西住みほ「シン・ボコラ ~ 君の名は進撃のボコ。」 (357)

本当は『艦これ』と『けものフレンズ』も混ぜたかった。
元ネタ
『ガールズ&パンツァー』
『シン・ゴジラ』
『君の名は。』
『進撃の巨人』
登場人物は基本ガルパンとシン・ゴジラから。
時系列はガルパンテレビシリーズ終盤からのお話。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493463953

ボコーッ、ボコーッ!

私の名前は……みほ!

ボコ (!?)

ボコ (……)

ボコ (夢か……)

ボコ (いつものように、暗闇の中で目を覚ます)

ボコ (まるで隠世の世界、あの日とは対象的な、代わり映えしない世界)

ボコ (あの日、砲弾が飛び交い、鉄と硝煙の匂いが立ち込めた日、それはまるで)

みほ (まるで夢の景色のように、ただひたすらに)

二人 (熱い眺めだった)

【大洗学園艦 磯前艦内神社】

華 「次はいよいよ決勝ですね」

沙織 「今さっき神社で優勝祈願のお参りしてきたし大丈夫だよ、……きっと」

麻子 「今の間はなんだ?」

沙織 「そこはツッコまないで」

麻子 「すまん」

麻子 (そりゃそうだ。去年こそ優勝を逃したものの一昨年まで全国大会で9連覇した黒森峰が決勝の相手なら誰だって不安になる)

麻子 (我ながらさっきのツッコミは少し意地悪だった。話題を変えよう)

麻子 「それにしても……」

麻子 「生徒会が西住さんに無理矢理戦車道を履修させたのは、廃校阻止の為だったとはな」

優花里 「腹が立つ話です」

優花里 「生徒会は嫌がる西住殿を脅迫して戦車道を履修させました。しかもその理由を準決勝まで秘密にしていたのです」

沙織 「それについては私も怒ってるよ。生徒会はみぽりんに対して、言う通りにしなかったら私達まで退学させるって脅したし」

麻子 「友達を人質に取られたも同然だな」

華 「何て卑劣な……」

みほ 「私の為に怒ってくれるなら嬉しいけど、私は大丈夫だよ。それに生徒会だって学校の存続の為ならなりふり構っていられなかったと思うし」

優花里 「西住殿の慈悲深さは賞賛に値しますが、そこに付け入った生徒会のやり口には憤慨です」

華 「みほさん、ここで思いのたけを叫んでみてはどうですか?」

みほ 「ここでですか?」

華 「近くに民家はありませんし、今は周りに私達しかいません。この時間帯、夜中に神社にお参りに来る人も滅多に居ないでしょう」

華 「みほさんの本心をぶちまけてみてはいかがですか?」

沙織 「大丈夫だよ。私達誰にも言わないから」

みほ 「分かりました」

みほ 「スゥー……」

優花里 (西住殿が大きく息を吸い込んでる)

みほ (せーの!)

みほ 「もぉー廃校を賭けた試合なんて嫌だーッ!」

みほ 「こんな人生嫌だーッ!」

みほ 「生まれ変わったら戦車乗りよりも、ボコにして下さーいッ!」

沙織 「フフフ、みぽりんは本当にボコが好きなんだね」

優花里 (ボコられグマのボコ、西住殿が魅せられた風変わりなクマのマスコット)

優花里 (……ボコが羨ましいです)

優花里 (戦車道全国大会優勝が大洗学園廃校取り消しの絶対条件……)

優花里 (大洗の廃校とは学校が無くなるだけではありません。それは学園艦という人口3万の町が消えること。学園艦で産まれた自分にとっては生まれ故郷が無くなること)

優花里 (後一つ……)

優花里 (後一つ勝てば誰も艦を追い出されずに済みます)

優花里 (西住殿、お願いします。どうか我が故郷を守って下さい)

【知波単学園艦 校舎】

絹代 「しかしこいつは思ったより想定外過ぎるぞ」

絹代 「まさか海面からこの学園艦の甲板までよじ登れる生き物が居たとは」

池田 「ですが対処の選択肢は分かりやすいです。『静観』、つまり野放しか、『捕獲』か『駆除』か、もしくは『艦外に追い出す』か……ですね」

細見 「でしたら突撃でよろしいかと」

福田 「私も突撃に同意します」

玉田 「そうだ、一刻も早く突撃すべきだ! そうだろう、皆?」

絹代 (確かに突撃は我が校の伝統だが、事を荒立てず穏便に追い出せないのか……?)

浜田 「ここは突撃だ。主砲とか使えば直ぐ済むだろう」

【都内 首相官邸】

矢口 「ですから総理」

矢口 「自衛隊の運用や国民の避難など、政府による事案対処のあらゆる統合が必要です。直ちに災害緊急事態の布告の宣言をお願いします」

赤坂 「今は超法規的な処置として防衛出動を下すしか対応がありません。この国でそれが決められるのは総理だけです」

大河内 「しかしなあ……」

大河内 「今まで出たことのない、大変な布告だぞ……。その上、初の防衛出動の命令とは……」

矢口  「総理、国民を守ることが第一です」

辻 「総理、警察による短時間での避難誘導は困難です。防衛出動となると、逃げ遅れた住人を戦闘事態に巻き込む覚悟が必要となります」

大河内  「いやいや、それは……」

国平 「日米安保を適用して米軍に駆除を肩代わりしてもらうのはどうですか!?」

花森  「いえ、まずはこの国の政府と自衛隊が動くべきです。安保条約があったとしても米国はあくまで支援の立場です」

菊川 「しかしあれは生物です。下手に刺激すると被害が拡大する恐れがあります!」

赤坂 「そう、生物です。ですから人の力で駆除することができます。同じ自然災害と区分しても、地震や台風とは違います」

東 「総理、ここは苦しいところですが、被害の拡大を防ぐためにも総理のご決断をいただかないと」

大河内  「今ここで決めるのか! 聞いてないぞ!」

東 「時間がありません。ご決断を」

矢口 「結局防衛出動は布告されずか……」

赤坂 「まあ、ある程度予想はしてたが。結局自衛隊の運用は救助活動や避難誘導といった非戦闘行為に限定された」

矢口 「やりきれんな」

赤坂 「つい先日まで、総理は外国人からの政治献金受領問題で追求されていた。それが海洋不明生物の出現で有耶無耶になりつつある」

赤坂 「総理にしてみれば寧ろ今回の騒動は渡りに船、早期解決は望んでないだろう」

矢口 「だからって国民を守らない道理は無い」

赤坂 「お前の言いたいことは分かるが
――」

泉 「そこに居たか矢口」

矢口 「どうした?」

泉 「マズイことになった」

泉 「学園艦の住民が自力で例の生物の駆除を始めたとの情報が入った」

【大洗学園艦 みほ寝室】

ボコ (痛てて……)

ボコ (……あれ、痛くない)

ボコ (さっきまでアイツ等にボコられてたのに)

ボコ (小っこいオイラの……人形?)

ボコ (ここは……何処だ……)

ボコ (オイラが抱いてたのだけじゃない。オイラの姿をした人形が沢山……何なんだ、ここは?)

ボコ (何だ? この手……。足も変だろ!? オイラの身体どうなっちまったんだ!?)

ボコ (何かが身体を覆ってる? クッ……引っ張っても破けない)

ボコ (チクショウ! 何が何だか分かんねえ……)

スッポン!

ボコ 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ボコ (やっと取れた……これって……)

ボコ (人間が着る『服』ってヤツだよな……)

ボコ (オイラの皮膚おかしなことになってる……博士が言ってた肌色って奴か)

ボコ (これってやっぱり人間になってるのか?  頭にばっかり沢山毛が生えてるし)

ボコ (胸が膨らんでる……)

ボコ (先っちょだけピンクなんだ……)

【大洗学園艦 校舎】

沙織 「みぽりん月曜日からご機嫌ね」

みほ 「はい。沙織さん、実は昨日……」

みほ 「夢の中で私、ボコになったんです」

沙織 「ボコに?」

みほ 「うん。楽しかったぁ」

華 「一昨日お参りに行った時のみほさんの願いを神様が叶えたんですね」

みほ 「私もそう思います。あの時華さんがアドバイスしてくれたおかげです。ありがとう」

華 「私は何もしてませんよ」

優花里 「具体的にはどんな内容の夢でありますか?」

みほ 「ボコになってクジラやイルカと一緒に泳いだり」

麻子 (クジラやイルカと泳ぐ?)

みほ 「無人島の砂浜で日光浴したり」

沙織 (ビーチで日光浴?)

みほ 「それから何か食べてたような気がするんだけど……思い出せない」

華 (食事……)

みほ 「最後はちゃんと他の動物達にボコって貰えてそこで目が覚めたの」

優花里 (色々とツッコミどころはありますが、元気な西住殿の満面の笑顔を見られて自分は嬉しいです)

華 「ボコって熊ですよね」

みほ 「うん」

麻子 「まあ、夢だしな……。ところで西住さんはニュース見てないのか?」

みほ 「ニュース? 何かあったんですか?」

華 「知らないのですか? 知波単で謎の生物が暴れている話」

【知波単学園艦 路上】

絹代 (これまでも敗北は経験してきたが……)

キュラキュラキュラキュラキュラ……

絹代 (帰路において戦車の無限軌道の音がこんなにも虚しく心に響いたことは無い……)

知波単住民A 「化け物をやっつけに行くって聞いてたが……」

知波単住民B 「なんだありゃあ……」

知波単住民C 「出撃した時の二割位しか帰って来てないじゃねえか?」

福田母 「すみません……娘は、娘はおりませんか?」

絹代 「停止!」

絹代 「危ないですよ! 急に飛び出すと」

福田母 「すみません。……私、福田の母です。いつも娘がお世話になっております。娘は、娘はおりませんか?」

絹代 「……福田の母親だ。持ってこい」

玉田 「はい……」

玉田 「持って来ました」

絹代 「ああ」

絹代 「こちらを」

福田母 (包み?)

細見 (福田の母上が包みを開けている……福田、親不孝者め……)

福田母 (!?)

福田母 (この血塗れの眼鏡、まさか!?)

絹代 「これだけしか……これだけしか取り返せませんでした」

福田母 「ヴヴヴヴッ! ……何でこの子が……ヴヴ……」

絹代 (人目を憚らず号泣されている。無理も無い……)

福田母 「グスッ……役に……立ったんですよね?」

絹代 「!」

福田母 「例え直接の手柄を立てた訳でなくても、娘の死は知波単の反撃の糧になったんですよね!?」

絹代 「ええ、勿論」

絹代 「……」

絹代 「いや……」





絹代 「私が無能なばかりに!」

絹代 「ただいたずらに生徒を死なせ!」

絹代 「奴らを艦から追い払うことが出来ませんでした!」

絹代 「我々は今回、何の成果も得られませんでした!」

《知波単学園艦、巨大海洋不明生物の駆除を断念。全住民の本土疎開を決定》

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

絹代 「よくぞ来てくれました」

ケイ 「Thank you. ……友人のパーティからエアポートまで直行だったので着替えを用意する時間もなかった」

ケイ (……ZARAは無さそうね?)

細見 (サンダースからの支援の申し出……)

玉田 (動きが性急過ぎるな)

ケイ 「今回のことは何と言えばいいか……」

絹代 「真っ先に支援の手を差し伸べて下さったサンダースの皆さんに感謝します」

ケイ 「困った時はお互い様よ。避難誘導は自衛隊や警察に任せるとして、私は同じ戦車乗りとして出来ることをしたい」

ケイ 「ストレートに聞くわ」

ケイ 「貴方達の受け入れ先は戦車も混みで受け入れてくれるの?」

絹代 「いいえ、荷物は最小限にと言われてます」

ケイ 「今動かせるのは何両?」

絹代 「8両です。他はあの怪物達に撃破されて……」

ケイ 「OK。その8両、サンダースで預かるわ」

ケイ 「貴方達が再び戦車道が出来る日まで」

絹代 「ありがとうございます……。このご恩は必ず……」

ケイ 「聞いての通りよ、ナオミ。オペレーション『フレンズ』発動」

ナオミ 「イエス、マム!」


ケイ 「ところで一つお願いがあるんだけど」

絹代 「はい、何なりと」

ケイ 「今の件とtradeして貴方達の蓄積情報を私に頂戴。ただし第三者にintelligenceは流さない。Just Saunders Chihatan, so win win」

絹代 「申し訳ないのですが……」

ケイ 「It's a joke、交換条件になんてしないわ。貴方達の戦車はきちんと預かって必ず返す」

絹代 「いえ、そうでは無くて……」

絹代 「自分、外来語が苦手で」

ケイ 「Oh I'm sorry」

絹代 「……」

【大洗学園艦 校庭】

沙織 「覚えてないのぉ?」

みほ 「うん」

沙織 「昨日は自分の机もロッカーも忘れたって言って、髪は寝癖付いてたし」

みほ 「ええっ!?」

優花里 「何と言うか記憶喪失みたいでした」

麻子 「でも西住さん、昨日はマジでちょっと変だった? どっか体調悪いんじゃないか?」

みほ 「元気だけどなぁ……」

沙織 「ストレスとかじゃない? ほら、決戦戦ももうすぐでしょ」

華 「それから一人称がたまに『オイラ』でした。熊本の方言ですか?」

みほ 「えええっ!?」

【サンダース学園艦 会議室】

カチューシャ 「そろそろ……」

カチューシャ 「今日の会談の本題に入らない?」

ダージリン 「同意するわ」

ダージリン 「元々この3校でのトップ会談は全国大会で連覇を続ける黒森峰の優勝を阻止する為に、私達よりもずっと前の代から続いて来たもの」

ダージリン 「3校共敗退したこのタイミングで席を設けるにしても反省会なら決勝を見届けた後でもいい筈」

ダージリン 「例の知波単を襲った怪物の件ね」

カチューシャ 「ケイ? カチューシャとダージリンを呼んだ理由、話して頂戴」

ケイ 「OK。まずはこれを見て」

ダージリン 「これは?」

ケイ 「ある学者が残したUMAの資料よ」

ケイ 「この資料に書かれていることが本当なら、UMAの正体は進化を遂げた太古の海洋生物」

ケイ 「彼らはこれまで地球に存在したどの動物よりも巨大で……」

ケイ 「同じ種でありながら個体毎に様々な形態を持つ」

カチューシャ 「これは……『撲堪等』……ボ、コ、ラ、って読むのか?」

ケイ 「Yes. These monsters code name is ……」

ケイ 「バッコーラ」

今日はここまで。
オペレーション『フレンズ』は東日本大震災での米軍の『トモダチ』作戦が元ネタです。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

ケイ 「そして知波単を襲ったのはそのうち5体」

ダージリン 「どうしてそれを?」

ケイ 「キヌヨから聞いたわ」

カチューシャ 「人道支援という名の情報収集か?」

ケイ 「否定はしないわ。そのモンスターがサンダースを襲う可能性だってあるし備えは大切よ」

カチューシャ 「フン、そのプーガロがプラウダに侵攻して来たら返り討ちにしてやるわ」

ダージリン (資料によると『ボコラ』とは『ボコ達』という意味で彼らの総称を指す。そして各個体にはそれぞれ名前がある)

ダージリン (青い皮膚で猫とも狸ともつかない風貌の『ドーラ』)

ダージリン (同じく猫に近い容姿ながら赤と白のコントラストが際立つ『ケイティ』)

ダージリン (鼠を思わせる外見の『マッキー』)

ダージリン (猿に似た姿の『ジークン』)

ダージリン (ワニみたいな格好の『エリガン』)

ダージリン (そして見た目がクマの『ボコ』)

ケイ 「ただ一つ気になることがあるの」

ケイ 「professorマキの資料によると、この生物は6体、その存在が確認されている」

ケイ 「資料とキヌヨから聞いた話とを照らし合わせると、知波単を襲ったUMAの中に居なかった1体は連中のnamed monster……」

ケイ 「バッコゥ」

カチューシャ 「ボコでしょ?」

ケイ 「……その1体がどうしてその場に居なかったのか?」

ダージリン 「こんな格言を知ってる?」

ダージリン 「この世の中に人間ほど凶暴な動物はいない。狼は共食いをしないが、人間は人間を生きながらにして丸呑みにする」

カチューシャ 「ガルシンね」

ダージリン 「ペコが居なくても何とかなるものね。フセーヴォロド・ガルシンをご存知とは流石プラウダの隊長だわ」

カチューシャ 「フン、ロシア文学はカチューシャにとって嗜みの一つよ」

ケイ 「人間程凶暴で無くても共食いする生き物はいる。彼らが該当するかは想像の域を出ないけど」

ダージリン 「こちらとしては寧ろ共食いしてくれた方が有り難いわ。駆除の手間が省けますもの」

ケイ 「That's right. そして懸念すべきは……」

ケイ 「連中が今後人間を捕食する可能性ね」

【大洗学園艦 教室】
女教師 「『たそ彼』、これが『黄昏時』の語源ね。黄昏時は分かるでしょう?」

女教師 「夕方、昼でも夜でもない時間。世界の輪郭がぼやけて、人ならざるものに出会うかもしれない時間。もっと古くは『かれたそ時』とか『かはたれ時』とも言ったそうです」

ボコ (人ならざるもの……オイラのことか)

ボコ (最初は戸惑ってばかりだった)

ボコ (人間って腰の位置も高いし、こんな細くて長い足でよくバランス取れると思ってた)

ボコ (それでもオイラは天才だから歩いたり走ったりは普通に出来たが)
 
ボコ (学校の勉強難し過ぎだろ……)

ボコ (昔、博士が『クジラやイルカより賢い生き物が居る』って喜んで、オイラ達に読み書き算盤を教えてくれたが)

ボコ (ここの勉強はそんなレベルじゃねえ)

ボコ (あのモジャモジャ頭が色々教えてくれなかったら今頃……)

ボコ (ノート、そろそろ次のぺージを)

ペラリ



『あなたは誰?』



ボコ (ん? 何だこの書き込み)

みほ (最近家に帰ると物の置き場所が変わってる)

みほ (時々身に覚えの無いことを心配される)

みほ (記憶に無い授業の板書が、私と違う誰か別の人の筆跡でノートに書き込まれてる。この筆跡の人ってまさかとは思ってたけど……)



『あなたは誰?』

『オイラ、ボコだぜ』




みほ 「これって……これってもしかして……!」

【太平洋 東日本沖】

ボコ 「また負けた……」

ジークン 「こいつ、今日は普通だな」

ドーラ 「昨日は何かワザとやられてた感があった」

エリガン 「昨日はなんか……可愛かった」

ジークン 「えぇ……?」

ボコ 「ワザとやられる訳ないだろ!」

ボコ 「はぁああ……!? これってもしかして本当に……!」

みほ 「私、夢の中でボコと……」

ボコ 「オイラは、夢の中であの人間と……」

みほ&ボコ 「「入れ替わってるぅ!?」」

みほ (何が起きているのか、だんだん分かってきた。ボコは見た目はクマに似てるけど実際は海に棲む新種の生物で)

みほ (ボコ達を調査した牧博士から、言葉や人間に関する知識を教わっていた)

ボコ (どデカイ船に住むみほとの入れ替わりは不定期で、トリガーはボコられること。原因は不明)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

ボコ 「それでも、オイラ達は確かに入れ替わっている。周囲の反応がそれを証明している。だから――」

みほ 「だから私達はお互いの生活を守る為ルールを決めた。入れ替わってしまっている時の注意点や守るべき禁止事項」

みほ (この謎現象をとにかくも乗り越えるために協力し合うこと。それなのに……)

ボコ (それなのに……)

ボコ (あの人間は!)

みほ (あの生き物は!)

【大洗学園艦 教室】

みほ (このノートの書き込み、ボコの字ね)




『〔あんこうチーム〕
装填手……秋山優花里(人間、モジャモジャ頭)
操縦手……冷泉麻子(人間、小っこい寝ぼすけ)
砲手……五十鈴華(人間、ノッポの大食い)
通信手……武部沙織(人間、おっばいメガネ)

チーム名はあんこうなのに全員人間』



みほ (どういう覚え方してるの……)

【太平洋 東日本沖】

みほ 「お願いです。どうかもう人間を襲うのは止めて下さい」

マッキー 「日頃突っかかってくる癖に調子良くね?」

ドーラ 「人間とボコは仲ええなあ」

ケイティ 「こんなキャラだっけ?」

エリガン 「だったら……」

エリガン 「何か面白いことやってみせなさいよ」

みほ 「こっち来て アンアン 逃げないで アンアン♪」

ケイティ 「えぇ! 私絶対無理!」

エリガン 「よく人前で出来るわね……」

ジークン 「それは何て言うんですか? 腰を振って動き回る奴」

みほ 「あんこう音頭です」

みほ 「お鍋はアツアツ♪」

みほ 「おいしくってアツアツ♪」

みほ 「味噌でしょうゆでアッツアツ♪」

ボコ 「オイラの身体で恥ずかしいことしてんじゃねえ! おかげで甜められっ放しじゃねえか!」

【大洗学園艦 更衣室】

ボコ (フーッ、今日の戦車道の練習も終わったぜ) 

ボコ (相変わらず着替えが面倒くせぇ……そうだ!)

【大洗学園艦 通学路】

ボコ 「チキショウ、雨が降って来やがった」

優花里 (チキショウ? 来やがった?)

ボコ 「優花里さん、喫茶店まで走ってそこで雨宿りがてらお茶しない?」

【大洗学園艦 戦車喫茶『エクレール』】

優花里 「西住殿からお茶にお誘い頂きありがとうございます」

ボコ 「気にしないで下さい。優花里さんにはいつも助けて貰ってるから」

ボコ (どうだ、あいつの真似も板についてきただろ)

優花里 (これは気づいてないだけでしょうか? それとも誘っているのでしょうか?)

優花里 (先の戦争では、旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたために、国民に300万人以上の犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です)

優花里 (誘っている訳ではないとして……)

優花里 (今にもパンツが見えそうな西住殿の座り方は一体……)

優花里 (そして何よりも……)

優花里 (何故ノーブラなのですか!?)

優花里 (制服が濡れたせいで透けてますよ!)

ボコ (一番小っこいのを一着くらい省いても問題ねえよな)

みほ 「下着はちゃんと着けて下さい! 人生の基本でしょ? あとスカート注意!」

ボコ 「戦車道とか無理だろ!? それに練習入れ過ぎ」

みほ 「決勝戦近いし、ボコが入れ替わってる日は練習にならないから」

ボコ 「ん~うめぇ……」

みほ 「エクレールで人のお金無駄遣いしないで下さい 」

ボコ 「食ってるのはお前の身体」

みほ 「食べた記憶無いのに服が少しキツくなり始めてるし……」

みほ 「ちょっとボコ、どうして澤さんからラブレター貰ってるの? それに優花里さんとデートの約束ってどういうこと?」

ボコ 「お前、オイラに人生預けたほうがモテんじゃね?」

みほ 「自惚れないで。彼女いないくせに! 」

ボコ 「お前だっていねえじゃねえか!」

【静岡 東富士演習場】

みほ (遂に決勝が始まる……)

みほ (試合の行方ともう二つ心配事が)

みほ (一つ目はボコ、今日は出て来ないで)

みほ (お願い……)

場内アナウンス 「決勝戦の前に、本大会出場校である知波単学園の、巨大海洋不明生物による死没者に黙祷を捧げます。会場の皆様もどうかご起立願います」 

場内放送アナウンス 「黙祷」

みほ (もう一つは、ボコの仲間達をまだ説得出来ずにいること。もしまた人が襲われたら……)

みほ (知波単で亡くなられた皆さん。どうか安らかにお眠り下さい。必ず平和な海を取り戻します)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

みほ (川を渡河中にうさぎさんチームがエンスト……)

梓 「私達は大丈夫です。隊長達は早く行って下さい!」

優花里 「危ない」

沙織 「このままだと横転しちゃう」

麻子 「もたもたしていると黒森峰が来るぞ」

華 「でも、ウサギさんチームが流されたりしたら……」

みほ 「……」

沙織 「行ってあげなよ、こっちは私たちが見るから」

みほ 「沙織さん……」

みほ 「優花里さん、ワイヤーにロープを」

優花里 「はい!」

みほ 「みんな、少しだけ待ってて下さい」

みほ (ロープを腰に巻いて、八艘跳びの要領で各戦車の間をジャンプしながらM3に取り付く)

みほ (助けるんだ、うさぎさんチームを……そして勝つんだ。せーの!)

ポオォン! グラッ?

みほ (え、視界が?)

ドボォン! ゴポゴポゴポゴポ……

【太平洋 東日本沖】

みほ (……)

みほ (ハッ!? 水中? 落ちた?)

みほ (ジャンプに失敗した。早く上が、痛ッ!?)

みほ (身体のあちこちが痛む、イタタ……、それに、水中なのに息苦しくない)

みほ (まさか入れ替わってる!)

みほ (ボコにはあれだけ喧嘩しないでって言ったのに……)

みほ (決勝戦が終わるまでは絶対に喧嘩しないでって……)

みほ 「誰かーッ! 誰かいねえかーッ! ビビッてんじゃねえぞーッ! とっとと返事しやがれーッ!」

みほ (ボコならこんな風に叫ぶかな)

みほ (入れ替わりが起きたということはボコをボコった生き物達がまだ近くに居る筈)

みほ (誰でもいい、私を見つけて。そしてボコッて!)

みほ (早く戻らなきゃいけないの!)

【静岡 東富士演習場】

優花里 「西住殿!」

ボコ 「……状況は?」

ボコ (水中からロープで引っ張られて戦車に乗った。何で川の中で立ち止まってるんだ?)

