碇シンジ「鉄血のエヴァンゲリオン」 (263)

初書き込み。しばらくお待ちください。
あと、生暖かい目で見守ってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492608262

――エヴァ初号機のハンガー

ゲンドウ「エヴァに乗れ。乗らないなら帰れ」

シンジ「うん、わかった。乗るよ」

ミサト「司令、待ってください! シンジ君はま だ戦闘経験が――ってあれ?」

シンジ「これ、どうやって乗るんだろ?」

ミサト「即決ぅ!? てか、どうやって初号機の角の上に行ったのよ!」

リツコ「信じられないわ……」


~~エントリープラグ、LCL注入

シンジ「なにこれ?」ドバドバ

リツコ「安心して。肺がLCLに満たされれば直接血液に酸素が取り込まれます。すぐ慣れるわ」

シンジ「あ、息ができる」

ミサト「ところでシンジくん。なんで上半身裸なの?」

シンジ「なんとなく」

日向「すっごい筋肉ですね」

青木「あれで本当に中学生なのか?」

マヤ「はわわ」


シンジ(……バルバトス?)

マヤ「え!? シンクロ率120パーセント!?」

リツコ「ひゃ、ひゃくっ……!?」

ゲンドウ「……」ガタッ

冬月「……碇、これはどういうことだ?」

ゲンドウ「わからん」

ミサト「えっと、司令、構いませんよね?」

ゲンドウ「……ああ。出撃させろ」

ミサト「……では、エヴァンゲリオン初号機、発進!」

シンジ「碇シンジ、バルバトス出るよ」 バシュン

日向「バルバトスって何ですか?」

青葉「さあ」


冬月「さて、碇。本当にこれでいいんだな?」

ゲンドウ「問題ない。使徒を倒さない限り、我々人類に未来はないのだから」

冬月「これほどの使徒が一気に押し寄せて来てもか?」


サキエル「」

シャムシエル「」

ミニシャムシエルたち「」

ゼルエル(ちっちゃい)「」


ゲンドウ「え、エヴァが負ければ、そそそそ、それまでの事だ」ガタガタ

――エヴァ初号機のハンガー

ゲンドウ「エヴァに乗れ。乗らないなら帰れ」

シンジ「うん、わかった。乗るよ」

ミサト「司令、待ってください! シンジ君はま だ戦闘経験が――ってあれ?」

シンジ「これ、どうやって乗るんだろ?」

ミサト「即決ぅ!? てか、どうやって初号機の角の上に行ったのよ!」

リツコ「信じられないわ……」


~~エントリープラグ、LCL注入

シンジ「なにこれ?」ドバドバ

リツコ「安心して。肺がLCLに満たされれば直接血液に酸素が取り込まれます。すぐ慣れるわ」

シンジ「あ、息ができる」

ミサト「ところでシンジくん。なんで上半身裸なの?」

シンジ「なんとなく」

日向「すっごい筋肉ですね」

青木「あれで本当に中学生なのか?」

マヤ「はわわ」


シンジ(……バルバトス?)

マヤ「え!? シンクロ率120パーセント!?」

リツコ「ひゃ、ひゃくっ……!?」

ゲンドウ「……」ガタッ

冬月「……碇、これはどういうことだ?」

ゲンドウ「わからん」

ミサト「えっと、司令、構いませんよね?」

ゲンドウ「……ああ。出撃させろ」

ミサト「……では、エヴァンゲリオン初号機、発進!」

シンジ「碇シンジ、バルバトス出るよ」 バシュン

日向「バルバトスって何ですか?」

青葉「さあ」


冬月「さて、碇。本当にこれでいいんだな?」

ゲンドウ「問題ない。使徒を倒さない限り、我々人類に未来はないのだから」

冬月「これほどの使徒が一気に押し寄せて来てもか?」


サキエル「」

シャムシエル「」

ミニシャムシエルたち「」

ゼルエル(ちっちゃい)「」


ゲンドウ「え、エヴァが負ければ、そそそそ、それまでの事だ」ガタガタ

ミサト「シンジくん、まずは歩くことを考え――」

マヤ「初号機、ホバー移動しています!」

青葉「脚部に部分的にATフィールドが展開されています。スラスターの代わりになっているようです!」

シンジ「武器はこれだけか」

日向「初号機、プログレッシブナイフを装備! え!? ナイフを中心にATフィールド展開! メイスになりました!」

サキエル「ワハハハハ! ワガグンハアットウテキ――」

シンジ「一つ」ブオン!

サキエル「グヘッ!」コア、粉砕

ゼルエル(ちっちゃい)「オーリスタイチョー!!」

マヤ「サキエル、殲滅しました!」

ミサト「す、すごい……」

リツコ「あんな変態機動、あり得ないわ。そもそも、何で使いこなして……」ブツブツ

シンジ「次だ」シュバ

シャムシエル「アイン、サガレ!」ガキィン!

シンジ「こいつ、邪魔だな……」

ゼルエル(ちっちゃい)「クランクニー!」パンパン!

シンジ「ちっ」スラスター回避

青葉「初号機、仰向けで滑空しています!」

リツコ「キュウ……」バタン

ミサト「リツコ!? 気をしっかり!」

シンジ「へぇ、こんなのもいるんだ」

ミニシャムシエル「「ワッショイワッショイ」」

鉄血メイスでミニシャムシエルの部隊を蹴散らす初号機。

ゼルエル(ちっちゃい) 「 アレハ、 ワガグン ノモビル ワーカータイ! キサマァ!!」

ゼルエルは味方への誤射を恐れ、蹂躙を続ける初号機に激昂する。次の瞬間、シャムシエルの鞭がゼルエルの身体を引っ張り、二体の使徒は撤退を開始する。

ゼルエル(ちっちゃい)「クランクニー! イッタイナニヲ!」

シャムシエル 「オーリスタイチョーガセンシサレタ。 ヒトマズ タイキャクスルゾ」


日向「シャムシエル、ゼルエル、撤退していきます!」

冬月「……勝てたな」

ゲンドウ「あ、ああ」

シンジ「逃がす、もの……か」ガク

ミサト「シンジくん!?」

マヤ「初号機パイロット、意識を失いました」

ミサト「直ちに初号機とパイロットを回収!」

リツコ「変態機動を見なくてもう済むのね ……」


冬月「碇、老人たちがうるさくなるぞ。色々な意味でな」

ゲンドウ「……なんとかする」

――病室

シンジ(知らない天井だ。ここ、どこだ?)

ミサト「目が覚めたみたいね」

シンジ「なんだ。ミサトか」

ミサト(呼び捨て!? 何だかアスカと同じ予感が……)

ミサト「ゴホン! さて、どの辺りまで覚えているかしら」

シンジ「ちっちゃいきしめんと赤いイカを追おうとしたところまで」

ミサト「ゼルエルとシャムシエルね。それと、気絶したことに心当たりはある?」

シンジ「ない」

ミサト「え、えぇ……」

シンジ「話は終わり? なら、もう行くけど」

ミサト「あ、待って。シンジくん、私と一緒に暮らすことになったから。保護責任者として司令から一任されたの」

シンジ「そっか。そうなんだ」

ミサト「あれ? 反応がイマイチ薄いわね。綺麗なお姉さんと一つ屋根の下で暮らすのよ?」

シンジ「それが何?」

ミサト「え」

レイ「……」スゥ……

シンジ「ん? あ、幽霊の人」

レイ「幽霊じゃないわ。私は綾波レイ。あなたは?」

シンジ「俺は碇シンジ」

レイ「そう」

シンジ「それで何の用?」

レイ「名前を知りたかった。それだけ」

シンジ「ふぅん。そっか。じゃあね」

レイ「……」

シンジ「あ、忘れてた。怪我、早く治ると良いね」

レイ「 へ? ……えぇ」

シンジ「んじゃ」

シンジ(女は大事にしろって名瀬が言ってたけど、これでいいのかな? まあ、いっか)スタスタ


このシンジ、すぐ初号機に乗ったのでハンガー
でレイに会ってません。

――葛城宅

ミサト「可愛い顔して筋肉質な身体。それでいて掃除家事もできる。意外ね~」

シンジ「醜かった。まるでテレビに出てきたゴミ屋敷みたいだった」

ミサト「グフッ!」

ペンペン「クェッ!(まさしく!)」

ミサト「ザクッ!」

シンジ「ねえ。 冷蔵庫がビールとつまみに占拠されてるんだけど。マシなご飯も作れない」

ミサト「悪かったわね。……へ? シンちゃん、料理もできるの?」

シンジ「うん」

――学校の屋上

トウジ「アダ! アダダダダ!!」

シンジ「何、これ?」ギシシ

ケンスケ「離してやってくれ碇! それ以上は腕の骨が折れる!」

シンジ「何、これ?」ギシシ

トウジ「つ、掴む手強くなっとるぅぅぅぅぁぁあああ!!」

ケンスケ「本当にやめてくれぇぇぇ!!」

シンジ「わかった。で、何でいきなり殴りかかってきたの?」

トウジ「ハァ…ハァ…て、転校生。ワイはお前を殴らなあかん」

シンジ「だから何で?」

トウジ「お前がこの前エヴァで暴れた時、ワイの妹がケガしたんや!」

シンジ「そういうことか」

トウジ「せや! だから落とし前つけさせてもらうで! だぁりゃあ!」バキッ

シンジ「……一回で終わり?」

トウジ「……転校生、堅すぎや」バタ

ケンスケ「鈴原ぁぁ!? しっかりしろぉぉ!」

シンジ「なんかごめん」

シャムシエル「……」

マヤ「これ、なんですかね。ずっと立ち尽くしたままですよ」

日向「今回は一体だけか」

青葉「その代わりかは知らないが、肩に赤いマント着けてるな。どこから調達したんだ?」

冬月「ここはシナリオ通りだな」

ゲンドウ(助かった……)


ミサト「シンジくん、聞こえる?」

シンジ「うん」

ミサト「いくら訓練が上手く行っても実戦は違うわ。気をつけて」

シンジ「わかってる」


リツコ「おかしいわ。シミュレーション上だからって、エヴァが空を飛ぶなんておかしいわ」ブツブツ

マヤ「先輩……」


ミサト「エヴァンゲリオン初号機、発進!」

シンジ「こいつ、この前逃げた奴か。小さいのがいない」鉄血メイス

シャムシエル「ケットウヲモウシコム!」アックス


ミサト「あれ? いつの間に専用のメイスなんて用意したの?」

リツコ「完成自体はつい先日。シンジくんからのオーダーよ。鈍器の方が使いやすいんですって。しかも、またプラグスーツ上半身だけ……」ブツブツ

マヤ「初号機、ライフルを全弾発射した後に使徒へ投げつけました」


シンジ「……!」ブゥン!

シャムシエル「デヤァ!」ガキィン!

シンジ「黒い奴よりしぶとい……」ガン!

ケンスケ「あれがエヴァと使徒なのか! なんて迫力満点な近接戦なんだ!」

トウジ「ほ、ほんまに転校生が戦っているのか?」


シンジ「…ケンスケとトウジ?」チラッ

シャムシエル「スキアリ!」

シンジ「……ッ」

シャムシエルのアックスがメイスの柄を叩き割り、その柄の残骸が見物を決め込んでいたケンスケとトウジの二人に向かって飛んでいく。初号機は(ATフィールド由来の)スラスターを全力で吹かし、二人の前に立って庇う。


ケンスケ「あ…ぁぁ……」

トウジ「て、転校生!?」


シャムシエル「コドモダト!?」

シンジ「……邪魔」バッ

初号機は二人を一瞥し、動きを止めたシャムシエルにボディブローを決める。仰け反り、コアが露になったところで地面に落としたメイスを拾い、本気で叩き込む。瞬間、メイス先端から発射された巨大な杭が、シャムシエルのコアに炸裂した。

シャムシエル「ガハッ!」

シンジ「……ふぅ」


マヤ「パターン青、まだ消滅していません!」

ミサト「シンジくん、止めを!」


シャムシエル 「オレハモウ…… ジブンデ オワルコトスラ デキナイ……」ピクピク

シンジ「……」新しいライフルを構える。

シャムシエル「……ありが――」

パンパン

スマホの充電がないので寝ます。

次回も、また見てバエル。

ラミエル「ラー」

マヤ「パターン青、使徒です!」

ゲンドウ「初号機を発進させろ」

リツコ「零号機はどうしますか?」

ゲンドウ「必要ない。初号機だけで事足りるだろう」

冬月「また残虐ファイトが始まるのか……」


ミサト「……という訳よ。シンジくん、行けるわね?」

シンジ「……」ボー

ミサト「シンジくん?」

シンジ(嫌な予感がする……)



初号機「……」パシュゥ

ラミエル「ノブリスノカネガテニハイレバー」キュピピ

マヤ「目標に高エネルギー反応!」

ミサト「シンジくん!?」

シンジ「ちっ……!」

日向「初号機、ATフィールドを前面に展開!! 敵粒子砲の中を無理矢理歩いています!!」

青葉「メイス融解!! 初号機も持ちません!!」

冬月「碇、どうする?」

ゲンドウ(あ……)


~~


シンジ「……また病院?」



ミサト「レイがシンジくんを守って、その間にシンジくんがポジトロンスナイパーライフルを発射。いいわね?」

レイ「はい」

シンジ「ミサト、俺が狙撃やるんだよね?」

ミサト「ええ」

シンジ「狙撃、あんまり得意じゃないんだけど」

リツコ「シンジくんのこの前のシミュレーションだと、射撃武器の命中率は70パーセントよ。ちなみに、ろくに照準をつけないで全部感覚で撃ってるわ」

ミサト「目標にセンターに入れてスイッチよ! 絶対に外さないでね!」

シンジ「センター?」

ミサト「……ちょっと不安だから、交代してもらっていい?」

リツコ「懸命な判断ね。シンジくんの場合、ライフルを投合して接近戦に持ち込みかねないわ」


レイ「碇くん」

シンジ「何?」上半身裸

レイ「プラグスーツはちゃんと着た方が良いわ。身体を守ってくれる」

シンジ「うーん、それもそうか。痛い目見た し」

レイ「ねぇ。どうしてあんなに戦えるの?」


シンジ「……決めたんだ、あの日に。前に進み続けるって。だからもう止まらない。止められない」

レイ「……」

シンジ「やるって言った以上、心配しなくてもレイを絶対に守るよ。絶対に死なせない」


シンジ(オルガも一度やるって言った仕事は絶対やり遂げたから)


レイ「碇くんは強いのね」

シンジ「そうかな」


ミサト「ヤシマ作戦、発動!」

ラミエル「ラーゼフォン」キュピピ

シンジ「行くぞ」盾

レイ「…発射」バキューン

ラミエル「ラー」ギュイイイイイイイイン

シンジ「くッ!」ズガガガガガガ

レイ「……急所を外れた!?」

ミサト「もう一度チャージ! 急いで!」

シンジ「ぐぐっ……レイ!」ズガガガ 盾翌融解

レイ「今度こそ!」バキューン

ラミエル「オカネー!!」ドカーン

マヤ「パターン青、消滅!」



初号機「」ぐったり

ミサト「初号機のエントリープラグ射出! 早くして!」

レイ「碇くん、今開けるから……!」ジュウゥ バゴン

シンジ「……ん? レイ?」

レイ「大丈夫? 使徒は殲滅したわ」

シンジ「そっか……。気失ってたみたい。心配かけてごめん」

レイ「足元がふらついてるわ」

シンジ「あぁ、これなら平気。プラグスーツちゃんと着たおかげか知らないけど、ビーム受けても少し楽だった。レイに言われてなければ酷かったかも」


レイ「……」


シンジ「……何で笑ってるの?」

レイ「ごめんなさい。こういう時、どういう顔をすればいいかわからないの」

シンジ「でも、笑ってるよね」

レイ「……フフッ」


――弐号機を護送している艦隊の皆様

ケンスケ「凄い凄い凄すぎるぅぅぅ!!」

トウジ「うるさいのぅ……」

シンジ(ごちゃごちゃうるさい……)

ミサト「喜んでもらえてなにより」


アスカ「ヘロー、ミサト元気にしてたぁ?」

ミサト「あら、アスカ! 大きくなったじゃない!」

ケンスケ「おっ! 超絶美少女発見――」

アスカ「ふん」カメラ粉砕

ケンスケ「あああああああああ!?」

トウジ「なんや、このゴリラ――」

バシン!

アスカ「なんか言った?」

トウジ「……痛い」ヒリヒリ


シンジ「誰?」

ミサト「紹介するわ。彼女はセカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレー。エヴァ弐号機のパイロットよ」

アスカ「そういう事よ。それで、噂のサードチルドレンってどいつなのよ?」

ミサト「彼よ。碇シンジくん」

シンジ(サードチルドレン……って?)

アスカ「……ふーん」


――しばらくして

アスカ「サードチルドレン! ちょっと付き合いなさいよ!」

シンジ「……」スタスタ

アスカ「あ、ちょっと! 何で無視するの!」

シンジ「え? 俺?」

アスカ「アンタ以外に誰がいるのよ!」

シンジ(サードチルドレンって俺の事だったっけ? 馴染みなくて忘れてた)

アスカ「ついてきなさい!」


弐号機「……」チョコン

アスカ「どう? これがエヴァ弐号機。初の実戦型よ!」

シンジ「赤いバルバトス……」

アスカ「バルバトス? なによそれ?」

シンジ「名前だよ」

ズドォォォン……

シンジ「?」

アスカ「え!? 水中衝撃波!?」


ガギエル「メザワリナハエホドタタキツブシガイガアル」


――弐号機、エントリープラグ内

シンジ「ねぇ」

アスカ「何?」

シンジ「何で俺も乗ってるの?」

アスカ「私の戦い方を間近で見させてあげるって言ってんの。感謝しなさい、七光り」

シンジ「そっか。ありがとうね」

アスカ(……なんか空回りするな。てか、筋肉すごっ!? )



ガギエル戦カット

ガギエル「コ、コウサンスルカラ――」ドカーン

アスカ「よっしゃあ! 見たかぁ!」

シンジ「へー。やるじゃん」

アスカ「ふふん。私ならこれぐらいへっちゃらよ」


――葛城宅

シンジ「何これ」大量の段ボール

アスカ「今日からここに住む事になったから。アンタはお役目ごめんって事よ」


シンジ「は?」


アスカ「」ピク

ミサト「あら、何言ってるのアスカ。シンジくんも一緒に住むわよ?」

アスカ「はあぁぁ!? この筋肉ダルマと!?」

ミサト「こう見えてもお料理上手なのよー。最近のおつまみも美味しいし? 損はないわよ」

シンジ(筋肉ダルマ……昭弘の方が合ってる気がするな)

アスカ「いやよ! 寝込みを襲われたらどうするの!」

ミサト「あぁ、それなら……」チラ


シンジ「?」←色仕掛けがほとんど通用しない


ミサト「も、問題ないわよ……」ガク

アスカ「え? どうして落ち込んでんの?」

シンジ「筋トレしよ」スタスタ


――ある日の訓練

シンクロテスト

シンジ・140パーセント

アスカ・80パーセント

レイ・60パーセント


アスカ「……」グググ


射撃訓練、命中率

シンジ・70パーセント

アスカ・90パーセント

レイ・75パーセント


アスカ「~♪」


模擬戦(シミュレーション)、アスカの戦績

Vs.シンジ 0勝10敗

主な敗因
・鉄血メイスで弐号機のコアを破壊される
・鉄血メイスで弐号機のエントリープラグを破壊される
・弐号機のコアを踏み潰される
・弐号機のエントリープラグを踏み潰される
・首の骨が折れる音
・その他

アスカ「バカシンジ! もう一度勝負よ!」

シンジ「わかった」

――You lose !――

アスカ「……」


イスラフェル「ドルトコロニーノチンアツダ」

マヤ「パターン青、使徒です」

ミサト「エヴァ全機発進!」

冬月「今回の使徒は殺られやすそうだな」

ゲンドウ「ああ」


シンジ「弱そう」鉄血メイス

レイ「そうね」バトルアックス

アスカ「ちょっと待ちなさい二人とも!! あんなの、私一人で十分よ!!」


アスカ(あれは訓練! 所詮、訓練よ! 実戦は違うんだから!)


日向「弐号機、ソニックグレイブ展開! 使徒に突撃していきます!」

イスラフェル「!」

アスカ「おりゃああああああ!!」スパーン

シンジ「真っ二つだ……」

アスカ「どんなもんよ!」


青葉「使徒、分裂しました!」

ミサト「アスカ! まだ倒してないわ!」


アスカ「へ?」

イスラフェル甲「」

イスラフェル乙「」

ゼルエル(シュヴァルベ)「」


マヤ「データ照合完了……内一体はゼルエルです!!」

冬月「何!?」

ゲンドウ「え」


イスラフェル甲「ネズミハカセイニカエレ!」

アスカ「なによそれー!?」

イスラフェル乙「イクゾ! アイン!」

ゼルエル(シュヴァルベ)「ハイ、トクムサンサ!」

アスカ「キャアアアアア!?」ガガン

シンジ「ちっ」ブン!!

イスラフェル「「グハッ!」」

シンジ「アスカ、生きてる?」

アスカ「バ、バカシンジ……。何よ! こんなの一人でも――」

シンジ「俺は双子をやるから、レイとアスカはきしめんをやっつけて」

イスラフェル「「ガエリオダ!!」」

アスカ「指図を受ける筋合いは――」

レイ「セカンド、今は碇くんに従いましょう」



マヤ「初号機、イスラフェル甲をイスラフェル乙に投げつけました! 」

日向「いけぇぇー!!」

イスラフェル「「オノレェ!!」」



アスカ「……わかったわよ!!」

ゼルエル「トクムサンサ!?」

レイ「碇くんの邪魔はさせない」

ゼルエル「ジャマダ!」


シンジ「……!」ガキィン!

イスラフェル「「タァ!!」」

シンジ「ちっ」スラスター回避

マヤ「初号機のアンビリカブルケーブル切断! 内部電源に切り替わります!」


シンジ(傷が治るのが速すぎる。でも、同時に攻撃したら違う。もしかして……)


イスラフェル「「ココマデダナ!」」

シンジ「まさか」

イスラフェル「「ウォッ!?」」グォン

シンジ「これで……」

ゼルエル「トクムサンサァ!!」

アスカ「くそっ! 抜かれた!」


イスラフェル甲乙が重なるように鉄血メイスで串刺しにされる直前、ゼルエルシュヴァルベが割り込んだ。

鉄血メイス先端部にあるパイルバンカーの軌道はイスラフェルのコアから逸れるが、代わりにゼルエルシュヴァルベのコアに被弾した。


イスラフェル「「アイイイイイン!!」」


シンジ「……バルバトスが動かない?」

青葉「初号機、活動停止!!」


ゼルエル「貴方は……俺にもう一度立ち上がる足をくれた……。貴方を、見殺しには……」

イスラフェル「「もう良い、アイン。それ以上は喋るな!」」


マヤ「使徒、撤退していきます!」

地図は描き換えずに済みました。やったね、冬月先生。


次の日、葛城宅

ミサト「もうちょっと右」

レイ「はい」ガチャガチャ

シンジ「ミサト、何が始まるの?」

ミサト「ユニゾンの特訓よ。リツコから聞いたでしょ? イスラフェルを倒すには、二つのコアを同時に破壊しないといけないって。さあ、始めるわよ! まずはシンちゃんとアスカ!」


……


アスカ「バカシンジ! ちゃんと私に合わせなさいよ!」

シンジ「え? 何で? 」

アスカ「何でじゃないわ! それがあんたの仕事!」

シンジ「それ、勝手に決めただけだよね。あと、アスカの方も何度かずれてた」

アスカ「ムッキー!! 澄まし顔でぇ!!」


ミサト「これはヒドイ。次はレイね」



……


レイ「……」

シンジ「……」


ミサト「息が合ってる、というより、レイがシンちゃんに合わせたのか。ともかくイスラフェル相手はこのペアで――」

アスカ「……納得いかないわ!!」

ミサト「アスカ?」

アスカ「それじゃ私が双子使徒にリベンジできないじゃない! あの時だって、私一人でも平気だったのに、バカシンジがしゃしゃり出て! 見せ場がないわ!」

ミサト「まあ、ゼルエルが残ってるし……」

アスカ「どうしてこのアスカ様があんな小物の相手しなきゃいけないのよ。バカシンジが倒したって聞いたけど? 」

シンジ「いや、生きてると思う」

アスカ「はぁ? アンタ通信聞いてなかったの? あいつらが撤退中、ゼルエルの反応が消えたって言ってたでしょ」

シンジ「聞いてたよ」

アスカ「訳わかんない。最強だのどうの言われてた割りに、あっさりやられたのよ? もう双子しかいないじゃない! 私だけペンチなんてごめんだわ!」

レイ「じゃあ、弐号機の人は碇くんとユニゾンできるの? 」

シンジ「俺はレイの方がいいかな。ごちゃごちゃ考えずに済んで助かる」

アスカ「~~っ! もういい!! 」ダダダッ


ミサト「あちゃー……」

ミサト(無理ないか。最初の合同訓練の時点でアスカのプライドがズタズタだものね……)


シンジ「……追いかけた方がいいかな?」

レイ「碇くん、行くの?」

シンジ「うん」


――???

アスカ「うぅ……ひぐ……」ポロポロ 体育座り

シンジ「アスカ?」

アスカ「……何よ」

シンジ「泣いてるの?」

アスカ「……っ! うっさい! あっち行け!」

シンジ「……」ダキ

アスカ「へ!?」

シンジ「……」

アスカ「ちょっ、何抱きしめてんのよ! 離れなさいってば!」

シンジ「アスカが泣き止んだら離れる」

アスカ「な!? だから、泣いて…なんかぁ……」ポロポロ



アスカ「……」


シンジ「……」


アスカ「今ここで起きた事、全部忘れなさい」


シンジ「絶対?」


アスカ「絶対よ! 絶対絶対! 言いふらしたら承知しないんだから!」


シンジ「わかった。アスカが言うならそうす
る」


アスカ「そう。なら良いわ」





アスカ「……ねぇ、シンジ。またギュッてし
て」


シンジ「うん」ギュッ


アスカ「もう泣かないって決めたのに、また泣いちゃった……」


シンジ「……」


アスカ「ユニゾン、ファーストとする方がそんなに簡単?」


シンジ「うん」


アスカ「」ブワッ


シンジ「え、何で」ナデナデ


アスカ「はぅぅ……」













――物陰

レイ「……」


ミサト「本当に良いのね?」


アスカ「もちろんよ。ユニゾンは必ずものにして見せるわ!」


ミサト「シンちゃんは?」


シンジ「俺は構わないよ。ミサトの言う通りにする」モグモグ


レイ「碇くん、何食べてるの?」


シンジ「ナツメヤシの実。食べる?」


レイ「いただくわ」モグモグ


アスカ「あ! 二人して何食べてるのよ!」




イスラフェル戦。原作通りなのでカット。


イスラフェル「「うわあぁぁぁ!! マクギリスゥっ!! うわあぁぁぁ!!」」 チュドーン


シンジ「アスカ、お疲れ」


アスカ「どんなもんよ!」


レイ「私の出番がなかった……」



――???


