甘くてとろける百合バス  私と――。 (112)

ほのぼの百合百合しいバスの最後尾に私は座っていた。
いつも通りいちゃいちゃする3組+私+運転手――あれ。
何か、毛色の違う人が。
誰や、あんたと思ったら――。
何と、小学生からの付き合いのヤンキーちゃんだ。
バスに乗って帰るなんて珍しい。
私は、肩までの金髪ヘッドをぽんぽんと叩く。
どうしたのかと聞くと、バイクが壊れてしまったとのこと。
あらあら。

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ヤンキーちゃんはカワサキのよく知らないけど、大きなバイクに乗っている。
確か、先生には軽く注意されたらしい。
ただ、ヤンキーちゃんは、学校の中でも悪評高い上に、
素直に言うことを聞かないから先生達も手を焼いている。
そんなヤンキーちゃんがこんな、砂糖みたいな空間に座ってるのだから、驚き。
ヤンキーちゃん、久しぶり。
最近、どう?
ヤンキーちゃんは、まあまあ、と答えた。
まあまあって、良いほう? 悪いほう? と聞くと、
悪いほう、と低い声で言った。
それから、頭さわんな、と腕を払われた。
どいひー。
口を尖らせてそう言うと、へっと笑われた。
私、ヤンキーちゃんを笑わせるのは得意なの。

昔からね。
ヤンキーちゃんは、私のちょっかいをしだいに無視し始める。
どうも、他の何かに気をとられているみたい。
彼女の視線の先、ポニテと天パが座っている席。
え、あそこに座りたかったの?
と、耳元で聞くと、うっせえ! と怒られた。
怒らなくてもいいじゃんかね。
でも、これ以上ヤンキーちゃんを困らせるのもなあと思い、
私は席に大人しく腰掛けた。

私、昔からヤンキーちゃんを怒らせるのも得意なんだよね。
しかし、ヤンキーちゃんのこの様子。
この不機嫌オーラ。
恐らく、ポニテか天パのどちらかに因縁があるんじゃないかしら。
おいおい、どっちが私の親友のお尻に火をつけたんだ。
この女は、なかなかにしつこいよ。
小さい頃、ヤンキーちゃんの煮卵を、
残しているものだと思って勝手に食べた時は、一週間は引きずられたもの。
だって、この子が『大好きなものは後から食べる派』なんて可愛い派閥に所属しているなんて思いもよらなかったから。

それに、ヤンキーちゃんはこう見えて良家のお嬢様だし。
煮卵ごときで、文句言うなんて、当時は考えられなかった。
煮卵だよ、給食の。
笑っちゃうぜ。うん?
ヤンキーちゃんが、こっちを睨んでいる。
え、もしかして声に出てた?
煮卵の下り?
うひゃああ。
怒ったヤンキーちゃんに、頬をめっちゃつねられた。
とほほ。

私は、ヤンキーちゃんの家とはけっこう離れてる。ヤンキーちゃんは、ポニテと同じバス停で降りるはず。
ほら、ポニテちゃんが降りるよ。
ヤンキーちゃんが立ち上がった。
そして、私の腕を掴んだ。
来い。
って、命令されました。
待って、私、ここ、家ちゃうねん。
と、首を振ったら、知ってるわ、ボケと言われました。
どーゆーことー。
どーゆーことー。
私は目を白黒させて、チビちゃんズに、バイバイと送られて――止めてほしかった――、その停留所で降りた。

ポニテは、私たちを見てにっこり笑って、歩いていく。
ヤンキーちゃんは少し経ってから、相変わらず私の腕をがっちり掴み、なんとポニテの後をつけだした。
あのね、ヤンキーちゃん。
ヤンキーちゃん?
おーい。
ヤンキーちゃんは、何か意を決したような顔でしたね。
さすがの私も、ようやくそこで気づいた。
ヤンキーちゃんは、ポニテに――。
ただ、問題がひとつある。
ポニテはすでにお相手がいるのだ。

私は、このままヤンキーちゃんが玉砕するところ見るしかないのである。
見たくないのである。
誰だってそうだろう。
この腕を離して欲しい。
うわああ、いやだ、心が痛過ぎる。
やめて、ヤンキーちゃん、察して。
ヤンキーちゃんの腕を私は掴みなおした。
彼女が、強張った表情で、私を睨んだ。
私ってば、いつも誰かに睨まれてる気がする。
言え、言ってしまえ。
今回に限っては、心の声は漏れ出てくれない。
私は彼女の手のひらを強く掴み、だいじょうぶ、だいじょうぶ、なんて、
心にもないことを言ってしまったのだった。

ポニテが家に入る直前、ヤンキーちゃんが呼び止めた。
私はさすがに、家の塀の影に隠れた。
どうなるのか、どうもならないのか。
我が子を見るような心持ちになってきて、動悸と息切れが。
ポニテちゃんが、天真爛漫なものだから、ヤンキーちゃんは言いにくそう。
こうなったら、言ってしまえ! 
おら、やれ!
そこだ!
右ストレート!