麻子 「相変わらずだ。黒森峰はまだ追い付いていない」

沙織 「早くうさぎさんチームを助けないと!」

ボコ 「……」

華 「みほさんを少し休ませましょう、ずぶ濡れですし。優花里さん、代わりにうさぎさんチームの救助に行って貰えますか?」

優花里 「はい」

麻子 「西住さんの面倒はこっちで見る」

【静岡 東富士演習場】

沙織 「大丈夫? ハイ、タオル」

ボコ 「ありがとうございます。皆さん心配かけました」

華 「……」

沙織 「着替えはゆかりんが持ってたら貸して貰おう。サイズはほとんど同じでしょ。それまでは私のジャケット羽織ってて」

ボコ 「はい……」

華 「みほさん?」

華 「私の誕生日、覚えてますか?」

ボコ 「えっ? もしかして今日だったの?」

華 「私の誕生日が思い出せないなら他の人の誕生日は思い出せますか?」

みほ 「大丈夫だよ、意識もはっきりしてるし」

華 「答えて下さい」

みほ 「えっと、優花里さんの誕生日が6月6日で……」

華 「みほさん、貴方の誕生日はいつですか?」

ボコ 「……」

麻子 「おい……記憶が混濁してるのか?」

沙織 「まさかさっき川に落ちた時のショックで!」

華 「なるほど……最近様子がおかしいとは思ってましたが……」

華 「今はみほさんの裏の人格がみほさんの身体を乗っ取っているようです」

華 「単刀直入にいいます」

華 「みほさんを返して下さい」

ボコ 「何を言ってるの華さん。私はここに居るよ」

ボコ (二重人格とは違うが結構いい線突いてきやがる)

>>53は書き間違えました。
>>55と差し替えで読んで下さい。

沙織 「着替えはゆかりんが持ってたら貸して貰おう。サイズはほとんど同じでしょ。それまでは私のジャケット羽織ってて」

ボコ 「はい……」

華 「みほさん?」

華 「私の誕生日、覚えてますか?」

ボコ 「えっ? もしかして今日だったの?」

華 「私の誕生日が思い出せないなら他の人の誕生日は思い出せますか?」

ボコ 「大丈夫だよ、意識もはっきりしてるし」

華 「答えて下さい」

ボコ 「えっと、優花里さんの誕生日が6月6日で……」

華 「みほさん、貴方の誕生日はいつですか?」

ボコ 「……」

麻子 「おい……記憶が混濁してるのか?」

沙織 「まさかさっき川に落ちた時のショックで!」

華 「なるほど……最近様子がおかしいとは思ってましたが……」

華 「今はみほさんの裏の人格がみほさんの身体を乗っ取っているようです」

華 「単刀直入にいいます」

華 「みほさんを返して下さい」

ボコ 「何を言ってるの華さん。私はここに居るよ」

ボコ (二重人格とは違うが結構いい線突いてきやがる)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【太平洋 東日本沖】

みほ (誰も来ない……)

みほ (ボコ……)

みほ (早く帰りたい……帰らないと……)

みほ (どうしてボコられないと帰れないんだろ……)

みほ (……)

みほ (そうだ!)

みほ (もし入れ替わりのきっかけが、単純に身体のダメージによるものだとしたら)

ボコッ、ボコッ

みほ (自分で自分を殴ってもなかなか上手くいかない)

みほ (もっとダメージが必要なのかな)

みほ (手っ取り早くダメージを与える方法……)

【静岡 東富士演習場】

華 「さっきのタオルでの身体の拭き方を始め、みほさんにしては動きに女の子らしさや品がありません」

華 「貴方は誰ですか?」

ボコ 「今日の華さん何か変だよ、沙織さんもそう思うでしょ」

沙織 「ごめん。私も前々から思ってたけど言い出せなかった」

沙織 「みぽりん時々別人になるの」

沙織 「いつか本人の口から話してくれるまで待とうって思ってたけど」

麻子 「いくら見た目がそのままだからって口調だけ真似てもバレバレだ」

麻子 「恐らく秋山さんも気付いてるだろ」

ボコ 「お前ら、さっきから言いたい放題……」

華 「……遂に正体を現しましたね」

ボコ 「オイラは経験したんだ。この身体であいつの日常を。そしてみほとも沢山意見を交わしてきた」

ボコ 「皆の前では健気に振る舞い、周りに気配りしつつ、一人で悩みながらそれでも弱音を吐かずに頑張ってきたあいつを」

ボコ 「お前等揃いも揃ってみほをアテにし過ぎだ!」

華 「そんなこと、言われなくても分かってます!」

華 「脅迫してまでみほさんに戦車道を履修させようとした生徒会の横暴に対し最終的に全員が口を噤んたのは、みほさんを隊長にしないと大会を勝ち抜けないことが分かっていたからです」

華 「大洗に来る前にも黒森峰では敗戦の責任を問われ、実家を勘当され、心休まる時の無かったであろうみほさんがプレッシャーに耐えかねて生み出した人格が貴方なのでしょう」

華 「そこまでみほさんを追い詰めてしまったこと、彼女に多くを背負わせてしまったこと……」

華 「私を含め、人類全てに罪がある!」

沙織 「そんなスケールの大きな話!?」

華 「私達は勝って、みほさんの戦車道が正しいことを証明することでみほさんに報いたい」

華 「そして何よりも最後までみほさんと一緒に戦いたい」

華 「その為にも彼女を返して下さい」

ボコ 「……そうだ、華」

華 「?」

ボコ 「お前次の生徒会長に立候補しろ」

ボコ 「そして会長になったら今の会長をボコってこう言いな」

ボコ 「『殴り返してみろ』ってな」

ボコ 「ただその前にオイラをボコれ」

ボコ 「そしたらみほに会わせてやる」

麻子 「普通に元に戻れよ」

ボコ 「あったらやってらぁ! 他に方法がねえんだ!」

優花里 「秋山優花里、只今帰還――」

ドカッ

麻子 「さっさと西住さんに戻れ」

バキッ

華 「カッコつける暇があったらとっとと退場して下さい」

ベシッ

沙織 「ごめんね、時間ないから」

優花里 「何やってんですか!」

優花里 「西住殿~」

麻子 (秋山さんが西住さんを抱き締めて泣いてる)

沙織 「ごめんね、でもこうするしか」

優花里 「事情は分かりました。だからってあんまりです!」

優花里 「あんこうチームから袋叩きに遭う西住殿なんて見たくなかったです。ウウウ……」

ボコ 「優花里~、オイラの為に泣いてくれるのか。お前いい女だな」

麻子 (違えよ)

華 (みほさんが戻って来ない、このままでは……)

【太平洋 東日本沖】

みほ (これまで入れ替わってきたから分かっている……ボコの再生能力の高さは折り紙付き)

みほ (どの位痛いのかな? 自分では経験したことが無いから)

みほ (迷ってる暇は無い、やれることをやるんだ)

みほ (ボコ、ごめんね……)

みほ (ハァ……。この身体でオ◯ッコする度に思ってたけど)

みほ (リアル過ぎ)

グチャ!

【静岡 東富士演習場】

ボコ ガクッ

優花里 「!」

優花里 「西住殿!? 西住殿!?」

沙織 (みぽりんグッタリしてる……)

華 (裏人格が落ちた!?)

みほ 「ヴゴオッ!」

あんこうチーム(みほ除く) 「!?」

みほ 「ヴグウウッ……ハァ、ハァ、ハァ」

みほ (もう痛くな、イテテテ……)

みほ (今度は身体のあちこちが痛い)

優花里 「西住殿!」 

沙織 「みぽりん!」

麻子 「西住さん!」

華 「みほさん!」

みほ 「4号の天井……私、戻ってこれたんだ……」 

優花里 「いつもの西住殿です!」

沙織 「良かった……本当に良かった」

華 「一時はどうなることかと思いました」

麻子 「これで戦えるな」

優花里 「西住殿、M3とのワイヤー連結終わっております!」

みほ 「優花里さん、沙織さん、華さん、麻子さん……みんな、心配かけてごめんなさい」

沙織 「いいっていいって」

華 「お互い謝るのは後、今は試合のことを考えましょう」

麻子 「そうだな」

麻子 (私達も西住さんボコってしまったし)

優花里 「西住殿、指示をお願いします!」

みほ 「分かりました。M3を牽引して川を渡ります。全員持ち場について下さい」

みほ 「麻子さん、いけますか?」

麻子 「何時でも行けるよ」

みほ 「パンツァー・フォー!」

その後、大洗女子学園戦車道チー厶は名門黒森峰を破って優勝を果たした。
大洗が初めて高校戦車道全国大会を制した快挙であったが、それを歓喜するには失われたものがあまりにも大きな者が居た。

【太平洋 東日本沖】

ボコ (死ぬ……痛みで吐きそう……)

ボコ (戻ってきた途端オッドボールかよ……)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
これにて序盤終了。
しばらく書き溜めてから1~2週間後また投下します。

【某県 避難所】?

浜田 「このご馳走は何でありますか!? ひょっとして誰かが怪物を殲滅したお祝いですか?」

絹代 「慌てるな浜田。今日はアンツィオ高校が炊き出しに来てくれたのだ」

ペパロニ 「アンツィオ名物鉄板ナポリタンだよ~!」

細見 「この香ばしい香り……西隊長!」

細見 「細見、辛抱たまらんであります!」

玉田 「西隊長、早く、早く突撃命令を!」

絹代 「待て待て。食事は逃げはしない。まずは食事の前の手洗いだ」

玉田と細見と浜田 「はい!」

カルパッチョ 「沢山あるので落ち着いて並んで下さ~い」

玉田 (避難所暮らしの前よりも豪勢だ……)

絹代 「全員行き渡ったか?」

知波単戦車道履修者一同 「はい!」

絹代 「今日はアンツィオ高校の皆さんから温かいご支援を頂いた!」

絹代 「アンツィオの皆さん、ありがとうございました!」

知波単戦車道履修者一同 「ありがとうございました!」

絹代 「では全員背筋を伸ばーせー」

絹代 「いたーだきーます!」

知波単戦車道履修者一同 「いたーだきーます!」

アンチョビ 「ここに居たのか」

絹代 「はい、折角美味しいご馳走を頂いたので」

アンチョビ (慰霊碑にアンツィオの料理をお供えしていたのか)

絹代 「皆、喜んでいます。感謝しきれません」

アンチョビ 「そう言って貰えると嬉しいよ。私もお祈りしていいか?」

絹代 「ありがとうございます。お願いします」

絹代 (アンツィオ高校は主力のP40の修理費もままならないと聞いていたが、そんな中こうして炊き出しに来てくれるとは)

絹代 (だがそのことに触れるのは失礼だ。今はただ感謝の気持ちでご好意に甘えよう)

アンチョビ 「思ったより大丈夫そうだな」

絹代 「『カラ元気も元気のうち』と言います。少なくとも隊員達の前ではいつまでも泣いていられません」

アンチョビ 「辛いな……」

絹代 「はい……本当に辛い思いをしました」

絹代 「しかしサンダースの時といい、今といい、こうして人の温かみを、善意を感じると……」

絹代 「世の中決して捨てた物ではないと思えるのです」

ボロロン♪

ミカ 「世界は残酷だ」

ミカ 「そしてとても美しい」

絹代 「貴方は?」

ミカ 「風に吹かれてやって来たのさ」

カルパッチョ 「大変です! ……今よろしかったですか?」

アンチョビ 「問題無いぞ。どうしたカルパッチョ?」

カルパッチョ 「ネットでニュースを見てたら海洋不明生物が再び出現したって記事が――」

絹代 「どこだ? どこに現れた!?」

カルパッチョ 「海洋不明生物の出現場所は……」

【プラウダ学園艦 練兵場】

カチューシャ 「プラウダは知波単とは違う」

クラーラ 「目標との距離1500」

カチューシャ 「分かったわ、手筈通り行くわよ」

クラーラ 「はい」

ノンナ 「了解」

カチューシャ 「ノコノコ現れたデカいだけのウスノロ共に人類こそが万物の霊長だと思い知らせてやるんだから」

カチューシャ 「さあ、カチューシャにケンカを売ったことを死ぬ程後悔しなさい!」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【プラウダ学園艦 緑地帯】

ノンナ (目的は相手を挑発して誘導すること……)

ドオォン!

ゴスッ!

エリガン 「痛っ!」

ドーラ 「撃って来やがった」

エリガン 「やったわね!」

ドオォン!

ゴスッ!

マッキー 「アガッ!? イッテーなぁ……調子に乗りやがって!」

エリガン 「ケイティ、見てよ。血とか出てない?」

ケイティ 「ちょっと頭見せて……大丈夫」

ノンナ 「全弾命中。……効果見られません。……目標が接近してきます」

カチューシャ 「後退する振りをしながらそのまま練兵場までエスコートしてやりなさい」

ノンナ 「分かりました」

カチューシャ (ケイの資料にあった通りやたら硬いわ。知波単の戦車では接射に近い距離で漸くダメージを与えられたって話だし……)

カチューシャ (遠距離砲撃が効かないなら近距離から集中砲火すればいいのよ)

【プラウダ学園艦 練兵場】

ノンナ 「目標、予定ポイントに到達」

カチューシャ 「流石ノンナね。さあ、ここから反撃よ!」

カチューシャ (所詮下等生物ね。ミホーシャの方がよっぽどか手強かった)

マッキー 「ありゃ……敵の援軍か?」

ジークン 「……いや、違う。多分待ち伏せだ」

ドーラ 「一旦下がるか?」

ケイティ 「駄目、後ろからも来た!」

エリガン 「囲まれた!?」

クラーラ (呆気ないです)

クラーラ (基本戦術は準決勝で大洗に使ったのと同じ。違いは……)

クラーラ (大洗との試合では15両だったのに対し、今回は50両を投入)

クラーラ (50両を4個中隊に分け、第二中隊と第三中隊で敵を前後から包囲。さらにその外側から第一中隊と第四中隊が包囲)

クラーラ (50両での二重包囲が完成した。これの突破は容易には出来ないでしょう)

アリーナ 「大っきなあ100メートルはあるし……折角だしスマホで写真撮るだ」

ニーナ 「後で写真転送してぐれ」

アリーナ 「わがった」

カチューシャ (包囲網は完成した。後は……)

フラッグ車通信手 「隊長、入電です」

カチューシャ 「何?」

フラッグ車通信手 「後方から新手の敵です」

ボコ 「うぉぉぉおお!」

カチューシャ (遊撃?)

カチューシャ (遊撃を用意する知恵があったとはね)

カチューシャ (カチューシャの居る第一中隊の背後を突いたのは褒めてあげるわ)

カチューシャ 「第一中隊反転。新手を叩くわ」

カチューシャ 「カチューシャの合図で敵の左脚に一斉射よ。敵が硬いからしっかり引き付けなさい」

ノンナ (包囲が一重ならこの機に敵が総力で一点突破を狙えば包囲網を破れたかも知れませんが、これで終わりですね)

カチューシャ (目標との距離……300……250……200……150!)

カチューシャ 「第一中隊、一斉射!」

ドンドドドオォン!

ドグシャァ!

ボコ 「イッ!」

ボコ (痛え、撃たれた!)

カチューシャ 「やっぱり近くから撃てば効……!」

タッタッタッ、グラッ……グシャァ!

ジークン (足を撃たれたボコが片足立ちで2、3歩跳ねてから……)

ドーラ (派手に転倒しやがった)

ケイティ (コケた時に何か巻き込まなかった?)





プラウダ車長A 「大変……」

プラウダ車長B 「フラッグ車が敵の下敷きになったわ!」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

ジークン 「チャンスだ」

エリガン 「ジークン?」

ジークン 「連中の動きが止まった。ボコと合流して奴らを叩くぞ」

プラウダ車長A (囲んでた敵がこっちに来た!?)

プラウダ車長A 「フラッグ車との通信は?」

プラウダ通信手A 「フラッグ車、応答ありません!」

プラウダ車長A (フラッグ車がやられたのに……どうすればいいのよ)

プラウダ車長A 「ノンナ副隊長に繋いで!」

プラウダ通信手 「はい!」

ノンナ 「いい人生だった……」

ノンナ車通信手 「諦めちゃ駄目!」

ノンナ 「これはもう必要ありません」

ノンナ車装填手 「……そのノートは?」

ノンナ 「カチューシャ日記」

ノンナ車砲手 「ちょっ!? ノンナさん! そこで火付けないで!」

プラウダ通信手A 「副隊長車より! 副隊長は指揮が取れる状態にないとのことです」

プラウダ車長A 「……クラーラ中隊長に繋いで」

クラーラ 「悪魔の末裔が! 根絶やしにしてやる!」

クラーラ車装填手 「クラーラさん、落ち着いて!」

クラーラ車操縦手 「きっと隊長は生きてるって!」

プラウダ通信手A 「クラーラ車より! クラーラ中隊長、指揮が取れる状態にないとのことです」

プラウダ車長A 「何なのよ、もう!」



小さな暴君カチューシャを頂点とし、その命令を遵守することで統率される現在のプラウダ戦車道。命令に背いたり失態を晒したら「シベリア送り25ルーブル」等の厳しい処分が待っている。
この体制は「新たな提案をして藪蛇になったり、命令が無い時に独自の判断で行動して処分の対象になる位なら命令さえ守っていればいい」という風潮を生み、各車長の自己判断能力の成長を阻害した。
また、補佐役のノンナとクラーラは熱烈なカチューシャの信奉者兼保護者であり、カチューシャに不測の事態が起こるやいなや補佐役も含め指揮系統が麻痺するという欠点があった。

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

1です
ちょっとだけ追加

カチューシャ 「もう、泣かないの。カチューシャは無事だったんだから。それより早く来なさい、いいわね」

カチューシャ 「じきにクラーラが迎えに来るわ。あなた達はそれまでここで待ってなさい」

フラッグ車装填手 「隊長は?」

カチューシャ 「カチューシャは他の皆を助けに行くわ」

フラッグ車砲手 「気をつけて」

カチューシャ (フラッグ車のハッチが変形して少ししか開かなくて、カチューシャだけが外に出られた)

カチューシャ 「小さいことが役に立つ時もあるのね」

クラーラ 「二人とも振り落とされないように気をつけて!」

クラーラ (途中でニーナとアリーナを拾った。それはKV-2を失ったことを意味する)

ニーナ 「あの化けもん難儀だべ……」

アリーナ 「んだんだ」

クラーラ (既に勝敗は決した……)

クラーラ (ひしゃげたフラッグ車を見た私達は思い知った。これは試合では無く命のやり取りだと。私達もああなるかもしれないのだと)

クラーラ (結果的にカチューシャ様の無事は確認出来たが、一旦恐怖の伝染した味方がこんなにも脆いなんて……)

クラーラ (害獣駆除などという生易しいものではなかったのよ)

二ーナ 「警戒! 3時方向!」

クラーラ 「!?」

ドガァッ!

カチューシャ 「クラーラ!」

カチューシャ (クラーラがひっくり返った戦車の下敷きに!)

クラーラ 「カチューシャ様、遅くなりました……。携帯で声を聞けた時はほっとしました」

アリーナ 「走る怪物に戦車が巻き込まれて……」

ニーナ 「わだす達は放り出されたから助がりましたが……」

カチューシャ 「クラーラを助けるわよ、手伝いなさい!」

アリーナとニーナ 「はい!」

今度こそ今日はここまで
お休みなさい

クラーラ 「私の足は戦車に潰されて、ここから出られたとしても走れません。……分かりますよね」

カチューシャ 「カチューシャが担いで走るわよ!」

クラーラ 「最後くらい言うこと聞いて下さい!」

クラーラ 「ニーナ! アリーナ!」

ニーナ 「嫌だーっ!」

アリーナ 「最後なんてそったら悲しいごと言わねでけろー!」

クラーラ (このままでは四人共……ボコラの餌食に……あれは?)

クラーラ (ノンナ様! ノンナ様が来てくれた)

カチューシャ 「ノンナ! 戦車は?」

ノンナ 「申し訳ありません、私が搭乗していたIS-2は撃破されました。それからは戦車を捨ててカチューシャを探していたのです」

クラーラ 「ノンナ様! 三人を連れて逃げて!」

ノンナ 「見くびって貰っては困りますクラーラ。私は四人共きっちり助けます」

ニーナ 「ありがてえ、百人力だ!」

クラーラ 「ノンナ様、戦っては駄目! お願い!」

ノンナ (三人なら、三人なら確実に助けられる。しかし私は……四人共助ける!)

ノンナ 「ライカ、おいで」

ライカ(犬 シベリアンハスキー) 「ハッ、ハッ、ハッ」

ノンナ 「ライカ、いい子ね。訓練通りにやればいいから」

カチューシャ (ノンナが跪いて犬の頭や首を撫でてる)

ノンナ 「目標はこちらに接近するクマに似た生き物よ。ライカ、行きなさい!」

ライカ 「ワン!」

タッタッタッタッタッタッタッ……

ドゴオオオン!

カチューシャ (対戦車犬か)

※対戦車犬
第二次世界大戦時、ソ連に実在した軍用犬。訓練した犬に爆弾を背負わせ、敵戦車に特攻、自爆させる。実際には自軍の戦車に潜り込んで自爆する犬が出るという問題を抱えていた。犬が可哀想だが、旧日本軍が人間で同様のことを行っていたことを考えると何とも言えない話である。

ニーナ 「やったか……?」

ノンナ (効いてない……)

カチューシャ (分かってたわ……。犬一頭が背負える爆薬の量なんてたかが知れてる)

クラーラ 「もう十分です。撤退して下さい」

ノンナ 「そんなことばかり言ってたらカチューシャに嫌われますよ」

クラーラ 「この状況を何とかする為なら嫌われて結構」

クラーラ 「ノンナ様……」

クラーラ 「貴方はカチューシャ様をここで死なせる気?」

ノンナ 「!」

クラーラ 「ノンナッ!」

ノンナ 「……」

ガシッ

カチューシャ 「何ッ?」

カチューシャ 「ノンナ、誰が肩車しろと言った? クラーラがまだッ!」

クラーラ 「スパシーバ、ノンナ」

ノンナ 「アリーナ、ニーナ、ついて来なさい」

カチューシャ 「クラーラ! クラーラアァァァ!」

アリーナ 「クラーラさん、許して下さい……」

ニーナ 「すみません……」

クラーラ 「カチューシャ! 生き延びるのよおおおおぉ!」

カチューシャ 「ノンナ、戻りなさい! 命令よ!」

クラーラ (四人の姿が遠ざかって行く……)

クラーラ (ああ、行かないで……)

アリーナ (クラーラさん、普段は『カチューシャ様』と呼んでるけどさっきだけは……)

カチューシャ (怪物が戦車を退けてクラーラを捕まえた!)

カチューシャ 「やめろぉぉおおお!」

ガブリッ!

ニーナ 「ここは地獄だ……」

アリーナ 「あんデカい奴さ勝でる訳がね」

カチューシャ 「ノンナ、あんたシベリア送りじゃ済まないわよ!」

ポカポカポカポカ

ノンナ (カチューシャに頭を叩かれても大して痛くはない。それよりも痛いのは……)

カチューシャ 「あんた、よくも仲間を見殺しにしたわね……」

カチューシャ 「この人殺しィ!」

ノンナ 「……」

アリーナ (止まっただ……)

ドサッ!

カチューシャ 「グッ! 痛っ……」

 (ノンナ副隊長が隊長を振り落とした!?)

ノンナ 「同志カチューシャ、貴方がクラーラを助けられなかったのは、貴方に力が無かったからです」

カチューシャ 「!」

ノンナ 「そして……」

ノンナ 「私にも力が無かったんです!」

ノンナ 「ウウウ……すみません、本当にすみません……ウウ……」

カチューシャ 「……」

>>103は書き間違えました。
>>105と差し替えて下さい。

ニーナ 「ここは地獄だ……」

アリーナ 「あんデカい奴さ勝でる訳がね」

カチューシャ 「ノンナ、あんたシベリア送りじゃ済まないわよ!」

ポカポカポカポカ

ノンナ (カチューシャに頭を叩かれても大して痛くはない。それよりも痛いのは……)

カチューシャ 「あんた、よくも仲間を見殺しにしたわね……」

カチューシャ 「この人殺しィ!」

ノンナ 「……」

アリーナ (止まっただ……)

ドサッ!

カチューシャ 「グッ! 痛っ……」

ニーナ (ノンナ副隊長が隊長を振り落とした!?)

ノンナ 「同志カチューシャ、貴方がクラーラを助けられなかったのは、貴方に力が無かったからです」

カチューシャ 「!」

ノンナ 「そして……」

ノンナ 「私にも力が無かったんです!」

ノンナ 「ウウウ……すみません、本当にすみません……ウウ……」

カチューシャ 「……」

カチューシャ 「……行こう、ノンナ。私達が生き延びないとクラーラが無駄死に……」

ノンナ 「……カチューシャ?」

カチューシャ (フラッグ車が……さっきよりも平たく……)

カチューシャ (完全にペシャンコになってる)

カチューシャ (カチューシャが出ていった後、あいつらの誰かが踏んづけていったんだ)

カチューシャ (カチューシャのプラウダってこんなに弱かったの?)

カチューシャ (違う……)

カチューシャ (違う、違うわ!)

カチューシャ (カチューシャは弱くなんかない。弱いプラウダなんて認めない!)

