周子「朝起きたら自分がもう一人いた」 (22)



周子A「というわけで二人でレッスン来たよー」

周子B「やほー塩見周子です」

周子A「いやいやあたしも塩見周子だからね」

周子B「マジで? 偶然じゃん」

奏「ちょっと待ってちょうだい、頭が猛烈に痛くなってきたわ」

※デレステLive Partyのマッチングルームで同名アイドルが複数存在できるというネタです。


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周子A「奏ちゃん大丈夫?」

奏「あまり大丈夫じゃないわ……胡散臭いのが二人いて目眩がしそう」

周子B「ひど。まあとりあえず、この甘いものでも食べて元気だしな」

周子A「あ、あたしも食べようっと。うまー」

奏「ああ、その食い意地。本当に周子が二人いるのね。信じられないけど」

周子A「納得するのそこかーい」

奏「可能性を全て除外して残ったのなら、どんなに荒唐無稽でもそれが真実なのよ……」

周子B「真実はいつも一つ!」

周子A「あたしは二人いるけどねー」

奏「瓜二つすぎて怖いわね……世の中には自分にそっくりな人が二人はいるらしいけど」

周子B「あたしもそっくりさんか生き別れの妹かと思ったんだけどね」

周子A「とりあえずお互いじろじろ見るところからはじまって、最終的に全裸になって見比べたよね」

周子B「あたし結構スタイルよかった」

周子A「うそ、照れるー。ありがとうあたし」

奏「もう突っ込まないわよ」


―――――

奏「で、心当たりはないの?」

周子A「ないねー。志希ちゃんの実験にも最近は首突っ込んでないし」

周子B「この前の誘惑イビル全員幼児化したので懲りたよね」

周子A「あれは傑作だったわー」

奏「思い出させないでよ。一日中面倒見る羽目になったんだから」

周子A「聞いた聞いた。美嘉ちゃんのお姉ちゃんスキルがなかったらやばかったんでしょ」

周子B「でもほら、この世に不思議な事なんてないとも言うし。起こっちゃったものはしょうがなくない?」

周子A「そうだねー。じゃあ予定通り二人、いや三人で自主練習始めようか」

奏「あなたたち適応能力高すぎじゃない? ……はあ、まあいいわ。せっかくこの時間をおさえたんだし、練習してからまた考えましょう」

周子A「じゃあもう一人のあたし、いつもの周子ちゃんパートやってね」

周子B「え? あー、そういうことね了解了解。頭いいじゃんあたし」

周子A「てれてれ」

奏「ちょっと一人……いや、二人で納得しないでよ。どういうこと?」

周子B「普段さ、どうしても自分の動きはビデオで時間差で見ることになるじゃん」

周子A「鏡で見たって常に視線が鏡に向いてるわけでもないしね。それで周子ちゃんは考えたわけです、この機会に自分をじっくりねっとり眺め回そう、と」

周子B「客観的にパフォーマンスを見れるいい機会じゃんラッキー、と」

奏「はあ……ポジティブね」

周子A「なんとかなるさが座右の銘です。さ、そういうわけでミュージックスタート、奏ちゃんもほら立ち位置について?」

奏「はいはい」

周子B「おおーなんか自分に見られてるのすっごい不思議、幽体離脱みたい」

周子A「したことあるんかーい」

周子B「ないよね」

周子A「ないんかーい」

奏「うるささも二倍ね……」


――――

周子A「ふー、いい汗かいたー」

周子B「久々に燃えたわー」

奏「……」

周子A「え、どうしたの奏ちゃん変な顔して」

奏「結局途中からもう一人乱入したのはいいとして、なんであなたフレデリカのパートまで覚えてるのよ」

周子A「実はあたしフレちゃんなんだよね」

周子B「ワーオ!」

奏「真面目に」

周子A「いや、ほら何が起こるかわからないしさ。覚えておくにこしたことはないじゃん」

奏「自分が二人になるとか?」

周子B「さすがにそれは想定してなかったけど、例えばアクシデントでフレちゃんが急にコケたとか」

周子A「そうなった時にせめてさ、奏ちゃんの両脇のどちらもサポートできるようにはしておきたいじゃん」

奏「周子……あなた」

フレデリカ「実は前に周子ちゃんと『あたしたちこっそり入れ替わってたら面白くない?』って話しただけなんだけどねー」

周子A「こらこら宮本さんバラしちゃダメですよ。というか今どこから来たん?」

周子B「フレちゃんは相変わらず神出鬼没やねー」

フレ「はろはろー、呼ばれて飛び出てフレちゃんだよー。呼ばれてないけどねー。あれ、なんで周子ちゃん二人いるの?」

奏「ああ……話がややこしく」

周子A「実はあたし双子だったんだよね」

