勇者「全身呪いの装備で固めてしまった」 (269)

勇者「このダンジョンもここで最後だな」

勇者「さっき倒したボスっぽいヤツの先には一体どんな物が…」ゴクッ

勇者「いざ!」ガチャ



勇者「こ、これは……剣だ! お札っぽいのが貼られてたり、あと骸骨邪魔だな…」ベギッ


骸骨「コレデ…ワガ…クルシミカラ」

勇者「うるせぇ! 骸骨ごときが勇者に話しかけんじゃねぇよ!」ドガッ

勇者「さて、この剣は…」



勇者「お、おお……なんか、すっごい禍々しい感じだな…」

勇者「それにドス黒い雰囲気って言うか…なんと言うか…」

勇者「たぶんアレだ、さっきの骸骨が長時間触れてたせいでこうなったんだな」

勇者「それによく見たらカッコいいし…間違いない、これこそが俺の捜し求めていた伝説の剣に違いない!」

勇者「早速装備だ! このはがねのつるぎは捨てる!」


勇者は皆殺しの剣を装備した!
勇者は呪われてしまった!


勇者「ぬあああああ!! またかよ! また呪われてるのかよ!」


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皆殺しの剣「良くぞ私を蘇らせた…」

皆殺しの剣「ククク……生者の血を我にヨコセ」



死の兜「よう新入り、まぁ落ち着けよ」

皆殺しの剣「えっ」

呪いの鎧「あー、剣って大体それ一本しか装備されねぇからなぁ」

怨霊の靴「まぁアレだ、気負いすぎると良いことないぜ?」

悪魔の篭手「そうそう、ましてやコイツだしな」

復讐の腰当「そういやこれで全身呪い装備でコンプじゃね?」

破滅の盾「そういやそうだな」



皆殺しの剣「え、待って…え? なにこれ、なんなの?」

死の兜「なにって…解呪しない呪い装備の集いだよ」

皆殺しの剣「バカじゃないの?」

勇者「くっそぉ…今度こそは伝説の剣と思ったんだけどなぁ」

勇者「厳重に封印がされてたし、なによりかっこよかったから間違いないと思ったんだが」

勇者「なんでだ?」



剣「なんでだ? じゃねぇよ、逆にどこに伝説の剣要素があったんだよ」

剣「明らかにヤバイ要素しかないだろ」

兜「あー違う、コイツの判断基準はカッコいいかどうかだから」

剣「なんだよその判断基準!」

剣「それ以前にこんなに呪い装備付けてておかしいだろ! 解呪する金持ってないのかコイツは!」

鎧「いや、金は持ってるが薬草と聖水でほぼ消えてるな」

鎧「それ以前にコイツ外したくないらしい、教会行ってないからな」

剣「本当にバカじゃないの?」

勇者「はぁ…悔やんでも仕方ない、このまま次に行くか」

勇者「けど町に入れるかなぁ…前に行った町は門前払いだったからなぁ」

勇者「やっぱり顔が悪いからなのか? 俺もイケメンに生まれたかった…」

剣「頭が悪いからだと思うぞ」

兜「この見た目の装備で町に入れるわけないよなぁ」

勇者「えーっと…今回の剣で俺に付いた呪いはなんだろうか」

勇者「攻撃したら自分にもダメージがいく的なのは嫌だなぁ…」

勇者「回復呪文はダメージ受けるから使えないし…困ったなぁ」ハァ


剣「残念だが察しの通りだ、ダメージ喰らう系の呪いだ」

兜「というとまたダメージ系がコイツに付与されたのか」

鎧「これで能力的には最強だけど色々残念な勇者が完成されたな」

剣「能力的にはな……ちょっと待て、俺含めた呪いって全部でなんだ?」

兜「ん? 全部でそうだなぁ…箇条書きで説明するとこうだ」


数ターンごとにダメージ
回復呪文ダメージ
反射ダメージ
最大HPMP半減
防御以外全能力半減
行動速度鈍化
たまに行動不能
魔物呼び寄せ
町に入れない(見た目効果)


剣「もう冒険やめたら?」


勇者「でも攻撃力高そうだしいいか! それにカッコいいし!」

剣「ポジティブすぎるにも程があるだろ」

剣「よくこんな装備で冒険出来るな…」

兜「マトモな装備なら今頃魔王倒して冒険終えているだろうな」

鎧「基礎能力がべらぼうに高いからな…半減していても流石勇者と言ったところか」

剣「いやでも流石にこれだけ呪われれば…」


勇者「お、魔物が現れたな…丁度いい、試し切りするか!」

勇者「先手必勝! うらぁ死に晒せ雑魚がぁッ!!」ザシュ

真っ二つにされた魔物の死体「」

勇者「ぐふぅ…や、やはりダメージ系武器か…」ゴフッ


剣「」

兜「まぁ、コイツが規格外すぎるんだわ」

鎧「返り血だけしか浴びてないからな、あと吐血」

勇者「くっ…流石に呪いがキツイな…」

勇者「薬草で少し回復しないと…」モグモグ


剣「薬草って食うものなの? 傷口に当てるものじゃないの?」

兜「世間一般では塗るものだな」

鎧「呪われて外せないから食ってるんだとさ」

剣「そこはまぁ…仕方ないか」


勇者「薬草だけじゃ回復が間に合わないか…」

勇者「なら聖水を飲むか」ゴクゴク


剣「聖水って飲むものなの? 普通振り掛けるものじゃないの?」

兜「世間一般では振り掛けるものだな」

鎧「普通飲まないよな、もっと別の飲むよな」

剣「脳筋なのコイツは?」

腰当「えー、もう薬草聖水コンボ決めたの? そろそろ適当に呪い解いてくれ」

鎧「あいよー」

篭手「分かった、新入りも呪い解いてくれよな」

腰当「いつもわりぃな、俺のわがままに付き合ってくれて」

兜「いいってことよ、流石に腰当が気の毒でなぁ」


剣「お前ら呪い装備として恥とかないのか?」

兜「そうは言ってもなぁ…解呪しないと色々やべぇんだよ」

剣「ヤバイっておま」


勇者「んあっ…あぁ……」ビクンビクン


剣「あっこれヤバイやつだ」

兜「だから言ったろ? さっさと呪い解いてくれ」

剣「お、おう…でもなんでこんな事になるんだ?」

兜「あくまで憶測だが聖水の力と薬草の回復が俺らの呪いと反作用を起こしていると思う」

兜「それが結果的に快感としてアイツに与えられているんじゃないか?」

篭手「最初はこんなんじゃなかったんだけどな…」

鎧「色々装備固めてきた頃からだな…こうなっちまったのは」

鎧「最初は痛いとか言って激痛に悶えていたが次第にこうなっちまったんだよ」

剣「人間ってこえぇわ」

兜「全くだ」

兜「せめて女なら眼福物なんだがな…」





勇者「ふぅ…ふぅーっ……な、なんとか今日も大丈夫だったな…」ギン


腰当「大丈夫じゃねぇからな…本当に腰当として生まれたことを呪うよ…」

剣「い、生きていれば良い事もあるさ…たぶん」

勇者「よしっ! 体力も万全とはいかないまでに回復したし、そろそろ行くか!」

勇者「本当なら戦士とか僧侶とか仲間にいてくれれば良かったんだが…無い物ねだりしても仕方ない」

勇者「その為に俺は努力を重ねてきたんだ!」

勇者「俺は、俺一人の手で魔王を倒す!!」グッ

勇者「うひっ…あっこれイイ……」ビクッ


剣「もう勇者じゃなくて変態だろ」

書き止め尽きたから一旦終了

――数日後。


勇者「群がってくる魔物の群れを倒してきて分かったことがある」

勇者「この剣は敵を倒せばその分だけ攻撃力を上げる武器だ」

勇者「剣として切れ味が増しているのが分かる…やはりこれは聖剣なのでは?」

勇者「魔物を倒すと攻撃力が上がるってところが最高に聖剣じゃないか!」

勇者「それになんかかっこよくなってきてるっぽいし!」


剣「それな、生き血を啜ってるから攻撃力上がってるんだわ」

剣「別に血なら人でも良いんだけど…もう突っ込む気にもならないな」

剣「でもまぁ…よく剣の事を見てるヤツだ……流石勇者と言うべきか」

兜「お前ソッチのけがあるのか?」

剣「ちげぇよ! おいやめろ、そんな疑いをかけるな!」

兜「冗談だよ」


勇者「さて…そろそろ回復……っ!!!」ゴソゴソ

勇者「薬草が…無いだと……」

兜「おっと、これはヤバイな」

勇者「くっ…残りHPから考えて次の町にギリギリたどり着けるか…?」

勇者「途中の雑魚はなるべく少ない攻撃手段で倒していったとしても…いや間に合わない」

勇者「くそっ…俺はこんな所で、魔王にも会えずに呪いで死ぬのか…?」

勇者「いや、まだ死んだと決まったわけじゃない! 持ってくれよ俺」



剣「普通に持ちこたえそうなところがにじみ出てくるのがすげぇよな」

兜「そろそろこんな時が来るとは思っていたが…一度会議を開こうか」

兜「題して、どうやって勇者を生き延ばそうの会を開く!」




剣「いや待ておかしい、それはもう呪いの装備としていいのか」

兜「確かにそうだが…考えても見ろ」

兜「勇者は全身呪い装備だ、誰がどう見てもヤバイ装備してる」

剣「まぁそうだな…それがどうした?」

兜「そう慌てるな、これから説明していく」

兜「例えば勇者が途中で死んだらどうなる? 俺たちはこんな場人目によくつく場所で皆仲良く鎮座だ」

兜「そこに運悪く冒険者が来て、あからさまにヤバイのが大量に転がってるとどうなる?」

剣「触ろうともしないだろうな」

剣「いやむしろ危険だからこそ近隣の国に報告を……っまさか!」

兜「そのまさかだよ」



兜「勇者の危機は俺らの危機なんだよ」

兜「仮に呪いを完全に解かれてしまうことがあれば俺らは揃いも揃って粉々に砕け散るな」

剣「いやでもそこまでは流石に…」

兜「万に一つでも可能性があってはいけないんだよ」

鎧「俺らは人を呪い、それを糧にして武具として生きながらえている」

鎧「強大な力と引き換えにってとこだがな」

篭手「本来なら人目の付かない場所でひっそりとしている物が町まですぐ近くにいる訳だ」

剣「なるほど…リスクがあまりにも高すぎるのか」

兜「そういうことだ」

兜「だが呪いを完全に解くと俺らの存在そのものが意義をなさなくなる…それだけはあってはならない」



剣「でも薬草聖水の時はほぼ解いたよな?」

腰当「それはそれ、これはこれだ、勇者はトリップしてて覚えてないだろうしセーフ」

剣「アッハイ」

兜「じゃあまず回復呪文の被ダメ量軽減ね、勇者回復呪文使わないだろうけど念のため」

兜「次にスリップダメージのダメージ量微減少」

兜「反射ダメージ量も少し抑えていく、異論は無いな?」

剣「そうでもしなけりゃ死ぬからな」

兜「行動不能回数は抑え目で、あと魔物呼び寄せも頻度控えてくれ」

兜「それと後は…」

兜「勇者が無事町にたどり着いて入れることを祈る!」

剣「こういうときこの格好してると不便だよな…自業自得だが」



剣「ちなみに別世界だと呪い装備で全身固めるとデメリット消えるとか聞いたが?」

兜「そんな甘ったるい世界な訳ないだろ」

兜「マイナスかけるマイナスでプラスになるほど甘い世界じゃないんだよ、ここはよ」

兜「全て足し算だ、掛け算方式はこの世界には無い」

――数時間後。




勇者「目が霞む……ごほっ」

勇者「はぁ…はぁ……あ、あと少し…げほっごほっ!」

勇者「だ、ダメ…だ……もう、体が…」グラッ

勇者「ここまで来て……」ドサッ




剣「むしろよく数時間も歩けたな…やっぱコイツ色々おかしい」

剣「だがあと少しだ勇者! 動いてくれ勇者! 頼むっ!」

兜「あと少しだ! 頑張ってくれ! …くそっ! なんだって俺は呪われてるんだよ!」

剣「落ち着け兜! まだ、まだ望みはある!」

剣「ええいっ本当にあと少しなんだ…そこのバカ面下げた衛兵が勇者に気付いてさえくれればっ!」

剣「頼むっ…気付いてくれ!」


キラッ


衛兵「…ん? 何か視界に…! あそこに誰か倒れてないか?」

剣「きたっ! 救いの手が遂に!」

衛兵「ど、どうし…うわっ! なんだこれ!」

勇者「た……たす…け」ズリッ

衛兵「ひっ…くっくるなぁ! 化け物め!」



剣「化け物とは酷い言い方だな、仮にも勇者なんだが」

兜「実際化け物染みた格好と強さしてるんだがな、今はただの化け物な見た目だが」



衛兵「こ、この化け物目めっ! これでも喰らえっ!」グッ


鎧「あ、これマズイわ」

剣「確かにマズイな…1ダメージも惜しいところだからな」

鎧「いや違う、あの衛兵…剣を離さなきゃたぶん腕持ってかれる」

剣「は?」

ガギィッ!!