ポニテ!
と、ヤンキーちゃんが叫ぶ。
なに!
と、ポニテが叫ぶ。

私は、自分の手が震えてきたので、目をつむって両手を握り締めた。
ヤンキーちゃんの声が続く。
ポニテは、『私』とはどういう関係なんだ!

――はい?

どうって!
と、ポニテが笑いながら、問い返す。
そして、ヤンキーちゃんの返事を待たずに、こう切り替えした。
『私』とは、友だちだよ! ヤンキーと同じね!

――ふむ?

それだけ聞きたかったんだ。
と、ヤンキーちゃん。
そっか。
と、ポニテ。
金髪をくしゃくしゃとひっかいて、ありがと、と照れくさそうにヤンキーちゃんは笑っていた。
ポニテは、どういたしまして、とはにかんで、親指を突きたてた。
私はというと、今の会話の意図するところを理解して、立ち上がった。
走り出せー、走り出せー。
というどっかのドラマの主題歌の歌詞が脳内に流れてきた。
その指示に従って、私は走り出していた。

後ろから、『私!』と呼ばれた。
聞こえぬ。
聞こえぬぞ。
百合は愛でるもんだ。
交わるもんじゃないもん!
ばかやろおおおお!

ロマンチックなことに、都合のいいことに、海辺が近いもんで。
私は全速前進で、海岸まで走った。
ヤンキーは、よっし、影も形もないわ!
はっはっは!
と、息を切らせて、砂浜に腰を下ろした。
まいてやったわ。
猛ダッシュして汗が噴出してきた。
全身がめちゃくちゃ暑い。
耳の中まで熱い。
これは、うん、走ったのとは関係ないさ。

『私』。
呼ばれて、私はとっさに逃げようとしたけれど、悲しいお約束か、前につんのめった。
砂に顔からいった。
なにやってんだ、バカ。
と、ヤンキーちゃんが、後ろから私を抱き起こしてくれる。

まだ、逃げようとする私の右手を、今度はヤンキーちゃんが掴んだ。
私の煮卵、食べただろ。
と、時効になった罪を持ち出し、私を押しとどめる。
あれは、ごめんて、ほんとに悪かったと思ってるから。
謝罪する口の中に砂が入っていて、じゃりっと音を立てた。
うえ、ぺっぺっ。
きったないなー。と、ヤンキーちゃんが呆れながら、私の顔の砂をはらう。
『私』って、どんくさいよな。
と、言われた。
まあ、はい。
私は、落ち着かない右手のことで頭がいっぱいだった。
生返事。

ヤンキーちゃん、家、帰ろうよ。
と、提案。いや、とヤンキーちゃん。
帰る気はないみたい。
んあああ、帰ろう、オウチ、カエロウ。

返事、聞かせてよ。
ヤンキーちゃんが、私を自分の正面に立たせる。
な、なんのことかな。
はっきり告げられたわけじゃないので、私は言ってやった。
だから、その、とヤンキーちゃんが口ごもる。
さっきの事だって、と半ギレ。
なんで、キレてるのっ。
ここに来て、へたれるんかい!
とは言えない。
私は、だって、言って欲しくない。

あのさ、とヤンキーちゃん。ぽつぽつと弱音? 愚痴? を吐く。
クラス分かれて、あんま話さなくなったの、きつかった。
ポニテとけっこう仲良いから、それも、見ててしんどかった。
私は、素行悪いから、一緒にいたくないと思われてもしょうがないんだけどさ、
『私』にだけは、嫌だった。他の奴らが離れていくのは平気なのに、お前だけは無理だった。

ヤンキーちゃんは、初めて見る、照れくさくて泥くさくて青くさい顔で、どうにもまいる――そんな顔で、
『私』から離れていくな、と抱きしめてきた。
私は、酸欠になりそうだったので、とにかく息をすることに集中した。
別に離れたつもりなんかないし、と私も返す。
これからも、一番の友達だよ、と弱弱しく抱きしめ返した。

それじゃ、嫌だ、とヤンキーちゃん。
お前の中の一番にして欲しい、と耳元で力強く放ってきた。
私はもう一度、酸素を取り込むことに集中した。
今、吐いてるのは主に二酸化炭素です。はい。
ヤンキーちゃんの言葉のほとんどは、二酸化炭素で構成されているのです。はい。

だめだ、頭が混乱してきた。
落ち着いて、ヤンバルクイナの真似をしよう。
ウジュジュジュ。
え、違う、なんか、違う。
アホな事に没頭している間に、ヤンキーちゃんはさらに体を――食い込ませてきた。
その表現が正しいかわからないけど。

とにかく、思っていることをちゃんと伝えないと。
ねえ、ヤンキーちゃん、私、すぐには分からない。
私は、ヤンキーちゃんの体を引き離す。
そういうのは、かやの外だったから。
だから、その、しばらくは一緒に帰ろう、そしたら分かるかもしれないから。
いい?

