裕子・凛・早苗・美優・瑞樹「セイバーズ!」 (82)



「村長、もう食べるものがないわ!」

「村長、水も無くなりそうだ……」

「村長」

「村長……」

「村長!」


「大丈夫。大丈夫よ。私が何とかするからね。……」



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 \サイキックはいらんかねー/



ユッコ「さがしものー 屋根の修理ー 火起こしー

なんでもおまかせサイキックー」



 \いらんかねー/




ユッコ「はー。ひとけが無い谷だなあ。
もう3日も民家を見てない」


 \ぐううぅ~~/


ユッコ「だから3日間なにも食べてないよー!」


 \ぼかーん!/


ユッコ「あ、おなかが限界だなこれは」


 \どーん!/


ユッコ「あと5分くらいで倒れるとみた」


 \ずどーん!!/


ユッコ「よし、もうやめよう。地図を見ないで旅をするのはもうやめよう」


ボヤ~ン


ユッコ「……はっ!?」


ユッコ「あんな所に村が!ご飯がっ!!

くっ……もう少しだけ持ってくれ、私のサイキック!」


ユッコ「うおおーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーダメだー」バターン





村人サーニャ「村長!こっちこっち」


村長ミジュキ「サーニャ、女の子が迷いこんだの?」


サーニャ「そうなのよ」


村長「どうやって?」


サーニャ「それがよく分からないのよねえ……」


村長「普通の女の子が、結界で封じられたこの村に入れるはず無いのに……」


サーニャ「そうなのよね」


村長「もしかして、退魔士かしら……!?」


サーニャ「退魔士って、悪魔を払う退魔士?」


村長「都から来たなら、そうかも知れない……!」


サーニャ「とにかく行きましょう。いまミイユのところでご飯を食べてるわ」


村長「うちの村でお腹を空かすなんて、運の悪い子ねえ……」


コト

ユッコ「ほわあぁぁぁ……!」


村人ミイユ「あの、こんなものしかないけど……」


ユッコ「あなたのことは……
いっしょうわすれません……えいえんに」


ミイユ「い、いいえそんな……」


ユッコ「いただきまーす!!ぱくっ!!
まずーーーっ!!」


ミイユ「やっぱり……」


ユッコ「これ初めて見ます。なんて野菜ですか?」


ミイユ「雑草です」


ユッコ「雑草」


ミイユ「雑草です」


ユッコ「ごめんなさい。これ食べたらすぐ出て行きますね……」


ミイユ「ち、ちがうの。この村にはもう雑草くらいしか食べ物がなくて……」


ユッコ「はえー。みんな大食いの村なんだろうか」


ガチャ


村長「退魔士様!」

サーニャ「退魔士様!」


ユッコ「退魔士様?」


ミイユ「ユッコちゃん、このかたが村長です。
サーニャさんは、さっき会いましたね」


ユッコ「村長さん、いのちを助けていただきました!」


村長「いいのよ」


ユッコ「綺麗な人ばっかりだなあ……」


村長「ありがとう。ユッコちゃん?訊きたいことがあるのだけど」


ユッコ「なんでしょう?」


村長「あなた、どこから来たの?」


ユッコ「都からです!」


サーニャ「やっぱり!」


ユッコ「そ、そんなに垢抜けてますかねえ?」


村長「もうひとつ教えて。
村を囲む結界を、どうやって突破したの?」


ユッコ「結界……?そんなのありましたっけ?」


村長「!!
あの結界を、意にも介さないなんて……」


サーニャ「村長、本物よ……!」


ユッコ「なんだなんだ??」


村長「ユッコちゃん。
あなたの力を見込んでお願いがあります」


ユッコ「お引き受けします!」


村長「うんちょっと待って、聞いて。
……この村を、お救いください」


ユッコ「わかりました!」


サーニャ「軽い」


村長「まずは、お話を聞いていただけますか?」


村長「この村は、雨神様の呪いを受けているんです」


ユッコ「飴神様……。飴の神様ですね?」


村長「そうです。雨神様は、雨をぜんぶ吸い込んでしまうんです」


ユッコ「飴を……」ポワンポワン


飴神様「あめくれーーっ!」ズオォ……



ユッコ「それは……不可解な神様ですね」



村長「そうです。雨がなければ、作物は育ちません」


ユッコ「やめさせる方法はないんですか?」


村長「あります。生け贄です」


ユッコ「えっ、生け贄!?」



村長「そう。年に1度、若い娘の肉体を捧げる。
これが雨神様を鎮める方法です」


ユッコ「飴のために生け贄を差し出すなんて!?」


村長「あなたの気持ちはわかります。
でもタダの人間である我々は、こうやって魔性の者と折り合うしかないのです……。

雨が無くなれば、村人全員が生きていけなくなります」


ユッコ「飴なんて無くても生きて行けますって!
どれだけ飴が好きなんですか!?もうみなさんが飴神ですよ!」


サーニャ「私たちが雨神、か……。
雨のために人を殺し、業を背負った私たちは雨神と同じ……

何も言い返せないわね」


ミイユ(なんだか話が噛み合ってないような……)