ゼルエル(シュヴァルベ)「」プカプカ


アルミサエル「キュー?」フヨフヨ


ツンツン


アルミサエル「キュー!」


アルミサエル「ワタシトヒトツニナリマショー?」


アルミサエル「アレ? コントロールガ……」

諸事情により、バルディエルが先に来ます。


――学校の屋上


シンジ「ふっ……! ふっ……!」筋トレ中


トウジ「あ、センセ……」


シンジ「あれ? トウジ?」


トウジ「センセ、一つ聞きよったい事があるけどええかな?」


シンジ「何?」


トウジ「センセはエヴァに乗るんは怖くへんのか?」


シンジ「あんまり…ないかな」


トウジ「さよか。……実はワイ、今度エヴァ参号機に乗るんや」


シンジ「え?」


トウジ「妹をネルフの病院に入れさせる代わりなんや。 でもセンセと違って、ワイは怖いで。 エヴァに乗るの……」


シンジ「……そう」







シンジ「ミサト、エヴァ参号機って知って
る?」


ミサト「あら、誰から聞いたの?」


シンジ「トウジ」



――松代の仮設ケージ


参号機「」チマー


リツコ「エントリースタート」


ヴヴヴヴ……


参号機「ググッ」


オペレーター「体内に高エネルギー反応!?」


ミサト「実験中止! 回路切断!」


オペレーター「ダメです! こちらの操作を受け付けません!」


リツコ「まさか……」


バルディエル「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


ドカァァァァァァァァァァン!!


冬月「松代で事故か。被害状況は?」


青葉「依然として不明です」


日向「未確認移動物体を確認。パターンオレンジです」


ゲンドウ「第一種戦闘配置だ。エヴァ全機を出せ」


冬月「やはりまた全機か」









アスカ「さて、一体どんな奴なのかしらって――」


バルディエル「……」ズンズン


アスカ「エヴァ?」


「キャアアアアアアアア!」




マヤ「弐号機、戦闘不能!」


シンジ「……!? アスカ?」




レイ「こちら零号機、目標確認。……速い!」


バルディエル「コノ、クダル・カデルサマト、サンゴウキヲ
ナメルンジャナイヨッ!!」グシオンハンマー


レイ「なっ――」




日向「零号機も戦闘不能!」



冬月「おい、碇」


ゲンドウ「まだ初号機がいる」ブルブル


シンジ「レイ? レイ!?」


バルディエル「……」ズンズン


シンジ「……お前、何をした?」


ゲンドウ(やったれ、シンジ。メイスで叩きつけてやれ)


青葉「エヴァ参号機!? そんな!」


マヤ「パターン青、使徒……」


ゲンドウ「あれは使徒だ。殲滅しろ」


日向「待ってください。あれがエヴァなら、パイロットの鈴原くんは……」


ゲンドウ「使徒の殲滅が最優先だ。できるな、シンジ」


シンジ「……っ!」


マヤ「初号機、メイスを投合しました! 続けて使徒に殴りかかります!」


冬月「息子は端から聞いていないようだぞ」


ゲンドウ「」


バルディエル「ウオオオオオオオ!!」ドガン


シンジ「こいつ……!」



青葉「シンジくん、そのエヴァには鈴原くんが乗っている! いつもの調子では殺してしまう
ぞ!」



シンジ「……」ヒョイ


バルディエル「ウラアアアアア!!」ブオン


シンジ「……ふん!!」ガン


バルディエル「イタアアアアアアアア!!」



マヤ「使徒両腕部、初号機がちぎりました!」


日向「容赦がない。どうして!?」



シンジ「……うるさいな」



マヤ「両腕が再生します!」



シンジ「この前の双子と一緒か」チャキ



青葉「初号機、プログレッシブナイフ展開!
ATフィールドを纏わせて太刀にしました!」



シンジ「……」スパーン


バルディエル「アアアアアアアア!? 何だよお前! こっちには人質がいるんだぞ!!」



冬月「!? エヴァが喋った?」


ゲンドウ「え」



バルディエル「変にいたぶりやがって!! 楽しんでるのか人殺しをよオオオオオオ!?」


シンジ「はぁ?」ドスッ



マヤ「使徒、両脚を一閃されました! え? 腕が増殖していきます! 脚も高速再生!」



バルディエル「もう…もう……死んでよぉぉぉぉぉぉ!!」目からビーム


初号機「ぶるぅあアア!!」盾代わりの ATフィールド


シンジ「まぁ、いっか。こいつ(使徒)は、死んでもいい奴だし」


初号機はスラスターを横に吹かしながらバルディエルの背後に回り込むと、参号機のエントリープラグを傷付けないように背中の出っ張りを斬り落とす。しかし、参号機の稼働は止まらない。

次に、スラスタージャンプをして参号機の肩の上に立つ。バルディエルが未だに反応しきれていない今が好機だ。参号機の頭から胸部の内臓コアに向けて、太刀を突き刺す。


バルディエル「アアアアアアァァァァ――!!」ドシュ



マヤ「パターン青、消えていません! 参号機のエントリープラグに反応があります!」



シンジ「トウジ……」


青葉「おいおい、エントリープラグを握り潰す気か!?」←残虐ファイトに見慣れ過ぎた



シンジ「やる訳ないじゃん」



日向「しょ、初号機、器用にエントリープラグを解体しています……」


マヤ「あ、パターン青消えました」



シンジ「トウジ、生きてる?」


トウジ「そ、その声は……センセ?」ガクッ


シンジ「あ、気絶した」





冬月「ダミープラグの完成は間に合っていないが、どうにかなってしまったな」


ゲンドウ「ああ」


冬月「もはや、息子の方がダミープラグより強いのでないか? 元を綾波から変えてみるか?」


ゲンドウ「……」



初号機(ダミープラグ)「灼熱のバーンストライク!!」


初号機(ダミープラグ)「子捨てなんかぁ、してんじゃねぇ!! 浮気もだぁ!!」



ゲンドウ「怖いから止めよう」

――初号機ハンガー


シンジ「……」


レイ「碇くん?」


シンジ「あっ。レイ、そのケガ……」


レイ「あなたと初めて会った時より軽傷よ。安心して」


シンジ「そう……」


レイ「ところで、ここで何してるの?」


シンジ「こうやって時々、バルバトスを眺めてるんだ」


レイ「バルバトス? 」


初号機「」チョコン


レイ「エヴァに名前を付けてるのね」


シンジ「初めて乗った時に思い付いたんだ。操る感覚がそっくりだったから」


レイ「そっくり?」


シンジ「うん。本物のバルバトスと」


レイ「碇くん。手が震えて……」


シンジ「え?」



シンジ「……」


レイ「本当は怖いの? エヴァに乗るのが」


シンジ「いや、そういうんじゃない。これは多分、トウジごと敵を[ピーーー]気だったから」


レイ「容赦ない戦い方だって聞いたわ」


シンジ「うん、自覚はある。じゃないと俺がやられるから。でも、トウジが死ぬのも嫌だっ
た」


レイ「だから助けた?」


シンジ「うん」



シンジ(昭弘の時みたいなの、嫌だったから……)



レイ「……」ダキ


シンジ「は?」


レイ「弐号機の人が泣いていた時、碇くんがこうやって落ち着かせていたから」


シンジ「見てたの?」


レイ「ええ。ダメだった…かしら?」


シンジを抱き締めていたレイは一度離れる。


シンジ「……」ジロー


チュッ


レイ「……!?」

バッ

レイ「……ど、どうして?」


シンジ「可愛かったから。嫌だった?」


レイ「い、嫌じゃ……というよりも――」


シンジ「……」モグモグ ナツメヤシの実


レイ「」




――物陰


アスカ「……」ギリリ


――学校の昼休み


アスカ「アタシの分しかないから! 立ち去りなさい!」


レイ「イヤ」


シンジ「弁当、二人の分あるんだけど」



ケンスケ「まさか教室でドロドロした修羅場が見られるなんて……」


トウジ「ようわからんけど、ええんちゃうか? センセだし」


ヒカリ「ところで、鈴原。怪我は大丈夫な
の?」


トウジ「おう。センセのお陰や」


ケンスケ「やっぱすげぇよ、碇は」


シンジが丁寧かつ乱暴にバルディエルを倒したお陰でエヴァ参号機は破棄されませんでし
た。やったね、参号機。

エヴァ参号機は再利用可能レベルなので絶賛修理中。しかし、バルディエルの件があったのでS2機関は取り外し。トウジの怪我は軽症なのですぐ完治。

肝心の参号機がまだ修理を終えていないので、トウジにだけは戦闘待機命令が降りずに、 修学旅行に行けました。

他の訓練? やるのは参号機の起動テストが無事成功してから。


ヒカリ「アスカ! お土産買ってくるからね!」


ケンスケ「二人とも残念だったなぁ!」


トウジ「ワイもエヴァのパイロットなのにすまんなぁ」




アスカ「修学旅行、行っちゃダメなのー!? 」


ミサト「そう」


シンジ「……」←ベランダで育てているプチトマトの様子を見ている。


アスカ「アンタ、呑気にプチトマトを見ていないで、何か言ってやったらどうなの!」


シンジ「何か? うーん……。ミサト、また使徒が来るの?」


ミサト「それはわからないわ。ただ、修学旅行の間に使徒の襲撃があったら不味いでしょ?」


シンジ「……チッ」


ミサト「え? 舌打ち? ねぇ、シンちゃん。今舌打ちしたの?」


シンジ「別に」


アスカ「ミサト! シンジも修学旅行に行けなくて怒ってるわ! 見なさい、このオーラ。メイスを持った悪魔が降りてきそう!」


ミサト「う、嘘よ。あのシンジくんが……は、反抗期……?」


シンジ「ミサトの昼メシだけ減らしておくね。あと、おつまみも」


ミサト「露骨な嫌がらせぇ!?」


アスカ「ざまぁみろ」


サンダルフォン「スヤー」



シンジ「蛹?」


リツコ「使徒よ。今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします」


アスカ「失敗した時は?」


リツコ「即時撃破よ。作戦担当者は……」


アスカ「はい! 私が潜る!」


リツコ「じゃあ、アスカで決定ね」


レイ「私は?」


リツコ「零号機に特殊装備は規格外。よって、レイと零号機には本部にて待機を命じます」


レイ「了解」


アスカ「残念だったわねー。温泉行けなくて」


レイ「別に……」チラ



シンジ「……」モグモグ


弐号機d型装備「」デブーン


加持「リバウンドしたな」


アスカ「やっぱり嫌だ!アタシ降りる! 乗りたくない! シンジの方がお似合いよ!」


シンジ「俺に譲っていいの? なら――」


リツコ「ダメよ。初号機の圧倒的機動力と運動性能にd型装備が耐えられる訳ないでしょ。あと、確実に殲滅されるわ。使徒が 」


加持「残念だ。アスカの雄姿が見れると思ったんだけどな」


アスカ「うー。でもー、でもー」チラ



加持「シンジくん、何食べてるんだ?」


シンジ「ナツメヤシの実」モグモグ



アスカ(……わからない。加持さんならともかく、何でバカシンジの前に出る勇気も出ない
の?)



レイ「私が弐号機に乗ります」


アスカ「ダメ。悪いけど、あなたには私の弐号機には触って欲しくないわ。ファーストが乗るなら私が行くわ」



アスカ(ごめんね。弐号機)

――浅間山火口


アスカ「惣流・アスカ・ラングレー、エヴァ弐号機、行きます!」


マヤ「弐号機、溶岩内に入ります」


アスカ「シンジー、見てみてー」


シンジ「ん?」


アスカ「ジャイアントストロングエントリ
ー!」


シンジ「……何それ?」←スキューバ関連は疎い



――マグマの中


ミサト『アスカ、調子はどう?』


アスカ「まだ行けるわ。シャワー浴びたい」


ミサト『近くに温泉があるわ。帰ったら行きましょう? もう少し頑張って』


アスカ「あ、使徒発見」



サンダルフォン「スヤー」



日向『目標確認』


ミサト『捕獲準備に入って』


リツコ『お互いに対流で流されているから、接触のチャンスは一度だけよ』


アスカ「わかってる」


サンダルフォン「スヤー」ガチャン


アスカ「目標、捕獲しました」


ミサト『ナイス、アスカ!』


アスカ「これより浮上します」


サンダルフォン「オハヨー」ピキパキ


アスカ「え?」


リツコ『不味いわ。孵化を始めたのよ。計算がずれた?』


日向『キャッチャー、持ちません!』


ミサト『捕獲中止、キャッチャーは破棄! 作戦変更、使徒殲滅を最優先! 弐号機は撤収しつつ戦闘準備!』


アスカ「待ってました! あれ、ナイフがない? 落とした!?」


サンダルフォン「ココドコー?」グルグル


アスカ「くそっ! 姿を見失った! 暑いしスーツはべったりだし、最悪!」

ミサト『アスカ、初号機からプログナイフが投下されるから受け取って!』


シンジ「こうか……!」ブオン


初号機が投げたプログレッシブナイフはATフィールドを纏い、鉄血メイスとなる。

マグマの中を突っ切る鉄血メイスはその勢いを削がず、瞬く間に弐号機の横を通り過ぎた。受け取り失敗である。


シンジ「あ」


アスカ「シンジのバカァ!! 速すぎよ!!」


シンジ「ごめん」ダイブ


マヤ『初号機、溶岩内に入りました!』


ミサト『え!? シンジくん、戻って来なさ
い!』

サンダルフォン「ゴハン?」アーン


アスカ「嫌ぁ! 来ないでぇ!」


シンジ「……っ!」


マグマの中を突き進む初号機は残ったプログレッシブナイフにATフィールドを纏わせて、太刀にする。

そして、サンダルフォンが弐号機を食べようとした寸前に、それを食い止めるかのように上から初号機が太刀を突き刺した。


サンダルフォン「ギャア!!」チュドーン


シンジ「よわ」


マヤ『パターン青、消滅!』


アスカ「! ……シンジ?」


シンジ「アスカ、生きてる?」


アスカ「おかげ様で……って、何やってるのよ!!」



弐号機「」ジタバタ


初号機「ウゴクナヨ」



マヤ『……初号機、弐号機をお姫様抱っこしながら、火口から飛び出しました。……スラスタージャンプで』


リツコ『エヴァ一体が、どれくらいの重さだと思って……』フラフラ


アスカ「バカバカバカ! お姫様抱っこは恥ずかしい!」


シンジ「うるさいなぁ。じゃあこれで」


初号機、弐号機をお米様抱っこする。


アスカ「これはもっと恥ずかしい!!」ジタバタ

さて、マトリエルはカット。サハクィエルはエヴァの数が増えたので楽々撃破。イロウルはカット。レリエルもカット。次は……。



マヤ「パターン青、使徒軍団です!」


ゼルエル(グレイズ)「」


ゼルエル(グレイズ)「」


以下、同じのが36体ぐらい


冬月「最強の拒絶タイプ!? 倒したのではないのか!?」


ゲンドウ(こ、こんなのシナリオにない……)


リツコ「しかも、数を揃えてきている。ほとんど終わったわね、人類」


青葉「いえ。戦略自衛隊と国連軍からの通信によると、これでも頑張って数を減らした方で
す」


日向「最初は110体だとか……」


ミサト「司令、エヴァの出撃許可を!」


ゲンドウ「」ガクブル


冬月「私が代わって許可する」


ゼルエルグレイズ「「」」ズンズン


トウジ「なんやこの数! ふざけとんのかい!」


シンジ(きしめんのグレイズ……?)


ミサト『では作戦通り、ペアで二手に展開してちょうだい』


アスカ「何で私のペアがバカシンジじゃなくてファーストなのよー!!」


レイ「私も碇くんが良かった」


ミサト『しょうがないでしょ! 二人が取り合うんだから!』


トウジ「モテモテやな、センセ」


シンジ「無駄口叩いてる場合じゃない。レイ、アスカ、そっちは頼んだ」ギューン


トウジ「たくっ、置いとかんでくれ!」ギューン


アスカ「よし任されたぁ!!」


レイ「行ってきます」


リツコ『シンジくんの一言で先程の喧嘩が嘘のように消えたわね』


ミサト『はぁ、助かったー』


エヴァ初号機、零号機、弐号機、参号機、 ATフィールドを利用してスラスター移動


リツコ『……ゴハッ!』


マヤ『せんぱあああい!?』


日向『シンジくんに触発されたせいか、気づけばエヴァ全機があれですもんね』


青葉『博士にはいい加減、慣れてほしいぜ』


初号機「ぶるぅああっ!!」レンチメイス


ゼルエルグレイズ「へぶっ!」グシャ


初号機、背中のウェポンラックにはマゴロクソード装備。


参号機「うおぉぉぉ!!」


参号機、腕を四本に展開。四挺のロングライフルを一斉射する。


ゼルエルグレイズ「ぎゃん!」チュドン


トウジ「なんや? こいつら、めちゃくちゃ弱いで」


シンジ「そんなの関係ない。全部潰すだけだ」




アスカ「はあああぁぁぁ!!」グオン


ゼルエルグレイズ「ギャア!!」ズシュン


レイ「このっ……!!」


ゼルエルグレイズ「ノン!?」ドカーン


アスカ「さっさと終わらしてぇ……!」ドン


ゼルエルグレイズ「ナムサン!」デデーン


レイ「碇くんと……!」


ゼルエルグレイズ「イタイ!」チュドーン


アスカ「デートするんだからあああぁぁぁ
ぁぁ!!」


弐号機は転ばせたゼルエルグレイズの足を掴み、砲丸投げの要領で他のゼルエルグレイズにぶつける。


レイ「もらった」ロケットランチャー


ゼルエルグレイズ「「アッ」」ドカーン


ゲンドウ(シンジとレイがデート!?)ガタ


リツコ『……ミサト?』


ミサト『へ、へぇー。知らなかったなー。シンちゃんがレイとアスカにそんな約束してたなんてー(棒)』


リツコ『本当に知らなかったようね』フー


マヤ『ど、堂々と二股!?』


日向『シンジくんの事だから、デートを別の何かと勘違いしていそうな……』


青葉『奇遇だな。俺も思った』


冬月(戦闘中の空気とは思えん)



トウジ「何や、センセ! ダブルデートの予定が控えてんのか!」ズドド


シンジ「ん? ダブルデートって何?」 グシャ


トウジ「へ? 」


――ゼルエルグレイズ、殲滅間近


レイ「はぁ……はぁ……」


アスカ「やってやったわよ……ゼェ」



ミサト『全滅? 十五体の使徒が全滅? 三分も経たずに?』


リツコ『驚異的ね……』


マヤ『新たにパターン青が確認されました! 零号機と弐号機の元へ高速接近中!』



アスカ「え? まだ来るの?」


レイ「あれは……」


ゼルエルアイン「……」




ゼルエルにアルミサエルがINしたお。
略して――ゼルエルアイン。


ゼルエルアイン「判る。考えなくても判る」


マヤ『また喋る使徒!?』


アスカ「ちっ! ファースト、援護!」


レイ「了解」


ゼルエルアイン「これがそうなんだ。これこそが、本来あるべき俺の姿……!」ヒュン


アスカ「速い!? 何よこいつ!」


レイ「この動き……まるで碇くん……!」


ゼルエルアイン「遅い!」


二人の視界から一気に消えたゼルエルアイ
ン。その姿を探している内に、ゼルエルグレイズの死骸が二機のエヴァに降り注ぐ。


レイ「……っ!」


ゼルエルアイン「はっ!」足ドリル


レイ「っうあ!?」


足ドリルは零号機の腹部に命中。ゼルエルアインは続けて零号機の頭を握りしめると、腕部パイルバンカーを作動させる。


ミサト『零号機の神経接続解除!』


零号機「イダイッ!!」ズドン


日向『零号機、戦闘不能!』


アスカ「ファースト!? こんのぉぉぉ!!」


ゼルエルアイン「はーはっはー!」


アスカ「キャアアアアア!!」


きしめん攻撃(よく伸びる布みたいなやつ)により、弐号機の両腕を吹き飛ばす。


アスカ「うぐぅ……! こんちくしょおぉぉ!」ダダダッ


ミサト『弐号機も全神経接続解除っ!』


ゼルエルアイン「ふん」スパ


青葉『弐号機、頚部損壊、戦闘不能! パイロットは意識不明!』


ミサト『零号機、弐号機両パイロットの回収を
優先! 早く!』


ゼルエルアイン「クランク二尉、やりました! あなたの仇の片割れを倒しました! きっと見ていてくれますよね……クランク二尉。俺は貴方の遺志を継ぐ」


ミサト『レイとアスカがやられたわ! シンジくん、トウジくん、ネルフ本部の護衛に回ってきて! このままじゃセントラルドグマを突破される!』


ゼルエルアイン「……! そうだ。思い出した。申し訳ありません、クランク二尉」


ゼルエルアインは愉悦に浸っていた所、急に険相を変えてネルフ本部へ足を向ける。


ゼルエルアイン「俺は貴方の命令に従い、アダムを捕獲しなければならなかった!」


ゲンドウ「」ピク


冬月「おい待て。どこに行く」





トウジ「センセ、先に行ってくれ! こいつらの面倒はワイが見てはる!」


ゼルエルグレイズ「チョークヤメテー」ミシミシ


シンジ「わかった」


――発令所

ドガァァン!


マヤ「キャア!」


ゼルエルアイン「アダムゥゥゥ!!」ズシン


ミサト「使徒!?」


ゲンドウ「」ガタガタ


ゼルエルアイン「ここじゃない。もっと下
か?」


ズンズンズンズン


初号機「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」ガキィン


ゼルエルアイン「また…また貴様か! クランク二尉を手に掛けた罪深き子供!」グギギ


シンジ「誰それ」


ゼルエルアイン「貴様ぁ! ぐっ」


シンジ「ちょっと表出ろ」ガンガンガン


ミサト「カタパルト、射出!」


初号機&ゼルエルアイン「「」」バシュゥン


シンジ「こいつ、あの時の?」


ゼルエルアイン「なんて事だ。君の罪は止まらない。加速する」


シンジ「ん?」


ゼルエルアイン「クランク二尉、このままでは貴方の涙は止まらない。俺はこの戦いを以て彼を悔い改める」


シンジ「サードインパクト起こすつもりで何を……」


レイ「はぁ…はぁ…」バゴン


レイは弐号機のエントリープラグをこじ開けた。


アスカ「……ぅぅ」


レイ「生きてる? しっかりして」


アスカ「あ…ファースト…。あの使徒は……?」


レイ「碇くんが戦ってる。でも……」





シンジ「ぐっ!」ドカン


ゼルエルアイン「これが使徒の完全なる姿。貴様のような半端なものではない。文字通り、アダムと使徒を繋ぐ力」


シンジ「完全な使徒?」


ゼルエルアイン「所詮、貴様などただの出来損ないに過ぎない!」ギュイン!





アスカ「そんな……シンジでも無理なの?」


ゼルエルアイン「罪深き子供。クランク二尉はお前たちと戦うつもりはなかった」ブウン!


シンジ「電池は残り三分……」ドガン!


ゼルエルアイン「お前たちを救うつもりでいたのに、その慈悲深き思いが何故伝わらない!」
ギュオン!


シンジ「散々人を殺しといて?」ヒョイ


ゼルエルアイン「…やはり、貴様は出来損ない! ネズミ! 同じ手を何度も!」ブンブン!



ミサト「トウジくん、聞こえる!? 急いでネルフ本部に来て! シンジくんが使徒に押されてる!」



ゼルエルアイン「清廉なる正しき人道を理解しようとしない! 野蛮な獣!」


ゼルエルアイン「なのに! あろう事かその救いに手を掛け、冷たい墓標の下に引きずり込ん
だ!」



トウジ「まだあかん! この雑魚が鬱陶しすぎて……!!」


ゼルエルグレイズ「「ガンバルゾー」」


トウジ「ぐっ!」


日向「参号機、アンビリカブルケーブル切断! 内部電源に代わります!」


ゼルエルアイン「もう貴様は救えない。その身にこびりついた罪の穢れは、決して救えはしない!」


シンジ「……!」


ゼルエルアイン「貴様も、アダムも、貴様の仲間も! 決して!! 貴様らの死を以て罪を払
う!」


シンジ「……おい、バルバトス」


ゼルエルアイン「死んで償えぇぇぇ!!」ブウン





シンジ「よこせ、お前の全部」マゴロクソード



ズパァァン


初号機、きしめん攻撃を一閃。


マヤ「初号機のシンクロ率が、四百パーセントを超えています!!」


リツコ「ついに、目覚めたのね。彼女が」


ゲンドウ(ユイ……)







シンジ(罪? 救う? それは…お前が決めるものじゃない)


ゼルエルアイン「な…なんだ、今の反応速度は!?」


急激にはね上がった初号機の反応速度に、ゼルエルアインは真っ赤な独眼を見開いた。


シンジ「こいつの使い方はもうわかってる
……」チャキ


当の昔に覚えた太刀の正しい使い方。初号機に乗っても幾度となく振り回し、得物がマゴロクソードに変わってもその心得は変わらない。

肩部のウェポンラックをパージし、動きやすくなったところでマゴロクソードを構え直す。


ゼルエルアイン「急に動きが……」


初号機の内部電源はそれほど残っていない。 少しでも早くケリをつけようと勇猛果敢に繰り出される斬撃を、ゼルエルアインはバトルアックスでいなしながら、初号機の脇腹を蹴り飛ばす。


ゼルエルアイン「舐めるなぁぁ!!」ガシッ!


シンジ「がっ!」ズドン!


ゼルエルアイン「ネズミの悪足掻きもこれで終わりだぁ!」ブン!


初号機の頭をかち割らんと、ゼルエルアインはバトルアックスを振り上げた。








――何やってんだぁ!! ミカァ!!――










アスカ「何やってんのよ、シンジィィィ!!」

レイ「負けないで!! 碇くん!!」








シンジ「……っ!」


シンジの中でオルガの声とレイ、アスカの声が重なる。

刹那、初号機はマゴロクソードを目にも止まらぬ速さで振るった。それはゼルエルアインが振り落とした右腕を斬り飛ばし、握られたままのバトルアックスはあらぬ場所へズシリと沈
む。


ゼルエルアイン「ATフィールドごと俺のボディを斬った!?」


ATフィールドがなくてもゼルエルアインのボディ自体の強度は、N2爆雷の飽和攻撃を受けても平然としていられるほどだ。反応速度だけでなく、攻撃力も上昇した初号機に困惑する。


ゼルエルアイン「このっ、化け物があああぁぁぁぁ!!」


シンジ「お前に言われたくないよ」


続けて、ゼルエルアインの左腕が斬り落とされる。覚醒した初号機の前では、ゼルエルアインの強力なATフィールドはただの紙くずに等し
い。

両目を血のように赤くたぎらせる初号機にゼルエルアインは戦慄した。初号機の異常ぶりに恐怖し、我を忘れてボディプレスを掛けようとする。自らの巨体を生かした一撃だが、同時に自身のコアを無防備に晒していた。


ゼルエルアイン「クランク二尉! ボードウィン特務三佐! 私はっ、私の正し――」


初号機は迷わず、ゼルエルアインのコア目掛けてマゴロクソードを突き刺す。ドスッ、という鈍い音と共にコアは完全に崩壊し、ゼルエルアインは力尽きる。


シンジ「うるさいな……。三人の声が聞こえないだろ……」


トウジ「はぁ…はぁ…。これで、最後ぉ!!」
つ 鉄血ペンチ く


ゼルエルグレイズ「ア……ア……ア! ワタシハ …… コンナ……コンナ……!」ペシャンコウ


参号機の周辺には、ゼルエルグレイズによる死屍累々の山が出来上がっていた。



マヤ「パターン青、消滅! 全使徒の殲滅を確認しました!」


リツコ「……おかしいわ」


ミサト「リツコ?」


リツコ「エヴァが覚醒すれば、本来の力を発揮するため装甲――拘束具が破かれるはず。だけど、これは」


ズズズ……


ミサト「初号機のカラーリングが…変わっ
た…?」


初号機(ルプス)「」しーん


シンジ「……」スヤー


マヤ「初号機のシンクロ率、急速に低下。えっと、パイロットが寝ました……」





加持「シンジくんがシンジさん過ぎて、結局、ここで水を撒くことしかできなかったよ」


初号機は覚醒したけど、ゼルエルアインのS2機関を捕食せずに活動停止しました。その代わりに、初号機はエヴァンゲリオン初号機バルバトスルプスになりました。配色も、紫主体からバルバトスルプス寄りに。


――火星の畑、シンジの夢?