ヤンキーちゃんは小さく頷いてくれた。
あのバスの百合度がまた上がるみたいです。


おわる

という感じなんだ

どういう感じかわからないからもっと詳しく書いてもいいのよ!
おつおつ

>>17
ありがと
このままこのスレで続けてみますが、
長く書くのが苦手なので、もっかいシャッフル

安価で、次の話を選びます

>>19(被ったら↓)

1、私とヤンキー
2、ショートとロング
3、ポニテと天パ
4、チビちゃんズ
5、安価とった人にお任せ

続きが読める幸せ

安価なら4組でバトロワ

甘くてとろける百合 バトロワ的な――。


その日、バスの運転手が別の人になっていた。
聞くと、風邪でお休みですよ、と言われた。
そっか、あの人も人間だもんね。
私は、納得した。
運転手が、笑いながら注射器を取り出した。
疑問が浮かぶ前に、その細長い針は私の首筋にぶっさされた。

死んだのかと思った。
脳みそが沸騰して、弾けとんだくらいの衝撃はあった。
電子レンジでチンされたかと。
ヤンキーちゃんの告白もまともに返事してないのに、と後悔しつつ私は目を覚ました。

私は、誰もいないバスの中にいた。
窓の外から見える景色は、見たこともない。
白い砂浜、南国の木々。
ここは、どこ?
なんだ、夢か。
私は、もう一度席に寝転がった。
コンコン、と窓ガラスに何か当たる音。
だれ?
起き上がると、外に、ヤンキーちゃんが立っていた。

出ろ、と言っている。
なんか、外は暑そうだったので、私は首振った。
ヤンキーちゃんは、いらついた顔で、バスに乗り込んで、
右ポケットからナイフを取り出した。
刃先を、こちらに向ける。
いやああ! 犯される!
と、絶叫すると、するかバカ! と柄の方を向けて私の手に握らせた。
え、なんで? と、私。
お前、説明、聞いてなかったのか?
と、ヤンキーちゃん。

なんの?

ヤンキーちゃんから、短いような長いような説明を受けた。
簡単に言うと、二人組みの内一人に危険なウイルスを注入したので、
2時間以内に、どこかの組が優勝がしないと全員死ぬと言う、たまげた内容だった。
どうやって、優勝を決めるのかと言うと、相手のパートナーを絶命させなければならないらしい。

ヤンキーちゃん、言っていいことと悪いことがあるよ。
と、眉根をひそめた。
冗談でも、そういうことはだめだと思う。
私は、ヤンキーちゃんにナイフを返却した。
その、瞬間――、バスの前方が爆発した。
振動と爆風で、後方にいた私たちは床に体を打ちつけて倒れこんだ。

もうもうと立ち込める煙。
視界が全く見えない。
音も耳にふたをされたようににぶい。
ヤンキーちゃんが、私を庇うように覆いかぶさっていた。
ぐったりとしている。
ヤ、ヤンキーちゃん?!
嘘でしょ。
痛みを感じた。見ると擦りむいた腕から血が出ていた。
それよりも、ヤンキーちゃんだ。
意識がない。
必死に呼ぶ。
小さく返事をしてくれた。
私は、とにかくここを離れないといけないと感じ、ヤンキーちゃんを肩に担いだ。
ヤンキーちゃんも、少しだけ自分の力で動いてくれた。

痛くて、熱くて、これが夢じゃないなら、なんだ。
ここは、地獄か。
燃え上がるバスから離れる。
しばらくすると、バスはガソリンに引火して轟音を放ってバラバラになった。
私は、バカみたいに絶叫した。腰から砕けて座り込む。
恐怖が今さらに涙腺を刺激する。
ヤンキーちゃん、起きて。
一人にしないで。
また、気を失ったヤンキーちゃんを揺り動かす。
砂浜から動けずにいると、後頭部に冷たくて硬いものをあてがわれた。
だ、誰。

私ちゃん。
これは――ロングの声。

バイバイ。
別れの挨拶。
え、え、死ぬ?
瞬きもしない内に、伏せていたヤンキーちゃんが飛び起きた。
同時に起こったそれらの出来事に、私はついていけず、体が固まる。
後方で、悲鳴。
振り返る。
ロングの腕にナイフが刺さっている。
丹精な顔が、鬼のように歪んでいた。
恨みのこもった目。