フレ「うそっ、知らなかった! ねえねえ、じゃあもう一人は佐藤周子さんなの?」

周子B「あはは、名字変えたらもう姉妹じゃないじゃん」

周子A「変えんのそっちかーい」

奏「あのね、フレデリカ。信じられないかもしれないけど、周子が突然二人になったのよ」

フレ「びっくり! でもそういうこともあるよねー」

周子A「かるっ」

フレ「えー、でも前にフレちゃん事務所の椅子でぐるぐる回って遊んでたんだけどね、そしたら志希ちゃんが二人になってびっくりしたよ」

周子B「目回ってるだけだよね」

奏「何してるのよ……」

フレ「冗談はさておきー、本当に周子ちゃん二人になったんだね。なんか手伝うことある?」

周子B「いや大丈夫大丈夫。どうせ明日になったらもとに戻るでしょ」

周子A「あたしたち魔法にかけられたシンデレラだしねー、たまにはこういうこともあるよ。心配ありがとフレちゃん」

フレ「いいのいいのー、じゃ、フレちゃんはこれから志希フレしてくるのでさよならー」

周子B「ばいばいー」

奏「段々順応してきた自分が怖いわ……」

フレ「あ、奏ちゃん」

奏「ん、なに?」

フレ「何かあったら電話していいからねー」

奏「ふふ、大丈夫よ。ぐうたらが二人になったところで困らないわ」

周子A「ひどっ」

フレ「増えても周子ちゃんは周子ちゃんだねー、じゃあ今度こそばいばーい」

周子B「あたしが増えてることみんなには内緒だよー」


―――――

周子A「さてさて、シャワーも浴びたしお買い物でも行きますか」

奏「はあ……」

周子B「奏ちゃんシャンプー借りたのまだ怒ってるの? ごめんってば、消費量も二倍になっちゃって」

周子A「うちの子がご迷惑をおかけしました」

奏「わざわざ私を挟んでシャワーブースに入ったから嫌な予感はしたのよね……」

周子B「いやーさすがに3人で奏ちゃんのとこは狭かったね」

周子A「お互い同時にシャンプーもらいにいってねーあはは」

奏「もうお嫁に行けないわ」

周子B「最悪あたしがもらってあげるから心配しなくていいよ」

奏「最悪なのね……」

周子A「そんなことより買い物行こうよ買い物。あたし春服ほしい」

周子B「欲しかったっけ?」

周子A「まあそこそこー。いやほら、思ったんだけどさ、自分が着てるところもう一人の自分が確認できるのって試着最強じゃない?」

周子B「あたし……やはり天才か……」

奏「ちょっとちょっと、もしかして本当にこのまま買い物行くつもり?」

周子A「最初からそういう予定だったじゃん」

奏「あなた今二人なのよ?」

周子B「え、二人じゃだめ?」

奏「あのねえ、周子みたいなのが二人もいたら目立ってしょうがないわよ。ただでさえあなたは自然と人目を引くんだから……」

周子A「もしかしてあたし今褒められてる?」

周子B「聞きましたか塩見さん」

周子A「奏ちゃんもついにあたしの魅力に気づいたかー」

奏「自分の髪の色を思い出してから言いなさい」

周子B「変装しておけばいいでしょー多分」

周子A「帽子被って伊達メガネかけてマスクしてればわかんないって」

奏「そうかしら……」

周子B「顔が似てる姉妹だって思ってくれるって。あるいはあたし男装しようか?」

周子A「あはは」

奏「これ以上ややこしくしないで。……本当に行くの? 何が起こっても知らないわよ」

周子B「心配症だねえ奏ちゃんは」

奏「……いいわ、行きましょう」

周子A「そうこなくっちゃ」

奏「一番困ってるのは多分他でもない周子だものね。とりあえず今は非日常を楽しみましょうか」

周子B「そうそう、なるようになるよ」

奏「もう、そればっかり」

周子A「両手に花なんだからもっと喜んでよー」

奏「前門の虎、後門の狼の間違いでしょう」


―――――

周子B「遊んだ遊んだー」

周子A「いやー、一生分遊んだわ。さすがあたし」

奏「まさか自分同士でダーツ対決をはじめるとはね」

周子B「どっちが強いか気になるじゃん」

周子A「自分に打ち勝つのがアイドル道なんですよ」

奏「はいはい」

周子B「奏ちゃんは楽しくなかった?」

奏「楽しくなかったというと嘘になるけど、二倍疲れたのも事実ね」

周子A「そもそも行く前にたくさん体動かしたしね。あたし、寮に戻ったらすぐ寝ちゃいそうだよ」

周子B「どっちが先に寝るか競争ね」

周子A「お、いいねー」

奏「……なんというか」

周子A「ん?」

奏「色々と考えさせられたわ、周子が二人になって」

周子B「あたしの魅力に?」

奏「言ってなさい。これはただの独り言だと思って聞いてほしいんだけど、ほら、アイドルってもう一人の自分を作ることじゃない。たまに思うのよね、自分ってなんなんだろうって」