ユッコ「生け贄を捧げたのに、どうしてこの村は渇れてしまったんですか?」


村長「それは……見ての通りの小さい村でしょう。
3年は耐えたんです。でも、若い娘はみんなもう……」


ユッコ「ぜ、全員!?」


村長「はい、全員……。去年はとうとう雨が一滴も降らず、食べ物が無くなりました」


ユッコ「あの、あまり飴にばかり頼ってはいけませんよ」


村長「もちろん色々試しました!井戸を掘ったり、川水を引いたり……
でもダメなんです。井戸も川もすぐに涸れてしまった」


ユッコ「飴に頼るのをやめて次は井戸を掘ったんですか……
もう発想においてけぼりですよ……」


ミイユ「あの。ユッコちゃんのイントネーションおかしくありませんか……?」


ユッコ「なるほど、雨ですよね。分かります」まっか


村長「あなた、天然って言われません?」


ユッコ「超天然(スーパーナチュラル)って言われますね」


サーニャ「それで、どうなの退魔士様?」


村長「雨神様を、退治することはできますか……?」


ユッコ「もちろんです!」


村長「!!」


ユッコ「ご飯のお礼はさせてもらいます。
それに、困っている人を助けるのがサイキッカーのつとめ。
このユッコに任せてくださいっ!」


村長「ああ……!」


サーニャ「村長……!良かったわね……!」


ミイユ「あの、ところで、サイキッカー……?
というのは、何なのでしょう……?」


ユッコ「サイキッカーは、サイキックをする人ですね」


ミイユ「話が進まないですね……」


ユッコ「ふふふ。ではお見せしましょう。
あそこの花瓶を見ていてください」


ミイユ「えっ……割ったりしないでくださいね……?」


ユッコ「ムムムムーーン!」

ブワッ!


村長「!」

サーニャ「!」

ミイユ「!」


花瓶「……」


ユッコ「……」


村長「……」


サーニャ「……」


ミイユ「……」



ユッコ「こんな感じです」ジャーン


サーニャ「なんのヒントも出てないけど!?」



村長「あの……退魔士様は、そのサイキックで退魔を?」


ユッコ「え?サイキックはサイキックですよ?」


村長「なにかしら。嫌な予感がしてきたわ」


サーニャ「えっと、ユッコちゃんは、退魔士、なのよね……?」


ユッコ「いえサイキッカーですね!」


サーニャ「ちょっと待って!退魔士ではないの?」


ユッコ「はい!」


サーニャ「ちょっ」


ミイユ「えっ……」


村長「……!」



ダン!

サーニャ「ふざけないでよ!」


ユッコ「わひゃ!?」


村長「サーニャ、やめて!」


サーニャ「あんたを怒鳴るのはお門違いかも知れないけど!
アタシたちは、アタシたちはね……!」


ユッコ「あ、あの」


サーニャ「ちょっと来て」グイ


ユッコ「あっとっとっ」


ギィ


サーニャ「見て」


ミイユ「サーニャさん、やめてください……!」


ユッコ「この人は……?」


サーニャ「ミイユちゃんのお父さんよ」


ミイユ「も、もう……」


サーニャ「病気なのよ。からだのあちこちから血が出て……
体力が落ちて立ち上がれないの。
何か食べられれば治るかも知れない。
でも食べ物なんてないし、水さえないの。
みんな、みんなこうなのよ」


ユッコ「あの、もしかして、さっき私が食べたのは……」


サーニャ「大事なお客さまへのおもてなしでしょ!」


ミイユ「ユッコちゃん、いいの、いいのよ、どうせお父さんはあれ、食べないんだから……」


サーニャ「ミイユちゃんは黙ってて!」


ミイユ「あぁ……はい……」



サーニャ「明日の朝がね、生け贄の儀式なのよ。
そこで何も出来ないと、また1年間雨が降らない。
するとどうなると思う?」


ユッコ「どうって」


サーニャ「全員死ぬのよ!」


ユッコ「死ぬ……」


サーニャ「やっと助けが来たと思ったら……これよ……!
あなたが悪いわけじゃないけど……ダメだわ、気持ちが治まんない!」


村長「サーニャ!サーニャ……もうやめて。お門違いよ」


サーニャ「……そうだけど」


村長「ユッコちゃん、せめて結界を開けることは出来ないかしら。
結界が開けば村を脱出できる。それだけでも助かるの」



ゴンッ!!



