最初のファンから、駆け出すキミへ(小日向美穂If小説) (18)

初めまして、VIPの使い方すら調べながら書き込んでる新参者です。SS書きました。


TwitetrでRTで回ってきた「もしshabon songのイベントコミュ一話を熊本のガチ幼馴染が見ていたら。」というツイートに着想を得て
「小日向美穂ちゃんにもし幼馴染が居たら彼の目には小日向美穂ちゃんの門出はどう映るか。」
というコンセプトで小日向美穂ちゃんの熊本からの旅立ちのIf小説を書かせて頂きました。

公式設定からの変更点として、元から上京して養成所に通っていたのではなく熊本の養成所から東京へ上京したという事にしています。

モバマスのSS(?)を書くのは初の試みでしたが、精一杯書きました。
プロデューサーの皆さんの感想、ちょっと怖くもありますがお待ちしております。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491146139

詳しい使い方よく分かんないんで本文貼っていきます・・・

高校二年生が終わった春休み、熊本の某所の一軒家で彼はくつろいでいた。
『あのねっ、突然なんだけど――』
昼過ぎの居間でソファーに横たわりながらテレビを点けると、よく知った顔が映っていた。
画面の向こうで夕焼けの河川敷に立つ彼女の名前は小日向美穂。今、人気沸騰中の正統派美少女アイドルだ。草食系男子、肉食系女子などと揶揄される事も増えてきた今日、恥ずかしがり屋で物腰の柔らかい彼女の性格はテレビの前の男子達を虜にしている。
『明日も私と一緒に帰ってくれますか?』
すぐにスマホに目を戻しSNSを見ていた彼はテレビからの声にはっとする。
テレビに目をやると芝居とは思えないほど赤面した彼女の姿があった。
『……あなたの事が昔から、ずっと大好きですっ!』
その台詞に胸を締め付けられた。それはあの日言えなかった、言わなかった言葉だった。
ふと、窓の外の景色に目をやる。町から少し外れた立地の家の窓からは山麓の道に並んでいる桜が風にそよいで花びらを散らせる姿が見えた。
その道は、何度も「二人で」通った道。
「かーちゃん、ちょっとチャリ使うね。」
「んー?あんた今日午後部活じゃないのー?」
「飯も食ったしすぐ戻るよ!」
玄関先のママチャリに跨って坂を下る。どうしてこんな事をしているのか自分でもよく分からなかった。ただ、あの桜をもっと近くで見たい。そう思った。

呼び鈴の音で目が覚めた。時刻は六時半。もぞもぞとベッドから這い出してワイシャツをハンガーごと窓枠の出っ張りからもぎ取る。
俺の名前は坂門淳(さかど あつし)。熊本の田舎に住んでる、どこにでも居る陸上部の脳筋だ。そして俺には物心付く以前からの幼馴染が居る。
「あっちゃーん!まだ寝てるのー?朝練遅刻するよー!!」
ガララッと玄関の戸の開く音、トントンと階段を登る音、そして部屋の扉が開いた。
「えぇっ、まだ着替えてないの!?ほんとに遅刻しちゃうよ!?」
上半身裸の俺を見て慌てて目を背けるこいつが俺の幼馴染の小日向美穂だ。
「分かってんよ、お前勝手に人んち上がるなって言ってんだろ……」
顔を背け、耳を赤くしたまま美穂は手を振って答える。
「でっ、でも私が起こさないとあっちゃんいっつも寝坊するから……」
「もうガキじゃねーんだからいいっての。」
口ではそう返すけれど、美穂が起こしてくれないと遅刻するのは事実なので強くは言えないし、有難いとも思ってはいる。ただ、それをちゃんと言えたことは無い。
淳の家は農家なので祖父母も両親も早くに起きて淳を放って様々な所へ出掛けてしまう。
なので淳は自分で起きて祖母が作り置きしてくれる朝食を温めて食べなければいけないのだが高校生になった今でも一人で早起きする事が出来ない。以前町に出かけた時に目覚まし時計を買ったが、翌朝自分の手刀でスヌーズのボタンを壊していた。
「じゃ、じゃあご飯あっためておくから早く着替えて降りてきてね!」
美穂はこちらを向かないまま降りていった。着替えながら何となく、この日常はいつまで続くのだろう、と思った。普通に考えれば高校生の男女の距離感としては異常だし、大学生になればお互い大学に通う為に一人暮らしをしなければいけなくなる。きっと、長くてもあと三年――
ふと、胸がちくりとした。
目を擦りながら朝飯を食べて、ママチャリの荷台にゴム紐でボストンバッグを括り付ける。腕時計が示す時間は六時五十五分。これなら朝練にも間に合いそうだ。
「ほら、早く行こうよ。」
「んー。」
家の前の道は家の裏の畑を中心に大きくU字の坂道になっている。丁度その中間地点の辺りに美穂の家があり、坂道の終わりは桜並木になっている。
「もうすっかり葉桜だねぇ。」
自転車を流しながら後ろで美穂が呟く。
「そろそろ中間テストだなー。」
「私は大丈夫だけど。あっちゃんはちゃんと高校の勉強分かってる?」
「当たり前だろ、余裕だわ余裕。」
「へぇー、じゃあ学年順位下だった方が上だった方にでこポンタルト!」
――いつか終わるとしてももう少し、この日常を楽しんで居よう。そう思った。

