久「誰もいない部室で……」 (33)

<清澄高校 麻雀部部室>

ガチャ

久「あれ?私が一番乗り?」

久(おかしいわね……いつもはこの時間なら誰かしらいるものだけど……)

久「あ!」

久(忘れてた!今日は部活が休みだったわ!)

久「あちゃー……うっかりしてたわね。私も歳かしら?なんて…」

シーーーーーン...

久「…………誰も……いない、か」

久(なんか新鮮……1年生の頃を思い出すわ)

久(こんな風に……ホワイトボードに担任の似顔絵描いて、その横にふきだしで……)キュキュ..

『おならぷっぷー』

久(変な事書いたりしたっけ……ふふ、懐かしい)

久「あ、そうそう。このペンを置く溝を使って、2本のペンを思いっきり……」

久「えい!」シューーー..ガコ!

久(こんな風に滑らして遊んだわね。赤と青、どっちが勝つか、って)クスス

久「あー……ほんっと懐かしいなー♪たまには1人もいいわねー!」

久「あとどんな事したかなー?あ、そうだ!テンションが高い日はソファーに頭突きもしたっけ……えい!」ボスッ!

久「っ……いったーい……昔よりなまってるかも………なまって………なまって……」

久「♪なまってしまってワンワンワワン、ワンワンワワン!ワオーン!っつってね」

久「なまって、ぬぁもぁって~~、Now More Tell!ヘイ!………ってね」

久「………ベッドに乗って降りてを高速でやった時もあったっけ。よし」

久「はっ……ほっ……ふっ……はぁっ……」バサバサバサバサ..

久「はぁはぁ……疲れた時には~~~枕の匂いを嗅ぐ、と」スーーー..ハァァ..

久「ゲップを自由に出せるように練習もしたなー♪……結局出来なかったけど…」

久「……うん、時が経ったし再挑戦してみよう。息を吸って………」スゥー..

久「……………………………………………………………………」

久「無理やねん!無理やがなー!」アハハハ!

久「ゲップでえへんのやでー!かなわんわ~、の流れでもっかいベッド!」

久「はっ……ほっ……ふっ……はぁっ……」バサバサバサバサ..

久「あはははは!おっかしー……」

久「あ!思い出した!1人でオセロした時もあったわ。確かこの棚の中の箱に入って……あれ、4桁のダイヤル錠が付いてる」

久「懐かし~。この箱には1人遊びグッズを色々入れてたのよね。まこが入部してから使ってなかったからすっかり忘れてた」

久「ようし!忘れてた記念にベッドに挑戦!はっ……ほっ……ふっ……」バサバサ!

久「枕!」スーーー..ハァア..

久「と、鍵を開けないと。確か……0721……っと。若気の至りね」フゥ

カチャ

久「あった。懐かしい~!オセロやろっと」ジャラ

久「…………ふむ」パチ

久「……えっ?そこに置く!?あちゃー、見落としてたわ」パチ

久「………むむむ……圧倒的不利な状況ね……」

久「なんですって?別に諦めてないわよ!ちょ、ちょっと待ってよ………」

久「…………………」

久「あ、ああ~~!大変!大魔王の襲来よ!」ガシャーーー!(盤上を薙ぎ払う)

久「……これは引き分けね。あららら……♪あららラブ サンバティトゥナイ!」フォゥ!

久「はいはーい!提案がありまーす!なんだね?竹井君」

久「前歯2本だけを使ってポッキーを食べるのがいいと思いまーす!なるほど、やってみたまえ!はい!」

久「ふんふふ~ん、ポリポリポリポリ……」

久「あー、美味しかった」

久「この空き箱は……よぉし、ここからゴミ箱に入れるわよ~」

久「左手はそえるだけ………えい!」ポイ!

ヒュー..

久「外れたぁ!!…………♪外れラブ サンバディトゥナイ!」フォゥ!

久「………と見せかけて!」

久「上履きチャアアアアアアアンス!」ワーイ!ワーイ!

久「説明しましょう!ポッキーがゴミ箱を外しても、右と左の上履きのどちらかがゴミ箱に入れば、私の勝ちなのだ!!」

久「そおれい!」

ヒューン!

久「またサンバディトゥナイかぁ……でも最後の一靴!一靴て!なんでや……ねーん!」シュ!

ヒューン!ガコッ!

久「は、入った~!!ゴオオオオオオオオル!ヒューヒュー!」ダンス!ダンス!

久「試合を決める一発でしたね竹井選手!MVPです!なんつってねー!あっははははは!」

久「あ、そうだわ!この高ぶりが収まる前に、雑巾サッカーででワールドカップしよう!私ブラジルもらいっぴ~!あははは!」

久「ロッカーさん、いらっしゃぁ~い!つってね!うそうそ、こっちから開けに行きますよー!」

久「せーの……フィーーーファーーー!!つってねー!!」ガチャ!

