サターニャ「殺すのって…最高…」ガヴリール「サターニャ…」 (130)

ガヴリール「はぁ…せっかくの春休みなのに補修とかツイてないわ…」

サターニャ「まったくね…」

サターニャ「ヴィネットとラフィエルは一足はやく実家に帰るし、まったく…」

ガヴリール「友達を何だと思ってるんだろうな」

ガヴリール「『ちゃんと勉強してこなかったガヴの自業自得よ』、だとか…」

サターニャ「大体ヴィネットは悪魔のくせに成績優秀なのがオカシイのよ、あームカつく」

ガヴリール「ラフィだって『全然勉強してないですよ~』と言っといて全教科90点台だぜ?嘘つけよ」

サターニャ「……」

ガヴリール「……」

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サターニャ「今日はやけに気が合うじゃない」

ガヴリール「愚痴が弾みまくってるな」

ガヴリール「よっしゃ!休みに入ったことだし二人で遊びまくろうぜ、サターニャ」

サターニャ「いいわね、乗った!」

・・・・・・・・

ガヴリール「あー遊んだ遊んだ」

サターニャ「ううう…ガヴリールに負けた…」

ガヴリール「ゲーセン初めてにしても弱すぎだろお前」

サターニャ「うっさいわね!次は絶対に負けないんだから!」

ガヴリール「はいはい、期待しないで待ってますよ」

サターニャ「む~!」

ガヴリール「もう遅いし、ここいらでお開きにすっか」

サターニャ「あ…もうこんな時間だったんだ…」

サターニャ「あ、あのねガヴリール、その、今日はすごく楽しかった…わよ」

ガヴリール「…ん」

サターニャ「また、こうやって遊んで欲しい…な」

ガヴリール「…おう」

サターニャ「じゃあ、また!」

ガヴリール「ああ、またな」

ガヴリール(ったく、嬉しいこと言ってくれやがって…)

ガヴリール「さて、帰りますかね」

・・・・・・・・・

ガヴリール(人通りがないな、ここ…)

ガヴリール(…そういやこの道、前に物騒な事件があったらしいんだよなあ)

ガヴリール(賑やかな別ルートで帰ったほうが良いかな…?)

ガヴリール(…いや、早く帰ってネトゲだネトゲ)

ガヴリール(まさか幸せに満ちた春休み初めに限ってトラブルとかあるわけ、な)

ガヴリール(今の私には数分も惜しいのだ)

ガヴリール「~♪」


???「ハァハァハァ…ちっちゃくてカワイイよ…」

サターニャ「あ」

サターニャ「ガヴリールのやつ、クレーンで取った景品忘れてってるじゃない」

サターニャ「…」

サターニャ「まったく、世話が焼けるわね」

サターニャ(べ、別にあわよくばガヴリールの家でもっと遊びたいとか、そういうわけじゃないんだからっ!)

サターニャ「えーと、たしかこの道よね…」

サターニャ(暗いし…ちょっと怖いわね)

サターニャ(い、いえ、この大悪魔様に怖いものなどないのよ!!ふ、ふふふっ!!)

「ンー!ンー!!」

サターニャ「…え」

サターニャ「なに、さっきの…」

「ン゛ン゛ーーッ!!」

サターニャ「!!」

サターニャ(微かにしか聞こえないけど、これは誰かの声!)

サターニャ(篭ってて、必死に助けを求めてるような声…!)

サターニャ(まさか…!?)

変質者「ふ、フヒヒ…君は僕のお嫁さんになるんだよ…」

変質者「カワイイなぁ…いっぱい僕が可愛がってあげるからね…」

変質者「この前の娘はすぐ壊れちゃったからなぁ…今度は優しくしてあげなきゃぁ…」

ガヴリール「ンー!ンー!!」

ガヴリール(じ、神足通…!)

ガヴリール(ダメだ…!あ、足が震えて集中できない…ッ!!)

変質者「これから二人だけの場所へいこうね…」

変質者「そこで僕と君は結ばれるんだよぉ…」

ガヴリール「ン゛ン゛ーーッ!!」

ガヴリール(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!!!)

ガヴリール(誰か!!誰か助けて…!!)

「…ール…」

「…ガヴリールー!…」

変質者「うわっ、人が来たよ、さっさと出なきゃ…」

ガヴリール(サターニャっ!?)

ガヴリール(助けて…!!)

ガヴリール「ン゛ー!!!」

ゴンゴン!!

サターニャ「!!」

サターニャ「その車にいるのね!!」

変質者「ち、ちょっと何してるの?ねえ?」

変質者「ああそっか、僕にお仕置きされたいんだね!」ニコニコ

ガヴリール「ッ!!」

変質者「とととりあえず、あの邪魔者を消さないとね、フヒッ」

変質者「ね?」ニコォ

ガヴリール(ヒイッ!!)

サターニャ「開けなさいッ!!」グッ!グッ!

サターニャ「なにしてんのよ!開けろ!!」グッ!グッ!

変質者「うるさいな、今開けてあげるよ」

変質者「……ヒヒ」チャキ

ガヴリール(は、刃物…!)

ガヴリール(サターニャが…!!)

サターニャ「あけ…うわっ!!」

ガラッ!!

変質者「こんばんわぁ」

サターニャ「へっ?」

変質者「さようならぁ」

サターニャ「…………~~~~ッ!!!!」

ザシュ


最悪の場面を想像し、思わず私は目を逸らした

一瞬だが永遠とも感じる間に、二種類の悲鳴が車内に反響し、間を置いて静寂が満ちる

恐々と、瞳を、戦慄しながら開いていく

サターニャの前には醜く肥えた成人男性の死体が転がっていた

サターニャ「…ぁ」

サターニャ「…が、ガヴリールは…!」

ガヴリール「……ぅ」

サターニャ「ガヴリールッ!!」

サターニャ「い、今解いてあげるから!!」

ガヴリール「…ッゲホッゲホッ!!」

ガヴリール「ハァハァ…うう…」

サターニャ「大丈夫!?何もされなかった!?」

ガヴリール「…大丈夫…何もされてない」

サターニャ「…よかったぁ…!」

ガヴリール「ホントにありがとう…サターニャ…」

ガヴリール「サターニャが来なかったら私は…私は…」ギュ

サターニャ「もう安心してガヴリール…」

サターニャ「ガヴリールを連れ去ろうとしたやつは私が…」

サターニャ「…私が?」

サターニャ「ころし…た…?」

サターニャ「ぁ…あああああぁ…」

サターニャ「ちがっ…わ、私…そんなつもりじゃ…」

ガヴリール「さ、サターニャ…?」

サターニャ「わ、私…人を殺しちゃった…ガヴリール…」

サターニャ「ど、どうすれば…」

サターニャ「怖い…怖いよぉおおおおおおおおおおおおおお…!!!」

ガヴリール「サターニャっ!!」

サターニャ「聞いて!!殺すつもりなんてなかったのぉ!!」

サターニャ「いきなり刺されそうになったから!!それで…!!」

サターニャ「刃物を奪って…私は…!?」

サターニャ「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガヴリール「落ち着け!落ち着けよサターニャッ!!」

焦点の定まっていないサターニャを私は強く強く抱きしめた

震えている、耳元でサターニャの嗚咽が痛いほど流れ込んでくる

サターニャ「あ゛ぁ゛あ゛ああああああああああ…う゛あ゛ぁあああああああああああああああああ……」

ガヴリール(私が…私がサターニャに助けを求めなければ…!!)