少しだけ前の話だが、高校に上がってから美穂は部活に入らずにアイドル養成所に通い始めた。緊張しぃな彼女は人前で何かをするのが人一倍苦手で、中一の合唱祭の時の話は今でもタブーだ。そんな彼女がアイドル養成所に通うと聞いた時には笑ってしまった。
そしてその時初めて美穂を本気で怒らせ、俺は美穂が中学生になる頃まで度々言っていた「あいどるになりたい!」は今でも表に出さないだけでまだ思い続けていたのだと知り、本気で謝り何とか許してもらえた。
アイドル、それはとても、とても多くの人間を笑顔にして、感動させて、愛される、現代の偶像と言っても過言ではない存在だ。
美穂が昔から人の笑顔が見るのが好きだったのは俺がきっと一番知っている。
そしてその彼女が変わりたいと、アイドルを目指す気持ちの強さもきっと。




「じゃあ、俺がアイドル小日向美穂の最初のファン……とか言ったら笑う?」
許してもらった時に、冗談でそんな事を聞いた。
「ううん、嬉しい。」

恥ずかしがると思っていた俺は、いつもと変わらない微笑みを返されて何も返せなかった。

――あぁ、そっか。

そして自分が今、目の前の少女に恋をしている事を知った。

冬の冷え込む日、部活が終わり家に向かう長い上り坂に入る時美穂とはち合わせた。
「ん、今日も養成所?」
「そうだよ、レッスンに夢中になってたら遅くなっちゃった。」
「もう日も短いんだし帰り遅くなったら言えよ、危ないし。」
「ありがとう、そうしようかな。」
二人で並んで、自転車を押して坂を登る。
「なぁ、部活に入ってなくても友達はちゃんと出来てるか?」
本人の意向で俺以外の学校の人間には美穂が養成所に通っていることは内緒になっている。
新生活での人間関係の構築において部活がそこそこ手助けになる事は身をもって感じているので少し気掛かりだった。今更な気もするが今なら聞ける気がした。
「うん、大丈夫だよ。クラスのみんなは優しくって、ほんとに今のクラスで良かったなって思ってるよ。」
「そっか、なら良かった。あ、あとさ……やっぱなんでもない。」
「う、うん?」
クラスに仲のいい男子が居るのか、なんて聞けるわけがない。そんな事聞いたらあなたの事が気になってますって言ってるようなものじゃないか。
「変なあっちゃん。」
隣でいつもの笑顔が咲いた。
――この笑顔がいつまでも俺の隣にあればいいのになぁ。



