貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】【2スレ目】 (859)

このSSは、奴隷たちを助けていくというシンプルなSSです。

助けた奴隷をどうするかは皆さん次第です。

皆さんのおかげで、次のスレを立てることができました。

ありがとうございます。

前スレはこちらです。

貴方「奴隷たちに救済を」【安価スレ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487518094/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490721407

それでは再開します。最初に、簡単な紹介だけして進めます。

貴方 25歳 男性 能力値…戦闘(5) それ以外は未判定。

一週目の貴方。特級貴族の一人で、奴隷制度の廃止を目標に掲げている。

目標を見つけた理由には、ある人物が関係してるらしいが…?忘れさられているが、実は熱血漢。

超が付くほどの辛党だが、甘いのも全然イケる。25歳だが、童☆貞であり、交際経験もない。胃薬常備。探知魔法が得意。

ロリコンではないが、買った奴隷はなぜか二人ともロリ。まんざらでもないからやっぱりロリコンなのかもしれない。

献血などのボランティアをたまにするが、よく自滅しているので意外とマヌケ。趣味で薬を調合してたりする。

背中に火傷の痕があるが、それはアリサと出会い、救った証である。本人は醜いので疎ましく、だが誇らしくも思っている。

アリサ・ブラックウッド 女性 20歳 人間 能力値…戦闘(8) 清掃(9) 炊事(1) 馬術(8) それ以外は未判定。

金髪ロングのいたって普通なスタイルのメイド。諸事情により、右足は太ももから先は義足、脇腹に火傷の痕がある。

仕事熱心で尽くすタイプ、プライベートと仕事でスイッチを切り替える出来る子なのだが、仕事モード時はどこかおかしい。

魔法に精通しており(というかし過ぎている)、ほとんどの魔法を使える。しかし、ごく一部の一族しか受け継がない魔法等は不可能。

使用武器は弓とナイフで、弓は貴方と攻略したダンジョンの戦利品、ナイフは貴方からの就任のプレゼント。

自称か弱い乙女だが、近接戦闘も充分強く、遠距離戦闘では手が付けられない。なんだかんだで脳筋。

ナイフは普通に使ったり、結界の破壊や解除、防御行動などに使う。もちろん投擲もする。瞬間移動もお手の物。

弓は魔力で生成した矢を使うためのものである。貴方のことは好きだが、正直になれない。耳年増。処女である。

カエデ・イズモ 女性 23歳 人間 能力値…戦闘(8) 清掃(2) 炊事(0) 馬術(8)

紫がかったかなり長めのポニテで、スタイル抜群なメイド。過去に雇い主たちに陵辱されたので、全身に打撲痕がある。当然非処女。

アクティブな性格で、自分が女性らしいとは思っていない。貴方のことは好きであるが、基本的に一歩引いている。

料理の腕はチートだが、これは自分らしくいれた時間が調理中だけだったのと、上手くなれば、犯されることも減ると思っていたから。

武器は一族に伝わる刀で、近接戦闘はとんでもなく強い。実は昔に鍛錬を積んでいるので、大体の武器は使いこなせる。

魔力が異常に多いが、魔法は一切使えないので持ち腐れ中。いちおう放出等ができるから無駄ではないか。ザ・脳筋。

アルヴァ 女性 100歳 フェニックス 能力値…戦闘(6) 清掃(8)

紅い長髪、碧眼、臀部から二本の羽根が生えたフェニックスの少女。貴女にべったりの一途な女の子。可愛い。

その特性上、死ぬことがまずあり得ないが、痛覚自体は存在するので案外厄介な体をしている。

貴方に買ってもらった純白のワンピースがお気に入り。精神年齢は見た目相応…というか幼い。

戦闘時は肉体の一部を本来の姿に戻す。空を飛ぶことも出来る。なんだかんだで貴方よりも強い。

好きな物はお肉だが、お肉以外は食べられない。四次元胃袋の持ち主。

自分よりも子供の奴隷が増えたので、お姉ちゃんっぽく頑張っている。

レイス 女性 10歳 人魚 能力値…歌唱力(9) 折り紙(5) 貴方の折り紙判定は4、アルヴァは8です。入れ忘れてすみません。

母親を目の前で殺された人魚の女の子。猜疑心が強い上、やや人間不信。ツンデレ。ただし女子に対しては働かない。

貴方のことは嫌いではないのだが、疑いまくっているので、愛想が悪くなっている。だが、感謝の言葉ちゃんと伝える。

レイスが歌ったら、その歌の内容が他者に反映される。子守り歌を歌ったら周りの人が眠る、テンションが上がる曲なら力が出る等。

陸上での行動は苦手で、基本、他の人に手伝ってもらう。貴方絡みでなければ、ただの可愛い子供。

とりあえず、これくらいでいいでしょうか…。他のキャラは、もう少しコミュったりした後で紹介します。

今だとまだ出てきてないものばかりだから、紹介してもアレだと思うので…。本編を再開するので、しばらくお待ちください。

…さて…。

色々聞きたいことはあるが、まずはお前だ。

何でここにいるんだ?

「当主様は昼頃、奴隷と会いませんでしたか?」

会ったが。

「あなたが悲しそうな顔をしてたので、助けておきました」

そう言いながら、ピースをするアリサ。

どういうことなの…?

「…実を言うと、当主様が遠出をした時は、こちらも水晶玉に投影して視てるんです」

「あなたが危険な目に遭ってないか、とか」

プライバシー侵害だ。

訴訟も辞さない。

「内緒にしてたのは申し訳ありません」

「ですが、彼女たちを救えたので手打ちにしてくれませんか?」

まあ…。

………。

…今回だけだぞ。

「…すみません」

そういえば、助けた子供たちはどうするんだ?

おそらく、身寄りは無いだろうから町に戻すのは無理だぞ?

「アイリス様に預けようと思っています」

「彼女自体は誰からも見られていませんから」

「ですので、子供数人を裏で養うのも可能でしょう」

「むしろ、イメージアップにも繋がるかもしれません」

アイリス様自体はただの良い人だからな…。

権力とかを封じてるリゼルその他諸々がクソなだけで。

アイリス様に任せてあげてくれ。

俺みたいなどんな人なのか分からない男よりも、女性の方が心を開くだろう。

「了解しました」

次は…あんただな。

「…そうだな」

いったい、どういうことなのか説明してほしい。

嫌なら別に言わなくてもいいが。

「…主君に隠し事をするのは好きではないよ」

「分かった…全て話そう」

「私は50年ほど前に、ある村で過ごしていた」

「平和だったよ…本当に平和だった…」

「…だけど、人間の傭兵たちに襲撃されたのさ」

「必死に抵抗したが住人を逃がす間もなく、全員が殺された」

「その時、私は二つの未練を持ったんだ」

「一つは、同胞たちの敵を討つこと」

「そして二つ目は、我々と同じような目に遭う人がいなくなる…そんな世界を目にしたい…ということさ」

「一つ目は、もう果たせないだろう」

「あれから50年も経ったから、きっと既に死んでいるはずだ」

「私は敵だからといって、同じ人間だからといって、無関係の人を殺めることはできない」

「…それに、私は見たいんだ」

「亜人が人と共に笑いあう姿を…」

…大体のことは分かった。

お前も辛かっただろう。

「まあ…ね…」

憑依する対象は自由なのか?

「まさか」

「これでも私は怨霊だ」

「故に、憎悪の感情を抱いている者にしか憑依できない」

「憑依している間は、完全に持ち主の意識は眠るがね」

つまり、情報を取るために憑依させたり、ということは出来ないか。

デメリットはあるのか?

「敢えて言うなら、憑依中に肉体が死んだら私も死ぬということ」

「それと、魂だけでは誰にも認識されないくらいだろう」

「結構大きいデメリットではあるがね」

ふむ…。

…お前の名前は何だ?

「え?」

いつまでもお前とかあんたとは呼べないだろう。

「…すまない」

「ここ50年ずっと呼ばれてなかったから、私も忘れた」

…そうか…。

…『ユウ』、という名前はどうだ?

安直ではあるが。

「…好きに呼んでくれて構わないさ」

「だけど、ありがとう」

「私を正当なものとして扱ってくれて」

仲間なのだから、当然だ。

ユウに、他に聞きたいことがあれば↓1~3にお願いします。

今回はこれで終了とさせていただきます。キャラ紹介に時間を掛けてすみませんでした…。

次回更新も24時頃を予定しております。お疲れ様でした。

今から再開します。まず。情報についての判定を二つ行います。↓1、2コンマがそれぞれ5以上で成功です。

記憶の摩耗:↓2コンマ-2

襲撃した人のことは憶えているか?

それか、生前の自分のこととかは?

「…あれから50年が経過してるんだ」

「残念ながら、記憶が摩耗してしまって思い出せないよ」

「憶えているのは、そういう事象があったということだけさ」

なるほど…。

名前を忘れていたのだから、そういう可能性もあったな。

では、幽霊がいたとかいう情報は持っているか?

「私は聞いたことがないね」

「この近くで戦争があったから、怨霊の一つや二つでも生まれるかと思っていたが」

「もしや、聖職者がいるのかもしれないね」

「彼らがいる時はお手上げだ」

「私も浄化されてしまう」

憑依していてもダメなのか?

「彼らはアリサ嬢とは異なるが、皆霊魂や死霊等を察知できる能力を持っている」

「これらは、いかなる状態でも発揮されるのさ」

「強力な死霊は視認できるがね」

無敵というわけでもないのか。

「まあ、魂が剥き出しな分、弱点も多いのだろう」

「貴殿らはこのようにならないようにね」

言葉の重みが違うな。

「ああそうだ、このまま戻るのは少々不味いのではないか?」

警備だと言い張れば問題なさそうだがな。

「違う違う」

む?

「私が言いたいのは、人間が多いところにオークが入り込むのが不味いということだ」

あー…。

たしかに少しヤバいかもしれないな。

「…この肉体で過ごした間、人間には虐げられたからね…」

「貴殿らにも影響が出るなら、極力避けたいのさ」

「不本意ではあるが、この肉体を廃棄しても構わない」

「…私としては、持ち主に申し訳ないがね…」

抜けた後はどうするんだ?

「依代を見つけるまでは、貴殿に同行するよ」

「デリカシーは持ち合わせてあるから、風呂やトイレの時は外すよ」

覗いたりとかはしないのか。

「そんなことをしても意味がないのさ」

「そんな感情、とっくの昔に喪失してるからね」

「今の私にあるのは、死ぬ瞬間に抱いた願望を尊守する意志と、生前から守ってきた信念くらいだ」

それをずっと守れるのは凄いと思うぞ。

「どうも」

直下に、今の肉体を捨てさせるかをお願いします。

そのまま使うデメリット

目を付けられるリスクが上がる。行動に制限が付けられやすい。

捨てるデメリット

肉体を入手するまで、コミュニケーションが取れない。最悪、持ち腐れになってしまう。

「それで、私はどうすればいいんだい?」

そうは言われても、立場上慣れてることだしな。

そのままでいい。

「おや、いいのかい」

嫌がらせをするやつなど、たかが知れてる。

その程度のやつのすることは、無視してしまえばいい。

しつこい場合は、色々対処も出来るしな。

「…了解だ」

それでもというなら、何か布を羽織ればいい。

「…いや、私も隠しはしないよ」

「主が堂々とするなら、従者の私も同じようにしないとね」

これは頼もしい。

「私で良ければ、存分に頼ってくれていいさ」

「…話は終わりましたか?」

ああ。

「では、私は子供たちをアイリス様のところに輸送してきます」

「皆さんが家に着くころには戻っていますので、ご安心を」

了解だ。

「では失礼」

そう言ってアリサは姿を消す。

俺の仲間には人外しかいないのか。

「私は人間だ」

人間は分身してるようなスピードで動かない。

「えぇ…」

…あと数時間掛かるが頑張ろう。

今日中には到着するはずだ。

「そうだな…」

運転代わろうか?

「いや、私がやるよ」

疲れたら休んでくれよ。

「無茶はしないさ」

…それならいいが。

どうにかこうにか、本日中に戻ってはこれた。

「おや、視察しに行ってませんでしたか?」

こんな夜中にも警備しているとは、仕事熱心なものだ。

あのクソ貴族どもに、爪の垢を煎じて飲ませたいよ。

真面目に。

町長がいきなり攻撃してきたから、仕方なく逃げてきたんだ。

「…お疲れ様でした!」

ホントに疲れたよ。

襲撃されてる時点で予想はついてたけども。

「心中ご察しします」

「他の貴族には困りますよね…」

「ろくに仕事をせず、遊び呆けてばっかりで…」

「アイリス様がかわいそうです…」

どんな風にだ?

「あの人が統治する国なのに、王女様は一切関与できないところです」

「せいぜい、外交するのが関の山でしょう?」

今のところはそうだな。

「…ですが、権力を封じた貴族たちはあのザマです」

「貴方様やアーバン様が頑張っていなかったら、どうなっているか…」

「リゼル様も働いてはいますが、正直ただの犯罪ですし…」

兵士は、沈痛な表情を浮かべて頭を下げる。

「…どうか、この国を救ってください」

「このままでは、腐りきってしまいます…」

あ、ああ…。

…こりゃ真面目にマズい状況だな。

兵士がこんなことを言うとかとんでもないぞ。

…俺がやることがこの国を救うとは限らないのだがな。

「そういえば、そこのオークはどなたですか?」

色々あって、警備として採用したんだ。

「なるほど」

「そろそろ閉門するので、お入りください」

分かった。

「本当に、お疲れ様でした」

お前たちこそな。

家に戻り、門の鈴を鳴らす。

そうしたら、静かに門が開いていく。

「私は馬を戻してくる」

「みんなは先に入っていてくれ」

了解、と言葉を返し、ドアを開ける。

アルヴァは既に夢の中で、静かに寝息を立てている。

「フェニックスとは思えない、可愛らしい寝顔だな」

知っているのか?

「いや、ただそう思っただけさ」

そうか。

「私はどうすればいいのだろうね」

部屋はまだ空いていたはずだ。

アリサに案内してもらってくれ。

起きていたら、だが。

「お呼びですか?」

だから…ね…。

「ユウさんの部屋はこちらですよ」

「その、なんだ」

「貴殿も苦労しているのだな…」

ホントだよ…。

第5週 終了

それでは、六週目を始めます。今回動かしたいキャラの名前(貴方組限定)を直下にお願いします。

これからの終了時の視点コンマ判定は、偶数週だけにしようと思います。

先週の視察は、酷いことになりました。

あの屋敷に入った途端、いきなり矢が飛んで来て…。

それから…。

…これ以上は思い出したくないです。

ご主人様のためだけど、それでも人を殺すのは…。

…だけど、私が戦うことで、ご主人様を守れるなら。

私が戦わなきゃ、ご主人様が死んじゃうのなら。

その時は、私も躊躇わない。

もしご主人様が死んだりしたら、私は一生後悔する。

そんなの嫌だ。

もっと、ご主人様と一緒にいたい。

もっと、ご主人様に褒めてもらいたい。

もっと…。

…ダメ。

こんなことを言ってたら、本当にご主人様が死んじゃいそう。

ご主人様は絶対に死なない。

絶対に死なせない。

私が、ご主人様を守るんだ。

朝の時間はご飯がちょっと少ない。

お腹いっぱい食べたら、眠たくなっちゃうから仕方ないのかもだけど。

レイスちゃんはまだ、ご主人様が嫌いみたい。

どうしたら仲良くなれるんだろう?

朝の行動を直下にお願いします。

参考

奴隷市場に行くと、珍しい奴隷の情報が来る可能性あり。昼に、戦争の結果が判明します。

ご主人様は、今日戦争が始まるって言ってた。

もし、兵隊さんが負けたとしたら、こっちまでやってくるってことになる。

このまま何もしなかったら、関係ない人が死んじゃう。

その時に備えて、逃げ道を作っておきたい。

ご主人様も逃げさせられるように。

そうと決まれば、ご主人様に言わなきゃ。

ご主人様ー!

「どうしたんだ?」

あのね、もし、兵隊さんたちが負けたら…。

「言わなくていいよ」

「大体のことは分かってるからな」

「今から、そのあたりの申請を軍部にするところだったんだ」

「おそらく、許可は出されるはずだ」

「この紙を港まで持って行きなさい」

「こっちで申請は済ませておく」

はい!

「あとこれはお駄賃だ」

そう言って、ご主人様は札束を渡して来た。

ちょっと重い。

「これで、好きな物を買っていいぞ」

こんなにいらないよぉ…。

「気にするな」

「特別ボーナスと思ってくれ」

それなら…。

「ほほう?」

「私たちにはボーナスなんかくれないじゃないですか」

「何とか言ってくださいよロリコン」

「ロリコンちゃうわ!」

「そもそも給料自体バカ高いんだからいいだろ?」

「そういうことじゃないんですよねぇ」

「あ、私もロリっ子になった方がいいですか?」

「やめろぉ!」

あはは…。

「アルヴァは港に行ってくれ!」

りょ、了解!

ドアを開けて、背中から羽を出して空を飛ぶ。

腕を翼にすることも出来るけど、そうしたら紙が燃えちゃうから、やめておく。

背中から出す時は、炎にならないからありがたいなぁ。

…飛ぶ時に火の粉が飛ぶけど。

空を飛ぶのも気持ちいいけど、みんなと一緒にいるのが一番好き。

絶対に壊させるもんか。

チラチラ人に見られるのが気になるけど、急いで港に向かう。

…もしかして、スカートの中を見られてるのかも?

あうう…。

そう考えたら恥ずかしくなってきた…。

スカートを抑えたら大丈夫かな…。

港に着いたけど、その間ずっと見られてた。

やっぱり恥ずかしい…。

大きな男の人が船の前に立ってるから近づいていく。

「今日は荷物を積み込むだけだぞー」

「メイドさんがここに何の用だい?」

これ、お願いします。

紙を読んだ男の人は、ビックリした顔をする。

「軍部の印鑑は無いが、正真正銘の特級貴族のやつか…」

「…こりゃ無視できねえな」

「お前ら!」

「荷物の積み込みはいったん中止だ!」

「積み込むもんは保存食に限定!」

「民間人を出来るだけ積めるようにするんだ!」

「さっさとしろ!」

「俺たちの働きに、命が懸かってるんだ!」

イエッサーという掛け声が、周りから聞こえてくる。

凄く力強くて、こっちがビックリした。

「これが来たってことは、後で軍のやつが来るだろうな…」

「メイドさんは帰りな」

「お前さんたちも逃げなきゃ、ヤバくなるかもしれないぞ」

あ、はい。

ありがとうございました!

急いでこの場を離れる。

早くご主人様に伝えよう。

「おう」

「って、凄い女の子だな…」

「亜人だったのか…」

「見かけによらないもんだなぁ」

帰りに飛んでる間も、兵隊さんは港に行ったり門まで行ったりしてた。

本当に戦争があるって実感する。

あの塀の奥で、人が死んでるのかな…。

「アルヴァー、こっちだこっちー」

家に着く直前に、奥の王宮に続く道に立ってるご主人様を見つけた。

手には書類があるので、色々な仕事を済ませてきたのだろう。

「お疲れ様」

…どうなるのかな…。

「それはまだ分からんな」

「もうすぐ、伝令がやってくるはずだ」

「それを待つしかない」

…ここが戦場になったりしないよね…?

「…そうならないことを祈ってるさ」

…私たち、ずっと一緒にいれるよね。

「…ああ」

もう、一人ぼっちは嫌だよぉ…。

「そんなことさせないさ」

「まったく…」

「こんなことになったケジメ、リゼルに払わせないとな」

直下コンマとの合計が5以上で、勝利となります。5以下の場合は、防衛戦が始まります。

戦力上有利:+1
キメラ保有:+2
???:-1

損害をあまり出すことなく、戦争に勝利しました。同時にキメラの有用性が認められたので、リゼルの権力が増加しました。

ですが、勝利に繋がる貢献をしたとして、貴方の権力も増加しました。昼の行動を直下にお願いします。

同時に、捕虜の判定を行います。↓2コンマが5以上だと、オートで尋問が行われ、情報が入手できます。

その捕虜をどうするかは、コンマ判定で後ほど決定します。

今回はこれで終了です。次回更新は、一週間ほど空いてしまうと思います。再開の前日に報告をする予定です。遅くまでお疲れ様でした。


亜人の捕虜が居る=キメラが増える


ところでリゼルの犯罪というのは亜人狩りとは関係なく汚職?

>>38、とりあえず返答だけでも。リゼルがしている犯罪は、はっきり言って色々なものを内包してします。

亜人狩りや汚職だったり、倫理的な問題を孕むキメラ製造だったり…。特級貴族の権力でそれらを握り潰しているので、まだ捕まえることはできません。

行動安価は自由ですが、貴方を同行させることはできません。ですが、貴方に同行することはできます。

今判明してる予定関係は、奴隷市場に行けば、珍しい奴隷の情報が入ってくる可能性がある、貴方が後ほど尋問を行う、の2つくらいです。

法的には亜人も人として見られる権利はあるのか
リゼルにも法律を変えるほどの権力支持は無いってことか

今日の夜に更新したいと思います。

>>43、この国では、民間人か奴隷か、の二つの区分で分けられています。残念ながら、奴隷には人権は一切ありません。

民間人には、貿易が盛んなのもあって、人間や亜人、その他の種族も含まれています。日を跨いでしまいましたが、今から再開します。

すみません、酉ミスです。

ご主人様は、これから仕事があるみたいで王宮に向かって行った。

私は自由にしていいらしい。

そういえば、私は外に出たことがない。

外と言っても、この街から出たことがないって意味なんだけど。

でも、視察の時に一回外に出てるなぁ…。

とにかく、この周りがどうなってるのかを知っていて損はしないと思う。

戦争があったところを避けておけば大丈夫なはず。

というわけで出発!

壁の上を飛んで外に出ると、そこには…。

何も無かった。

冗談でもなんでもなく。

近くに海があるからなのか、岩肌が剥き出しになっていて、草が少ししか生えてない。

自給することが厳しい国みたいだ。

だから、貿易が盛んなのかな、と思ったら納得する。

遠くには山が見えていて、山はけっこう緑でいっぱいになってる。

しばらく飛んでいたら、大きなドラゴンに追いかけられた。

そこまで速くなかったから、思いっきりスピードを出したら逃げられたけど。

街から少し離れたところに平原が見える。

煙が立ち上っていたり、えぐれていたりしている。

かなり大規模な戦いだったみたいだ。

もし負けていたら、と思ったら怖くなってくる。

兵隊さん、勝ってくれてありがとう。

直下コンマで情報判定です。5以上で成功です。

では、捕虜の処遇を直下コンマで判定します。

1~3:リゼルが管理
4~6:アーバンが管理(交渉すれば回収できるかも)
7~9:自分たちで勾留(実質保護)
ゾロ目、0:処刑スタート

軍権は誰が

>>52、軍権自体は独立していますが、金銭的な意味での運営は特級貴族頼りなので、ある程度の干渉は可能です。

とは言っても、捕虜の尋問や管理くらいしかできないのですが…。

捕虜を入手しました。尋問で、情報を聞き出すことが可能です。

短い…というか、本編が少ししか進んでいませんが、今回はこれで終了にさせてください…。

次回更新は24時頃を予定しております。すみません…。

遅れました。今から再開します。今回は捕虜の設定をしたいと思います。

↓1~3に種族をお願いします。亜人系統限定です。

ゴーレム

ワーウルフ

竜人

では、直下コンマで決定します。

1~3:>>58
4~6:>>59
7~9:>>60
0の場合は二桁目で判定。

次は、性別を直下にお願いします。

次に特徴を↓1、2にお願いします。その後に名前を決めて本日は終了とします。

最後に名前を決定します。↓1、2で募集です。

バジルス

コーマイド

では、直下コンマで決定をします。本日はこれで終了です。ほとんど更新出来なくて申し訳ありません…。

次回更新は23時頃を予定しております。お疲れ様でした。

奇数:>>69
偶数:>>70

すいません、精神的に色々と死にかけていたので顔を出せませんでした。
本日の夜頃に再開します。大変遅れてしまい申し訳ありません…。

お待たせしました。それでは、二か月ぶりの更新となります。

拙いところや、前と文章が変わっていると思いますが、よしなに…。

あまりに久しぶりだったからsaga付けるの忘れてました…。


屋敷に戻っていると、ご主人様が帰宅しているのが見えた。

隣には亜人の人がいた。

男の子…?だと思う。たぶん。

背中から大きな羽が生えているから、竜人なんだろう。

それにしては、ちょっと小柄だ。

まるで、今までに満足な食事にありつけなかったかのようだ。

「ご主人様ー」

「ん…?ああ、アルヴァじゃないか」

「隣の子は誰?」

「捕虜だな。さっきの戦闘で捕縛されたやつだ」

「………」

「…小さくないかな。もしかして子供…?」

「…いや、これでも二十歳は超えている」

「ただの栄養失調だ」

「え、それでも二十歳って見た目じゃ…」

「あいにく、竜人自体の成熟は非常に早くてな」

「10歳にもなれば成人だ」

「まあ、寿命は200年程度だが」

「普通の亜人で最も長生きなのは妖狐、キツネだな」

「千年生きれば九尾というものに成るらしいが、実際に見たことはないから分からん」

「へぇ~」

「…要は、俺はもう成長しないということだ」

「故に、この体は一生治らん」

「…ごめんなさい」

「謝る必要は無かろうに」

「そういえば、どこかに行ってたの?」

「民間人の避難をさせるための手続きだな」

あ、たしかお昼にそう言ってたなぁ。

「杞憂に終わったが」

「そっか」

平和なままでいれたから、それで良かったと思う。

改めて実感した。

私たちは、無数の死の上で生きていることを。

死があるから、私たちは生きていられることを。

考えてみれば当然のことなんだけど。

「それと、追撃部隊の再編だな」

「奴さんは逃げていったが、放置するわけにもいかなかった」

「だから、いくつかの部隊を追撃に向かわせた」

「うまくいけば、来週にでも指導者は捕まえることができるだろうな」

「そうすれば、この戦いも全て終わるのかな…?」

できることなら、死ぬ人は少なくなってほしい。

誰だって、人を殺すのは、殺されるのは嫌なはずだから。

「俺はそう思っているが、正直どう転ぶか分からないな」

「それまで分かっていたら、ここまで苦労はしてないさ」

「…そうだね」

未来は誰にも分からない。

だから、正しいと思ったことをするしかないのだろう。

その結果、全てを失うことになっても。

それでも、進まないといけないのだろう。

「…そう暗い顔をするな」

「お前には笑顔が一番似合ってる」

そう言って、ご主人様は私の頭を撫でる。

優しくて暖かい、私が大好きなもの。

「うん…ありがと、ご主人様」

「はは、感謝される理由が分からんな」

そっぽを向くご主人様。

まったく、ごまかし方が下手だなぁ。

…私も他の人から見たら、こうなのかな。

夕方の行動を直下にお願いします。

あ、たしかに久しぶりだからその辺りも書いた方が良かったですね…。

現在の状況


戦争には勝利し、追撃戦を実行中(来週の昼にコンマ判定)

奴隷市場に移動すればレアな奴隷が優先的に手配される…かも

リゼルを失脚させるための情報、パイプ形成に奔走中(成果はゼロ)

レイスちゃんからは凄い嫌われてる(貴方だけ)


…これくらいだったと思います。足りなければ追記します。

「ああそうだ、ちょっと一仕事頼みたいんだが」

「なになに?」

「スジャータ…憶えてるか?先週会ったあの女性だ」

「ハーブのお姉さんだよね」

「あれはハーブじゃなくてやくそ…いや、それはどうでもいいか」

「まぁ、これからはこちらに陣営を固めていきたくてな」

「アーバンが味方ではあるが、多いに越したことはない」

「ここからだいたい20分もすれば着くところなんだが…」

「分かった。スジャータさんにお願いすればいいんだよね?」

「そうだ。俺の名前を出した方が成功する確率は高い…と思う」

「場所はあそこに見える時計塔の傍にある屋敷だ」

「頼んだぞ」

「はーい!」

あの距離なら5分もしないはずだけど…。

もしかしたら、遊んでこいと言っているのかもしれない。

昼にお小遣い貰ってるし。

何はともあれ、お仕事を終わらせてから考えよう。

地面を蹴り、翼を広げる。

やっぱり、空を飛ぶのもいいなぁ。

今回はこれで終了です。久しぶりだからかペースが遅い…。もっと早く書けるようになりたいなぁ…。

次回も夜12時頃に再開できると思います。お疲れ様でした。

昨日はごめんなさい!今から再開します。

屋敷の前に到着したので、門を何度か叩く。

「動かないでください」

「ッ!?」

人が近づいている気配は一切無かった。

今、アルヴァの後頭部には銃が突きつけられている。

「変な素振りを見せたら、この場で射殺します」

いくらフェニックスのアルヴァでも動けなかった。

それほどの凄みを感じさせる声だったのだ。

「あ、あの…。私はご主人様に頼まれて来たんですけど…」

「つまり襲撃ですか?正面から堂々と来るとは、余程自信がおありなようで」

「違います!スジャータさんにお願いがあって来たんです!」

「では違うという証拠を提出願います」

「具体的には、貴女の名前、そのご主人様とやら…」

「…すみません。どこかでお会いしたことはありませんか?」

「ふぇ?」

声の覇気や辺りに漂っていた殺意が薄れる。

振り向こうとしたら頭を抑えられた。

返答は動かずに、ということだろう。

「えっと…。スジャータさんとは先週に西中島南方?みたいな場所で会ったけど…」

「…なるほど。だいたい状況は把握できました」

「無礼をお詫びします」

殺意が完全に消え、目の前の女性?は深々と頭を下げる。

「わわっ頭を下げなくていいですよっ」

突然の謝罪に慌てふためくアルヴァ。

下手に出られるのには慣れていないのだ。

「本当に申し訳ございません」

「何分、私は目が見えませんので」

「えっ…」

振り返り顔を見ると、両目を閉じた端麗な素顔が伺えた。

長い銀髪を一つ結びにして流していて、絹糸のように美しかった。

「私が胎児の時に、母親が流行り病に罹ってしまいましてね」

「産まれる前から、目が潰れてしまったのですよ」

「母親もすぐに亡くなってしまいまして、産まれた時点で奴隷の未来が確定してしまいました」

「まぁ、視力が無いので誰にも相手をされなかったわけですが」

そう言って、目の前の女性?は微笑む。

辛い過去のはずなのに、話している様は悲しそうには見えなかった。

「立ち話も何ですし、中で続きとしましょうか」

「お嬢様に用があるみたいですし、ね」

「あの、そこまで気を遣わなくても…」

「いえいえ、あのお方のメイドさん…ですよね?となれば、これくらいの配慮はしなくては」

「あうぅ…」

「それに、外にお嬢様を出すのも気が引けますよ」

「襲われる可能性は否定できませんので」

「たしかにそうですね…」

「では行きましょうか」

「ひゃわっ!?」

スジャータに仕えているであろう麗人は、アルヴァをヒョイと抱え、屋敷へと入る。

降ろされるまでの間、アルヴァの顔は真っ赤であった。

あれよあれよと客間に連れられ、目の前のテーブルには緋色のような紅茶が置かれている。

対面した席のスジャータは、優雅に紅茶に口を付けている。

何も知らないアルヴァでも、一つ一つの所作が綺麗に見えていた。

礼儀やマナーを叩き込まれた証拠だろう。

「…それで、何をしに来たのかしら?」

いきなり本題に入ってきた。

血縁関係があるからなのか、あの人とダブって見える。

「あ、はい。ご主人様に、スジャータさんと協力関係を結んでこいと言われました」

「成程。陣営を固めてリゼル卿と対等に渡り合えるようにしたい、と」

「たぶんそうだと思います」

「…先週、私はこう言ったはずよ」

「『どっちでも気にしない。私はコレクションを増やすだけ』ってね」

「その後に言った言葉は憶えてる?」

その後の言葉。

『家族のよしみもある』、『少しくらいは、サポートしてあげる』くらいだろうか。

「つまりはそういうことよ」

「私だって、きな臭いことをしている他人に従うくらいなら、家族を信じるわよ」

「なんだかんだで、あの人とは幼少期の頃からの付き合いだし」

「つ、付き合っているんですか!?」

純粋なアルヴァは、スジャータの考えている『付き合う』と別なものを連想してしまった。

「…男女の関係ではないわ。ただの家族、それだけよ」

「…この話はこれでおしまい」

「貴女は、この後時間はあるかしら?」

「終わった後のことは聞いてないです」

「そう。なら、今日はここに泊まりなさい」

「もう外は真っ暗だから危ないわ」

その言葉を聞いて、アルヴァは不安になる。

「で、でも…ご主人様に怒られるかも…」

「あの人はこれくらいじゃ怒らないわよ」

「それに、きちんと連絡もしておいてあげるから、その辺りも問題なしよ」

「うぅ…」

「…今なら、美味しいお肉もいっぱい食べられるけど…?」

「泊まります!」

「よろしい」

お肉の魔力には敵わないアルヴァであった。

本日の更新はこれで終わりです。昨日は申し訳ありませんでした…。

今回出てきた(視察編でも言及だけはしてました)護衛さんの名前を募集してます。私は『アイン』と付けようかな、と。

他に名前が出てきた場合は、気に入った名前にしようと思います。背景等は設定済みです。

何か案がありましたら、その旨をレスしていただいたらOKです。

次回こそ、夜の12時に開始したいと思います。次回こそは…!皆さん、お疲れ様でした。


主人公陣営の資金源ってなんだっけ?
特急貴族の資金力だとリゼルが一番強いのかな?

>>95、資金力はリゼル>>アーバン≧貴方です。リゼルは完全なブラック、アーバンは厳しめのホワイトなのでこんな感じです。

送れましたが、今から再開です。

>>95、ちょっと抜けてました。貴方陣営の資金源は貿易や娯楽施設の運営です。

アーバンは人材派遣や物資生産、リゼルは真っ黒なことをしています。誤字していて恥ずかしい…。


話がまとまったところで、護衛の麗人が話しかける。

「連絡は誰がしましょうか?」

「言い出しっぺの法則、よ」

「かしこまりました」

「手紙は書いておくから弾を用意しておいて」

「…なるほど。了解いたしました」

そう言って護衛は部屋から出ていく。

二人きりになり、部屋には静寂が訪れた。

アルヴァは、疑問を素直にぶつける。

「護衛さんはどういう人なんですか?」

「護衛と呼ぶのはおやめなさい。彼女にも名前がある」

「『アイン』よ。最初に購入した奴隷だからこの名前にしたわ」

「どこかの国の言葉で、『1』を表す言葉みたいだからそう名付けたの」

手を止めることなく、淡々と返答をするスジャータ。

「…スジャータさんも、奴隷は物だと思っているんですか…?」

「ええ」

「…ッ」

アルヴァの心に、僅かな怒りが生まれる。

「失望したかしら?だけど残念、私はあの人とは違うのよ」

「だけど、私は自分の物は大事にする主義なの」

「アインを、他の子を棄てることなどありえない」

「私かその子が寿命で死ぬまで、面倒を見るわよ」

表情に変化は無いが、発せられた言葉からは覚悟が伝わってきた。

早とちりで怒りを覚えた自分が恨めしい。

「…ごめんなさい」

「…?貴女が謝るところは無かったはずよ?」

「いえ、謝らないといけませんでした」

「私はそれだけのことをしましたから…」

「…よく分からないけれど、自分の非を認めて、反省できるのは優れている証拠よ」

「そう小さくならないで、自信を持ちなさい」

そう言ってスジャータは笑う。

その姿を見たアルヴァは、無自覚で言葉を漏らす。

「ご主人様に似てるなぁ…」

一瞬、手紙を書くスジャータの手が止まる。

「そうかしら?血縁者だし、似てるところがあってもおかしくないはずだけれど」

「…これでよし、と」

「続きはガールズトークの時間にしましょうか」

この後アインが連絡を行うのだが、貴方たちがアルヴァ捜索部隊を結成していたことを、二人が知ることは無かった。

「美味しかった~!」

「そう。その言葉を料理人たちに言ってあげなさい」

「きっと大喜びするわ」

予め情報を入手していたのか、テーブルには大量の肉料理が並んでいた。

カエデの料理とはまた違った味わいで格別だった。

それでも、カエデの料理が一番なのだが。

「さて、と」

「ガールズトークの前には、風呂で体を清めるのがお決まりなのよ」

「そうなんですか」

「本当なのかは知らないけれど」

「えっ」

部屋での一件(というほどのことではなかったが)後から、スジャータとアルヴァは気兼ねなく話をしている。

もっとも、アルヴァのコミュ力が高いだけなのだが。

服を素早く脱いで、浴室へと一番乗り。

「わぁ…!」

浴室は、貴方の屋敷のものとはまた違った構造をしていた。

「西中島南方にある旅館の風呂場を参考にした…らしいわ」

「ここができたのは私が産まれる前だったから分からないのよ」

「…ふむ」

「きゃっ!?」

突然、おもむろに手をアルヴァの胸に当てて、揉むスジャータ。

あまりにも唐突だったため、アルヴァは反応できなかった。

「…14くらいなら妥当な成長具合ね。結構結構」

「この調子でご飯は食べなさい」

「ふぇぇ…」

ペタン、と座り込むアルヴァを尻目に、スジャータはアインの方を向く。

「貴女は節制しすぎよ。もう少し食べるべきだと思うわ」

「そう思いますか?」

「ええ。だって貴女の胸は絶壁もいいとこじゃない」

「まだ16なんだから希望は残っているわよ」

ちょっとしたコンマ判定です。直下でお願いします。

コンマ判定:7 その胸は実際ホウマンだった

そう言っているスジャータの胸はなかなか大きかった。

普段は目立っていなかったので、着やせするタイプなのだろう。

「ですが、私は自分の体が分からないので」

「いつもの食事量も、結構多くしているつもりです」

「まぁ、可能性はまだあるから気にしないで」

「私としては、このままの方がありがたいですね」

「そんな駄肉があったら動きに支障が出てしまいますので」

「…運動神経が無くて悪かったわね」

「そこがお嬢様のいい所だと思いますけどね」

「…ぷいっ」

なんだかんだ駄弁った後、三人で湯船に浸かる。

「そういえば、アインさんは目が見えないんですよね」

「ええ。完全に視力は無いですよ」

少し躊躇ったが、アルヴァは気を引き締めて言う。

「…でしたら、私の血を飲んでみませんか?」

「…はて?」

首を傾げるアインだが、無理もないだろう。

いきなり血を飲むか聞かれて、困惑しない人は僅かではないだろうか。

「…前にご主人様が言ってたんです」

「『お前がフェニックスだからだ』って」

「これは献血の時に言われたんですけどね」

「自分の体のことだし、気になって調べたんです」

「そうしたら、『フェニックスの血は、万病を治す、不治の病すらも治癒させる第一の奇跡』…こんな文章がありました」

「他にも『フェニックスの肉は、不老不死を授け、喪失した肉体すらも再生させる第二の奇跡』とかもあったんです」

「これを見て、私なりに考えたんです」

「私の肉は、失ったものを、あらゆる怪我を癒すもの」

「私の血は、病を、その肉体を巣食う障害を排除するものなんじゃないか、って」

「そうだとしたら、アインさんが私の血を飲めば、視力を手に入れられると思うんです」

「貴女…フェニックスだったのね…」

「あの人が素性を隠していた理由が分かったわ…」

「血…要りますか…?」

厳しい顔つきをしながら、アインは答える。

「たしかに、見えるようになるのは魅力的です」

「…ですが、目が見えるようになった時点で、私は私ではないのです」

「不便ではありますが、私もこの体だからこそ、ここまで生きてこれたのだと思っています」

「それに、目が見えていたら、お嬢様と巡り合うことも無かった」

「私にとって、この目は希望への切符だった…いえ、お嬢様と繋いでくれた糸なのです」

「ですから、私はこれからもこの目とともに生きていきます」

「貴女も、そうやって体を売るようなことは控えた方がよろしいかと」

「私の見立てでは、今回が初めてのようですがね」

「うっ」

なぜ分かったのだろうか。

エスパーなのではないか、という疑問が浮かぶ。

「秘密、です」

「…のぼせたから私は上がるわ」

「承知いたしました」

「貴女たち二人で話していてもいいわよ」

「ではお言葉に甘えて…」

その後、アルヴァとアインは我慢比べをしたりして、仲良くすごしたんだとか。

今日はこれで終了です。次回で次の段階に進みたく思っています。

次の更新は再来週になりそうです…。また時間が開いて申し訳ない…。文章の感じとかが迷走してる気がする…。

皆さん、お疲れ様でした。

お待たせしました。今から再開します。

「あら、ずいぶんと長湯だったわね」

「アルヴァ様の要望に付き合っていましたので」

「えへへ…」

スジャータは、アルヴァとアインを交互に見る。

「まぁ何かを聞くつもりはないけれど…」

「それよりもアイン、貴女、顔が真っ赤よ?水を口にするべきだと思うわ」

「いえ、お気になさらず」

大きなベッドに三人で腰掛ける。

優しいハーブの香りが心を落ち着かせる。

少しの間訪れた静寂を、スジャータの一言が終わらせる。

「貴女がフェニックスだということ、誰にも教えてないでしょうね?」

「ふぇ?」

アルヴァは記憶を辿る。

憶えている限りでは、身内以外に知っているはずはない。

「ううん」

アルヴァの返答に一瞬、安堵の表情を浮かべたスジャータだが、また顔つきが若干険しくなる。

「…これからは、安易に空を飛んだり自分の種族を答えないことね」

「え?」

「これは警告よ。下手な組織に貴女の存在が知られたら、みんな死ぬわよ」

「それだけ、貴女は特殊な存在ということよ。憶えてなさい」

「えっと…具体的には…?」

スジャータは指を立てて答える。

「三つよ。まずはリゼルたち別勢力の貴族」

「彼らに知られた場合の貴女の末路は…。そうね、苗床、かしら」

「ただ、優秀なキメラを生み出すためだけの装置。一生、貴女はオークや竜人、魔物たちに犯される人生になる」

「犯す?」

純粋なアルヴァには、『犯す』という単語の意味が伝わらない。

「…帰ったら貴方にでも聞くことね」

「…二つ目は、マフィアといった犯罪集団ね」

「これは、まぁ見世物にされるか奴隷として売られるか、くらいね」

「最後は、商人やキャラバン、ハンターたちよ」

「二つ目と三つ目は、国とかお構いなしに貴女を捕まえに来るわ」

「特にハンター。彼らには気を付けて」

「ハンターは文字通り、次元が違うの。普通の人間とは思えないくらいに」

「防具一つでマグマを浴びても、多少の火傷で済むくらいにはおかしいから」

「ふぁい…」

この世界には、まだまだ凄い人がいる。そう思ったアルヴァだった。

「それじゃあ、そろそろ寝るとしましょうか」

「貴女はこっちよ」

「わわっ」

手を引かれ、アルヴァはスジャータの隣へと倒れこむ。

「ではお嬢様、アルヴァ様おやすみなさいませ」

「ええ。アインも、今日は伝令お疲れ様」

「おやすみなさい!」

アインは、ドアを閉める直前、年相応な可愛らしい笑みを浮かべる。

「あ、来週のお食事、楽しんできてくださいね」

「…は?」

静かに、ドアは閉められた。

「ちょっとアイン、どういうこと?まさか手紙を…読めないか」

「とにかく、なんで貴女が内容を知ってるのよ?ねえ、怒らないから。カムバック!ハリー!」

どんなに叫んでも戻ってくることはなかった。

「………」

スジャータは頭に手を当てる。

「…まぁ、今更考えても、か…。早く寝ましょう」

「はーい」

布団を頭に被る仕草が、結構可愛かった。


第6週 終了

それでは、仕様を変えてから初の視点判定です。直下コンマです。

1~3:貴方陣営
4~6:???(A)
7~9:???(R)

うーん…。この判定は廃止にしますかね。どんどん進めた方がよさそうです。

それに、これは貴方のお話なのに他のキャラを操作するのもおかしな話ですよね。進めていきます。

朝は憂鬱だ。

気持ちよく眠っているのに起こされてしまう。

ずっと寝ていたいのだが、それでは目的が達成できない。

寝間着から、いつもの服へと着替える。

いくつか装飾品はあるが、なるべく質素に済ませた特注品だ。

矛盾している気がするが。

今日の朝食はサラダと味噌汁。

カエデの故郷の料理だと聞いている。

一気に口の中に流し込むと、濃厚でいてさっぱりとした味わいが広がる。

この味噌の風味がたまらない。

味噌自体は輸入していないからか、自作しているようなのだが、このクオリティは素晴らしい。

特別ボーナスでもあげた方がいいのかもしれない。

右手でサラダを口に運びながら、左手で書類を扱う。

先週の戦闘報告書に、気になる点があったのだ。

『亜人のキメラと思しき敵兵が存在していた』という報告がいくつかあったのだ。

もしこれが事実なら、この一連の騒動の首謀者は…。

だが、決めつけるのは早計だ。

まだ、追撃部隊が本拠地に到着していないのだ。

報告を待ってからでも遅くはない。

報告書を読み終えたのと同時に、食事が終わった。

今から働かないといけないが、働きたくない。

夜にはスジャータと外食の予定だし、ぐうたらしててもいいのではないだろうか。

直下に、朝の行動をお願いします。

今回はこれで終了です。次回も明日の同じ時間くらいに再開予定です。お疲れ様でした。

キメラの敵兵はガチで管理能力が低いのかそれともばれてもいいくらいの物理戦闘能力を確保しているのか
後者の場合亜人の内乱はキメラの宣伝目的ではなく威力偵察だったのかな?

