ある中華統一連合海軍少将へのインタビュー (27)
彼らは間違ってなかった。今はみんなそう思っているだろう。
でも逆にみんながそう思ってなかった時だってあったんだ。
むろん今の彼らとの国交に異を唱えるわけじゃない。
ただ、そういう時代もあったってことを忘れないんでほしいんだ。
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みんなが彼らを糾弾した理由は、単なる技術開発での遅れが原因に過ぎないんだ。そう、すぎなかったんだよ。核融合、パルスジェット、量子コンピュータ、そしてなにより、完全なるエコ、要は石油もガスも買わなくなったことさ。
まず初めに中東が怒り出して、僕らが戦力差を問題にして、美国が技術の独占を糾弾した。もう、あの戦争は避けられなかったんだよ。そして僕らは条約上――、戦争に勝った。でも事実上の負けだ。そうだろう?彼らは必死で、僕らのことを思って技術を海外に出さなかったんだ。それを自らこじ開けてしまったのさ。
なに?
やっぱりこういう話はウケが悪いのか…。
んん、と。あれは63年のことだ。僕の艦隊は空母三隻と駆逐艦20隻の艦隊だった。ほかにもいたけどね。覚えているかい?首相が国連で「シャオリーペンクイツ」「シャオリーペンクイツ」と連呼したのを。そんなこと国連で言ってたのにリーペンに対して国連軍の攻撃命令が下されたのはどう思う?
違う違う、どの国もあの国の技術がほしかったのさ。満場一致だったよ。安保理はもちろんね。
まあ、ということで僕の艦隊以外に12ヶ国、数百隻の戦闘艦がリーペンを包囲していたわけさ。真っ先に狙われたのが僕の艦隊だったのは、むしろ幸運だったよ。美国の艦隊の生存者数をしってるかい?ゼロだよ。ゼロ。僕たち相手にはある程度常識的な―――わかったわかった。せかさないでくれ。
僕たちは太平洋側にいたんだ。国連の攻撃決議可決と同時にあの国からは6機の戦闘機が発進した。6機だよ?6機。みんな衛星からの映像を見ながら笑っていたさ。
彼らの戦闘機はすぐ衛星で見える範囲から消えてしまった。だから僕は偵察ドローンの発進を命じたんだ。空母から戦闘機がでて100機以上の小型ドローンをばらまいたのさ。
バイリーといったかな?そうそう、彼らの戦闘機がでてきたバイリー飛行場からは500km離れていた。僕らのコンピュータは彼らの攻撃が始まるまで10分と計算した。でも30分間、なにも起きなかった。その時間懺悔でもすべきだったと後悔しているよ。
30分立った時、ひとつ、二つとドローンと連絡が取れなくなっていった。僕はその時攻撃が始まったと直感したんだ。上空の戦闘機を増やして、レーダーの出力を最大にした。すぐコンタクトはあったよ。彼らの戦闘機はステルスの癖に海面すれすれを超超高速で飛ぶから水しぶきがレーダーに映るんだ。僕らは彼らがミサイルを撃つ前に倒そうと、対空ミサイルを発射した。
僕らのミサイルはすべて彼らの戦闘機に突っ込んだ。だけど一機しか倒せなかった。まあ、それでも艦橋のみんなは大喜びだったよ。誰も疑ったものはいなかったさ。
次に戦闘機が彼らの戦闘機を攻撃していった。彼らの戦闘機はすごかったよ。僕たちの50機近い艦載機相手に、5機で挑んでいくんだ。単純計算で1対
10だろう?それだけでもミサイル10本、僕ら…船を攻撃するためにも必要だしさ、ありえないって気づくべきだったんだ。
リーペンの戦闘機は次々と僕らの戦闘機を倒していった。僕らの戦闘機は全機落とされて、彼らは2機残った。
彼らの戦闘機はそれでもこっちに向かってきた。僕らはレールガンとレーザーを目いっぱい撃ち続けた。彼らは水平線を超え、視認できるようになった。でも、外部カメラには映っていなかったんだ。
そう、カメラには何も映ってなかったよ。僕らはいもしないレーダー画面の虚像を攻撃していたんだ。彼らはすべての船をハッキングして、戦闘機すらハッキングしてだましていたのさ。
僕はすぐレーダーを止めさせた。空母三隻にはチャフをひたすら撒かせて、煙幕を炊いたんだ。艦隊と衛星のデータリンクは気づいた誰かが切ってくれた。
第三警戒航行を命じたよ。拡散ベクトルレーダー以外の一切の電波発信を禁じた。ベクトルレーダーがわからない?わからなくていいさ。まあ、自分から物陰に飛び込んだのさ。
音が聞こえたよ。煙幕のせいで見えなかったけど。初めにやられたのはリャンチンだ。マカオ生まれの最新鋭駆逐艦だった。乗員は200人。生き残りはいないよ。
レーダーはハッキングの原因になる。赤外線は映らない。光学認識はタイミングが遅い。八方ふさがりだったね。だから僕は電子妨害ミサイルの発射を命じたんだ。それらは水平線の向こうで核爆発を起こしてすべての電子機器を使用不能に陥れた。
僕たちも?まさか、電源は爆発前に切るんだ。ひとまず安どしたよ。一瞬だけね。
一回、二回、三回、四回…数えきれない音がして、煙幕の向こうに炎が見えるんだ。結局電子封鎖も煙幕も核電磁パルスも意味がなかった。彼らは一隻ずつ僕の艦隊を壊していったんだ。まあ、でも僕らに対する攻撃はそれだけだった。いや、これでも大損害だが、空母2隻と駆逐艦16隻以外は生きて帰ってきたんだ。たったの五隻とか言うなよ。
彼らの攻撃が衛星のレーザーだって知ったのはそのあとだったよ。潜水艦のソナーで衛星の素粒子砲を照準してたらしいね。脱帽だよ。
…以外に早く話が終わってしまったな。これだけでは長い記事はかけないだろう?