「あいどるになりたい!」



また、胸がちくりとした。

そして、その時は突然訪れた。
三学期の期末試験も終わり、高校は採点の為の家庭学習期間に入っていた。
「1、2、3、ステップ!レッスン、楽しいなぁ……。これで私もアイドル気分!なんて。」
美穂はメニューが終わり、他の生徒が帰ったレッスンルームで一人で自主練をしていた。そう言えば先程から先生の姿が見えない。
「すみません、小日向美穂さんですか?」
「えっ、はっ、はい!?」
突然声をかけられて驚き、美穂は尻餅をついてしまった。話し掛けてきた男性は優しく微笑むと手を差し出してくる。
「お手をどうぞ。……驚かせてしまって申し訳ありません。自分は美城プロダクション所属のアイドル部門でプロデューサーをしている鈴木慎吾(すずき しんご)と申します。」
鈴木と名乗る男は美穂を起こすと名刺を渡してきた。二か月前、美穂がダメ元で、はるばる熊本市まで行ってオーディションを受けてきた、誰もがその名を知る東京の老舗芸能プロダクションだ。多くの有名俳優や歌手が所属しており、半年ほど前からアイドル業界への進出を発表した事で世間を騒がせている。
「えぇっ!?み、みし、みしろっ、ぷぷぷろだく……あっ!はじめますて!じゃなくて……!」
鈴木は慌てふためく美穂が落ち着くのを優しく待っていた。
「……お見苦しい姿を見せてしまってすみません、それで今日は私に何の御用でしょうか……?」
「いいえ、お気になさらず。本日は小日向さんが先日受けて頂いたオーディションの結果をお伝えに参りました。」
「ちょ、直接ですか……?」
「はい。たまたま熊本市の方に出張で来ていまして、せっかくなので。それで、結果のほうですが、合格です。是非とも我がプロダクションの新進気鋭のアイドルプロジェクト、『シンデレラガールズ』の候補生になって頂けないかとご相談に伺った次第です。」
「へ……候補生?」
「はい。形式上まだ候補生ですが、上京後レッスン等を受けて頂き、基本的にはそのまま候補生全員に正式にシンデレラガールズのメンバーとなって頂く予定です。」
放心状態に陥っていた美穂はしばらくして返事を返す。
「あ……ありがとうございますっ、私やります!熊本の女は、我慢強くて強気なんですっ。見捨てられないよう頑張ります!」
「ありがとうございます、これからどうぞよろしくお願いします。それでは、また後日詳しい日程の説明や各種書類のお渡し、記入などをお願いしたいのでまたお伺いしたいのですが――」

上り坂の入口でまた美穂とはち合わせた。
「あ!あっちゃん!!」
いつにも増して機嫌が良いらしく、立ち漕ぎでこちらに向かってくる。
「ん、お疲れ。どうしたんだよ、随分ご機嫌みたいだけど。」
「私、アイドルになれるよ!なれるんだよ!!しかも美城プロ!!」
「えっ……」
それは――
「そっか……やったな!夢、叶ったじゃん!」
「うん、それで……あ、あっちゃん?なんで泣いてるの!?」
「え……あぁ、きっと嬉し泣きだよ……」
「違うよ。」
そりゃあお前なら分かるよな、畜生。
自転車を立てて美穂の肩を掴む。
「ひゃっ!?」
数年ぶりに触れた美穂の方は淳の手のひらには小さく、とても脆いものに感じた。
「美穂、俺さ。」
「う、うん。」
美穂は照れるような、怯えるような様子で固まっている。
これが最後のチャンスになるかもしれない。だから。
「俺さ、ずっと――」


言いかけた時、いつか聞いた声が聞こえた気がした。


「あいどるになりたい!」

「っ!!」
手を放して、自転車を押して振り返らず駆け出す。胸がいっぱいになり、視界が涙で滲み、嗚咽が込み上げてもなお家を目指す。
「あっちゃん!待ってよあっちゃん!!」
追う美穂の声も淳には届かない。陸上部の淳に美穂が追いつける訳もなく淳は家に入ってしまった。
「あっちゃん……まってよ……」
息も絶え絶えに淳の家に着いた美穂はいつもの様に淳の家に入ろうとドアに手を掛け、そして初めて躊躇った。
「あっちゃん……」