ガヴリール(私のせいでサターニャはこんなことに…ッ!!)

先程の恐怖はどこかへ消えていた

今はサターニャを何としても救わねばならない、その一心が私を突き動かし始める

ガヴリール「お前は悪くない…悪くないよ…」

サターニャ「ガヴリール…!私…私ぃぃ……!!」

ガヴリール「サターニャは私のためにしてくれたんだ、責められる理由なんかない」

サターニャ「わ、私は、この手でひ、人を…」

サターニャ「何度も…何度も刺して……!!」

ガヴリール「正当防衛だ」

ガヴリール「それに…こいつ見覚えがある」

ガヴリール「たしか誘拐の容疑で指名手配されてたやつだ…最低の人間」

ガヴリール「サターニャを恨むやつはいない、むしろ感謝されるくらいだ」

サターニャ「だ、だけど、私が殺したことを誰かに知られたらぁ…!!!」

サターニャ「もうみんなに会えないよ…!誰とも顔を合わせられない…!!」

サターニャ「私は終わりよ!!終わりなんだぁ!!!!」

ガヴリール「このことは二人だけの秘密だ、ヴィーネにもラフィにも、家族にも言うな」

ガヴリール「事件の証拠も残さない、私に任せろ」

サターニャ「ぇ…」

ガヴリール「お前に罪を背負わせるもんか」

ガヴリール「私が傍にいるから、だから安心してくれ」

サターニャ「ッ……!!」

サターニャ「が、ガヴリールっ…!!」

ガヴリール「よしよし、怖かったな、大丈夫」

ガヴリール「大丈夫だよ…」

サターニャ「うああぁ…ぁあぁあ…ガヴリール…!」

サターニャあやし、やっとのことで鎮まらせたのち、私はすぐ行動に移した

魔界通販で購入したグッズを尋ね、使えそうなものはないか検討し候補を絞った

この状況でサターニャを一人にするわけにはいかない

神足通を駆使することで即座にサターニャの家と現場を行き来し道具を揃えていく

術の失敗は許されない、ミスによるタイムラグはサターニャをますます追い詰めていく

私は天界時代と同等か、それ以上に冴えていた

よし、これでいい、問題なく抹消できそうだ

サターニャ「が、ガヴリール…私が手伝うことは…」

ガヴリール「いいよ」

ガヴリール「お前にあんなもの見せたくない」

サターニャ「でも…」

ガヴリール「じゃあ…そうだな…周りを見張っててくれないか?」

サターニャ「…うん…わかった…」

ガヴリール「うっ!」

時間もそれほど経っていないはずなのに、すでに死体にはハエが数匹たかっていた

臭い、これは腐乱臭か?それともこの男が発していた元々の体臭か?

息を止めるように努める、吐き気がする

ガヴリール「おぇ…うぷっ…!!」

ガヴリール(し、しっかりしろ…迅速に動け…!)

ガヴリール(こんな汚物さっさと消してサターニャの元へ戻らないと…!)

ガヴリール「クソッ…クソッ!!」ゲシッ!!

焦りと抑えきれない憤りから、死体に蹴りを見舞った

後で靴を捨てなきゃ

ハエが一斉に不快な羽音を撒き散らし、逃げ去っていく

私をこらえきれず、胃にあったものをもどしてしまった

自分がその気になって笛を吹けば一瞬で消せる軽い存在

そう思っていた

しかし、一つの命が絶えた光景を実際に目の当たりにしてみれば、ここまで重くのしかかるものだというのか

死体の血は赤い、人間は私たち天使や悪魔とほぼ変わらない命ということをまざまざと突きつけてくる

・・・・・・・・

ガヴリール「はぁ…はぁ…!」

サターニャ「ガヴリールっ!!」ギュウ

ガヴリール「…終わったよサターニャ」

ガヴリール「下界では未知のテクノロジーで処理したんだ…バレるわけない…」

ガヴリール「問題は一つもない…アハハ…!!」

サターニャ「ごめんね…ごめんねガヴリール…!」

サターニャ「ガヴリールに任せっきりで…私は…」

ガヴリール「…いいんだって」

ガヴリール「だけど…この状態じゃ一人過ごすのはキツイかも…ははは…」

ガヴリール「…サターニャの家に泊まっていいかな…」

サターニャ「うん…」

サターニャ「私もガヴリールと一緒にいたい…」

自分のゴミ屋敷ではとても気が休まりそうにない

そして、今は誰かと一緒にいたかった

その晩はサターニャの家へやっかいになり、ただ二人で身を寄せ合う

・・・・・・・・

ガヴリール「なあ…」

サターニャ「なに…?」

ガヴリール「実家…帰るか?」

サターニャ「そういう気には…なれないわね」

ガヴリール「だよな…」

ガヴリール「休みどうするよ…」

サターニャ「わかんない…」

サターニャ「クラクラしてて、なんにも考えられない…」

ガヴリール「私もさっきからずっとぼんやりしててさ…夢にいるような感じだ…」

サターニャ「ほんとに…夢なら良かったのにね…」

ガヴリール「ほんとにな…」

サターニャ「…ねえ…ガヴリール」

ガヴリール「なんだ?」

サターニャ「私…ね…」

サターニャ「…いや、なんでもないわ、なんでも…」

ガヴリール「?…うん…?」

サターニャ(こんな気持ち…)

サターニャ(…言えるわけないわよね…)

・・・・・・・・

未だ手に残っているあの感触

感じたのはきっと嫌悪感だけじゃない

人を刺したとき私は……多分、笑っていた

ガヴリールは見ただろうか、あの時の私を

いや、暗くて見えなかったはずだ、そう願う

本当に怖かったのは人を殺めたことではない

それに恍惚とした自分がいたことだった

サターニャ(私…おかしくなっちゃったのかな…ガヴリール…)

自分の中に、まだ知らない自分が居るかもしれない恐怖

すでに寝付いた目の前の天使へすがりつきながら、私も次第に眠りへ落ちていった

・・・・・・・・

ガヴリールはその後も私の家にいてくれた

ラフィエルにはメールで『すまんラフィ、ネトゲで手が離せなくった。校長にはよろしく頼む。』と送ったらしい

ラフィエルもしょうがないですねえ、と了承してくれた

多分、不自然には思われてないはず、いつもの堕落しきったガヴリールならありうることだ

まさか、私たちが春休み中に殺人とその隠蔽を行ったとは思いもしないだろう

私もガヴリールが傍にいるのはありがたかったし、ガヴリールも私の傍にいたかったんだと思う

あのおぞましい出来事を共有できるのは、私たち二人だけなのだから

最初は口数も少なくて、はたから見れば居心地の悪そうな共同生活に写ったかもしれない

でも実際には救われていた、苦しみを分かち合える存在がいないと私たちは狂っていただろう

数日後には段々と、以前のようにガヴリールと他愛のないじゃれあいができるようになった

すべて時間が解放してくれる、忌々しい記憶もいつか忘れてしまえるだろう

あの時感じた感覚は錯乱したために起こった幻だったんだ、そう考えることにした

ガヴリール「昨日はサターニャはつくってくれたし、今日は私が晩飯つくってやるよ」

サターニャ「へえ、あんたが料理なんてどういう風の吹き回しよ?」

ガヴリール「家主様になんでも世話になるのは気が引けるんでね」

ガヴリール「それに、お前の料理はハッキリ言って、不味い」

サターニャ「な、なんですってぇ!?」

サターニャ「美味しかったじゃない!」

ガヴリール「その味覚センスが壊滅的なんだよ…味見の意味がまったくない」

ガヴリール「味付けが辛すぎるわ」

ガヴリール「私も大した腕があるわけじゃないが、サターニャよりはマシなもんがつくれるはずだ」

サターニャ「言ったわね!どっちが美味しいものをつくれるか勝負よ!!」

ガヴリール「へいへい」

ガヴリール(良かった…サターニャも私も前の感じになってきてる…)