ああ、僕はそのあと美艦隊に乗り込んで上陸部隊の指揮を執ることになる。僕の艦隊は後退しながら戦闘能力を回復させていった。それで僕に美艦隊に赴くよう通信が飛んできた。
僕はチョンチンの艦載ヘリに乗り込んで4機の護衛戦闘機と美艦隊に行くことになった。チョンチンの艦載ヘリが飛び立ってすぐ上空を戦闘機がカバーしはじめた、壮観だったよ。すぐ消えたけど。
艦隊を抜けたとたん、パイロットは護衛の戦闘機がレーダーから消えたとか言い始めたんだ。通信にも応答がなくなった。窓みたら見えるかなと思って覗いたら戦闘機がいたんだ。ただしリーペンの、ね。ステルス戦闘機がヘリの前後上下を
囲ってプレッシャーをかけてきた。死ぬかと思ったね。
…まさか。海戦というのは目の前で起こるものじゃないのさ。結局はディスプレイ上で起こってる上にすぎない。海戦ではいかなるスリルも味わうことはできない。だいたい僚艦だって水平線の向こうだぞ?距離詰めて陣形組むのはビデオの中だけだよ…篠塚戦法?リーペンのか?あれは例外さ。まあ、今回僕の艦隊は煙幕炊くために密集したけどね。
・・・んっ、んん。リーペンの戦闘機はこちらが無武装だからか攻撃せずどっかにいった。
そして元の快適な美艦隊への旅が再開したのさ。
現地時間9時、太平洋ウーダォ沖。遊弋するはずの美艦隊に僕のヘリはついた。旅の途中で電磁妨害に会いまくったが美艦隊に近づけば薄くなっていった。艦隊規模はステルスフリゲート5隻と海中空母2隻、あとは機密艦がいっぱい、らしい。ヘリが5分くらい滞空していたら海面が濁り始めて、空母が浮上してきた。ヘリが着艦したと同時にミサイルが海中から発射された。出迎えは黒人の大尉だったよ。あれはプラズマをぶちまけるミサイルですって教えてくれた。効果なんて僕が知るわけないだろう。どうせリーペンの衛星兵器を無効化してたのさ。
ヘリの形がエレベーターに合わないらしくて艦後方に海中投棄された。僕は一度美艦隊司令官に挨拶してからボートで上陸潜水艦に乗り込んだ。
彼らはすごかったよ。
リーペンの電磁妨害を受け流し、対電子妨害すら行っていた。あの時点でリーペンと同等か少し少ない程度の電子作戦能力を獲得していたわけだ。
理由、知りたいかい?ははは、そりゃそうだ。核融合を作るのに量子コンピュータが必要で量子コンピュータを作るのに核融合の電力が必要とまで言われていたからな。
ああ、ここだけは完全な機密だ。レコーダーも止めてくれ。
ポケットの中にもレコーダー入れているだろう?それも止めるんだ。
美航空宇宙軍はチェンタオリェタオ沖に海中原子炉を立てていたんだ。
基数?あててみな…違う、もっと……っはは、もっとだ。正解は39基だ。電力は海中テーブルでアリューシャンまでもってかれ衛星にプラズマ波で集積される。そして衛星はほかの衛星と光通信で相互に電力や情報を分散して処理する。世界最大の衛星兵器といってもいいんじゃないかな?宇宙に分散させることで極限まで通信能力をあげて量子コンピュータに近づこうとしたんだ。違うよ。空気がなかったり圧力がなかったりで情報にノイズが入らないんだ。リーペン側は陸から豊富な電力で電子攻撃できるのに、それに艦隊で対抗するには無理がある。それで条約で攻撃できない宇宙に一大衛星コンピュータ網をつくったんだ。ちなみに、ここ最近まで稼働中だったらしいな。
もういいぞ。どこまで話したっけか…?そうそう、そうだ。4か国の上陸潜水艦の艦隊からなる国連リーペン懲罰群艦隊司令長官に国連事務総長から任命されたんだ。旗艦であるイオージマはすべての国連軍の艦の位置を捕捉し可能な限りの敵を表示していた。味方の位置どころかゴーストと戦ってた我々とは大違いだったな。美国の海中艦隊は陽動攻撃をリーペン副首都のトンチンに仕掛け我々は首都であるはずのスークォに上陸する。
…はずだったんだがなあ。
上陸艦隊は美国と英国、仏国に露国で構成された完全な海中艦隊だった。
上陸潜水艦36隻に通常型潜水艦102隻と原潜が32隻。艦橋のディスプレーにはだんだん離れていく米艦隊が映っていたよ。