あの子のために、消えてよ。
あんたが一番とろくさいんだから。
消えたって、誰も困らないわよ。
と、ロングが腕を押さえながら、銃口をこちらに向けた。
ヤンキーちゃんが、砂を引きずりながら、私の前に立った。
やめて、二人とも。やめて。
声に出ない。
心の声は言葉にならない。

私は、砂を握り締めて、とっさにロングの顔面めがけて投げつけた。
顔を抑えて、ロングが声を上げる。
苦しそうに、ひざをついた。
拳銃を取り落とす。
私の足元に落ちたそれを、恐る恐る拾いあげた。

殺しなさいよ!
頭を獣のようにふりしだく、ロング。
ヤンキーちゃんが、私を制す。
腕のナイフを引き抜いた。
血が噴水のように噴出した。
ヤンキーちゃんと、私の顔に飛び散った。
鉄の匂い。
誰が、こんなことを。
どうして、こんなことに。
ロングちゃんは、それから、ショートの名前を呼んだ。
何度も何度も呼んだ。

ショート、もしかして近くに、周りを見回す。
いない。
私がロングから目を離した一瞬。
その一瞬の内に、ヤンキーちゃんのナイフは、ナイフは――。


残り、1時間。
私がもう一度目を覚ましたとき、ヤンキーちゃんがそう告げた。
私は、また気を失ったんだ。
目を強くつむる。
ロングの首に真横から突き刺さったナイフが、瞼の裏に焼きついていた。
ヤンキーちゃん。
私は、ヤンキーちゃんに言った。
なんで、刺したの。
ねえ、なんで、刺した?!

ヤンキーちゃんは、もう一度、1時間しかない! と叫んで、私を抱きしめた。
お前だけは絶対死なせない。絶対に、だ。
お前の未来だけは、私が守る。

この悪夢の中、ヤンキーちゃんの言っていることは狂言にしか聞こえなかった。
ヤンキーちゃんのカサカサの唇が私のと重なった。
血に染まったお互いの服。
あまりにも気持ち悪くて、私は涙を流して、ヤンキーちゃんのキスを受け入れた。

いったん、ここまで
続きは、今日できたら

その時の私は、どうしてキスを受け入れたのか分からなかった。経験もなく、求められるまま。もしかしたら、一人では生きていけないから、なんて、身勝手な考え方からだったのかも。

そのキスは、嬉しくもなかった。
気持ち良くもなかった。
そんな些細なことを気にしちゃってる自分は、まだ、この状況で、彼女と歩む未来に思う所があったのかもしれなかった。
でも、ヤンキーちゃんは私に一度しかキスをしなかった。

すぐ近くで物音がした。
葉っぱが重なる音。
私たちはバスから離れて、岩壁に囲まれた場所にいた。
ヤンキーちゃんは、私から離れて立ち上がる。
ナイフについていた血を自分の服の裾でぬぐいとった。刃先を翻して、待ってろ、と言い残し駆け出していく。
いや、やめて!
私は言ったけど、ヤンキーちゃんの耳には届かなかった。

しばらく動けなかった。
でも、小さい悲鳴が聞こえたのだ。
高くて可愛らしい声。誰なのかすぐにわかった。
恐怖に彩られた断末魔。
足がすくんだけれど、私は立ち上がった。
ヤンキーちゃんは、

ショートを殺したんだと思っていた。
でも、今の声は間違いなくショート。
私は極力音がでないように、声がした方に向かった。
人影が見えた。
一人。
ポニテだ。
鎌を右手にかまえている。
泣いている。
顔には血が飛び散っていた。
しゃがみこんで、繁みの隙間から確認した。
誰か二人、倒れている。
ヤンキーちゃんと、折り重なるようにショートがぐったりしていた。

私は、ヤンキーちゃんとショートの名前を呼んだ。
茂みから飛び出す。ポニテがびくりとして、後ずさった。
鎌はその手に握られたままだったけど、私は構わずに二人の体を揺さぶった。
手に生暖かい液体の感触。
ショートの腹部当たりから、真っ赤な血が出ていた。
呼んでも呼んでも、反応がない。

ポニテを振り返る。
彼女が口を開く。
ヤンキーちゃんが、ナイフを掲げてきたので殺されると思った。天パも、ロングに殺された。私は、死にたくなかった。ロングに恨みを晴らすまでは。