ユッコ「むぐぐ~~……!」


村長「思いっきりぶつかったわね……。
あなた、本当にどうやって入って来たの。
外からは、村の存在も認識出来ないはずなのよ?」


ユッコ「普通に歩いて通ったんですけどねえ……?」


村長「これじゃ、あなたも村から出られないわね。……」




村長「今日はもう遅いわ。私の家においで」



村長「どうぞ、お茶よ」


ユッコ「ありがとうございます」


村長「ごめんなさいね」


ユッコ「こちらこそ、期待外れですいません……。
でも、悪魔退治ならしたことがありますよ」


村長「そうなの?」


ユッコ「ニッタ?ニッター……何とかって言ったかな?
雨神様もきっと大丈夫です!」


村長「いいのよ。下手に挑んで雨神様の逆鱗に触れたら、村がどうなるかわからないし。
悪いけど、かえって迷惑よ」


ユッコ「そうですか……」



ビュウウウゥゥ……


村長「珍しい。風が出てきたわね」


村長「……」


村長「ねえユッコちゃん」


村長「はじめて生け贄を捧げたときね。
女の子の命を取るか、それとも村人みんなの命を取るか、
私は迷ったフリをしたわ」


ユッコ「フリですか?」


村長「答えは始めから決まっていたもの。
そのとき、私は個人的な感情を捨てたのよ。

村の一部として、村のためだけに生きることを誓ったの。
それが、あの子たちに対しての、贖罪よ」


ユッコ「しょく…ざい…」


村長「明日の夜明け前、雨神様が来る」


村長「この機会は絶対に逃さない」


ユッコ「んん……ぁ……」うつらうつら



村長「私はねユッコちゃん。
村のためなら何でもするわ」


ユッコ「村長、さん、あれ、わたし、ねむく」


村長「あなたは、本当に運が悪い」


村長「ここに迷い込んだこと。
入ってきたのに出られないこと。
そして」


村長「若い娘だったこと」


ユッコ「…………」とさっ


村長「本当に、ごめんなさい」


ビュウゥゥゥ……


村長「戻ったわよ」


サーニャ「村長、遅かったわね。結界は開いたの?」


村長「開いたわ」


サーニャ「うそ!?」


村長「でも、通れたのはユッコちゃんだけよ」


サーニャ「……!そう……」


ミイユ「ユッコちゃんは……?」




村長「帰ったわ」





ホー、ホー


ユッコ「……」


ユッコ「……ん、んー」


ユッコ「んっ!?」


ユッコ「もがもがが!?」


ユッコ(ありゃ、縛られてる)


ユッコ(ん……)


ユッコ(そうか。ミジュキさん、私を生け贄にするつもりなんだ)


ユッコ(……)


ユッコ(こんな村があるなんて、思いもしなかった)


ユッコ(私はよっぽど幸せに生きてたみたい。
周りの人たちは、みんな笑っていたもんね)


ユッコ(良い人たちだったな。優しくて、強くて)


ユッコ(……)



ユッコ(助けなきゃ)



ユッコ(うーんうーん)ギチギチ


ユッコ(ユッコ。サイキッカーの使命は困っている人を助ける事でしょう)


ユッコ(縛られていては、助ける事が出来ないでしょう)


ユッコ(縄よ)


ユッコ(縄よ、ほどけろ)



ユッコ(ムム)


ユッコ(ムムムム)


ユッコ(ムムムムーーン!!)






ズバッ!!