そして説明に出てきたハンターというのは何を目的とした人たちなんだろう?

>>114、ハンターは、某狩猟ゲームに出てくるそれと大体は同じです。要人警護等のPMCがやるような仕事が増えているくらいです。

主人公として選ぶことも可能ですよ。というか、殆どの職業や立場は選べます。

今回は初回だったので自由に設定しましたが、次回からはコンマで決定になります。

少し遅れましたが、今から再開です。

では、誰と交流する(様子を見る)かです。↓1、2に一人ずつお願いします。彼らとどうするか、まで一緒に書いてもらえたら嬉しいです。

選ぶキャラは奴隷組からの選択でお願いします。

すみません、ちょっと気分悪いので中止です…。明日の同じ時間に今度こそ…。すみません…。

すみません…。まだ気分が悪いです…。

体調整ってからで大丈夫やで

ところでアルヴァって戻って来てるの?

>>122何かアナウンスしていなければ、その週に取った行動(監視や宿泊等)は次週では終わってますよ。

何とか復帰したので再開です。休んで申し訳ありませんでした…。

前から働いてばっかりだし、今日くらいは気を抜いていいだろう。

それに、ユウとは殆ど話していないから、彼のことはもっと知っておきたい。

掲示板を見たところ、今は留守のようだ。

仕事を与えていないし、街でもぶらついているのだろう。

とはいえ、どこにいるか分からないのは困る。

アリサあたりなら知っているのだろうか。

「あーユウさんなら警備してますよ」

「警備?」

「ええ。彼が『この街は治安が悪いわけではない』」

「『だが、貿易が盛んな関係上警備が多い方が、商人たちも安心するだろう』と申しておりました」

「仕事を探している…のか?」

彼も暇なのだろうか。

今日会った時に聞いてみよう。

「いえ、そうは見えませんでした。たぶん彼の厚意だと思われます」

「…そういえば、一昨日は孤児院に差し入れしに行ってましたね」

「本当にユウは悪霊か?」

やってることが善人すぎる。

「悪霊(天使)なんじゃないですかね」

それにしても孤児院か。

ユウが言っていたことをそのまま受け取るなら、何かに執着したりはしないはずだ。

彼の出生に関係あるのかもしれないな。

「当主様もどこかに行かれますか?」

「まぁ、少し野暮用がな」

「私も同行しましょうか」

「愛人オーラを出しながらですが」

「やめてくださいお願いします」

「冗談ですよ」

「…で、真面目に結婚とかどうするんです?貴方もそろそろ適齢期でしょう」

「…ハッ!もしや今日は女漁りや恋人と逢いに…。やーん当主様がケダモノに!」

「違う!ホントにただの野暮用だから!あと俺はマトモだからな!」

「…結婚する気は無いさ。反吐が出る」

立場上、お見合いの話がいっぱいあるのだが、皆名声や資産目当てなのが明白だ。

「…まぁ、しない理由は分かってますけどね。あんなクズたちと結婚するなんて私が男でも嫌ですよ」

お見合い相手の素性調査はアリサに頼んでいる。

だから、どういう人なのかは彼女が一番理解しているだろう。

それ故の酷評なのだ。

「…でも、世継ぎをどうするかは考えるのは遅くはないかと」

「…全てが終わった後、かな」

「その頃にはお爺さんになってそうですがね」

養子を迎えるとか色々な方法があるし大丈夫だとは思うが。

「それはさておき、外出するならお気をつけて」

分かってる、と手を挙げて答え、外に出る。

アリサが弓を構えて姿を消したが、俺はそんなところを見ていない。

外に出てから思ったのだが、どこにいるのかを俺は何も知らない。

虱潰しに捜すのは非効率的すぎる。

孤児院を優先的に捜せばいいのかもしれないが、孤児院にいるとは限らない。

どうしたものか、と思案していたら、足元に矢がぶっ刺さった。

淡い光を放っているところから、アリサが撃った矢だと理解できたが、辺りを見ても姿はない。

よく見たら鏃には紙が巻かれている。

魔力で構成された矢にどうやって巻くのだろうか。

疑問は残るがとりあえず読んでみる。

ホモ疑惑の掛かっている貴族様へ

『お捜しの人なら、この時間は近くの孤児院にいますよ』

謎の弓兵Aより

情報はありがたいが、ホモは流石に傷つく。

帰ったら食事を激辛カレーにすり替えてやる。

手紙を仕舞おうとしたら、文字がうっすらと浮かんできた。

『なお、この矢はあと1秒後に爆発しながら雷が落ちます』

読み終わる前に爆発して、雷まで当然直撃した。

いくらなんでも警告が出るまで遅すぎる。

飲む水まで唐辛子たっぷりにしてやらねば。

アリ…弓兵のアドバイスに従い、孤児院に向かったら、何やら人だかりができている。

人だかりと言っても、少年少女ばかりだが。

その中心には、良く知るオークがいた。

「おや、主殿がどうしてここに?」

「ユウと話がしたくてな」

「それでわざわざここまで…。ご足労いただきすまないね」

「ねーねー、このおじさんは誰?」

お、おじさんちゃうわ。

「彼は私の雇い主さ。悪い人じゃないから安心してあげて」

「この剣凄ーい!変な文字が書かれてる!」

「こらこら、勝手に武器を使ったら危ないよ。早く仕舞いなさい」

「はーい」

「…慕われてるんだな」

「はは…。私もここ数日、毎日来ているからね」

毎日、か。

アリサは一昨日と言っていたが、それ以外にも来ているのか。

いよいよ悪霊詐欺疑惑が出てきたな。

「…失礼だが、少しいいかい?」

「なんだ?」

「どうして、貴殿は真っ黒焦げな上に髪の毛がブロッコリーのようにもっさりしているのだろうか」

「聞くな」

「え?」

「…聞かないでくれ」

「あ、ああ」

本日はここまでです。病み上がりみたいなものなのですみません…。今回はこちらで自動進行させていただきますね。

次回は再来週の月曜日あたりになるでしょうか…。お疲れ様でした。


アリサへの仕返し安価はまかせろー

この主人公に子供が居たとしても国を犠牲にしてもいいレベルで奴隷制度を廃止してはくれないよね

>>128、仕返し安価はまだ時間掛かりそうですけど…。行う日にはアナウンスしますね。

>>129、貴方も、色々あるまでは奴隷賛成派だったんですよ。ある事情があって反対派になりましたが。

子供がいても、そこまで本気で廃止させようとするなら、洗脳するレベルの教育が必要になるかもですね…。

遅れてすみません。今から再開します。

「ところで、だ」

「なんだい?」

「どうしてユウはここにいるんだ?」

「それは…。私にも分からない」

ユウは空を眺めながら答える。

「私自身、意味がないことだと理解しているんだ」

「治安維持が目的なら、警備だけで充分だと、ね」

「分かっている…。のに、どうしてもここに来てしまうんだ」

「…不思議だね」

「…ああ。不思議だな…」

正直に言うと、ある程度の見当は付いている。

だが、本人は知りたいという意志を見せていない。

ユウの過去は、ユウ自身の問題だ。

部外者である俺が口出ししていいことじゃない。

「主殿」

「どうした?」

「…いや、何でもないよ。ただ、不思議な感じがしただけさ」

「そうか」

「また屋敷で会おう」

「ああ。また後でな」

…一雨来そうだな。

「っあー!致命傷は避けれた!」

土砂降りになった直後に、屋敷へと帰還する。

全身ずぶ濡れである。

あと数分でも遅かったら風邪確定だった。

「そういや、もう雨期に入ってたな…」

ここハイランディアは、5月の中旬から6月に入るまでが雨期だ。

もともと乾燥しがちな土地のため、雨期も極端に短い。

「うわーびしょ濡れだよ…。はい、タオル」

「ん、ありがとな」

「えへへ…」

こうやってアルヴァの頭を撫でるのが日課になってる気がする。

撫で心地がいいから、つい撫でてしまう。

これがレイスだったら指を噛まれるが。

めっちゃ痛いです。

アリサの場合は、アリサの態度はふざけてはいるが耳が赤いのが分かる。

で、指摘したら氷漬けにされる。

まぁ、体を凍らせるわけじゃなくて、周りの空間を凍らせる…つまり、氷で閉じ込められるわけだ。

凄い寒いから、好き好んで受けたくはない。

カエデは、俺が手をどけるまでじっと待つ。

本人曰く、「褒められるのは嬉しいが、他の人にするべきだ。その方が、私ごときを労うよりよっぽど有意義だろう」とのことだ。

昔の件があるからだろう。

自分に価値がないと思っている節がある。

こればっかりは、どうしようもないのかもしれない。

しかし、最初の頃に比べたらだいぶ改善された方だ。

彼女の問題だから、強くは言えないが、過去を知っているからどうにかしたい。

「…まーた難しい顔してる…。めっ、だよ?」

「…そうか。すまん」

「…むぅ」

ふくれっ面をされても困るのだが。

「とりあえず着替えたらどうかな?」

「それもそうだが、ラフすぎる服装も、な」

「家の中だし別にいいと思うんだけどなぁ」

む、一理ある。

「…アルヴァは、家の中ではいつもワンピースなんだな」

「うん!今持ってる服では一番好きだし、ご主人様から初めて貰ったプレゼントだからね!」

ホンマええ子や…。

「じゃあ俺は着替えてくるよ」

「お手伝いしよっか?」

「一人でできるから大丈夫だ」

「んー…。じゃあお部屋の掃除!」

「大丈夫」

「むー!」

「カエデー!アルヴァが暴走したから抑えてくれー!」

「了解」

「もごもご!もごごごご!」

「な、ナイス」

呼んだら来てくれるのはありがたいが、どうやって来ているのかが気になる。

「さあ、主人は早く行くといい」

「サンキューな」

「どういたしまして」

「もごごー!」

「はいはい、試作品ができたから試食を頼むよ」

「もご!」

ワイシャツに普通のズボン、うん。

我ながらだいぶラフな格好になったと思う。

「ワイシャツっていうかアロハシャツですし、グラサンを掛けて言うセリフじゃないと思います」

「暑いんだからいいだろう」

「室温下げておきますね」

「うん、氷点下になってるな」

加減というものを知らんのかこのメイド。

「注文が多いですねぇ。20度くらいならいいでしょう」

「最初からそうしてほしかった」

「ところでさ」

「はい?」

「謎の弓兵Aって誰かなぁ?」

「…ぴゅーひゅぷぴゅー…」

「………」

「………」

「三十六計逃げるに如かず!」

「待てやコラァ!」

昼の行動を直下にお願いします。

短いですが、今回はここまでとさせていただきます。すみません…。次回は来週月曜日の予定です。お疲れ様でした。

お待たせいたしました。今から再開します。

言い遅れましたが、今回で仕返し安価をする可能性があります。

「クソ…見失った…。転移魔法はせこくないか…」

廊下の角を曲がった瞬間に、転移魔法で逃げられてしまった。

捕まえるの無理ゲーじゃないですかね、これ。

「うぐぅ!」

「へあっ!?」

凄まじい音がしたので、慌てて振り返ると、そこにはバジルスが倒れていた。

「ど、どうした!?」

「…足がもつれてこけただけだ」

何もない廊下でこけるとは、どれほどドジなのだろうか。

重要なことを忘れていたな。

彼から一度も情報について聞いたことが無かった。

そもそも、俺が聞いてないだけなのだが。

「今から俺の部屋で待機していてくれるか?少し聞きたいことがある」

「…?別に構わないが」

埃を払い、バジルスは部屋へと向かう。

カエデさん、いらっしゃーい。

「何か用か?」

「指を鳴らしたらすぐ来るのはおかしいと思うの」

「偶然近くにいたからな」

「本当に?」

「…本当だ」

何だその間は。

「それはそうと、一つ作ってほしいものがあるんだ」

「ふむ、私ができることなら何でもしよう」

「カツ丼を二杯作ってくれ」

「なぜにカツ丼」

昔読んだ本の内容を思い出す。

「ほら、昔三人で読んだ本があっただろ?『これであなたも名刑事!情報の吐かせ方スペシャル』って本」

「あぁ、懐かしいな」

「これにさ、『カツ丼を置いておふくろさんが悲しむぞ?』って言ったらイチコロって書いてたんだよ!」

「実践するしかないじゃないか!」

「…なるほど。状況は理解したよ。二十分ほど時間を貰うが構わないか?」

「ああ」

「…ここまで純粋だと心配になるな…」

聞こえないように言ったみたいだが、丸聞こえである。

なんでこうも立場が逆転しているのだろうか。

私、気になります。

部屋の前で待っていると、カエデがカツ丼を持ってきた。

卵やトンカツの香ばしい匂いが漂う。

バジルス用なのに、俺が食べたくなってしまうではないか。

「まぁまぁ、言えば作ってあげるから、今回は譲ってあげればいいだろう」

「取り調べの健闘を祈っているよ」

「いきなりの頼みだったのにありがとな」

「ふふ、主人の期待に応えられたならいいさ」

「では、持ち場に戻るよ」

「ん、お疲れさん」

カエデを見送り、部屋に入る。

そこには、倒れているバジルスがいた。

「………」

「…大丈夫か?」

「…生きてるから問題ない」

「いや、この部屋で死なれたら困るんだが」

逮捕されてしまうじゃないか。

「流石にこけて死ぬことはないだろう」

「正直心配なんだが」

「…両手のどんぶりはいったいなんだ?」

「っとそうだ、忘れてた」

机にどんぶりを置き、照明を点ける。

「…こんなことをしてたのを知ったら、おふくろさんが悲しむぞ?」

「怒らないから、正直に言ってみなさい」

「待て、明らかにおかしいところがあるだろう」

「これだと、俺が罪を認めたらそれで終わりって感じじゃないか」

「あ、用途が違うのか」

本の知識もあてにならないものだ。

「普通、情報を聞き出すのなら拷問や尋問を行うのが基本だろう」

「そんな辛いことしたくない」

「………」

なんで大丈夫かこいつ?みたいな顔するんだ。

こっちは至って大真面目なんだぞ。

直下コンマが4以上で情報が取得できます。ついでに↓2コンマで戦闘力を判定します。

情報判定:4 情報が入手できました。自動的に、今回の戦争の首謀者が特定されます。

戦闘力:7 カエデやアリサほどではありませんが、充分な強さを誇っています。

早いですが、今回はこれで終了にさせていただきたいです…。次回は来週の月曜日予定です。

↓1~3に、アリサへの仕返しを募集します。それと、直下コンマで追撃部隊の進捗状況を判定します。皆さん、お疲れ様でした。

すみません…。今週の更新は無理そうです…。来週なら更新できると思います。申し訳ありません…。

本日の深夜になら更新できそうです。

それと、バジルスから情報を引き出せた&まさかの追撃判定が0なので、(バレてる気がしますが)黒幕の正体その他諸々の情報が開示されます。

なので、次週に黒幕ぶっ潰しタイムに移行することが可能になります。報告は以上です。

予定よりも大幅に遅れてしまいました…。今から少しだけ再開します。

バジルスの戦闘力を直下コンマで判定します。

>>143じゃないの?

>>156、あ、本当ですね…。すみません。少々お待ちください。

「…まぁ、これ以上あいつらに与する必要もない、か」

「俺の知ってることを全て話させてもらう」

「嫌なことを無理して言う必要はないぞ」

「そういうものは無いから気にするな」

「…そうか」

バジルスの言っていたことを纏めると、次のようになった。

バジルスは紛争地帯出身で、それ故に、幼少期から殺しあって生きていた。

そのため、気に掛ける家族も友も存在せず、生き延びるために何もかもを利用してきた。

紛争が終結した後は、傭兵組織を転々としていて、レジスタンスの占領地域に入った時にスカウトされた。

バジルスが知っていたのは、数ヵ月前からキメラを少しずつ入手していたこと。

それと、キメラの販売人は人間だということくらいらしい。

もう一つ加えるなら、レジスタンスの主導者は、人間に従うのを嫌う賢人とのことくらいか。

…となると、今回の戦闘…迎撃戦でも生存している可能性が高い。

追撃部隊が働いてくれれば、捕縛することも充分あり得るだろう。

「レジスタンスに戦力を供給しているのは人間か…。それも、キメラを有する」

「ああ。かなり物資も支給していた。莫大な資産を持っているのだろう」

「…ということは、首謀者はリゼル…で間違いないな。だが、情報が少ない」

「もっと有力な発言があればいいのだが」

「ふむ。この料理は美味いな」

口をリスのように膨らませているバジルス。

めっちゃ満足気にカツ丼を食べている。

というか、少し目を離した隙によくここまで食べられたな。

「一口でいいから食べさせてくれ。凄い美味そうだ」

「ほれ」

「…美味ーい!」

…忘れていたが、そろそろ追撃作戦の報告が来る頃か。

吉報があれば嬉しいのだが、そう事は上手く運ばないだろうな。

椅子の背もたれの寄りかかってぐったりしていたら、ドアがノックされる。

「ん、誰だ?」

「アリサです。緊急の連絡があります」

「…なんだ?」

「レジスタンスの主導者が捕縛されました。現在、輸送中とのことです」

「本当か!?」

「はい。伝令からの通達なので確定事項かと」

「よし、これで一気に事態が進展する」

「ここに戻るのはいつになる?」

「本日の夜だそうです。尋問は深夜ごろになるかと」

「分かった。他の特級貴族にも通達は行ってるな?」

「だと思いますけどねぇ」

「ならいい」

まさか、主導者を捕縛できるとは思わなかった。

上手くいけば、来週には決着を付けられそうだ。

…親父、もう少しだ。

あともう少しで、俺たちの願いが叶いそうだよ。

そこから見えるのなら、最後まで見届けてくれよ。

…それはそうとして。

「バジルスはもう出ていいぞ。食器は厨房に運んでくれ」

「承知した」

「では私も失礼し」

「あ、アリサは残れ。命令だ」

「うぐ」

積年の恨み、今晴らさでおくべきか。

すみません。時間がギリギリなので、短いですがこれで終了にさせてもらいます。次回は正直分かりません…。

一月経つことはないと思うのですが、いつ休暇になるか分かりませんので…。

更新日が判明したら報告しますね。遅くまでお疲れ様でした。

本日の夜10時頃に再開できそうです。

すみません…。予定を大幅に過ぎてしまいました…。今から再開します。

さて、今までにされたことの仕返しはどうするべきか。

痛くなるようなことはNGだし、心に傷を残すのももってのほかだ。

ドッキリ的な感じのやつでいいか。

「アリサ、とりあえず四つん這いになれ」

「は?」

「椅子だよ椅子。これは今までの蛮行に対する罰だからな」

真顔でこっちを見るな。

マジで怖いんだってば。

「…なるほど」

「当主様の趣味は他人を椅子にして優悦に浸ることですか」

「えっ」

「分かりました。どうぞご自由にお使いください」

そう言って四つん這いになるアリサ。

なんだか背徳感を感じる光景だ。

「ほらほら早く座ってくださいよー」

「んじゃ遠慮なく」

「んっ…。…ん?」

アリサ椅子に腰を下ろすが、直前でギリギリ止める。

実際に体重を載せるのはダメだと思います。

「あの、それ空気椅子状態ではないですかね」

「誰がなんと言おうと、今のアリサは椅子で、俺を座らせている。OK?」

「体重が載ってない時点で椅子になってないじゃないですかやだー!」

あっこれ凄い太ももにくる。

踏ん張れマイタイ。

「当主様一人なら充分耐えられますので…。ほらもう楽になってください?」

「断る!そんな酷い仕打ちをしてたまるか!」

「変なところで頑固ですねホント!」

どうして、四つん這いと入力しようとしたらヨツンヴァインが出るんですかねぇ…。


次の仕返しは…これだ!

「聞いてくれよアリサ」

「はいはい何ですか?」

「俺、気になる人ができたんだ」

「…はぁ!?」

突然叫ばないでくれ。

ビックリするじゃないか。

「それって恋的な感じですか?それともライバル的な感じですか?」

「あっ!そもそも相手は女性ですか?男性ですか?ショタですか?ロリですか?」

「っていうか人間ですか?まずそれは生きていますか?」

「うん、俺に対するイメージが尋常じゃないくらい酷いことだけは分かった」

ホモ疑惑を掛けられているどころか、無機物フェチとかそんな感じのレッテルを貼られている可能性があるな。

「普通に女性だよ。気になるっていうのも、たぶん恋だと思うぞ」

「今までしたことが無いから分からんが」

下のアリサを見ると、明らかに動揺しているのが分かる。

凄い震えてるんですけど。

氷水に落ちたおっさんですかあなたは。

「そ、そうですかー!遂に身を固める気になったんですね!良かった良かった!」

「ところで相手はどなたですか!?」

「プライバシーってものがあるからな。秘密だ」

「せめて特徴だけでも!」

「ダメ」

「うぅ~…!」

どうしてそんなにがっつくんだ?

最後は、ぶっ飛ばされるかもしれないが、アレでいこう。

「もう終わっていいぞ」

「あ、はい。全然辛くなかったですけどね」

「誰かさんがずっと空気椅子してたおかげで」

「太ももがヤバいです」

「でしょうねぇ」

立ち上がったアリサの目の前へと歩き、見つめる。

「な、なんですか…?」

そして、右手で頭を撫でながら、左腕で抱き寄せる。

「ひゃっ!?」

アリサが驚いてもぞもぞと動くが、そんなことは気にせずに抱きしめる。

「冗談はやめってっ…くだ…さい…」

抜け出そうとしても、決して離しはしない。

「はうぅぅ…」

20秒もすれば、アリサは全く動かなくなった。

アリサの耳まで真っ赤だが、こっちの方がよっぽど恥ずかしい。

5分ほどそのままの状態が続き、充分だと思ったので抱きしめるのをやめる。

すると、力が抜けているかのように、ペタンと地面に座り込むアリサ。

「…いきなり何するんですかぁ…」

「いや、今までいいようにされてきたからな。一泡吹かせようと思ってつい」

俺が答えたら、アリサはふくれっ面になる。

「ということは今のは全部嘘だったってことですかぁ。酷いですね」

慌てている姿が見られただけでも満足だ。

全て種明かしをしよう。

「嘘なのは気になる人云々と椅子のところだけだ」

「それ以外は全部本心だぞ」

アリサが突然、小悪魔のような笑みを浮かべる。

「つまり、私は大切な人なんですね?」

「当たり前だ。この家の人はみんな大切に決まっている」

「ふふっ。それは嬉しい限りです…ねっ!」

「…!?」

状況が理解できない。

アリサが飛び込んできたと思ったら、唇に柔らかい感触を感じる。

息もできない。

そのまま、時間が止まったと錯覚するような感覚が続く。

「…ぷはっ」

その感覚は、アリサが離れることで終わりを迎えた。

それと同時に、自分が何をされたのかを理解した。

「ど、どうしてこんなことを…」

「…当主様は、今までに何回私を抱きしめたか憶えていますか?」

しばらく記憶を掘り起こすが、該当するものは何も出てこない。

「…いや」

「3回ですよ。といっても、私がここに来てすぐのことですけど、ね」

アリサは下を向きながら、一つ一つ言葉を発していく。

「…私は、結構悩んでいたんです。ずっと伝えられなくて。本当の気持ち」

「正直に言おうと、伝えようとしても、照れ隠しできつい行動を取ったりしてましたから」

「…ですが、もうやめます。当主様が本心をぶつけてくれたなら、私も本心をぶつけなきゃ」

アリサは顔を上げる。

その目からは、一筋の涙が零れ落ちており、その顔は、優しく微笑んでいた。

「…愛しています。当主様。主としても。一人の人間としても」

「そして、一人の男性としても、です」

「今まで散々ふざけた行為をしておいて言えるような口ではありません…」

「だけど、はっきりと、何度でも言いましょう」

「私は、貴方に助けられたあの時から、ずっとお慕いしておりました」

「この体は、命は、心は、すでに貴方のものです」

「どうか、この命が尽きるまで、私をお使いください」

「それが、それこそが、私の最大の悦びですから」

それほどまでに、俺は慕われていたのか。

どうして、俺がそこまで慕われていたのかは分からない。

俺はただ、正しいと思ったことをしているだけだ。

正しいと思ったから、瓦礫に埋もれていたアリサを助けた。

正しいと思ったから、カエデの飼い主をこの手で殺めた。

後悔はない…はずだ。

「…俺は」

アリサに言わなければならないことがある。

それは。

「お前たちが老衰や病気で死ぬ以外は許さない」

「命が尽きるまで使え?ハッ、馬鹿馬鹿しい」

「何があっても、死なせはしないさ」

「大切な家族だ。死なせるわけがないだろう」

「だから…」

言いたいことを言いきる前に、アリサの指が口に触れる。

「…いえ、言わなくていいですよ」

「…何があっても、私は貴方の傍にいます」

「だから、これからも共に進みましょう」

「…言われなくても、そのつもりだ」

そうはっきりと答え、拳と拳を軽くぶつけた。

その後、今までの自分の行いを振り返ると、凄い恥ずかしくなってきた。

「俺めっちゃ痛いやつじゃないか…。黒歴史確定だ…」

「私は胸キュンでしたけどね」

「大切な家族って言ってくれた時は、本当に嬉しかったですよ」

「私の家族は、目の前で死にましたので…」

「…自殺に見せかけた他殺…だっけか」

「…はい。おそらく、土地と遺産目当ての人たちです」

「今、その場所は都会になっているようですから」

「…帰りたいとは思わないのか?」

「全く。…とは言えませんかね。両親の墓参りくらいはしたいです」

「もっとも、両親が眠っているわけではないですが…」

「…全てが終わったら、みんなの故郷を回ってみるか」

「いいですね」

「…絶対生き残るぞ」

「はい」

時計を見ると、約束の時間が近づいていた。

「俺はそろそろ出るよ。アリサには、一仕事頼みたい」

「何なりと」

「現在帰還中の追撃部隊の護衛だ。そろそろ西中島南方に到着する頃だからな」

西中島南方は、ハイランディアの首都、我々の住むレステルとレジスタンスの本拠地の中継地点だ。

自動的に、この場所を通ることになる。

「リゼルのことだ。暗殺部隊を向かわせている可能性が高い」

「主導者を連れてくれば、それで全て終わるはずだ」

「殲滅するよりも、守ることを優先してくれ」

「分かりました」

そう言って、アリサは姿を消す。

転移魔法が使えて羨ましい。

だが、使えないものを求めても仕方ない。

早く店に向かわなければ。

これで今回の更新は終わりです。自分で書いていて顔から火が出ていました。

ただの仕返しでワイワイするはずだったのに…。どうしてこうなった。

次回更新は今日の同じ時間に再開できれば…と思っています。あと数回で終わりそうですね。お疲れ様でした。


決戦前に告白……死ぬのか

暗殺者は直接主人公やアーバンを取りに来る可能性もあるな

>>173、充分あり得ます。今まではそこまで目立った行動をしていませんでしたが、今回は襲撃判定を行います。

失敗すれば、強制的に戦闘となります。貴方が死亡する可能性もありますよ。今から再開します。

これから向かうレストランは、俺が所有しているものだ。

というより、この街にある娯楽施設は殆どが俺の一族の管轄内だ。

その中には飲食店も含まれている。

大衆食堂などはそこまで経営していないが、いわゆる高級レストランは殆ど管轄内である。

今回向かうレストランも、所有している高級レストランの一つだ。

他の貴族も使うため、安全面には細心の注意を払っている。

店内外に警備員を配置し、要望があれば、送迎用の馬車も向かわせる。

従業員は、シェフと警備員は俺の一族から、それ以外は民間人を起用している。

全員保険にも入れているし、住居等の手配も当然している。

ホワイトなのが自慢なので、その辺りの整備はしっかりとしているのだ。

屋敷を出て、門外に停められている馬車へと乗り込む。

今回、護衛は付けていない。

アリサは別の護衛任務に就いているし、カエデはみんなに食事を振舞っている時間だ。

アルヴァは洗濯中だし、レイスにはそんなことはさせられない。

バジルスは名目上は捕虜だから仕事はさせられないし、ユウはまだ孤児院にいるらしい。

警備員もいるから、襲われるようなことはないだろう。

リゼルだって、民間人が近くを通るような場所で襲撃するほど、傍若無人な行いをするバカではないはずだ。

「到着いたしました」

「分かった」

知らせを聞き、馬車を降りる。

店内に入ると、すでにスジャータが席に着いて待っていた。

護衛のアインも一緒だ。

「貴方は護衛を付けてないのね」

「ここなら安心だしな」

「貴方は当主なのよ?常に護衛を付けるべきだと思うわ」

「相変わらず心配性だな。スジャータは」

「貴方がいなければ、法律を変えるのだって不可能でしょうに…」

「お爺様が敵の時点で、正面から戦って勝つのは厳しいわよ」

「爺さん、闘病中なのに現役だもんなぁ…」

昔は非常に腕の立った剣士だったらしいが、病には勝てないようだ。

「そういえば、お爺様とは面会したの?」

「いや」

「…最近、また容体が悪化したわ。早く会いなさい」

「間に合わなくて後悔しても遅いのよ」

「…そうだな」

スジャータに聞きたいことがあれば、↓1、2にお願いします。無い場合はその旨をお書きください。

なさそうなので、先に進めます。ちょっと待ちすぎでしたね…。深夜だから人はいないのに…。

「しかし、今日は警備員が多いわね」

「まぁ、ちょっと気を遣ってな」

人数が多い方が、相手からしても攻めにくいだろう。

「…私としては、今の半分でもいいと思うわ」

「…ふむ。詳しく頼む」

「まず、この店は開けた作りをしているでしょう」

「つまり、見通しがいい、ということよ」

「人数が増えるほど、見通しが悪くなる。だから、隠れる場所が増えてしまうのよ」

「それに万が一、戦闘になった時に、相手が動きやすいったらありはしないわ」

「そもそも、ここの警備員は巡回させるのではなく、一定の距離に配置して、監視させるタイプよ」

「だから、数を増やせばいい、という話でもないのよ」

「お、おう」

矢継ぎ早に話すスジャータに、つい気圧されてしまった。

いちおう俺の方が年上のはずなんだがな。

「だけど、状況に合わせて考えるのは悪くないことよ」

「これは一つの意見として、軽く捉えていればいいから」

「最後に決めるのは貴方でしょう?」

こうして、他人の意見を貰えるのはありがたい。

自分とは違う視点から見て、判断された意見は、考えもしなかったものばかりだからだ。

「ありがとな、スジャータ」

「別に感謝されるようなことじゃないけれど」

「素っ気ないなぁ」

だが、そこがスジャータのいいところなのだろう。

人によって態度は変えず、はっきりと物を言える。

つまり、誰に対しても平等に接するということだ。

そんなところがあるから、アインだってずっと従っているんだろう。

「そうだ。数日前に、他国の首脳と話し合ってきたんだ」

「へぇ。結果はどうだったのかしら?」

「上々だ。近いうちに、ここに鉄道が通ることになったぞ」

「凄いじゃない。移動手段が増えるということはレステルの、いや、ハイランディアそのものの利益が増えるのと同義よ」

「ああ。貿易の手段も増えるし、何より、ここに来る人が増えるだろう」

レステルは、ハイランディアが位置する大陸の玄関口でもある。

他の大陸や島国の物資はいったん、ここを通るのが殆どだ。

空路…飛空艇を使った場合は、直接輸送されるのでここは使われない場合が多い。

こちらも幾つか飛空艇は飛ばしているのだが、空路で得られる収益は少なくなってしまう。

なので、新しい貿易ルートが増えることは、ハイランディアの所得が、仕事が増えるのと同じなのだ。

今まで数ヵ月掛けて移動していた場所へ、数時間で行けるようになるのは非常に大きい。

観光に利用することもできるだろう。

とはいえ、鉄道の開通にはまだ時間が掛かる。

あと数ヵ月は必要だ。

気長に待とう。

襲撃判定です。直下コンマが4以下だと戦闘に移行します。

空路あったのか

「今日、主導者の尋問を行う予定で、来週にはたぶん終わるはずだ」

「先週頼みにきたばかりじゃない…」

「俺も驚いてるさ…」

まさか、主導者を捕縛できるとは思いもしなかった。

兵士たちの報酬を増やさなければ。

「まぁ、早く終わるのならいいことじゃない」

「だな」

「それと、全てが終わったらアリサたちの故郷を巡る予定でな」

「スジャータが良ければだが、一緒にどうだ?」

「構わないわよ。面白いことがありそうだし」

「そうか」

「…話していたら、時間がかなり経過してたわね」

「…あっ。早く王宮に行かないと」

「でしょうね…。早く行きなさい」

「ああ。またな」

「ええ、また」

席を立ち、外に出ようとした瞬間、目の前で爆発が起こった。

「ぐぅっ!?」

直撃は免れたが、爆風に耐えられず吹き飛ばされる。

「…最悪だ。このタイミングで襲撃されるか…」

「貴方様、それとお嬢様は後ろへお下がりください」

「アイン…」

「大丈夫です。命に代えても護りますから」

「…頼んだわ」

「奴らの数はざっと十人…。警備員を増やしていて正解だったかな」

「相手がバカ、とも言えるわね。わざわざ狙うタイミングじゃないわよ」

「とにかくスジャータは俺の後ろだ。俺だって多少は戦える」

「分かったわ」

腰に差していた剣を抜き、相手に向ける。

数人キメラが交じっており、戦力差は大きい。

ここで死ぬ可能性も充分ある。

そう思った直後、紫色の光が降り注ぐ。

「このアホみたいな魔力は…!?」

「すまない、処理するのが間に合わなかった」

「カエデ!お前は飯を作ってたはずだろう!」

「急いで済ませてきたのさ。嫌な予感がしたのでな」

「さて、手早く片付けようか」

「ああ…!」

恐れないで、できることだけをしよう。

カエデがいる今なら勝てるはずだ。

>>182、申し訳程度ですが、存在はしてます。九割以上は陸路(キャラバンとか)と航路に依存してますが…。

時間も遅いですので、これで終了にしたいと思います。

次回更新では、主導者の尋問まで進ませようと思います。いつ再開できるかはまだ分かりませんので、後ほど連絡します。

皆さん、お疲れ様でした。

そういえば複数の亜人を合体させたキメラってどんな見た目だろう?
今回のは市街地なんだから邪魔にならない程度の人型なんだろうけど

>>186、この世界では技術的にはまだキメラ製造が可能なレベルに到達してません。
ですので、ベースとなった素体に複数の種族の特徴(角や尻尾、指や腕の数、体毛etc…)がごちゃ混ぜになってます。
基本的にサイズはベースよりも大きくなっております。技術的な問題で、寿命は短命です。助ける手段は2つしかありません。
片方はすぐに実行可能、もう一方は時間が掛かる可能性が高いです。