衛兵「はぁっ! ぐっ…硬いっ!」

衛兵「んっ…な、なんだ……剣が鎧に張り付いて…」

衛兵「いや、これは剣が喰われっ! …ひ、引っ張られ…う、うわぁっ!」

衛兵「ひっ…ひいぃ!」ポロ



鎧「おお、よくあの状況で剣を離せたな…これだけ狂気にまみれた装備によく精神が飲まれなかった」

鎧「いや、恐怖によるものか? まぁ犠牲が出なくてよかった」



剣「お前ってかなり危ない装備なんじゃないか?」

剣「いやそれ以前にお前どんな防具なんだよ」

鎧「俺か? この鎧に触れたものを全て吸収するんだよ」

鎧「まぁ防御以外の全てを犠牲にさせてるからな、このぐらいのメリットはねぇと」

剣「それもそうか、呪い装備だし」

上官衛兵「だ、だがこの禍々しさ…やはり魔の物か?」

僧侶「あの…ど、どうかされたのでしょうか?」


剣「おおっ! 可愛い女の子じゃん!」

兜「やっとまともそうなのが出てきたな…回復させてくれるかが問題だが」



僧侶「なにやら凄い邪の気配を感じたのですが」

上官衛兵「むっ僧侶さんであったか…」

上官衛兵「この者なのだが……私にはどうにも人とは思えなくてな」

僧侶「うっ…た、確かにそうですが……で、でもこの方は…人、です」

僧侶「酷い出血と全身に付けられた禍々しき装備ですが、確かにこの方は人です」

上官衛兵「人ですと!? …にわかには信じがたいですが、僧侶さんが言うならばそうなのでしょう」


僧侶「それより、この邪な気配は…呪い?」


剣「ん? あれこれヤバくね?」

上官衛兵「呪いですと!? だ、だが呪いとはその者のみにかかるものでは?」

僧侶「確かにそうです…ですが、この方はあまりにも負のものを浴びすぎています」

僧侶「本来なら解呪の儀を行わなければいけませんが、そうこうしてる時間がありません」

僧侶「聖水…それもそれなりの数を用意してまずは触れる程度に浄化しないと…」

上官衛兵「聖水ですね…分かりました、部下に伝えて用意させます」



剣「お、おい…浄化って大丈夫なのかよ」

兜「まぁ平気だろ、ちゃんとした正規の解呪手段じゃないし呪い自体は解けやしないさ」

剣「そうだといいんだが…」

兜「っつーかこれでもかなりセーブかけてやってるんだが、人間はこれ程度でもヤバイのか?」

剣「そりゃ全身呪われてりゃヤバイだろうな、勇者が異端過ぎるだけだ」

兜「それもそうだな、普通の人間なら俺を着けた時点で正常な判断なんか出来ないぐらい精神蝕まれるからなぁ」

上官衛兵「僧侶さん、とりあえず聖水を20ほどかき集めてみましたが…どうでしょう?」

僧侶「なんとかその数なら…触れられるでしょうか」


兜「おいおい、20個とか用意しすぎだろ、勇者程度なら3個でもあれば足りるだろ」

剣「勇者程度って…あ、僧侶さんコイツの鎧には触ったらダメだぜ…って聞こえちゃいねぇよな」



僧侶「これで良し…あとはこの方が動けるまでに回復を…」パァ


剣「あっバカ! コイツに回復呪文はダメだって!」


勇者「うっ…ぐぅぅ……」ジュゥゥ

僧侶「なっ! まさか回復呪文に対しての呪いもっ!?」

僧侶「あっあぅ…えっと、えっとぉ……どうしよう…」


剣「ああもうじれったいなぁ! 早く薬草投げつけろコイツに!」

剣「というより早くしないとコイツマジで死ぬから早く!」

剣「それと解呪の儀なんてやめてくれよな! フリじゃねぇからな! 絶対だぞ!」



僧侶「か、回復…そうだ、薬草を! 早くお願いします!」

僧侶「一応薬草を肌の見えている所に当ててみましたが…」

勇者「うっ……こ、ここは……」ヨロ


剣「回復するの早いなおい、コイツ本当に人間じゃないわ」


僧侶「あっ! まだ立ってはいけません! そのままで」スッ

勇者「待った…いつつ……装備にだけは触れないでくれ…色々面倒ごとが起きる」

勇者「特に鎧だけはダメだ…あと盾も」

僧侶「ふぇっ!? あ、危なかった…」




剣「この僧侶一々反応が可愛いなおい、呪って歪んだ笑みを見たくなるぞ」

剣「ちなみに鎧以外は何か特徴とかってあるのか?」

盾「俺は触れたものは原型を保てなくなる、絶対無敵って訳だ」

剣「うわっそれ盾として持ってたらいけない能力だろ、強すぎだわ」

盾「そうでもなきゃ呪われてる意味が無いだろ、まぁ勇者が俺を使ったことは一度も無いんだがな」

剣「まぁそうだな、一応呪い装備だしな」

勇者「なんとか……動けるように、なったかな」フラッ

僧侶「だ、ダメですよ! そんな大怪我をした状態で動いたらいけません!」

勇者「そうは言っても…俺にはやらなきゃいけない事があるんだ」

勇者「俺は魔王を倒し、この世に平和をもたらさなきゃいけないからな…」

勇者「勇者として、休んでいる暇はないんだ!」



僧侶「えっ勇者だったんですか?!」

勇者「どこからどう見ても勇者だろ!」



剣「どこからどう見てもお前ただの怪物だよ」

兜「100歩譲ってもとてもじゃないが勇者とは言えないわな」

書き止め尽きたから一旦終了

一応各装備のデメリット、メリット設定
デメリット
兜:最大HPMP半減
鎧:防御以外全能力半減
盾:回復呪文ダメージ
腰当:数ターンごとにダメージ
篭手:魔物呼び寄せ
靴:行動速度鈍化、たまに行動不能
剣:反射ダメージ

メリット(判明しているのだけ)

鎧:物理攻撃吸収
盾:完全防御(盾の範囲のみ)
腰当
篭手

剣:攻撃力増加(殺害数に応じて)

一応魔王倒すとこまでやる予定

勇者「そんなことより助けてくれてありがとう…何かお礼をしたいのだが」

僧侶「い、いえ…私は僧侶として当然の事をしただけで、そんな…」

勇者「だが、何もしない訳には……」



村人「ま、魔物だ! 魔物の大群が押し寄せてきたぞ!」

衛兵「み、皆臨戦態勢を取るんだ! 魔物から町を守るんだ!」

勇者「魔物か…じゃあこうしよう、俺が魔物を全部倒す」

僧侶「そんな無茶な!」

勇者「ここらの魔物なら飽きるほど戦い慣れてる、これでも余裕で倒せるだろう」

僧侶「で、ですがその怪我で動くのは…」

勇者「こんなの日常茶飯事だよ、むしろ一番良い状態といっても良いかもしれない」

勇者「じゃあ早速魔物の場所を聞いてくる!」ダッ



篭手「空気読まずにすまん、たぶんこの魔物俺のせいだわ」

剣「そういうのは分かってても言わない流れだろ」

篭手「しょうがないだろ、魔物呼ぶ呪いなんだから」

勇者「衛兵に魔物の場所を聞こうとしたら俺が魔物だと勘違いされた…」

勇者「後ろから付いてきてくれた僧侶さんに説得してもらって助かったぁ」

勇者「さてと、魔物の数は100ぐらいか? …随分と少ないな」

勇者「遠めで確認できるのは…キラーストーカーと地獄の騎士、あとはマドハンドの群れってとこか」

勇者「この程度なら全力出さなくてもよさそうだ…ようがんげんじんの群れだったらやばかったか」



剣「地獄の騎士も大概だと思うがな」

兜「まぁ攻撃される前に全滅させるんだからいつもと変わらんよ」

兜「ただHPが多いやつだと呪いダメージが多いから嫌いなだけだろうな」



僧侶「あの…本当に大丈夫なのでしょうか? あんなに魔物がいるんです」

勇者「ん? あれぐらいなら皆毎日のように倒してるでしょ?」

僧侶「えっ」

勇者「え? 俺なんか変なこと言った?」

勇者「と、とりあえずあいつらが町に近づく前に全部片付けないとな」

勇者「見たところアンデッド系モンスターが多そうだから…」

勇者「火属性で攻めるのが定石だな、あと広範囲に散らせたいから風と組み合わせて…」ブツブツ

僧侶「あの、勇者さんは一体何を?」

勇者「おっと、危ないから離れててくれよ?」


勇者「トルネド! ファイガッ!」ボゥッ!



剣「ドラゴンな探求からいきなり最後のファンタジーに変わったぞ」

兜「基礎能力的にはそっちの方が近いな」

兜「ちなみにヴァルキリーな分析の魔法も使えるみたいだぞ」

剣「もはやなんでも有りだなこの勇者は」

僧侶「す、凄い…あんなにいた魔物が今の魔法でほぼ全滅…」

衛兵「な、なんという技なのだ…まさしくこれは勇者様のなしえた奇跡なのか…?」

勇者「おっしゃぁあ! 今から残党狩りだァ!」ザシュ

勇者「おらおらぁ! ついでに薬草とか聖水を落とせぇ!」ズバァッ


剣「本当に呪いダメージ関係無く暴れるなぁ」

剣「これで本当の実力の半分近くしか出せてないってんだから恐ろしい」

剣「まぁ俺としては暴れさせてくれて有り難いんだが」

勇者「こいつで最後だ!」ズバッ

マドハンド「」

勇者「ふぃー…いい運動したなぁ…いででっ」ゴフッ

衛兵「一人であの魔物の群れを全て退治してしまった……これは夢なのだろうか…?」





勇者「さて、これでこの町も暫くは魔物からの脅威は無くなるだろう」

衛兵「なんとお礼を申し上げたら良いのか…」

勇者「世界救う為に勇者やってんだからそんなのいいって」

勇者「それに俺は助けられた立場だから、これでチャラってことにしてくれないかな?」

勇者「そんなことより薬草と聖水を買わせてくれたら有りがたいかな」

衛兵「そんな! この町の危機から救って下さった勇者様からお金を頂戴するなんてとんでもない!」

勇者「いやそうは言ってもさ…たぶんこの魔物は俺のせいで呼び寄せられたものだと思うんだよね…見た目じゃ分からないだろうけど俺、呪われててさ」

勇者「全身伝説っぽい装備で固めてるのは分かるだろ? だけど年季が経ちすぎてたのかしれないけど、全部呪われてるんだ」

勇者「以前魔王が復活したのが何百年も前だからこうなるのも仕方ないよなぁ…勇者も辛いもんだ」



衛兵(それはひょっとしてギャグで言っているのか!?)

僧侶「あの……勇者様、少しよろしいでしょうか?」

勇者「ん? 薬草落ちてた?」

僧侶「それはもう袋に入りきらないぐらいに!」

僧侶「…じゃない! そうじゃなくて、その…お体は大丈夫なのでしょうか?」


剣「この子…デキるな」


勇者「体? あぁ、この程度なら全然余裕だよ、このまま次の町までスキップしていけるぐらいには」

僧侶「嘘言わないでください!」

勇者「お、おう…」

勇者(本当の事なんだけどな…)