ユッコ「ひゃ!もがが!ぷはっ」


ユッコ「縄が……斬られた」


ユッコ「誰ですか!?」


しゃらん


???「そっちこそ誰?」


ユッコ「わ、女の子だ」


???「村に迷いこんだってのはアンタだね。
名前は?迷子さん」


ユッコ「いえー、名乗るほどでは……ユッコです!」


???「……」


ユッコ「あなたは?」


???「……リン」



ユッコ「リンちゃん。
ほえー……私に負けず劣らずの美少女ですねー」


リン「……。アンタ、なに?どうやって結界の中に入って来たの?」


ユッコ「いやー普通に歩いて来たんですけど」


リン「は?まさか。私は解結法印をぜんぶ使ってやっと孔を開けたんだよ。
その孔だって、固定具ごとすぐに潰されてしまった」


ユッコ「かいけつ……こてい……?何です?」


リン「分かんないの?フッ、そうよね。退魔士でもない普通の子には──」


ユッコ「つまり、中に入ったは良いけど外に出られなくなっちゃったって事ですか?」


リン「……」


ユッコ「……」


リン「……」カァ


ユッコ「そうなんですね!あははー」


リン「そのアホみたいな顔……。
アンタさては悪魔ね。絶対そうだ」チャキ


ユッコ「悪魔じゃありません!サイキッカーです!」ビシッ


リン「サイキッカー……?」



ユッコ「リンちゃんは、もしかして都の退魔士さん?」


リン「……まぁね」


ユッコ「やっぱり!じゃあ雨神様を退治しに来たんですね!」


リン「ちがう」


ユッコ「よーし一緒に行きまっしょーう!」むんず グイーーッ


リン「ちょっと!ちがうってば!」


ユッコ「急がないと夜が明けちゃいます」ずんずんグイグイーッ


リン「私の任務は不審な結界の調査だよ!
天候を操るような化け物の相手なんか出来ない!」


ユッコ「私が倒すから大丈夫ですよ!」


リン「はあ!?アンタが何者か知らないけど、余計な事しないでよ!
雨神が暴れたらどうするの!」


ユッコ「大丈夫ですよー。そういうのはその、サイキックですからね」ずんずん


リン「話を……聞けっ!」ぶん


ユッコ「わ」



リン「いい?雨神は神様なんかじゃない。
退魔士の教科書に大きく載る様な、とびっきりの悪魔なんだよ」


ユッコ「あくま……」


リン「名前を「スカウト」って言う。
人里を結界で囲み、災厄をもたらし、生け贄を要求するの。
実際に見たわけじゃないけど、たぶん間違いない」


ユッコ「どうやったら退治出来ますかね?」


リン「退治?……フン」


ユッコ「むー?」


リン「スカウトに勝てるのは、退魔士の中でも一握りの何人かだけ。
少なくともこの国にはいない」


ユッコ「都には強い退魔士さんもたくさんいるでしょう?」


リン「アンタ、知らないの?都の退魔士は……、
サキュバスにおそわれて、名のある退魔士は皆やられてしまったよ」


ユッコ「あー、そんな事ありましたね」


リン「情けないって思わない!?
しかもそのサキュバスを退けたのは、退魔士でもなんでもない、普通の女の子らしいって」


ユッコ「……」



リン「生き残った退魔士なんて、もうただのカカシ。アテにするだけ無駄だよ」


ユッコ「じゃあ、この村はどうなるんですか?」


リン「……。諦めて」


ユッコ「諦める!?」


リン「村の人たちは確かに気の毒だよ。でも、どうにもならない事もある」


ユッコ「……」


リン「一応ね、私の連絡が途絶えたら、救助が来る事になってる。
いつになるか分からないけど……。

そのときまで生き延びられたら、一緒に逃げよう。
いま雨神に殺されるよりは、よほどマシだよ」


ユッコ「わかりました……」


リン「じゃあ、こっちに来て。私の隠れ家に──」


ユッコ「やっぱり私たちで倒しましょう!」グイグイーッ


リン「話聞いてた!?」



ユッコ「聞きましたよ?その結果、私たちで倒すしかないなーって」ずんずんグイグイーッ


リン「冗談じゃない!サイキッカーだか何だか知らないけど、みすみす死人を増やす訳にはいかない。
承諾できない!離せ!」バシッ


ユッコ「雨神様がどこに現れるか、知ってます?」


リン「見当は付いてるよ。教えないけど」


ユッコ「じゃあ!行きましょーう!」


リン「行かない」


ユッコ「こっちかな」


リン「教えないってば」


ユッコ「こっちかな?こっちっぽいなー」


リン「……」


ユッコ「あれ、分かれ道だ。どっちだろ……。
んー。こっち」


リン(何でガンガン正解するかな!)イライラ




ユッコ「チラ」


リン「うっ?」


ユッコ「正解ですね」


リン「……!」カチン

リン「行ったらダメだって!待て!」ダッ


ユッコ「アンタじゃなくて、ユッコって名前で呼んでくれたら待ちますよ?」たたた


リン「ユッ……。……ユッコ、待って」


ユッコ「えへへ、リンちゃん!」ぴた


リン「もう……」


ユッコ「はい、待ちました。じゃあ行きましょうー!」たたた



リン「こらっ……本当にダメだって、死んじゃうんだよ!」


ユッコ「だいじょうぶですよ!私怒ってますし!リンちゃんもいるし!」


リン「どんな理屈!?私では勝てないし、普通の女の子では尚更でしょ!
止まれっ!見殺しにするのは気が引けるんだよ!」


ユッコ「捕まえてごらーん」


リン「この……!ハイもう知らない!
私は行かないよ!アンタと心中する気はない!
アンタが死んだって知ったことか!勝手にしろ!」


ユッコ「勝手にしまーす!」たたた


リン「……」


リン「……」


リン「もおぉぉお!!」ダッ



ガララッ!