ガヴリール(失いそうになって再認識したが、このサターニャの朗らかな性格は尊いものだな…)

ガヴリール(本当に、良かった…)

ガヴリール(ヴィーネも、ラフィも、下界に帰ってきて、そして学校が始まれば…)

ガヴリール(いつもの日常が戻ってくるんだ…)

ガヴリール「ふふっ」

サターニャ「なに笑ってんのよガヴリール」

ガヴリール「いや、お前とこうやってバカできることがさ…楽しくて」

サターニャ「…なっ、なに言ってんのよ…バカ」

ガヴリール「お前も楽しいだろ?」

サターニャ「…………そうね…あははっ」

サターニャ「楽しいわよ!」

ガヴリール(ずっと、このまま平穏な日々を過ごせたらいいな…)

ガヴリール(信仰心なんてとっく錆びついてたけど、今だけは神さまにお祈りしたい気分だ)

サターニャ「さて、ガヴリールをギャフンと言わせる料理を…」

サターニャ「…あ…材料切れてる…」

サターニャ「買いに行かなきゃ」

ガヴリール「おいおい、別にそこまでマジになる必要ないだろ?」

サターニャ「なに言ってんのよ!真剣勝負に決まってるじゃない!」

サターニャ「妥協は許されないわ!」

ガヴリール「しょうがねえな、私もついてくよ」

サターニャ「いいわよ、家には誰かいたほうがいいし」

サターニャ「それよりもあんたはあんたで自分の料理の仕込みでもしてなさい」

ガヴリール「そうか…?じゃあ任せるけど…」

ガヴリール「…なにかあったらすぐに連絡しろよな」

ガヴリール「…本当に一人で大丈夫か?」

サターニャ「大丈夫よ大丈夫!私を誰だと思ってるのよ!」

サターニャ「あんたも随分と心配性になったものねー」

ガヴリール「だって……」

サターニャ「……」

ガヴリール「……」

サターニャ「……ありがと…でも大丈夫だから」

ガヴリール「……わかった」

ガヴリール「気をつけて、な」

サターニャ「うん、行ってくるわね」

バタン

ガヴリール「……」

ガヴリール(……本当に一人で行かせて良かったのか?)

ガヴリール(いや…サターニャだって大分立ち直ってきた頃だ…)

ガヴリール(買い物くらい大丈夫さ、きっと大丈夫…)

ガヴリール「……ヴィーネみたいになってんな、私」

ガヴリール「サターニャのお母さんかよ、らしくねえな、ははは」

ガヴリール「…んじゃ、私は私で取り掛かりますかね」

・・・・・・・・

ガヴリール「遅いな、サターニャ…」

ガヴリール「スーパーまではそこまで離れてないはず…」

ガヴリール(携帯にもなんら連絡はない…)

ガヴリール(そろそろ探しにいったほうがいいんじゃないか…?)

ガヴリール(だけど入れ違いになったら…)

ガヴリール「どうしたんだよ…早く帰ってこいよ…サターニャ…」

・・・・・・・・

サターニャ「そんなに不味かったかしら…」

サターニャ「昨日の料理は会心のデキだったんだけど…」

サターニャ(……ガヴリールが私の高度な味覚についてこれてないだけよ!)

サターニャ(まったく、まだまだお子ちゃまね)

サターニャ(でもまあ…今回はあいつに美味しいと思わせなきゃいけないし…)

サターニャ(レシピ通りに作って振る舞ってあげよう)

サターニャ「…私がまともでいられたのも、ガヴリールがいてくれたおかげだから…」

サターニャ「美味しいって…言わせたいな…」

サターニャ「……」

サターニャ(えーと、たしかレシピの材料は…)

サターニャ「……うえっ、結構かかりそうじゃない」

サターニャ(財布…お金足りるかな…)

ごそごそ

サターニャ「あれ……?」

サターニャ「なに、これ……」

サターニャ「ほう…ちょう…?」

サターニャ(なんで包丁なんか持ってきてるんだろ…)

サターニャ(ガヴリールと料理しようとして…そのまま持ってきちゃった…?)

サターニャ(無意識に?こんなものを?)

サターニャ「…う…ぅっ…」

ダメだ、気分が悪くなる

家で刃物を扱う分には問題ないが、外で扱うとあの事がどうしても頭をよぎってしまう

しっかりしなければ、自分の不手際でただ携えてしまっただけだ、それだけのこと

早く買い物を済まそう、遅くなればガヴリールを心配させてしまう

警察「!」

警察「こら君!なんてものを持ち歩いてるんだ!」

サターニャ「え…?」

警察?

マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ

もしかしたらバレた?私が殺したことを?

でもガヴリールは大丈夫と言ってくれてたバレるわけないって

私が呼ばれたのは単に刃物を手に所持してたから?

本当にそうか?本当にそれだけの理由か?

殺人容疑が自分へかかっているのではないか?あの男は指名手配されてたから以前より目をつけられてたのでは?

あの日のことだって事の顛末をすべて目撃されていたのではないのか?見張っていたものの見られていない確証はどこにもない

もしや家を出た時からずっと警察につけられていたかもしれない

せっかくガヴリールと前に進めそうだったのに此処で連れて行かれれば捕まる?

