまうの?」

サシャ「私は……」





サシャ(……ああ、そっか)

サシャ(最初から、わかってたはずなのに)

サシャ(誰が好きとか、私がどうだとか)

サシャ(難しく考える必要、なかったんですね……)


サシャ「やだっ……渡したく、ないですっ……そばに、隣にいたいです……っ!」ポロポロ

サシャ「やっぱり、わたしはっ、ライナーの、一番に……っ、なりたい……っ!」グスッ

サシャ「私のこと、選んでほしいです……っ!」ギュッ

ミカサ「……じゃあ、やることはもう決まってる」

サシャ「でもっ! ……怖いんです、いやって言われるのが、怖いんです……」

サシャ「もし、やだって言われたら……そう思うと、こわくってぇ……っ」グスッ

ミカサ「……みんな、怖い。怖くても、踏み出さないと、先には進めない」





ミカサ「――恋するのって、そういうこと」


サシャ「……恋?」

ミカサ「うん。愛とはちょっと違う。恋」

サシャ「……私は、恋してるんですか?」

ミカサ「そう。サシャは今、恋をしている。人生初めてなら、これが初恋」

サシャ「……私も、恋していいんですか?」

ミカサ「もちろん。サシャだって女の子なんだから」

サシャ「だって、私は……」

ミカサ「サシャ。あまり自分のことを悪く言うのはやめて。私の大切な友だちのこと、悪く言わないでほしい」

サシャ「ご、ごめんなさい」


サシャ「そっかぁ、これが、恋なんですね……」

ミカサ「うん。だから、その感情はおかしくない。みんなにあるもの。私にもある。エレンやアルミンにも……きっとライナーにもある」

サシャ「ライナーは、そんなこと思ったりしませんよ……」

ミカサ「男の人は、気持ちを表に出すのが女の人より少しだけ下手。だからサシャが気づいていないだけ」

ミカサ「今、サシャがライナーの一番になれているかどうかは置いといて。……サシャが思っているよりもずっと、ライナーはあなたのことを大切にしてくれてる」

ミカサ「他の誰かの代わりだなんて思っていない。絶対に」

サシャ「ミカサ……」

ミカサ「私はちゃんと知っている。サシャはいい子。とっても」ナデナデ


ミカサ「というわけで、えいっ」ゴツンッ

サシャ「いたっ……なんですか、今の頭突き」ヒリヒリ

ミカサ「エレンはたまにこうやって私に元気をくれる。だから、お裾分け」ヒリヒリ

サシャ「……」

ミカサ「元気出た?」

サシャ「……そうですね、今なら巨人の二、三体くらい軽く倒せそうです!」

ミカサ「それは言い過ぎ」チョップ

サシャ「あはは、痛いですよミカサ」

ミカサ「ふふっ、ごめんサシャ」ナデナデ

ミカサ「――さて、そろそろ行こう。濡れた服のまま風に当たっていたら風邪を引いてしまう。……一人で立てる?」

サシャ「はい、立てます。大丈夫ですよ」


―― 昼 営庭の隅っこ

エレン「よっ、ライナー。ちゃんと掃除道具返してきたぞ!」

ライナー「ああ、ありがとうな」

エレン「で、こんなところで胡座かいて何悩んでんだ?」

ライナー「……なあエレン。少し聞きたいことがあるんだが」

エレン「!! おうっ! なんでも俺に話してみろよ!!」キラキラキラキラ

ライナー「なんでそこではしゃぐんだ? ……まあいい、お前、ミカサが機嫌悪い時はいつもどうしてる?」

エレン「必死でなだめる」

ライナー「……どうやって?」

エレン「そりゃその時にもよるんじゃねえの?」

ライナー「なら、自分が悪い場合は?」

エレン「んー……露骨に機嫌取ると逆に拗ねて面倒だからな、でも全く気にしてない素振りもキレるんだよなー」