アリーナ (隊長、悔しそうに泣いてるだ)

ニーナ (おら、きっと今の隊長の顔忘れねえべ……)

カチューシャ 「粛清してやる。ボコラ共を……」

カチューシャ 「この世から……一匹残らず!」

《プラウダ学園艦、巨大海洋不明生物の駆除を断念。全住民の本土疎開を決定》

【茨城県 冷泉久子宅】

リポーター 「先程、巨大海洋不明生物が人間を捕食しました! 信じられない光景です! 繰り返します――」

沙織 「今、テレビに映ってたのってボコだよね……」

ボコ 「オイラはここだぞ」

優花里 「西住殿の姿でそう言われると不思議な気持ちです」

華 「この映像、画面隅に「LIVE」って出てますよ」

沙織 「それって……まさか!」

優花里 「有り得ません!」

優花里 「西住殿が人間を食べるなんて有り得ません!」

沙織 「そうだよね、ごめん」

麻子 「もうじきご飯が出来……どうしたんだ?」

麻子 (部屋の空気がおかしい)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

沙織 「チャンネル変えるね」

ピッ

アナウンサー 「次のニュースです。プラウダ学園艦に巨大海洋不明生物が侵入した件について政府は閣議を――」

ピッ

リポーター 「甲板から艦内部のシェルターに向かって大勢の住民が殺到しています!」

警察官 「撮ってないで早く逃げて!」

プラウダ学園艦住民A 「早く逃げて!」

プラウダ学園艦生徒A 「キャー! キャー!」

麻子 「きっとテレ東以外どこも特別報道だろ」

華 「もうテレビの電源切った方が……」

沙織 「うん」

華 (折角のお夕飯なのに)

沙織 (雰囲気が暗くなってる)

久子 「うちの孫娘にこんなに沢山ムスビが出来るなんてねえ」

ボコ「ムスビ?」

麻子 「人と人との繋がり、今の場合は友達が出来たってこと」

麻子 (おばぁは西住さんとボコの入れ替わりを知らないから能天気だ、いやその方がいい)

久子 「土地の氏神様をな、古い言葉で産霊って呼ぶんだよ。この言葉には深ーい意味がある。人を繋げることもムスビ、時間が流れることもムスビ、全部、神様の力」

久子 「寄り集まって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、また繋がり。それがムスビ。それが時間」

ポロッ

優花里 「すみません、里芋落としちゃいました」

ボコ 「気をつけてね、優花里さん」

パクッ

優花里 「あっ?」

優花里 (テーブルに落ちた私の食べかけを西住殿、いや、ボコが)

華 「お行儀悪いですよ、みほさん」

ボコ 「そう?」

華 (言葉遣いはみほさんっぽく振る舞ってますがこういうところはボコですね)

久子 「それもムスビ。アハハハハ! 水でも、米でも、酒でも、人の体に入ったもんが魂と結びつくこともまたムスビ」

麻子 「私は今晩家に泊まって寄港期間が終わる前に学園艦に戻る」

沙織 「また学校でね」

華 「今日はありがとうございました」

沙織 「ご馳走様でした」

優花里 「失礼します」

ボコ 「また来る……来たいです」

久子 「また皆でいらっしゃい」

麻子 「バス停まで送るよ」

【茨城県 冷泉久子宅付近 バス停までの道】

ボコ 「婆ちゃんいないからようやく素のオイラに戻れるぜ」

ボコ (あの日、全国大会の決勝戦以降、オイラはあんこうチームの前でだけは素のオイラで話してる。みほとの入れ替わりもこいつらだけには打ち明けた。みほにもそのことは伝えている)

ボコ 「どうした、皆?」

優花里 「ボコ殿に聞きたいことがあります」

ボコ 「何だよ、改まって」

優花里 「ボコ殿は人を食べたことはありますか?」

ボコ 「無い」

華 「本当ですね?」

ボコ 「ねぇよ」

ボコ 「こうしてお前らとつるんで楽しい思いしてるのに人間喰ったら寝覚めが悪いだろ」

華 「それを聞いて少しホッとしましたが新たな問題が……」

優花里 「自分は西住殿を信じます」

優花里 「誰よりも心優しい西住殿があんなおぞましいことをする筈がありません」

華 「だとしたらテレビに映っていたのは……」

優花里 「それは……きっとボコのそっくりさんです!」

沙織 「いるのかな? そっくりさん」

優花里 「踏み込んだ話になりますが、ボコ殿には生き別れの親兄弟はいないのですか?」

ボコ 「分かんねえ」

ボコ 「そもそもどこで生れたかとんと見当がつかねえ。何でも薄暗い海の底でガォーガォー泣いていた事だけは記憶している」

優花里 「すみません……」

ボコ 「どうして謝るんだ?」

麻子 「ボコにとって親の顔を知らないのは当たり前のことなんだろう。十数年から二十数年親に養って貰う人間の方が生物としては特殊だ」

麻子 「それとプラウダに居たのはボコじゃない可能性は十分ある」

優花里 「どういうことでしょうか?」

麻子 「仮にもプラウダだ」

麻子 「ボコ相手にやられっぱなしとは考えにくい」

麻子 「プラウダは戦車保有台数でサンダースに次ぐ物量を誇る学校だ。戦えばボコだってタダでは済まないだろう」

ボコ 「オウ、オウ、オウ? オイラを舐めてんじゃねえぞ?」

華 「少し静かにして下さい」

麻子 「ボコが負傷すれば西住さんとの入れ替わりが起きるが、ボコは昼過ぎに私達と会ってから一度も入れ替わってない。とすると今プラウダに居るのはボコではない可能性がある」

麻子 「勿論仮説だ。真実は西住さんから話を聞くまでお預けだ」

麻子 「そしてもう一つ、プラウダがボコ達を倒せなかったことで重要な問題が出るぞ」

【大洗女子学園 生徒会室】

桃 「ウエエエエン!」

柚子 「こんなの……あんまりです」

杏 「だよねえ」

杏 (丁度寄港期間だし久しぶりに陸に上がろうか)

《文科省、大洗女子学園に対して再度廃校を通達》

今日はここまで。
前回更新分はプロットを書き始めて最初に思い付いた話なのに対し、今回はふと思い付いて追加しました。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【都内 文部科学省庁舎】

杏 「大洗は約束通り戦車道全国大会で優勝しました。なのに廃校とはどういうことですか?」

辻 「当時と状況が変わった。これは従来の統廃合を目的とした廃校では無い」

辻 「千葉に寄港地を持つ知波単。青森に寄港地を持つプラウダ。この2校が被害に遭ったということはボコラは東日本近海を回遊しているということだ」

杏 「ボコラ?」

辻 「政府は非公式に巨大海洋不明生物をそう呼称している。近々ニュースになって一般に広まるだろう」

辻 「話が少し逸れた。つまり茨城に寄港地を持つ大洗が今後被害に遭う可能性が高い」

杏 「なら一時的に寄港地を変更して航路も日本海か東シナ海にします。そもそも国が自衛隊を動かしてくれればここまで被害が拡大しなかった筈です」

辻 「動かすよ、君の望み通りにね」

杏 「だったら――」

辻 「住民が疎開した後、大洗に自衛隊を常駐させ現れたボコラを倒す」

杏 (!)

杏 「大洗が戦場になるんですか?」

辻 「そうだ」

辻 「あの生物は比較的知能が高いことが分かった。一度襲撃を受け、住民が避難した後の船にはもう手を出さんだろう。だから言い方は悪いが知波単やプラウダの学園艦では囮にはならない」

杏 (囮って……)

辻 「自衛隊が武器の無制限使用で戦闘出来るように全住民を予め疎開させる」

杏 「それって戦闘による学園艦の沈没も辞さないってことですか? 怪物が海に居る時に海自が潜水艦で攻撃すればいいじゃないですか!?」

辻 「自衛隊の防衛出動は総理から下命されるしその運用は防衛省の管轄だ」

辻 「文科省の私が決められることではないし、ましてや君が口を挟むことでは無い!」

辻 「それにこうしている間にもボコラが大洗を襲撃する可能性がある」

辻 「疎開が遅れたことで学園艦から犠牲者が出た場合、君はどうやって死没者や遺族に詫びるつもりかね?」

【大洗学園艦 講堂】?

みほ (大洗が廃校……)

華 (全校生徒に告げる前にまず戦車道履修生だけに伝えたかったのですね)

梓 「私達の戦いは何だったんですか? 学校が無くならない為に頑張ったのに」

杏 「言いたいことはあるだろうがここに怪物達が現れてからでは遅い」

杏 「プラウダでは人肉の味を覚えた怪物達によって知波単の時より悲惨なことになったそうだ」

あや 「プラウダが勝てなくても隊長なら――」

杏 「プラウダが50両投入して一体も倒せなかった奴らを大洗の8両だけで殲滅させられると思うか?」

杏 「私は……自分が意地を張ったせいで、この学園艦の人間が怪物に追い詰められて甲板から身投げしたり、生きたまま食われたりするところを見たくない」

杏 「済まなかった」

優花里 (全長7kmを超える学園艦です。自衛隊の火器使用でも沈まないことを祈りましょう)

優花里 (しかしながら自宅や大勢の方々の家や建物が全壊するのは辛いです。校舎も残るのでしょうか?)

【某県 避難所】

ノンナ 「黙祷、止め」

プラウダ隊員A 「グスッ……」

プラウダ隊員B 「ウウウ……」

カチューシャ 「みんな辛いとは思うけど今は耐えなさい」

カチューシャ 「プラウダを奪還するまでの辛抱よ」

プラウダ隊員C 「……耐えてどうするんですか?」

プラウダ隊員C 「どんなに耐えたって、例え学校を取り戻したって、もう妹は帰って来ません……」

カチューシャ 「同じ思いをした人間はここにも大勢いるわ。冷たいかもしれないけど、ここは自分のことだけ話す場じゃない」

プラウダ隊員C 「ウウ……」

プラウダ隊員D 「隊長、プラウダ奪還ってまたあの生き物と戦う気?」

カチューシャ 「当たり前じゃない。あいつ等から受けた屈辱は3倍にして返してやるわ。あいつ等をボコボコにしてピロシキの中のお惣菜に詰めてやるのよ」

プラウダ隊員D 「私は……もう嫌だ。あいつ等相手に戦いたくなんかない」

カチューシャ 「好きにすれば? カチューシャのプラウダに腰抜けは必要無い」

プラウダ隊員D 「そんな言い方!? 私だって自分の命の値踏み位したいわよ!」

カチューシャ 「何? 文句あるの?」

プラウダ隊員E 「私からも言いたいことがあるわ」

プラウダ隊員E 「元はと言えばフラッグ車がいきなり撃破されたのが原因じゃない」

カチューシャ 「口答えする気?」

プラウダ隊員E 「あんたと私は同期よ。多少のことは言わせて貰うわ」

カチューシャ 「あの時点で二重包囲は完成してたし、敵の遊撃は足止めしたわ。誤算だったのは連中の回復力の高さだけよ。それから……」

カチューシャ 「カチューシャのことは隊長と呼びなさい!」

プラウダ隊員E 「ならば隊長……」

プラウダ隊員E 「フラッグ車の生き残りが隊長だけだったのは何故ですか?」

カチューシャ 「それは……」

プラウダ隊員E 「自分だけ真っ先に逃げ出しといて何が隊長よ」

プラウダ隊員A 「知波単の隊長は跪いて泣きながら遺族に懺悔したんだって」

プラウダ隊員B 「それに引き換えうちの隊長は……」

プラウダ隊員D 「こんな人の為にクラーラさんは……」

ノンナ 「全員その位にしなさい」

ノンナ 「カチューシャが寛大なうちに詫びを入れるべきです」

カチューシャ 「そうね……今なら土下座すれば許してあげるわ」

プラウダ隊員C 「ちびっ子隊長が……」

カチューシャ 「言ったわね! それを言ったらシベリア送りよ!」

プラウダ隊員C 「ふざけるな……」

プラウダ隊員C 「ふざけるな、妹を返せ!」

プラウダ隊員F 「そうよ、悪いのは隊長よ!」

プラウダ隊員G 「革命よ!」

プラウダ隊員H 「革命だわ!」

プラウダ隊員D 「元凶の独裁者を引きずり下ろせ!」

カチューシャ (え、大勢こっちに殺到して来る!?)

ノンナ 「排除します」

ゴスッ!

プラウダ隊員C 「キャッ!」

ドゴッ!

プラウダ隊員A 「ゴフッ!」

ノンナ (数が多すぎる……)

プラウダ隊員F 「捕まえた!」

プラウダ隊員D 「日頃の恨みよ」

カチューシャ 「放せぇ! 放しなさい!」

ノンナ (カチューシャが捕まった!)

バキッ! ビシッ!

プラウダ隊員D 「ギギィ……」

プラウダ隊員F 「痛っ……」

ノンナ (カチューシャを放しなさい!)

ゴスッ!

ノンナ 「グゥッ!?」

ノンナ (後ろから?)

プラウダ隊員I 「ノンナさんが
悪いんですよ」

プラウダ隊員B 「エイッ!」

ドゴッ!

ノンナ 「グッ!」

プラウダ隊員j 「ヤアッ!」

バキッ

ノンナ 「アガッ……」

カチューシャ 「ノンナッ!」

カチューシャ (いくらノンナでも多勢に無勢)

ノンナ (このままではカチューシャを守れない……今ここで取れる行動、取るべき行動は……)

ノンナ 「……」

カチューシャ (ノンナ、あなた大馬鹿者よ……)

カチューシャ (カチューシャを地面に踞らせてからその上に覆い被さって、カチューシャを庇って……)

カチューシャ (カチューシャの分まで皆にボコボコにされて……)

カチューシャ (そういえばカチューシャがノンナに膝枕するのは初めてね)

カチューシャ (ねえノンナ、私達二人だけになっちゃった)

カチューシャ (カチューシャってこんなに……)

コツ、コツ、コツ……

カチューシャ (足音……)

ニーナ 「……」

アリーナ 「……」

カチューシャ (ごめんねノンナ、少し待ってて)

カチューシャ 「何よ、まだ気が済まないの」

カチューシャ 「カチューシャが相手になってあげるわ」

カチューシャ 「そのかわり……」

カチューシャ 「ノンナには指一本触れさせないんだから!」

アリーナ 「隊長、済まねえだぁ」

ニーナ 「許してけろ」

アリーナ 「皆がおっかのぐて隊長が最後までクラーラさん助けようとしたごど言えなかったじゃ」

ニーナ 「二人が心配で……人の居のぐなたのば見計らって戻って来ますたぁ」

カチューシャ 「あなた達……」

カチューシャ 「後で思いっ切り軽蔑してやるからノンナを運ぶのを手伝いなさい。医者に診せたいのよ」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【大洗学園艦 校内 生徒会室】

杏 「それで大洗を頼って来た訳?」

カチューシャ 「そうよ。カチューシャ達の大洗短期入学、あなた達にとって悪くない話よ」

桃 (プラウダがそんなことになっていたとは)

柚子 「それでノンナさんボコみたいに包帯だらけ……ごめんなさい」

ノンナ 「いえ、気にしないで下さい」

杏 「『悪くない話』って具体的に何を指すのかしら?」

カチューシャ 「あなた達は大洗に居ながらにしてカチューシャの戦術を学ぶことが出来るわ」

杏 「プラウダの基本戦術はある程度戦車の数が揃ってることが前提だからウチ向きじゃないし、そもそもうちは西住ちゃんがいるからね」

カチューシャ 「ぐぬぬ……でもノンナの砲手の腕は欲しいでしょ?」

杏 「来年も居てくれれば助かるけど高3だから今年度で卒業しちゃうでしょ?」

カチューシャ 「ぐぬぬ……なら戦車は欲しくない?」

桃 「戦車?」

カチューシャ 「ノーマークだった今年と違って来年の大会では各校が大洗対策を練ってくる」

カチューシャ 「その時に大洗が突かれるのは戦車の絶対数が足りないところ。特に重戦車が少ないのは弱みよ」

カチューシャ 「カチューシャ達を受け入れればIS-2が手に入るわ」

柚子 「持って来たんですか?」

カチューシャ 「そうよ」

桃 「よく持って来れたな」

カチューシャ 「このカチューシャに不可能なんて無いわ」

【継続高校 連絡船】

ミッコ 「プラウダのおかげでソ連製戦車が選び放題だよ」

アキ 「プラウダの隊長太っ腹だね。大洗にIS-2を1両と隊長他数名を送り届けたら好きな戦車持っていっていいって」

ミカ 「倉庫の鍵もこうして貰えた」

アキ 「ただ、IS-2をこの連絡船に載せる為にプラウダに寄った時、流石に誰もいなかったね」

ミッコ 「怪物のせいでみんな疎開したんだよ」

アキ 「そう思うと戦車が手に入るからってはしゃいでられないね……」

ミッコ 「借りた戦車は大事に使わせて貰おう」

アキ 「そうだね」

ミカ (人だけでなく怪物達も忽然と姿を消していた。怪物達が次に現れるのはどこだろう?)

【大洗学園艦 校内 生徒会室】

カチューシャ 「廃校!?」

ノンナ 「廃校は取り消しになったのでは?」

杏 「それがね、再度通達が来て……」

カチューシャ 「そうだったの……」

杏 「そう……疎開をさせるということはその人の生活を奪うっていうことだ。簡単に言わないで欲しいなあ」

カチューシャ 「会長、文科省との交渉内容とあんた達の目的が知りたい」

杏 「交渉? そんなものは無い。命令され従った。私達の目的は『全てを失わない為に命令に従う』だ」

カチューシャ 「それは分かるけど……そんな馬鹿共に大人しく学校を明け渡していいのか、会長?」

杏 「あ?」

杏 「バカだが最高権力者共だ。あんたらだって服すら着れねぇバカに食い殺されてんじゃん」

柚子 「会長!」

カチューシャ 「なるほど、確かにそうね。でも私達はボコラを殺すこともできる。ボコラと同じだ。どうせ廃校になるなら試してみればいい」

カチューシャ 「自力でのボコラ撃破を」

杏 「駄目だ」

カチューシャ 「何故?」

杏 「失敗して死ぬ生徒が増えるだけだ」

カチューシャ 「今回は随分諦めがいいのね」

杏 「次はこっちが話を聞かせて欲しい」

杏 「プラウダで何があったか」

カチューシャ 「分かったわ」

柚子 「ボコラってどれ位大きいの?」

カチューシャ 「100メートルちょっとよ」

桃 「何!? 私は学園艦を跨いたと聞いたぞ?」

カチューシャ 「いや、そこまでデカくなかった」

杏 「どんな顔してたの?」

カチューシャ 「顔はそれぞれ違っていて……ウプッ……」

柚子 「みんな、もう質問は止そう。思い出したくないこともあるでしょう」

杏 「すまん、色々聞いてし――」

カチューシャ 「違うわ!」

カチューシャ 「カチューシャに言わせればボコラなんてのは大した事無い。カチューシャは大洗に入ってボコラを粛清する」

カチューシャ 「その為にノンナ達とIS-2をあなた達にやるわ」

杏 「は?」

ノンナ 「カチューシャ!?」

カチューシャ 「但し、条件を3つ受け入れなさい」

カチューシャ 「1つ。大洗女子学園は今後プラウダと共に文科省やボコラに刃向うこととする」

杏 「な…!? 戦争始めようって言ってんの!?」

カチューシャ 「2つ。大洗女子学園はカチューシャ達を心の底から信用すること」

杏 「信用? 最近じゃ冗談を言う時にしか使われない言葉だと思えるようになったよ?」

カチューシャ 「カチューシャは今あんたと……角谷杏と話をしているの。あんたの生き方を聞いてるのよ。あんたはどんな奴なの? あんたの生徒と街の住民を死なせて敗北するか。国家権力と化物を相手に戦うか。どうせ正解なんか分かりゃしないわよ。あんたの好きな方を選びなさい」

杏 「は……素人が。条件を全て聞かずに契約するバカはいないって」

カチューシャ 「おっと失礼。3つ目よ。私とノンナは昼休みを長く取らせなさい」

杏 「えっ? 何で?」

ノンナ 「お昼寝の時間を確保する為です」

杏 「あんた、私よりも欲が深いらしい。気に入ったよ」

カチューシャ 「あんたは頭がいい」

杏 「交渉成立ね」

ノンナ 「これで新しい居場所が出来ました」

カチューシャ 「ねえ、ノンナ」

ノンナ 「はい」

カチューシャ 「ミホーシャも同じ気持ちだったのかな」

ノンナ 「そうですね……」

ノンナ 「気にしているのですか?」

カチューシャ 「そんなんじゃないわよ! 只……」

ノンナ 「只?」

カチューシャ 「今更ながらあの子は強いと思ったのよ」

カチューシャ 「今、カチューシャにはノンナがいる。アリーナとニーナもついて来てくれた」

カチューシャ 「それに対しミホーシャはたった一人で黒森峰から大洗に転校してきた」

ノンナ 「確かにみほさんの強さは賞賛に値します。しかし今のカチューシャと当時の彼女との間には決定的な違いがあります」

カチューシャ 「それって?」

ノンナ 「みほさんは人の死を背負わずに済みました」

カチューシャ (……)

ノンナ 「それは彼女自身の英断の結果によるもので、それと引き換えに彼女は失った物も多かったですが……」

ノンナ 「少なくとも人の死を背負わずに済んだいう点においてはみほさんは私達よりも救われていると言えます」

ノンナ 「だからこそ今、私は思えるのです。昨年みほさんが黒森峰の勝利よりも仲間の救助を優先させたことを」

ノンナ 「『良かった』と」

ノンナ 「みほさんも彼女の運命蹉跌となった私達にだけはそんなこと言われたくないでしょうけど」

カチューシャ 「そうね、私達があの時のミホーシャの行動を讃えても皮肉にしかならないわ」

ノンナ 「はい」

カチューシャ (去年の全国大会で黒森峰のフラッグ車車長だったミホーシャは、川に転落した仲間を助ける為に戦車を降り、その隙を突いて私は車長不在の黒森峰フラッグ車を撃破した)

カチューシャ (ルールの範囲内で戦った。審判からもお咎めは無かった)

カチューシャ (只、その結果あなたはずっと辛い思いをしたのね、ミホーシャ)

カチューシャ (今まで負けた相手のことなんて考えもしなかったのに……)

【大洗学園艦 戦車倉庫】

アリーナ 「装填手から操縦手に転換かぁ」

ニーナ 「KV-2からIS-2に戦車ば変わるから砲弾は軽ぐのらばって、装填手と通信手兼任だぁ」

カチューシャ 「ノンナ!? このIS-2のエンブレムは何!?」

ノンナ 「イカです」

カチューシャ 「それは見れば分かるわよ! カチューシャが言ってるのはどうしてイカなのかってこと!?」

ノンナ 「大洗のフラッグ車のエンブレムはあんこうです。インパクト負けしない為にもこの位はしないといけません。それともカチューシャは……」

ノンナ 「イカが嫌いですか?」

カチューシャ 「嫌いじゃないわよ」

ノンナ 「なら問題ありませんね」

カチューシャ 「ちょっと、話は終わってないわよ!? ノンナ!」



こうして、火力、装甲共に大洗最強を誇るイカさんチームが誕生した。

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【大洗学園艦 校舎 食堂】

華 「みほさんを前にして言い辛いことですが……」

華 「ボコがみほさんの身体に興味を示していないか気になります」

みほ 「種族が違うから大丈夫とは思うけど」

華 「会話や行動から察するに彼の精神年齢は第二次性徴期の少年のそれです」

華 「つまり異性の身体を最も意識する年頃です」

優花里 「西住殿、もっと危機感を持って下さい」

優花里 「西住殿の魅力は種の違いすら凌駕するものです」

みほ 「大袈裟だよ、二人とも」

沙織 「大袈裟じゃないよ」

沙織 「以前ニュースになってたけど、撮影でヌードモデルに抱っこして貰ったアライグマが、それ以来人間の女性の胸に異常に興味を示すようになったんだって」

麻子 「どんな撮影だか」

沙織 「只の広告!」

【大洗学園艦 みほ寝室】?

ボコ 「ん……」

ボコ (……また入れ替わったか)

ボコ (オイラそっくりのぬいぐるみ……。ぬいぐるみは沢山あるのに、あいついっつもこれ抱いて寝てるよな)

ボコ (ところどころほつれてるし、何年使ってんだ? どんだけ好きなんだよ)

ボコ (何だ……? 何で今日はこいつブラ付けて寝てんだ?)

ボコ (取り敢えず日記読まねえと)

ボコ (オイラとみほが入れ替わりの間に起きた出来事を情報共有する為の日記)

ボコ (どれどれ……新しい情報は………)

ボコ (!?)

【大洗学園艦 通学路】

優花里 (あれは西住ど……あの走り方はボコ殿ですね)

ボコ 「ハヒッ、ハヒッ、ハヒッ、ハヒッ……」

優花里 「おはようございます。どうしたんですか? そんなに慌てて」

ボコ 「優花里ッッ!」

優花里 「ヒャイ!?」

優花里 (顔が近いです。それに何ですかその真剣な表情は!?)

ボコ 「今朝、みほとの交換日記読んだらよ……」

ボコ 「廃校ってどういうことだよ?」

【大洗学園艦 校舎 教室】

ボコ 「チキショウ、オイラが居ながらこんなことに……」

ボコ 「こうなったら入れ替わりが解けた後、オイラが東京に乗り込んで……」

華 「止めて下さい」

ボコ 「このままじゃ学校無くなっちまうんだろ!? 悔しくねえのかよ?」

華 「そんなことをしても余計ややこしくなるだけです」

沙織 「ここ教室だよ。他の子も居るんだからもっとみぽりんらしく喋って」

ボコ 「うるせえっ!」

卜ンッ!

沙織 (麻子がペットボトルを持った手でボコの肩を叩いた?)