そうなれば何もかも終わりだ

嫌だ、嫌だ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

警察「とりあえずついて来なさい!ほら立つんだ!」

サターニャ「ッ!?」

サターニャ「嫌ァ!!!」

ザシュ

警察「うッ!!」

サターニャ「ぁぁぁ……」

この感触は

また、また私は刺してしまったのか

サターニャ「ご、ごめなさい!ごめんなさいっ!!」

警察「…大したことはない、軽度の刺し傷だ」

警察「君、まず深呼吸してくれ、一旦落ち着くんだ」

サターニャ「はい…はい…」

良かった、いや人を刺したことは決して良いことではないが、今度は殺さずに済んだ

呼吸を整えていき、頭が冷静に働き始める

…様子を見る限り、この警察は単に危険物を持った自分を見かねただけのようだ

適当に受け答えをこなせば、厳重注意で許してくれるだろう…動転し刺してしまったのは高くつきそうだが…

サターニャ「本当にすみませんでした…」

サターニャ「私…」

警察「!?」

警察「ぐっ…!!うぐぁあああああああああああああああああ!!!!!」

サターニャ「え…?え…?」

どうしたというのだろう、さっきまで刺されても職務を厳かに遂行しようとしていた男がいきなり悶え苦しみだした

サターニャ「だ、大丈夫ですか!?」

警察「がぁああああああああああああああああああああああああああああああああ…!!ゴフッ!!!!!」

サターニャ「ヒイッッ!!!」

男は盛大に吐血し、みるみる生気を失うように体が腐りだす

警察「ぁー…ぉぁあああぁぁぁあぁぁぁぁーー……」

サターニャ「いや、いや…なんでぇ……」

最期は何ヶ月も放置された肢体としか思えない外見になり、朽ち果てた

警察「…………………」

サターニャ「ひっ…ひっ…あぁぁ……な…なによ…なんなのよこれぇ……もうヤぁ……」

サターニャ「私の…私のせいなの…?そんなぁ……そんなのって……」

「おい!!なんだよさっきの叫び声!?」

「見ろよ!!人が……警官が死んでる……!?」

「何言ってんのよー!……えっ嘘……マジ…?」

「は……?映画の撮影とかでしょ……?」

「で、でも、そんなスタッフ誰もいなくね……?」

「うわっ…グロっ…なにあの死体……?」

「通り魔じゃね…?やばっ……!!」

「ほ、包丁持ってる!あ、あの娘がやったの!!?」

サターニャ「ああああああ…ああああああ……」

サターニャ「…違う…私じゃない…私じゃ……」

「逃げろッ!!刺されるぞッ!!!」

サターニャ「聞いてよ…私じゃないってば……」

「来るな!!来るなあああああああああああああああ!!!!」

「おいっ!!!!警察呼べ!!!早くッ!!!!」

「ひっ人殺しだぁー!!!!!!!!」

サターニャ「……………………」

サターニャ「……はは…あはっ…ひひー……ハハハハハハ……ハハハハハハハハハハハハッ……」

サターニャ「もう、無理……」

サターニャ「ごめんね、ガヴリール……」


サターニャ「殺してやる……」

「た、助けてぇ…!!」

サターニャ「だーめ」

ザクリ、グシャッ、ドロリ

今ので何人目だろう、十人を超えたあたりから数えていない

屍共は原型をとどめていない、混ざり合っている、改めて数え直すには骨が折れそうだ

サターニャ「……」

周囲の死屍累々を見渡し、血で染まった己の手を見つめる

サターニャ「…これ全部…私がやったんだ……」

サターニャ「…ふ…ふふっ…あははっ……私の…力……っ!!」

天使の神足通、千里眼などのように、当然悪魔にも特殊な能力が存在する

どうやら私にはその能力が開花していたようだ、自らの手で傷つけた相手を確実に死へ至らしめる力、か?

きっかけは初めて殺意を持って誰かを殺したあの時だろうか

そうだ、思い出した、最初の一刺しであの男は死んでいた、何度も刺すたびに体が醜くなっていった

そんな汚物の処理を任せてしまうなんて、本当にガヴリールには悪いことをしてしまったな

それにしても死に際はもう少し見栄え良くならないものだろうか、ま、これはこれで悪魔的なのかもしれないが

~♪~♪

サターニャ「?」

携帯から着信に登録していた仰々しいメロディが流れてくる

ガヴリールからだ、何件も連絡してくれていたらしい

ちっとも気づかなかった、それほどまでに没頭していたのか私は

サターニャ「…クッ…クククク……」

サターニャ「なーーーーはっはっはっ!!」

久々に自分らしい笑い声が出たと思う、心の底から楽しい

サターニャ「殺すのって…最高…」

この力を使って大悪魔になるのもいいかもしれない

野望を思い描き、親から欲しかったものを買ってもらった時の子供のような心地よさを抱きながら、小気味よく歩きだす

私だけの居場所に帰ろう

・・・・・・・・

プルルルル…

だめだ、何回かけても出やしない

いくら何でも遅すぎる、もう限界だ、探しに行こうと思い立った矢先

ピンポーン

ガヴリール「!!」

ガヴリール(サターニャが帰ってきたのか!?)

これで宅配業者ならば殴り倒していただろう、それほどの勢いで玄関へ急いだ

ガチャ

ガヴリール「サターニャ!!」

ガヴリール「……………………………………………………………………………………は?」

ガヴリール「お前…なんだよ…その格好……?」

ガヴリール「なんなんだよ……」

ガヴリール「……っ」

空気が張り詰めている、息苦しい、とても耐えられるものではない

すぐにでもこの緊張をなんとかしたい、しかし口が思い通りに動かない

本能が今のサターニャと話してはならないと告げている

サターニャ「ただいま」

まごついてる間に、サターニャが投げかけた言霊によって私は拘束された

ガヴリール「お…かえり…」

覚悟を決めなければならない、決死隊の面持ちでサターニャと向き合う

ガヴリール「…どうした、その赤いの…?」

サターニャ「わかってるクセに」

お前の言うとおりだ、わかってる

『赤いの』とは随分と曖昧な言い方だって自分でも思ってる

でも、そんなの認めなくない、頼むから私の願望を口にしてくれ、真実なんて今はいい

ガヴリール「とりあえず風呂はいるか?着替えをようい……」

サターニャ「血」

サターニャ「血よ」

めまいがする、膝から崩れ落ちそうだ

サターニャ「いっぱい殺したわ、だってあいつら私の話を聞かないんだもの」

ガヴリール「………………………………………………ははは、何言ってんだお前?」

ガヴリール「今日はエイプリルフールじゃねーぞ」

サターニャ「証拠見る?せっかくだから撮ってきたんだけど」

ガヴリール「…ぁ……?」

ガヴリール「……!」

ガヴリール「…………う……ぇ……おえぇ…………っ!」

サターニャ「聞いてよ、ガヴリール」

サターニャ「殺すのってすっごく楽しいの」

サターニャ「私、おかしくなっちゃったのかな?」

サターニャ「ううん、多分これが本当の私なんだ」

サターニャ「あんたと同じね、下界で自分の本性を発見するなんて」

ガヴリール「っ……な…なにいって……っ」

サターニャ「私には力があるの」

サターニャ「あんたの神でいうところの天啓ってやつかしら?」

サターニャ「私は、誰かを殺すために生まれてきたのね」

サターニャ「フフ…フフフフ……アーハハッ……」

ガヴリール「…ッ」

ゾクリとした、こいつは本当にあのサターニャなのか?

普段の赤よりも増して染まりきった深紅が身を震わせ白い歯を覗かせている、狂的すぎる

サターニャ「ハハハハハハハハハハハッ…アハッ……ハ……」

サターニャ「ハァー………」

サターニャ「ガヴリール」

ギュウ

ガヴリール「なっ」

サターニャ「ガヴリール……」

急に笑うのやめたと思えば今度は私に抱きついてきた、強く強く

まるで恋人に甘えるかのように、猫なで声で私を呼ぶ、耳元で囁いてくる

サターニャ「ごめん、怖かったわよね」

サターニャ「私、変よね…気持ち悪いでしょ…それが普通…」

サターニャ「でも、私にはガヴリールしかいないの…」

ガヴリール「サターニャ……」

サターニャ「今まで通り下界で過ごすのは無理…ここにはもういられない…」

サターニャ「だから、魔界に帰ることにした…」

ガヴリール「……」

サターニャ「ねえ、一緒にきて」

サターニャ「こんな私を、パパもママも弟も受け入れてくれない、きっと拒絶する」

サターニャ「結局どこへ行っても、どこにも私の居場所はもう無いの」

サターニャ「だけど、全てを知ってるガヴリールなら…ガヴリールだけが私の居場所…」

サターニャ「お願い…傍にいて…」

ガヴリール「サタ……ニャ……わたし……私は……」


懇願している、切実に私を離さまいとしている

しかし、私を抱いているこの手は殺人鬼の手だ、そしてこれから先は殺人だけでは済まないだろう

サターニャを受け入れていいのか?すなわちそれは彼女を許すということだ、共罪に他ならない

一度は共に罪を背負おうと心に誓っていた、だが今のサターニャは、もはや往時のサターニャではない

天使としてどう行動すべきかは自明だ、何故、私は迷っている?