20、いや30分くらいだったかな。すでに米艦隊とは10海里離れていた。レーダー画面の端のほうに米艦隊が映っていたんだ。その時だった、上陸艦隊の真上にポイントが現れた。リーペンの戦闘機隊だ。衛星で捉えられない米フリゲートに業を煮やした奴らは戦闘機隊で撃沈することにしたんだろう。ステルスフリゲートがいると米海中艦隊を攻撃できないからね。
戦闘機隊はミサイルを発射した。レーダーに捕捉されるミサイルは一秒ごとに増えていき、美艦隊の反撃が開始された時には300を超えていた。しかしな、美艦隊は昔から最強を名乗ってるだけあって迎撃もすさまじかった。気化爆弾の対空ミサイル、非核水素弾、衛星からの「神の雷」の援護とかね。
まあ、そうやって美軍は反撃したんだ。水上艦だけでなく水中にとどまっている海中艦もね。……。そうだ。リーペンは潜水艦を大量配備していた国だったからな。もともと戦闘機は陽動だったんだろう。核魚雷だったのかどうかはいまではわからないが、すくなくとも通常魚雷とは思えない爆発が美艦隊中で起こったんだ。米艦隊の一部の艦は潜水していくが、逃げ場はなく水圧で潰れた。ほとんどは海中で蒸発し、一隻二隻は海中の爆発を下から煽られて浮上していく。そしてそこにリーペンの衛星素粒子砲が海面を叩き浮上した艦や生き残った人間を一人残らず丸焼きにした。
なんていうか知ってるか?
ジュノサイドってんだ。
……まあ、欲に負けて手を出した結果なのだがな。
美海軍は最後の力を振り絞ってミサイルを5本射出した。それは我々の進路の海面に落下し、騒音を奏で始めた。我々のデータリンクが機能しなくなる代わりにな。
地獄が始まった。
リーペンの対潜能力はすごいが、美国の潜水艦のステルス能力がすごいと信じ込んでいた。さっき目と鼻の先で美艦隊が壊滅したのに…。
P-2P-3P-1MP-2と積み重ねてきただけあった。美国の騒音弾がひとつひとつ切れ始めたとき、こちらはようやくキャッチできた。常に我々の頭上にリーペンの哨戒機が張り付いていたことを。
艦長が指揮を執りたいというから僕は後ろに下がった。艦長は通信ブイの射出を命じた。その通信ブイは電文を打ってからカメラを起動する。僕用にタブレットに電文が表示された。周波数12.400MHz、平文で「雷」。おそらく、艦長のサービスだろう。
文字通り、雷だった。
艦長は海溝内深度1000まで潜航を命じた。
衛星から分離されたタングステン弾頭は地球の遠心力、重力と回転モーメントに揺られながら大気圏に突入する。大気圏に入り始めると表面のヘリウムコーティングが剥離しプラズマ化、オーロラとともに電子妨害を起こし始める。弾頭本体は重力によって加速を続けるが大気の抵抗で加速度は落ちていく。最終的に加速度が0になったとき、速度はマッハ23に達する。海面に衝突し―――――大爆発を起こす。
あくまで後日の戦果確認ではあるが、この攻撃は我々旧国連軍にとってようやくの、最初の反撃だった。哨戒機6機、対潜の旧式艦チャオリー型二隻。浅深度のリーペンのクオ潜水艦3隻。大戦果だよ。大戦果だった。だってほかの地域の戦果はなかったんだ。十分だろう。
リーペンが降伏した。これ以上無駄な戦争で血を流すことはできないと彼らは降伏を選んだ。
我々の作戦目標はリーペンに攻撃をしかけ、技術を公開させることだったから我々は作戦を成功させたことになった。
馬鹿な話だ…。
12か国67万の兵がたったの6時間で死んだ。
馬鹿な話だ。
我々はスークォに上陸した。出迎えのリーペンの陸上部隊に同行してもらいスークォのウドンにある国会議事堂に向かった。
一番怖かったよ。
人がいないんだ。
時々死にかけの老人が歩いてるだけで労働人口に合う人間は一人もいなかった。街の道路はほとんど通行がなく、たまに無人車両が通過するだけだった。
国会議事堂についたとき出てきたのはどいつもこいつも死にかけのジジイどもだ。
その時、俺は彼らが技術を公開しなかった理由を悟ったのさ。
以上です。依頼でしてきますね。
一部米艦隊表記がありますね
美艦隊です
技術の向上が高翌齢化を推し進め最終的に子供若者がいなくなり老人だけになってしまったという設定です
リーペンは日本の中国発音です
自分は
このSSまとめへのコメント
こういうの好き