ある程度落ち着いてきたので今週の土曜の深夜に再開をします。お待たせして申し訳ありませんでした…。

そのレベルでも戦争を左右するくらいに強いという意味なのか
そんなレベルの物をリゼルはたくさん造ってしまったという意味なのか

>>188、どちらかといえば前者です。

すみません、再開時間を本日の深夜に変更します。

まずい…。流石に深夜になりすぎました…。せめて戦闘だけでも終わらせます。

勝利条件:四回の判定成功、または特殊判定の発生

敗北条件:貴方の死亡

直下コンマで判定します。

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1

判定:7 成功


「敵の気勢を削ぐ!」

カエデは居合切りの構えを取り、暗殺者たちの懐へと走り出す。

真っ先に反応したのは大型のキメラで、肥大した右腕を大きく振るう。

龍の鉤爪に酷似したそれは、まさに必殺の一撃。

しかし、それは空しくも空を切った。

体に触れる刹那の間に、カエデはキメラの真後ろまで一瞬で移動した。

キメラは明らかに狼狽えたような挙動を見せる。

僅かに残っている知性が、何をしたのかを必死に分析しているのだ。

別に、カエデは何か特別なことをしたわけではない。

ただ、魔力を放出して加速しただけ。

それだけなのだ。

大型のキメラは思考を戻し、同じように右腕を振る。

キメラでない暗殺者たちも、続けて各々の武器を持ち、カエデと貴方に向かって走る。

振るわれる腕を躱しながら、暗殺者たちと剣戟を結ぶ。

一人で対応するには些か厳しい、とカエデは焦りを覚えるが、一人でも多く引きつけるため、更に苛烈に斬り掛かる。

少しでも、貴方たちの負担を軽くしよう、という思いを胸に、カエデは戦う。

主君を護るために敢えて、前で刀を振るうのだ。

カエデの気迫に気圧されたのか、暗殺者を弾き飛ばしたのと同時に、大型のキメラの動きが止まった。

その隙を、熟練の戦士であるカエデが見逃す筈が無い。

カエデはその黄金色の瞳でキメラを見据え、一言呟く――。

――斬り捨て、御免。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+1

ファンブルなので、ダメージ判定を行います。

直下コンマ判定

1:カエデ、貴方、スジャータ、アインのうち一名死亡
2~4:四人のうち一名が負傷(大)
5~8:味方の支援により回避成功
9:カウンター
0:特殊判定

流石に草を禁じ得ない…。誰が天に召すか直下コンマ判定をします。

1~4:スジャータ
5、6:アイン
7:カエデ
8、9、0:貴方

なんかごめんなさい

>>199、コンマ判定なので悪いってわけじゃないんですけどね…。まさかのお嬢様退場。何やってんだ貴方。

判定:4 スジャータ死亡

カエデが前線で奮闘するが、撃ち漏らした暗殺者は、躊躇なく貴方たちの所へと向かってくる。

「お嬢様は下がって!」

アインは、暗殺者たちを右手の拳銃で牽制する。

盲目とは思えないほど、狙いは正確だが、正確であるが故に弾道を見切られ、悉く回避をされる。

杖を持ったドワーフと思われるキメラが、魔法の詠唱を始める。

空に幾重もの魔法陣が展開され、無数の氷弾が降り注ぐ。

「ちぃっ!」

「っ!」

貴方はスジャータの前に立ち氷弾を捌くが、受け損なった氷弾が全身を撃ち抜く。

すぐさま回復用ポーションを飲み干し、傷の修復を図る。

だが、蓋を開けたと同時に、今度は雷が地面から蛇のように襲い掛かる。

避けられない。

そう確信して、防御用の障壁を展開するも、虚しく撃ち抜かれる。

アインも護衛に行こうとするが、複数名に囲まれてしまっており、迂闊な行動はできない。

もう、貴方には対抗策が残されていなかった。

だが、貴方はそれでも、と剣を構える。

たとえ不可能でも、尻尾を巻いて逃げるわけにはいかないから。

護らないといけない人がすぐ後ろにいるから。

「うあぁぁぁぁ!」

剣に力を込め、雷を受け止めようと前に突き出す。

だが突然、視界が斜めになる。

「え…?」

理解ができなかった。

いや、したくなかった。

何故なら、先ほどまで貴方がいた場所にスジャータがいて、スジャータの胸を雷が貫いていたのだから。

「スジャータッ!」

「お嬢様ッ!」

地面に手をつくと同時に体を捻り、スジャータの元へと走り出す貴方。

妨害を無視して、ナイフで数ヵ所を刺されながら、アインもスジャータの元へ向かう。

倒れる直前に、貴方はスジャータを抱きかかえるが、胸からの出血が止まらない。

ポーションを飲ませようとするが、気管や食道が焼けているせいで、飲むことができない。

それなら、と治癒魔法を唱えるが、貴方の魔力では治ることは無かった。

「クソッ!治れ!治れよ…っ!治ってくれよ…!お願いだから…」

「お嬢様、大丈夫です…。すぐ治りますから…。すぐ…」

アインはスジャータの手を握り、まるで自分に言い聞かせるかのように鼓舞をする。

貴方は、震える手を抑えながら治癒魔法を唱え続けるが、傷が癒えている兆候は見られない。

風が流れるような、力のない呼吸をしながら、スジャータはアインの手を払いのける。

そして、涙を浮かべながら微笑み、二人に力なきハグをする。

貴方を抱きしめると同時に、眼の光は消え、腕はゆっくりと地に落ちてゆく。

「嘘…だろ…」

「嫌…嫌ぁぁぁぁぁ…!」

今、一つの命の灯が消えた。

後味の悪い終わり方ですが、時間が少々まずいので誠に勝手ながら、終わりにさせていただきます。

次回は同日の深夜を予定しております。今日よりも早く始めたい…。

自分で書いておいて言うのもなんですが、やっぱり死ぬ描写を書くのは辛いですね…。

遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。

昨日よりは早く再開できた…。けど遅い…。

「っ!スジャータ嬢が…」

一閃を放とうとしたが、それは令嬢の死によって中断された。

これ以上離れているのは逆効果だ、と思い、貴方の元へと駆け出す。

カエデが敵中に突入し、混乱を起こす。

このスタイルは、カエデ自身が貴方に志願したものだ。

だが、これには致命的な欠点がある。

如何に混乱を起こすために暴れようと、戦力を分散されれば意味が無い。

(リゼル卿の方が上手だったか…!)

リゼルの手のひらの上で踊っていたことに苛立ちを覚えながら、カエデは吼える。

「主人!いつまでも突っ立っていたら、スジャータ嬢が命を棄てて貴方を救った意味がないぞ!」

彼女は賭けたのだ。

貴方が生きて、この国を変革(かえ)ることに。

ここで貴方が死んだら、彼女の想いが、覚悟が無意味になってしまう。

そんなことは、決してさせない――。

――もう、大切な人を、愛している人を失いたくないから――。

――まだ、自分を救ってくれた人に、恩を返せてはいないから。

刀を抜き、迫りくる凶弾と凶刃を捌く。

暗殺者は、完全に狙いをカエデへと変えた。

既に二人は満身創痍。

この場で最も危険な従者を始末すれば、全ては終わる――。

――そんな思惑が透けて見える、とカエデは嘲る。

そして、力強く啖呵を切った。

「私が命を棄てることで主人が助かるのなら本望!」

「我が命に代えてでも、貴様らはここで皆切り伏せる!」

「この刃…決して貴様らを逃しはしない!」

カエデの手に握られた刀が、紫色の光を帯び、瞬いた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+2

判定:3 失敗


カエデは放った斬撃が、キメラが展開した障壁によっていなされる。

守るのではなく、無効化する。

その方が効率が良いのだが、簡単なものではない。

相当な手練れだ、とカエデは舌を巻くが、相手は待ってくれない。

キメラが杖を翳すと、先端から無数の鎖が撃ち出される。

魔力を変換しての物質の生成、若しくは、イメージの具現化。

嘗てはさぞかし高名な魔術師だったのだろう。

これほどスムーズに、正確に生成するのは、並大抵の者では逆立ちしたって出来やしない――。

――称賛に値するものだが、それが、無抵抗で受ける理由にはならない。

動きを見切り、最小限の動作で回避する。

自然、カエデめがけて飛んでいた鎖は絡まり、操作ができなくなる。

絡まった鎖を右手で力いっぱい引き寄せる――。

――ドワーフやエルフといった所属は元来力は貧弱だ(例外もあるが)。

故に、力をあまり必要としない杖や弓を使いがちになるのだ。

眼前のキメラは、素体(ベース)がドワーフで、組み込まれたもの(エッセンス)はエルフである。

魔術、魔法の行使に特化したキメラなのだろう。

だが、それが災いして呆気なく引き寄せられる。

左手で構えた刀が、まるで死神の持つ鎌のようにも見える。

「逃しはしないと言っただろう?」

その時、キメラの僅かな知性に明確な死のイメージが刻まれた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+3(上限値)

判定:7 成功


恐怖のあまり、杖を手放すキメラ。

瞬時に魔法陣を形成し、蛇の如き雷を数発発射する。

それらは、鎖を持っていたカエデの全身に吸い込まれるように刺さった。

だが、それこそがキメラが持っていた死のイメージ。

極限状態に陥っていた脳に刻み込まれた虚像だったのだ。

当然、それは霧のように消える。

どこに移動した、と辺りを見回すが、視界に一つの光が見えた。

同時に、キメラの意識はそこで途絶えた。

カエデは、鎖を引き寄せた直後に、近くにいた暗殺者の懐に潜り込んだ。

そして、暗殺者の首を刎ね、刀に手を翳した。

先ほどと同じように光を帯び、無防備になっているキメラに向けて、一閃。

前回とは打って変わって、あっさりとキメラの頭部が切り裂かれた。

明らかに動揺する暗殺者たち。

絶対的優位に立っていると思い込んでいた彼らの心は、味方の死によって呆気なく崩れ落ちた。

殆どの知性を失ったキメラだけが、未だに戦意を失わない。

己を奮い立たせるためか、はたまた情けない味方(と言えるのかも怪しい)を鼓舞するためか、空気を振動させるほどの怒号を上げる。

皮肉なものだ、とカエデは思う。

戦いを優位に立たせるために知性があるのに、その知性の所為で戦いから逃げようとしてしまう――。

――ああ、本当に哀れだ。

死の覚悟を持たず、戦いに身を投じるとは。

救いようもない愚者に向け刀を構える。

「主人、前を見ろ」

それは、最愛の人へと向けた鼓舞。

「貴方が前へと進む限り、後悔はしない」

「それはきっと、スジャータ嬢が今思っていることさ」

「男なら、女の期待の一つには応えないとな?」

「…ええ。きっとお嬢様はそう思っているでしょう」

銀髪の従者は、涙を左手で拭って立ち上がる。

「何故なら、お嬢様は貴方を信じていましたから」

「『貴方なら、この国を変革(かえ)られる。そう確信している』と」

「そう…か…」

貴方の剣を持つ手に力が篭る。

「…なら、応える義務があるな…」

「それが、スジャータへのせめてもの餞だ」

言葉とは裏腹に、貴方の剣はどす黒い靄に覆われていた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

キメラの重圧:-1 未完成:+3

本来こっちが有利なはずだから

>>210コピペ修正忘れですね…。マイナス補正は全部消失します。

またファンブル…。直下コンマ判定です。

1:貴方、アイン、カエデのうち一名死亡
2~4:三名のうち一名が負傷(大)
5~8:味方の支援により回避成功
9、0:特殊判定(貴方の剣補正で範囲拡大)

本日はこれで終了です。次回は月曜日の夕方とかにできたらな、と…。再開できるか微妙ですが…。

夕食抜きだと流石にきついですね。頭も痛いですし…。

貴方はこれからどうなるのやら…。一週目でリタイヤは悲しすぎますよ(フラグ)。遅くまでありがとうございました。

すみません。唐突ですが、19:30頃から再開します。

それと補足ですが、スジャータが生き返る可能性はあります。あくまでも可能性ですが。

すみません…。渋滞にぶち当たっていました…。今から再開します。

判定:6 回避成功


貴方は地面を蹴り、暗殺者へと接近する。

近づくほど、剣を覆う靄が濃く、多くなる。

危険を感じた暗殺者はナイフを投擲し、距離を取る。

対して、貴方は迫りくるナイフを意に介さず、速度を上げた。

全身にナイフが刺さるが、一向に止まる気配を感じない貴方に、暗殺者は違和感を覚える。

そして、すぐにその違和感は的中した。

全身のナイフを靄が包み、数秒して剣へと戻る。

すると、そこにあったはずのナイフが、傷が、跡形もなく消えていた。

「っ!」

貴方に気を取られていた暗殺者は、偶然認識できたアインの射撃を体を逸らしてギリギリ回避する。

そのまま、逸らした勢いを活かして貴方へと回し蹴りをし、腰のホルスターから針を取り出す。

一撃でも当てれば。

そう思った暗殺者の意識を汲み取ったのか、貴方は回し蹴りを右肘で相殺しながら後退する。

キメラを抑えているカエデは、一連の攻防を見て恐怖を感じた。

今の行動は、いつもの貴方ならまず行わない。

被弾覚悟の接近よりも、防御を優先する。

そして、剣を覆う黒い靄。

『それ』からは、得体の知れない禍々しさが溢れている。

自分の勘違いなのかもしれない、と前向きに考えようとするが、眼に映ったものが、それを許さない。

あの剣は、貴方の一族が代々受け継いできたもの。

つまり、一族の宝、とも言えるものだ。

だが、それほどの代物が、ここまでの禍々しさを放つのか。

今のカエデには、貴方の持つ剣が触れてはならない、禁忌そのものにしか見えなかった。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

未完成:+3

判定:5 成功


「アイン、下がっていろ」

貴方は剣に手を翳し、告げる。

突然の指示に困惑しながらも、アインは従い後ろへと下がる。

眼が見えなくても、いや、見えないからこそ、貴方の負の感情をアインは鋭敏に感じ取った。

今の貴方は危険だ。

そう思っても、アインは口には出せない。

出してはいけない。

彼の気持ちは、痛いほど分かっているつもりだ。

純粋な家族ではない自分でも、お嬢様の死はどうしようもない辛い。

今も、胸が張り裂けそうなほどだ。

家族である貴方なら、自分よりももっと辛い思いをしているはずだ。

だから、言うことができない。

貴方が手を翳した刹那、剣から夥しい量の靄が溢れ、剣を包む。

そして、その靄は圧縮され、飽和状態となる。

「これが、貴様たちの蛮行に対する報いだ」

貴方はただ一度だけ、薙いだ。

同時に、飽和状態に到達していた靄が解き放たれ、眼前の暗殺者たちを包む。

あまりにも疾い『それ』に反応できなかった暗殺者たちは、その場から動けなかった。

靄が全身を包み、大きな黒い球体となる。

「終わりだ」

貴方が指を鳴らすと、靄は高速で剣へと回帰する。

先ほどまで暗殺者たちがいた場所には、塵だけが残されていた。


直下コンマ判定

1:ファンブル(無補正の値のみ該当)
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定(無補正の値のみ該当)

未完成:+3

判定:7 成功 規定回数成功したので、戦闘に勝利しました。


どれほどの剣戟を結んだのだろう。

数えるのが億劫になるほど、キメラの拳とカエデの刀がぶつかり合った。

強者同士の戦いは、一瞬の隙を見せれば終わる。

それを自覚していた両者は、付け入る隙を見せないように、注意を払いながら攻防を繰り返していた。

だが、その見せないようにしていた隙が、一瞬だけ姿を現した。

未完成故か、キメラの腕に亀裂が走る。

それと同時に、キメラの動きが少しだけ鈍る。

カエデの顔に笑顔が浮かべられる――。

――この一騎打ち、私の勝利だ。

袈裟斬り、右薙ぎ、突き、と続けざまに放たれる鋭い斬撃は、いとも容易くキメラの肉を裂く。

突き刺したまま独楽のように一回転し、体から刀を抜き、キメラの懐から上に向かって、飛び上がりながらの一閃。

出雲流抜刀術〝飛龍裂き″。

腹部から頭部まで、二つに分かたれたキメラは、音を立てて倒れ伏す。

父から教わった殺すための剣術は今、愛する主君を護るために使われた。

カエデの一撃を以て、暗殺者たちによる襲撃は終わりを迎えた。

彼らの心に、深い傷痕を残して。

カエデの一撃を見届けたのと同時に、貴方は糸が切れたように倒れる。

間一髪、アインが前から押し上げる形で止めるが、アインも怪我の所為で、上手く体態勢を維持できない。

「ぐ…ぅっ…」

よろけて、アインは貴方を離してしまう。

地面に頭が当たる前に、まるで小石でも拾い上げるようにカエデは貴方を抱き上げる。

「…スジャータ嬢を屋敷まで運ぶぞ」

「…っ。…はい…」

スジャータの体に触れる。

既に冷え切ってしまったスジャータの体を感じて、アインの眼から涙が零れる。

もっと、私が強ければ。

私の眼さえ、見えていたなら。

どうしようもない自責の念にアインの心が押し潰されていく。

カエデは言葉を掛けることなく、スジャータも抱えて屋敷へと飛ぶ。

下手な慰めは、却って逆効果になる。

それを理解していたからだ。

激痛で鈍くなった体に喝を入れて、アインも後に続く。

カエデは、先ほどの戦闘を思い返す。

あの時の貴方は異常だった。

あれほどの力を振るっている自分に、一切の疑問を持っていなかったのだ。

言い方が悪いが、貴方はそこまで強くない。

強くないから、私やアリサが護衛に就いているのだから。

あの時の貴方は、本当に貴方だったのだろうか。

もしや――。

――これ以上の詮索は無意味だ。

真実がどうであれ、あの力があったからこその勝利だ。

その代償があまりにも大きすぎたのだが。

スジャータの胸に穿たれた穴を見て思う。

もしかすると、アルヴァなら、フェニックスの力なら、きっと。

カエデは、貴方から叱責される覚悟をして、アインへと告げる。

その被害者になる、とも言えるアルヴァに、申し訳ない、という気持ちを持ちながら。

屋敷に到着するや否や、すぐさまスジャータの亡骸をベッドに安置し、アインへと例のことを頼む。

「心苦しいかもしれないが…。スジャータ嬢を救いたいなら…それしか…」

アインは頷く。

「覚悟の上です。こうなってしまったのは、全て私の責任ですから」

「いや…。寧ろ私の…」

「私の責任です」

はっきりと言い放つアインに、カエデは口を紡ぐしかなかった。

「カエデ様も早く城内へ。間に合わなかったら元も子もありませんよ」

「…すまない」

カエデは、今もなお眠る貴方を抱え、城へと最高速度で走る。

アインは決意を固め、呟く。

「…こちらも手早く終わらせますか」

お嬢様の魂が還ってしまう前に、と心の中で付け加えながら。

扉を開けると、目の前にはアルヴァがいた。

アインには分からなかったが、覚悟を決めた目をしている。

「…アインさん、話は全部聞きました」

「スジャータさんのために、ご主人様のために、命を懸けてくれてありがとうございます」

アルヴァは深々と頭を下げ、お辞儀をする。

「…私は奴隷ですから。主人のためならば当然のことです」

「そう…ですか…」

奴隷、という単語を聞き、アルヴァは苦虫を噛み潰したような顔をする。

流石に、その感情の機微を感じ取れないほど鈍いアインではなかった。

「…すみません。嫌な思いをさせてしまいましたか」

アルヴァは首を振り、答える。

「ううん、大丈夫」

そして、碧眼が焔のように紅く輝き、尾羽根から火の粉が漏れ出る。

アルヴァは数回深呼吸をしてから、それを力いっぱい引っ張り、引き千切った。

「っ!ぐぅぅぅぅ~~~!」

かつて尾羽根が生えていた場所からは、先ほどよりも激しく火の粉が噴き出し、血が滴っていた。

「大丈夫ですか!?」

痛々しい呻き声を上げて蹲るアルヴァにアインは近づく。

「私は…大丈夫…だから…。早く…使っ…て…」

手渡された尾羽根は温かく、そして力強い鼓動を感じる。

「…了解!」

アインはスジャータの胸の穴のすぐ下に、アルヴァの尾羽根を突き刺した――。

――今一度、命の灯をその身にお与えください。

この世界に、神様がいるのなら。


直下コンマが5以上で蘇生成功となります。

※アルヴァの尾羽根は残り一本です。使用しますか?(再生不可なので、もう一度使ったら二度と復活チャレンジはできません)

↓1~3で多数決です。

突き刺した羽根は光となり、傷口に吸い込まれていく。

光が消えると、そこにあった穴は塞がっていた。

しかし、スジャータの肌は未だに蒼白いままだ。

「もう一本…!」

アルヴァはもう一つの尾羽根に手を伸ばすが、それはアインに阻止された。

「なんで!?まだ助かるかもしれないのに…!」

アインは涙ながらに返答する。

「それは…本当に必要な時のために残してください…!」

「何本抜いたっては生えてく…あれ…?」

どんなにアルヴァが集中しても、羽根は生えてこない。

たしかに傷は塞がっている。

だが、それだけだ。

すぐ治るものだと思っていたが故に、そのショックは計り知れなかった。

「どう…し…て…?」

「もし何度も採取できるのなら…多少は市場で出回っているはずでしょう…!」

そう、何度も採取できるなら、そこまで目の色を変えて乱獲することはないのだ。

尋常じゃない生命力を持ったフェニックスなら、数匹ストックしておけば無限に生産できるのだから。

しかし、その生態上フェニックスは、非常に個体数が少ない。

ただでさえ長命なのに、転生することで寿命をリセットできるからだ。

「これは罰です…。あまりにも非力だった私への…」

「もう…アルヴァ様が傷ついてほしくはないのです…」

「うぅ…うっ…。うわぁぁぁぁぁん…」

先週まで親しくしていた相手の死。

それは、アルヴァの心に一生残る傷痕だった。

城に到着したカエデは、すぐさまソファーにくつろいでいるリゼルのところへと向かった。

「んぁ…。遅かったじゃねぇか」

下卑た笑みを浮かべてこちらを見据えるリゼル。

拳を握りしめるカエデだが、何とか理性で押しとどめる。

「まぁ、まだアーバンも追撃部隊も戻ってきてないからゆっくりしとけよ」

貴方はずいぶんグッスリ眠ってんなぁ?と笑いながら小馬鹿にするような物言いをするリゼルへと、殺意が芽生えてくる。

(耐えろ…。でないと、今までの苦労が、犠牲が水泡に帰してしまう…)

ここまで来たのに、癇癪を起こしてしまっては意味が無い。

逸る気持ちを抑えて、精神を鎮めるために瞑想を始める。

沈黙が漂う。

手で宝石を弄るリゼルと、眼を閉じて瞑想をしているカエデ。

お互いに行動には出さないが、水面下では激しい攻防が繰り広げられている。

そして、それは唐突に終わりを迎えた。

「ほっ、報告!」

「っ!」

伝令兵が焦った様子でこちらへと走ってきた。

何やら重要な情報が送られてきたのだろう。

「おうおう焦んなって。まずは落ち着いて正確に話すんだぞ」

「はっ、はい」

勝利を確信しているのか、リゼルの笑みは一層極悪さを増した。

今日の更新はこれで終了です。次回は来週の火曜日辺りになるかと思います。状況が変わりましたら、順次報告をしていきます。

直下コンマで追撃部隊の、↓2コンマでアーバンの判定をします。どちらとも4以上なら成功です。

突然の再開でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。


主人公がこの場に居るのに勝利を確信……?

更新は明日の夜に開始する予定です。

>>232、この状況で伝令兵が焦っていたので奇襲が成功した、とリゼルが判断したためです(勝利を確信したことについて)

貴方の武器の特性は、感情の変化に応じた性質付与(エンチャント)です。今回は負の感情だったので、攻撃的なエンチャントになりました。

貴方の使用時のエンチャントは負の場合が分解、再構築の性質を持つ靄の生成と使役、正の場合が複数の対象に再生効果(リジェネ)を付与する靄の生成と使役です。

この武器の特性は所有者によって変化します。また、使用時は所有者の性格をコピーした武器の内部データに切り替えられます。なので、本人は自覚していません。

このスレではコンティニューは行いません。死んだらその時点で次のキャラにバトンタッチです。ご了承ください。

追撃部隊の被害状況を直下コンマで判定します。

1:アリサ、主導者両名死亡、部隊全滅
2、3:どちらかが重傷を負い捕縛or死亡、部隊壊滅
4、5:両名負傷、部隊半壊
6~0:アリサらの仕込んだブラフ

お待たせしました。今から再開しますが、もう一度直下コンマで判定を行います。一の位が1~3で死亡、4~9で捕縛です。

十の位が奇数だと対象はアリサ、偶数だと主導者となります。なお、どちらかで0が出たらブラフに強制変更となります。

「緊急の報告は二つあります!」

カエデはペンを取り、メモを残そうとする。

どうするか、の判断は主人である貴方がしなければならないが、現在も眠り続けている。

情報を現物として残しておかなければ、後々困るのだ。

「一つ目の報告は、アーバン様が城への移動中に襲撃されました!」

やはりか、とカエデは歯噛みする。

リゼルが、襲撃するにはもってこいの、千載一遇のチャンスを逃すはずがない。

「クハハッ!あのアーバンが襲撃されるたぁとんでもねぇな!」

「…で、生きてんのか?アーバンは」

「それが…その…」

まさか、とカエデは冷や汗を掻く。

どちらか一人の特級貴族が死んでしまえば、リゼルの抑止力が無くなってしまう。

今でさえ好き放題させてるようなものなのに、これ以上過激になったらこの国にいられなくなる。

「んだよ。随分あっさりと死ぬのな。あれだけヤバそうなやつだったのに」

「だ・れ・が、死んだんですか?クソリゼル」

「…マジかよ」

城壁の窓から、アーバンの顔がひょっこりと姿を見せている。

「お勤めご苦労様」

「いや、マスターの役に立てたのなら光栄だ」

アーバンを優しく降ろし、傍で鎌に手を添える悪魔。

片方の角が折れているが、過去の戦闘での負傷なのだろうか。

しかし、彼女には見覚えがある。

どこで会ったのか記憶を辿ってみるが、なかなか思い出せない。

「クス、港で会った以来だな。カエデ…殿?」

「港…あっ」

そうだ、彼女は港で資金不足で泣く泣く諦めた悪魔の奴隷だ。

まさかアーバン卿に買われていたとは、と驚く。

「酷いこととかされてないか?大丈夫か?」

アーバンは普段はいい人だが、実は腹黒なことで特級貴族の中では結構有名だ。

女性をすぐ口説く癖もあるし心配でならない。

「いや、寧ろ愛してもらってる。異端である私すらも受け入れるほどの寛容さには感服するよ」

「女性なら皆受け入れますよ」

ダブルピースをするアーバン卿が可愛く見えた自分を殴りたく思ったカエデだった。

しかし、異端とはどういうことなのだろうな。

そんな疑問が残っていた。

アーバンが眠っている貴方のところへと歩み寄る。

「こんな状況でよく眠れますね」

「…おそらく、武器の能力を行使したのが原因だ」

あれほどの力を秘めているとは夢にも思わなかったが、とカエデは呟く。

「…アレを使ったんですね。道理で…」

アーバンは貴方の頭に優しく手を添える。

本性を知っているカエデ、リゼルには想像できなかったことだ。

「ゆっくり休んでてください。あとは僕がどうにかしますから」

「それで、もう一つの報告は何ですか?」

「…追撃部隊が同じく何者かに襲撃され壊滅。生存者は4名です」

メモを取る手が止まる。

今、彼が何を言ったのかが理解できない。

「アリサが護衛をしていたんだぞ!?」

咄嗟に、伝令兵の胸ぐらを掴み上げる。

「じっ実際に4人しか帰ってこなかったんですよ!」

「何をふざけたことを…!あのアリサが…!」

「カエデさん。落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか!」

カエデは激昂する。

彼女にとって、アリサは妹、のような存在だった。

そして、ライバルのような存在でもあった。

そんな彼女が敗北したことを、信じたくはなかった。

「…4名の生存者の内訳は?」

冷静にアーバンは問う。

「追撃部隊所属の兵が3名、それと主導者が…」

「…参ったなぁ。リゼル、何か知っていることはありますか?」

大笑いをしながら、リゼルは答える。

「ああ、知ってるよ!たまたま、貴方のメイドのアリサが俺のところに売られたんだよ」

アーバンは舌打ちをする。

これは非常に不味い。

最悪の状況に、貴方たちは追いやられていた。

「…こればかりは僕だけで判断しては駄目ですね」

アーバンは貴方の体を揺するが、反応は無い。

「…仕方ない。この魔法は苦手なんですけどね」

手に淡い光が集まり、貴方の頭を包み込む。

「ザメハ…っと」

光が消え、数秒後に貴方は目を覚ました。

「う…。…っ!?」

目を覚ますと同時に、貴方は跳ね起きる。

「主人、もう戦闘は終わったぞ」

「終わ…えっ…?」

貴方の顔に困惑の色が見える。

「落ち着いて聞いてほしい」

「…アリサが、リゼル卿に捕縛された」

「…は…?」

貴方の顔が青ざめる。

そして――。

「…っ!リゼルゥゥゥゥ!」

――貴方は剣を取ってリゼルへと襲い掛かった。

「抑えて!」

甲高い金属音が辺りに響く。

アーバンが、貴方の剣を受け止めたのだ。

「このままじゃ全て台無しですよ!アリサさんだって!」

「ぐ…うぁ…」

ペタン、と貴方は尻餅をつき、リゼルの方を見る。

「あー…。アリサを返してほしいなら、俺が出す条件は一つだ」

「お前ら全員、全ての財産を俺に譲渡してこの国から消えろ」

「それが飲めないなら、アリサは俺が有効活用してやるよ」

それは、死の宣告。

家族を大切にする貴方の心を利用した、傲慢な心を反映させた提案だった。

「…まぁ、こう来ますよね。普通」

諦めたように、一息つくアーバン。

「貴方に委ねますよ。貴方の家族のことですから、ね」

アーバンは微笑み、全ての運命を貴方に、託した。

この提案を受け入れるかどうか、を↓1~5で多数決を取ります。どちらかの選択肢を選ぶと、その時点でこの周は終了となります。

すみません、補足です。片方の選択肢が続行へと、もう片方の選択肢が終了へと進む、という意味です。

このレスは安価下でお願いします。

時間が厳しいので一回終了します。安価の募集は引き続き行います。次回更新は今週の金曜日の昼を予定しております。

お疲れ様でした。

自分を慕っていると言ってくれて絶対に死なせないと約束した女をキメラに改造させるのが正解か
その女の失敗を拭うために女と共に見た夢も財産もおぞましい悪党に渡して尻尾を巻くのが正解か
後者になったが外国でゼロからスタート?

>>252、純粋なハッピーエンドは、この状況に追い込まれた時点で残念ながら消滅しています。

お待たせしました。今から再開します。二週目のキャラも、この後作成する予定です。

どうするべきなのか、働かない思考を必死に働かせる。

目的を達成するのなら、アリサを諦めるべきなのだろう。

しかし、貴方はアリサと約束した。

『絶対に死なせない』と。

そして、貴方は選択した。

家族をまた喪うくらいなら、この国が滅んでしまう方がいい、と。

「…分かった。全ての資産を、権限を、リゼルに譲渡することを約束しよう」

その言葉を聞いたリゼルは、不愉快なまでに清々しい笑顔を見せる。

「そうかそうか!家族のためなら何でもする貴方らしい判断だ!」

貴方は唇を噛み、必死に耐える。

叶えたかった理想は今、泡沫へと消えた。

何かが壊れた音が、心なしか聞こえてきた気がした。

「んじゃ、後でアリサは送るよ。ああ、心配すんな。何も弄っちゃあいない」

どうなるか分からねえから怖いしな、とリゼルは付け加える。

「…すまん、アーバン。お前まで巻き添えにしてしまった」

利益を求めて、合理的な行動をするアーバンが付いてくれた。

それは、貴方に付く方が未来がある、と判断されたわけだ。

その期待を裏切ってしまったこと、それが一番悔しかった。

「過ぎたことを悔やんでも仕方ないでしょう」

あっけらかんと言うアーバン。

「それに、僕は後悔していませんよ」

貴方と共に進もうとしたことが嬉しかったですから。

アーバンの最後の一言に、救われた気がした。

屋敷への帰路の途中、アーバンが一切れの紙を手渡す。

アーバンはウィンクを一回して、従者に抱きかかえられ飛び立つ。

紙には、一言だけ書かれていた。

『3年後にあの場所で』とだけ。

何も変えられなかったことに対する無力感に苛まれながら、その紙を折り畳む。

「これからどうすればいいんだろうな…」

貴方が漏らした言葉を、カエデは聞き逃さなかった。

「私には分からん。が、主人が望むことを私は支えるだけさ」

好きにすればいい、とカエデは言っているのだろう。

それでも、どうすればいいのかが貴方には分からない。

屋敷の門にもたれかかるユウがいた。

しかし、どんな顔を向ければいいのだろうか。

悪霊でありながら、高潔に生き、共に戦った彼に。

何かを察したのか、ユウは口を開く。

「貴殿はよくやったよ。だから、そんな顔をしないでくれ」

「一瞬とはいえ、いい夢を見させてもらった。なら、私は後悔しない」

槍を心臓へと突き立てるユウ。

貴方は、それを見ることしかできなかった。

「所詮、私は悪霊だ。消えるのが道理だろう」

その言葉を最後に、目の前のオークが動くことは無かった。

心が軋み、悲鳴を上げる。

自ら命を絶った仲間を止めることが、止めようとすることすらできなかった、己の愚かしさに対して。

屋敷に入ると、玄関で待っていたアルヴァが泣いていた。

「ごめんなさい…。スジャータさんを生き返らせられなかった…」

泣きじゃくるアルヴァを見た時点で、結果は分かっていた。

だが、言葉で表された時の辛さは一際大きかった。

「悪いのはアルヴァじゃない。弱かった俺なんだ…」

アルヴァを抱きしめながら言う。

その言葉を皮切りに、アルヴァは更に多くの涙を流す。

「ご主人様は悪くないよぉ…。悪いのは…敵なんだから…」

アルヴァが泣き止むまで、ただひたすらに待つ。

そして、泣き止んだ後のアルヴァに伝える。

この国を出ないといけないから、荷物をまとめてきてくれ、と。

アルヴァの返事は力なく、よろめきながら部屋へと戻っていった。

「カエデも…荷物をまとめてくるんだ…」

「…了解。皆にも伝えてくる」

貴方の気持ちを汲み取ったのか、瞬時に姿を消すカエデ。

その思いやりが、心底有難く思えた。

「うぐっ…。うああぁぁぁぁぁあ!」

そして、涙ながらに叫んだ。

自分の無力さを、愚かさを恨み、声が枯れるまで。

全ての準備を終え、他の人を全員壁外へと移動させ、アリサが来るのを待つ。

数分後、目の前に小さな魔法陣が展開される。

「…ごめんなさい。命令、果たせませんでした」

「いや…。生きているだけで充分だ…!」

アリサが本当に生きていたことに安堵し、涙をまた流す。

「死ぬわけにはいきませんよ…。まだ、貴方と共に進まないといけませんから」

ハンカチで貴方の涙を拭い、微笑むアリサ。

合流を果たし、壁外に出ると簡単な隊列を組んだ皆がいた。

戦闘が可能な人を馬車の周辺に、非戦闘員を馬車の中に、カエデを最前列に配置した隊列だ。

「…私を待ってたみたいですね。すみません」

「気にするなアリサ。私たちは気にしてはいない」

淡々と返すカエデだが、声色から喜んでいるのが分かる。

馬車を進めて、近くの国を目指す。

特に宛てもなく、色々な国を放浪する中で、一報が入る。

『ハイランディアが滅んだ』と。

当然のことだろう、と貴方は思った。

ハイランディアの政界の腐敗は酷かった。

アーバンの手腕と貴方の外交戦略が無ければ、あっという間に内乱によって滅んでいただろう。

また、政治家であった貴方の祖父『ギムレット』が病死したのも大きな要因だ。

短期で複数の為政者を失ったことが、ハイランディア滅亡のきっかけであったのだ。

貴方は思う。

今までの自分たちの行いに意味はあったのか、と。

自分が奪った命は、スジャータの犠牲は、何になったのか、と。

祖父は何を思い、奴隷制度の維持をしていたのだろうか、と――。

――もう、答えは分からない。

だが、ハイランディアは変わった。

滅亡という、国として最悪な形に変わってしまった。

「リゼル…。お前は何を求めていたんだ…」

伝書鳩から渡された手紙を焼き、呟く。

彼が何を求めていたのか――。

――何も分からず仕舞いで、ハイランディアは終わりを迎えた。


第一周目 Normal End 滅びゆく祖国、残りし疑問

これで一周目は終わりです。17:30からキャラの設定を始めていきます。

キャラ設定の順番:性別(安価)→職業(コンマ判定後安価)→性格(二つ安価)→戦闘力(コンマ)→目的(安価(無くても可))

→仲間について(戦闘力まで同じ流れ)→終了(貴族なら奴隷についての設定)

コンマ判定(職業)は以下の通りです。

1:奴隷から逃げ出したor解放されたばかり
2:スラムで生きる人たち
3:貧しい一般人
4:普通の一般人
5:裕福な一般人
6:辺境の貴族
7:普通の貴族
8:高位の貴族
9:最高位の貴族(一周目貴方)
0:王様

備考…0以外ではハンターや旅人といった職業が任意で選べます。というより、0以外は自由です。

入れることができなかった設定

・ユウと主導者は兄弟(ないし兄妹)。
・ユウは孤児
・ユウが騎士道を目指した理由はギムレットに出会ったから
・ギムレットは元々奴隷制度の廃止をする気が満々だった
・ギムレット自身が、自分を貴方の成長のために利用していた
・貴方の母親も元奴隷
・貴方の一族が奴隷制度を制定した
・カエデは胎児の時に妹を吸収してしまった(故に魔法が使えない)

もう一つ備考を。貴族には奴隷が一人ボーナスで提供されますが、これはコンマ判定の方です。安価で貴族にする必要はありません。

それでは、キャラ設定を行います。性別を↓2にお願いします。

二周目は女性のようですね。次は職業です。直下コンマでお願いします。その後に具体的なものを安価で取ります。

どうやらスラムを拠点として生きているみたいですね。職業を↓2にお願いします。

貴女は物乞いをして今まで生きてきたようです。次に、性格についての安価を取ります。↓2、3です

内気で引っ込み思案ですが、純粋無垢な女性ですか。スラム住みにしては珍しいですね。直下コンマで戦闘力を判定します。

一個中隊と同等の戦闘力を持っているみたいです。そんな彼女の目的はいったい何なのでしょうか。↓2でお願いします。

恩返しですか。いい子ですね。恩人がどういう人なのかは後で軽く設定します。

次に、仲間がいるかの判定を行います。まずは人数です直下コンマで判定します。

1~3:孤独に生きてきた
4~6:一人の仲間or家族がいる
7~9:二人の仲間or家族が以下略
0:四人のなk以下略

一人、仲間か家族がいるみたいですね。↓2に、どういう関係の人なのかをお願いします。

教会の神父と仲がいいのですね。次は性格です。↓1、2にお願いします。

神父とは思えない性格ですね(喧嘩っ早いところとか)。次に、神父さんの戦闘力を直下コンマで判定します。

その次に、神父さんの名前を決める予定です。

ごめんなさい名前はアンデルセン

>>289、今から決める予定なので大丈夫ですよ。しかし…この神父がキレたら町が消し飛びますよ…。

次に名前です。↓2でお願いします。

次に、舞台の設定です。場所の特徴を↓2にお願いします。名前を付けても大丈夫ですよ。あと少しで終わる予定です。

いなさそうなのでkskしておきます。

昔のハイランディアですか…。度合を簡単に判定します。直下コンマが1に近いほど建国当時、9に近いほど貴方が生きていた時代となります。

場所はレステル…貴方と同じ場所にしますか?それとも、別の場所を新たに出しますか?↓2に意見をお書きください。

>299、貴方たちが姿を消して腐敗が進み、優秀だった兵士が流出してレジスタンスを形成、他国と共に内乱を起こして滅亡…という形です。

それに従い、リゼルの一族とリゼル傘下の上級貴族は処刑、アイリスは統治権を再度授与されて、再建に奮起しました。

ですが、ハイランディアは滅亡してしまったので、アイリスの影響はレステル内に止まっています。

レステルですね。了解しました。最後に、恩人の特徴を↓1、2にお願いします。

あ、一つ忘れていたことがありました…。貴女、グラウス、恩人の年齢を安価で取ります。恩人は無くても大丈夫です。

↓1~3で募集します。順番は上記の通りです。それでは、プロローグの作成へと入っていきます。

一人の少女が、産声を上げた。

スラム故か、父親が誰だかは不明だ。

しかし、母親は貴女を愛し、精一杯育てた。

貧しいため、満足な食事もできなかったが、楽しい毎日が続いていた――。

――それは、雨降る夜に終わりを迎えた。

「抵抗するんじゃねぇよ。あの女みたいに殺しちまうじゃねぇか」

「ひぃ…」

男――人攫い――の右後ろには、全身を槍で貫かれた母親が。

雷の鳴る夜、恐怖に泣く貴女を抱きしめ、眠りにつこうとする母親。

寝床に入る直前に、開きっぱなしの玄関から突然入ってきた男。

愛する娘を護るために、包丁を構え突進をする母親。

しかし、簡単にそれを往なされ、床から突き出た無数の槍によって、命を絶たれた。

母親が殺され、悲鳴を上げることすらできずに、俵のように抱きかかえられる貴女――。

――刹那、閃光が見えた。

放り出され、壁に当たる直前に『何か』が貴女を受け止める。

『何か』の中から見えるのは、翡翠に輝く宝石。

それが瞳だと気付くのに、時間は掛からなかった。

「邪魔するのか?なら、お前もここで死ね」

男の手に小さな魔法陣が展開される。

それに対して、『何か』は冷淡に吐き捨てる。

「戯言を。ゴミ一つ、我が焔で消し去ってやろう」

空間が引き裂かれ、炎が裂け目から漏れ出す。

凄まじい爆発が貴女の家を消し飛ばす。

「ちぃっ!ノーモーションで爆破かよ!」

爆風に身を任せ、ダメージを抑えた男を見据え、『何か』は両手を合わせて、念じる。

しかし、攻撃させまいと黒い槍が、鳥のように舞い『何か』を襲う。

「万物は燃え、塵芥と化す」

『何か』の1m前で槍は燃え尽き、塵となって地面へと落ちる。

「世界は燃え、虚無と解ける」

世界が隔絶され、炎で包まれる。

――では、汝は燃え尽きた果てに何へと変容する?