息も整わないままベッドに倒れ込む。
「なんで俺は……くそっくそっ!!」
美穂の夢が叶うのに、それは自分に取っても嬉しい事の筈なのに、あの瞬間、悲しくなった自分が許せなかった。それどころか自分は。
「くそ!!」

翌日の朝、美穂が家を出ると淳は家の前で待っていた。
「あっちゃん……」
「その……昨日はごめん。俺、ちょっと混乱してた。」
「ううん、気にしなくていいよ。」
いつも通り並んで走る二人に会話は起きなかった。

日中の授業も午後の部活も、淳は上の空だった。グラウンドで明日の朝練の為に塩カルをまいている時、先輩に尻を蹴飛ばされた。
「いたっ!?」
「坂門ぉ、お前今日どうしたんだよ。なんかあったろ。」
「……はい。」
三年の先輩は微笑むと、ぽんと肩を叩いた。
「お前、明日部活出なくていいから。」
「えっ!?」
「その代わり、明後日にはいつものお前に戻れよ。無理なら今無理だって言え。」
どれが一番いい選択肢なのかは分かってる。分かってるんだ。
「……分かりました。」

そしてその日も、上り坂の入口で美穂とはち合わせた。
「あっ……」
「美穂……」
「なぁ――」何を言うかも決まらず言いかけた声は重なった声に消えた。
「ね、ねぇ。明日放課後、一緒に養成所に来ない?」
「え?」
「明日、プロデューサーさんが私の今後について詳しい説明をする為に養成所に来てくれるんだ。もし嫌じゃなかったら、その説明を一緒に……」
上目遣いに誘ってくる美穂の耳は赤い。
「分かった。俺も行くよ。」
美穂、お前は――

翌日、放課後二人で電車に乗って美穂の通う養成所に向かった。高い建物と多くの店が立ち並ぶそこは、普段学校の帰りに友達と寄り道する商店街と比べて都会に感じた。
「ここだよ。」
美穂が足を止めたのは五階建てのビルだった。
「いつもここで……?」
「そうだよ。ほら、入ろう?」
慣れた様子で窓口の女性に挨拶をして、美穂は階段を上がっていく。二階のロビーの隣にある応接室に背の高い男性が待っていた。
「鈴木さん、お待たせしてすみません!」
鈴木と呼ばれた男性はこちらを向き、淳に気付くと僅かに片眉を上げたように見えた。
「こんにちは小日向さん。そちらの方は?」
「あっ、えっと、彼は私の幼馴染の坂門淳と言う者で……今日の説明を一緒に聞いてもいいですか……?」
「なるほど……分かりました、初めまして、坂門さん。お二人ともどうぞ、おかけになって下さい。」
それからは二人は淡々と、淳に触れること無く会話を進めていった。美穂は新年度から都内のプロダクションの女子寮で寮生活になること。恐らく今後多忙になり地元に仕事以外で来れるのは年に数回だろうと言うこと。そして、
「坂門さんには大変申し訳ないのですが……小日向さんがアイドルになる以上、スキャンダル等の防止の為、親族以外の異性の方とのプライベートでのやり取りは極力控えて頂きたいのですが……お二人共、ご理解頂けますか?」
「はい。」
即答した淳を美穂は驚いて横目で見てきた。
「……はい。」
「……ありがとうございます。」


説明が一通り終わった後、鈴木は美穂に思わぬ事を頼んだ。
「小日向さん。少し、席を外して頂けますか?」
「えっ?は、はい。分かりました。」
美穂が部屋を後にすると応接室は机を挟み、ソファーに座る淳と鈴木の二人きりになった。
「淳くん。」
明らかに先程とは違う優しい鈴木の声色に驚いた。
「は、はい。」
「これで、いいんだね?」
全てを見透かした鈴木の質問に、胸がいっぱいになった。