村長「…………」


しーん


村長「……逃げられた、か」


村長「ふふ」


村長「ふっ、ふふ、ふ」ずる


村長「……」どさ


村長「ごめん、みんな、ごめんなさい……ごめん……」


村長「……」




村長「……」スクッ



村長(サーニャ、あとは頼むわね)


村長(村を頼むわね。絶対よ。絶対よ)


村長「……行ってきます」ぺこ


サーニャ「どこに行ってきます?」


村長「ぎょっ!?」


サーニャ「白装束なんか着ちゃって」


村長「散歩よ」


サーニャ「村長……」


村長「……」


サーニャ「生け贄は若い娘じゃなきゃダメよ」


村長「な、なによ」


サーニャ「若い娘じゃなきゃダメよ」


村長「何で2回言うのよ!!」ポカポカ


サーニャ「何回言えば分かるのよ!!」ポカポカ



村長「もうこれしかないじゃない!仕方ないでしょ!」


サーニャ「アンタ、雨神様がアンタを無視して帰ったらどうするの!?
最悪よ!恥ずかし過ぎて村に戻れないわよ!?」


村長「その時は雨神様をブッ殺すわ」


サーニャ「返り討ちよ!どっちにしても死ぬじゃない!」


村長「そうよ!死にに行くのよ!
もう決めたの。
明日から、あなたが村長をやってね。頼むわ」


サーニャ「それはムリよ」


村長「なんでよ!」


サーニャ「私も行くからよ」


村長「はあ!?」



サーニャ「28歳でも、2人いたらギリ行けるかも知れないじゃない」


村長「ダ、ダメよ……」


サーニャ「それにアタシ、アンタより童顔だし」


村長「バカッ、バカね……私、遠慮しないわよ?」


サーニャ「バカはお互い様よ」


村長「本当ね……。……きゃっ?」

ギュッ

サーニャ「よしよし。アンタはよくやったわよ。一人で背負わせちゃってゴメンねー……。
アタシも半分持つから。ね?ね、ミジュキ」



ユッコ「きーーーん」たたたー


リン「ユッコ、あんた勢い良く走ってるけどさ!
勝算とかあるわけ!?」たったった


ユッコ「ありまぁす!」


リン「根拠は?」


ユッコ「サイキックです!」


リン「えーと……?それは武器?魔法?」 


ユッコ「サイキックです!」


リン「あれ、もう何言ってもムダかな?」


ユッコ「サイキックは奇跡なんです!」


リン「奇跡?要は運頼みって事か。
ばかやろう!」


ユッコ「リンちゃんは剣士さんなんですよねー。頼りにしてますからね!」


リン「そんなの困るよ!勝てないって言ってるでしょ!」


ユッコ「ふふふ。リンちゃんが断れない人なのはバレバレですよ?
私が心配で、身体が勝手に動いちゃうんでしょう!」


リン「ああそうだよ!止まれ、止まれ私の足!人情なんか捨てちまえ!」




ユッコ「おっ……とっとー!?」コケッ びたーん!


