アクア「駄女神と」ガヴリール「駄天使」 (31)


サターニャ「到着よ!」

ガヴリール「いや、どこだよここ」

ラフィエル「空気の綺麗なところですね」

ヴィーネ「よかった。草原が広がってるだけみたいね。海の底にでも繋がらないかとヒヤヒヤしたわ」ホッ

サターニャ「魔界通販がそんな欠陥商品を売る訳ないじゃない」フフン

ガヴリール「いや、サターニャが買った『どこだかドア』ってどこに通じるかランダムなんだろ。じゅうぶん欠陥商品だと思うぞ」

ヴィーネ「景色もいいし、ちょっと散歩でも……ってサターニャ! う、後ろっ!」

サターニャ「ふへ?」

ジャイアント・トード「パックン」

サターニャ「ぎゃああああああ!?」

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ガヴリール「な、なんだこりゃ!? でっかいカエル!?」

ヴィーネ「サターニャ! 大丈夫っ!?」

ラフィエル「あらあら、サターニャさんが丸呑みにされてしまいました」

ガブリール「くそっ、あいつが喰われている間に逃げるぞ。サターニャ、お前の犠牲は忘れない」ダダッ

ヴィーネ「いやいや友達でしょ!? 即決で見捨てるとかそれでも天使なの!?」

サターニャ「ひいいっ! 生温かくてヌルヌルで気持ちわるいいっ! 早く助けてえええ!」

ラフィエル「面白……じゃなくて大変なことになってしまいましたね。とりあえず巨大蛙の弱点を探るためにこのまま観察しませんか? 一時間くらい」

???「おいお前ら、大丈夫か! ン狙撃ッ」パシュ

ジャイアント・トード「」

???「ふぅ、危ないところだったな」

???「たかがジャイアント・トードに食べられてしまうとは間抜けですね」

???「まったくだわ。私ならゴッドブロー一発で退治できるのに」

???「いや、私たちも散々被害に遭ってきたような気がするのだが……」


ヴィーネ「あ、あなたたちは?」

カズマ「俺は佐藤和真。冒険者だ」

めぐみん「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者……!」バサァ

サターニャ(何その名乗り方、カッコイイ……!)