咲「……………………」

久「……………………」

咲「……………………」

久「……………………」

咲「……あ、あの私……休みなのに部室に来てしまって……怒られると思って隠れただけで……その……」

久「……………………」

咲「ぶ、部長…………」

久「……………………」

咲「私…………な、何も見ていません……」

久「……………………」

咲「……………部長?」

久「あぁ……」フラッ..

バターーーン!

咲「部長!?た、大変!」

久「もうおしまいよ……後輩に1人遊びを見られるなんて……うぅ……」

咲「い、いえ…………私は何も……」

久「嘘。ここからなら全部見えるし聞こえるもの」

咲「う……」

久「……幻滅したわよね?」グス

咲「し、してませんよ?誰でも1人の時は羽目を外しますし……」

久「嘘よ……私は、ホワイトボードにおならぷっぷーって書いたり、ダイヤル錠を0721でロックしてる女なのよ?」

咲「…………」

久「意味なくベッドを乗り降りして……タイムなんて計ってないのに急いじゃってさ」グス..

咲「それは……微笑ましかったですよ?」

久「そんなわけない!じゃあゲップはどうなのよ!……下品な事を練習してた過去を知られて…」

咲「ど、努力家です」

久「変なダジャレのノリで歌って……脳内会話はダダ漏れよ………もう……嫌、消えてしまいたい」

咲「!?だ、ダメです!」

久「っ!」ビク

咲「あ、驚かせてごめんなさい。部長が消えてしまいたいなんて悲しい事を言うから……我慢できなくなって」

久「咲……」

咲「あの……私、部長が1人で楽しそうに遊んでるのを見て、嬉しかったんです」

久「え?」

咲「私は……部長がなんでもできるスーパーウーマンみたいに思ってましたから」

久「そんな……買いかぶりすぎよ」

咲「いえ、学生議会長をやりながら麻雀部の部長をやって、キレイで、スタイルよくて、みんなに優しい……」

久「お、オーバーなんだから…///」

咲「だから……部長がはしゃいでる姿を見れて、私はとっても嬉しかったんです!」

久「咲……」

咲「その……こんな言い方失礼かもしれませんけど、子供っぽくて可愛いかったです」

久「そ、そう?普通幻滅するんじゃないかしら?今まで偉そうに部長やってたんだから……」

咲「偉そうなんて思った事はありません。それに…」

久「?」

咲「……もしかしたら、こっちが部長の本当の姿なんじゃないかって……そんな風に思ってしまうくらい自然な笑顔だったので」

久「あ……」

咲「…………すいません、生意気言ってしまって」

久「……ううん、いいのよ」

咲「…………」

久「…………」

咲「…………」

久「…………あの、ね」

咲「?はい」

久「私、大人になろうと思ってたの」

咲「え?」

久「家庭の事情なんだけど、とにかく早く大人になって1人でもやっていけるようになろうと思った」

咲「…………」

久「もちろん、大人っぽい性格になったって早く卒業できるわけでもないけど……そうしようって頑張ったのよ」

咲「はい……」

久「………それだけの話。うん」

咲「…………」

久「……さてと」スクッ

咲「あ、あの……部長」

久「なぁに?」

咲「私は、子供っぽい部長も好きですから!」

久「へ?」

咲「その……きっかけはこんなでしたけど、私にできる事があったら……」

久「ありがと。もし機会があったらお願いね」テクテク

咲「あ……」

咲(このままじゃ……部長が行っちゃう……)

咲「あ、あの!」

久「?」

咲「私は……部長の秘密を知りました!」

久「!」

咲「だから……私の秘密も言います!」

久「え?いや、そんな……」

咲「私は……部長が好きです!!」

久「…………………え?」

咲「今までも……すごい人だなって憧れはありましたけど……今日の部長が可愛すぎて……好きになってしまいました!!」

久「ええと……その……え?//」

咲「////」

久「え、ええーと………それ、冗談……じゃないわよね?」

咲「は、はい!」

久「でも……咲は和と付き合っているんじゃなかったの?」

咲「いえ、和ちゃんは大好きですけど、あくまで友達……いえ、親友としての愛情ですので」

久「そう……なんだ」

咲「はい」

久「…………」

咲「…………」

久「…………私、めんどくさい女よ?」

咲「え?」

久「温厚そうに見えるだろうけど、嫉妬深くて結構すぐムッとするし」

咲「わ、部長に嫉妬されたいです」

久「さっきの行動を見てもわかるように、子供っぽいところもあるわ」

咲「はい。そんな部長を好きになりました」ニコリ

久「ひ、人目がないところだとダラーッとして格好よくないわよ?」

咲「………想像してみたら可愛かったので大丈夫です」

久「……そ、そう。それなら……えと……つ、付き合う?」

咲「あ………」

久「…………//」

咲「は、はい!!」

久(その日から、私は咲と付き合う事になった)

久(多分、秘密を知られたショックを引きずっていて、冷静な判断ができない状態だったんだと思う)

