モバP「もしも佐久間まゆが犬だったら」 (25)

~Pの家~

おはようございます、Pさん。気持ちのいい朝ですよ。

……Pさんって寝顔も素敵。

うっとり……。

はっ、ダメダメ。Pさんを遅刻させる訳にはいきません。

起きて~、起きてくださーい。

Pさんの頬、失礼します……っ。

ぺろぺろ……ぴちゃぴちゃ、ぺろぺろぺろぺろ……。

P「おっ……まゆ、おはよう」

うふっ、なでなでしてもらっちゃいました。

ジリリリリリリ……。

P「まゆが起こしてくれるからもう目覚ましはいらないかなぁ、ははっ」

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P「まゆ、おいで。出かけるよ」

あら……? スーツ着てるから今日はお仕事ですよねぇ?

いつもならお留守番なのに……。

まあいいか。ついていけば分かりますよね。

今行きまーす。





この景色……以前見たような……。

あっ!

きゃーー!! 動物病院いやーーー!!!

P「こらまゆ、逃げるな!」

Pさんを困らせたくないけど、注射は怖いです……!

P「すいませーん! 捕まえてくださーい!」

我那覇響「任せるさー! よっ、おっと……ほーら捕まえた!」

きゃん!

この人どう逃げるか分かってたみたい……うう……。

P「はぁはぁ……助かりました」

響「困ったときはお互い様さー。もう逃げちゃダメだぞ、いぬデリカ」

まゆです。

P「あれっ、我那覇響さん?」

響「自分のこと知っててくれたんだ、ありがとー!」

響「でもサインは出来ないぞ。プライベートでしちゃダメって言われてるんだ」

P「ああ、ウチもそうですよ」

響「ウチ?」

P「覚えてませんか? 以前ご一緒した輿水幸子のプロデューサーです」

響「あー、ギアナ高地にスーツで来た人!」

響「そっか、犬飼ってるならあのとき教えてほしかったぞー」

P「我那覇さんは本当に動物が好きなんですね……あのときはゆっくり話す機会もなかったので」

響「そうそう、幸子が滝つぼに落ちて大変だったっけ。あはは」

むっ、Pさんと仲良さそうに、しかもまゆの知らないことを話して……!

うー、わんわん! がるるるる……。

響「うわっ、急にどうしたんだ、いぬデリカ」

P「こら落ち着け。ほら、良い子だから」

あぁん、Pさぁん。

P「ときどきこうなるんですよねぇ。基本的に人見知りしない子なんですが……」

響「多分嫉妬じゃないかな」

P「嫉妬って?」

響「自分達が楽しそうにおしゃべりしてたからさー」

響「犬じゃなくて、一人の女の子と考えれば分かると思うぞ」

P「なるほど……ははは、可愛いなぁ、よしよし」

響「大丈夫、お前のご主人を取ったりしないよ」

この人……本当に動物の気持ちが分かるんですね。でも。

P「ああ、それと」

『まゆです』

~事務所~

P「――で、検診終わったらそのまま連れてきたんだ」

森久保乃々「事務所に犬がいた理由は……わかりましたけど……」

乃々「なんで……この子は、プロデューサーさんの机の下に……」

うふ、Pさんのにおいがして落ち着きます♪

乃々「もりくぼが入れないんですけど……」

P「良い機会だから机の下に入るのやめたら?」

乃々「むぅーりぃー…………」

P「じゃあ逆に、一緒に入ってみるとか。まゆはおとなしいから噛んだりしないぞ」

乃々「そ、そうですか……いや、でも……うぅ~……」

P「動物は苦手?」

乃々「リスくらいの小動物なら……犬は牙があるので……」

P「度胸を付ける練習と思って。ライブだって最初は絶対イヤとか言ってたじゃないか」

乃々「それを言われると……じゃあ、ちょっとだけ」

ぐるるるる……。

乃々「ひぃっ、いきなり唸ったんですけどっ!?」

ここはまゆの場所です……誰にも渡しませんよぉ。

P「警戒してるだけだって。ほら、強引に押し入ってみな。さあさあ」

乃々「うう……噛まないでください。絶対噛まないでください……」

かぷ。

乃々「ぎゃああっ! か、噛まれたんですけどっ!!」

P「あれー、おかしいなー。まゆが人を噛むなんて」

P「というか今の流れ、まるでコントだったな。まゆは賢いなぁ」

なでなで。

えへへ、なんだか良くわからないけど褒められてます。

乃々「賢いなぁ、じゃないんですけどッ!?」

P「落ち着けって。甘噛だから怪我してないだろ?」

乃々「そういう問題じゃないです……」

P「家と違って俺の匂いがするのはここだけだから、離れたくないのかなぁ」

乃々「そ、そんな……もりくぼはどうすれば……」

P「うーん……そうだ、まゆおいで」

お膝をポンポン……座って良いんですね?