私は、ロングはもう死んだことを告げた。
ポニテちゃんは、笑った。
笑って、冗談? と聞いた。
笑って、自分の首に鎌の刃を当てた。
やめて、何やってるの?!
ヤンキーちゃんはさ、とポニテが言った。
ショートのことを殺せなかったんだよ。
ショートが、言ってたよ。
ヤンキーちゃんが、見逃してくれたって。
でもね、私はできなかった。
ショートは、ヤンキーちゃんに助けを求めてさ迷ってた。私は、ロングが許せなかったし、なにもしてくれなかったショートも許せなかった。
あまちょろいよね、ヤンキーちゃんは。

ヤンキーちゃんは、『私』を守らないといけなかったんだよ。それを、正義の味方にでもなったつもりか知らないけど、ショートを生かして、結局は私に殺されるんだから、ほんと、へたれだよね。
最後は、ショートに庇われてさ。

ポニテの笑い声、とまらない。
首に鎌の刃をつけたまま。
笑いながら喋る。
ポニテ、ねえ、もう、死ぬ必要なんてないじゃない。
チビちゃんたちを探して、みんなで生き残る方法を考えよう?


チビちゃんたちは、そう言えば、どうしたの?
自分も狂えるなら狂いたかったし、冷静じゃなかったけど、少しでもポニテの気を逸らしたくて、話しかける。
ポニテは、笑うのをやめて、言った。
あの二人は、最初に死んだよ。
賢いからさ、こうなることを分かってたのかもね。
二人で崖から飛び降りたよ。
仲良く手を繋いでいたね。
私と天パが崖下に行った時には、頭が潰れていた。
その時、私は判断しなくちゃいけなかった。
敵は誰か、を。
ポニテが唇を噛み締めた。

私は、みんなが死んだことをまだ信じられずにいた。分かってはいるけど、本当は夢なんじゃないかと。そういうこと、前にもあったから。
けど、夢でも、もう、ポニテが死ぬ理由はない。
パートナーがいなくなることが、この悪夢を終わらせる唯一の方法だからだ。

ポニテが話しに集中しているのを見計らい、私は彼女に飛びかかった。力一杯、鎌を持っている方の手を叩いた。ポニテは叫んで、無防備な状態を一瞬つくる。
私は押し倒した。
砂ぼこりが舞う。
ポニテ、もう、死ななくていいんだよ。
遠くから、ヘリの音が聞こえた。
ほら、聞いて。
終わったんだよ。
タイムリミットの2時間が経過したんだ。
私たちは、死んじゃダメだよ。
正しいことかどうか分からない。
私は何もできなかったから、少しでも償いたかったにちがいない。



ポニテ?
ねえ、ポニテってば。
彼女は返事をしなかった。
口から泡をどんどん出して、胸を押さえつけて、苦しみを口にも出すことなく、すぐに生き絶えた。
え。
何で。
タイムリミット。
タイムリミットでしょ。
何の?
ゲームの?
いや、私たちに注入されたウイルスの、だ。
力の抜けたポニテから、ゆっくりと離れた。
ヘリが近づいていた。バリバリといううるさい羽音。風が体を揺さぶった。
後ろから、誰かに抱き抱えられた。
私は何の抵抗もできず、いや、その時には、もう、何も考えることができなかったのだ。

足が地面から離れていく。
三人の亡骸から遠ざかっていく。
どんどん、小さくなっていく。
何もかも曖昧な色に染まり、私の世界はホワイトアウトした。




おわる

辛い……んですが

辛い……
次は、夢オチからです(許して)

安価で次話決めます

1私とヤンキー
2ロングとショート
3ポニテと天パ
4チビちゃんズ
5任意の組み合わせ
6新キャラ百合


安価は
>>49(被ったら↓)




4

電池なくなりそう
また、明日

甘くてとろける百合バス チビちゃんズとーー。


目を開けると、爆発で吹き飛んだはずのバスの天井があった。ひゃあああああ!
うわあああ!
ああああーー!? むぐぉ?!
叫んでいたら、口を塞がれた。
うるさいですよ。
チビちゃんズの、主にツッコミ担当がもみじみたいな手で私の顔面を覆っていた。
いき、いき、いぎでる!
ぶわあ、と涙が出てきた。
頬を擦り寄せる。
何、勝手に殺してるんです?
と、私の液体まみれの顔を遠ざける。

ツッコミちゃんの向こう側から、
どうしたの? 大丈夫、『私』ちゃん? 花粉症?
ティッシュを懐から取りだして、1枚をそっと差しのべる。天然ボケ気味のチビちゃん。

鼻をかんで、ちょっと落ち着いてから、私は運転手さんも確認した。良かった。いつもの人だ。
ほっと一息つく。チビちゃんズが不思議そうに見ていたので、かくかくしかじかとさっきまでの夢の内容を伝えた。

ツッコミちゃんに、マンガの読みすぎですね、と流し目で一蹴された。天然ちゃんは、怖かったねえ、よしよし、と私の頭を撫でてくれた。ありがとう、ありがとう、天然ちゃん。
ツッコミちゃんは、そんな天然ちゃんの頭を撫でる。
『私』に触りすぎると、アホな妄想癖が移ってしまいますよ。私が浄化しておきますね。
と、述べて、天然ちゃんの体を掴んで元の席へ。
どいひ。

でも、本当に怖かった。
あれは、やばい。辛すぎる。
ねえ、仮にさ、もしそんな状況になったら二人ならどうするの? あ、た、例えばね、例えば!

