曜「千歌ちゃん……が、欲しいです」 (19)

遅れましたが曜誕記念SSです。前作の続きとなります。

【前作】千歌「桜が似合う女の子」


・Aqoursは決勝戦で敗退。ラブライブ出場は惜しくも逃してしまった。

・しかしAqoursの活動が高く評価されて入学希望者が増えたことにより廃校は見送りに。

・ダイヤたち3年生の卒業と同時にAqoursは解散。千歌たちは3年生に進級。


※本家で投稿失敗したため、こちらで投稿します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492696804

――4月中旬 沼津市室内温水プール


後輩A「すごいです曜先輩!また記録更新しましたよっ!どうぞタオルです!」

後輩B「あっ、ずるい!わたしのを使ってくださいっ!」

曜「あ、ありがとう2人とも。それじゃあ両方使わせてもらうよ」フキフキ


後輩A「はぁ~、曜先輩やっぱりカッコいいなぁ。スタイルも抜群だし」キラキラ

後輩B「カッコいいだけじゃなくて、可愛らしさも兼ね揃えてるものね」

後輩A「そりゃそうだよ!だってAqoursのトップアイドルなんだからっ!」

曜「あはは……でもAqoursは前の3年生が卒業したと同時に解散したから」

曜「今のわたしはスクールアイドルじゃなくて、ただの水泳部員だよ?」

後輩A「そんなことはありません!先輩に憧れて、浦の星に入学した子多いですから!」

後輩A「同じ中学でも、先輩が好きな子はたくさんいたんですよ!」

曜「はは……照れるなぁ……」


後輩B「あ~あ、でもこんなにモテモテだと、もう『恋人』はいるんですよね?」

曜「えっ」

後輩A「当たり前でしょ?それも曜先輩と釣り合ったとびっきり素晴らしい人と……」

曜「……ごめんっ!あと少しで練習時間終わりだから、用具を片付けてもらえるかな」

後輩A・B「あっ、はい」


後輩A「……もしかして、恋人とケンカでもしてるのかな?」ヒソヒソ

後輩B「しばらくこの話は触れないでおこうか。先輩に悪いから」ヒソヒソ

――港口公園


曜「はぁ、海が見たくてつい寄り道しちゃったよ……」

曜(わたしに恋人なんて、いるわけないじゃない……)

曜(『好きな人』は、いるけどさ。ずっと昔から、想いを寄せていた女の子……)


曜「……千歌ちゃん」ボソッ


曜(ついこの間知ったことだけど、千歌ちゃんはわたしと知り合う前に)

曜(東京で梨子ちゃんと仲良くなっていたことが、梨子ちゃんのママの話で分かった)

曜(しかも『桜の木の下』という最高のシチュエーションで出会ったらしい……)

曜(2人も最近まで全く気付いていなかったみたいだけど)

曜(この話を聞いた時、すごく嬉しそうだったなぁ……梨子ちゃんなんか泣いてたし)

曜(その事実を知ってからというもの、わたしは『部活があるから』と言い訳して)

曜(2人のことを避けるようになってしまった……)


曜(決して梨子ちゃんのことが嫌いになったわけじゃない。わけじゃないんだけど……)

曜(夏の合宿の時のことを思い出して、またモヤモヤが止まらなくなっちゃった)

曜(そのモヤモヤを晴らすかのように、今日もプールでがむしゃらに泳いで)

曜(また自己記録を更新したみたいだけど、正直そんなことはどうでもよくて)

曜(泳いでもやっぱりこの気持ちが晴れることはなく、嫉妬ファイヤー炎上中……)

曜(でも……これはわたしの『自業自得』なんだよね)

曜(だって、未だに千歌ちゃんに想いを告げられずにいるんだもの)

曜(いつまで経っても幼なじみで親友のまま……ううん)

曜(梨子ちゃんと先に仲良くなったってことは、もう『幼なじみ』ですらないのかも)


曜(みんなわたしを『Aqoursのスーパーアイドル』と褒め称えてくれるけど)

曜(実際のわたしは全然立派じゃないよ。告白するのを怖がっているただの臆病者)

曜(もしも、梨子ちゃんが転校する前に千歌ちゃんに告白していたら)

曜(こんなモヤモヤした気持ちにならずに済んだのだろうか……)