久(何故なら、女性同士というのもあるし、部内でカップルがいるとなると色々問題も起きるかもしれない。それと正直な話、私は当時、咲に対して好意は持っていた
けど、それは恋愛感情じゃなかった。だからあの日の私が冷静だったら断っていたと思う)

久(咲に対しては、私の夢を叶えてくれた仲間という印象の方が強くて、まこ、和、優希、須賀君を含め、戦友といった感じで恋愛対象ではなかった)

久(でも、今思うと……咲と付き合ってよかったと思う。心からそう思う)

久(本当の自分をさらけ出せる、なんて大げさだし、学校での自分の振る舞い方には慣れていたけど、やっぱりありのままの自分でいるのは楽だ)

久(咲の純粋さは私の心を癒してくれた。咲の優しさは私を温かい気持ちにしてくれた。咲の存在は私に恋愛の楽しさを教えてくれた)

久(みんなに隠して付き合っている以上、辛い事もあるはずなのに、咲は一言も文句を言わず、笑顔でいてくれる)

久(その笑顔を見ると、幸せな気持ちになるとともに、少し胸が痛む。だから私は……)

まこ・和・優希・京太郎「えええええええええ!!?」

和「ほ、本当ですか!?」

久「ええ。正真正銘、私たちは付き合ってるの」

咲「ひ……部長!?」

優希「お、おおお………驚きだじょ……」

和「咲さん……」

まこ「全然気付かんかった……京太郎はどうじゃ?」

京太郎「い、いえ……俺も全く……」

久「黙っていてごめんなさいね」

和「……どうして」

久「ん?」

和「どうして交際している事を明かしたのですか?わ、私は偏見ありませんが女性同士ですし、黙っていた方が都合がいいと思いますが……」

久「うん……でも黙ってたら咲がとられちゃうかもって思ってね。だってこんなに可愛いんだもの♪」ギュッ

咲「わわ……///」

和「そんな理由で……」

優希「大胆だじょ」

咲「部長……私のために…」

久「違う違う。自分のためよ」

まこ「……あんたらしいのぉ」クスッ

京太郎「確かに……」

久「というわけで、私が咲が大好きなの。咲は私の彼女。だから誰にも渡さないわよ」

咲「部長……」ウルウル..

和「………ふふっ。そこまで言われたらしょうがないですね」

優希「ラブラブだじょ」ニコ

京太郎「部長を敵に回すなんてごめんですって」ニコリ

まこ「その通りじゃ」フフ..

久「ん、じゃあそういう事で」

咲「………久さん」ボソッ

久「…なぁに?」

咲「大好き」

久「ん。私も大好きよ……――――」

数日後

<清澄高校 麻雀部部室>

和「……………」

和(部長は、ここで1人遊びをした日に、咲さんと交際するようになったと言っていました)

和(もしかしたら……この部室で1人遊びする事によって何かしらの力が働き、恋愛に繋がるのかもしれません)

和(全くもって科学的ではありませんが………ええ!オカルトを否定するために、あえて私も試してみるとしましょう)

和「1人遊び……部長は何をしたのでしょうか……」

和「…………考えても仕方ありません。私なりの1人遊びをしましょう」

和「やはり……あれでしょうか///」(ベッドに乗る)

和「ん……はぁ……」

和(こうして牌で擦って……点棒で……あぁ、いつも使ってる道具で私はイケナイ事を……///)ハァハァ..

和(おそらく、部長が1人でこのような行為をしているのを見た咲さんは部長に欲情し、気持ちを抑えきれずに告白したのでしょう)

和(それほど、人が淫らに本能を貪る姿は刺激的……私はそういう動画を見ただけでも抑えきれませんでした。もし目の前で行為が行われたならなおさら……)ハァ..ハァ..

和「んっ、あああっ!…………はぁ……はぁ……」

和(だめっ……もう……限界ですッ)ビクン..

和「あああああーーーっ……!」ガクガク..

和(…………達してしまいました……)ハァハァ..

和「こ、これで……」

和(……いえ、きっと誰もいません。今の行為は無意味に終わるでしょう。ですが……一応、念のため確かめましょう。ではロッカーを……)

カチャ..キィ..

優希「…………」

和「えっ」

優希「…………」

和「ゆーき……」

和(この展開……オカルトだと思っていましたが……ゆーきが……私の恋人に!?)ドキドキドキ..

優希「のどちゃんは……」

和「は、はい!」

和(ゆーきとなら……上手くやっていけそうです///)ポ

優希「変態だじょ」ククク..

和「へ?」

優希「ま、いいじょ。変態さんは……私が管理してやるじぇ!!」モミュ!

和「きゃあ!」

優希「ぐへへへ……のどちゃんは……これから私の性奴隷になるんだじょ!!」モミミ

和「……せ、性奴隷!?」

優希「柔らかいじょぉお……///」モミモミモミ!

和「こ、恋人を見つけようとした結果、同級生の性奴隷になるなんて……そんなオカルトありえません!!」

優希「ありえるじょ~!!」ツネリッ!

和「あぁん!!」

おわり

読んでくれた人どうもです

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