ツッコミちゃんと、天然ちゃんがキョトンと顔を見合せる。二人、口を揃えて、まずは、トロそうな『私』ちゃんから狩る、と笑顔で言われた。
ひゃっほおお?! あわわわ、ごめんなさいごめんなさい。私、何かしでかしたかな!?

私の反応を見て、声をあげて可愛らしく笑う二人。
からかわれていると分かっていても、怖いよう。
天然ちゃんが、ごめんごめん、思った通りの反応ありがとう、とツボに入ったのか、ツッコミちゃんの胴回りにしがみついて笑っていた。

天然ちゃんが、『私』ちゃんの顔が可笑しすぎる……、と失礼極まりないことをぷるぷるしながら呟く。ツッコミちゃんは、そんな彼女の背中を撫でて、いざという時には、天然ちゃんと相談します、とマトモな回答を寄越してくれた。

相談して、まず『私』ちゃんを仲間にします。『私』ちゃんは裏切らないでしょうから。なにせ、私たちのことが大好きなロリコンですし。

ギクッ。なんで知ってるのかな。
や、君たち同い年だけどね。

それから、と今度は天然ちゃん。
『私』ちゃんが加わると、必然的にヤンキーちゃんもついてくるよね? え、なんで? 私は聞いた。天然ちゃんが、フフっと笑う。分かってる癖にって言われてしまった。天然ちゃん、なんで、知ってるのかな?!

後ろの方の席から、呼んだ? と声がした。
よ、呼んでない! と返しておいた。しゅんと声のトーンが低くなって、そ、そうかよ、と聞こえた。

チビちゃんズがにまにましている。
なんでもないから、まだ、なんにもないから!

天然ちゃんは、にやつきながら、ヤンキーちゃんはけっこう情に熱そうだから、きっと私たちのことも守ってくれる。それから、次に、ショートちゃんとコンタクトをとるの。ショートちゃんは、強いものに流されちゃうだろうから、押し気味なヤンキーちゃんとは、相性が良さそうだね、ヤンキーちゃんには、説得役に回ってもらって、上手くいけば、ロングちゃんとも和解できるかな。

にっこり笑う天然ちゃん。
ツッコミちゃんの表情がぎこちない。
そんな、天然ちゃんも、嫌いではありません、と小さく付け加えていた。


天然ちゃん、恐るべし。

じゃあ、その同盟計画の途中で、ツッコミちゃんが死んじゃったとしたらどうする? と私は聞いた。ツッコミちゃんが、物騒な話ですね、とツッコミが入る。

天然ちゃんは、しばし考える素振りを見せた。
笑っていた顔が、急に涙目に。
それはね、あのね、考えたら泣いちゃうから、考えなくていい? と、両手で口元を押さえた。
わあ! ごめんね! 例えばでも言っちゃダメなことあるよねえええ?! 私はわたわたしつつフォローする。

ツッコミちゃんも、大丈夫です大丈夫です! あなたをおいていったりしません! とすかさず抱き締めてなでなでしていた。 天然ちゃんに悪い気がしてきて、私たちはその夢の話をそこで打ち切った。

ごめんね、天然ちゃん。
ツッコミちゃんと末永くお幸せに。



おわる

なんか、また辛い……

天パの歌ってどんなん?
ポニテに聞いてみると、首をひねられる。

一言で言うと、こう、養ってあげなきゃ! って思った。と、ポニテは言った。
か細くて、陰キャラで、あ、リズム感は良い!
声はもっと腹から出せよ! って思った。
キーボードの音に負けてんじゃん! みたいな。
歌は、自作の一曲だけ。
でもね、それの、歌詞がいいんだよ~。
最後の一節に、

『ボクが歌い終える頃、キミは大人になってしまう。子どものボクを置いていく。男になって女になって。それでもいいから、また、明日』

ってあってね、きゅーんと来たんだよー。
語りつつ、ポニテが天パの天パをモジャモジャした。
天パは嫌がって、手を払い除けている。
それから、人になついていないネコみたいに、着ていたパーカーのフードを被った。


天パが歌い終えても、誰も拍手しないんだよ。
不思議に思って、拍手してみたら、天パに睨まれてさ。
拍手されるような歌じゃないって。
えー、ってなった。
良かったよ、私、好き。
とりあえず、簡単に感想を言ったら、ありがとうって小さい声で返してくれたね。
表情がよく分からないから、嬉しかったのかは、今でも謎。今も、顔だけじゃ分からないんだけどね!
はっはっは!