麻子 「まずは君か落ち着け」

【大洗学園艦 校舎 空き教室】

華 「あなた自身が手を染めていないことは理解した上で言います。元はと言えばあなたの同族が引き起こしたことです」

ボコ 「それは分かってる」

ボコ 「オイラもみほもあいつ等を止めようとしてるが上手くいかない」

沙織 「そもそもどうして人間を食べるの?」

ボコ 「あいつ等『旨い物を食うのにいちいち理由が居るか?』って言ってた」

麻子 「私達は餌か……」

優花里 「せめて『いつ』『どこに』現れるか分かればいいのですが」

沙織 「ボコ、次の襲撃スケジュールを聞き出せる?」

ボコ 「それは……無理だ。オイラ達はそこまで計画的に日々を過ごしてない」

ボコ 「海の中はカレンダーも無いし毎日夏休みみたいなもんだぜ」

ボコ 「あいつ等が学園艦を襲ったのもたまたま学園艦を見つけたからで、綿密な計画を立てた訳じゃない。そもそもオイラもあいつ等も学園艦の航路を知らない」

麻子 「駄目か……」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【大洗学園艦 校舎 生徒会室】

柚子 「大洗を廃校から救う為にやることは2つね。1つは大洗をボコラから守ること。もう1つは文科省から廃校取り消しを勝ち取ること」

桃 「ボコラさえ倒せば文科省は大洗を廃校にする口実を失う。実質目標は1つじゃないのか?」

杏 「ボコラの襲撃が廃校日より後だといくらボコラ迎撃作戦を練っても水の泡なんだよねー」

桃 「言われて見ればそうですね……」

柚子 「桃ちゃんはどっちをやる?」

桃 「両方だ、両方進めよう」

杏 「決まりだね、まあ、私でもそう言うよ」

桃 (会長が生き生きしている。大洗の廃校が決まってからは少し様子がおかしかった)

桃 (亡命して来たプラウダの元隊長と話してた時も言葉が辿々しいというか、いつもの会長じゃなかった)

桃 (カチューシャが会長の心に火を点けてくれたんだ、感謝しないとな)

杏 「河嶋ぁ、何ニコニコしてる?」

桃 「何でもありません!」

【大洗学園艦 通学路】?

ボコ 「優花里、これからエクレール行かねえか?」

優花里 「止めましょう」

優花里 「西住殿が気にしてました。体重が増え過ぎないようにしたいって」

ボコ 「そうか……分かった。あいつに悪いもんな」

優花里 (今日はボコ殿と入れ替わってますが、こうして西住殿と下校出来るのも何時まででしょう? 生徒会は学園艦存続に向けて動いていると言いますが……)

ボコ 「なあ、優花里」

優花里 「何ですか?」

ボコ 「オイラとのデートの約束だけど……あれ、優花里はまだオイラとみほの入れ替わりを知らずに誘ったんだろ?」

優花里 「ええ……」

ボコ 「安心しろ」

ボコ 「当日入れ替わっててもちゃんとオイラが相手してやるぜ」

優花里 「ハハ、それはどうも……」

ボコ 「優花里、お前、これから頑張れよ」

ボコ 「オイラも出来る限りのことをする。只……」

ボコ 「オイラはみほと一緒に行動出来ねえんだ」

ボコ 「その時はお前があいつを支えてやれ」

優花里 「ボコ殿……」

優花里 「勿論です!」

【大洗学園艦 みほ寝室】
みほ (向こうでボコられてこっちに戻って来たらもう夜中か……。これからお風呂に入って……)

や~ってやる♪
や~ってやる♪
や~ってやるぜ~♪

みほ (電話の着信?)

みほ (誰から? ……お姉ちゃんからだ)

みほ 「もしもし」

まほ 「私だ」

みほ 「どうしたのお姉ちゃん?」

まほ 「どうもこうもない」

みほ (お姉ちゃん少し怒ってる?)

まほ 「お前にだって言いたいことはあるだろう」

まほ 「たが、お母様だって好きでお前を勘当した訳じゃない」

まほ 「だからこそ今日、お母様はお前に電話をかけたんだ」

みほ (今日、電話があったんだ。入れ替わってる間に)

みほ (もう、嫌な予感しかしない)

まほ 「きっとお母様も大洗が廃校になると知って居ても立ってもいられなくなったんだ」

みほ 「知ってたの?」

まほ 「西住流家元ともなれば色々情報も入って来るだろう」

まほ 「その時お前とお母様の間でどんなやり取りがあったか詳しくは知らん。私もお母様から話を聞かされただけで。だが……」

まほ 「『うるせーババア!』と言って電話ガチャ切りは無いだろう」

みほ 「!?」

まほ 「お母様はカンカンだぞ。『二度とみほには家の敷居を跨がせない』と言っている」

みほ (やっぱりボコが電話に出たんだ!)

まほ 「みほ、聞いているのか、みほ?」

みほ (ああ……そんな……)

みほ (お姉ちゃんとの電話が終わってから交換日記を読んでみたら……)

みほ (何が『お前はもっと堂々としてればいい』よ!)

みほ (余計なことして!)

みほ 「私の人間関係勝手に変えないで!」

ボコ 「そんなんだからお前は甜められるんだよ」

みほ 「ボコだって甜められっぱなしじゃない」

ボコ 「オイラは甜められちゃいねえよ! ふざけたことばっか言ってるとお前がいつも抱っこして寝てるぬいぐるみに落書きすっぞ!」

みほ 「そう……。それやったらオッドボールの刑だから」

ボコ 「頼むからそれだけはマジで止めて」



ボコ (でもその後オイラがオッドボールにされることは無く、優花里とのデートも実現せず、何故かもう二度と、オイラとみほとの入れ替わりは起きなかった)

今日はここまでですが話自体は今後も続きます。起承転結の承が終わったところです。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【太平洋 東日本沖】

ボコ (入れ替わりが途切れ、連絡の取りようも無く、だからオイラは直接みほに会いに行くことにした。あいつに会ってみたかった。でも―― 詳しい場所はわからない。手掛りは町の風景だけ)

ボコ (兎に角、どデカい船を見つけたら乗り込んでやるぜ)

【大洗学園艦 住宅街】

ボコ (でっかい船を見つけて甲板までよじ登ってみた……)

ボコ (間違いない……この校庭、周りの景色、この高校だって、はっきり覚えてる!) 

ボコ (なのに……町が瓦礫の山。それに誰もいない)

ボコ (ひょっとしてもう廃校になって艦の解体作業が始まってるのか)

ボコ (そんな……オイラは間に合わなかった?)

ボコ (大洗の皆は? 戦車道の仲間は?)

ボコ (お別れすら言えなかった……)

久子 「あんたぁ!」

ボコ (あれは麻子の婆ちゃん!)

ボコ (大洗に住んでるだと? 引っ越したのか?)

ボコ (改めて見ると人間の図体って小せえなあ)

久子 「どの面下げて現れたんだい?」

ボコ 「え?」

ボコ (そっか、麻子の婆ちゃんはオイラが人間食わないことを知らないんだ)

ボコ 「オゥ、オゥ、オゥ言ってくれるじゃねえか」

ボコ 「オイラは何もやってねえぜ」

ボコ 「オイラがこの姿でここに現れたのは今日が初めてだ」

久子 「実際この目で見るまでは半信半疑だったけど本当に喋るんだね。そんなことより……」

久子 「3ヶ月前にここをメチャクチャにしといて今更しらばっくれる気かい!?」

ボコ (3ヶ月前?)

久子 「あれから生き残った人間は皆、本土に避難したよ」

久子 「私は被災者の一時帰宅許可が出た時に遺族として本土からここに来て……帰りの船に乗らずに姿を晦ましたのさ」

久子 「それからは誰もいないスーパーやコンビニで缶詰やらペットボトルやらを拝借して暮らしてる」

久子 「悪いことだとは思ってるさ。只せめてここで孫娘を弔いながら最期を迎えたいんだよ。子供にも孫にも先立たれた天涯孤独の年寄りの最後の我儘さ」

ボコ (麻子が死んだ!?)

ボコ 「弔うって……死んだのか?」

久子 「私は聞いたんだよ。麻子の友達……沙織の嬢ちゃんが……同じ戦車に乗っていながら自分だけ生き残ってしまって申し訳ないって」

ボコ 「!」

久子 「こっちが見てられなかった……。その娘も自殺した。顔に残った火傷の跡を気にしてね、まだ若いのに可哀想に……」

ボコ (あんこうチームが全滅!?)

久子 「麻子やあの子の友達が何をしたって言うんだい? うちの孫娘は遅刻や居眠りこそ多かったけど……」

久子 「熊の姿をしたバケモノに生きたまま喰い殺されなきゃいけない程、罪深くはなかった筈だよ!?」

ボコ 「!?」

ボコ 「知らねぇ……オイラは人間なんて食ってねぇ。何も知らねぇ!」

久子 「待ちな」

久子 「私を食っていきな」

ボコ (何言ってんだ……)

久子 「麻子……。痛かったろうに、怖かったろうに……」

久子 「私に出来ることといったら、せめてあの子と痛みや苦しみを分かち合うこと位だよ!」

久子 「それとも、年寄りなんて食いたくないとでも言うのかい!?」

久子 「逃げ惑う人間や命乞いする人間をこれまで散々喰い殺してきたんだろ?  今更一人増えたところでどうってこと無いだろ! お前らはただの人殺しだ。何の罪も無い人を大勢殺した大量殺人鬼だ! この世界を地獄に変えたのはお前らなんだぞ! わかってんのか人殺しが!」

ボコ (く、狂ってる……来るな!)

ズシン、ズシン、ズシン、ズシン、ズシン

久子 「待てえええッ! 逃げるなあああ!」

久子 「私も殺せえええッ!」

久子 「私も麻子と同じ様に死ぬんだああああッ!」

ボコ 「ハヒッ、ハヒッ、ハヒッ……」

ボコ (負けたことはあっても逃げたことの無いオイラが……生まれて初めて逃げちまった……)

ボコ (オイラが麻子を食った? 大洗を襲った?)

ボコ (そしてあんこうチームは皆死んだ……?)

ボコ (そんなことない! きっと麻子の婆ちゃん、ボケておかしくなっちまったんだ)

ボコ (……でも町には人っこ一人居ない。学園艦解体の為なら、たとえ住民は居なくなっても産廃業者や最低限の作業員は残るだろ)

ボコ (それにこの大量の瓦礫。街中で試合したにしてもここまで酷いことにはならねぇだろうし……)

ボコ (そうだ! あの場所に行けば確認出来る)

【大洗学園艦 大洗女子学園女子寮】

ボコ (ここだったな)

ボコ (さっき麻子の婆ちゃんが一時帰宅があったって言ってた)

ボコ (もしみほが無事なら部屋を綺麗にしてから引き払ってる筈だ)

ボコ (この身体じゃ中に入れねえ。すまん、みほ。天井壊すぞ)

バリバリバリバリバリバリバリ!

ボコ (みほの部屋は……)

ボコ (残ってる……部屋の中の物が全部残ってる!)

ボコ (あいつなら最低限ボコグッズは持っていく筈だ。それがそっくりそのまま残ってるってことは……あいつが寝る時にいつも抱いてるぬいぐるみまで残ってるってことは……)

ボコ (やっぱり、みほは死んだのか……)

ボコ (ここ最近入れ替わりが起きなかったのもそのせいだったんだ)

ボコ (きっと優花里も、華も……)

ボコ (麻子の婆ちゃんが言ってたことは本当だったのか)

ボコ (オイラは取り返しのつかないことをしちまった。なのに……)

ボコ (何でオイラはそんな大事なこと覚えてないんだ……?)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

ボコ (麻子の婆ちゃん、前にみほの姿で会った時は人のいい婆ちゃんだと思った。それが鬼のような形相で半狂乱になって……)

ボコ (以前、ニコニコしながら話してたのが嘘みてえだ)

ボコ (『より集まって、形を作って、捻れて絡まって、時には戻って、また繋がって。それがムスビ。それが時間』)

ボコ (『水でも、米でも、酒でも、人の体に入ったもんが魂と結びつくこともまたムスビ』)

ボコ (!)

ボコ (オイラの身体に入ったもんが魂と結びつくなら、それが入れ替わりを引き起こしたなら……)

ヒョイ

ボコ (ちっこいから摘むの難しいな……)

ボコ (あいつがいつも抱いて寝ていたオイラそっくりのぬいぐるみ)

ボコ (時間が……ずれてた?)

ボコ (あいつの汗と匂いを何年もかけて吸い続けたあいつの半分……。ムスビ。本当に時間が戻るんなら。もう一度だけ……っはぁっ!)

パクッ

ボコ 「ぬあぁっ!……はっ! オイラ!」

ボコ (目まぐるしく景色が変わっていく!)

ボコ (これは……みほの記憶か……)

ボコ (産まれたばかりのみほ)

しほ 「あなたの名前はみほ」

常夫 「まほ、みほ、二人は父さんの宝物だ」

ボコ (大洗に来る前のみほ)

みほ 「勝てなかった……」

しほ 「貴方がそんなことでどうするのです」

みほ 「戦車道など続けたところで」

しほ 「黒森峰敗退の戦犯が何を言う!」

みほ 「私が愛したのは共に戦車道に励む仲間です。西住流ではありません!」

しほ 「出ていけ!」

みほ (さようなら……私はもう戦車に乗りません)

しほ 「まほ、今日からずっと母と二人で西住流を守るのです」

まほ 「はい、お母様」

ボコ (大洗に来たみほ)

みほ 「『オイラ、ボコだぜ』って本当にあのボコなの?」

みほ 「自惚れないで、彼女も居ないくせに」

ボコ (この記憶は……)

みほ 「ボコ……ボコ……ボコ……!」

ボコ 「え……?」

みほ 「あの、私。あー……覚えて……ない?」

ボコ 「……誰? お前」

みほ 「はっ……!」

みほ (ボコなのに……)

ボコ (誰? 変な人間)

みほ 「あぁ……」

ボコ 「あのさあ! あんたの名前……」

みほ 「みほ! 名前は、みほ!」

ジークン 「何、知り合い?」

ボコ 「いいや」

ドーラ 「だったらあいつ等食っても文句言うなよ」

ボコ 「好きにしな」

沙織 「みぽりん、気持ちは分かるけど……」

麻子 「腹を括るんだ。あれは西住さんの知ってるボコじゃない」

華 (みほさんを悲しませたこと、高くつきますよ、ボコ)

優花里 (以前ボコ殿が自分に言った『その時はお前があいつを支えてやれ』という言葉は……)

優花里 (これだったのですか……)

みほ 「相手が硬いです。もっと接近します」

沙織 「レオポンさんチーム撃破されました!」

優花里 「大洗だけでの事実上の殲滅戦。分が悪いです」

華 「諦めてはいけません」

麻子 「そうだ。誕生日が命日なんて洒落にならん」

みほ 「はい、勝って麻子さんのお誕生日会です……撃って!」

ドゴォン!

エリガン 「グアッ!」

華 「命中! ……まだ動いてます」

みほ (もっと接近しないと……)

みほ 「!」

みほ 「麻子さん、右に避けて!」

麻子 (間に合え!)

キュラキュラキュラキュラ!

ドオオン!

ジークン (躱したか)

麻子 (ギリギリ避けた。あの石投げてくる奴厄介だ)

ドグシャアッ!

バラバラバラバラバラ!

麻子 (今度は家屋の破片か!)

優花里 「西住殿!」

沙織 (まさか今のでキューポラから頭を出していたみぽりんが!?)

ドゴオッ!

優花里、沙織、華、麻子 「キャアアアッ!」

ボコ (景色が真っ暗になった……)

ボコ (戦車から投げ出されて気絶したのか……)

ボコ (景色が復活した)

ボコ (あれはオイラ!?)

ボコ (何でオイラが華を食ってんだよ!)

ブチブチィ!

ボコ (ああ、オイラが華の下半身を食い千切ってる……)

みほ 「お母様……お姉ちゃん……」

みほ 「私は何も……なんっにも出来なかったよ!」

みほ 「うあああああああ!」

優花里 「そんなことありません、西住殿」

優花里 「西住殿聞いて下さい。伝えたいことがあります」

優花里 「私と一緒にいてくれてありがとうございます」

優花里 「私に戦車道を教えてくれてありがとうございます」

優花里 「私とデートに行ってくれてありがとうございます」

みほ 「デートなんていくらでもしてあげるよ」

みほ 「現世(これまで)も」

みほ 「常世(これから)も」

ボコ (オイラがみほと優花里をいっぺんに捕まえた……ああ!)

ボコ (止めろぉぉおお!)

バクンッ!

ボコ (3ヶ月前のあの時、まだお前を知る前……!)

ボコ (お前はあの時、オイラに食われたんだ!)

ボコ (優花里も、あんこうチームの他の面子も……)

ボコ (この後……入れ替わったら……)

ボコ (今度は絶対に死なせるもんか!)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【大洗学園艦 演習場】

華 「優花里さんが気を失ったみほさんを咄嗟に受け止めてくれてホッとしました」

麻子 「まあ、入れ替わりだろう」

沙織 「ゆかりん、みぽりんのことお願いね」

優花里 「任せて下さい」

優花里 (気を失った西住殿、こうして抱き抱えていると本当に愛らしい寝顔で……)

優花里 (普段、戦車の中では凛々しい西宮殿ばかり見ているので新鮮です)

華 「ボコにも困ったものです。こうして紅白戦の最中に入れ替わられても面倒ですね」

麻子 「気持ちは分かるが、考えようによっては4号という密室内で入れ替わってくれるのは不幸中の幸いだ」

華 「みほさんの秘密を守る上では確かにそうですね」

ボコ 「ハッ!」

優花里 「入れ替わったようです」

ボコ 「はああぁっ……みほだ……生きてる……」

優花里 「どうしたんですか、ボコ?」

沙織 (何か様子が変?)

ボコ 「はあああぁ……優花里……生きてる! 優花里いいっ!」

ガシッ!

優花里 「ひっ!? ひいいいいいっ!」

華 「優花里さんに何してるんですか!? 離れなさいスケべべア!」

ボコ 「優花里ィ……優花里ィ……良かったあ……」

優花里 (西住殿に名前を呼ばれながら骨も折れんばかりに抱き締められてます……これで中身がボコでなければ……)

麻子 「こっちは操縦で手が放せない。沙織、何とかしてくれ」

沙織 「ボコ、何があったの?! 落ちついて。ホラ鼻水出てるよ……。ゆかりんは鼻血出てる!」

ドオオン! シュポッ!

麻子 (やられた……)

ノンナ 「命中……赤組フラッグ車からの白旗を確認」

カチューシャ 「ハッハッハッ! 紅白戦は私達白組の勝ちね。カチューシャの戦術をもってすればこんなものよ!」

ノンナ (あんこうチーム、こちらの動きに気づかなかったようですが何かあったのでしょうか?)

左衛門佐 「紅白戦はイカさんチームをフラッグ車とした我ら白組の勝ちか」

エルヴィン 「彼女らの加入で紅白戦の組み合わせのバリエーションが増えた」

おりょう 「この前のIS-2、ポルシェティーガー、我ら三突の3両とそれ以外の6両の紅白戦は面白かったぜよ」

左衛門佐 「さらにノンナ殿の指導で大洗の砲手は皆腕を上げているし、戦力以外の部分でも頼りになる」

カエサル 「まさかカメさんチームの砲撃精度も上がったのか?」

左衛門佐 「前言撤回……」

沙織 「落ち着いた?」

ボコ 「そんなことより! このままだと……」 

ボコ 「みんな死ぬ」

優花里、沙織、華、麻子 (えっ!?)

ボコ 「だからオイラ達で!」

沙織 (ショッキングな話聞かされちゃった)

華 「つまり、このまま学園に残れば私達は全員死ぬと?」

ボコ 「そうだ。死にたくなければお前ら早くここから避難しろ」

麻子 「その話が本当だという証拠は?」

ボコ 「証拠は無い……でもオイラは見たんだ! 人が居なくなった学園艦を。さっき話した通りお前の婆ちゃんにも会った」

麻子 「にわかには信じられない」

華 「もし貴方の話が本当なら、貴方は同族を裏切ってまで私達を助けようとしていることになります。そこまでする動機は何ですか?」

ボコ 「動機もヘッタクレもねえ! お前らの為に言ってんだぞ、分からずや!」

優花里 「ボコ殿」

ボコ 「?」

優花里 「私はこの学園艦で生を受け、今日まで生きて来ました」

優花里 「物心ついてから今まで、この大洗には沢山の思い出が詰まっています」

優花里 「ボコ殿はその私に、戦わずに生まれ故郷を捨てて逃げろと言ってるのです」

優花里 「納得のいく説明をして下さい」

沙織 「ゆかりん……」

久し振りの投稿ですが今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

>>174でミスがあったので以下と差し替えて読んで下さい。すみません。

【大洗学園艦 演習場】?

華 「優花里さんが気を失ったみほさんを咄嗟に受け止めてくれてホッとしました」?

麻子 「まあ、入れ替わりだろう」?

沙織 「ゆかりん、みぽりんのことお願いね」?

優花里 「任せて下さい」?

優花里 (気を失った西住殿、こうして抱き抱えていると本当に愛らしい寝顔で……)?

優花里 (普段、戦車の中では凛々しい西住殿ばかり見ているので新鮮です)?

華 「ボコにも困ったものです。こうして紅白戦の最中に入れ替わられても面倒ですね」?

麻子 「気持ちは分かるが、考えようによっては4号という密室内で入れ替わってくれるのは不幸中の幸いだ」

華 「みほさんの秘密を守る上では確かにそうですね」

ボコ 「ハッ!」?

優花里 「入れ替わったようです」?

ボコ 「はああぁっ……みほだ……生きてる……」?

優花里 「どうしたんですか、ボコ?」?

沙織 (何か様子が変?)?

ボコ 「はあああぁ……優花里……生きてる! 優花里いいっ!」?

ガシッ!?

優花里 「ひっ!? ひいいいいいっ!」?

華 「優花里さんに何してるんですか!? 離れなさいスケべべア!」?

ボコ 「優花里ィ……優花里ィ……良かったあ……」?

優花里 (西住殿に名前を呼ばれながら骨も折れんばかりに抱き締められてます……これで中身がボコでなければ……)?

麻子 「こっちは操縦で手が放せない。沙織、何とかしてくれ」?

沙織 「ボコ、何があったの?! 落ちついて。ホラ鼻水出てるよ……。ゆかりんは鼻血出てる!」?

ドオオン! シュポッ!?

麻子 (やられた……)

絹代 「本日はお招き頂きありがとうございます」

杏 「悪かったねえ。元々話を聞きたいって言ったのはこっちなのにわざわざ来てもらって」

絹代 「いえ、私としても久しぶりに生の戦車戦を見たかったので。試合を観戦させて貰い、勉強になりました」

絹代 (叶うことなら大洗と練習試合をしたかったが避難所暮らしの身としてはそうもいかない)

絹代 (今試合を組むということは、現在知波単の戦車を預かってくれているサンダースの手を煩わせることになる)

絹代 (サンダースのケイ殿は懐の広い方だが、だからといって甘え過ぎるものではない。隊員達の練度が下がるのは気になるが今は我慢だ)

杏 「後で干しイモ食べながらゆっくりと話そうよ」

絹代 「はい、ご馳走になります。ところで西住殿は?」

杏 「4号内で敗因分析中」

沙織 「ボコを一人4号に残しておいて良かったのかな」

麻子 「他のチームが4号に乗ってくることは滅多にないだろう」

華 「お互いに頭を冷やす時間が必要です」

優花里 「……」

麻子 「秋山さん?」

優花里 「はい」

麻子 「しばらく黙り込んでたから……思うところがあるなら言って欲しい」

優花里 「はい、……ボコ殿が嘘をついているとはどうしても思えないんです」

優花里 「それに西住殿が信頼している相手なら私も信じたいですし……」

麻子 「悪いがその考えは危険すぎる」

麻子 「諸々類似点はあるが、西住さんが好きなクマのマスコットと自然災害に匹敵する巨大海洋不明生物はまるっきり別物だ。尤も、片方がもう片方の名前の由来くらいにはなったのかもしれないが」

華 「改めて思うと何の因果でしょうね。みぽさんとボコが不定期で入れ替わるなんて」

優花里 「西住殿のボコへの想いが奇跡を起こしたのでしょうか?」

華 「そういえば入れ替わりの話をみほさんが初めてしたのは神社へのお参りの後でした」

沙織 「だったら私も神社の階段で叫べばいいのかな? 『東京のイケメン男子にして下さーい!』って叫んだら私もハンサムな都会っ子と入れ替わってそこから大恋愛に発展とかしちゃうかも?」

麻子 「流石にそれは無理があるだろ」

沙織 「もー! ヒドイよ」

華 「ボコがあの海洋不明生物の中で最弱というのが難点です。彼がボコラ達の中で最強だったら他の人喰い生物共を大人しくさせたでしょうけど」













カチューシャ (ミホーシャに会いにいこうとしたらとんでもない会話を聞いた……)

カチューシャ (あいつら……よくも!)

ボコ (オイラはあいつらを助けたいだけなのに……)

ボコ (死んでしまったみほの記憶を知って……いや……違うな)

ボコ (みほは死んだんじゃない、オイラが殺したんだ)

ボコ (麻子の婆ちゃんの言う通り……オイラは大量殺人鬼……)

ボコ (嫌だ、もう人間を喰いたくない。ここで未来を変えないと――)

カチューシャ 「ミホーシャ」

ボコ 「ウォッ!?」

カチューシャ 「何ビビッてんのよ」

ボコ 「いや……いえ、急に声かけられたから」

ボコ (こいつ誰? パンツァージャケット来てるってことは大洗の生徒か?)