ダクネス「私はダクネス。クルセイダーだ」

アクア「そして私は水の女神アクアよ!」

ガヴ・ラフィ「「女神?」」

めぐみん「あぁ、気にしないでください。アクアは自分のことを女神だと思い込んでる少々痛い子なのです」

アクア「めぐみんにだけは言われたくないんですけど!? っていうかホントなんだって、いい加減に信じてってばぁ!」

ガヴリール「アクアなんて女神、天界にいたっけ?」

ラフィエル「聞いたことないですね。よほどマイナーな宗教の神様でしょうか」

アクア「ハアアア!? アクシズ教をマイナー呼ばわりとは聞き捨てならないわね。あんたたちこそ何者よ!」

ガヴリール「私はガヴリール。天使だよ」

ヴィーネ「ちょ、ちょっとガヴってば!」


ガヴリール「別にいいじゃん。どう考えてもここ地球じゃないでしょ。だったらバレても平気だって」

アクア「アンタみたいな天使知らないんですけど。そっちこそパチモンじゃないの?」

ラフィエル「いいえ。確かに私たちは神に仕え、人を導い(いじっ)て差し上げる天使です」

アクア「私に仕え、人を導く……なーんだ、つまりアクシズ教徒ってことね!」

ガヴリール「はぁ?」

カズマ「天使ねぇ……まぁいいや。で、そこの二人は?」

サターニャ「よくぞ聞いてくれたわね。我が名は胡桃沢=サタニキア=マクドウェル! いずれ地獄を統べる者となる大悪魔よ!」

アクア「セイクリッド・ハイネス・エクソシズム!」バシュッ

サターニャ「ぎゃあああああっ!?」

ラフィエル「サターニャさんっ!?」


アクア「ふんっ、悪魔だったのね。どうりで生臭くて嫌な臭いがすると思ったわ」

ダクネス「それはカエルの唾液のせいでは……」

めぐみん「で、もしかしてあなたも悪魔ですか?」

ヴィーネ「ち、違います! 私はガヴと同じ天使ですっ!」ビクビク

アクア「天使、つまりアクシズ教徒ってことね。あなたたち旅人? 泊まる宿を決めてないなら私の屋敷に来てもいいわよ」

カズマ「お前何勝手に決めてるんだよ!」

ラフィエル「いえいえ、それには及びません。この世界はかなり物騒なようなので、私たちはさっさと日本に退散……あら?」

ヴィーネ「どうしたの?」

ラフィエル「どこだかドアが……カエルの下敷きになって潰れてます」

ガヴ・ヴィーネ・サターニャ「「「はああ!?」」」

【カズマの屋敷】



カズマ「ええっ、お前ら日本から来たのか!?」

ガヴリール「カズマこそ日本人だったんだ。なんでこんなとこにいるの?」

カズマ「トラックに轢かれそうな女の子を助けようとして転生したんだよ」

アクア「トラクターに耕されそうになったの間違いでしょ」ププッ

カズマ「うるせえ。スティール喰らわせるぞ」

アクア「やってみなさいよ童貞。ここにいる三人の敬虔なアクシズ教徒が黙っちゃいないわよ」

ラフィエル(入信した覚えはないのですが……)

サターニャ「そういやアンタ、カエルが苦手な割にはさっき冷静だったわね」

ラフィエル「あれだけ大きいと脳がもはやカエルと認識しませんので」

ヴィーネ「そんな事よりどうするのよこれから。どこだかドアが壊れて元の世界に帰れなくなっちゃったのよ?」

カズマ「ウィズならそういう魔導具には詳しそうだからな。明日紹介してやるよ。同郷のよしみってやつだ」

ガヴリール「おー、ありがと。お礼に死んだら天国行きにしといてやろう」

めぐみん「縁起でもないこと言いますね」


ガヴリール「ところでさ、この世界にパソコンって」

カズマ「残念ながらない」

ガヴリール「やっぱりか。これからしばらくネトゲができないとか冗談じゃないんだけど」

カズマ「ガヴリールもネトゲやるのか?」

ガヴリール「当然! 一生ネトゲだけやっていたいくらい」

ヴィーネ「いっそ清々しいほどの駄天使宣言ね」

カズマ「分かるぞ。俺も学校にも行かずニートしてやり込みまくったからな。三日完徹したこともあるくらいだ」

ガヴリール「やるねカズマ。私は二日が限度だからそこらへん見習わないと」

ヴィーネ「絶対に見習っちゃダメだからね。夜更かしは身体に悪いんだから」

カズマ「もちろんネトゲやる時の格好は」

カズマ・ガヴ「「ジャージ」」

カズマ「だよな! おいおい、ずいぶん話が合うな。ガヴリールとは旨いシュワシュワが呑めそうだ!」

ガヴリール「カズマこそ、人間のくせに分かってるじゃん。特別にガヴって呼んでもいいよ」

カズマ「今夜はたっぷり語り明かそうぜ! 最近のネトゲがどうなってるのか気になるしさ」

ヴィーネ(駄目人間と駄天使が意気投合してしまったわ……)


