特殊部隊「どうせオレらってやられ役だよな……」 (19)


ある特殊部隊の駐屯地――

隊長「大都市に正体不明の怪物が出現し、余りの強さに警察でも手をつけられないという!」

隊長「となれば、我ら特殊部隊の出番だ!」

隊長「今こそ日頃の訓練の成果を見せる時だ!」

隊長「各自、出撃準備に入れ!」



隊員A「はいっ!」

隊員B「はいっ!」


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隊員A「――と勇ましく返事したはいいけど」

隊員A「どうせオレらってやられ役だよな……」

隊員B「まぁな」


隊員A「特殊部隊だエリート部隊だ精鋭部隊だ、と強そうな肩書きを引っさげて登場して」

隊員A「まあ……全滅するよな」

隊員B「全滅だろうな」

隊員A「よくて半壊」

隊員B「勝つことは」

隊員A「まずないな。絶対ない」

隊員B「間違いなく負けるだろうなぁ」


隊員A「どんな相手でも恐れません、この最新装備なら負けません、と意気込んでみるも」

隊員A「結局は全然通じなくて」

隊員B「悲鳴上げながらマシンガン乱射したり」

隊員A「情けなく逃げ惑って」

隊員B「蹂躙されて」

隊員A「後に残るのは死体の山」

隊員A「全滅までどのくらいかかるかな? 5分? 10分?」

隊員B「下手すりゃ戦ってる姿すら描かれないかもしれないぞ」


隊員A「なーんで特殊部隊ってやられ役なんだろ?」

隊員B「なんでだろうなぁ……」


隊員B「やられ役ってのは、ある程度強くなきゃ成立しないわけじゃん?」

隊員A「そりゃそうだな」

隊員B「だからじゃね?」

隊員B「特殊部隊は普通の部隊より強い、だからやられ役にしよう、って図式」

隊員A「特殊部隊をやられ役にすることで、それを壊滅させた敵が輝くってわけね」

隊員B「そうそう」


隊員A「でもさ、特殊部隊イコールやられ役ってのはもうすっかり定着しちゃってるし」

隊員A「なんていうかあまり強いイメージないよね」

隊員A「出てきた瞬間に、こいつら全滅しそうな気がするっていうか」

隊員B「そういわれてみればそうだけどさ……」

隊員B「そこはほら、歴史と伝統ってことで納得しとこう」

隊員B「未知の怪物や超人の強さを示すなら、特殊部隊を全滅させとけって図式なんだよ」

隊員A「お約束ってやつか」


隊員A「そういやさ、特殊部隊はあまり強いイメージないけど、“元特殊部隊”は強いよな」

隊員B「強いな」

隊員A「どうして? なんで現役より強いの?」

隊員B「そりゃあれだろ、死なずに退役できたんだから強いって理屈だろ。経験もあるだろうし」

隊員A「でも絶対ブランクとかあるじゃん? 体は絶対なまってるだろ」

隊員B「そこはほら、密かに訓練してたってことで」

隊員A「あーあ、オレも元特殊部隊だったらなぁ」

隊員B「こんな土壇場で愚痴ってもしょうがないだろ」

隊員A「まぁな」


隊員A「たとえやられ役であろうと、オレらは出撃しなきゃならないし」

隊員B「やられても、敵の情報を後で戦う奴らに伝えることができれば万々歳だ」

隊員A「なんもできずにやられたとしても、それはそれで敵の恐ろしさは伝わるって寸法か」

隊員B「そういうことさ」


隊長「準備は整ったか!? さっそく大都市へ出撃するぞ!」



隊員A「はいっ!」ジャキッ

隊員B「はいっ!」ジャキッ



特殊部隊は出撃する――

任務をまっとうするために――

たとえ己に待ち受ける運命を予感していたとしても――





                                   ― 終 ―

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