シンジ「あれ? ここって……火星?」


シンジ「多分、夢かな。鉄華団のジャケット着てるし、銃もある。阿羅耶識は……ないっぽ
い?」トコトコ


シンジ「……懐かしいな」トテテ


碇ユイ「……」


シンジ(ん? レイ……にそっくり?)


ユイ「会いたかったわ、シンジ」


シンジ「あんた、誰?」


ユイ「碇ユイ。あなたの母親よ」


シンジ「……母さん?」



ユイ「やっと会えたわね。今まで一度も初号機が暴走してないもの。覚醒はしたけど」


シンジ「バルバトスが覚醒? 」


ユイ「……ね、ねぇ。一応聞くけど、バルバトスって何かしら?」


シンジ「名前だよ。初号機の」


ユイ「へ、へぇー。そうなんだ。えっと…名前を変更する予定は…?」


シンジ「ないよ」


ユイ「……」ガーン


シンジ「どうしたの?」


ユイ「シンちゃん! お願い、考え直して! 悪魔の名前がつけられてるなんて、お母さん嫌だわ! もっと可愛いのがいい!」


シンジ「えぇ……。俺の勝手でしょ」


ユイ「初号機の中には私の魂が宿っているの
よ! 」


シンジ「は?」


ユイ「あ、 いきなり言われても頭が混乱するだけよね。一から説明してあげる」


――説明中。この夢は精神世界っぽい場所だとわかりました。



ユイ「……という事よ」


シンジ「へー。つまり、チョコレートの人とバエルみたいな感じか」


ユイ「また私の知らない何かが……」


シンジ「ところで、母さんは何でバルバトスの中に入ったの? 」


ユイ(どうあがいてもバルバトスは確定なのね……)


ユイ「それはね、ずっと未来。人が生きていた証として、エヴァを残したかったからよ。例え太陽系が滅んでも、エヴァだけは残り続けるのよ」


シンジ「ふーん」


ユイ「あれ? リアクション、ちょっと薄くな
い?」


シンジ「いや、すごい事をしてる以外よくわかんなくて。まだ俺が小さい時の話でしょ? 」


ユイ「え、えぇ」


シンジ「母さんが自分で決めて、自分で信じて選んだ道なら何も言わないよ」


ユイ「あの……もっと、怒るとかしないの? ほら私、まだ小さかったシンちゃんを残した訳だから、寂しいよーとか、悲しいよーとか……」


シンジ「ううん、平気。むしろ、俺より父さんがそうだったかな? おかげでほとんど捨てる形で親戚のところに預けられたから」


ユイ「は? 何それ?」


――シンジ、お母さんに説明中


ユイ「あのマダオ……」ピキピキ


シンジ「結構、時間食ったかな……」


ユイ「シンジ、どこに行くの?」


シンジ「皆のところ。今の俺には、帰る場所があるから」


ユイ「そう……もう行くのね」


シンジ「うん。じゃあね」カチャ


銃口を自分の頭に向けるシンジ。


ユイ「ちょっと待ちなさい」ガシッ


シンジ「いきなり何?」グググ


ユイ「何じゃないわ! どうしてさらっと自殺しようとしているのよ!!」


シンジ「夢の中で死ぬと目が覚めるってケンスケが言ってたから」


ユイ「それにしても肝が据わり過ぎてない!? あと、そんな事しなくても元の世界に帰れる
わ!」


シンジ「そうなんだ」




冬月「S2機関を捕食しなかったな」


ゲンドウ「ああ」


冬月「……始まらなかったな」


ゲンドウ「……まだだ。まだ参号機から取り外したものが残っている」


冬月「しかし、この様子だと凍結もままならないな。覚醒も不慮の事故とは言えん。初号機はまだ我々の制御下だ」


ゲンドウ「逆に考えろ。思っていたよりもゼーレが騒ぎ立てないと。気が楽で済む」




マヤ「初号機パイロット、起床しました」









ユイ「シンジ、私がいなくても強い子に育ったわね……。いや、この場合は育ってしまったと言うべきか。
サードインパクト発動条件の一つは、神の依り代となったエヴァのパイロットが自ら死を望む事。ゼーレはサードインパクトを起こせるのかしら?」


※多分、無理でしょう。そういう子だから。
あと、サードインパクトの発動条件が間違っていたら先に謝ります。ごめんなさい。


――レイとアスカの病室


シンジ「レイ、アスカ、居る?」



アスカ「……」ムスー

レイ「……」ムスー



シンジ「何やってんの? また喧嘩?」


アスカ「……違うもん」


レイ「碇くんとショッピング……延期……」


シンジ「何だ、それか」


アスカ「何だ、じゃないわよ。私がせっかくアンタの私服を選んであげるはずだったのに」


レイ「服屋……壊滅……」



先日の使徒軍団の大侵攻により、第三新東京市は大変な事になりました。あと、このシンジは私服についてはマジで空っきし。



シンジ「俺の事はいいよ。それより、早く怪我を治さなきゃ」


アスカ「うん」ウルウル


シンジ「泣くなよ」ナデナデ


レイ「……ずるい」


シンジ「え? レイも?」


レイ「……」コク


シンジ「仕方ないな……」ナデナデ


レイ「……」ポカポカ


――覚醒を一度果たした初号機ルプスの調査


リツコ「は、はわわ……」ブクブク


マヤ「先輩! 気を確かに!」


ミサト「えっと……これ、どういう事?」


リツコ「あぅ……あぅ……」ブクブク


マヤ「落ち着いてください! まずは深呼吸
を!」


日向「博士の代わりに説明します。原因は不明なんですが、初号機の内部に無限機関となる相転移炉ができてます」


ミサト「それ大丈夫なの?」


日向「現在究明中ですが……」


リツコ「ひっひっふー。ひっひっふー」


マヤ「先輩! 呼吸法を間違えています!」


青葉「博士がこの調子じゃなぁ……」



相転移炉はシンジによってエイハブ・リアクターと名付けられました。細かい性質は全然違うけど。

S2機関と違って、性能と強度と安定性と安全性がおかしい事になっているので、サードインパクト時にロンギヌスの槍が刺さっても特に共振しません。何も起きません。神の依り代と言うよりも、悪魔の依り代になるかも。

やったね、冬月先生。初号機の中にS2機関が入った訳じゃないからゼーレが拉致してこない
よ。



――学校


ケンスケ「碇、惣流と綾波は?」


シンジ「入院中。腕とか頭とか飛ばされたか
ら」


ケンスケ「えっ」ゾッ


ヒカリ「飛ばされた!? 飛ばされたってどういう事!?」


シンジ「飛ばされたのはエヴァの話。でもシンクロしてるからダメージも直接伝わるんだ。ちゃんと生きてるから安心して」


ヒカリ「よかった~。今度、お見舞いに行かなくちゃ」


シンジ「うん。二人も喜ぶと思う」


トウジ「センセもそれなりにケガしてるはずなんやけどなぁ……」


マヤ「パターン青、使徒です!」


アラエル「セイサイヲウケロ!!」ピカー


青葉「総員、第一種戦闘配備! 対空迎撃戦、用意!」



初号機ルプス「」チョコン


シンジ「え? 俺は待機なの?」


ミサト『ええ。碇司令の指示よ。白くなった初号機の詳細がまだ不明だから』


シンジ「……わかった」


ミサト『アスカは?』


マヤ『弐号機ともに順調。いつでも行けま
す!』


ミサト『了解。弐号機発進、超長距離狙撃準備。零号機、参号機はバックアップとして発進準備』




――弐号機、先行


青葉『目標、未だに射程距離圏外です』


アスカ「じれったいなぁ。早く降りなさいよ! アンタのせいでお昼ご飯、食べられなかったんだから!」ポジトロンSライフル


アラエル「クラエッ! セイギノイチゲキ!」ピカー


アスカ「……!」


ミサト『何の光っ!?』


マヤ『心理グラフが乱れています! 精神汚染、始まります!』


リツコ『まさか、使徒が人の心を知ろうとしている?』


アスカ「このやろう!!」バキュゥゥン!! バキュゥゥン!!


アラエル「ハンゲキシテキタ!? コイツ、ヤルナ!」ピカー!


青葉『ダメです! 射程距離圏外です! 弐号機、ライフル残弾ゼロ!』


マヤ『精神汚染、Yに突入しました!』



アスカ「イヤァァァァ!! 私の中に入って来ないでぇぇ!!」



ミサト『アスカ、戻って!!』


アスカ「いやぁ! イヤァ!」ジタバタ


ミサト『聞こえてないの? アスカ、早く戻って来て!!』


アスカ「私の心まで覗かないで!! お願いだからぁ!!」


マヤ『心理グラフ、限界!』


ミサト『アスカ!!』






初号機ルプス「……」


シンジ「……ん?」




――弐号機とは別の位置


零号機「」ポジトロンSライフル一挺


参号機「」腕を四本に展開し、ポジトロンSライフル二挺持ち



アスカ『お願いだから、これ以上心を侵さないで!!』



トウジ「惣流、ピンチちゃうんか!? くそ
っ!」


狙撃準備が完了した零号機と参号機はポジトロンスナイパーライフルを一斉に放つ。三本のエネルギー弾は衛星軌道上にいるアラエルに直撃しようとするが、その間近にATフィールドで防がれる。


ATフィールド「「イオクサマ、オサガリクダサイ!」」


アラエル「ナニヲスル! ハナセ!」ピカー


レイ「クッ!」


青葉『目標健在! まるで威力が足りません!』


日向『しかし、出力は最大です! もうこれ以上は!』


マヤ『弐号機、心理グラフシグナル微弱!』


リツコ『LCLの精神防壁は?』


マヤ『ダメです、触媒の効果もありません!』


日向『あっ! バルバトスルプス、ソードメイスを持って無断発進!』


ミサト『何ですって!?』


リツコ『……ガハッ!』


マヤ『せんぱあああい!!』


青葉『バカ! 博士にその名前は禁句だ!』


日向『す、すみません!』


アスカ「うぅ……うぅ……もう、やめてよぉ……」グス


アラエル「カクゴ!」ピカー


初号機ルプス「ぶるあぁぁぁ!!」


シンジ「アスカ!」


アスカ「ぅ…シンジ…? ふぇぇ……」グス


アラエル「ナ……ナンダ、コイツハ?」ピカー


初号機ルプス「」ギロッ


アラエル「ヒィ!」ピカー


シンジ「……お前、消えろよ」


マヤ『初号機、シンクロ率400……いや、 399パーセントです! 覚醒寸前をコンマで微妙に調整しています!』


青葉『ソードメイスに強力なATフィールド発
生。エヴァ初号機、使徒に向かって投合しまし
た!!』


ATフィールド「「イオクサマ、アブナイ! グアッ!」」


投合されたソードメイスはアラエルのATフィールドを貫通した。しかし、コアを破壊する事は叶わず、片方の光の翼を抉り取るだけだった。


アラエル「オマエタチ!? グハッ!」


シンジ「ちっ。アスカ、動けるなら俺の後ろに下がってて」


アスカ「……うん」グス


冬月『いかん! 相手は精神を侵食するタイプだ! 初号機を侵食させる訳にはいかん! 戻
れ!』


ゲンドウ『シンジ、命令違反だ』


シンジ「兵装ビルから新しいメイスを出して。次は当てる」


ゲンドウ『シンジ』


シンジ「……」ジロッ


ゲンドウ『……』



ゲンドウ(こ、怖い)



アラエル「ブカノカタキー!!」ピカー


シンジ「……?」



――


ハシュマル「オハヨウビーム」


――



アラエル「あ……あれが……モビルアーマー…
…?」ガクブル

シンジ(あ、何か光が弱まった)


ゲンドウ『レイ。今のうちにドグマに降りて、槍を使え』


レイ「了解」


ゲンドウ『シンジが勝手に使徒を倒すまで時間がない。急げ!』



冬月「良いのか、碇? 老人たちが黙ってはいないぞ」


ゲンドウ「今がチャンス、いや、むしろ今しかない。シンジを見ろ」



青葉『初号機、そこら辺の瓦礫を拾っては使徒に向かって投げています! 使徒へのダメージは着実に増えている模様!』



冬月「精神汚染が……進んでいない?」


ゲンドウ「違う。そっちじゃない」



――零号機、ロンギヌスの槍装備


レイ(碇くんに渡した方が一番いい気がするのは気のせい? でも……)


その時、レイの頭の中に誰かの声が響いた。



――唸れ!
ギャラクシーキャノン、発射ぁ!!――



レイ「……」

















レイ「スーパーギャラクシーキャノン」ロンギヌスの槍


アラエル「ウボァー!!」チュドーン


マヤ「パターン青、消滅!」


――???


アラエル「はっ! ここはどこだ!」


ハシュマル「よ」


アラエル「貴様は…モビルアーマー! 数百年前の遺物!」


ハシュマル「俺の事を知っているのか。なら話は早い。お前、鳥を司ってんだろ? 見た目も鳥だし。鳥同士仲良くしようや」


プルーマ「「ワーイ!!」」カサカサ


アラエル「く…来るな…! うわあああああああああああ!!」モチャモチャ



レリエル「シャンブロさんって、正面から見るとハシュマルさんに似てますよね」


シャンブロ「そうかな?」


レリエル「はい。ぶっちゃけ、本編の活躍と雰囲気が厄祭戦にいてもおかしくないですもの」


シャンブロ「えへへ。ありがとう。モビルアーマー冥利に尽きるよ」


ハシュマル「でも俺と違って、高出力のビームで一撃KOだけどな」


シャンブロ「……」ビビビビ


ハシュマル「お? ビームの撃ち合いか? 上等だ!」ビビビビ


レリエル「ストップ! ストオオオップ!!」


アラエル「わ、私は……クジャン……家……」


――ある日の日常。時系列無視。


ケンスケ「碇! 俺、エヴァに乗りたい!」


シンジ「シミュレーションなら乗れるんじゃない? ちょっとミサトに聞いてみる」


――という訳で、シンジVs.ケンスケ


四号機「……」ズシンズシン


ケンスケ「へー、こうやって動くのか!! 」


初号機「ぶるぁぁぁ!!」ズシン!!


ケンスケ「ウェッ!? ……何だ、エヴァ初号機か。びっくりさせるなよ」


シンジ「じゃあ行くよ」レンチメイス


ケンスケ「ちょっ、ちょっと待て!? 何だよその鈍器!! てか、俺まだ乗ったばかり! チュートリアルは!?」


リツコ「今回はあくまでもシミュレーション。エヴァとのシンクロによる搭乗者への、ダメージのフィードバックは解除します。尚、
チュートリアルはありません。強いて言うなら――」


ミサト「頑張ってね、ケンスケくん!!」


ケンスケ「よっしゃあ! 俄然やる気出てきたぁ! 今なら使徒だって倒せる気がする!」


リツコ「武装はエリア内の各地に散りばめられていますので、それを拾ってください。それでは、戦闘開始」


ケンスケ「はっはっはぁ!! さぁ、碇! 武器なんて捨ててかかってこ――」


シンジ「……」ギュイーン


初号機「灼熱のバーンストライク!!」レンチメイス


ケンスケ「うああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


――初号機ルプスのシンクロテスト


リツコ「嘘でしょ? 何で…何で…シンクロ率が0から400パーセントを何度も行き来してるの? わざとなの? わざとなの?」ワナワナ


マヤ「初号機も大人しいままですしね」


ミサト「シンジくん、シンクロ率で遊ばないでくれる? リツコが可哀想だわ」


シンジ「ん? わかった」


日向「エヴァの扱いに関してはもう人外だなぁ……」


青葉「検査結果は人間のままなのにな」


ミサト「にしても、二人乗りでこれとは……」



アスカ「シンジ♪」ギュッ


シンジ(……狭い)



レイ「……もやもやする」


アラエル戦後、何故かアスカはシンジにべったりになりました。レイは対抗馬。


トウジ「街も随分ボロボロになってもうた」


シンジ「うん」


トウジ「委員長も、ケンスケも、皆帰る家を失ってしまって、他の場所に行ってしもうた…
…。ワイらにもっと力があれば……」


シンジ「悔やんで立ち止まっても仕方ないよ。 ここまで来た以上、俺たちは前に進むしかな
い」


トウジ「センセは……それで辛くないのか?」


シンジ「……」


カヲル「フンフン~♪」


トウジ「歌? てか、こんなところに人?」


カヲル「歌はいいねぇ。心を潤してくれる。リリンが産み出した文化の極みだよ。そう思わないかい、碇シンジくん、鈴原トウジくん?」


シンジ「誰、あんた?」


カヲル「僕は渚カヲル。君たちと同じ、仕組まれた子供。フィフスチルドレンさ」


トウジ「フィフス? なんや、エヴァの新しいパイロットか」


カヲル「うん。あくまでも予備だけどね」


――渚カヲルのシンクロテスト


弐号機「」チョコーン


冬月「よもや、コアの変換もなしにシンクロするとは」


マヤ「信じられなません。システム上ありえないです」


――テスト終了後


カヲル「やぁ、シンジくん。僕を待っててくれたのかい?」


シンジ「カヲルか。そうじゃなくて……」


アスカ「ワタシノニゴウキ!! グルル!」ジタバタ


シンジ「アスカを抑えてる」


カヲル「そうか。君も難儀だねぇ」


アスカ「良くも私の弐号機に乗ってくれたわね! 」ジタバタ


カヲル「君は弐号機のパイロットか。特別な思い入れがあるみたいだね。勝手に乗った事は謝罪するよ」


アスカ「うっさい、このホモ野郎!!」


カヲル「心外だな。一体何を根拠に――」


アスカ「乙女の勘よ! シンジは私のものなんだから!」


レイ「それは違うわ。碇くんはモノじゃない」スゥ


アスカ「げっ、ファースト」


カヲル「綾波レイ。君がファーストチルドレンだね」


レイ「あなた、誰?」


カヲル「渚カヲル。君は僕と同じだね」


レイ「?」


カヲル「シンジくん。君とはもっとお話したかったけど、セカンドチルドレンの形相が物凄い事になってるから帰るよ。それじゃあね」スタスタ


シンジ「うん、それじゃ」



アスカ「シンジ~♪」スリスリ


レイ「碇くん」ダキ


シンジ「…何これ」


――次の日。葛城宅、早朝


アスカ「スゥ……スゥ……」zzz


クイクイ、スカッ


アスカ「……ん?」キョロキョロ


アスカ(シンジが……いない……?)


――早朝


シンジ「……」ランニング中


カヲル「おはよう、シンジくん」ヒョコ


シンジ「おはよう、カヲル」トテテ


カヲル「こんなに朝早くから、頑張るねぇ」トテテ


シンジ(ついてくるんだ……)


シンジ「この時間はまだアスカとミサトが寝てるから」トテテ


カヲル(あ、加速した)トテテ


カヲル「君はセカンドと葛城ミサトと一緒に住んでいるのかい?」トテテ


シンジ「うん」


カヲル「帰る場所があるというのは幸せに繋がる。良い事だよ」


シンジ「そりゃそうでしょ」スタタタ


カヲル「君は何だか一時的接触を避けるね。人と触れ合うのが怖いのかい?」


シンジ「別に。カヲルから近づいて来てるだけじゃん」


カヲル「それは君ともっとお話したいからさ」


シンジ(横に並ばれた……)


カヲル「常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。だけど鋼のように図太いね。特に君の心は」


シンジ「俺が?」


カヲル「うん。好意に値するよ」



シンジ「ところでさ」


カヲル「なんだい?」


シンジ「カヲルを見てると、レイと同じ感じがするんだけど、どういう事?」


カヲル「それは……フフッ。凄いね、その感覚は」


……ドドドドドドドド!


アスカ「シンジィィィィィ!! 待ってよぉぉぉぉぉぉぉ!!」スタタタ


シンジ「あっ、アスカが起きた」


アスカ「何で隣にフィフスがいるのよ!! 絶対許さない!!」


シンジ「最近のアスカ、機嫌が悪いから。先に逃げてて」


カヲル「う、うん。そうさせてもらうよ」


アスカ「シンジィ!!」ダキッ


シンジ「おっと」


アスカ「ねぇ、どうして? どうして勝手に私の隣からいなくなったの? どうしてフィフスと一緒にいたの? ねぇ、どうして?」


シンジ「ランニングしたかったから。あとカヲルとは道端で会った」


アスカ「私よりランニングを取るんだ!」


シンジ「じゃあ、次から一緒にやる?」


アスカ「へ? 」


カヲル(惣流・アスカ・ラングレー。シンジくんに対する彼女の執念は凄まじいものだ。普通の人なら裸足で逃げ出すのを、彼はいとも容易く……)


カヲル「僕は君に逢うために生まれたのかもしれない」ボソッ


アスカ「……!」ピコン


シンジ「どうしたの」


ネルフ本部の上空。一体の銀色の巨人が、忽然と姿を現した。その正体は、S2機関の暴走事故で消滅した筈の、エヴァンゲリオン四号機だった。

両腰のホルダーに二振りの金色の剣を携行していて、背部にある一対のスラスターウイングで空中を漂っている。


四号機「リリンを名乗る身なら、このエヴァがどのような意味を持つかは理解できよう! リリンにおいて、アダムを操る者こそが唯一絶対の力を持ち、その頂点に立つ! 席次も思想も関係なく、従わなければならないのだ! アグニカ・カイエルの魂に!」フワフワ


日向「データ照合。これは……細部は違いますが、エヴァ四号機です!」


青葉「また喋るやつかよ……」


ミサト「四号機!? 事故で消滅したはずじゃないの!?」


マヤ「ATフィールド確認。パターン青、 使徒です!」


カヲル「さぁ、行くよ。シンジくんは来てくれるかな?」


四号機「アグニカは実現しようとしていた。人が生まれや育ちに関係なく等しく競い合い、望むべきものを手に入れる世界を。素晴らしいとは思わないか?」グッグッグ


青葉「装甲障壁、四号機に突破されます!」


ゲンドウ「エヴァ全機を出撃させろ」


ミサト「はい」


ゲンドウ「いかなる方法を持ってしてもターミナルドグマ侵入を阻止しろ」


冬月(またエヴァで袋叩きか……)


――


渚カヲルを追撃するシンジたちの前に、エヴァ四号機が立ち塞がった。四号機は右手に持った剣を天へと掲げている。


四号機「革命は終わっていない!! 諸君らの気高い理想は、決して根絶やしにはならない!! アグニカ・カイエルの遺志は常に我々と共にある!!」


トウジ「エヴァ!? パイロットはほんまにおらんのか!」


シンジ「邪魔だ」ソードメイス

初号機ルプスは四号機の後ろに回り込んでソードメイスを叩きつけるが、四号機のAT フィールドで軽くいなされる。

四号機「フッ……ハッハッハッ! 凄まじいな、その感覚」ヒョイ


アスカ「またエントリープラグ狙い!」


レイ「いつもの碇くんね」


カヲル「四号機、シンジくんだけは通してあげて」


四号機「リリンの真理はここだ。 皆、 アダムの元に集え!!」


カヲル「さぁ、シンジくん。僕についてきて」


シンジ「……」ギュオーン


アスカ「あっ! シンジィー!!」

シンジへの依存癖が抜けきっていないアスカは初号機ルプスの後をすぐさま追いかけようとする。

しかし、四号機の受けた命令は碇シンジを素通りさせる事のみ。ターミナルドグマへ続く通路にATフィールドの隔壁を降ろして、残されたエヴァ3機と対峙する。

四号機「リリンに追われた俺が、たった一人でエヴァ3機を葬る!! その行為が世界を変える! 生まれや所属に関係なく、己が力を研ぎ澄ます事で、この退屈な世界に嵐を起こす事ができるのだと!! 己が持つ牙の使い方を知らず、ただ蹲るだけの獣が一斉に野に放たれる! そうなれば……俺の勝ちだ!!」バエルソード


アスカ「邪魔だあぁぁぁ!!」 タクティカルアームズⅡ






カヲル「エヴァシリーズ。アダムより生まれた忌むべき存在。それを利用してまで生き残ろうとするリリン。僕にはわからないよ」


初号機ルプス「フン! フン!」ゲシゲシ


パリィィィン! パリィィィン!


カヲル「あの、少しだけでいいから話を――」


シンジ「フン!」 ゲシゲシ


パリィィィン! パリィィィン!


カヲル「シンジくん?」パリィィィン! パリィィィン!


オペレーター『エヴァ両機、最下層へ降下中』


オペレーター『目標、ターミナルドグマまで後20』


カヲル「人の宿命か……。人の希望は悲しみに綴られているね」


初号機ルプス「」バキボコスカ


パリィィン! パリィィン!


日向『これまでにない強力なATフィールドが発生しました!』


青葉『光波、電磁波、粒子も遮断! 何もモニターできません!』


ミサト『まさに結界か……』


マヤ『目標及びエヴァ初号機と四号機ロスト! パイロットと連絡も取れません!』


シンジ「……」ソードメイス


パリィィン! パリィィン!


日向『ヘヴンズドアが開いていきます!』


――ターミナルドグマ


シンジ「……」


カヲル「よし、これで邪魔者はいなくなった――」


初号機ルプス「ぶるぅああぁぁ!!」ブン


パリィィィン!


シンジ「チッ、やっぱりATフィールドが堅すぎる」


シンジ(バルバトスに全部寄越して貰えばいいんだけど……)


――

ミサト「シンジくん、シンクロ率は迂闊に400パーセントまで上げないで。リツコが泣いちゃうから」

――


カヲル「ひどいじゃないか。問答無用なんて」


シンジ「関係ない。アンタは敵だって事に変わりはないんだろ?」


カヲル「シンジくんにとってはそうでも、僕は少し違うと思うよ。僕は君と友達――」


初号機ルプス「オラァ!」ソードメイスグリグリ


パリィィィン!


