男「恋愛感情とは性欲に基づく錯覚である」女「それで?」 (12)

また妄想が貯まりましたので垂れ流しさせていただきますー

例のごとく今回も短めです。それではよろしくお願いします。

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男「故に恋愛感情というものは存在しない」

女「君は随分と悲しいことを言うんだね」

男「しかしそれは事実だ」

女「それは肯定していいものなのだろうか?」

男「動物というものは種を後世に残していくために異性と交わり、子を成す。それを支配しているのは本能であり、性欲だ。つまり恋愛感情というものは性欲に基づく錯覚であるはずだ」

女「では君は誰かを愛するということは自分が自らの欲を満たすための手段でしか無いと言うのかい? つまり恋は存在しないと?」

男「まさしく然りだ。僕は恋の存在を否定する」

女「しかし、人類の歴史を鑑みても恋の存在は証明しているんじゃないのかい?」

男「それこそ錯覚なのだ。恋という存在を信じた人間が起こす錯覚だ。人間は損得勘定でしか動かない。人間は欲に忠実な生き物なんだよ」

女「損得勘定か……。ところで君は最近テレビを見たかい?」

男「まぁ、ニュースは一応見たりするが」

女「昨今、よく取り沙汰される著名人達の不倫報道があるね」

男「ああ、あるな」

女「あれはどうなんだい? 発覚された場合、自分たちの地位や名誉が窮地に陥るリスクを孕んでいるが」

男「バレないと思ったのだろう」

女「しかし、バレたら一巻の終わりだ。今までの苦労が全て水泡に帰する。それなのに彼らは求めてしまう。衝動的に。その衝動こそが恋なのじゃないのかい?」

男「君は不倫を恋と呼ぶのか?」

女「例に挙げただけだよ。でもこれこそ人間が損得勘定以外でも動くという証拠にはならないか?」

男「詭弁だ。それは性欲に忠実になっただけともとれるじゃないか」

女「そうだね。だがこれで君の理論の一つは瓦解したとも言えるだろう? 人間は損得勘定だけでは動かないということは証明されたわけだ」

男「いやしかし、それは一般的な価値観であって不倫した当事者にとってはそうでは無かったとは言えなくもないのではないか?」

女「でも君は『全ての人間は損得勘定で動く』という話をしているのだろう? だったら私は1%でも損得勘定で動かない人間がいるということを証明すればいいだけの話だ。違うかい?」