【翌日・ウィズのマジックアイテム屋】



アクア「この私が来てあげたわよ。お茶出しなさい、お茶」

バニル「買い物もせず茶をねだるだけの迷惑な訪問者を客とは呼ばぬ。さっさと帰るがよい」

サターニャ「その仮面イカスわね。いいセンスしてるじゃない」

ウィズ「あら、見知らぬお客様ですね」

ガヴリール「ども」

ラフィエル「初めまして」

バニル「何だ貴様ら。忌々しい神気が今日は三倍になっているではないか。この我輩の見通す力が通じない者が迷惑女神の他に二人もいるとは……」

カズマ「天使なんだとさ。それより壊れたマジックアイテムの修理を頼みたいんだけど」

ウィズ「どれどれ……うーん、ちょっと私には分かりかねますね」

ヴィーネ「そうですか……」


ウィズ「私がマジックアイテムを仕入れている紅魔族の職人さんなら、あるいは直せるかもしれません。ただ、それなりの費用がかかると思いますが」

サターニャ「この世界のお金なんて持ってないわよ」

ガヴリール「現物払いでいい?」スッ

ウィズ「ラッパ型の魔導具、ですか? なんだか世界を滅ぼせそうなくらいの魔力が込められている気が……」

ヴィーネ「ちょっ、それは売っちゃダメでしょ!?」

ガヴリール「どこだかドアが直ったらおさらばする世界だし。後は野となれ山となれだよ」

カズマ「しょーがねぇなぁ。俺が立て替えてやるよ。その代わり後で一つ頼みたいことがある」

めぐみん「このロリコン男! 弱みに付け込んで何を要求するつもりなんですか!?」

アクア「うっわ。最低ね」

ダクネス「さすがカズマ。なんという鬼畜さ」

カズマ「信用なさすぎだろ! そうじゃなくて、天使のスキルを教えて欲しいんだよ」

ガヴリール「そのくらいなら良いよ」


サターニャ「ねぇ、これって何なの?」

ウィズ「ライティング(明かり)魔法のスクロールです。暗い所では読めなくて、明るい所では使う必要がないのが玉に瑕ですけど」

サターニャ「魔法のスクロール! かっこいいわね、買うわ。じゃあこれは!?」

ウィズ「カエル殺しです。カエルの餌に見えますけど、食べたら炸裂魔法が発動するようになっているんですよ。20万エリスもしますから討伐報酬とは釣り合いませんが」

サターニャ「これさえあればジャイアント・トードもイチコロじゃない! これも買わせてもらうわ! ツケでお願い!」

バニル「まさかポンコツ店主が仕入れた欠陥商品を気に入る客がいるとは……」

ラフィエル「サターニャさん、願いが叶うチョーカーを買ったのでプレゼントしますね。きっとお似合いですよ」プププ

サターニャ「自主的に貢物を渡すとはいい心がけじゃない。可愛いし気に入ったわ」

カズマ「おいそれ、OVAで俺が殺されかけた首の締まる奴……」


ウィズ「お買い上げありがとうございました。この魔導具は預からせていただきますね。直るまでしばらくかかると思いますが」

ヴィーネ「それまでカズマさんの家にお世話になるしかないわね。よろしくお願いします」

ラフィエル「これからどうやって過ごしましょうか」

ガヴリール「ねぇカズマ。この世界ってさ、魔法とかスキルがあって、冒険者が魔物や魔王軍と戦ってるんだよね?」

カズマ「そうだけど」

ガヴリール「私さ、いっぺんでいいからネトゲの世界をリアルで体験してみたかったんだ」

ガヴリール「よし決めた。私も冒険者やってみる」

サターニャ「面白そうね! どっちが多く魔物を狩れるか勝負よ!」

ラフィエル「サターニャさんの勇姿をぜひ目に焼き付けないといけませんね(次はどんな魔物にやられてくれるんでしょうか)」ワクワク

めぐみん「そういうことなら先輩として冒険者ギルドを案内してあげましょう。ついて来てください」

ヴィーネ「私は反対なんだけど……言っても止まらなそうね」ハァ


【冒険者ギルド】



ルナ「これで登録は完了です。お疲れ様でした」

ガヴリール「これがギルドカードか」

カズマ「ジョブは何にしたんだ?」

