野崎「瀬尾の女口調……」 (14)

ある日の体育館

瀬尾「あはははは!!!」

部員「うわー!!」

野崎「今日は瀬尾は女バスの方の助っ人に来てるんだな」

野崎「……思えば春の時もこうやって佐倉と二人で体育館の上から瀬尾を見ていたな」

野崎「そうだそうだ、それ以外にも運動のできるKYだと思っていたり……明らかにわざととしか思えない振る舞い……」

野崎「先生の書類を一緒に運ばされたり……」

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野崎「瀬尾は結局逆立ちで逃げたんだよな……」

野崎「……」

野崎「……ん?」

野崎「ちょっと待て、あの時の会話……」










野崎(何故俺が瀬尾と……)

瀬尾『ちょっと、そういう顔すんのやめてくんない?』

野崎『あ、ああ……すまない』

瀬尾『やっべー、超可愛い子と一緒になっちまったぜ』

瀬尾『ああもう緊張して上手く喋れないよ、俺の馬鹿』

瀬尾『……って顔に書いてあるわよ』

野崎『……』イラッ















野崎「……」

野崎「……『わよ』?」

野崎「瀬尾の女口調……」

野崎「瀬尾が……女口調で……喋ってた……」

野崎「……俺は貴重な瀬尾を目撃していたんじゃないか!!?」

野崎「間違いない、あの時の瀬尾は確かに『わよ』と言っていた」

野崎「今の瀬尾……いや、当時の瀬尾からも考えられない台詞だ」

野崎「どういうことなんだ……? あの時の瀬尾は何故……?」

野崎「……」

野崎「……ん? 待てよ……」

野崎「そうだ、こういうことは瀬尾に詳しいやつに聞けばいいんだ」

若松(今日の部活は久々に瀬尾先輩が来ない!! なんて楽しいんだろう!!)

野崎「若松」

若松「あ! 野崎先輩!! ……またマネージャーですか?」

野崎「いや違う。 お前に聞きたいことがあって来た」

若松「聞きたいこと……ですか?」

野崎「ああ。 若松……もしもだが……瀬尾が女口調で喋ってたらどうする?」

若松「え、ええっ!? 瀬尾先輩がですか!!?」

野崎「ああ」

若松「……それはもう瀬尾先輩じゃないですよ」

野崎「……その瀬尾じゃない瀬尾がいたんだ、春に」

若松「!!!!?」

野崎「……とまあその時だけだったんだ、女口調だったのは」

若松「……」ガクガクブルブル

野崎「若松!! 落ち着け!! お前が怖がる気持ちは分かる!!」

若松「は、はい……」

野崎「もしかして……若松の前では一度も女口調で喋ったことはないのか?」

若松「はい……そうですね」

野崎「……」

野崎「何故あの時の瀬尾は女口調だったんだ?」

野崎「よし、こうなったら……」

若松「『こうなったら』……?」

野崎「瀬尾に直接聞くしかないな」

若松「瀬尾先輩にですか?」

野崎「問題はあいつがその時を覚えているかどうかだ」

若松「……絶対覚えてないですよね」

野崎「ああ、だが聞くだけ聞いてみよう」

野崎「じゃあ若松、部活が終わった後に」

若松「はい!!」

部活終了後

野崎「瀬尾」

若松「瀬尾先輩!!」

瀬尾「おー若じゃん、それに野崎も」

野崎「瀬尾……俺とお前が初めて会った時を覚えているか?」

瀬尾「初めて会った時?」

野崎「ああ、一緒に先生の書類を持たされたじゃないか」

瀬尾「あったっけそんなこと」

野崎「……」

若松「その時を覚えてない時点でアレですね」

野崎「そうだな……瀬尾、引き止めて悪かった。 じゃあ」

瀬尾「は? あいつ何しに来たの若」

若松「別に先輩が知る必要はないですよ……俺もこれで」

瀬尾「いや、お前は私と一緒に帰るだろ」ガシッ

若松「えっ」

若松「そういえば先輩、今日は男バスに来なかったんですね」

瀬尾「うん」

若松(そのままうちに来なけりゃいいんだけどな)

瀬尾「いやー、まぁコンクール近いからしょうがないよなー」

若松「コンクール……? 女バスがですか?」

瀬尾「は? 何言ってんだよお前。 私、今日は声楽部にいたんだぜ?」

若松「へ?? 女バスですよね??」

瀬尾「ちげーって。 声楽部だよ」

瀬尾「……っは!! お前まさか私が恋しくて幻覚を……」

若松「見るわけないじゃないですか!!」

野崎「うーん……」

野崎「あの時の瀬尾は……俺の勘違いだったのか?」

佐倉「あ!! 野崎くん!!」

野崎「! 佐倉……」

野崎(……そうだ、瀬尾に詳しいのは若松だけじゃなかったな)

野崎「佐倉……ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」

佐倉「聞きたいこと……?」

野崎「実は俺が瀬尾と出会ったばっかりの頃、瀬尾が女口調で話してたんだ」

野崎「今の瀬尾からは考えられないんだ」

野崎「佐倉の前では普通に女口調だったりするのか?」

佐倉「うーん……」

野崎「……?」

佐倉「……あ! 分かった!!」

野崎「!!!」

佐倉「野崎くん、きっとそれって……」

瀬尾「はー疲れたー……ただいまー」

遼介「おう、おかえり」

瀬尾「……あれ、ねぇ兄ちゃん」

遼介「なんだよ?」

瀬尾「あいつまだ帰ってないの?」

遼介「ああ。 つーかあいつ、朝に言ってたろ」

瀬尾「なんて?」

遼介「今日は女バスの助っ人に行った後にそのまま友達と食べて帰るって」

瀬尾「あー……そんなこと言ってたなー」

遼介「それよりお前は今日はちゃんと声楽部行ったのかよ?」

瀬尾「もち」

その後

野崎「……」

野崎(まさか瀬尾が双子だとは……)

野崎(しかももう片方はたまーに女口調になるだけでそれ以外は瀬尾と瓜二つだとは……)

若松「野崎先輩!! ビッグニュースですよビッグニュース!!」

野崎「なんだ若松」

若松「実はローレライさん、双子の姉妹だったんです!!」

野崎「!!!」

若松「きっともう片方の人も瀬尾先輩とは比べ物にはならないぐらい綺麗な人なんだろうなぁ……」

野崎「……」

野崎(何故だろう……瀬尾が双子という事実を若松に言っても……)

野崎(バレる気配が全くなさそうなのは何故だろう)

~終わり~

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