その一言と同時に、炎の中から『何か』の眼と同じ翡翠色の輝きが瞬く。

凄い、と『何か』に抱き着いている貴女は思う。

「少女、貴様は目を閉じろ」

『何か』は優しく語り掛ける。

「ここからは少々醜いからな」

言葉に従い、貴女は目を閉じる。

「っんだよコレ…。異空間か…?」

男は滝のように流れる汗を拭い、槍を手に構える。

「答えは無し、か。では、試してみようか」

『何か』は男へ手を翳し、握りしめる。

――天照らすは救済の焔――。

――汝の魂にも今、救済を与えてやろう――。

槍を構えていた男の皮膚が裂け、炎が噴き出す。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!やめ゛ろッ!やめでぐれぇ゛ッ!」

悲鳴ともいえない声を上げ、男は懇願する。

しかし、『何か』は無慈悲にそれを拒み、もう一つ念じた。

――神よ、この愚者に那由他を超える時の裁きを与え給え――。

そして、男の形をした何かが消えた。

周りを包む炎は消え、元の風景が映される。

それと同時に、雨がまた降りだした。

貴女が目を開けようとする。

だが、それを察知した『何か』は首に手刀を当て、意識を奪う。

すまんな、と一言だけ呟きながら。

ぐったりと倒れる貴女を抱え、近くの教会を目指し、走った。

教会の扉を開こうとすると、体が硬直した。

「泥棒はイケないんだぜ。お嬢さん」

貴様は教会の主か。

『何か』が問いかけると、『おうよ』と軽い返事が返ってくる。

「では、一つ頼み事がある」

『何か』は貴女を教会の主へと手渡し、顔を露出させる。

「あれ、この嬢ちゃんは…」

教会の主は驚いたような表情をし、『何か』を睨む。

「人攫いか?お前さんは。なら、ここで神罰をくれてやらぁ」

「待て、我はそんな輩ではない」

彼女を救ったまでだ、と吐き捨て、『何か』は炎に包まれる。

そして、炎が消えた場所には何も残ってはいなかった。

「なんだったんだ?いったい…。ありゃ」

貴女の手に握られている紙切れを取り出し、読む。

すると、教会の主は大笑いする。

「ハッハハハハハ!いいぜ!神父グラウスの名に懸けて引き受けようじゃねぇか!」

そこに記されていたのは――。

――この少女はもう孤独だ。傍にいてやるがいい――。

家族を喪い、グラウスの手助けを受けながら十年、生きてきた。

毎日、大通りで物乞いをし、僅かな金で食材を買い、腹を満たす。

偶に暴漢に襲われかけたが、どこからかやってきたグラウスに助けられる。

そんな毎日を過ごしてきた貴女は、あの日のことを思い出す――。

――あの人は今、どこにいるのかな――。

――私を救ってくれた恩返しをしたいのに――。

コンコン。

存在しない扉をノックする音が聞こえる。

貴女は笑顔を浮かべ、玄関の前へと移動する。

「よっ」

そこには、大量のおつまみを両手に抱えたグラウスがいた。

「あっグ、グラウスさん…。いらっしゃいませ…」

グラウスはふくれっ面をして、貴女へと言う。

「おいおい、そんなビビられちゃ、おじさん悲しいぜ」

「ご、ごめんなさい」

グラウスは貴女の頭を撫で、一言喋る。

「まっ、いつものことだから別に気にしてないさ」

「今日は面白いもんがあってな、『イカノシオカラ』ってのがあったんだぜ!」

デンッ、と机に小さな容器を置き、笑顔を見せるグラウス。

そんなグラウスを見て、貴女は思う。

――この人は変わらないなぁ。だけど、そこがいい、のかな――。

そして、何度も貴女の頭をワシワシと撫でては笑うグラウスだった。

直下に、今回の行動をお願いします。

「しかしよぉ」

グラウスが話を切り出す。

「な、なんですか?」

「嬢ちゃん、俺の特訓受けてるだろ?」

貴女は頷いて肯定する。

「嬢ちゃんは筋がいい。物乞いとかするよりもよっぽど稼げる仕事があるぜ」

「仕事って他にあるんですか?」

首を傾げる貴女に、グラウスはケラケラ笑いながら応答する。

「いっぱいあるぜ。俺のハニーは元冒険者だし、友達にはハンターとか、キャラバンやギルドを経営してるやつもいる」

「で、でも…。スラム住みの私なんかが…」

「関係ねぇよ。身分とかは飾りの世界だ。強いやつが出世して、弱いやつは下っ端のまんま」

強く言い切るグラウスに、貴女は少し怯える。

「嬢ちゃんなら、充分イケるよ」

ポンポン、と頭を叩かれる――。

――私でも、イケるのかな――。

「それに、世界の果てとかまで行ったりするから、恩人さんの情報も入るかもしれねぇぜ?」

その言葉を聞いた瞬間、貴女は立ち上がる。

「やります!」

返事を聞いたグラウスはニッ、と笑う。

――その言葉を聞きたかった――。

腰に下げていた鞄から色々なチラシを取り出し、二人で見る。

↓2に、転職する職業をお願いします。参考までに一部の職業の概要を書いておきます。

ハンター…ギルドに所属する人たちの総称。依頼を受けて行動するのがメインになる。

キャラバン…荷物や人を輸送する組織の総称。遺跡やダンジョンの探索なども行っている。

冒険者…その名の通り、世界を自由に冒険する自由人。依頼を受けて行動することもある。

チラシを読んでいく貴女だが、目に留まるようなものは見当たらない。

申し訳なさそうに、貴女は口を開く。

「ごめんなさい…。グラウスさん…」

ふむ、と口に手を当てて思考するグラウス。

何かひらめいたのか、突然手を叩く。

「きゃっ!」

「おお、すまんすまん。なら冒険者とかいいと思うぜ」

「え?」

「自分の好きなようにできるんだ。嬢ちゃんにピッタリのもんだと思うがな」

貴女は困惑するが、確かに合っているのかも、と同時に思う。

だが、一人が心細くもある。

他人と関わるのが苦手な貴女だが、独りぼっちになるのを何よりも恐れているのもまた、貴女だった。

その気持ちを汲み取ったグラウスは、貴女の頭に手を置き、言う。

「別に俺は同行しても構わないしな。恩人さんがどういう人なのかも気になる」

ハニーとしばらくお別れなのは寂しいがね、と頬を掻くグラウス。

彼の気遣いがとても有難かった。

グラウスにも同行してもらうかを直下にお願いします。

「お願いします」

即決だった。

今まで、何度も助けてもらっているのに烏滸がましいかもしれない。

だが、貴女にとってグラウスは父親そのものだったのだ。

だから、つい頼ってしまう。

「了解だ。ちょっと待っててな」

グラウスは頭に手を当てて目を瞑る。

「あー。ハニー?そう、嬢ちゃんが冒険者になりたいらしいから俺もついて行くんだが…」

「わっ!?ちょ、そんな怒んないでくれよぉ!俺はハニー一筋だぜ!?」

「…ん。そっか、ありがとな。愛してるぜ、世界の中で誰よりも、な」

「許可は貰ったから大丈夫だぜ」

一連のやり取りを見て、貴女は笑う。

いい夫婦だなぁ、と。

「んじゃ、善は急げ、だ。どこをまずは目指す?」

貴女は思考するが、この街以外のことは何も知らない。

グラウスの判断に委ねるしかないのだ。

「ふむ、知らないものは仕方ないな。じゃあどーすっかなぁ」

軽く伸びをして、立ち上がるグラウス。

指を鳴らすと、その手の上には大きな紙が浮かんでいた。

「…よし、ここがいいか」

グラウスは魔力で紙にメモをして、貴女に見せる。

グラウスが選んだ場所は――。

↓2に、目的地の特徴と名前をお願いします。新しい場所の場合は、直下コンマで距離を設定します。

直下に、目的の森林の名前をお願いします。おまかせだと、自分で適当に探してきます。

クレゾンヌの森。

最近、魔獣の出没数が多くなった場所だ。

距離はかなり遠く、地球の四分の一以上の距離を進む必要がある。

「遠くない…かな…?」

貴女の困惑も当然だ。

今までレステルから出たこともないのに、想像もできないほど離れた場所に進むこととなった。

「まぁ遠いけどなぁ。気になるんだよ」

「昔、ハニーと潜った森なんだが、そこまで危険ではなかった」

「ところがどっこい。最近になって死者がポンポコ出やがってるんだ」

なるほど、それは気になっても仕方ない。

貴女は気を引き締める。

「んじゃ、準備するかね。俺は家に戻ってからまたこっちに来るよ」

手を振り、グラウスは帰っていく。

置いて帰った『イカノシオカラ』を、恐る恐る食べてみる。

口にした途端、自己主張してくる塩味とイカの風味。

その強烈な味は、貴女にとっての美味なのか、それとも――。

直下コンマで、貴女の珍味(おつまみ)に対する味覚を判定します。もう少し進んだら、武器の判定と設定を行います。

口にする手が止まらない。

無我夢中で食べ続け、自我が戻った頃には、残り三割ほどしか残っていなかった。

「あぅ…。許してくれるかな…」

「ふぃ~。準備完了…ってあーっ!」

「俺の『シオカラ』ちゃんがー!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

何度も頭を下げる貴女に、壁に体を張り付けているグラウス。

気を取り直して、グラウスは咳払いをする。

「美味かった?」

「え…?」

叱責されるとばかり思っていた貴女は呆気にとられる。

そして、慌てて答える。

「お、美味しかったです!」

その答えを聞いたグラウスはニッ、と笑う。

「そりゃあ良かった!」

「あれ…?」

「まさか怒るとでも思った?しないしない」

「この程度で怒るわけねぇさ」

彼の優しさが眩しい。

だが、その優しさに触れられているのが、何よりも嬉しかった。

「ほら、さっさと行くぞ」

歩いていくグラウスを追いかけ、家を出る。

ふと教会を見ると、手を振っている女性の姿が見えた。

グラウスも、振り向いて手を振る。

私には眩しい光景だな、と呟く貴女。

その言葉は、スラムの中に消えていく。

グラウスが、壁門への道中で語り掛けてくる。

「嬢ちゃん、どの武器を使うつもりなんだ?」

武器。

貴女はそう呟き、黙考する。

自分を守るための大切なもの。

だが、グラウスが使っているところは一度も見ていない。

気になった貴女は、グラウスへと問い掛ける。

「グラウスさんは何を使ってるんですか?」

「俺ぇ?」

グラウスは、首に手を当てて空を見上げる。

そして、指を一度だけ鳴らした。

「何でも、かな」

刹那、空に展開された無数の武器。

そのどれもが、途轍もない力を持っていると直感で理解できた。

「凄い…」

心の底から思ったことが、無意識のうちに口から漏れ出ていた。

それに対し、グラウスは淡々と言う。

「これくらい大したことないさ。加減してるからな」

一本の剣を手元に移動させ、左手で掴む。

「これは…。何だっけな。エクスカリバーだった気がする」

「んで、こっちがグングニル。それがハルペー…だったと思う」

右手で指差し、説明をしていくグラウスだが、貴女は何も理解できない。

「まぁ、どうでもいいことだ。どの種類の武器を使いたいか教えてくれ」

貴女が使う武器の種類を直下にお願いします。同時に直下コンマでランクを設定します。7以上でグラウスから譲渡されます。

あ、ヤバい。とんでもない武器が譲渡されます。

↓1に与えられる剣の名称と特徴や性質、能力を、↓2に盾の名称と特徴や性質、能力をお願いします。

名前が無い場合は後ほど設定します。

では、剣の名称を直下にお願いします。おまかせの場合は、私個人で適当にそれっぽい単語を合わせます。

貴女は今まで、戦い方を教えてもらってきたが、武器の使い方は教えてもらっていない。

そんな自分が、どういう武器を使えるか、必死に考える。

考えた結果、浮かんできたのは剣と盾のセットだった。

「剣と盾でお願いします」

「片手剣か。了解」

空に展開した武器を仕舞い、もう一度手元に武器を呼び出す。

その手には細身の美しい剣と、荘厳な装飾が施された盾があった。

「こっちは『月切』。アホみたいに硬くてな。壊れないし刃毀れしないんだ」

「ついでに、念じたら魔力刃を放てる。シンプルで使いやすい、いい武器だよ」

「で、これは『聖盾エウルス』。旅の途中で聞いた伝承では、『持ってる限り、持ち主は絶対に死なない』んだと」

「これを持ってる間は、リジェネ…再生だな、が常時発動。それと魔力反射ができるとんでもない代物だ」

どうして、そんなものを持っているのか。

疑問に思った貴女は素直に聞く。

「そりゃ、旅してきたからな」

「月切は簡単に取れたが、エウルスはヤバかった。流石に死ぬかと思ったよ」

ケラケラと笑うグラウスだが、目が全く笑っていない。

「何はともあれ、これから嬢ちゃんが使う武器なんだ。大切にしてあげてな」

「はい!」

ギュっと両手で抱きしめる貴女。

その光景を見て、グラウスは小さく漏らす――。

――俺にも子供がいたら、こんな会話をしてたのかな――と。

警備の人と簡単な手続きを済ませ、壁外に出る。

話には聞いていたが、広大な岩肌が広がっていて、気圧される。

「昔からこんな土地だからなぁ。だから貿易も盛んなんだろうが」

グラウスは、地図を呼び出し、周りを確認する。

「さてさてどう移動しましょうかね」

貴女も地図を見ようとするが、身長の差で届かない。

ピョンピョコ跳ねる貴女を、グラウスは魔法で浮かせ、一緒に見る。

そして、グラウスは一つ一つ丁寧に、近辺のことについて教える。

「まず、ここがレステルだ」

海沿いの壁に囲まれた都市。

ここが、私の故郷。

貴女は心の中でそう思った。

「んで、クレゾンヌの森はここだ」

縮尺を変え、大陸全体が見えるようにしてグラウスは指差す。

レステルとは正反対の、山に囲まれた森。

「ルートは…こんな感じかなぁ」

先ほどと同じように、魔力で記録をしていくグラウス。

その挙動から、慣れていることが感じられる。

「ほいできた」

見せられた地図には、三つのルートが示されていた。

一つ目は、複数の都市を経由する最も安全なルート。

しかし、当然だが時間が掛かってしまう。

二つ目は、山脈を真っ直ぐ進むルート。

このルートは、危険で強力な魔物も跋扈している上に、危険地帯もところどころ存在するらしい。

だが、その危険度に見合う速さで到達し、道中のダンジョンで宝探しもできるのだとか。

三つ目は、道に沿って、森付近の小さな町まで移動する。

そして、山の中にある渓谷を伝って森へと侵入するルートだ。

このルートは、渓谷に盗賊団のアジトが存在するらしく、鉢合わせたら戦うしかない、とのこと。

「選ぶのは嬢ちゃんに任せるぜ。俺は付き添いだからな」

あ、俺のオススメは都市ルートだ、と付け加えられる。

貴女が選んだルートは――。

どのルートを選ぶのか、↓2でお願いします。

1:都市ルート
2:山脈ルート
3:盗賊ルート
4:自由にルートを作成する

本日の更新はこれで終了です。次回は月曜日の昼、若しくは土曜日の夜の予定です。新しい貴女のパートナーがチート過ぎる…。

質問等がありましたら、次回更新までに空いてる時間で返答、開始時に纏めて返答していきます。

都合上返答できないものはスルーさせていただきます。申し訳ありません。皆さん、お疲れ様でした。




前回から何年後の話?

>>342、前回から約50年ほど遡っています。なので、ギムレットやユウ、主導者と出会う可能性があります。

今日は夜10時頃からの更新になりそうですが、それでもよければ更新します…。

よくないです

とか言われたらどうするんだ

50年も前なら今作には関係なく聞けるけど
前作主人公達が奴隷制度を撤廃しようとしていたのはなぜでしょう?
リゼルが亜人たちをハイランディアに攻め込ませた目的はなんだったのでしょう?

>>344、あー…。確かにそうですね。これからはもう少し表現に気を付けないと…。


>>347、奴隷制度撤廃の理由としては、昔の貴方は奴隷制度に対して「罪人等の愚者に与えられる罰」だと思っていました。

ですが、父親の視察に同行した時に向かったアリサの故郷で地震に被災、二次災害の火災によって瀕死のアリサを救助しました。

その時に、貴方は背中に大火傷を、アリサは右脇腹に火傷を負い、左足を切除しました。

診療所に運ばれて、アリサの過去を知ったことで「闇しか生まない愚かな制度」と貴方は意識を改め、改革を目指しました。


リゼルが攻め込ませたと言うより、リゼルがそう誘導した、と言った方が正しいです。

わざと大事になるように亜人の誘拐を行い、亜人の怒りを買って「向こうが勝手に攻めてきたので、仕方なく対応して禍根を絶った」という形に持ち込むつもりでした。

そうすれば、亜人をもっと簡単に、安定して得ることができる、とリゼルが判断したからです。

敵軍にキメラが交じっていた理由は、リゼルが他国の人間に密輸したのですが、その人間こそが、変身魔法で姿を変えた主導者でした。


かなり遅れてしまいましたが、今から再開していきます。

貴女は何度もルートを見直して、決意を固める。

そして、グラウスにその決意を伝えた。

「ここ、行きたいです」

貴女が選んだのは、盗賊と相対する可能性がある渓谷ルートだ。

一番選ばないであろうものが選ばれたので、グラウスは慌てる。

「お、おいおい…。いいのか嬢ちゃん…?最悪、人殺しをする羽目になるんだぜ?」

「確かに、人と戦うのは怖いです…。だけど」

震える手を抑え、真っ直ぐにグラウスを見つめ、はっきりと言い切る。

「悪いことをする人を放っておくことはできません」

弱々しくだが、はっきりと言い切った貴女を見て、グラウスは笑う。

「ハッハハハハハ!あのか弱い嬢ちゃんがここまで言い切るたぁな!」

そして、グラウスを拳を合わせて答える。

「了解だ嬢ちゃん。んじゃ、悪い盗賊さんたちを成敗しに行こうじゃねぇか」

意気揚々と言うグラウスだが、その心は冷徹だった――。

――もしもの時は、俺が殺せばいいか――。

歩みを再び始めた貴女の後ろで、グラウスは胸から提げた十字架を握り、呟く――。

――嬢ちゃんが穢れることが無いよう、ここに祈りを捧げよう――。

その手からは、聖なる光が漏れ出ていた。

直下に、貴女とグラウスの間に起きたイベントをお願いします。無くても問題ありません。

また、直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

どうやら戦闘が発生してしまったようですね。直下コンマの十の位が奇数で魔物、偶数で盗賊、一の位で規模を判定します。

大☆惨☆事になっちゃうヤバいヤバい…。魔物の特徴とか名称を↓1~3で募集します。無ければ、こちらで引っ張ってきます。

↓1~3に、それぞれの魔物の名前をお願いします。おまかせの場合は、自分で軽く調べてきます。

大きな道を歩いていく中で、貴女はふと気になったことを問う。

「グラウスさんって、昔は旅人だったんですか?」

「んぉ?ちょっち違うかな。放浪してただけのただの神父だよ」

いや、ハニーと逢ってからは冒険者同然だな、と一人で考え込むグラウス。

「あー。元々、俺は神の教えを説くってのは苦手でな。カウンセリングを中心にして旅してたんだよ」

「その中で、ハニーに探索の同行者に、と誘われてさ。そこからもうゾッコンだよ」

楽しそうに喋るグラウスを見ていると、こちらも楽しくなってくる。

談笑をしながら歩き続け、夜になったらテントを建てて休憩。

また朝になったら、移動を再開する。

この流れを三日ほど続け、分岐路へと辿り着いた。

「この大通りを真っ直ぐ進めば都市に到着だ」

「だが、今回はこっち」

グラウスが指差すのは、小さな獣道。

気のせいか、嫌な気配がする。

「瘴気が濃ゆいな…。大穴に何かが棲み着いてんのか」

グラウスは首を鳴らし、貴女に忠告する。

「嬢ちゃん、武器を構えておきな」

歩いていくほどに、足取りがどんどん重くなっていく。

呼吸も安定せず、視界が歪む。

「流石に俺も、今回は嬢ちゃんのカバーには回れなさそうだ」

大穴の入り口に足を入れた瞬間、世界が砕ける。

グラウスは忌々しげな表情を浮かべ、武器を呼び出す。

「瘴気の密度が尋常じゃねえ…!ここだけは『世界そのもの』から切り離されてやがるな…!」

黒い霧の中から、無数の光がこちらを睨む。

貴女は息が詰まり、何回か咳き込む。

「嬢ちゃんは後ろに下がってろ!ここは…『魔界』の『それ』と然程変わんねえ!」

グラウスは右手で十字を切り、左手を上に掲げる。

「テメェら魔物にはちと勿体ねぇが…!くれてやるよ!神罰と終焉をな!」

切られた十字は肥大して、聖なる光が溢れ出す。

掲げた左手には、巨大な火球が生み出されていた。

直下コンマ判定です。グラウスがいるので、二回成功かクリティカル、特殊判定で終了します。

1(補正値なしのみ適応):ファンブル
1~4:失敗
5~7:成功
8、9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1

襲い掛かってくる、無数の魔物。

しかし、魔物は接近を果たせず、神の裁きを、慈悲を受ける。

神罰魔法『グランドクロス』。

魔導に長けた、信心深い聖職者のみが行使することを許される、『神の慈悲』と称された魔法の境地の一つ。

その魔法は、罪を清める浄化の光で、身を、魂を焼き尽くし、『無』という慈悲を与える。

邪悪なる、魔界に棲む魔物がそれを受けきれるはずもない。

骨すら残さず消え去る魔物。

しかし、それでも軍勢が止まることはない。

続けて放ったのは、数多の魔力の弾丸。

回避行動を取る大蜂を、蝙蝠を、どこまでも追いかけてその身を穿つ。

終焉魔法『ラグナロク』。

限界まで圧縮された魔力弾を解き放つ、『世界を喰らう禁忌』と称された魔法の境地の一つだ。

魔力弾の色は術者の魔力に大きく影響され、グラウスの場合は、炎の如き紅と、神罰の光の如き淡黄色の二つがある。

その魔法は、標的全てを食い尽くすまで、どこまでも貪欲に追い続ける獣の群れ。

標的に、『死』という終焉を与えるが故に名付けられた。

全身を抉られ、命を喪った肉塊が地へと墜ちる。

常人が相対すれば、瞬く間に逃げ出すような化け物を前にしても、知性無き化け物は逃げ出さない。

寧ろ、生存本能が刺激されたのか、進軍速度を上げてくる。

「逃げない、か。それもまたいいのかもな」

「なら、もう一度裁き与えるまでだ」

剣を一本手に持ち、地面に突き刺す。

瞬時に構築された魔法陣からは、白い光が牙を剝く――。

――異なる世界に棲む魔物に、聖職者が与える裁きは――。

直下コンマ判定

1(補正値なしのみ適応):ファンブル
1~4:失敗
5~7:成功
8、9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1 状況有利:+1

「消し飛びな」

小さく吐き捨てると、足元の魔法陣が消失する。

が、刹那の間に全ての魔物を内包する範囲に、場所に展開される。

そして、蒼白い光が全てを焼き尽くし、隔絶された世界すらも壊した。

究極魔法『アルテマ』。

先ほどの魔法と同じく、『魔導の果てに顕現せしもの』と称された魔法の境地の一つ。

魔術を極めた者にしか到達できない世界。

それを見た者に合わせて姿を変える、『生きた魔法』。

究極たる所以は、最大限の力を発揮できる、魔法に必要ないはずの順応性にある。

生命全てを消し去り、グラウスは大きなため息を吐く。

貴女は、ただ見ていることしかできなかった。

グラウスは、手に光を纏って空間を掴み、継ぎ合わせる。

「これで、ここはもう大丈夫だろ」

くるり、と踵を変え、グラウスは笑顔を見せる。

「それじゃ、先に進もうか。足止めを食っちまったしな」

あれほどのことをして、何事もなかったかのように振舞うグラウスに、貴女は若干恐怖を覚える。

どれほどの努力をしたら、この領域に辿り着けるのか。

どうして、そこまで辿り着いたのか。

十年も仲良く過ごしていたのに、何も分からないことが少し、怖かった。

直下に、貴女とグラウスの間に起きたイベントをお願いします。無くても問題ありません。

今回の戦闘の余波で、戦闘に入ることは町に到着するまでありません。

魔物との戦闘があってから数日。

偶に近寄ってくる犬型の魔物とじゃれ合う程度で、特に問題は起きなかった。

大きな山の麓に、グラウスは小さな洞窟を作る。

寝床を準備した後、貴女を連れて外に出る。

グラウスは地面に幾何学模様を描き、その上に貴女を呼ぶ。

「えっと…。これって何ですか?」

「魔王召喚のための魔法陣」

「すまん嘘!魔力増幅用の術式だから気にすんな嬢ちゃん!」

ひっ、と怯える貴女を見て、慌てて訂正するグラウス。

戦闘の時の、圧倒的な力を見た貴女には、彼の言っていることは冗談に聞こえなかった。

「やっぱ、魔法は使えても損はないものだからさ。初歩のものでも教えておこうと思ってな」

指を振って、小さな火の玉、氷弾、つむじ風、光弾を作り出すグラウス。

地面に手を付くと、土人形が作られ、ブレイクダンスをする。

「キモい…」

正直な感想を言った貴女に、涙目で文句を言うグラウス。

「そりゃねぇぜ…。おじさんは芸術とかはてんでダメなんだ」

「…ならコレは?」

もう一度土人形を作るグラウス。

今度は、可愛らしい服に包まれた貴女がそこにあった。

「自信作だ。これなら凄いんじゃないか?」

「綺麗…」

見惚れる貴女を見て微笑みながら、グラウスは立ち上がる。

「とにかく、物は試し、だ。やってみたら何かが見えてくるよ」

貴女は頷き、魔力を認識させるところから始める。

↓1~3に、練習する魔法の種類をお願いします。コンマで習熟度の判定をします。

今回の更新はこれで終了です。次回は月曜日の予定ですが、夕方から夜に再開できなければ、土曜日になると思います。

遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。お疲れ様でした。安価を踏んでいる場合は下にずらします。


