魔王「来たか勇者」勇者「お、おにいちゃん・・・?」 (10)

~魔王城前~

4人の目の前に大きな扉がそびえ立つ。

勇者(女)「ようやくここまで来れた。」

戦士(男)「長い旅だったな。」

賢者(男)「感傷に浸るのはいいですが、まだやることは残っていますよ。」

盗賊(男)「賢者の言うとおりだ。これまで魔王城に来たものなど幾人もいる。大変なのはこの中にいる魔王を倒すことだ。」

戦士「少しは肩の力を抜け盗賊。緊張状態でいることも大切だが、張り詰めてばかりだと精神が参っちまうぞ?」

盗賊「ああ、そうだな・・・」

賢者「それじゃあ行きましょうか?」

4人は大きな扉を開け中に入る。

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~魔王城・ホール~

戦士「静かなもんだ。誰もいないみたいだな。」

賢者「誰もいないみたいじゃなく、実際いないのかもしれませんよ。魔力の波動がひとつしか感じられません。」

盗賊「自信の表れか、ただの過信か、どっちにしても気に喰わないな。」

勇者「進もう。自信があろうと過信だろうとボク達は魔王を倒さないといけないんだから。」



~魔王城・謁見の間~

中に入ると天井が無く、空が見える。

賢者「すごい・・・最上階じゃないのに空が見える・・・」

盗賊「魔法か何かで破壊されたような跡があるな。」

戦士「あそこに座っているのが魔王か?」

勇者「ボク達が来た事はわかっているはずなのに身動きひとつしないなんて・・・」

奥には魔王が王座に頬杖をつき座っていた。

盗賊「過信じゃなくて慢心かもな。俺たちの前にも何百何千という討伐隊がここに来て敗れている。」

戦士「おしゃべりはここまでにして、武器を取れ。」

賢者「そうですね。」

盗賊「よし!」

勇者は3人の準備が出来たのを確認して声を張り上げ名乗りを上げる。

勇者「それじゃあ・・・魔王!人間族に対する数々の侵略および殺戮行為、それは万死に値する!勇者の血族の使命によりお前を・・・」

魔王は立ち上がり、ゆっくりと勇者たちに向かってくる。

遠くで影になっていた王座から魔王の顔がはっきり判る位置まで魔王が歩いてくる。

魔王「来たか勇者」

勇者「お、おにいちゃん・・・?」

戦士「な、どういうことだ!?」

賢者「魔王は勇者の血族ですか?」

盗賊「そんな馬鹿な話が・・・」

魔王「何を勘違いしている。俺は魔族だ。勇者の血族のわけが無いだろう。」

戦士「ならどういうことだ?」

勇者「そんな・・・おにいちゃんが魔王だったなんて・・・」

勇者は座り込んでしまう。

賢者「勇者、座り込まないでください!魔王は目の前なんですよ!」

勇者「そんな・・・無理だよ・・・おにいちゃんに勝つ事なんて出来ない・・・」

魔王「まあ、そうだろうな。誰も俺を・・・1人いないな・・・」

いつの間にか盗賊は魔王の背後に回りこんでいた。

盗賊「間抜けな魔王だな!簡単に後ろを取られるんだからな!」

戦士「盗賊!ダメだ!そこから離れろ!」

盗賊「何を言って・・・いない!?」

魔王は盗賊の背後に回りこむ。

魔王「なるほど。風の魔法で周りの景色に溶け込んで背後に回ったのか。だがそれだけか。」

盗賊「ガハッ・・・」

魔王は盗賊を蹴り飛ばす。

賢者「盗賊!!」

戦士「この野郎!うぉぉぉぉぉ!!」

戦士は魔王に向かっていく。持った剣の刀身に火が燈される。

魔王「ほぉ、剣に火を燈したか。戦士じゃなくて魔法剣士か。面白いな。」

戦士「何とかの一つ覚えでこれしか出来ないけどな!」

戦士の剣を魔王は素手で捕らえる。

賢者「戦士!そのまま押さえつけてください!」

戦士「了解した!!」

賢者が呪文を唱えると戦死と魔王の周囲に水の結界が張られようとする。