リン「ダッサ」プッ


ユッコ「岩と石が多いんだもん……」


リン「ここは川なんだよ、涸れた川」


ユッコ「ここが川?」


リン「大きな渓谷……。水があれば、綺麗だったろうね。
周りには木も多いし、沢登りをしたら楽しそう」


ユッコ「リンちゃん、石の川の真ん中に舞台がありますよ」


リン「あれは祭壇だね。生け贄を捧げる……。
あぁ、とうとう着いちゃった。雨神はきっとここに来る」


ユッコ「もうすぐ夜明けです」


リン「どうする気なの?身を隠して待つ?」


ザワ


ユッコ「はっ」


リン「なに?」


ユッコ「リンちゃん。静かにして」


リン「何なのよ……」



ブォン……


ユッコ「……います」


リン「え?」


ズオオオオオ


ユッコ「……」


リン「あ……!?」ゾワゾワゾワ


ユッコ「…………!」ぎちぎちぎち


リン「何してんの!隠れて!!」ドン


ユッコ「どわぁ!?」ザザッ



ズズン……


ズズン……


ズズン……


ユッコ「あれが」


リン「雨神っ」



ズズン……


リン「大きい……!」


ユッコ「大きいですねー。リンちゃんで言えば5人ぶん……
5リンくらいありますね」


リン「何だその単位!言い直せ!言い直せ!」


ズズン……


リン「ああ、これは、ダメだ」


ズズン……


リン「私みたいな下っ端にも分かる圧倒的な力」


ズズン……


リン「人の命なんて、一瞬で、握り潰されそう」


ズズン……


リン「どうしよう。恐い……!くそっ、震える。何で来ちゃったんだ!」


ユッコ「みんなを助けるためですよ」


リン「アンタのこと、恨むからね……!たっぷりお返ししてもらう。生きて帰れたらだけど……」


ユッコ「死にませんってば」


リン「ユッコいい?あいつが近くに来た瞬間、一斉に飛びかかるよ」


ユッコ「分かりました……リンちゃんは剣で。私はサイキックで!」


リン「よし分かった。頼れるのは自分の剣のみだったね」


ズズン……


リン「はぁ、はぁ」


ズズン……


リン「ハッ、ハッ」


ズズン……


リン「ハッ、ハッ……!神様……!」




 \どかーん!/


リン「  」


 \ずずーん!/


リン「???」


ユッコ「……」


 \どどーん!/


リン「え、え?なに?なにこの轟音??」


ユッコ「てへ、私のお腹の音です」


リン「アンビリーバブル!!」



 \ぼーーん!/


リン「止めろーっ!!即 止めろ!許さーん!」


ユッコ「そんなこと言われてもなあ」


リン「止まらないなら私が止めてやる!」ドスン!


ユッコ「ぐっほーー!何するんですか!」


ズズン……


ヌッ……


雨神「ミ……ツ……ケ……タ……」


リン「¢§☆▲◎*$%!!」


雨神「ウゥ……?」


リン「逃っげっ……!……あ、足、動かない……」ガタガタ


雨神「……」じーっ


雨神「……」じーっ


リン「何だ……!?」


雨神「ム……スメ……」


リン「ムスメ?娘?
私を生け贄だと思ってる!?」


雨神「ワカ……イ……」ずい


リン(あぁあ、あぁあ!顔近付けて来た!)


雨神「スウ……イノチ……」ずい


リン(いやだっ、殺されるっ、私っ)ガタガタガタ


リン(私っ、私はっ)ガタガタガタ


リン(私はっ……)




リン(……退魔士!!)ピタ



リン(フー……ッ!)


リン(落ち着けリン。ここだ、ここにチャンスがある!)


リン(そのまま顔を近付けてこい)


リン(その瞬間、その瞬間に、私の最高の技を喰らわせてやる!)



雨神「ムスメ……!」ずい


リン「今だっ!」シャラン!


リン「アイオライトブル
『サ

 イ

 キ

 ッ

 ク

 ぅ』





ユッコ「雨を」




ユッコ「返せパンチーーーーーッッ!!!」フォッ


ゴリュンッ!!


雨神「グゥアアアアア!!!」


ドズン……!


リン「えっ──ユッコ……?」


ユッコ「ううぅぅぅう」


リン「ひっ」ぞわ


ユッコ「よくも」


ユッコ「よくも」


ユッコ「あんな良い人たちを悲しませましたね」


ユッコ「あなたとは」


ユッコ「ぜったいに仲良く出来ません」


ユッコ「救いたくありません」


ユッコ「それでも私は許しますが」


ユッコ「私のサイキックはあなたを許しませんっ!!!」





ユッコ「念 動 光 線」




ユッコ「さぁいきっくうぅ」




ユッコ「ビーーーーーームッ!!」

バッキィッ!!


雨神「ギャアアァオオ!!」



リン「効いてる……!ユッコ、効いてるよ!すごい!
でもそれ蹴りじゃん!」


ユッコ「でもまだです!来ますよ!」


雨神「モ、」

雨神「モ、」


雨神「モバーーーーーーッ!!」

ドバ!!


ユッコ「鉄砲水っ!」


リン「取り込んだ雨を吐き出してる!?」

ドババババ……!
   
ユッコ「わっ、ガボゴボガボゴボボ!わわ、わあぁー……!」

ドドドドド……


リン「ユッコ!」

くるっ

リン「雨神っ!」



雨神「モバアァァァ!」ズアッ


リン「せーーーーーぇぇぇえあっ!!」ビュッ

ギィン!!


リン「ぐっ!剣が通らない!どうして!?」


『パンチーーーッッ!!』


リン「そうか、頭!?あの、Pみたいな頭の真ん中ならダメージが通るはず!」


雨神「ズガヴドォォォオ!!」ブワッ

グワッシャッン!!


リン「い、岩がバラバラになった……!」


ババババ……!


リン「ぐっ!高い!この身長差じゃ届かないよ!」


リン「どうする……!?」


雨神「モバアッ!!」

ドン!ガッシャッ!!


リン「やっ!……んっ!?」


ふわっ


リン「足場の岩が飛ばされて……!?きゃああっ!」

ぽーーん


リン「う、浮いちゃってえ!?」


雨神「モバ……?」


リン「!!ここっ、雨神の頭のうえ!?

ならこのまま……

斬るーーーっ!!!」

シュバッ!!