ビオランテ:魔界の全域に生息する『意思持つ植物』。人語を解す知性を持つが、恐怖を持たない欠陥品。

腕のように複数の触手が生え、先端は強靭な顎となっている。単体でも充分強いが、他の個体と意思疎通を行うので集団だと特に危険。


魂喰蜂:魔物の魂を喰らい続けることで変異した『闇の媒介』。これが多い場所は瘴気が濃くなり、瘴気が一定量を超えると魔界の環境となる。

毒で体を動けなくさせ、顎で魂を喰い千切る。この状態になると、魔物の魂を喰うことはなくなり、人間の魂を好むようになる。


ISIS:光学迷彩魔法を覚えた『不可視の暗殺者』。音も無く忍び寄り、その命を毒で融かし尽くす。

瘴気の中で生まれ、瘴気の外ではすぐ息絶える可哀想な蝙蝠。しかもうたれ弱い。

お待たせしました。今から再開していきます。

「全身の力を掌に集めるように…。…そうだ。やっぱり筋がいいよ」

「あ、ありがとうございます…」

魔力の認識に掛かった時間は約十分。

増幅の術式による能力強化(エンハンス)があるとはいえ、素質がある、と言えるほどの飲み込みの速さだ。

「んじゃ、実践練習といきますか。俺に火炎魔法を当ててみろ」

「えっ!?」

「ハハ、嬢ちゃんの魔法で怪我なんてしねぇから気にしなさんな」

やり方は自分が教えてくれる、と言い残し、距離を取るグラウス。

その目は真剣で、こちらも気を引き締めるしかなかった。

「あ、おじさんも適当に攻撃するから回避とか頑張れ」

刹那、眼前を埋め尽くす光弾。

速くはない、が遅くもない微妙な速度で、貴女に襲い掛かる。

「ひゃー!」

左に、右に駆け、光弾を回避し、集中する。

両手を重ね、前に突き出す。

自分が教えてくれるなら、というグラウスの言葉を信じ、魔力を込める。

そして、小さな火炎弾が数発、グラウス目掛けて飛び立つ。

「っ!へぇ…!」

ニヤリ、と獰猛な笑みを浮かべ、呼び出した槍で弾き飛ばすグラウス。

次に呼び出したのは、二匹の小さなスライム。

「実践練習その二、だ。コイツらを探して見つけ出しな」

グラウスの声を引き金に、姿を消すスライムたち。

貴女は再度集中して、全身に魔力を巡らせる。

スライムが帯びていた、僅かな匂いが強くなる。

どちらも動いてはいない。

しかし、それは実感できるほどに増大していく。

「…見つけた!」

木陰に、鼠の巣穴にそれぞれ隠れていたスライムを捕獲する。

手に持つと同時に、溶けて無へと還るスライム。

「おめでとさん、これで、初歩とはいえ二つの魔法をマスターしたぜ」

ありがとうございます、と言おうとしたその時、貴女に向けて振るわれる槍。

何事か、と慌てた顔でグラウスを見る貴女とは違い、冷徹な表情をするグラウス。

「…最後の練習だ。気を引き締めろ。でないと…」

死ぬぞ、と言い急速接近をするグラウスに対し、怯えながら盾を構える貴女。

「くぅ…。あぁっ!?」

何度も振るわれる槍の衝撃に耐えられず、盾を離してしまう貴女。

貴女が盾の行く末を見ると同時に、グラウスの槍が右太腿を刺す。

「何があっても、気を緩めるな。その一瞬が嬢ちゃんを殺す」

槍を引き抜き、グラウスは貴女の横を一瞬で走り抜ける。

グラウスが槍を収めた瞬間、貴女の全身から血が噴き出す。

「あ…。え…?」

涙を浮かべながらグラウスを見る貴女。

対するグラウスは、真顔で告げる。

「傷はそこまで深くないさ。そら、魔法で治してみな」

言われるがままに、魔力を傷口に流すと、たちまち傷が治っていく。

それを見届けるグラウスは、突然自分の腕を斬り落とす。

「…次はこっちだ」

「な…何をしてるんですか!?」

激昂した貴女は、グラウスへと近寄り、治癒魔法を唱える。

欠損したグラウスの腕からは、ニョキニョキと、まるで竹のように新しい腕が生えてくる。

「よし、合格だ」

笑顔を見せるグラウスに対して、貴女は怒りをぶつける。

「何で腕を斬り落としたんですか!?」

「そっちかい」

嬢ちゃんの怒りはもっともだが、もっと他に怒るべき部分があるだろう、とグラウスは諭す。

「私が怪我したのはちょっと困惑しましたけど大丈夫です!治癒魔法の練習なのは最後で察しましたから!」

「でも!グラウスさんがそんな怪我をする必要は無いでしょう!?」

怒りを露わにする貴女に対し、尚も冷静にグラウスは言う。

「怪我させたのは悪かった。だが、これが一番手っ取り早いんだよ」

「多少は危機感を持ってた方が、何でも身に付き易いんだ」

「そういうことを言ってるわけじゃ…」

未だに食って掛かる貴女だが、気にしていない様子のグラウスを見て、追及を諦める。

「…もういいです。これ以上は話してくれなさそうですし…」

すまんな、と頭を撫でるグラウス。

それが少し気持ち良かったのが、何故かちょっぴり悔しくて、ぶっきらぼうに言う。

「…ちょっとだけ、グラウスさんが嫌いになりましたっ」

「ヤバい泣きそう」

露骨に落ち込むグラウスを尻目に、寝床の洞窟へと向かう。

その心には、一つの疑問が残っていた――。

――どうして、躊躇いもなく自分の腕を斬り落とせるのかな――。

その答えを、貴女が知る日は来るのだろうか――。

再度、移動を開始してから、貴女とグラウスの会話は少なくなっていた。

大穴での戦闘から、僅かに貴女の心を燻っていた恐怖が、少しずつ大きくなっていたからだ。

それを知ってるからなのか、グラウスも少し距離を置く。

移動を始めてから数時間が経過して、目的地を囲む山がとうとう姿を現した。

「あと二時間ほど歩けば、町に着くよ」

そうですか、と無難な返事を返す貴女。

心の中では何度も謝っているが、普段通り接することができない自分に嫌悪感を抱いていた。

何があろうと、グラウスはグラウスだ。

頭では理解しているはずなのに、心のどこかでは恐怖を覚えている。

目を背けようとしても、見ないようにしても、片隅に存在する。

恐怖、という感情が鬱陶しく感じるが、消えることがない。

「…まぁ、あんなことをした後じゃ嫌って当然だよな…。もっと別の方法があったはずなのによぉ…」

頭を抱えるグラウスに、どんな言葉を掛ければいいのかが分からない貴女。

何を言っても、慰めにしか、いや、慰めにすらならない気がして。

言葉では言えなくても、行動では示せる。

そう考えた貴女は、グラウスの傍に近寄り、手を握った――。

――気にしてないって伝わってるかな――。

「…ありがとな。嬢ちゃん」

その想いが通じたのか、グラウスの声色が明るくなる。

気が軽くなった貴女も、微笑みながらそれに返すように答える。

「いえ、私も正直に言えばよかったのに、言えませんでしたから」

いつしか、グラウスに対する恐怖は消え去っていた。

直下コンマで、町の状況を判定します。

1:???
2~4:魔獣や盗賊に襲われてボロボロ
5~9:異常なし
0:なんか未来都市になってる

この町の本来の特徴を↓1、2に、名称を↓3にお願いします。おまかせだと、こちらで設定していきます。

歩いている道が、少しずつ大きくなっていく。

「おっ、そろそろ到着するな」

「その町ってどんなところなんですか?」

こんな辺境に存在する町など、よっぽど特殊な町だろう、と貴女は思う。

実際には、海沿いの荒地にある『レステル』の方が特殊なのだが。

「名前は『ギュンデーム』。狩猟が盛んでな。美味しい肉がよく出されてたよ」

「確か…。アーバン家だったかな。ハイランディアの特級貴族様の屋敷が立ってたはずだ」

「へぇ…」

色々な場所を旅していたはずなのに、すらすらと特徴が頭に浮かんでくるなんて凄い。

と、貴女は純粋に驚嘆していた。

「この林を抜ければ到着なんだが…」

突如、グラウスが腕で貴女を制止する。

「…走るぞ!」

表情を険しくしたグラウスが走り出す。

「ま、待ってくださいよ~!」

それを見た貴女も、慌てて追いかける。

町の中に入った二人は、惨状を見て驚愕する。

「んだよこりゃ…」

「酷い…」

町の建築物の半分が全壊、残りの半分もボロボロで、ところどころに血痕が残されている。

「…せめて、犠牲者に安らぎを与えよう」

グラウスは十字架を取り出し、祈りを捧げる。

十字架から漏れ出した光は、町中を包み、やがて消えていく。

「…魔獣に襲われたか、盗賊の仕業だな。ふざけてやがるぜ」

グラウスが壊れかけた屋敷を見ると、メイドと思しき女性が食料を配給していた。

その隣には、簡素な診療所が設置され、お抱えの医師なのか、妙に小綺麗な服装をした男性が診察、治療をしている。

首を鳴らしたグラウスは、屋根が吹き飛んでいる宿屋へと入っていく。

「嬢ちゃん、今日はもう休むぞ。明日、出発しようか」

「は、はい」

変わり果てた町を目にして、グラウスの胸中には怒りが渦巻いていた。

↓1、2に、町での行動をお願いします。

すみません、訂正が一箇所あります。アーバン家ではなくステラ家です。戦闘不能になったり湖に沈められる方です。

敵の判定を直下コンマで行います。十の位が奇数で魔獣、偶数で盗賊となります。一の位が規模となります。

今回は被害が確定しているので、規模が小さいほど強力な魔獣が敵となります。ご了承ください。

部屋に入って、荷物を纏める。

グラウスは既に、ベッドに入って寝息を立てている。

貴女は書置きを残して、屋敷へと向かう。

少しでも助けになれれば、という思いを胸に秘めて。

屋敷では、先ほどとは比べ物にならない惨状が広がっていた。

腕や脚を喪った人や、腹部から内臓が零れだしている人さえいる。

医師一人では、到底処置できる量ではなかった。

「私も手伝います…!」

怪我人に近づくと、悪臭が漂ってくる。

傷口が化膿して、腐敗を始めているのだ。

「きっと治るはず…」

手に魔力を集中させる。

右手は治癒魔法、左手は火炎魔法をそれぞれ詠唱させ、傷口を軽く炙って消毒。

その後、治癒魔法で消毒処置を施した部分を修復させる。

両手を傷口から離すと、綺麗になった体がそこに。

成功したことに安堵し、続けて別の怪我人の治療に向かう。

貴女が来たことで、怪我人は全員が完治。

後遺症を残すことなく、復帰できた。

「はぁ…。はぁ…」

怪我人全員の、それも、殆どが重篤だったため、魔力の消費が激しい。

貴女の体への負担も、相当なものだった。

「お嬢様、こちらをどうぞ」

医師が、紅い液体を手渡してきた。

それを受け取り飲む貴女だが、独特の風味が貴女には美味に感じた。

「美味しい…です…」

「これが美味しいとは…珍味好きのようで」

否定できなかった貴女は、頭に手を置いて微笑する。

「この液体はアイアンタートルという魔物の血です。魔力の回復を促進するのですよ」

今飲んでいたものが血だということに驚いている貴女に、医師は頭を下げる。

「改めて、感謝を申し上げます。貴女がいなければ、犠牲者の数が増えていたでしょう」

貴女は慌てて首を振り、答える。

「わ、私はするべきだと思ったことをしただけですから…」

それに、と付け加え、言葉を続ける。

「命が助かったっていうのは、嬉しいですから…」

元気になった人たちを見て、貴女は微笑む。

それを見た医師は、小さく呟く。

「優しいお方だ。貴女は」

その声は、喧騒に掻き消されて聞こえることは無かった。

直下コンマで、魔獣についての情報の判定をします。

1~3:あまりにも一瞬の出来事だったので、情報皆無
4~6:姿のみ判明(グラウスと相談すれば、正体の判定が行われます)
7~9:姿、特徴、名称全てが判明

↓1、2に魔獣の特徴を、↓3に名称をお願いします。おまかせの場合は、こちらで選んでいるものから出します。

「…この町は、たった一匹の魔獣によって、滅びかけました」

不意に、医師が口を開いた。

「名は『ダイボロス』。全てを喰らう『暴虐の化身』」

「…私が止めても、貴女は倒しに行くのでしょう」

「…ですが、あれは人が触れていいものではありません」

「どこから来たのか、何を求めているのか、それさえも分からないのです」

医師の声が震えていた。

それほどまでに、恐ろしいものだったのだろう。

「…忠告、ありがとうございます」

貴女は、礼儀正しいお辞儀をする。

「でも、私には頼りになる人がいます」

「それに、このまま放っておいたら、また酷い目に遭ってしまいますから」

貴女の決意は固かった。

嘗て、いや、今も自分は弱者だ。

だが、何度もグラウスに救われてきた。

だから、自分も弱者を救う。

恩人のように、グラウスのようになりたいから。

貴女は、踵を返して宿屋へと向かう――。

――グラウスさんと一緒なら、絶対に大丈夫――。

持ち主の想いに呼応してか、背中の『月切』と『エウルス』は、淡い輝きを放っていた。

夜が明け、朝がやって来た。

支度を終え、渓谷へと続く道で合流を終える。

クレゾンヌの森への道中で、グラウスから『ダイボロス』についての話を聞く。

「『ダイボロス』だが、ありゃあ魔界の魔獣だ」

魔界、という単語が引っ掛かる――。

――そういえば、大穴でもグラウスさんが――。

『ここは…『魔界』の『それ』と然程変わんねえ!』

貴女の中で、何かが繋がった――。

――もしかして――。

「正解だ。あの大穴に『ダイボロス』が呼び出されて、そのまま『ギュンデーム』まで移動したんだ」

「俺が繋ぎ合わせたのは空間だ。『魔界』へと繋がっていたそれを、塞いだのさ」

「不幸中の幸い…というやつかね。あのまま放置してたら、もっとヤバい連中がこっちに来てた」

淡々と言うグラウスだが、その危険性は理解できた。

「まっ、暗い話をしてても仕方ないさね。ここで一つ、レクチャーしよう」

「大型の魔物の弱点ってどこだと思う?」

貴女は思考する。

柔らかそうな腹か、それともお尻か。

グラウスが発した答えは、全く予想していなかったものだった。

「人間と同じように考えればいい。俺たちだって、背中には中々手が届かないだろ?」

貴女は頷く。

「基本、背中に乗ってればそうそう攻撃を受けやしない。構造上の弱点ってやつだ」

触手持ちとかは例外だがな、と笑うグラウス。

続けて、口を開いた。

「それと口内。っていうか体内。肉が丸見えだから簡単に斬れる」

考えただけでも気持ちが悪い。

貴女はしかめっ面をする。

「…これはあまりお勧めできねぇな。下手したらすぐ消化されてトイレにポットンだ」

グラウスが言うと冗談に聞こえない。

貴女は頬を膨らませるが、グラウスはそれを軽くあしらう。

「そうならないように俺がいるんだ。安心しな」

何度されたか分からない。

グラウスに頭を撫でられて、笑みを浮かべる貴女。

その心は、いつものように穏やかになっていた。

直下コンマで、盗賊との遭遇判定です。

1、2:戦闘になる
3~5:遭遇無し
6~0:『ダイボロス』にフルボッコ

フルボッコにされて壊滅してました。

↓1、2に盗賊団(若しくはお頭)の特徴をお願いします。

とばっちりだけど同情の余地もありませんね…。今回の更新はこれで終了です。次回は土曜日の予定です。

奴隷と関係するSSなのに、奴隷が今回一度も出てきていない問題はどうするべきか…。ううむ…。何はともあれ皆さん、お疲れ様でした。


ダイボロス:魔界に棲む大蛇。稀に発生する時空の裂け目から、こちらの世界に迷い込むことがある。

食欲が旺盛で、何でも体内に取り込んでしまう。好きな食べ物はマングース。

口からはゲロビを放てる。高圧縮された魔力なので、エウルスで反射される地味な弱点付き。

実は雌しか存在せず、時期が来ると脱皮して大きくなる他、全く同じ小さな個体を口から吐き出す。

どういうわけか、肉は滅茶苦茶美味しい。だけど魔力たっぷりなので、耐性が無い人が処理無しで食べると即死する。

情報がある理由は、昔は普通に生息していたのだが、あまりの美味さに乱獲されてこちらの世界では絶滅したため。

今から再開していきます。今回は、最低でも『ダイボロス』戦までは進める予定です。

クレゾンヌの森へと続く渓谷が、眼前に広がる。

同時に、グラウスは違和感を感じた――。

――前来た時はここまで抉れてなかったぞ――。

そこら中の崖に、鎌で抉り取ったような跡が残っている。

グラウスが手で触れると、掌全体に粘液が付く。

「…少し前にここを通ったのか。音とかはしなかったがな」

注意を払って辺りを見回すと、小さな血痕が散見される。

「嬢ちゃん、感覚強化魔法で周りの音を聴いてくれ」

一つの可能性が出てきたので、それが真実かを確かめる。

分かりました、と返事をし、貴女は耳に魔力を集中させる。

数秒後、微かな呻き声が貴女の耳に聞こえてくる。

「誰か怪我してます!」

「待て」

走ろうとした貴女を、グラウスは肩を掴んで制止する。

「どうしてっ…」

「ここにいるってことは間違いなく盗賊どもだ」

「ッ!?」

グラウスの声が、目が、冷えていた。

「まずはその目で確認しろ。それから考えるんだ」

そう言うと、いつもの表情に戻る。

「考えた上で助けるのなら止めないさ。旅の主役は嬢ちゃんだしな」

グラウスの言葉を頭で反芻させ、貴女は前に進む。

50mほど進むと、崖に寄りかかっている集団がいた。

集団の近くには、手足が何本か落ちており、彼らのものだと判断できた。

いずれも大怪我をしており、処置をしなければ危険な状態だ。

「そこの旅人方…。俺たちに慈悲をください…」

「ギュンデームを襲おうとしてる奴らを助ける義理があんのか?」

「なっ…!?」

グラウスの声がまた冷える。

目的が一瞬でバレてしまったからなのか、目を白黒させている。

「やっぱり盗賊か。まぁ、助けをギュンデームまで呼びに行ってない時点で黒だわな」

「嬢ちゃんは助けるのか?このクズどもを」

貴女は、眼前で息絶え絶えの盗賊たちを見やる。

誰もが、救いを求めるような目でこちらを見ている。

貴女が選んだものは――。

直下に、盗賊たちを助けるかどうかをお願いします。

貴女は、無言で傷口を修復していく。

昨日の治療で慣れたのか、ものの数分で処置を終える。

呆気に取られている盗賊を無視して、貴女は歩いていく。

「…行きましょう。グラウスさん」

「りょーかい」

「おい!あんたら!」

何事もなかったかのように歩いていく貴女たちを盗賊の一人が呼び止める。

「あの蛇を殺すつもりならやめとけ!人間が勝てる相手じゃねぇんだ!」

その言葉を聞いても、歩くスピードは変わらない。

ギュンデームの人たちのためにも、倒さなければならないから。

今の自分の行いが、ギュンデームにとっていいことではないと、心のどこかで理解していながらも。

「優しいねぇ。嬢ちゃんは。俺なら殺してたよ」

不意に、グラウスが口を開いた。

「…確かに、私のしたことは間違いかもしれません」

「…だけど、命を見捨てることだけはしたくないんです…」

大切な人を喪う辛さは知っている。

彼らにとって、仲間は大切な人のはずだ。

同じような辛さを経験させたくなかったから。

だから、助けた。

「…正しい選択とか、間違ってる選択とか、そんなのは無いんだ」

「自分が正しいと思ったことをすりゃあいい。それが、きっと一番正しい選択のはずだから、さ」

グラウスの言葉が嬉しかった。

自分のやったことが間違いじゃない、と言ってくれたから。

慰めだとしても、その言葉を掛けてくれたことが何よりも嬉しかった。

渓谷を抜け、クレゾンヌの森に到達したが、酷い有様だった。

地面は抉れ、樹はへし折れている。

この地に棲んでいたものだろうか。

無数の魔物が押し潰されて、凄惨な光景を見せていた。

えずきそうになる貴女を背負い、グラウスは素早く駆け抜けていく――。

――ここを越えたら、間違いなく攻撃してくる――。

深く入り込むにつれて増していく瘴気を忌々しく思いながら、グラウスは槍を呼び出す。

グラウスの予想通り、開けた場所に出たと同時に、鋭い牙が地面を喰らう。

「っと。あっぶねぇ」

バックステップで回避し、貴女を下ろす。

そして、優しい声色でアドバイスをする。

「背中に乗るのが一番だが、嬢ちゃんは無理しなくていいよ」

「エウルスは絶対に離さず、『ダイボロス』のブレスはしっかり受け止めるんだ」

グラウスは、槍を手で回転させながら言う。

「そうすりゃあ、あとはおじさんが終わらせるからさ!」

『ダイボロス』が吼える。

それを合図に、グラウスは槍を構えて突進する。

今、戦いの火蓋が切って落とされた。

直下コンマ判定 三回成功で終了です。

1(補正値なし):ファンブル
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

あ、ごめんなさい…。補正入れるの忘れてました。再判定です。

直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1

『ダイボロス』は、その大きな尻尾を振り回す。

「そぉらっ」

しかし、それは容易く往なされる。

槍を斜めに持ち、受け流す。

足まで攻撃を逸らしたら、そのまま地面を蹴って回転し、槍を投擲する。

槍は、払い除けようとした尻尾に刺さり、淡い光を纏う。

「戻ってきな」

クルリと一回転し、尻尾を切断して持ち主の元に戻る。

グラウスは槍と杖を取り換え、先端を『ダイボロス』に向け詠唱を始める。

「雷よ、我が杖に集え」

「そして、敵の身を穿ち、骸と変えよ」

詠唱を終えると同時に杖から放たれる、極大の雷槍。

危機を察知した『ダイボロス』は、口からビームの如きブレスを吐く。

しかし、そのブレスでも、軌道を逸らすだけに止まり、『ダイボロス』の側面を抉り取る。

「チッ、魔力の干渉が厄介だな」

グラウスは杖の先端を構え、『ラグナロク』の準備をする。

魔力の増幅に反応し、『ダイボロス』は『ラグナロク』ごとグラウスを捕食しようとする。

「待ってました!」

大地を抉り、『ダイボロス』は『ラグナロク』を飲み込んだ。

そう、〝『ラグナロク』だけ″を。

グラウスは尻尾の切断面に瞬間移動し、再度呼び出した槍で滅多刺しにする。

「俺は転送魔法は使えなくてな。魔力でマーキングして飛ぶしかねぇんだ」

あの時の淡い光は、遠隔操作に起因したものではなかった。

この時のための、下準備に過ぎなかったのだ。

「俺ばかりを見ちゃいけねぇぞ」

こちらを睨む『ダイボロス』に向けて、一言だけ放つグラウス――。

――嬢ちゃんだって、結構強いんだぜ――?

自分への警戒が無くなったと同時に、貴女は『ダイボロス』の背中を目指して走っていた。

直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
1~4:失敗
5~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

聖職者:+1 無慈悲なる■■■■:+1

「『月切』!」

グラウスが言っていた通りに、念じて『月切』を振るう。

すると、3mはくだらない大きさの魔力刃が、『ダイボロス』の背中付近の鱗を斬り飛ばす。

直感で、『ダイボロス』は振り向いてブレスを吐く。

だが、『エウルス』の魔力反射によってそれは弾かれ、開いたままの口に逆流する。

内臓が焼かれ、巨体が揺らぐ。

無防備になった隙に、貴女は背中に飛び乗り、『月切』を突き刺す。

そして、もう一度念じ、一直線に魔力刃を撃ち出す。

魔力刃で貫かれた衝撃で、『ダイボロス』の首が大きく上を向く。

首の下に潜り込むグラウスは、槍に魔力を纏わせ、大きな刃を形成していた――。

――言ったろ?強いってさ――。

そして、無慈悲に首を斬り落とした。

「流石だ嬢ちゃん。俺が戦う必要は無かったかねぇ」

吹き出す血を浴びながら、グラウスは言う。

グラウスが驚いたのは、貴女が動いたことだ。

自分一人で終わらせると言っていたのに、注意が逸れた瞬間にアクションを起こした。

その判断力の高さが、一番驚くところだった――。

――動くと分かってた風に言ってた俺もアレなんだろうが――。

心の中でそう吐き捨て、武器を戻す。

数拍空けて、慌てて貴女は否定する。

「グ、グラウスさんがいなかったら勝てませんでしたよぉ…!」

実際、貴女一人で勝てる相手ではなかっただろう。

「でも…。私でもちゃんとできるって実感できました。今までの頑張りは…無駄じゃなかった…!」

元々実戦経験は皆無で、今回だって、グラウスが作り出した隙を突いただけだ。

しかし、強敵を相手に、それを成し遂げた時点で弱くはない。

グラウスとの特訓が実を結んだ、と実感できた貴女だった。

討伐を終え、『ギュンデーム』へと戻った貴女は、グラウスに疑問を投げかける。

「魔獣、全然いませんでしたね」

その言葉に対し、グラウスは首を傾げる。

「いなかった?御冗談を」

「入口で大勢死んでた奴らだよ。魔獣は」

「え?」

「外来種である『ダイボロス』をやっつけるために、魔獣が増えた」

「だけど、見事返り討ちに遭って全滅した」

そんな感じさ、と笑いながら言うグラウス。

貴女は、困惑するしかなかった。

グラウスは一つの疑問を抱えていた――。

――どうして、盗賊が町の修理を手伝ってるんだ――?

「あ!旅人の方じゃないか!生きてたんだな!」

あの時忠告をしてきた人が近寄ってくる。

「そりゃ殺したからな。で、お前さんたちがなんでいんの?」

殺した、という単語を聞いて驚く盗賊だが、すぐ元の表情に戻り、頭を下げる。

「仇を討ってくれたんだな…。ありがとう…!」

お前さんたちのためじゃねぇよ、とそっぽを向いて頬を掻くグラウス。

それに対して、貴女はまた疑問を投げかける。

「あなたたちはなんでここにいるんですか?」

盗賊が突然黙った。

そして、頭を数回掻いた後、ようやく口を開く。

「…あんたに助けられてさ、皆で考えたんだ」

「悪人である俺たちを助けてくれたのに、俺たちが盗みをしたら、それこそ恩を仇で返すことになっちまう」

「俺らは傭兵くずれと魔術師ばっかりだが、助けられた後に盗みを働けるほどできた人間じゃない」

「償いにはならないとは理解してる。だけど、やるって決めたからにはやり通さないとな」

そう言う盗賊の顔は、清々しかった。

「まぁ、復興が終わったら出頭するよ。盗賊稼業もこれでおさらばだ」

「そう…ですか…」

自分の行いで、他の人が変わった。

それが嬉しくもあり、怖くもあった――。

――こんな簡単に、人って変わっちゃうんだ――。

直下に、恩人についての情報を聞くかをお願いします。

聞く
相手はアーバンのおじいちゃん?

>>433、色々な人に聞きますよ。指定があれば、その人に聞きます。

直下コンマが7以上で、情報を入手できます。

修繕に戻った盗賊を見送り、屋敷へと向かう。

グラウスは、近くのベンチで昼寝をしている。

怪我人がいなくなったので、診療所は撤去され、食料配給所が拡大されていた。

そこで、一仕事を終えて背伸びをしているメイドに声を掛ける。

「あ…あの…。すいません…」

「どうしました?食料が必要なのでしょうか?」

「い、いえ!ちょっと聞きたいことがあって…」

貴女は、恩人のことを伝えた。

と言っても、翡翠色の眼をして、炎を操ること以外は知らないのだが。

ふむ、とメイドは顎に手を当て思考する。

だが、帰って来た答えは非情だった。

「申し訳ございません。翡翠色の眼をした方が多くて判別できません」

「あっ…そうですよね…。すいません…」

貴女とメイドは深々と頭を下げ、貴女はその場を離れる。

考えてみれば、情報が少なすぎて恩人だと断定することが不可能だ。

もっと人が多いところで聞けば、あるいは。

そう思った貴女は、グラウスの元に戻る。

「んぁ…。ふぁ~あ…。ダメだったみたいだな」

「あうぅ…」

待っていたかのように起きたグラウスに、失敗を言い当てられる。

「まぁ、こんな辺鄙なところに来るわけないか」

グラウスは地図を呼び出し、目を通す。

「さてさて、次はどこに行きましょうかね」

↓2に次の目的地の特徴と名称をお願いします。

時間が遅くなってまいりましたので、本日の更新はこれで終了にします。次回更新は来週の土曜日の予定です。

安価を踏んでいる場合はずらします。皆さん、お疲れ様でした。


>>――こんな簡単に、人って変わっちゃうんだ――。
恩人悪いことしてるフラグ?

>>442、恩人が悪いことをしている、と言い切ることはできません。理由は本編内で触れられたらいいのですが…。

異世界スマホを見て精神が摩耗している>>1ですが、今から再開していきます。直下コンマでホルムまでの距離を判定します。

グラウスは数分地図を眺めるが、地図を置くと同時に頭を抱える。

「ふーむ…。この大陸から出るべきかねぇ…」

そう呟いたグラウスは、地図を人差し指で数回叩く。

「わっ!」

突然、地図に描かれていた大陸に複数の蒼い光が浮き出たのだ。

貴女が驚いたのを気にすることもなく、グラウスは独り言を呟いている。

「こっちは…ダメだな。ロングィ相手は正直しんどい。…仕方ない。ホルムを目指すか」

グラウスは地図を折りたたみ、顔を上げる。

「…どうした嬢ちゃん?そんな顔をして」

「…なんでもないですっ」

プイッ、とそっぽを向く貴女だが、なぜそうなっているかをグラウスは理解できない。

首を傾げながらも、グラウスは立ち上がり先導する。

「次の目的地はホルムだ。かなり距離はあるが、今日中には着く」

グラウスの言葉が引っ掛かる。

距離はあるのに、どうして一日で到着するのか。

その理由が、皆目見当もつかないのだ。

「意味が分からねえって顔だな」

貴女は頷く。

「まぁ、見てからのお楽しみさね」

『ギュンデーム』を出た二人だが、前にここまで来た道を逆走する。

最初は何とも思わなかった貴女だが、少しずつ不安の色が見え隠れしてくる。

対するグラウスは、どこか楽し気だった。

直下コンマに、何かイベントがあればお願いします。コンマが1~3で戦闘発生です。0だと…?

おや、迷子(?)ですか。簡単に設定をしますね。↓1に性別、↓2に種族、↓3、4に性格をお願いします。

一つ判定を忘れていました。直下コンマが1~3、0だと…?

往路を大きく逸れ、二人は山脈の傍を進んでいた。

道はみるみる険しくなり、徐々に高度を上げていく。

同時に、出没する魔物の種類も変わっていっている。

「ふぃ~。犬っころが多くて大変だ」

周りには樹が茂っており、間隙を縫って奇襲を行われている状況だ。

危険な種族ではないので、数回叩けば鳴いて逃げ出すのだが。

「…ん?」

不意にグラウスが立ち止まり、耳を澄ませる。

釣られて貴女も、感覚を強化する。

貴女の耳が捉えたものは――。

――ひぐっ…。お兄ちゃんはどこに行ったのぉ…。

――僕だけじゃ…。勝てないよぉ…。

「ッ!」

「おい!?嬢ちゃん!?嬢ちゃーん!」

走り出す貴女を、グラウスが止めることはできなかった。

木々に囲まれた小さな岩陰。

そこに、竜人の少年は姿を隠していた。

「お兄ちゃん…。どこなの…」

少年はポーチから小さな結晶を取り出す。

「これを壊したら、助けが来るんだっけ…。…だけど、本当に危ない時以外はダメって言われたし…」

「ひうっ!?」

ガサガサ、と葉が掻き分けられる音が聞こえ、少年は怯える。

「うぅ…」

両肩を抑え、小さく縮こまる。

見つかる可能性を、少しでも減らすために。

「ひぃ!」

眼前を横切った影を恐れるあまり、声を上げてしまう。

「よ、良かったぁ…。やっと見つかった…」

その陰の正体は人間、貴女だった。

「だ、大丈夫…?迷子みたいだけど…」

おずおずと手を差し伸べる貴女だが、その手が握られることはなかった。

「く、来るな!私を捕まえようとするお、愚か者め!」

手を払い除けた少年は、涙を浮かべながらも貴女を睨む。

「わ、私は人攫いじゃないよ…!」

「妄言を…!」

人攫いであることを否定する貴女。

しかし、それを聞こうともしない少年。

千日手になり得ない状況を、あの男はぶち壊す。

「嬢ちゃん…。いきなり走り出すのはちょっと疲れるから…って迷子じゃねぇか」

グラウスは少年を見るや否や、手を上に突き出して光を放つ。

「これで、近くの仲間が気づくはずだろ」

その言葉は正しく、数分後、雄々しい翼を広げて竜人が数人、少年の救助に来た。

「弟が迷惑を掛けましたァッ!」

凄まじいスピードで土下座をする竜人。

どうやら迷子だった子の兄らしい。

「旅人のあなた方のお手を煩わせて申し訳ないッ!」

立ち上がった後も、十回二十回と頭を下げる竜人兄。

「いやいや、お前さんも弟さんが無事でよかったじゃないか」

「ええッ!本当に良かったッ!」

弟を抱きしめる竜人兄だが、弟の方は胸に顔をうずめていて様子が分からない。

「しかし、こんな可愛い子を人攫いって判断するとはねぇ」

凛々しい黒髪を伸ばしている女性が、貴女を見て言う。

「ホント、可愛い子だねぇ…」

「…!?」

ペロリ、と指を舐める女性を見て寒気がした貴女は、グラウスの後ろへと隠れる。

「ありゃ、警戒されたか。痛くしないのになぁ」

「その手で言っても説得力が無いじゃろ…。儂でも痛いというのに…」

隣の竜人が諫める間に、竜人兄は弟を前に向ける。

「ほら、お礼を言いなさい。漢として恥ずかしいぞ」

「う、うん…」

申し訳なさそうに、弟は貴女を見る。

貴女は、グラウスの後ろから顔だけを覗かせる。

「た、助けてくれて…ありがとう…ござい…ます…」

その言葉を聞いた貴女は、戸惑いつつも返答する。

「ど、どういたしまして…」

感謝を伝えた弟は、また顔をうずめる。

「うわぁぁぁぁん…!怖かったよぉ…!」

「よしよし。帰ったら美味しいご飯を食べような」

コクリ、と頷いた弟は、静かに寝息を立てる。

「ではッ!私たちも失礼しますッ!僭越ながら、私たちも平穏無事を祈っておりますッ!」

「儂たちの村は来るもの拒まず、じゃ。次があれば、客人として存分にもてなそうぞ」

「可愛い子もよろしくね」

「これ」

「あいたっ!」

そんな言葉を残して、竜人たちは山脈の向こうへと飛び立っていった。

「…行ったか。俺たちも行こうか」

「…あの人たちの村に、行けますかね…」

「たぶん、な」

地図を片手に持ちながら、グラウスは答える。

しかし、その心中は――。

――あいつらと会うなら、死ぬ覚悟をしないといけないな。

木々を越え、魔物を退け、ただひたすらに進む。

疲弊している貴女と、飄々としているグラウス。

どうしようもない、経験と地力の差が出ていた。

「もうちょいだ。頑張んな」

「はい…!」

今にも崩れ落ちそうな崖を進むと、そこには小さな空洞が。

「到着だ。よく頑張った」

「え…?何ですかここ…」

空洞には、高さ2mほどの小さな祭壇がある。

そして、祭壇の中心からは蒼い光が漏れ出している。

気になって貴女は覗くが、その時、光が渦巻いているのを理解できた。

「ここは『旅の扉』。遠い場所を繋ぐ、過去の賢人が生み出し、歴史に埋もれてしまった叡智さ」

グラウスは説明を始める。

貴女はよく分からなかったが、何やら凄い物だというのは理解できる。

「あー…。つまり『同じ旅の扉』にワープする装置と思ったらいいよ」

ようやく理解した貴女だが、同時に疑問が一つ生まれる――。

――どうして、ここまで便利なものが利用されてないのか、と――。

「理由は単純。移動手段が増えたからさ」

「態々こんなところまで来なくても、今なら移動手段が意外とある」

「大陸間の移動は船か飛空艇があるからな」

どちらかが栄えればどちらかが廃れる。

そんな簡単な理屈だった。

「そんじゃ、移動するぞ。渦の上に乗るんだ」

言われるがままに、貴女は渦の上に乗る。

そして――。

――アッシェンテ――。

そう呟くと、二人の姿が消えた。

視界が白くなり、全身が浮く。

周りを見ると、後ろに向かって世界が動いているのが見える。

前には白い大穴があり、そこに吸い込まれていく。

反射的に目を瞑る貴女。

目を開くと、そこには綺麗な湖が広がっていた。

「いい景色だが、もう少ししたら日が暮れちまうから急ぐぞ」

「ここは夜になると、とんでもない化け物が出てくるんだ」

いつものような声とは違うことから、冗談の類ではないと判断する貴女。

急ぎ足のグラウスを追って走る貴女だが、突然後ろを振り向く。

当然、そこには誰もいない。

「気のせい…かな…?」

首を傾げながらも、自分を呼ぶ声を聞いて走る貴女。

湖の近く、小さな丘からその『何か』は見ていた。

――我を追ってここまで来るとは、大した熱意よな――。

そう呟いた『何か』は、焔となりそこから消えた。

「ッ!」

グラウスはその言葉に反応したかのように、丘を見上げる。

「…まさか、ずっと見てるわけじゃあねえ…よな」

グラウスは口角を上げ、心の中で言う。

――だとしたら、とんだお人好しだぜ。あんたは――。

湖を抜け、一時間ほど大通りを進むと、町明かりが見えてくる。

「わあぁ…」

「あれがホルム。レステルみたいに貿易が盛んな町だ」

苦々しい顔で、グラウスは言う。

「どうしたんですか…?」

「ちょっと…。ハニーがここで一回攫われてな」

ハニーは鬼だから、とグラウスは小さく呟く。

だが、貴女には最後の呟きは聞こえなかった。

「えぇっ!そんなの初めて聞きました…」

「言ってなかったしな…」

グラウスは辺りを見回すが、不思議な点を見つけて首を傾げる。

「変だな…。ここまで治安がいい町じゃなかったぞ」

貿易で得た資金を基に整備したのだろう。

それでも、気になる点が消えないのだが。

「…屋敷の数が嫌に多い。住みやすい場所ではあるが、それだけとは思えねぇな…」

地図を見てみると、奴隷市場の範囲も相当なものだった。

レステルほどではないが、それでも充分な大きさを誇っている。

「…いや、まさかな」

一抹の不安を抱えながらも、グラウスと貴方は宿へと入る。

直下に、ホルムで行うこと、もしくはイベントをお願いします。

直下コンマで、何人逃げたか判定します。その後に、逃げた奴隷の設定を軽く行おうと思います。

1~4:二人
5~9:三人
0:四人

一人目の性別を↓1、種族を↓2、性格を↓3、4、名前を↓5、二人目も同じ順番で、↓6~10でお願いします。

ちょっと悪魔のボーダーラインを設定しますね。直下コンマが1に近いほど悪魔っぽいのはアウト、9に近いほど悪魔じゃなければセーフです。

結構寛容ですね…。グラウスの嫁はセーフになります。少々お待ちください。

貴女は夕食を少な目で済ませて、シャワーを浴びる。

全身を洗い、余計な脂肪が付いていないか、お腹や二の腕をつまんで確かめる。

「…むぅ。ちょっと筋肉が付いてきたかぁ…」

旅を始めてから、ほぼ毎日戦闘をしていたのだ。

当たり前だとは思うが、やはり悲しい。

お湯を止めて、体を拭き、服を替える。

「そろそろ寝なくちゃ」

そう思って、ベッドに寝転んだ瞬間に、それは起きた。

「ひゃっ!?」

凄まじい爆発音が、耳をつんざく。

慌ててグラウスの部屋に向かうと、既にグラウスは出立の用意を済ませていた。

「嬢ちゃん、奴隷が市場から脱走した」

貴女は驚くが、それを無視してグラウスは続ける。

「俺は奴隷の確認に向かう。嬢ちゃんも荷物を纏めろ」

そう言って、グラウスは姿を消した。

ホルムの郊外、閑散とした町並みを、二人の奴隷が走る。

「はぁっ…はぁっ…」

「遅いですよ。急がないと追手が来ます」

「飛んでる奴が偉そうに…!」

悪態を吐く女性――リーシュ――と、警戒しながらも軽口を叩く天使――セフィ――。

特に、リーシュの顔に余裕は無く、逃げ切りたい、という思いで辛うじて走っている状況だった。

しかし、その希望も呆気なく砕ける。

「脱走者を確認。捕縛します」

「…最悪だ」

じりじりと近寄ってくる警備兵に、二人はただ諦めていた。

だが――。

――清浄なる暁光よ。汝らを守護する障壁となれ――。

二人と警備兵の眼前に、巨大なる光の壁が聳え立つ。

「この光は…聖職者?…いや、ここまでの聖職者がいるはず…」

「間に合ったか」

呆気に取られている二人の前に、グラウスは降り立つ。

そして、二人の間を走る瞬間に囁く。

――生き延びたい、と少しでも思うのなら、俺についてきな――。

「あたしはついていく!捕まるよりは万倍マシだ!」

真っ先に走るのはリーシュ。

「…信用したわけではないですが、一番手堅いですからね」

続いて、セフィも後を追った。

部屋で待っている貴女の元に、グラウスがやって来る。

手招きをするグラウスを追い、裏路地へと到着した。

そこには、汗をかきながら息を切らしているリーシュと、脚を組んでこちらを観察しているセフィがいた。

「えっと…。二人は誰ですか…?」

貴女の問いに答えようと、リーシュは口を開こうとするが、グラウスによって遮られる。

「まぁ待て。…嬢ちゃんには酷だが、今から二人の話を聞いて、二人をどうするかを選んでもらう」

意味が分からない貴女は焦る。

しかし、グラウスは尚も言う。

「元々俺は嬢ちゃんの付き添いだ。最後に決めるのは嬢ちゃんなんだよ」

「だから、嬢ちゃんに助けるべきだと思わせろ。嘘を言ったらこの場で首を落とす」

グラウスの目は冷えていた。

「はぁっ!?何言ってるんだあ…」

リーシュは、剣に手を掛けたグラウスを見て口を閉じる。

「…分かったよもう!あたしはリーシュ!元盗賊!」

「元々あたしは貧乏で、生きるためには盗賊になるしかなかった!」

「人は殺してない!あと、奴隷になってから受けた教育は地獄だった!」

「あたしを生かしてくれるのなら、あたしにできることは何でもする!以上!」

そうハキハキ言い切った後、リーシュはドカン、と地面に座る。

「私はセフィ。天使です。先に言っておきますが、あなたたちを信用することはありません」

「あくまで、生きるための利害一致でしかないことを頭に入れておいてください」

「悪魔は何があろうと滅ぼします。絶対に」

ピクリ、と反応したグラウスは、冷徹な声で問い掛ける。

「鬼もか?」

それに対して、セフィは毅然とした態度で言い返す。

「悪魔ではないのでその必要はありません」

「…言いたいことは言ったようだな」

「嬢ちゃん。決断を」

手が震え、頭が眩む――。

――それでも、答えを出さないといけないのなら、私は――。

↓1~3に、助けるかどうかをお願いします。両方でも、片方でも問題ありません。

やっと奴隷を出せた…。今回の更新はこれで終了です。次回更新は水曜日予定です。お疲れ様でした。

本日の更新は無理そうです。申し訳ありません。土曜日なら更新できるはずです。

次回の更新に備えて、簡単な判定と安価を出しておきます。

↓1コンマがリーシュの戦闘力、↓2コンマがセフィの戦闘力となります。

また、同時に↓1にリーシュの年齢を、↓2にセフィの年齢をそれぞれお願いします。

最後に、簡単な小ネタ、番外編を一つ次回更新時に投下しようと思いますので、見たいもの、要望がありましたらご自由にお書きください。

書けるものから投下していきます。更新できず、誠に申し訳ありません。

両方0とかウッソだろお前wwww なんで2人とも捕まったんでしょうか(真顔)