曜「どうすれば時が戻る~ 眩しい太陽の下で~♪」

曜「どれだけ涙……流れても……静かに海は……広が……る……」ジワッ


??「ハーイ!そこのプリティな彼女!わたしとお茶しな~い?」

曜「……え?」クルッ


鞠莉「ハロー曜!ようやく見つけたわ……って、あれ?」

曜「ま……鞠莉ちゃあんっ……」ヒック ヒック

鞠莉「あらあら。出会って早々なんて顔してる……」

曜「うっ、ううう……鞠莉ちゃあああああんん!!」ギュウー

鞠莉「オウ……またなの……?」

――


鞠莉「……はい、ホットココアで良かったかしら?」

曜「ぐすっ……ありがとう……」ヒック

鞠莉「始業式以降、わたしは理事長の仕事で外出することが増えたから」

鞠莉「去年みたいに曜たちの様子をいつも把握することが出来なくなったけど」

鞠莉「そっか、千歌っちと梨子がそんな運命的な再会を果たしてたなんてね……」

曜「この話を聞いた時は、正直目の前が真っ白になっちゃったよ……」

曜「もうあの2人は、結ばれるために再会したとしか思えないし……」ジワッ

鞠莉「それで、曜はどうしたいわけ?千歌っちとどうなりたいの?」

曜「わたしは…………その…………」ウジウジ


鞠莉「はぁ……この際だからハッキリ厳しいことを言うけどね……」

鞠莉「あなたはヘタレなヨーソロー過ぎるのよっ!」ビシッ

曜「ううっ!?」グサッ

鞠莉「夏の合宿の後に言ったじゃない。『本音でぶつかった方がいい』って」

曜「うん……」

鞠莉「なのに、あれからシーズンが3回も変わったのに、まだ言えてないなんて」

曜「だ、だって……わたしの『大好き』は、友だちとしての好きじゃないから……」メソメソ

曜「もし告白して……ダメだったらって思うと……怖いの、とても……」メソメソ


鞠莉「じゃあ……千歌っちに告白するの……やめる?」

曜「っ!やめないっ!…………はっ」


鞠莉「これ、あなたが千歌っちを奮い立たせるために言ってたセリフよ」

鞠莉「予選の寸劇を練習している時、千歌っちがわたしに教えてくれたの」

鞠莉「自分が言われてみてどう?くやしくないの?」

曜「う……ううぅ…………ひっく」ポロポロ

鞠莉「はぁ……本当はこんなお説教するために来たんじゃないのに……」

鞠莉「さすがにこれ以上叱るのはかわいそうだし、わたしも気が滅入っちゃう」

鞠莉「だーかーらっ、この話はここでストーップ!」


鞠莉「今日は曜にこれを渡すために来たのよ。だから早く泣き止んで?ね?」つ瓶

曜「ひっく……これは……瓶?」グスッ

鞠莉「今月の17日が誕生日でしょ?その日も仕事で外出しちゃうから」

鞠莉「だから一足早いバースデープレゼント、フォーユー!」

曜「あ、ありがとう……鞠莉ちゃん」

曜「忙しいのに、わざわざこれを渡すために会いに来てくれたんだ」

鞠莉「沼津に用があったのもあるけど、水泳部が市内のプールで練習するって聞いてね」

鞠莉「果南の時みたいにちょっとストーキングしちゃったわよ?」

曜「あはは……」


曜「綺麗だね、この瓶。あれ?中にみかんが入ってる。ジャム……ではない?」

鞠莉「イエース!千歌っちの好きな寿太郎みかんが入った『アロマジェルキャンドル』ね」

鞠莉「お部屋の中でコルクを抜いて芯に火を灯せば、たちまちいい香りが広がるわ」

鞠莉「香りを楽しんでから眠ると、結構いい夢が見られるのよ?」

曜「そ、そうなんだ」

鞠莉「これで告白出来る訳じゃないけど、とにかくこれを使って熟睡してみなさい」

鞠莉「もしかしたら、千歌っちの夢が見れるかもしれないわよ?」

鞠莉「あっ、火を灯した状態で寝るのは絶対ノーよ?火事になっちゃうからね」

曜「ありがとう鞠莉ちゃん。早速今夜使わせてもらおうよ」


鞠莉「頑張りなさい、曜」

曜「うん……本当にありがとう……」

――夜 渡辺家・曜の部屋


曜「はぁ、やっぱり鞠莉ちゃんには敵わないなぁ。さすが年上と言うべきか」

曜「さてと。このコルクを開けて、っと」キュポン

曜「あっ、みかんのいい香り」クンクン

曜「中の芯に火を付けて……ああ、いい香りが広がってきた」

曜「千歌ちゃんがみかんを食べてる時もこんな香りしてるよね……」


数時間後


曜「そろそろ寝ようかな。明日も部活があるから」

曜「火はちゃん消してっと……おやすみなさい」


曜「すぅ……すぅ……千歌ちゃぁん……」zzz

――
――――
――――――


曜「うん?……あれ、どこだろうここ?」

??「目覚めたか、渡辺曜」

曜「え?誰かがわたしを呼んでいる?」クルッ


(U╯ꈊ╰U)「わしだよ」ヒョコ


曜「わっ!しいたけ!?どうしてここに……?て言うか喋ってる!?」

(U╯ꈊ╰U)「落ち着きたまえ。これは仮の姿で、お前さんの言う『しいたけ』ではない」

神様「取り敢えず『神様』と名乗っておこうか」

曜(そんなこと言われても、しいたけの姿で神様って言われてもあり得ないでしょ?)