私は…


サターニャを


>>78


1.受け入れる

2.受け入れない

2

・・・・・・・・

ガヴリールはあの日、傍にいると言ってくれた

だから、受け入れてくれる……一緒にいてくれる……

ねえ、そうでしょ、ガヴリール……私にはガヴリールが必要なの……

ガヴリール「……離せ」

サターニャ「……え…?」

ガヴリール「…離せよっ!!」バシッ

サターニャ「…う…ぐっ……!」

サターニャ「が、ガヴリール…?」

ガヴリール「お前……自分のしたこと、わかってんのか?」

サターニャ「え、えっ……」

ガヴリール「…大勢の人間を殺したんだぞ?しかも、それが楽しい?」

ガヴリール「そんな罪深いお前を私が許すと思ってんのか…?」

サターニャ「……っ」

ガヴリール「ふざけんな!!誰がお前なんかについていくかよ!!」

ガヴリール「天使である私がそんなの受け入れられるかッ!!」

サターニャ「!!」

サターニャ「ぅ…そ……」

ガヴリール「お前…本当にサターニャなのか?」

サターニャ「へ……?」

ガヴリール「私の知ってるサターニャは断じてお前みたいなやつじゃない」

ガヴリール「サターニャは悪魔のくせに、純粋で明るくて…一緒にいて嬉しくなれるやつだった…」

ガヴリール「私の…大切な友達だった…」

ガヴリール「だけど、お前は違う」

サターニャ「そ、そんな…わ、私はサターニャ…」

ガヴリール「サターニャはお前のように狂ってなんかいない」

ガヴリール「お前は誰だ?誰なんだよ」

ガヴリール「サターニャを返せ!!返せよ!!!」

サターニャ「……」

サターニャ「……へぇ……」

サターニャ「そっか……」

サターニャ「…そうなんだ…」

サターニャ「………………………………………………………………」

ガヴリールから吐き捨てられた言葉をゆっくり今一度、振り返る

…あぁ、私は、拒絶されてしまったのか

味わったことなんてなかったけど、おおかた意中の人に手痛く振られた際の心情はこんな感じになるのだろう

心にぽっかり空洞ができた感覚

信じてたのに


サターニャ「……………す…」

許さない

ガヴリール「ッ…!」

ガヴリールは何かを察知した様で目を見開き、私から距離をとろうと動く

だが、もう、遅い

天使の羽をもぐような感覚で、腕を掴み乱雑に地面へ叩き下ろした

ガヴリール「が…ぁっ…!」

そのまま覆いかぶさり、四肢の自由を奪い取る、完全に捉えた

サターニャ「ねえ?なんで?どうしてよ?」

サターニャ「私にはガヴリールしかいないのに…それなのに…」

サターニャ「よくも…よくも…」

ガヴリール「はぁ…はぁ…!ぐっ…!」

サターニャ「…………いいわ、前から思ってたの」

サターニャ「天使を殺したらどんな感じなのかって、人間と違いはあるのかって」

ガヴリール「!…ぐっ…!!」

サターニャ「天使の初めてがあんたなのは、悪くないわよ、あははっ……」

サターニャ「さよなら、何か言い残すことはあるかしら?」

ガヴリール「………………………………………………………………お」

サターニャ「?」

ガヴリール「お前はサターニャなんかじゃない…っ!!」


サターニャ「……………し」

サターニャ「死ねぇええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」



「サターニャ掃除しといて」

「七回かけると丁度いい辛さになる辛子のことだよ」

「じゃあ私が試してやるから貸してみ、これで不良品だと格好つかないだろ」

「コーヒーおもちしました…」

「お前さ、将棋のルールなんて知ってるの?」

「はっぴーにゅーいやー!!」

「いや、むしろなんでそうまでして私と入りたいんだお前は?お前まさかそういう趣味が…」

「使い魔もペットもダメだろ」



…なんだこれは…?ガヴリールとの記憶…?

走馬灯というものか?どうして私がそれを見ているのだろう

死に瀕していたのはガヴリールのはずなのだが

……熱い…体から熱が流れている…………?