ライナー「打つ手なし、か」


エレン「でも、アルミンに聞いた必殺の手なら知ってるぜ!」

ライナー「必殺の手?」

エレン「花をやるんだよ。一本でいいからさ」

ライナー「一輪な」

エレン「揚げ足取るなよ。でも、だいたいミカサは喜んでたな」

ライナー「花か……けど、他に好物があるならそっちのがよくないか?」

エレン「いや、そんなことないと思うぞ? 逆に他に好きなモンがあったほうがいいってアルミンは言ってたな」

ライナー「どういう意味だ?」

エレン「確か……普段あげてないものだからこそ、特別なものって感じがして喜ぶんだってよ。……よくわかんねえけど」

ライナー「……なあエレン、これから暇か?」

エレン「……兄貴からの頼みとあっちゃあ、弟としては断れねえよな?」ニッ


―― 数時間後 昼 医務室

ユミル「あのさ。見舞いに来てくれたのは嬉しいけど、辛気くさい顔で横に座るなよ。気が滅入る」ゴロゴロ

クリスタ「うん……ごめん……」ズーン...

ユミル「ったく……いくら心配だからって柄じゃねえはしゃぎ方するなっての。空回りしてたら意味ないだろ」ナデナデ

クリスタ「はい……反省してます……」ズズーン...

ミカサ「失礼します。……クリスタ、ユミルの具合はどう?」ガチャッ

クリスタ「!! ミカサ、サシャは大丈夫だった!?」ガタッ

ミカサ「膝の辺りに青あざができただけ。今は少し早いけどお風呂に入っている。クリスタも後で行ってあげて」

クリスタ「ううん、今行ってくる! ありがとうミカサ!」

ミカサ「いってらっしゃい。転ばないように気をつけて」

クリスタ「うん! いってきます!」ガチャッ バタンッ


ユミル「……珍しい客もあったもんだ。明日は雪だな」

ミカサ「今は夏。なので、それは困る」

ユミル「で、こうして見舞いに来たってことは、なんか今日は面白いことあったのか?」

ミカサ「サシャが、やっと自覚した」

ユミル「……」

ミカサ「……」

ユミル「……そっか」

ミカサ「それだけ?」

ユミル「他に私に何か言ってほしいってのか?」

ミカサ「……じゃあ私が喋る」

ユミル「どうぞご自由に」


ミカサ「今回は暗躍お疲れさま、ユミル」

ユミル「……お前に労われると調子狂うな、ミカサ」

ミカサ「それはちょっと心外」ムー...

ユミル「てっきりまた『余計なことすんな』って怒るのかと思ったよ」

ミカサ「この前は特定の行為を無理強いしようとしていた。ので止めた。今回は違う」

ユミル「へいへい、そりゃどうも」

ミカサ「サシャは、自分の気持ちをちゃんと知る必要があった。それを知らずに残りの時間を過ごしたら、きっと後悔していた、と思う」

ミカサ「だから私はお礼を言おう。ありがとう、ユミル。サシャにきっかけを作ってくれて」

ユミル「お前に礼なんか言われると調子狂うな。――まあでも、これで一安心だな、ミカサお姉ちゃん?」ニヤッ

ミカサ「へへっ、ユミルの姉御にゃ敵いませんよぉ」クネクネ

ユミル「真顔で言うな気色悪い。……それでも結局、私たちは状況を引っかき回してるクソ野郎だけどな?」

ミカサ「それは、後から振り返ってみないとわからない。せめて後から思い出した時に、いい選択だったと思えるような行動をしよう」


―― 夕方 とある廊下

サシャ「だーれもいないお風呂って、気持ちいいですねえ……」ホカホカ

サシャ(掃除……投げ出しちゃったこと、みんなに謝らないといけませんね……)スタスタ...

サシャ(あれ? あそこにいるのって、もしかして……)