今行きまーす。ぴょんっ。

P「空いたから入っていいぞ」

乃々「はい……なんか、試合に勝って勝負に負けた気分なんですけど……」

PさんPさん♪ もっとぎゅーってしてください。すりすり。

乃々「こんなにとろけた表情の犬見たの初めてです……」

乃々(あ、しっぽパタパタしてる……かわいい……)





遊佐こずえ「ふわぁ……こんにちはー、まゆ……こずえだよー」

ああ、なんて可愛らしいんでしょう。

お人形みたいに可愛い子が居る、とPさんが話していたのはきっとこの子ですね。

こずえ「そうだよー、こずえ……おにんぎょうー……」

…………。

こずえちゃん、趣味はなんですか?

こずえ「しゅみー? んー……わかんないー」

こずえ「まゆは、なにがすきー? やっぱり、おさんぽー……?」

そうですねぇ、お散歩はもちろん大好きですけど。

毎朝Pさんを起こしてあげるのが好きですし、日課になってますね。

こずえ「そうなんだー……いいなー。こずえも、おこしてほしい……」

響さんは気持ちが分かるみたいだったけど、こずえちゃんは完全に意思疎通できてます……。

Pさんもある程度は分かってくれますけど、こずえちゃんほど完璧じゃないんですよねぇ。

コツみたいのがあればPさんに教えてあげてほしいです。

こずえ「んー……こつはわかんない。ごめんねー……」

いえ、こずえちゃんが悪いわけではありませんから。

ああ、まゆが人間に生まれてさえいれば……もしくはPさんが犬だったら良かったのに……。

でももし違ってたら、そもそも出会えてなかったかもしれないですねぇ。





こずえ「ぷろでゅーさー」

P「どうした、こずえ。向こうでまゆと遊んでたんじゃ?」

こずえ「あそんでた……それでねー」

P「うん」

こずえ「ぷろでゅーさーは、なんで……いぬにうまれなかったのー……?」

P「どういう意味!?」





星輝子「フヒヒ、ぼののさんから聞いたとおり……よく懐いてるな」

輝子「芸とか仕込んでるのか?」

P「いくつか命令は教えてるけど、芸ではないなぁ」

P「あ、待てよ。まゆ、んーっ」

はい、Pさん。ちゅっ。

輝子「おお……! 頬にちゅーした」

P「最初は偶然だったけど、頬を向けたらキスしてくれるようになったんだ」

輝子「す、すごいな……ラブラブじゃないか」

P「そうだ、もう一つあった。これも教えたわけじゃなくてまゆが勝手にやりだしたんだけど」

P(パソコンでおねシンを再生)

あらっ、この曲は……うふふ、体が勝手に動き出しちゃう。

輝子「おおおおっ、踊りだしたぞ」

ぴょこぴょこ。

わんわんっ。

輝子「今のタイミング……」

P「まあ見てな」

くるくるっ。

わんわんっ。

輝子「コールだ! コール入れてる!」

P「ライブ音源も一緒に聞いてるからな」

輝子・P『パッション!』

わんわんっ。

輝子「すごい。やばい。かわいい」

P「語彙力」

輝子「キノコはちゅーもダンスもしてくれないからな……犬飼いたいなぁ」

P(輝子のキノコ愛が揺らいでいる……! まゆ、恐ろしい子ッ!)





