久保帯人「本当の正義というのは相手をやっつけることではないんだ」 (40)

 作品を通してずっと描いてきたのは、正義とは何か、本当の強さとは何か、ということなんだよね。
当時流行していたヒーローものは、正義の味方が現れて怪獣をやっつけるというものが多かった。
だけど、それを見ながら僕は思ったんだよ。怪獣側に言わせれば言い分があるんじゃないかと。
生きるための自然を次々と破壊されて、ビルなんかが建てられてしまったんだから、
暴れるのは当然だと言いたかったんだと思う。つまり、どちらの側から見るかで、正義は真逆になる。
正当性なんてものはない。
 本当の正義というのは、相手をやっつけるということではないんだよ。そこにひもじい人がいれば
一切れのパンをあげる、そこにおぼれそうな人がいれば助けてあげるということ。
そして、それをやる人は非常に強い人かといえば、そうじゃない。
例えば、線路に落ちた人を助けようとして自分が死んでしまった人がいる。この人はごく普通の人。
ただその時に、それをせずにはいられなかった。決して強くはない人が、自分が傷つくことも
覚悟して、それでもやらずにはいられない、それこそが正義だと思う。
 アンパンマンはちょっと水にぬれただけで弱ってしまって、すぐジャムおじさんに助けを求める。
史上最弱のヒーローなんだ。我々と同じで非常に弱い。弱いんだけど、どうしてもやらなくちゃいけない時は、
自分を犠牲にしてでも戦う。それが本当の正義だし、本当の強さだと僕は思っている

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