ボコ (流石にこの小っこいのが高校生っておかしいだろ?)

ボコ (しまった! 今回入れ替わってからまだ交換日記読んでねえ)

カチューシャ 「何顔引きつってんのよ、とりあえず入るわよ。あんた達もいらっしゃい!」

ノンナ、ニーナ、アリーナ 「はい」

ボコ (色々4号に乗り込んできやがった。こいつらの情報がねえ……どう切り抜ける?)

【大洗学園艦 校舎 生徒会室】

杏 「西住ちゃんそのうち来るだろうからちょっと待っててね」

絹代 「はい、ところで話というのは……?」

杏 「申し訳ないけど……知波単で何があったか聞かせて欲しい」

絹代 「……察しはついてました」

杏 「他校の生徒に傷を抉るようなことを聞くのもどうかと思うけど、こっちも余裕が無いのよ」

杏 「カチューシャは断固戦うべきだといった。ボコラとも、文科省とも。そして彼女の決意に絆されて私もその気になった」

杏 「でもね、その目的を達成する為に何人犠牲が出るのかなと思ってね」

杏 「目的の為なら逆らう相手を退学にするって脅す位ならやるよ。でも学校の為に死ねなんて相当テンション上げても言うのはキツイ……」

絹代 (戦うべきか戦わざるべきが……判断材料が欲しくて私から話を聞きたかったということか)

桃 「会長!?」

杏 「今取り込み中なんだけど」

桃 「すみません、一大事なもので」

杏 「何?」

桃 「カチューシャ達が西住を拉致しました!」

杏、絹代 「!」

桃 「先程会長には電話したのですが出て頂けなかったので……」

杏 (そっか、知波単の隊長と話す前に携帯の電源切ってたから)

絹代 「西住殿の行方は?」

桃 「紅白戦で撃破されなかった戦車が追ってはいるが……」

杏 「すまない、聞いての通りだ、話はまた今度聞かせて欲しい」

絹代 「分かりました、私もウラヌスでカチューシャ殿を追います」

杏 「生徒会もヘッツァーを出すよ」

桃 「はい、柚子が先に倉庫に向かっています」

カチューシャ 「あんたがミホーシャじゃないって少し会話すれば分かるわよ!」

ノンナ 「最初にカチューシャから話を聞かされたときは半信半疑でしたが、私の名前を『ナンノ』と聞かされてそのまま納得した時点で明らかにみほさんではありません」

ボコ 「フガガ、フガガガガ!」

ボコ (チキショウ! おいらを拘束する時に猿轡しやがって! 口が聞けねえ!)

カチューシャ 「今は大人しくしてなさい。後で好きなだけ話させてあげるわ。あんた達プーガロのこと全部ね!」

ボコ (あんこうチーム以外の連中に入れ替わりを知られただけでもマズいってのに。このままじゃ大洗を助けるどころか……)

アリーナ 「攫うどこばを見きゃれたのは失敗だ」

カチューシャ 「フン、そんなの大洗の戦車を全部やっつけちゃえばいいのよ」

カチューシャ 「こんな大事なことを隠してた大洗の奴らなんか……」

カチューシャ 「『地吹雪のカチューシャ』の恐ろしさをたっぷりと味わうといいわ!」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

ぴよたん 「 めちゃくちゃだっちゃ……」

ねこにゃー 「イカさんチームは何で暴れてるにゃー……」

ももがー (呆気なく撃破されたナリ……)

みどり子 「紅白戦が終わった直後で動ける戦車が少ない時に不意討ちなんて校則違反どころじゃないわよ!」

ツチヤ 「せめて4号が紅白戦で無傷だったら……」

ホシノ 「4号は車長を人質に取られてる時点で詰んでるって」

桃 「柚子!」

柚子 「ごめん、私もやられた……」

桃 「砲手無しじゃ逃げ回るしかなかっただろう」

杏 「河嶋が乗ってても当たんないじゃん」

桃 「会長!」

柚子 「それよりも……もう動ける戦車が残ってません」

優花里 「西住殿を返して下さい!」

カチューシャ 「こいつはミホーシャじゃないでしょ! 知ってんのよ!」

優花里 「!」

麻子 (私達あんこうチームの会話を聞かれてしまったか、迂闊だった)

カチューシャ 「生徒会、よくもこのカチューシャを騙したわね!」

桃 「何を言っている!?」

杏 「話が見えないんだが」

カチューシャ 「しらばっくれる気!? こんな大事なこと隠しといて!」

沙織 「カチューシャさん、生徒会は本当に何も知りません! あんこうチームだけの秘密だったんです!」

カチューシャ 「カチューシャがここに来た経緯は知ってるわよね!? カチューシャ達がどんな思いでここに流れ着いたか」

カチューシャ 「それが……不倶戴天の敵がこんな近くに居たなんて……」

華 「みほさんだって悲劇を繰り返さないようこれまで必死に動いてました。皆さんに打ち明けなかったのは無用な混乱を避ける為です!」

カチューシャ 「事前に打ち明けてくれたら今の混乱は避けられたでしょうね」

華 「クッ……」

優花里 「西住殿を返して貰います」

カチューシャ (生身でIS-2の前に? フン、どうせハッタリよ!)

カチューシャ 「そこを退きなさい」

優花里 「退きません」

カチューシャ 「退かないとキャタピラの錆になるわよ!」

優花里 「……」

ビシッ!

絹代 (あれは陸自の敬礼!)

優花里 「自分は既に戦車道に心臓を捧げた者!」

優花里 「戦車によって死ぬるなら本望!」

カチューシャ 「だったら……」

カチューシャ 「もしこいつらが喰ったのがミホーシャでもあなたは同じこと言ってあいつ達を庇うの?」

優花里 「それは……」

カチューシャ 「カチューシャはプラウダで……クラーラがこいつらに喰われるところを見たわ」

カチューシャ 「大勢の仲間が喰い殺される姿を見ておきながら、おめおめと引き下がるしかなかったカチューシャの気持ちが分かる!?」

カチューシャ 「この辛さを知らない人間なんかに、カチューシャを悪く言う資格なんて無いわ!」

ナカジマ 「カッちゃん……」

絹代 「ならば……」

絹代 「私にはその資格が有る筈です!」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

優花里 (西殿!)

絹代 「知波単で、共に戦車道に励んできた仲間が英霊になったことをご遺族にお伝えした時、私はその場で泣き崩れました」

絹代 「私も死んでいった仲間やご遺族の悲嘆にくれる姿が瞼に焼き付いて離れません」

絹代 「その度に自責の念にかられ、生き恥を晒す位ならあの時散っていればと何度も思いました」

絹代 「それでもこうして生きているのは、英霊とご遺族の方々に対して生き残った者として責任を果たす為です」

絹代 「そしてそれは他者を憎むだけでは成しえない。仲間と手を取り合い、何が出来るか、何をすべきか見極めることも大事な筈です」

優花里 「そうです!」 

優花里 「西住殿はこれまでボコと絆を築いてきました。だからこそボコは私達を助けようとしてるんです」

優花里 (そう、今なら分かります)

優花里 (何故自分がボコ殿の言葉を素直に信じられなかったか、いや、信じたくなかったか)

優花里 (自分はボコ殿に嫉妬していたのです)

優花里 (彼が西住殿を救うことで、西住殿の中で彼の存在がこれ以上大きくなることを恐れたのです)

優花里 (西殿、感謝します。おかげで目が覚めました。自分は危うく道を踏み外すところでした)

優花里 (自分はもう迷いません)

優花里 「彼が提供する情報こそが、西住殿の齎した成果です!」

優花里 「それを活かすも殺すも今後の私達の行動にかかっています!」

優花里 「それを端から否定すると言うのなら、彼の持つ情報の価値を説きます!」

カチューシャ 「で、その情報が虚偽だったら、奴が私達を裏切ったらどうするつもり?」

絹代 「その時は刺し違えてでも彼を討ちます!」

カチューシャ 「ミホーシャはあんたを恨むわよ」

絹代 「それでも……責任を果たします。特攻も覚悟の上です!」

カチューシャ 「……」

カチューシャ 「プラウダの全隊員に命令するわ」

カチューシャ 「私から新たな指示があるまで絶対にミホーシャにもボコにも手出ししないこと」

カチューシャ 「背いたらカチューシャの名の元に粛清よ、いいわね」

ノンナ 「仰せのままに」

アリーナとニーナ 「分かりますたぁ」

絹代 「カチューシャ殿……」

カチューシャ 「今回だけよ! このカチューシャが話を聞いてあげたんだから感謝しなさい!」

優花里 「ありがとうございます!」

みほ 「ンーッ、フグ……フーッ!」

ノンナ 「カチューシャの寛大な処遇に感謝して下さい。猿轡を外します」

みほ 「……プハァ、ハァ、ハァ……あの……」

ノンナ 「何ですか?」

みほ 「ノンナさん、どうして私縛られてるんですか?」

ノンナ 「……みほさん?」

【大洗学園艦 校内 戦車倉庫】

ナカジマ 「カッちゃん、そこの工具箱取って来て」

カチューシャ 「ノンナ、聞こえたわね」

ナカジマ 「私はカッちゃんに頼んだんだけど」

カチューシャ 「カッちゃん言うな!」

ナカジマ 「カッちゃんのせいで自動車部の仕事が無駄に増えたんだけど。あー今夜は徹夜かな」

カチューシャ 「分かったわよ」

トボトボ……

スズキ 「1年生が2人も自動車部に入ってくれるなんて嬉しいね」

アリーナ (今回の騒動ば不問さ附す為の条件が、わんど二人の自動車部加入のんて)

ニーナ (プラウダさ居た時かきや戦車の整備さは慣れてたばって、わんどの意思はあって亡きが如しだ)

ノンナ (私はバレー部への入部か……)

【大洗学園艦 校内 生徒会室】

桃 「会長、プラウダへの処遇甘過ぎませんか?」

杏 「でもこれで3年生3人が卒業したら自動車部が1人になってしまう事態は避けられたじゃん。それにバレー部にも恩を売れたでしょ」

柚子 「バレー部の皆、泣いて喜んでたわね。これで対外試合が出来るって」

杏 「それに今はもっと他に片付けたい問題があるからねー」

杏 「と言う訳で今まで秘密にしてたこと、全部話して貰おうか」

杏 「西住ちゃん」

みほ 「……」

優花里 「……」

華 「……」

麻子 「……」

沙織 「……」

絹代 「あの……私がこの場に同席してもよろしいのでしょうか?」

杏 「頼むよ、遠慮無く意見を聞かせて欲しい」

みほ (ボコの馬鹿……)

今日はここまで。
200レス到達するのに4.5ヶ月、筆が遅スギィ!
それでも年内には完結させたいです。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

柚子 (信じていいのかしら? 嘘をついてる様には見えないけど)

杏 (たまげたねえ……)

絹代 (さっきは状況がよく分からないままカチューシャ殿を止める為に声を上げたが……そんな驚天動地な現象が起きていたとは……)

桃 「そんな大事なこと、何故今まで黙っていたッ!?」

みほ 「すみません。……話したらきっと大騒ぎになると思って」

桃 「だからと言って! 今回の騒ぎが無かったらお前はずっと隠し事を続けるつもりだったのか!?」

華 「失礼ですがそれはお互い様ではありませんか?」

桃 「何だと?」

華 「生徒会も、試合に負けたら廃校という話を長い間隠してました」

桃 「そんなこと話せる訳無いだろう! もし話していたら……」

華 「話していたら?」

桃 「それこそ……騒動に……」

華 「私達も同じです」

桃 「チッ!」

華 「……」

華 「それにボコは生徒会に不信感を持っていました」

杏 「言うねえ」

華 「私はボコに言われました」

華 「次の生徒会長になって今の生徒会長をボコれと」

桃 「貴様!」

優花里 「今の話は本当です」

麻子 「そんな状態でボコを生徒会に引き合わせたらトラブルになっていた可能性が高いです」

みほ 「ただ、これだけは信じて下さい」

みほ 「ボコは我々人類の味方です!  ボコをよく知る私に言わせれば、彼は見た目よりずっと単純なんです!」

麻子 (見た目より?)

沙織 「ボコは生徒会の西住さんへの仕打ちに怒っていました。先輩方にも事情がお有りだったとは思いますが、ボコは子供なのでそこまで推し図れないんです」

柚子 「私達生徒会失格ね」

桃 「柚子……?」

柚子 「学園存続の為に憎まれ役になるのは厭わなかったけど……」

柚子 「だからと言ってそれが西住さんの優しさに付け込んだ免罪符にはならない」

柚子 「西住さん、今まで本当にありがとう。そしてごめんなさい」

みほ 「いえ、そんな……私は大洗で戦車道が出来たことが嬉しいんです」

みほ 「もしここで戦車道をやってなかったら、私はずっと自分の過去に背を向けたままでしたから」

みほ 「私は大洗で皆さんと戦車道が出来たことに感謝しています」

優花里 「西住殿ォ……」

杏 「……」

杏 「西住ちゃん」

みほ 「はい?」

杏 「小山はああ言ったが、私はこれまで自分がしたことを後悔していない。詫びるつもりもない」

杏 「只、恩は感じている」

杏 「だから、私が出来ることで一つだけ西住ちゃんの願いを叶える」

杏 「それでいいかい?」

みほ 「気にしないで下さい、会長」

杏 「いいや、私の為だと思ってこの話を受けて欲しい。このままでは寝覚めが悪い」

桃 「そうだ。会長のせっかくのご好意を無駄にする気か?」

みほ 「分かりました」

みほ 「会長、お願いです」

みほ 「ボコラが来る前に学園艦の生徒と住民を全て艦外に避難させて下さい」

杏 「えっと……」

杏 「口約束は約束じゃないって知ってる?」

桃 「西住、嫌がらせか?」

みほ 「いいえ」

沙織 (みぽりんはそんな事しないよ)

麻子 (酷い言い草だな)

華 (言いがかりも甚だしいです)

優花里 (学園の恩人に何と無礼な)

桃 「だったら何だ!」

みほ 「西さんには辛い話になりますがすみません」

絹代 「分かりました」

みほ 「既に知波単とプラウダで多くの尊い命が失われました。これ以上の犠牲は避けるべきです」

絹代 「……」

桃 「しかし大洗はまだ被害が出ていないぞ」

みほ 「全国の学園艦全体から見れば既に多くの血が流れました。」

柚子 「試したとは思うけど、ボコとの入れ替わりを上手く利用出来ないかしら?」

みほ 「それも手を尽くしたのですが……。ボコの仲間は説得にも応じませんし、みんなボコより強いんです」

杏 「西住ちゃんの指揮でも勝てないの?」

みほ 「大洗の8輌だけではとても勝てません」

麻子 (プラウダの50輌で1体も倒せなかった相手を大洗の8輌だけで全滅させるのは無理だ)

みほ 「仮に他校に応援を頼んで数を集めたとしても、犠牲は避けられません」

桃 「しかしこの学園は今でこそ戦車道以外に実績は無いものの、伝統ある高校だ。それを……」

絹代 「それでは我々知波単と同じ道を辿りますよ」

絹代 「連中の手で既に我が校とプラウダの2校が失われました。ある者は故郷を失い、ある者はかけがえの無い家族や友人を亡くしました。それも1人や2人ではありません」

絹代 「それでもまだ貴方は犠牲が足りないと仰るのですか?」

桃 「……」

みほ 「もう、大洗だけの問題では無くなりました」

みほ 「政府はボコラ問題にかこつけて全国の学園艦の廃校を推し進める気です。その口実を与えてはなりません」

みほ 「大洗が犠牲者を出さずに住民の避難を完了させ、その後自衛隊がボコラを倒せば、これ以上事は大きくならないでしょう」

みほ 「しかし大洗がボコラの撃退に失敗し、多くの犠牲者が出たら、大洗が廃校になるだけでは済まないんです。その時は……」

みほ 「全ての学園艦が政府の強制疎開の名のもとに、廃校となります!」

みほ 「私達はこの艦の中で死んではならないんです」

みほ 「どうか、どうかここから逃げて下さい!」

杏 「……」

杏 「西住ちゃん……これで貸し借り無しだよ」

桃 「会長……?」 

桃 「ウ……ウエエエエン!」

杏 「気落ちは不要。生徒と住民を守るのが私達の仕事。攻撃だけが花じゃない。住民の避難を急がせるよ!」

今日はここまで
プロット修正する度に杏のキャラがブレる
可哀想だけど杏がこのSSで一番の物語の奴隷
読んで下さった皆さんありがとうございました

【大洗学園 校内 体育館】

典子 「どうだった? 入部初日の感想は?」

ノンナ 「ハァ、ハァ……皆さん凄い体力ですね。ついていくのがやっとです」

忍 「ノンナさんも未経験とは思えない位上手ですよ」

あけび 「驚きました」

妙子 「ノンナさん、あの、一つ聞いていいですか?」

ノンナ 「ええ、いいですよ」

妙子 「昨日プラウダの皆さんが暴れた理由って何だったのですか?」

典子 「私も気になってた」

ノンナ 「お昼寝です」

忍 「お昼寝?」

ノンナ 「カチューシャはお昼寝が出来なかった時は極端に不機嫌になって暴れるのです」

ノンナ 「プラウダに居た時は本人の好きにさせてたのですが、大洗で同じ様にさせたのは失敗でした」

バレー部一同(ノンナ除く) 「……」

ノンナ (ここまでふざけた話にしておけば呆れ果てて追求しないでしょう)

【大洗学園艦 戦車倉庫】

カチューシャ 「最近随分と楽しそうじゃない」

ノンナ 「カチューシャ……」

カチューシャ 「腰抜け生徒会が大洗の廃校確定を通達して早一週間」

カチューシャ 「誰かさんのせいでカチューシャはお昼寝させないと暴れるってことになってるし」

ノンナ 「……」

カチューシャ 「何が楽しくてもうじき無くなる学校の部活に精出してんのよ?」

ノンナ 「私が欠けたらバレー部はまた4人に逆戻りです」

カチューシャ 「答えになってないわ。ノンナが居ようが居まいがバレー部は学校ごと無くなるのよ!?」

ノンナ 「だからこそです」

ノンナ 「だからこそ最後まで5人で練習したいのです」

カチューシャ 「ノンナ、私達がここに来た理由は?」

ノンナ 「はい、ボコラに雪辱を果たす為の拠点を設ける為です」

カチューシャ 「その目的は達成出来た?」

ノンナ 「いいえ」

カチューシャ 「そうよね」

カチューシャ 「だったらバレーやってる暇なんてないんじゃない?」

ノンナ 「大洗は近々廃校になります。拠点については次の編入先で考えましょう」

カチューシャ 「ノンナは変わったわ」

ノンナ 「変わってません」

ノンナ 「私のカチューシャへの忠誠心には一点の曇りもありません」

カチューシャ 「……」

カチューシャ 「ノンナはバレー部、ニーナとアリーナは自動車部でそれぞれ楽しくやってるのに、カチューシャには居場所が無い」

ノンナ (流石にあれだけ暴れたら声をかけてくれる人はなかなか現れないでしょう、しかし……)

カチューシャ 「ノンナ」

ノンナ 「?」

カチューシャ 「これまでのカチューシャは間違ってたと思う?」

ノンナ 「いいえ、カチューシャが間違ったことは一度たりともありません」

カチューシャ 「そうよ。カチューシャは間違ったことなんかない」

カチューシャ 「そうじゃないと……カチューシャが判断を誤ったからボコラに負けたとなると」

カチューシャ 「クラーラ達は無駄死にしたことになる」

カチューシャ 「それだけは絶対に認めない! あの日戦死した仲間の一人一人が意味ある戦いに身を投じたのよ、違う?」

ノンナ 「カチューシャの言う通りです」

カチューシャ 「当たり前よ。……そろそろ部活でしょ、行ってきたら?」

ノンナ 「はい、失礼します」

スタスタスタスタスタ

ノンナ (体育館に向かう道が涙に霞む)

ノンナ (自衛隊でも何でもいい、誰かボコラを粛清して)

ノンナ (カチューシャを苦しめる存在からカチューシャを解放して)

ノンナ (以前はカチューシャと過ごす時間が至福の時だったのに、今のカチューシャを見るのは辛い)

ノンナ (貴方だってそう思うでしょ? クラーラ)

今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

【都内 国立新美術館 正面入口】

優花里 (遂に念願叶って西住殿との初デート!)

優花里 (大洗が廃校となり、皆が学園艦を降ろされ、今は陸での分校暮らし……)

優花里 (来月からは各々が編入先に転校になります……)

優花里 (辛い思いをした分、たまにはこんな楽しいことがあったってバチは当たらないでしょう)

みほ 「ありがとう、優花里さん」

優花里 「『ありがとう』って何がですか?」

みほ 「私、どうしてもここに来たかったから。優花里さんが一緒に行くって言ってくれて凄く嬉しかった」

優花里 (今日東京まで出て来た理由……)

優花里 (かつてボコのアニメを作った監督の展覧会が開催中だったとは)

優花里 (自分はアニメに詳しくないのでよく分かりませんが)

優花里 (これ程の美術館で展覧会が催される位ですからきっと巨匠なのでしょう)

優花里 (○島○展ですか)

みほ 「優花里さん、ボコの音声ガイドだって」

優花里 (美術館でよくある音声ガイドですね、500円ですか)

優花里 「折角だし聞いてみますか」

みほ 「うん!」

みほ 「これ、レシーバーにイヤホンが2つ付いてるよ。ハイ、優花里さん」

優花里 「あ、ありがとうございます」

優花里 (些細なことかもしれませんがこうして1つの機材を共有してると)

優花里 (本当にデートって感じがします)

音声ガイドの声 「オウッ、お前等よく来たな。オイラボコだぜ!」

優花里 (雰囲気ぶち壊しです……)

【都内 国立新美術館 企画展示室】

優花里 (BOCO SHOWの再現……)

音声ガイドの声 「みんな! オイラに力をくれ!」

みほ 「ボコーッ! 頑張れーッ!」

優花里 「西住殿、美術館ですので叫ぶのはちょっと……」

みほ 「えっ……ごめんなさい、つい興奮しちゃって」

優花里 (ばつが悪そうな表情の西住殿もまた可憐です)

【都内 国立新美術館内 カフェ「サロン・ド・テ ロンド」】

みほ 「いろんなボコが見られて楽しかったね」

優花里 「はい!」

優花里 (西住殿には申し訳ないですが、自分は展示自体にはあまり興味が……)

優花里 (ただ、とびっきりの笑顔を見せる西住殿と二人きりで過ごせるのは天にも昇る程嬉しくて……)

みほ 「このポタージュ美味しいよ、一口飲んでみない?」

優花里 「え、いいのですか?」

みほ 「ハイ、あーん」

優花里 (これは何という僥倖!)

優花里 (西住殿が自身のスプーンで私にスープを!)

優花里 (行きます!)

ガクン、ベチャッ!

優花里 「エッ!?」

優花里 (西住殿がスープ皿に突っ伏した!)

優花里 (まさか……このタイミングで……)

ボコ 「……」

ボコ 「ぷはッ!? 何だコリャ、顔ベットベトじゃねえか?」

優花里 (ああ、入れ替わってしまいました……)

ボコ 「顔拭いてくれたのはいいけどよ……」

ボコ 「優花里、何か嫌なことでもあったのか?」

優花里 「いえ……何でも」

ボコ 「ひょっとしてみほと喧嘩したか?」

優花里 「してません」

ボコ 「ならいいけどよ」

優花里 「……」

優花里 (ここは我慢です)

優花里 (そのうち西住殿が戻ってくる筈です)

優花里 (オッドボールでも何でも手段は問いません。出来るだけ早く戻って来て下さい、西住殿。このままでは折角のデートが台無しです) 

ボコ 「何か落ち着きねえな、ションベンなら気にせず行ってこいよ」

優花里 「違います!」

優花里 「入れ替わったということは、ボコ殿はまたケンカしたのですか?」

ボコ 「ああ、エリガンの奴に左腕持ってかれた」

優花里 「エッ!?」

ボコ 「今度こそボコってやると思ったらアイツ噛み付きやがって――」

優花里 「待って下さい!? それじゃ西住殿は?」

ボコ 「入れ替わる直前、ドーラとジークンが止めに入ってるから大丈夫だろ。それにオイラの身体は再生するし」

優花里 「そういう問題じゃありません! 今、西住殿は痛い思いしてるってことじゃないですか!?」

ボコ 「まあ、そうなるな」

優花里 「『そうなるな』じゃないですよ……西住殿に申し訳ないと思わないのですか?」

ボコ 「……」

ボコ (何か空気が変になっちまった……)

ボコ (ここは話題を変えるぜ!)