僧侶「勇者様は確かに強いです、ですが魔物を倒すたびに魔物の血と一緒に勇者様も怪我をされていましたよね?」

僧侶「攻撃する度に、何かしら行動する度に勇者様が傷ついていくのが見えました…」ウルッ

僧侶「そんなに一人で、無理しないで下さい…っ!」ポロ



兜「あーあ、勇者が女の子泣かせた! この可愛い女の子泣かせた!」

兜「勇者失格だな! このクズ野郎! やっぱりコイツは人じゃねぇわ」

剣「そこまで言わなくてもいいんじゃないか?」

勇者「ご、ごめん…」

僧侶「謝っても許しません! その装備は完全に悪いものです! さぁ、こっちに来てください!」

僧侶「勇者様が安全に冒険できるように解呪してあげます!」



兜「やっぱり僧侶ってクソだわ」

鎧「本当にクソだわ、俺らの事を何も分かっちゃいねぇ」

盾「俺らが可哀想だと思わないのか! この悪魔!」

剣「お前ら…」

勇者「うぇっ!? か、解呪だって! そんなのお断りだ!」

勇者「それにこれは悪いものじゃない、紛れもない本物の伝説の装備だ!」

勇者「現に俺はこの装備に幾度と無く助けられた…」

勇者「それに超カッコいい! だからダメだ!」

僧侶「そんなのが伝説の装備な訳ないじゃないですか! さぁ早く!」



剣「鋭い突っ込み、やはりこの子…出来るっ!」



勇者「絶対嫌だ! そんなに解呪して欲しければ魔王倒してからにしてくれってんだ!」

勇者「まぁ、倒したとしても頼まないと思うけどな」

僧侶「うっ…ぐっ……」

僧侶「…そ、そこまで解呪したくないんですね?」

勇者「ああ!」

僧侶「……なら、私も勇者様の旅に同行します!」



剣「それは辞めた方がいいと思う」

一旦終了。

勇者「あー…その、お気持ちはありがたいんだけど…この町にいた方がいいと思うよ」

僧侶「じゃあ解呪してください」

勇者「それは嫌だ」

僧侶「じゃあ同行します、絶対に呪われた装備から開放してみせます!」

勇者「いや、いやいや…ハッキリ言って寝る暇なんて無いよ? 三日三晩歩き続けとかでもいいの?」

勇者「なんか知らないけど俺のすぐ近くに魔物が沸いて出るんだ、それも時間問わずに」

勇者「本当にそれでもいいの?」

僧侶「いいんです! 私だって伊達や酔狂で僧侶やってるわけじゃありません!」

僧侶「勇者様が傷付く姿が見たくないだけなんです!」



剣「なんかこの会話聞いてると苛々してくるな…」

靴「遠回りで俺らを批判してるだけだよな」

剣「お、基本無口な靴が喋った」

靴「いつも歩かせられてるから喋る暇が無かっただけだ」

勇者「そこまで考えてくれていたなんて…なんていい人なんだ…ッ!」

勇者「正直なところ、実は不安だったんだ…また今日みたいなことがまたあってしまうのかと思って」

勇者「そろそろ魔物も強くなってきていて一人で冒険できるか不安でもあったんだ」

勇者「ありがとう…こんな俺を心配してくれて!」

僧侶「い、いえ…そんな……」

僧侶「じゃあ少し準備してきますので、待っててください」



剣「勇者チョロすぎじゃね?」

剣「それにただの僧侶をつれだして本当に大丈夫なのかなぁ…」

兜「まぁ大丈夫だろ、腐っても勇者なんだし僧侶は怪我しないって」

剣「いやそうじゃなくてさ、俺らの呪いの弊害だよ、彼女三日持たないんじゃないかなぁ」

兜「怪我じゃなくて呪いの弊害に心配する日が来るとは思わなかったわ」

僧侶「お待たせしました!」ズシッ

勇者「ああ、待ってたよ…ってやけに荷物が多くないかな」

僧侶「当然ですよ! 回復呪文が使えなくてオマケに魔物がひっきりなしに来るのならこれぐらい用意しないとです!」

僧侶「それに神様にお祈りする用の簡易祭壇とかも必須です!」

勇者「本当にそれ必要? …まぁ僧侶だから必要、なのかな」

僧侶「それとテントと寝袋とあとはおやつも入っていますから後で一緒に食べましょうね」

僧侶「冒険が飽きないようにカードゲームも沢山用意してますから絶対楽しい旅になりますよ!」

僧侶「特にお勧めなのが遊戯お」

勇者「うん、とりあえずカードゲームだけは置いていこうか」



剣「ピクニック気分で行く気かよ」

勇者「カードを置いてったら荷物の8割が消えた件について」

僧侶「うぅ…苦心して集めたカード達が…次の町でデュエル出来ると思ったのに」

僧侶「十二獣とかメタルフォーゼとか組めるデッキまで用意したのに…」

僧侶「あまりにもガチ過ぎるデッキだと色々浮きそうだから全部のカード持ってきたのに…」


剣「デュエリストかよ、つーか遊ぶ気マンマンじゃねぇか」

剣「というより全部って、逆にそっちのが浮いてるわ」



勇者「あー…ま、魔王倒し終えたら俺もやろうかな、そのカードゲーム」

僧侶「本当ですか! 嘘じゃないですよね? 約束ですよ勇者様!」

僧侶「さぁすぐ出発しましょう! 魔王なんか適当に裁いてデュエルしましょう!」

僧侶「初めてでも私がしっかり教えてあげますから! 行きましょう勇者様、時間は待ってはくれないんですよ!」



兜「対戦相手いなくて一人ぼっちだったんだろうな、可哀想に」

剣「それ以上言うな」

勇者「ふぅ…これで終わりか」

焦慮「朝から毎度お疲れ様です、はい、薬草です」


僧侶は祝福された薬草を手渡した!

勇者は呪われた薬草を食べた!


勇者「うん、疲れた体に薬草は効くなぁ」

僧侶「まだおかわりは沢山ありますから食べてってくださいね」



剣「おい勇者が持った瞬間に呪われたぞそれ」

篭手「まぁ俺を通して薬草触ってるしな、そりゃ呪われるだろ」

剣「そういや篭手も呪われてるんだったな…」



剣「いやおい僧侶、お前仮にも僧侶だろそれどうにかしろよ」

剣「つーか食わせるなよ」

勇者「しかし俺が冒険をし始めてから魔物が格段に強くなってきてるな…ダメージがキツイや」

僧侶「大丈夫ですか? あまり無茶はしないで下さいね?」

勇者「大丈夫だって、この程度なら許容範囲内だ」

僧侶「そうならいいんですが……気になっていたんですが、勇者様が冒険を始めたときからそういう格好だったんですか?」

勇者「いや、木の棒と私服で冒険開始」


僧侶「え」

僧侶(想像できないなぁ…勇者様のその格好)

勇者「王様から渡された金も薬草一個がギリギリ買える程度にしか渡されなくてな…」

僧侶「よくそんな状態からここまで進化…いえ、冒険できましたね」

勇者「まぁ昔から鍛えてはいたからそれでも冒険は何事もなく進んでいたよ」

勇者「こう見えて王国一の剣術と魔術の使い手だからな」

勇者「なんだかんだあって勝手に勇者に仕立て上げられて冒険を始めさせられたわけだ」

僧侶「そうですか…そしてなんでそんな格好に?」

勇者「そうだなぁ…冒険を進めていけば伝説の装備の話は聞こえてくる」

勇者「魔王の城に向かいつつ怪しい洞窟とかに行ってたらあったんだよ、それがこの伝説の装備だ!」



剣「伝説級に呪われてる装備だがな」

僧侶「伝説の装備ってこんな禍々しい装備でしたっけ…」

勇者「まぁ時間が経ってるしそれは仕方ないさ、それにお札とかで厳重に封印がされてたし周りに装備守るボスもいたから間違いないって」

勇者「なんたってこの黒々しい輝き、この刺々しい見た目…カッコいいじゃないか!」

僧侶「……もう伝説装備でいいです、突っ込むのも疲れました」

勇者「まぁカッコいいから俺は呪いとか関係なく一生装備していくけどな」



剣「一生発言出ちゃったよ、風呂にもその格好で入るつもりか」

兜「脱がずに入るところまで用意に想像できてしまったんだが…」

勇者「よっと!」ザシュ

僧侶「えいっ!」ゴスッ

僧侶「はぁ…はぁっ……ま、また魔物ですか…はふぅ…」

勇者「まぁ慣れたけどね」

僧侶「よく慣れますね…でも、これで最後っ!」ブンッ

魔物「グゲッ!」バタッ


僧侶「ふぅー…これで一休みでき」

勇者「――ッ! 避けろ僧侶! 」ダッ

僧侶「え?」

魔物「グァアアッ!」ブンッ

僧侶「あっ…」

勇者(くそっ! 剣を振りかぶってる暇がねぇ…せめて体当たりでアイツの体勢を崩すことが出来ればっ!)


勇者「この、野郎ッ!」ドガッ

魔物「ゲギッ!」



鎧「……」

剣「ん? 鎧、どうした?」

鎧「いや、なんでもねぇよ…ただ、初めて勇者が体当たりをしたって事がな」

剣「そういやお前魔物戦で初めて使われたんじゃないか?」

鎧「まぁ、な……」

剣「でもまぁお前の効果で魔物は確実に息絶えるだろうな、咄嗟の判断としては上出来じゃないか?」

鎧「それが普通の鎧だったらな…まぁ、これからどうなるかだな」

勇者「クソッタレ! この野郎! 離れやがれ!」ドガッバキッ

魔物「ウギィ……」


僧侶「勇者様…お、落ち着いて……」


ズリュ ゴギィ



魔物「――ッ……」

僧侶「そん、な…魔物が鎧に吸収されている…?」

勇者「くそっ! この……っ!」

勇者「はぁ…はぁ……この鎧は…魔物まで吸収、するのか……」


ズギィ!

勇者「ぐぅっ! な、なんだ…? 体、が…」ガクッ

僧侶「勇者様…? どうなされたのでしょうか?」

勇者「ぐぅ……ぁ……ぁ…」ガクガク



剣「お、おい…なんかコイツの様子がおかしいぞ?」

鎧「いや、正常だぜ?」

剣「どうみてもおかしいだろうが! これのどこが正常だと」

鎧「あのな、俺は吸収するんだぞ? それが物理的に触れるものならなんでもな」

鎧「勇者は今喰った魔物丸々一匹の処理をしてるだけさ、何もおかしいところはない」

剣「大丈夫なのかよ…よくこういった流れだと正気失って人じゃなくなるみたいなのあるじゃん?」

鎧「あぁ、その認識で間違いはない」

剣「だったらお前、勇者は…っ!」

鎧「…一つ例え話をしようか、人間は牛をそのまま一頭丸ごと食えるか?」

剣「いきなり何を…無理だな、何かしら料理しないと食えないだろう」

鎧「今回勇者は丸ごと一匹喰ったわけだ、そりゃこうなるよな?」

剣「なるほど、むりやり食った物を消化しているって訳か…しかし勇者とはいえ人だぞ? 大丈夫なのか?」

鎧「あのな、数ヶ月もほぼ全身呪われてる勇者が魔物一匹ごときでイカれちまうか?」

剣「イカれないわ、ごめん俺がバカだったわ」

僧侶「勇者様! 勇者様! 大丈夫ですか!?」

勇者「う…ぐっ……」

勇者(せ、聖水を飲まなきゃ…これは、マズイっ!)ゴソゴソ

勇者「んっぐっ……」ゴクゴク

僧侶「聖水を飲ん…それって振り掛けるものじゃ…」


剣「やっとマトモな突っ込みが入ったな」



勇者「んぁああああああッ!!!」ビクッビクッ

僧侶「わっ! な、なに? なにが起きてるの!?」

勇者「おふっ! アヒィッ!! あっ…んぁあっ!!」ガクガク

勇者「イイッ!! だめぇ…お母さんごめんなさいっ!!!」


勇者「んほぉおおおお!!!」


僧侶「ゆ、勇者様…?」



剣「勇者の尊厳とプライドの為にこれ以上見ないでくれると助かる」

勇者「……」

僧侶「……」

勇者「……」

僧侶「あの…ひ、人には色々ありますから…私は、気にしない、ですから…あ、あはは…」

僧侶「そ、それより次の町に行きましょう……次の町の宿屋にはお風呂があるといいですね」

勇者(誰か俺を殺してくれ…)



腰当「戻れない場所の一歩手前で踏みとどまったのだけは評価してやる」

剣「勇者が色んな意味の勇者に成り代わった瞬間を俺は見てしまった」

下記止め尽きたから一旦終了。

>鎧「あのな、数ヶ月もほぼ全身呪われてる勇者が魔物一匹ごときでイカれちまうか?」

>剣「イカれないわ、ごめん俺がバカだったわ」

ここ好きwwwwww

トイレの時はさすがに脱ぐよな?まさか着けたままするなんてことは

>>90 それ完全に盲点だった。投下





勇者「…はぁ」トボトボ

僧侶(あの日から勇者様の元気が無い…)

僧侶(魔物に対しても昔は掛け声と共に倒してたけど今は…)


勇者「はぁ……」ヒュバッ

魔物「」

僧侶(ため息つきながら何も無かったかのように魔物を倒してる…)

僧侶「あ、薬草」

勇者「…え? 薬草?」

僧侶(薬草にも気が付かないなんて…少し前は落ちた瞬間に食べてたぐらいに元気あったのに…)


僧侶「あの…本当に気にしてないですから……元気出してください、勇者様」

勇者「いや、そのことはもう自分の中で区切りが付いたんだ…あれも呪いの一部だって気付いたし」


剣「そんな呪い付けてねぇよ」

僧侶「ですが、あの日から様子がおかしいままですよ! そんなの勇者様らしくありません」

勇者「本当に気にしてない、そうじゃなくて……あのさ、あの時、なぜか俺の母さんの顔が思い浮かんだんだ」

勇者「もうずっと会ってないのに、突然…はは、おかしいよな?」

勇者「母さん……」


僧侶(もしかして勇者様のご両親は既に……っ)