神様「今『こんな姿で神様と言われてもあり得ない』と思ったな?」

曜「ぎくっ!べ、別にそんなことは……」タジタジ


神様「お前さんの心の内は手に取るように分かるぞ」

神様「幼い頃からの親友が、去年転校してきた子に取られそうになっていること!」

曜「うっ!」グサッ

神様「しかも転校生の子が、自分よりも早く親友と仲良くなっていたこと!」

曜「ううっ!」グサッ グサッ

神様「嫉妬ファイヤーの火力が『メラミ』から『メラゾーマ』になっていること!」

曜「うううっ!」グサッ グサッ グサッ

神様「全てお見通しだっ!」m9(U╯ꈊ╰U)ドーン


曜「」チーン

曜「は……ははは……千歌ちゃんの夢が見られると思ったのに……」グスッ

曜「鞠莉ちゃあん……わたし、悪夢を見ちゃってるよお……えうぅ……」ポロポロ

神様「ありゃりゃ、泣かせるつもりは無かったんだが……」


神様「曜よ、お前さん今月の17日が誕生日だったろ?」

曜「ぐすっ……そうだけど……?」メソメソ

神様「わしはお前さんに『誕生日プレゼント』を渡したいと思って夢の中に現れたのだ」

曜「……神様が、わたしに?」グスッ

神様「そうだ。何を隠そうわしは、『誕生日を迎える者の前に現れる神様』だからだ」ドヤッ

曜「…………くすっ、何だかサンタさんみたい」

神様「サンタさんじゃない、神様だ。本当は当日に降臨したかったのだが……」

神様「あのアロマジェルキャンドルが誕生日プレゼントだったみたいだな」

曜「うん。今日先輩にもらったの」

神様「どうやら、そのプレゼントとお前さんの強い想いに影響を受けて」

神様「早く引き寄せられてしまったみたいだ。だから今日プレゼントを渡したいと思う」

曜「……分かったよ。それじゃあ、せっかくだし頂こうかな。神様」


神様「よろしい、ならば……」

神様「お前さんの『欲しいもの』を何でも1つプレゼントしてやろう」


曜「…………えっ、欲しいもの?」

神様「今のお前さんなら、喉から手が出るほどに欲しているものがあるだろう?」

曜「わたしが……欲しいもの……」

曜「それって、物や願いとか……もしかして、人でも?」

神様「何でもは何でもだ。対象外のものは一切ない」

曜「何……でも……」ゴクッ

神様「言い忘れていたが、プレゼントの拒否は受け付けない」

神様「大なり小なり、欲しいものを何でもくれてやろう」

神様「しばらくの間、お前さんの心を読むのは控えておく。さあ決めてくれ」


曜「……」

曜「…………」

曜「……………………うん。決まった」

曜「じゃあ神様。欲しいものが、あるんだけど……」

神様「そうか。言ってみるがよい」


曜「わたし、わたしは…………千歌ちゃん……」

曜「…………に告白する『勇気』が、欲しいです」


神様「……………………え?」

曜「千歌ちゃんに告白する勇気。それが今、わたしが欲しいものです。神様」


神様「正直……驚いたぞ」

神様「わしはてっきり、『千歌が欲しい』とばかり思っていたが……」


曜「言わずもがなだけど、本音を言えば千歌ちゃんとお付き合いしたい」

曜「でも……付き合うならしっかりと告白してからだと思ったから」

曜「それに、千歌ちゃんの返事もしっかり聞きたいし……」

神様「素直に千歌が欲しいと言えば、そんな苦労をしなくてもいいのだぞ?」

神様「それに、告白が失敗するリスクも……」


曜「ううん。やっぱりわたし、自分の口で、自分の言葉で告白したい」