ボコ 「優花里、ここは……どこだ? 初めて見る場所だな」

優花里 「……国立新美術館です」

ボコ 「国立新美術館?」

優花里 「はい、西住殿とデートの最中でした」

ボコ 「そうか! 今日がデートの日だったのか!」

ボコ 「安心しろ、前にも言ったろ? デートの日に入れ替わってもオイラが相手してやるって」

優花里 「……」

ボコ 「そうか、優花里おめかししてると思ったらそういうことか、似合ってるぜ」

優花里 「どうも」

ボコ 「ここ、学園艦じゃないよな。窓ガラスの向こうの景色って陸地だし……」

優花里 「はい、ここは東京です」

ボコ 「東京か……」

ボコ (みほの身体で陸に上がったのは戦車道の決勝以来か)

ボコ 「東京……つうことはよ、学園艦が東京に来てんのか?」

優花里 「いえ、学園艦は今頃自衛隊の配備を終えて太平洋を航行している筈です」

ボコ 「じゃあ、お前ら……船を降りたのか?」 

優花里 「はい、大洗女子学園は廃校になりました」

ボコ 「そうか……」

ボコ 「オイラの忠告聞いてくれたんだな」

ボコ 「良かった」

優花里 「!」

優花里 「良かったって……どういう意味ですか?」

優花里 (もう我慢の限界です)

ボコ 「おい、どうしたんだ優花里?」

ボコ (何だコイツ、えらくおっかねえ顔してるぞ……)

優花里 「何が良かったというのですか? 西住殿を始めとする皆の努力が報われなかったことですか?」

優花里 「それとも私の両親が長年営んできたお店を畳んで引っ越すことですか?」

ボコ 「チョッ、落ちつけよ! 優花里」

優花里 「落ちつけって、ボコ殿が言いますか?」

優花里 「元はと言えばあなた達のせいじゃないですか!」

今日はここまで
読んで頂きありがとうございました

庵野秀明
『特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』(シン・ゴジラは絡んでないが)
於?東京都現代美術館? 2012年開催

諫山創
『進撃の巨人展』
於?上野の森美術館 2014~2015年開催

新海誠
『新海誠展』
於?国立新美術館 来月開催予定


水島監督だってもっとアカデミックな扱いを受けてもいいと思う

ボコ 「そんな言い方ねえだろッ!」

ボコ 「オイラは! ……優花里達が死なずに済むのを『良かった』って言っただけじゃねえか」

優花里 「ええ、分かってます。分かってますよ」

優花里 「しかしそれは最悪の事態を免れただけです」

優花里 「全国大会に優勝して折角廃校を回避出来たんです。本当だったら2学期以降も大洗に通って、私の家もお店を続けて……」

優花里 「それらが全て駄目になって……」

優花里 「今日だって西住殿との二人きりの時間を……貴方は……」

ボコ 「だからオイラが代わりにデートしてやるって――」

優花里 「自惚れないで下さい! 自分にとって西住殿の代わりなんていません」

ボコ 「……」

優花里 「ボコ殿は知らないでしょうけど、会長に廃校を進言したのは西住殿です」

優花里 「廃校を阻止する為に頑張ってきた西住殿が、生徒会に廃校を勧める。誰よりも人命を尊重する西住殿らしい決断ですが、それでも本当は悲しかった筈です」

優花里 「誰よりも優しいあの方にそんな苦渋の決断をさせておいて……」

ボコ 「ちょっと待て、優花里。お前普段そんなキャラじゃねえだろ?」

ボコ 「お前は昔、オイラのことがちょっとは好きだったんじゃねえのか?」

優花里 「……」

優花里 「……どうしてそう思うのですか?」

ボコ 「だってよ、優花里はいつもオイラのこと助けてくれただろ?」

ボコ 「学校の勉強がちんぷんかんぷんだった時、戦車道のことが丸っきり分からなかった時、突然の生理でパンツが真っ赤になった時……」

ボコ 「みほと入れ替わってた時に勝手が分からなかったオイラをいつも助けてくれたのは優花里じゃねえか」

ボコ 「他の奴らも親切にしてくれたけど、一番支えてくれたのはお前だった。これでも感謝してるんだぜ」

優花里 「ハァ……」

優花里 「何も分かってないんですね」

優花里 「貴方を献身的に支えてきたのは西住殿に恥をかかせまいと思ってのことです」

優花里 「それに入れ替わりが明らかになってから西住殿に頼まれたんです。『入れ替わってる間、きっと迷惑をかけてきたしこれからも迷惑をかけるけどボコを助けて欲しい』と」

優花里 「西住殿は貴方の為に……自分やあんこうチームの皆に頭を下げたんですよ……」

優花里 「そんなことしなくても私はいくらでもあの方を支えるつもりでいたのに」

優花里 「西住殿の身体を乗っ取って迷惑をかけ続けておきながら平然といる貴方のことなんか……」
 
優花里 「嫌いになることはあっても好きになんてなりませんよ」

ボコ 「本気で言ってんのか?」

優花里 「ええ、貴方なんて……」

優花里 「大洗で自衛隊に殲滅されればいいんです」

ボコ 「ケッ! 勝手にしやがれ!」

ボコ トボトボトボトボ

優花里 (ボコがカフェから出て行きました)

優花里 (やってしまいました……)

優花里 (ただ、これは誓って嫉妬ではありません。ただ彼の無神経さがどうにも我慢ならなかったのです)

優花里 (とはいえ、ボコに非道いことを言ってしまいました)

ボコ (褒められると思っていた……)

ボコ (危機を伝えて優花里達を救えたと思っていた。オイラはヒーローになったと思ってた。でも……)

ボコ (オイラはそんなにお前に恨まれていたのか、優花里……)

ボコ (散々だったデートの結果は、次に入れ替わった時に伝えればいい。そして……)

ボコ (みほ、お前にも迷惑かけちまったな)

【太平洋 東日本沖】

ケイティ (皆はどこに行ったの? 誰もいないよ……)

ケイティ (ドーラとジークンは行方不明だし……まさか、人間にやられちゃったの!?)

ケイティ (あっ、あれは)

エリガン ムシャ、ムシャ、ボリ、バリ

ケイティ (エリガンだ、良かった)

ケイティ 「ねえ……エリガン」

エリガン 「食事中」

ケイティ 「ごめんなさい、みんなの姿が見当たらなくて私逸れたのかと思って」

ケイティ 「それ、美味しいの?」

エリガン クルッ

エリガン 「まあまあ。人間の方が美味しいわよ」

ケイティ (何食べてるんだろう? 何かの頭みたい……)

ケイティ 「!?」

ケイティ 「それって……まさか……」

エリガン 「マッキー」

ケイティ 「ヒィッ!」

今日はここまで。
読んで頂きありがとうございました。

【アンツィオ学園艦 女子寮 みほの部屋】

華 「今日が日曜で良かったです。平日なら今日から二学期です」

沙織 「そうだよね、休日だからこうしてみぽりんの部屋に集まれたもん」

麻子 「ボコの話では西住さんの記憶を見た時に……亡くなる前の西住さんが私の声を聞いたと言っていた。その時の私は『誕生日と命日が一緒なんて云々』と言っていたそうだ」

みほ 「麻子さんの誕生日は今日、9月1日。麻子さんお誕生日おめでとうございます」

華 「おめでとうございます」

沙織 「麻子、おめでとう」

優花里 「冷泉殿、誕生日おめでとうございます」

まほ 「私からもおめでとうと言わせてもらおう」

麻子 「みんなありがとう……ございます。それよりもボコの話が本当なら……」

麻子 「今日大洗にボコラが現れる」

みほ 「そうです」

みほ (生徒と住民の避難が完了し、自衛隊が配備された大洗にボコ達が現れる)

みほ (ボコは……大丈夫かな)

まほ (済まない、みほ)

まほ (お母様の勘当が解けない以上、お前を黒森峰に戻すことは出来ない)

まほ (それどころか黒森峰のOB会はみほが強豪校に転校出来ないように裏で手を回していたと聞く)

まほ (あくまで噂に過ぎないが、みほの転校先がアンツィオになったことを考えると只の噂ではないのかもしれん)

まほ (居ても立ってもいられずアンツィオまで来たが、みほが思いの外元気そうで良かった。それに4号の乗員全員が同じ高校と知って安心した)

まほ (それよりも他言無用でさっき聞かされた話……)

まほ (みほが巷を騒がすバケモノと入れ替わっていたという話は信じるべきだろうか……?)

【都内 首相官邸 二階会議室 巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)】

志村 「副長官! 1分前にボコラが出現。大洗学園艦に乗艦します!」

矢口 「これが最新映像か……何か咥えてるな」

柳原 「おい、知波単やプラウダの時よりかなりデカくなってないか?」

金井 「ああ、まったく想定外の大きさだ」

葉山 「顔や姿もまるで違うぞ」

矢口 「ええ。身長が2倍近くになっています。さらに進化したボコラ新形態です」

矢口 (元々全長で100メートル位だったのが、最新映像を見るに……)

矢口 (今は身長だけで100メートルを優に超えている。全長だと200メートルはありそうだ)

森 「あれはエリガンって言われてるタイプか」

立川 「ハイ、通称ワニ頭です」

間 「1体だけというのが気になる。それに何を咥えてるんだ?」

安田 「あっ! あっ! ああ……こんなんアリか!」

安田 「咥えているのは別の個体の足ですよ! ケイティって呼ばれている個体の足です」

尾頭 「まさか、共食い?」

安田 「冗談……じゃなさそうですね」

尾頭 「これでボコラがこの星で最も凶暴な生物だという事実が確定しました」

【都内 首相官邸4階 大会議室】

花森 「総理。命令があれば自衛隊は学園艦でも徹底的にやります」

東 「災害緊急事態の布告は、今も継続中です。攻撃は、総理の御意志で決まります」

赤坂 「総理」

大河内 「分かっている。始めてくれ」

花森 「総理、武器使用の承認をお願いします」

大河内 「武器の使用を許可する」

【大洗学園艦】

戸川 「ヘリ隊長発射用意、発射!」

通信員 「機関砲、全弾命中! しかし効果を認めず!」

西郷 「アパッチの30ミリに切り替えろ。もう少し様子を見る」

【アンツィオ学園艦 女子寮 みほの部屋】

沙織 「どこの局も報道特番だよ。中継があるのは助かるけど」

優花里 「そうですね、大洗の最新映像をテレビで見ることが出来ます」

麻子 「このボコラ、前にテレビで観た時と大分見た目が変わってる」

華 「どうやら変わったのは見た目だけではなさそうですよ。自衛隊の攻撃も効いてないようです」

みほ (さっきエリガンが咥えてたのはケイティの足だった)

みほ (以前私がボコと入れ替わった時に、ボコの姿の私はエリガンに片手を喰われてて)

みほ (その時ドーラとジークンが止めに入ってくれて、その間に私は逃げたけど)

みほ (ひょっとして他のボコラ達はエリガンの餌食に……)

みほ (自衛隊は苦戦してるし、もしここで自衛隊がエリガンを倒せなかったら、エリガンがまたボコを襲うかも)

みほ 「お姉ちゃん」

まほ 「何だ?」

みほ 「お願いがあるの」

みほ 「一緒に西住流に伝わる舞を舞って欲しいの」

まほ 「確かにあの舞は守護者を呼ぶという言い伝えはあるが……」

まほ (とうの昔に古文書は焼け、舞の意味も分からなくなって残ったのは形だけ。そんなものを舞ったところで……)

みほ 「お願い」

まほ 「……」

まほ (舞自体に何の効力が無くともそれでみほの気が済むのなら……)

まほ 「分かった、久しぶりに舞おう」

みほ 「ありがとう、お姉ちゃん」

【大洗学園艦】

観測員 「第3小隊、攻撃続行中。目標健在。未だ効果無し」

三木 「16000発もの機関砲を食らい続けて、傷一つ付かんとは」

三木 (おかしい、調査報告には旧式の戦車でも傷を負わせたとあったのに)

【都内 首相官邸4階 大会議室】

花森 「誘導弾、全弾命中。しかし目視による損傷、確認できません」

金井 「ミサイルでも死なないのか?」

菊川 「なんて奴だ」

三木 「目標の外皮硬度は、予想以上です」

花森 「総理、大型の未確認飛行物体が確認されたとの情報が入りました!」

大河内 「飛行物体だと!?」

矢口 「総理」

矢口 「理研の報告によるとボコラには人類の8倍もの遺伝子情報があり、世代交代ではなく1個体のまま劇的な進化を続けているとのことです」

郡山 「何が言いたい?」

矢口 「未確認飛行物体は進化による有翼化したボコラの可能性があります」

財前 「奴らは進化によって皮膚が丈夫になったり空を飛べたりするというのか?」

花森 「新たな情報が入りました。各学園艦にて未確認飛行物体の目撃情報が相次いでいます。その姿はまるで……」

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【継続高校学園艦 女子寮 ベランダ】

紗希(ウサギさんチームと共に継続高校に転校) 「ちょうちょ」

【大洗学園艦】?

戸川 「大洗に飛来した未確認飛行物体、ボコラと交戦を開始! 指示を乞う!」

【都内 首相官邸4階 大会議室】?

花森 「総理、大洗に飛来した蝶とも蛾ともつかない巨大生物がボコラと交戦中とのことです」

大河内 「一体どうなるんだ……」

矢口 「勝った方が我々の敵になるだけです」 

赤坂 「まだそうと決まった訳じゃない」

矢口 「?」

赤坂 (『ひょっとしたらその蝶は人類の味方かもしれない』と言う言葉が喉から出かかったが危うく飲み込んだ)

赤坂 (彼女の家に代々伝わる古の伝承。二人の乙女の舞に呼応して姿を現すとされる守護神)

赤坂 (『詳しいことはもう分からない』とあの時セーラー服姿の君は言ったが……)

赤坂 (西住しほ、ここで君の名前を思い出すとはな)

【アンツィオ学園艦 女子寮 みほの部屋】

みほ&しほ 「♪モスラーヤ、モスラ ドゥンガン……」

沙織 「今テレビに出てるあの蝶を、みぽりんとお姉さんが歌と踊りで召喚したっていうの?」

麻子 「流石に無理があるだろ?」

華 「そうでもありませんよ。由緒ある名家には得てしてそういった伝承が残されているものです」

優花里 「ひょっとして五十鈴殿も何かの言い伝えの伝承者なのですか?」

華 「五十鈴家には代々花占が伝わってましたが、残念ながらボヤで秘伝書が失われました」

沙織 「そうなんだ……。残ってたら私の恋愛運、占って欲しかったな」

華 「因みに、家中ではそのボヤを……」

華 「『新三郎の大火』と呼んでいます」

沙織 「え? 名前付いてるの? 新三郎さん可哀想」

麻子 (ボヤなのに『大火』なのか……)

みほ&しほ 「♪ドゥンジュカンラー……」

今日はここまで。
最初に元ネタは4作品と言ったがあれは嘘だ。
シン・ゴジラ以外のゴジラ作品のネタが少し入ったがご容赦を。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

しほ?
まほ?

1です。
>>253
赤坂が思いを馳せているのは少女時代のしほです。赤坂としほの話はいずれどこかのタイミングで出す予定です。

1です。
>>253
すみません。
251で歌ってるのはみほとまほです。
以下と差し替えで読んで下さい。

【アンツィオ学園艦 女子寮 みほの部屋】

みほ&まほ 「♪モスラーヤ、モスラ ドゥンガン……」

沙織 「今テレビに出てるあの蝶を、みぽりんとお姉さんが歌と踊りで召喚したっていうの?」

麻子 「流石に無理があるだろ?」

華 「そうでもありませんよ。由緒ある名家には得てしてそういった伝承が残されているものです」

優花里 「ひょっとして五十鈴殿も何かの言い伝えの伝承者なのですか?」

華 「五十鈴家には代々花占が伝わってましたが、残念ながらボヤで秘伝書が失われました」

沙織 「そうなんだ……。残ってたら私の恋愛運、占って欲しかったな」

華 「因みに、家中ではそのボヤを……」

華 「『新三郎の大火』と呼んでいます」

沙織 「え? 名前付いてるの? 新三郎さん可哀想」

麻子 (ボヤなのに『大火』なのか……)

みほ&まほ 「♪ドゥンジュカンラー……」

【アンツィオ学園艦 女子寮 みほの部屋】

ボコ (……)

ボコ 「ココは……?」

まほ 「みほ、大丈夫か、みほ?」

ボコ (誰だこいつ? 入れ替わったみたいだから取り敢えずみほっぽく振る舞うか)

ボコ 「すみません、ご迷惑をおかけしました」

まほ 「気にするな、具合は悪くないか? あと、どこか痛いとか?」

ボコ 「はい……大丈夫です」

まほ 「良かった……少し休んだ方がいい」

まほ (踊ってる最中に急に倒れるから心配したが、大事無いようだ。只、気のせいかみほが他人行儀だな)

沙織 「大丈夫だよ、ボコ。その人には入れ替わりのこと話してるから」

ボコ 「オ、オゥ、そうか」

まほ (?)

麻子 「因みに今ボコを抱きかかえてるのは西住さんのお姉さんだ」

ボコ 「マジ!?」

まほ (!?)

華 「驚かれるのも無理は無いと思います。これがみほさんが話した入れ替わりです」

まほ (この部屋に入った時にみほから聞かされた入れ替わりの話)

まほ (話を聞かされた時は半信半疑だった。ふざけた話だとは思ったが、話している時のみほの表情から私を担いでいるとも思えなかった。こんなことが……)

ボコ 「あんたがみほの姉ちゃんか。オイラボコだせ」

まほ 「西住まほだ。私のことは知っているようだな」

ボコ 「ああ、顔を拝んだのは初めてだが話には聞いてるぜ」

ボコ 「20輛率いて8輛のみほに負けたへっぽこ隊長ってな」

華 「ボコ!」

麻子 (いきなり何を言い出すかと思ったらこの生き物は……)

まほ 「ほう……いきなりご挨拶だな」

ボコ 「ああ、いい機会だから言ってやる」

ボコ 「あんたらは去年負けた責任を全てみほにおっ被せて黒森峰から追い出したんだってな」

ボコ 「あいつが試合でやったことは人命救助だぞ。それなのに黒森峰では誰一人あいつが正しいと言えなかった」

まほ (こいつ、全部知っているのか?)

まほ (去年の高校戦車道全国大会で我々黒森峰はプラウダに敗れ、10連覇を逃した)

まほ (川に落ちた戦車の乗員を救助する為にみほは持ち場を離れ、その間にフラッグ車が撃破された。敗因はフラッグ車車長のみほの独断行動とされ、全責任を追う形でみほは黒森峰を追われた)

ボコ 「あんたはみほの姉ちゃんだろ? あんたが真っ先にみほを守るべきじゃなかったのか? 家族にすら見捨てられたあいつの気持ちを考えたことがあんのか?」

まほ 「貴様に何が分かる」

まほ (身内だからこそ甘い処分で済ませるわけにいかなかった。それを……)

ボコ 「オイラはみほと何度も入れ替わってきた。少なくとも離れて暮らしてきたあんたよりはみほの置かれた状況を見てきた」

ボコ 「何故オイラがこんなこと言うか分かるか? どうせあんたには分かんねえだろ!?」

ボコ 「みほはあんたを決して責めない。あいつの心根の優しさだけじゃねえ。あいつは今でもあんたを血を分けた姉として慕ってるからだ」

まほ (言うな……)

ボコ 「だから……代わりにオイラが怒ってんだ!」

まほ (みほの姿と声でそれ以上私を責めるな……)

ボコ 「それとも……」

ボコ 「自分より出来のいい妹がそんなに邪魔だったか?」

まほ 「!」

優花里 「ボコ殿、流石に言い過ぎです!」

沙織 「そうだよ、謝ってボコ!」

まほ 「……言い過ぎってことは……」

まほ 「言ってる内容自体は間違ってないという意味か……?」

優花里 (!?)

優花里 「いえ、そんなつもりは!?」

まほ 「『自分より出来のいい妹がそんなに邪魔』か……そう思いたければ思っていればいい」

まほ 「邪魔したな」

ボコ 「ケッ、おととい来やがれ!」

【アンツィオ学園艦 女子寮 入り口】

まほ 「ここまででいい」

優花里 「しかし……」 

まほ 「道は分かるし、この後、安斎のところにも寄りたいから」

優花里 「あの、先程の自分の発言ですが――」

まほ 「さっきは揚げ足を取るようなことを言ったが、悪意が無いのは分かっている。気にするな」

優花里 「はい」

麻子 「ボコには後でよく言っておきます」

まほ 「そうだな……」

まほ 「只、入れ替わりの相手がみほを大事に思っていることが分かって良かった」

まほ 「それから一つ聞きたいことが……」

まほ 「……」

華 (言い辛いことなのでしょうか?)

沙織 「どうか遠慮せずに言って下さい」

まほ 「ああ、……知ってたらでいいんだが……」

まほ 「……あいつは入れ替わりの間、みほの身体に変なことしてないよな……?」

【太平洋 東日本沖】

みほ (入れ替わってから分かったけど、今回入れ替わったのは人間の攻撃を受けたからだった)

みほ (深海に潜って行方を晦ませることが出来たから良かったけど、今後海面に浮上する時は警戒が必要)

みほ (海自か、米軍か、どちらに遭遇しても苦戦するなぁ……)

みほ (それでも、私はこの目で確かめたい)

みほ (この3ヶ月後の世界で大洗がどうなっているか)

みほ (入れ替わりが解けた時にその情報を持ち帰れるように)

みほ (怪我が治ったら大洗を探そう)

【大洗学園艦 甲板】

みほ (これって……一体……)

みほ (エリガンが……直立したまま固まってる)

ボコと入れ替わったみほが大洗で見たのは、直立したまま凍結したエリガンの姿だった。

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。

【大洗学園艦 校庭】

みほ (怪我が治ってから大洗を目指して……)

みほ (辿り着いたらエリガンを見つけた)

みほ (死んじゃったのかな? まるで石膏の像みたいに立ったまま固まってる)

みほ (あんこうチームの皆がテレビを観ながら口々に『大洗に蛾みたいな生き物が現れた』って言ってたけど、その蛾が倒したのかな? 私は踊ってる最中に入れ替わりが起きたからよく把握してない)

みほ (学園艦は廃墟のまま。艦の解体が始まる訳でもなく、かと言って艦を降りた皆が戻って来てる筈も無く)

みほ (この広い学園艦に私独り……自衛隊も居ない。自衛隊はどうしてここを放棄したんだろう?)

みほ (エリガンは他のボコラを食べてた。私自身此処に来るまでに人間の攻撃を受けた。ひょっとしたらボコラ達の中で生き残ってるのは、もうボコだけかもしれない)

みほ (もしそうだとしても、ボコ……貴方は独りぼっちじゃない)

みほ (私がいるから)

みほ (私が居ないとボコは早死にする)

みほ (私とボコの入れ替わりは3ヶ月の時間のズレがあると優花里さんが教えてくれた。優花里さんはボコから聞いたと言っていた)

みほ (私が今見ているのは未来の世界)

みほ (この世界の私は……)

ドゥルルルルル

みほ (!)

みほ (この駆動音! 間違いない……)

みほ (4号が此処にいる!)

キュラキュラキュラキュラキュラキュラ

みほ (キャタピラの音……)

みほ (居た! 戦車倉庫から出て来た)

みほ (大洗の校章もあんこうチームのエンブレムも消してあるし、色も違う。でも4号だ!)

スピーカーの声 「待って!」

みほ (今の声、まさか!?)