勇者「はやくおうちに帰りたい…」


僧侶「ホームシックかよ」
剣「ホームシックかよ」

僧侶「はぁ…勇者様のご両親は生きていらっしゃるんですね?」

勇者「あぁ、元気よく生きてる、男だけじゃなくて女の子も欲しいとか親父と喋ってたりもしてたな」

僧侶「元気ありすぎですよそれ!」

僧侶「全くもう…仮にも由緒正しき勇者の血統を継ぐんですからそんな弱音を吐かないでくださいね?」

勇者「あー…そういや言ってなかったな」



勇者「俺、勇者の代役なんだわ」

僧侶「えっと…え? どういうことですか?」

勇者「つまり、俺は元々ただの戦士だったわけよ」

勇者「本当なら俺が勇者やるんじゃなくてちゃんとした勇者の血統を受け継いだ奴がやる予定だったんだが…」

勇者「本当の勇者さんは部屋から出てこないわけなんだ」

勇者「聞いたところによるとうわ言のようにずっと『いいえ』しか喋らないみたいでしょうがなく俺になったわけだ」

僧侶「ニートってやつですか?」

勇者「間違いなくニートだな」

僧侶「親御さんが泣いてますよね…少し親御さんに同情します」



剣「親の事を心配する言葉が一番攻撃力あるよな」

僧侶「そうこうしているうちに次の町が見えてきましたよ勇者様!」

僧侶「地図で見ると…たぶんあの町が魔王城に至る中で最後に立ち寄る町のようです」

勇者「つまり最後に休憩できる町って訳か…」

僧侶「そうなりますね、魔物との最前線なわけですから屈強な人々も揃っているはずです」

勇者「なるほど…その人たちを仲間に加えられれば…ってここまできといて今更ってとこもあるな」

勇者「……今度こそ町の中に入れますように」

僧侶「たぶん無理だと思います…しかし一つだけ方法が」




兜「解呪だろ、させねぇよ」

鎧「やれるもんならやってみな、相手してやるぜ」

剣「意気込んでるとこ悪いが、俺らが抗える術は無いと思う」

勇者「なに!? それは本当か!」

僧侶「えぇ、あります…しかしそれには苦痛を伴いますが、よろしいでしょうか?」

勇者「苦痛!? まさか、整形手術なのか!」

僧侶「違います、そもそも勇者様の顔はその兜で殆ど隠れてるじゃないですか」

勇者「…言っておくが解呪だけはしないからな?」

勇者「仮にもこれは伝説の装備なんだぞ! そんなことあってたまるか!」

勇者「それに、この装備を外せば俺は勇者じゃなくなってしまう…それだけは嫌なんだ」




僧侶「ちっ…これならうまくいくと思ってたのに!」

勇者「いま聞き捨てならない言葉が聞こえたような」

僧侶「気のせいじゃないですかね?」



兜「おい今の録音した奴いるか! 重要な証拠だぞ!」

剣「俺らに録音機能があるわけないだろ!」

僧侶「じゃあどうするんです? そんな格好で町になんて入れないですよ?」

勇者「それをどうするか…俺も久々に風呂に入りたいし、僧侶だってふかふかな布団で寝たいだろ?」

僧侶「まぁそうですねぇ…あっいい考えが浮かびました!」

――最後の町……の門前





勇者「ど、どうも…」

門番「待て! お前らは何をしにここまで来た」

勇者「そりゃ世界をすく」

僧侶「私達は王様から頼まれてこの近辺の魔物の生態を勇者様に伝えるべく調査しに来ました」

門番「ふん、なるほどな……貴様はともかく、そこの者はなんだ? まるで化け物ではないか!」

勇者「なんだとこの」

僧侶「うっさい! 少し黙ってて! …い、いえ申し訳ありません」

僧侶「この者は暗黒騎士なのです、見た目は少し…いえ、かなりアレですがこれでもかなり腕の立つ者でして…」



勇者「いや俺はゆ」

僧侶「黙れって言ってんのがわからないの!?」

僧侶「私の苦労も少しは考えてくださいよ! 毎度毎度あなたの装備でこう言われる身にもなってくださいよ!」

僧侶「今度生意気な口出すと容赦しませんからね! グーで殴りますよ! グーですからね!」

勇者「ご、ごめんなさい…」

僧侶「分かればよろしい…で、あの…入れて頂けませんかね?」

門番「う、うん…いいよ……あ、宿屋はそこの角を曲がったとこにあるからそこで休むといい」

僧侶「わぁ! 本当ですか! ありがとうございます!」

僧侶「さぁ行きましょう、ゆ…暗黒騎士さん」


門番(おっかねぇ…あの僧侶怒らせたらいけない人だわ)

僧侶「ごめんなさい勇者様…あそこを乗り切るにはこう言うしか無くて…」

勇者「いや別に気にしてないよ…うん、気にしてない」

僧侶「でも流石最後の町だけあって勇者様のその格好でもそこまで怪訝な顔をされずに済みましたね」

勇者「格好は問題ないと思うんだけどなぁ…ただちょっと風化されすぎてるだけで」

僧侶「はいはい、そういうことにしておきます…あ、宿屋が見えてきました!」

勇者「久々に宿屋に入れるな…温泉とかあるといいなぁ」

僧侶「えっと…勇者様、どうやってお風呂入るつもりですか?」

勇者「え? そりゃ脱げないからこのまま…」

僧侶「いや、いやいや……それは流石にダメですって」



鎧「なぁ、俺って湯に浸かったら錆びる?」

兜「錆びるんじゃね? 俺も錆びるだろうし」

靴「錆びた呪われた装備って嫌だなぁ…」

腰当「なんとか俺らが生き残りつつ風呂と布団で寝るときだけ外せるようなそんなアイテムとかってないかなぁ」

剣「そんなご都合主義なアイテムあるわけないだろ…」

僧侶「と、言うことで用意してました! 教会に一セット分しかなかったこの装備を外せるお札!」



剣「あるのかよ! 都合良すぎだろオイ!」

兜「やったじゃん、なんだかんだ言って頼りになる奴だわ」

鎧「やっぱ最後に頼りになるのは僧侶だわ」

剣「おうお前ら、少し前に僧侶に対して言った台詞もう一度言ってみろや」

勇者「そんな便利アイテムがあったなんて…凄い世の中になったもんだ」

勇者「じゃあ風呂入ってる時と寝るときはそれを使わせてもらうかな」

僧侶(きたっ! これで私の解呪の計画が大幅に進む!)

僧侶「そりゃもうドンドン使ってください!」

勇者「あぁ、ありがたく使わせてもらうよ、それも解呪までしてくれるなんて僧侶はいい人だなぁ」

僧侶「でしょう? さっすが勇者様、私の計画が言わなくても分かるなんて……ハッ!?」

僧侶「あっいや、これは違っ…」



勇者「…さて、どうやって保管しておくかな」

僧侶「あたしって…ホント馬鹿……」



剣「バカで助かったぁっ!」

兜「バカは呪いを救う…これは名言になりそうだ」

――宿屋




店主「やぁいらっしゃい、一人一泊150ゴールドだよ」

店主「それにプラス300ゴールドで開放感溢れる素敵な露天風呂と夕食、朝食セットも付くからお得だよ」

勇者「じゃあそれにしようかな…すいません、それを二部屋で」

店主「一部屋で二人寝れる部屋も案内出来るけど…それでも良いのかい?」

店主「大丈夫、防音もバッチリしてるからどんな大声出してもお隣には聞こえないさ」ニヤッ

勇者「大声? あぁ…」

僧侶「なぁっ!? そ、そんな…私達はそんな関係じゃ…」

勇者(解呪の儀の時に色々言うんだろうな…お隣さんに迷惑がかからないようにって配慮かな?)

僧侶(待って…勇者様とはそんな関係じゃ…でもよく見たら勇者様ってキリっとした目つきだし…)チラッ

僧侶(口には出してないけど勇者様から幾度と無く助けられたし…それに)

僧侶(それに…あの装備の下ってどうなってるのか…気になる)

僧侶「ど、どうします? わ、私は…いい、ですよ?」

勇者「……いや、やっぱり二部屋にしてもらえるかな」

店主「お、おやおや…その彼女さんがいいって言ってるのに…本当にいいんだね?」

勇者「えぇ、大丈夫です…むしろ相部屋だとどんな事が起きるか不安で…」

勇者(朝起きて俺の装備が粉々になってたら立ち直れないし…)

僧侶「そう、ですね……その方がお互いのために良いですよね」

店主「そうかい…なら900ゴールドを頂くよ」

兜「これは…どう見る? チキンな勇者と見るのが正解か?」

鎧「いや、勇者はバカだ、ソッチのこととは全く気付いてないだろう」

篭手「じゃあ僧侶はどうなんだ? どう考えてもソッチの事を匂わせた発言をしていたが」

腰当「あー…僧侶に関しては最初はソッチの方を考えた……が、途中で考えを改めたな」

靴「あの目つきから察するに大方勇者のこの装備の下ってどうなってるか気になったんだろうな」

盾「ま、俺らとしちゃ解呪されなきゃなんでもいいんだけどな」

勇者「ふぅー…数ヶ月ぶりの宿屋か…風呂入る前にハサミとか髭剃りとか用意しておかないと…」

勇者「あぁ、僧侶は先に風呂にでも入ってくれ」

勇者「長旅と道中の魔物との戦いで疲れただろ、しっかりと休んでくれ」

僧侶「そうですね、ではお言葉に甘えさせていただきます」

勇者「僧侶が風呂に入ってる間に俺は売店で少し買い物でも済ませておくかなぁ」

勇者「っと、その前に荷物を部屋に置いて……ん? なんだ、この紙切れは」


紙「使いたくなったらいつでもどうぞ」



勇者「なんだこの輪ゴムは、こんなの何に使うんだ?」

勇者「…そうか、これで薬草を束ねておけってことか! いやぁあの店主さんもいい人だなぁ」

勇者「じゃあありがたく使わせてもらうか!」ベリッ

勇者「なんだこれ…なんか、ヌルヌルする……輪ゴムを守るためにこうしてるのかな?」

勇者「それにこれ風船っぽいな…これに水でも入れて水筒代わりにも使えるって事かな」

勇者「そうかなるほど…見かけによらずあの店主さん本当にいい人だなぁ」



剣「そのまま町の外まで行ったら真の勇者だな」

僧侶「勇者様! いいお湯加減でしたぁ…あ、お札を貼りますね」

勇者「もう上がってたのか、じゃあお願いするかな」

僧侶「それじゃあ…鎧とかに肌が触れないように注意してっと…」ペタッ




剣「ははっあんなお札貼っただけで簡易的とはいえ俺らが封印されるわけ無いよな」

鎧「」

剣「鎧? …え? マジ?」

剣「あっちょっ…や、優しくお願いしま」

一旦終了。

僧侶「これで全部ですかね」

勇者「お、おお? なんだか体が軽くなったような…これがそのお札の効果か?」

僧侶「まぁ一時的にですけど、持って一晩が限界だと思います」

勇者「一晩が限界か…このまま冒険続けられれば苦労も無いんだけどなぁ」

僧侶「それだと解呪するしかないです…でも解呪だけはしたくないんですよね?」

勇者「それをやったらこの装備が壊れるからな」



僧侶「……」ジーッ

勇者「あの、僧侶さん? そう見られると脱げないんだが…」

僧侶「あ、そ、そうですね! ごめんなさい!」

勇者「はぁ…全く、じゃあ俺も風呂に入ってくるよ」トコトコ

僧侶「……」トコトコ

勇者「……」トコトコ

僧侶「……」トコトコ



勇者「…なんで付いてくるの?」

僧侶「なんでって…おかしいですかね?」

勇者「…僧侶、お前もしかして疲れてるのか?」

勇者「ようやっと僧侶が我に返って部屋に戻っていった…」

勇者「さてと…この装備を脱げる日が来るとは…」ヌギッ

勇者「んぉおっ!? 脱いだ瞬間に体から羽が生えたような開放感がするぞ!?」

勇者「これは…待ちに待ち望んだ風呂に入れるという喜びからなのか!?」

勇者「もう我慢できん、サッと体洗ってじっくり風呂に入って今までの疲れを癒す!」




勇者「……僧侶さんが入ってこられたら困るから装備も持っていこう」

勇者「かーーっ!!! 生き返るなぁ!」ザブン

勇者「いやぁ…風呂ってのはいいもんだ…人類が生み出した最高の設備だよ」

勇者「それに景色もいい! 至れり尽くせりの境地だなぁ…」

勇者「ふぅ……そういえば、久々に地肌に触ったなぁ」

勇者「あの突き刺さるような痛みがあったから、てっきり穴でも開いてるかと思いきやそういうのは無いようだ」

勇者「まぁ攻撃されたこと無いから当たり前といえば当たり前か…」

勇者「それと装備を外して思い出したけど、俺ってトイレに行った事無かったな」

勇者「便意って言うか…そういうのがまるで沸いて来なかったし」


勇者「まさかあの装備の効果で便意が抑えられてたってわけじゃないよな…」




ぐぎゅるるるるッッッ!!!!




勇者「ハァウッ!!!」

勇者「うんこぉおおおおお!!!! もれ、漏れぇええええ!!!!」

勇者(落ち着け勇者……ここで一瞬でも気を抜いたら確実にヤられるっ!)

勇者「フゥーッ!! ――ッ!!!」

勇者(思い出せ…トイレの場所を……トイレは確か部屋にあったはず!)

勇者(全力で部屋に駆け込んでトイレに行く最短ルートを辿れば……ギリギリ間に合うっ!)