フードを被っていた天パは、その笑い声がうるさかったらしく、ポニテの唇を人差し指と親指で挟んだ。
なにすんだこら!
とポニテがやり返す。

何だかんだ、仲が良いんだよね。
私はちょっとだけ羨ましくなった。
イヤホンに二人で絡まり合う。
天パの耳からイヤホンが抜けた。

そう言えば、『また、明日』の歌詞通り、ポニテは天パに会いに行ったの? あー、えっとね、と息の荒いポニテ。じゃれ合うポニテは、嫌がる天パに力づくで抱きついて動きを封じていた。
ポニテは天パの頭の上にあごをのせて、勝ち誇るように鼻で笑う。
もちろん。で、その日に『好き、付き合って』って言ったんじゃよ。

すごっ。

そしたら、天パなんて言ったと思う?

うーん?

私は聞かれたけど、思い付かなかったので答えを要求した。天パは、漸く、自分達の思出話をしていることに気がついたらしく、威嚇している。怖いよう。怖いよう。


なんとね、

『冗談は顔だけにして』

って言うんだよ!? どう思う?!
傷付いたね! 深く刺さったね!
思い出す度に、私は人生をやり直したくなるね。

ポニテが大きなため息を吐いた。
天パは、ポニテのあごの下で、『もう、忘れた』と呟いていた。



おわる

殺しあっていたとは思えない程度には戻ってきた

安価で次話決めます

1私とヤンキー
2ロングとショート
3ポニテと天パ
4チビちゃんズ
5任意の組み合わせ
6新キャラ百合


安価は
>>81(被ったら↓)

3

とりあえず、警察呼ぼうかとも思った。

え、酷い!
ポニテが叫ぶ。
うっさい。
と、天パ。

時間も時間だったし、付きまとわれてもめんどいし、いったん切り上げた。
で、1週間位やらずに、ついでに場所も変えた。
そしたら、そこにいた。

ストーカーじゃん。
と、私はツッコんだ。
違うよ! クラスの子に聞いたの!
けっこう、知ってる人いたからね?
言い訳気味のポニテ。天パは、それでもこっちは人見知りの陰気人間だったから、と言った。
恐かったし、何より、元気で明るい奴が怖かった。

そっか。大変だったね。私は頷く。
そうだよ。クラスメイトの『私』とかなら、まだ面識と免疫があったけど。ポニテって誰? ってなった。
その上、剣道部だって知って、ますます、無理になった。
住んでる世界が違う。近寄るなって思った。

天パ、お前さん、だいぶ拗らせていたんだね。私は言った。
うるさいよ、と天パは鼻息を漏らした。
 

ポニテは、私が本気で嫌がっているのが分かって、ちょっとだけ距離を置くようになった。
多少は、話が分かる奴なんだって、そこでほんの少し見直した。

へへん。
ポニテが鼻をこする。
全然褒めてない。
天パは冷静に述べ、言葉を続けた。

歌う場所を商店街の裏路地に変えた。
けっこう暗くて、でも、危機感みたいなのがその時はからきしで、
歌えればどこでもいいやって。
で、場所が悪かったのか、ある日初めて、警官に声かけられた。
なんか、乱暴そうな奴でさ、周囲で聞いてた人もヤジとか飛ばしてて。
今思うと、私も危ない事してたんだけど。
やめてって、叫んだ時に、でも、誰も助けてはくれなかった。
助けてくれてもいいじゃん。
そんなに警官が怖いのか、って思った。

そいつに引きずられながら、未成年の保護条例がなんたらかんたらって言われて、親のこととか聞かれたけど、
単身赴任でいなかったから、いないって答えたら、ますます怒って、嘘つけって言われた。
別に悪気があってこのおっさんも怒ってるわけじゃくて、仕事でしょうがないし、
私は子どもだから、さらにしょうがないしって諦めてパトカーに乗ろうとしたら、

と、天パは急に笑い出す。
ポニテがね、どっからやってきたのか、竹刀で警官の頭を思いっきり叩いたんだ。

うわ、青春臭い。ポニテが呟く。
やったのは、あんただけどね。天パが言った。
私は単純だったので、若干ときめいてしまった。

もちろん、警官には怒られた。
ポニテと一緒にパトカーで連行。
ああ、もちろん、ポニテの家にね。
私の家には両親いないって言っておいたし。
車の中でさ、ポニテが私に渡してきたものがあって、何だと思う?