この熱は…痛み……?私は…まさか…

ガヴリール「いやだ…いやぁ…お願いだ…死なないでサターニャぁ……!」

サターニャ「……あ……ぁ…」

私は…ガヴリールに……

懐から取り出した凶器を、振り下ろせなかった

眼下めがけて腕を降下させる命令を、無意識に私は拒否していた

サターニャ「が…はぁ…っ…!!」

ガヴリール「サターニャ!サターニャぁ!!」

サターニャ「……な…によ…」

サターニャ「私は…サターニャじゃ……ない…んじゃ…ないの…」

ガヴリール「だって…だって!」

ガヴリール「お前は私を…!」

そうよ、殺せなかったわ

でも何人も殺したのは事実だし、あんたの言うとおり罪深い存在なのは変わらないんだけど

まったく甘いやつね、拒絶しきれてないじゃない

ガヴリール「ぅ…っ…ぐすっ……」

バカね…泣いてるの…?あんたは悪くないじゃないの…

身勝手な私に殺されそうになったから抵抗しただけ…その拍子に…こうなってしまっただけ

ガヴリール「ごめん…!ごめんな…!!」

謝らなくていいのに…私を刺すつもりがなかったのはわかってるわよ…

ガヴリール「い、今すぐ救急車を……!」

もういい、ここで死にたい、どうせ生き残っても暗い未来しか視えない

ガヴリールに看取られて死ねるなら、おあつらえ向きの最期だろう

ガヴリール「なっなにし……!?は、離せよ!!」

サターニャ「もう……いいわよ……」

サターニャ「ごめ…ん…ね……ガ……ヴ……リ………ル……」

ガヴリール「な……」

サターニャ「………………………………………………………………………………………………………………………………」

ガヴリール「……サターニャ?おい…サターニャ…?」

ガヴリール「…ぁ…ぁぁ……」

ガヴリール「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

・・・・・・・・

ガヴリール「それなりに手間かけたんだぞ?」

ガヴリール「どうだ?私の料理は?」

サターニャ「……」

ガヴリール「お前って辛いもん好きだからなー旨辛を目指してみたんだ」

サターニャ「……」

ガヴリール「なんだよ、美味すぎて声も出ないか?」

ガヴリール「こりゃ私の勝ち確定か?」

サターニャ「……」

ガヴリール「敗戦処理みたいなもんだけど、お前の料理も食ってやるよ」

ガヴリール「ほら、お前の番だぞ、早く出せって」

サターニャ「……」

ガヴリール「なんだよ…ここまで言われて黙ったままなのか…」

ガヴリール「いつもみたいに突っかかってこいよ…なぁ……」

ガヴリール「それでも大悪魔かよ…」

サターニャ「……」

ガヴリール「……ははっ」

ガヴリール「……ははははははっ……………」

ガヴリール「……サターニャ……」

ガヴリール「…どうしてあのまま私を殺さなかったんだ?」

サターニャ「……」

ガヴリール「いや…殺せなかったんだよな…お前は…」

ガヴリール「お前は……サターニャだもんな……」

サターニャ「……」

ガヴリール「……」

ガヴリール「私も今行くから…」

ガヴリール「お前を一人にはできないよ…」

ガヴリール「だってサターニャは…さみしがりやだもんな……」


ガヴリール「ヴィーネ…ラフィ…皆…」

ガヴリール「あぁ……また皆と……………………った……」

・・・・・・・・・

間もなくして、容疑者が住んでいるとされるアパートの一室に警官が突入した

そこには寄り添って横たわる二人の少女の死体があった

――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――


―――――――――


ガヴリール「……………………ん……」

ガヴリール「……あれ…?」

ゼルエル「目を覚ましたか、ガヴリール」

ガヴリール「ゼルエル…ねえ…さん……?」

ガヴリール「…ここは…?」

ゼルエル「此処は、死者の処遇を生前の行ないによって決定する審議所だ」

ゼルエル「神の御心のまま、お前には審判が下される」

ガヴリール「死者?…………ああ、そうか、私は……」

ゼルエル「そうだ、ガヴリール、お前は……死んだのだ」

ガヴリール「……姉さんがいるってことは、天界なんだな」

ガヴリール「天使だから、死後その魂は天界に送られてきたってことね」

ゼルエル「その通り、理解が早いな」

ゼルエル「では早速で悪いが、お前の処遇について決定を下す」

ガヴリール「本当、いきなりだね」

ゼルエル「……お前が下界に降り立った後の堕落しきった生活は、決して褒められたものではない」

ゼルエル「だが、天界において長きに渡り天使達の模範であり続けたことは事実だ」

ゼルエル「これらを総合的に判断し、天真=ガヴリール=ホワイト、今回のお前の判決は『転生』となった」

ガヴリール「転生……」

ゼルエル「ああ、一介の天使として、再度生まれ直すのだ」

ゼルエル「……お前との血縁関係はなくなってしまうだろうが、できるだけ私と近しい存在として生まれ変わることを願っている」

ガヴリール「姉さん……」

ガヴリール「……ありがとう、姉さん」

ゼルエル「何だ、突然」

ガヴリール「天界での時期があったとはいえ、いくらなんでも私に転生なんて寛大すぎるよ」

ガヴリール「下界で私が一体なにをしたのか……もちろんすべて知ってるんでしょう?」

ゼルエル「…………」

ガヴリール「きっと、姉さんがいろいろ手を回してくれたんだよね」

ガヴリール「あの神の腕とまで呼ばれる姉さんが、私情を挟むべきではない場面で立場よりも妹である私のことを優先してくれたんだ」

ガヴリール「いくら感謝してもしきれないじゃないか」

ゼルエル「…感謝…だと…?」

ゼルエル「お前に感謝させる覚えはない…」

ゼルエル「むしろ…私はお前に謝罪したい気持ちだ…」

ゼルエル「頃来、私はお前に千里眼を用いずにいた…」

ゼルエル「下界で参観した際に、お前にはお前なりの考えがあるのだと理解したつもりでな…」

ゼルエル「しかしどこか、自身の多忙さゆえ妹になど構ってはいられないとも思っていた…」

ゼルエル「今回は私の怠慢が招いた結果だ、私が以前のようにお前を見ていれば…こんなことには…」

ゼルエル「本当に、すまなかった、ガヴリール…」

ガヴリール「姉さん……姉さんのせいじゃないよ……」

ゼルエル「いや、私の責任だ、納得できないんだ」

ゼルエル「お前は死ぬはずがなかった…なぜだ…なぜだぁ…!」

ゼルエル「……っ…くっ…ガヴリールぅっ……!!」

泣いてる、あの姉さんが、初めて見るかもしれない

こんな姉を持てて私は幸せ者だ

ゼルエル「……すまない、取り乱してしまった」

ガヴリール「いや、いいよ、逆にありがたかったな」

ガヴリール「姉さんの泣き顔っていう良い冥土の土産ができた」

ゼルエル「……あまり今はそういう洒落を許容できる余裕がない」

ガヴリール「あはは、ごめん」

ガヴリール「……気になってることがあるんだけど、聞いていいかな?」

ゼルエル「……内容しだいによるな」

ガヴリール「……サターニャは…どうなった?」

ゼルエル「……」

予想はしていた、といった反応だ

みるみるうちに姉さんの表情が険しくなっていく

そりゃそうか、姉さんにとってサターニャは妹の仇ようなものになるんだろうし

ゼルエル「もはや魂だけの身だ、現世でのしがらみなどなくなった」

ゼルエル「あの少女については、もうお前に関わりのないことだろう」

ガヴリール「頼む姉さん」

ガヴリール「それでもあいつは…私の大事な親友だよ」

ゼルエル「……」

ガヴリール「お願いだよ姉さん」

ゼルエル「……………………愚妹め…止むを得んな……」

ガヴリール「……ありがとう、姉さん」

ゼルエル「……管轄が違うため詳細はわからないが…彼女の魂は魔界へが送られているはずだ」

ゼルエル「彼女には最も重い処分が下るだろう」

ガヴリール「そう…か…」

ゼルエル「一昔前なら悪魔の中の悪魔と賞賛されていただろうが、今は魔界も穏健派が主流となっている」

ゼルエル「価値観は私達とさほど変わりない」

ゼルエル「彼女に下る刑は…『虚無』…」

ガヴリール「虚無…?」

ゼルエル「文字通り、何もない、延々と闇が広がる空間に閉じ込められる」

ゼルエル「並の者ならば、数日も立たないうちに精神が崩壊するだろう」

ガヴリール「そんな…」

ゼルエル「暗闇、空虚、孤独…それらに抗える者などいないのだ」

ゼルエル「定められた期間を満了すれば、報いを受けたとして新たに転生となるが……」

ゼルエル「大半は耐え切れず、何も考えれなくなり周囲の闇と同化した存在と成り果てる……」

ガヴリール「……」

ゼリエル「……聞かなかったほうが良かっただろう、私も言いたくなかった」

ゼリエル「…………これで、思い残すことはないな?名残惜しいがこれより転生の儀を――」