勇者(服なんて着てる暇がねぇ! この際恥も全て捨てて全裸で行くしか道は残されてないっ!)ザバァ



勇者(肛門の筋肉鍛えておけば良かった…っ!)ダッ

勇者(鍛え方しらねぇけど!!!)

――勇者の部屋前


勇者(ここまではエンカウントなしっ! これなら想定より3秒早く便器に座って用を足せる!)

勇者(あとは俺の部屋になだれ込んでいくだけだ!)ガチャ



僧侶「あっ随分と早かったですね、もう上がったんですか?」クルッ

勇者「―――ッ!!!」フルチーン

僧侶「」

僧侶(落ち着け私……まず状況を整理しよう)

僧侶(私は勇者様のお部屋で荷物整理をしていた、そしたら全裸で額から大量の脂汗流した男が現れた)

僧侶(ここには私が一人…勇者様はお風呂でいない……これってもしかして)




僧侶(……変態!?)




僧侶「いやぁああああ!!! デカイっっ!! ケダモノ! 近寄らないでぇ!!!」ブンッ

勇者(ボディだけはやめて! それやられると出ちゃうから!)ヒョイッ

勇者(っしゃあラッキー! 避けた拍子にトイレの前にたどり着いた!)ガチャッ


バタンッ!


勇者「あっはあああああぁぁ……も、漏らすとこだった……」

僧侶「いやぁああ……って、この声って勇者様……?」

勇者「」ボー

勇者「極限まで我慢したあとに用を足すと幸福感みたいなのが湧き出てくるよな…」

勇者「はぁああ……やっぱりおかしいと思ったんだ、便意が起こらないのは」

勇者「原理は不明だが戦闘に特化したように体が切り替わっていたとかかな…」

勇者「しかしそれだと腹が減るのはおかしい話で…うーん、謎だ」



勇者「よいしょっと……紙は…あれ、後ろかな?」

勇者「…戸棚の中とか、あとは便器の後ろに一個だけあったり…しないか」

勇者「あのー…僧侶さん? トイレットペーパーを渡してもらえます?」

僧侶「前は…隠してください」

勇者「そういや俺全裸だったな」

勇者「すっかり快調! いやぁトイレって良いものだなぁ」ガチャ

僧侶「あばばっ!! 前隠して! 前!」

勇者「おっと…悪気は無かったんだ、誤解しないでくれ」

僧侶「分かりましたから! はやく出てってください!」

勇者「…この格好で?」バッ

僧侶「その格好で風呂からここまで来た人が今更何を言ってるんですか! だ、だから前!」

勇者「俺の親父は風呂から上がったらいつも素っ裸だったからなぁ…あ、そうだパンツだけでもくれない?」

僧侶「勇者様の家庭事情なんて知りませんよ! 変態!」

勇者「変態じゃなくて俺は勇者だ!」

僧侶「もう、いやぁ……」

勇者「なんだかんだ言いつつパンツ渡してくれた」

勇者「いや違うんだ、俺はただ見せたかったからこんなことをしてたんじゃないからな!」

勇者「俺は誰に向かって言ってるんだ…」

勇者「……もう一回風呂に入ろう」

勇者「と、言うわけで風呂に戻ってきたわけだ」

勇者「今度はパンツ履いてるからセーフだ、何を持ってセーフなのかはこの際別にしておこう」ヌギッ

勇者「しかしすっかり湯冷めしちゃったなぁ…もう一度体を温めてゆっくりくつろごう」ガラッ

勇者「明日からまた冒険の旅が始まるわけだしここで英気を養っておかないと…」


勇者「…おかしいな、確かに浴場に装備を全部持ってきたよな…目の錯覚かな」

勇者「…あれ? 俺の装備全部無くね?」

勇者「捨てられた…? いやそんな、そんなはずは…」

勇者「無い…風呂の底にも無い……この壁の向こう側に投げ捨てられたか…?」


「なに堂々と覗いてるのよ! 変態!」ブンッ



勇者「うわっ! っぶね…女性の人がいただけでそれらしきものは無い…か」

勇者「それに俺は変態じゃない、ごく一般的な勇者だ」

勇者「……仕方ない、一度部屋に戻って僧侶と相談しよう」

勇者「気が休まらない一晩になりそうだな…」

――勇者の部屋



勇者「んー……僧侶さんが知ってたら嬉しいなぁ」ガチャ



「あ、ダメです…勇者様、私達はそんな事をする関係じゃ…」

「僧侶……君が欲しい」

「あぁ…勇者様…」



勇者「ん? 話し声…なぁ僧侶さん、俺の装備持ってたりとかしてない?」


勇者?「……」

僧侶「え? パンツ一丁…勇者様が二人?」

勇者「んん? …あぁ! 俺の装備!!」

勇者?「ち、違うんだ僧侶、アイツは偽物だ!」

僧侶「…え?」

勇者「てめぇ…よくも俺の伝説の装備を!」

勇者?「ふんっパンツ一丁の変態が、俺様に勝てると思うな!」

勇者?「この剣で血祭りに上げてやらぁ!」ブンッ

勇者?「はは、こいつはいい! 体が思う以上に動きやがる!」

勇者「そういう割には剣の振り方がなってねぇな…それじゃあ剣に扱われてるみたいだぜ」

勇者?「なに言ってんだよお前…その格好で頭までイカれちまったか?」

勇者(とは言ったものの…あの鎧には手が出せないし、敵に回るととことん厄介なシロモノだな)

勇者(なら…装備が唯一守れていない後ろの太もも付近を攻めるっ!)ダッ

勇者?「おらっ! そこだ!」

勇者「おっと…腐っても伝説の装備か…迂闊に踏み込めないな」

勇者「はは、最初の威勢の良さはどうした! 雑魚がぁ!」

勇者?「クク、この装備があればなんだって思うがままだ…圧倒的な力が湧き出てくる!」

勇者?「今の俺は無敵だ! ハハハ!!」



勇者「……どうやらあいつ、勝った気でいるみたいだな」

勇者「装備付けただけで級に強くなるなんてそんな話があるわけないだろうが…」

勇者「仕方ない、手加減なしでやってやるよ」スッ


勇者?「はぇ!? き、消えたっ?」

勇者「後ろだ…そこそこ力出したパンチッ!」ズドン

勇者「それと僧侶さんに手を出そうとした罰の結構痛いキーック!」

勇者「オマケにこれは…ゆっくりと温泉に入れない、俺の恨みの篭もった本気の一撃だァッ!」メシャァア

勇者「あとなんで勝手に俺の装備着てるんだよ! 外せオラァ! この野郎!」ドカッバキ

僧侶「お風呂に入れないことに対して全力だったような気がしてたまらない…」

勇者?「ぅぐふぅ……あ、足が…」ガクッ

勇者「今のが拳で良かったな、剣だったらお前死んでるぞ」

勇者?「はひぃっ! わ、悪かった…外すから殺さないでくれ…」

勇者「殺しは魔物以外にしない、今の俺の格好で外をうろつかせるぐらいで手を打ってやる」

僧侶「それって社会的に殺しにかかってますよね」

勇者「命があるだけマシだな、全く…僧侶さん、怪我とかはなかったか? 乱暴されたりとかは?」

僧侶「怪我はないですけど…その、ごめんなさい…勇者様だと気が付かずに、こんな…」

勇者「顔が隠れていたんだから仕方ないって、人間誰だって間違いはあるさ」

勇者「そんな気負わずにいこう、また明日から旅が始まるんだし」

勇者「それじゃあ今度こそゆっくりと温泉に浸かってくるよ…あぁ、疲れたぁ」

勇者「はぁ…いい湯だったなぁ」

勇者「風呂上りには牛乳とか飲みたくなるなぁ…コーヒー牛乳も捨てがたいけど」

勇者「牛乳かぁ……おっ良い事を思いついた!」

勇者「これは僧侶さんビックリするだろうなぁ……善は急げだ!」

食堂



僧侶「勇者様遅いですねぇ…何があったとも思えないですし、何をしてらっしゃるんでしょう」

勇者「いやぁ遅れた! ちょっとヤボ用で……」

僧侶「あ、勇者様! 遅いですよ、せっかくのご飯が冷めちゃいますよ!」

僧侶「それに、明日から魔王城に向けて出発するんですから今からルートを決めておかないと」

勇者「そうだったな……魔王の城まで最短でどのくらいかかりそうかな?」

僧侶「地図を見る限りですと…大体一週間と言ったところでしょうか」

僧侶「早く見積もっても五日、遅ければ九日でしょう」

僧侶「でもこのルートだとかなり険しい道のりを突っ切るのであまり得策とは言えないかもしれません」

勇者「じゃあ回り道をした場合は?」

僧侶「んーっと、この場合はかなり遠回りをすることになりそうです」

僧侶「大体二週間近くかかるかもしれません」

勇者「そうか…二週間も野宿していくのはこの先厳しいものがあるな」

僧侶「ましてやひっきりなしに魔物が襲い掛かってくる旅ですからね」

僧侶「聖水の効果もこの場合あまりあてにならないと見たほうがよろしいかと」

勇者「そうだなぁ…よし、最短ルートで行く!」

勇者「僧侶さんはどうする? …もしあれならここで待っていてもらっても構わないけど」

僧侶「いえ、私は勇者様のサポートをする為にここまで来たんです、最後まで一緒に行きますよ!」

僧侶「薬草だって勇者様一人だと持ちきれないですよね?」

僧侶(それに、魔王と戦う前には解呪したいですからね…流石に呪われたまま戦うのは無理があります)



勇者(いやでも勇者様ならそのままでも勝てそうかな…)

一旦終了。

最後誤字った。すまん、投下再開




勇者「そっか、それを聞けて安心したよ…ありがとう」

僧侶「いえいえ、お礼を言うのは魔王を倒してからにしましょう」

僧侶「そんなことよりご飯食べちゃいましょう、折角のご飯が冷めちゃいますよ?」

勇者「それもそうだな、食える時に食っとかないとって言うしな」

僧侶「あの…勇者様はどうして魔王を倒そうと決心したんですか?」

勇者「ングッ……そうだな、元々俺は勇者様ご一行について行くために修行をしてきていたんだ」

勇者「子供の頃から親父にお前は世界一の剣士になれって言われてきててさ」

勇者「母さんは世界一の魔法使いになれって言われてきててさ、めんどくさくて全部やったわけよ」

勇者「そのときにさ、魔物が近所に現れたんだ」

勇者「あのときの俺はまだ弱くて、魔物3匹倒したところで疲れ果てたんだ」

勇者「でも親父と母さんは涼しい顔してその後も魔物を蹴散らしてて、決心したんだ」

勇者「魔王倒せば親を超えられるんじゃないかって、それが動機かな」

僧侶「…かなり話が飛躍しすぎている気もしなくはないですが、分かりました」

僧侶「そのときの勇者様って何歳の出来事だったんですか?」


勇者「忘れもしないさ、あの時の俺は7歳だ」

僧侶「」

勇者「ふぅ…ご馳走様でした」

僧侶「勇者様って凄いんですね…」

勇者「凄くないさ、本当の勇者に比べたら俺なんかまだまださ」

僧侶「ってことは本当の勇者様はもっと強いんですか?」

勇者「そりゃそうだ、由緒ある血統を継ぐものだから強くて当たり前だな」

勇者「前に一度戦ったことがあるけど全力を出してないのが分かったさ」

僧侶「戦ったことがあったんですか!?」

勇者「まぁな…王国主催の剣術大会の決勝で戦ったよ」

勇者「そうだな、結果としては俺が勝ったんだが、本当の勇者は全く力を入れてなかったんだ…」

勇者「表情だけはいかにも全力出してますよって感じでさ、俺に対して配慮したんだろうな、あれ」

勇者「全力出せば一瞬でケリがつくからってさ、悔しかったなぁ…」

勇者「俺が勝ったあと、全力を出し切ったような顔して無言で立ち去るし…別次元に生きてるってことを思い知ったよ」



僧侶(もしかして本物の勇者様はその試合全力だったんじゃないかなって…)

僧侶(あぁ、だから部屋から出てこなかった訳ですか…なるほど)

勇者「くぁ……飯を食べたら眠くなってきたな」

僧侶「ふふっ…食べた後に寝ると牛さんになっちゃいますよ?」

勇者「朝起きたら牛かぁ…その時は治してくれるかな?」

僧侶「そりゃもちろん! ……じゃあまた明日から頑張りましょうね、勇者様」

僧侶「それと……勇者様の素顔、素敵ですよ? では、おやすみなさい!」

勇者「お、おう……」


勇者「こういうの言われたことないから、どう反応すれば良かったんだ…?」

――翌朝



勇者「装備良し、天気良し、トイレ良し、体調良し」

勇者「薬草良し、牛乳…腐ってない! 良し!!!」

勇者「さて…一晩ぶりに装備を着けるか」カチャカチャ



剣「あー、よく寝たぁ…って、なんか変な感じするなぁ」

兜「ウィーッス、俺もそうなんだよなぁ…まるで寝てる間に誰かが使ったような気がするんだよなぁ」



腰当「それは間違ってないな、昨晩誰かが着用して力を引き出したんだろう」

腰当「勇者のナニとは違うナニかの感触がある…」

剣「お前も苦労してんだな…ナニの感触が分かるなんて」

腰当「聖水飲むたびに当たる感触を味わいたいか? 代わってやっていいんだぞ?」

剣「そのままぜひとも腰当を続けてください」

勇者「ぐぅ……やはりこの装備の感触は続くか」

勇者「っと…僧侶さん驚かせるために今のうちに袋にアレを入れておかないと…」ゴソゴソ

僧侶「勇者様、おはようございます! よく寝れましたか?」ガチャ

勇者「うぉっと! お、おはよう僧侶さん」

勇者(あっぶねぇ! …危うくバレるとこだった)