ガヴリール「アークプリースト。ネトゲでもヒーラーだったし」

ラフィエル「私も同じくです」

サターニャ「アークウィザードに決めたわ! かっこいい魔法をバンバン撃つわよ!」

ヴィーネ「三叉槍なら持ってるし、ランサーにしたわ。って言うか後衛三人とかバランス悪くない?」

カズマ「最初のクエストには俺たちも同行してやるから、まぁ大丈夫だろ」

めぐみん「妙に優しいですね。ものぐさなカズマが一体どういう風の吹き回しですか?」ジトー

カズマ「いや、ガヴって見た目がちょっとアイリスに似てるからさ。なんか放っておけないと言うか」

ダクネス「金髪碧眼なら私も同じなのだが……」

アクア「私も可愛い信者たちを守ってあげることには賛成よ!」

ラフィエル「それではどのクエストを受けましょうか。色々ありますね」

サターニャ「隣国エルロードに再びドラゴンが現れた、退治して欲しい……ですって! これやりましょう!」

ガヴリール「ドラゴンスレイヤーか。悪くないな」

ヴィーネ「いやいや死んじゃうから。無難にゴブリン退治の依頼でも受けましょう」


【アクセルの街付近の森】



ヴィーネ「やあっ!」ザシュッ

ゴブリンA「グギャァ!」

サターニャ「食らいなさい! ライト・オブ・セイバーッ!」スパンッ

ゴブリンB「グギィッ!」

アクア・ガヴ・ラフィ「セイクリッド・ターンアンデッド!」パァァッ

ゾンビABCDEF「「「グオオオオオオ!」」」

サターニャ「ひぎゃあああああっ!」

ヴィーネ「ちょっ、サターニャまで巻き込まれて浄化されてる!」

ダクネス「どうやらこれで敵はあらかた片付いたようだな」

めぐみん「今日はいつもの三倍くらいアンデッドが寄ってきている気がします」

アクア「私の溢れんばかりの生命力と神気に吸い寄せられてくるんだもの。仕方ないわ」


カズマ「それにしてもお前ら強いな。驚いたよ」

ラフィエル「天使ですから」

めぐみん「『俺から絶対に離れるなよ』なんて格好つけて言ったくせに、カズマが真っ先に死んだのが私には一番驚きでしたよ」

ヴィーネ「っていうかゾンビに思いっきり喉笛食い千切られてましたけど、大丈夫なんですか?」

カズマ「うん、まぁ、死ぬのは慣れてるって言うか……」

アクア「毎回生き返らせてあげる優しい私に感謝することね」

カズマ「お前がいなけりゃゾンビに襲われることもなかったけどな」

ガヴリール「あー楽しかった。それじゃクエストも達成したし、そろそろ帰ろっか」

カズマ「そうだな……ってヤバい! みんな草むらに隠れろ!」バッ

アクア「いたっ、いきなり引っ張らないでよ」

カズマ「静かにしろって。敵感知スキルに反応があったんだよ」

???「ガルルルル」ノッシノッシ

ヴィーネ「何よあの真っ黒の虎みたいな獣! 明らかにラスボスの風格じゃない!」

サターニャ「私の従魔に相応しいわね。捕まえてペットにするわよ!」

カズマ「馬鹿言うな。あいつは初心者殺し。ゴブリンなんかの雑魚モンスターの後をつけて、そいつらを狩りにきた駆け出し冒険者を逆に狩る手強いモンスターだ」


めぐみん「数多の魔王軍幹部を屠った私たちなら勝てない相手ではないでしょうが、四人を守りきる自信はありませんね」

ダクネス「ここは見つからないよう撤退するのが賢明だろう」

カズマ「潜伏を発動するぞ。俺に触れてくれ」

ガヴリール「いや、それならもっといい方法がある。『結界』」

めぐみん「こ、これは……?」

ガヴリール「私を中心にして結界を張った。これで外から私たちの姿は見えないし、会話が聞こえることもないはず」

ラフィエル「ガヴちゃんのお姉さんには通じませんでしたけどね」

カズマ「とにかくでかした。今のうちに逃げよう」

ヴィーネ「え、ええ!」ダダッ

ヴィーネ「……」タッタッタ

ヴィーネ「あ、あの、一つ質問なんですけど」

ダクネス「どうした?」