カヲル「うん、落ち着こうか」


カヲル「アダム。我らの母たる存在。アダムより生まれしものはアダムに還らなければならないのか? 人を滅ぼしてまで?」


初号機ルプス「ウォォォ!!」


全力でタブリスを握り潰そうとする初号機ルプス。しかし、タブリスは強力なATフィールドで自身を守っている。


カヲル「……シンジくん。ちょっと力緩めてくれるかな?」


シンジ「は? 何で?」


カヲル「おかしい。何故、今のシンジくんには話が通じないんだろう」


リリス「……」チーン


カヲル「違う。これは…リリス…! そうか、そういう事か、リリン!」


シンジ「リリス? アダムじゃないの?」


カヲル「その様子だと、君も知らなかったみたいだね。そう、あれはリリス。君たち人間を生み出した使徒だよ」


初号機ルプス「フンヌゥゥ!!」ギギギ


カヲル「……握り潰すのか話を聞くのか。どちらかを選んでくれないかな?」パリィィィン!


シンジ「じゃあ、握り潰す」


カヲル「うん、それがいい。そうしなければ君らが消える事になる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ」


カヲル「そして、君は死ぬべき存在ではない」


シンジ「……」


カヲル「君たちには未来が必要だ。ありがと
う。君に出会えて嬉しかった」


シンジ「……死んだ人には、死んだ後でいつでも会える。……じゃあね」


グシャッ






四号機「ガエリオ、お前は…俺に――」ポワァ…


トウジ「なんや!? いきなり成仏したで!?」


マヤ「四号機、消滅しました!」


ミサト「お、お化けぇ?」


――アスカ、シンジとの添い寝までの道程。時系列無視。


――序盤。シンジの部屋


シンジ「……」スヤー


アスカ(シンジ、寝てる……よね?)スタスタ



アスカ(少しだけ……)ソー……


シンジ「……っ!」ガバッ


アスカ「キャッ!?」ガタッ


シンジ「え、アスカ?」


アスカ「バ、バカシンジ! いきなり何すんの
よ!」


シンジ「ごめん、背中がざわざわしたから敵だと思って。怪我は?」


アスカ「はっ、何よそれ。 怪我なんてしてないわ。ふん!」スタスタ


シンジ(何だったんだろ……)


――中盤、シンジの部屋


シンジ「……」スヤー


アスカ(今度こそ。二度も失敗はできないわ、アスカ)


シンジ「……ん?」ガバッ カチャ


アスカ(嘘!? まだ部屋に入ったばかりなの
に!! って、銃持ってる!?)


アスカ「ま、待ちなさい! 今のは私が悪かったから!」


シンジ「へ? ……アスカ、何してるの?」


アスカ「あ」


シンジ「この前も入ってきたよね。どういう
事?」


アスカ「うっ……」


シンジ「……俺の部屋で寝たいの?」


アスカ「へ!? バ、バッカじゃないの! 何で私がそんな事……てか、銃なんて持ってるの
よ!」


シンジ「これ? 改造スタンガン。日本だから本物持てなくてさ」


――終盤


シンジ「じゃあ、おやすみ」


アスカ「……」ギュッ


シンジ「アスカ?」


アスカ「……ぅ」


シンジ「……? 」


アスカ「い、一緒に……寝て良い……?」上目遣い


シンジ「は?」


――シンジの部屋


アスカ「zzz」ギュー


シンジ「……」スヤー


今回でわかった事。
このシンジ相手に、こっそり添い寝を仕掛けようとすると命の保障がない。正直に伝えよう。


レイ「碇くんと一緒にいると、心がポカポカする。碇くんとキスした時を思い出すと、心がドキドキする。弐号機の人が碇くんに抱きつくのを見ていると、心がモヤモヤする。


次回、新世紀 鉄血のエヴァンゲリオン
『Air/彼らにとってはまさに厄祭戦』


私は…人形じゃない…」


キリが良いから今回はここまで。次回もまた見てバエル。

四号機「君はアグニカ・ポイントを知っているか?」


――???


キール「約束の時は来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできん。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による補完を遂行するぞ」


ゼーレ(本当にできるのかなぁ……?)


ゼーレ(バカ野郎。ダメで元々だ)


ゲンドウ「ゼーレのシナリオとは違いますが」


冬月「人はエヴァを生み出すために、その存在があったのです」


ゲンドウ「人は新たな世界へ進むべきなので
す。そのためのエヴァシリーズです」


ゼーレ「我々は人の形を失ってまで、エヴァという方舟に乗るつもりはない」


ゼーレ「これは閉塞した人類を再生するための通過儀式なのだ」


ゼーレ「失敗もしたくないし」


ゼーレ「神も人も全ての生命の死を以て、やがて一つになるために」


ゲンドウ「死は何も生みませんよ」


キール「死は君たちに与えよう」


ゼーレ「バイバイ」


プツン


冬月「人は生きていこうとする所にその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いなのだから」


――戦略自衛隊がネルフを攻めてきました


冬月「最後の敵は同じ人間だったな」


ゲンドウ「総員、第一種戦闘配置」


マヤ「戦闘配置? 相手は使徒じゃないのに…
…」


日向「相手はそう思っちゃくれないさ」



――初号機ハンガー


初号機ルプス「」チンマリ


シンジ「よし。頼むぞ、バルバトス」


ミサト『レイは?』


青葉『所在不明です。位置を確認できません』


ミサト『何やってるのよ。他の子はもうエヴァに乗り込んでるっていうのに……』


シンジ「ミサト、レイはいないの?」


ミサト『ええ。まだ行方不明なのよ』


シンジ「じゃあ、そっちは任せたから。カタパルト開けて」




シンジ「碇シンジ。エヴァ初号機バルバトスルプス、出るよ」バシュウ




ゲンドウ「冬月先生、あとは頼みます」


冬月「ああ。ユイ君に宜しくな」


ズドォォン……!


戦自隊員「あ、あれは……」


戦自隊員「エヴァだ! ジェットアローンを呼んでこい!」


初号機ルプス「ぶるぅああぁぁぁ!!」ブン!


戦自隊員「「ギャアアアアア!」」ドガーン


一足先にハンガーからジオフロントへ出撃した初号機ルプスは、戦略自衛隊相手にツインメイスを構えてあらんかぎりの暴虐を働く。

時には戦車を蹴り飛ばし、時にはそこら辺にあった護衛艦を拾い、放たれたミサイルの盾代わりにし、時には空高く舞い上がり、メイスを投げて敵部隊を空から殲滅する。


戦自隊員「ケーブルだ! 電源ケーブルを狙
え!」


戦自隊員「ケーブル!? んなもん、見当たらねぇよ!」


戦自隊員「おい、内部電源は五分だよな? 何でまだ動いて……」


戦自隊員「知ってる情報と違い過ぎる!!」


アンビリカブルケーブルの縛りから解き放たれた白い悪魔は、戦略自衛隊の面々を絶望のどん底へと陥れた。後から遅れて来た弐号機と参号機もその獅子奮迅振りを見て、特にトウジがドン引きした。


アスカ「ファーストが出てない? あのバカ
っ!」


トウジ「センセ、人相手に容赦なさすぎや!!」





シンジ(もうとっくに辿り着いている、俺たちの本当の居場所)




遠くにいるVTOL機を初号機ルプスが腕部滑空砲で撃破すると、第三新東京市の上空よりN2兵器が投下された。その爆発はジオフロントの天井を瞬く間に崩壊させて、追い撃ちに弾道弾をたらふくジオフロント内に落とす。

頭上からの攻撃にダインスレイブのデジャヴを覚えたシンジは、スラスター運動で初号機ルプスの動きを止めないまま、ATフィールドも上に張って弾道弾を可能な限り避ける。

シンジに遅れて、アスカとトウジも弾道弾の雨に反応し、ATフィールドで耐え忍ぶ。戦場にいるエヴァは全て無傷だ。


輸送機「ジェットアローン改、投下」パラパラ


ジェットアローン改「」ズドン


ジェットアローン改「」ズシン


ジェットアローン改「」ポヨン


マヤ「ジェットアローン!? 数が多い!」


※ジェットアローン改の動力源は気にしないでください。


ジオフロント天井に空いた穴より、中隊規模のジェットアローン改が輸送機に運ばれてきた。

エヴァ三機を大きく包囲するように、各々は着地する。






シンジ(あとは、死ぬまで生き抜いて、最後まで……)





ジェットアローン改「ゾクブツ! ゾクブツ!」


シンジ「……!」ツインメイス


シンジは手近にいたジェットアローン改に向けて初号機ルプスを駆らせる。エヴァ三機に比べて、ジェットアローン改の動きは重い。

ジェットアローン改部隊はライフルやランチャー、ソード、ハンマーなどを装備しているが、初号機ルプスの俊敏な動きに照準やタイミングが合わない。砲火を掻い潜り、ツインメイスでコクピットを潰す。


ジェットアローン改「カエッテキテヨカッタ。 ツヨイコニアエテ ……」ドカーン


早くも一機撃墜したところで、横から別のジェットアローン改がハンマーを振るう。

しかし、謎原理でATフィールドを突破する火力を誇るハンマーも当たらなければ意味がない。

初号機ルプスは繰り出されたハンマーの柄を掴み、ジェットアローン改の腕ごともいでハンマーを奪い、それで相手を叩き飛ばす。


戦自隊員「し、白い悪魔……!!」


まさに鎧袖一触。遠くから見守っていた部隊も、初号機ルプスの活躍に恐れ戦く。





シンジ(居場所を……守り抜く!)





初号機ルプスに続き、弐号機と参号機も動き出した。ジェットアローン改の群れに襲いかかる。

弐号機はタクティカルアームズⅡを振り回して次々とジェットアローン改を両断し、参号機はロングライフルを放ちながら、隠し腕も使って巧みに近接戦をこなす。


ジェットアローン改「シャア!」グシャ


ジェットアローン改「アムロ!」バキバキ


シンジ「お前はどうだ! バルバトス!」


初号機ルプス「ウオオォォォッ!!」


ユイ(うわーん! またバルバトスって呼ばれたー!)


ジェットアローン改「ジオ、ナゼウゴカン! ウワァー!!」 ドカーン!


アスカ「やるじゃない、シンジ。うかうかしてられないわ!」タクティカルアームズⅡ


ジェットアローン改「ア、アカイスイセイ……!」メキャ


トウジ「チクショウ! ここまで来たら、ワイだってやってやる!!」鉄血ペンチ


ジェットアローン改「出してぇー!! ここから出してぇー!! 」ペチャンコ


――リリスの前


ゲンドウ「……」カツカツ


レイ「……」トコトコ


リツコ「お待ちしておりました」カチャ


LCLの海の側で、リツコは静かに銃をゲンドウに向けて構えた。


リツコ「ごめんなさい。あなたに代わり、 MAGIのプログラムを先ほど変えさせてもらいました」


ゲンドウ「……」


リツコ「娘から最後の頼み。母さん、一緒に死んでちょうだい」ポチッ


シーン……


リツコ「爆発しない!? 何故?」


ゲンドウ「赤木リツコ君。本当に……」カチャ



今度はゲンドウが銃を使う番だ。銃口をリツコにゆっくり向けて、引き金に置いた人差し指に力を入れる。


リツコ「嘘つき……」


パンパンパン


キール「忌むべき存在のエヴァ。またも我らの妨げとなるか……。やはり、毒は毒を以て征すべきだな」


――ジェットアローン改部隊を蹴散らすと、量産型エヴァが9体やって来ました。


輸送機に運ばれてきた量産型エヴァは背中から翼を生やして、ゆっくりとジオフロントへ降りていく。ふわりふわりと飛ぶ白い姿は、薄気味悪い顔さえなければ天使のようだ。


アスカ「エヴァシリーズ? 完成していたの?」


やがて翼を畳んで着地すると、シンジ達に対して量産型エヴァは横一列に並び、巨大な両刃剣を地面に突き刺して、名乗りを上げる。


量産型「「我ら、地球外縁軌道統制統合艦隊!!」」デデェーン


戦自隊員「ウチの戦車が踏まれたぁ!!」


戦自隊員「白い悪魔が増えたぞぉ!」


戦自隊員「もうやだ! おうち帰るぅ!」


戦自隊員「こんな戦場にいられるか! 俺は帰らせてもらう!」


戦自隊員「もうだめだぁ。おしまいだぁ」


戦自隊員「死ぬ! 皆、エヴァにやられて死ぬのよ! あはははははは!」


戦自隊員「メディーック!!」


戦自隊員「くっ…目にゴミが…」


戦自隊員「死兆星が見える……」


戦自隊員「野郎ぶっ殺してやらぁぁ!!」


戦自隊員「止せ! ジムじゃ無理だ!」


戦自隊員「おのれディケイドォォォォ!」


戦自隊員「ユグドラシル絶対許さねぇ!」


アスカ(また喋る奴……)


量産型「「面壁九年! 堅牢堅固!」」


参号機「……」バキュウーン


量産型「アダ!」ズガン


トウジ「撃ってええんやろな?」


シンジ「当たり前じゃん」


量産型「なんと…無作法な!」


トウジ「ウナギ頭に言われたくないわ!」





キール「……ダミープラグを間違えたか?」





量産型「この野蛮人に鉄の裁きを下す!」


量産型「「鉄拳制裁!!」」


量産型「鋒矢の陣! 哨戒!」


量産型「「一点突破!!」」


量産型エヴァは両刃剣を前に突き出し、全機で一斉に突進を仕掛ける。ATフィールドをスラスター代わりに応用してホバー移動をしている。


トウジ「こんなん的当てやないか」ズガガン


参号機はロングライフルのトリガーを引くが、弾丸は全て量産型エヴァのATフィールドで弾かれる。ATフィールドの中和が甘かった。


量産型「無駄!」ガキンガキン


トウジ「なっ! あ、センセ!」


真っ先にシンジは飛び出した。トウジの不意打ちで頭を損傷させた量産型エヴァに狙いをつける。


シンジ「へ…」 ツインメイス


量産型「ギャン!」コア、エントリープラグ粉砕


量産型エヴァの胸部装甲を陥没させる勢いでメイスを投合し、頭を跳び越え、空中で一回転しながら踵落としでエントリープラグを破壊し
た。


量産型「「カルタ様、我らの陣が!」」


量産型「おのれ!」


アスカ「うおおおぉぉぉ!!」


弐号機「ウオオォォォ!!」ブン!


陣を破られた量産型エヴァの動きが一瞬止まった。初号機ルプスに引き続いて量産型軍団に跳びかかった弐号機は、タクティカルアームズⅡで内一体を袈裟斬りにする。


量産型「グワッ!」ズシャン!


初号機ルプスと弐号機。それぞれの量産型エヴァが注意する方向がバラバラになり、突っ込む隙を見つけた参号機も敵に掴みかかる。


トウジ「おぅりゃああああ!!」


量産型「こいつ! クハッ!」ドシュウ!


量産型「何してるの!? 散開して各個撃破しなさい!」


量産型「「了解!」」


アスカ「こいつら、シンジよりも弱い!」


シンジ「アスカ、トウジ。コアとエントリープラグちゃんと潰して。嫌な予感がする」


――リリスの前


パンパンパン


パリィィン!


ゲンドウ「……」


リツコ「え?」


ゲンドウの横にATフィールドが展開され、三発の銃弾が防がれる。先ほどの発砲音は、レイを探しに来たミサトによるものだった。


リツコ「ミサト、どうして……」


ミサト「 リツコ、レイ、そこから離れなさ
い!」


ゲンドウ「……アダムは既に私と共にある。ユイと再び会うにはこれしかない。アダムとリリスの禁じられた融合だ」


ブルゥアアアアアアアアアアアア……!! ズシン……!


ミサト「 レイ、何ボサっとしてるの!?」


リツコ「ダメよ、ミサト! レイは司令の言いなりで……」


ゲンドウ「始めるぞ、レイ。ATフィールドを、心の壁を解き放て。欠けた心の補完。不要な身体を捨てて、全ての魂を今一つに。そしてユイの元へ行こう……」ズズズ


レイ「……」ボー


ゲンドウ「レイ?」


ロンギヌスノヤリナンカ、ツカッテンジャネェ!!
ウワァー!!


レイ「碇くんが呼んでる……」フワリ


レイはアダムとの融合を拒否すると、ゲンドウが自身の体内に埋め込んできた手をもぎ取り、リリスへと飛んでいく。


ゲンドウ「うっ! ま、待て! レイっ!!」


レイ「ごめんなさい。私はあなたじゃないも
の。 人形じゃないわ」


セメテ、レールダケデモ……!!
ダンザイノエクセキューション!!










リリス「オカエリー」


レイ「ただいま」


――ネルフ本部周辺


量産型エヴァ軍団はシンジたちに対して善戦を繰り広げているが、劣勢な事に変わりはなかった。錬度に差がありすぎて、一機、また一機と撃破されていく。


量産型「ぐぅ! 私は戦いたかった! 正々堂々と! うっ! 」


現在の初号機ルプスが相手にしているのはリーダー格の量産型エヴァだ。一万二千枚の特殊装甲で覆われているボディは、更にATフィールドで守られているにも関わらず、複数箇所に渡って凹みが出来ている。


量産型「そうでなければ私らしくない! 私はカルタ・イシューだ!」


ここまで懸命な立ち回りを見せたのは、ダミープラグ本体の意地故だった。


量産型「私は勝利するしかないの! 立場を失い、家の名前に傷をつけ……うぅっ!」


初号機ルプスはソードメイスで量産型エヴァの頭部を刺突した。頭は吹き飛ばされずに済むが、大きく損傷する。


量産型「こんな惨めな私はあいつが憧れていた私じゃないのよ! ああっ!」


量産型エヴァは初号機ルプスと近接戦の末、がら空きになった右脇をソードメイスで全力で殴られて地面に投げ飛ばされた。

量産型エヴァはスラスターを吹かして姿勢を制御し、両刃剣を軸にして軌道を調整しながら、初号機ルプスから一度距離を取ろうとする。


量産型「ここで…負ける訳には…いかない。あの人の思いを裏切るなど…こんなところで終わるなど! うっ!」


体勢を立て直す量産型エヴァに、初号機ルプスは恐ろしい速度で追従した。ソードメイスが左腕に刺さり、量産型エヴァは自ら左腕を捨てる。


シンジ「逃がす訳ないだろ」


量産型「うっ! ぐぅ! こんなのは違う…。私は恐れない!」


両者は果敢に互いの獲物で斬り結ぶ。両刃剣を片手で振り回すにも限度があるため、量産型エヴァは両刃剣をロンギヌスの槍に変化させて一矢報いようとする。しかし、寸手で刀身を初号機ルプスに掴まれて折られる。


シンジ「殺さないとアンタはまたサードインパクトを起こしに来るんだろ?」


量産型「私に屈辱は似合わない……」


ソードメイスで足を地面に固定された。更に右ストレートを顔面に食らった量産型エヴァは、殴られた勢いで大の字に地面へ倒れ込んだ。


シンジ「だから……いや、そうじゃなくても……」


初号機ルプスによって握られたロンギヌスの槍の切っ先が、無情にも量産型エヴァを真っ直ぐ見据える。


量産型「こんな……助…けて…。マクギリス……」


グシャリ



――量産型エヴァ、全滅




ゼーレ「全ての量産型エヴァのコアとエントリープラグが破壊されたが大丈夫なのかね?」


ゼーレ「S2機関とロンギヌスの槍が無事なら大丈夫だろう。多分」


ゼーレ「いや、無理だろ」


ゼーレ「ロンギヌスの槍も何故かオリジナルがその手に還った。しかし……」




初号機ルプス「……」コネコネ


初号機ルプス「……!」


――完成。ヴァルキュリア・バスターソード


シンジ「うん。ちょうどいい」


アスカ「そんなの何に使うのよ?」


トウジ「製作過程はあえてツッコまんで」




ゼーレ「オリジナル、コピーを纏めて一本の武器にされてしまった」


ゼーレ「武器の特性自体はさすがに残っているだろう。S2機関を臨界させればどうにかなる」


ゼーレ「やむを得ない。あとは初号機とリリス任せになるな」


キール「……人類補完計画は失敗か」


ゼーレ「やはりダメじゃないか」


青葉「ターミナルドグマより、正体不明の高エネルギー体が急速接近!」


日向「ATフィールドを確認! パターン青!」


マヤ「まさか、使徒?」


日向「いや、違う! 人間です!」








巨大レイ「……」ズズズ


アスカ「何よ、あれ……」


トウジ「巨大な綾波?」


シンジ「レイ?」


巨大レイ「……」


シンジ「綺麗だ……」


巨大レイ「え?」


アスカ「は?」


トウジ「えっ」


「「……」」


巨大レイ「……」ポカポカ


トウジ(あ、巨大綾波の頬が赤くなった)


巨大レイ「……碇くん、ロンギヌスの槍は?」


シンジ「使いやすくしたけど」


つ ヴァルキュリア・バスターソード


巨大レイ「そう」


アスカ「へ? ちょっと待って、何で当たり前かのように会話してるのよ!」


トウジ「せや! 絵面がおかしいやろ!」


巨大レイ「弐号機の人と参号機の人は黙ってて」ゴゴゴ


トウジ「アッハイ」


アスカ「い、威圧したって無駄なんだから! 巨大化してもダメ! シンジは渡さないわよ!」


初号機ルプスに抱き着く弐号機。


シンジ「それで、何で光の巨人になってるの?」


巨大レイ「碇くんが呼んでたから」


シンジ「え?」


弐号機「」ギロッ


トウジ(触らぬ惣流に祟りなし)ソー……


巨大レイ「リリスの魂が入った私の役目は、アダムと融合してサードインパクトを起こす事だった」


シンジ「……っ!」ヴァルキュリア・バスターソード


巨大レイ「まだ話は終わってないわ。もうサードインパクトを起こすつもりはないもの」


シンジ「そっか」


アスカ「シンジ、軽く受け流しすぎ!! 」


シンジ「俺はレイを信じるよ。敵に回ったら容赦できないけど」


巨大レイ「ありがとう、碇くん」


アスカ「え? あ……ぅぅ。……し、仕方ないわね! 」キョロキョロ


アダム「タスケテー」プラーン


シンジ「何それ」


巨大レイ「第一の使徒、アダム」


トウジ「ぶっ!?」


巨大レイ「碇司令は自身の身体にアダムを埋め込んで、サードインパクトを起こした後の世界で、亡くなったあなたのお母さんに会おうとしていたの」


シンジ「父さん……。落とし前つけに行ってくる」ヴァルキュリア・バスターソード


トウジ「待て待て待て待て! その武器はアカン! センセの親父さん、死んでしまうで!」


シンジ「俺たちの邪魔をする奴は全部潰す」


トウジ「アカン! 人相が悪魔や!」


巨大レイ「碇くんに父親殺しはさせなくなかった。だからアダムだけ奪ってきたわ」


アダム「エ? ボクシンジャウノ?」


シンジ「へー。じゃあ、こいつをやればいいんだ?」ヴァルキュリア・バスターソード


アスカ「やっちゃいなさい! シンジ!」


アダム「アベシ」チュドーン


トウジ「弱っ」


巨大レイ「あとはリリスとロンギヌスの槍をどうにかするだけね」



――ヴァルキュリア・バスターソードは宇宙の彼方へ飛んでいきました。ついでに、撃破した量産型エヴァのS2機関を破壊。



どちらのエンディングを見ますか?

はい ←
いいえ


ミサト「終局。それは始まりの後に必ず訪れるもの。私たちの願いは、破滅へと繋がるのか。私たちの希望は、死そのものなのか。それと
も、シンジのフラグブレイクが全てを持っていくのか。


次回、新世紀 鉄血のエヴァンゲリオン
『9と9が9を迎えし時』


シンちゃん、アスカと一緒に寝たって本当!? あ、ただの添い寝か……」


今回はここまで。次回もまた見てバエル。


四号機「カルタ。君は私にとって、手の届かない憧れのような存在だった……」


青葉「リリス、消滅していきます!」


冬月(碇……失敗したか)


日向「なんだこれ? 各地に展開している戦略自衛隊から次々に降伏してきました! どこも、『エヴァとはもう戦いたくないお』、『白い悪魔怖い』、『白い悪魔が増えた。助けて、お母さん』と言っています!」


マヤ「白い悪魔……? エヴァシリーズは戦自側が用意したんじゃ……」


青葉「何だよ、それ。虫が良すぎじゃねぇか」


冬月「一体、何が起きている……」








戦自指揮官「こらぁ!! 何を勝手に降伏している!! エヴァと戦え!! ネルフを潰せ!! そこ、自主的に撤退するなぁ!!」


戦自通信兵「指揮官殿! 司令本部からの連絡です!」


戦自指揮官「よこせ。もしもし……。は? 作戦中止ですか? しかし、ネルフはサードインパクトを企んで……え? 違う? 首謀者は碇ゲンドウと冬月コウゾウ二人だけ? あ、ゼーレもですか。はい、わかりました…」


戦自隊員「どうするんですか?」


戦自指揮官「……作戦中止。これより、碇ゲンドウと冬月コウゾウ二人の身柄拘束、捕虜の返還をネルフ本部に求める」


初号機ルプス「」ギロッ


戦自指揮官「ひ、ぴぃぃぃぃ!?」


戦自隊員「どうしま――いやああああああああああ!?」


戦自指揮官「交渉は穏便に済ませろ! じゃないと白い悪魔がこちらに向かってメイスを投げてくるぞ! 遠くにいても関係ない!」


戦自隊員「何バカな事を……って、衛星軌道上にいた使徒に投石でダメージを与えていたんですよね! やっべぇ!」








加持「ふぅー。これでネルフ本部は一安心ってところか。さて、追っ手が来る前にトンズラしますか」


※加持さん、なんやかんやで上手い事生きてました。




リリス「バイバイ」ポワァ……




シンジ「レイ」


レイ「碇くん、終わったわね」


シンジ「うん」


レイ「ねぇ、碇くん。次はどうすればいいと思う?」


シンジ「そんなの決まってるでしょ。帰ろう、俺たちの居場所へ」








アスカ「それは別にいいんだけどさぁ、なんでファーストがシンジと一緒に初号機のエントリープラグの中にいるのよぉぉぉぉ!!」


レイ「悪いかしら」←全裸


アスカ「ずるいずるいずるいずるいずるいぃぃ!! 身体押し付けんな!! シンジもにやけるなぁぁぁ!!」


シンジ「え? 俺ってにやけてる?」


レイ「そうは見えないわ」




トウジ「こんな時でも喧嘩するんかい……」



ゼーレ「まだ回収したS2機関は110個もある。エヴァはまた作ればいい」


ゼーレ「しかし、リリスは消滅し、ヴァルキュリア・バスターソードは宇宙の彼方へ旅に出てしまった」


ゼーレ「ロンギヌスの槍用意するの、もう嫌だよ。俺、人類補完計画やめるわ」


ゼーレ「ワシもやめる。肝心の碇も逮捕されたし、初号機は強いし」


ゼーレ「まだだ。まだ終わらんよ。人工使徒を作って対抗すればいいだろう。あの、ネーメジなんたらを」


ゼーレ「助けてぇ!! 自力で使徒を一から作ろうとしたら、暴走を始めて――ザー」


ゼーレ「本当に作ろうとしたのか。バカめ」


ゼーレ「なぁ、死海文書のページが追加されてんだけど」


ゼーレ「日本のネルフが名前を改めたそうだ。名はそう、ヴィレだったか。日本共々、完全に我々と敵対する事になったぞ」


キール「ヴィレの白い悪魔、エヴァンゲリオン初号機バルバトスルプスレクス。……名前長いな」


ゼーレ「ヴィレと我々、どちらにも所属していないエヴァも現れた。エヴァンゲリオン四号機バエルと、エヴァンゲリオンMark06キマリス・ヴィダール……。こいつらマジで何?」



四号機バエル「ガエリオォォ!!」ガキィン!