魔王「水の結界・・・お前が噂の水の賢者か。何人もの同胞をその水で浄化したらしいな。」

戦士「な、俺の魔力が吸われて・・・グハ・・・」

魔王は戦士の剣を折り、戦士を蹴り飛ばした。それと同時に水の結界が魔王を被う。

賢者「戦士!そんな・・・なんて強さだ・・・」

勇者「だから言ったじゃない・・・おにいちゃんには勝てない・・・」

賢者「勇者!立って下さい!戦って下さい!このままじゃあ全滅してしまいます!」

勇者「無理だよ・・・おにいちゃんは強すぎる・・・」

魔王「水の結界か・・・結構厄介だな。まああれだな、この結界を破壊するまで俺の強さをそちらの賢者様に教えてやればいい。」

魔王は水の結界に手を触れる。

賢者「勇者・・・あなたと魔王の関係はいったい・・・」

勇者「賢者も知っている通り、ボクは勇者の血族でも末端の末端・・・王都で近衛隊をやっている本家とは違ってボクの家族は人族と魔族の国

境境界線の監視をするために最果ての村で暮らしていた・・・」

勇者「ある日の事・・・村はずれで血まみれになっていたおにいちゃんを見つけた・・・一目で魔族だとわかったけど・・・話しに聞いているような

恐ろしい感じじゃなかったからみんなに内緒で薬草を持っていって手当てをした・・・」

勇者「さすがに村に連れて行くわけには行かなかったから村はずれにある小屋で何日か休んでもらっていたんだけど・・・でも・・・どこかでボ

クが小屋に誰かをかくまっているって言うのがばれて・・・ばれて・・・」

賢者「勇者?」

勇者は震えている。

魔王「村人は俺を殺しに来た。だけど俺は村ごと消してやったんだよ。まあ、助けてもらった恩があるから勇者の命は助けたけどな。」

賢者「そ、それじゃあ・・・最果ての村の大虐殺の原因って・・・」

魔王「まあそういうことだ。勇者が俺を助けなければ起こらなかった事だし、少なくともこうやって俺と対面している事はなかっただろう

な。」

賢者「勇者が旅を始めた理由は贖罪・・・」

勇者「・・・それは・・・違うよ・・・ボクが旅に出たのは・・・おにいちゃんに会うため・・・」

賢者「え?どういうことですか?」

勇者「村のみんなを殺しているおにいちゃんは恐ろしかったけど・・・同時に美しいって思ったんだ・・・」

勇者「村のみんなの鮮血に染まっていくお兄ちゃんが美しく見えた・・・それから血を見るたびにあの時のことを思い出してニヤケちゃうんだ・・・」

今も勇者の口角は上がっている。

賢者「・・・勇者が極端に血を恐れるのはトラウマからではなく、その表情を見せないため・・・」

魔王「まあ、小娘がなに思おうと俺には知ったことじゃない。今までの勇者様ご一行と同じで排除するだけだ。」

魔王は水の結界を破壊し、2人の元に歩いていく。

賢者「逃げましょう、勇者。この状態では不利です。」

勇者「・・・ボクは逃げないよ・・・」

賢者「え?何を言って・・・」

勇者は立ち上がる。

勇者「理由は何であれ、ボクは勇者の血族。魔王を倒すのがボクの使命。逃げるんだったら賢者、1人で逃げて・・・ここで逃げても誰も責め

ないよ・・・」

賢者「勇者・・・すいません、弱気になっていました。もちろん私は逃げ・・・」

魔王は賢者を殴り飛ばす。賢者は壁にぶつかり動けなくなってしまった。

勇者「賢者・・・戦士・・・盗賊・・・」

魔王「弱いな。お前の言うとおり、お前らは俺には勝てない。」

勇者「そんな事は無い・・・おにいちゃん、なんでボクが魔王討伐隊に選ばれたと思う?」

魔王「人材不足だろ。結構倒したしな。」

勇者「それももちろんあるかもしれない。でもね、ボクには本家の勇者にも出来ないこの魔法が仕えるからだよ!」

勇者は右掌を天に向け呪文を唱える。すると空に黒雲が集まり勇者の人差し指に雷が落ちる。

勇者に落ちた雷は勇者に帯電した。