美穂と一緒に居たい。

これからも朝、一緒に登校したい。

あの桜並木を一緒に通りたい。

そしていつかは、この思いを伝えて、一緒になりたい。

――だけど。美穂の夢がそこにあるから。
アイドルの小日向美穂が笑顔にする人がきっと未来で待っているから。
坂門淳という一人は、幼馴染として、そして「最初のファン」として。
彼女を送り出すんだ。


「…………はい。」
気が付かないうちに泣きじゃくっていた。
「君は最高のファン一号だよ。……本当にありがとう。」
鈴木が隣に座り、ハンカチを渡してくれた。淳の背中をさする手はとても頼れる大きな手に感じた。
「美穂の夢……叶えてあげてください。」
「あぁ。君達の夢、確かに任されたよ。」

目を腫らしてて出てきた淳を見て、美穂は何も言わなかった。
「それでは、私はこれで。」
「あっ、ありがとうございました!……あっちゃん、私達も帰ろうか。」
「……おう。」



美穂の家の前に着くまで、二人は一言も言葉を交わさなかった。
門扉の前で美穂が振り返る。
「あっちゃん、私ね、あっちゃんの――」
「明日から春休みだな。」
「あっちゃん。」
「お互い、来年度に向けて色々頑張ろうな。」
「あっちゃん……うん、頑張ろうね。」
そう言うと、美穂は踵を返し家に入っていった。

――ごめん。美穂。

春休みも残すところ数日となった夜、美穂から淳にメールが届いた。
『明日の昼、熊本空港から発ちます。』
淳は返信せずにメールを閉じた。






「もしもし、あ、先輩。すみません。……明日午後、部活休ませてください。」

淳が空港に着くと、鈴木と共にスーツケースを引いた美穂が待っていた。

「お待たせ。」

「あっちゃん。」

「なんだか変な感じだよ、家族が一人居なくなるみたいでさ。」

「うん……」

「これから都会で寮生活……そしてアイドルに。しんどい事も多いだろうけどお前ならやれるって信じてるからな。なんてったって熊本の女だ。」

「うん……」

「未来で沢山のファンが待ってる、行ってこい。」

「……あっちゃん、私、あっちゃんの事が――」

「言うなよ。」

「昔からずっと――」

「言うなって言ってんだよ。」
静かな、それでいて覇気のある淳の声に美穂は押し黙る。


嬉しい。美穂も同じ気持ちで居てくれた。でも、だからこそ強く、強く胸を締め付けられる。


でもこれは俺の幼馴染の小日向美穂の、そして未来で待ってる「アイドル小日向美穂」のファンの為だから――



涙で視界を滲ませながら。


込み上がる嗚咽を堪えながら。


必死で笑顔を作り、伝える「幼馴染」としての最後のメッセージ。


「美穂。やっぱ、お前は最高の幼馴染だよ。頑張れ。」


「………………うんっ。」


――美穂は、笑ってくれた。

坂を下り終わり、桜並木の下で自転車を止める。

馴染みの道を一人で歩く。あれから、一度だけ美穂が公衆電話で電話を掛けてきた時があった。慣れない都会での生活や寂しさ、社会人としての責任や、給料を貰って人前でパフォーマンスする事のプレッシャー、それらを美穂は吐き出すように淳に話した。そして、ひとしきり話し終えると
『じゃあ、あっちゃん達ファンの為に頑張るね!』と。
『アイドル人生全うしたら、いつでも帰ってくればいいよ。その時は幼馴染として待ってるから。』
『……ふふっ。いつになるかな?長生きするつもりだよ?』


ひゅうっ。

強い風が吹き、ふと見上げると桜の花びらが空高く待っていた。

「美穂。お前は今、ここからでも分かるくらい輝いてるよ。」

舞った花びらが、どこまでも届くような、そんな気がした。
                         fin

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