サシャ「ライナー? 何してるんですか?」

ライナー「……サシャ? だよな?」

サシャ「? はい、そうですけど」

ライナー「風呂に入ってきたのか?」

サシャ「はい、あのままだと体が冷えるってミカサに言われまして」

サシャ「ついでに洗濯とか細かい後片付けとか、諸々やってたらこんな時間になっちゃいました」


ライナー「……」

サシャ「ライナー? どうかしましたか?」

ライナー「いや……髪下ろすと、雰囲気違うと思ってな」

サシャ「? 前も下ろしてましたよ? ほら、髪ゴム買った時とか」

ライナー「そうじゃなくてだな、その………………風呂上がりだとほら、な?」

サシャ「……すみません、私馬鹿なのでもうちょっとわかりやすく言ってください」

ライナー「あーもういい!! ……ほら、これやるよ」

サシャ「わっ……これ、四つ葉のクローバーですか? どうしたんですこれ」

ライナー「本当は花を探してたんだが、この前草刈りしたばかりだからなかなか見つからなくてな。水汲み場の近くでようやく見つけたんだが――」


―― ライナーの回想

コニー「何してんだ? エレン、ライナー」

エレン「お花摘み」ブチブチ

コニー「……お前らそんなメルヘンチックな趣味持ってたっけ」

ライナー「一流の男はこういうことも嗜むもんだぞコニー」ブチブチ

コニー「だからってなぁ……雑草そのまま摘むんじゃ芸がねえだろうが」ブチブチッ

エレン「あっ、おい何抜いてんだよ!」

コニー「いっぱい生えてんだからいいだろ? これをこうしてだな……」アミアミ


コニー「ほい、花冠。もとい花輪」

ライナー「……おお」

エレン「……お前そんなメルヘンチックな趣味持ってたのか」

コニー「妹によく作ってやってたんだよ、腕輪とかネックレスもできるぞ」アミアミ

エレン「すっげえな、どうやるんだそれ」ワクワク

ライナー「もう一回やって見せてくれ」ワクワク

コニー「いいぞー俺に任せろ!!」ブチブチッ


―― 夕方 とある廊下

ライナー「……ということがあってだな」

サシャ「全部なくなっちゃったわけですね。コニーらしいです」クスッ

ライナー「……やっと笑ったか」ボソッ

サシャ「? 何か言いました?」

ライナー「いいや何も?」ワシャワシャ

サシャ「……どうして頭撫でるんです?」

ライナー「……お前ちゃんと髪乾かしてこいよ。肩のタオルはオマケか?」

サシャ「いえいえこれはですね、ミーナが乾かす前に色々髪に塗るので、先にそれを取りに――わぷっ!?」

ライナー「いいから拭け。水滴が床に垂れたら掃除したのに台無しだろうが」ゴッシゴッシ

サシャ「もうっ! わかりましたわかりましたから!! 自分でやりますよ!!」ジタバタジタバタ


サシャ「全く……私がハゲたらライナーのせいですからね、責任取ってくださいよ?」フキフキ

ライナー「俺の髪じゃ植え替えても足しにならんだろうなぁ」

サシャ「そう思うんならやらないでくださいよ……ああっ、何本か抜けてる!?」ガーン!!

ライナー「二、三本なら大丈夫だろ。今は夏毛の季節だしな」

サシャ「私は動物じゃないですよぅ!!」プンスカ

ライナー「そうだったな、悪い悪い」

サシャ「……もう」

ライナー「詫びと言っちゃなんだが、一つ言うことなんでも聞いてやろう。何がいい?」


サシャ「……なら、少しだけ時間ください」

ライナー「……場所を変えるか?」

サシャ「ここでいいですよ。ちょっと屈んでください。届かないので」

ライナー「? ……こんな感じか?」

サシャ「えいっ」ゴツンッ

ライナー「……お前やっぱりまだ怒ってるだろ」ヒリヒリ

サシャ「違いますよ、元気のお裾分けです。ミカサからもらったので、ライナーにもお裾分けです」ヒリヒリ

ライナー「お裾分けって、お前な……」

サシャ「今日もお疲れさまでした、ライナー。明日も頑張りましょうね?」

ライナー「…………おう」


サシャ「そろそろ行きましょうか? 髪も拭いたんで、このまま食堂に行きましょう?」

ライナー「そうだな、行くか。……その草はどこかにしまえよ。間違って食うんじゃないぞ」

サシャ「食べませんってば!」ゴソゴソ

サシャ(四つ葉のクローバー……っていうことは、たくさんある中から、これを見つけたってことですよね)

サシャ(『私のものになって、私を想ってください』、か……)

サシャ(いつか、私のことも……こんな風に選んでくれたら、いいな)チラッ

ライナー「? なんだ?」

サシャ「いいえ、なんでもないです」

サシャ(この先、何があったって――)