曜「神様を悪く言うつもりじゃないんだけど、ズルして千歌ちゃんと付き合いたくないよ」

曜「でもわたし、ヘタレなヨーソローだから……せめて『勇気』だけは欲しくて」

曜「それに、しっかり千歌ちゃんに想いを伝えた梨子ちゃんにも悪いし」


神様(さっきとは違い、迷いが一切ない……本気なのだな……)

神様「……分かった。その願いをプレゼントしよう」

曜「ありがとう。神様」


神様「……さあ、そろそろ朝になる」

神様「目覚めた瞬間、お前さんは『告白する勇気』が手に入る」

神様「幸運を祈るぞ、曜」

曜「本当にありがとう、神様!……わたし、頑張るよ!」スッ


神様(曜が目覚めた時、この夢の中の出来事はポカンと忘れているだろう)

神様(そして『告白する勇気』だけが胸に残り、千歌に告白することになる)

神様(しかし、残念だがこの願いでは告白が成功する確率は限りなくゼロに等しい)

神様(当然だ。千歌と梨子は最早いつ結ばれてもおかしくないほどの仲にある)


神様(……だが、曜の千歌に対する『まっすぐな想い』は紛れもなく本物だった)

神様(わしとしたことが、その想いを無下にするのは勿体無いと思ってしまった)

神様(そこで……彼女には特別にもう1つ『プレゼント』を贈っておいた)

神様(あとはお前さん次第だ。頑張るのだぞ、曜よ……)


――――――
――――
――

――翌日 浦の星・2年教室


千歌「あっ、曜ちゃん!おはよう!」

梨子「おはよう曜ちゃん」

曜「おはよう千歌ちゃん、梨子ちゃん」

千歌「それでね~、しいたけったら……」アハハ


曜「あのっ、千歌ちゃん!」

千歌「ん、なに?曜ちゃん」

曜「ちょっと話があるんだけど……向こうでいいかな?」

千歌「うん。いいよ」

曜「梨子ちゃんごめんね。ちょっと千歌ちゃん借りるから」

梨子「え?ええ。行ってらっしゃい」

――階段踊り場


千歌「どうしたの曜ちゃん?こんなところまで連れてきて」

千歌「……あっ、そうだ!そろそろ曜ちゃんの誕生日だよね!」

千歌「去年はファーストライブの準備とかもあって、ちゃんと祝えなかったから」

千歌「今回はパーッと盛り上がろうよ!最近部活で忙しかったでしょ?」

千歌「梨子ちゃんやみんなも誘ってさ、それでね……」


曜「千歌ちゃんっ!」壁ドン

千歌「はっ、はい!!」ビクッ

曜「あのね?わたし……今までずっと千歌ちゃんに伝えたいことがあったの……」

千歌「えっ……?」

曜「聞いて……くれるかな……///」グイッ

千歌「う……うん……分かったよ///」

千歌(曜ちゃん、顔が近いよぉ。それに真剣な表情、何を言おうとしてるの?///)ドキドキ


曜(落ち着け曜……今日は不思議と勇気が沸いてくる……)ドキドキ

曜(鞠莉ちゃんのプレゼントのおかげかな。今なら言えそうな気がする……)ドキドキ

曜(わたしの……ありったけの想いを、千歌ちゃんにっ!)ゴクリッ


曜「すぅー、はぁー……千歌ちゃんっ!」

曜「……ずっと前から好きでしたっ!わたしと付き合ってくださいっ!!」


おわり


ご覧いただきましてありがとうございました。

神様が特別にプレゼントのは『告白の成功率が50%になる』という願いです。
曜ちゃんの告白の結果は、皆さんのご想像にお任せしたいと思います。

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