私は聞かれた。
ポニテの問いにも答えられなかったけど、これも全く分からない。
なに? と聞いた。

おにぎり。
おにぎり作ってきたって、歌ったらお腹空くかなって、言ってさ私に渡してきたの。
天パは思い出し過ぎたのか、また笑い始めた。

え、いいじゃん、おにぎり。
剣道した後は美味よ?
ポニテ、そういう事じゃなくてね。
私は、つられて笑ってしまう。

で、警官もそれ聞いて呆れてて。
ポニテの家に行ったら、ポニテの両親も呆れてて。
私も呆れて。なんだ、こいつって。

その日は、いったんそのパトカーで家に帰ったよ。
ポニテが泊まればってうるさかったけど。
泊まるとか無理だし。
人のそばで寝るとか、その時は耐えられなかったから。

今は、一緒に寝れる?
私は聞いた。
まあ、一応。
歯切れ悪く、天パ。
ポニテがニコニコしてる。
あんた、頑張ったね。

それからも、ポニテは私の視界に入らない様にしてた。
でも、いつの間にか、私が探してた。
どこで聞いてるんだろうとか、学校の廊下とか、校庭とか。
自分でも変だなって。誰かを探すことなんて、今までしたことなかったから、自分でもなんでだろうって思った。

そっかー、とポニテ。
天パは、ポニテの気持ち悪い視線が気になったんだろう。フードを被り直す。
で、よく分からない内に、剣道部の練習を見に行ってた。
行ったら、すぐにバレた。
で、近寄って来て、今度は『剣道しようぜ』って言われた。
もう、訳分からないし、でも、その時には――。
こほん。
うん、まあそんな感じ。
そんな感じで、私も剣道部に入ったんだよ。
夜も自分で身を守れるしね。

私は、人の恋バナを生まれて初めて生で聞いた。
砂糖、吐きそう。

『私』も、がんばれ。
や、だから、はい、あの。
ポニテは住む世界が全然違うから、未だに先が読めなくて不安になる。
たぶん、不安が消えることってないと思う。進んだら戻れないしね。
天パは微笑んだ。ああ、もしかしたら、歌ってる時にもこんな表情を見せたんじゃないかな。
私は、『養いたい』と言ったポニテの気持ちを何となく理解した。

でもね、同じ気持ちになれて良かったなって思った。天パはとても素直にそう言った。
ポニテも何か言いたそうにしていたけど、なんとか遠慮して、余韻を潰さないように口を挟まなかったみたい。

そのうちに、バスは停留所に着いた。
揺れながら、二人が立ち上がる。
あ、じゃあね! とポニテ。
天パは、しゃべり過ぎたって顔で、じゃ、と短く切った。
今日は珍しく、二人は手を繋いでバスを降りていった。




おわる

ちなみに、余韻をぶち壊しますが、バトロワ編で最初に天パが狙われたのは、何をするか分からないタイプの人間だったからです。

ほんとにぶち壊しだよ!

>>94
HAHAHA

さて、天パとポニテが続いたので、安価は一回休みにしますね

安価で次話決めます

1私とヤンキー
2ロングとショート
3チビちゃんズ
4任意の組み合わせ(ポニテ×天パは除く)
5新キャラ百合


安価は
>>97(被ったら↓)

2

甘くてとろける百合バス ロングとショートと――。


不思議なことが起こった。その日、帰りのバスにいたのはショートと私だけ。
恐る恐る、ロングは? と聞くと、風邪を引いたみたいなの、と細い線が震えたような可愛らしい声でショート。
逆に、ショートには、他のみんなはどうしたのかな、と尋ねられる。
さあ、と私は首を捻った。
ショートと言えば、確か、夢の中でヤンキーちゃんと庇い庇われして――。
ごめんね、ショート。私は本当はショートに一番に謝らなければと思っていた。
変な夢見てごめん。
ショートはキョトンとしていた。
うろ覚えになってきた夢の内容を説明すると、ショートは、ロングちゃん夢の中でもかっこいいね、と漏らした。
え、ええ? というか、怒ってないの? ロングとかショートとか、大変な目に合わせたんだよ?
夢だもん、怒ってないよ。ショートは小さく笑った。
そうなったら、ロングちゃんはやっぱり私の事守ってくれるんだなあー、ってちょっと嬉しいかも。みんなでそういう事はしたくないけど。
私は、ショートって良い子だとは思っていたんだけど、本当に良い子だったので、ちょっと肩透かしを食らった。

寝ます
また明日

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