雨神「ブワァアアアア!!」


リン「通ったっ!」


ひゅうううぅぅん


バイン!


リン「うっ?」

ぴょーーん


リン「なに!?また跳んだ!
地面の枝でジャンプしたの!?
こうなったら……」


リン「運でも何でもーーーっ!!」


シュバッ!



リン「何これ!運良すぎじゃない!?奇跡!?」


『サイキックは奇跡です!』


リン「……。
ぶるるる!後で考える!」


雨神「ムスメ……!イノチ……!」


リン「そのままかがんでいてくれたら、とどめを刺す!」

タタタタ

リン「輝ける菫青よ……」ポゥ

タタタタタ

リン「我が手に集い」

タタタタタタ

リン「浄化の力を成せ!」キィイイイィィイイ

タンッ!


リン「蒼の剣を受けよ!アイオライトブルーッ!!」

ビュッ ドッ!

リン「決まっ──」

雨神「モバーーーーーーッ!!」

ズバドドドドドド!!


リン(水がっ)


ドドドドドドドド


リン(もう少しのところでっ)


ドドドドド……!


リン「雨神いいいっ!!」



リン「わあああああぁぁーーーーー……」
       パシッ
「……ーーーーーぁぁあああああ!!!!」ユッコ



リン「ユッコ!」

ザザザザザザ!

リン「鉄砲水で、サーフィンしてる!?
もう、何なのよこの子!」


ドシャッ!

リン「いっ……たぁ……っ!!」


ユッコ「リンちゃん、剣、借りましたよ!」



ユッコ「スプーンよ!!」


…………ひゅうううぅぅうん


リン「ユッコ、あぶない、切り株が飛んで……!」


ソンッ


リン「剣にささった」



ユッコ「とうっ!」ブワッ


雨神「……!!」




ユッコ「雨神様」


ユッコ「ここまでです」


ユッコ「あなたの身体も悪行も」


ユッコ「波動の中にぜんぶ消します!!」




ユッコ「ごめんなさい」




ユッコ「さい きっ くうううううううう」



ユッコ「スマァァーーーーーーッシュッッ!!!!」


ガッ!


ボオオォォオツッ!!


雨神「グアァァアアアア!!」


ドパッ


雨神「アアァァァァァア!」


ズドドドドドド


雨神「ァァァァァ……」


ドドドドド……


雨神「モ、バ……」


ユッコ「雨神様」


ユッコ「許してあげます」


雨神「ァ……」


シュン


ユッコ「………………」


リン「………………かっ」


リン「勝っちゃった」へたっ


リン「……」



リン「何これぇ」




村長「……」

サーニャ「ミ、ミジュキ、いまの?」


村長「あの子、本当に、雨神様を」


サーニャ「ど、どうなったの。何が起こったのよ……」


ポタ



ポタ ポタ

ポタッ ポタタ


村長「……。終わったのよ……」


ざあぁぁぁぁ……


ユッコ「あーあー!びしょびしょー!」


リン「降ったね」


ユッコ「私雨きらいなんですよ」


リン「身も蓋もないな」


ユッコ「リンちゃんは雨好きそうですよね」


リン「バカにしてる?」


ユッコ「好きなんだー。どうせ好きなんだー」


リン「バカにしてるね。よーし」バシャン!

ユッコ「なんとー!」びしゃ


リン「ユッコ、強いんだね。メチャクチャだね」


ユッコ「え?強くなんてないですよ」


リン「強かったよ。何あのパンチ。ゴリラより強いよ」


ユッコ「あははー。あんなの普段は出来ませんよ」


リン「どういうこと?」


ユッコ「ぜんぶサイキックのおかげです」


リン「はあ……?」


ユッコ「すごい奇跡が見れましたね!」


リン「そうか……。うん……。何言ってもムダだったね……」


サーニャ「ユッコちゃん!」


ユッコ「サーニャさーん!良い雨ですね!私はきらいですけど!」


リン「おい」


サーニャ「あなたに、何て言ったら良いんだろう」


ユッコ「うれしい言葉を期待してます!」


サーニャ「ふふ、もう……言葉もないわよ」


ユッコ「サーニャさん……。
ボキャブラリーがちょっとアレだったんですね」


リン「それはお前だ」


サーニャ「さあ、ミジュキも」


村長「……」


ユッコ「村長さん!」


村長「ごめんなさい……。私、あなたに合わせる顔がないわ」


ユッコ「……」


村長「いえ、あなたにだけじゃない。村のみんなにだって……」


サーニャ「なに言ってるのよ。誰もあんたを責めやしないってば」


村長「私は責めるわ。生け贄を死なせた私を」


サーニャ「それは……あたしも一緒に背負うって言ってんじゃない!」


村長「それだけじゃないのよ」


サーニャ「何よ!?」


村長「ねえサーニャ、私、村のみんなとどう関わればいいのかしら。
村が守られたいま、私の役目は終わったけれど……。

だからって、村長じゃない私なんて忘れちゃった。
いま何を思うべきなのか……。前の私なら、どうした?喜んだ?
どんな顔で喜んだ?わからないわ。
何もわからないのよ……!」