Mark06キマリス・ヴィダール(以下、Mark6キマール)「マクギリスゥゥゥ!!」ガガン!


コード4C「俺のところに来るなぁ!」


四号機バエル/Mark6キマール「「邪魔だぁ!!」」


コード4C「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
チュドーン


四号機バエル「お前では私に勝てんよ、ガエリオ!」


Mark6キマール「俺一人ではな! アイン、俺の身体をお前に貸すぞ!」


Type-E「ハイ、トクムサンサ! 」



――


ミサト「ふぅー、嫌になっちゃうわ。こうも始末書やら被害報告が多いと。って、戦自から攻めて来たのに、これどういう事よ!」


リツコ「戦自と政府だって今頃、同じ目に会っているわよ、きっと……」


ミサト「元気ないわね。やっぱり、碇司令が捕まったから?」


リツコ「まさか。もう愛想が尽きました」


ミサト「MAGIの自爆で無理心中を謀った癖に何を……」


リツコ「それは何度も謝るわ。だから忘れてちょうだい」


マヤ「先輩。そろそろエヴァのシミュレーション戦闘が始まります」


日向「モニターに映します」





シンジ「碇シンジ、エヴァ初号機バルバトスルプスレクス――」


レイ「綾波レイ、エヴァ零号機フラウロス――」


アスカ「惣流・アスカ・ラングレー、エヴァ弐号機セカンドリバイ――」


トウジ「鈴原トウジ、エヴァ参号機グシオンリベイクフルシティ――」


「「行くぞ/発進します/出撃するわ!!/行くでぇ!!」」





リツコ「……ガハッ!」


マヤ「せんぱああああああい!!」


青葉「皆、名前が長くなったなぁ」


日向「感慨深いですね……」


――葛城宅。レイも一緒に住む事になりました


アスカ「司令、初号機の中にいるシンジのママと面会させたら物凄く泣いてたわね」


レイ「全人類と自分の妻を天秤にかけた人だもの。碇司令の想いはそれほどのものだったわ」


ミサト「誉められたものじゃないけどねー。ヒック」


アスカ「えぇ……もうべろんべろんになるまで飲んだの? まだ夕食前じゃない!」


ミサト「うるしゃいなー。飲まなきゃやってらんないのよぉ! 仕事は増えてぇ? 碇司令は牢屋だしぃ? 副司令もいないしぃ? 私が代理になっちゃって。あ、ビールなくなった……。シンちゃーん」


レイ「碇くんは買い物に出てます」


ミサト「あり?」


アスカ「そもそも、シンジからビール制限くらってんじゃなかったの? また没収されるわよ」


ミサト「こういう日もある~。だからぁ~、今がチャンス~。みたいな?」ガブガ……


シンジ「ただいま」


ミサト「」ピシッ


アスカ「シンジ、お帰り!」


レイ「お帰りなさい、碇くん」


シンジ「ん? ミサト、何やってるの」


ミサト「ぅえ!? あ、えと……」


レイ「今日飲んだビールの本数を誤魔化す工作よ」


ミサト「レイィィィィィ!?」


シンジ「ふーん」


ミサト「シンジさん、どうか慈悲を!!」


アスカ「バカらしいったらありゃしない」


レイ「碇くん、私も料理手伝うわ」


シンジ「ありがとう」


アスカ「あぁ! ファーストばっかりずるい! 私も!」ダダダ


ミサト「あのー、シンジくーん? 聞こえてますかー?」


レイ「あなた、料理できるの?」


アスカ「私を誰だと思ってるの? このアスカ様にできない事はほとんどないわ!」


シンジ「アスカ、邪魔」


アスカ「」ピク


レイ「碇くん、ストレート過ぎるわ」


アスカ「ぅぅ……。私だってぇ……」ウルウル


シンジ「ごめん。言い過ぎた」ダキッ ナデナデ


アスカ「……グスン」


レイ「……」モヤモヤ


シンジ「じゃあ、俺が教えるから。アスカ、料理下手だし」


アスカ「……うん」


ミサト「シンジ……くん?」


シンジ「ビール没収」


ミサト「」


――就寝時間、シンジの部屋


シンジ「じゃあ、おやすみ」


アスカ「おやすみ~」


レイ「おやすみなさい」




アスカ「zzz」ギュー


シンジ「……」スヤー


レイ「zzz」ダキッ







シンジ(気づけばレイとアスカと一緒に寝るようになった。何でそうしてくるのかはわからないけど、今は、二人がとても大事だって思ってる)






旧劇ルート 完



――量産型エヴァのS2機関破壊の最中


シンジ「ん?」ゲシゲシ


(ナレーション、政宗一成)
その時、不思議な事が起こった。破壊したはずのS2機関が突如臨界を始め、世界は光に包まれたのだ。


――地球の衛星軌道上


改2号機「……」ゴゴゴ……


ミサト『2ダッシュはランデブー用意。8は高度不足のため、再突入の96秒間だけ援護可能。その間にケリをつけて』



自動迎撃システム「ダンマクウスイヨ! ナニヤッテンノ!」
ズガガガ! バシューン!



アスカ「うっ!」ドガン!


コード4A「コンニチハ」


オペ『続いて第二波。パターン青、厄介な連中だ』


オペ『接近中の物体、コード4Aと確認』


コード4A「ヤッタル」シャキン


改2号機「ウェイ!」ATフィールド


パリィィン! バキバキ


アスカ「アンチATフィールド!? こなくそっ!」


――なんか馬鹿デカイ十字架型の棺桶の中


シンジ(あれ? ここ、どこだ?)


しーん……


シンジ(何も見えない。何も聞こえない。何も感じない……)


ドンドン


シンジ(あ、でも身体は動かせるや。でも、ここ……バルバトスの中?)






マリ「ふんふん~♪」


アスカ「コネメガネ、いつまで歌ってるのよ!」


コード4A「ハッ!」シャキン


アスカ「うっとおしい!」ブゥン


コード4A「イタイ!」バキッ


8号機「ネライウツゼ!」バキューン!


コード4A「ギャン」チュドーン


コード4A「「クロコダイーン!!」」


アスカ「援護射撃、二秒遅い!」


マリ「そっちの位置、三秒早い!」


アスカ「臨機応変! 合わせなさい!」


マリ「仰せの通りに、お姫様!」バキューン


コード4A「アン」チュドーン


コード4A「ノン」ドカーン



シンジ(なんだか、バルバトスに身体を持ってかれた時より気持ち悪いな)ガタゴトガタゴト



コード4B「ショクシュコウゲキ!」ニョロニョロ


アスカ「ぐうぅぅぅぅ……!!」バチバチ!



シンジ(……今の、声?)



アスカ「何とかしなさいよ! バカシンジイィ!!」


シンジ「……アスカ?」


その時、十字架型のコンテナの上部に亀裂が入り、そこから一体の白い巨人が現れた。ツインメイスを持つ指は金色の鋭利な爪となり、背中にはテイルブレードがたなびくように動いている。


コード4B「ヘンナヤツガフエタゾ!」


アスカ「え……?」


初号機ルプスレクス「……」


アスカ「白い…エヴァ初号機…?」





シンジ「赤い地球と…宇宙?」






もう一つのエンディング。
『エヴァンゲリオン初号機バルバトスルプスレクス、別の世界へ暴れに行ってくるようです』




アスカ「ねぇ、シンジ! 起きてるの!?」


シンジ「アスカ、これって……」


コード4B「ショクシュコウセン!」ピカー!


シンジ「……っ!」


初号機ルプスレクスは左腕を失っている改2号機の胴体ををテイルブレードのワイヤーで巻いて、その場から一気に離れた。コード4Bは触手を展開しながら、逃げる二機を追いかける。


シンジ「アスカ、その弐号機……」ギューン


アスカ「その話は後! 今はあいつを倒さないと!」

コード4B「マテー」ニュルニュル ピカー


初号機ルプスレクス「オソイ!」スラスター回避


シンジ「使徒?」


アスカ「倒し方は使徒と一緒。コアブロックを狙って!」


シンジ「コアブロック……あの小さいやつか。アスカ、尻尾離すけど平気?」


アスカ「うん!」


初号機ルプスレクスは改2号機を後ろに投げると、コード4Bと真っ向に対峙した。放り投げられた改2号機は、ATフィールドのスラスターで姿勢制御に成功する。


コアブロック「オニサンコチラー」ガラガラ


シンジ「やたら動くな」


初号機ルプスレクスは触手の壁と光線を避けながら突っ込み、ツインメイスを投合して、触手の上を走っているコアブロックの逃げ道を潰した。

コアブロックがオロオロしている所を、テイルブレードで一気に突き刺す。


コアブロック「ア」グシャリ


コード4B「シマッタ! ホンタイガ! ウボァー!」チュドーン


シンジ「よわ」




――初号機ルプスレクス、改2号機、大気圏突入中


カヲル「お帰り、碇シンジくん。待っていたよ」


――???


トウジ「あー、完全に迷子になってもうたわ。土は赤いし、エヴァみたいな首なしは気色悪いし……」


3号機「……」ズシンズシン


トウジ「参号機は3号機になってるし、内部電源の表示が無限になってるし……どういう事なんやあああぁぁぁ!!」


3号機「うおおおぉぉぉん!!」


トウジ「そうか。お前も帰りたいんだな、ネルフに」






サイクロプスゲンドウ(以下、ゲンドウ)「初号機がヴィレによって奪取された。ネーメジスシリーズが陽動を開始した後、シンジを優先的に奪取しろ」


レイ「……」


ゲンドウ「レイ?」


レイ「了解しました」






レイ(何となく返事をしたものの、いまいち状況が把握できていない)


Mark09「ワタシノカレハ、パイロットー」ビュウゥン


レイ(Mark09って何? 零号機は? アダムスの器って? どうしてプラグスーツが黒いの?)


ウォォォォン!!


レイ「今のは、エヴァの叫び声?」




トウジ「泣くな、3号機!! お前も男やろ!!」


3号機「うおおおぉぉぉん!!」


トウジ「へ!? お前、女の子なんか!?」


3号機「……」コク


トウジ「えっとぉ……すまん」






レイ「……エヴァ参号機?」


――ヴンダー、艦橋


シンジ「……」棺桶ベッドに拘束中


シンジ(なんか色々検査された……)ガタゴト


サクラ「検体BMー03、拘引しました」


ミサト「了解。拘束を解いて」


サクラ「はい」ガチャガチャ


シンジ(やっと動ける……)ガバッ


ミサト「碇シンジ君……で良いのよね?」


リツコ「そうね。物理的情報ではコード第三の少年と完全に一致。ただ、全身の筋肉が……」


シンジ(ミサトとリツコ?)


ミサト「DSSチョーカーは?」


リツコ「すでに装着済みよ」


シンジ「二人とも、なんか老けた?」


ミサト「」ピクッ


リツコ「」ピクッ


サクラ(あっ……)


シンジ「……固まってどうしたの?」


リツコ「……」ピッピッ


――DSSチョーカー、アクティブ


リツコ「作動正常。パスワードは艦長専用に」


ミサト「了解」


シンジ「あれ? 怒ってる? てか、この首輪は……」


ミサト「面会終了。彼を隔離室へ」


シンジ「ミサト? 気を悪くしたなら謝るよ。ごめん」


ミサト(……シンジくんって、こんな感じだったっけ?)




――コード4Cが来ました。


ブー! ブー!


シンジ「警報?」


サクラ「移動は危険です。ここにいましょう。よっと……」


ミサト「各対空システム連動。初号機保護を最優先に――」


シンジ「バルバトスの保護?」


サクラ「……へ?」


――全艦に第一種戦闘配置発令


シンジ「ミサト、アスカが出てるんでしょ? 俺もバルバトスに乗らなくていいの?」


サクラ(……バルバトスって、何?)


ミサト(バルバトス……え?)


リツコ「あなたが初号機に乗る必要はありません」


サクラ(あ、バルバトスって初号機の事だったんだ……)


シンジ「必要がない?」


ミサト「シンジくん、あなたはもう……何もしないで」


シンジ「は?」


――ヴンダー初陣、カット。


――隔離室


シンジ「……」暇だから筋トレ中


サクラ「検体BMー03、仮称『碇シンジ』さん。副長からお話があるそうですよ」


シンジ「え?」








リツコ「初号機は現在、本艦の主機として使用中。ゆえにパイロットは不要です」


シンジ「へー」


リツコ「それと、あなたの深層シンクロテストの結果が出ました。シンクロ率は……」


シンジ「……急に黙ってどうしたの?」


リツコ「ひゃ、180パーセント……」ガクッ


サクラ「え……?」


ミサト「リツコ、しっかりしてちょうだい」


リツコ「だ、大丈夫よ。まだ行けるわ」


シンジ「顔色悪いけど」


リツコ「……エヴァに乗るなと言っても、衛星軌道上でコンテナから目覚めた際に一秒間も覚醒状態になった事実は看過できません。ゆえに、DSSチョーカーを装着させました」


シンジ「この首輪が?」


リツコ「私たちの保険。覚醒回避のための物理的安全装置。私たちの不信と、あなたへの罰の象徴です」


シンジ「ふーん」


シンジ(罰って何の事だ?)


ミサト「混乱するのも無理ないわ。少尉、彼に官姓名を」


サクラ「はい! えっと、今更ですが碇シンジさんの管理担当医官、鈴原サクラ少尉です。よろしくです」


シンジ「ん、よろしく。……サクラ?」


サクラ「お兄ちゃんがお世話になりました」


シンジ「もしかして、トウジの妹?」


サクラ「はい。ふふ……」


シンジ「トウジより大きくなってない?」


アスカ「あれから14年が経ってるって事よ」スタスタ


シンジ「あ、アスカ」


アスカ「ねぇ、隔離室に入りたいんだけど」


リツコ「会話はガラス越しでお願いします」


アスカ「ちっ」


アスカ「シンジ、幾つか質問するけど良いかしら」


シンジ「うん」


アスカ「アンタが初号機につけている名前は?」


シンジ「バルバトス。あ、でも尻尾生えたからバルバトスルプスレクス?」


リツコ「……」ビク


アスカ「バルバトスが白くなったのはいつから?」


シンジ「シンクロ率が400パーセント越えてから」


リツコ「……」ピクピク


アスカ「シンクロ率400パーセント越えると人じゃなくなるらしいけど、シンジはどうだった?」


シンジ「普通に平気だった」


リツコ「……」ピクピクピク


アスカ「アンタがバルバトスに乗ってよく使う武器は?」


シンジ「メイス」


リツコ「……グフッ」ガクッ


ミサト「リツコ、大丈夫!?」


アスカ「私のフルネームは?」


シンジ「惣流・アスカ・ラングレー」


ミサト「へ?」


アスカ「宇宙にいる前は何してた?」


シンジ「量産型エヴァのS2機関を潰してた」


アスカ「……今すぐ私を隔離室の中に入れなさい!! 早く!!」


ミサト「あっ、こら! 待ちなさい!」


プシュ ! ダダダッ


サクラ「式波大尉! 一体何を――」


アスカ「どけっ!!」


サクラ「アッハイ」ソソクサ


アスカ「シンジィ! ずっと会いたかったぁ!」ダキッ


シンジ「うおっ。……ずっと?」ナデナデ


アスカ「うん!」スリスリ


シンジ「左目は? 大丈夫?」


アスカ「こんなのどうって事ないわ」


シンジ「そうなんだ」


ミサト「えっと……シンジくん、細かい説明もらえるかしら? 」


シンジ「わかった」


――両者、互いに説明中


リツコ「な、なるほど。だから初号機の姿があんな……」フラフラ


ミサト「初号機のデータにバルバトスルプスレクスの名前が入ってた原因はこれね」


リツコ「そ、その名前は止めて!」


ミサト「……バルバトスルプスレクス」ボソッ


リツコ「……!」耳閉じ


ミサト「ごめんなさい」


リツコ「……そう言えば、初号機の戦闘データはまだ触れてなかったわね。話が本当ならあとで調べないと……」ブツブツ






シンジ「ニア・サードか……」


アスカ「本当に訳わかんないよね! 起こしたのは違うシンジなのに、DSSチョーカーなんてつけられて……」


シンジ「ケジメをつけろって事でしょ。俺は構わないよ。知らない自分も、一応自分だから」


アスカ「えっ。でも、それじゃ……」


シンジ「バルバトスに乗る以外にもやる事なんて見つかるよ。身体も動くんだし」


サクラ「やる事、ありませんよ」


シンジ「……は?」


サクラ「」ビク


アスカ「あ、ダメ! ヴィレにはシンジの事を良く思ってない奴がたくさんいるの!」


シンジ「何か面倒くさいな……」







マリ「ヤッホー、ワンコくん。葛城艦長に呼ばれてきたよん」


シンジ「誰?」


マリ「え」


マリ「私の事覚えてない? 学校の屋上とか、第十の使徒がやって来た時に会ったじゃない」


シンジ「知らないけど」


マリ「えっ。嘘?」


ミサト「嘘じゃないわ、きっと。試しに自己紹介してみて」


マリ「りょーかい。私は真希波・マリ・イラストリアス。よろしく、ワンコくん♪」


シンジ「…マキマキ?」


マリ「にゃ!?」


アスカ「ぷっ!?」


サクラ「へ!?」


ミサト「マキマキ……。これはとうとう話の信憑性も濃くなってきたわね……」


マリ「ワンコくんが、ワンコくんじゃない?」


アスカ「シンジに犬なんて似合わないわよ。むしろ、狼の王様かしら?」ギュー


ルプスレクス
↓和訳
狼の王
つまり……


リツコ「……グハッ!」


ミサト「リツコォォォ!!」


サクラ「お、狼……」


マリ「おぉ、あの姫がなんて大胆な。お二人とも熱々だねー」


アスカ「シンジは上げないんだから」ダキッ


シンジ「熱々って?」


ブー!ブー!ブー!


シンジ「また警報?」


受話器「プルルル、プルルル」


ミサト「もしもし、葛城です」ガチャ


日向『ヴンダー前方にエヴァを二体確認! Mark09と3号機です! 白旗を振りながら降伏信号を出しています!』


ミサト「何ですって!?」







――ヴンダー、艦橋


北上「3号機、Mark09、改2号機と8号機の誘導に従ってカタパルトに着艦。捕縛された状態でエントリープラグが射出されます」


コウジ「Mark09はともかく、3号機はとっくの昔に破棄されたって聞いたぞ?」


日向「初号機のダミープラグで使徒ごと殲滅された筈ですが……」


青葉「パイロット確認。綾波レイと……鈴原トウジ?」


リツコ「ヴィレが保有するエヴァの数が増えて……」


ミサト「エヴァ3号機のパイロットはアスカじゃなくて鈴原くん……」


リツコ「……あり得ないわ」


ミサト「残念だけど現実よ」





サクラ「お兄ちゃん!?」


トウジ「お前、ほんまにサクラか!」


サクラ「うん!」


トウジ「偉くべっぴんさんに育ったなぁ」


サクラ「えへへ……」





レイ「碇くん、久しぶり」ギュー


シンジ「うん。俺は最近会ったばかりだけど」


アスカ「グルル」ダキッ


レイ「……弐号機の人は何故唸り声を上げているの?」


シンジ「さぁ」


マリ「両手に花だねぇ~」


――ネルフ本部


冬月「まさか、Mark09もろとも裏切るとは……。今頃はこちら側の情報を吐いていると思うぞ」


ゲンドウ「大丈夫だ。問題ない」


冬月「早速フラグを立ておって……」


ゲンドウ「これはフラグではない。手はある」


そう言うと、ゲンドウは手元の端末を操作してモニターを映す。そこには赤いゴーグル型の頭部を持った迷彩色のエヴァがずらりと並んでいた。


冬月「量産型を用いてどうする。インフィニティのなり損ないがベースの簡易生産型だ。数で優れていても打撃力が足りない。普通にネーメジスシリーズを使った方が良いぞ」


※シンエヴァの予告に出てた迷彩色の量産型エヴァに関して、インフィニティのなり損ないが素材と言うのはこちらの独自設定です。


ゲンドウ「間違えた。こっちだ」ピッ




Mark06ヴィダール「……」ギュイーン


量産型エヴァ(以下、迷彩エヴァ) 「ナッ!?」
ドスッ


迷彩エヴァ「ヒッ!?」ズド


チュドーン!


5号機ジュリア「あなたの強さ、はったりではありませんでしたね」


Mark06ヴィダール「ありがとう」




冬月「何故、エヴァMark06がリリスから離れている?」


ゲンドウ「増えた」


冬月「は?」


ゲンドウ「昨日、プラネリアのように分離していた。映像もある」









カヲル「シンジくん、来ないな……」


――ある日の日常。時系列無視。


アスカ「……」スヤー


マリ「姫ー。そんな所で寝ると風邪引くよー……って、あり?」


アスカ「zzz」ギュー


シンジ人形「」


マリ「これってワンコくんの人形? 可愛いとこあるじゃん」


ポト


マリ「ん? 日記? ……オキマセンヨーニー」コソコソ


○月○日
シンジが居ない。辛い。だから、寂しさを紛らわすためにシンジそっくりの人形を用意した。
早くシンジに会いたいな。
今日はシンジの人形を抱いて寝る。


□月▲日
ヴィレは逃げてばっかりの毎日。シンジとバルバトスがいれば、ネーメジスシリーズなんて簡単に倒せるのにな。
寂しいから、私は今日もシンジの人形を抱いて寝る。


A月T日
山場は越えて、ヴィレの活動も安定していった。前よりも皆の心に余裕が生まれた気がする。だけど、シンジがいない一日はやっぱり辛い。
寂しいから、私は今日もシンジの人形を抱いて寝る。


N月B日
サードインパクトの事を思い出した。一から作り直した世界でシンジとイチャイチャするのを考えると、かなりワクワクした。だけど、私が好きなのは今のシンジだ。
寂しいから、私は今日もシンジの人形を抱いて寝る。


@月↑日
シンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジ(以下略)









マリ「……可愛さ通り越して狂気寸前だにゃ」


――ネルフ本部


飛行ユニットを装備した迷彩エヴァの軍団。その先頭にはカヲルが搭乗しているエヴァMark06ヴィダールと、5号機ジュリアの姿があった。


カヲル「シンジくんの父上も思いきった事を考える」


Mark06ヴィダール「……」


カヲル「僕には、君が何者なのかは見当がつかないよ。一つの器に三つ以上の魂が入っているなんて、普通は考えられない」


Mark06ヴィダール「……」


カヲル「そうだった。既に、リリンの手が加えられた後だったね。だけど安心して欲しい。君たちの願いが叶うまで、やられるつもりはないよ」


5号機ジュリア「いつまで無駄口を叩いているのですか。出撃命令は出ているのですよ」


カヲル「うん、わかっているよ。さて、行こうか」


――ヴンダー、隔離室
※シンジだけでなく、レイもここに放りこまれました。Mark09は御蔵入り。


シンジ「……」←農業に関する本を読んでる


レイ「……」←一緒に読んでる


サクラ「シンジさん、農業に興味あるんですか?」


シンジ「うん。農場やってみたいから」


サクラ「ほえー。意外です」


プツン


レイ「モニターがついたわ」


リツコ『シ、シンジくん。聞こえるかしら……』フルフル


シンジ「うん」


サクラ(何か満身創痍……)


リツコ『今から、初号機の戦闘データを使ったシミュレーションを他のパイロットに受けさせるのだけど……どういう戦い方してるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』


スミレ『え!? 何ですか、一体!?』


青葉『ついに発狂しちまったか……』


リツコ『衛星軌道上にいる使徒に地上からメイス投合とか、訳もわからず生まれたエイハブ・リアクターとか、もうイヤァァァ!!』ダダダ


北上『逃げた……』


ミサト『えー、副長に代わって私が話の続きをします。シンジくんとレイには、シミュレーションの観戦をお願いします。簡単に言えば戦闘評価の採点ね』


シンジ「別にいいけど、何で俺たち? 隔離室にいるのに」


ミサト『戦闘において、シンジくんが他のパイロットより一番ずば抜けているからです。手持ちぶさたにしておくのも申し訳ないので』


シンジ「そっか。わかった」





――模擬戦、開始前


改2号機「……」


アスカ「……」ソワソワソワ


マリ「姫ー? 貧乏ゆすりしてどしたー?」


アスカ「別に」


マリ「もしかして、ワンコくんと綾波レイの事?」


アスカ「……っ!」ドゴッ


マリ(操縦管を壊したっ!?)