僧侶「? なにを驚かれているんですか?」

勇者「い、いや…なんでもないよ……それよりご飯食べにいこうか」




兜「おいコイツ今袋にスゴいの入れなかったか!?」

鎧「それだけ溜まってたってことだよ、丁度僧侶も仲間になってるんだし出し切ったんだろうよ」

兜「引くわぁ…マジもんの変態じゃねぇか」

剣「それ牛乳だと思うんだが、流石の俺も擁護出来ないわ」

勇者「ついに魔王の城に向けて出発か…気を引き締めていこう」

僧侶「ですね、方角的にはこの湿地帯を進むことになります」

僧侶「その後にあの山を越えたら魔王の城まで一気に行けると思います」

勇者「そっか…じゃあまずはこの手厚い歓迎をしに来た魔物を蹴散らしながら進むか!」チャキ



剣「俺らが封印されてる間にルートは決まってたっぽいな」

篭手「一晩ぶりとは言え腕が鳴るな…」

剣「篭手だけにってか…ちなみに篭手の能力はなんなんだ?」

篭手「俺は限界以上に筋力を引き出させる能力だ、ミスリルゴーレムと腕相撲勝負できる位にはな」

篭手「まぁそんなことしたら腕がもげるけど勇者なら平気か」

剣「まぁ勇者だしな」

僧侶「やあっ!」ボコッ

魔物「グッ…」

僧侶「もう一発! 確実に仕留めます!」ボコ

僧侶「はふぅ…これで、終わりですね」

勇者「みたいだね、僧侶さんも近接戦闘がだいぶ板についてきたと思うよ」

僧侶「本職ではないんですけど、こうも魔物が多いと必然的と言えますね」

勇者「でも僧侶さんがいてくれて助かってるよ、ここらの魔物はHPが多くて厄介だからなぁ」

僧侶「勇者様に出来ることと言えば薬草を渡すことと戦うことぐらいしかできないですから…」



僧侶「あ、そうだ勇者様口を開けてください」

勇者「ん? あ、あー」

僧侶「じゃあ薬草を食べさせてあげますね?」

勇者「んんっ! い、いやそれはいいよ…自分で食べれるから」

僧侶「あーん!」

勇者「はい…」



剣「爆ぜろ」

兜「ムカつくわぁこれ、見せ付けんならよそでやれ」

勇者「死ぬほど恥ずかしかった…」

勇者「いやでも…これは、いつも食べる薬草より効果が出てるような?」

僧侶「やっぱりそうでしたか、じゃあこれからは私が勇者様に食べさせてあげますね!」

勇者「あ、あー…そうだ、喉、喉渇かないかな? そうだ、何か飲もう」

勇者「とっておきを用意したんだ! 僧侶さん驚くなよぉ?」

僧侶「話題をすりかえられたような気がしますけど…何か用意したんですか?」




剣「まさかお前、アレを出す気じゃねぇよな…」

兜「今ならまだ間に合うから、アレを出すのはやめておけ」

勇者「そら、牛乳だ!」タプッ


剣「やっちゃったこのバカ…つーかデカッ!」

鎧「入れすぎだバカ…2リットルは入ってるぞそれ」

僧侶「なぁっ!?」

勇者「おお!? 驚いたか! そりゃそうだろう、なんせ牛乳なんだから」

勇者「さぁ飲んでもいいぞ! 味は俺が保証する!」

僧侶「ち、近付けないでください! 変態!」

勇者「あ、あれ…思ってた反応と違う…」



僧侶「…もう、勇者様なんて大っ嫌いです!」



剣「勇者がバカでごめんな…本当にごめん」

兜「裁判沙汰だよな、これ」

勇者「」

僧侶「……はぁ、勇者様はこうでしたね」

僧侶「いいですか? アレは女の人に絶対に見せたりしないで下さい」

僧侶「全く……本当はもっと叱りたいですけど早く行きますよ」

勇者「その、ごめんなさい…」

僧侶「…一度だけ許してあげます、本当にバカなんですから!」

僧侶「ですからしょぼくれてないで先に進みますよ、魔王の城まであとちょっとなんですから」




剣「強い子になったな、僧侶」

勇者「やはり山登りは…結構キツイな」

勇者「オマケにこんな山道でも魔物が襲ってくるなんてな…よっと!」ザシュ

僧侶「はぁ……はぁ…」

勇者「少し休憩、するかな…少し先に休憩できそうな場所が見える、今日はそこで野宿しようか」

僧侶「は、はい…」




勇者「はぁ…山道なら少しは魔物も減るかと思ったが、そう甘くは無かったみたいだな」

僧侶「よく、こんな場所で戦えますね…」

勇者「むしろ広範囲に散らばってないから戦いやすいかな、とりあえず僧侶さんは休んでてくれ」

僧侶「そうします…すいません、足手纏いになることばかりで」

勇者「いや、足手纏いなんて思ってないよ、ピオリムをかけてくれたりしてくれて助かってるさ」

勇者「補助呪文に関してはあまり得意じゃないから本当にありがたいよ」

剣「だからコイツは自分で補助呪文をかけてなかったのか」

兜「自前の能力だけで全て解決してきたからな、それと俺らの効果も多少はあるか」

剣「そういや兜ってどんな効果なんだ?」

兜「俺は魔力を限界以上に引き出す能力だな、常時全開状態で魔力を出させる」

兜「普通なら一時間持たずに廃人になるが…今回は勇者だからな」

剣「やっぱり人間じゃないなコイツ」

勇者「魔物も少し落ち着いてきたし俺も少し休憩するか…」ゴソゴソ

勇者「薬草でも食べて体力補給しておくか」モグモグ


僧侶(薬草を束ねてるのって…アレですか、牛乳よりマシですけど)

僧侶「勇者様、あのですね…勇者様が持ってるその薬草の束のそれなんですけど」

勇者「ん? あぁこれ便利でしょ? 部屋に置いてあったんだ」

僧侶「使い方が間違ってるというかなんと言うか…」

勇者「ん? まぁ確かに風船っぽいからなんか違うとは思ってたけど、これに入れるものだったのかな?」

僧侶「…なんでもないです、やっぱり今の話は忘れてください」

勇者「もしかして本当の使い道を知ってたり?」

僧侶「い、言えるわけないじゃないですか! 自分で調べてください!」




剣「子供ができるのは何年先になることやら」

兜「コウノトリが運んでくると思い込んでるかもしれんな、この様子じゃ」

――翌日



勇者「よいしょっと…ここらの魔物も全て倒したし、この尾根を越えれば…」

勇者「見えたな…あの城が魔王がいると言われる魔王城か…」

僧侶「そうですね…ここにいるだけでも瘴気が肌で感じます」

勇者「そうか…遂にここまで来たんだな」

勇者「あとは魔王を倒して、それで終わりか…長かったな」

僧侶「それなんですけど勇者様、そろそろ解呪しませんか?」

勇者「……丸腰で魔王と戦えと?」

僧侶「案外勝てそうじゃないですかね、勇者様なら」



剣「それはそうだが、俺らとしてはやめて欲しい」

勇者「一応理由を聞いてけど…どうして?」

僧侶「そうですね…いくら勇者様とは言え呪われたまま魔王と戦うのはあまり良いとは言えません」

僧侶「であればここで解呪をしておくのが良いかと思いまして」

勇者「…いや、俺はこのまま魔王と戦う」

僧侶「ですが、やはり呪われたままなのは危険だと思います」

勇者「それはそうだけどさ…」



勇者「パンツ一丁で魔王と相対するのって絵面的にどうなのよ」

僧侶「そこは…勇者様のオーラ的なのでなんとかカバー出来ませんかね?」




剣「パンツ一丁で魔王と戦うところを見てみたいと思ってしまった」

兜「後世に語り継がれる内容がパンツだけの勇者が~ってなるのもそれはそれで見てみたいな」

勇者「オーラって…俺そんなの出せないからね?」

僧侶「気合入れれば出せますって! トイレに駆け込む前の勇者様はそれっぽいの出せてましたし」

僧侶「なんとかこう……頑張ってください!」

勇者「頑張ってと言われても…いやいや、ダメでしょ」



剣「なにその話、俺らが封印されてたときに何があったんだよ」

勇者「とにかく、俺はこの見た目が好きだからこのまま行く! パンツだけで戦うのも無し!」

僧侶「くぅっ…やはり解呪は出来ませんでしたか…」

勇者「まぁこのままでも何とかなるって、それより魔物さん達がお出迎えしてきてるぞ!」ズバッ

僧侶「サポートします! ピオリム!」

僧侶「…これだけ唱えておくだけであとは勇者様が蹴散らしてくれるんですけどね」

僧侶「やっぱりパンツ一丁だけでも勇者様なら勝てるんじゃないかなぁ…」

僧侶「あっ倒し漏れ…えいっ!」ゴス




剣「僧侶がこの旅に順応しきってるわ」

兜「積極的に殴りに行く僧侶とか前代未聞だよ」

書き止め尽きたから一旦終了

――魔王城前




勇者「ここが……魔王城」

僧侶「うっ…くっ……凄い瘴気…」

勇者「聖水もここまで来ると殆ど効果が現れない、か…」

勇者「だが、ここまで来たんだ…気を緩めずに行くぞ!」

僧侶「はいっ!」



剣「俺の刀身にも震え来る…ゾクゾクしてくるな」

靴「けど勇者は震えてはいない…覚悟が決まってる証拠だな」

剣「靴か…聞きそびれてたけどお前の効果ってなんだ?」

靴「俺は全異常状態無効だな」

剣「つまり酒を飲みすぎても酔わなくなるって事か?」

靴「そういうのは無理だな、毒とかそういう外部からの効果によるものだけ防げる」

――魔王城内部



勇者「流石、魔王の根城だけあって敵も強いな…」

僧侶「そう言っても勇者様攻撃受けてないじゃないですか」

勇者「まぁそうなんだけど反射ダメージが結構厳しくて、薬草じゃ回復が間に合わないんだ」

勇者「聖水も合わせて飲むと暫く動けないし…」

僧侶「そ、そうですよね…あんな状態ですと戦えませんからね」

勇者「……思い出して凄い恥ずかしくなってきた」

僧侶「ま、まぁまぁ気にしてないですから…あ、今のうちに薬草を食べさせてあげますか?」

勇者「それはそれで恥ずかしいんだけどな…だが、また魔物が出てきたみたいだな」

僧侶「またですか…少しは手加減して欲しいですね」

勇者「それだけ魔物も本気だって事さ、バックアップは任せる!」ダッ

僧侶「分かりました!」

剣「よくもまぁあんなに魔物と戦って体力が持つもんだ」

腰当「無駄に体力はあるからなぁ…変なとこでも体力はあるけど」

剣「そういえば腰当のメリット効果聞いてなかったな…どんなのだ?」

腰当「俺は無理やり体を動かせてる、平たく言えば怯み無効だな」

剣「そんな効果なのか? あまりぱっとしないな」

腰当「そうでもないぞ? 攻撃後の硬直を無くさせてたり、後は無理やり体を動かせてたりしてるさ」

剣「なるほどな…縁の下の力持ちって感じか」

腰当「まぁそんなとこだな、ダメージ負ってないから俺の効果の殆ど使われてねぇけど」

勇者「ふぅ…やっと魔物を全部倒し終えたかな」

勇者「沢山出てくるから根こそぎ全部倒せばと思ったら案の定後半は魔物が出てこなくなったし」

僧侶「……全部倒しきってしまうのは流石としか言いようがないです」

勇者「正直少しやりすぎたかと思ったけど案外なんとかなるもんだな」



剣「やりすぎってレベルじゃねーぞ」

剣「一応ここラスダンの魔王の城だぞ、それっていいのかよ」

勇者「……ここが最後の扉か」

僧侶「この先に魔王がいるんですね…」

僧侶「勇者様…私は、覚悟が出来ています」

勇者「あぁ…正真正銘最後の戦いだ…行くぞ!」ガチャ



ビリィッ!