ヴィーネ「あのモンスター、初心者冒険者を狩るって言ってましたよね。このまま放っておいたら、誰かが被害に遭うんじゃ」

カズマ「そりゃそうだけど……そこらへんは冒険者やってりゃ自己責任だろ」

ラフィエル「お気持ちは分かりますが、さすがにアレに挑むのはちょっと無謀ですね」

ガヴリール「人類なんて勝手に滅べばいいんだよ。死んだら一生ネトゲできないんだぞ。私はそんなの嫌だ」

サターニャ「私は戦うのに賛成よ。尻尾を巻いて逃げ出すなんて性に合わないわね」

カズマ「あれ? お前らどっちが天使でどっちが悪魔だっけ?」


サターニャ「私は大悪魔サタニキア。私の辞書に逃げるという文字は存在しない! あんな獣ごとき一瞬で片付けてあげるわ!」バッ

カズマ「おいこらっ! 勝手に向かっていくな!」

ラフィエル「犬にすら一度も勝てていないのに、その自信はどこから湧いてくるんでしょうね」

サターニャ「さぁ! 命が惜しくなかったらかかってきなさい!」

初心者殺し「……」ギロリ

サターニャ「……」

サターニャ「ちょっと待って! やっぱり話し合いにしましょう。命を散らすにはあなたは若すぎる」

初心者殺し「グオオオオオオッ」

サターニャ「ひいいいっ! らっ、らいとっ、りゃいとおぶおぶおぶぶっ!」

ダクネス「危ないっ」ガキンッ

カズマ「ちっ。こうなったら戦うしかないか。神足通」シュバッ

ヴィーネ「!?」

カズマ「後ろだぁっ」ザシュッ

初心者殺し「ガァッ!?」


めぐみん「あれがガヴリールさんから教わったスキルですか。テレポートの魔法に似ていますね」

ラフィエル「人間が使いこなせるようなモノではないはずなのですが……」

アクア「カズマは冒険者だもの。他の職業のもつ全てのスキルを自由に習得できるのよ」

ガヴリール「なにそれチートじゃん」

初心者殺し「ガウウウ!」

カズマ「当たらないっての。神足通」シュバッ

カズマ「……アレ?」

ガヴリール「言い忘れてた。それ下着しか移動しないことがあるから」

カズマ「ちょっ、そういうのは先に……ぎゃあああっ!」

ガヴリール「カズマ、大丈夫!? ヒールっ」

カズマ「な、なんとか平気だ。俺とダクネスが抑えている間に、めぐみんはいつものヤツを用意してくれ!」

めぐみん「分かりました!」

ヴィーネ「言いだしっぺだもの。私だって戦うわ。ええいっ」ビュンッ

ラフィエル「私はガヴちゃんと一緒に微力ながらヒールで支援します。カズマさん、頑張ってください」


初心者殺し「ウガアアアアア!」

ダクネス「その程度では私の鎧に傷一つ付けられんぞ」キィン

ヴィーネ「めぐみんさん、まだですかっ!?」

めぐみん「準備が整いました。みなさん、下がってください」

カズマ「よし。喰らえ、バインドッ」バッ

ヴィーネ「投げたワイヤーが足に絡まった!? こういうスキルもあるのね」

ラフィエル「その技あとで教えてください。サターニャさんに是非とも使って差し上げたいです」

カズマ(こいつ、ダクネスとは正反対の方向に性癖が歪んでいるような……)

ダクネス「いいから離れるぞ。急げっ」

めぐみん「さぁ行きますよ。サターニャさん」

サターニャ「任せなさい! やられっぱなしで黙ってるサタニキア様じゃないわ!」


めぐみん「黒より黒く、闇より暗き漆黒に」

サターニャ「我が真紅の混交に望み給う」

めぐみん「覚醒の時来たれり、無謬の境界に堕ちし理。無形の歪みと成りて現出せよ!」

サターニャ「踊れ、踊れ、踊れ。我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり」

めぐみん「万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ! これが人類最大の威力の攻撃手段!!」

サターニャ「これこそが! 究極の攻撃魔法!」

めぐみん・サターニャ「「エクスプロォォージョンッ!!」」

ドドッカアアアアアアアアンッ!!

