国王「勇者よ、魔王を倒してくれ。武器はこちらで用意しておる」勇者「分かりました」 (14)


玉座に腰かける国王の前で、ひざまずく勇者。


「勇者よ、よく来てくれた」

「はっ」

「おぬしも知っておろうが、先日の魔王軍の攻撃で我が国の街が多大なる被害を受けた。
 このような蛮行は断じて許されることではない」

「おっしゃる通りです」

「勇者よ、魔王を倒してくれ。武器はこちらで用意しておる」

「分かりました」


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謁見を終えると、案内役の兵士がやってきた。


「勇者様、こちらへどうぞ」

「うむ」


兵士の後を勇者がついていく。

二人とも一言もしゃべらぬまま、広い城内を歩き回る。


やがて二人は大きな一本道の通路にたどり着いた。

通路には頑丈な扉が幾つも設けられており、その警戒は厳重を極めている。



兵士が合図する、扉が開く、通過する、を繰り返し、二人は通路を進んでいく。


二十近い数の扉をくぐり抜けると、ようやく終点。


≪勇者以外立入禁止≫という意味の文字が書かれた巨大な扉が、
そのサイズに恥じない存在感を放っている。


扉の周辺は選りすぐりの屈強の兵士で固められている。

この扉は絶対に死守せねばならないという心構えがうかがえる。


兵士が勇者に向き直る。


「ここから先は勇者様しか入れません。さ、どうぞ」

「案内ご苦労」


ふうっと息を吐いてから、勇者が扉の中に入る。


巨大な扉の中には、なんの内装もないシンプルな部屋があった。


あるのは部屋の中央にある、高さ一メートルほどのデスクのみ。


そして、そのデスクの上には赤いスイッチが設置されている。


デスクの前に立つ勇者。





勇者は迷うことなく、人差し指でスイッチを押した。


あとはもう全自動だ。

スイッチが押されたことによって王国から核ミサイルが発射され、魔王の領土を攻撃するであろう。

今の世では、勇者とは「核スイッチを押す勇気のある者」を意味するのである。



勇者はぽつりとつぶやいた。


「昔は勇者と魔王の戦いってのは、夢と冒険とロマンに満ち溢れたものだって聞いたけど、
 ここまで武器が発達しちゃうと、もうロマンもへったくれもないな」





― 終 ―

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