生きてない女の子と、死んでたくない男の子(29)

AM8:00 保健室

女「失礼します」

保険医「あら、いらっしゃい!」



女「……」

保険医「……」


女「……」

保険医「……」




女「……」

保険医「……」


女「……」

保険医「……」




女「……」

保険医「……」


保険医「えっと、今日も授業は出れなさそう?」

女「……」








女「は、い」


保険医「そっか、うんうん! それでもいいよ!!」

女「……」


保険医「貴女が、とりあえずココに来てくれる!」

保険医「それだけで、私は嬉しいんだもの!!」

女「……」


保険医「あっ、そうそう! 実」

保険医「私、実家が静岡なんだけど、美味しいお茶とお菓子を送ってくれたんだ♪」

女「……」


保険医「ちょうど持ってきたから、貴女もどうぞ!」

保険医「お湯も沸いてるし、おいしくおいしくお茶淹れるからね~」





女「……はい」

保険医「うんうん!」

>>6
×保険医「あっ、そうそう! 実」

○保険医「あっ、そうそう!」

保険医「~♪」

女「……」






女「あの」

保険医「えっ、何かしら!!!」


女「すい、ません……今日も私は、その、」

保険医「あっ、アレよね。分かってるわ」





保険医「担任の先生や、授業の先生には上手く言っておくから」

保険医「心配しなくても、だいじょーぶ!」



保険医「今日も無理せず、休んでなさい!」

女「……」


保険医「はいっ、それじゃぁ、粗茶ですが……」

女「」






女「あ、りがとう」

保険医「うふふふ~♪」


ズズズ


保険医(…………)


保険医(悲しいなぁ。すっごい美少女さんなのに)


保険医(このコの瞳から、光が戻らない)



保険医(まるで、死んでいるみたいに)


保険医(もしかしたら、もう二度と……)

てす

PM0:30 保健室



男「どうもー!」

保険医「あらあら、いらっしゃい」


男「今日も、あの子来てます?」

保険医「うーん、さっきまで居たんだけど」

男「あらら」

保険医「調子悪いって言って、お昼で帰っちゃったわ」

男「くそー、入れ違いかぁ……」


男「高校に入れたけど、出席日数は大丈夫かなぁ」

保険医「まぁ、焦ること無いと思うわ。あんなことがあったんですもの」

男「……」

保険医「むしろ、登校できるってだけで大したものよ」

男「確かに、俺の時とはエライ違いだ」


保険医「そう。だから逆に無理してないか心配ね。学校来てくれるのは良いんだけど」

男「難しいっすよね~」


保険医「貴方は?」

男「俺っすか?」

保険医「あれから1年近く経つけど、その、ええと……指とか…………」

男「あぁ、おおむね好調っす」


男「指とかは、天気悪いと手術跡が疼くくらいで、もう3本とも普通に動きはするし」

男「精神的な部分としても、あれかな、落ち込んでる事に飽きたっていうか」

保険医「うんうん」

男「とにかく、前向きな生き方をいていきたいって思うっす」

保険医「そう。なら良かった」


男「まぁとは言え」


男「何かし始めたら、またエライ目に会うとか、他人に迷惑掛けちまって」

男「俺の周りに、もう誰も居なくなっちまうんじゃないか、そう不安にもなるけれど……



保険医「……」

男「でも、そんなリスク含めての生き方だから、今さら後悔はしないっすけどね」


保険医「私はキミの、味方でいてあげるからね。絶対に!」

男「……」


保険医「ホントは、学校や警察が組織だって対応することが正しくて」

保険医「その、私1人の出来ることなんて、大したことじゃないかもしれないけれど」


男「いいっすよ。その気持ちだけで、十分っす」


男「んー、じゃぁ結局どうしよかなー」

保険医「えっ、何が?」


男「いや、お言葉に甘えるって訳じゃないんですが」

男「ちょっと、相談に乗って欲しいことがありまして……」

保険医「ええ、ええ! 何でもどうぞ!!」


男「えっと、あの子に渡したいものがあるんです」

保険医「あらこれは? 手紙??」




男「はい、ラブレターっす!」

保険医「…………!!」


男「どう、でしょうか??」

保険医「……う~ん???」

男「なにかして、元気づけてあげたいんですけど……」



男「やっぱ、今の状況でラブレター渡すなんて、マズイですかねぇ?」

保険医「ちょっと、オススメはできないわ」

男「です、よねぇ。俺とあの子は、面識も殆どない訳ですし……」

保険医「あの子も、君からのラブレターを受け入れられる、」

保険医「そんな余裕もなさそうよ」

男「むむぅ」


保険医「えっ、ところでホンキなの!?」

男「はい? 何がです??」


保険医「その、あの子のこと好きになっちゃったとか……」

男「そりゃもう!! 一日中、あの子のことが気になって仕方ないんです!!」


保険医「……」


男「寝ても覚めてもいつだって、あの子が幸せでいて欲しい」

男「そんな気持ちでいっぱいなんです!」

保険医「……」


男「いやホント」

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