【SS】外付けHDD1TB葬式会場 (20)



喪主「本日は突然のことにも関わらず…」

喪主「ご多用の中、故人のために多数の方々にご会葬、ご焼香を賜りまして…」

喪主「誠にありがとうございました…」



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喪主「皆様から…心のこもったお別れの挨拶を賜り…こいつも…」

喪主「こ、こいつも…さぞかし、よろこ、喜んで…」

喪主「…うぅっ」



喪主「なんで…なんでなんだよぉ…」


喪主「なんでイキナリ死んじまったんだよぉ…」





喪主「まだ保証期間過ぎたばっかだろうがぁ…畜生ぅ…!!!」




喪主「…すみません…突然大きな声を上げたりして…」


喪主「コイツと初めて出会ったのは、社会人になってまだ間もないころ」

喪主「駅前の家電売り場で、でした…」



喪主「小柄な奴だな…っていうのが、第一印象で…」

喪主「でも、よく見るとたくさん魅力的なところがあって…フォルムも綺麗で…」

喪主「正直、一目惚れでした…」



喪主「一緒に暮らし始めてからは…そりゃもう、いつも一緒でした」

喪主「物覚えが良くて、どこ行ったか分かんなくなったものもすぐに検索できて…」

喪主「どんな大きなファイルも分け隔てなく受け入れてくれて…」

喪主「ずっと繋げっ放しだったときも、嫌な顔一つしないで…」



喪主「取り出しボタンを押さずにUSBぬいちゃったこともあったっけなぁ…」

喪主「今となっては、いい思い出です…」


喪主「でも…もしかしたら、少しづつそういう無理が積み重なっていたのかもしれません」



喪主「二日ほど前、突然変な音を立てて、応答しなくなりました」

喪主「私が何度電源を入れ直しても、キャッシュファイルを掃除しても…ダメでした…」

喪主「何度もエラーを吐くあいつの姿が…痛々しくて見ていられなくて…」



喪主「あいつは…俺との思い出と…膨大なデータと共に、逝ってしまったのです…」

喪主「くそ…くそぅ…」

喪主「あいつの、あいつのバッファロ…バッキャロおおおお!!!!!」



喪主「…うぅ」

喪主「すいません…まだ気が動転しているみたいで…」



喪主「今まで病気らしい病気ひとつせず元気だったあいつが、こんなに早く逝ってしまったことが…」

喪主「ほんとうに残念でなりません…!」

喪主「今はただ、一生懸命頑張っていかねばと、自分に言い聞かせております…」



喪主「私はまだ若輩者でございます…」

喪主「故人の生前と同様、これまでにも増してご指導ご鞭撻を賜りますよう…」

喪主「ここに切にお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます…」


喪主「本日は誠にありがとうございました…!」




喪主はその後、寂しさをまぎわらすように

同じく駅前の家電売り場にて2TBの外付けHDDを購入した

あの時の1TBと同じ値段だったから、というのが理由であった


しかし、お通夜から一週間たった今も

そのHDDの中身は空っぽのままである


時すでに遅し

もう彼には膨大な空き容量を埋めてくれるバックアップ元は存在しないのだ…









いきなり飛んできた電波をネタに書きました

皆様もバックアップはお早めに…

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