勇者「なん、だ…?」

僧侶「うぐっ! …か、体がっ……」



剣「うおっ! 俺にもビリってきたぞ!」

兜「お前にもか、実は俺もだわ」

鎧「ビリってきたぁ…うおおぉ……」

剣「装備にも効果が来るとか、魔王の力パねぇわ…」

魔王「来たか…勇者…ってなんだお前っ!?」

魔王(なにあの装備…これって見た目も変わる的な魔法だったのか……あ、口調直さないと)



勇者「なんだお前とはなんだ! 俺は正真正銘の勇者だ!」

魔王「ん、ぅん! ……その格好で勇者とは…ふっ、まだ自身の変化に気付いておらぬようだな」

勇者「なにっ!? 貴様、何をした!」

魔王「憐れだな、勇者よ……自身の変化に気付かずにここで朽ち果てるとは…実に憐れだ」

魔王「我は魔王……全ての魔を率い、全ての魔の頂点に立つものだ」

魔王「勇者よ…忌々しき勇者よ、我は幾度と無く貴様らに辛酸を舐めさせられてきた…」





魔王「その忌々しき装備さえ無ければ……っ!!」




剣「えっ俺らってマジモンの伝説装備だったの!?」

兜「嘘だろ……いやだって魔王本人が言ってるって事はそうだよな…」

鎧「勇者ってマジすげぇわ…よく見抜いたわ、俺らのこと」

勇者「やはりこれは伝説の装備だったのか…」

魔王「ふっ気付いていなかったとは愚かなものだ…」

魔王「まあよい、我はその忌々しき装備に打ち勝つ術をもう施しておる…」

魔王「最早貴様に我を打ち滅ぼす手段は残されておらぬのだ!」

勇者「くっ……」

魔王「ふははははっ! 悔しくて声も出せぬか、勇者よ!」

魔王「貴様は何も出来ずに死ぬのだ…さらばだ、忌々しき勇者よ」


魔王はマヒャドを連続で唱えた!



勇者「そんな魔法、全部たたっ斬ってやる!」ガギッ

僧侶「凄い…次々と襲い掛かってくるマヒャドを全て斬っている…」


魔王「ほう…流石は勇者というべきか、そうでなくてはな」

勇者「今だッ!」ダッ

魔王「それに素早さもそれなりにあるか…だが、まだ気付いておらぬようだな」


魔王は突風を放った!


勇者「ぐぅっ! …近寄れない…っ!」

魔王「ここまで来れた事は褒めてやろう、憐れな勇者よ…褒美に教えてやろう」

魔王「貴様が何故我に勝てぬのかをな…」

魔王「貴様の装備は今、魔の属性となっておるのだ」

勇者「なに…!? 魔の属性だと!」

魔王「ふっ…伝説の装備は確かに強力無比だ…それも魔を滅する為に作られた物であるからな」

魔王「だが、我はこの場において貴様ら人間の持つ力を全て真逆の性質にしたのだ…」

魔王「聖なる物は魔に…ククク、この意味がいくら貴様でも分かるだろう?」

魔王「故に我は貴様らの装備では一切傷を負わぬのだ!」





剣「……ん?」

兜「あれ待って、これ魔王自爆してね?」

鎧「というより俺らの体なんか浄化されてね?」

篭手「あ、ホントだ…呪い効果が逆になったから祝福されてるわ」

盾「魔王もバカとか冗談にもならねぇよ」

勇者「なん…だと!?」

勇者「くそっ…俺では、魔王に敵わないのか…っ!」

僧侶「いや、その…とりあえず勇者様、攻撃してみたらどうですか?」

勇者「無駄だっ! だってこの装備は…っ!」

僧侶「一回攻撃してみましょうよ、試しもしないで諦めるのは早いですって」

勇者「……それも、そうだったな! いくぜ魔王!」グッ

魔王「それでもなお足掻くか…面白い、ならばどこからでも切りかかってくるが良い!」


勇者「うぉおおおおっ!! 喰らえ魔王!」ザンッ



魔王「げっふぅううううううっ!!!」



剣「めっちゃ効いたな」

兜「バカだろコイツ」

勇者「まだいける! もう一度だ、魔王ッ!!」ザシュ


魔王「ガァアアアアアッ!!!」ヨロ


魔王「ば、バカなっ! ……こんな、筈ではっ!」

勇者「効いている!? なら…これで最後だ!」

勇者「トドメだ、魔王!!!」ズバァッ



魔王「ウグハァッ!! こ、こんな筈では…っ!」


僧侶「あっけなかったですね勇者様」

勇者「あ、ああ…今まで戦ってきたどの魔物よりも弱かったかもしれん」

魔王「何故だ……何故ッ!?」

僧侶「何故って…勇者様の装備全身呪われてるからに決まってるじゃないですか」



魔王「呪いだとっ!? …こんな、こんなふざけた勇者に…我が……」

魔王「ウグォオオオオッ!!!」





兜「魔王の攻撃マヒャドと突風しかしてないな」

剣「こんな終わり方酷すぎるだろ…」

一旦終了。

勇者「やったか!?」

僧侶「あの攻撃を受けて立ってていられるはずもありません…」


剣「おいバカ共、それをフラグって言うんだよ」


魔王「グッ……ヌァアアアア!!! まだだ! まだ我は死なぬ!!」

勇者「なにっ…まだ立ち上がれるだけの余力を残していただと!」

勇者「ならばもう一度ぶった切るだけだ!」ズバッ

魔王「グヌッァアアアアア!!!」ドサッ

勇者「今度こそやったか!?」


魔王「くっはっはっは! 我は実は第三形態まで進化できるのだ!」

勇者「うぉおおおお! 今度こそ仕留める!」ザシュッ

魔王「ば、馬鹿な……おのれ、勇者めぇええええ!」

勇者「流石の魔王もこれなら…」



僧侶(あれこの流れって……すっごい面白そうな流れになるんじゃ…)

僧侶「私も混ぜてください勇者様! 何回魔王が起き上がるか数えましょう!」



剣「魔王で遊ぶな、おいバカやめてやれ」

勇者「ゴキブリ並みにしぶとい魔王でも、今度こそは…っ!」

僧侶「第三形態いやに出し惜しみしてますよね、早く変わってくださいよ」ボコッ

勇者「……あの、僧侶さん? やけに好戦的じゃないかな?」

僧侶「だってこんなおもしろ……じゃない、人類の敵である魔王が何度でも蘇るのですよ!」

僧侶「僧侶として見逃せるわけがないじゃないですか!」

勇者「僧侶さん……分かった! 魔王が完全に滅びるまで俺達で何度でもやっつけてやるぞ!」

僧侶「その意気です、勇者様!」




剣「魔王が不憫すぎて同情するわ…」

鎧「超強化された勇者が一撃で魔王を倒してその後にフラグを言ってるのがもう…な」

兜「僧侶が悪い遊び覚えなければいいんだけどな…」

剣「っつーか気になってたんだけど俺らって今どうなってんのよ」

兜「ん? 呪いが反転して祝福された作用を勇者に引き起こさせてるな」

剣「そこだよ、そこ…呪いと祝福で相殺されてるのか?」

鎧「いや、見た限りだとこれは相殺されてねぇな…」

剣「…つまり?」

兜「だから…呪いが逆になってんだよ、箇条書きで説明するとこうなる」


剣:反射回復
兜:HPMP倍増
鎧:防御以外全能力倍増
盾:回復呪文倍回復
腰当:数ターンごとに回復
篭手:エンカウントなし
靴:行動速度高速化、たまに二連続攻撃


剣「いじめってレベルじゃねーぞ!」

剣「でもさ、全て逆になるとしたら鎧とかのメリット効果も逆になるんじゃないか?」

鎧「そこなんだが、全部逆になってるわけじゃないっぽいな」

鎧「全部逆になってたらあのバカがバカじゃなくなって天才になるだろ」

剣「あぁ、それもそうか…だけど俺ら人間じゃなくて装備だぞ?」

鎧「そこなんだが、メリット効果は俺が鎧として生まれた時からあるものだ」

鎧「言い換えると俺の個性って言えばいいのかな…人間で言う性格みたいなもんだ」

鎧「そこでさっきの話を交えつつ解説すると…どうやらメリット効果はそのままだな」


剣「…じゃあ、俺ら呪い装備じゃなくて最強装備? つーか、祝福装備?」

剣「祝福装備の俺らがこんなアホみたいな会話してるのって…なんか、変じゃね?」

鎧「……」

篭手「……」



兜「……勇者君! 僕たちの力を存分に使って一緒に魔王を倒そう!」

剣「今更口調変えても遅いわ! それ以前にもう何十回も魔王倒してるし!」

兜「まだだ勇者君! 臓物を引きちぎり、血祭りに上げてやるんだ!」

剣「こえーよ!」

剣「魔王も無駄に体力あるよな、さっさとやられりゃいいのに」

兜「倒すたびに勇者がフラグを言うから魔王も乗ってるんだろう」

剣「端から見ると弱いものいじめだよな」

兜「まさかこれが魔王対勇者の対決とは思えないわな」

兜「魔王も魔法を解除したいんだろうが起き上がる瞬間にメッタ切りにされてるからなぁ…」




剣「…あのさ、魔王がこの魔法を解除する前に勇者が魔王を滅ぼしたら俺らはどうなるんだ?」

鎧「どうもこうも、まず最初に魔法の効果が切れて俺らは元に戻る」

鎧「それにここに入ったときになったあの変な感覚…たぶんこれは空間を弄っているんだろう」

鎧「勇者が魔王を倒さずともここを出て行けば俺らは元の生活に戻れるって訳だ」

剣「なるほどなぁ…」


剣「折角の最強状態が一撃でやられる魔王相手だとつまんねぇな」

兜「これってやっぱりパンツ一丁でも倒せたんじゃね?」

剣「魔王弱いし結構余裕でいけてただろ」

魔王「グ……ググ、ただでは、死なぬ……勇者よ、貴様も黄泉へと道連れにしてくれるわ!」


グンッ!


僧侶「あ、ちょっと遊びすぎたかも…」



剣「魔王このループに気付いて流れ変えてきたわ…っつーか、ヤバくね?」



勇者「こ、コイツ、最後の力でなにを…っ!」

魔王「ふっ……ふはは……貴様は、魔の狭間に…永久に出れぬ地で朽ち果てるが、よい…」

勇者「か、体が引きずり込まれ…マズっ!」

僧侶「勇者様ぁ!」

勇者「う、うわぁあああ―――………」


シュンッ

――魔の狭間



勇者「うぉおああああっ!」

ドシッ


勇者「いででっ……くっそ、魔王め…死ぬなら一人だけにしろ! 俺を巻き込むなっ!」

勇者「出口はどこだ! はやく戻らないと…」

勇者「出口……の前に早速魔物のお出ま…し……」

勇者「はは、ちょっと魔物が……多すぎるんじゃないかな」



剣「万は越えてるな、もしかしたら億はいそうだ」

兜「これは流石の勇者でも、これはダメかもわからんね」



勇者「…出口を探すのはこいつらを全部倒した後にしろって事かよ」

勇者「それに、ここに来てからなんだか、体が重くなった気がするし…ん? 魔王の間だと普通だったか?」

勇者「そんな難しい話は後だな……とりあえずこいつらを片付けるのが先だ!」

――数十時間後



勇者「はぁ……っはぁ…まだ、いるのかよ……少しは休憩させてくれ」

勇者「うぐっ…ダメージが……キツイな」

勇者「ゲホッ……くそっ…」


魔物「グァアアッ!」

勇者「っ! しまっ…」ドガッ

勇者「っぐぅ…体当たりだと……」




剣「おいやべぇぞ! このままじゃ勇者、死んじまうんじゃねぇのか!?」

鎧「…いや、今回は大丈夫だな、むしろいいタイミングだったかもな」

剣「はぁ!? 何言ってるんだよ! お前の効果だと逆に勇者が苦しむだろうが!」

鎧「俺のことは俺が一番知ってる、今回は大丈夫だって言ってるんだから…まぁ見ておきな」

勇者「ぐっ…この、野郎っ!」

勇者(ダメだ…力が、コイツを振り払う力が沸いてこねぇ…)

勇者(このまま……俺は、死ぬのか?)



ゴギュ…ゴギ…


勇者「うぐっ…ぐっ……ん…んん?」

勇者「な、なんだ? 力が…回復、した?」



剣「どうなってんだ、こりゃあ一体……」

鎧「前にも言ったが、俺は吸収しているんだ、どんなものでもな」

剣「そんなことは知ってる、だが、どういうことだ?」

鎧「そうだなぁ…前回同じような状況になった時、勇者はダメージなんて受けてなかっただろ?」

剣「あぁ、僧侶守った時か」

鎧「そうそれ、今回は疲労困憊、もう戦えませんって状況だったな」



鎧「最初の時は過剰すぎる回復を勇者に与え、今回は丁度良い回復を与えただけだ、デメリットはねぇよ」

鎧「あまりにも強すぎる回復は時として毒になる…薬と一緒だな」

剣「お前って…呪い装備だよな?」

鎧「最初に作られたときは呪われてなんかなかったさ、それはお前だってそうだろ?」

剣「まぁそうだが…」

鎧「俺が作られた当初の目的は回復役を必要としない完璧な戦士を作り上げることだったわけだ」

鎧「…もっとも、過剰回復については不具合として出てきた訳で、これが呪いを生み出す要因になったわけだが…まぁここは説明しなくていいか」

鎧「とにかく、今回初めて勇者が俺を本来の目的で使いこなしたと言う訳だ」

剣「そうか…そういうことだったのか」

勇者「…なるほど、この鎧はこの時の為にこの効果があったわけか!」

勇者「なら、俺はまだ戦えるっ!」


魔物「――ッ!!」カァッ


魔物はベギラゴンを唱えた!