とりあえず0ボーナスで特殊能力を一つずつ追加です。↓1にリーシュ、↓2にセフィの特殊能力をお書きください。

小ネタの件、了解しました。書き溜めが完了次第投下していきます。

番外編を書いていたらこんな時間に…。今回は番外編投下だけにします。申し訳ございません…。

遺跡で流れていそうな、壮大だけど悲しい感じの曲って何か知っていますでしょうか。

エンカウントしても、音楽がそのまま流れそうな曲です。個人的に好きなので…。教えていただけたら幸いです。

番外編 泡沫に帰えし理想 Alisa side


指示を受けたアリサは、西中島南方へと転移魔法で移動する。

「当主様が言うには、ここを通るらしいです…が」

「…最悪ですね。先を越されていたとは」

爆発音のする方向へ、アリサは飛翔する。

上空から見渡すと、黒煙が立ち昇る場所があった。

「…そこですか」

アリサは弓を引き、二発の矢を撃つ。

それは、目的地の上空で弾け、雨のように降り注いだ。

「次は…っと」

座標設定を終え、目的地へと転移する。

そこには、数十人は下らない死体の山と、三名の兵士に守られているエルフの女性?と対峙する、たった一人の少女がいた。

「クハハ…。神である私を、敵に回して勝てるものか」

その少女の耳は猫のようで、両手からは鋭い鉤爪が生えている。

「何というか。凄まじいほどの寒気がしますね。心臓を握られているかのような」

「クハハ。それは結構。どれ、遊んでやろうか」

少女がそう言ったのと同時に、姿が消える。

「ッ!皆さんは早く撤退を!ここは私が…」

「引き受ける、と?大した自信よな」

「つぅ…!」

後ろに回り込んだ少女は、鉤爪でひと裂き。

体を曲げて対応するが、背中が切り裂かれる。

「さて、そろそろ仕留めねば…ほう!」

少女が主導者を殺すために振り向く。

しかし、アリサが射撃に転じたことで、それは妨げられた。

アリサの頬を、冷や汗が伝う。

たった一撃を喰らっただけ。

ただそれだけなのに、力の差が分かった。

分かってしまった。

そして、アリサは思う――。

――勝てないなら、時間稼ぎだけでもしますか――。

アリサは弓で弾幕を形成し、ナイフを片手に接近する。

しかし、その弾幕を少女は左手だけで全て霧散させる。

「この程度か。昂ぶりもせぬな」

「入った」

アリサの放つ矢は、全てアリサの魔力で構築されている。

即ち、遠隔操作で魔法を発動することや、エンチャントも可能ということだ。

今回アリサが施したものは。

「む…。ちと不味いか」

僅かに、少女の動きが遅くなる。

先ほど、少女が矢を破壊した。

その時に散布された魔力で、空間に干渉、一時的に時間の流れを鈍化させる。

ほんのコンマ数秒遅くしただけだが、それで充分。

一撃を当てる余裕は生じた。

「吹き飛べッ!」

アリサは少女の腹に手を当て、魔力を圧縮、破裂させた。

ダメージはおそらく無いが、かなりの距離を離せた。

目的を果たすのなら、それだけで充分だった。

「さっさと走ってください!数秒もせずに戻ってきますよ!」

「くっ…。了解…!」

アリサの言葉を受け、全速力で駆け抜ける兵隊たち。

それを見届け、アリサは笑う――。

――これで、目的は果たしました――。

「クハハ…。油断したな。そうか…私には効かないと判断して、周りの空間に干渉したか」

「いい判断だ。汝はよき魔導士のようだな。だが、所詮ヒトでしかない汝ではそれまでだ」

首を一度鳴らした少女は、木々を足場に跳躍する。

「はや…があっ!」

音速を超えた蹴りが、アリサの腹部を捉える。

メキメキと骨が折れる音が聞こえ、アリサは苦痛に顔を歪める。

「ふむ…。今のは避けるべきだっただろうに」

「ゲボッ…」

内臓もやられたのか、アリサは吐血する。

「はぁ…。どうして…あなたのような方が…あんな人に…従っているんですか…」

愚問を、と少女はアリサの問いを切り捨てる。

「私は土着神でな。遠い昔に、信仰を失ってしまったのさ」

「それはもう辛かった。誰からも見られない、信じてくれない。長きに渡る孤独が、私の心を蝕んだ」

「…しかし、私を獣人と思った愚か者が来てな。奴隷として、この国に辿り着いたのさ」

「そこで逢ったのが、今の主だ。私は心底嬉しかったよ。形はどうであれ、私を信じてくれたのだからな」

「たとえ道具としてでも構わんさ。信じてくれるのなら、報いるまで。それが私たち神の在り方だ」

歪んでいる。

そんな思いがアリサの心を埋め尽くす。

だが、どんなことを思っても、何も変わらない。

「…すまんが、事情が変わった。しばし眠っているのだな」

拳を振り上げる少女の姿を最後に、アリサの意識は途絶えた。

カツン、カツン。

静かな部屋に、靴音が響く。

その音で、壁に繋がれたアリサは目を覚ます――。

――やはり、捕まりましたか――。

アリサは冷静に状況を把握していく――。

――腕は…千切られたのでしょうか。根本から無くなってますね――。

手足の欠損には既に慣れている。

それは、治癒魔法を使えばすぐ再生するのが原因だ。

しかし――。

――チッ、封魔の呪印が書かれてますね。これでは魔力が使えません――。

露わになっている上半身には、黒いインクのようなもので印が刻まれている。

そのせいで、アリサは魔力の操作が出来ない。

反対側の壁――ドアが取り付けられている壁だ――には、義足が立て掛けられている。

どうするべきか、思考を回転させていたアリサだが、来訪者によってそれは中断された。

「よぉ。お目覚めのようだな。アリサ」

「うわぁ…。見たくない顔を見せられて死にそうです」

「お前マジでそういう言い方やめろ。傷つくわ」

その言葉とは裏腹に、リゼルの顔は冷徹だ。

「あぁ、貴方の暗殺は失敗したよ。だが、どっちにしろお前たちはここでおしまいだ」

表情を変えぬまま、リゼルは淡々と言い放つ。

「…は?」

対するアリサの表情は、困惑に染まった。

「え…?終わりですか?私たちが…?」

リゼルは頷く。

「…冗談じゃありませんよ!どうしてここで終わるんですか!?」

呆れた表情のリゼルは、アリサを指差し言う。

「お前のせいだよ。お前が捕まらなきゃ、あいつだってまだ行動できた」

「これから、お前の命を条件に提案する。仲間想いの貴方のことだ。呑むに違いない」

アリサの思考が止まった。

あの時の約束を、貴方は絶対に守ろうとする――。

――私の存在が…枷になっていたのですか――。

そして、涙が零れる。

「あぁ…。あぁぁぁ…!」

主たる貴方のために、死力を尽くした。

しかし、自分の力不足が原因で、共に見た夢が、理想が、今までに築いたものが全て、消えてしまう未来が見えた。

そして今、その状況を打破しようと行動することができない自分があまりにも惨めで、流れる涙の量が増える。

「ハハハハハハ!そんなに泣くまで大切なことだったか!」

「だが、ここでお前らは終わりだよ。おとなしく諦めろ」

そう言って、リゼルは部屋を後にする。

リゼルがいなくなってなお、アリサは泣き続けた。

城での対談を終えたリゼルは、アリサの独房へと戻って来る。

その頃には、アリサは既に泣き止んでいた。

しかし、目尻は赤くなっている。

「ほら、さっさと壁門まで行きな。そこで待つようには言っといたから」

鎖を外し、義足と弓、ナイフを目の前にリゼルは置く。

呪印が消えたのを確認し、アリサは肉体を修復。

綺麗に生えた手で道具を取り、無言で部屋を出る。

そしてもう一度、一分間だけ泣いた。

貴方の前で泣くことがないように。

弱いアリサを見せないために。

心配されることがないように。

色々な思いを込めた涙が、床のカーペットを濡らした。

転移魔法の魔法陣を構築し、指定座標へと転移する。

目の前には、目尻が真っ赤になっている貴方がいた。

「…ごめんなさい。命令、果たせませんでした」

深々と頭を下げ、謝罪の意を示す。

決して、涙を流していた過去の自分を悟られてはならない。

「いや…。生きているだけで充分だ…!」

逆に、貴方が涙を流す。

それを見たアリサは、慌ててハンカチで拭う。

そして、今にも泣きだしそうな自分を押し止め、平静を装いながら答える。

「死ぬわけにはいきませんよ…。まだ、貴方と共に進まないといけませんから」

アリサは思う――。

――先ほどいっぱい泣いていて良かったです――。

それが無ければ、間違いなく一緒に泣いていたから。

壁外に出ると、最前列に立っているカエデがこちらを見る。

それに反応したアリサは、口を開く。

「…私を待ってたみたいですね。すみません」

「気にするな。私たちは気にしてはいない」

いつもより、声色が少し高い――。

――優しいお姉さんで助かりました。心からのありがとう、です――。

この想いは伝わっているのだろうか。

いや、きっと伝わっている。

そんな根拠のない確信をしていた。

宛てもない旅の中、各々の意志を尊重した結果、貴方とカエデ、アルヴァ、アリサ、レイス以外はメンバーから外れ、自由に生きていった。

バジルスは、そもそも軍の所有だったため、この旅には同行していなかった。

あくまで捕虜としていたのだから、当然のことではあるのだが。

心が壊れたのか、貴方はただ、毎日空を眺めてばかり。

生活費を稼ぐため、アリサとカエデが依頼をこなしたり、ダンジョンの攻略をしたりしている。

アルヴァは掃除を、レイスはストリートライブをそれぞれ行う。

そんな生活をしている最中、ある日の夜のこと。

アリサは、貴方と同じ布団にいた。

「…こうなってしまったのは、私の責任です。だから」

アリサは、スカートの裾に手を掛け、外す。

「…いや、選んだのは俺だ。アリサは悪くない」

貴方は距離を取る。

しかし、距離を縮めてアリサは顔を貴方の胸に押し付ける。

「…今からしようとしていること、分かりますよね」

「…分かってはいる。その上での拒絶だ」

気を遣っていると分かっていても、心にくるものがある。

「そうですか。なら、私が勝手にしますのでお気になさらず」

それでも、引き下がれない。

これは贖罪だから。

主の未来を破滅に導いてしまった、愚かな従者ができる唯一の贖罪。

甘い口付けをして、一言。

「どんな貴方でも、私は受け入れますから――」

――だから、今だけは私に夢を見させてください――。


番外編 泡沫に消えし理想 Alisa side ~Fin~

以上でアリサ編は終わりです。放浪生活の中もちょこっとだけ載せてみました。明日は今度こそ更新をします。

レイス編はもう少し待ってください…。ちょっと難産となっております…。申し訳ない…。


主人公の決断前に大喜びして逃がすアリサに武器まで返しちゃうリゼル

独房でアリサに自決されてたらリゼルは詰んでたな

>>509、約束しているから自決は無理ですね…。いつの間にかリゼルが知将に。どうしてこうなった。

今から再開していきます。ダイス機能ってこの板にはないですよね?あったらカジノとかがやりやすいんですが…。

貴女は、二人の目を見つめる。

どうなっても後悔しない、とでも言いたそうなリーシュと、気にしていない風のセフィ。

かつて、渓谷で貴女が言ったことを思い出す。

「…命を見捨てない…。それが私にできること…」

そして、貴女は二人に向けて言う。

「私は命を見捨てません。だから、あなた達を助けます」

「いいんですか?その結果、あなたが犯罪者になったり殺されたりしても」

「それでも、見捨てることだけはできません――」

――私も、あの人に救われたから――。

真っ直ぐな貴女の目をじっと見つめるセフィ。

やがて、根負けしたように手を挙げる。

「やれやれ。では、おとなしく助けられますかね」

「ありがとう…!一生あんたについて行くよ…!」

「あ…あはは…」

そのやり取りを見たグラウスは微笑み、貴女のエウルスを二人に投げ渡す。

「ほれ、さっさと契約を解除しな。そうすりゃ、お前さんたちも自由に動けるだろ」

「契約…?」

「…あぁ。嬢ちゃんには言ってなかったか。奴隷は皆、魔法で契約をしてるんだよ」

簡単に逃げられないようにな、とグラウスは言う。

二人をよく見れば左の鎖骨付近に刻印のようなものがある。

これが契約の証なのだろうか。

「…恥ですよ。天使たる私がこのような契約をしたなど…」

「まぁいいんじゃない?どうせおさらばだし」

「それでもです…。これでは天界に帰った時にどう茶化されるか…」

二人はエウルスを手に持つ。

すると、刻印は徐々に霧散して、元の柔肌が姿を現す。

「これは…。あの祭壇に祀られていた聖盾エウルス。よくアッティラを始末できましたね」

「冗談じゃねぇよ…。あんな化け物とは二度と戦いたくないわ…」

「残念。この世界が存在する限り、どこかにはいますよ」

「………」

口を開けたままグラウスは硬直するが、すぐに話を戻す。

「っと。早く逃げないと追手が来るぞ」

「どう逃げんの?」

先ほどとは違い、冷静に問うリーシュ。

それに対し、グラウスは指を二本立てる。

「旅の扉を使うか、近くの町に逃げるか。さあお選びください」

「軽くねぇかな。あんた」

「グラウスさんはこういう人だから…」

呆れた顔でグラウスを見るリーシュ。

貴女は胃痛でお腹を押さえる。

↓2に、どちらのルートを取るかをお願いします。危険な方は旅の扉ルートですが、現在の貴女一行だと過剰戦力なので余裕でしょう。

「遠くに逃げるのなら旅の扉を介した方がいいでしょう」

「近くの町に逃げても、情報が行けば駄目ですし」

「へ?」

「じゃあそっちで」

「…マジかよ」

グラウスの表情がどんどん険しくなり、汗が流れてくる。

「…あの道、夜は危険な魔物がいるって…」

「…ああ。ベヒーモスだ」

聞いたことがない魔物の名前を出され、リーシュと貴女は首を傾げる。

「光を嫌う『混沌の獣』。夜の世界を徘徊し、命を食む犬っころですよ」

「犬っころって…。お前なぁ…」

「あんなの雑魚じゃないですか」

「えぇ…」

正反対の反応をする二人がおかしくて、リーシュと貴女は笑ってしまう。

「…早く移動しませんか?」

「あ、ああ。しっかりついてこいよ!」

「っし。体が軽くなったおかげで楽に動ける」

「み、皆速いよぉ…」

この中で最も遅い貴女は距離を離されていく。

それでも、貴女は充分なほど速いのだが。

「大丈夫?あたしがおんぶしてあげようか?」

「え?…あぅ…。お願いします…」

「ん」

軽く返事をしたリーシュは、貴女を片手で背中に乗せる。

そして、リーシュは音を超え、町を駆け抜けた。

「ふぅ…。ここからが正念場だ…」

旅の扉の設置場所、湖の近くに逃げてきた貴女たち。

予め双剣を手に持つグラウスと、光を片手に集めるセフィ。

貴女は月切とエウルスを構え、リーシュは何もせず、後ろを歩く。

「おや、リーシュは素手ですか」

「武器を買う金なんか無かったからさ。あたしとしてはこれが一番しっくりくる」

拳を握りしめるリーシュは、周りの様子を確認する。

「ん…。なんか大きな奴がいるな」

「じゃあそれがベヒーモスだな」

「さて、どうでしょう」

各々の発言が噛み合っていない。

いったいどれが正しいのか。

貴女では判別がつかない。

「あ、気付いた」

湖の畔に辿り着いた時に、リーシュが呟く。

すかさず、全員が同じ方向を向いた。

迫りくる地響き。

薙ぎ倒される木々の音。

その正体は。

「ガォォォォォォアァ!」

全身が白い、猛々しい獣。

「ね。言ったでしょう」

「…ナラシンハかよォォォォ!?」

白目を剥くグラウスと、優雅に浮かぶセフィ。

「あーもう!ふざけてないでとっとと仕留めるぞ!」

「お…大きい…」

巨大なる獣の剛腕が、一行に迫る。

直下コンマ判定 0が二人いるため判定強化&勝利条件緩和 二回成功で勝利

1(補正値なし):ファンブル
2、3:失敗
4~6:成功
7、8:クリティカル
9、0:特殊判定

りーシュが素手なのは「耐えられる武器を」買う金が無かったからなのではなかろうか

「おらァ!」

ナラシンハの剛腕を、右足一つでリーシュは蹴り返す。

「天使の力、その身に刻みなさい」

よろけたナラシンハに、セフィは光の柱を大量に突き刺す。

そして、セフィは一振りの剣を掌に作り出す。

「救済の光よ。形となりて魔を裂け」

振り下ろした剣から、大きな衝撃波が放たれる。

大きい、というレベルではない。

その衝撃波は、海を割ったのだ。

「おや、避けましたか」

柱を折り、横に跳ぶことで回避するナラシンハ。

危機を感じたのか、後ろ足で立ち、前足で角を抜く。

角は剣と化し、肉体は修復される。

更に、その肉体は肥大して力を増す。

「仕切り直し、というわけではありませんか」

「どうでもいいさ。潰せば終わるんだから」

「同感です」

二人の出す気迫に気圧されるナラシンハ。

「…なぁ嬢ちゃん」

「はい…」

「なんで二人は捕まってたんだろうな…」

「酔っぱらってたんじゃないですか」

「かなぁ…」

格の違いを見せつけられた二人の心は、ポッキリと折れていた。

直下コンマ判定 

1(補正値なし):ファンブル
2、3:失敗
4~6:成功
7、8:クリティカル
9、0:特殊判定

「フッ」

ナラシンハの横薙ぎを、上から叩き付けることでリーシュはやり過ごす。

その一撃で、ナラシンハの剣は折れてしまう。

「そんな武器じゃ無理だよ」

リーシュは空中でクルリ、と一回転し、剣の破片を足場にナラシンハの腹部に突撃する。

「ゴガァァァ…!」

空に弾かれたナラシンハ。

その上から、翼を煌かせるセフィが無数の光弾を放つ。

「全身穴だらけにしてあげますよ」

光弾は吸い込まれるようにナラシンハに降り注ぎ、全身を穿つ。

そして、塵すらも残すことなく、ナラシンハはこの世を去った。

「おいセフィ。消えてるじゃんか」

「うーん。半分くらいで良かったですかね」

大穴が空いた地面を見ながら、セフィは呟く。

「確信したわ。コイツラが喧嘩したら世界がヤバい」

おそらく、今の戦闘でも全く本気を出していない。

本気を出した時、この世界がマトモな形を保っていられるか。

真面目に心配になったグラウスだった。

「おーい。旅の扉とかいうのを使うんでしょ?」

「…今の戦闘の余波で潰れたんじゃね?」

「いいえ。未だ健在ですよ。天使の私が言うのだから間違いない」

「それに先ほどのあなたの言っていたことは間違っていましたし」

「それをほじくんなチクショウ!」

「………」

貴女は、先ほどの戦闘を見て気絶していた。

なお、旅の扉は機能していたので、一行は普通に戻って来た。

>>519、リーシュゴリラ説が浮上してきましたね…。

直下に、これからの行動、若しくは、目的地をお願いします。

本日の更新はこれで終了となります。次回は木曜日を予定しております。間に合えばレイス編も同時投下予定です。お疲れ様でした。

乙乙
クレゾンヌの森の方角途中にある町
食料の補給


リゼルは知将と呼べる配下が多数居ないと不自然な設定ではあった

すみません。今日の本編更新は無理そうです…。レイス編は完成しましたので、そちらを投下します。

来週の木曜日なら再開できるかと思います。申し訳ございません…。

番外編 すれ違う二人


ハイランディアを後にして2年。

アーバンとの約束は、ハイランディアが滅んだことでお釈迦になり、今もなお、各地を転々としている。

これから綴られるのは、その中で立ち寄った港町『ホルム』での出来事。

「んぅ…。もう朝かぁ…」

12歳を迎え成長したレイス。

その海のように蒼い髪は腰まで届き、下半身のヒレの鱗も鮮やかに色づいている。

リビングに向かうと、温められたミルクが机の上に置いてある。

既に探索に向かったカエデが用意したものだ。

少しずつ、喉を温めるように口にしていく。

歌は喉が命、素晴らしい歌は、完璧に管理された喉から出るもの。

「…かいぬしはまだ寝てるのか。堕落しすぎだよ」

閉められたドアを見ながら呟くレイス。

その目には、憐憫の色が表れていた。

「はぁ…。ご飯だけでも作ってあげておくかな」

アリサ謹製の椅子に上り、野菜を切り刻む。

次に、それをフライパンに放り込み、油を投入して炒めていく。

サッと炒めた野菜に、塩を軽くまぶして皿に乗せる。

今のレイスにはこれが限界だが、本人は満足気だ。

「…ふん。別にかいぬしの為じゃないし。お姉ちゃんたちが悲しむのが嫌なだけだし」

そう自分に言い聞かせながら、レイスは机に皿を置いて家を出た。

「~~~♪」

レイスが一言紡げば、歓声が上がる。

二言紡げば、涙を流す。

三言紡げば――。

――ああ、もう俺死んでもいいや――。

――ワイの命と金はレイスたんのためにあったんや――。

――Leithhhhhhhh!saikoooooooooo!――。

――レイスちゃん可愛い…可愛くない…――?

――人々が崇める。

彼女の歌の魔力は、人の心を魅了した。

「ありがとうございましたっ!」

アリサ直伝のお辞儀で、ストリートライブは締めくくられる。

途中から見ていたカエデに抱きかかえられ、帰路につく。

その間に、レイスは不安を零していた。

「…かいぬし、いつまで落ち込んでるんだろ…」

曲がりなりにも貴方が主人であることを、レイスは理解している。

それが未だに塞ぎ込んでいるのが、レイスにとっても気掛かりだった。

「分からんな。だが、原因は私にあるだろう」

「スジャータ嬢を守り切れなかった私にな」

そう言ってカエデは拳を握りしめる。

「………」

レイスは何も言えなかった。

家族を喪う痛みを、レイスは理解している。

だから、貴方がそれに苛まれているのも理解できる。

だからこそ、何も言えなかった。

今更、何度も蔑んできた自分が、どのような顔をすればいいのか。

それが分からなかったから。

「…レイス、お前は私のようになるなよ」

「…お姉ちゃんは悪くない」

レイスは思ったことを言う――。

――悪いのは、この世界なんだから――。

家に戻ると、アリサとアルヴァが洗濯、貴方が調理を行っていた。

「ん…。ああ、カエデとレイスか。お疲れ様…」

貴方の目の周りには、濃ゆい隈が。

本人は語っていないが、その原因は嘗ての悪夢。

守るべきものを目の前で喪った、あの瞬間。

「かいぬしはもう寝て。いても寧ろ邪魔だから」

フライパンから手を離し、水を取りに行った隙に、貴方の背中を押す。

しかし、貴方は頑なに動かなかった。

「これくらいはどうってことはないさ…」

「寝てって!」

珍しく大声を出したレイスに驚き、貴方は硬直する。

「お姉ちゃん、お願い」

「任されました」

その間に、アリサが手刀を当てて気絶させた。

その日の夜、レイスは一人、リビングに佇んでいた。

「かいぬしが悪い人じゃないってのは、分かってるはずなのに…」

嘗て母を殺めた男の顔がフラッシュバックする。

男を見るだけ、ただそれだけで。

「…いや、きっと私がそう思ってるんだ。どこかで悪い人だって。男は皆そうなんだって…」

「ひゃっ!?」

唐突に開かれたドアの音に驚く。

「…あれ、レイスちゃん」

「アルヴァお姉ちゃん…」

「わわっ!どうしたの?」

アルヴァを見たレイスは、堪らず抱き着く。

そして、その思いをアルヴァに向けて吐き出した。

「なるほどねぇ…。ご主人様が悪者に見えちゃう…か」

こくん、と頷くレイス。

その目は、答えが分からなくて揺れていた。

「…まずは、ご主人様のことを知るべきだと思うな」

「ご主人様も辛い思いをしてるから。それを知れば、変わるはずだよ」

いつになく、はっきりと断言するアルヴァ。

貴方が絡むといつもこうなっている気がする。

「…うん。そうしてみる」

昔、レステルにいた時に聞こうと思って聞けなかったこと。

それを、今度こそ――。

目が覚めた貴方は、頭を抱える。

「…また、あの時の記憶か」

嫌気が指すほど見せられた光景。

スジャータに庇われ、スジャータの胸が穿たれるあの光景。

それは、今もなお心を蝕んでいた。

コンコンコン、と響く丁寧なノックの音。

「鍵は開いてる…。入っていいぞ…」

開かれた扉から見えるのは、蒼い長髪。

そう、レイスだった。

「…かいぬし、少しだけいい?」

「ああ。レイスこそ、ライブはいいのか?」

「今日は夕方からだから」

レイスはそう言って、貴方の膝に座り込む。

「…大丈夫か?熱でも出てるんじゃ…」

「何それ。偶にはいいでしょ」

「それより、かいぬしのことを知りたいの。聞かせて」

遠慮がちに頷いた貴方は、ぽつり、ぽつり、と口を開く。

「…そっか…。お父さんの望みだったんだ…。奴隷解放は」

「もう叶わないがな…」

貴方は目を伏せる。

その目はどこか虚ろだ。

「…だけど、無駄じゃなかったでしょ」

「かいぬしがその望みを叶えようとして、お姉ちゃんたちも、わ…私も救われたんだから…」

「か…感謝だってちょっとだけしてなくもないんだからね…!」

素直にありがとう、と言えない自分を恨めしく思いながらも、思いを伝えるレイス。

それを見た貴方は、少しだけ柔らかい表情になった。

「感謝…か。寧ろ、こっちがする方だよ」

「こんな俺に付いてきてくれて、一緒にいてくれて、本当にありがとう」

「これでも、一応奴隷なんだから当然じゃない!ふん」

そっぽを向くレイスの頭を、貴方は撫でる。

いつもと態度は変わらないかもしれない。

しかし、その心は確かに、貴方と、皆と共に。


番外編 すれ違う二人 ~Fin~

これでレイス編は終了となります。気になるレスがあったら、文章に起こして投下するかもしれません。

>>525、現在位置はギュンデームから復路を少し進んで、それから山沿いの旅の扉に向けて移動した感じです。

従って、目的地は自動的にギュンデームとなりますが、それ以外でも比較的近い位置に街があります(ギュンデームよりも奥)。

直下に、ギュンデームを目指すならその旨を、別の街を目指すなら街の特徴と名前をお願いします。お疲れ様でした。

遅くなってしまいましたが、今から少しだけ再開します。安価を出すところまでは書き溜めていますので、少々お待ちください。

また、ちょこちょこ出ている魔物の名前は、FF13-2に出てくる魔物と同一のものとなっております。(ロングィやナラシンハ、アッティラなど)

旅の扉を利用して、ギュンデーム付近に戻ってきた貴女一行は、食料補給のためにギュンデームへと戻る。

既に瓦礫は撤去され、修理に勤しむ人たちでいっぱいになっている。

「そっちの木材は宿屋の天井用だぞ!何?トタンをもう張った?このバカ野郎!」

そう言って飛び膝蹴りをかますデコが光る青年。

触れてはいけないものと判断した一行は、それを無視して広場に荷物を置く。

「んーと。リーシュは嬢ちゃんを見ておいて、セフィは俺と買い物だ」

「分かった」

「天使にそんなのさせるんですか?」

グラウスは笑顔でエウルスを手に持つ。

「…仕方ないですね」

セフィは渋々グラウスに同行する。

「ん…。…あれ?ギュンデーム?」

「おっ。目が覚めたかい」

膝枕をされていた貴女は、目をパチクリさせている。

「あのバカ二人は買い物に行ったからさ。あんたもゆっくりしてな」

「あ、はい」

不思議と、彼女の言うことを聞いてしまう貴女。

その理由が何なのか思案するが、正体は分からない――。

――でも、リーシュさんの膝枕。あったかいなぁ――。

貴女はその暖かさに身を委ね、目を閉じた。

「重い…。これ持ってくださいよ」

「無理だ。俺だって重いんだから」

そう言う二人の手には何もなく、その周りに食料が浮いている。

「一々浮かすのも面倒なんですよ」

「………」

「あの、本当にやめてください。ちょっと心折れそうなんです」

エウルスを見せるたびに、セフィの表情が固まる。

余程屈辱的なものだったのだろう。

「あなた…。悪魔よりも悪魔してますよ」

「バカ言え。人も天使も、そして悪魔も、皆性格は違う」

「天使みたいに優しい悪魔もいれば、悪魔みたいな天使もいる」

否定はしません、とセフィは返す。

「ですが、悪魔は悪魔。それは変わらない事実です」

「だから、私は全ての悪魔を滅します」

強い意志を持った目で、グラウスを見つめるセフィ。

「…滅する…ね。嫌な記憶だよ。マジで」

――昔の俺みたいだな。セフィは――。

生き写しのようなセフィを見て、グラウスの表情は少しだけ暗くなる。

「…ん。なんで伝書鳩が俺の肩に」

突然肩に停まった伝書鳩。

その足には、一枚の紙が。

「どれどれ…」

開かれた紙には、こう記されている。

―――――――――――――――

親愛なる我が夫へ


旅は順調に進んでいるのなら、俺も喜ばしい。

進む場所を見失った時は、一度空を眺めるのもいいと思うぞ。

結構、そうしたら次にすることが見つかるものだ。

適当に進む、というのもいいかもしれないがな。

誰よりもお前を愛す妻より

―――――――――――――――

紙の端には、血判が一つ押されている。

「ハハ…。ハニーからの手紙だったわけか」

「アツアツですね。文の意味が少々おかしいですが」

「ぶっ飛ばすぞオラ」

そう言いながら、血判に指を当てるグラウス。

血が淡い光を帯びると同時に、グラウスの表情が険しくなる。

「…悪い。用事ができちまった。お前さんたちは好きに行動してくれ」

「…はい?」

「加速帯形成完了。方向修正良し。目標地点への最短到達ルート確認」

――跳べ。音を、世界すらも置き去りにして――。

そして、グラウスは雷を纏って空を駆けた。

「…荷物、増えたじゃないですか」

くすねておいた紙を折り畳みながら、セフィは呟く。

「視たところ、目的地は奴隷大国の首都みたいですね」

――はてさて、そこに何があるのやら――。

セフィは、心底愉しそうな笑みを浮かべると同時に、地面に落ちている荷物とエウルスを浮遊させて、貴女たちのところへ戻る。

広場には、気持ちよさそうに眠る貴女と、貴女の頭を優しくなでるリーシュの姿があった。

直下に、これからどうするかをお書きください。グラウスが離脱したこと以外は、変化は生じておりません。

短いですが、今回はこれで終了となります。次回予定している日は金曜日…今日です。お疲れ様でした。

遅れましたが、今から再開していきます。

「ただいま戻りました」

「お疲れ。これからどうする…って、グラウスはどした?」

「所用で一時的に脱退するようです」

リーシュの目が点になる。

経験が豊富であろうグラウスが脱退した今、どこに行けばいいのかも分からない。

冒険というものを内心楽しみにしていたリーシュにとっては、辛い状況だった。

「とりあえず、この町の不安要素を取り除きましょうか」

「ダイボロスに破壊された後なら、混乱した魔物に攻撃されてもおかしくないですし」

「何、そのダイボ何たらって」

「図鑑でも見れば分かるんじゃないですか?」

「…字、読めないんだよ」

脳内に警鐘が鳴ったセフィは逃げ、イラっとしたリーシュは後を追う。

「学校行く金なんか無かったんだよぉぉぉ!待てオラァァ!」

「怖い怖い怖い。風圧だけで空を飛ぶとか、どこの諜報部員ですか」

変態軌道で空を駆けるセフィも大概だが、それに追従できるリーシュが特におかしい。

これで、ただの人間なのだから恐ろしい。

「ぐえっ」

追い付かれ、首を掴まれるセフィ。

間髪入れず、リーシュは全身を固めて身動きを取れなくする。

「あっ不味い」

「チェストォォォォ!」

そして、超速のパイルドライバーを叩き込む。

「ぐえー死んだー。死にましたー。これ絶対死んでますー」

「それだけ喋れるなら充分だろ。前にも言ったけど、それで弄るのはやめて」

「…考えておきます」

「よし、もう一発かますか」

足までめり込んだ状態で当たり前のように話すセフィと、気にも留めないリーシュ。

二人にとって、これこそが普通の日常だった。

「そういや、冒険者ってどんな感じなの?」

眠っている貴女を背負いながら、セフィに問う。

「一般的には、四人で組んで冒険するのが多いですかね」

「前衛二人、回復役、支援役って感じです」

「ふむふむ。あたしはどれよ」

「ゴッドハンド。脳筋の前衛です」

「首折るよ?」

目を逸らすセフィの横腹を小突く。

「…まぁ、リーシュが前衛、私とグラウスがオールラウンダー…何でもできる人ですね。貴女が回復役って感じでしたかね」

「ふーん」

軽い返事をして、歩く速度を上げる。

樹に刻まれている傷痕が増えてきているのだ。

「…こりゃ、セフィの言う通りかな。だいぶ混乱してるみたいだ」

傷痕に手を触れる。

樹液が漏れ出ていることから、最近付けられたものだと考えられる。

「それでは、楽しい楽しい残党狩りと行きましょうか」

「危害を加えるなら、潰すだけってね」

左手に、四色の光を纏うセフィ。

紐で貴女を固定し、拳を合わせて笑うリーシュ。

これから始まるのは残党狩りではない。

ただの、一方的な蹂躙である。

直下コンマが3以上で残党討伐完了となります。8~0だと何かが…?