ヴィーネ「きゃあっ!」

初心者殺しだったもの「」プスプス

カズマ「うわぁ……ただでさえオーバーキルな威力なのに二連発とか」

ラフィエル「森に大穴が開きましたね……恐ろしいです」

ガヴリール「耳がキンキンする……」


サターニャ「んなーっはっはっは! 素晴らしい威力ね。この魔法気に入ったわ!」

めぐみん「ええ、エクスプロージョンこそ至高の攻撃魔法です。あなたのような理解者にはなかなか出会えませんが」

サターニャ「ところで身体が動かないんだけど」

めぐみん「魔力を使い果たしてしまいますから仕方ありません。むしろ撃てるだけ大したものです。さすがは悪魔ですね」

めぐみん「というわけでカズマおぶってください」

カズマ「へいへい」

サターニャ「それじゃあラフィ。アンタは私を運びなさい」

ラフィエル「はい」ニコニコ

サターニャ「あ、待って。嫌な予感がするわ。やっぱりヴィーネに頼むから」

ラフィエル「いえいえ。遠慮することはありませんよ」ワキワキ

サターニャ「その手の動きは何!? ちょっ、ホントに動けないから止めて! いやあああああああっ!!」


【一週間後・カズマの屋敷】



ヴィーネ「ちょっとガヴ! 部屋の片付けくらいちゃんとしなさい!」

ガヴリール「いいんだよ。神様の許可は貰ってるから」

ヴィーネ「はぁ?」

ガヴリール「『自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分らない。なら、分らない明日の事より、確かな今を楽に生きなさい』」