勇者「おっと…盾でガード!」

勇者「そして呪文の唱え終わりが一番の弱点だ! 踏み込み切り!」ザシュ


勇者「ははっ…なるほど、初めて盾を使ったけど、これは便利だな」

勇者「…これなら、こいつらを全て倒せるな」

勇者「魔の狭間だかなんだかしらねぇけど…魔って付く位なんだから、その魔を全部倒せばいいって訳だろ!」

勇者「っしゃあ! やってやるか! 勇者様と伝説の装備が相手してやるぜ!」



剣「ヤバイ、惚れそう…」

兜「やっぱりお前ソッチの趣味あったんじゃねぇかよ」

剣「……い、言い間違えだ」

勇者「もう何時間? 何日? いや、何年経ったかわかんねぇや……」

勇者「ただひたすらに戦い続けた……けど、お前で最後だ!」

魔物「ゲヒュッ…」


勇者「あーーっ! 終わったぁ! 疲れた…これ以上はもう無理だ、戦えねぇ」ドサッ

勇者「……帰れないよなぁ、魔物全滅させたらもしかしてとか思ったけどさ」

勇者「……僧侶さん、心配してるよなぁ」

勇者「いやでも魔王を倒してからどのぐらい経ってるか分からないし、もう俺のことなんて忘れてるか」

勇者「実はもう何百年も経ってて別の魔王や勇者が生まれてたりしてな!」

勇者「その時は俺も加勢して今度こそ魔王を完全に倒しに行きたいもんだ…」

勇者「……僧侶さん、可愛かったなぁ」

剣「かーっ、こんな時まで色恋沙汰取り出すとかやってらんねぇわ」


勇者「なっ…なんだ!? どこから声がした?」

兜「俺らが封印されてるときに一発僧侶とヤっておけば良かったんだよ」

剣「でもよ、このバカがそんな考えまで持ち出せるわけねぇだろ」

勇者「バ、バカとはなんだ! 俺は勇」

腰当「あー、はいはい勇者だろ? 聖水飲むと決まって……」


剣「え、ちょっと待って…俺らの声聞こえてる的な?」

剣「ちょっと待て勇者、緊急呪い会議開くからお前黙っとけよ!」

勇者「呪い会議って…」

剣「だから黙っとけって言っただろ! …なぁこれどういうことだ?」

鎧「こんなの初めてだ、俺に聞くな」

兜「いぇーい、勇者? 聞こえてるぅ?」

勇者「うるさいほどに聞こえてるよ…というかこの声って誰だ? 神様なのか?」

盾「ちげーわボケ、お前がいつも身に着けてる物だよ」

勇者「……パンツなのか?」

剣「パンツじゃねーよ! お前呪い殺……せなかったわ」

剣「っつーかお前、何勝手に俺らの会話に割り込んできてるんだよ」

勇者「勝手にと言われてもな…聞こえてくるんだから仕方ないだろ」

勇者「でも、話し相手に困ることは無くてよかったよ」

剣「まさかお前、このままこの何もない場所で一生を終えるつもりか?」

勇者「……元の世界へ戻る手段が見つからないんだから仕方ないだろ」

剣「お前なぁ…仮にも魔王倒した勇者だろ、こんな所で諦めてどうすんだよ」

剣「それにこんな何も無い場所でお前と一緒に居たくねぇし、こっちから願い下げだ」

勇者「はは、男相手だと色々嫌だよな」

剣「ちげぇよ、ゴムに牛乳ブッ込んで他人に見せ付ける変態と一緒に居たくねぇだけだ、勘違いすんな」

勇者「やはりアレはまずかったのか…確かに、そうかもしれないな」

剣「当たり前だろ、ゴムに白い液体って時点でダウトだよ」

勇者「そうだよなぁ…」



勇者「天気が良いと中に入れた牛乳が腐っちまうもんな…」

剣「そこじゃねーよ」

剣「あぁもう、コイツ! 剣術と魔術覚える前に一般教養を覚えろよ!」

剣「薬草と聖水一緒に飲み食いする時点で色々勉強しなおせ!」

勇者「いやぁでもあれ結構回復するんだ、ケアルラぐらいに」

剣「ケアルラってなんだよ、せめてベホイミって言えよ!」

勇者「そうは言ってもそう例えるしかないんだって…あ、聖水飲んで良い?」

腰当「ばっかおめぇそれだけはやめろ、俺にナニをくっつけんじゃねぇ、ガチで呪い殺すぞ」

勇者「」

腰当「…つっても呪い殺そうとしてもお前には全く効果無いからな…呪い装備としてやってらんねぇわ」

勇者「それは…ごめん?」

腰当「俺が装備じゃなけりゃ勃起不全の呪いも付けてやるのによ…装備だから出来ねぇし」

腰当「っつか、そんな事したら勇者のガキを拝めねぇからな…お前も男ならさっさと僧侶を襲っちまえってんだ」

腰当「そんで僧侶だけにナニを使え…俺に使うな、イカ臭くなっちまうだろうが」

勇者「善処してみる…」

腰当「善処じゃなくやれ、これは俺からの命令だ、いいな?」

腰当「いいか、お前に対して言ってるんじゃない、俺の身を守るために言ってるんだ、勘違いすんじゃねぇ」


剣「腰当ってツンデレとか言われた事ないか?」

腰当「言われたことねぇし……おいやめろバカ共、俺を見るな」

一旦終了。

勇者「そっか、信じたくはなかったけどこの装備は伝説の装備じゃなかった訳か…」

剣「誰がどう見たって違うって分かるだろうよ」

勇者「そうは言っても長年放置されてたり、封印がされていたりしたらそう思うだろ?」

剣「あのなぁ…確かに俺らは封印されてたけどこの封印は閉じ込める的な封印だぞ」

剣「悪い意味の封印だ、伝説要素なんて皆無だよ」

勇者「……それでも、俺はこの装備を伝説の装備として使い続けていくさ」



勇者「なんていったって俺の冒険を支え続けていてくれた紛れもない装備だからね」

剣「……気色悪ぃな、けどまぁ気持ちだけ受け取っておくぜ」

兜「一番活躍したの剣だもんな、そう照れるなよ」

剣「ばっ…! うっせ、黙れ!」

兜「おもしれぇ奴だ……けどまぁ勇者もイカれずによく装備し続けたな」

勇者「はは、もしかしたらもうとっくの昔からイカれてるのかもな!」

剣「ちげぇねぇ、全身呪い装備で固める奴なんて今後絶対出てこねぇな」

勇者「そこは嘘でもイカれてないと言ってほしかったよ」

兜「そう考えると俺らがこうやって揃っていけるのは勇者が最初で最後になるって訳か…」

兜「勇者が俺らを使わなくなったら、俺らはお別れか……」




剣「……そういうの、やめろよ」

鎧「……」

篭手「……」



鎧「勇者、お前が俺らを揃えてくれて良かった……やっぱ色んな意味でお前は化け物だ」

盾「最後の最後でやっと俺も使ってくれたしな…正直忘れられてるかと思ったぜ」

篭手「呪い装備同士、話し合えて楽しかったぜ…勿論勇者、お前もな」

腰当「ナニをつけてくるのだけは嫌だったがお前はまさしく勇者だ、俺が認める」

靴「この見た目で勇者ってのもおかしな話だが一人くらいこんなのがいても良いよな」



剣「このしみったれた空気は俺らには似合わねぇな…けど、最後ぐらいはいいか」



勇者「……あぁ、俺もこの装備に出会えて本当に良かったさ」

勇者「しかし…どうやって帰ればいいものか」

剣「魔王が死に際に放った魔法をお前も使ってみればいいんじゃね?」

勇者「俺はそんな魔法なんて知らないぞ、第一使えたとしても魔力が足りるかどうか…」

剣「ルーラとかは使えるだろ、確かあれって行きたい場所を念じるだけで行けたりする魔法だったよな」

剣「それで最後にあんだけボコボコにした魔王の場所をイメージしたら案外いけるんじゃないか?」

勇者「だが、そんな正確な場所を指定するとしたらどれだけ魔力を使うか…」

剣「……はぁ、しかたねぇな」

剣「本当だったら最後まで黙っておくつもりだったけどよ…俺の魔力を使え」

勇者「お前…攻撃力が上がるだけの武器じゃなかったのか!?」

剣「そんな安っぽい武器な訳ないだろ……一応俺が作られた理由を話すか」

剣「いいか? 人間ってのは魔力の限界が誰にもある」

剣「過去の人間ってのはその限界を超えた魔力を求めたって訳だ」

剣「兜は限界を超えた魔力を引き出せるように作られたが、俺は違う」



剣「殺した奴の魔力を蓄えておけるんだよ」

剣「まぁ大半が使い物にならない魔力だから、そこを攻撃力に割り振ってるわけでこれが原因で呪いが…って今はそんな事どうでもいいか」

剣「とにかく、山ほど魔物を倒してきたんだから帰れるぐらいには溜まってるだろ」

剣「ここで使わないなんて勿体無いし、勇者がこの魔力を使って俺らを元の世界に戻してくれた方がいい訳だ」

剣「仮にも魔王を倒した勇者様が行方不明じゃ寝覚めが悪いからな」

勇者「……なら、ありがたく使わせてもらうよ」

剣「礼なんていらねぇ、俺はその為に作られた訳だからな」

兜「ほら……さっさとルーラ的なの唱えろ、天井に頭ぶつけたりとかはしないはずだ」

勇者「……よし、じゃあ帰るぞ! 魔王もまさか帰ってくるとは思わなかっただろうな!」

剣「ちげぇねぇ」

勇者「じゃあ行くぞ…転移魔法!!」

兜「あ、そこは明確な呪文名じゃないんだ」




剣(……この魔力を使っちまったらお前と話せなくなるなんて、かっこ悪すぎて言えねぇよ)

――魔王城内部、魔王の間



僧侶「勇者様を、返してください!」ボコッ

僧侶「いつまで寝てるんですか! 魔王ならさっさと起きて勇者様をここに呼び戻してください!」ドガッ

僧侶「さっきまでの元気の良さはどうしたんですか! ほら、早く起きて…」

僧侶「勇者様を…あの優しい勇者様を……返し、て……」ポロッ





僧侶「ぅ……ぅぅ……」グスッ

シュンッ



勇者「ぅうっ…気持ち悪っ……目眩がして、おぇえええ……」

僧侶「……ゆう…しゃ、様…?」

勇者「ここは……? 戻れた、のか?」

勇者「そうか……戻れたのか」



勇者「僧侶さん……心配かけてごめんな?」

僧侶「勇者様ぁ……」

勇者「ははっ、僧侶さん涙出しすぎだって…」

僧侶「本当に……本当に勇者様なんですよね? 偽物じゃない、ですよね…?」

勇者「偽物じゃないって……いやでも本家がいるから俺はやっぱり偽物?」

勇者「じゃあ勇者代行? …いやでも魔王倒したしやっぱり俺は勇者?」

僧侶「……ふふっ本物の勇者様でした」

勇者「落ち着いたところで少しいいかな? 魔王を倒してからどのぐらい経ったか分かるかな?」

僧侶「そうですね…大体30分ぐらい、ですかね」

勇者「30分!? …そっか、あの世界はこっちとは時間の流れが違うのか」

僧侶「時間の流れってどういうことですか?」

勇者「いや、なんでもない……ところで俺ってどこか変わっていたりしてないかな?」

僧侶「えっと…見た目的には特にこれといった変化は見られないですかね」

勇者「そっか、それは良かった……あの世界は時間が緩やかに流れていた世界、だったのかもな」

勇者「……それじゃあ帰るか、魔王を倒したってことを皆に伝えるまでが冒険だ!」

僧侶「でしたら最後まで一緒にいきますよ、勇者様だってことを私が伝えないと町に入れませんからね!」

勇者「そうだった……その時はお願いするよ」

僧侶「お安い御用です!」

勇者「それと、この装備と共にな!」



勇者「……? あれ、おかしいな」

僧侶「どうかしたんですか勇者様?」

勇者「……そっか、そういうことだったのか…剣も良い格好見せやがって」

僧侶「え、えっと…?」

勇者「いや、なんでもない! もう聞こえないけど、今頃色々言い合ってるのが居るって思ってさ」

僧侶「は、はぁ……」

勇者「今度こそ帰ろう! 皆が俺たちの帰りを待ってるぞ!」




勇者「呪いの装備で固めてしまった」

勇者「……けど、俺にとっては伝説の装備だ!」

終わり
一週間以上続けるつもりなかったけど見てくれてありがとう

いくつかレス抜けあったけどもう思い出せないからスマンな…唐突に出てくる上官衛兵とかとか…
手直しするのもアレだしこのままHTML化出してくる

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