スピーカーの声 「私の名前は……」

スピーカーの声 「みほ! 西住みほ!」

みほ (戦車から声が……私の声だ)

スピーカーの声 「貴方は、ボコ? それとも私?」





スピーカーの声 「君の、名前は!?」





みほ 「私の名前も……みほ!」





スピーカーの声 「良かった……私だ」

スピーカーの声 「みぽりん、武部沙織だよ」

スピーカーの声 「西住殿、秋山優花里です」

スピーカーの声 「五十鈴華です。みほさん、合流出来てホッとしました」

スピーカーの声 「冷泉麻子だ。この姿の西住さんに会うのは初めてだな」

ボコと入れ替わり中のみほ(以降、ボコ中みほ) 「皆、どうして此処に?」

4号戦車搭乗中のみほ(以降、4号みほ) 「手短に説明します。お願い……」

4号みほ 「今の私達に力を貸して!」

4号みほ 「そして貴方には今日、11月3日16時30分に再びここに来て欲しいの。それが今の私だから」

ボコ中みほ (11月3日……実際は2ヶ月ちょっとのズレだったんだ)

4号みほ 「状況を説明します」

4号みほ 「そこに居るエリガンは大洗に現れた昆虫型巨大生物との死闘の末、凍結状態になりました」

4号みほ 「只その後も、まるで死んだ後も光り続ける蛍のように放射能を出し続けてます」

ボコ中みほ 「エッ、放射能!?」

4号みほ 「はい、放射能はボコの身体からも出てます」

ボコ中みほ 「エエッ!?」

4号みほ 「ボコ達は人間が海洋投棄した放射性物質を食べてから急速に進化して、体内に原子炉のような器官を獲得したって仮説があるの」

ボコ中みほ 「だったら今あんこうチームの皆危ないんじゃ……」

4号みほ 「大丈夫、戦車の中は特殊なカーボンで守られてるから外に出ない限り安全です」

4号みほ 「それに少し位外に出る分には直ちに影響は無いから」

4号みほ 「因みに車内から外に呼びかけられるように、自動車部が4号にスピーカーとマイクを付けてくれました」

4号みほ (レオポンさんチームがアンツィオに編入してくれてて助かったよ。F 1と言えばイタリアだもんね)

4号みほ 「ボコラに襲撃された知波単とプラウダの調査結果から、ボコラの出す放射能は20日で半減期を迎え、2、3年で殆ど影響が無くなることが分かっています」

4号みほ 「そこに居るエリガンを学園艦の外に出せば、数年後、学園艦は再び人が立ち入り出来ます」

4号みほ 「廃校は決定したし、少なくとも私達の高校在学中には大洗が人の住める場所には戻りません」

4号みほ 「それでも、大洗が幽霊船のように太平洋を彷徨い続ける未来は変えられます。ひょっとしたら数年後に廃校が取り消されるかもしれません」

4号みほ 「諦めず、最後までこの艦を見捨てずにやろう。そう思ったから」

ボコ中みほ 「うん、分かった。私はエリガンを担いで、彼女を海に返せばいいんだね」

4号みほ 「そう、ボコと入れ替わってる貴方はこの艦を救う最後の砦です。大洗の未来を貴方に託します」

ボコ中みほ 「任せて。ねえ、ところであの巨大昆虫は呼べなかったの?」

4号みほ 「うん、エリガンを倒した後、力尽きて海面に墜ちて、そのまま……」

ボコ中みほ 「そうなんだ……可哀想」

4号みほ 「放射能のせいで現在大洗には私達以外誰もいません。私達と4号をここまで運んでくれたサンダースの輸送機も私達の作戦終了までは戻ってきません。ただ、監視カメラやセンサーでボコの乗艦は自衛隊も把握している筈です。恐らく本土かヘリポート艦から戦闘ヘリがこちらに向かっているでしょう。だけど、どうか実行して欲しい」

4号みほ 「作戦名は……『進撃のボコ』!」

ボコ中みほ 「エッ……」

4号みほ 「ごめん、みんなで話し合って決めたから……」

ボコ中みほ 「……うん……それでいいよ」

4号みほ 「作戦開始です、パンツァー・フォー!」

ボコ中みほ (ボコラの皆、大洗を人類に返して貰います)

今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
次回から1が最も書きたかった「タイムラグのある入れ替わりが可能にしたWみほ共同作戦」に入ります。
作戦遂行日を11月3日にしたのは『シン・ゴジラ』でゴジラが現れた日と同じ日にしたかったからです。

ズシン、ズシン、ズシン、ズシン

4号みほ (ボコと入れ替わった私か凍結エリガンを運んでいる)

華 「あんな巨大な物を持ち上げるなんて……」

麻子 「ボコラ……まるで神の化身だ……」

沙織 「そうだよ……みぽりんは私達の守り神だよ」

優花里 「西住殿はその役目を果たそうとしています。後はボコと入れ替わってる西住殿を海まで守れば、我々の勝ちです!」

4号みほ 「麻子さん、ボコの私を先導するように走って下さい。ボコの私が気にならないように距離は200メートル位開けて下さい」

麻子 「あいよ」

4号みほ 「在来線の近くまで来たら砲撃準備です」

華 「在来線ですか?」

4号みほ 「はい、私は2ヶ月前にここに来てるので知ってるんです」

4号みほ 「恐らく自衛隊がしかけたトラップです。ボコが線路を跨ぐ時を狙って爆弾を搭載した列車をぶつけて来ます」

4号みほ 「上下線両方から同時に来るので先に4号の主砲で線路を破壊します。どちらを砲撃するかはその時に指示を出します」

沙織 「特攻じゃないよね?」 

4号みほ 「流石に無人列車だと思います」

沙織 (第二鹿島臨海鉄道、この学園艦を走る環状線)

沙織 (ボコラを恐れるあまり、人間はそれすら武器にしてしまうんだ)

4号みほ 「砲撃開始!」 

ドオオン! ……ドゴオオォォ……
ドオオン! ……ドゴオオォォ……

4号みほ 「主砲反転……砲撃開始!」

ドオオン! ……ドゴオオォォ……
ドオオン! ……ドゴオオォォ……

華 「上下線共破壊しました。これで在来線爆弾は来ません」

4号みほ 「はい、後は周囲を警戒しながら進みましょう」

沙織 「みぽりん、この後は何かあるの?」

4号みほ 「分かりません」

沙織 「えっ?」

4号みほ 「2ヶ月前の私は在来線爆弾の攻撃を受けて転倒しました」

4号みほ 「その時に担いでいたエリガンの下敷きになって……作戦は失敗したんです」

4号みほ 「ここから先は何が起こるか私にも分かりません」

4号みほ 「なので十分に警戒して下さい」

4号みほ (自動車部にカメラとモニターを搭載して貰ったとはいえ、本当はキューポラから出て外を見渡した方が視界は広い)

4号みほ (でも放射能のことを考えると余程のことが無い限り、キューポラから身体を出す訳にはいかない)

4号みほ (後はエリガンを担いでいるもう一人の私を信じよう)

4号みほ (共食いを経て異常進化を遂げ、巨大化したエリガンに対し、ボコのサイズは以前のまま)

4号みほ (自分より大きな相手を運ぶのは辛いのは分かるけど……頑張って)

ボコ中みほ (身体が……グシャグシャに潰れそうだよ……)

ボコ中みほ (私達人類は産まれた時からボコマニアだ)

ボコ中みほ (それを拒む者がどんなに強くても)

ボコ中みほ (関係無い)

4号みほ (ボコのアニメでもボコミュージアムでも、何でもいい)

4号みほ (それらを見た者はこの世界で一番の想い人を手に入れた者だ)

ボコ中みほ (ボコられ……)

ボコ中みほ (その為の命なんか惜しくない!)

4号みほ (どんなにボコがボコられても)

4号みほ (関係無い)

ボコ中みほ (どんなにボコが負け続けても)

ボコ中みほ (関係無い)

4号みほ (ボコられ……)

ボコ中みほ (ボコられ……)

Wみほ (ボコられ!)

優花里 (遂に凍結エリガンを抱えた西住殿が甲板の端まで来ました……)

優花里 「いっ……」

優花里 「いっけえええ! 西住殿!」

ボコ中みほ 「ウアアアアアッ!」

ボコ中みほ (ボコられ!!)

ドオオオオン!

ボコ中みほ 「キャアアアアッ!」

麻子 (何ッ!?)

華 (ボコの両腕が吹き飛びました……)

沙織 「何があったの!?」

優花里 「モニターを! ……これは……」

優花里 「自衛隊のアパッチです!」

通信員 「目標、両腕を損傷」

戸川 「前にここで戦ったワニ頭よりこいつは脆い。いけるぞ!」

西郷 「今こそ我ら自衛隊の力が試される時だ! 一気に畳みかけろ」

4号みほ (後少しだった)

4号みほ (もう一人の私が海に投げ込もうとした凍結エリガンが甲板の端に転がっている)

4号みほ (本当に後少しで海に落ちそうなのに、私達を嘲笑うかのように辛うじて留まっている)

4号みほ (まるで押せば落ちそうな位だが、推定体重が10万トン近い相手なんて押してどうこうなるものじゃない)

4号みほ (自衛隊のヘリはもう来ていたんだ)

4号みほ (恐らく……私達から死角になる甲板より低い場所、学園艦の船腹辺りでホバリングしながら私達を待ち伏せしていた)

4号みほ (そして私達が海に近づいたところで上昇して左右から同時にミサイル攻撃)

4号みほ (西住流、いや、戦車道は航空戦力を考慮しない。試合に使われることが無いから)

4号みほ (所詮戦車道は競技でしか無かった)

今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました。
余談ですが奇しくも今月は『君の名は』と『シン・ゴジラ』が共に地上波初放送されます。

ボコ中みほ 「ウグアア……」

ズシイィン!

観測員 「目標、転倒!」

西郷 「目標を立たせるな。足を狙え」

優花里 「西住殿おおおッ!」 

4号みほ(以降みほ) 「いえ、もう入れ替わります」

みほ (入れ替わりのトリガーはボコられること。これだけダメージを受けたら……)

ボコ 「痛でええええ!」

ボコ 「アアアア……腕が!? オイラの腕があああ!」

みほ (入れ替わった!)

バラララララ!

ボコ 「ウガアアアア!」

みほ (戦闘ヘリの機関砲!?)

みほ 「ボコ!」

みほ (このままだとボコが死んじゃう!)

みほ (でも、あんこうチームの皆を危険に晒す訳には……)

沙織 「行ってあげなよ……じゃなかったね。一緒に行こうよ」

みほ 「沙織さん……」

みほ 「今ボコに近づけば、自衛隊の砲弾及び誘導弾の直撃や急性被曝の危険性があります。ここにいる者の生命の保証は出来ません」

優花里 「元より覚悟の上です」

麻子 「危険だというなら尚のこと操縦は私に任せてくれ」

華 「戦車は火砕流の中だって突き進む、ですよね」

沙織 「今更水くさいよ」

みほ 「みんな……みんな、ありがとう」

ボコ 「こいつら……遠くから一方的に……」

観測員 「目標、脚部を負傷。流血を確認」

西郷 「次でトドメだ、ヘルファイア全弾発射。目標、ボコラ頭部、距離700……発射用意……」

観測員 「射撃待て、射撃待て!」

観測員 「目標周辺に戦車を確認! 射線上に戦車が居る!」

【都内 首相官邸4階 大会議室】

花森 「戦車ですって?」

郡山 「何故戦車が……?」

財前 「花森大臣、戦車から人が数名降車しました。皆、若い女性と思われるとのことです」

花森 (!)

財前 「戦車は形状からドイツ製4号戦車と推測されます」

矢口 「4号戦車……?」

財前 「はい、戦時中の戦車です」

花森 (まさか……戦車道履修者?)

花森 (だとすれば私の後輩達ということに……)

財前 「射撃を開始して構いませんか?」

金井 「そんなのテロリストだろ? 構わす撃てばいいじゃないか」

花森 「いえ、目標付近にいる人は戦車の操縦が可能な一般人の可能性があります」

花森 「総理、それでも撃ちますか? いいですか?」

花森 「総理!」

大河内 「中止だ、攻撃中止! 自衛隊の弾を国民に向けることは出来ない!」

【大洗学園艦 甲板】

みほ (自衛隊のヘリが遠ざかっていく)

沙織 「ふうーっ、助かったあ……」

華 「皆さん、これ以上外に居てはボコラプルームが危険です。早く中へ」

みほ (ボコ……)

ボコ 「フーッ……痛ェ……ハヒッ、ハヒッ……」

今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました
昨晩地上波で改めて観た『シン・ゴジラ』面白過ぎ

ボコ 「ハーヒー、ハーヒー、ハーヒー……」

みほ 「ボコ!」

ボコ 「ヘッ! この位何ともないぜ……イデデデデデ!」

みほ 「ボコ、大丈夫?」

ボコ 「流石にここまでヤラれると直ぐにって訳にはいかねえが、オイラの身体は再生するからよ。イデデ……」

みほ (両腕が吹き飛び、両足が血に染まったボコが横たわってる)

ボコ 「みほ?」

みほ 「聞いてるよ、ボコ」

ボコ 「ハーヒー、ハーヒー……何でお前ら大洗に来てんだよ……」

みほ 「……」

ボコ 「理由、話せよ……ウグッ! 痛え……」

みほ 「うん。話すね」

ボコ 「そうか……。事情は分かったけどよ、さっきお前達戦車から降りてたが大丈夫か?」

みほ 「少しの間なら大丈夫。それに今は戦車の中からマイクで話しかけてるから安全だよ」

ボコ 「みほ……昔、交換日記にオイラが博士の話書いただろ? 覚えてるか?」

みほ 「うん、ボコ達の研究をされてた牧教授のことだね。覚えてるよ」

ボコ 「日記には書かなかったけど、実は博士は……脳腫瘍になったんだ」

ボコ 「ある日博士が『自分は脳腫瘍になった。直に死ぬ。もう会えない』って言い出して」

ボコ 「オイラ達は動揺した。そして博士を心配したし、励ましもした。そしたら博士が『自分達人間は悪魔の末裔だ。今後一切人間に関わってはいけない』って言ったんだ」

ボコ 「ひょっとして博士が病気になったのはオイラ達が出してた放射能のせいだったのかなあ……」

ボコ 「博士は他の人間が自分みたいに病気にならないように、オイラ達を人間から遠ざけようとしたのかなあ?」

みほ (ボコの声が涙声になってる)

華 「しかし貴方達は学園艦に現れた。何故ですか?」

ボコ 「博士がオイラ達のところに来なくなって……。オイラは博士に会いに行きたかったけど博士の言いつけを守ろうとした。他の奴等は博士に会いに行くって言って出かけた。そしたら……」

ボコ 「帰ってきたアイツ等は口々に言ったんだ」

ボコ 「博士の居場所を聞こうとしてどデカい船に乗ったら、人間共が問答無用で撃ってきたって。博士の言う通り、アイツ等は悪魔の末裔だって」

華 (知波単以降の悲劇はこうして引き起こされたのですね)

みほ 「博士の脳腫瘍とボコの放射能の因果関係は今となっては分からないけど、牧博士はボコと出会ったことを後悔してないと思うよ」

ボコ 「何でだよ?」

みほ 「もし本当にボコの放射能のせいで博士が病気になってそれを博士が恨んでたら、博士はボコ達のことを学会に発表してボコ達を駆除するように国に働きかけてたかもしれない」

みほ 「私もあんこうチームの皆と一緒に調べたんだけど、牧博士はボコに関する論文を発表していないの」

みほ 「自分以外の人間がボコ達と出会って無用の争いが起きてはいけない。人間の手からボコ達を守りたい……」

みほ 「博士はそう思ったから今後人間に会ってはいけないって言ったんだと思う」

みほ 「私だって、ボコと出会ったことちっとも後悔なんてしてないから」

ボコ 「みほ……」

みほ (他者と触れ合うと軋轢が生まれることもあるし、お互いが善意や信念で行動しても傷付けあうことだってある。でもそれと同時に素晴らしい出会いもあれば、いい思い出が作れることだってある)

みほ (私はこうして貴方と出会えたことが嬉しいよ、ボコ)

ボコ 「でも、オイラ達のせいで大洗は廃校になったんだろ?」

みほ 「まだ諦めてないよ」

みほ 「そこに居る凍結状態のエリガンを船の外に移せたら、数年後、この大洗は人が住めるようになるから」

みほ 「そうしたら、廃校が取り消されるかもしれない」

みほ (希望的観測に過ぎないことは分かって居る。それでも私は……)

ボコ 「みほ、オイラに任せろ」

ボコ 「そこに転がってるアイツを海に戻せばいいんだな」

ボコ (物言わぬエリガンが甲板の端っこに転がっている)

ボコ (……)

ボコ (お互い、人間に迷惑かけるのはもうヤメにしようぜ)

ボコ 「グッ! ……チキショウ……動きやがれ……」

麻子 (傷ついた身体に鞭打って、ボコが凍結エリガンを頭で押してる……)

優花里 (足を負傷して立ち上がることもままならないから、腹這いになって匍匐前進のようになって押してます)

沙織 (あんなに血を流して……辛いだろうに……)

華 (私達に出来ることは……)

みほ 「ボコーッ! 頑張れーッ!」

あんこうチーム(みほ除く) 「!」

みほ 「頑張れーッ、ボコーッ!」

沙織 (そうだよ!)

華 (自分達にも)

麻子 (出来ることが)

優花里 (あります!)

あんこうチーム一同 「ボコーッ! 頑張れーッ! 頑張れーッ! ボコーッ!」

あんこうチーム一同 「ボコーッ! 頑張れーッ! 頑張れーッ! ボコーッ!」

ボコ (思えばオイラはエリガンに一度も勝ったことがねえ)

ボコ (でも今回だけは何が何でも勝たなきゃいけねえんだ……)

ボコ (文字通り這いつくばってでも、コイツ等の楽園を奪っちまったことへの償いをするんだ!)

あんこうチーム一同 「ボコーッ! 頑張れーッ! 頑張れーッ! ボコーッ!」

華 (時間ばかりが刻一刻と過ぎて行きます。自衛隊は恐らく第二波がこちらに向かっている筈)

沙織 (このままだとボコの体力が保たないよ)

優花里 「あの……後日、体力回復して怪我が癒えたボコ殿に改めて押して貰っては?」

麻子 「それは最後の手段だ。次があるか分からない」

麻子 「自衛隊が簡単にボコを駆逐出来ることが分かった以上、自衛隊が一時的に撤退しているこの機会を逃すべきではない」

優花里 「それはそうですが……」

みほ (そうだ!)

みほ 「ボコーッ! 押すんじゃなくて、寄り掛かって身体を起こしてから体重を掛けるの!」

ボコ 「応! オイラの力、見せてやる!」

華 (なる程、寄りかかりながらなら、怪我した足でも身体を起こせます)

沙織 (推定体重数万トンのボコが体重を掛けながら押したら!)

優花里 (動くかもしれません!)

ボコ 「ウオオオオーッ!」

優花里 (エリガンに寄りかかりながら、ボコが身体を起こしました!)

ボコ (いっけええエエ!)

ボコ 「ギャアアオオ!↑ グオオオォ……↓」

華 「この雄叫び、鯨の鳴き声や列車の汽笛を混ぜたかのようです」

優花里 「自分は錆びたシャッターを無理やり動かす時の音を連想しました」

沙織 「私にはブレーキを掛けたバスをゆっくり引っ張る音みたいな鳴き声に聞こえたよ」

麻子 「まるで松ヤニを付けた革手袋でコントラバスの弦を掴んで引っ張ったかの様な咆哮……」

みほ (これが……ボコの本気!)

グラッ、グラグラッ!

ガラガラガラ……

ドッパアアン!




優花里 (凍結エリガンが海に落ちました……)

華 「これで大洗の除染に光明が見えます……良かった」

みほ 「ボコ、ありがとう。頑張ったね……」

投稿の間隔が空きましたが今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

ボコ 「痛でー……。ハヒッ、ハヒッ、ハヒッ……」

みほ 「ボコーッ!」

ボコ (!?)

ボコ 「バカヤロウッ! 戦車から出る奴が居るか!? オイラから放射能が出てるって言ったのはみほじゃねえか!」

みほ 「分かってる。それでもきちんとあなたの顔を見てお礼を言いたいから」

みほ 「ボコ、本当にありがとう」



戦車を降りた少女達はボコの前に立つと深々とお辞儀をした。みほを先頭に、他の者達はみほの後ろに並んで、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。



ボコ 「ヘッ、オイラが本気出せばこんなもんよ……も、もういい! 分かったから頭上げろ」

優花里 「あの……国立新美術館では酷いこと言ってすみませんでした!」

ボコ 「それもいいってことよ。……前に言ったろ? これでも優花里には感謝してるって」

優花里 (私こそ、あなたには感謝しきれません)

ボコ 「お、お前達全員とっとと戦車に戻りやがれ!」

みほ 「あーっ!」

優花里 「どうしたのですか、西住殿?」

沙織 (戦車の中に戻った途端……忘れ物かな?)

みほ 「マイク貸して下さい」

ボコ (あいつ等ようやく戦車の中に戻りやがった)

ボコ (それにしても戦車道で乗員を守るのに使われてる特殊カーボンって放射能も防ぐのか、すげぇなぁ)

みほ 「ボコーッ!」

ボコ (ん?)

みほ 「あなた、未来が変わる前に私のこと食べたでしょ!?」

ボコ 「ど、ど、どうしてそれを?」

みほ 「優花里さんから聞いたんだからね」

ボコ 「あああ、すまん! それ一回だけだって!」

みほ 「一回だけ、うーん……一回で死んじゃうんだから何回でも同じだよ」

ボコ 「あ、すまん!」

華 (手を合わせて謝ろうとしたら両手が無くてあたふたしてるボコ)

沙織 (仕草は微笑ましいのにホラーだよ)

みほ 「そういえば以前……」

みほ 「私が死んだ後に、どうやって私が生きてる時間まで遡って入れ替わったの?」

ボコ 「みほが毎晩抱いて寝てるオイラの姿をしたぬいぐるみを食ったんだ」

みほ 「へ……あ……あ……あれを食べたあ?」

ボコ 「えっ?」

みほ 「バカ! 変態!」

ボコ 「え、えぇ…」

ボコ 「オゥ、オゥ、オゥ、言ってくれるじゃねえか!」

みほ 「あのぬいぐるみ、私がどんなに大事にしてたか知ってるよね!」

ボコ 「仕方ねえだろ! ああでもしないと入れ替わり出来なかったんだから!」

沙織 「隊長、サンダースより暗号通信!」

みほ 「!?」

沙織 「トラブル発生、私達の回収に来られないとのことです」

みほ 「沙織さん、『了解した』と暗号で返して下さい」

沙織 「はい……」

みほ 「皆さん、サンダースは自衛隊機に捕捉されたものと思われます」

みほ 「これで私達は本土に戻る術を失いました」

みほ 「自衛隊の第二波が間もなくここに来る筈です。その時は速やかに投降しましょう」

華 「退学届は事前に出しましたがアンツィオ高校には迷惑をかけることになります」

沙織 「私達を受け入れてくれたアンツィオには悪いことしちゃったね」

優花里 「アンツィオに残留する元自動車部への風当たりが強くならなければいいのですが」

麻子 「皆、自分の心配もした方がいい。私はおばあにこっぴどく叱られて終わりだろうが」

今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

優花里 「流石にそれでは終わらないのでは?」

麻子 「無論冗談だ」

麻子 「私達は仲良く犯罪者だ。立入禁止の学園艦に無断で乗り込み、しかも自衛隊の重要な作戦を妨害した。保護者に説教されて済む話じゃない」

麻子 「それにボコラを助けようとしたことで、ボコラを憎む人達から後ろ指を差されるだろう」

麻子 「だから捕まる前に皆で口裏を合わせたい」

沙織 「考えがあるの?」

麻子 「無罪放免は無理でもやれることはやっておきたい」

投下漏れがあったので追加しました
読んで下さった皆さんありがとうございました

みほ 「麻子さん、その前に少しだけボコと話をさせて下さい」

麻子 「分かった」

みほ (これだけはボコに伝えなきゃ)

ボコ 「みほーッ! シカトしてんじゃねえ!」

みほ 「ボコ、ごめん」

ボコ (えっ?)

みほ 「ぬいぐるみを食べたことはもう責めないから」

ボコ (何だコイツあっさり引き下がりやがった……?)

みほ 「入れ替わってる間は好きな物食べていいから」

みほ 「オッドボールももうしないから」

みほ 「だからもう人間と戦うのは止めて!」

みほ 「私はもう、ボコと人間が戦うところを見たくない……」

ボコ 「んなこと言ってもよう、先に手出してきたのは人間だせ」

ボコ 「さっきだってヘリの連中、オイラに向かってバカスカ撃ちやがって」

ボコ 「それにオイラはどんなにボコられても逃げないのが信条だ。そこは簡単には曲げられねえ」

みほ 「そうだよね……でもね、ボコ」

みほ 「このままだと死ぬよ」

みほ 「さっきまであなたと入れ替わってたのは9月1日の私」

みほ 「そして今日は11月3日」

みほ 「この間、一度も入れ替わりが起きなかったの」

みほ 「それが何を意味するか……分かるよね」

みほ 「だからもう人間とは戦わないで。ボコは私達に危機を告げることで私達を救ってくれた。今度は私がボコを救う番」

ボコ 「みほ、舐めんなよ」

ボコ 「オイラはそんなに弱っちく見えるか? そんなに頼りないか?」

みほ 「ボコ、お願い! 話を聞いて!」

ボコ 「エリガンを海に落としたオイラの勇姿を見たばかりのお前にそんなこと言われるなんて、オイラ情けなくてよう……」

みほ 「私はただ、あなたと人間が争う世界を変えたいの。あなたに生きて欲しいの!」

ボコ 「オイラは好きにした。お前達も好きにしろ」

みほ 「ボコーッ、待ってえええ!」

ドッパアアン!

みほ 「ああ、行かないで……」

みほ (さっき戦車を降りた時、目に映ったのは美しい夕焼けだった)

みほ (太陽が、黄昏時の空と海を赤く染めていた)

みほ (その太陽も、ボコが海に飛び込んで姿を消したのに呼応するかの様に水平線の下に沈み)

みほ (私達あんこうチーム以外に人気の無い学園艦を夜の帳が包み込んでいく)

みほ (漸く会えて言葉を交わせても、同じ時間を過ごせても)

みほ (私の想いはボコに届かなかった。それどころか私はボコの心を傷つけた)

みほ (ボコ……ごめんね)

みほ (ねえ、私たちは、深海と地上にひきさかれる、恋人みたいだね)

途中寝てしまった
今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

【都内 首相官邸4階 大会議室】

財前 「大臣、作戦を妨害した戦車の乗員を拘束したと報告がありました」

花森 「分かりました。保護した彼女達の様子は?」

財前 「……負傷者はいませんが、精神的ショックを受けた者がいるとのことです」

花森 「無理もありません。彼女達が落ち着いたら東京まで移送をお願いします。彼女達の保護者及びに学校への連絡はこちらで行います」

大河内 (自衛隊の作戦を妨害した戦車を攻撃するか否か私に問うた時、防衛相は僅かにかぶりを振っていた)

大河内 (目で私に『撃つな!』と必死に訴えていた)

大河内 (総理である私が気圧されてしまった。あれが元戦車乗りの気迫……)

赤坂 (かつて北アフリカの大学に留学中、欧州の強豪校を次々と撃破し『女ロンメル』と呼ばれた防衛大臣)

赤坂 (大臣が女学生時代に率いた黒森峰は彼女の名を冠した『花森峰』の異名で恐れられ、当時高校戦車道最強を誇った)

赤坂 (正に女傑だ)

赤坂 (もう一人の女傑は今頃どうしてるだろう)

東 「総理、既に自衛隊からは本日の作戦を持ってボコラを殲滅したとの報告を受けております。ここは会議を終わらせてもよろしいかと」

大河内 「うむ、分かった」

【都内 首相官邸 二階会議室 巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)】

矢口 (ボコラの1体、個体名ボコが大洗に出現し、自衛隊と交戦)

矢口 (思わぬ闖入者にて一度は撤退を余儀無くされた自衛隊だったが、その後海中に逃れたボコを潜水艦の魚雷攻撃で仕留めた)

矢口 (その約2か月前、エリガンと呼ばれる個体は、後に我々が『モスラ』と名付けた昆虫型巨大不明生物と相打ちとなり、凍結状態となった)

矢口 (エリガンは共食いする個体で、ボコ以外の個体は既にエリガンに捕食されたと推測される)

矢口 (ボコラ騒動もこれにて終結。巨災対も解散か……)

安田 「あっ! あっ! ああ……こんなんアリか!」

矢口 「えっ?」

尾頭 「この動画を見て下さい」

矢口 (……これは!?)

