大臣「ワシらっていつも」教頭「悪役だよな」 (19)

大臣「おお、教頭」

教頭「おう、大臣」

大臣「元気しとる?」

教頭「なんとかな。そっちこそどうよ?」

大臣「なんとかやっとるわー」

大臣「ところでさ……最近ふと気づいたことがあるんだけど」

教頭「なに?」

大臣「ワシらっていつも悪役だよな」

教頭「あー……分かる」

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大臣「たとえば、“大臣”の場合……」

大臣「名君な王様の命を奪って地位を簒奪しようとする悪大臣にされたり」

大臣「あるいは幼い王を傀儡にして好き勝手する奸臣として描かれたり」

教頭「他には魔物が化けてるってパターンもあるな」

大臣「あるある!」

大臣「魔物のスパイとして潜り込んでる的なヤツだな」

教頭「“教頭”の場合は……そうだな」

教頭「ストレートに校長の足を引っぱって、校長の地位を狙ってみたり」

教頭「あるいは柔軟で高潔な校長に比べ、えらく狭量な教師として描かれたり」

大臣「主人公教師を目の仇にしたり、生徒をやたら退学させたがったりするのな」

教頭「そうそう」

教頭「こんなクズ生徒は退学にすべきなんです! ……なんて堂々といったり」

教頭「実際こんな教師いたら、今じゃ即問題になってクビだろうな」

大臣「教育現場って今はだいぶデリケートになってるからねえ」

大臣「もちろん、全ての大臣や教頭が悪役ってわけじゃないけど」

大臣「ワシらに悪役イメージがついちゃってるってのは間違いない」

大臣「なーんでワシらって悪役にされがちなんだろ」

教頭「なんでだろうなぁ……」

教頭「ちょっと考えてみたが、大臣や教頭は“ナンバー2ポジション”だからってのがあるかもしれない」

大臣「どうして、ナンバー2だと悪役にされるんだ?」

教頭「まず、悪役としての動機が作りやすい」

教頭「あと一人、ナンバー1である王様や校長がいなくなれば、トップに立てるんだから」

教頭「手段を選ばずトップを除こうとする野心家に仕立てることができる」

教頭「トップに立ちたいから悪になる、これほど分かりやすい動機もないだろ?」

大臣「たしかに」

教頭「それと、悪役は強大な方が盛り上がるから、権力を持ってる方がいい」

教頭「ナンバー2ポジションだと当然権力もそれなりに持ってる」

教頭「これもオレたちが悪役になりやすい要因の一つだろうな」

大臣「しかし、敵を強大にするならナンバー1を悪役にした方がいいのでは?」

教頭「ナンバー1が敵だと構図が単純に“主人公VSナンバー1が率いる組織”となってしまい」

教頭「ちょっと分かりやすすぎるからな」

教頭「しかしナンバー2が敵なら、組織が一枚岩でない感が出て、話に厚みが出るってのもあると思う」

大臣「なるほどなぁ」

大臣「大臣や教頭以外に、悪役になりがちなナンバー2ポジションというのはあるのだろうか?」

教頭「うん、ちょっと例を挙げてみようか」

・主人公に一歩及ばないライバル→主人公への嫉妬のあまり闇堕ち

・分家→本家に従順なふりして命を狙っている

・王子の弟→兄を暗殺して王になろうと目論む

・悪の大ボスの側近→下剋上してラスボス化



教頭「とりあえず、こんなところか」

大臣「ほう、色々あるものだな」

教頭「他にも『副~』だとかの肩書きのキャラはリーダーに比べて腹黒かったりするな」

大臣「こうして考えると、二番手……ナンバー2というのは本当に悪役にしやすいポジションなのだな」

大臣「しかし……ワシはこうも思うのだよ」

大臣「ナンバー2ってメチャクチャおいしいポジションだと思うけどな」

大臣「下っ端は嫌だ、かといってトップに立つのも責任が重そうで嫌だ」

大臣「こんなワシみたいな奴にとって、今の大臣って地位は最高なんだよね」

大臣「王を操りたいとか、王になりたいとか、全く思わないもん」

教頭「分かる分かる!」

大臣「二位じゃダメなんですか、というより、むしろ二位でいたい」

大臣「ナンバー1にならなくてもいい、もっともっと特別なナンバー2、って感じだよ」

大臣「ワシはよく『王の腹心』『右腕』などといわれるが、それが心地よくてたまらんもの」

教頭「だよなぁ」

教頭「ふんぞり返れるし、かといって最高責任者でもない……はっきりいっておいしいよな」

大臣「ワシにはナンバー1になりたいがあまりに悪役になる、世のナンバー2の気持ちが分からんよ」

大臣「というわけで、ワシらはこれからも善良なナンバー2として生きていこう」

教頭「そうすれば、悪役として討伐されることもないしな」

大臣「ワシのとこの王様も、そちらの校長もどちらも優秀だし」

大臣「くっついてれば定年まで安心して勤め上げることができるしな!」

教頭「おう、悪にならない、敵を作らない、って素晴らしいことだな!」

ハッハッハ……



……

……

……

大臣「……おお、教頭」

教頭「……おう、大臣」

大臣「……元気?」

教頭「いや……全然」

大臣「だよなぁ……すっごくやつれてるもの」

教頭「そっちこそ……」

大臣「実はさー、ワシの下にいる副大臣がワシの地位を狙ってて……」

大臣「あれこれ嫌がらせをしてくるんだ……ノイローゼになりそうだよ」

教頭「こっちも学校の教務主任がひでえ奴でさ……毎日大変で……」

大臣「ナンバー2が悪役でなくなったら、ナンバー3が悪役になるだけなんだな」

教頭「そういうことだな」







おわり

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