「根幹成す四元素。我が手に集い、暴虐となりて」

「赴くままに命を食み、全てを無へと還し給え」

四元魔法『エレメト』、その最上位魔法である『エレメガ』。

炎、水、風、雷。

魔術の、現象の基本となる元素を、互いに干渉させ攻撃に用いる魔法。

四元素が交わる時、それぞれが干渉し合うことで、膨大なエネルギーと共に辺り一面を破壊する。

それを強制的に起こすこの魔法は、四元素を交わらせる魔法の中で当然、詠唱難度は最も高い。

二つ交わるだけでも干渉が起きるため、同時に詠唱する混合魔法も、干渉によって事前に消滅しないように注意しなければならない。

四つを同時に、完全なバランスで干渉させるこの魔法は、非常に繊細な調整を要求される。

左手の光が集い一つになり、地面へと潜り込む。

刹那、地割れのように光が噴き出し、森の大部分が消し飛ぶ。

混乱していたが故に、人間を見つけて飛び出した魔物は、肉塊すらも残さず、悲鳴も上げられず、無になった。

「滅茶苦茶なことするなぁ」

魔法の勢いを利用して、上空に飛びながらいうリーシュ。

「面倒なので後はよろしく」

「あいよ」

空中でハイタッチをし、一気に地面へと加速する。

「プルプっ」

「次はあたしだ。悪いね。これも仕事なんで」

偶然着地点にいたスライムを踏み潰し、残っている魔物に急接近する。

「ガルルッ!」

「残念」

鋭い鉤爪をひらりと避け、左足で蹴り上げ、右足の回し蹴りで吹き飛ばす。

その一撃で魔物は絶命。

勝機が無い、と判断した魔物は一目散に逃げ出す。

「逃がさない」

が、退路にリーシュは回り込み、適当に木々を折る。

そして、それを投擲。

凶悪な弾丸となったそれは、脳を抉り命を奪う。

「1、2…40匹くらいか?」

「私は72匹です」

「あーあ。負けたかぁ」

更地と化した森を後に、一行は去る――。

――何か言われる前に逃げるのが一番だしね――。

この後、色々あって更地にダンジョンが出現。

凶悪な魔物が潜む、腕試しの名所となったんだとか。

直下に次の行動をお書きください。

怪我人は現時点では一人もおりません(>>397参照)。

魔物の残党狩りも、ギュンデームが襲撃される前に行っています。

ですので、今回の行動は情報収集のみとなりますが、それで良ければその旨を、変えたいのなら、新たに行動をお書きください。

岩場に荷物を置いたところで、貴女は目を覚ます。

「…あれ?ギュンデームにいたはずなのに…」

「お。目が覚めたか」

目を白黒させる貴女に、畳み掛けるようにセフィは口を開く。

「いいですか。グラウスは所用で奴隷大国の首都に単身、乗り込みに行きました」

「ほえ?」

「これからどうするか。これは一応のリーダーである貴女に委ねます」

「貴女が望むのなら、情報を私たちが収集して来ましょう」

――理由も特徴も知ってはいますが、すぐ教えてばかりでは成長しない――。

――少しは自分でどうするか決めさせなければ――。

悪魔憎し、という思いが強いセフィだが、天使らしい、人を導こうという思いも同時に内包している。

その手段が真っ当だとは限らないが。

「…グラウスさんが、私たちを置いて行くということは、それだけ大変なことが起きていると思うんです」

「私じゃ力にならないかも…。だけど、少しでも役に立ちたいんです…!」

その言葉を聞いたセフィは微笑む。

「行きますよ。これからは私たち従者の仕事です」

「ん。あたしたちも大きな恩があるからな。返すためなら何だって」

そして、二人は姿を消す。

「…グラウスさん。どうしたんだろう…」

一抹の不安が、貴女の胸の中で燻っていた。

その不安は的中するのか。

それとも、杞憂で終わってくれるのか――。

直下コンマが5以上で、奴隷大国の首都の情報及び、近況の情報が開示されます。

田舎町:-1

本日の更新はこれで終了となります。次回予定は木曜日です。お疲れ様でした。

遅れましたが、今から再開します。更新できる量は少ないと思います…。

「そこの人ー、奴隷大国のことって知ってるー?」

「なんだそれは…。俺はそんな国知らないけどな」

「うぇ。知らないのか…」

まずはデコ光りの青年に声を掛けるが手掛かりなし。

気を取り直して、屋敷のメイドや医師にも聞いてみるが、結果は芳しくなかった。

「…ダメだこれ!」

ベンチにもたれ掛かるリーシュ。

その顔は疲れ切っている。

「…ダメみたいですね」

リーシュの上に、セフィが飛んでくる。

リーシュの額に青筋が立つ。

「…セフィは良かったのかよ」

「…残念ながら」

「「はぁ~…」」

そして、二人して大きなため息を吐き、ベンチに横たわる。

「流石に、こんな田舎町で情報収集は無理がありました」

「あの国は、別の大陸にありますからね。空路は未だ、人類が確立できていないので、船が必要ですし」

「…おい、情報知ってそうじゃん」

「…知ってますが、ホイホイ教えても貴女のためにはなりません。彼女自身の意志で決めることですから」

答えになってねえ、とリーシュはセフィにチョップを入れる。

「つまり、便利な物に頼り続けるのではなく、その場にある物を活用して乗り越える。そういうことです」

「回りくどいなぁ。それが天使のやり方かい」

頷くセフィを見て、リーシュは頭を抱える。

「…まぁ、セフィの言うことも間違ってねえし…。ここでの収穫だってゼロだし…。そう伝えるか…」

ゆっくりと起き上がったリーシュは大きく跳躍。

後を追い、セフィも飛翔した。

大きな岩の上で、体育座りをして待つ貴女。

その視線は、空に佇む月に向かって。

「…月切…。月を切る剣…」

一回、軽く振ってみるが、当然月が二つに割れるはずもなく。

「無理だよね。どんなに遠いのかも分からないんだもん」

鞘に納め、人差し指を空に向ける。

小さな蝶が、指に留まる。

「綺麗…」

紫と青のコントラスト。

それが月光を浴びて、様々な光を放つ。

興味をなくしたのか、すぐに飛び立っていく蝶。

顔を少し落とした貴女。

その直後に、セフィとリーシュが戻ってくる。

「ただいま戻りました。収穫は無し、です」

「別の街に行った方がいいのかねぇ…。場所なんかどこも知らないわけだけど」

「地図なら買いました。普通の地図ならどの町でも売ってますし」

「少しだけ見直したわ」

「はいアルテマ」

小さな光弾をリーシュに放つ。

右手で掴んだリーシュだが勢いは殺せず、森の方へと吹き飛ばされる。

「…何かヤバいな。捨てとこ」

上に投擲して1秒後、大きな爆発が発生する。

「むぅ。この程度じゃ流石に傷一つ付きませんか」

「…いつもの行動が悪いから見直したけど、勘違いだったか」

セフィの後ろに回り込み、チョークスリーパーを掛けるリーシュ。

「酷いです。泣きますよ?」

ムスッとした表情をするセフィ。

「…いい歳した大人が」

「天使に年齢なんて些細なものなんです!数千年生きるのはザラなんですよ!」

また何かやらかしそうな二人を諫めて、貴女はどうするかを考える。

直下に、これからどうするかをお願いします。何かイベントが起きるのでも構いません。

そんなわけで、>>339の都市ルート中の街のうち一つへと移動することとなります。海とは面しておりません。

↓1、2、3に街の特徴と名前をお願いします。特徴は全て採用、名前はこのレスのコンマで採用するレスを決定します。

1~3:↓1のレス
4~6:↓2のレス
7~9:↓3のレス
0:こちらで適当にそれっぽい名前を

時間が遅くなりましたので、本日の更新はこれで終了です。名前は直下のレスのものになります。他の安価も一つずつずらします。

次回予定は金曜日です。お疲れ様でした。あまり更新できなくてすみません…。

地名は『ナバリーヒルズ』となります。また遅くなりましたが、今から再開です。

貴女は、グラウスが過去に提案したルート、即ち、都市のことをセフィに伝える。

「…ふむ。レステル~ギュンデームの道中で通過する都市ですか」

地図を開いて貴女に見せる。

「現在地はこちらですので、一番近い街はナバリーヒルズですね」

「なんだそこ」

「新興住宅地として開発された街だったのですが、付近にも大都市ができまして」

「最近は落ち目になっている哀れな街ですよ。一応、研究所がありますが」

首を上下に振りながら、うんうんと頷くリーシュと貴女。

地図をじっと見ながら、どれぐらい時間が掛かるかを計算する。

だが、スラムの住民だった貴女は分からない。

自分たちがどれほどの速度で動いているかと、地図が示している地形が何なのか、が。

「私たちが本気で動けば、数時間で着くでしょう。のんびり歩くなら、数日は掛かります」

「…なら急ぎましょう。手遅れになる前に」

「んじゃ、貴女はあたしが背負うよ」

ヒョイと貴女を背負い、腕を伸ばすリーシュ。

ついてきてくださいよ、と一言だけ言い、空を駆けるセフィ。

対するリーシュは一本の樹を折り、空に向かってぶん投げた。

「ほいっ」

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

そして、その樹に軽々と飛び乗るリーシュ。

どこかの殺し屋みたいなことを平然とやってのける。

「そこに痺れもしないし、憧れもしないですが」

「黙らないと、全身の関節を逆に曲げる」

あははと笑うセフィだが、その表情は引き攣っている。

どうやら経験済みのようだ。

仲が良いのか悪いのか、よく分からない二人である。

地面にめり込んだ樹の上に立つリーシュは、目の前の街門を通って中に入る。

夜にホルムから逃げ出し、ナバリーヒルズに到着した今は、既に昼を越えている。

研究所へと続く大通りは綺麗で、しっかりと整備されている。

「外見は良く見えますが、裏に入ると非常に汚らわしいですよ」

「スラムとかが可愛く見えますから。治安が悪いのなんの」

貴女の地元はスラムだったが、そこまで治安が悪いわけではなかった。

グラウス等が抑止力として働いていたのだろうか。

「研究所って何ですか?」

そう問う貴女を見て、セフィは難しい顔をする。

「…奴隷の臓器を実験材料とした、薬品の研究所ですよ」

「命を救うには、命を犠牲にしなければなりません」

「貴女だって、食事をするでしょう?それは、命を奪っているからできることなんです」

「…まぁ、この方法が褒められたもの、だとは人間は思いにくいでしょうね」

「私は天使です。根本的な考え方が違うので、この方法が悪いとは到底思えません」

何を言っているかは、貴女の頭には難解でよく分からない。

だが、酷い目に遭っている人がいることだけは理解できた。

「…皆が、楽しく生きていける未来って…。あるんですかね…?」

「…人間がいる限り、そんな未来は絶対に来ませんよ」

「人間は、争うことで繁栄してきた生き物ですからね。それを奪ったら、もう人間ではないんですよ」

そう言うセフィの表情は、達観していた。

直下に、これからの行動orイベントをお願いします。

すみません…。頭痛がするので、誠に勝手ながら終了させていただきます…。

次回はいつになるのか分かりませんので、分かり次第連絡します。本当にすみません…。

過労でぶっ倒れてました…。気が付いたら、見知らぬ天井が見えてビックリしましたよ。

再開は本日の夜の予定です。日を跨ぐ可能性大です。

すみません…。残業で時間を取られてしまいました…。火曜日なら流石に再開できるはず…。期待させておいて本当に申し訳ありません…。

インフルエンザのA型に感染して地獄を見てました…。すみません…。今日の昼なら更新出来ると思います…。

夕方になってしまいましたが、今から再開します。今回で二周目が終わってしまう可能性があります。

「…あれー?気のせいかな?あのデカい建物からめっちゃ煙出てんだけど」

リーシュが指差す方向には、大きくて、この地にはそぐわない外見の建物が。

「ああ。あれが研究所ですよ。絶賛バーニング中ですが」

「は?何で燃えてんの?奴隷の反逆?」

「アホですか。反逆しようがないのは、身をもって知っているでしょう」

「うぐ…」

二人は元奴隷、契約によって縛られた経験を持っている。

当然、契約の強固さも理解している。

「じゃあ、誰がやったのさ」

問い掛けるリーシュの傍ら、貴女は不思議な感覚を覚えていた。

――何だろう、この感じ――。

――懐かしい感じがする――。

大変なことが起きている中で、貴女の精神は落ち着いていく。

――神…いや、亡霊の類ですか――。

そして、異端なる者は分析をしていた。

――炎の神に捧げられた供物、人間の魂の集合体であるが故に、弱者に手を差し伸べるのでしょうね――。

――では、その魂は私が解放しましょう――。

手に集う光は、救済となりて。

現世に縛られた魂を救う、一振りの剣へと形を変えた。

研究所の入り口に一行が到着すると同時に、研究所を包む炎の激しさが増し、柱が立つように燃え上がる。

「ああっ…」

「こりゃもうダメだね。皆死んだでしょ」

「ですね。…皆さん、警戒を」

火の粉が舞う中、空に燃ゆる一つの火の玉。

それは形を変え、人となった。

「え…!?」

貴女の記憶の中から、一人の恩人の姿が引き出される。

――間違いない。

あの眼は、炎は。

紛れもなく、あの人のものだから。

「あ…あの…!」

精一杯、声を振り絞って叫ぶ。

言いたいこと、伝えたいことがあるから。

ありがとうの一言すら、言えなかったから。

しかし――。

「誰だ貴様は。俺ぁガキなんかとの面識は無えんだがな」

「あ…え…」

それは、はっきりとした拒絶。

想い続けていた心を否定され、貴女は膝をつく。

「ひ…えぐ…。うあぁぁあん…」

涙が溢れる。

辛くて、悲しくて。

これまでの旅の原動力だったそれは、消えてしまった。

「…おい、あたしたちのリーダーさんを泣かすとか、いい度胸してんな」

ゴキゴキと腕をリーシュは鳴らし、空を見る。

「そこは同感です。元々浄化する気でしたが、これには私もおこです。激おこぷんぷん丸です」

「…は?だから俺は知らねえって」

「ってなわけで、今から脳天かち割るわ」

「懺悔しても遅いですよ。魂が集積して、過去の行為を忘れてるからって許しませんので。傲慢?結構。それが天使ですし」

一人は鬱憤を――。

一人は使命を――。

一人は困惑を――。

各々が異なった感情を胸に抱きながら、激突した。

勝利条件:???の撃退または浄化

敗北条件:リーシュ、セフィの行動不能

今回の判定は特殊です。成功するごとに特殊コンマ判定を行います。

1:ファンブル
2~5:失敗
6~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

あ、指定を忘れてました。直下です。

遅かった…。上のコンマを採用します。もう一度直下コンマ判定です。

1~3:撤退していった
4~6:ダメージを与えた
7~9:隙を作った。貴女のアタックチャンス
0:勢い余ってゴートゥヘヴン

「セフィ!あたしが前に出る」

「いえ、ここは私が」

「あーたーしー!」

「…何コントやってんだこいつら」

跳躍して、青年の目の前まで移動したリーシュは、鋭い正拳突きを繰り出す。

だが、炎の壁で受け止められる。

「あちち。卑怯だぞー」

「何で今ので腕が燃え尽きないんだ…!とぉ…!」

間髪入れず、上空から奇襲したセフィの光剣を、炎で作り出した槍で止め、セフィへと投げ返す。

「どうも。お返しです」

セフィは直撃前に光剣を消滅させ、今度はアルテマを高速詠唱。

無数の魔弾を生み出し、飽和攻撃を仕掛ける。

「へっ。弾幕勝負なら負けないぜ!」

すぐさま青年も対応し、同等の物量の火炎弾でそれを相殺する。

「原初の炎が人を導き、数多の炎が道を照らした」

「なれば、俺の炎で世界に蠢く悲しみを破却せしめん」

青年の詠唱と共にセフィとリーシュ、青年の周りの空間が炎に飲まれた。

そして、翡翠色の巨大な瞳が、そこかしこから二人を見据える。

「固有結界、ですか。わー凄い」

「…気持ち悪いな。ぶっ壊すか」

「ちょ待っ」

しかし、リーシュの放ったオルテガハンマーで固有結界は砕け散った。

「えぇ…。こんなバカと戦り合ってられるかよ…」

消えゆく炎を尻目に、青年は背を向ける。

「逃がすかぁ!」

「ここで浄化させてもらいます」

そうはさせまいと二人は接近するが、極大の熱線を放射されたので、やむを得ず後退する。

「…こっちだって、死ぬわけにゃあいかねえんだわ。死んだ奴が言うのも何だがな」

「…一つ聞きます。本当に貴女のことを憶えていませんか?」

「あ?」

セフィの問いに怪訝そうな顔つきで反応する青年。

「…知らねえよ。だが、何か引っかかる」

「ほう…!それは興味深い。では、お眠りください」

セフィの翼から放たれた光弾を回避し、青年は舌を出しながら返答する。

「断るね。お前たちに付き合ってる暇は無いんで、じゃあな」

「待てよ!」

殴り掛かるリーシュだが一歩遅く、火の粉となって消えた青年には当たらなかった。

「ちっ、間に合わなかったかぁ。あの炎人間は何なんだよ」

「貴女と訳ありみたいですね。詮索はしないでおきましょう」

「…そうだね。それが良さそうだ」

今もなお泣き続ける貴女の傍に寄り添い、二人は慰め続けた。

直下に次の行動をお願いします。研究所の生存者はいません。

「大丈夫だよー。あたしたちが付いてるからねーよしよし」

「ひぐ…えう…」

リーシュは、貴女を抱き寄せながらずっと頭を撫でている。

しかし、一行に泣き止む気配がない。

「…任せました!」

「あ、こら!逃げるな!」

リーシュの制止を無視し、そそくさと姿を消すセフィ。

「ったく…。悪い奴じゃないのは分かってるんだけど」

天使のくせに、おふざけが過ぎるような気もするが。

――今は、貴女をどうにかしないとね――。

この行動に意味が無いとしても。

それでも、リーシュは優しく貴女を抱き続けた。

なんだかんだで、セフィが戻って来る頃には泣き止んでいた。

「逃げてきたのはいいですが、どうしましょ」

先ほどの青年、否、亡霊のことを思い出す。

「…目的を洗い出しておいた方が良さそうですね。貴女にとってもいいことでしょうし」

「はは…。何をやってるんですか、私は。誰も信用しないと決めていたのに」

嘗ての親友。

共に武器を取り、戦場を駆け抜けた。

天使と悪魔、交わることのない存在だったが、心を通わせることが出来た。

いや、そう思っていただけだった。

天使と悪魔は、殺し合う宿命にある。

親友に裏切られたセフィは、親友をその手で討った。

それから、全てが醜く見えた。

何気なく見ていた仲間の天使も、笑顔を見せて信仰している人間も。

そして、見下していた。

同種を家族すらも躊躇いなく蹴落とせる、醜悪な人間を。

――ああ、そういうことですか――。

しかし、その少女は眩しかった。

穢れを知らず、いや、知ってもなお、優しく光る少女の笑顔が。

その女性は強かった。

あまつさえ、命を狙った異端な自分を許容し、共に進んで来た女性の瞳が。

いつしか、自分の心の闇すら取り除かれていた。

――私は既に、救われていた――。

「なら、それに応えるしかないですよね。ええ」

背中の翼は、一対から二対へと。

その表情は今までの中で一番、柔らかいものだった。

「そこのお嬢さん、少しいいですか?」

「なぁに、お姉ちゃん?わぁ~、きれーな羽…」

「どうも。触ってもいいですよ」

「もふもふだぁ~…」

翼に抱き着く少女を、温かい表情でセフィは見守る。

充分に堪能したのか、満足気に少女は手を離す。

「はぅ~…。気持ちよかった…」

「それはよかった」

「あっ!何が聞きたかったんだっけ?」

「それはですね。そこの大きな建物を壊しちゃった人が、何でそんなことをしたのかな、って」

「人?そんなの誰もいなかったよ?」

「…ふむ」

それから何人かにも尋ねてみたが、同じ返答しか返ってこなかった。

――おかしい。どうして、誰も重大なことだと思っていない――。

街の中心部にある研究所が崩壊したのに、慌てている様子ではなかった。

それどころか、消火隊の姿すら見えなかった。

「…認識させないようにする能力でもあるのでしょうか。だとしたら、貴女と私たちが認識出来たのは…」

貴女は過去に会っていたから。

自分は、先ほどの亡霊たちを捧げた神の存在を理解しているから。

リーシュは。

「野生の勘ですね。正直、それ以外だと何も思いつきません」

これ以上の収穫は無いと判断したセフィは、二人の元へと急いだ。

「…ご迷惑をお掛けしました」

深々と頭を下げる貴女に、慌ててリーシュは首を振る。

「いやいや!あたしたちに謝ることないでしょ!?」

「そうですよ。気にしていたら、胃が先に駄目になりますよ」

「あぅ…」

しょぼくれる貴女をリーシュが宥め、セフィが説明を行う。

「まず、先ほどの方ですが…。生者ではありません」

「えっ」

「ある炎神への供物として捧げられた人たちの、精神の集合体です」

「故に、貴女のことを忘れたりしていても、何ら不思議ではないのです」

「え…。じゃあ、私は死んでる人に…命を救われたことになるんですか…?」

「はい」

訳が分からないとでも言いたそうな貴女。

「…言っておきますが、彼の存在は異常です。なので、浄化しなければなりません」

「死した者の魂は、天界に送られた後に冥界へと導かれます。導かれないといけないんです」

魂が現世を彷徨うことは、決していいことではない。

万物は流転する。

死者の魂も、生まれ変わってまた、生者となる。

それこそが摂理。

この流れが崩れてしまうと、生命が失われていくのだ。

天使として、それだけは避けなければならない。

「貴女が大切に想っているのは理解しています。ですが、だからと言って摂理を乱すことを黙認するわけにはいかないのです」

「…貴女だって、死んでもなお、この世界に留まり続けるあの人を見るのは嫌でしょう?」

「…っ!はい…」

「汚れ仕事は私が請け負います。貴女は穢れることなく、綺麗なままでいてくださいね」

貴女は何も言えなかった。

優しい表情を向けながらそう言ったセフィが辛くて。

そして、何も出来ない自分が惨めで。

直下に次の行動をお願いします。

場所の候補を挙げておきます。好きな場所をお願いします。ご自身が考えたものでも大丈夫です。

1:火山地帯の竜人の村(比較的近距離だが超危険)

2:孤島の大穴(遠距離でそれなりに危険)

3:超文明の古代遺跡(中距離だが危険度は不明)

目的地で信仰されている炎神の特徴を↓1、2、名前を↓3にお願いします。

「炎神と言っても、一人や二人とは限りませんからね」

炎を司る神、というより神自体、地域によって信仰されているものは全く違う。

同じものを司る神も、場所によって姿を変える。

「炎神で、主要な神は三人です。今回は、その中で最も信仰心が高い方へ向かいましょう」

「名はラーグ。何度か会話したのですが、まあ普通の神っぽい感じです」

「表面温度が非常に高いため、発声出来ないので基本テレパシーでしたけど」

「いつも左手に太鼓を持ってたりしますね」

「で、場所は?」

「ここです」

セフィが指差したのは、遥か彼方の海上の孤島。

世界の真反対だ。

「と、遠いですね…」

「レステルに移動してから、船を四回乗り換えなければいけませんからね」

「…その間に、グラウスが帰って来るんじゃない?」

「では、レステルで一度合流しましょうか」

セフィは一匹の子龍を呼び出し、尻尾に紙を括りつける。

「これをグラウスの元に届けてください」

「キュイ?」

「この仕事が終わりましたら、美味しいご飯を作ってあげますから」

「クルル…♪」

子龍は翼を広げ、大空へと飛び立った。

「行きましょう。手掛かりを探しに」

「…セフィ、変わったな」

「ふふ。皆さんのおかげです」

「???」

レステルまでの道のりをキンクリすることが出来ます。キンクリしますか?

また直下コンマでグラウスの現状を判定します。

1:グラウス大ピンチ(死亡判定)
2~4:絶賛戦闘中
5~0:既に嫁さんを連れて帰還してた(8、9、0時のみ、オマケで奴隷が一人増える)

直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

レステルまでにあと二回判定を行います。

ナバリーヒルズを後にし、一行はレステル向けて歩き出す。

平原を歩いていると、馬車に乗った男性が前からやって来る。

「もし、旅のお方」

「…?どうしました?」

「いえ、私はしがない行商人。よろしければ商品をご覧になってはいかがかな?」

「えーっと…」

後ろをチラリと覗くと、セフィが手をこまねいている。

「ちょっと待ってください…」

一礼をして、二人の元に小走りで向かう。

「ど、どうしましょう…」

「怪しいから無視だ無視」

「…たしかに普通の行商人とは違いますが、悪意は感じられません」

「一度、商品を見てみるのはどうでしょうか?」

貴女は数秒思考した後、一度確認することを決める。

「お、お待たせしました」

「おや、どうしますかな?」

「商品を一度見ておこうと思います」

「ほほう。それはそれは。どうぞ、ごゆるりと」

そう言って、階段を下ろす行商人。

顔はローブで隠されていて窺えないが、声色からして、上機嫌になっていた。

「わぁ…」

中を覗いてみると、そこには色々なものがあった。

小さなケージの中には小動物が、壁にはアクセサリーや武器が。

そして、色とりどりの植物が籠に入っている。

「ほほ。これらは私が自らの足で入手してきたものでしてな」

「こちらの龍は産まれてしまったのでお安いですが、既に親を認知してしまいまして…。手懐けるのは至難の業です」

「しかし、こちらの卵から孵せば、問題はありませぬ。私としては、是非とも卵をご購入いただきたく思いますがね」

「えっと…。この子はどうするんですか?」

「無論、買い手がいない時は私が育てます。独り身故、心細くてね」

「そうですか…」

処分するわけでもないようで、安心した。

「おっと、その結晶にはまだ触れませぬよう」

「え?」

藍色の綺麗な結晶に触れようとしたが制止される。

「それは封精晶。とある精霊が眠りに付いている結晶です」

「持ち主を認めた時姿を見せ、その者に忠誠を誓う、という逸話があるものです」

「精霊…」

神とは違う存在なのだろうか、などの疑問が浮かぶ。

「買う買わないはお客の自由。気のすむまでどうぞ」

そう言って、行商人はケージを開ける。

元気よく飛び出して来た龍は、嬉しそうに頬をすり寄せている。

それを見ていた貴女の口からは思わず。

「可愛い…」

と漏れ出ていた。

↓2までに何を買うかをお願いします。複数購入は可能ですが、全体の合計数が5を超えることは出来ません。無購入でも大丈夫です。

☆ラインナップ

武器:精巧な作りの長剣 禍々しい刀 両刃の槍

小動物:龍の卵 魔獣いっぱい 龍の幼体一匹

アクセサリー:封精晶 龍牙のブレスレット 竜胆色の竜玉

植物:薬草・毒草色々

魔獣は一匹だけですかね?特に指定が無ければ、一匹で進めていきます。

魔獣の設定を↓2までで募集します。種族名も書いていただけたらありがたいです。戦闘力は直下コンマです。

設定はこちらにおまかせでも構いません。また、↓3で付ける名前を募集します。

龍、精霊は誕生時に設定を行います。

「あ」

ケージを覗いていたら、一匹の鼠と目が合った。

鼠は後ろ足で立ち、首を傾げる。

その姿が可愛らしくて、ついつい撫でてしまった。

「いけません!」

「ひうっ!?」

急に声を荒らげた行商人に、貴女は驚く。

「その鼠はグラトニア。何でも捕食してしまう鼠なんです。不用意に触れてもし齧られでもしたら…」

「え…?あの、嫌がったりしないいい子だったんですけど…」

「…むぅ…。お客を仲間と認めた、というわけですか」

「あ、えっと。私、この子を買いますね」

「え、はあ。それはありがたいですが」

「あと、その、この卵と封精晶も一つ」

「…ふむ、代金はこちらとなります」

「…あ、足りてる。良かった…。これでお願いします」

「毎度。では、お気を付けて」

商品とグラトニアを貰って、馬車を降りる。

既に日は沈みかけており、二人はテントを準備していた。

「お、買い物してきたのかい」

「はい。この子と龍の卵、あと封精晶というものを買ってきました」

「チチッ」

「あっはは!くすぐったいよ!人懐っこい可愛い鼠じゃないかい」

「あ、リーシュさんもそう思います?」

リーシュは頷きながら、愛おしそうにグラトニアを撫でる。

「それで、名前は決めたんですか?」

「あ、えーと。イートって呼ぼうと思ってます」

「そうですか。ではイート、よろしくお願いします」

「チチチッ」

イートはセフィの差し出した手の指先を一舐めし、貴女の上着のポケットに潜り込む。

「あ…。イート、この卵と、結晶を食べたらめっ、だよ?」

イートはその言葉を理解したのか、コクコクと頷く。

「…それ、タオルか何かで温めておかないと、孵化しませんよ」

「じゃあ、あたしがやっとくよ。割ったりはしないから安心して」

「お願いします」

卵を手渡し、貴女は封精晶をチェーンに通して、首に掛ける。

「不思議…。暖かいようで冷たい」

眠り続けているという精霊。

それが目醒める日は来るのだろうか。

疑問を胸に、その日は終わりを迎えた。

本日の更新はこれで終了です。明日も更新出来ると思います。これからボチボチ回数を増やしていきたいですね…。

お疲れ様でした。


種類にもよるだろうけど神はアリサより強いし喧嘩を売るのはやめよう

乙乙
とりあえず二周目はまだ続くようですね

>>631、弱っちいのもいますが、基本的に神はチート級(0)です。まぁ、貴女の仲間二人が0なんですけど…。

>>632、終わる条件が恩人と話をすること、浄化すること、貴女の死亡となっております。ので、まだまだですね。

今から再開します。

沈んだ太陽は、また昇る。

清々しい朝が、旅人たちを祝福する。

「…んぅ…。朝かぁ」

ブランケットを畳み、リュックサックの中に入れる。

「キュー」

「あ、ごめんね。寝てたのに」

気にしてないように、イートはポケットに潜り込む。

どうやら、ここが気に入ったようだ。

「おはようございます」

「ふむ。では、私は三枚換えますか」

「ふーん。あたしは一枚ね」

二人は机越しで向かい合い、ポーカーに興じているようだ。

貴女は横の椅子に座り、二人を眺める。

「うんうん。バッチリバッチリ」

「…いきますよ」

せーので二人が手札を見せる。

「…はぁ!?ウッソでしょ!?」

「残念でしたね」

リーシュの手札は5~9のストレート。

対するセフィは10とAのフルハウス。

「あ、おはよ。勝てると思ったんだけどなぁ」

「おはようございます。そろそろ出発しましょうか」

「はい」

直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

草原を抜け、湿地帯に入る。

レステル周辺は荒地だが、その外側は自然に溢れている。

「ジメジメするなぁ」

「仕方ないですよ。蛭に注意してくださいね」

「蛭?」

「血を吸う生き物です」

「気持ち悪っ」

談笑しながら進んでいると、一軒の小屋が見えてきた。

気になって近づいてみると、小屋付近の地面だけ固められている。

「中には誰もいませんね」

「入ろうぜ」

我先に扉を開けたリーシュ。

小屋の中には、何もない。

人が暮らした形跡すら。

「あれ?」

しかし、小屋の片隅に、小さな取っ手が地面に取り付けられていた。

引き上げてみると、地下に繋がる梯子が。

「…どうする?行っちゃう?」

「貴女の判断に任せた方がいいでしょう」

「えぇ~…」

何となく、本当に何となくだが嫌な予感がする。

勘違いな気もするのだが。

地下に突入しますか?直下でお願いします。

「…やめておきましょう」

「了解です」

嫌な予感というのは、案外当たるものだ。

態々、自分から死にに行く必要も無いだろう。

「しかし、何でこのようなところに小屋があるのでしょうか」

「さあ?」

小屋を出て、進むべき方向へ向きを変える。

首元をペロペロ舐めるイートを撫で、空を見上げる。

点のように見える、龍の群れ。

それは、雲の切れ目から更に上へと飛んでいく。

「…降ってきましたね」

「イート、こっちにおいで」

「キューン」

小雨の間に、ポケットのイートを胸元に移す。

湿地帯故か、辺りから蛙の鳴き声が聞こえてくる。

それどころか、のっしのっしと人の数倍もある蛙が、堂々と歩いてさえいる。

生き物って凄い。

直下に移動中のイベントをお願いします。無くても可です。直下コンマが3以下で魔物や盗賊との戦闘になります。

この次は、グラウスの妻(鬼)の名前を募集する予定です。

蛙に追われたりして、どうにか荒地へと入った。

ここまで来れば、レステルはもうすぐそこだ。

「あと少しですね。ほらリーシュ、だらけてないで足を動かしてください」

「もうかれこれ一週間だよ。だらけもするよ」

「あの、あと少しですから」

「…しゃーないね」

リーシュが腰を上げたその時だった。

「きゃっ!?」

「…地震ですか」

「な、なんだよこれ!?地面が揺れる!?」

地震が発生し、大地が揺れる。

その揺れは凄まじく、そこかしこに亀裂が走っていく。

そして、その亀裂のうち一つが、貴女たちの真下を通った。

「あ、マズい」

亀裂が大きな口を開け、一行を飲み込む。

「っとぉ!」

「くぅっ!」

しかし、リーシュは足を壁に埋め込み、貴女は『月切』を抜刀し壁に突き立ててその場を凌ぐ。

「何なんだ今のは…。神の怒りか…?」

「さあ。それより、早く手を掴んでください」

「あ、ああ」

自然の力の偉大さを、改めて感じた二人だった。

グラウスの妻の名前を↓2にお願いします。

地割れから這い出て、他の亀裂に注意を払いながらレステルへと向かう。

「あ、キャラバンですね」

「へぇ。あんないっぱい馬車とかが連なってるのか」

別方向から、数十個の馬車が連なった旅団がやって来る。

彼らもレステルを目指しているのだろう。

「ちょうどいいや。あたしたちも乗せてもらおうぜ」

「ですね。交渉は私が請け負いましょう」

そう言って、セフィがキャラバンの中列に飛び、騎手と話をする。

驚いたような顔をした後、大笑いして頭を上下に振る騎手。

セフィが手をこまねいているので、許可は得たのだろう。

貴女たちがキャラバンに近づいていくと、そのうちの一台がこちらに寄って来る。

「お邪魔します」

「ついでだついで。そこでくつろいでな」

言葉に従い、壁に寄りかかって座る。

「…その鼠、グラトニアか」

「はい」

「よくも手懐けたもんだ。そいつは気性が荒くてな」

「えっと…。行商人の方から買ったんです」

「チチッ」

イートは、貴女の手のひらの上で寝転んでいる。

「…その行商人、普通じゃないな」

「え?」

「いや、何でもない。忘れてくれ」

騎手の言葉が気になったが、これ以上は教えそうにないので、貴女は諦めた。

レステル内に入り、キャラバンと別れる。

これから目指すのはグラウスの教会。

そこで落ち合う手はずだ。

「ここが貴女の故郷か。凄い活気だな」

「土地が貧しいことを考えると、ここまで繁栄出来たのは流石というか」

「貿易を中心にした国王たちは中々の慧眼で」

「…私はよく分からないですけど」

貴女がここに住んでいた時は物乞いだった。

国が豊かになった恩恵など、あるわけがなく。

「グラウスさんの教会は、この路地裏を進んで曲がったところです」

「…随分と辺鄙なところに建ってるんだね」

「スラム街の統括をしてるらしいので」

「あぁ…」

数週間も留守にしていたから、きっと家はもう他の誰かに占領されているだろう。

思い出のある場所だが、取られたのなら仕方ない。

その時は、教会で過ごせばいい。

愁いを帯びた瞳で前を向く貴女。

セフィたちは気にしながらも敢えて触れず、貴女について行く。

「あ、ライトが付いてる」

教会内からは、弱々しい光が漏れ出している。

となれば、グラウスがいると見て間違いないだろう。

三回ノックをして、ドアが開くのを待つ。

するとほどなくして、ゆっくりとドアが開かれる。

「お、客人か。ちょっと待って…って、おぉ!貴女じゃねえか。暫く見ないうちにいい顔つきになったなぁ」

「…どちら様でしょうか?」

おかしい。

こんな小さな子供が、グラウスの妻だっただろうか。

記憶では、明朗快活な大人のお姉さんだったはずだ。

もしや、所用の中で連れてきた女の子かもしれない。

幼女趣味はいけないと思うのです。

「…あぁ。この姿は初めてだったな。おかえりなさい、貴女。また会えて嬉しいわ」

「…え。えぇ…!?そ、その声…」

「そう、何を隠そう。俺がグラウスのたった一人にして最愛の妻、ソラさ」

ケラケラと笑う少女もといソラ。

俄かには信じ難いが、グラウスの妻であるのは確かなようだ。

「…立ち話もなんだ。セフィとリーシュだっけ?お前たちも入んな」

「失礼します」

「うーっす」

「ほれ、俺特製のカレーライスだ。好きなだけ喰え」

皿いっぱいに盛られたカレーライス。

香ばしいスパイスの香りが、食欲をそそる。

「ラウ、お前こんな可愛い女たちと旅してたんだな。浮気しちまったかぁ?」

ニヤニヤ笑いながら、鋭い爪になっている腕で小突くソラ。

「なわけないだろハニー。後にも先にも、俺が心から愛するのはハニーだけさ」

「ハハッ!嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。妻冥利に尽きるってもんだ」

傍目から見ても甘くて砂糖を吐きそうになる空間が広がる。

二人の時にやってもらいたい。

「…ああ、嬢ちゃん。急に旅を抜けて悪かったな」

「いえ…。事情は知りませんが、グラウスさんにとって大変なことがあったんだろうし、何も言えません」

「あー…。まぁ…な」

チラリとソラの方を見て、ばつが悪そうに頬を掻くグラウス。

どうやら、ソラ関係のことのようだ。

「…隠す必要はねえよ、グラウス。俺の失態で起きたことなんだ。伝えておけ」

「いいのか?」

「ああ。別に減るものじゃあねえだろ」

「…分かった」

グラウスは髪を掻き上げ、食卓の椅子に座る。

「…俺が抜けた理由は、ハニーが攫われたから、なんだ」

「ハニーから助けてほしいという手紙が来た時、そりゃもうはらわたが煮えくり返ってよ」

セフィはギュンデームでのことを思い出す。

――まあ、文の頭文字を読むだけの簡単な暗号でしたからね。すぐ分かりましたとも――。

「…だから、ハニーを助けるために、奴隷大国で戦争をしてたんだ」

「正直、何人殺したかは分からねえ。なるべく死なないようにはしたが」

「おい、別にグラウスは悪くねえだろ。俺だって殺してる」

表情が曇るグラウスと、険しい顔つきのソラ。

「…今更、だけどな。少年兵として散々殺してきたのによ」

初めて聞いた、グラウスの過去。

だが、これであの異常な強さも説明が付く、気がする。

「まあ…そういうことだ。次は孤島に向かうんだろ?これからはハニーも同行させる」

「おい。そんなホイホイ話を進めたら、皆がついていけないだろ」

「あぁ…。悪い」

全員の食指は完全に止まっている。

食事をしながら聞ける話でも無かったので、当然かもしれないが。

ソラ、グラウスに聞きたいことがあれば、↓2までどうぞ。

「あの…。姿が違うのは、どうしてなんですか?」

「ああ、それか。鬼っていうのは、昔は人に紛れて生活してたんだよ」

「その名残として、俺たち鬼は肉体をある程度作り変えることが出来るんだ」

肉体を作り変える。

つまり、その能力を使って姿を変えて、人のように振舞っていた、ということなのだろうか。

「これにゃあ魔力を使うんだが、魔法とかとは体系が違くてな。鬼以外では使えない」

「…凄い能力ですね」

「ハハッ。俺の能力はもう一つあるんだが。それは置いておこう」

「はいはーい質問いーですかー」

「なんだ、リーシュ」

手をぶらぶらさせてリーシュがアピールし、それを見てソラが発言を促す。

「何であんたが旅に同行するの?まだヤバいってこと?」

「…それは俺が説明する」

説明しようとしたソラを抑え、グラウスが身を乗り出す。

ソラは頬を膨らませ、グラウスにもたれ掛かる。

「…鬼ってのは結構閉鎖的な種族でな。数もかなり少ないんだ」

「だから、鬼は相当高額で取引される。いわば『金のなる木』なんだ」

「…この通り。変化してなければ、角が目立ってすぐに分かっちまう」

「成程。だから傍に置いておくことで守ろうってわけだ」

グラウスは頷き、酒を一杯飲む。

色からして、赤ワインのようだ。

「まぁ、そういうわけだ。お前たちは二階で寝てくれ」

「俺とグラウスは、隣の寝室で寝るんでな」

そう言って、二人は部屋へと入っていく。

「…私たちも、食事を済ませたら寝るとしましょう」

「…だな」

少し冷えてしまったが、カレーライスは今までで一番美味しかった。

「…なあ、起きてるか?」

「…ああ」

静寂と暗闇が広がる寝室。

少し大きめのベッドの中に二人はいる。

「ごめん」

「何で謝るんだよ…。ハニー」

「…俺が強けりゃ、お前を態々旅から連れ戻すこともなかった」

ソラの声色は、先ほどとは違い消え入りそうだ。

暗い表情のソラは、顔をグラウスの胸へと押し付ける。

「…大丈夫だ。何があっても、俺はハニーを守る。守り切ってみせる」

「俺の力は殺すためじゃない。大切な人たちを守るためにあるんだ」

グラウスははっきりと言い、ソラを優しく抱き締める

「ハッ…。ったく…。カッコつけてよぉ…」

そして、ソラは微笑み身を委ねる。

「…なぁ、今日もやるか」

「え…。嬢ちゃんたちが上にいるのに?」

ソラは腕から抜け出し、グラウスにキスをする。

「あいつらがいるから、だ。見せつけてやるんだよ」

「俺がグラウスを心から愛してることをな」

「そして」

もう一度、今度は長いディープキス。

「俺も、そろそろガキが欲しくてな。スイッチが入った以上、どうにかしないと、だろ?」

「…俺たちは種族が違う。だから、子供は非常に出来にくい」

「ハハッ!そんなの、愛の前では些細な問題だ!」

「…愛してくれるんだろ?グラウス。なら、それを態度で示してくれよ」

暗闇の中、ソラの目が紅く光る。

「参ったな…。そう言われたら断れない」

「ハハッ。今日もよろしく頼むぜ?あ・な・た♪」

夜は、まだ始まったばかり。

本日の更新はこれで終了です。次回は今の段階では未定です。再開出来る時に報告しようと思います。お疲れ様でした。


待ってます。
行商人は再登場するのかも?

>>658、シュレディンガーの行商人なので、どこかにいたりいなかったり。

突然ですが、本日の夜に再開したいと思います。

だいぶ遅くなってしまいましたが、今から再開です。

「ふわぁ…。うぅん…」

「おはよー貴女…。ダメだ、全然寝れてない…」

昨日は結局、下の部屋で何があったのかが気になって、一睡も出来なかった――。

――それは貴女だけで、リーシュは何が行われていたのかは知っており、その上で眠れなかった――。

「ったく…。あんなしゅきしゅき言うなよな…。こっちまで丸聞こえだよ…」

「…?リーシュさんは何をしてたのか分かるんです?」

「え!?あーいやその…。ちょっと分かんないかなー…?」

階段を降り、広間に出ると、既にソラとグラウスは起床していた。

「おはようさん。飯はもう出来上がってるぜ」

「おはよう…。うぷ…」

ツヤツヤなお肌をしたソラと、死んだ魚のような目をしたグラウス。

何があったのだろうか。

「グラウス。何回致しました?」

「…十回。俺もう四十なんだぜ…。死ぬ…」

「…お疲れ様」

「ハハッ。人間の底力はそんなもんじゃないだろうに」

「…こんなことで底力見せるのもどうかと思う」

「それは俺も同意見」

ソラはケラケラと笑っているが、本当にグラウスは大丈夫なのだろうか。

正直心配だ。

出発前に何かしたいこと、聞きたいことがあれば、直下にお願いします。無くても大丈夫です。

この後、目的地に向けて出発となります。

「あ、美味しい…」

「おっ、故郷のレシピに従って作ってみたんだが、貴女の舌には合うみたいだな」

「ん…。酒とかに合いそうだな」

貴女が食べているのは、酸っぱい液体が胡瓜と海藻にかかっている和え物だ。

「ちょっとだけ生姜とかを入れて味を調えてるんだ」

「へぇ…」

料理など全くしたことがない貴女には新鮮だ。

「あの、ソラさん」

「んー?」

「ソラさんを狙ってる商人たちって、どれくらいの規模なんですか?」

食器を洗っていたソラの手がピタリと止まる。

「…分からねぇ。俺自身、どこが欲しがってるのかなんて何も知らねえんだ」

「ただ、一つだけ言えるのは、俺の正体を知った輩が挙って捕まえに来ること…。だろ?ラウ」

「…ああ」

食器を拭き、体を伸ばすソラ。

「まぁ、どうにもならないことさね。俺に出来ることは、ただただ足掻くだけ」

そう言うソラの顔は、どこか悲し気で。

「…っし。食器も片付けたし、出発の準備といきますかね」

「ラウ、先に皆を連れて、埠頭でチケットを買っといてくれ」

「…構わないが、一人は護衛を付けておくぞ」

「ハハッ!俺だって、それなりには戦れるさ。信じてくれよ」

「…。待ってるからな…」

「おう」

静かに部屋を出たグラウス。

慌てて、貴女たちも後を追う。

一人ぼっちになった広間で、ソラは笑う。

「気持ちは嬉しいが、俺に付いてばかりじゃダメだろうよ。ラウ」

「…俺は鬼で、お前は人間。決して相容れない種族なんだ」

嘗て、鬼は人を喰らい生きていた。

遠い昔のことだが、それは確執として残っている。

だが、それを越え、二人は結ばれた。

「『過去を乗り越え、未来へと進む』か。分かっちゃいるが、どうにも上手くいかねえもんだな」

「…心の奥底、先祖の記憶が怯えているのかねえ。人間の裏切りを」

前髪を角の外へ流し、視界を良くさせる。

「…かと言って、突き放すのは夫婦としてダメだよな。クソ」

――俺は未熟だな。鬼として、妻として。

戒めを込めた一撃を、右頬へと放った。

「グラウスさん…」

無言で、海を眺めるグラウス。

その心中は、貴女たちには計ることは出来ない。

「悪ぃ。待たせちまったか」

明るい声でソラが後ろから近づく。

やはり、この姿だと夫婦には到底見えない。

いいとこ、歳の離れた子供と父親くらいだ。

「…いや、まだ時間はある。大丈夫だ」

「ん。じゃあ乗ろうぜ。最近の船には乗ったことねえから楽しみなんだ」

小走りで船に乗り込むソラは、可愛らしくて。

貴女は思わず見とれていたが、周りの人たちも同様に、ソラに視線が釘付けになっていた。

「ソラさんって、結婚する前は何してたんだ?」

「何って言われてもだな。結婚前は故郷にいたり、ラウと旅したりだ」

「出会った時って何歳?」

「二、三歳」

「は?」

「どした?」

聞き間違いだと信じ、リーシュは再度尋ねる。

「十二、三歳だよね?聞き間違いかと思ったよ」

「んにゃ、二、三歳の時に旅に出たんだ」

「………」

ロリコンでしたか、この神父。

「待て嬢ちゃんたち。鬼の年齢を人間と同じように考えたらダメだ」

「鬼の自我の確立は早いけど、それを考えても早すぎではあるがな」

「ハニィィィィィィ!?」

「リーシュさん、レッツゴーです」

「へいお待ち」

「何でだァァァァ!」

出発を告げる汽笛のように、拳骨の音が海に響いた。

移動中のイベント一回目です。直下にお願いします(現在船上)。直下コンマが3以下だと、海賊、魔物等に襲撃されます。

船を四回乗り換える(五回船に乗る)ため、この判定は合計で五回行います。

コンマ判定ではなくどんなイベントがあるかということか
ごめんなさい

霧と岩礁に出くわす

「綺麗な海ですね…」

視界に広がる海は、透き通るような青色へと変わり、島々を囲む砂浜は、真珠を思わせる白色だ。

「リゾート地にもなってるところだからなぁ。遊んだことは無いけど」

グラウスの頭部には、大きなたんこぶが。

魔法か何かで凍っているので、大丈夫なのだろう。

『お客様方にご連絡を申し上げます。これから先、岩礁地帯を通りますので、船内に避難してください。繰り返します…』

アナウンスを聞き船首方向を見てみると、海上にせり出した無数の岩礁が。

ここを通過するしかないのだろうか。

「海流の影響で、外側を使うのは無理なんだよ」

「だから、多少危険でもここを通るしかない」

「しかし…」

ソラの言葉を待っていたように、視界が悪くなる。

『現在、霧による視界不良のため、航行速度を減速しております。ご了承くださいませ』

「不味いな、ハニー」

「ああ」

顔を見合わせ、武器を構えるグラウスと、首を鳴らすソラ。

「何がマズいんですか?」

「いやな。岩礁地帯で霧による視界不良。魔物が出てくる条件が揃ってるわけよ」

「出てくるとしたらアレか。リヴァイアサンとかクラーケン。テュポーンとかか?」

「いや…。もしかしたらアレが来るかもしれない」

「…ああ。アレか」

二人で会話が完結していて、貴女は理解出来ない。

「アレって何ですか?」

二人は一呼吸置いて、口を揃える。

「「幽霊船」」

「へ…?」

幽霊ならまだしも、幽霊船。

貴女の知識に、そんなものはありはしない。

未知の恐怖が、貴女に近づく。

>>671、コンマ判定と安価を同時に行う、という意味です。説明不足ですみません…。

直下コンマが3以下で魔物との戦闘、0で幽霊船と出会います。これは特殊判定なので、前のレスの回数には含まれません。

魔物との戦闘が確定しましたところで、今回はこれで終了です。次回予定は本日の昼、もしくは夕方です。

どの魔物と戦うかは次回開始時に決めます。皆さん、突然の再開でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。

また夜遅くなってしまいましたが、今から再開です。魔物設定は直下コンマで決めたいと思いますが、皆さんが考えたものでも大丈夫です。

コンマ判定ですが、魔物の特徴が書かれていたら、そちらを優先します。

1~3:リヴァイアサン(難易度:難)
4~6:クラーケン(難易度:普)
7~9:テュポーン(難易度:易)

0出た…。アカン。エクストラバトル発生となります。死ぬ可能性はあるかもしれない。少々お待ちください。

船速が遅くなって数分。

乗客たちに異変が生じる。

「熱い…。熱い…!」

大量の汗を流しながら横たわる乗客たち。

「大丈夫ですか!?えっと…水魔法ってどうやって唱えるんだろう…」

「元気な奴は、上に駄目な奴も連れていけ。このままじゃ不味い」

「だな。ラウ、こりゃ只事じゃあねえな」

ひょいひょいと人を抱えていくグラウスとソラ。

その目は真剣そのもので、こちらの気も引き締まる。

「とりあえず、氷塊を二つ作っておく。適宜破壊して、体を冷やしておいてくれ」

グラウスはそう言った後、剣を召喚して甲板へと移動する。

後を追い貴女たちも甲板に降りると、周囲の状況は更に変化していた。

「参ったな。霧かと思ったが、これは全部蒸気だったか」

海水が沸騰し、蒸気が周囲を包む。

このままでは、この船も保たないだろう。

「…この魔力。まさかなぁ」

汗でべたついた前髪を掻き上げ、剣を構えるグラウス。

それに釣られ、セフィ、ソラ、リーシュの三人も臨戦態勢に入る。

「貴女、もう気付いたはずでしょう」

セフィの言葉を聞き、精神を集中させる。

刹那、空へと巨大な水柱が立った。

「…ハハハハ。ウッソだろオイ。嫌だぜ俺」

グラウスは焦りを含んだ笑みを浮かべる。

「お久しぶりです。私たちを憶えていますかね?」

セフィの声色は、言葉よりも冷淡で。

「…フン。我は汝らのことなど知らぬよ。…ああ、知らぬさ」

水柱の頂点には、見知った顔の青年が。

「…!あなたは…!」

声を張り上げる貴女を、青年はチラリと一瞥する。

「…汝は。ああ、憶えて…うん?何故だ、記憶がどうにも混濁している」

青年は頭を押さえ、ブツブツと呟く。

「…まぁいいや。どんな理由があろうと、お前さんが嬢ちゃんの恩人だろうと、危害を加えてくるなら殺すしかねえ」

グラウスの剣は水を纏い、面積を増やしていく。

「あーあー…。炎使いとか勘弁してくれよ。俺の能力じゃ分が悪いじゃねえか」

ペロリと指を舐め、ソラは指を鳴らす。

すると、手の甲から血液が噴出し、右手に集う。

集まった血液は形を変え、赤黒い一本の刀となった。

「誰かは知らないが、ラウが敵と見てるなら俺にとっても敵だ。ここで死んでもらう」

「やれやれ。血気盛んなことだ」

頭に当てていた手を振り払い、青年は船を見下ろす。

そして、燃え上がる炎が船の周りを包む。

「何故かは知らんが、汝たちをここで殺めねばならない。我の心がそう告げている」

「…どうして。どうして!あなたと殺し合わないといけないんですか!?」

涙を浮かべ、鞘から『月切』を抜く。

「さて。そういう世界に産まれたが故なのだろう」

「そんな世界じゃ…。世界は!そんなものじゃないでしょう!」

「我を否定するか。人の下らん願望で生み出された我を」

碧眼が見るは、少女の心。

その揺れる心は、ひたすらに叫ぶ。

――戦う必要は無いはずなのに、どうして――!?