【都内 首相官邸 五階 官房長官執務室】

矢口 「大洗で拘束された少女達と話がしたい」

赤坂 「どうした?」

矢口 「ネットで興味深い動画が見つかった」

赤坂 「その動画を観たら未成年者に興味を示すようになるのか?」

矢口 「これを見て欲しい」

>>313は書き間違えました。
>>315と差し替えて下さい。

寝ボケてる……ダメだ

【都内 首相官邸 五階 官房長官執務室】

矢口 「大洗で拘束された少女達と話をさせて下さい」

赤坂 「どうした?」

矢口 「ネットで興味深い動画が見つかったんです」

赤坂 「その動画を観たら未成年者に興味を示すようになるのか?」

矢口 「これを見て下さい」

動画の音声 「ボコーッ! 頑張れーッ! 頑張れーッ! ボコーッ!」

動画の音声  「ボコーッ! 押すんじゃなくて、寄り掛かって身体を起こしてから体重を掛けるの!」

動画の音声  「応! オイラの力、見せてやる!」

赤坂 「これがネットに上がっていたのか?」

矢口 「はい、複数の動画投稿サイトで確認されました。恐らくものすごい勢いで拡散しています」

赤坂 「ボコラは意思疎通が可能で人間との友好関係を築ける生物だった……政府がこれを見落としていたのは……」

赤坂 「大失態だそ。本来なら巨災対が真っ先に気付くべきだろうが」

矢口 「それについては返す言葉もありません。今から動いても遅いですが……」

赤坂 「ああ遅い。ボコラを殲滅した今となってはな!」

矢口 「せめてこの動画を撮影したであろう人物と会って話がしたいんです」

赤坂 「その動画に関係なく俺は彼女達に会うつもりだった。一緒に来い」

矢口 「どうして会おうとしていたのですか?」

赤坂 「俺は今でこそ東京に選挙区を持つが、大学に入るまでは熊本に住んでた」

赤坂 「俺は高校時代の友達の娘さんに会いに行くんだ」

今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

赤坂が熊本出身というのはあくまでこのSS内だけの設定です
実際のところ赤坂は選挙区が東京というのは判明してますが出身は不明です
なお、矢口は山口県出身と明記されています

《翌年の夏》

【静岡 東富士演習場】

ねこにゃー 「去年サンダースに編入したばっかりの時は酷い扱いだったにゃー」

ももがー 「『そもそも生え抜きじゃないので出世に無縁な大洗のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、戦車道の異端児、そういった人間の集まりだ。気にせず好きにやってくれ』なんてあんまりだもも」

左衛門佐 「しかし我らはその前評判を見事覆してサンダースの優勝に貢献した!」

おりょう 「昨年卒業したぴよたん先輩もきっと喜んでくれるぜよ」

カエサル 「エルヴィンが編み出した長距離索敵陣形の賜物だな」

エルヴィン 「買被りだ。アリサ隊長の手腕だよ」

みほ 「折角応援に来て頂いたのに負けてしまって……」

赤坂 「あの戦力で決勝まで進んだ。大したもんだ」

みほ 「去年、ボコが居なくなって落ち込んでた私に赤坂先生がかけてくれた言葉、今でも覚えています」

みほ 「『スクラップアンドビルドでこの国はのし上がって来た。君も立ち直れる』」

みほ 「何度ボコられても立ち上がる……それはボコと一緒なんだって」

赤坂 「君のボコ好きは相変わらずだな。……もうこんな時間か。失礼する」

みほ 「はい、赤坂先生ありがとうございました」

沙織 「赤坂さん、相変わらずカッコ良かったなあ」

麻子 「落ち着け沙織。相手は沙織の親御さんと大して変わらない年だぞ」

優花里 「最初は驚きました。総理大臣補佐官と知り合いとは西住流の人脈恐るべしです」

華 「もし赤坂補佐官と花森大臣が動いてくれなかったら昨年私達はどうなっていたやら」

みほ (去年、大洗で自衛隊に投降することを決めた時、麻子さんがあんこうチームの皆に提案したこと、それは……)

みほ (私達が自衛隊に拘束される前に皆で口裏を合わせることだった)

みほ (大洗に潜入した目的を聞かれたら『ボコとのコミュニケーションが可能か検証し、可能ならボコとの説得と和解を目指す為だった』と話す)

みほ (私とボコとの入れ替わりの話は伏せる)

みほ (これが麻子さんの提案だった)

みほ (私達が麻子さんの提案通りに振る舞ったことと)

みほ (優花里さんが大洗で撮影と編集をした動画を動画投稿サイトにアップしたことは)

みほ (ボコ達とのコミュニケーションを模索せずに戦後初の防衛出動を布告した政府への批判に繋がった)

みほ (ちなみに自衛隊が大洗に駆けつけるまでの僅かな時間で動画を編集してネットに上げた優花里さんの手際の良さは神がかっていた)

みほ (被害を防ぐ為に害獣として問答無用で駆除すべきだったという意見もあったが、自衛隊の防衛出動は日本と東アジア周辺諸国との軋轢を生み、それに呼応するかのように北朝鮮が血迷ったかのように弾道ミサイルを日本近海に撃ち込んだことで私達に関する世間の関心は薄れていった)

みほ (そして何よりも、嘗て私の両親と親交があったという赤坂先生と、黒森峰OG会会長の花森大臣の尽力により、私達は不起訴となった)

みほ (国もまた、大洗の廃校を決定した経緯を蒸し返されるのを良しとしなかったのかもしれない)

みほ (只、アンツィオ高校は半年間の対外試合禁止と補助金大幅減額の処分を受け)

みほ (私達あんこうチームは4号戦車を接収され、全ての戦車道大会の無期限出場停止処分及び2週間の停学処分を受けた)

みほ (元々大洗に行く前にアンツィオには退学届を出していたが、アンチョビさんが握り潰していた)

みほ (アンチョビさんには『退学して楽になろうと思うな。本当に申し訳ないと思っているなら来年アンツィオを優勝させろ』と言われた)

みほ (新ドゥーチェことカルパッチョさんの元、アンツィオ高校の戦車道履修者は文字通り一丸となってチームの建て直しに奔走した)

みほ (そんなアンツィオの状況に責任を感じた私達あんこうチームもまた、出場停止処分が解けてから練習や試合に加わり、皆と一緒に戦ってきたが、アンツィオは決勝でサンダースに敗れた)

赤坂 (自分でもリアリストのつもりだが、君の屈託の無い笑顔を見ると多少なりとも罪悪感に駆られる)

赤坂 (西住みほ、去年私が君を助けたのは善意からではない)

赤坂 (君のご両親とは君が生まれる前に親交があった。そう、嘗てはあったのだ)

赤坂 (昔、君の父親に『実を言うと俺もしほさんに惚れていた』と言ったら『そんなことは知ってたさ。だがお前が選んだのは政治だろ』と返されたのが懐かしい)

赤坂 (その昔、自分が想い人の眼中に無かったことを知った男が『鉄屑を乗り回すしか能の無い女が』と暴言を吐いてしまったこと)

赤坂 (そのことへの贖罪を君を通して行っているに過ぎない)

赤坂 (さらに言えば花森防衛相が君を庇ったのは、補助金を削られたアンツィオに君を留めておいた方が、黒森峰を優勝させるのに都合が良かったからだ)

赤坂 (『流石に家元のお嬢様かつ優勝校の隊長に対し出場資格剥奪まではする訳にはいかないが、下手に退学させて他の強豪校に入学されては困る』と大臣は仰った)

赤坂 (しかもこの件は家元も了承済と言うのだから戦車道の世界もドロドロしている)

赤坂 (昨年優勝した大洗、一昨年優勝したプラウダが廃校になった状況で、流石に3年連続優勝を逃したとあっては、黒森峰の立場、ひいては黒森峰を指導してきた西住流の立場が無くなってしまうから形振り構ってられなかったのは分かる)

赤坂 (しほ、今年黒森峰が一回戦でサンダースに敗れた時、君は何を思った?)

内容がだいぶ駆け足になってますが今日はここまで
読んで下さった皆さんありがとうございました

『○HK ク○ーズアップ現○ あの時学園艦で何があったか』


ナレーション ―カチューシャさん(仮名)は当時、プラウダ高校の戦車道履修者の隊長として50輌の戦車を指揮しました―



カチューシャ 「学園を守る為にカチューシャをはじめプラウダの生徒は勇敢に戦ったわ。その結果私達は何も知らないままボコラの出す放射能を浴びてしまったのよ」



ナレーション ―カチューシャさんの身長は127cm、放射能の影響だと彼女は言います―




カチューシャ 「本当だったらカチューシャはもっともっと背が伸びてたのよ。ボコラのせいよ。そして重い腰をなかなか上 げようとしなかった国が悪いのよ。知波単が襲撃された時点で国が自衛隊を出動させてたらプラウダは廃校にならずに済んだわ!」

ナレーション ―ノンナさん(仮名)は当時副隊長としてカチューシャさんを支えていました―




ノンナ 「あの日のことはよく覚えています」


ノンナ 「涙ながらに母校を去り避難所で暮らす私達の前に、眼鏡の中年の男がガイガーカウンターを片手にハイエースから降りて来ました」


ノンナ 「私はその男を問答無用でボコりました。『この男はカチューシャを狙っている。放っておけばカチューシャに<ピー>なことや<ピー>なことを するに違いない。カチューシャを守らねば』その一心からでした」




ナレーション ―ノンナさんが暴行を加えたのは市の環境業務課から派遣された調査員でした。国はプラウダ高校の被災者への放射能による健康被害を調査していました。ノンナさんは駆け付けた警察官に逮捕されました。―




ノンナ 「早とちりとはいえ申し訳なかったと思っています」


ノンナ 「そして私の場合、176cmまで身長が伸びました。これも放射能の影響です」




テロップ ―ノンナさんは大学で戦車道を履修されてますが、スポーツをするうえで体が大きいことは有利にはならないのでしょうか?―




ノンナ 「戦車道において大き過ぎる身体は仇となります。狭い戦車内部で行動する度に『頭をぶつけないか』『胸が当たらないか』『お尻がつっかえないか』を意識しながら行動することになり、それがコンマ一秒を争う試合において命取りとなるのです」

ノンナ (私達がプラウダを放棄して早2年……)


ノンナ (当初ロシアへの留学を考えていたカチューシャはロシア語の習得が遅れたことを理由に国内の大学に進学)


ノンナ (私も同じ大学に進学した)


ノンナ (自衛隊がボコラを殲滅してもカチューシャは変わらなかった)


ノンナ (寧ろ自らの手で復讐を遂げる機会を永遠に失ったことでカチ ューシャはもはや前に進めなくなった)


ノンナ (今回テレビ局の取材が来たのも私達が反政府デモの中心人物だからだ。1年生のうちからこんなことをしていたら、じきに大学での戦車道も続けられなくなるだろう)


ノンナ (最早私に出来ることはどこまでも彼女につき従うことのみ)


ノンナ (この狂った世の中でみんな何かに酔っぱらってないとやってられなかったのだ)


ノンナ (それは戦車だったり、ロシアだったり、カチューシャだったりする)


ノンナ (みんな……何かの奴隷だった……)

《某県 墓地》


絹代 「あなたは……」


福田母 「……お久しぶりです」


絹代 「ご無沙汰しております!」

福田母 「あの子の為にお花を……ありがとうございます」


絹代 「せめてもの手向けです……」


福田母 「今は何を?」


絹代 「高校に通っています」


福田母 「そう……戦車には?」


絹代 「私は戦車道の無い高校に編入しました。私には戦車に乗る資格がありません」


福田母 「……」


絹代 「……」


福田母 「昨年、貴方の口から娘が亡くなったことを聞かされた時、私正直貴方のこと恨みました」

福田母 「でも同時に忘れられないんです。生前あの子が帰省した時に話していたことが」


福田母 「『西隊長は自分の憧れだ。自分は隊長の元で戦車道に励むことが出来て嬉しい』と」


福田母 「『あの方は真っ直ぐで、一生懸命で、仲間を大切にする方だと』」


福田母 「貴方だってあの時精一杯戦ったのでしょう?」


絹代 「無論全力で戦いました。しかし、あの日英霊となった58名は私の指揮で命を落としました。そして生還者のうち13名は身体に障害が残りました」


絹代 「全ては私の責任です」


福田母 「人は神様ではありません。願えば、頑張れば成し遂げられるというのは傲慢かつ能天気な考えです」


福田母 「私は、あの子に生きて帰って来て欲しいというたった一つの切実な願いも叶わなかった」


絹代 「……」

>>330は書き間違えました。?
>>332と差し替えて下さい。

福田母 「でも同時に忘れられないんです。生前あの子が帰省した時に話していたことが」


福田母 「『西隊長は自分の憧れだ。自分は隊長の元で戦車道に励むことが出来て嬉しい』と」


福田母 「『あの方は真っ直ぐで、一生懸命で、仲間を大切にする方だ』と」


福田母 「貴方だってあの時精一杯戦ったのでしょう?」


絹代 「無論全力で戦いました。しかし、あの日英霊となった58名は私の指揮で命を落としました。そして生還者のうち13名は身体に障害が残りました」


絹代 「全ては私の責任です」


福田母 「人は神様ではありません。願えば、頑張れば成し遂げられるというのは傲慢かつ能天気な考えです」


福田母 「私は、あの子に生きて帰って来て欲しいというたった一つの切実な願いも叶わなかった」


絹代 「……」

今日はここまで
今日は試しに行間を大きめにしたのですが、空け過ぎたので次回から元に戻します
読んで下さった皆さんありがとうございました

福田母 「例え成果を得られなかったとしても、あなた方は学園艦とそこで暮らす方々の為に文字通り死力を尽くしました。そのあなた方を責めることは娘の死を汚すことになります」

絹代 「しかし私はこうしてのうのうと生きてます。何の償いも出来ないまま!」

福田母 「のうのうとは生きてこなかったでしょう? 貴方だってずっと辛かったでしょうに」

福田母 「本当はやりたいのでしょう? 戦車道を」

絹代 「……」

福田母 「あなたがいつまでも苦しんでいたら娘もまた浮かばれません」

福田母 「そろそろ、好きになさってはいかがですか?」

絹代 「……私は戦車道を続けていいのでしょうか?」

福田母 「ええ、きっとあなたは立派な隊長になれるわ」

福田母 「挫折を味わってそこから這い上がった人の方が強くなるに決まってますもの」

絹代 (福田……お前はいい母上を持ったな)

絹代 (私は……福田の尊敬に値する戦車乗りになろう。それが私の償いだ)

《さらにその翌年》
【北海道 ボコミュージアム 入り口】

みほ 「こんなところにボコミュージアムがあったんだ」

優花里 「はい、事前に調べておきました。スキー場に行く前にここで少し楽しんでみてはいかがでしょうか?」

華 (元々は旧あんこうチームでのスキー旅行という目的で集まりましたが、みほさんにはこちらの方が楽しめそうですね)

みほ 「みんな、入ろうよ! ボコミュージアム」

【北海道 ボコミュージアム BOCO SHOWステージ】

ボコ 「オウッ、お前等よく来たな。オイラボコだぜ!」

みほ (これが本場のBOCO SHOW……)

優花里 (西住殿が食い入るように見てます)

ボコ 「今日はお前らに……」

ボコ 「……」

みほ (ボコがこっちを見て固まってる……)

華 (中の人が慣れてないのでしょうか?)

ボコ 「……お、お前らに! オイラの強さを見せてやる、ぜ」

麻子 (随分とテンパってるな)

【北海道 ボコミュージアム カフェスペース】

みほ (何だか胸騒ぎがする)

みほ (さっきのショーで聞いたあのボコの声……)

優花里 「どうしたんですか、西住殿? 何か考え事ですか?」

みほ 「ううん、何でもないよ」

優花里 「……実は、今回のサプライズはとても悩んだんです」

みほ (優花里さんが言おうとしてることは想像がつくよ)

優花里 「西住殿のボコ好きが従来通りなのは分かってますが、先程の西住殿の表情を見て昔を思い出させてしまったのかと。自分は余計なことを――」

みほ 「そんなこと無いよ! 私、凄く嬉しかった。ありがとう」

みほ 「だから、優花里さんもそんな顔しないで」

優花里 「はい!」

みほ 「私、ミュージアム内のキャストさんのサイン貰って来るから、皆さんはここで待っててくれますか?」

優花里 「サイン集めるなら手分けしては? 自分もやります」

みほ 「ありがとう。でもこういうのは自分で貰いたいから」

みほ 「皆はここでしばらく休んでて」

優花里 「西住殿、行ってしまいました……」

華 「しばらくみほさんの好きにさせてあげましょう」

沙織 「私……」

麻子 「どうした?」

沙織 「私、あんこうチームの皆が今も戦車道続けてて良かったと思ってるよ。大学は皆バラバラになったけど」

麻子 「私もだ。私の大学は六大学戦車道最弱だけどな」

優花里 「しかし冷泉殿出場の試合で勝ち点2を挙げたではないですか」

麻子 「観てくれていたのか」

優花里 「勿論です。それに引きかえ自分はまだ大学でレギュラー入りも叶いません」

華 「それだけサンダース大の選手層が厚いということですね」

優花里 「まあ、ケイ先輩からは『そのうちレギュラーになれる』と言われてはいるのですか……」

華 (大洗学園艦の放射能は来年で殆ど影響が無くなります。それまで国は大洗の廃校問題を保留すると宣言しました)

華 (可能性は低いですが、私達が学園に通うことはもうありませんが、いつか大洗で同窓会を開きたいですね)

華 (こうして5人で再会した出来ただけでもこんなに嬉しいんですもの)

【北海道 ボコミュージアム 屋外スペース】

みほ (さっきのショーでボコの着ぐるみを着てた人)

みほ (いや、きっと人じゃない)

みほ (こちらを見て明らかに動揺していた)

みほ (向こうも知ってるんだ、私を)

みほ (どこ、どこに居るの!?)

みほ (居た!)

みほ (階段の下からこちらを見上げてる……階段を上がって来た……)

みほ (どうしよう……いざとなると声をかけられない)

みほ (立ち止まってると変だがら取り敢えず階段を降りよう)

みほ (相手は着ぐるみで、中に誰が入ってるか何て分かりっこないのに)

みほ (ボコは2年前に自衛隊に殺されたってニュースにもなったのに)

ボコ 「あ、あの!」

みほ 「!」

みほ (階段を上がりきったボコから話しかけてきた!?)

ボコ 「オイラ、あんたをどこかで!」

グ、グググ……スッポン!

みほ (頭の着ぐるみを脱いだ!?)

明けましておめでとうございます
今日はここまで
次回投下で完結予定です
読んで下さった皆さんありがとうございました
なお今晩21:00からテレ朝にて映画『君の名は。』の放送があります!

みほ (ボコだ!)

みほ (小顔で等身が高くなって、背丈も人間位になって……)

みほ (でもボコだ!)

みほ (高校生の時に私と入れ替わりを繰り返した、大洗で会った、あのボコだ……)

みほ 「私も……」

みほ (ボコの呼びかけに応えると同時に自然と熱いものが頬を伝ってゆく)

みほ (ずっと探していた)

みほ&ボコ 「君の名前は!」





この時、みほとボコが奇跡の再会を果たす姿を少し離れた所から見つめる人影があった。

??? 「恩知らず……」

??? 「遅いよとボコる君、これでも……♪」

みほ 「ボコ、ボコ、ボコが居る、ボコ!」

ボコ 「みほ……」

みほ 「でも、どうやって……ボコは自衛隊の攻撃を受けて……」

ボコ 「自衛隊の魚雷攻撃で文字通りボコボコにされた時」

ボコ 「流石のオイラも再生能力が追っ付かなくて」

ボコ 「再生じゃなくて進化したんだ」

みほ 「進化?」

ボコ 「元の身体を捨てて、尻尾の先からかろうじてこの姿で分離して、それから泳いで北海道に流れついた」

ボコ 「元々の身体の尻尾の先で、今の身体が出来上がるまでの長い間……」

ボコ 「お日様も届かない深い海の底で、お前の夢を何度も見た」

ボコ 「それから今のオイラは放射能出さなくなったから安心しろ」

みほ 「ボコ……」

華 「二人して互いを見つめ合ってますね」

優花里 「覗き見してるみたいで後ろめたいですが」

麻子 「みたいじゃなくて覗き見そのものだ。それにビデオカメラ回しながら言っても説得力が無い」

優花里 「今撮らないで何時撮るのですか!? これは『AKIYAMAFILM』の秘蔵版決定です!」

沙織 (二人は幸せなキスをして終了、二人は幸せなキスをして終了、二人は幸せなキスをして終了……キャーッ! もうやだー)

みほ 「背丈も人間位になって、放射能も出さなくなって」

みほ 「私はようやくボコに抱き締めて貰えるんだね」

ボコ 「みほ……」





??? 「だから戦戦戦車から僕は君を探しに来たよ♪」





みほ 「あなたは!?」

??? 「お客様、キャストとの過度なスキンシップはお控え下さい」

みほ 「愛里寿ちゃん!?」

昨晩は寝落ちしました。
今日こそ完結です。

愛里寿 「久しぶりですね」

みほ 「うん、お久しぶり」

みほ (彼女とは大学に入ってから対戦したことがある。島田流家元の後継者……)

みほ (島田愛里寿ちゃん)

愛里寿 「ボコ、頭の被り物を被って」

ボコ 「愛里寿、これは――」

愛里寿 「早く」

ボコ 「オウ……」

グググッ……カポッ!

みほ (ボコが頭の被り物をもう一度被った……)

みほ 「どういうこと?」

愛里寿 「私はこのミュージアムの館長、ボコの雇い主」 

みほ 「本当なの?」

ボコ 「ああ、愛里寿のおかげでオイラここで働いてるんだ」

みほ 「ねえ、ボコ……」

みほ 「ここを出て私と一緒に暮らそう」

ボコ 「みほ……」

愛里寿 「そんなこと勝手にきめないで」

みほ 「これは私とボコの問題だから」

愛里寿 「ボコとみほさんの間にどんな過去があったか知らないし知りたくもありません」

愛里寿 「ただ、みほさんが私達の間に入る隙間はもうありません」

愛里寿 「ねえ、ボコ……私を捨てたりなんてしないよね」

愛里寿 「海岸に打ち上げられてたボコを見つけて保護したのは私」

愛里寿 「他の目撃者を口封じして、ここで働けるように便宜を図ったのも私」

愛里寿 「『ボコは光に対して極端に皮膚が弱い人だから顔や身体を常に覆う必要がある。無理やり脱がせて万が一のことがあれば殺人罪で訴える』という設定で他の従業員を言い包めて、表向きは障害者雇用で雇ってるのも私」

愛里寿 「私はボコの為にそこまでしてきたんだよ」

みほ 「私だってボコの為なら何だってするよ」

愛里寿 「それだけじゃない。私はもうボコの愛を受け止めている」

愛里寿 「私のお腹の中には新しい命が


みほ 「えっ……」

ボコ 「そういうことしてねぇだろ! みほもいちいち真に受けてんじゃねぇよ」

みほ 「だったら……」

みほ 「私もボコの赤ちゃん産む!」

ボコ 「何でそうなるんだよ……」

愛里寿 (こちらがブラフで言ったことを真に受けたみほさんの眼から光が消えたけど……)

愛里寿 (直ぐに立ち直った。私がライバルと認めたボコマニアだけのことはある)

愛里寿 「これでは埒が開かない」

愛里寿 「ただ……私がすべきことは自分のした行いや選択した結果に対し」

愛里寿 「戦車乗りと して最後まで責任を果たすこと」

みほ 「愛里寿ちゃん……」

みほ 「やるんだね!? 今……! ここで!」

愛里寿 「ええ!  勝負は今! ここで決める!」

ガシッ!

ガシッ!

みほ&愛里寿 「さあ、ボコ。私を選んで!」

ボコ「今ここで決めるのか? 聞いてないぞ!」

麻子 「西住さんと島田愛里寿がボコのゴニョゴニョを一つずつ掴んでる」

優花里 「着ぐるみの上から的確に掴むとは流石西住流と島田流です」

華 「殿方のそういうところを握るというのはちょっと……」

沙織 (みぽりん、正念場だよ)

ボコ (これどっちを選んでもオイラ、オッドボールじゃねえか!?)

ボコ (……)

ボコ 「あの、両方選ぶってのは……?」

愛里寿 「大して長くも生きてないけど、確信していることがある。何かを変えることの出来る人間がいるとしたら、その人はきっと、大事なものを捨てることができる人だ」

みほ 「何も捨てることができない人には、何も変えることができないと思う」

愛里寿 「つまり私とみほさんのどちらを捨てるか決められなかったボコの選択は……

みほ 「最低だよ」

グチャッ! グチャッ!

ボコ 「ギャアアオオ!↑ グオオオォ……↓」

ボコ 「……」

華 「……ボコラ、完全に沈黙しました」

優花里 「西住流と島田流の連携による秘技、ダブルオッドボール……」

麻子 「ダブルの時点で最早オッドではない」

沙織 「……ボコラより怖いのは、私達人間ね」

これにて完結。HTML化依頼出して来ます。
昨年11月から元ネタ作品は地上波初放送とか映画とか展覧会とか博覧会とか盛り上がる中、このSSは盛り下がって終わった感があります。
それでも最後まで読んで下さった皆さんありがとうございました。
特にコメント頂いた方々ありがとうございました。

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