ヴィーネ「な、何をいきなり言ってるのよ」

ガヴリール「『汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい』」

ガヴリール「『汝、我慢することなかれ。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだがら』」

ガヴリール「『アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い』」

ガヴリール「いやー。アクシズ教の教えって素晴らしいね。私、これからは女神アクア様に仕える天使になるから」

ヴィーネ「そんなの邪教の教えじゃない! 人を堕落させる悪魔の囁きよ!」

ガヴリール「いや、悪魔はそっちだろ……」

ヴィーネ「居候させてもらってる立場なんだから、部屋は綺麗に使わないとダメじゃないの」


サターニャ「ビッグニュースよ! ちょっとリビングに来なさいガヴ。皆集まっているわ!」

ガヴリール「あ、サターニャが呼んでる」スタスタ

ヴィーネ「待ちなさいっ。話はまだ終わってないわよ」

サターニャ「来たわねガヴ。良いニュースと悪いニュースがあるわ。どっちから聞きたい?」

ヴィーネ「じゃあ悪い方から」

サターニャ「ごめん。そっちは用意してないわ。映画みたいなセリフを言ってみたかっただけ」

ガヴリール「セイクリッド・ハイネス・エクソ……」イラッ

サターニャ「その魔法は洒落にならないからやめて! 今度こそ浄化されちゃう!」

ガヴリール「じゃあ良いニュースの方は何だよ」

カズマ「『どこだかドア』が直ったんだよ。ほらコレ、たった今ウィズに届けてもらったんだ。良かったなガヴ」

ヴィーネ「本当!?」

ラフィエル「これでようやく日本に帰れますね」


ガヴリール「……やだ。帰りたくない」

サターニャ・ヴィーネ「「はぁ!?」」

ガヴリール「だってここ理想の世界じゃん」

ガヴリール「魔法や魔物があって、スキルやレベルが存在して、まさにリアルネトゲって感じだし」

ガヴリール「神様の教えも元の世界とは比べものにならないくらい緩い」

ガヴリール「お金持ちのカズマが養ってくれるから、仕送りの減額に怯える必要もない」

カズマ「ちょっと待て。お前一生俺にたかる気だったの? 初耳なんだけど」

ガヴリール「元の世界に帰る意味なくない? ここで皆で一緒に暮らそうよ」

ヴィーネ「だ、ダメよ! 二度と家族に会えなくてもいいの?」

ガヴリール「う、それは……」

ヴィーネ「私は嫌よ。魔界の両親に会えなくなるなんて」

アクア「魔界?」ピクッ

ヴィーネ「あっ」


アクア「何かおかしいと思っていたら、やっぱりアンタも悪魔だったのね」

アクア「悪魔であることを隠してアクシズ教に潜り込むなんて許せないわ! 女神を欺いた罪は重いわよ」

ヴィーネ「ごめんなさい。でも入信した覚えはないんですけど!?」

ガヴリール「まぁまぁアクア様。ヴィーネは悪い悪魔じゃないからさ、そのくらいで許してやってよ」

アクア「そもそもサターニャが私の屋敷で暮らすことに目を瞑ったのが間違いだったわ。悪魔殺すべし、魔王しばくべし。それがアクシズ教の教義だもの」

カズマ「いや俺の屋敷なんですけど」

アクア「さあそこをどきなさいガヴリール。悪魔二人と一緒に消されたくなかったらね!」

サターニャ・ヴィーネ「」ガタガタ

ガヴリール「どうしても駄目ですか?」

アクア「ええ。アクシズ教はロリコンでも同性愛でも異種間でも、そこに愛があって犯罪でない限り全てを許すわ。でも悪魔っ娘だけは例外よ」

ガヴリール「……はぁー。なら仕方ないか」

ガヴリール「この世界の暮らしも、アクシズ教の教えもなかなか気に入ってたけどさ」

ガヴリール「ヴィーネと一緒にいられないなら、やっぱアクシズ教やめるわ」

ヴィーネ「ガヴ……!」

ガヴリール「だってヴィーネがいなかったら、誰が私の世話してくれるのさ」

ヴィーネ「私の感動を返して!」


アクア「女神の前で棄教を宣言するとはいい度胸じゃない。アクシズ教をやめたければ、私を倒してみなさい!」

アクア「いくわよ。先手必勝ゴッドブロ……」

ガヴリール「エンジェルブローッ!!」ドスッ

アクア「グフッ……つ、強くなったわねガヴリール……もう私が教えられることは何もないわ」

ガヴリール「アクア様、あなたの教えは忘れません……あ、カズマも色々とありがとね」

カズマ「お、おう。元気でな……ああそうだ」

カズマ「良かったらこの手紙を俺の両親に渡しといてくれ。こっちで元気にやってるって、一応知らせておきたいしさ」

ガヴリール「分かった。カズマの両親も死んだら天国行きにしといてあげるよ」

ラフィエル「それでは色々とお世話になりました」

ダクネス「ああ。達者でな」

めぐみん「たとえ違う世界に行ってしまっても、爆裂魂は永遠ですよサターニャさん」

サターニャ「ええ。爆裂道を極めたアンタと地獄で再会する日を楽しみにしてるわ」

ヴィーネ「皆さんに頂いたご恩は一生忘れません。本当にありがとうございました」バタン


【数日後・ガヴリールの部屋】



ガヴリール「あー、またあの世界でリアルネトゲやりたい」

ガヴリール「……そうだ! 神足通使えばあっちに転移できるかもしれないな」

ガヴリール「よし、行くか」ヒュンッ



【カズマの屋敷】

ガヴパンツ「」フワッヒラヒラ

カズマ・アクア・めぐみん・ダクネス「!?」

終わり。

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