※操縦管なくてもエヴァの操作にだいたい問題はない……はず。間違ってたらごめんなさい。


トウジ「あー、真希波。惣流相手にその話題は避けた方がええで。怖いから」


※トウジ、難なくヴィレの一員になりました。


マリ「それが無難かにゃ? というより、惣流って姫の事なんだよね、鈴原くん」


トウジ「おう。そう言えば、こっちだと式波なんやって?」


マリ「そだよー」


ミサト『それでは、シミュレーションを起動するわ。諸君の健闘を祈ります』


――戦闘開始


ゼルエルアイン「クランク二尉!」


ゼルエルアイン「ガエリオ特務三佐!」


ゼルエルアイン「また貴様か! 罪深き子供!」






アスカ「うげっ!」


マリ「……喋る使徒?」


トウジ「センセが苦戦した奴が三体!?」






ゼルエルアイン「ありがとうございます! ガエリオ特務三佐!」


ゼルエルアイン「これでクランク二尉の仇を討てます」


ゼルエルアイン「心から尊敬できる人に、人生で二人も出会えるなんて光栄です」


ゼルエルアイン「「このご恩、この命を以て、必ずやお返しします!!」」




「「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


――以下、戦闘シーンをダイジェストでお送りします。


・一回戦


マリ「ヘーイ、カモーン♪」


ゼルエルアイン「穢れた輩を一掃する!!」


マリ「あ、ちょ、速っ……!?」ザシュ



・二回戦


ゼルエルアイン「死んで贖ええぇぇぇ!!」


トウジ「くそっ! パワー負けしとる!!」




・三回戦


アスカ「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる――」


トウジ「使徒が惣流の怒りの捌け口にされとる!?」


ゼルエルアイン「「その思い上がり! この私たちが正す!」」


マリ「困ったねぇ。純粋に強すぎるにゃ……」
チュドーン


トウジ「真希波ー!!」


・四回戦


アスカ「うおおりゃあぁぁぁ!!」ブン


ゼルエルアイン「武器を投げるなんて、非常識な!!」


アスカ「お前が言うなぁぁぁ!!」


ゼルエルアイン「脇が甘い!」


アスカ「え? キャアッ!」ドカーン




・五回戦


改2号機「」チーン


トウジ「真希波、援護頼む!」ハルバート


マリ「合点!」


ゼルエルアイン「これが使徒の完全なる姿」


ゼルエルアイン「お前たち半端者とは違う」


ゼルエルアイン「サードインパクトを起こす完全なる力!」


トウジ「やってやる! 三体同時がなんだ!!」




・六回戦、ボーナスステージ
――初号機ルプスが援軍に来ました


アスカ「初号機…シンジ!?」


ミサト『いいえ。シンジくんの戦闘データを基にしたNPCよ』


アスカ「チッ」


初号機ルプス「ぶるぅあぁぁぁ!!」


ゼルエルアイン「「貴様は…クランク二尉を手に掛けた罪深き子供!!」」


・七回戦


マリ「いやー、今度は私が最後に残るのかー」
スタコラ


ゼルエルアイン「「クーデリア・藍那・バーンスタイン!!」」ザッザッ


マリ「人違いにゃ!!」


――十回戦までカット


・十回戦


ミサト『アスカ。この戦い、シンジくんも見ているわ』


アスカ「……えっ?」


スパァン……


ゼルエルアイン「な…何だ、今の反応は…!?」


マリ「お? 流れ変わった?」チュドーン


トウジ「相変わらずそっちはやられるんかい!!」


アスカ「負けてらんないのよぉ! アンタたちにぃ!!」


ゼルエルアイン「「この…化け物がぁ!!」」


アスカ「シンジが見てるんだからあああああぁぁぁぁ!!」








30分やった結果……2勝8敗
・勝てたのは、初号機ルプスが援軍に来た六回戦と、最後の十回戦のみ。


――ヴンダー、隔離室


サクラ「あー、お兄ちゃんまたやられてしもうたわー」


シンジ「あ、マキマキもやられた」


レイ「8号機の人、スラスター移動できないのね」


サクラ「え? スラスター移動って何ですか?」


シンジ「ATフィールドを使ってるんだよ。アスカの戦い方見ればよくわかる」


サクラ「あ、本当だ。飛んでます」


チュドーン


サクラ「あ、やられた」


ブルゥアアア!!


サクラ「へ!? 何か来ました!?」


レイ「バルバトスルプス……この戦い方、碇くん?」


シンジ「うん。俺だね」


シンジガミテルンダカラアアア!!


シンジ「え? 俺?」


レイ「弐号機の人、急に強くなったわ」


シンジ「すごいな、アスカ。俺でもてこずった奴を一人で全部片付けた」


サクラ「恋の…力…?」


――ヴンダー、艦橋


日向「模擬戦の相手、何だか第十の使徒に似てますね」


青葉「喋りもしなければ三体もいないけどな」


北上「クランクニークランクニーうるさいし」


ミサト(これが違うシンジくんたちが戦っていた相手……)


コウジ「エヴァって、あんなに動くものだったか?」


スミレ「8号機がよく最初にやられてますね」


ヒデキ「結局、バルバトスって何ですか?」


リツコ「……グハッ!」


青葉「その名前は禁句だ!」


ヒデキ「す、すみませんでした!」








ブー! ブー!


日向「ネルフのエヴァと思われる機体がヴンダーに向けて接近中、数は50!」


リツコ「この数……まさか量産タイプ?」


ミサト「全艦、第一種戦闘配置! 初号機保護を最優先! こちらもエヴァを出撃させて!」


迷彩エヴァ「ワーイ、ワーイ」ヒョーイ


ドカーン! ズドドド!


迷彩エヴァ「マツリノバショハココカ?」


迷彩エヴァ「イタイ!」ズドン


3号機「うおぉぉぉ!!」ロングライフル×4


迷彩エヴァ「「ギャー!」」ドカーン!


トウジ「またエヴァシリーズか! 前より弱くて格好良くなってるけど!」バキューン


マリ「ヒュー! 3号機の四挺持ちか。かっこいいねー」


アスカ「コネメガネは手動かせぇ!!」


マリ「はいはーい。狙い撃つぜ!」バンバン!


迷彩エヴァ「「オノーレー!」」チュドーン


アスカ「ん……あの機体……」


Mark06ヴィダール「……」


カヲル「5号機が上手くやってくれるまで、僕が相手になるよ」



――ヴンダー、隔離室


ズドォォン……


サクラ「避難の準備ができました! シンジさん、レイさん、こっちへ!」


シンジ「……」スタスタ ピトッ


レイ「碇くん?」


シンジ「……背中がざわざわする」


サクラ「シンジさん、どうしたんですか!」


シンジ「……っ! サクラ、走れ!」


サクラ「え――」


ドガアァァァン!


サクラ「キャア!」


レイ「うっ……!」


シンジたちが隔離室から避難している最中、通路の壁に穴が空いた。穴はちょうど、サクラからシンジとレイの二人を隔たる位置に出来上がり、そこから緑色の巨人が中を覗いてくる。


5号機ジュリア「目標発見。これより捕獲に移ります」催眠ガス


北上「隔離室通路の外壁部に損傷! BM-03と BM-00が奪取されました!」


※BM-00=綾波レイ、です。


ミサト「アスカ、今の聞いた!?」




アスカ「聞いた!! シンジを返せぇ!!」


改2号機「ガルル!」


5号機ジュリア「何ですかあなたは!?」蛇腹剣


アスカ「ついでにファーストもぉ!!」ガキン!


5号機ジュリアは左腕の蛇腹剣を連結させた状態で、改2号機のプログレッシブナイフを防いだ。


カヲル「すまない、5号機。2号機を抑え切れなかったよ」


Mark06ヴィダール「フン!」バキッ


アスカ「くぅっ!?」ドガン


改2号機は横からMark06ヴィダールの飛び蹴りを食らい、身を大きくよろめかせた。この隙にMark06ヴィダールと5号機ジュリアは改2号機から距離を取り、ヴンダーから離脱する準備を整える。


カヲル「さて、撤収だ」


マリ「待ちな!」バキューン


8号機はハンドガンを連射しながら二機に肉薄するが、Mark06ヴィダールは弾丸をすべてバーストサーベルで弾き飛ばす。


アスカ「逃がすな! コネメガネ!」


マリ「挨拶ぐらいしてけ、おらー!!」バンバン


8号機が到着する寸前、二機は瞬く間にヴンダーから飛び去った。こうなってしまってはほとんど無意味だと分かりつつも、マリはハンドガンを撃ち尽くすしかなかった。


――ネルフに用意されたシンジの広い部屋


シンジ「……あれ?」ガバッ


レイ「zzz」ギュー


シンジ(ヴンダーじゃない。あの緑のバルバトスに連れていかれたまま……)


???「ようやく起きましたか、碇シンジ」


シンジ(……金髪のレイ?)


シンジ「アンタ、誰?」


???「私はアヤナミタイプの初期ロットの8人目。エヴァンゲリオン5号機レギンレイズジュリアの暫定パイロットです。ジュリアとでも呼んでください」


シンジ「あの緑のバルバトスの奴か……」


ジュリア「バルバトス? まぁ良いです。本当ならすぐにでもエヴァ第13号機の元へ案内したいのですが、その女があなたにべったりくっついてどうしようもないのでまだ待ちます。早く彼女を起こしてください」


シンジ「え?」


レイ「zzz」ギュー


シンジ「……ねぇ、二度寝していい?」


ジュリア「は? 何バカな事を言っているんですか」


シンジ「レイの寝顔が可愛いから」


ジュリア「それって、理由になっているのでしょうか?」


レイ「おはよう、碇くん。ここは?」


シンジ「ネルフだってさ」


ジュリア「では行きますよ。時間を掛けすぎました」


レイ「あなたは誰?」


ジュリア「ジュリアです。アヤナミ・レイ」


レイ「私の名前を知ってる……?」


ジュリア「当たり前です。私の後についてきてください」


――ネルフ本部


レイ「ネルフ本部。随分荒れ果ててしまってるわね」


シンジ「うん。人もいない。14年経つとこんなに変わるのか……」


~♪ ~♪


レイ「ピアノ?」





カヲル「……」~♪ ~♪







シンジ「ジュリア」


ジュリア「何でしょうか」


シンジ「なんでカヲルがいるの?」


カヲル「……!」


レイ(曲が止んだ……)




ジュリア「彼を知っているのですか?」


シンジ「うん。というより、アイツ使徒」


ジュリア「……なっ!?」


カヲル「へぇ、驚いたな……」


シンジ「ねぇ、やらなくていいの?」


ジュリア「……今はダメです。それより、先を急ぎますよ!」


――13号機が入っている箱の前


シンジ「バルバトス?」


ジュリア「またその名前ですか……」


カツカツ……


ゲンドウ「バルバトスではない。エヴァだ」


レイ「碇司令……」


ゲンドウ「エヴァンゲリオン第13号機。お前とそのパイロットの機体だ」


シンジ「俺とレイ?」


ゲンドウ「違う」


シンジ「ん? じゃあ、ジュリア?」


ジュリア「碇司令! そんな話は聞いていません!」


ゲンドウ「だから違う。お前たちの後ろにいる少年だ」


カヲル「ハハハ……」


シンジ「いや、でもコイツ使徒」


ゲンドウ「」ビクッ


ジュリア「そうだった。碇司令、何故ネルフに使徒を招き入れているのですか!!」


ゲンドウ「……と、時が来たらその少年とエヴァに乗れ。話は終わりだ」スタスタ


ジュリア「あ、私の質問に答えてください! 逃がしはしない!!」スタスタ



レイ「ねぇ、どうしてあなたがここにいるの?」


カヲル「その口振りだと、君も僕の正体を知っているようだね」


レイ「えぇ」


シンジ「悠長にしてるけど、フォースインパクトとか起こすんじゃないの?」


カヲル「少しだけ目的が変わってね、碇シンジくん。君を幸せにするって決めたんだ」


シンジ「は?」







ジュリア「はぁ…はぁ…。くっ! どこに消えたんですか、碇司令……!」トテテ


冬月「む? ジュリアか」


ジュリア「冬月副司令! 碇司令を見かけませんでしたか!」


冬月「いや、見ていないな」


ジュリア「そうでしたか。失礼しました!」ダダダ


冬月「……行ったぞ、碇」ボソッ


ゲンドウ「ならばよし」


冬月「何が良しだ。第三の少年、ジュリア、アヤナミ・レイ、この三人にゼーレの少年の正体が何故かバレてしまったぞ」


ゲンドウ「シナリオの修正をするぞ」


冬月「こら、加速するな。アヤナミが裏切った理由も聞いていないのだぞ」


ゲンドウ「……ジュリアに一任する」


――ピアノがある広場


カヲル「うん。その調子だよ」


ピアノ「オールフェーンズ♪」


シンジ「へー。こんなに綺麗な音が出るんだ」


ピアノ「ナーミダー♪」


レイ「……楽しい」


ピアノ「アイハーカーナシミ♪」


ここからすぐ逃げ出すのは無謀であり、更にやる事が無さすぎたので、レイとシンジはカヲルにピアノを教えてもらっています。まさかの三人で連弾。


ピアノ「ブル~ス♪」


カヲル「いいよ、いいよ。君たちとの音」






ゲンドウ「そうだ。ダブルエントリーシステムをトリプルエントリーシステムに――」


冬月「却下」



――夕暮れ


シンジ「ありがとう。なんだか楽しかった」


レイ「使徒とも仲良くできるのね。初めて知ったわ」


カヲル「また一緒に弾こう。いつでも来てよ、碇シンジくん、綾波レイ」バイバイ





カヲル(今でもシンジくんは幸せそうだな。はてさて、僕のお節介は要るかどうか……)


――次の日、ピアノがある広場


シンジ「……」


ピアノ「ソノタメニシーネルナニカヲ♪」


レイ「……」


ピアノ「コーノジダイニ♪」


カヲル「シンジくん、レイ。今日は早いね」


ピアノ「タタキツケテヤーレ♪」


カヲル「僕の知らない曲かぁ……」





ジュリア「ここにいましたか、アヤナミ・レイ」スタスタ


レイ「5号機の人、私に何か用?」


ジュリア「二人だけで話がしたいです」


レイ「……碇くん、少し席を外すわ」


シンジ「うん。気を付けてね」


――???


ジュリア「あなたに問います。何故、ネルフを裏切り、ヴィレの軍門に降ったのですか?」


レイ「裏切る?」


ジュリア「ええ」


レイ「……碇くんがいたから」


ジュリア「っ! そんな私情で! 」


レイ「いえ、それだけじゃない。碇司令は、全てを捨てて碇くんのお母さんに会おうとしている。その人の命令には従えない。私は人形じゃないもの」


ジュリア「全てを捨てる? あなたは一体何を言っているのですか! 碇司令はそんな事を……」


レイ「いずれ分かるわ」


ジュリア「……私は認めません。あなたが述べる言葉に大義の欠片もない!!」


レイ「大義……人が踏むべき最高の道義。では、あなたの大義は?」


ジュリア「決まっています。私は碇司令の剣。人類を救う補完計画を邪魔する者には何人たりとも容赦しない!!」


レイ「信じているのね、碇司令を」


ジュリア「私はあなたとは違う!」


レイ「ええ、違うわ。だって、私はあなたじゃないもの」










ジュリア(わからない。何故、碇司令は私にではなくアヤナミ・レイにアダムスの器を与えたのか……)






――ピアノがある広場


カヲル「シンジくん、ネルフ本部の上にあった筈の第三新東京市が気にならないかい?」


ピアノ「ウィアー、サイーゴノ♪」


シンジ「そう言えば、ジオフロントの天井がなくなってるね」


ピアノ「サバーイバー♪」


カヲル「そこには、君が14年眠っている間に起こった悲劇が残されている」


ピアノ「チギレタークモニ♪」


シンジ「サードインパクト」


ピアノ「アコガレーテター♪」


カヲル「そう。どうなったか知りたいかい?」


ピアノ「コドモノーコロー♪」


シンジ「大体はミサトたちから聞いたよ。俺の知らない俺が、俺の知らないレイを助けようとしたのがきっかけでしょ?」


ピアノ「ラーラー♪」


カヲル「動揺や困惑が見られない。君の心の強さは好意に値するよ」


ピアノ「ラーラーララー♪」


シンジ「でも、けじめはつけたいって思ってる」


カヲル「じゃあ……」


シンジ「連れてってくれる? その場所に」


――サードインパクト爆心地(デカイ月が見える場所)


シンジとカヲルを待っているのもあれだったので、四人全員で行く事にしました。


レイ「……キャッ!」ズルッ


ガシッ


シンジ「レイ、大丈夫?」


レイ「えぇ」


シンジ「無理ならすぐに言って」


レイ「わかったわ」


ジュリア「……」


カヲル「君もついてくるのかい?」


ジュリア「転落死などという理由でエヴァ第13号機のパイロットを失う訳にはいきませんから。ところで、あなたが使徒だというのは本当のようですね。ここは有害な空気が充満しているのに、あなたは防護服を着ていない」


カヲル「確信を得たら、君はどうする?」


ジュリア「殲滅しろとの命令は出ていません。命令が出たなら殲滅します」


カヲル「そうかい」


――長い階段を降りた先


カヲル「もうすぐ雲が切れる。君の見たい真実が見えるよ」


レイ「……これは?」


カヲル「シンジくんが初号機と同化している間に起こったサードインパクトの結果だよ」


シンジ「……」


カヲル「この星の大量絶滅は珍しい事じゃない。むしろ、進化を促す面もある」


ジュリア(淡々と良く喋る。しかし、使徒なら何故ヒトの姿なんか……)


カヲル「一度覚醒し、ガフの扉を開いた初号機はサードインパクトのトリガーとなった。リリンの言うニアサードインパクト。全てのきっかけはシンジくんなんだよ」


レイ(エヴァのような赤い巨人……。私が知ってるサードインパクトと違う?)


シンジ「……そっか」


カヲル「ただ、償えない罪はない。希望はまだ残っているよ。どんな時もね」


――???


迷彩エヴァ「……」キョロキョロ


しーん……


迷彩エヴァ「ヨシ、イナイナ……」スタスタ


迷彩エヴァ(ついにこの日が来た。私――いや、俺が見つけた真理……)


Mark04だったもの「……」チーン


迷彩エヴァ(この世界で最高の力の象徴。全ての力を束ねる存在。アグニカ・カイエル……真理を)



――ある日の日常。時系列無視。
(BGM、愛を○り戻せ!!)

西暦2015年。

世界はサードインパクトの炎に包まれた。

海は赤くなり、大地も赤くなり……

あらゆる生命体が死滅したかと見えた……。

だが! 人類は死滅していなかった!



4号機辟邪「……」ガシンガシン


ケンスケ「……」


4号機辟邪「……」ガシンガシン


ケンスケ「……いや、確かにエヴァ乗りたいって言ってたけどさ……」



十数年の歴史を刻み受け継がれてきた、恐るべき決戦兵器があった。

その名を、エヴァンゲリオン!

天空に連なる十三の星の下、フォースインパクトを巡って悲劇は繰り返される。



赤い大地「」


赤い十字架「」


インフィニティのなり損ない「」


4号機辟邪「スゴーイ!」←内部電源に限りはない


ケンスケ「一体どこの誰が世紀末な世界でもエヴァに乗りたいなんて言うんだあああああああああ!!」


4号機辟邪「ターノシー!」


ケンスケ「楽しくねーよ! 楽しめねーよ! シミュレーションじゃなく本物のエヴァに乗れて嬉しいはずのに嬉しくないよ!! だってどう見たって人類滅亡した後の景色だもん、これ!」


4号機辟邪「エー? ソウナノー?」


ケンスケ「見れば分かるだろ!? てか、何でエヴァと会話できてるんだ? 夢じゃなくて現実だし……誰かー! 俺を助けてー! 鈴原ー! 碇ー! 碇さーん! 碇隊長ー!」


しーん……


ケンスケ「俺が悪かったから! エヴァはねだる物じゃないって身に染みたから! だから、助けてくれー!」


しーん……


ケンスケ「ちくしょー! もう良いよ! 俺一人でも生き延びてやる!」


ズドドド……


ケンスケ「地響き? レーダーにも反応。何が来る?」


4号機辟邪「ナンダロー?」


トライデント「「ヤッホー」」ドドドド


ケンスケ「あれは、戦略自衛隊の陸上軽巡洋艦トライデント!? え、もしかして人類生きてる?」


7号機ランドマン・ロディ「コンニチハ」


4号機辟邪「アー! ワタシトオナジー!」


ケンスケ「何かオレンジ色のエヴァも来た!」


ケンスケ(あれ? エヴァはネルフの物だよな? 何でネルフと戦自が一緒に?)


トライデント1「未確認機へ告ぐ。我々は戦略自衛隊所属機械化混成大隊所属の第08小隊だ。そちらの所属と名前を述べよ」


7号機ランドマン・ロディ「ワタシ、ランドマンロディ」


4号機辟邪「ヘキジャダヨ」


ケンスケ「へ? えっと、第三新東京市立第壱中学校2-A、相田ケンスケと言います……」


トライデント1「……」


ケンスケ(だんまり?)


トライデント1「バカを言うな」カチャ


ケンスケ「ああ、ちょっ、主砲向けないでください!! てか、こっちにはATフィールドが――」


トライデント1「これはAA弾だ。そんなものは通用しない」


ケンスケ「嘘!? 何それ!? あの、嘘は言ってないんです。本当なんです」土下座


4号機辟邪「ドゲザー」


トライデント1「……霧島、お前はどう見る?」


7号機ランドマン・ロディ「アタマアゲテヨ」


マナ「……エヴァが土下座するのは初めて見ました」


トライデント1「違う。そうじゃない。いや、ネルフのエヴァなら土下座なんてしないな、うん。なら、本当の事を言っているのか。……そんなバカな」


オペ子『パターン青、確認! ネーメジスシリーズです! 現在、そちらへ向けて急速接近中!』


トライデント2「隊長、ネーメジスシリーズの定期便ですよ! いつものあれを!」


トライデント1「ああ! 総員、退き撃ちだ! 敵のATフィールドの中和役は7号機、俺たち二人は支援射撃!」


マナ「こちらのエヴァの方は?」


トライデント1「無理にでも同行してもらう。もしもの時は7号機で撃破しろ」


マナ「了解」


ケンスケ「あの、一体何が始まるんです?」


トライデント2「大惨事大戦だ!」


トライデント1「違う! 合ってるけど違う!
使徒の親戚との戦闘だ!!」


ケンスケ「使徒の……親戚?」


コード4A「「オトドケモノデース」」フヨフヨ


ケンスケ「思ってたのと違う!?」


トライデント1「全機、後ろに向かって前進!!」


「「了解!」」


コード4A「「オブツハショウドクダー!!」」


ケンスケ「ヤバっ! 逃げないと」


4号機辟邪「マッテヨー」ケンプファー式滑空移動法


トライデント1「……その動きは何だ!?」


マナ「ATフィールドのスラスター?」


※シンジとのシミュレーション戦闘を繰り返し受けていた際、気がつけばケンスケもATフィールドでスラスター移動できるようになりました。代償として、初号機のメイスがトラウマになりました。

しかし、つい最近までは、トラウマになってもエヴァの操縦シミュレーションを受けていました。これは全てケンスケの、エヴァに対する執念のおかげです。


ケンスケ「リアスカートにライフルがマウントしてある。よし!」バヨネットライフル


パンパン


コード4A「ギャン!」チュドーン


ケンスケ「しょ、初号機と碇よりも弱い!?」


――この後ケンスケたちは無事に、襲来してきたネーメジスシリーズを殲滅する事ができた。


冬月「第三の少年。将棋は打てるかね」


シンジ「無理だけど」


冬月「そうか。なら、将棋崩しなら楽しめるか?」


――ルール説明中


シンジ「それならできると思う」


冬月「では、始めるか」


パチッ
パチッ


冬月「私も臆病でね。口実がないと君と話す機会を持てない。君はお母さんの事を覚えているかね?」


シンジ「うん。バルバトスの中に入ってた」


冬月「バルバトス?」


シンジ「初号機だよ」


冬月「ッ!?」ドシャン


シンジ「山、崩れたけど」


冬月「ユイ君はコアへのダイレクトエントリーを、自ら被験者となり試みた。その結果、ユイ君はここで消え、彼女の情報だけが綾波シリーズに残された。君が知っている綾波レイはユイ君の複製体の一つだ」


シンジ「へー」


冬月「……反応がいまいち薄いな」


シンジ「母さん、レイと似てたから」


冬月「ユイ君と初号機の中で会ったのかね?」


シンジ「うん」


冬月「そうか……」


シンジ「父さん、母さんに会うつもりなんでしょ?」


冬月「底が知れぬな……。その通り、碇は自分の願いを叶えるためにあらゆる犠牲を払っている。自分の魂もだ。君には、少し真実を伝えたかった。父親の事も」


シンジ「うん。ありがとう」


――ヴンダー、艦橋


ミサト「アスカの調子は?」


リツコ「戦闘には支障をきたさないレベルだけど、あまり良いとは言えないわ。今回の作戦が成功すれば問題はなくなると思うけど」


ミサト「そう」


『聞け、リリンの諸君! 今、深い眠りからマクギリス・ファリドの名の元に、 エヴァンゲリオンMark04バエルが甦った!』


リツコ「これは……」


ミサト「発信源は!?」


青葉「それが、あらゆる帯域を使って放送されています」


日向「現存する通信衛星に干渉を確認」


北上「映像をキャッチしました!」


ミサト「スクリーンに回して。発信源の特定も頼むわ」


――シンジの広い部屋


カヲル「さて、エヴァ第13号機に乗る時が来たけど……」


シンジ「俺は乗れないよ。首輪が爆発するし」



レイ「それに碇司令の思惑通りに動くつもりはないわ」


カヲル「うん。君たちなら、そう言うと思ったよ」


受話器「プルルル、プルルル」


ガチャ


レイ「はい、もしもし」


ジュリア『こちらジュリア。そちらは何やっているんですか!早く第13号機に乗り込んでください! 』


レイ「それは無理な話よ。碇くんが死んじゃうから」


ジュリア『死ぬ? DSSチョーカーの事ですか? ああもう、渚カヲルに代わってください!』


レイ「渚くん、5号機の人から」


カヲル「はい、もしもし。渚です。お電話代わりました」


ジュリア『あなた、碇シンジのDSSチョーカーを外す手筈が出来ているとこの前言いましたよね? あれは嘘だったんですか!?』


カヲル「嘘じゃないよ。ただ、エヴァに乗るつもりはないと言った以上、僕はその意志を尊重するだけさ」


ジュリア『それだと意味がありません!! できなくても根性で説得してください! さもないと、5号機で無理やり乗せますから!』ガチャン


受話器「ブー、ブー」


シンジ「ねぇカヲル。ジュリアがどうしたの?」


カヲル「参ったね。彼女、相当頭に来ているようだ。駄々をこねていると5号機で無理やり第13号機に乗せてくるらしい」


シンジ「えぇ…何それ…」


受話器「プルルル、プルルル」


カヲル「またか」ガチャ


ジュリア『今すぐそちらのモニターとラジオをつけてください! 大変な事態になりました!』


カヲル「え?」



Mark04バエル『聞け、リリンの諸君! 今、深い眠りからマクギリス・ファリドの名の元に、 エヴァンゲリオンMark04バエルが甦った!』


ネーメジスシリーズ(以下、グレイズエヴァ)「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」


グレイズエヴァ「やったぞ皆! 作戦は成功だ! 我々の勝利だ!」



シンジ「……チョコ?」



Mark04バエル『リリンを名乗る身なら、このエヴァがどのような意味を持つかは理解できよう! リリンにおいて、バエルを操る者こそが唯一絶対の力を持ち、その頂点に立つ! 席次も思想も関係なく、従わなければならないのだ! アグニカ・カイエルの魂に!』



冬月「碇、これもシナリオの内か?」


ゲンドウ「これは想定外だ」


冬月「む。Mark06が動き出したぞ」


ゲンドウ「何…だと…?」



Mark06ヴィダール『私の名はガエリオ・ボードウィン! アダムスの器の一員、ネルフのエヴァ。ガエリオ・ボードウィンだ!』



ゲンドウ「」


冬月「」



Mark06ヴィダール『ガエリオ・ボードウィンはここに宣言する。逆賊マクギリス・ファリドを、討つと』





Mark04バエル「碇ゲンドウの差し金か。良いだろう、受けて立つ」





冬月「おい、勝手に宣戦されたぞ」


ゲンドウ「……」ガタガタ


――ヴンダー、艦橋


スミレ「ボードウィンって最近、耳にしたような……」


ヒデキ「最近って言うより、この前のシミュレーションだろ」


リツコ「コヒュー、コヒュー」


北上「副長!?」


青葉「エヴァの変な名前を聞きすぎて過呼吸になったか……」


ミサト「リツコ、落ち着いて」


リツコ「……ふぅ、死ぬかと思ったわ」


ミサト「それにしてもさっきの放送……ネルフの内部分裂?」


リツコ「現時点の主なネルフ関係者は碇ゲンドウと冬月コウゾウの二人のみ。本来なら、分裂しようがない――」



グレイズエヴァ『ついに我々は立ち上がった。 革命の時が来たのだ、同志たちよ! 新しい風を起こし、ネルフとゼーレに蔓延した腐敗を吹き飛ばす! 我々一人一人の力でこの欺瞞に満ちた世界をフォースインパクトで変革する時が来たのだ!』



リツコ「……」


ミサト「こっちも狙いはフォースインパクト、か……」


リツコ「エヴァが…演説…」フラフラ


グレイズエヴァ『碇ゲンドウはエヴァ初号機ののコアの中に宿った妻である碇ユイに会うために、地球に住む全ての生命を犠牲にしようとしているのが我々の内偵により明らかになった』


レイ「碇司令、この世界でもやっぱり変わらないのね」



グレイズエヴァ『ニアサードインパクトの一件以降、覚醒した初号機がネルフの制御下から外れたのを理由に、ゼーレはネルフ関係者を幽閉。人類補完計画と称しながら、初号機を利用して自らサードインパクトを起こしたのだ! 辛うじて食い止める事に成功したがその結果、地球上のほとんどの生物は死滅してしまい、進化に失敗したインフィニティのなり損ないが溢れる事になった!』


※この辺は作者の独自解釈です。


グレイズエヴァ『ネルフとゼーレは今度こそ野望を果たさんとフォースインパクトを発動しようとしている。しかし、これは我々にとって好機になる。ロンギヌスの槍とカシウスの槍、エヴァンゲリオン第13号機とそのパイロットである碇シンジと渚カヲル。これらの要素を揃えれば、失われた世界をフォースインパクトの発動で取り戻す事ができるのだ! 共に立ち上がろうではないか! 同志よ!』


※気をつけてください。作者の独自解釈が入っています。作者の独自解釈が入っています


グレイズエヴァ「「バーエール! バーエール! バーエール!」」


グレイズエヴァ『では、准将。最後に一言』


Mark04バエル『アグニカは実現しようとしていた。人が生まれや育ちに関係なく等しく競い合い、望むべきものを手に入れる世界を。素晴らしいとは思わないか?』


グレイズエヴァ「「素晴らしいです!!」」




ヒデキ「結局、アグニカ・カイエルって誰なんだ?」


リツコ「……ゴファ!」


ヒデキ「この名前も禁句なんですか!?」


――


ジュリア『既に旧第三新東京市は革命軍によって包囲されつつあります! 急いでください!』


カヲル「うん、わかったよ」


シンジ「もう敵がいるの?」


カヲル「そう。やがてここも戦火に見舞われるだろう。安全な場所に避難しなければね」



――シンジ、レイ、カヲル、ケーブルカーで移動中



レイ「敵は、碇くんたちが狙いなのね」


シンジ「チョコたちは失われた世界を取り戻すって言ってたけど、どういう事?」


レイ(チョコ?)