周子A「うん」

周子B「わかるよ」

奏「でもね、今日のあなた……あなたたちを見て思ったわ、どうしたって自分は自分なんだって」

周子A「そうだね。あたしはあたしだし」

周子B「奏ちゃんは奏ちゃんだね。もう一人のあたしが思うんだから間違いないよ」

奏「ふふ、なにそれ」

周子A「なんかね、昼間練習の時にパフォーマンスしてる奏ちゃんとあたしを見て思ったんだ、ああ、あたしって今恵まれてるなって」

奏「うん?」

周子A「こんなに素敵な子がすぐ近くにいて、しかもその隣で見たことないほどいい顔して踊ってる自分がいるなんて、こうやってアイドルやりにくるまで想像もしなかったことだよ」

周子B「照れるわー」

周子A「自分が二人になったことよりこっちの方がずっと不思議だよ」

周子B「奇跡なんて毎日起きてるんだよねー、自然すぎて気づかないだけで」

奏「そう、かもね」

周子A「だからさ、奏ちゃん」

奏「なに? 周子」

周子B「あのさ、真面目な話なんだけど……」

奏「え、うん……急にそんな顔しないでよ、待って、私にも心の準備が」

周子A「だめ待てない。いいから、聞いて一回しか言わないから」

奏「ちょっと、周子待って私……」

周子A「……もし奏ちゃんが二人になったら、あたしが面倒見てあげるからね」

奏「……は?」

周子B「いやマジマジ。お世話になったしねー」

奏「はあ……二人揃っても周子は周子ね。私が間違ってたわ」

周子A「へ、ひどくない?」

周子B「あたしたちなりの感謝の言葉なのにー」

奏「バカ言ってないで帰るわよ」

周子A「はいはいー」

周子B「ねえあたしも荷物持ってよ、重いんだけどこれ」



―――――

周子A「じゃ、おやすみー」

周子B「今日はありがとね」

奏「……ねえ、もしこのままずっと二人だったらどうするの」

周子A「どうって?」

奏「みんながみんなフレちゃんみたいなわけじゃないってこと。あなたが二人いたってアイドル塩見周子は一人しかいないのよ」

周子B「明日になったら一人に戻るでしょ」

奏「嘘、本当はそんなの思ってないくせに」

周子A「鋭いなー」

周子B「奏ちゃんには隠せないか」

奏「何か考えてる?」

周子A「うーん……まあ最悪どっちかがいなくなればいいかなって」

周子B「片方が実家に戻って看板娘に戻るとかね」

周子A「海外旅行とか行ってもいいかも。髪黒染めして偽名使ってさ、世界一周の旅」

周子B「え、それ普通に楽しそうじゃん」

周子A「でしょでしょ。世界各地に塩見周子参上って書いてくるわー……て、ちょっとちょっと奏ちゃんどうしたん」

周子B「え? マジ泣き? 冗談だからね?」

奏「泣いてないわ、怒ってるの」

周子A「ごめんて、今のなしだから」

奏「二度と言わないで、そんなこと。自分を大事にして」

周子B「わかったわかった、約束する。だからほら、涙拭いて」

奏「ないてない。……明日になっても二人だったらちゃんと相談しましょう。約束」

周子A「うん」

奏「勝手に消えないで、どっちもよ。どっちも周子なんだから」

周子B「うん」

―――――

周子「おやすみ、奏ちゃん」

奏「おやすみ……周子」

―――――

周子「はー、やっぱり朝起きたら一人に戻ってたわ……それとも全部夢だったかな? 変なものたべた覚えはないんだけど。まあいいや、とりあえず今日も練習しに行きましょうかね。周子ちゃん真面目だな……って……」

奏A「あら、おはよう周子」

奏B「どうしたのよ、水槽をつつかれたクラゲみたいな顔して」

周子「マジかーそうくるかー」

奏A「あ、これ? なんだか知らないけど朝起きたら二人になってたのよね」

奏B「まるで光と影……太陽と月……さながら私はコインの表と裏」

奏A「女は二つの顔を持つのよ、わかる?」

周子「うわめんどくさっ、奏ちゃんめんどくさっ」

奏B「なんで二回言ったのよ」

周子「……しゃーない、約束通り今日はあたしが面倒見ますかね」





(We're Here Because We're Here)

以上です、ありがとうございました。HTML依頼出してきます。

周子「真実ゲーム!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471787253/)
周子「一人より二人、二人より三人」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474289132/)
昔書いたものです

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