魔王「勇者の一族だけが使える雷魔法か。自分に落として帯電させるとは。しかし、防御魔法みせて何だというんだ。」

魔王が瞬きをした瞬間、目の前にいた勇者がいなくなっていた。

魔王「ほう・・・後ろか!」

魔王は振り返りざまに勇者に攻撃をするが、勇者はその場におらず魔王の後ろに再び現れた。

魔王「速いな。俺の目でも追うことが出来ない」

勇者は魔王に攻撃を仕掛けるが、魔王は勇者の腕をつかみ攻撃を防いだ。

魔王「お前をつかんでもはじかれる事が無いって事は体の表皮に帯電させているわけではないのか」

勇者「そうだよ。これは雷の力を借りて筋肉を刺激して一時的にスピードを上げる魔法」

勇者「魔力の調整を失敗すると自分の体がはじけちゃうからボク以外には誰も使う事が出来ない」

勇者「雷速の勇者、それが旅に出るときに王様から頂いた僕の称号だよ」

勇者は魔王の腕を振り解き間合いを開ける

魔王「ははははは、なるほど。そんな小さい体でよくここまで来れたものだと思ったが、それなりに実力はあるってわけか」

魔王「だが、所詮は速いだけ捕まえてしまえば・・・」

魔王は一気に間合いを詰めるが、勇者をつかもうとすると勇者は間合いを一気に広げ逃げてしまう

勇者「無駄だよおにいちゃん。今のボクを捕まえる事は誰にも出来ない」

勇者は言うと同時に間合いを詰め魔王を攻撃し間合いを開く

魔王「ヒットアンドアウェイ・・・戦術としては申し分ないな」

魔王「しかし・・・緒戦は俺を攻撃するために近づいてくる。俺を攻撃する瞬間捕まえてしまえばなんら問題ない」

数回勇者の攻撃を受けた後、魔王は勇者が攻撃してくる瞬間勇者を捕らえた

魔王「力でねじ伏せるタイプではないお前はこうやって捕まえてしまえばもうどうする事も出来ない」

勇者はもがき、逃げ出そうとするが魔王はガッチリつかんで逃がさない

勇者「は、放せ!」

魔王「それじゃあ・・・放してやろう」

魔王は勇者を空高く放り投げた

魔王「それじゃ・・・さよならだ」

魔王は空から落ちてくる勇者に向かい、黒いイカヅチを放った

黒いイカヅチは勇者を貫き、勇者は声を発する事もなく意識を失った



魔王「起きたか?ずいぶんと幸せそうな寝顔だったな」

???「あの日の夢を見ていたから。貴方と戦ったあの日の夢を」

魔王「そうか。お前がまだ勇者と名乗ってたあの頃のか・・・」

???「うん。一度貴方の殺されて、蘇らされて・・・ボクは魔王妃となった」

魔王「すまなかったな。お前を魔族にするには一度殺さなければならなかった」

魔王妃「そんなの気にしないで。ボクは嬉しかった。お兄ちゃんとこうしてずっといられるんだから」

魔王と魔王妃はキスをする

部下「魔王様、出陣の準備が出来ました」

4対の魔物が魔王と魔王妃を呼びに来た

魔王「そうか。ならいくか」

魔王妃「うん。おにいちゃん。」

魔王妃「それに、炎魔、水魔、風魔。ボク達は元人間だけど遠慮はいらないよ。人間を全滅させよう」

炎魔(戦士)「ああ、そうだな。」

水魔(賢者)「こうなってしまっては魔王様に仕えるほかありませんよ」

風魔(盗賊)「俺たちなんてあの時死んだままにされてもおかしくないのに、魔王妃様とともに旅をしたってだけで蘇らせてもらったんだ

から一生の忠誠を誓いますとも」

魔王「ただの気まぐれだ」

魔王妃「それじゃあおにいちゃん、行こう」

それから数日の後、人族は殲滅させられその歴史を閉じた

魔族に唯一対抗できたであろう勇者の一族は魔族には知られていないはずの弱点をつかれ、一番最初に殲滅させられた

これからは全ての国を魔族が支配していく事となるのだが、それが永遠に続くかは誰も知らない

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