勝利条件:???の撃退、もしくは浄化

敗北条件:貴女の死亡、もしくは仲間の全滅

今回の判定もナバリーヒルズ戦と同じです。判定成功後、特殊コンマ判定を挟みます。

直下コンマ判定

1:ファンブル
2~5:失敗
6~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

いまやるのか

青年の掌から、業火が放たれる。

「くぅ…あぁぁあ!」

エウルスでそれを防ぐが、隙間から漏れ出す炎が、貴女の皮膚を焦がす。

しかし、聖盾の名を冠するだけはあり、焦げた部分から瞬時に再生する。

「っし、動くなよ女男!」

青年の上に移動したソラは、血刀を青年に向け振り下ろす。

「汝は男女だろうに」

血刀が青年に触れる前に、炎が青年を包む。

先端から蒸発していくのを見てソラは舌打ちし、船に戻る。

「クソ、だから炎関係とは相性が悪いんだ!」

「ハニーは下がってな!」

入れ替わりにグラウスが接近し、水を纏った剣で数回切り込む。

しかし、それも蒸発させることで防御。

「蒸気だって水なんだ。凍らせることくらい造作もないんだぜ!」

クルリと一回転して剣を船に投げた後、グラウスは両手を前に翳す。

「身体の芯まで凍っちまいなぁ!」

そして、自分と周りの水蒸気を含めて氷結させた。

「ほー。結構やるんだな、グラウスって」

「当たり前だ。俺の夫だぜ」

グラウスは剣の元に瞬間移動し、氷塊から抜け出す。

直後に氷塊全体に亀裂が走り、青年が氷塊を吹き飛ばす。

「頭が冷えた。感謝するぞ」

「どーも。なら大人しく眠ってもらいたいもんだ」

青年は炎を集め、火球を生み出す。

対するグラウスは水球を、セフィは光弾を生み出していた。

>>684、特殊判定が出たので仕方ないのです…。

直下コンマ判定

1:ファンブル
2~5:失敗
6~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

「フッ!」

「チェストォォォォ!」

「ハッ」

火球と水球、光弾はせめぎ合い、小さな破片となって飛び散った。

その破片が着弾した岩礁、海面は吹き飛び、大穴が空く。

「そぉら!」

一時後退した青年の背後から、リーシュの鋭い回し蹴りが迫る。

炎と化した右腕でそれを掴み、左の拳を叩き込む。

だが、リーシュも負けじと拳を掴み、握り潰そうとする。

「チッ、何故我に触れても焼けんのだ…」

左手を炎に変えて距離を取り、忌々しげに青年は吐き捨てる。

リーシュは知らん顔をしながら、更に接近戦を始めようとする。

「ええい!しつこい女よな!」

リーシュの右ストレートを下に潜り込んで躱し、リーシュの上部の炎を変化させる。

一本の槍になった炎は、的確にリーシュの心臓を狙う。

が、それにリーシュが当たるわけがなく、回り込んで肘を顔面にぶち込んだ。

「危ういな…。変化させるのが遅れていたら、頭が弾けていた」

ギリギリのところで炎に変え、何とか青年は難を逃れる。

「あーもう…!なんで当たらないんだよ!」

「いや、殴り合えてる時点で相当おかしいからな?リーシュ」

「…戦い慣れてますね。それだけ、強力な人が生贄にされたわけですが」

貴女の『月切』が魔力を帯びる。

――少しだけでも、隙を作れたらそれでいい――。

力いっぱい、貴女は『月切』を振り抜いた。

この判定に失敗すると、自動的に戦闘が終了します。

直下コンマ判定

1:ファンブル
2~5:失敗
6~8:成功
9:クリティカル
0:特殊判定

成功したので、特殊コンマ判定に入ります。直下です。

1~3:撤退していった(戦闘終了)
4~6:ダメージを与えた(判定が有利に)
7~9:隙を作った。貴女のアタックチャンス(再度判定。成功するとエンディングへ)
0:勢い余ってゴートゥヘヴン(エンディングへ)

「なっ!?」

船よりも大きな魔力刃が、真っ直ぐ青年に向かう。

予想以上の一撃に気を取られ、防御が遅れる。

「ぐうぅぅ!」

右腕が落ち、直撃によってバランスを崩し、船へと落下する。

「よし、捕まえたぜ」

「ハニー。ヤバくなったら離れろよ!」

墜ちる青年を、ソラとグラウスはガッチリと掴む。

身動きが取れない青年はもがき、炎を噴き出す。

「…今だな」

「しまっ…」

引き剥がすことに集中していた青年は、甲板が目の前に近づいていたことに気付かず、墜落する。

「くぅっ…」

即座に態勢を整え、バックステップ。

しかし、貴女はそれよりも早く青年に飛びついた。

「…!?よせ!焼け死ぬぞ!」

「嫌です!」

全身の炎で身を焦がす貴女。

それでも、手を離さない。

「あなただって、本当は戦いたくないはずなんです!」

「だから、絶対に離さない!」

「泣いているのは、辛いって叫んでいるのは、あなたの心の方なんだ!」

涙で潤んだ瞳が、真っ直ぐに青年を見つめる。

「やめろ。その目で我を見るな」

「見ないでくれ…!」

少女の想いが、亡者の魂を揺さぶる。

――届いて、この想い。お願いだから――!

直下コンマ判定

1、2:成功せず。戦闘終了。
3~0:成功。魂は安らかな眠りに付く。

炎の勢いが強まる。

まるで、自分の心を拒むように。

それでも、貴女は抱き締め続ける。

自分が手を離したら、彼は本当に一人になってしまうから。

だから。

焦げて、癒えて、そしてまた焦げる。

何度も繰り返されたそれに、貴女の心は負けなかった。

――ああ、そうか。我は、私は――。

目を開けると、優しく微笑んでいる貴女が。

――大丈夫です。私はここにいますから。あなたを決して、離さないから――。

「くくっ…。はははははは…」

――我の負けだ。強き少女よ――。

炎が消えた。

先ほどまで燃え盛っていた炎は、まるで嘘だったかのように姿を消したのだ。

「ん…。う…」

炎が消え、エウルスの加護によって肉体が癒える。

ゆっくり目を開けると、光に消えていく青年が。

「…ずっと、伝えたかったんです。ありがとう…って」

貴女の口から、ポツリと言葉が零れる。

「あの時、あなたに救われたこと。それは、今まで忘れたことがなかったから」

「あなたがいなければ、私が笑うことはきっと無かったから」

「ふん…。礼なら、そこの神父に言え。我は手を貸したに過ぎぬ」

「…馬鹿が。お前さんがいなけりゃ、嬢ちゃんはダメだった」

「嬢ちゃんの、お前さんの力だ。誇れよ」

グラウスの言葉を聞き、青年は苦笑する。

「…では、謹んで受け入れるとしよう」

青年は足に目を向ける。

既に光に消え、腰まで光が近づいていた。

「…我は、残せたか?」

「はい。あなたの想いは、私の心に残っています」

――ただ、助けたかった――。

自分のように、奪われるだけの人を。

――ただ、壊したかった――。

理不尽に命を奪う、愚かな世界を。

――本当は――。

意識が朦朧とし、視界が霞む。

「時間…か。よく生きた方だろうな…」

「少女よ。最後に伝えておく」

「…はい。どうぞ」

青年は笑う。

まるで、少女のように。

「私の…名は…」

そこで、青年は光と消えた。

「…はい。確かに受け取りました」

目尻の涙を拭い、貴女は立ち上がる。

「…嬢ちゃん」

ゆっくり手を伸ばすグラウス。

それは、静かに添えられた手で静止する。

「大丈夫です。グラウスさん」

「…ッ」

「私はもう泣きませんから」

「泣いたら、レアーナさんたちに申し訳ないですから」

「そう…だな…」

グラウスは手を下ろし、乗員たちに船を動かすように指示を出す。

――そんな顔をしながら言うなよ。説得力が無いじゃねえか――。

貴女の手は、声は、震えていた。

そして、その目は真っ直ぐと、太陽に向けられていた。

少女たちの旅は続く。

世界を知るために。

そして。

少しでも、誰かの力になるために。

数十年後


「ふう…。飯はこんくらいでいいか」

鍋にたっぷり入った肉と野菜。

じっくりコトコト煮られたそれは、香ばしい匂いを放っている。

「おーい。カガリ、ヒナ。飯の時間だぞー」

「はい、母上。今行きます」

「お母様、本日の収穫は飛龍五頭ですよ」

「おお…。そりゃ凄いな…」

獲物を抱える少年と少女。

少年は金色の髪と、紅い瞳を。

少女は水色の髪と、紺の瞳を。

僅かに突き出た角を、帽子で隠して。

優しく微笑む母の声に、心を昂らせる。

「ったく…。まだちっこいのにお強いことで。強さは親父譲りなのかねぇ」

髪を解き、胸元のペンダントを撫でる。

「見てるのか、俺を。悪いが、まだまだそっちに行くには時間が掛かる」

「先に、あいつらが行くだろうからよ。そっちを見てあげてやりな」

満天の星空を見上げ、少女は笑った。

「ええ。はい。難民用の食料手配は済んでいます。ヴァルキュリア第二隊が向かってますので、そちらから」

荘厳な神殿の中で、天使が答える。

「…どうして、手を差し伸べるのか、ですか」

後輩の天使が問う。

四枚羽根の天使は微笑し、下の世界を眺める。

「まあ、色々とあったんですよ。私にも」

「…新たな司令が下りました。救いましょうか。悪魔の魂を」

異界の門を開き、天使たちは飛び立つ。

下の世界では、荒野の中に光が点在している。

異界の瘴気から身を守りながら、天使は光弾を撃ち出す。

雨のように降るそれは、黒い森へと突き進む。

「…貴女は今も、戦っておられるのでしょう」

悪魔の構える鎌を、光剣で打ち払う。

「ならば私も、戦いましょう」

「天使セフィ。いざ、参ります」

輝きが、魔界の空を照らした。

「おいおい、はしゃぐな坊主共。飯はちゃんと全員分あるから」

「…はぁ…。ホントに元気だなぁ。あたしはもう腰が痛いよ」

空になった寸胴を外し、椅子に座る。

ラム酒を一息に飲み干し、瓶を机に置く。

「まったく。あいつらに付き合えるなんてな。貴女は凄いよ。いや、真面目に」

「いえ。あの子たちと一緒にいたら、私まで元気を貰っちゃうので」

「はは。それは凄い」

難民キャンプに笑い声がこだまする。

本来ならば、悲しむ人で溢れかえっている場所。

それが、安らぎの場所と化していた。

「…でさ、良かったの?結婚しなくて」

「…こんなことをしてるのに、付き合わせたら悪いですから」

「かぁ~…。孫の顔が見られないのって、辛いんだよ?」

「あたしは、週に一回しか見られないあの子の顔が生きがいだってのに」

「ふふ、可愛いですからね。私も楽しみにしてますよ」

カップに注がれた紅茶に口を付け、腰を上げる。

「さあ、もうひと頑張りしましょうか。また盗賊が近づいているらしいですし」

「だね。何度ボコボコにしても来るんだからなぁ。その熱意を他のに向けたらいいのに」

剣と盾を手に取り、森林に向けて二人は走る。

「リーシュさん、あまり怪我させないでくださいね」

「分かってるよ。傷を治すのは貴女の仕事だからね」

貴女は今も、戦い続ける。

あの人の想いを、絶やさないために。


第二周目 Good End 想いを紡いで

以上で二周目終了となります。あ、龍の卵と封精晶さんは…(目を逸らす)。次回更新は三周目メイクからです。

貴方に名前を付けた方がいいんですかね。終了後とかに。そうしたらゲスト出演とか出来るのかな。

本日の夕方からメイキングに入ると思います。皆さん、お疲れ様でした。

大まかな順番は舞台設定→キャラ設定です。階級一覧は>>258をご覧ください。概要安価は三つ取る予定です。性格、外見、来歴、何でもどうぞ。

従者、人数の判定一覧は>>278をご覧ください。


☆細かい設定の順番

・舞台設定

年代設定→場所設定

・キャラ設定

性別安価→階級コンマ判定→職業安価→一般人以下は1、貴族以上は2に飛ぶ。

1→概要安価→戦闘力コンマ判定→目的安価(無くてもOK)→年齢安価→★→終了

2→年齢安価まで同じ→従者の人数コンマ判定→概要安価→戦闘力コンマ判定→年齢安価→(まだ残っている場合は概要からもう一度)→★

→概要安価→戦闘力コンマ判定→年齢安価→終了

★ 仲間の人数コンマ判定→職業安価→概要安価→戦闘力コンマ判定→年齢安価→(まだ残っている場合は職業からもう一度)→戻る

本日の16時より、メイキングを開始したいと思います。

少し訂正がありまして、貴方以外のキャラ設定時は、年齢の前に名前安価が入ります。

それでは、メイキングに入りたいと思います。

↓2に、今回の舞台の年代をお願いします。第何周から何年前などと書いていただけたら助かります。

1周目直後なら、レステルと西中島南方の治安は酷いことになっております。

開始地点を直下にお願いします。

2周目直後は、1周目開始10年前ほどとなっております。もう一度直下で募集です。

町というか、草原とかの広い場所にポツンと建ってる一軒家のイメージで書いたんですよね。…まぁ、それは後々決めるとして。

次は貴方の性別です。直下でお願いします。

勘違いすみませんでした…安価下

>>715、あくまでイメージですので大丈夫です。

次に階級判定です。直下コンマで判定を行います。

どうやら普通の一般人のようです。職業を↓2にお願いします。

次は概要です。容姿、来歴、性格、好きなものを↓3まで募集します。

なんというか、使用人らしい貴方ですね。ふむ…。次は戦闘力です。直下コンマで判定します。

うーん弱い。これでは民間人にボコられてしまいますね。次は目的です。

基本、この目的を達成するために行動を行います。ですが、最初から決まってないといけないわけではありません。

日常を満喫するなかで見つけるのも、最初から決めておくのも自由です。↓2でお願いします。

子供の世話ですか。後ほど設定するものがいくつか増えましたね。次は年齢を直下でお願いします。

21で童顔小柄となると、14、5歳ほどに見えるのでしょうかね。

次は友人等の判定です。直下コンマで判定です。

性格上居るはず

>>736、確定してい分を除いて、です。言葉たらずでした。

確定分以外の2人のうち、1人の職業を直下にお願いします。

騎士さんですか。今回の貴方はひ弱なので必要かもですね。

貴方以外は種族安価取るの忘れてた…。直下に騎士の種族をお願いします。

この人を除いてあと三人作る必要があるので、まだ時間が掛かりますね…。

次は概要です。↓3まで自由にどうぞ。

お次は、戦士にとって最重要ともいえる戦闘力判定です。直下コンマ判定です。

平均的な戦闘力だぁ…。いかん、性別も忘れてた…。グダグダで申し訳ありません。直下に性別をお願いします。

男騎士の名前を直下にお願いします。

次はゼルディさんの年齢を直下にお願いします。

次は、二人目の設定に入ります。二人目の仲間の職業を直下でお願いします。

商人さんの種族を直下にお願いします。

亜人(猫)と言うと、ワーキャットみたいなものですかね。次は性別を直下でお願いします。

男性商人みたいですね。次は概要を↓3までで募集します。

次は商人の戦闘力判定です。必要ないかもですが、買い出し中に襲われたりするかもですので一応。直下コンマ判定です。

あら^~。人類悪顕現レベルの超危険物ですねぇ…。特殊能力解放です。↓2までの能力を保有します。

思うんだが戦闘力判定は最初にしてみては?
そうすれば性格とか職業とか違和感なく決めれるだろうし

どうして、戦闘力が必要ないキャラが化け物になってしまうのか。不思議でならない。

チート商人の名前を直下で募集します。

>>769、そうですね。次からそうしてみます。次は年齢です。直下でお願いします。

今から貴方が使える主人の設定に入ります。戦闘力を直下コンマで判定します。種族も直下で決めたいと思います。

あらお強い。貴族組で一番ですね。性別を直下にお願いします。

お嬢様の概要を↓3までで募集します。

あれ、これってステラ家のお方…。直下に名前をお願いします。

次にイレーナさんの年齢を直下で募集します。あと奴隷の子供と、少しだけ場所を設定したら終わります。

アーバンとは結構歳が離れているようです。次は奴隷の設定です。戦闘には参加出来ないので、種族のみを直下で決めます。

子供の堕天使…。コンマからしてヤバみしかないんですよね(取ってないけど)。性別を直下にお願いします。

次は概要です。↓3まで募集します。あと何個か決めたら終わるはず。

うーん闇深案件。堕天使ちゃんの名前を直下で募集します。子供なので、年齢は十四歳以下となります。

最後に場所の設定です。ギュンデームを舞台として使うことが出来ますが、その場合はギュンデーム周辺の状況が大きく変わります。

↓2までに、場所の特徴をお願いします。ギュンデームを使うなら、ギュンデームとだけ書いていただけたら大丈夫です。

ステラ家血縁者のため、場所はハイランディア領内に固定されます。

これで設定は終了しました。少々お待ちください。ソラ一家の家はギュンデーム郊外に建っております。

チャポン。

何かが水に落ちる音が聞こえた。

いや、落ちたのは自分自身だ。

自分が落ちたのだと気付けた。

「ここ…は…」

目を開けるが、その目には何も映されない。

水が触れている感覚はあるのに、水中にいる実感が湧かない。

――助けて…ください…――。

「…ッ!?」

声が聞こえた気がした。

聞こえた方向に振り返ると、小さな光が遠くで漂っている。

「届く…か…?」

手を伸ばしてみるが、届く気配は無く。

身体を折り曲げ、ドルフィンキックを行い、光に向かう。

徐々に光は大きくなり、あと少しで届くところまで。

手を翳した刹那、光は闇に染まった。

――貴方は今、禁忌に触れた――。

――堕天使を殺せ。さもなくば、貴方の未来は暗黒に染まる――。

感情を含まない冷淡な声が、頭に響いた。

そして、意識も闇に溶けていった。

「…ハッ!?」

目を開くと、そこにはいつもの天井が。

隣の窓から入って来た小鳥は、皿の穀物を啄んでいる。

チチッと一回鳴いて、空に飛んでいく小鳥を見送り、手を見つめる。

寝汗によるものなのか、少しべたついている以外は普段と変わらない。

「…夢?だとしたら、あの声はいったい…」

脳内でリフレインされる言葉。

頭を押さえながら時計を覗くと、針は十時を指していた。

「…いけない。今日はイレーナ様が帰ってくる日だ」

シャツに袖を通し、パンを一切れだけ腹に入れる。

「行ってきます」

そして、誰もいない家に声を掛け、町に向かって駆け出した。

もうすぐ昼になるからか、猟師たちは町唯一の食堂にたむろしている。

「おはよう、今日は安い果物を仕入れてきたよ」

「いえ、まだ買いに来たわけではないので。自分は早く屋敷に行かないと…」

「ハハハ。その様子じゃ何も食べてないみたいだな。ほら、剥きたてのリンゴ。お得意様へのサービスだ」

「…では、一つだけ。…うん、美味しいですよ。チャーリーさん」

「そいつぁどうも~。それじゃ、イレーナさんに口聞いといてよ」

「無理です。何をされるか分からないので」

「ハハハ」

商人、チャーリーの猫耳がピコピコと跳ねる。

さっさと行けとジェスチャーしているようだ。

ペコリと一礼し、貴方は屋敷に向けて歩を進める。

「…また、あの商人と話をしたのか」

銀色の鎧に身を包んだ騎士、ゼルディがぼそりと呟く。

「悪人ではないので」

貴方は短く返し、門を開ける。

ゼルディの過去は知っている。

なので、獣人を見て不快感を抱く気持ちも分かる。

だからと言って、こちらも態度を変える気は無いが。

「…まあ、私が勝手に身構えているだけだ。気を悪くしたなら謝ろう」

「いえ。もし謝るのであれば、彼に」

「…ああ」

淡々とした会話。

しかし、ゼルディの目はどこか虚ろだった。

「…よし。埃はこれで全て除去出来た」

埃取りを本棚から引き抜き、掃除用具入れのフックに掛ける。

換気のために窓を開けると、蹄の音が響いてくる。

「帰って来たか。…ん、見かけない子がいる。養子縁組でもしたのか?」

疑問を胸に、貴方は主人を迎えに出る。

「おかえりなさいませ。荷物は自分がお受け取りいたします」

「頼むわ。貴方、いつもお勤めご苦労様」

「滅相もございません」

深々としたお辞儀で、遠慮の意を示す。

「………」

怯えた目でこちらを覗く、黒髪の少女。

服で隠れているが、頬や鎖骨の皮膚から、全身に火傷痕があるのが見受けられる。

「イレーナ様。中にお入りください」

扉を開け、中に入るように促す。

「ええ。それと貴方、新しい命令を出します」

「はい。何なりとお申し付けください」

扉の前で止まったイレーナは、顔をこちらに向ける。

姿勢を正し、貴方は身体をイレーナの正面に向ける。

「この娘は、私が買ってきた奴隷です。彼女の世話を任せました」

それだけ言って、イレーナは屋敷内に入っていく。

「かしこまりました」

一礼をして見送った後、貴方は少女に身体を向ける。

「これより、あなたの世話をさせていただく貴方と申します。以後、お見知りおきを」

「ひぅ…」

お辞儀をしただけなのに、少女は涙を浮かべて身体を震わせる。

――警戒されてるか。だが、イレーナ様からの命令だ。やるしかないな――。

目と目が合ったその瞬間。

貴方の脳内に声が響く。

――殺せ。その少女を。堕天使を殺すのだ――。

「づぅ…!」

頭が割れたような痛みに、貴方は膝をつく。

滲む視界に映る少女は、儚くも美しかった。

今回はこれで終了です。次回開始時は、もう少し進めた後に行動安価を出す予定となります。

次回はいつになるかは分かりません。分かり次第連絡します。皆さん、お疲れ様でした。


☆こそこそ小話

この世界はパワーバランスはちゃんと釣り合っているので、滅ぶことはありません。人類はゴキブリのようにしぶといのだ。

アンジェちゃんのコンマは取っていませんが、種族決定時に00を引いちゃっているところから察してください。

世界を取るか、幼女を取るか。心に従え。

更新は来週に出来ると思います。それと、1周目貴方と2周目貴女のお名前を決めたいと思います。

そろそろ付けないと、出てきた時に混同しかねないので…。1周目は↓1、2周目は↓2でお願いします。

明日の昼から再開する予定です。間に合えば、番外編を2つ投下したいと思います。

内容はアレです。アレ。世間が浮かれてるアレでございます。

急に仕事が入ったので、本日の更新は無理そうです。報告が遅れて申し訳ありませんでした。

上手く予定が取れたので、本日の昼頃から更新を開始します。

それに伴い今まで安価で設定、若しくはこちらで設定していた所謂モブキャラを、募集したいと思います。

絶対に出せる、と言い切ることは出来ませんが、気軽に案を出していただけたらありがたいです。

下に書いてあるものを使っても構いません。戦闘力はそのレスのコンマで決まります。


【Name(名前)】

【Gender(性別)】

【Race(種族)】

【Age(年齢)】

【Job(職業)】

【Career(来歴)】…そのキャラクターがどういうものか、どんな経験をしてきたのか、等々自由にどうぞ。

【Name(名前)】 シンスゴ

【Gender(性別)】 女

【Race(種族)】 朝鮮人

【Age(年齢)】 59

【Job(職業)】 左翼活動家

【Career(来歴)】気違い言動多し

【Name(名前)】 ラム

【Gender(性別)】 女

【Race(種族)】 兎人

【Age(年齢)】 25

【Job(職業)】 傭兵

【Career(来歴)】 元々強い聴覚を武器にした狩人だったが、弓術の腕を買われて傭兵に雇われる

【Name(名前)】ミレイナ

【Gender(性別)】女

【Race(種族)】エルフ

【Age(年齢)】500(人間換算20)

【Job(職業)】狩人

【Career(来歴)】とあるエルフの集落が存在する森を外敵・侵入者から守る自警団の一員
自然を不必要に破壊するものには敵対的だが、そうでない者には基本的に友好的
ちょろい

気が付いたらこんな時間になっていました…。布団に入って寝てからの記憶が無い…。

とにかく、更新を再開します。時間通りに始められなくて大変申し訳ございません。

天界の片隅、談話室に天使たちが集う。

「で、セフィ。急に呼び出して何があった?」

「ラフィール、それを今から話すのだから。黙りなさい」

「チッ、私だって暇人じゃない。エクシアとは違うんだ」

「ハァ。僕だって忙しいのに。それよりセフィ、身体は大丈夫?」

青い翼を生やすラフィールと、機械のような翼を持つエクシアが一人の天使を見る。

「まさか。内臓を殆ど損失したんです。修復している最中ですよ」

管を背中から数本差し込んでいるセフィは、瞼を閉じたまま答える。

「しかし、あなたがそんな怪我をするなんて。悪魔相手じゃあないでしょう?流石に」

「ええ。悪魔よりも質が悪いですね。何せ、堕天使にやられましたから」

「…堕天使?報告じゃあ『断罪の焔』で焼き払ったって言ってたが…」

「…私はそれを確認していました。ですが、姿が消えたと同時に、聖罰塔と監視塔が破壊されました」

「…?それが原因でお前は負傷したのか」

セフィは首を振って肯定の意を示す。

「おそらくは。危険な存在なので急いで殺さねば、世界すらも破壊されかねません」

「分かったよ。私がそいつを仕留める。場所は…不明だろ、どうせ」

「そうみたい。僕たちも本気で取り掛からないと、セフィの二の舞になりそう」

「…今の彼女がどういう姿をしているのか分かりません。気を付けて」

「「ああ(分かった)」」

人間界へ飛び立った天使を確認し、セフィは病室に戻る。

――パンドラの箱を開けてしまったのかもしれませんね。私たちは――。

見上げた空は、非情なまでに煌いて。

二対の翼は焼け焦げ、惨たらしく千切られていた。

魔界の北部に聳える巨大な城。

その玉座に座しているのは、北の魔王。

「へぇ…。堕天使はレステルからギュンデームに渡ったようですね」

クイッ、と血のように紅いワインに口を付ける。

彼女の髪も炎のように紅く、また、闇のように淀んでいる。

「さてさて、どうやって摘み取りましょう。我々は人間界に出られませんからね」

異界の門を開くが、手で触れると弾かれてしまう。

「…我々は鳥のようなもの。魔界という籠に閉じ込められた、哀れな存在」

「そんな我々が籠から飛び出そうとするのが、どうしていけないのでしょうか。分かりませんね」

湛えた微笑は邪悪に染まり、瞳は妖しく光る。

「イラトゥスがテレパシーを試みたようですが、おそらくそれも失敗。となると…」

玉座に立て掛けた槍を手に、翼を広げる。

「侵略あるのみ、です。ヒトが守る扉を開き、世界を魔族の手中に収めましょう」

「…全ては、魔族の求めた自由のために」

世界の中で思惑は蠢く。

その先にあるのは希望か、絶望か。

突然の頭痛で意識を失った貴方は、程なくして目を覚ます。

玄関前で倒れたはずだが、今自分がいるのは個室のベッド。

不思議に思い辺りを見回す。

そこには、騎士ゼルディと少女が佇んでいた。

「ご…ごめん…なさい…。わ、私のせいで…」

「…頭痛の原因が、お嬢様にあるのですか?」

彼女の正体は分かっているが、それを知られることを本人は望んでいない。

であるならば、普通の人間という体で進めていく方がいいだろう。

「実は最近、少々忙しかったので疲れが溜まっていたのです」

「おそらく、それが原因で気絶したのでしょう。お嬢様は何かしたわけではありませんよ」

「あ…。そう…ですよね…。私は貴方様に触れてませんから…」

隠す気があるのか疑問に思うが、敢えてそこはスルーする。

「…さて、お前も起きたことだし、私は警備に戻るとしよう」

「アンジェ様のことはお前に任せる。ではな」

そんな言葉を残して、騎士は去っていった。

静かになった部屋には、少女と青年の二人きり。

「あ…その…私の名前は…」

「アンジェ様、で合っていますよね?」

「は、はい…」

少女は頷きながらも、何かに怯えた様子で周囲を見回す。

そこで、腹の虫がくぅと鳴いた。

自分は先ほど朝食を取ったのであり得ない。

とすると、音の出所は。

「うぅ…」

少女は恥ずかしそうに袖で顔を隠す。

年齢的に食べ盛りのはずだ。

何か食事を提供した方がいいだろう。

選択安価です。直下でお願いします。

1:給仕係に頼んで作ってもらう。

2:自分で作る。

3:町の食堂で食事を行う。

4:ひとまず町の案内をする。

ここは専門の人に頼るのが無難だろう。

「今から昼食を持ってきます。アンジェ様はこちらでお待ちください」

「はい…」

彼女は何に怯えているのか。

そこまで理解することは出来ないが、不安を和らげることは出来るはずだ。

今出来ることを一つ一つしていこう。

決意を胸に調理室に向かう貴方を、何かが引き止める。

振り向いた先には、部屋で待っているように言った少女が。

「あの…一人は嫌…なので…。ついて行ってもいい…ですか…?」

服を掴んでいる指が震えている。

自分以外の全てに恐怖を持っているのだろう。

そんな彼女が、勇気を出して声を掛けたということ。

それは、孤独がそれ以上に辛いことを示していた。

「よろしいのですか?調理の風景を見ても、面白くないと思うのですが」

「だ、大丈夫です…」

そう言った少女の目は、真っ直ぐこちらを見据えていた。

「では、ご案内致します」

優しく手を取り、先を歩く。

敵意は無いと、危害を加えはしないと、伝わっていればよいのだが。

「こちらが調理室です。ここで食事を作り、イレーナ様に自分が食事を提供します」

連れてきた調理室は、よく言えば機能美に溢れ、悪く言えば殺風景な所だ。

そんな場所を、アンジェは興味深そうに見つめる。

少々お待ちくださいとアンジェに一言伝え、給仕係のメイドに声を掛ける。

「あ、まだ昼食時間じゃないよぉ~。もうちょっと待ってねぇ~」

「いえ、自分ではなくアンジェ様の食事を用意してもらいたく」

「ほほぉ。どんなのがいいかなぁ~」

間の抜けた口調のメイドだが、腕は確かだ。

仕事以外ではのんびりとしすぎているので、心配が尽きないのだが。

「…アンジェ様は元奴隷なので、満足な食事が出来なかった可能性が高いです」

「ん~。オートミールとかといった消化しやすい物がいいねぇ~」

「はい。お願いします」

「オッケ~。任せといてよ~」

こちらまで気の抜けるような声とは裏腹に、テキパキと作業を進めていく。

そこまで大変な物を作っているわけではないが、手際の良さは見ただけで分かる。

あっという間に下準備を終え、後は煮込むだけとなった。

「もうちょい待っててねぇ~」

準備を終えているというのに、メイドは他の料理を作っている。

アンジェの食べられる物ではないと分かった貴方は、首を傾げるのであった。

「お待たせぇ~。こっちはアンジェ様ね~」

アンジェの前に置かれた少し大きめの皿には、純白のオートミールが入っている。

「味付けはそこまで濃ゆくないから、大丈夫なはずなんだけどね~。少しずつ食べてくださいな~」

「あ、ありがとうございます」

目の前の皿をじーっと見つめたと思うと、今度は匂いを嗅いでビクッと体を震わせた。

「い、いただきます」

そう言っておそるおそる口に含むアンジェ。

目が輝いて見えるのだが気のせいだろうか。

「あぁ。これは貴方の分だよ~。しっかり食べて大きくなろうね~」

メイドが持っている皿にはパスタが、もっと言えばカルボナーラが盛り付けられている。

それも大量に。

「…自分はもう成長しませんよ。大人ですから」

「それに、それほどの量は食べきれません」

貴方の言葉を聞いたメイドは、ニヘラと笑う。

「分かってるよぉ~。これは私の分もあるからねぇ~」

「アンジェ様、皆で食べるご飯は美味しいんですよ~。試してみましょうか~」

笑顔を浮かべるメイドの心情は、貴方には測れなかった。

しかし、その言葉に噓偽りがないこと。

それだけは理解することができた。

そして、満足そうに食べていたアンジェの目から突然、涙が溢れ出す。

「え、ちょ、何!?わ、私、悪いことしちゃったかなぁ~…?」

オロオロと慌てるメイドをよそに、貴方はハンカチを差し出す。

「ごめん、なさい。でも…初めてで…。他の人と…ご飯を食べるのが…こんなにもいいことなんだって…」

「分から…ないんです…。何で私も泣いてるのか…。少しも嫌じゃないのに…何で…?」

涙を拭いながら、アンジェの言葉を聞き取る。

彼女の言葉をそのまま受け止めるなら、その涙の理由は驚いたことになるのだろうか。

彼女が生きてきた状況は分からない。

だが少なくとも、醜悪な環境にいたことだけは分かる。

他人と食卓を囲むことが無かったなど、普通ではあり得ないからだ。

「…いいんです、アンジェ様。泣きたい時は泣いても」

「あなたは自由だから。あなたの心に従って動いても、自分たちは止めませんから」

「…はい…。ありがとう…ございます…」

涙は尚も流れ続ける。

心を巣食った悲しみを洗い流すように。

涙が止まる頃には、既に食事は冷めきっていた。

今回の更新はこれで終了です。すみません、全然量が無くてすみません…。

次回更新も今のところ目途が立っておりませんので、追々連絡します。ありがとうございました。


☆こそこそ小話

天使と悪魔は敵対関係にあり、天使(と神々)は天界に、悪魔(を含めた多くの魔族)は魔界に駐留しています。

魔族が悪魔とか吸血鬼とかを一纏めにした呼び方です。幾らかの魔族は人間界にもいます。

鬼も厳密には魔族ですが、セフィジャッジでは悪魔以外の魔族はセーフとなっております。

そして、魔界に行く方法は特殊な旅の扉を使う以外にはありません。天使だけが、自由に世界移動を行えます。

魔界にも小さな集落があり、そこで人間が暮らしていますが、軒並み化け物です。

堕天使は天使が堕ちた状態ですが、生まれつきで堕天使の場合もあったり。魔族、天使、堕天使はそれぞれ敵対しています。

堕天使は基本、自由気ままに世界のどこかにいます。アンジェちゃんは秘密。

アンジェちゃんの戦闘力は現在1ですが、条件を満たすことで指数レベルで上昇していきます。

魔物の中で人間のように文明を持ったのが魔族です。仲良く出来る可能性はあるかもしれない。

ちなみに、前貴女時に話の中で出てきた冥界は死者の魂が集う場所です。その後、転生して別の存在に変わります。


悪魔も魔物と同じように人間を食べるのかどうか

>>829、人型に近いほど嗜好も人間に近づいていきますが、普通に人間も食べられます。
28日が休日ですので、その日に再開予定です。

お待たせしました。今から更新を開始します。

「あ…えと…ごめんなさい…。ご飯、冷めちゃいました…」

冷えたオートミールを温め直しているメイドを見て、アンジェは申し訳なさそうに頭を下げる。

「気にしないでいいですよ~」

メイドの言葉を聞いて安心したのか、アンジェはホッとしたように顔を上げる。

主から面倒を見るように頼まれた貴方は一時的に、メイドにアンジェを預けた。

別に職務放棄をしたわけではなく、その間に色々と用意を済ませておきたいことがあるのだ。

お召し物や、本人が孤独に怯えていることから、何かそれを和らげることが出来るもの。

必要なものは様々だ。

屋敷から出ると、喧騒が耳に入る。

「確か今日は、猟師が集まって大規模な龍狩りを行う予定…だったか」

ある人は弓を担ぎ、ある人は槍を背負う。

またある人は太刀を背負い、ある人はレイピアを腰に差している。

選択安価です。直下でお願いします。

1:気になるので猟師の方に向かう(???)。

2:商店に向かって必要な物を買い揃える(チャーリーとコミュニケーション)。

3:家に戻って動物たちに餌やり(動物とコミュニケーション)。

商店に足を運ぼうとした時にふと、今朝のことを思い出した。

「…しまったな。あの子たちのご飯を忘れていた」

貴方の言うあの子たちは、人間のことではない。

野良犬や野良猫、原生している動物たちのことである。

貴方の動物好き具合は半端なものではなく、それを動物たちも理解しているのか、貴方が危険な目に遭った時はどこからともなく、助けにやって来るほどだ。

走って家に戻ると、気配を察知したのか沢山の動物が貴方の元に駆け寄ってくる。

「朝はごめんね。急いでたから、用意する時間が無かったんだ」

そんなことは気にしていないと言わんばかりに、頭をすり寄せ、頬を舐めてくる。

「…うん。悪いことがあったわけじゃないから、大丈夫。ご飯、作ってくるね」

手で待つよう伝え、キッチンに向かう。

肉を解してミンチにし、小刻みにした野菜を混ぜていく。

それを大皿二十枚程度用意したら、庭に出て横に並べていく。

食事が用意されたのを見た動物たちは喧嘩をすることなく、順番を譲りながら全員で平等に食べる。

適切な躾を行った、貴方の努力の賜物だ。

彼がいなければ、ギュンデームの問題はまた一つ増えていただろう。

直下コンマ、↓2コンマである判定をします。デメリットはありません。直下は7以上、↓2は8以上だと…?

なんということでしょう(某番組ナレーション風)。先ほどの判定は直下は『魔物も手懐けているか』、↓2は『動物たちが何かをしてきたか』でした。

直下は成功なので、直下に魔物の特徴と名称を(既存の物や本スレで出た物、おまかせ可)お願いします。

↓2は特殊判定なので、↓2、3にどんなイベントがあるかをお願いします(おまかせ可)。

動物が食事に勤しんでいる中、ただ一匹?一人?だけは、ふわりふわりと宙に浮いている。

動物というよりは亡霊である彼女の名前は、貞子というらしい。

意思疎通を試した結果、筆談のみが可能だったので、名前を教えてもらった。

この付近、もっと言うならば、この大陸で用いられている名前ではないので、別の大陸の人だと判断した。

だが、本人が言うにはこの世界に存在することはあり得ない、らしい。

彼女は決まって、動物たちの食事に合わせてここに来る。

来るからといって何かしてくるわけでもないのだが、こちらから何かをしても反応しない。

本当にただ、そこにいるだけ。

何を考えているのか表情を窺おうとしても、長い髪がそれを妨げる。

何も分からない、知りようがない。

どう接すればいいのか決めかねていたのだが突然、別れが訪れた。

「…?どうした?」

いつもならこちらを眺めているはずの彼女が、顔を空に向けていた。

気になって声を掛けると、こちらに顔を一瞬向けた後にまた、同じ方向を向く。

「え…?」

そして、翳した手の先に黒い穴を作り出し、潜り込んだ。

それは有無を言わせない別れだった。

しかし、最後に見せた隠れているはずの彼女の顔は、笑っていたように見えた。

直下に、紛れ込んでいた動物の特徴、名称をお願いします(条件は前回のに加え、変化した亜人、魔物、魔族も可(0ボーナス))。

謎の存在が還っても、動物たちはそれを気にすることなく、食事を続ける。

空になった皿を新しい物に取り替え、鳥用の穀物を箱詰めして、離れた場所に置く。

一箇所に食事場所を纏めてしまうと、怪我をする子が出てくる可能性がある。

そのような光景を見たくないための配慮だ。

貴方の家の食料の中で動物用が占める割合は非常に多く、殆どがそれだ。

当然食費も嵩んでいるのだが、然したる問題ではない。

そして、動物の好む物も種族によって変わる。

そのため、一般的な動物全ての面倒を見ることが出来る。

のだが。

「キュゥ」

茂みから顔を出すリスは、一向に手を付けようとはしなかった。

気が付いたのはたった今だしそもそも、提供している食事にリスの好む物は無い。

「ちょっと待ってね。すぐ持ってくるから」

仲間外れは良くないと急いで木の実を用意する。

食べやすいように中身を取り出し皿に乗せると、ぴょんぴょんと動物の背中を飛び乗って目の前までやって来た。

――リス…じゃない…な――。

リスだと思っていた小動物は、よく見ると違う生き物だった。

リスよりも犬らしい大きな耳に、額に浮かんだ謎の紋様。

そして、その身体は紅い体毛に覆われている。

口いっぱいに木の実を含んでいる姿はリスそっくりだが、違う生き物なのだ。

だが可愛い。

全ての皿が空になると、満足したのか動物たちは各々の住処に帰っていった。

次の行動安価です。今回も直下です。また、今回の行動が終わると強制的に屋敷に帰還します。

1:猟師のところを訪ねる(???)

2:商店で買い物(前回と同じ)

夜も更けてきましたので、短いですが今回はこれで終了です。安価は下にずらします。

礼の如く次回はいつになるのか目途が立ってませんので、分かり次第連絡します。

どうすればもっと早く書けるのだろう…。お疲れ様でした。

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