渋谷凛「プロデューサーが犬飼ってるなんて知らなかったな」

P「隠してたわけじゃないけど、自慢するようなことでもないからな」

凛「そう? 愛犬がどんなに可愛いかって自慢したくならない?」

P「……いや、ならないな。だってまゆは世界一可愛いし」

凛「は?」

P「まゆと比較されたら他の犬がかわいそうだろ?」

凛「それハナコの前でも同じこと言えるの?」イラッ

P「まゆはおねシン踊れるんだぞ」

凛「私だって踊れるよ!」

P「凛が張り合ってどうする」

凛「飼い主とペットは一心同体。私が踊れるってことはハナコが踊れるのと同じなんだよ」

P「あー、そーゆーこと言うんだ、ふーん」

P「じゃあ凛は、俺がスカウトしなかったらシンデレラガールにもなれなかったからなー」

P「簡潔に言えば、シンデレラガールとは万人が認めた可愛い女の子」

P「つまり、ハナコが可愛いのは俺のおかげってことなんだろうなー」

凛「それを言ったら、戦争だろうが……っ!」





神谷奈緒「凛はハナコがからむとIQ下がるなぁ」

北条加蓮「親馬鹿ならぬ飼い主馬鹿だね。それだけ可愛いってことだよ」

加蓮「私も奈緒がからむとIQ下がるし」

奈緒「ふーん、そうなのか……」

奈緒「ってそれあたしが加蓮のペットみたいじゃないか!」

加蓮「あっ、気付いた」

奈緒「気付くわ!」





P「事務所に来てみてどうだった? 慣れない場所で疲れなかったかな」

そうですねぇ、最初は緊張しましたけど……。

Pさんがずっと近くにいるって分かったら安心できました。

それにしても、Pさんのマッサージはどうしてこんなに気持ちいいんでしょう。

身体がほぐれて、疲れが取れて、とろーんてしちゃいます。

佐々木千枝「とっても気持ちよさそうですね」

P「まゆはマッサージされるのが大好きなんだ」

千枝「それだけじゃないと思いますよ。きっとプロデューサーさんが上手なんです」

まゆを大切にしてくれてるのが伝わってきますからね。

技術ではなく愛情……ということでしょうか。

千枝「よかったら千枝にも……マッサージしてくれませんか?」

P「さすがにそれは。マッサージと言っても女の子の体を撫で回すわけだから」

千枝「まゆちゃんは良いんですか?」

千枝「犬とか人間とか、それ以前に女の子ですよ?」

P「ううっ」

P(謎の説得力があるパワーワード、○○以前に××……)

P(性別以前に犬だ、と言うことも出来るわけだが……千枝は反論できそうもないからやめておこう)

P「マッサージは出来ないけどナデナデで勘弁してくれ」ナデナデ

千枝「し、仕方ないですね……勘弁してあげます。えへへっ」

Pさんにマッサージしてもらえるのは、まゆだけ。

うふふ……すや……。

千枝(気のせいかな……寝顔がドヤ顔に見えます)





??「まゆさんー」

ん……? どちらさまですか?

神様「わたくし神様でしてー」

身体の中に手足が引っ込む?

神様「それは亀様でしてー。ふむ……犬に神様と言っても通じませぬかー」

神様「まあ、そんなことは良いのですー。まゆさん、人間になりたくありませんかー?」

人間に……? どういうことですか?

神様「本来人間として生まれるはずの魂がー、手違いで犬に生まれたのがまゆさんでしてー」

神様「なれば人間に転生してあげましょうー」

人間になったら、Pさんに会えますか?

神様「もちろんー。ただ、すぐにとは約束できませぬー」

神様「そのかわり、必ず結ばれる運命に調整することは可能でしてー」

……せっかくですけど、今のままが良いです。

神様「おやー? ぜひにとお願いされると思っていましたがー」

神様「何年か我慢すればー、その後ずっと一緒にいられるのですよー?」

そうかもしれませんけど……まゆは、生まれたときからずっとPさんが一緒にいてくれたんです。

どれくらいか分からないのに待ち続けるなんて出来ません。

それに今でも十分幸せですから。

神様(たしかにー、犬でなければ出来ないコミュニケーションもありますねー)

神様(ぺろぺろして起こしてあげるとか……はう……)

お顔赤いですよ?

神様「な、なんでもありませぬー……」

神様「とにかくー、気持ちは分かりましたー。現状維持といたしましょうー」

神様「せめてその幸せが長続きするよう、祝福しておきますー」ペカー

なんか光ってます!

神様「ではーさらばー」

……。

変な夢を見たような……。

あら、ここは……Pさんのお部屋。

そっか、マッサージが気持ちよくて寝ちゃって……そのまま連れて帰ってくれたんですね。

Pさん……もお休みしているみたい。

ベッドに潜り込んじゃおっと。

うんしょ、よいしょ。

P「ん、まゆ……」

あっ、起こしちゃった。ごめんなさい。

P「よくも起こしてくれたな……抱きまくらの刑に処す」

きゃあ♪

大好きなPさんにぎゅってされるなら、まゆにとってはご褒美です。

P「あー、まゆのもふもふボディたまんねぇ……」

うふふ、まゆの毛はふわふわで気持ちいいでしょう?

犬は犬なりに、これからも尽くしてあげますからね。





このあと嬉ションして叱られました。

おわり

本作のまゆは犬です
人間のまゆでイメージしないでください
くれぐれも、犬耳尻尾首輪付き全裸まゆでイメージしないでください

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