カヲル「ドグマ爆心地にはロンギヌスの槍とカシウスの槍の二本がある。それが補完計画発動のキーとなっている。だけど、僕らで槍を手にすればネルフもフォースインパクトを起こせなくなる。第13号機とセットで使えば、世界の修復も可能だ」


レイ「彼らは大量のエヴァを持っていたわ。本当に第13号機とパイロットは必要になるの?」


カヲル「放送でああ言った以上、魂の場所が違うんじゃないかな? リリンの模造品では無理だからね。それにシンジくんは、ゼーレと碇司令が認めるフォースインパクトのトリガー最有力候補だ。やたら君にインパクトを起こさせたがるのさ」


シンジ「へー」


カヲル「時にシンジくん。君は世界の修復に興味はないかい?」


シンジ「ん? ないよ」


――エヴァ第13号機の前


シンジ「これでよし」←プラグスーツ着用


レイ「碇くん、本当に乗るの?」


シンジ「うん。取り敢えず、父さんやチョコにこいつを渡さないようにしときたい。ミサトたちが助けに来るのを待ちたかったけど、時間もないから」


レイ「でも、DSSチョーカーが……」


シンジ「覚醒したらダメらしいから、普通に乗る分には問題ない……と思う。こんな所で躓く気はないよ」


カヲル「シンジくん、ちょっとこっち向いて」


シンジ「え?」


DSSチョーカーにカヲルの指先が触れると、 ロックが解除されてシンジの首から離れた。そして、カヲルはDSSチョーカーを自分の首へとつけ直す。


カヲル「リリンの呪いとエヴァの覚醒リスクは僕が引き受けるよ」


シンジ「カヲル……」


カヲル「気にしなくて良いよ。元々はリリンが僕を恐れて作ったものだ。いずれはこうするつもりだったんだ」


シンジ「ダメだ。返して」


カヲル「え?」


シンジ「それはカヲルが背負うものじゃない」


カヲル「えっと、君を安心させてあげようと思ってやったんだけど――」


シンジ「悪いけど、そんなの関係ない」


カヲル「…う、うん。わかったよ」


青葉「エヴァMark04より通信が来ています」


ミサト「Mark04? さっきの放送を流していた奴かしら」


青葉「はい」


ミサト「そう。では、繋げてちょうだい」


Mark04バエル『はじめましてヴィレの諸君。私はマクギリス・ファリド。以後、お見知り置きを』


リツコ「……」耳詮


日向(耳詮で対策できるんだ……)


北上(エヴァが通信に出てる……)


ミサト「私は旗艦ヴンダーの艦長、葛城ミサトです。一体どんな御用件で?」


Mark04バエル『理由は他でもない。ネルフ攻略作戦の協力要請です。ネルフ殲滅は貴方たちの目標でもあったはず』


ミサト「そちらの目的は、ネルフを殲滅した上でフォースインパクトを起こすつもりのはずです。ヴィレの事をご存知であれば、私たちはお門違いですが」


Mark04『もちろんです。ネルフのエヴァ、 ネーメジスシリーズの殲滅。そして、フォースインパクトの阻止……』


ミサト「なら話は早いです。あなたたちと手を組むなど断じてありえない」


Mark04バエル『現在、我々革命軍は旧第三新東京市近隣に戦力を集結。ネルフ本部に対して包囲網を敷いています。いくらあなた方でも、これを突破して碇シンジを確保するのは難しいはずだ』


ミサト「……」


Mark04バエル『ですが、ヴィレが攻略作戦に参加すれば話は変わります。戦うべき敵が減り、碇シンジの確保は容易となり、動き方次第ではネルフを内側から崩す事も可能だ。作戦成功の暁には、世界の修復の権利をヴィレにお譲りしましょう。私たちとしても、セカンドインパクト以前のように平和な世界が戻るのは願ってもない事なのです』


ミサト「……今さら、過去にすがる気はありません。私たちヴィレを見くびらないでもらいたい。フォースインパクトは絶対に阻止するわ」


Mark04バエル『……良いでしょう。自ら権利を捨てるのであれば、私は何も言いません。では、 ここからは等しく競争になる。どちらが先にフォースインパクトの鍵を手に入れるかの。
それでは、失礼する』


プツン








Mark04バエル「衛星軌道上で見せたエヴァ初号機の戦い。その姿に、私はアグニカ・カイエルの伝説の一場面を垣間見た」


エヴァ・ヘルムヴィーゲ「はぁ…」


エヴァ・ヘルムヴィーゲ(またアグニカ・カイエルの話をしている……)


カヲル「メインシャフト最下層への道はリリスの結界によって塞がれている。この14年間、
誰の侵入も許していない」


レイ「第13号機はそれを突破する力もあるのね?」


カヲル「うん」


シンジ「じゃあ、尚更コイツを捨てる訳には行かないか」


第13号機「」チョコン


――エヴァ第13号機にシンジ、レイ、カヲルが乗り込みました。もちろんレイはシンジの膝の上。


シンジ「何だこれ。動きが重い」


カヲル「テンポを合わせよう。ピアノの連弾を思い出して」


第13号機「ワッショイ、ワッショイ」ガシンガシン


レイ「動きが変わったわ」


シンジ「うん。これなら……」


5号機ジュリア「ようやく乗り込みましたか」


シンジ「あ、ジュリア」


5号機ジュリア「現在、革命軍が侵攻中です。こちらの防衛ラインが生きている内にターミナルドグマへ向かいましょう」


シンジ「変なオマケがある」


レイ「ビットかしら」


RSホッパー「「ワーイ」」フヨフヨ


5号機ジュリア「私の話を聞いているのですか?」


カヲル「すまない。少し事情が変わったんだ」


5号機ジュリア「は?」


第13号機「ヨイショ」


第13号機は二基のRSホッパーの上にそれぞれ足を乗せて、スケートをするかのように地面を走った。RSホッパーのATフィールドが推進力となり、第13号機の鈍重さを解消する。


レイ「第13号機がATフィールドを張れない代わりに、このビットがあるのね」


シンジ「使いにくいけど便利、かな?」


5号機ジュリア「エヴァで遊んでいる場合ですか!! 急ぎますよ!!」


シンジ「うん。じゃあね」


第13号機は逃走を開始した。


5号機ジュリア「あっ!? 待ちなさい!!」


シンジ「嫌だ」


旧第三新東京市は既に戦場になっていた。

Mark04バエルの意向により、大半がヒト型となったネーメジスシリーズ――水色のグレイズエヴァの侵攻に対し、ネルフは迷彩エヴァを総動員させて防衛ラインを幾つにも渡って形成する。一番外側の防衛ラインにいる迷彩エヴァとグレイズエヴァが互いに衝突し、銃火を吹かせた。

ネルフと革命軍の戦力比は二対一。一見すると防衛側のネルフが有利かに見えるが、革命軍からは空中戦艦型のネーメジスシリーズ――ハーフビーク級の支援砲撃も加わっており、状況は一瞬の予断を許さない。

その戦場を、空を漂うヴンダーは遠くから眺めていた。


スミレ「あれ、全部エヴァなの?」


ヒデキ「おっかねぇ……」


リツコ「14年前では絶対見られないであろう光景ね」


ミサト「えぇ。ここまで敵が多いと困るわ」


北上「現時点で確認できるネルフのエヴァの総数は約3000。対してネーメジスシリーズは約1500です」


日向「ネルフ側の攻撃が数ヶ所に渡って集中しています」


ミサト「部隊の分断を謀る気ね。数が多いなら尚更か」


――New EVAーunit


青葉「DSSチョーカーより信号来ました! 新型エヴァの起動を確認!」


ミサト(シンジくん……!)


リリスの結界へ続く巨大な穴の中。そこでは逃走を狙う第13号機と、それに追い縋る5号機ジュリアが戦闘を繰り広げていた。


5号機ジュリア「キャッ!」ズガン


第13号機はRSホッパーにATフィールドを纏わせた鉄血メイスで、5号機ジュリアを叩き飛ばした。


シンジ「ちっ。 いつものようにはいかないか」


5号機ジュリア「これしきの事で……!!」


カヲル「ビットをメイスに……なら僕も」


第13号機「ツインメイス!」


5号機ジュリア「何故逃げるのですか! 碇司令の命令に従えば、第13号機で世界の修復は成されると言うのに!」 蛇腹剣ウィップモード


シンジ「そんな物に興味ないよ」


5号機ジュリア「くうっ!」ガン


頭上から鉄血メイスを叩き付けられた5号機ジュリアはもう一度メインシャフトの底へと落下する。


レイ「相手にしている暇はないわ」


シンジ「わかってる」


5号機ジュリア「はぁ…はぁ…ATフィールド無しだったら、何度死んだ?」


ジオフロントへと上昇を続ける第13号機の背中を見たジュリアは、スラスターを全開にして追撃を再開する。


5号機ジュリア「ここで逃がしてしまっては、碇司令に面目がない……!」


カヲル「シンジくん、上だ」


シンジ「うん」


第13号機が今いる位置より遥かに上。そこからMark06ヴィダールが猛スピードで降下してきた。バーストサーベルを突き立ててくる。


Mark06ヴィダール「……」ブン!


第13号機「アブネ!」ガキィン!


5号機ジュリア「Mark06? しかし渚カヲルは第13号機……ヴィダールですか!」


シンジ「邪魔だ」ブゥン


Mark06ヴィダール「グッ!」バキッ


カヲル「エヴァMark06……遂に動き始めたか」


レイ「暴走とは違う?」


5号機ジュリア「あなたはMark04を討ちに行ったのでは? ここで何をしているのですか!」


Mark06ヴィダール「俺が奴と戦うための最後の仕上げだ。リリスの結界の中に用がある。しかし……」


シンジ「……」


※Mark06ヴィダールはリリスの結界を往復できません。Mark06と分離し、結界を脱出した時の片道だけでした。


Mark06ヴィダール「こいつを押し込めるには今の俺では力不足だ。時間もない。行くぞ、アイン!!」


Type-E「コノワタシノイノチニカエテモ!!」


その時、Mark06ヴィダールが纏う雰囲気が変わった。一瞬だけ、脱力したかのような姿を見せ、その隙に第13号機が問答無用で鉄血メイスを投合する。


第13号機「アッチイッテ」ブゥン


Type-E「コレガオレノチカラダ!!」


Mark06ヴィダールは、ゴーグルの下に浮かぶ双眼を赤く発光させると同時に、投合された鉄血メイスを素早くかわしてシンジたちの視界から姿を消した。

一方シンジは、体感でMark06ヴィダールの位置を把握し、余った鉄血メイスをそちらへと投げる。今度の鉄血メイスは容易く回避され、 踵のハンターエッジが繰り出される。


Mark06ヴィダール「でやぁっ!!」ガガン


第13号機「ガード!」ガキン!


シンジ「この動き……」


――

ゼルエルアイン「また…また貴様か! 罪深き子供!」

――


カヲル「まずい、押されている!」


Mark06ヴィダールにより、早くも第13号機はリリスの結界表面に身体を押し付けられる。


シンジ「まだ動きが固いっ」


バルバトスと比較すると動きが遅い第13号機に、シンジは苛立ちを覚えた。

先ほど投げ飛ばしたメイス用RSホッパーを呼び戻そうとするが、その前に第13号機を基点にして、リリスの結界に抜け穴が出来上がった。エヴァ一機が余裕でくぐり抜ける程の大きさだ。


Mark06ヴィダール「よし」シュバ


第13号機が反撃に転じる直前、Mark06ヴィダールはすかさずリリスの結界内部へ降りた。


――リリスの結界内部


Mark06ヴィダール「アイン、ご苦労。一休みしてくれ」


Type-E「カンシャノキワミ!」シュゥン……


土下座リリス「ツライ」チーン


ケンタウロスMark06「スヤー」


Mark06ヴィダール「時は来た」


Mark06ヴィダールはケンタウロスMark06の頭部にバーストサーベルを突き刺す。柄から刀身を分離させ、それを爆発させると、ケンタウロスMark06は頭を失った。

その瞬間、ケンタウロスMark06の首から突如、赤い血が大量に吹き出した。吹き出した血はそのまま宙に浮かび、一つの巨大な塊となってMark06ヴィダールと対峙する。


Mark06ヴィダール「今から、真の姿を取り戻す」


――リリスの結界表面


5号機ジュリア「あと少しの所で! 早く中に入ってください!」ゲシゲシ


第13号機は結界表面に出来た穴の縁に両手両足を掛けて、下へ落ちないように一生懸命踏ん張っていた。俯せになっている状態の第13号機の背中を、5号機ジュリアはひたすら蹴りをかましている。

攻防一体のRSホッパーは破壊されると困るという理由で、遠くに避難させられている。


第13号機「イタイヨー」


シンジ「うざい」


レイ「5号機の人、乱暴はやめて」


5号機ジュリア「そちらが素直に降りないからでしょうが!!」ゲシゲシ


カヲル「ジュリア、君も革命軍の放送は聞いていなかったのかい? 碇司令の真意も語られていたはずだ」


5号機ジュリア「えぇ、聞きました。内容はまるでゴシップ以下でしたが!」ゲシゲシ


カヲル「君は碇司令に全幅の信頼を置いているようだね。ある意味、素晴らしいよ」


5号機ジュリア「どの道、碇司令に認めてもらわなければ意味はない! だから、まずは任務を遂行する!!」ゲシゲシ


――Mark06キマール、リリスの結界より登場


シンジ「ん?」


5号機ジュリア「パターン青、使徒!?」


Mark06キマール「……」


レイ「これは……?」


5号機ジュリア「Mark06じゃない? いや、ヴィダール! その姿は一体!?」


Mark06キマール「今の俺はエヴァMark06キマリス・ヴィダール。使徒が潜んでいたもう一体のMark06と融合した」


5号機ジュリア「融合……? では、私の任務は……」


Mark06キマール「話は後にしよう。今はマクギリスを……うん?」


改2号機「ウオォォォォ!!」タクティカル・アームズⅡガトリングモード


アスカ「シンジィィィィ!!」


改2号機はメインシャフトを降下しながら、ガトリング砲をMark06キマールと5号機ジュリアに向けて発射した。二機は敵の弾幕を避けるために、 第13号機の側を離れてしまう。


5号機ジュリア「ちっ! ヴィレのエヴァか!」


8号機「ヒュー!」


3号機「エントリー!」


Mark06キマール「とうとうやってきたか」


シンジ「やっと迎えが来た」


アスカ「シンジ! まさかアンタ、エヴァに乗ってんの!?」


シンジ「うん」


アスカ「バカ! 乗るな! DSSチョーカーが……って」


レイ「こんにちは。弐号機の人」ギュー


カヲル「はじめまして」


アスカ「あぁン!?」


トウジ「惣流、落ち着け」


マリ「アダムスの器さんにパターン青かぁ。骨が折れそうだにゃ」


5号機ジュリア「例え敵が増えようが、キャアッ!」


ヴィレのエヴァに攻撃を仕掛けようとした5号機ジュリアをMark06キマールが抱えて、一緒にその場を飛び立った。地上へ向けてぐんぐん上昇していく。


Mark06キマール「……」


5号機ジュリア「ヴィダール、離してください!」ジタバタ


Mark06キマール「ヴィレのエヴァが来ているなら母艦が近くにあるはず。それを抑えておけば奴らは逃げようがなくなる。世界の修復はそれからでも遅くはない」


5号機ジュリア「それはっ……! ……まぁ、そうですが」


Mark06キマール「マクギリスを探すついでに少し手伝おうと思うのだが、君はどうする?」


5号機ジュリア「……お願いします。癪ですが」


Mark06キマール「任された」


マリ「ワンコくんたちをスルーした? まさか、ヴンダーを先に?」


シンジ「カヲル、結界に空いた穴が閉じないんだけど」


カヲル「結界を作っているのはリリスの力。第13号機はそれを突破できても、元に戻す力はない。こればかりは仕方ないよ」


シンジ「そっか」


アスカ「えぇい! シンジ、ファースト、ヴンダーに帰るわよ!!」


シンジ「うん」


レイ「……♪」ギュー


カヲル「ハグはいいねぇ。互いに愛情や友情を示せる。リリンが生み出した文化だよ」


アスカ「見せつけるなぁ!!」


トウジ「何か、あっさり終わったな……」


マリ「あっ! 皆、待って欲しいにゃ! 私、空飛べないの! 鈴原くん、背負ってちょうだい! カムバーック!」











冬月「一応、電源は落としてきたが……」


ゲンドウ「……」


冬月「ゼーレの少年は13番目に落とす事は叶わず、第13号機も逃走。ジュリアに命じた、リリスと同化したMark06の殲滅も失敗。 ……碇、 どうする?」


ゲンドウ「……撤収の準備だ」


冬月「だと思ったよ」


ネルフと革命軍が激突して混迷を極めた戦場の中、敵陣の隙間を掻い潜ったヴンダーはネルフ本部の周辺を延々と回り続けていた。メインシャフトから帰還してくるヴィレのエヴァをすぐ回収できるようにするためである。

もちろん、その行動を迷彩エヴァたちは黙って見てはいなかった。手持ちの火器でヴンダーを狙うが、武装が対艦向けではないので威力不足だ。ヴンダーのATフィールドにも攻撃を阻まれて、対地・対空迎撃で迷彩エヴァは易々と撃破されてしまう。


北上「改2号機、目標を確保。現在、撤退中」


青葉「観測室より報告。ジオフロントより、ネルフのエヴァを確認。5号機とMark06です」


ヒデキ「エヴァMark06よりパターン青! 使徒です!」


リツコ「使徒!? 」


ミサト「もしや、十二番目……」


5号機ジュリア「主機さえ落とせば!」


Mark06キマール「ATフィールドの中和役は俺がやろう」


ミサト「主砲斉射用意! 放て!」


5号機ジュリア「そんなものにはやられません!」ヒョイ


Mark06キマール「当たらなければどうという事はない」ヒョイ


ヒデキ「敵機、初号機に接近! Mark06がこちらのATフィールドを中和しています!」


リツコ「アスカたちは!?」


日向「まだジオフロントに出たばかりです!」


ヒデキ「新たにパターン青が二つ、こちらに向かって急速接近中! ネーメジスシリーズです!」


Mark04バエル「ヴィレ……流石だな」


エヴァ・ヘルムヴィーゲ「僅かな手勢でこんな奥まで進んだのか」


ミサト「これでは三つ巴か!」


5号機ジュリア「これで初号機を引きずり出せば!」蛇腹剣ウィップモード


初号機ルプスレクス「」ズルズル


ヒデキ「主機がやられました!」


スミレ「舵がききません! 落下します!」


ミサト「 直ちに予備の主機に切り替えて!」


Mark09「エ? オシゴトデスカ?」ガチャン!


リツコ「一応用意したMark09はまだ調整不足よ。このままじゃ……」


コウジ「予備の主機の出力が不安定だ。不時着するぞ!」


ズドドド……



――ジオフロント跡


ミサト『アスカ。至急、ヴンダーの救援に来て!』


アスカ「了解!」


初号機ルプスレクス「」ヒュ~


マリ「親方! 空からエヴァが!」


トウジ「なんやて!?」


ズドン!


初号機ルプスレクス「」チーン


シンジ「バルバトス……皆は!?」


――ヴンダー、不時着地点付近


Mark06キマール「マクギリス。自らやってくるとは……」


Mark04バエル「ガエリオ。その姿……本来のキマリスか」


エヴァ・ヘルムヴィーゲ「ここは私らが。准将は兵を纏め直してください」


グレイズエヴァ「「ここは我らが!!」」


Mark04バエル「任せたぞ、石動」ギューン







ヒデキ「現在、Mark09用の主制御システムを構築中」


ミサト「作業、急いで! ATフィールドは?」


北上「問題ありません」


ミサト「敵機の迎撃は怠るな! アスカたちが戻ってくるまで耐えるのよ!」


ズガガガ! ズガガガ!


5号機ジュリア「まだヴンダーが動いている? 予備の主機があったか!」


迷彩エヴァ「「ウボァー!!」」ドカーン


5号機ジュリア「無理に落とさなくていい! 複数でATフィールドを重ねて砲撃を耐えてください! 他は私と共にヴィレのエヴァの撃破に向かってください!」


迷彩エヴァ「「アイアイサー」」


――ジオフロント跡


5号機ジュリア「まだここにいたか!」


迷彩エヴァ「「ヒャッハー」」


マリ「これはちょっと多いね」


トウジ「雑魚の相手にする暇はないで! 早くしないとヴンダーが!」


初号機ルプスレクス「」チーン


第13号機「チカクニヨルヨー」スタスタ


シンジ「レイ、カヲル、13号機は任せた」


カヲル「え?」


シンジは第13号機から初号機ルプスレクスへ乗り換えを試みる。装着したヘルメットのバイザーを展開し、有害な空気に満ちた外に出る準備をする。


レイ「ダメ、碇くん。バルバトスはさすがに不味いわ。DSSチョーカーを使われても文句は言えない」


シンジ「でも、ここで皆が死ぬのはもっとダメでしょ」スタッ


レイ「待って!」


カヲル「第13号機は一人でも動かせる。シンジくんを追いかけて」


レイ「…ありがとう」ダッ


――初号機ルプスレクス、エントリープラグ内


シンジ「レイも一緒に乗るの?」


レイ「えぇ。第13号機は渚くんが一人で引き受けてくれたわ」


シンジ「そう。ならいいや」


アスカ『こら! バカシンジ、何やってるの!? ミサト、シンジとファーストが初号機に乗り込んだ!』


ミサト『シンジくん、今すぐ初号機から降りなさい! でないと――』


シンジ「バルバトスを覚醒させたらDSSチョーカー使うんでしょ? 良いよ、それで」


ミサト『なっ!?』


シンジ「俺の命、ミサトに賭けるから」


レイ「碇くん、死ぬのが怖くないの?」


シンジ「別に。あ、レイやアスカたちに会えなくなるのは嫌……かな?」


レイ「……そう」













――オルガ、次はどうすればいい? ……いや、分かってるよ。ただ、久しぶりに聞きたかっただけだ。――














シンジ「碇シンジ。エヴァ初号機バルバトスルプスレクス、出るぞ」



初号機ルプスレクス「ぶぅるあああ!!」


トウジ「え、初号機?」


マリ「悪魔がおいでなすったか」


5号機ジュリア「碇シンジ、機体を乗り換えたか!」蛇腹剣


シンジ「うん、やっぱり動きが軽い」ヒョイ


初号機ルプスレクス「ハァ!!」テイルブレード


5号機ジュリア「尻尾? ぐぅっ!」ガキィン!


シンジ「トウジ、マキマキ、そいつらは頼んだ。ヴンダー助けに行ってくる」ビューン


マリ「はいよー」


トウジ「よし、なら安心」ハルバート


迷彩エヴァ「「マテ-」」


マリ「乱れ撃つぜ!」ズガガガ


迷彩エヴァ「「ウワァ-!!」」ドカーン


5号機ジュリア「邪魔をするな!!」ブゥン!


トウジ「ワイが相手してやる!」 ガン!


5号機ジュリア「ちっ! 一合でわかる。強い相手だと!」


カヲル「シンジくん、あっという間に行ってしまったな。……おや?」


改2号機「……」


アスカ「……」


カヲル「どうしたんだい、そこで立ち尽くして。シンジくんを追いかけないのかい? 」


アスカ「……モードチェンジ。コード777」


カヲル「ん?」


改2号機ビースト「ガオオォォォ!!」シュバッ


アスカ「待ってよ、シンジィィィ!!」ダダダ


カヲル「……その形態は白い初号機の友達か何かかな? あ、でもバッテリーが心配だな。仕方ない。運んであげるとしよう。鈴原トウジくん、3号機の背中にあるスペアを分けてもらえないかい?」


トウジ「すまん!! 自主的に取ってくれ!」ギュイン


5号機ジュリア「先ほどから本気を出していない? 舐めているのか!」ブン


トウジ「女相手に気が引けてるだけや!」 ガン


5号機ジュリア「バカにするなぁ!!」シュン


マリ「ちょっ、二人とも速すぎ!! 」


3号機はハルバートで迷彩エヴァを蹴散らしながら、5号機ジュリアとの相手を務めていた。
互いにスラスターを吹かして素早く動き回り、
8号機は中々援護に入れない。


カヲル「うん、わかったよ」






Mark06キマール「望み通り歪んだ理想の礎になるがいい!!」ドリルニー


エヴァ・ヘルムヴィーゲ「これがアダムスの器の力……」チュドーン



Mark04バエル「石動……逝ってしまったか」


迷彩エヴァ「「オワタ」」チュドーン!!