男「むぅ、確かに……」

女「では次に恋の存在の証明についてだが……」

男「証明できるのか?」

女「証明して欲しいのかい?」ジッ

男「……で、できるものなら」

女「どうした男。動揺している様だがなにかあったのかい?」フフッ

男「僕が動揺などするわけがないだろう! 馬鹿なことを言ってもらっては困る!」

女「ふーん?」クスクス

男「いいから証明してもらおう! 恋の存在とやらを!」

女「ああ、そんなものは簡単だ。男、手を貸してくれないか?」

男「手を貸す?」

女「君の右手を証明に使用したいんだ。いいかい?」

男「こういうことか?」スッ

女「ありがとう。断られたらどうしようかと思ったよ」

男「そんな簡単なこと、断るわけがないだろう?」

女「いや、君が私のことを嫌いだという可能性も捨てきれないからね」

男「バカなことを言うな! むしろ僕は君のことが……!」ハッ

女「君のことが? なんだい? 続きを教えてくれないか?」

男「そ、そんなことよりも恋の証明を先にしてもらおうか!」

女「ふふっ、君は幾分とケチだね?」

男「ケチではない! 来るべき時に蓄えているだけだ!」

女「わかったわかった。では恋について証明するとしようか」

男「ああ、よろしく頼む」


ギュッ


男「え?」

女「これがその証明だ」ニコッ

男「て、ててててを握ることががががが?」ガタガタガタ

女「落ち着きたまえ」

男「わわわわたしは落ち着いているるるるる」ガタガタガタ

女「なんだ君は、女性経験というものが無いのか?」クスッ

男「どど童貞ちゃうわ!」

女「そうかい。私はいわゆるそういう経験が皆無なのだが」

男「え?」

女「どうやら人生経験の上では君の方が一枚も二枚も上手らしいね」

男「そんなことはどうでもいい! 今の話は恋の証明についてだ! これだけではわからん! 説明しろ!」

女「説明と言っても困ったね、これ以上説明することなど無いのだが……」

男「無い?」

女「男、私はできることならこれからも君と共に過ごしたいと思っている」

男「………」

女「一緒の物を見て、一緒に歩き、一緒に笑い、泣く……そんな当たり前のことをこれからもずっとしていきたいと思っているよ。これは人間の欲を超えたなにかだとは思わないかい?」

男「……しかしそれは結局のところ異性と繋がりたいという人間の性欲からなる錯覚であってそれが恋の証明ということには……」

女「確かに君と繋がることは素敵なことかもしれない。欲も満たされるだろう。だけど……」

男「だけど?」

女「それで終わりじゃないはずだ。私はどんな時も君の存在を感じ取って生きていきたい。いついかなる時も。その気持ちこそが私は恋の存在だと思うよ。君は違うのかい?」

男「………」

女「最近の君はどうにも変だった。心配したんだよ? 遂に私の愛しき人は元から変だった頭を更にこじらせてしまったのかと」

男「随分な言い草だな」

女「君に好いてる異性から『恋心は性欲だ』なんて言われるこっちの身にもなって欲しいよ。中々の衝撃だからね」

男「……すまない」

女「私は寛大だから許してあげよう」フフッ

男「……怖くなったのだ」

女「怖い?」

男「君にこの気持ちをぶつけることが怖くなった」

男「君を好きだと認識した時に僕は君といわゆるその……」

女「性交渉かい?」

男「はっきり言わないでくれないか!」

女「君が言葉を濁すからだよ。早く話を進めてくれないかい?」

男「……そのいわゆる『それ』をしたいと思ったんだ。そしてそんなことを思ってしまった自分を『汚い』と思った」

男「結局はそれ目当てだったのかと。君に惹かれたこの気持ちも結局は性欲に基づく衝動だったのかと思うと自分が許せなかった」

女「だからあんなことを言ったのか」

男「ああ、そんな僕に君を好きでいる資格なんて無いと思ったから……」

女「……そうか」

男「軽蔑しただろう?」

女「君は自分のことをインテリぶる癖に中身はとびきりの馬鹿だね」

男「なっ!?」

女「なんだその外見は小難しい癖に中身を見たら中二の夏みたいな下世話な悩みは。聞いているこっちが恥ずかしくなるよ」

男「なんだと!? こっちは真剣に……!?」

女「だけど……」スッ

男「なんだ?」


ダキッ!


男「……!!」

女「そこまで真剣に考えてくれたと思うととても嬉しくなるじゃないか」

男「あ、あう……」ワタワタ

女「嬉しいよ、男。君が僕のことを好いてくれるなんて。幸せとはこういうことを言うんだね」

男「おおおおう……!!」

女「男。女性がここまでしているんだ。そっと抱きしめてくれたっていいんじゃないか?」

男「だ、抱き!?」

女「これだから童貞は……」ハア

男「童貞じゃない!」

女「ほう? だったら私以外の誰と肌を重ねたと言うんだい? 良ければ教えてくれないか?」

男「え? あ、いや……」

女「できればその時の状況を詳しく頼むよ」

男「お前、なんか楽しそうじゃないか?」

女「楽しいもんか! 私の嫉妬心は今にも天高く燃え上がりそうだよ! 地獄の業火もぬるいと感じるくらい赤々とね!」ゴゴゴゴゴ

男(こ、怖ええ!!)

女「まぁいい。これで『今の』君は私のものだ」ポフッ

男「女……」

女「誰にも渡すつもりわないからね? 覚悟しておくといいよ」クスッ

男「……これが恋か」

女「証明完了ってことでいいかい?」

男「……はい。お騒がせしました」

女「よろしい」



終わり

以上です。
お付き合いくださりありがとうございました。

また妄想が貯まったら垂れ流そうと思います。

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