ガヴリール「姉さん」

ガヴリール「私は転生しないよ」

ゼルエル「な…っ!?」

ガヴリール「神の使いにはもうなれそうにない」

ガヴリール「私はずっと祈ってたんだ、また皆と過ごせますようにって」

ガヴリール「でも、神は叶えてくれなかった」

ガヴリール「そんな神に信仰なんか微塵も抱けないよ」

ゼルエル「な…何を言っているガヴリールッ!!口を慎めッ!!」

ガヴリール「…私はどうやら悪魔のほうが性にあってそうだ」

ガヴリール「サターニャのとこに行って一緒に罰を受けて、悪魔に転生しようかな」

ゼルエル「ふざけるな!!」

ガヴリール「大真面目だよ姉さん」

ガヴリール「私が死んだのはサターニャの傍にいるためなんだ」

ガヴリール「これは償い……いや、そんな言い方は卑怯だな」

ガヴリール「私は、サターニャの傍にいたい」

ゼルエル「何故だ!?何故そこまであの悪魔に執着する!!?」

ゼルエル「お前にとってあの少女はそれほどまでに大切な存在だったのか!!?」

ガヴリール「いやそんなことはないよ、うるさいし最初は嫌いなほうだった」

ゼルエル「だったらどうして!!」

ガヴリール「…どうしてだろうね…自分でもさっぱり分からない」

ガヴリール「…あいつってさ、とてもさみしがりやなんだよ、時々すっごく構って欲しそうにするんだ」

ガヴリール「そんなあいつが…最期にさみしそうな顔してたから……かな」

ゼルエル「そ…そんなの理由になるものか!!」

ゼルエル「考え直してくれガヴリール!!私はお前を失いたくないっ!!」

ガヴリール「なあ、神様、聞いてるんだろ?」

ガヴリール「あんた随分とケチなお方なんだな、こんな小娘のささやかな願いすら叶えてくれないなんて」

ガヴリール「悔しかったら今から私の願いを叶えてみせろ!」

ゼルエル「よせッ!!」

ゼルエル「神よ!ガヴリールは死のショックで気が動転してしまっているのです!どうかお許しください!!!」

ガヴリール「私をサターニャの元へ連れて行け!!!」

・・・・・・・・

ガヴリール「なんだ…ちゃんと叶えてくれるん…じゃん」

ゼルエル「ガヴリール!嫌だ!いかないでくれ!!」

ガヴリール「ねえ…さん…ごめんなさい…」

ガヴリール「ハニエル…お父さん…お母さんにも…」

ガヴリール「ごめん…なさいって…」

ガヴリール「よろしく…お願いします…」

ゼルエル「ガヴリール!!ガヴリールッ!!!」

ガヴリール「さよう…なら…」

薄れていく意識と共に、私の霊体も消滅していった

どうかお元気で、ゼルエル姉さん

――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――


―――――――――


サターニャ「……ん…」

サターニャ「私たしか…死んで……?」

サターニャ「…ここ…どこ…?」

サターニャ「暗い…なにも見えない…」

サターニャ「怖い……」

サターニャ「……ちょっとー!!誰かいないのー!!!?」

「…………」

サターニャ「静か…誰もいない…」

サターニャ「声も反響しないし、どんだけ広いのよここ…」

サターニャ「……」

サターニャ「じっとしててもしょうがないわね、とりあえず動いてみようかしら」

・・・・・・・・

サターニャ「はぁ…はぁ……」

どれほど経っただろうか、時間感覚はとっくに失われてしまった

数時間?数日?数ヶ月?もしや数年?

いくら進んでも景色は代わり映えしない、いや景色という表現すら不適切だ、なにも見えないのだから

サターニャ「つかれた…」

どさりと倒れ込む

ここからは出られないのだろうか、蓄積した疲労が消極的な思いを次々と抱かせる

孤独だ、無力だ、どうあがいても果てしない暗闇に敵いそうにない、寒い

この苦しみは一体何なのだろう

サターニャ「…………これは…報いね…」

私は多くの人を殺めた、甘んじて罰を受けよう

サターニャ「…………」

目を閉じる、眠ってしまいたい、死んだ後も眠ることはできるのか

思考を停止して、ただそこに在れば同じ様なものじゃないか

周囲の闇と一体化して漂えばいい、黒く染まって無機質になればいい

サターニャ「………い…や…」

サターニャ「やだ…私…消えたくない…消えたくないよぉ…」

このままでは、自分自身を無くしてしまうことを受け入れてしまいそうだ

その時期がすぐそこまで迫りつつある、恐ろしくてたまらない

サターニャ「たすけて…たす…けて…」

サターニャ「だれ…か…だれかぁ……」

虫のいい話だと分かっていても助けを求めてしまう

こんな私を救ってくれる者などいやしない、こんな辺境に誰も来てくれない

来てくれない?来てくれない……

そうだ…私は…拒絶されてしまった……

サターニャ「…ガヴ…リール…」


ガヴリール「呼んだか?」

サターニャ「……ぇ…」

ガヴリール「よ、久しぶり」

ガヴリール「探すのに少し手間取った」

サターニャ「ガヴリール…?」

サターニャ「…なわけないか……幻覚ね…本格的におかしくなっちゃったみたい…」

サターニャ「いいわ…幻でも…」

ガヴリール「バーカ」

バシィ

サターニャ「痛っ!ちょっ!?何すんのよ!!」

ガヴリール「そうだ、お前はそれでいい」

サターニャ「ほ、本物のガヴリールなの……?」

ガヴリール「ああ、しっかりモノホンだ、幻じゃないぞ?」

サターニャ「だ、だってガヴリールは…」

サターニャ「……どうして……?」

ガヴリール「お前が言ったんだろ」

ガヴリール「『傍にいて』って」

サターニャ「ぁ……」

サターニャ「…………っ……!」

黒一色の暗がりの中に一筋の白い光が差し込んで来た

光は闇から守るように私を懐抱する

暖かった

――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――


―――――――――


サターニャ「なーーーーはっはっはっはっはっ!!!」

サターニャ「ついに下界に降り立ったわ!」

サターニャ「ふふふ…支配の時は近いわよ!」

サターニャ「…………」

サターニャ「……ええと、入居予定の物件って、どこに行けばいいのかしら…」

サターニャ(べ、別に慣れない世界に来たばっかだから不安ってわけじゃないわよ!!)

大天使「……おい、そこの悪魔」

サターニャ「ふえっ!?だ、だれ…?」

大天使「ただの通りすがりの天使だ」

サターニャ「そ、そう…って天使が私に何用よ…?」

大天使「お前の目的地はこのまま真っ直ぐに進めばいい、道すがら看板が目に入るからすぐわかるだろう」

サターニャ「あっ、ど、どうもありがとう…感謝するわ…」

大天使「感謝にはおよばない」

大天使「そして、お前には言っておきたいことがある」

サターニャ「…?」

サターニャ「なにかしら?」

大天使「お前はじきに……悪魔の少女と出会うだろう」

大天使「……どこか私と似た、金髪の少女」

サターニャ「へ…?」

大天使「お前にとってかけがえのない存在になる筈だ」

大天使「今度こそ大事にしろ」

サターニャ「こんど?ってどういう…?」

サターニャ「そもそもなんであんたがそんなこと知って…」

大天使「では失礼する」

サターニャ「ち、ちょっと待ちなさいよ!」

大天使「私はいつでも視ているぞ、それを忘れるな」

サターニャ「うわっ!!」

サターニャ「…………天使の…羽根……?」

サターニャ「行っちゃったわ……意味わかんない」

・・・・・・・・

サターニャ「…ここね!」

サターニャ「ようやく着いたわ!下界を支配するための根城!私の城よ!」

サターニャ「なーっはっはっはっ!!」

ガチャッ!

「うるせえなっ!」

サターニャ「ひぃっ!ご、ごめんなさい……隣に越してきた者です……」

「…ったく、こっちはネトゲ明けでぐっすり寝てたってのに…」

サターニャ「…あ」

サターニャ(金髪の…少女…)

「……お、もしかしてあんた私と同じ悪魔か?」

サターニャ「え…ええ、そうよ!」

サターニャ「私は大悪魔!胡桃沢=サタニキア=マクドウェル!!」

「あーはいはい、大悪魔サターニャさんな、よろしく」

サターニャ「ちょっとガヴリール!何よその面倒くさそうな反応!!」


サターニャ「……え?」

「……え?」

「「……………………………………………………………」」



ガヴリール「…………………………久しぶり」



2.受け入れない ルート END




おまけ

>>76

1.受け入れる ルート






ガヴリール「わたしは……わた…しは……」

ガヴリール「…………」

私はサターニャの腕を

振りほどけなかった

なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?

こんな狂った悪魔を、どうして受け入れてしまったんだ?