サシャ(――この味だけは、誰にも譲りません)ギュッ



おわり

終わりです。読んでくださった方&レスくださった方ありがとうございましたー!
ここでやっと折り返しです。ほんっとズルズルダラダラと付き合わせてすみません
まあまだ秋ネタも冬ネタも消化しきってないのでまだ続くんですけどね!
ていうか飽きたら切ってくださっていいですからねマジで

ところで何か書いてほしい夏イベントありますかね 今まで出て来たの以外で
書けそうなイベントなら書かせていただきたいと思います 書けなかったらすみません
特になければ次々回くらいから秋ネタに入る予定です
それと今回はオマケがあります コニー×ユミルです。読みたい方だけどうぞー


・おまけ 花冠の行方

―― 夕方 女子寮近くの廊下

ユミル「っあー、よく寝たよく寝たー」アクビ

ユミル「メシ食ったらもう一回寝るか……」スタスタ...

コニー「おーいユミル!」ブンブン

ユミル「んあ? ……なんだよコニー、走ってくるほど緊急の用事か?」

コニー「おう。ちょっと頭下げろ」

ユミル「……出会い頭に謝罪を要求される謂われはないね」スタスタ...

コニー「違ぇよ、屈めって言ってんだよ俺は!!」

ユミル「へいへい、これで満足ですかねおチビさん」

コニー「ぐっ……! まあいいや、これやるよ」パサッ

乙です
そろそろこのシリーズも終わりかと思っていたらまだ折り返しだったとは
今後も期待


ユミル「? ……何の真似だ? コニー」

コニー「せっかく作ったのに捨てるのはもったいなかったしよ。やる」

ユミル「なんだ、私はゴミ処理係ってか?」

コニー「違ぇよ、花もらうと女って元気になるんだろ? エレンとライナーが言ってたぞ」

ユミル「……安直」プーックスクス

コニー「なんだよ素直に受け取っとけよ、かわいくねー奴」ケッ

ユミル「うっさいな、用事が済んだならとっとと行けチビ!! ハゲ!!」

コニー「誰がハゲだ誰が!! やっぱ返せそれ!!」ピョンピョン

ユミル「やだね! ふんっ!」スタスタ...



ユミル「あーあ、虫だらけなのに、頭にのせやがってコニーの奴……」

ユミル「……」ジーッ...

ユミル「…………へへっ」


って本当はめちゃくちゃ嬉しいのに素直にお礼言えないで陰で照れてるユミルって超萌えると思いませんかね? というわけで本当に終わり

>>65 さん
デレサシャもあざといサシャも甘えサシャも書いてないのにここで終われるはずがないでしょう!! 終われるはずがないでしょう!!

夏ネタでサシャが輝きそうなのと言ったら、バーベキューとか流し素麺とかキャンプじゃないですか?



蜘蛛が苦手なアニがかわいいすぎです。>>1さんの書くアニが動物(猫など)と戯れるのがみたいです。

>>1です。乙くださった方&ネタ提供してくださった方ありがとうございました! 何個かありがたく使わせてもらいます 
肝試しは他のSSで何度か見かけてたので避けてたんですが、せっかくなのでやろうと思います
海というか川遊びは前にやったので、ちょっと違う形で一緒に絡める予定です
というわけで次回は肝試し編です


BBQ・流し素麺・花火・盆踊りはやりたいんですけど、進撃の世界に持ち込むのがかなり難しい&>>1の妄想力不足でちょっと書けそうにないっぽいです。せっかく提案してくださったのにすみませんorz
特に花火大会だと屋台の食べ物食べ歩きとか下駄の鼻緒が切れたりとか花火見上げてたらいつの間にか距離近くなってたとか人混みではぐれたとか恋愛イベント盛りだくさんなんですけどね……

>>73 さん
結構前にアニと猫(というかライナー)が戯れる『アニ「三毛猫、らいにゃー・ぶらうん」』というSSを書いてますので、
取り敢えずはそちらでアニ成分を補給していただけないでしょうか……? 
検索したら出てくると思うので、よろしくお願いします

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