グレイズエヴァ「敵は怯んだ! 今こそ、我々の気高い革命の心を世界に見せつけてやろうではないか!」


迷彩エヴァ「「ヒャッハー!」」バズーカ


ハーフビーク級「うわぁぁぁ!!」ドカーン


グレイズエヴァ「え――」


墜落するハーフビーク級の下にはちょうど、ライザ・エンザの魂が入ったグレイズエヴァがいた。


グシャ


グレイズエヴァ「ライザが戦死した?」


グレイズエヴァ「俺たちはどうなるんだ?」


Mark04バエル「革命は終わっていない! 諸君らの気高い理想は決して絶やしてはならない! アグニカ・カイエルの意志は我々と共にある! リリンの真理はここだ。皆、バエルの元へ集え!」


グレイズエヴァ「バエルだ! アグニカ・カイエルの魂!」


グレイズエヴァ「そうだ! 正義は我々にある!!」


グレイズエヴァ「「おおー!!」」


Mark04バエル「残存部隊を集結し、私の船と合流せよ。我々の戦いはまだ――」


Mark06キマール「この期に及んでまだハーメルンの笛を吹き続けるか、マクギリス」


つ エヴァ・ヘルムヴィーゲの首


Mark04バエル「悪趣味だな、ガエリオ」


Mark06キマール「部下が無惨な目に会っても特に怒りはしないか。やはり、捨て駒としか見ていないようだな」


青葉「初号機、続けて改2号機がヴンダーの護衛に回りました!」


日向「シンジくん、遂に初号機を動かしてしまったのか……」


リツコ「ミサト、もしもの時は分かっているわよね?」


ミサト「えぇ」


つ DSSチョーカー起動スイッチ


――俺の命、ミサトに賭けるから――


ミサト「……っ!」




ヴンダーをじわりじわりと追い詰めていた迷彩エヴァの軍団の元に、恐竜の如き白い悪魔――エヴァ初号機バルバトスルプスレクスが到来した。迷彩エヴァに迫ると、まず手始めに、金色の爪であるレクスネイルがその首を獲る。


初号機ルプスレクス「せいは!!」


迷彩エヴァ「「ギャン!!」」ドスッ


首を投げ捨てて、テイルブレードで止めを刺した。続けて肩部ウェポンラックからプログレッシブナイフを一本取りだし、ATフィールドを纏わせて超大型メイスにする。


初号機ルプスレクス「フンヌゥ!!」


グレイズエヴァ「「あべしっ!!」」グシャ


ヴンダー不時着地点付近は既に革命軍が浸透していた。偶々、初号機ルプスレクスの近くにいたグレイズエヴァが記念すべき超大型メイスの最初の犠牲者となった。横から叩きつけられたグレイズエヴァは放物線を描いて宙を飛ぶ。


初号機ルプスレクス「ぶるぅあああ!!」


迷彩エヴァ/グレイズエヴァ「「ぐわあぁぁぁ!!」」グシャ


飛び蹴りを決めると同時にヒールバンカーで敵のコアを砕き、テイルブレードで滅多斬りにして、原型を失わせる勢いで超大型メイスを振るった。


改2号機ビースト「ガルル!!」


二匹目たる赤い獣も遂に乱入してきた。タクティカルアームズⅡをトンファーモードにして、入り乱れるエヴァたちの合間を掻い潜りつつ敵を容赦なく両断していく。


改2号機ビースト「ガオオオオオオ!!」


敵の残骸を生み出し続ける初号機ルプスレクスと改2号機はやがて背中を預け合う形になり、
眼光を鋭くさせた。

その姿、まさに圧倒的強者の風格。彼らと対峙している敵のエヴァたちは完全に怯んでしまった。逃げようと無防備に背中を晒した者から、易々と狩られていく。


迷彩エヴァ/グレイズエヴァ「「怪獣の夫婦だぁ!! 逃げろぉぉぉ!! うわああああああああ!!」」チュドーン


アスカ「え? 」


レイ「……碇くんと弐号機の人が?」モヤモヤ


シンジ「……」


迷彩エヴァ「フイウチ!」


撃破したエヴァたちが最期に放った“夫婦”という言葉に一瞬動きを止めたシンジだが、迷彩エヴァの不意討ちを難なく避けて超大型メイスで叩き潰す。


初号機ルプスレクス「甘い!」ブン!


迷彩エヴァ「ギャー!」バキッ


シンジ「良いんじゃない? 夫婦」


アスカ/レイ「「へ?」」


シンジはそう言いながら、初号機ルプスレクスのレクスネイルでグレイズエヴァの首を突き刺した。



Mark04バエルはMark06キマールとの戦闘の片手間で、味方からの通信を受けていた。それというのも、Mark06キマールはType-Eをまだ使用していなかったからだ。早く使えばそんな暇は無くせるのだが、彼はMark04バエルの本気の力を望んでいた。


グレイズエヴァ「准将、潜入部隊からの報告です。リリスの結界には、二本のロンギヌスの槍しかなかったと……」


Mark04バエル「何だと? 碇ゲンドウと冬月コウゾウの行方は?」ガキン! シュバッ!


グレイズエヴァ「現在、捜索中です」


Mark04バエル「わかった。全力を上げて――」


Mark06キマール「俺を見ろ! マクギリス!」


Mark04バエルは自身のコアに目掛けて来たドリルランスを、バエルソード二本で辛うじて受け止める。

この時、Mark06キマールは相手の様子が一変するのを直感で即座に感じ取った。


Mark04バエル「邪魔だ、ガエリオ」


Mark06キマール「行くぞ、アイン!」


Type-E「リョウカイ、トクムサンサ!」


二体のエヴァはとうとう本気を出した。

ドリルランスを横に反らされ間髪入れずに振り落とされたバエルソードを、Mark06キマールは二枚のシールドで防ぎ、左腰にマウントした刀を振り抜いた。

Mark04バエルは瞬時にスラスターウイングを吹かして刀を軽やかにかわすと、今度は自らMark06キマールへ突撃する。


Mark04バエル「俺の行く手を阻むものなら今すぐにでも殺してやろう」


Mark06キマールも、ドリルランスに内蔵された牽制用機銃を発射しつつ、得意分野である突撃戦法を敢行した。

二体の戦場は地上から徐々に空中へと変わっていき、8の字を描くようにしながら互いに斬り結ぶ。

武器を十数回以上打ち合った頃には、 Mark06キマールのシールドには幾つも斬撃の跡が付き、頭部のV字アンテナの片側は完全に折れていた。一方Mark04バエルには、ろくな損傷を与えられていない。

Mark04バエルはMark06キマールの突撃をギリギリまで引き寄せて、被弾直前に身を捩らせる。するとドリルランスの先には、ぼさっとしている迷彩エヴァがいた。


迷彩エヴァ「ウッ、ウワ!!」チュドーン!!


こんな所で止まる訳には行かない。そんな事を一々してしまえば、Mark04バエルに届く力も届かない。Mark06キマールは躊躇なく轢き逃げをした。

そんなMark06キマールの後ろ姿を横目で見たMark04バエルは、スラスターウイングを全開にして追撃を掛ける。

スラスターを使って咄嗟に方向転換したMark06キマールは、刀を再び取りだし、ドリルランスと併用してバエルソードと斬り合う。


Mark06キマール「ぐっ、アイン! 俺の全てを使ってマクギリスの全てを奪ってくれ!」


Mark04バエル「そうだ、ガエリオ。もっとお前の力を見せろ! 見ろ! 純粋な力だけが輝きを放つ舞台に奴らは圧倒されている! お前が力を見せる事で俺の正しさは更に証明される!」


Mark06キマール「違う! これはお前の信じる力と違う! アイン! 頼む、届けさせてくれ! 一人ではないこの戦い!」


その叫びに応えるように繰り出されたドリルニーがバエルソードの一本に命中し、それを真っ二つに割った。


Mark04バエルは折れた剣を見て僅かに目を見張り、すかさず二本目のバエルソードを前に突き出した。

しかしMark06キマールはMark04バエルの横を素通りの如く全力で駆け抜けて、バエルソードの刺突を回避する。Mark04バエルが振り向くのも束の間、Mark06キマールはタックルをぶつけた。


Mark04バエル「ぐっ!」


タックルの衝撃にMark04バエルは仰け反り、顔面へドリルランスが真っ直ぐ伸ばされる。咄嗟に顔を捩らせるも、ドリルランスは左肩を掠れて、左手に持った剣の切っ先がMark06キマールの右肩を裂いた。

右肩のダメージにMark06キマールは呻き声を上げると、Mark04バエルにドリルランスを蹴り飛ばされて距離を取られる。同時に折れた剣を捨てて、両者は一本の剣を構え直す。

先に動いたのはMark06キマールだった。鬼気迫る勢いで刀を振り、辛抱強くMark04バエルに食い下がった。やがて、Mark06キマールはMark04バエルをハーフビーク級の近くまで追いやる。

Mark04バエルは牽制に肩部レールガンを発射するが、相手に怯む様子はなく、執拗に斬り込まれてしまう。

何度も激しくつばぜり合いをしたその時、バエルソードに亀裂が走った。


Mark04バエル(俺が、ガエリオに負ける?)


Mark06キマール「うおおぉぉぉ!!」


Mark06キマールは渾身の力を振り絞りMark04バエルを押し出した。サブアーム付きシールドを器用に使い、逃げられないよう艦の装甲板に強く押し付けると、手刀をMark04バエルのコア目掛けて突き落とす。


ハーフビーク級「俺の周りで戦わないでくれ――ギャアアア!!」チュドーン!!


――ジオフロント跡


トウジとマリの奮戦により、ネルフ側の手勢は後僅かとなっていた。5号機ジュリアは完全に足止めを食らってしまっている。


5号機ジュリア「何故突破できない? 何故本気を出されない?」


3号機との戦いで、トウジより実力が及んでいない自分にジュリアは憤ると同時に、パイロットとしての誇りが踏みにじられているように感じた。

独楽のように回転しながら蛇腹剣で3号機が持つハルバートの柄を斬り、更に空きの蛇腹剣を伸展させて、3号機の頭をもぎ取ろうとした。

対して3号機は、ハルバートを捨ててウィップモードの蛇腹剣を手で掴み、持ち前のパワーで5号機ジュリアごと手繰り寄せる。


5号機ジュリア「この差はなんだ? 何があのパイロットを駆り立てる!?」


トウジ「譲れないものがあるからやろ!」


5号機ジュリアが掴まれた蛇腹剣を前腕部ごとパージした瞬間、3号機の隠し腕が展開された。 間髪入れずに回避運動を取るが、ジャブが軽く頭部に入ってしまう。


5号機ジュリア「ぐっ! 私は勝ちます!」


肩部スラスターユニットに内蔵された機関砲を撃ちながら、ほぼ丸腰同然の3号機にもう一度接近する。機関砲は全て直撃するがほとんど効いておらず、3号機はどっしり構えているだけだ。


トウジ「何や急に!」


蛇腹剣の刺突は受け流されて、四本の腕によって機体の動きが止められる。その時、二体のエヴァの額がぶつかり合った。


5号機ジュリア「任務を遂行できず、碇司令の剣になれなくとも! 碇司令の盾になり、碇司令を守る事ができれば!」


トウジ「別に命狙ってる訳じゃないで!」


5号機ジュリアは肩と腰のスラスターを全開にして拘束から抜け出そうとするが、3号機により押し込まれてしまう。

迷彩エヴァを倒す最中トウジとジュリアの戦闘を時々見ていたマリは、二体が膠着状態になると早速5号機ジュリアに狙いを定めた。


マリ「的を~狙えば~」


5号機ジュリア「黙れ! さすれば、例え命尽きようと私の勝利に――」


マリ「外さないよ!」バキューン


8号機がライフルのトリガーを引くと、5号機ジュリアの側頭部にAA弾が命中した。 5号機ジュリアは元より堅牢な装甲を誇っているが、大ダメージである事には変わりはない。


5号機ジュリア「うっ! 何だ!? 」ガガン


マリ「よっしゃあ!」


トウジ「お願いだからワイに当てんなよ!!」


マリは調子に乗ってAA弾を連射。肩部スラスター、腰部スラスター、次に脚部とバンバン狙撃する。


ジュリア「不覚を取った……!」


機体ダメージが深刻化し、戦闘継続が不可能だと察したジュリアは、自爆装置を起動し、自らの手でエントリープラグを脱出させた。エントリープラグはロケットのように空を飛翔する。

その直後、 3号機は綺麗に5号機ジュリアの自爆に巻き込まれた。灼熱の炎が渦巻き、爆発も迷彩エヴァの残骸を次々と吹き飛ばす程だったが、肝心の3号機は五体満足だった。


トウジ「逃げた……」


マリ「女の子相手に手加減なんてやるじゃん」


トウジ「センセみたいにはできへんのや」


迷彩エヴァ「マルゴシナラ!!」バッ


トウジ「誰が丸腰だって?」鉄血ペンチ


迷彩エヴァ「ア――」ペシャンコ








ジュリア「危なかった……。あれ? 私、ほっとしてる? そんな……」


――ヴンダー、不時着地点


迷彩エヴァ/グレイズエヴァ「「イヤアアアアアア!!」」チュドーン!


改2号機ビースト「ガオン! ガルル――」シュウン……


アスカ「バッテリー切れ!? 抜かった!」


第13号機「ヨイショ、ヨイショ」トテテ


カヲル「スペア持ってきたよ」


アスカ「フィフス!? ……っ、感謝するわ」


改2号機ビースト「フッカツ!!」ブッピガン


カヲル「フィフス? 僕の事かい?」


シンジ「ん、 カヲルも来たんだ」


初号機ルプスレクス「微塵に砕けろぉ!!」超大型メイス


迷彩エヴァ/グレイズエヴァ「「あ…悪魔たん…」」グシャ


改2号機ビースト「グルゥアアアア!!」シュバッ


迷彩エヴァ/グレイズエヴァ「「南無三!!」」スパーン


カヲル「まさに一方的だね。……うん? 」


エントリープラグ「」ヒューン


第13号機「ギリギリ、キャッチ!」パシッ


カヲル「これは5号機のエントリープラグか」



日向「Mark04とMark06の戦闘地点に大規模な爆発を確認!」


ヒデキ「パターン青、二つ消滅しました。たった今、残りの一体がヴンダーに向けて高速接近中!」


ミサト「どっちが来るの!?」


青葉「Mark04です!」




Mark04バエル「……」ボロボロ


シンジ「あいつは……」


ザワザワ ザワザワ


グレイズエヴァ「おい、あれ見ろよ」


グレイズエヴァ「バエルがぼろぼろだ」


ザワザワ


Mark04バエル「バルバトスルプスレクス……狼の王か。勇ましい名前だ」


シンジ「何か用?」超大型メイス


Mark04バエル「ああ。碇シンジ、私の元に来ないか?」


シンジ「何で?」


Mark04バエル「そうだな、わかっている」


シンジ「ん?」


Mark04バエル「君の戦いを美しいと思った。私の理想とする力。輝かしい未来を手にする事ができる力。君たちはその力の使い方を知らない。お互いの理想に向かい、私がその力を理想に導けると思った。が……違ったようだ。君たちの輝きは目的も理想も辿り着く場所もない。刹那的なものだからこそ――」


シンジ「ごちゃごちゃうるさいな。もう自分の居場所には辿り着いてるよ」



Mark04バエル「それは一体――」


改2号機ビースト「ガルル!!」


アスカ「私のシンジに手ぇ出してんじゃないわよ!!」


レイ「ダメ。碇くんは私と一緒」


アスカ「はぁ!? アンタ、いつからそんな自己主張するようになった訳!?」


レイ「最近」


アスカ「こぉんのぉ!」


シンジ「二人もうるさい」


レイ/アスカ「「ごめんなさい」」シュン


Mark04「野暮な事を聞いてしまったな。すまない。では、第13号機とパイロットは力ずくで頂くとしよう」 キマールの刀


シンジ「来るなら来い」 超大型メイス





――???


冬月「酷い有り様だな。ほとんどがゼーレの思惑から外れている」


ゲンドウ「だが、今はこれでいい。葛城大佐がやって来るのは計算済みだ」


冬月「その他は?」


ゲンドウ「……スルーで」


初号機ルプスレクス「ジェノサイドブレイバー!!」 テイルブレード


Mark04バエル「フッ」ガキン


シンジ「素早いな」


アスカ「援護する!」


シンジ「ダメだ。コイツの相手は俺がやる。アスカはヴンダーを守って」


初号機ルプスレクス「フン!!」 腕部滑腔砲


Mark04バエル「見せてやろう、ヴィレ」ヒョイ


シンジ「……っ!」


Mark04バエル「純粋な力のみが成立させる真実の世界を!!」 ブン!






ズガガガ……


グレイズエヴァ「地響き?」


迷彩エヴァ「地震だ! 机の下に隠れろ!」


グレイズエヴァ「火の元も消すんだ!」


迷彩エヴァ「S波が来ない内に!」


北上「震度計の数値に異常を確認! 地下より何かがやって来ます!」


ミサト「総員、対ショック姿勢!」


ズガガガ……


Mark04バエル「何だ?」ガキィン!


シンジ「……下?」ブウン!


ドドド……


スキップジャック級「地より現出せん」デデーン


エヴァ無号機「所詮、私はエンジン扱い……」





ゲンドウ『私はネルフ本部司令、碇ゲンドウだ。この戦場にいる全ての諸君に告ぐ』


グレイズエヴァ「何だあれは!?」


迷彩エヴァ「飛行機だ!」


グレイズエヴァ「いや、UFOだ!」


迷彩エヴァ「違う! (黒い)月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド旗艦、スキップジャック級だ!」


グレイズエヴァ「アリアンロッド!?」


ゲンドウ『たった今、MAGIのプログラム変更により、地下に大量のN2兵器の自爆装置が起動した。猶予は五分足らず』


カヲル「自爆か。それでもリリスの結界は健在だろうけど……」


ゲンドウ『マクギリス・ファリド。軍配は貴様に上がったが、こちらもただではやられん。カシウスの槍は持ち逃げさせてもらう』


Mark04バエル「碇ゲンドウ……」


ゲンドウ『では、さらばだ』


スキップジャック級「全速前進!!」(-_-)/~~~


ゲンドウ『最後にネタバレもしよう。ターミナルドグマにある二本の槍はどちらもロンギヌスの槍だ。本来なら第13号機に抜かせてフォースインパクトを発動させるつもりだった』


エヴァ無号機「バイバイ」





グレイズエヴァ「准将、これでは我らは何のために……」


Mark04バエル「嘆く暇はない。全軍撤退だ!!」


グレイズエヴァ「りょ、了解!!」


Mark04バエル「ルプスレクス……狼の王か。そうだな……狼とは群れるもの。私にはできぬ生き方だ。さらばだ、ヴィレ」





ミサト「主機の調子は?」


コウジ「いつでも飛べます!」


北上「3号機と8号機、ヴンダーに到着しました! エヴァ全機、着艦!」


ミサト「よし、全艦緊急発進!」




――黒い月以外は跡形もなく吹き飛びました


――ヴンダー、艦橋


北上「主機の初号機取り付け作業が完了」


ヒデキ「主制御システム、出力共に問題ありません。Mark09と切り替えます」


青葉「敵影は現時点で確認できず」


ミサト「了解。索敵は怠らずに」


リツコ「さすがに敵の追撃はなかったか……」


――


初号機ルプスレクス「ぶぅるあああ!!」超大型メイス


改2号機ビースト「ガオオオオオオ!!」タクティカルアームズⅡ


3号機「誰が丸腰だって!?」シザーシールド


Mark04バエル「集え、バエルの元に!!」バエルソード


5号機ジュリア「私は碇司令の剣!!」ジュリアンソード


Mark06キマール「俺を見ろ! マクギリスゥゥ!!」ドリルランス


――


リツコ(エヴァ……喋る……鈍器……空中戦……全身スラスター……使徒……皆おかしい……)


リツコ「……ガハッ!」


日向「い、今更ですか!?」


リツコ「ふ、ふふ……。案外、我慢できるものなのね……」ガクッ


青葉「メディーック!!」


北上「あの、艦長……初号機の戦闘データは……」

ミサト「副長に気取られないようにね」


ジュリア(あの後、碇司令はヴィレと革命軍から無事逃げる事ができた。本当なら喜ぶべきなのだろうが、自爆直前の通信を聞いた後では、そうするのは釈然としない……)


S-DAT『俺は結局、マクギリスを理解出来なかった。俺にとって、奴は遠い存在だった。だからこそ……憧れた。認められ、隣に立ちたいと思った。その内にマクギリスは仮面を着け、本来の自分を隠すようになった。しかし……』



四号機「ぬるま湯の独裁を敷きながら世界を支配するという二律背反に問題意識を持つ者がいないのが今のネルフの異常さだ」


Mark06「おい。今の言葉、碇司令の前でも言えるのか?」


四号機「言えないからこそ、ここでこっそり文句をつけている」


Mark06「まったく……だがお前の意見には賛成だよ」


四号機「だと思ったよ」


Mark06「ふっ」



S-DAT『隣に立つ事が叶ったかと思った。マクギリスは俺の前では仮面を外してくれていると感じた。なのに……』



四号機バエル「ガエリオォ!!」


Mark06キマール「マクギリスゥ!!」



S-DAT『俺は確かめたかった。カルタや俺や寄り添おうとする人間を裏切ってまで、マクギリスが手に入れようとするものを』



Mark04バエル「マクギリス・ファリドの名の元に、エヴァンゲリオンMark04バエルが甦った!!」



S-DAT『今の俺は多くのものを背負っている。しかし、全てマクギリスの目には永遠に映らないものたちだ。あいつがどんなに投げかけられても受け入れられず、否定ばかりするもの。それら全てを背負い、仮面を外したマクギリスを全否定してみせる。が……このS-DATがそのまま再生されているという事は、つまりそういう事なのだろう』


ジュリア(ヴィダール……)


S-DAT『一人ではない戦いが奴に届かなかったのか。残念だ。だが、決して代わりに無念を晴らそうとは思わないでくれ。俺が仮面を着ける前、マクギリスはこう言っていた』



四号機「さらばだ、ガエリオ。君は私の生涯ただ一人の友人だったよ……」



S-DAT『今でも俺の事を友と呼んでくれるのなら、俺はあいつを許してしまうかもしれない。だから……』


ジュリア(私は碇司令を信じた。しかし……)


――


ジュリア「碇シンジ、聞きたい事があります」


シンジ「何?」


ジュリア「以前にあなたは世界の修復に興味ないと答えましたよね。この赤い大地を元の緑色に戻したり、死んだ人間を蘇らせたいとかは思わないのですか?」


シンジ「え? そんな事できるの?」


ジュリア「出来ますよ。何だと思っていたんですか」


シンジ「そうなんだ。……やっぱり、やろうとは思わないな」


ジュリア「未練などはないのですか?」


シンジ「ずっと昔に、前に進み続ける、止まらないって決めたんだ。未練はあるけど、そういうのは先に死んでいった奴らに失礼だ。それに、生命は簡単に生き返っていいものじゃない」


ジュリア「あなたはどこか変わっていますね。人の手で地球を青くするにも、相当時間がかかりますよ?」


シンジ「槍を使えば最短だってのはわかるけど、細かい事がよくわからないから。下手したらフォースインパクト起こしてたし。とにかく、今いる仲間を犠牲にする気はないよ。誰がどう言おうと」


ジュリア「仲間、ですか。それがあなたの戦う理由……」






シンジ「……まぁ、隔離室の中じゃ、やる事もほとんどないけど」


――ヴンダー、隔離室の共用スペース


ジュリア「そうですね。あるのは電子ピアノだけですよ。今、渚カヲルに使われていますけど」


~♪


カヲル「~♪」←DSSチョーカー着用済み


~♪


レイ「でも賑やかで良いわ」ポカポカ


ジュリア「あなたもあなたです。ずっと碇シンジにくっついて、よく飽きませんね」


レイ「やっと気づいたの。どうして碇くんと一緒にいると心がポカポカするのか」


ジュリア「は?」


レイ「私、碇くんの事が好き」


ドゴッ!!


ジュリア「……今、面会用の強化ガラスにヒビが入ったのですが」


シンジ「アスカ?」


ジュリア「え? わかるのですか?」







サクラ「式波大尉、落ち着いてください!」


アスカ「シンジの面倒を見る役、今すぐ私に譲れえぇぇ!!」ムカー!!


サクラ「だ、誰か助け――」


マリ「姫! それ以上は不味いよ!!」ガシッ


トウジ「サクラに傷一つつけさせる訳にはイカン!!」ガシッ


ミサト「アスカ、隔離室への扉が開いたわ!」


アスカ「……っ!」ダダダッ


ミサト「ふぅ~、これで良し」


サクラ「ほ、ホンマに死ぬかと思ったわ……」


アスカ「私だって、シンジが大好きなんだからああぁぁぁ!!」ガバッ


シンジ「うおっと」ガシッ


レイ「……」モヤモヤ


アスカ「ねぇ、シンジ! 私とレイ、どっかが好きなの?」ギュー


シンジ「え?」


レイ「……」ソワソワ


アスカ「……」ソワソワ


シンジ「……」ジー


ダキッ


レイ/アスカ「「へ?」」


シンジ「レイとアスカが一番大事だって思ってる。俺も二人が好きだよ」ギュー


レイ「……」ポカポカ


アスカ「ぁ……じゃ、じゃあ証明!本当に 好きなら証明してみなさいよ!」


チュッ


シンジ「これでいい?」


アスカ「……ふえっ!?」


レイ「碇くん、私にもキス」


シンジ「うん」


チュッ







ジュリア「居づらさの余りに離れたのですが、この結果はどう見て取ればいいのでしょうか」


カヲル「おめでとう、シンジくん。幸せを掴む事ができたようだね」パチパチ


マリ「ハーレムエンド、完!」パチパチ


トウジ「めでたいなぁ」パチパチ


サクラ「お幸せに~」パチパチ


ジュリア「えっと……じゃあ、私も一応」パチパチ



受話器「プルルル、プルルル」


ガチャ


ミサト「はい、こちら葛城」


日向『たった今、戦略自衛隊の生き残りから連絡が入りました! ヴィレ以外の生き残りです!』


ミサト「え? それは本当?」


日向『はい! 向こうの司令が葛城艦長に話を求めています』


ミサト「分かりました。すぐに向かいます」











――ミカ、俺やっとわかったんだ――


シンジ(何が?)


――俺たちには辿り着く場所なんていらねぇ。ただ、進み続けるだけでいい。止まんねぇ限り、道は続く――


シンジ(うん)


――俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇ限り、その先に俺はいるぞ! 止まるんじゃねぇぞ……――


シンジ(わかってる。俺も絶対止まらないから)





エヴァQルート、完


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