サーニャ「ミジュキ……」



ユッコ「あの、村長さん!」


村長「……」


ユッコ「村長さん、私、友達からよく言われるんです。
「ユッコらしいね」って」


村長「え……?」


リン(何を言い出すのやら)


ユッコ「でも自分ではわかんないんですよねー。
「そうかな?」って言うと、「そうだよ」って。
友達の目を通さないと、自分なんて分かんないのかも」


村長「そんな、子供みたいな……」


ユッコ「もういっかい子供からやり直しです。
村長さんが分からないことは、サーニャさんが教えてくれます。
ミイユさんが、村のみなさんが知ってます。
元の村長さんの事が分からなくても、今の村長さんだって素敵です!
私すきです!」


村長「だって、でも……」


ユッコ「村長さん、サイキックって、みんなを幸せにするぱわーなんですよ。
村長さんにかけてあげますね」


村長「……」


ユッコ「サイキック~……まわれ右!」がし


村長「え?」くるっ



村長「あ……」




「いた!村長いたぞー!」

「ミジュキ村長!雨降ったよ、雨だよ!」

「ミジュキ!」


ミイユ「ミジュキさんっ……!」


村長「あ、あ」


ユッコ「村のみなさん、喜んでます。
それを見て、村長さん、いえ、ミジュキさんは、なにを思ってますか……?」


ミジュキ「……」


ミジュキ「うれしい」


ユッコ「……」


ミジュキ「うれしい。わたし、……サーニャ、私嬉しいの。すっごく……。
喜んで、いいのよね?」


サーニャ「いいのよ」


ミジュキ「う、う、ぁぁぁ、わあああああん……!わあああぁぁん!!」


ミイユ「ミジュキさぁん……!」


サーニャ「な、泣くんじゃ、ないわよ、い、いいどじなんだがら」


ざああぁぁぁぁ……


ユッコ「リンちゃん」


リン「はい」


ユッコ「雨もたまには良いことしますね」


リン「ん?」


ユッコ「涙をがぐじでぐればずぼんで」


リン「はいはい」



リン「はい、ですから、当面の食糧は大至急必要です」


リン「ええ、ポニーテールの。
大きなスプーン?持っていませんでしたが」


リン「はあ、シルエットはそう見えなくもなかったですが……
考え過ぎではないですか?」


リン「はい。……はい?
ユッコを……!?」


リン「イヤです。ムリです」


リン「イヤです!!イヤ!!あっコラ!!」


リン「ばかやろう!!」ガチャーン!


ミジュキ「便利ねそれ」


リン「良いことなんか一つもありませんよ!よければ差し上げます!」


ミジュキ「いいわ」


リン「あれ?ユッコは?」


ミジュキ「もう出発したわよ」


リン「はあ!?」


ミジュキ「ついさっきね」


リン「もおぉおお!」

リン「私もこれで失礼します。お元気で」


ミジュキ「あっ、待って退魔士さん。
あなたの名前を聞いていなかったわ」


リン「名乗るほどでは……。

……いえ、リン。リンです」


ミジュキ「ふふ、またね、リンちゃん」


リン「では!」



ミジュキ「行っちゃったわね」


サーニャ「何だったのかしら、あの子」


ミジュキ「そりゃあ……」




リン「ユッコ!待ってよ!」


ユッコ「あれっ?リンちゃんどうしたんですか!?
私と離れがたいあまり……?」


リン「ある意味ではそうかな……」


ユッコ「えっへっへー」むにゅ


リン「離れろ」


 \どかーん!/


ユッコ「あっ」


リン「もう、ほんと、アンタいったい何者なの?」


ユッコ「私ですか?」



ユッコ「通りすがりの、サイキッカーです!」ビシッ







 LIVEツアーカーニバル





    幻想公演




   セイバーズ!




 ユッコ────堀裕子


 リン─────渋谷凛


 サーニャ──片桐早苗


 ミイユ───三船美優


 飴神─────双葉杏


 雨神─────モバP


 ミジュキ──川島瑞樹





     FIN







ユッコと凛にささやかな栄光(1票)を賜りたく存じます。

過去作のユッコも可愛く仕上がっておりますよ。凛も出ております。


渋谷凛「え?ユッコースター?」

堀裕子のサイキックを解禁するものとする

飽きてきた

杏でワロタ
おう

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