葛藤渦巻く中で、了承の返事をうまく言葉にすることができない

代わりに、私は、抱擁に応えるようにサターニャの背後へ腕を回し、強く結んだ

サターニャ「……っ!」

サターニャ「ガヴリール…!ガヴリールぅ…!」

サターニャ「ううぅ…えうっ……良かったぁ……良かったよぉ……!」

ガヴリール「……………………はは……」

泣いてやがる、心底嬉しそうだ

こっちまで嬉しくなるじゃないか

ガヴリール「……あぁ……どっちにしろ私も魔界に行くしかなさそうだ……」


その日、ガヴリールの頭上の輪は輝きを失った

――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――


―――――――――


サターニャ「諸君!誇り高き我が同士たちよ!!」

サターニャ「私は大悪魔!胡桃沢=サタニキア=マクドウェル!!」

「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」」」

ガヴリール「…………」

ガヴリール(あれから……随分と、遠くまで来たもんだな……)


あの後、ガヴリールとサターニャは共に魔界へ逃れた

しかし当然、魔界にも人間を殺害した悪魔留学生の報せは程なく入り込み、サターニャの消息が調査され始める

捜索隊から逃亡する日々、懸命に姿を隠す二人も、そろそろ限界が迫ってきていた

そこに思わぬ助け舟が訪れる、魔界の地下で活動する過激組織だ

彼らは悪魔を本来あるべき姿に取り戻そうと活動する団体であり、サターニャの行動に目をつけ、ぜひ同士として迎え入れたいと申し出た

後ろ盾がない二人には願ってもないオファーだった、 一も二もなく二人は入会し、末端としてめきめきと頭角を現してゆく

類まれなる能力によってサターニャはすぐさま組織にとって必要不可欠な人材となった、組織に仇なす存在の何名がサターニャによって葬られたことだろう

赤髪の革命の乙女が魔界全土に認知されるのにそう時間はかからなかった、サターニャを信奉する者たちが急増し組織の構成員は数年で倍増した

昔と比べ身長も伸び、結っていた髪を下ろすようになったサターニャはまさにカリスマと呼ぶに相応しい風格を身に着けてきた、以前なら一笑に付されていただろう発言も今の彼女が言えば説得力という重みを感じさせるものとなる


サターニャ「――――――――悪魔は世に混沌を生み出すために生まれた!!」

サターニャ「存在意義を忘れた同胞たちには教育を!抵抗する者には死を与えなさい!!」

「「「サタニキア!!!サタニキア!!!サタニキア!!!」」」

・・・・・・・・

サターニャ「なーっはっはっはっ!」

サターニャ「今回のスピーチは我ながら大成功ね!」

サターニャ「見たでしょガヴリール?聴衆たちが歓声に沸いていたわ!」

ガヴリール「ん…ああ…そうだな」

ガヴリール(私の前では昔と変わらない、けど……)

ガヴリール(いつの間にか、表舞台ではさっきのように冷酷無比と畏れられる大悪魔と化すようになった)

ガヴリール(そんなサターニャにとって、私は本心をぶつけられる唯一の相手と思っていいんだろうか)

サターニャ「?」

サターニャ「どうしたのよ?心ここにあらずって感じね」

ガヴリール「別に……なんでもない」

ガヴリール「熱気にあてられて疲れたわ、休むよ」



ガヴリール「……」

ガヴリール「……うぅ…」


『ゼルエル「ガヴ…リール……」』


ガヴリール「う……ぐっ……」

ガヴリール「ねえ…さん……」


『ゼルエル「ガヴ……リール……」』

『ゼルエル「なぜ…だ…」』

『ゼルエル「なぜ…わたしを……」』


『ゼルエル「殺した」』


ガヴリール「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

ガヴリール「っ!!はぁー……っ!!はぁー……っ!!」

姉さんを殺してからというもの、よくうなされるようになった

実に、甚だ堕ちてしまったものだ、天界を裏切った挙句に姉を手にかけてしまうとは

悪魔原理主義を掲げるこの組織は当たり前だが、天界を敵視していた

元天使でありサターニャとは逆に疎まれた私は、行動をもって信頼を得る他になかった

苦しい、どうしてこんな思いをしなきゃならない?本当は姉さんを殺したくなんてなかったんだ

全てはあの日、サターニャを受け入れてしまったから……

サターニャ「…………んっ………ふぁ~……」

サターニャ「起きた……?」

その張本人は知らぬ間に私のベッドへ潜り込んでいた

ガヴリール「おい…一応最高幹部のお前が私の寝室なんかに入り浸っていいのかよ……」

サターニャ「なによ今更、多分周りは私とアンタの関係ぐらい察してるわよ」

ガヴリール「……マジか」

サターニャ「アンタも鈍いわね」

サターニャ「……うなされてたわね、大丈夫?」

ガヴリール「ああ…またあの夢をみた…」

ガヴリール「……」

ぎゅっ……

サターニャ「ガヴリール?」

無言で私はサターニャに抱きついた

あの日とはまるで真逆の立場だ

サターニャ「…震えてるじゃない、怖いの?」

ガヴリール「……怖いよ……」

ガヴリール「姉さんまで殺してしまって、天使としての私はなにも残っちゃいない……」

ガヴリール「私にはサターニャしかいないんだ……」

ガヴリール「だけど今のお前には信奉する多くの悪魔がいる……」

ガヴリール「だからサターニャにはもう、私は必要ないんじゃないかって時々考えてしまうから……」

サターニャ「そんなこと考えてたんだ、バカね」

サターニャ「今も昔も私の居場所はガヴリールの傍だけよ」

ガヴリール「サターニャ……」

サターニャ「狂った私がこうして大悪魔になれたのも、ガヴリールがいてくれたから」

サターニャ「私を慕う悪魔がどれほど増えようと、それが変わることなんてないわ」

ガヴリール「…………うん…………」

ガヴリール「ありがとう…」

サターニャ「……ガヴリール……」

ガヴリール「っ……んっ……」

手を絡め、口づけを交わし、そのまま身体を体を重ねあう

本当に私は必要なのか、再確認するために何度も深く深く求める、サターニャもそれに応えてくれた

最中、サターニャは綺麗だと、実感した

なぜ私はサターニャを受け入れたのか、ようやくわかった気がする

あの日、私は血で彩られ赤く狂気に染まったサターニャを


――――――――美しいと思ってしまったから


1.受け入れる ルート END

ダークなガヴサタを書きたかった、予想以上に長くなってしまった
視点が変わりまくってグダグダになったのはご容赦ください
1がBADで2がTrueのつもりだけどガヴサタ的にはどっちもハッピーかもしれない
ありがとうございました

読み返してみると誤字脱字多いなあ、無念
html依頼してきます

ガヴサタ流行れ

>>115の続き。

サターニャ「あんた・・・ガヴリール・・・・・・・・・・・・なの?」

ガヴリール「おいおい、何幽霊を見たような顔してんだよ。」

サターニャ「いや・・・だって・・・だって・・・。」

ガヴリール「ああ、でも転生したんだ。悪魔にな。」
サターニャ「あ・・・ああああ・・・・。」

その時、私はうれしく泣いた。天使だった親友が、悪魔として甦った事を・・・。でも・・・。

ガヴリール「あと、友達紹介するぞ。おーいみんなー。」

ガヴリールはその友達を部屋から呼んだ。

サターニャ「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

私も一度は恐怖を感じた。何故ならガヴリールの友達が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チェーンソー等の凶器で人々を恐がらせたあのキラークラウンだからだ。

キラークラウン達
「「「・・・・・・。」」」

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